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クルーズ船から軍艦島を撮影する外国人観光客ら。世界遺産「勧告」の効果か、客足が途絶えないという
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軍艦島に上陸し、ガイドの説明を聞く観光客
九州・山口を中心に、8県23施設からなる「明治日本の産業革命遺産」の世界文化遺産登録が今夏にも決まる見通しとなった。だが、韓国政府は「強制労働から目をそらし、産業革命施設を美化するものだ」(尹炳世=ユン・ビョンセ=外相)と反発する。
長崎市沖の端島(はしま)炭坑(通称・軍艦島)と高島炭坑(高島)を訪ねると、地元住民からは「理不尽な話だ」と韓国の対応に怒りの声も上がった。
盛り上がる香港人団体客
5月10日昼の長崎港。登録機運を高めるのぼり旗がはためく。港から西19キロにある「軍艦島」に向かう「マルベージャ3」(定員221人、やまさ海運)に乗船した。
船のスタッフ(66)は「例年に比べると、ゴールデンウイークが終わっても、客足が途絶えないんです。世界遺産効果といえるでしょう」と語った。
船内には外国人観光客も目立つ。特に十数人の香港人団体客は、ひときわ賑やかだった。三菱重工業長崎造船所の脇を通った際には、ソニー製「α7」やキヤノン製「EOS6D」などプロ仕様のカメラで次々と写真に収めた。
軍艦島は、長崎ツアーの人気スポットになっているという。中東や欧米からの人々もいた。
出港から50分ほどで、軍艦島に近づく。崩壊しかけたビルが目に入ると、歓声が沸き起こった。
静かな波間を進み、船が着岸すると、乗客は3グループに分かれて上陸した。記者は英語ガイドが付き添う外国人客グループとともに歩いた。
廃虚となったビル群の周囲を巡ると、子供の頃に見た映画「天空の城ラピュタ」のワンシーンが思い出され、気分が高まった。
現場の感覚は?
国連教育科学文化機関(ユネスコ)の諮問機関、国際記念物遺跡会議(イコモス)は5月4日、軍艦島など産業革命遺産について世界文化遺産に登録するよう勧告した。
これまでイコモスが勧告した施設で、登録されなかった事例はない。
また、登録の可否を正式決定する世界遺産委員会の21カ国は、インドやマレーシアなど、どちらかといえば親日的な国が並ぶ。
唯一の例外は韓国だろうか。委員国でもある韓国政府は軍艦島を含む7施設について「朝鮮人労働者が苦しんだ歴史を持つ」(韓国外交部の魯光鎰=ノ・グァンイル=報道官)と主張する。
韓国のマスメディアも「韓国政府は『強制徴用された場所が含まれている』と反発、新たな歴史認識論争に発展している」(朝鮮日報日本語版サイトより)などと報じた。
これに対し、菅義偉(すが・よしひで)官房長官は8日午前の会見で「専門家機関(イコモス)が、1850年から1910年の間の産業遺産として普遍的な価値に着目し、遺産にふさわしいと認めて勧告したのだから政治的主張を持ち込むべきではない」と反論した。
この“歴史認識論争”は、現場ではどうだろうか。
軍艦島のガイドの1人によれば韓国人の姿はほとんど見ないという。
このガイドは「彼らの主張は理不尽ですよ。韓国は当時の国際情勢の中で日本に(合法的に)併合された。炭鉱では日本人も台湾人も、ともに働いた。韓国だけがなぜ文句を言うんでしょうか」と語った。
今回の産業革命遺産は、極東の日本という国が、近代化に成功し、欧米列強と肩を並べるまでに成長した歴史を振り返るものだ。韓国が主張するような旧民間人徴用工問題とは、年代ばかりでなく、歴史的な位置付け、背景も異なるといわざるを得ない。
昔は遊郭もあったけど…
明治日本の産業革命遺産23施設のうち、韓国側が強制徴用された朝鮮人が働いていた、と主張するのは7施設ある。その主張によると約4万人の朝鮮半島出身者が働かされたというのが、長崎港から南西に15キロ離れた高島だ。こちらも炭鉱があった。
軍艦島から長崎港に戻り、高島に向かう船に乗り込んだ。出発時刻が遅かったためか、乗客はまばらだった。
高島炭坑の主力「高島北渓井坑跡」は、国内で初めて蒸気機関を利用して海底炭田を採掘するという、当時の最新技術が使われた。採掘量は1日300トンを記録したという。
高島港からバスで5分。炭坑の一つ「北渓井坑跡」には人っ子一人おらず、記者もいったん、通り過ぎるほど寂しい景色だった。
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