10/05/07 20:00:46 qBdu9ulF0
(つづき)脚本家のことば…浅野妙子
愛することを求めて疼いていた希和子の心が、
ベビーベッドに寝ている薫を見た瞬間に、スイッチが入ったように
薫に向かって愛を放射し始める―そういう心の動きが、
私には理解できるような気がしました。
角田光代さんの原作が高い評価を得ているのも、
その愛のありようが、人の心をうつからだと思います。
今回、この原作を脚色するチャンスを得られたことは、
私にとって、大きな喜びでした。
「八日目の蝉」は、母と娘の物語ではありますが、
希和子と薫のラブストーリーのつもりで私は書きました。
希和子の薫への愛は、それほどに純度が高く、いつか来る終わりを予感して哀しく、
片思いにも似た切なさに溢れています。
そして、その片恋が、最後にひっそりと、まるで生きてきたご褒美のように
彼女の気づかないところで報われる美しい瞬間も、ここには描かれています。
どんな寂しい人生も、愛すればそこに光が差すと教えてくれているような、
この優しい作品が私は大好きです。