ヤンデレの小説を書こう!Part37at EROPARO
ヤンデレの小説を書こう!Part37 - 暇つぶし2ch450:名無しさん@ピンキー
10/10/17 02:36:45 +hX/+mNV
潰すとか言っちゃってかっこいいね
つぶしてごらん

451:名無しさん@ピンキー
10/10/17 03:34:49 TK7/gFOi
潰してやるぜ(キリッ

452:名無しさん@ピンキー
10/10/17 04:10:20 MAQtqKiN
171 名前: ◆ AW8HpW0FVA 2010/10/16(土) 23:55:43 ID:YB2ktEFg0

規制されました。前回、今週の日曜日に投稿すると書きましたが、
まだ完成しておらず、ここにも投稿出来ません。


453:名無しさん@ピンキー
10/10/17 05:34:58 b+Pm8j5U
なんだかんだで荒らされてもなんとかなってたヤンデレスレも終わりかな。

454:名無しさん@ピンキー
10/10/17 05:47:47 XypQqTvq
住民の質も最悪だしもう潰れていいよ

455:名無しさん@ピンキー
10/10/17 06:21:01 RzM2ZvG7
ここで終わりとか未完の作品も新作も見たいのに•••
作者がみんなどっか行っちゃったならもうだめなのかもしれない

456:名無しさん@ピンキー
10/10/17 06:49:26 +EZKxZD4
お前らの雑談なんてどうでもいい

俺はSSが読みたいんだよ さっさと投下しろ。いや、投下してくださいお願いしまする

457:名無しさん@ピンキー
10/10/17 07:16:22 C4xaQpAz
日曜日最高!!
ちょっと監禁されてくる

458:名無しさん@ピンキー
10/10/17 08:57:55 fQ/rajZ9
政府に監禁されるのか

459:名無しさん@ピンキー
10/10/17 11:00:42 28p/+m5j
突然だがおまえらの好きなヤンデレってどういうの?
ちなみに俺はおとなしい子が豹変するのが好きでつ


460:名無しさん@ピンキー
10/10/17 11:28:40 8P1WwQ+7
>>459
幼馴染のヤンデレは至高だと考える

461:名無しさん@ピンキー
10/10/17 11:29:07 bDaU1qYx
わたしは、なんとなくこの娘いいな~って思った娘ですね

例えば、『ぽけもん黒』の香草さんとか、『ヤンデレの娘さん』の三日さんとか
他にも好きな娘は沢山いますけどね

特にこういったタイプが一番好き、というのはないですね

462:名無しさん@ピンキー
10/10/17 11:43:42 q2kKdqik
ツンデレがヤンデレになっていく過程こそが至高

463:名無しさん@ピンキー
10/10/17 12:32:00 DJ87pfUp
風の声いいですね!

執筆頑張ってください!!

464:名無しさん@ピンキー
10/10/17 13:44:12 QZzCXZfH
僕はアマガミの上崎ちゃん!



ストーキングと他の女の排除を「仕方ないよね」の一言で、自重しない、テンプレみたいなヤンデレだけど、だがそれが良い!

最後ちゃんとハッピーエンドになるのもベネ。


465:名無しさん@ピンキー
10/10/17 14:25:41 XG7ChRsF
俺は「風雪」の加藤レラのような、主人公をいじめて周りを寄せ付けないようにするタイプだ。こういうのは主人公にはかなり嫌われるから拒絶された時の暴走がたまらん

466:名無しさん@ピンキー
10/10/17 16:00:46 TIR1CMlE
え~と・・・・・SS投下していいですか?
とゆうか投下しますよ?
キャラは、オリキャラのほうがいいんですよね?
タイトルは「歪んだ愛」ってかんじのたいとるでいきます。

467:名無しさん@ピンキー
10/10/17 16:06:15 7Nay1Pj1
いいよ~じゃんじゃん投下してって~
……むしろしてください。

468:名無しさん@ピンキー
10/10/17 16:07:35 rSLUzRw3
         ∧_∧   ┌──────
       ◯( ´∀` )◯ < 僕は、大倉都子ちゃん
        \    /  └──────
       _/ __ \_
      (_/   \_)

469:名無しさん@ピンキー
10/10/17 16:46:11 XisNqYOX
テスト

470:駄文太郎 ◆4wrA6Z9mx6
10/10/17 16:50:20 XisNqYOX
ヤンデレ作品に感化され、自分も作ってみようと思いました。
タイトルは日常に潜む闇
生温かい目で見守ってください。
では投下します。

