14/11/17 12:35:23.63
つづき
まさに池上の指摘は、いまのメディアが抱える最大の病理を鋭く指摘したかたちだが、しかし、池
上はこの対談で、新聞やテレビ、週刊誌だけでなく、ネットについても鋭く切り込んでいる。
〈嫌韓だけでなく、かつては絶対に使ってはいけないとされた差別用語が臆面もなくネットには飛び
交っていますね。(中略)書き放題のネットを唯一の情報源としている人たちには、出版界や新聞な
どとは全く別の"常識"が生まれているのではないでしょうか。〉
〈ある大学で講義をしたとき、レポートの裏に学生の質問が書いてあって、「日本のメディアはみん
な在日に支配されているというのは本当ですか」と。かなりの部分の若者たちがそうしたネット言説
を信じているんですね。〉
こうした現状認識を開陳した上で、ネットにはびこる嫌韓・反中、そして日本の誇りという言葉の
裏にあるデタラメを暴きだすのだ。
〈歴史的な発展段階で通る過程において起きることを、韓国だから中国だからこうなんだといって叩
いている。ちょっと前は日本だって同じだったよ、という歴史も知らないまま日本の誇りを持つとい
うのは、非常に歪んでいます。〉
〈「昔はよかった」とか「取り戻そう」というのも、その「昔」とは何なでしょうか。日本はいま街
にゴミを捨てる人もいないけれど、一九六四年の東京オリンピックの前に一大キャンペーンが行われ
るまでは本当にゴミだらけで、青山通りから渋谷は、風が吹くとゴミが舞っていた。〉
〈昔から日本は清潔好きで、行列はちゃんとつくる優等民族だという発想がこわいですね。民族の問
題じゃない。発展段階や政治体制の問題なのに。〉
そして、侵略戦争や慰安婦問題についても、はっきりと日本に責任があることを明言したのである。
〈国益について言うと、ドイツは七〇年間「ナチスのドイツといまのドイツは違う」と言い続けてき
て現在がある。日本が慰安婦問題で「昔の軍国日本の行為です。平和国家日本は違う」ときちんと言
えなければ、昔の日本は悪くなかったと主張していると受け止められるでしょう。そういう大局観が
ないと、それこそ国益を損ねますね。〉
〈だって、何百万人もの日本人を死に追いやった責任が誰かにあるわけでしょう。ドイツは経済的に
発展するためにも謝罪をし、周辺の理解を得なければならなかった。さらには、自国の通貨マルクを
捨ててでもユーロを選ぶことによって信頼を勝ち取るしかなかった。そこまでのことを甘受している
ドイツと、周りを悪しざまに言うことがうけている日本と、相当差がありますね。〉
どうだろうか。いくら発言の舞台が岩波の「世界」だとはいっても、池上は特別、左派的な論客で
はない。しかも、テレビや大手新聞などで活躍しているメジャーな存在である。