ヤンデレの小説を書こう!Part38at EROPARO
ヤンデレの小説を書こう!Part38 - 暇つぶし2ch650:名無しさん@ピンキー
10/11/05 22:49:53 BvlTpio2
自分の作品発表の場くらい自分で守りなよ
既に手遅れになりつつある

651:名無しさん@ピンキー
10/11/05 23:10:44 M/QjKNlb
保管庫見やすくしろ←言い出しっぺがやれ

いや俺傍観者だし←いやwikiだし、口だけで勝手すぎ

で脱線してった感じか。

652:名無しさん@ピンキー
10/11/05 23:11:56 fEzFS5XV
投下マダー?

653:名無しさん@ピンキー
10/11/05 23:12:44 KKvJf0w/
最近スパロボRやったけどデスピニスマジ可愛い。
大人しくてしっかりしてて且つロリとかマジ感動モノだわ。

654:名無しさん@ピンキー
10/11/05 23:15:52 KKvJf0w/
何故だ、何故こんな所に誤爆投下してしまったんだ……

655:名無しさん@ピンキー
10/11/05 23:21:20 4k+T6GkL
デス○ニス……?

656:名無しさん@ピンキー
10/11/05 23:46:37 xXBQ7mjb


657:名無しさん@ピンキー
10/11/06 00:04:03 C7tPGxYi
ヤンデレ家族の没ネタの事書き込んでからしばらく書き込まず
ずっと見てたけど、なんかこういう流れって前はおもしろ半分に
割り込んだけど今はくだらな過ぎてめんどくさくてやんなくなったわw

まぁ、スレなんて荒れるのが当たり前。誰でも書き込めるからね
別にスレが失くなるとか深刻な様に書き込んでる奴はかってに言ってろって
感じ。スレなんて何処もこんくらい何回か荒れる。

作者様方待ってます!

658: ◆AJg91T1vXs
10/11/06 00:04:58 N323y57t
 最近はROMだけでしたが、酷いことになってますね。

 新ネタできたので投下しますけど、需要あるんだろうか……。
 以前、私の作品を読んでいただけた方ならば分かるとは思いますが、私の作品はヒロインがヤンデレ化するのに時間を要します。
 即席なヤンデレを楽しみたい人は、申し訳ありませんがスルーして下さい。

659:ラ・フェ・アンサングラント 【第一話】   ◆AJg91T1vXs
10/11/06 00:07:43 N323y57t
 そこは、どこにでもある小さな町の酒場だった。

 夕暮れ時だというのに、酒場の中には数人の客しかいなかった。
 決して小さな店ではないが、客足は店の大きさに反して悪いようだ。


―― カラン、カラン……。


 扉につけられた鈴が鳴り、新しく客が入って来たことを告げた。

「いらっしゃいませ……」

 マスターが、店に入って来た青年の方を一瞬だけ向いて言った。
 客には興味がないのか、それとも単にあれはあれで忙しいだけなのか。
 青年がカウンターに座った後も、マスターは手にしたグラスを磨いているだけだった。

「あの……」

 持っていた鞄を足元に置き、青年がマスターに言った。
 癖のある金髪と、眼鏡の奥にある緑色の瞳。
 貴族ではないようだったが、誠実そうな整った目鼻立ちをしていた。

「この店、初めてなんだけど……。
 何か、お勧めはある?」

 歳の割に、幼さの残る声だった。
 それにも関わらず青年が大人びて見えるのは、すらりと伸びた背丈のせいだ。
 血気盛んなだけの若者とは違う、どこか儚げな空気をまとっていることも一因である。

「お客さん、旅の人ですか?」

「えっ……?
 まあ、そんなところだね。
 もっとも、何か目的があって旅をしているわけじゃないから、あまり誉められたものじゃないけど……」

「それは珍しいことですな。
 こんな寒い季節に、目的もなく一人旅とは。
 旅費を稼ぐのも、簡単ではないでしょうに……」

「一応、仕事の当てはあるよ。
 こう見えても、僕は医者だからね。
 ハライタに薬を飲ませるだけでも、その日に食べる分のパンを買うくらいにはなる」

「なるほど、お医者様でしたか。
 旅をしながら病に伏せる方々を救うなど、なかなか殊勝なお考えですな」

 青年の前に置かれたグラスに、マスターがボトルから酒を注ぎ込む。
 グラスを受け取った青年は軽く会釈をすると、ゆっくりと味わうようにして最初の一杯を口にした。

660:ラ・フェ・アンサングラント 【第一話】   ◆AJg91T1vXs
10/11/06 00:09:01 N323y57t

(酷い味だな、こりゃ……)

 一瞬、顔を曇らせながら、青年は思わず心の中で呟いた。

 旅先で、色々と質の悪い食べ物をつかまされたこともあったが、この酒は特に酷い。
 香りはついているものの、消毒用のアルコールを薄めたような、口の中に後味の悪い苦みの残る味だ。

 店の中を改めて見回すと、青年の他には数人の客しかいなかった。
 どの客も、貧しい身なりをした中年の職人か老人である。
 金がなく、酒に飢えている人間ならば、こんな酒場の酒でも酔えるのだろう。

(安いだけで、味は最低の店か……。
 こいつは失敗したな……)

 グラスの中に半分ほど残された酒をにらみながら、青年はまたも心の中で言った。

 こんな味では、店に客が数人しかいないのも頷ける。
 わざわざ金を払ってまで、何度も通うような店ではない。

 まだ、半分ほど酒は残っていたが、青年はグラスをカウンターに置いて立ち上がった。
 コートのポケットから金をつかみ出すと、それをマスターに渡してそそくさと店を出る。

 店の外に出た途端、冬の冷たい風が青年の肌を打った。

「……っ!!」

 コートの襟を押さえ、身体を前屈みにして風を受け流す。
 まずい酒を一口飲んだだけでは、身体は外の寒さに抗う程にまで温まっていなかった。

「くそっ……。
 酒はまずいし、風は馬鹿みたいに冷たいし。
 ちょっと気まぐれで帰ってきたら、これだもんな……」

 誰に言うともなく、青年は街中を吹き抜ける風に向かって悪態をついた。

 この街は、青年が生まれた場所でもある。
 旅の間に随分と景観が変わったが、それでも街の空気までは変わらない。
 冬になると街外れの丘から降りて来る、肌を刺すような冷たい風もそのままだ。

 今日はもう、宿を見つけて休んだ方がいいかもしれない。
 食事もまだだったが、質の悪い酒と意地悪な北風に毒されて、食欲などすっかり無くなってしまった。

 噴水のある中央広場を抜けて、青年は商店街へと続く横道に入った。
 昼間はバザーで賑わっているが、夜は閑散として人の影も見えない。
 時折、餌を探す野良犬が、物欲しそうな目でこちらを見つめてくるだけである。

 通りの外れまで歩いたところで、青年はふと賑やかな声が聞こえてくるのに気がついた。

 こんな夜更けに、しかも商店街の外れで、いったい何事だろうか。
 気になって声のする方に向かってみると、青年はその理由を直ぐに理解した。

661:ラ・フェ・アンサングラント 【第一話】   ◆AJg91T1vXs
10/11/06 00:10:32 N323y57t
 声のしていた場所は、どこにでもあるような小さな宿場だった。
 しかし、ただの宿場ではない。
 一階が酒場になっているらしく、小さいながらも賑わっているようだった。
 窓から零れる部屋の明かりと共に、時折、豪快な男達の笑い声が聞こえてくる。

「なるほどね。
 さっきの店が流行らなかったのは、こっちにもっと良い店があったからか……」

 こんなことなら、もう少し粘ってまともな酒場を探せばよかった。
 そんなことも考えたが、どちらにせよ後の祭りである。

 店の中から響く楽しげな声につられ、青年は無言のまま扉を開けた。
 これ以上、外の風に当たりたくはなかったし、このまま宿なしで一晩を過ごすのもごめんだった。

「いらっしゃい!!」

 扉を開くなり、店主の力強い声が青年を迎えた。
 先ほどの店とは違い、活気があって好感が持てる。

「お兄さん、旅の人かい?」

 まだ何も言っていないのに、店主の方から尋ねてきた。
 青年は黙って頷くと、そのままカウンターに近づいて店主に問う。

「見たところ、ここの二階は宿場みたいですが……。
 まだ、空いている部屋ってありますか?」

「空いている部屋ねぇ……。
 悪いが、そいつは俺にはわかんねえな。
 受付は二階にあるから、まずはそっちに行って聞いてくれよ」

「すいません。
 初めて来たんで、勝手がよくわからなくて……」

「なあに、気にすんな。
 そんなことより、お兄さんはいつまで泊まるんだい?
 二、三日こっちにいるんなら、一度くらいは俺の店でも飲んで行ってくれよ」

「ええ。
 それじゃあ、明日にでも寄らせていただきます。
 部屋が、空いていればの話ですけどね」

 青年が、店主に軽く会釈して言った。
 そのまま店の奥に進んで行くと、二階へ通じる階段はすぐに見つかった。

 ぎし、ぎし、という木の軋む音がして、青年の足が階段を上がって行く。
 決して粗末な作りではないようだが、随分と年季の入った建物のようだった。

 二階に上がると、そこは直ぐに受付のカウンターになっていた。
 が、自分の他に誰もいないことが分かり、青年は訝しげに思いながらも声を上げる。

662:ラ・フェ・アンサングラント 【第一話】   ◆AJg91T1vXs
10/11/06 00:11:18 N323y57t

「あの……誰かいませんか?」

「はーい!
 今、行きます!!」

 受付の奥から女性の声がした。
 宿の女将のものにしては、随分と若い。
 ここで働いている女中のものだろうか。

「す、すいません!
 お待たせしました……」

 部屋の奥から、エプロン姿の女性が息を切らしながら現れた。
 胸元まで伸びた赤い髪を三つ編みにまとめ、仕事の邪魔にならないようにしている。

「あれ……」

 受付に現れた女性を見た途端、青年の表情が驚いた時のそれに変化した。
 それは女性の方も同様で、青年と目が合った瞬間、口元に手を当てて言葉を飲み込む。

「リディ……。
 君なのか……?」

「えっ……。
 も、もしかして……ジャン!?」

「ああ、そうだよ。
 僕はジャンだ。
 君の家の向かいに住んでいた、ジャン・ジャック・ジェラールだよ!!」

「嘘……どうして……」

「帰って来たんだよ。
 ほんの、気まぐれみたいなものだけどね」

「ううん、嬉しいよ。
 お帰りなさい、ジャン……」

 受付に立つ女性の目には、うっすらと涙が浮かんでいた。
 だが、決して悲しかったからではない。

 目の前で涙する女性に、青年は「大げさだなぁ……」と言って笑った。
 互いに再開を喜ぶ二人だったが、心の奥底に抱いている感情までは、寸分違わず同じとは言い難かった。

663:ラ・フェ・アンサングラント 【第一話】   ◆AJg91T1vXs
10/11/06 00:13:04 N323y57t


※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


 部屋の中央に置かれた暖炉の火を眺めながら、ジャン・ジャック・ジェラールは旅の疲れを癒していた。

 彼の目の前には、温かいシチューの入った皿がある。
 スプーンですくって口に入れると、それだけで身体の芯から暖まる気がした。
 外の冷たい風に当てられた身としては、とても嬉しいもてなしである。

「ごめんね、ジャン。
 夕食っていっても、こんな物しかなくって……」

 シチューの入った鍋を持ったまま、先ほど受付で合った女性がジャンに言った。

「いや、そんなことないよ。
 相変わらず、この街は冬になると寒くてやってられないからね。
 外の風に当てられたから、下手な酒なんかよりもよっぽど身体があったまる」

「そう言ってくれると嬉しいな。
 でも、実はこれ、単なる賄い料理なんだけどね。
 本当は、もっとちゃんとしたお料理を出したあげたかったんだけど……」

「賄いでこの味なのか?
 だったら、今度は是非、他のお客さんにも出している料理を食べさせてもらいたいかな」

「ええ、言われなくても喜んで」

 シチューの入った鍋をテーブルに置き、その女性も自分の皿にシチューを入れて席に着いた。

 夕食の時間は既に終わっていた。
 そのため、今は二人で賄い料理のシチューを食べることしかできない。
 もう少しマシな物を出したいというのが女性の本心だったが、ジャンは満足しているようだった。

「ところで……」

 シチューを口に運ぶ手を休め、ジャンが目の前に座っている女性に尋ねた。

「リディは、どうしてこんな場所で宿を?」

「ああ、それね。
 実は、ジャンが旅に出た後、お母さんが亡くなっちゃってね。
 お父さんは飲んだくれで話にならないし、前の家を売っちゃったのよ。
 大したお金にはならなかったけど、貯金もあったからね。
 全財産を叩いて、このお店を買ったってわけ」

「全財産って……。
 それ、随分な冒険だと思うけど……」

「どっちにしろ、あのまま飲んだくれ親父と一緒にいても仕方ないしね。
 お店を買った後、お父さんも身体を壊して死んじゃったけど……あれは自業自得よ。
 それに、一人で生きていかなきゃならなかったし、後のことなんて考えていられなかったわ」

「なるほどね。
 でも、まさかリディが、宿屋の女将になってるなんて思っていなかったよ。
 それも、女中も置かずに一人で経営しているなんて……昔からすれば、想像できない」

664:ラ・フェ・アンサングラント 【第一話】   ◆AJg91T1vXs
10/11/06 00:14:27 N323y57t

「そんな大したことじゃないわよ。
 女将って呼ばれる程に貫録もないし、小さなボロ宿をなんとか切り盛りしているだけだから。
 一階を酒場にして貸し出さなかったら、正直、暮らしていけないもの」

 皮肉めいた笑いを浮かべて女性が言ったが、それは本心だった。
 そんな彼女の気持ちを悟ったのか、ジャンもそれ以上は何も言わなかった。

 リディ・ラングレー。
 それが、ジャンの目の前にいる女性の名前である。
 ジャンの幼馴染であり、この宿屋を経営している若女将だ。

 ジャンがリディと別れたのは、もう十年以上前の話だった。
 父親が仕事の関係で街を離れるに至り、ジャンもそれに同行する形で街を出た。
 それ以来、ジャンは生まれ故郷の街に戻ってはいない。
 今日、ここへ戻ってくるまでは、一度も故郷の土を踏んだことがなかった。