471:駄文太郎 ◆4wrA6Z9mx6
10/10/17 16:54:45 XisNqYOX
日常に潜む闇 第1話

4月―それは新年を迎える1月と似ていて、世の中が何かと新しいものに変わる時期だ。
特に、日本では4月が1月以上に重く見られているような気がする。
 そんなことを考えながら、久坂誠二(くさか・せいじ)は桜並木の下を歩いていた。
 周囲を見回せば、まだシワが寄っていない真新しい制服を身につけた男女がちらほらと見える。実に微笑ましい光景だ。
 なんてことを思っている誠二だが、彼もまた彼ら彼女らと同様、久遠坂学園高等部の入学生である。
 久遠坂学園は久遠市の西側に位置する私立学校で、小高い丘の上に広大な面積を持つマンモス校だ。
 小学校に相当する初等部からいわゆる大学である大学部までが揃っており、
桜並木の正門から敷地内に入って、左に初等部、右に中等部、その奥の両サイドに高等部があり、寄宿寮となぜか学園内に立地している商業区を間において大学部が一番奥に存在している。
 これだけ広いと、外部から通学している者にとっても寮住まいの者にとっても徒歩は厳しいらしく、
バスや路面電車という公共交通機関が堂々と設置されている。
 それでいて授業料やその他諸々の費用は一般的な私立と同じか、
もしくはそれより若干休めだというのだから驚きである。
 さすが数の暴力といったところだろうか。
 誠二はとりとめもない思考を続けながら、学園の門をくぐる。学生証に内蔵されている非接触型ICで身分証明を行うことによって通れる、改札口がとても新鮮だった。


472:駄文太郎 ◆4wrA6Z9mx6
10/10/17 16:56:54 XisNqYOX
「ここが、久遠坂学園……」
 誠二は目の前に広がる教育施設群、そして見渡す限りの人に感嘆を漏らした。
 と、その時背後からいきなり声をかけられた。
「うむ。その通りだ。ここが君たちの学び屋の園となる久遠坂学園だ。
 学園にようこそ、新入生君」
 驚いて、後ろを振り返る。
 そこにいたのは長い黒髪が特徴的な高等部の女子生徒。
 彼女の周囲の空気はピンと適度に張りつめて澄んでいる感じがした。
「ええ、と……ありがとうございます」
 しかしいきなり見知らぬ人、もとい見知らぬ先輩となる人物に声をかけられ、返答に窮する誠二。
 とりあえず歓迎はされたのでお礼だけは言っておこうと思った。
 見知らぬ先輩はそんな誠二の返し方に一瞬キョトンとしたが、何がおかしいのか口に手を当てて笑い始めた。
「くくっ。なるほど、噂どおりに面白い人物だな、君は」
 そして踵を返す。
「また後で会おう、久坂誠二」
「え? あ、はい」
 後ろ手を振って立ち去る見知らぬ先輩の言動について行けず、未だに混乱する誠二だったが、ふと疑問が浮かぶ。
「あの人なんで僕の名前知ってたんだ?」
 あんな感じの人と以前会っただろうかと記憶を探ろうとするが、
 途中で入学式の会場に早く行かないといけないことを思い出して誠二はその場を足早に去った。


473:駄文太郎 ◆4wrA6Z9mx6
10/10/17 16:58:29 XisNqYOX
「君も相変わらず物好きだな、天城君」
「いいや、貴方ほどではないさ。生徒会長」
 生徒会長と呼ばれた男子生徒は手にしていたペットボトルの紅茶を軽く口に含みながら、その真意をうかがい知ることが出来ない微笑みを浮かべている。
 生徒会長に対して、苦笑を浮かべたのは何とも口調が男勝りな、
誠二に話しかけてきたあの女子生徒だった。
「そろそろ時間だ。可愛い後輩たちを迎え入れるとしよう」
 二人がいるのは舞台袖。隙間から会場内を見ればすでに満員御礼だ。
 ペットボトルを傍の机に置き、生徒会長は気を引き締めるようにネクタイを軽く締める。
「久坂会長、よろしくお願いします」
 静かに告げるように声をかけて来たのは司会進行役の女子生徒。
いつの間にか舞台袖に移動していたようだ。
 生徒会長―久坂誠一(くさか・せいいち)は頷くと、高等部の新一年生、総数400名及びその保護者らが待ち受ける壇上へと上がった。
 天城はその様子を、微笑を浮かべて舞台袖の暗がりから見つめるのであった。


474:駄文太郎 ◆4wrA6Z9mx6
10/10/17 17:01:10 XisNqYOX
投下終了です。
とりあえず第1話はここまでです。
ヤンデレ成分ねえじゃんよ! フラグ立ってんのかよ?
って思った方。第2話からヤンデレ来ます。たぶん
仕事柄毎日更新とはいきませんが、最低でも週一で更新できるよう頑張ります。

475:名無しさん@ピンキー
10/10/17 17:23:58 HrfmDwM7
投下gj

楽しみにしとく

476:名無しさん@ピンキー
10/10/17 18:24:34 fQ/rajZ9
>>466
どうした!投下が無いぞ!

