ハルヒ「ちょっと!かがみ!」☆at NEET4PINK
ハルヒ「ちょっと!かがみ!」☆ - 暇つぶし2ch736:名無し@18歳未満の入場禁止
09/03/08 19:41:49 TPoWETC2O
「そうだ。今度、焼き芋するから友達誘っておいで」

ゆーちゃんに観戦させながらお父さんとゲームしてる時に、お父さんが突然言い出した。
もうすぐ春だと言う時期に焼き芋は季節外れだと思うんだけど。

「焼き芋ですか?」
「こんな時期だというのに最近また落ち葉が増えてねぇ」

ずいぶんとひねくれた落ち葉だねぇ…なんて思いつつ、こっそりこのひねくれ者に感謝もしていた。
誘う友達はもう決まっていたから。

「ながもん!ながもん!」
音も無く顔だけをこっちに向けるながもんこと長門有希。
「ながもん」なんて呼んでるけど、実はそこまで話したりはしてないんだよねぇ。
ながもんって筋金入りの無口キャラだから、さすがの私でもなかなか会話が続かないんだよ。

「今度、家で焼き芋するんだ。よかったらながもんも来ない?」
「焼き芋…」
「そっ。季節外れだとは思うけど、こんな時期に降って来たひねくれた落ち葉にお父さんが困っててね」
「いく…」
「オッケー。じゃあ日時が決まったらまた連絡するねぇ」
「分かった」

737:名無し@18歳未満の入場禁止
09/03/08 19:52:14 TPoWETC2O
そして、家の庭に茶色の小山が出現した焼き芋の当日。

「お邪魔します」
「おーいらっしゃい。君が長門さんだね?話はこなたから聞いてるよ」
「そう…」
どんな話だろう…とかは思わないんだろうなぁ。ながもんだし…
「呼んできたよー!」
「おー」
ゆーちゃんはみなみちゃんを呼んできた。ひよりんは同人誌の締め切りが近くて来れないらしい。

「じゃあ、火を付けるよ」
落ち葉は順調に燃え上がり、芋は旨く焼けそうだ。
「ねぇながもん。いまさらだけど、焼き芋って好き?」
「…食べたことが無いから分からない」
「食べたことがないんですか?もったいないなぁ」
「美味しいですよ」
「そう…」
再び焼かれていく芋に視線を向けるながもん…

「…楽しみ…」

数ミリだけ微笑んでそう呟いたながもんが、とてもかわいく見えた…

738:名無し@18歳未満の入場禁止
09/03/08 20:05:04 TPoWETC2O
「どう?ながもん…」
「…とてもおいしい」
「よかったー。どんどん食べてよ!」

そっからのながもんは凄かった…
無言で次々と食べて行き、どんどん量産される焦げた銀紙と濡れた新聞紙…

「す…凄い…」
「ふ…太らないのかな?」
「た…たくさん食べるねぇながもん」
「もうやめた方がいい?」
「いやいや、たんと食べておくれよ。お父さーん、まだ芋あるよねー?」
「おーう、今次のを焼いてるぞー」

こっから、ながもんの無双がはじまった…
いや、私も少しは食べたんだけどね。

……………

「じゃあねぇながもん。気を付けてね」
「うん…」
後片付けはお父さんに任せて、私はながもんを見送る。
ながもんは帰ろうとしたけど、また立ち止まった。

「どしたの?」
「…今日は、楽しかった…また誘って欲しい…」
「………!」
少しだけ…動揺した…
「…もちろんだよ。また遊ぼうね!」
「うん」
…ながもん誘ってよかったな。また一緒に食べたいな…なんて考えていたらおなかが空いてきたよ

739:名無し@18歳未満の入場禁止
09/03/08 22:44:02 9W5b38770
ながもんが高速で芋ぱくついてる横で
こなたがぐいぐいっとお、芋を押し込もうとしてる構図を
つい想像して萌えた俺がいる。