 ジャンが故郷へ戻らなかったのは、一重に父親の存在が大きかった。
 彼の父は優秀な医者だったが、同時に科学者としての飽くなき探求心も併せ持っていた。

 どうすれば、患者をより楽に助けてやることができるのか。
 不治の病と呼ばれる病気を、治す方法はないものか。
 不老不死というものは、本当にこの世に存在するのか。

 年を経るにつれ、ジャンの父親の探究心は異常な方向へと向かって行った。
 最後は患者もそっちのけで、妙な研究に没頭するような日々が続いた。
 終いには、魔術や錬金術といった妖しげな本まで持ち出して、人体実験紛いのことにまで手を出し始めたのである。

 そんなことを続けていれば、当然のことながら生活は苦しくなる。
 妻には早々に離縁を告げられ、さらには街の人間からも排斥された。
 こと、妖しげな研究をしているという点をつかれ、教会の司祭を中心にジャンの父を煙たく思う人間が増えていった。

 結局、ジャンと彼の父親は、街を離れざるを得なくなった。
 放浪の旅を続けながら、医師としての知識を生かして旅先で病人を診察する。
 そんな生活が、十年近くも続いた。

「ねえ、ジャン……」

 自分もシチューを口に運びながらも、今度はリディがジャンに尋ねた。

「ジャンこそ、どうして急に帰って来たの?
 今まで、連絡一つくれなかったのに……」

「それは……こいつのせいかな」

 鞄の中から、ジャンが革袋を取り出した。
 お世辞にも綺麗とは言えない袋で、ジャンが持ち上げると中から乾いた音がした。

「それ、何なの?」

「父さんの骨だよ。
 こんなもの、食事中に見せて悪いと思うけど……父さん、旅先で死んじゃったからね。
 街の人達からは嫌われていたけど、やっぱり生まれ故郷の土に帰してあげるのが正しいんじゃないかって思ってさ」

665:ラ・フェ・アンサングラント 【第一話】   ◆AJg91T1vXs
10/11/06 00:15:51 N323y57t

「そっか……。
 ジャンのお父さんも、死んじゃったんだね……」

「別に、気を使ってもらわなくても構わないよ。
 父さん、あれからも妙な研究を続けていてさ。
 最後は自分を実験台に、不老不死の研究を始めたんだ。
 それで、変な薬をたくさん飲んで、結局は中毒を起こして死んじゃった」

「はぁ……。
 私の親父も馬鹿だったけど、ジャンも苦労したんだね……」

「まあね。
 でも、父さんが持っていた医学書は、僕が有効に使わせてもらったよ。
 後は、昔の父さんが診た患者の記録なんかを読んで……気がついたら、自分も父さんと同じ医者になってた」

 最後の言葉は、乾いた笑みを浮かべて苦笑しながら言った。

 ジャンにとって、父は尊敬の対象などではなかった。
 自分の探究心を優先させたばかりに家庭を壊し、最後は医師としての務めも忘れて奇妙な実験に没頭していた。

 はっきり言って、父は変人だったとジャンは思う。
 これで世紀の大発見でもしていれば話は別だが、残念ながらジャンの父はその器ではなかった。

 自分の欲望のために生活を、家族を犠牲にし、最後は患者までも犠牲にした。
 そんな父に代わり、真っ当な医師であろうとすること。
 ジャンが唾棄すべき父親と同じような医学の道を目指したのは、ある意味で必然だったのかもしれない。

 父の骨を故郷に埋めようと思ったのも、息子として最低限の義務を果たそうとの考えからだった。
 それ以外に、特に意味はない。
 自分達を追放した街へ戻るのは気が引けたが、父の骨と一刻も早く別れたいと思うと、故郷の土を踏むのに躊躇いはなかった。

「ところで、リディ。
 今日はもう、空いている部屋なんてないのかな。
 実は、まだ今日の宿も見つかっていなくってさ……」

「なんだ、そうだったの?
 それじゃあ、今すぐ空いている部屋を案内するわ」

「そうしてくれると助かるよ。
 とりあえず、寝床があればいい。
 ベッドさえ用意してくれれば、後は自分で適当にやるさ」

「そういうわけにもいかないわよ。
 夜はまだまだ冷え込むみたいだし、ちゃんと毛布を用意しないと風邪ひくわよ」

 医者の不養生。
 そんな言葉を言いたげに、リディは少々強めの口調でジャンに向かって言った。

666:ラ・フェ・アンサングラント 【第一話】   ◆AJg91T1vXs
10/11/06 00:16:34 N323y57t

「それとも……」

 あくまで気を使わせまいとするジャンに対し、リディが意地悪そうな笑みを浮かべる。

「なんだったら、私がジャンのことを暖めてあげようか?」

「なっ……!?」

 ジャンの顔が、途端に赤くなった。
 子どもの頃ならいざ知らず、大人となった今ではリディの言葉に男としての反応を隠しきれない。
 そんなジャンの姿を見たリディは、笑いを堪え切れずに肩を震わせながら口元を押さえた。

「あはは、冗談よ。
 ちょっと、からかってみたくなっただけ」

「勘弁してくれよ……。
 君、そんな冗談言う人だったっけ……」

「なによ、それ。
 でも、相手がジャンだったら、私は嫌じゃないけどね。
 これは嘘でも冗談でもなくて、本当だよ」

「えっ……?」

 呆気にとられた様子で、ジャンがリディのことを見た。
 だが、リディはそれ以上何も言わずにシチューを平らげると、そのままジャンの部屋を用意するために食堂を離れて行った。

667: ◆AJg91T1vXs
10/11/06 00:20:40 N323y57t
 投下終了です。

 言い忘れましたが、作品の舞台はフランスの田舎町です。
 時代は1700年代初頭をイメージしています。

668:名無しさん@ピンキー
10/11/06 00:35:03 WgBenrfe
>>667
GJ!!
うーむ、これは新鮮なジャンルだな…

669:名無しさん@ピンキー
10/11/06 00:59:04 SYqxHaqI
>>667
GJ
これからどうなってくのか期待してます

670:名無しさん@ピンキー
10/11/06 01:04:46 ZN6HZs98
>>667
超GJ!


671: ◆m10.xSWAbY
10/11/06 01:16:03 LSFDOY9v
投下乙パイ(∩^ω^)∩

672:名無しさん@ピンキー
10/11/06 01:59:32 kgDzmhNV
GJ!
こっからどう病んでくのか期待!

673:名無しさん@ピンキー
10/11/06 02:59:04 qEjxK81J
最近、SS見て始めの内容や出だしで完結させてくれる作者か、途中で放り出すような作者か分かるようになった。

674:sengoku38
10/11/06 03:18:46 LiM20WZB

























ふ…愚民どもが……

675:名無しさん@ピンキー
10/11/06 04:51:19 6wGKXDmt
愚民?グミなら今食べてるよ

676:名無しさん@ピンキー
10/11/06 07:09:18 vAH+Qiyd
>>657
ヤングデレ家族の作者様?後日談プリーズ♪

677:名無しさん@ピンキー
10/11/06 08:43:13 0ru9YBAL
せっかくの投下なのに反応薄いなあ
もっと無理にでも自演で盛り上げていかなきゃ
やる気ないの?

678:名無しさん@ピンキー
10/11/06 08:47:17 qHf5zfZm
>>667
GJ!!


679:名無しさん@ピンキー
10/11/06 09:19:09 UT4Hd1KZ
>>667
イイですね。病むのに時間がかかるとありますがその分読者の妄想をかきたてられるわけですしね

GJです!

680:名無しさん@ピンキー
10/11/06 09:23:39 4LNcX9Wl
GJ!!これは新しい!!

681:名無しさん@ピンキー
10/11/06 09:46:43 WgBenrfe
しかも、「迷い餓の詩」の作者さんとは…「迷い餓の詩」は本当に楽しませていただきました

682:名無しさん@ピンキー
10/11/06 11:24:55 0ru9YBAL
まったく…
言われなきゃクローンGJもできないんだから
この調子で一人最低10回は連呼な
作者を調子に乗せちまえばこっちのもんだ

683:名無しさん@ピンキー
10/11/06 11:33:41 UT4Hd1KZ
>>681
迷い蛾の人だったんですか。こりゃ楽しみですね

684:名無しさん@ピンキー
10/11/06 13:50:06 Vs2iaKBf
出だしにしても退屈でつまんないな
読者の興味を引くような事態が何も起こらないのじゃダメだろう
こんなダラダラ始めてたら週刊誌なら直ぐに打ち切りになっちゃうぞ
平積みされてても、最初の数ページをパラパラッとめくられて棚に逆戻りだ

685:名無しさん@ピンキー
10/11/06 14:03:36 ZN6HZs98
サトリビトこないかな

686:名無しさん@ピンキー
10/11/06 14:29:01 ol488SGM
別に金出して読んでる訳で無いんだから偉そうに批評されてもねぇ
それとも批評してる奴は作者達をメジャーデビューでもさせたいのか?
人の批評より自分の心配をしとけよw

687:名無しさん@ピンキー
10/11/06 14:33:39 AEJmrDHj
>>684>>658の3行目から最後まで100回大きな声で音読してからよーく意味を考えてね
わからなかったらおうちのひとに聞いてみようね

688:名無しさん@ピンキー
10/11/06 15:13:35 rAIJ9gNj
めちゃくちゃ偉そうに批評する奴って何なの?
うざくて適わんのだが…。

689:名無しさん@ピンキー
10/11/06 15:24:54 MHUBPqGN
荒らしの自演
この一週間同じパターンなんだからもう聞くなよ

690:名無しさん@ピンキー
10/11/06 16:18:29 0OLJOrO8
新鮮? 新しい?
メチャクチャ古臭い文章じゃないか
大河ドラマでも書こうとしてるんだろうけど、需要無いんじゃない?
文芸板にでも行けば?

691:名無しさん@ピンキー
10/11/06 16:20:50 b3I2l5Zc
これ以上荒れるようなら一旦保管庫の掲示板に避難して過疎らせるってのはダメ?
外部板って書いてあるし、中の人も結構な頻度で目通してくれてるみたいだし、アク禁とかもできる…?
よく知らんけど

692:名無しさん@ピンキー
10/11/06 16:39:15 cLzFaRMZ
>>690
新しいってのは発想だ
文体じゃない
ヤンデレの小説でこういう設定のものは珍しいんだよ
だから新鮮なんだろ?

693:名無しさん@ピンキー
10/11/06 16:57:14 WgBenrfe
早く触雷!来ないかな

694:(=゚ω゚)ノ ◆m10.xSWAbY
10/11/06 17:56:59 LSFDOY9v
(≧∇≦)こないかな~

695:名無しさん@ピンキー
10/11/06 18:14:56 4XOYHu+b
お前らいつまで荒らしに餌与え続けんの?
スルーもできない馬鹿は、荒らしと同じく邪魔でしかない
テンプレもう一回嫁

696:名無しさん@ピンキー
10/11/06 19:01:10 qEjxK81J
>>695
もうその書きこみで荒らしの仲間入りになるんだよ?

697:名無しさん@ピンキー
10/11/06 19:04:18 osuULQJC
そういう煽りいらないよ

698:名無しさん@ピンキー
10/11/06 19:49:54 mwNv+K4v
まあ、言えるのは
下らない作品じゃ、この流れを止めることなどできないってこった
カビの生えたような古文書は博物館にでも収めるといいよ

ああ、歴史的価値が皆無だから、軽くお断りされるか

699:名無しさん@ピンキー
10/11/06 20:10:24 WgBenrfe
作品投下まだかなー

700:名無しさん@ピンキー
10/11/06 20:18:26 6ByBeszh
ああ、今日一日費やしてようやくRをクリアした……
デュミナスェ……可哀相なラスボスだった……

701:名無しさん@ピンキー
10/11/06 20:19:25 6ByBeszh
人は何故、同じ過ち(誤爆)を繰り返すのだろうか……

702:名無しさん@ピンキー
10/11/06 20:41:29 AvCZpzal
嫉妬スレも荒れたろう?
ヤンデレスレもきっと荒れる
人の荒らしは、終わらねェ!
ゼハハハハハハァ


703:名無しさん@ピンキー
10/11/06 20:46:10 GAYDot38
これほどGJが軽く、また白々しいスレも他に知らない

704:名無しさん@ピンキー
10/11/06 20:49:57 17oA95nJ
何が「早く触雷!こないかな」だ、バカだろ
お前らが触雷ばっかり煽てるから、ウサギサトが嫉妬で狂ってしまったんだろうが
次に触雷が脱糞されたらとんでもないことになるだろうな

705:名無しさん@ピンキー
10/11/06 20:51:19 WgBenrfe
作品投下まだかな~

706:名無しさん@ピンキー
10/11/06 20:52:07 ol488SGM
そう言うお前がウナギサト

707:名無しさん@ピンキー
10/11/06 21:17:58 Yry8lHlM
差しのべられた和解の手を払い除けたのは、ここの書き手さんたちだからなあ
そもそも住民がウナギ云々陰口叩かなきゃこんなことにならなかったんだが
今後どうなっていくのやら……

708:名無しさん@ピンキー
10/11/06 21:27:12 BdTW9vz4
まさか嫉妬狂ったヤンデレ共がここをこんなにも追い詰めやがって………


俺の暇つぶしがww

709:名無しさん@ピンキー
10/11/06 21:53:34 Yry8lHlM
みんなで有名どころの書き手さんに和解を頼んでみれば?
本当にスレが大事なのなら、きっと出てきてくれるはずだよ

710:名無しさん@ピンキー
10/11/06 21:54:09 pTfmbo2P
>>667
GJ!
これからのヤミに期待

711:名無しさん@ピンキー
10/11/06 21:55:49 Pg77TUEu
毎日しつこいな、ウナギだかなんだか知らんけど

712:名無しさん@ピンキー
10/11/06 21:56:22 qEjxK81J
>>709
お前はどこかズレてるな。
作者がでてきても余計煽るだけだろ。

713:名無しさん@ピンキー
10/11/06 22:42:33 1vC1bdLM
ウナギイヌのニートちゃんはまたこんなとこでアホなことをしているのかい?
その内に痛い目に遭うかもね

714:名無しさん@ピンキー
10/11/06 22:53:34 WgBenrfe
作品投下まだかなー

715:名無しさん@ピンキー
10/11/06 23:02:38 1OCNQoSz
>>667
GJ!
これからどう展開していくのか、楽しみな導入部ですね。
続きを期待して待っています!