あと序でに触雷!と我が幼馴染も

477:名無しさん@ピンキー
10/10/17 18:47:41 4JqgRL8e


478:名無しさん@ピンキー
10/10/17 19:36:03 uQNMnJ63
>>470
GJ!


479:名無しさん@ピンキー
10/10/17 19:36:46 Avl9f+Lt
GJ!
毎週の楽しみにするb

森山家の青少年…

480:名無しさん@ピンキー
10/10/17 21:27:22 28p/+m5j
>>476
物語の女性に嫉妬したヤンデレに監禁されてんだよ
そして『逃げようとしては捕まり』を繰り返しているに違いない
投下が無いのはそのせいだろう。

481:名無しさん@ピンキー
10/10/17 21:33:51 xdapsScS
wikiの抜けを更新しようと思ったが方法がわからない・・・
失敗して全部消えるとかしたらどうしよう

482:名無しさん@ピンキー
10/10/17 21:43:59 S1Q4CLoB
失敗したら諦めてどっかで救援求めれ
基本新規にページ作成してコピペしてリンク貼るだけだ

483:名無しさん@ピンキー
10/10/17 21:46:37 xdapsScS
やってみるわ

484:名無しさん@ピンキー
10/10/17 22:29:31 25UuKEdV
触雷!来ないかねぇ?
新しいSSと並行は大変だと思うが

485:名無しさん@ピンキー
10/10/17 22:33:35 xdapsScS
>>482
更新する勇気をくれてありがとう

486: ◆Uw02HM2doE
10/10/17 22:46:34 W3t7prb6
こんばんわ。「リバース」を投下している者です。
もうすぐハロウィンということで今回は短編を投下します。
よろしくお願いします。

487:Vampire☆Generation ◆Uw02HM2doE
10/10/17 22:47:51 W3t7prb6

「吸血鬼……ってお前なぁ」
昼休み。
多くの学生が友人や恋人と一緒に昼飯を共にすることで、絆を深める時間帯。
そんな時間に市内の高校二年生である俺、朱神光(アカガミヒカル)は胡散臭い話を聞いていた。
「いやいや、これが本当なんだって!騙されたと思って!な、頼むよ主人公!」
俺の目の前で手を合わせ懇願してくるのはクラスメイトで悪友の向井太一郎(ムカイタイチロウ)だ。
コイツは様々な所に情報網があり、いつも面白い話を持って来ては一緒にやろうと持ち掛けてくる。
……まあその情報の7割くらいがガセネタもしくは噂と全然違ったりするのだが。
「お前の話に乗って得した試しがないからな。つーか"主人公"は止めろ」
先程1階の購買で買ってきたカツサンドの封を開けながら太一郎と話す。
ちなみに"主人公"というのは最近クラスで流行っている俺のあだ名だ。
俺の本名、朱神光は確かに読もうと思えば"シュジンコウ"と読める。
全てはこの前教育実習で来た大学生が俺の名前を「じゃあ次……シュジンコウ君!」とか言ったのが発端だった。
「まあまあ。で、乗るか?吸血鬼退治」
「……まあ良いけど」
目を輝かせながら俺に迫ってくる太一郎。こうなるとコイツは相手が頼みを聞いてくれるまで、ずっと詰め寄って来る。
ここは潔く早めに降参するのが得策だったりするのだ。
「流石!話が分かるね光君は」
「結局強制イベントになるだけだからな。……近付くんじゃねぇ」
俺の肩を叩きながらさりげなくカツサンドを取ろうとする太一郎を牽制する。
「つれないなぁ。じゃあ今日の10時に例の屋敷前で!」
「はいはい……」
溜め息をつきながらも何だかんだ太一郎との冒険に心を躍らせている自分がいた。
だからいつまでもコイツとつるんでいるのかもしれない。
「……我ながら物好きだな」
そんなことを思いながら窓に広がる青空を見上げた。



この市内には囁かれている噂が一つある。
それは最近この辺りに真っ赤な目を持ち、夜中に市内を徘徊する"吸血鬼"がいるというものだ。
数多の目撃証言もあり、この近辺で闇夜に怪しく光る赤い目を見ているそうだ。
しかし"吸血鬼"と囁かれる由縁は赤い目だけではなく、近辺で最近怒っている殺人事件の影響もある。
被害者は皆首筋に小さな穴を二つ開けられ、いずれも血が抜かれていた。
以上二つのことから巷では「赤い目の吸血鬼が血を吸いに来た」と騒がれているらしい。

