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メンジー・チン「最低賃金引き上げのマクロ経済的な意味/信念と計量経済学:最低賃金の巻」
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CBOの中間推計に関して、このゴールドマン・サックスの報告書の著者らは次のように述べている。
我々の考えでは、2つの理由からCBOの推計は妥当な推計値の上限側にやや偏っている可能性が高い。まず一つ目の理由として、
別紙3にあるように、多数の経済研究が統計的に有意な効果はないとしていることがある。またもう二つ目として、需要効果がとりわけ
叫ばれるのは、政策金利が既にゼロ近いにも関わらず経済が未だ大きく沈滞している現状においてである。結果として、支出に回す
所得の割合が比較的高い傾向にある低賃金労働者の所得を上昇させることは、必然的に通常時よりも(最賃引き上げによる労働需要
減少を相殺する)大きな効果をもたらすのである。
つまり、金利がゼロ下限にありかつ不景気である時には財政政策の効果が大きくなるのと同じ理由から[1]、最低賃金の上昇による
労働者所得の拡大は大きな効果を持つ場合があるということである。
私は今学期計量経済学を教えており、最低賃金研究におけるいくつかの優れた研究が、内生性をコントロールするより近年の(が、
もはや新しいものではない)アプローチとどのように一致するのかを見てみるのを興味深く思っている。とりわけても、ニュージャージーの
最低賃金引き上げを研究したカード&クルーガー (AER, 1994)のような準自然実験の使用がそうだ。この事例において、彼らは差分の
差アプローチ(DID)を用い、最低賃金導入後のニュージャージー州とペンシルバニア州の間の雇用成長の差がどのように変化したかを
検証した。カードとクルーガーは、ニュージャージー州が最低賃金を引き上げた際に雇用成長に少々の上昇があったことを発見した。
ゴールドマン・サックスの報告書において述べられているように、このところ多くの州が最低賃金率の引き上げを行っており、
これらの変化は一連の準実験となる。早期の結果についての彼らの評価は次のとおりだ。
(略)1月の州レベルでの給与データは、州レベルでの最低賃金引き上げによるマイナスの効果を見せてはいない。
直近での平均と比較して、2014年の年明けから引き上げを行った州のグループは、引き上げを行わなかった州よりも
実際には優れた結果を残した。これはほんの1か月間のデータだけではあるものの、全国レベルでの最低賃金の引上げに
よるマイナスの効果は、それが存在するとしたところで標準的な変化よりも比較的小さいものである可能性が高いことが示唆される。
著者らはまた、最低賃金上昇のインフレに対する効果についても1990年以降のデータを使った事例分析を行っている。
彼らは、個人消費支出によるインフレ率に対する目に見えるレベルでの効果についての証拠は何ら発見できなかった。
彼らの最良推計値は、10.10ドルへと最低賃金を引き上げてから3年が経過した時点で、物価水準に0.3%の上昇があるというものだ。
雇用に対する影響はごくわずかな一方で、賃金の上昇は多くの人に対して起こるため、低賃金労働者への分配率の上昇が促される。
格差への影響に関する懸念が口だけのものでないのであれば、最低賃金はそれに取り掛かる端緒としては妥当なものだと思われる。