716:名無しさん@ピンキー
10/11/06 23:18:12 c3FU3erp
導入にもなっていないような……
この先はまだ考えてないんだろうなあ
つか、導入部の方がヤンデレ部より遙かに長くなりそうだ

717:名無しさん@ピンキー
10/11/07 00:04:22 /uLIgM5/
ここのSS読んでると未来日記の我妻由乃じゃ物足りなくなるな

718:名無しさん@ピンキー
10/11/07 00:09:43 eIsKnhe3
無茶苦茶な見解だな
暴言にも程があるだろ

719:名無しさん@ピンキー
10/11/07 00:09:55 sbgQj5p2
>>716
 ま、そうなっても仕方無いだろ。ヤンデレ描写ってのは元々作品のクライマックスだからな。
 (ここのはそうでないもの多いけど)
 俺は好きだがな、こういうのも。
 作品はGJ!
 喜ばしい再会の中にも、「不老不死の研究」とか穏やかでない要素が入っていて、今後が期待される。

720:名無しさん@ピンキー
10/11/07 00:11:03 Xv0pLg2L
みんな!落ち着こうze!

721:名無しさん@ピンキー
10/11/07 00:12:12 zaMYiyGr
不老不死とヤンデレと何の関係があるの?
少なくともスレ的に期待する要素は何もないだろ
魔術系とかSF系のスレでやれば

722:名無しさん@ピンキー
10/11/07 00:24:13 /uLIgM5/
ヤンデレでさえあればいいのです

723:名無しさん@ピンキー
10/11/07 00:38:10 zaMYiyGr
まあ、本気で書かれていない即興作品について、本気で論じることもあるまい

724:名無しさん@ピンキー
10/11/07 00:39:39 Bb7Ek7g5


725:名無しさん@ピンキー
10/11/07 00:57:30 j27kJiTa


726:sengoku38
10/11/07 01:09:19 tC3u0UKt

















…愚か者達は愚かな結末を迎えるしかない
破壊者に滅ぼされるが良い…


727:名無しさん@ピンキー
10/11/07 01:20:00 9XqMl/9O
ああ、ついに厨二の方まで……

728:sengoku39
10/11/07 01:21:35 LO45A7/N

















へははは ここはもうおわリーだぁ!



729:名無しさん@ピンキー
10/11/07 01:40:16 kR5bSCQk
ヤンデレ少女のプロットを誰か書いてくれないか?

730:名無しさん@ピンキー
10/11/07 02:13:33 t2WXbXRb
ってかウサギビトって誰?

731:名無しさん@ピンキー
10/11/07 02:51:22 Bb7Ek7g5


732:名無しさん@ピンキー
10/11/07 03:32:27 7t3xRN+O
どうもこのスレだけR指定が無いらしい

733:(=゚ω゚)ノ ◆m10.xSWAbY
10/11/07 04:50:54 LGldE4J1
オイコラせんごく38
俺以外がコテつけてんじゃねー(#^ω^)
銀河1の愛されコテである俺に憧れるのは分かるが君は2番煎じなのさ!(b^ー°)

734:名無しさん@ピンキー
10/11/07 08:01:47 GE5zimqx
明らかにこのスレの住人じゃない奴らがいるな

735:名無しさん@ピンキー
10/11/07 09:56:52 Ta+0vHQS
常識で考えて、くたびれきった男女の話なんかが需要あるわけないよな
こんな時だからみんな優しくしてくれるけど
通常営業時ならよくてスルー、下手すりゃフルボッコだ

736:名無しさん@ピンキー
10/11/07 10:10:34 wCc9DtQZ
荒らして潰したいだけの精神異常者が来てるのよ

737:名無しさん@ピンキー
10/11/07 10:11:18 3t2rGZig
最近のヤンデレは猟奇に走りすぎだ。せめて、言葉様のように壊れてくれないと

738:名無しさん@ピンキー
10/11/07 11:26:06 GiyfdMx5
ポケモン黒みたいな光宙と仲がいい超中性的な恋留さんに嫉妬する若干ヤンデレな来中さん、はないか

739:AAA
10/11/07 13:35:11 5wg6HOcu
久しく投下します

740:風の声 第5話「風の嵐」
10/11/07 13:37:25 5wg6HOcu
今日もいつもと変わらず登校する俺
いつもと同じ風景、同じ人の流れ、同じ空気、ただ一つを除いてはいつもと同じだった。
いつもと違うもの。それは早朝にもかかわらず小さな男の子が一人、駅の構内で泣いている事だった。
別に泣いている事に違和感を感じたわけではなく、見たところ5歳ぐらいの子がこんな早朝にいることが
不思議だった。無視しようとした俺を止めたのは俺の“良心”だった。

「どうした・・・?」

いつもと変わらない、人との接触を拒む声。相手はガキなのにも関わらずこんな声しか出せない自分が嫌いだ。
少年は俺の声に対して当然と言ってもいい態度をとった。簡単に言えば俺に対して臆した。
さすがの俺もまずいと思い、今度は声を和らげ膝を曲げ目線を合わし、“本当の俺”の声で話しかけた。

「こんな朝っぱらからどうしたの?お母さんは?」

少年は少しばかり安心したのか返事をしてくれた。

「置いて・・・いかれた・・・」
「お母さんに?」
「ボクが、欲しい物を買ってくれなくて、それで・・・」

要するにこの少年は母親に駄々をこねて置いていかれたわけだ。

「家は近いのか?」
「うん・・・帰れる・・・」

その言葉を聞き俺は安心した。そしてちょっとした興味から、しなくていい質問をした。

「ちなみに欲しかった物って何なんだ?」

今思えばこんな質問をするんじゃなかったと後悔をしている。少年の口から出た言葉は自分の心に重く響いた。

「信頼できる友達・・・」
(ズキッ・・・)
「ボクの事をいじめない仲間・・・」
(やめろ・・・)
「素直になれる環境」
(もう・・・やめろ・・・)
「それと・・・」
「もう・・・言うな」

少年は話すのを止めない、そして最後の言葉で俺は停止した。

「正直に生きる自分」
「・・・」

この少年を見つけたときに感じた違和感、それが今分かった。こいつは、この少年は・・・俺だ。

「お兄さんはボクにそれらを与えてくれますか?」
「やめろ・・・」

少年の口は動いていない。なのに心に響いてくる。

「オニイサンハ・・・ボクニ・・・」
「やめろぉぉ・・・」
「ソレラヲ、アタエテ・・・」
「やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

741:風の声 第5話「風の嵐」
10/11/07 13:38:28 5wg6HOcu
――ガバッ

(ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・)

気付くとそこはいつもの自分の部屋だった。寝汗をかくほどの悪夢、一人暮らしを始めて、初めて見た・・・

いつもの登校路の駅の構内、いつもと違うものは無かった。幼い俺も、それに値する者も。
幼い俺の代わりに居たのは“大空 舞”だった。

「今朝のニュース、見た?」

バスの中で返事をしない俺にいつもどおり話しかけてくる“大空 舞”
この空気に慣れてしまったのか、最近は酸素ボンベの使用頻度が減ってきている。

「殺人事件なんだけどね、女性の焼死体が見つかったんだって」

だからどうした。俺には関係ない。
焼死体といえば、中学の頃、酸素ボンベとライターを使って俺の事をいじめていた“人”を
焼死体にしようとした事があったのを思い出した。
最終的には失敗し俺が咎められる事になった。

「ねぇ、少しは反応してよ」
「・・・なぁ」
「あ、反応した」
「もう、俺に関わるなよ」
「え・・・」
「迷惑なんだよ、テメェの存在が」
「私はそんなつもりじゃ・・・」
「テメェが思って無くても俺には迷惑なんだよ・・・」
「でも・・・」
「黙れ・・・、もう関わるな」

分かっている。自分がどれだけひどい事を言っているのか。
だが、こうでもしない限り、こいつは俺に付きまとってくる。
これでこいつが関わってこないようになると思うと嬉しい
でもどうして、胸が締め付けられる様な気分になるのだろうか

742:風の声 第5話「風の嵐」
10/11/07 13:39:43 5wg6HOcu
午前の授業が終わり、一息ついていたときだった
カッ、カッ、カッ、カッ
一つの足音が俺の前に来た。足音の主は同じクラスの女子・・・誰だっけ?
名前を思い出そうとしていると(思い出す気は全く無い)

「立ちなさいよ」
「はっ?」
「立て!」

気分が乗らないまま立ち上がった瞬間だった
――パシッ
乾いた音が教室に響く、はたかれた。なぜ?
痛みを我慢しながらもいつもどおりの口調で尋ねる

「何すんだよ・・・」
「あんた、何のつもりよ!!」
「何が・・・」
「とぼけないで!!舞の事よ!」

女子の顔は怒りで満ちていた

「あんた、舞になんてこと言っているのよ!!」
「何か言ったか、俺?」

俺の言葉が言い終わる前に女子は俺の胸倉をつかんできた

「舞があんたと仲良くなりたいからってあんなに頑張っていたのに
『迷惑なんだよ、テメェの存在が』とか『もう関わるな』、よくそんなひどいことが言えるよね!!」
「やめて!」

教室の入口から聞こえた声のほうを俺と女子が振り向くとそこには大空がいた

「翼から手を離して・・・私なら大丈夫だから・・・」
「でも・・・」
「お願い・・・離して・・・」

大空が目に涙を溜めながら言った言葉は女子の心に響き、俺をつかんでいた手は俺から離れていた

「くだらねぇ・・・」
「あ?」
「いちいちくだらない事でつっかかってきやがって、俺みたいな人間に関わるから、こんな事に・・・」

743:風の声 第5話「風の嵐」
10/11/07 13:40:52 5wg6HOcu
――ゴスッ
鈍い音が響いた。今度は、はたくなんて優しい物ではなく拳で殴られた

「!?」
「あんた、いい加減にしなさいよ・・・」

殴られた。当然だ、あんな事を言えば誰だって殴ってくるだろう
言っておくが、さっきの「!?」は俺のじゃない。心の中でこうなる事は分かっていたから驚きの感情など無い。
なら誰のだ?答えは簡単だ、視界の端で口を手で押さえている大空のものだろう

「悪いとか思ってないでしょ!」
何故こいつは関わってくる?
「あんたのせいで・・・舞は傷付いたんだよ!?」
傷付いた?おれが大空を傷つけた?
「人を傷つけといて平気な顔をして・・・」

傷つけた?アリエナイ、だって俺は、“自分”を守るためにあのような態度をとっていた訳で人を傷つけるために
あんな態度をとっていた訳じゃない・・・

「ねぇ、何とか言いなさいよ!!」
俺は・・俺が望んだ高校生活は・・・こんなんじゃない・・・

「お兄さんが望んだんだよ」

今までと違う声が聞こえた。視線を向けるとありえない者がいた。夢に出てきた幼い俺だ

「お兄さんが人との関わりを望まなかった事によって、こうして人を傷つけているんだ」
「違う俺は・・・」
「人を傷つけることにより、自分から人を遠ざけたんだよね?」
「俺は・・・ただ平和に暮らしたくて、傷つけるつもりも無くて・・・それで・・・」
「いつまで偽るつもりだよ・・・」

744:風の声 第5話「風の嵐」
10/11/07 13:41:33 5wg6HOcu
急に声のトーンが変わった。そこには幼い俺ではなく、今現在の俺がいた。
俺とほとんど同じ人間、違うのは白髪ではなく闇よりも深い黒い髪をしているところだった。

「人を傷つけたくない、自分を傷つけたくない、そんな甘い事を考えてんじゃねぇよ!!」
「・・・」
「本当は人とふれあいたかったんじゃねぇのかよ?」
「・・・」
「今ここにいる人間を、中学の奴らと勝手に一緒にして全てを否定していた。逃げてるだけじゃねぇか」
「・・・俺は」
「ラチがあかなさそうだから今この場で決めろ」
「・・・何を?」
「人を傷つけるか、自分を傷つけるか」
「!?」
「選べよ」
「どうして、選ばないといけない?」
「選べよ・・・」
「断る・・・」
「選べ!!」
「断る!!」

こいつは誰だ?俺とほぼ同じ人間で意味の分からない選択肢を突きつけてきて
分からない、解からない、ワカラナイ・・・

「もういい・・・」
「?」
「選ぶ事も新たな選択肢も考える事もできず、自分も他人も偽るような奴は俺じゃない」
「な、何を言って・・・」
「俺が変わってやる、全て壊し、自分を守り抜いてみせる」
「やめろよ・・・」
「俺は一人で充分だ、というわけで、全てを偽る偽者は・・・」
偽者って何?俺は“風魔 翼”の本物であってあいつが偽者で・・・

もっといろんな事を考え、理解したい俺をあいつは一言で片付けた
「消えろ」

その言葉と同時に俺は暗闇へと放り出された。

745:AAA
10/11/07 13:43:49 5wg6HOcu
以上です。
ストーリーは大体決まっているのに表現ができ無い為
小説の価値がどんどん下がっていく・・・

元より、価値なんて無いんだけどねww

746:名無しさん@ピンキー
10/11/07 13:47:08 p2OrvYBH
>>745
GJだが自虐は控えるように
見てて良い気分しないからな

747:名無しさん@ピンキー
10/11/07 13:52:49 Sz0t/Akj
>>745
GJ!
自分を守るための行動が他人を傷つける羽目になったり深層心理の変化の過程なんかがグッときました
うふふ。今後の展開が楽しみです

748:名無しさん@ピンキー
10/11/07 14:08:18 /uLIgM5/
>>745
GJ!


749:名無しさん@ピンキー
10/11/07 14:43:55 Ta+0vHQS
それより、ガバッとかゴスッなんかの擬音をどうにかした方がいい
まるっきり中学生の書いた作文に思えて、笑うにも笑えない

750:名無しさん@ピンキー
10/11/07 14:58:19 j27kJiTa
>>745
投下キタ!!
GJです

751:AAA
10/11/07 15:06:02 5wg6HOcu
749さんに質問
擬音はどう表現すればいい?