740:名無し@18歳未満の入場禁止
09/03/08 23:30:41 ds+7B+y70
てs

741:名無し@18歳未満の入場禁止
09/03/09 00:08:28 Es9MapXD0


「空見たことか」


カーテンの隙間から注がれた太陽の光が、朝の訪れを告げる。
こんな清々しい朝は小鳥の囀りなんかで爽やかに目を覚ましたいところだが、
俺が深い眠りから覚醒させられた直接的な原因はというと、けたたましく鳴り響く目覚まし時計の音だった。
もちろん時計は自分の仕事を全うしようと懸命にベルを鳴らしており、その仕事を与えたのは何を隠そうこの俺だ。
それに対して文句を言うのはおかしな話だというのはよーく分かっている。
しかし、さながら海の底に沈んでいるかのような深い眠りについていたというのに、
耳の割れんばかりの甲高い音によって一気に海面近くまで引き上げられて、不快感を抱かぬわけがないじゃないか。
朦朧とした意識の中、布団からノソノソと手だけを出し、目覚まし時計を探す。
その手はクソ五月蝿いベルを止めるという使命感に突き動かされているだけで、
それ以外俺の身体の一切は、まだ寝ているも同じ状態だった。
結局二度寝を決め込んだ俺が再び目を覚ましたのは、それから20分ほど経ってからだった。
ならば毎晩毎晩目覚ましをセットする意味が無いような気になってくるが、もし何もせずに眠っていたとしたら、
きっと俺はどんなに強力な睡眠薬を服用した人よりも長い時間ベッドに横たえていたことだろう。
今となっては下腹部を襲う激痛と共に俺の眠りを覚ましてくれていた存在が、逆に有り難く思えてくる。
彼女……我が妹とは久しく会っていないが、少しは成長してくれたのだろうか?

誰もが不景気だ不景気だと嘆くこのご時世にあっても、大学生というのは結構気楽なものだ。
熱心な学生達は如何わしい葉っぱを売りさばいていると聞くが、俺はそんなことはしない。
今日は授業が半日で終わり、後の半日はもう休みのようなものである。
校内の図書館で勉学に励むも良し、暇つぶしにどこかへ出かけるも良し。
そんなのは疲れるだけだと早々に帰宅して寝るも良し。
木の枝のように分かれた選択肢の中から俺が選んだのは、
飯を食うにはまだ早いと、適当に近くの公園を散歩するというものだった。
ご老人のような暇のつぶし方だが、特にこれといってしたいことも無い。
それに実際こうして公園を歩いてみると、結構楽しかったりするんだよな。
この公園は結構な広さを持っており、背の高い木々が風に揺られて、サワサワと涼しげな音を立てているし、
池の中では綺麗な斑模様をした鯉が悠々と泳いでいる。
遊具で遊ぶ子供達の楽しそうな声を聞いていると、幼かった頃の記憶が蘇ってきた。
しかしながら、こんなことをして心が安らぐとは、俺も年をとったのだろうか……。
「これじゃ本当に老人みたいだな」
苦笑いを浮かべながらふと空を見上げてみると、上空遥か38万キロの彼方に月が浮かんでいた。
模様までクッキリと見えるが、そこにウサギはいないようだ。
この模様、国によって様々な見方があるが、俺にはどこをどう見ても、
ウサギはもちろんのこと、カニにも本を読むお婆さんにも見えやしない。
夜空に浮かぶ星座もそうだ。
ただ星々を線で結んだだけで、やれ牛だ魚だと言い張るのは無理があると思うがな。
昔の人間は想像力が豊かというかなんというか……。
と、夢の無いことを思いながらしばらく月を眺めていたのだが、
間抜け面で空を見上げるのはちょっと恥ずかしい。
誰かに見られない内に視線を前方へと戻し、また歩き出す。
すると、とても懐かしく感じられる光景がそこにあった。
恐らくはサークルか何かだろう、三脚に固定されたカメラのファインダーを覗く男。
その横には、反射板を掲げた男が立っている。
カメラを向けられ、なにやら演技をしている様子の女性は、何かのコスプレをしているようだ。
誰だか知らないが、それを見た俺の脳裏には、超監督と書かれた腕章を付けた態度のデカイ女と
そいつに無理やりコスチュームを着せられ、オドオドと窮鼠のように震えている女性が浮かんでいた。
高校時代、俺達は文化祭で映画を撮るというハルヒの突発的な欲求に付き合わされることとなり、
果たして映画と呼んで相応しいのかどうかも分からん映像作品を作り上げたのだ。
その撮影中の光景も、ちょうど目の前で行われているものと大して変わらないようだ。
唯一にして決定的に違うことと言えば、演者のノリノリ具合であろう。
朝比奈さんは終始眉を八の字にして、今にも泣き出してしまいそうだったが、
俺の視線の先にいるコスプレイヤーからは、そんな様子は微塵も感じられなかった。

