09/10/25 18:02:37 J3xJf4yfO
本拠地､ﾔﾏﾊｽﾀｼﾞｱﾑで迎えた開幕戦
DF陣が大量失点､FWも勢いを見せず惨敗だった
ｽﾀｼﾞｱﾑに響くｻﾎﾟｰﾀｰのため息､どこからか聞こえる｢今年こそは降格だな｣の声
無言で帰り始める選手達の中､昨年の得点王前田は独りﾍﾞﾝﾁで泣いていた
今までに手にした栄冠､喜び､感動､そして何より信頼できるDF陣･･･それを今の磐田で得ることは殆ど不可能と言ってよかった
｢どうすりゃいいんだ･･･｣前田は悔し涙を流し続けた
どれくらい経ったろうか､前田ははっと目覚めた
どうやら泣き疲れて眠ってしまったようだ､冷たいﾍﾞﾝﾁの感覚が現実に引き戻した｢やれやれ､帰ってﾄﾚｰﾆﾝｸﾞをしなくちゃな｣
前田は苦笑しながら呟いた立ち上がって伸びをした時､ふと気付いた｢あれ･･･?お客さんがいる･･･?｣
ﾍﾞﾝﾁから飛び出した前田が目にしたのは､ﾊﾞｯｸｽﾀﾝﾄﾞまで埋めつくさんばかりの観客だった
千切れそうなほどに旗が振られ､地鳴りのようにｼﾞｭﾋﾞﾛｵｰﾚが響いていた
どういうことか分からずに呆然とする前田の背中に､聞き覚えのある声が聞こえてきた
｢ﾘｮｳｲﾁ､ｱｯﾌﾟだ､早く行くぞ｣
声の方に振り返った前田は目を疑った｢ふ･･･福西さん?｣
｢なんだﾏｴ､居眠りでもしてたのか?｣｢な･･･名波さん?解説は？｣
｢なんだ前田､かってに名波さんを引退させやがって｣｢奥さん･･･｣
前田は半分ﾊﾟﾆｯｸになりながらｵｰﾛﾗﾋﾞｼﾞｮﾝを見上げた
GK:ｳﾞｧﾝｽﾞﾜﾑ DF:鈴木、田中、大岩 MF:福西、服部、名波、藤田、奥 FW:中山、前田
暫時､唖然としていた前田だったが､全てを理解した時､もはや彼の心には雲ひとつ無かった
｢勝てる･･･勝てるんだ!｣
高原からｽﾊﾟｲｸを受け取り､ﾋﾟｯﾁへ全力疾走する前田､その目に光る涙は悔しさとは無縁のものだった･･･
翌日､ﾍﾞﾝﾁで冷たくなっている前田が発見され､吉村と村田は病院内で静かに息を引き取った