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『被差別部落一千年史』(岩波文庫/高橋貞樹著/大分県出身)
P39
特殊部落の起源については、人種起源説と職業起源説の二種があるが、おそらくは古代の
被征服民族にして賤業を課せられた奴隷が、時代の経過とともに一定特殊の社会群に変じ、
さらに賤業を営むものが穢多族であるという観念に変わったものであろうと思惟する。
この推定には、最も多くの真理を包摂する。部落の遠き祖先は、原始の時代に遡る。特殊
部落の起源を考えるには、上代日本の被征服種族たる奴隷、不自由民、従って賎民について
見なければならぬ。しかしながら、当時における被征服種族が、穢多なる名をもって呼ばれ
ていたのではない。当時の奴隷群、賎民のすべてが、後代の穢多となったのでもない。ただ
特殊部落民大多数の起源は、遠く古代日本の奴隷群にまで遡り得るのであって、穢多族とい
う明白なる階級的存在を有するに至ったのは、遥かに下がって後代のことである。