742:名無し@18歳未満の入場禁止
09/03/09 00:13:47 Es9MapXD0
>>741

思いがけない時に昔……といってもそこまで年月がたったわけではないが、
高校時代のことを思い出し、少しノスタルジックな気持ちになってしまった。
だがそんな俺の気も知らないで、俺の身体は悲痛な呻き声で空腹を知らせてきやがった。
別に鎧を身に纏って戦地に赴くつもりなどさらさら無いが、腹が減ってはなんとやら。
どれ、今日は喫茶店にでも行こうか。

そんなこんなでやって来たのは何処にでもありそうな佇まいの喫茶店。
今日の昼食は、決して不味くはなく、かといって美味いでもないクラブサンドと、
サイフォン式なんぞというカッコつけたコーヒーだった。
それらを軽く平らげ、長居は無用と店を後にしようと、コーヒー片手に新聞を広げる、
少し頭の薄いスーツ姿の男性の横をすり抜け、レジへと向かう。
グラスを拭いていたマスターが歩いてくるのを待ちながら、財布の中身を確認。
このスカスカで軽い財布を見ていると、自分が大学生なのだということを実感するな。

さて、現在一人暮らしをしている賃貸マンションに戻るにはまだまだ時間が早い。
どこか他に暇をつぶす場所はないかと、なんとなしに辺りを見回してみる。
数百メートル進んだところに、大きく「本」と書かれた看板が立っているのが見えた。
うむ、もてあました時間を消費するにはもってこいの場所だ。
他に行くところが無いというのも理由のひとつではあるんだがな。
トボトボと本屋さんの前までやってきて、自動ドアを抜け店内へ入る。
読みたい本があるわけでもなく、適当に店内をうろつき回っていた俺は、
小説の並んだコーナーに差し掛かったところである光景を目にし、はたと足を止めた。
……まったく今日という日はえらく昔のことを思い出す。

『街で知り合いを見かけたと思い声を掛けると、他人の空似でまったく違う人物だった』
誰しも一度くらいはそういう経験をしたことがあるだろう。
そうならないためにも、俺はあの人で間違いないという確信が持てないことには声を掛けないようにしている。
だからこそ、地面に置かれた鞄を足で挟み、小説を読み耽る女性に声を掛けることが出来ないのである。
確信が持てない理由というのは大きく2つあるわけだが、ひとつは俺がその人を『女性』と呼んだところにあり、
もうひとつはその女性の身体的な特徴にある。

