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(つづき)
小学校低学年の子供を持つ父親(ってことは、30代か?)が、午後7時に帰宅しているという
こと自体、かなりヤバい事態だという見方もある。なるほど。そうかもしれない。
午後7時に帰宅しているパパは、テレビを買えないパパかもしれない。というよりも、パパになる
ためのハードルを越えるためには、そもそも、それ以前に、7時に帰宅するような仕事ぶりを
改めていなければならないのかもしれない。とすると、この婚活と球活のダブルバインドは容易には
解消できない。ゴールデンにナイター見てるみたいな男と結婚したいと思う女を見つけてくるためには、
まずタイムマシンを開発せねばならない。おそらくそういう次第になる。
パパがニートであると否とにかかわらず、子供が野球を面白い競技だと思うようになるまでには、
それなりの時間がかかる。単にルールを把握しているだけでは足りない。
たとえば、同点で迎えた七回裏一死カウント1-2の状況で、一塁ランナーが俊足である時、
次に投じられるべき投球がどんな種類のボールであるのかについて、観戦者の脳裏に戦術的な
常識が備わっているのでなければ、そもそも推理が発生しない。と、推理と観察のゲームである
野球の醍醐味は、彼には味わうことができない。ことほどさように、野球には教養が要る。
「ん? ヤバい。これは打たれる」
「どうしてさ」
「見ろ。マキハラの顔がラクダになってる」
「確かに。クチがモゴモゴしてるな」
「ラクダ化したマキハラは打たれる。これはオレが長年の観察から得た真理だ」
「ほら打たれた。無駄に唾を飲むのはこれすなわち棒ダマの前兆。覚えとけよ」
(つづく)