488:Vampire☆Generation ◆Uw02HM2doE
10/10/17 22:48:49 W3t7prb6

「……寒っ」
時刻は午後10時5分。待ち合わせの時間を5分過ぎても太一郎はまだ来ていなかった。
「しかしでかい屋敷だな……」
見上げるとそこには学校ほどもありそうな巨大な西洋風の屋敷があった。
太一郎が言うには赤い目をした吸血鬼がこの屋敷に入っていく所を見た人がいるらしい。
「……でも退治って…どうするんだ?」
有り得ないが仮に吸血鬼がいたとして、果たしてどうやって倒せば良いのだろうか。
太一郎は「ニンニクでなんとかなる!」とか力説していたが。
「……遅いな」
「こんばんは」
「うわぁぁあ!?」
いきなり後ろから声をかけられ思わず叫んでしまった。
振り返るとそこには黒髪に日本人形のように端正な顔立ち、そして真っ赤な目をした少女が立っていた。
「……き、吸血鬼…」
「ふふっ」
俺の言葉に彼女は微笑んだ。そしてゆっくりと俺に近付いてくる。
俺はまるで蛇に睨まれた蛙のようにその場から一歩も動けない。
俺は思った。どうせ死ぬならやりかけだったRPGをやってから死にたかった、と。



「どうぞ、紅茶には自信があるんです」
「あ、どうも……」
広い屋敷の一室。恐らくは客間に俺の姿はあった。
目の前には金で縁取られた豪華な机の上に仄かに甘い香りの真っ赤な紅茶が置かれている。ソファーもとても坐り心地が良い。
そしてすぐ左には先ほどの"吸血鬼"っぽい少女が微笑みながら座っていた。
「それで朱神君はどうしてこの屋敷に?」
「え、えっと……」
結局血は吸われず何故かこの少女、紅野香織(ベニノカオリ)さんにお茶に誘われた。
断ろうしたのだが紅野さんは家族を事故で無くしこの屋敷に数人の使用人と住んでいるようで、寂しいから是非と言われてしまい断りきれなかったのだ。
たわいのない世間話やお互いの自己紹介をしながら紅茶を飲む。今まで体験したことがない雰囲気に思わず緊張していた。
「……気に障ったらごめんなさい。誰かと話すの久しぶりでどう接して良いか分からなくて……」
「あ、その……別にそんなんじゃないんで!」
悲しそうな紅野さんの顔を見ていると何故か慰めなければいけない気がしてしまう。
結局、その場の雰囲気に流され1時間ほど話し込んでしまっていた。

489:Vampire☆Generation ◆Uw02HM2doE
10/10/17 22:49:56 W3t7prb6


「って感じでこないだも失敗しちゃってさ」
「ふふっ、外の世界は面白いことが一杯なのね」
紅野さんの笑顔を見てほっとする。生まれつき彼女は日中外に出られない病気で、夜に近辺を散歩していたらしい。
どうやら紅野は巷で噂の"赤い目の吸血鬼"のようだ。まあその噂自体がやはりガセ……というか"吸血鬼"ではなかった。
太一郎が聞いたらさぞかしガッカリするだろうが。
「面白いっていうかむしろ……んっ?」
携帯が振動している。電話だった。画面には『向井太一郎』と表示されている。
「電話?どうぞ出て。紅茶のおかわり、煎れてくるから」
「あ、うん。じゃあちょっと電話してきます」
席を立ち廊下に出る。部屋と違って薄暗く肌寒いのであまり長居はしたくなかった。
「……はい、もしもし」
『!光か!?やっと繋がった!今何処にいるんだ!?』
出ると間髪入れず太一郎が話し始めた。声は若干上擦っており普段おちゃらけている太一郎が珍しく焦っているのが分かった。
「何処ってあの屋敷だけど。お前こそ今何処に―」
『今すぐにその屋敷を出ろ!!』
「お、おい……一体どうしたんだよ?」
普段聞いたことのない太一郎の怒鳴り声。一体何があったのだろうか。
『話は後だ!とにかく早く逃げろ!じゃないと―』
「電話、終わりましたか」
「あ、もうちょっと……えっ?」
『っ!?まさか目の前にいるのか!?』
振り返るとそこには確かに紅野さんがいた。
でも彼女の目は先ほどの穏やかさとは打って変わって、まるで獲物を捕らえようとする狩人のようだ。
張り付いたような笑みを浮かべこちらに近付いてくる。そう、俺達が出会った時のように。
「紅野……さん?」
「香織、で良いよ?光君」
『光逃げ―』
一瞬だった。
右手から携帯が吹っ飛びそのまま壁にたたき付けられ、破片をばらまきながら床に落ちる。
目の前にいる紅野さんを見て始めて彼女が携帯を吹き飛ばしたのが分かった。
「随分友達想いなのね、彼。でも私たちには必要ないわ」
「……あ」
紅野さんが右手を前に出す。その手には凄まじい電気を放つ黒い塊があった。
「長かった……。でもこれでやっと幸せになれる」
動けない。恐怖からだろうか。それとも諦めからだろうか。ただ心臓だけが早鐘のように脈打っている。
「光君。私はね、"吸血鬼"なんだよ?」
「……っ!?」
身体に衝撃が走る。意識が遠くなっていく。最後に見たのは"吸血鬼"の冷たい笑みだった。