曖昧30cm

いつだったか、俺と彼女との身長差をそう表したことがあった。
俺の身長は成人男性の平均と同じ170cmジャスト。
これといって取り柄の無い平々凡々な男は身長も人並み程度なのだ。
そして彼女の身長は、まさか俺より背が高いわけはなく140cmほどで、
小中学生と間違われてもおかしくないくらい子供っぽい外見をしていた。
その姿が今目の前にあるのなら、安心して声を掛けることができる。
だが、本を読む姿はどうみても俺より少し低いかぐらいの背丈で、
少女と呼ぶよりも女性と呼んだほうがしっくりくるし、
スレンダーという言葉がピタリと当てはまるスラっとした身体つきだった。
いくらなんでもあそこまで急激に人の身長は伸びないはずだ。
今にして思えば、高校時代彼女は毎日のように好物のパンを食べ、そのお供にと牛乳を飲んでいた。
にも関わらずウンともスンとも言わなかったあの身体が、突然変異的に急成長を遂げたとは考えにくい。
ただかろうじて共通点があると感じられるのは、その長ーい髪の毛くらいだ。
足まで届きそうな超絶ロングヘアーなのは変わらないが、背が高い分余計に長く、
さながら白や赤に染まった髪をグルグル回転させる歌舞伎役者のようだ。
しかし髪の長い女の子なんてのはこの世に五万と居るし、たったそれだけの理由で人物を特定することはできない。
俺はとにかく他に何か特徴的なところは無いかと、その女性をジッと見つめていた。
すると長いこと立ち読みをしていて首が疲れたのだろう。
「ふぅ」と短い溜息を付いて、その女性は首を上下左右に動かしはじめた。
そしてある程度首をほぐした後、ちらりと俺の方を眺めたかと思えば、
カトちゃん張りの2度見を決め込み、そのまま視線を固定させた。
「……」
目をパチクリさせるその顔を見ても、やはり俺は声をかけることが出来なかった。
ただ相手のほうは俺のことが分かったようで、泣き黒子の付いた口元をつり上げて微笑んだ。
その笑顔を見て、ようやく俺は『あの人で間違いない』という確信を得たのだった。

743:名無し@18歳未満の入場禁止
09/03/09 00:20:28 PPHkYkgu0
>>742

「いやぁビックリしたよ、まさかキョンキョンに会うなんてさ」
『女性』ことこなたの履いた靴の踵が地面に打ち付けられる音は、コツコツと弾むように軽快である。
本屋を後にした俺とこなたは、何を言うでもなく歩き出し、どういうわけか
俺が一人暮らしをしているマンションとは間逆の方向へ向かっていた。
ソワソワと落ち着かない俺とは対照的に、こなたはずっと前を向いて歩いている。
こなたの様子に、なんとなくこれからどこへ向かおうとしているのか分かったような気がしていたが、
それを尋ねてみることもせず、俺はただこなたの斜め後ろを歩いていた。
「どーしたの?」
俺の歩く速度が自分より遅いことに気づき、こなたはスピードを緩めつつ俺に尋ねる。
「いや、なんでもない」
「ふーん」
「それにしても……」
今横に並んでいるのがあのこなただとは本当に驚きだ。
ダーウィンもビックリの超進化ならぬ長身化といったところか。
きっとこなたの身体は成長のペース配分を誤ったのだろう。
「まぁ成長していないところもあるんだけどね」
自分の胸を撫でながら、照れた笑いを浮かべるこなた。
幼さの中にも若干大人びた印象を受けるその顔を見て、ふと考えを巡らせる。
あの頃のこなたと一緒に道を歩いていると、まるで……そう。
こうして道端に立っている『歩行者専用』をあらわす道路標識のようだった。
……ってそれは言いすぎだな。
それが今、文字通り肩を並べて歩いている俺達二人は一体どう見えるのだろうか。
「キョンキョンはどう見えて欲しいの?」
そうこなたに尋ねられて、少し言葉に詰まってしまった。
こなたがその質問を投げかけることの真意が、俺には分からなかったのかもしれない。
「さぁな」
「……あっそ」
当たり障りの無いように応えるも、俺とこなたの間に妙な沈黙が生まれる結果となった。
ただこなたの靴音が耳に入るだけだったが、こなたが足を止めたことで、それさえも聞こえなくなってしまった。
その姿は何かを物語っているように見えたのだが、残念ながら俺にはさっぱり分からん。
しばらく眺めていると、こなたは意を決したように短く息を吐いて、少し前方へ駆け出した。
そうかと思えば、数メートル進んだところで立ち止まり、髪を靡かせながら勢い良く振り返った。
「私んち、近くなんだ」
確かに身長は急激に伸びたし、顔立ちだってそれなりに変わっている。
だが目の前で俺の返事を今か今かと待っているのは、あの頃と同じ元気の良いこなただった。
「そうだな、寄らせてもらおうか」
こなたの嬉しそうな笑顔のずっと先にある空。
上空遥か38万キロの彼方には依然として月が浮かんでいる。
そこにウサギが居ようが居まいが、今の俺には関係ない。