752:名無しさん@ピンキー
10/11/07 15:16:41 tQaGR1dc
ID検索すればわかるけどただの荒らしだから

最初から否定的な奴には何も出来ない

753:名無しさん@ピンキー
10/11/07 15:59:54 Ta+0vHQS
オノマトペに頼っているうちは一人前になれない
別の代替手段を考えよう
本当にその音を入れなければならない、何らかの必要性が存在しているんだろうか?
まずはそこからだ

754:名無しさん@ピンキー
10/11/07 16:36:40 GE5zimqx
この場合
ゴスッ、と鈍い音を立てて~
とか書いた方がそれらしくなると思うよ

755:叝墲ノ潜む闇 第6話 ◆4wrA6Z9mx6
10/11/07 17:51:47 BM5rZgek

~Side Seiji at his home~
無事家に辿り着き、誠二は玄関で靴を脱ぐ。
 両親は長期の海外出張、兄の誠一は学生寮住まいで、家には誠二以外誰もいない。
 誰もいない家というのは恐ろしいほど静かで、どこか物寂しさを覚える。
 家の明かりのスイッチを押し、照明をつける。
 学園都市外の一軒家に、一人で住むことがこれほどまでに心細いものだったとは、と今更ながらに思う誠二だった。
 夕飯は弘志との一件で済ませてしまっているので食べる必要はない。だから二階へ上がり、自分の部屋に入って後ろ手にドアを閉めた時、誠二はその場に体育座りでうずくまり、声を押し殺して静かに泣いた。
 今日だけで、どれだけ酷い目に遭っただろうか。
 朝は誹謗中傷の嵐。昼も嵐。そして教科書の破損。放課後になれば不良に絡まれ集団リンチ。挙句の果てには噂を流布した黒幕は兄、久坂誠一、もしくは昨日迫って来たクラスメイト、紬原友里ときた。
 そんな四面楚歌の状況で救いとなるのは先輩、天城美佐枝と友人、雪下弘志の二人。それ以外は全て敵。敵。敵。
 根も葉もないうわさに振り増されている自分に、心底嫌な思いがしていた。しかしここで死のうものなら、その噂を認めることになる、なによりもここまで育ててくれた両親、好きだと言ってくれた先輩に申し訳が立たない。
 さらに言えば、まだ兄も紬原さんも犯人と決まったわけではない。
 これらの事実が誠二にとっての唯一の救いだった。
「今日は、もう寝よう」
 ひとしきり泣いた誠二はブレザーを脱ぎ、ネクタイを外して、制服のままベッドにダイブして意識を手放した。


756:日常に潜む闇 第6話 ◆4wrA6Z9mx6
10/11/07 17:53:33 BM5rZgek


~Next day~
 カーテンの隙間から差す朝日に、誠二は眩しさを感じながら目を覚ました。
「んあ……しまった。制服着たまま寝ちゃったのか」
 バカだなあ自分、と思いながら下着とワイシャツを新しいものに着替える。
 腕時計で時間を確認して、朝食、洗濯をする余裕があると判断すると、すぐに行動に移った。
 洗濯機を動かしている間に朝食を手早く作る。
 と言っても朝はご飯に味噌汁、目玉焼きと決めているのでさしたる手間ではない。ついでに言えばご飯は数日前から冷蔵庫に置いてあるからレンジで温めればすぐだ。
 朝食が整い、誠二は静かにそれを食べ始めた。
 新聞は、一応取ってはいるものの、朝は読む暇がないのでもっぱら夕方が夜に朝刊を読む形になっている。
 ものの十分程度で食べ終わると今度は食器を水に漬けておく。朝は何かと忙しいため家に帰って来てから洗わないと、時間がないのだ。
 次に洗濯機から洗濯を取り出し、部屋干しする。
 そして歯磨き、洗顔、髭剃りと身だしなみを整えて、最後に今日の修行を確認して教科書その他を詰め込むと、誠二は玄関に向かった。
「じゃ、行ってきます」
 しかし誰からも返事が返って来ない。
誠二は外に出て、鍵を締めると自転車に乗って久遠坂学園へ向かう。
 学園はその名の通り坂の上にあるわけで自転車だと辛いのだが、それでもペダルを漕ぐことで生まれる疾走感が彼は好きだった。と言っても坂では自転車から降りるのだが。
 他の学園生に混じって登校し、正門脇の大型駐輪場に停めて、ゲートをくぐって高等部へ向かう。
 だが、やはりと言うべきか、高等部に近づくにつれて誠二に対する視線は比例するように増していった。どうやら噂は既に全校生徒に知れ渡っているらしい。
 中にはあからさまに憎悪のこもった視線を向けて来る生徒もいる。
 そんな中、背後から声をかけられた。
「おはよう、誠二君」
「ああ、おはよう友里」
 一瞬昨日の弘志の話が脳裏をよぎったが、なるべく普通に返す誠二。
 友里はそんな彼の心情を悟ったのだろうか。普段から無表情な顔がさらに無表情さを増して、どこか険のある表情にも思えてくる。
「ねえ、何か隠してる?」


757:日常に潜む闇 第6話 ◆4wrA6Z9mx6
10/11/07 17:54:31 BM5rZgek

「何かって……なに?」
 ここで悟られるわけにはいかない。
 これ以上関係をこじらせたくない誠二は、友里を信じたいと思う気持ちも併せてわざととぼけた。
「……私の思い違いだったのかな?」
「そうなんじゃない?」
 心臓が無意味に高鳴っている。
 不信と希望に挟まれて、誠二の胸中はさらに複雑さを増していた。
 朝食を取っている最中、弘志の衝撃的な内容のことを考えていた。
 でも、兄や紬原友里はとてもそんなことをするような人間とは思えない。だいたい兄弟の仲がギクシャクしているのは自分が兄にコンプレックスを抱いているからだ。
一応、兄は兄なりの自然体でこちらに接している。たとえそれが変人的行動を伴っていたとしても。
 そして紬原友里。彼女は出会って間もないが、すでに色褪せている過去の記憶と照らし合わせても到底考えられない。だが、可能性として考えるなら、紬原友里に疑いがどうしても傾いてしまう。
 弘志はほぼ間違いなくしないだろうが、久坂誠二は紬原友里に襲われている。彼女の自室で。
 未遂だったとはいえ、確かに彼女に襲われた。
ついでに言えばファーストキスも奪われた。とはいえ相手は、まあ美少女だ。嫌なわけではないが、やはり最初は好きな人とちゃんと向き合ってしたかった。
一方的過ぎるのは、色々とショッキングだ。
 話は逸れたが、とにかく強姦未遂に遭い、そして激しく拒絶した。
 つまり拒絶されたことに激高して、復讐(?)に走ったのではないかと誠二は考えていた。
 さらに言えば、復讐という名のイジメで精神的に弱っているところで、どんなに拒絶されても私は貴方が好きよと言う作戦なのではと、自意識過剰も甚だしい展開を想像してしまった。
 そんなこんなで思いつく限りのシナリオを描いてみたが、やはり実際に接した時の感覚、もしくは自分のお人好しさによってどうしてもこの二人ではないと思っている自分がいるのも確かだった。
 しかしどうだろうか。
 今実際に彼女と接して、やはり紬原友里が主犯ではないのかという疑いが再び浮上してくる。
 正体が誰なのかはっきりしないために、疑いのあるものを手っ取り早く犯人扱いして、自分を安心させようとする人間の脆弱さゆえだ。
 それを分かっていても、疑いを完全にぬぐいきることができない。
 誠二は泣きたい気持だった。
 そんな難しい顔をしてる彼をじっと見つめる友里。
 二人は無言のまま、周囲から無数の、様々な視線を受けながら昇降口に向かった。


758:日常に潜む闇 第6話 ◆4wrA6Z9mx6
10/11/07 17:55:14 BM5rZgek


~~1時限目―A first period~~
 誠二は保健室にいた。
 正確に言えば、保健室のベッドに横になっていた。
 カーテンのすぐ向こうには、相変わらずイライラした様子の保健医が火の点いていない煙草を口に含み、片方の脚をもう片方の太ももの上に乗っけて書類作業をしている。
 ―先生、いくらパンツスタイルだからってそんな行儀悪いことするのは若い女性としてどうか思います。
 実際に言ったら一発殴られるどころでは済まなそうなことを思いながら、誠二は静かに天井を真っすぐ見つめていた。
 あれは昇降口―下駄箱での出来事だった。
「あれ? 上履きがない?」
 最初、誰かが間違って履いてしまったのかと思った。
 しかし、遠巻きにこちらを見て笑っている男子生徒たちを目撃して、意図的に隠されたのだと悟る。
 上履きくらいなら、まあいいか。と誠二は考え、靴下のまま教室へ向かおうと足を向けた。
「誠二君、上履きどうしたの?」
「ん? いやあ、なんだか他の人が間違って履いてっちゃったみたい。出席番号のシール貼ってあるのにねえ」
 友里の指摘におどけて見せる誠二。
 彼女は「ふう、ん。そうなの」と大して気にした様子もなく「早く教室に行きましょ」と誠二を促した。
 教室に入ってから、今度は自分の机が消えていた。
その部分だけ、ぽっかりとできた空間。そこには何故か中身が撒き散らされたゴミ箱やら箒、塵取りが置いてあった。
確定的だった。
 しかし誠二はやれやれ仕方ないといった風に肩を一度竦めると、片付けを始めた。
 友里が手伝おうかと言ってくれたが、下手をすれば彼女に被害が及ぶかもしれない。
 さっきまで容疑者扱いしていたのに、こんな時ばかりはなんて心変わりだろうかと自分の馬鹿さ加減に呆れていたのは秘密だ。
 片づけている最中、いきなり紙くずや散りゴミが飛んできた。
 飛んできた方向を見やれば、
「あはっ。ごめーん。片づけ邪魔しちゃったぁ? ついでにそのゴミも片付けといてくれない? ヨロシク―」
 実にすがすがしいまでの嫌がらせだ。
 何も言わずに肩を竦め、黙々と作業を再開する誠二。
 さっきの女子生徒は仲良しグループの和に戻り、何やらキャッキャと騒いでいる。
 どうせ自分にまつわることだろうと聞き流すことを決め込んだ。
 それでもやはり辛いものは辛い。
 この後机も探さないといけないのか、とネガティヴな思考に入りながら、保健室で休もうかなと思い始めていた。
 なにしろ何かと理由をつければ幾らでも休める場所だ。もちろんそれが敵前逃亡を意味するのは分かっている。
 片付け終わると、誠二はふらりと教室を出て、保健室へ向かった。
「あら? 誰かと思えば昨日のイジメられっ子じゃない」
「その節はどうも」
「逃げにきた? まああたしには関係ないからどうでもいいわ。ベッドに潜り込んで泣いてもいいけど、声は出さないでよ。あたし辛気臭いの大嫌いだから」
 じゃあタバコ臭いのはいいのか。
 開口一番とんでもないことを言う保健医に迎えられ、そうして今に至る。
 ちなみに、泣いてなどいない。
 敢えて言うならこれからの戦略を練っていたということにしておこう。


759:日常に潜む闇 第6話 ◆4wrA6Z9mx6
10/11/07 17:57:10 BM5rZgek
「ところでさあイジメられっ子クン」
「先生、いくらなんでもそれは酷いです」
「……あんたどうして苛められてるわけ?」
「さあ? どうしてですかね。敢えて言うなら何者かの策略に嵌められたとでもしておきましょうか」
 保健医にいきなり話しかけられ、誠二はなんとでもないと言った風に応える。
 するといきなりカーテンが開いた。
「イジメはたいてい相手が自分とは異なることを理解しようとしない、もしくは理解不足で起こるものよ。んでもってあんたの場合はマイノリティなケースね。ただの噂で苛烈ないじめが起こるなんて、異常そのものよ」
 科学者そのものの目つきで、保健医がちょうど誠二を見下ろす格好になっている。
 誠二は困ったような、苦笑いするような表情を浮かべた。
「そんなこと言われも分かりません。自分だってどうしてこんな目に遭うのかさっぱりですから」
「でしょうねえ。それが分かってたら苛めなんてとっくに解決してるんだから。ま、あたしが言いたいのは、誰かに心の支えになってもらいなさい。
そうね……同じ価値観を共有するという点では同性がいいのかもしれないけど、今回の場合、異性のほうがいいわねえ。包容力のある女性に悩みを打ち明けて、
価値観を共有してもらうのがいいかも。それにちょうどいい人材もいるわけだし。確か、天城とかって言ったかしら? この間告白されてたみたいだし、この際だからくっついちゃいな。ああでもあたしの目の前でいちゃつくなよ?
 もしやったら医学部の実習材料にしてやるから」
 そんな怖いことを言って、自分のデスクへ保健医は戻って行った。
 とんでもなく他人事を言われた気がするが、しかしそうしたほうがよさそうに思えるのもまた事実。
 どうしたものかと考えていると、1限目の終了のベルが鳴った。
 それから数分して、保健室にやって来たのは天城だった。
「失礼します」
「あらいらっしゃい。例の生徒ならそこで伏せって助けてくれるのを待ってるみたいよ」
 天城の事情を知ってか知らないでか、誠二にとっては不意打ちに等しい行為だ。
 しかし保健医の言葉に彼女は微笑んでしっかりと頷いた。
「風間保健医、煙草は止められたほうが良いです。逃げられますよ?」
「あら生徒が出過ぎた真似をするとは良い根性ね。ウザいから早く消えてくれないかしら?」
「もちろん。言われなくともそうする所存です」
 などという他愛もない会話をして、天城は誠二が横になっているベッドに歩み寄り、カーテンを押しあけた。
「おはよう、久坂誠二。教室に居ないと聞いてな、もしやと思って来た」
「ええ、と……おはようございます、天城先輩」
 彼女のことを悶々と考えていたために、余計に意識してしまう誠二。
 そんな彼に不審を抱くことなく天城はにこりとほほ笑んだ。
「できれば昨日の返事を聞きたいんだが、現状を鑑みるに、君にはその余裕がないとみた。そもそも今はそれが主な目的ではないからな」
「先輩、ちょっと、いいですか……?」
 急に悩むような真面目なような口調になった誠二に、天城も態度を改めた。
「どうした久坂誠二」
「あの、実は天城先輩にお願いがあるんです」
 天城の眉がピクリと動いた。
「その、僕の心の支えになってくれませんか?」
「それは、この間の返事と考えても構わないのか?」
「いえ……それとはまた別に、僕からのお願いです」
「ふふっ。君は卑怯だな。告白の返事をせずに、傍に居てくれなどと、私を生殺させるつもりか?」
「卑怯なのも、先輩に辛い思いをさせるのも、重々承知です。ですが、今だけ―今の状況が改善されるまでの間だけ僕の心の支えになってくれませんか?」
「ふふっ。これはまた……惚れた弱みというやつだな。構わないとも。むしろ喜んでお前の剣に、盾に、鎧になってやろう」
 そう言って、天城は一呼吸間を置いた後にさらに口を開いた。
「ただし、条件がある」
「条件、ですか?」
 その言葉に誠二は首をかしげると同時に一抹の不安を覚えた。
「そうだ。一つ、私を呼び捨てで、名字ではなく名前で呼ぶこと。二つ、私と会話する時、敬語は使わないこと。三つ、私と君は一心同体。つまり何時も離れずにいること。四つ、私のために尽くすこと。もちろん私も君に尽くす」
 どうだ? 難しくもなく、悪くもないだろう?
 天城が提示した条件に、誠二は一瞬逡巡する。
 本当にこれでいいのだろうか。いや、今はこうする他に策はない。
 何よりも、誠二はいつも隣に寄り添ってくれる誰かを心の底から求めていた。
「分かったよ、美佐枝」
 その言葉に、天城は満面の笑みを浮かべて誠二に抱きついた。