490:Vampire☆Generation ◆Uw02HM2doE
10/10/17 22:50:58 W3t7prb6

今に始まった事件ではなかった。調べていく内に分かったこと。
それはこの地域で約20年周期で"吸血鬼"の噂が流れるということ、そして同じ時期に首筋に二つ穴を開けられた死体が見つかることだった。
つまりこの"吸血鬼"事件は20年周期でこの地域に起こっていたのだ。
「はぁはぁ……!」
闇夜の中をがむしゃらに走る。1時間程電話してやっと出た友人は絶体絶命だった。
「待ってろ光!」
更に今までに犠牲になった人は全て女性。
そして最後にその女性たちと近しい男性が行方不明になり、事件はピタリと止む。
今回の犠牲者は全て光の知り合い、もしくは友達だった。
つまり"吸血鬼"のターゲットは朱神光に違いない。
「後少し……!」
角を曲がるとそこには大きな門と屋敷があった。そして入口には赤い目をした少女が不適な笑みを浮かべてこちらを見ていた。
「こんばんは。光君のお友達?」
「はぁはぁ……!光は……何処だっ!?」
少年、向井太一郎は必死の形相で叫ぶ。それでも少女、紅野香織は顔色を変えず言葉を紡ぐ。
「光君は私の物になりました。母様も祖母様もやった、紅野家の儀式。これで私もようやく幸せになれます」
「ぎ、儀式……?」
香織は嬉しそうに話を続ける。太一郎は困惑しながらもその話を聞くしかない。
「一目惚れでした。ある日窓の外から見た彼が、光君が忘れられなくて。使用人に調べさせてからも私の気持ちは高ぶるばかり」
「……狂ってる」
香織は頬を染めて恍惚な笑みを浮かべていた。
太一郎は思う。彼女は根本的に何かが崩れているのではないのか、と。
「光君は日に当たれない私に文字通り光をくれたんです。絶対に離しません」
「……最近起きている猟奇殺人はアンタの仕業か」
「……ああ、彼に言い寄るあのクズ達なら、吸血鬼の仕業にして使用人達が掃除してくれました。母様や祖母様の時と同じだから、慣れたものですよ」
何が可笑しいのかクスクスと笑い出す香織。太一郎の中で疑惑は確信に変わっていた。
間違いなく今回、いやこの地域に20年周期で起こっている"吸血鬼"事件は紅野家の仕業だということを。
「光は何処だ」
「……何故貴方にこんな話をしたと思いますか」
「一体何を」
人の気配を感じる。気付いた時には黒服を着た男達に囲まれていた。
「確かに私は"吸血鬼"。だって日に当たれなくて、赤い目をしている。だから」
「くそっ……!?」
香織が手を挙げると同時に黒服が一斉に懐から何かを取り出す。太一郎にはそれがサイレンサー付きの銃だとすぐに分かった。
「最期に貴方の血を頂戴?」
そして何かの音が数回した後、街には静寂が戻っていた。

491:Vampire☆Generation ◆Uw02HM2doE
10/10/17 22:52:06 W3t7prb6



光の姿を最後見てから随分時間が経った。
結局俺は殺されず、散々痛め付けられた後解放された。
どうやら光のおかげで殺されずにすんだようだった。
退院してすぐにあの屋敷に行ったがもぬけの殻、むしろ近所では元々誰もあの屋敷に住んでいないことになっていた。



