15/09/05 16:24:02.89 7dbrCi8S.net
部屋へのセッティングは、この大きさのエンクロージュアともなると、そう自由にはいかない。
壁から離すにも限度がある。部屋全体の使い勝手や、見た眼のバランスを無視するのは
僕の考え方からはずれる。その結果、部屋の正面の壁面の左右コーナーに、このエンクロージュア
が居座る以外には考えられないのである。
とに角、エンクロージュアのセッティングのポジションは、もう20年の経験で、これ以外にはないのである。
そうなると箱の構造強化、床と置台によるコントロール、そしてイクォライザーによる調整という手段
を総合させて、質と量を整えるほかにない。一番良い方法は、壁から40cm離し、左右のコーナー
からも30cm離すことであることは実験上確認しているのだが、そうすることは部屋の使い方として
僕には耐えられないことなのだ。いくらオーディオが好きでも、また、僕だけのリスニングルームだから
といっても、すべてを音中心にするわけにはいかない。
きっとみなさんもこういう経験がおありであろう。本当は、別に実験室が欲しいのだが、いくら職業
とはいえ、そう自由は利かない。この部屋は僕の多目的な仕事場であり、遊び場であるから
諸条件の妥協点を求めざるえないのだ。そしてまた、それが家庭でのレコード音楽再生の
バランス感覚だとも思うのである。
ステレオ誌1992年3月号 菅野沖彦「今月の2000文字」より抜粋