15/04/06 12:26:33.40 .net
政府は、中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)に創設メンバーとして参加する表明を見送った。
組織運営や融資の審査体制への不安が理由だ。AIIBの概要が固まる6月末まで、参加するかどうかを
検討する。
世界第2の経済大国となった中国は、先進国主導の戦後の国際経済秩序を変えようとしている。座視
するのではなく、戦略的関与が必要だ。日本は自主的にAIIBに参加し、内側から国際基準に基づく
公正な運営を働き掛けていく道を検討すべきだ。
米国は中国の動きを現秩序への「挑戦」と警戒して参加を拒否、安倍政権も歩調を合わせた。しかし、
英国、ドイツ、フランスなど欧州の先進国を含む約50カ国・地域が参加する見通しとなり、日米は孤立
する形になった。
AIIBはアジアの途上国や新興国に鉄道や道路、発電所などインフラの整備資金を融資する国際金融
機関。中国は中央アジアからロシア、欧州へと通じる地上ベルトと、東南アジアからインド、中東を経て
欧州へ向かう海上ルートを「一帯一路」と名付け、現代版シルクロード経済圏を建設する壮大な構想を
持つ。
AIIBはこの構想の実現に向けて各国にインフラ建設資金を融資する。資本金は当初約500億ドル
(約6兆円)で、その後1千億ドルに増やす。出資比率は中国が最大となり、本部は北京に置く。
これまで日米主導のアジア開発銀行(ADB、資本金約1600億ドル、67カ国・地域加盟)がアジアの
途上国に融資してきたが、膨大な需要に応え切れていない。ADBは年間約7千億ドルのインフラ投資
が必要と試算するが、融資額はその50分の1以下だ。
AIIBに参加を表明したアジアの国々はより多くの融資を期待。欧州先進国はインフラ事業の受注と
中国との経済関係の強化を狙った。日米は中国の求心力を重く受け止める必要がある。
また、中国には先進国主導の金融秩序への不満がある。新興国の発言権を高める国際通貨基金
(IMF)改革は米議会の反対で実行されず、世銀やADBへの中国の増資も進まない。
中国が国益だけを追求してAIIBで恣意(しい)的な運営を行わないか、懸念はある。例えば、環境や
資源保護を無視したプロジェクトの推進や、中国と政治的に対立する国への差別的な待遇などだ。
麻生太郎財務相はAIIB参加の条件として「公平なガバナンスの確保や理事会による個別案件の承認」
を挙げた。これらは中国の暴走を防ぐために非常に重要だ。しかし、こうしたルールづくりへの参画は
外部からでは難しい。戦略的な思考の下、懐に入って影響力を行使し、公正な運営を促す方法が考え
られる。
先進7カ国(G7)のトップを切って英国が参加を表明して以降、インフラ事業の受注を期待する経済界
だけでなく、政府、自民党内でも参加を求める声が増えた。日本はアジアの国であり、米中に次ぐ第3
の経済大国。ADBを通じた半世紀近い融資の経験を生かし、AIIBにも積極的な関与ができるだろう。
併せて日米欧は中国など新興国の声を反映できるようIMFを改革し、時代の変化に合わせた金融秩序
の調整に真剣に取り組む必要がある。
ソース:山陰中央新報 '15/04/05
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