09/08/25 17:45:10 0
(つづき)
「あれれ? 今のはアウトじゃないの? 三振したのに」
「あれは、振り逃げ。特別なルールだよ。キャッチャーがボールをこぼしたら、その間に、
三振したバッターは、一塁まで走ることができる。で、キャッチャーがボールを拾って一塁に投げて、
間に合わなかったらセーフなんだよ」
「振り逃げ」や「ヒットエンドラン」や「犠牲フライ」や「ボーク」など、それぞれに難解で、
実戦の中でないと説明不能な様々の例外則を、一通りアタマに入れないと、野球はわからない。
で、その、野球のヤマほどある例外則のいちいちを、父は子に伝えたのである。野球中継の
こちら側にはそういう言葉のやり取りがあり、また、父と子のキャッチボールでは、言葉以上の
何かが交換されていたものだ。
が、平成の父親であるわれわれは、もはや、子供にルールを説明しない。
というよりも、できない。そもそもリビングルームのテレビが、野球を映していないからだ。
野球は、パパの書斎(っていうか、「巣」だが)の小型テレビの画面に追いやられている。
そういうふうに各自が思い思いの番組を見るのが現代の風潮で、この図こそが
平成の家族の肖像なのである。
私は良い悪いの話をしているのではない。映らないものは映らないのだし、できない話はできない。
それに、今の時代、いったい誰が子供にナイター観戦を強要できる? できないだろ?
だってテキは毛嫌いしてるんだから。
仮に強要みたいなことができるのだとしても、それは小学校低学年までだ。
つまり、小学校の5年生に上がる前にきちんと洗脳しておかないと、子供を正しい野球ファンに
することはできない。そういうことだ。
(つづく)