744:名無し@18歳未満の入場禁止
09/03/09 00:26:02 HbJs4e0kO
支援

745:名無し@18歳未満の入場禁止
09/03/09 00:26:18 PPHkYkgu0
>>743

「さ、狭いけど上がって上がって」
こなたの住む部屋は、女の子にしては落ち着いていて質素だった。
普通一人暮らしをしている女の子のマンションと聞くと、華やかに彩られた部屋なんてのを想像するが、
こなたに対してそのイメージは当てはまらないようだ。
といっても女の子の部屋に入るなんてのはあまり経験しておらず、比べるものが少ないのだが……。
とにかくこなたらしいといえばこなたらしいが、決して女の子らしくは無い。
「いろいろ飾っても面倒なだけジャン」
「それはまぁそうだが、これは飾っても良いのか?」
ここにはこなた以外にたくさんの住人が居た。
主に漫画本が沢山並んだ本棚や、ラックに置かれたパソコン本体の上や、モニターの横。
その他ありとあらゆる所に、大小さまざまな人形が飾られている。
しかもただの人形ではない。
ナース服にスクール水着、さらにバニーガールまで。
いわゆる萌え萌え~な格好をした女の子達の人形である。
「せめてフィギュアって言ってよ」
ひどく偏った趣味のフィギュア達を飾るとは……。
何度も言うようで申し訳ないと思うがあえて言わしてもらう。
こなたらしいといえばこなたらしいが、決して女の子らしくは無い。
「色気がなくて悪かったね」
「別にそういうつもりで言ったわけじゃないんだがな」

ピィィィィー!

どこかで聞いた覚えのある汽笛のような音。
どうやら気づかない間にこなたがヤカンを火にかけていたらしい。
「おー沸いた沸いた。コーヒーで良い?」
「あぁ」
キッチンへと向かいコンロの火を消したこなたは、コーヒーのビンを小脇に抱え、
右手に二つのマグカップと左手にミルクを持ち、それを一度テーブルに置いた。
さらにまた引き返し、角砂糖が入っていると思われる白い陶器を持ってきた。
当然俺はどこに何があるのかを全く知らない為、手伝おうにも手伝えない。
「砂糖はいくつ?」
「一つでいい」
「オッケー」
こなたは慣れた手つきでマグカップにコーヒーとミルクをスプーン1杯ずつ入れると、
『角砂糖~1個♪』と鼻歌を歌いながら、1つその中に放り投げた。
なにかのアニメキャラクターが描かれた自身のカップには、
コーヒーをスプーン一杯入れ、ミルクと砂糖は2杯と2つ。
「それだとカフェオレに近いな」
「だって苦いじゃん」
「その苦味がコーヒーの良さというものなんじゃないか?」
かく言う俺もブラックなんてのは人が飲むものじゃないと思うが……。
こなたは再度キッチンへ向かい、口から機関車のように湯気を立たせるヤカンを持って戻ってきた。
コポコポと音を立てて熱湯が注がれ、喫茶店で出てきたコーヒーとはまた違う、
なんともインスタントで家庭的な香りが部屋中に漂う。

折りたたみ式のベッドの上に腰を降ろし、こなたは両手でマグカップを持つ。
「ふぅーふぅー」と溜息を付くようにして息を吹きかけ、徐々に傾けていった。
その直後、こなたの身体が電撃でも受けたかのようにビクリと跳ねた。
「あちちっ」
「気をつけろよ」
たった今まで沸騰していたお湯で作ったものだ、熱くて当然。
もっとよーく冷ましてから、なおかつ慎重に慎重に……。
「熱っ!」
「……気をつけなよ」
人の振り見て我が振り直せとはよく言ったものだ。

