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台湾の国家安全会議の元研究員である蘇紫雲が、4月14日付タイペイ・タイムズ掲載の論説で、アジアインフラ投資銀行(AIIB)は中国の地政学的戦略、
特に、鉄道戦略を推進する手段であり、それに台湾が参加することには慎重であるべきである、と述べています。
中国は、外交、経済、海外市場進出を含む、3つの柱からなる戦略目標の一部として、AIIBを設立しようとしている。AIIBは、中国の札束外交の強化に役立つ一方、中国のビジネスが世界に浸透する助けとなり得る。
AIIBの加盟国には、鉄道、道路、発電所、水利施設を建設できるよう、融資されることになろうが、中国以外の国々は、中国の低コストのために、建設業の分野で中国と競争することの困難さに気づいている。
これが、日米等がAIIBに参加したがらない理由の一つである。台湾にとり、加盟により得られる利益はごく限られており、政府は軽々に資金を出す前に熟考すべきである。
中国は、ありうべき海上封鎖を突破すべく「一帯一路」構想を打ち上げたものと判断される。これは、ランド・パワーがシー・パワーに対抗するとの考え方である。
大陸間高速鉄道が、中国と欧州、インド亜大陸を結ぶ「ニューラル・ネットワーク」として新シルクロード経済ベルトに貢献し、インド洋における新たな港湾の確保は、中東からの原油の直送、東南アジアの市場や資源との結びつきに繋がる。
それにより、日米に対する中国の競争力が高まろう。
経済的には、AIIBの主たる業務は鉄道建設になろう。高速鉄道を外交及び経済問題と結びつけようとする中国の努力は、既に実を結びつつある。トルコ初の高速鉄道が昨年7月に開業したが、その主たる事業者は国営の中国鉄道建築総公司(CRCC)である。
中国の高速鉄道に関心はあるが莫大な建設資金を払う余裕のない国に対して、中国はこれまで、しばしば高速鉄道と資源の交換をしてきた。それは、今後60年以内に中国の天然鉱物資源の産出が枯渇しそうだからである。
中国は、取引に融資を与えることでロシア初の高速鉄道建設を勝ち取り、「日中鉄道戦争」の第1ラウンドで勝利した。これは、AIIBのビジネスモデルとなろう。
100年前、ドイツが初めて「鉄道戦略」を提案し、鉄道の機動性に頼って、東のロシア、西のフランスに対抗しようとした。1世紀後、中国は、鉄道戦略を、外交、経済、資源安全保障と統合し、この戦略を強化しようとしている。
中国の「高速鉄道外交」がAIIBの中核に置かれ、AIIBは、鉄道網を他国に拡大する際の主たる資金源となろう。
台湾は、限られた資金を、中国が支配する、機構と利益の不明確なAIIBに投ずるべきか、それとも、日米によるアジ開銀のような成熟した多国間開発メカニズムに投ずるべきか。答えは自明であろう、と指摘しています。
出典:蘇紫雲‘Rejecting the AIIB is a no-brainer’(Taipei Times, April 14, 2015)
URLリンク(www.taipeitimes.com)
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AIIBの設立にあたって参加国メンバーにはどのような資格、条件が必要か、という点はいまだ極めて不透明です。台湾の場合はその典型的な例です。
台湾の馬英九政権は3月の締切日の直前に、創始国メンバーとなる意図があることを中国側の準備委員会に内報し、それに対し、中国側は台湾を創始国メンバーとは認めず、いずれ「適当な名称」による参加を検討したいと回答したと公表されています。
他のメンバー国は、複雑な台湾の参加資格などの問題に関わりたくないのでしょう。中国が独断で一方的に決めたことに対し、異論をさしはさむ様子はありません。
こうした状況は、今日のAIIBの設立に当たり、如何にその決定過程やメカニズムが曖昧かつ不透明であるかを如実に示すものとなりました。
本論評は、AIIBの参加について、台湾が得られる利益は「出資額に比し、ごくごく限られている」として慎重であるべきである、と述べており、その通りなのですが、
今後の焦点は、参加の際の名称としてオリンピックやAPECで使用されているのと同一の名称を用いるかどうかの問題に移っていく可能性があります。
URLリンク(wedge.ismedia.jp)
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(>>2以降に続く)