16/02/14 18:24:40.43 CAP_USER.net
これまで、自治会、働く現場、学校で学ぶ子どもたちの声などを頼りに共に生きる社会のあり方を探ってきました。
最終回は、20年以上前から外国の人々と暮らしてきた団地を訪ねます。
アンケートに寄せられた、海外で暮らす日本人の声、日本に暮らす外国人の意見などから、そこ
にある見えない壁をどう越えていくかを考えます。
■歩み寄り、慣れと辛抱 神奈川「いちょう団地」
いただいたデジタルアンケートの回答の中に、神奈川県の「いちょう団地」に触れたものがいくつかありました。記者が団地を訪れ、住んでいる人々に聞きました。
中高層の建物がそびえ立つ神奈川県営いちょう団地の敷地内には、中国語やベトナム語、スペイン語など6カ国語の看板が立っています。
「生活雑音に注意しましょう」「ゴミは決められた日の朝に出しましょう」。
横浜市泉区と大和市にまたがる団地には、20年以上前から外国人が住むようになり、昨年4月には約3300世帯の2割に達しました。
当初はベトナムなどのインドシナ難民が大半でしたが、現在は様々な国から来た人々が暮らします。
「最初は外国の食べ物のにおいも嫌だったし、南米の女性の露出の多い格好に目が点になった」と、大和市側の連合自治会長、遠藤武男さん(74)。
自治会にも、「ゴミ出しのマナーが悪い」「ベランダに生肉を干している」など、様々な苦情が寄せられたといいます。
外国人にも戸惑いはありました。15年前から住み始めたボリビア出身のテルヤ・カティウスカさん(41)は、「誰に聞いていいかもわからないまま、『ちゃんとやりなさい』という感じだった」。
その前まで暮らしていた沖縄では、言葉が通じなくても話しかけてくる人が多かったが、あいさつすら返ってこないことも。「誰でも失敗するのに、日本は失敗したらチャンスをあげない感じ」
自治会内には、「外国人のために何かをする必要はない」という意見もありましたが、遠藤さんは「どちらかが歩み寄らないと解決はできない」と感じました。
料理やダンスのイベントを始めたのが約10年前。交流が進み、顔見知りになると、大きなトラブルは減っていきました。
「慣れも大切。今では食べ物のにおいがしないと寂しいし、南米流にほおをつけてあいさつもする。明るさにも元気づけられる」と遠藤さん。「でも、時間にルーズでイライラさせられること
もあります。辛抱も必要」と苦笑いします。
ただ、自治会の高齢化が進み、最近は催しの開催が難しくなっています。自治会に参加する外国人はほとんどいません。
横浜市側の連合自治会の八木幸雄会長(71)は「自治会もいずれ日本人だけではやっていけない時代が来る。参加しやすい組織づくりも考えないと」と話します。
20年ほど前から団地などに住む外国人向けに日本語教室や生活相談を続ける団体「多文化まちづくり工房」の早川秀樹代表は、「以前と比べると、お互いの距離は近づいた。
でも、のたうち回りながら試行錯誤している状態」と話します。子どもを通じた交流はあっても、大人同士はまだまだ。
「顔の見える関係を作り、行政や学校も含めてつながることが大切。
騒音やゴミ出しなどのトラブルも、子どもたちの教育や社会的孤立を防ぐための仕組みといった課題も、外国人特有ではなく、すべて日本人の課題と通じる」といいます。
いま必要だと感じているのは、企業とのつながりです。言葉もわからないまま雇われ、日本語を学ぶ余裕もない人も少なくありません。
不景気になれば真っ先に首を切られてしまう。「コンビニ弁当も、そういう人たちが作っている。利益を出している企業の側にも、もっと関心を持ってほしい」と話しました。(仲村和代)
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