746:名無し@18歳未満の入場禁止
09/03/09 00:32:21 Es9MapXD0
>>744

それから俺達は、高校を卒業してから今日こうして再会するまでの期間を埋めるように、時間も忘れて語り合った。
かがみが弁護士に、そして高良が医者になりたいのだということ、
つかさが料理の専門学校に通っていること……。ネタが尽きることなど無かった。
半分まで減ったコーヒーはすでに冷たくなっており、もう火傷で痺れた舌を気にする必要は無い。
「さて、そろそろお暇するよ」
残りのコーヒーを一気に飲み干し、こなたにそう告げる。
「……うん」
靴を履き玄関のドアを開けると、生暖かい風が肌にまとわり付いた。
外はすっかり闇に包まれ、名も知らぬ昆虫達がオーケストラを演奏している。
季節は春を迎えつつあり、フライング気味の虫達の声はそれを急かすようだった。
「今日はありがとね、楽しかったよ」
礼を言うこなたの声は、今の今まで話していたときより、どこか元気が無いように思えた。
俯いた顔は青い髪に隠れてしまい、どんな表情をしているのかは分からない。
きっともう眠たくなったんだろう。 いつも遅くまで起きてそうだしな。
「またおいでよ」
「あぁ、そうだな」
軽く手を振りながらドアを閉め、こなたのマンションを後にしようと歩き出す。
ドアが開く音を背中で聞いたのは、ちょうど階段に差し掛かったときだった……。

「キョンキョン!」
振り返ると、当たり前だがこなたが立っていた。
「どうしたんだ?」
俺はてっきりこなたの家に忘れ物でもして、それで慌てて呼び止めてくれたのかと思っていた。
「こ、これ」
差し出されたその手には、キラリと光るものがある。
よく見ると、それは小さなキーホルダーの付いた鍵だった。
「私んちの合鍵なんだけど、これがあればいつでも入れるジャン? だ、だからこれ……」
その鍵は風の仕業か、こなたの手によるものか定かではないが、小刻みに震えている。
別段断る理由も無いので鍵を受け取ると、こなたは俺を見てニッコリと笑った。
なんだかホッとしたような、そんな表情だった。
「それじゃ、またね」
「あぁ……ってそれよりこなた」
合鍵を持ったままの手で、こなたの足元を指差す。
「これからは、ちゃんと靴を履いて外に出るんだぞ」
「あっ」


申し訳程度の明かりを放射する外灯に照らされた夜道を、自宅へ向かって歩く。
もし俺が女だとして、絶世の美女だったとするなら、絶対にこんな道は通らないな。
なんとなく、ついさっきこなたから受け取った合鍵を夜空に向かって放り投げてみた。
そこにあるのは無数に輝く光の粒。
太陽に邪魔されること無く、星達の放出する太古の光が、
気の遠くなるような永い永い時間を経てようやく、この地球へ降り注がれているのだ。
そんな夜空を眺めつつ、今日の出来事を振り返ってみる。
今日こうして空を見上げるのは三度目になるが、俺の身にはいろいろと変化があった。
それも予想外の変化ばかりだ。
まさかこなたに出会うとは思ってもみなかったし、まさかこうして合鍵を受けとることに……なってない!?
「なんてこった」
夜空の美しさに目を奪われ、今日起こった出来事に心奪われ。
宙に舞った鍵は俺の手に戻ることなく、この冷たいアスファルトの何処かに落ちたようだ。
幾ら星達がキラキラと輝いているとはいえ、今は真夜中である。
辺りを見回してみるも、それらしいものは見当たらない。
「やれやれ、鍵は投げるもんじゃないな」


結局苦労の甲斐あって無事に見つかったわけだが、
あれから30分以上鍵を探し回ったことは、こなたには内緒にしておこう。

747:名無し@18歳未満の入場禁止
09/03/09 00:34:35 1vkRnaZFO


748:名無し@18歳未満の入場禁止
09/03/09 00:38:26 PPHkYkgu0
終わりだったりしてー


お粗末さまでした
久しぶりの投下だけんど
山なし落ちなし感が否めない……

749:名無し@18歳未満の入場禁止
09/03/09 00:42:51 1vkRnaZFO
>>748
乙ー。いい話だった
ところでこなたは秘密靴とかじゃなくて本当に伸びてたの?