760:日常に潜む闇 第6話 ◆4wrA6Z9mx6
10/11/07 17:58:10 BM5rZgek
「ふふふ。嬉しいぞ、誠二。これで私たちはいついかなる時も離れることはない。実に喜ばしい。誠に重畳だ」
 天城のその喜びように戸惑う誠二だったが、今は静かに彼女を抱きしめ返すことにした。
 しかしそれでまるく収まるわけがないというか、そうは問屋がおろさないのが世の常だ。
 ガシャン。と保健室の出入り口付近で何かが落ちる音がした。
 見れば、そこにいるのは紬原友里だった。
「誠二君……その人、誰?」
 落ちたのは弁当だった。
 だが彼女は中身が床に撒き散らされた弁当に目を向けない。
 静かに、だが足取りはしっかりと、こちらに歩み寄って来た。
 誠二と天城は、彼女が誠二に寄り添う形でベッドから離れ、ちょうど真上にあるカーテンレールを境界線とするように対峙する。
「ねえ誠二君、隣にいるの、誰?」
「天城美佐枝先輩だよ。生徒会の副会長。紬原さんも知ってるでしょ?」
「ふうん。それで、どうして誠二君はその人と一緒に居るのかな?」
 今更ながらに誠二は返事に窮した。
 彼女にどう説明すれば、この状況を丸く収めることができるのだろうか・
 さらに言えば、紬原友里の雰囲気が、彼女の自宅で襲われた時、そして夢で見た彼女のそれにそっくりだった。
 何かが不味い。
 嫌な予感しかしなかった。
「ふふっ。照れることはない。私たちの関係は友人たちにしっかりと告げなくてはな。なあ、誠二」
 いつまでも口を開かない誠二に代わって、天城が言った。それも彼の下の名前を呼んで。
 直後、友里は無言で誠二の左手を掴んだ。
「え? ちょ、ちょっと紬原さん?」
 突然のことに戸惑う誠二。
 しかし友里はぐいぐいと、まるで自分の物を取り戻すかのように引っ張っている。というか保健室の外へ引きずり出すようにしている。
「後輩。私の誠二に乱暴を働くとは、いかんせん見過ごせないな」
 パシン。
 誠二を掴む友里の手が強く叩かれた。
 驚き、その拍子に誠二から手を離してしまう友里。
「なに、するんですか……」
 叩かれた手をもう片方の手でかばいながら、天城を睨みつける友里。
 相当強く叩かれたのか、瞬間的に見えた手の甲は真っ赤になっていた。
「誠二と私は、たった今、この場で、一心同体になった。お前のような小娘がしゃしゃり出る所ではないということだ」
「誠二君と私は運命の赤い糸で結ばれているんです。それと、気安く誠二君の名前を呼ぶの止めてくれませんか? 耳障りです。誠二君が汚されます」
「ほう? なかなかに喋るな、後輩。しかし汚す汚されるとは尋常ではない。まるでお前が誠二に対してそうしたように、な」
 指摘され、友里は顔を初めて強張らせた。
 その時、天城は勝ち誇ったような表情を浮かべる。
「ふふ。私は誠二からぜひにと言われ、そして今の関係になったわけだ。残念だったな、後輩」
 行こうか、誠二。
 そう言って戸惑う誠二の背を押して保健室を出て行く天城。
 途中、天城が弁当箱を踏んづけたのは、言うまでもないだろう。
 友里は唇をかみしめ、その場に立ったままうつむいているばかりだった。


761:駄文太郎 ◆4wrA6Z9mx6
10/11/07 18:03:30 BM5rZgek
日常に潜む闇 第6話、以上です。
今回はちょっとばかし修羅場って感じでしたね。
ああでも修羅という表現が適切な状況には発展していなかったと見るべきですか。
まあそんなこんなで次回へ続きます。
仕事で何も問題起きなければ次も週末投下だと思います。

762:名無しさん@ピンキー
10/11/07 19:45:10 X4NwcyiI
>>763
GJ!!
何か会長が誠二いじめてる奴らを粛正しそうで怖い

763:名無しさん@ピンキー
10/11/07 19:51:41 /uLIgM5/
>>763
GJ!
先輩いいな

764:名無しさん@ピンキー
10/11/07 23:19:01 Ta+0vHQS
本編がダメな書き手ほど前書き後書きが饒舌なことよ
やはりプロ気分を味わいたいのかな、調子こきの大文豪先生様としては

765:名無しさん@ピンキー
10/11/07 23:22:40 skA0Bd9l
>>766
ワナビ、ウザいぞ

766:名無しさん@ピンキー
10/11/07 23:23:34 j27kJiTa
>>763
超GJ!!

767:名無しさん@ピンキー
10/11/07 23:44:11 j+DAMRhX
お前らGJしか書けないのかよ
だから批判してる俺かっけえwwwみたいな厨二が湧くんだろ

768:sengoku38
10/11/08 00:13:24 3Bo9qLE1













































煽る奴、自治厨と被害者面してかまう奴等は同様 ……I am wishing your luck.。。

769:名無しさん@ピンキー
10/11/08 00:28:29 ZmjD87FO
GJです!
先輩可愛いな

770:名無しさん@ピンキー
10/11/08 01:36:34 SfxtTxIx
病み描写に必要なのは他の女が主人公に近づくシチュは最強すぎる

771:名無しさん@ピンキー
10/11/08 03:00:06 wQrRrLuj
>>770
コテと厨二もな

772:名無しさん@ピンキー
10/11/08 14:35:09 VmKhBjXG
何を鼻息荒く息巻いているのかと思ったら
また他力本願かよ
懲りないねぇ

773:名無しさん@ピンキー
10/11/08 18:17:20 ZBhSNCkO
ヤンデレっていいよな・・・
好きになった人をずっと好きでい続けるとこが



774:名無しさん@ピンキー
10/11/08 19:18:40 maijvU0H
前スレまだ残ってるのに、前スレのレス数越えちゃったよw
その割には投下クソ少ない。

775:名無しさん@ピンキー
10/11/08 19:48:16 +e1sU966
祈りも天には通じなかったみたいだな

776:名無しさん@ピンキー
10/11/08 23:50:37 TG0DCYBq
まだ200近くあるんだが

777:名無しさん@ピンキー
10/11/09 01:05:42 J5S+/2yM
ウイルスがありますが復旧可能でしょうか?
現状の勢力図
①ss職人…現在引いて静観中
②鰻犬…嫉妬スレを壊滅させた一人現在誰も居無いスレ(マトモな住民はと言う意味)で1※一万年事件の謝罪を要求しているニート
③鰻擬き…②に憧れてるニワカ嵐?夏厨の生き残りか?嫉妬スレにも出没
④アンチヤンデレ家族…2※寝取られ事件以降ヤンデレ家族の話題が出る度寝取られ、追放を連発する粘着嵐‥嫉妬した①の誰かか③か?
⑤煽り…揉めれば楽しい快楽主義者達、但し自演も含まれる
⑥自治厨…②~⑤がレスするとDQNのごとく反発する…結局荒らしに加担しているw「お前は〇〇だろう!」と言うのが決め台詞どうやら透視能力が有るらしい
⑦一般住民…現在減少中
今の流れは②~⑤対⑥⑦経緯は>>405を参照③~⑥当たりが兎里=鰻犬と騒ぎ出し嫉妬スレの鰻犬を攻撃(いまも)現在②が撤退をして欲しければ①がスレを代表して謝罪して嫉妬スレに関与する
なと要求している(理論的に破綻している請求な事は考えれば分かること)

1※一万年事件…嫉妬スレに3年前位(第42当たり)に現れたkyな職人がいた(一万年は作品名)嵐と喧嘩したり、トリの付け方を長々と住民に聞いたりetc
その後住民に叩かれスレからフェードアウトした通称一万年に鰻犬がスレ住民全員に謝罪を要求…結果が出なければ今後10年スレに粘着すると宣言現在に至る

2※寝取られ事件…人気職人ヤンデレ家族(以下ヤンボウ)の作者が保管庫にイラストを投下された嬉しさから一夜漬けで短編を投下、その作品に寝取られの要素が有った為
作者が謝罪をしたにも関わらず③④が狂人の如く騒ぎ出しスレが荒れた。結果ヤンボウ最終話は保管庫に直接投下の異常事態となる


778:名無しさん@ピンキー
10/11/09 01:22:55 zA4DVVkf
本物のウナギイヌが、まだこのスレに来ていないとすれば……
もしこれまでの騒動に業を煮やして本当に来襲する気になってきたとすれば……

779:名無しさん@ピンキー
10/11/09 01:31:52 rXAqLIxw
今の彼女がヤンデレだったらな・・・

780:名無しさん@ピンキー
10/11/09 01:33:29 nVg6P/KB
どうでもいいです。

投下かと思ったじゃねぇかアホ

781:名無しさん@ピンキー
10/11/09 01:39:21 frjkUFiO
⑦が2,3人しかいないってのが元々不自然だったんだよ
書き手過多の状態で潰し合いしてちゃ、早晩こうなる運命だったんだ

782:(=゚ω゚)ノ ◆m10.xSWAbY
10/11/09 01:48:05 Z8aEOzyQ
>>779俺を忘れてんぞカス(#^ω^)

783:名無しさん@ピンキー
10/11/09 01:48:24 B1eyadhl
>>783
挙げ句の果てには「次回はいついつに投下します」なんて
他の作家の投下を牽制する身勝手なアホまで出てくる始末だしな

784:名無しさん@ピンキー
10/11/09 01:50:11 B1eyadhl
>>784
誰だ?テメェは?
俄野郎はお呼びじゃねぇよ

785:名無しさん@ピンキー
10/11/09 01:55:14 k8XaC1mM
触雷の人は結局逃げちゃったのか
出ていく前に何らかの回答が欲しかったな
好きな作家さんだっただけにちょっとガッカリだ

786:(=゚ω゚)ノ ◆m10.xSWAbY
10/11/09 01:59:10 Z8aEOzyQ
>>786俺を知らないとは…
ニワカおつ!(b^ー°)

787:(=゚ω゚)ノ ◆m10.xSWAbY
10/11/09 02:02:36 Z8aEOzyQ
>>787好きな作者なら辛抱強く待とうよ(^з^)-☆Chu!!
俺も一緒に待ってやるからさっ(`∇´ゞ

788:名無しさん@ピンキー
10/11/09 02:06:27 J5S+/2yM
>>784君の正体は分かってるよ…
ここやKスレ、嫉妬スレに現れて
自分は金持ち成功者だ!とか言ってた
熱海の精神病院で療養中の自称大物さんでしょうw
確か俺が居る限りこことKスレは潰さんとか言ってたけど
今こそ有言実行してくれョ
まあ、嫉妬スレで鰻犬に喧嘩を売って最後はお涙頂戴戦術に和解したみたいだし
あんたヤンボウの葉月が好きだったみたいだけど、寝取られ事件の時何も出来なかったでしょうお宅w
まあ、喧嘩売るのが趣味みたいだけど…
快楽主義者に構う程スレ住民に余裕が無いのよ(苦w)
自分ももうレス返しはシナイので
後はご自由にw

789:名無しさん@ピンキー
10/11/09 02:06:39 k8XaC1mM
やっぱり去る者は追わずが鉄則だろう

それよりお前が去れよ、Fuckin'糞VIPPER

790:(=゚ω゚)ノ ◆m10.xSWAbY
10/11/09 02:13:17 Z8aEOzyQ
>>790盛大な勘違いクソフイタwwwwww起きてる時の毛利コゴローかてめーはwwwww
まぁ確かに葉月さんで17回は抜けるけどね?

791:名無しさん@ピンキー
10/11/09 02:16:10 XxIfMQcn
>>790の正体も分かったけど
ヤンデレ家族の作者様でしょ?
素人が書いたなんちゃって小説なのに、葉月とかキャラの名前なんか出すから直ぐにばれる
愛着のある作者以外にそんなの一々覚えてて、こんなレス付ける時に使わないってのw

792:(=゚ω゚)ノ ◆m10.xSWAbY
10/11/09 02:16:25 Z8aEOzyQ
>>791いやだいやだ|( ̄3 ̄)|ボクは絶対出て行かないからな!