「お疲れ様でした」
定時に仕事を終えて帰宅する。あれからどれくらいの時間が流れたのだろうか。
俺はずっとあの場所、朱神光がいなくなったあの時間に縛られている。

「……また来ちまったか」
気が付けば無意識に屋敷に足を運んでいた。
仕事場を屋敷の近くにした時点で、自分自身があの時に縛られていることは明らかだった。
「……光」
屋敷を眺めながらいなくなった友を想う。
何の生産性もない行為。だけれどもこれが日常になってしまっていた。
「こんにちは」
「っ!?」
そんな時、後ろから声をかけられた。
慌てて振り返るとそこには白いワンピースを着た女の子が立っていた。黒い長髪に端正な顔立ち。
そして何よりも特徴的なのは彼女の赤い目だった。
「お兄さん、いつもここに来てるよね?私、お兄さんのこと気になっちゃって」
「……ま、まさか」
何処かで見たことのある顔立ち。
そう、あの秋の日に行方不明になった、"吸血鬼"に捕まってしまった親友を思い出させるのだ。
「私の名前は紅野希(ベニノノゾミ)。よろしくね、向井太一郎さん」
「う、うわぁぁぁぁあ!!」
少女から全速力で逃げ出す。思わず叫び声を上げた。
でも仕方ない、仕方ないのだ。分かってしまったから。次は俺の番なのだ、と。
そう、吸血鬼からは決して逃げられない。きっと次の日には同僚の女性が死んでいるに違いない。
それでも逃げなくてはいけない。出来るだけ吸血鬼のいない所へ。
向井太一郎は闇夜を走り抜けた。かつて友を助けに行くために走った道を逆走する。
今度は自分が助かるために。



「ふふっ、やっぱり面白い人」
そんな太一郎の後ろ姿を紅野希は慈しむように見つめる。
きっと太一郎は希の物になる。何件かの殺人事件と一件の行方不明を残して。
そう、彼女の母親と父親が20年前そうしたように。
「待っててね、太一郎」
吸血鬼は微笑む。誰も知らない彼女達だけの秘密の儀式が始まるのだった。

492: ◆Uw02HM2doE
10/10/17 22:55:13 W3t7prb6
以上です。あまりハロウィンっぽくなかったです。
「リバース」の方はもう少しかかります。もし待ってくださっている方がいたら申し訳ありません。

投下終了します。

493:名無しさん@ピンキー
10/10/17 23:16:53 D5dET+A0
GJ!
楽しかったです!


494:名無しさん@ピンキー
10/10/17 23:39:50 4JqgRL8e


495: ◆0jC/tVr8LQ
10/10/18 01:04:55 nzeKkCQd
前作品との間隔が狭くて申し訳ありません。
触雷!第18話投下いたします。

496:触雷! ◆0jC/tVr8LQ
10/10/18 01:06:05 nzeKkCQd
ジュルッ、ジュルル……ブジュ……
晃は僕の唾液を強く啜ると、逆に彼女自身のを僕の口に流し込んできた。
強引な体液交換だ。僕は黙って飲み込むしかなかった。
「んん……」
「ぷはあっ」
やがて満足したのか、晃は口を離した。
「吸って」
今度は、巨大な胸の先端、ピンク色の突起を僕の口元に突き出してくる。
「あの……」
「グダグダ言わない。黙って吸う」
「…………」
僕は逆らえずに、晃の乳首に口を付けた。
「あんっ……分かってたんだからね。あたしの胸マッサージしてるとき、いつもチンチン固くしてたでしょ?」
「それは……」
口ごもる僕。図星だった。僕だって生物学的には牡なのだ。
年頃の女の子の裸を見て触れて、反応しないで耐え続けるのは至難の技だ。
「フフッ。いいんだよ。責めてるわけじゃないんだから」
そう言うと晃は僕の手を掴み、乳房へとあてがった。
「これからは……ううん。今までもこれからもずっと、これは詩宝だけのものなんだから、詩宝が好きにしていいんだよ」
「…………」
僕は無意識に、晃の胸を揉みしだいていた。
触り慣れているはずなのに、今までと何かが違う気がする。
「んっ、あっ、いいよ詩宝。気持ちいい……」
これは、マッサージと愛撫の違いなのか。
―僕は今、晃を愛撫している……?
違和感が、頭をよぎった。
微妙な、友達同士とも何とも言えない関係が崩れて、僕は気が動転しているのだろうか。
しかし、僕が考えをまとめるのを、晃は待たなかった。
「あはは、もうグショ濡れだわ」
腰を浮かせて、晃は自分の秘所を示す。
そこからは確かに、大量の粘液が滴り落ちていた。
晃のその部分も、僕は何度となく見ているはずなのに、今はまるで印象が違った。
―これは一体、何……?
茫然としていると、晃がいきなり僕のものを握り締めた。
「あひっ!?」
「詩宝もカッチカチだねえ。お互い準備OKってことで、本番いっちゃいますかあ」
晃は何の躊躇も見せず、僕の先端を秘裂にあてがった。
「行くよ……あ、もちろんあたし、これが初めてだからね」
「あ、晃。ちょっと待……」
「うへへへ……念願の詩宝のチンポで脱処。それっ……」
ためらう僕を黙殺し、晃は腰を沈めた。
「あうっ……ちょっと痛いかな。でも凄いカイカン……」
「んんっ!」
僕は眼を閉じ、挿入の快感に耐えていた。
しばらくして目を開くと、破瓜の血が流れるのが見える。晃は少しずつ腰を動かし始めた。
「あっ! いいっ! ううああ!!」
晃の腰の動きは、どんどん激しさを増す。
「ひいっ! そ、そんなに動かさないでっ!」
挿れていると言うより、晃の膣に咥え込まれ、引き摺り回されているような感覚がした。
もちろん、ぶつけられる快感は半端ではない。
「出ちゃう! このままじゃ出ちゃうよっ!」
「あぎいっ! おぐうっ! いいよっ! 中で、あたしのマンコの中でぶちまけてっ!」
僕が限界に達したのは、それから間もなくだった。