750:名無し@18歳未満の入場禁止
09/03/09 00:53:21 PPHkYkgu0
>>749
本当

そんなこなたもありかなと思って

751:名無し@18歳未満の入場禁止
09/03/09 00:53:51 IjrUWKkN0
>>748
こなた「ふふふふふふ・・・キョンキョン・・・投げた罰はしっかりうけてもらうよ・・・
     ガッシ!ボカ!」
キョン「ギャッ!グッワ!」


何がともあれ乙乙
個人的には、続きが読みたかったりする、このほのかなるこなキョン

752:名無し@18歳未満の入場禁止
09/03/09 22:28:43 6G4CDCpaO

投下が多いと俺も頑張らねばって思うな
けどOCN規制ってどうしたらいいんだ?

753:名無し@18歳未満の入場禁止 ◆4F9TRiB6OQ
09/03/10 02:44:03 7u2X36Nk0
よろしければ投下します。
ひそかに書き続けてきたけどなぜか長引いてしまって
季節はずれになる前になんとか完成しますた。
エロネタありです。
題名は「こたつこわい」

754:名無し@18歳未満の入場禁止
09/03/10 02:45:40 7u2X36Nk0
日本人古来より脈々と受け継がれている冬の憩いの1つに、
こたつで暖を取りミカンを食しつつゆったりと時を過ごす、というものがある。
かく言う俺も、ご多分に漏れずその伝統の愛好者であり、
その伝統を愛さぬ者は日本人にあらずと、この場を借りて力説させて頂く程である。
今日はまさに、それを取り行うにふさわしい休日であり、
更には、俺の体力的にも財布的にも厳しい、週一のあの行事のある日でもない。
となればやることはただ一つ。その伝統を厳かに実行し、
日々様々な厄介事に見舞われる俺に貴重なる休息を与えるのである。
これこそが、冬という名の寒冷たる季節における俺の、毎週日曜の慣習であり、
今回もそれはつつがなく実行される筈だったのだが…

「ねえゆきちゃん、ここ教えて欲しいんだけど」
「あ、ここはですね…」
「かがみーん、こことこことこことここわかんないんだけど」
「はいはい自分で考える気のない質問は受付不可!」

御覧の有様である。まあようは勉強会であるのだが。
問題は俺の家の、しかも俺の部屋のこたつでそれが取り行われている、ということだ。
まあ普段から仲のよい彼女たちからしてみれば、そのように4人が
勉強会と銘打ち集合場所をそれぞれの家でローテを決めつつ週1で集うというのは
確かに極々当たり前のことであり、それに関しては俺も別に何も言うことはないのだが…

「うぐぅ…キョンキョーンかがみんがフローズンキャラメルマキアートのごとく冷たいよー」
「なんだその微妙な例えは…」
「ん、最終的には甘い、という意味で、ついでに糖分たっぷりd」
「殴るわよ」
「もうなぐってるよかがみん…」

いつのまにやら、俺もそのローテのうちに入れられてたらしい。
いつものように彼女達と会話をしていたらいつの間にか今日の様な形となってしまっていた。
まさに「何を言っているのか解らないが俺も頭がどうにかなりそう」状態。
何ならポルナレフAAをその場に貼り付けてもいいくらいだ。

755:名無し@18歳未満の入場禁止
09/03/10 02:46:49 7u2X36Nk0
>>754

いや、決して彼女たちといるのがいやなわけではない。それ所かむしろそれだけなら、
綺麗どころともいえる彼女たちと時を過ごすというのは男としては憧れの状況だろうし、
もちろん健全なる高校生男子であるこの俺も、このようなことは大歓迎といっていい。
しかしだ、男である俺の家一つ屋根の下で、同年代の、しかも女子4人が、
一同に会するという事態は色々な意味においてやばいのではないのかね。ええ?
今回の発案者であるこなた、お前だよお前!