793:名無しさん@ピンキー
10/11/09 02:18:56 ymIZ7D4t
おまえらのスルースキルが最底辺なことは分かった

794: ◆m10.xSWAbY
10/11/09 02:20:39 Z8aEOzyQ
>>795(^_^;)今更何言ってるのこのこ

795:名無しさん@ピンキー
10/11/09 02:27:19 MDXv2NXh
ええい桜の幹と触雷、ホトトギスにヤンデレ家族の後日談はまだか!
リバースでも何でも良い!
荒れたスレには投下しかない

796:名無しさん@ピンキー
10/11/09 02:33:07 rSsDsBJz
投下したら、どうせ誰かが難癖付けるでしょ


797:名無しさん@ピンキー
10/11/09 02:40:05 TvaJGjlA
>>797
桜の幹とホトトギスってあんまり記憶にないけど、面白いのそれ?
駄文さんがいてくれるから他の人は別に無理してもらわなくてもいいんじゃない

798:名無しさん@ピンキー
10/11/09 02:46:23 q/ohgp2z
荒らし飽きたのかと思ったがまだ居たか
いいぞ頑張れ
どうせまた類似スレできるんだしここは潰れてもいいからもっと荒らせ
荒らしをスルーできない奴らを見てると笑えるから

799:名無しさん@ピンキー
10/11/09 05:20:45 CRTT/GLV















































800:名無しさん@ピンキー
10/11/09 09:19:52 a1d8vOPQ
作品投下まだかなー

801:名無しさん@ピンキー
10/11/09 09:24:27 IswDp+iy
おまいらにぼし食えにぼし!

802:名無しさん@ピンキー
10/11/09 10:14:43 M1vZWshd
ヤンデレが多いスレだな…

803:名無しさん@ピンキー
10/11/09 11:49:33 nVg6P/KB
男の場合はヤンデレじゃなくてキ○ガイ

804:名無しさん@ピンキー
10/11/09 14:19:24 WUiy8zo7
真にヤンでる住人が居るなら誉められるために荒らしを特定してちょんぱなりにしてるはず

805:名無しさん@ピンキー
10/11/09 16:27:23 LxmEjee/
男のヤンデレってありえないんですか?

806:名無しさん@ピンキー
10/11/09 16:34:41 a1d8vOPQ
>>807
基本はまずい、注意書きで書いてあればいいけどね

807:名無しさん@ピンキー
10/11/09 17:27:05 CRTT/GLV




































テストw

808:名無しさん@ピンキー
10/11/09 17:43:12 zZSdJFVG
>>807
男のヤンデレなんて誰が好き好んで見るんだよ…。女は可愛げがあるから見れるけど、男は流石にない。
あと、ヤンデレと言う言葉は女にしか当てはまらない。
なぜかと言われても、ヤンデレだからとしか言いようがないけどね。

809:名無しさん@ピンキー
10/11/09 17:44:14 zZSdJFVG
てゆうか>>1に基本的にNGって書いてるから。

810:名無しさん@ピンキー
10/11/09 17:47:30 2acFONIh
今は男ヤンデレのスレもあるし向こうでやると喜ばれると思う

811:名無しさん@ピンキー
10/11/09 18:04:13 M1vZWshd
じゃあ、その醜いやり取りを向こうでしてきてくれ

812:名無しさん@ピンキー
10/11/09 18:38:57 Oss/fXBy
綺麗な女装子か可愛い男の娘のヤンデレなら激しく見たい
パッと見じゃ女にしか見えないような

813:名無しさん@ピンキー
10/11/09 18:42:35 2CBZmdsK
>>799
好みがあるから何とも言えんけど、個人的には好きな部類ってだけ
合わなかったら申し訳ない
主人公を無理矢理孤立させて、主人公には自分しかいない状況を作り出す幼馴染み

主人公を逆レイプする従妹 
この二つにピンと来たら読んでみると良い

814:799
10/11/09 18:49:32 MhIl97fG
>>815
わざわざありがとう
けど、あんまり面白くなさそうだから止めとくよ
どっちにせよ駄文さんの作品の方が上だろうし

815:名無しさん@ピンキー
10/11/09 18:55:44 zZSdJFVG
>>816
いや、そんなこと知らん。

816:名無しさん@ピンキー
10/11/09 19:18:33 nVg6P/KB
桜の幹更新して欲しいわー

817:名無しさん@ピンキー
10/11/09 19:39:11 TUrH9P+I
なんで急に懐古厨が湧いてきたの?
こいつらウジ虫なの?

818:名無しさん@ピンキー
10/11/09 20:26:54 YMxc1doM
我は、ただ黙って投下を待つのみ

819:(=゚ω゚)ノ ◆m10.xSWAbY
10/11/09 20:50:43 Z8aEOzyQ
黙ってませんよお爺ちゃん(-o-;)

820:名無しさん@ピンキー
10/11/09 20:55:36 35/vg9Xn
>>820は結局のところ黙れてないし

821:名無しさん@ピンキー
10/11/09 21:11:49 1SYOnDHq
おい、お前らちゃんと荒らしさんの相手してやれよ!
相手するのがいないから煽りの質も落ちてきたじゃないか!

822:名無しさん@ピンキー
10/11/09 21:38:06 KFpVossM
持ちつ持たれつなのか
糞みたいな住民には糞みたいな荒らしが似合ってるよ

823:名無しさん@ピンキー
10/11/09 21:40:30 LcRRiy4G
>>823みたく住民が荒らしを望んでいるとなると、これは問題だな
いや、冗談ではなく

824:名無しさん@ピンキー
10/11/09 21:47:22 nVg6P/KB
明らかな自演が多いな

825:名無しさん@ピンキー
10/11/09 21:48:04 7HvEyleS
はっきり言ってやろうか?
これで地球は終わりだ

826:名無しさん@ピンキー
10/11/09 21:50:46 G+TqNAx9
ぽけもん 黒 は更新してくれないのかなぁ…

827:名無しさん@ピンキー
10/11/09 22:00:16 8N7nO23d
自治厨としては、もっと荒らしに暴れてもらわなきゃならない理由があるもんな
荒らしを煽って、更に悪辣なことをさせようって魂胆が見え見えだ
そういうマッチポンプじみた悪巧みは、結局スレに対する裏切りじゃないのかなw

828: ◆Uw02HM2doE
10/11/09 23:31:11 ykVc5Wto
こんばんは。今回は17話を投下します。
前回アドバイスや指摘をくださった方、ありがとうございました。

829:名無しさん@ピンキー
10/11/09 23:32:29 zZSdJFVG
間違いなく、このスレは終わり。
てゆうかSS自体終わり。

830:リバース ◆Uw02HM2doE
10/11/09 23:32:36 ykVc5Wto
「とりあえず命は何とか繋いだ。後は本人の体力次第だな」
「すいません黒川さん。帰ってきて早々」
藤川邸には医者が常駐していると英に聞いたことがあった。だからこそ避難先に英の屋敷を選んだ訳なのだが……。
「よっ、少年!元気だったか」
「……何でアンタがここに居るんだよ」
「いやぁつい先日病院の仕事が片付いたからこっちに戻ってきたら……ねぇ。妹さんも元気か」
「あ、はい」
そう。よりによってその"常駐している医者"が記憶喪失直後の担当医だったあの黒川さんだったのだ。
「まあこれも何かの運命だな!仲良くやろうや少年!」
「はあ……」
「要、話は聞かせてもらった。今亮介にも連絡したらすぐに来るってさ。……その子か」
英が里奈を見つめる。そういえば英がこうして里奈に会うのは初めてか。潤は心配そうに二人を見つめていた。
「えっと……あたし里奈って言います!匿ってくれてありがとう!」
「あ……うん……どう致しまして」
自己紹介をする里奈に対して見たこともないようなぎこちない笑みで返す英。やはりまだ会わせるのは早かったのかもしれない。
「潤、英と話したいことがあるから里奈と外にいてくれないか」
「……うん、分かった。里奈、行こう」
潤は察してくれたらしく里奈を連れて部屋を出ていった。
「……英、俺さ」
「いいんだ、要が悪い訳じゃないから」
先程と同じかそれ以上にぎこちない笑みを浮かべる英。……そんな顔されたら何も言えねぇよ。
「里奈……か。栄作さんもよくやるな」
「黒川さん……」
そんな英の肩を叩きながら黒川さんが言う。どうやら今ので察したらしい。さすが医者といったとこだろうか。
「要君……だったよね。君のことは妹からよく聞いてるよ」
「妹……?」
「ああ、君らのクラスの担任の黒川。あれ僕の妹だからさ」
「「……ええっ!?」」
衝撃の事実に俺と英が思わずハモる。つーか全く似ていないんだが。
「まあ大体は要君の愚痴だがね。結局アイツも僕も君が心配なんだ」
「アイツ……」
黒川先生をアイツ呼ばわりか。いや、兄妹だから当たり前といえば当たり前なんだが。
「とにかく頑張れよ!何かあったらいつでも相談しろよ?妹でも良いからさ」
そういうと黒川さんは医務室へ戻って行った。
「……要、ゴメン。でも僕も知らなかったんだ」
「いや、あれは気が付かないだろ」
とりあえず黒川先生には今後近付かないことが決定した。

831:リバース ◆Uw02HM2doE
10/11/09 23:33:45 ykVc5Wto

藤川邸には今英しか住んでいないらしい。父親の栄作さんはまだしばらくは病院だそうだ。
亮介も合流しとりあえず今日起きたことをかい摘まんで説明した。
リビングで一通りの話をした時には既にここに来てから小一時間ほど経っていた。
「なるほど……。つまり会長は本気で要を自分のモノにしたいわけか」
「ああ……。そういえば英、遥に連絡は?」
「それが着かないんだ。もしかしたら既に会長に……」
今にも会長がここにやって来るかもしれない。それを考えると手が震える。思い出してしまうのだ。会長のあの瞳を。
「……これは俺の問題だ。皆には―」
「関係ないわけないよ」
潤が俺を見つめながら喋る。里奈は疲れたのか隣のソファーで寝ていた。
「だって私たちは"要組"なんだよ?……仲間の問題は皆の問題だから」
「勿論会長の暴走を止めるのも俺達の役目だしな。細かいこと気にしてんじゃねぇよ」
亮介に思い切り背中を叩かれる。かなり痛かったが不思議と手の震えは止まった。
「僕たちは6人で一つなんだ。それは要が記憶喪失になっても変わらないよ」
「……ありがとう、皆」
今ならどうして記憶を失う前の俺が"要組"を結成したのか、分かる気がする。きっと俺は寂しかったんだ。
あの夢で見た、いや過去の記憶の中の俺は一人では耐えられなかったのかもしれない。いずれにせよ、今は仲間がいることに感謝だな。
「とりあえずまだ会長は来ないみたいだし―」
英がそう言いながら立ち上がった次の瞬間、二階にある大きな窓がけたたましい音を立てて割れた。
「な、何っ!?」
「下がれっ!」
藤川邸のリビングはちょうど二階が吹き抜けになっている為、割れた硝子がまるで雨のように降り注いでくる。
「兄さんっ!」
「分かってる!」
間一髪、寝ている里奈を抱き抱えて奥へと逃げる。
振り返るとついさっきまで俺達が座っていた場所に硝子の雨が降り注いでいた。と同時に何かがそれらと一緒に降ってきてソファーに激突する。
「くっ!?会長か!?」
「いや、あれは……」
硝子と共に降ってきた金髪のメイドは何事もなかったように起き上がり、服に付いた硝子の破片を払い落としていた。
「損傷軽微……たいしたことはありませんね」
「お、桜花!?」
「やはりここにいましたか要。迎えに行くといったのに困った人です」
軽く溜め息をつきながら近付いてくる桜花。何だこの感じ……。無意識に後退りしてしまう。桜花からも会長から感じたあの狂気を確かに感じる。
「人の夫を盗ろうだなんて、とんだメイドだな」
俺達と桜花の距離が後少しになった時、会長が正面口扉を蹴飛ばして入って来た。蹴飛ばされた扉は粉々になって四散する。
「優お嬢様の夫?随分と笑えない冗談ですね」
「私からすれば人間でない君が要を愛しているなどとほざく方がよっぽど笑えないがね」
桜花は向きを変えてゆっくりと会長に近付く。会長はソファーの側で止まっていた。
「これだから世間知らずのお嬢様は困ります。愛とは本人同士が好き合っていることなのですよ」
「ならば余計に笑えない。要が好きなのは私だからな」
二人の距離が近付いていく。気が付けば無意識に走り出していた。もう我慢出来ない。二人を止めなければならないんだ。

832:リバース ◆Uw02HM2doE
10/11/09 23:34:35 ykVc5Wto
「に、兄さん!?」
「止めろよっ!」
二人の間に割って入る。が次の瞬間には激痛が腹部を襲った。
「なっ!?」
「か、要っ!?」
「ぐっ……!」
無理矢理割って入ったせいで会長の蹴りをまともに受けていた。
桜花の方は幸い防御するつもりだったらしく何も喰らわずにすんだ。意識が飛びそうになるのを何とか堪える。駄目だ、ここで気絶したら何も変わらない。
「か、要……何故―」
「いい加減にしろよ!?てめぇがやってること分かってんのか!?」
今にも気絶しそうな意識を振り絞って会長に怒鳴る。突然のことに驚いたのか、会長は固まっていた。
「……俺、会長のこと尊敬してた。だから全校生徒の前でああやって言われても嬉しかったよ」
「わ、私も要のことが―」
「でも俺の好きな会長……優はこんなんじゃねぇ!もっとクールで……それでもってすげぇ暖かい人だ!でも今の優はそうじゃねぇ!」
会長が一歩後ずさる。先程の威圧感は微塵も感じられない。本来なら澄んでいるはずの碧眼には一切の光も写ってはいなかった。
「わ、私は……ただ要が喜ぶって思ったんだ……。全員壊せば……要は私の……」
「……そんなの俺は望んでない」
優の目をしっかり見据えて言う。彼女は微かに震えていた。あまりの変わりように心が痛むが言わなくてはならない。これは俺にしか出来ないはずだから。
「不安なんだ……君が……君が憧れる先輩を……完璧に…え、演じきれているのか……私は強くないと……」
「俺は……俺は今の優のこと、好きには……なれない……ゴメン」
優の目が大きく見開く。俺のせいだ。もっと前からはっきり言うべきだったんだ。なのに……なのに言えなかった。
彼女を悲しませたくなくて……いや、本当は見たくなかったんだ。皆の見本であり尊敬する彼女の弱さを。結局優を狂気に突き落としたのは……俺だったのかもしれない。
「…………………………………ふふっ」
「ゆ、優」
「あはははははははははは!あははは!」
優は涙を流しながらしばらく笑い続けた。そこにいる誰もが何も出来ないで彼女を見ていた。やがて糸の切れた操り人形のように優は倒れた。
「優っ?優っ!?」
「か、会長っ!?」
駆け寄り抱き寄せるが優はまるで魂が抜けてしまったかのように天井を虚ろな目をして見ていた。