497:触雷! ◆0jC/tVr8LQ
10/10/18 01:07:22 nzeKkCQd
どうでもいい授業を聞き流しながら、私は考え事をしていた。
―やっぱり、詩宝さんを連れてくるべきだったかしら?
下手に外に連れ出すと、あのゴキブリメイドに襲われかねないと思って屋敷に残ってもらったが、こうして離れてみると、寂しくてたまらない。
明日からは、詩宝さんと一緒に学校に来よう。そして、私の膝の上に座ってもらって、同じ授業を受けよう。
詩宝さんと私では学年が違うが、詩宝さんなら1年上の授業ぐらい簡単に理解できるだろう。
何なら、校長に命じて詩宝さんを飛び級にさせてもいい。
夫婦なのだから、同じ学年の方が何かと便利だ。
一緒に学校に来ると決まったら、当然休み時間には、人気のない場所で夫婦の営みだ。
詩宝さんの精液をあそこから垂らしながら、何食わぬ顔で授業を受ける私。
ノーパンノーブラのお乳やお尻には、“詩宝専用”なんてマジックで書かれちゃったりして……
そこまで想像したとき、携帯電話のバイブレーターが作動した。メールの着信だ。
開いてみると、エメリアからだった。
『緊急自体です。大子宮おでんわを』
たった1行なのに、エメリアらしくもない誤字また誤字。
何事か分からないが、よほど切羽詰まっているに違いない。嫌な予感がする。
私はすぐに立ちあがり、大急ぎで教室を出た。教師が何か言ったようだが、耳に入るはずもない。
廊下で、すぐにエメリアの携帯に通話を入れた。1コールで彼女が出る。
『お嬢様!』
案の定、エメリアは錯乱状態に近かった。声の調子で分かる。
「落ち着きなさい。何があったの?」
私も思わず冷静さを失いかけたが、それでは会話が成立しない。努めて平静な声で、エメリアに問いかける。
『詩宝様が……屋敷の外に出られました』
「何ですって!」
聞いた途端、一瞬で私の頭に血が上った。もはや冷静さなど無用だ。大声で聞き返した。
「どうして!?」
『総日本プロレスの社長が会長に面会に来られて、帰りに詩宝様を……』
「お父様は、一体何をしていたの!?」
『それが……許可を出されてしまいまして……』
プツッという音が聞こえた。私の中で何かが切れたらしい。
思わず拳を壁に叩き込む。
コンクリートの破片が教室内部に散り、ギャーという悲鳴が多数上がった。
だが、悲鳴を上げたいのはこっちの方だ。
あの馬鹿父め。今、詩宝さんを1人で外に出すことが、どれだけ危険か分かっていないのか。
私がついていない間に、ゴキブリに襲われ、攫われでもしたらどうする気だ。
徹底的に、体に教え込んでやらないと駄目なのか。
いや。私は考え直した。
父を折檻するのは後でいい。今はとにかく、詩宝さんの身柄を確保することだ。
「詩宝さんがどこに行ったか分かる?」
『総日の、本部だと思います』
「分かったわ。すぐに学校に車を回しなさい」
『今向かっています! ソフィも一緒です!』


