08/07/25 16:03:03.62 qK8BEG/m0
暑さのせいで僕の頭は少々おかしくなったのかもしれない。
目を擦ってはみたが、どうも僕以外に人がいるように見える。
「何ぼやっと突っ立っているの」
ああ、どうやら本格的に僕はおかしいらしい。
懐かしい声が聞こえる。
「僕は疲れているのかな」
「暑いからね」
返答のないはずの独り言に言葉が返ってくる。
目をつぶって額に手を当てる。
熱が出ているわけでは無さそうだ。
そうして考えていると、ひんやりした感触が頬を襲った。
「冷たい物でも飲んでゆっくり休んだら?」
そう言って彼女は僕の頬にペットボトルを押し当てて笑っていた。
「ああ、ありがとう。」
僕は渡されたそれを受取りながら、なんだか懐かしく感じ嬉しくなり笑みが零れた。
「私が魔法をかけてあげようか」
彼女が好きだった言葉、変わらぬ笑顔。
僕が好きな彼女のまま、そこで笑っている。
「明日目が覚めたら、きっとお兄ちゃんは幸せになる。私を忘れて。」
「忘れるはずないだろう」
そう言ってはみたものの彼女があまりに綺麗に笑うもんだから、それ以上反論出来ずにただ見とれていた。
きがつくとそこにはもう妹の姿は見えない。
やっぱり暑さに狂わされていたのだろうか。
どこか寂しい気持ちをぬぐい切れず手元を見るとあるはずのないメロンソーダ。
網戸のはまった窓を見ればすっかり日は暮れて優しい暗闇が漂っている。
明日は妹に会いに行こう。
彼女が好きだったメロンソーダを沢山買っていこう。