結局優は目を覚まさず桜花が近くの病院に連れて行くことになった。黒川さんも撫子を連れて同行することになったが事情は聞かないでくれた。
「……優のこと、頼む」
「……私はどうすれば良いのでしょう。要のことが好きなのは揺るぎません。ですが……」
桜花は目を閉じて沈黙する。何か自分の中で整理できないことがあるのだろうか。
「……桜花?」
「要の言葉に……要のさっきの言葉に動揺したのはお嬢様だけではなかった、ということです。私は……」
そのまま続きを言うことなく桜花は黒川さんと撫子を乗せて病院に向かった。残されたのは荒れ果てたリビングに立ち尽くす俺達だけ。
「要っ!」
「……遥。無事だったのか」
ちょうど桜花の車を入れ替わりで遥が来た。おそらくさっき送った英のメールを見たのだろう。
「優は……?」
「……俺の……せいだ」
「要?」
そう、優もまた寂しかったんだ。たった一人で美空開発という大企業の看板を背負わされて平気なわけがない。だからこそ彼女は"要組"に支えを求めたんじゃないのか。
「……兄さんのせいじゃないよ。だからもう帰ろう?」
「くそっ……!」
携帯を床に投げ付ける。なんてふがいないんだ。結局俺は助けられなかった。俺にしか出来なかったのに。俺だけが彼女を救えたはずだったのに。
「……潤、要を頼むよ」
「うん、兄さん……今は帰ろう?」
潤に促され無言で立ち上がる。どうせここにいても何も出来ないし優が目覚めるわけでもない。里奈は潤の背中で寝ていた。
「……要、携帯」
遥が拾ってくれた携帯を受け取る。意外と丈夫なんだな、なんてくだらないことを考える。でなければ耐えられそうになかった。
「要……」
「……じゃあ、また」
どうすれば良かったんだろう。それだけがずっと頭の中で浮かんでは消えてを繰り返していた。

833:リバース ◆Uw02HM2doE
10/11/09 23:36:05 ykVc5Wto

最初はただの高飛車な生徒会長としか思わなかった。俺が興味本位で生徒会書記にならなかったから、今でもそうとしか思っていなかったのだろう。
「"要組"……か。中々面白いな」
「やっぱり会長もそう思うか!?」
放課後の生徒会室。夏前くらいから段々会長と打ち解けて来て気が付いたら自然と生徒会室で彼女と話をしていることが多々あった。
「しかし何故要、なんだ?私も入るなら普通年上を立てて"優組"にするべきだろう」
不適な笑みを浮かべる会長。でも俺は知っている。彼女の弱さを。つい先日打ち明けられたのだ。
彼女は孤独だった。小さい頃から大企業である"美空開発の一人娘"として会長は見られてきた。
近寄ってくる奴らは皆、彼女の肩書しか見ておらず自然と彼女は他人を信じられなくなっていたらしい。
「まあ、私に初めて"美空?聞いたことないな、ラーメン屋?"と言った度胸は買ってやるがな」
「あ、あれは仕方ないだろうが!?知らなかったんだしさ……。つーか一字一句覚えてんのか!?」
そんな時俺が爆弾発言をしてしまったのだ。まあ結果的には会長にとってそれは人生で初めて"肩書"以外を見てくれた台詞となったのだった。
「こないだも言ったが私は弱虫なんだ。本当は強くなんかない。今だって要に嫌われていないか心配なんだ……。異常、だろ?」
苦笑いしながら振り向く会長はどこかはかなげ美しさを備えていた。
「……俺は好きですけどね、会長のそういうところ」
「……物好きだな」
そう、"要組"はそんな一人では生きていけない"仲間"を集う会なのだ。
「じゃあ名前は"要組"でいきましょうか!」
「……君の好きに好きにしろ」
優しく微笑む会長。そう、美空優はクールでそれでいて暖かくて、反面孤独故にとても独占欲が強い女の子だったんだ。



「…………」
日差しが眩しい。時計を見ると既に午後2時だった。改めて思う。あの地獄のような晩から無事に生還出来たのだ、と。
「……いや、無事じゃないか」
今の夢、いや過去の記憶はおそらく俺と優の出会いと彼女の本当の姿を表したものだった。
「弱虫……か」
もう少し早くこのことを思い出せていたら、結果は変わっていたのだろうか。
考えても無駄だと分かっていても止められない。とりあえず気分を変えようとリビングへ向かう。
「あ、兄さん……」
「潤……どうしたその顔?」
洗面所から出て来た潤と鉢合わせになる。何故か潤の顔はびしょ濡れだった。顔でも洗っていたのだろうか。
「別に顔洗ってただけだから……兄さん」
「ん?」
潤が抱き着いてくる。何故か少しだけ震えていた。顔を俺の胸に埋めているので表情は分からない。
「兄さんは……兄さんはもういなくなったりしないよね?」
「……潤?」
「私の側から離れたりしないよね?……たった一人の"家族"なんだから」
「あ、ああ……」
俺の返事を聞くと潤は抱き着くのを止め、俺に微笑んだ。よく見ると目の下には隈が出来ている。
「……そうだよね。心配する必要なんてないもんね。会長は……自業自得だったんだもんね」
潤の呟きが後半部分は聞こえない。一体何と言っていたんだろう。
「兄さん、今お昼作るから!」
気が付けば潤はリビングへの扉を元気良く開けていた。俺が知っているいつもの潤だ。
……だったら今のは一体……?
「……潤は変わったんだ。大丈夫」
もう出会った時の狂気に支配された潤じゃないはずなんだ。だってあんなに里奈と仲が良くて―

『不安なんだ……君が……君が憧れる先輩を……完璧に…え、演じきれているのか……私は強くないと……』

「……潤は、大丈夫だ」
潤は里奈のことを本当に可愛がっている。決して俺に好かれる為にやっている訳じゃない。そう思うのに何故か不安感は拭い去れなかった。

834:リバース ◆Uw02HM2doE
10/11/09 23:37:39 ykVc5Wto

優が学校に来なくなってから一週間が経った。
表向きは"インフルエンザで欠席"となっているが勿論本当は違う。
何度も優の入院している病院に見舞いに行ったが毎回面会謝絶で結局まだ一度も会えずにいた。
「……何か避けられてるな、俺」
優のあの全校集会以来、俺が廊下を歩くだけで皆自分のクラスに戻ってしまったり、クラスメイトに至っては俺の席に近付きもしない。
「まあ面倒事に巻き込まれたくない気持ちは痛い程分かるけどな……」
この学校、下手したらこの地域で最も権力を有する美空家を敵に回して無事で済むわけがない。まさに触らぬ神に祟り無し、といったところか。
最初はからかってくれていた男子連中も今では腫れ物でも触るかのような態度しか取ってくれない。
メールも今までとは打って変わって"もう連絡しないでくれ"的な内容の物になり、今では要組の皆としかやり取りしていない。
「……災難は続くものだからな」
そう呟いて自分を慰めるくらいしか出来なかった。
「元気ないね、要」
「早く購買行こうぜ。秘伝のカレーパンが売り切れちまう!」
それでも英と亮介は全く変わらず俺に接していてくれる。持つべきものは友達、とはよく言ったものだ。とにかく今は誰かと一緒にいたい気分だった。
「……よし、急ぐか!」
孤独になることの恐ろしさ。それを最も味わってきたであろう優。皮肉にもそんな彼女を"壊した"俺が今、その孤独を恐れている。



放課後。一人で帰り道を歩く。英も亮介も用事があるようで今日は久しぶりに一人だ。
「……はぁ」
思わず溜め息をつく。空には俺の気持ちとは対称的に綺麗な夕焼けが広がっていた。何となく家に帰りたくなくて、当てもなく歩き続ける。

どれくらい歩いたのだろう、気が付けば海のすぐ近くまで来ていた。
夕焼けに染まる海は、まるで燃えているようで水面が輝いている。近くの柵に寄り掛かり海を眺めると少し気分が晴れたような気がした。
「……どうすれば良かったんだろう」
優が倒れてからずっと考えてしまうこと。こんな綺麗な夕焼けを目の前にしても尚、答えは見つからない。
「……優」
優のことだけじゃない。これからどうすれば良いのか、それもまた分からなくなってしまった。
鮎樫、もとい海有朔夜は言っていた。『平穏』が壊れてしまう、と。記憶は断片的に戻ってきてはいるがまだ完全ではない。でも不完全でこんな悲劇が起こるなら―
「…………偶然だ。何であんな奴の言うこと、真に受けてんだよ」
気が滅入っているからかもしれない。女の子の名前を言っただけで不幸になるなて馬鹿げた話だ。

835:リバース ◆Uw02HM2doE
10/11/09 23:38:26 ykVc5Wto
「……要?」
声のした方を振り向くとそこには遥がいた。夕焼けに照らされた白髪がとても印象的だった。
「……遥、こんな所で何してんだ」
「散歩。要こそ何してるの?」
「……散歩」
「そう」
遥はそれ以上は何も聞かず俺の隣に来て同じように夕焼けを見始めた。そういえば遥と二人きりになるのは家に行った時以来だ。
「……綺麗だよな、夕焼け」
「……うん」
二人して夕焼けを見ながらぽつぽつと会話をする。こんな些細なことなのにいつの間にか落ち着いている自分がいた。
「……要は太陽だね」
「太陽……それ褒め言葉か?」
俺の問いには答えず遥は夕焼けを見ながら続ける。
「太陽はね、いつでも誰かを照らしてる。色を変えながら色んなものを照らしてくれるの」
「……そうだな」
「朝は白くて昼は黄色くて……今はオレンジ。夜にはいなくなっちゃうけど、代わりに月を照らしてあげられる」
遥は柵に寄り掛かりながら話し続ける。彼女の横顔は何処か寂しそうだった。
「月は太陽がいるから輝けるんだ。……だから月は不安なんだよ。太陽が照らしてくれないと月は一人ぼっちだから」
「一人ぼっち……」
一体誰のことを言っているのだろうか。優のことを言っているならば俺は太陽なんかじゃない。なぜなら俺は彼女を……。
「だから太陽は疎まれても避けられても輝かないといけない。それが月を生かす唯一の手段だから」
「避けられても……か」
やっと分かった。遥は俺を励ましてくれているんだ。太陽、つまり俺にたとえ避けられても諦めるなと言ってくれている。
「大丈夫。だって月は……わたしはずっと要を見ているから」
「えっ?」
一瞬何をされたか分からなかった。頬には柔らかい感触。遥は顔を真っ赤にして足早に去って行った。
遥の背中がかなり小さくなった頃、ようやく頬にキスされたということに気が付く。
「……ありがとな、遥」
若干戸惑いはあるが今は素直に嬉しかった。俺自身の為だけじゃなくて俺を必要としてくれる人の為に頑張る。そう思うだけで少し楽になれた。

836:リバース ◆Uw02HM2doE
10/11/09 23:39:14 ykVc5Wto

「ただいま……ってうおっ!?」
「おかえりカナメ!」
「あ、兄さんお帰りなさい。もう晩ご飯出来てるよ」
家に帰るといきなり里奈に抱き着かれた。潤はピンクのエプロン姿で半身を覗かせている。リビングからは美味そうなカレーの匂いがした。
「遅くなってわりぃ。さ、早く食べようぜ」
里奈に左手を引っ張られてリビングに行く。テーブルには潤特製のカレーが三つ、既に用意されていた。
「お腹ペコペコだぁ……。カナメ、ジュン、早く食べよう!」
「まず手を洗ってからだよ、里奈!」
二人を見ていると本当に歳の離れた姉妹のようで何と言うか微笑ましい。この家もまた、要組と同じく今の俺の心を支えてくれているのかもしれない。



夕飯の後、リビングでテレビを見ていた。いつものように里奈は俺の膝の上に座っている。
「……中々当たらないね」
「まあファミレスっていうとメニューが山ほどあるからなぁ」
今見ている番組ではあるファミレスの人気ベスト10を当てるまで帰れないとかいう無茶苦茶な企画をやっていた。
里奈が真剣に考えているのでそれに付き合わされている形だ。
「ええっ!?オムライス入ってないの!?」
「うわっ、まだ3品しか当ててねぇぞ……ん?」
「ふふっ、激写!」
突然のシャッター音に振り返ると携帯で俺達を撮っていた潤がいる。
「おい、肖像権の侵害だぞ」
「ショウゾウケン?」
「まあまあ。兄さんにも送るから」
ポカンとしている里奈を尻目に潤は携帯をいじっている。
やはり現役女子高生、打つ速さが軽く俺の2倍くらいだ。あっという間にメールを打ち終えていた。
「よし……送信完了!」
「別に送らなくても良いんだが……」
まあ全く気にならないといったら嘘になる。しかし30秒程経ってもメールが来る様子はない。
「あれ?おかしいな……」
「違う奴に送ったんじゃないか?」
「ううん、確かに兄さんに送ったよ。ほら」
潤が携帯を差し出してくる。宛先には確かにちゃんと"白川要"と書いてあった。しかし3分経ってもメールは来ない。
「故障か?参ったな……まだ買って半年も経ってない―」
「兄さん、ちょっと良いかな?」
俺の答えを聞く前に潤は俺から素早く携帯を取り上げた。文句でも言おうと思ったがいつの間にか潤から笑顔が消えていた。
写真が届かなかったことがそんなに気に入らなかったのだろうか。
……いや、もっと別な何かに対して怒っているような気がする。里奈も潤を心配そうに見上げていた。やがて潤は笑みを浮かべて俺に携帯を差し出した。
「ありがとう兄さん。メール、ちょうど届いたよ」
「……そっか」
返して貰った携帯には確かに新着メールが1件表示されており、それは潤からのメールだった。
「私ちょっと部屋に戻るね。明日の宿題まだ終わってないから」
そういうと潤は二階に上がっていった。
「……気のせい…か」
あの怒りは一体何だった。たかがメールが届かないだけであんなに起こるものなのだろうか。
「……考えすぎだよな」
「カナメ、写真は?」
「ああ、そうだったな」
里奈に催促されて先程のメールの添付ファイルを開く。そこには楽しそうにテレビを見ている俺と里奈の姿があった。
「大丈夫……だよな」
里奈の頭を撫でながらそう自分に言い聞かせた。

837: ◆Uw02HM2doE
10/11/09 23:40:49 ykVc5Wto
今回はここまでです。読んでくださった方、ありがとうございました。
投下終了します。

838:名無しさん@ピンキー
10/11/09 23:42:10 t4d612bu
gjです!