「うーー集中力もたなーい」
「はやっ!開始してまだ30分だろ」
「ねねねキョンキョン。ゲームやろっ。対戦対戦」
「もう一発いくかこなた」
「ちぇーかがみんのいけずー」
不満を漏らすこなた。だがここはかがみに同意せざるをえない。
発案者の癖に今回の集合の第一目的からいの一番に離脱し、あまつさえ
部屋主にまで脱線を申し出るのだ。勉強しない派の俺ですらこれは嘆息ものだ。
そもそも本来、俺は貴重な休日をこたつにて安穏と過ごす予定だったのに、
今や4人に勉強という名目の元占拠され、それゆえに満席となってしまったそのこたつに、
本来の持ち主である俺は入ること叶わず、机にて、傍らに電熱ヒーターをセットしつつ
勉強して過ごさねばならぬのだ。そのような仕打ちをしておいてなおその発言。
もはや狼藉である。出会え出会え。この不届き者いかにとやせん。

「そんなところで寒そうにしてないでさ、こっちきなょ~あったかいョ」

……
はい、ミルコ先生出番です。すなわち『お前は何を言ってるんだ』

756:名無し@18歳未満の入場禁止
09/03/10 02:48:16 7u2X36Nk0
>>755

こっちきなよ、とは、どの口がいえることなのだろうか。
重ねて申し上げるがこのこたつは俺のであり、そのような決定権は本来俺が持つべきものである。
さらに言えば、今こたつは4人に占拠されており、物理的にも俺が入る所などない。
本当にお前は何を言っているんだ。
「そのことなら問題ないヨ、私んとこに入りなよ。私ちっさいから窮屈じゃなくすむヨ」
そう言う問題かっての。こたつのスペースも小さいんだ。
いくらお前のサイズが小さかろうが、その、なんだ…
「密着、するから?」
こなたが、あの糸目でこちらを見てくる。完全にいたずらモード入ったようだ。ああくそっ。
「いやー流石は純情キョンキョンだねぇ、そんなことでも密着と判断して煩悶するキョンキョン萌え」
言うなニヤつくなこっち見んな。
ああもうこれで、彼女たちが帰るまでこのネタでいじられ続けるのは確定事項のようだ、忌々しい。
いたずらな表情のままこちらをしばし見ていたこなたは、
「さてと、私はちょいとトイレに行って参りますかね」
といい、おもむろに立ち上がり、こうほざきやがった。
「よかったね~キョンキョンや。つかの間のこたつのぬくもり、せいぜい楽しみたまへ」
よかったも何も、再三言うがこれは俺のなんだがな…まあいい、今回はお言葉に甘えるとしよう。
入ろうとした瞬間三人の視線を察知する。あのみなさん、俺の顔に何か…
何でもない、とばかりに自らの学業に再び没頭しだすみなさん。
…あ、そういうことか、なるほど。ご安心ください淑女方。
私は今こたつに当たる目的で入ろうとしているのであって、決してやましい目的で、
たとえば脚を伸ばして淑女方の御見脚に接触を図ろうとかいう不埒な思考など
…一応頭にだけはもたげるあたりは男の生理的思考の悲しいところではあるが…
まあ谷口あたりではあるまいし、実行に移そうなどとは思ったり致しませんので、
できますればご安心を頂けるとこれ幸いに思います。
そういった紳士的思考をアピールしようと俺は、
なるべく脚を伸ばすことなく坐るように最初から胡座を作り、
しかるのちに尻をずらしていくという、謙虚的とも言える方法でこたつに侵入をはかる。
勿論接触領域を広げぬよう、脚を最大限に狭めての胡座であることは言うまでもなし。


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