839:名無しさん@ピンキー
10/11/09 23:49:19 btJdP9ZA
GJです
続き期待してまってます!!

840:名無しさん@ピンキー
10/11/10 00:12:02 +BJRKQ0u
また不自然なGJが連発されて無駄にレスが進んでいくんだろうなあ
虚しくならないか?

841:sengoku38
10/11/10 00:13:50 MD8k/pUO
リバース ◆Uw02HM2doE…その男気にGJだ…





















質の悪い連中ほど最後まで居残る
賢き人は他に場所を見つけて去っていく。空気を読めない奴、荒らしのような奴
かなり残念な作品の書き手も、
周囲が沈黙していれば自ずと去る
どれも反応を貰えなきゃ当人にとって意味がない
あえて騒げばまともな人間ほど
「ここはもうだめだな」と黙って去って行く
エロパロ板が荒廃している中作品過多発言や  
「類似スレに移れば良いさ」
のゆとり厨
文藝評論家気取りの荒らしと
面白おかしければ良い
腐れ
…自分さえ楽しければ良い、今さえ楽しければ良いとゆう自称評論家やネガキャン厨、自治厨には荒らしと
ゆう台詞が相応しい


842:名無しさん@ピンキー
10/11/10 00:18:33 S6xry/lN
ヤンデレ家族のネトラレって何話あたり?
つかネトラレたの妹?

843:名無しさん@ピンキー
10/11/10 00:26:15 5dI4REk6
>>839
GJ

>>842
荒らしとそれに反応する幼稚園児のレスの方が無駄すぎる

>>843
日本語でおk

>>844
同じ作者が書いた別のSSだ

844:名無しさん@ピンキー
10/11/10 00:30:41 v9ft95QS
>>844
だから寝取られてすらねーって。
荒らす為の切っ掛けに使われただけだよ。
てゆうか自分で確かめろカス、死ね

845:名無しさん@ピンキー
10/11/10 00:31:18 v9ft95QS
sage忘れスマン

846:名無しさん@ピンキー
10/11/10 00:39:47 Ga5iFbwN
>>839
GJ!
待ってました!

847:名無しさん@ピンキー
10/11/10 00:41:02 S6xry/lN
>>845
ヤンデレ家族じゃないのか
サンクス
>>846
久しぶりに来たせいでどこまで読んだか覚えてなかったんだ正直すまん

848:名無しさん@ピンキー
10/11/10 01:47:27 cvgHMBav
>>844
短編「王女と騎士 偏愛と忠義」

849:名無しさん@ピンキー
10/11/10 01:57:27 Pjtzl7VB
>>839
GJです
やばい、遥がスゲーかわいすぎる。今までは積極的に関わってこなかったからこれからが楽しみだ

850:名無しさん@ピンキー
10/11/10 01:57:30 Yai/IH69
このごろにはこれも過ぎ去るだろうと言う言葉が思い出す。
それでも38番まで続いて来たスレだから今は雰囲気が悪くてもすなわち大丈夫になると信じるぞ。

851:名無しさん@ピンキー
10/11/10 04:44:02 N2+N7Kt5
GJ
桜花がかわいい件

852:名無しさん@ピンキー
10/11/10 11:50:21 ht1S6bGC
>>852
そう言い続けて4年目の秋を迎えたスレもある

853:名無しさん@ピンキー
10/11/10 16:30:16 G7IXl914
いいから黙って投下を待てカス共!無論俺もカスだが

854:名無しさん@ピンキー
10/11/10 16:47:53 aH7D+ALh
ゆとりがエロパロにいる時点でどうかと

855:名無しさん@ピンキー
10/11/10 17:29:17 v9ft95QS
今更ゆとりとかw
多分エロパロにいてる人の殆どがゆとり世代だと思うけどw

856:名無しさん@ピンキー
10/11/10 17:36:49 gJ34zWLO
ヤンデレを愛でるなんてゆとり以外は無理だろ
まともな人間にできるこっちゃねぇよ

857:名無しさん@ピンキー
10/11/10 17:47:00 Ga5iFbwN
どうでもいいです

858:名無しさん@ピンキー
10/11/10 20:58:42 4NwfSbmB




























































859:名無しさん@ピンキー
10/11/10 21:06:43 cvgHMBav
作品投下まだかなー

860:名無しさん@ピンキー
10/11/10 22:29:34 orNJ09dz
王女と騎士 偏愛と忠義のどこがネトラレなのか未だにわからない俺とかもいるけど

861:名無しさん@ピンキー
10/11/10 22:35:54 G7IXl914
>>862

いい加減にしろ

862:名無しさん@ピンキー
10/11/10 22:47:04 S6xry/lN
ぽけもん黒ってもう続かんのかな
ほんとうにポケモンブラック出ちゃったけど

863:名無しさん@ピンキー
10/11/10 22:59:13 4NwfSbmB
>>864
それは言っちゃだめ!

864:名無しさん@ピンキー
10/11/10 23:00:43 jTWrZ/Ho
ネトラレどころか、どこがヤンデレ?っていう作品が多いのね

865:名無しさん@ピンキー
10/11/10 23:06:21 9XNkraUs
ヤンデレのSSってヒロイン視点でみればNTRだよね

866:名無しさん@ピンキー
10/11/10 23:45:02 jTWrZ/Ho
思い通りに行かない挙げ句に、狂って暴れてるだけの女をヤンデレと言わないだろ

867:名無しさん@ピンキー
10/11/10 23:47:39 4NwfSbmB
俺がヤンデレだと思った女の子は俺にとってヤンデレである
自分の意見を押し付けないでいただこうか

868:名無しさん@ピンキー
10/11/11 00:19:01 b85SfFsb
俺がヤンデレだと思った男の娘も俺にとってヤンデレである
自分の意見を押し付けないでいただこうか

869:名無しさん@ピンキー
10/11/11 00:28:59 utfxgLOe
リバース、以前ほど盛り上がらなかったね
みんな実は面白くないと気付いちゃったのかな

870: ◆AJg91T1vXs
10/11/11 00:35:44 pTHhFeTR
 夜も遅いですが、第二話を投下いたします。

 なお、前回タイトルに致命的な誤植があったため、wikiの方を修正しました。
 正しくは、『アンサングラント』ではなく『アンサングランテ』です。
 フランス語で『血みどろの』とか『返り血を浴びた』という意味の形容詞なんですが、同じような意味の女性型形容詞である『サンギノラント』と末尾の発音が混ざっていました。

 今回より、『ラ・フェ・アンサングランテ』でお願いします。
 ちなみに、全部訳すと『血まみれの妖精』とか『返り血を浴びた妖精』という意味になります。

871: ◆hpIOhOb70uS3
10/11/11 00:37:48 pTHhFeTR
 気がつくと、既に太陽は東の空から顔を見せていた。
 朝の陽ざしに照らされながら、ジャンは大きく伸びをして立ち上がる。

「っと……。
 ちょっと寝過ぎたかな?」

 枕元に置いた眼鏡をかけて、ジャンは時間を確かめる。
 部屋にある時計を見ると、既に八時を回っていた。

 慌てて着替えを済ませ、足早に食堂へ向かった。
 髪に寝癖が残っていたが、そもそもジャンの髪は癖っ毛である。
 多少、金髪がうねっていたところで、そこまで変な髪型にはならないだろう。

 食堂の戸を開けると、既に宿の客の何人かは席に着いて食事を始めていた。

 空いている椅子とテーブルを見つけ、ジャンもそこへ腰かける。
 食堂に入って来たことに気づいたのか、すぐにリディがジャンの下へとやってきて尋ねた。

「おはよう、ジャン。
 昨日はよく眠れた?」

「ああ。
 久しぶりに、上質なベッドで寝た気がするよ。
 この前の街で泊まった宿は、シーツにダニが湧いてて最悪だった」

「この季節にダニって……。
 ジャン……あなた、少しは泊まる宿を選びなさいよ」

「部屋の空いていた宿が、そこしかなかったんだから仕方ないさ。
 まあ、その分、昨日はリディの用意してくれたベッドの有難味がわかったけどね」

 冗談交じりに感謝の言葉を述べたものの、ジャンの頭は冴えなかった。

 確かに、リディの用意してくれた部屋は、ジャンが今まで泊まって来た宿の中でも上質な方だった。
 部屋は古いが手入れは行き届いており、久しぶりにぐっすりと眠ることができた。
 今朝、珍しく寝坊をしてしまったのも、ベッドに敷かれた布団があまりにも気持ちよかったからだ。

 ところが、そんな安眠を経たにも関わらず、起きたばかりのジャンの頭には芯に響くような頭痛が残っていた。

 昨日、噴水のある広場の近くで立ち寄った酒場の酒。
 消毒液を薄めたような味のする質の悪いそれが、昨晩の間にジャンの身体に回ったのだろう。
 たった一口しか飲んでいないのに二日酔いを引き起こすとは、よほど酷い作りの酒だったに違いない。
 昨晩の内に、身体の中で毒に変わったのではないかと勘ぐってしまうほどだ。

「ねえ、ジャン。
 朝ごはん、パンとミルク粥のどっちがいい?」

 既に食事を終えた客の席の皿を片手に、リディがジャンに聞いてきた。
 頭が痛く、朝から重たいものを食べる気にもなれなかったため、ここは素直にミルク粥を注文しておく。
 米を牛乳で粥状になるまで炊いただけのものだが、本格的に活動を始めていない胃には調度良かった。

872:ラ・フェ・アンサングランテ 【第二話】   ◆AJg91T1vXs
10/11/11 00:40:22 pTHhFeTR
「ところで……こっちには、いつまでいるつもりなの?」

 コーヒーを運んできたリディが、再びジャンに尋ねた。

「今日、父さんの骨を埋めたら、明日にでも発つつもりだよ。
 あまり長居していると、街の人に何を言われるかわからないしね」

「そうなんだ……。
 でも、ジャンのお父さんが街を追い出されたのって、もう十年近くも前のことでしょ。
 たぶん、みんな忘れているんじゃないかなぁ……」

「そうは言っても、リディみたいに覚えている人がいるかもしれないだろ。
 僕が父さんの息子だって知ったら……きっと、嫌な顔をする人だっていると思うよ」

 少量の砂糖を入れただけのコーヒーを口にしながら、ジャンはどこか寂しげな口調で答えた。

 この街の人間が、自分のことをどう思っているか。
 父の所業を考えれば、それを予想するのは造作もないことだった。

 人体実験紛いの研究を続け、最後には街を追放された藪医者の息子。
 妖しげな本を買い漁り、悪魔に魂を売ったとまで言われた父親の業は、息子である自分もまた背負わざるを得ないのだろう

 自分と父は関係ない。
 そう思い込もうとしても、街の人間は別だ。
 こと、昔の父を知る者たちにとっては、ジャン自身もまた異端者に過ぎないのだから。

 自分の身体に流れる血が憎らしかった。
 旅先で、父親がおかしな研究に没頭するようになればなるほど、その血を引く自分もまた、汚らわしい存在のように思えて仕方がなかった

 ジャンが父と同じ医学の道を志した理由。
 それは、せめて自分が真っ当な医者になることで、自分に課せられた父の業を払おうとしたからに他ならない。

 困っている人を助けるなど、詭弁に過ぎない。
 自分は自分のために、そして父の積んだ咎を清算するために、医者をやっているに過ぎない。
 憎まれこそするが、間違っても感謝されるような人間ではないのだ。

 ジャンが同じ地に留まることを嫌うのも、その地に住まう人々に、自分の本性を見透かされはしまいかと心配だったからだ。
 死してなお、父はジャンのことを奇妙な枷で縛り付ける。
 過去の呪縛から逃れるためにも、一刻も早く父の遺骨を処分したいという気持ちでいっぱいだった。

873:ラ・フェ・アンサングランテ 【第二話】   ◆AJg91T1vXs
10/11/11 00:41:14 pTHhFeTR
「ごちそうさま……」

 ミルク粥を一通り平らげ、出されたコーヒーも飲み干すと、ジャンは食器を食堂のカウンターに戻した。
 リディは放っておけば良いと言っていたが、幼馴染に後片付けを押しつけるのも気が引けた。

「それじゃあ、僕は父さんの骨を埋めに行くよ。
 夕方までには戻るから、悪いけど、今日もあの部屋に泊めてくれないかな?」

「ええ、いいわよ。
 ジャンがよければ、それこそ、三日でも四日でも……」

「残念だけど、それはできないよ。
 僕は、いつまでも同じ場所に留まるのは好きじゃないんだ」

「そっか……」

 リディは肩を落として残念そうにしていたが、ジャンはそんな彼女の様子に気づくこともなかった。

 足元に置いた鞄を手に、ジャンは食堂を抜けて階段を下りる。
 一階の酒場は、まだ準備中のようだ。
 仕込みをしている店主に簡単な挨拶を済ませ、ジャンは朝の陽ざしの降り注ぐ通りへと出た。

「今日は天気がいいなぁ……。
 昨日の寒さが嘘みたいだよ」

 誰に言うともなく、そんなことを呟いて腕を伸ばすジャン。
 リディの宿場は商店街の通りに面しているため、朝からとても賑やかだ。
 通りでは既に朝市が開かれており、チーズやハム、それに野菜を売る商人達が、忙しなく働いている姿が目に入った。

 荷車を引いて商品を運ぶ者。
 道行く人に、今日のお勧めの品を売り込もうと声を張り上げている者。
 様々な店の商品を抜け目なく比べ、一番安く味の良い品を手に入れようとはりきっている主婦連。

 街から街へ一人で旅をしていると、時にこうした人々の喧騒が懐かしくなるときがある。
 だが、いつまでもノスタルジックな気分に浸っているわけにもいかない。

 父の遺骨を埋めるため、ジャンは街の奥に続く道とは反対の道を選んで歩きだした。
 向かうのは、街外れにある合同墓所。
 異端者として街を追放された父は、教会の墓地に埋葬される権利さえ持っていない。

 大通りから離れて行くにつれ、朝市を賑わしている人々の声もまた遠くなっていった。
 街の出口である大門を抜けると、早くも丘からの冷たい吹き下ろしが、ジャンの足元をすり抜けた。


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