498:触雷! ◆0jC/tVr8LQ
10/10/18 01:08:45 nzeKkCQd
通話を切ると、鞄を取りに、私は教室に戻った。
何故か、教師と生徒が全員、机の下に隠れていた。
揺れは感じなかったが、地震でもあったのだろうか。
まあどうでもいい。例えマグニチュード8の地震でも、今の私の行動を変えられはしないのだから。
迎えに来た車に乗り、超特急で総日の本部を目指す。
到着すると、すぐさま3人で中に入った。事務員らしい男が何か話しかけてくる。
「何よ?」
振り向いて聞き返すと、相手は口から泡を噴いて失神した。何かの持病だろうか。
構っていられないので、そのまま社長室に向かう。すると、今度はプロレスラーらしい男が前に立ちふさがった。
「おい、ここは関係者以外立ち入り……」
邪魔だ。拳で顎を打ち抜いて沈黙させた。
それからも、やたら筋骨だけはたくましい男達が何人も私達を阻もうとしたが、そのたびに全て、私かエメリアかソフィが打ち倒した。
社長室のドアを蹴破ると、中で社長の長木が震えている。
「詩宝さんはどこ!?」
「あの、これは中一条のお嬢様。実は……」
ソフィは長木に近寄り、右手の人差し指を掴んで無造作にへし折った。
「ウギャアアアアア!!」
「ボスは、詩宝様はどこかとお聞きですけど?」
「ひいい……ま、ま、待ってください……」
ソフィは中指もへし折る。
「ギエエ!!」
「早く言いなさい。今なら靴の紐ぐらい結べるわよ」
エメリアが傲然とした口調で言うと、長木はようやく白状した。
「と、と、堂上の家ですっ!」
堂上晃。詩宝さんと一緒のクラスの、あいつか。
男だから、詩宝さんと会話するのを容認してやったのに、その恩を忘れて詩宝さんを連れ出し、あまつさえ自分の家に引っ張り込むとは。
何という恥知らずの輩だろうか。一度思い知らせてやらねばなるまい。
「行くわよ」
「はい」
「イエス」
失禁と脱糞を繰り返しながら気絶する長木を置き去りにし、私達は社長室を出た。
ビルの出口にたどり着くまで、数十人の重軽傷者が呻いていたが、当然全て黙殺する。
総日も、所属のレスラーが素人の女子高生に倒されたなんて公表したくないはずから、表沙汰にはならないだろう。
再び車に乗った私達は、堂上晃の家に殺到した。
インターホンを押したが、誰も出ない。留守のようだ。あるいは居留守を使っているのか。
個人の邸宅ともなると、私でも迂闊に押し入ることはできない。仕方ないので玄関から離れた場所に車を停め、様子を見ることにした。


499:触雷! ◆0jC/tVr8LQ
10/10/18 01:10:21 nzeKkCQd
しばらくすると、また私の携帯電話が震え出した。
今度は電話だ。非通知である。
苛々していた私は、思わず電話口で怒鳴ってしまった。
「誰よ!?」
『ひっ! あ、あの……』
しまった。
詩宝さんの声だ。間違えようもない。ずっと聞きたかった詩宝さんの声。
詩宝さんの方から、わざわざ私に連絡を取ってくれたのだ。
それなのに、私はきつい口調で話してしまった。脅えさせてしまったようだ。激しく後悔するが、もう遅い。
私は慌てて取り繕った。
「え……詩宝さん? ご、ごめんなさい。非通知だから詩宝さんだって分からなくて……」
詩宝さんからの返事はなかったが、早く逢いたい私は、先を続けた。
『ずっと探しているんです! 今どこにいるんですか!?』
「あ、あの。それがですね……ちょっと病院に行ってまして……」
病院と聞いて、私は気が動転した。まさか詩宝さんが、病気にでもなったのではないかと思ったからだ。
詩宝さんが風邪をひいたと聞いたときでも辛かったのに、もっと重い病気だったら、私は正気を保っていられないだろう。
『病院!? どこか悪いんですか? だったらすぐうちの系列の病院に……』
「いえ、そうじゃないんです」
詩宝さんは否定する。でも、何だか苦しそうだ。
『詩宝さん?』
「そこで、検査してもらったら、いろいろお薬を飲まされてたみたいで……」
私ははっとした。
薬というのは、あの日お茶に混ぜて詩宝さんに飲ませた、媚薬のことに違いない。
詩宝さんは病気になったのではなく、病院でそれを調べられていたのだ。
おそらく、堂上晃に強要されて……
ともかく、私は弁明しようとした。詩宝さんならきっと、分かってくれる。
「あの、詩宝さん。それは……」
『それで、婚約のことなんですけど、一度白紙に戻してもらっていいですか? いや、別に、縁を切るとかじゃなくて、ゼロベースでもう一度考え直すと言うか……』
ガチャ
婚約の白紙撤回。
一番聞きたくなかった、ショッキングな言葉を残して、突然通話が切れた。
詩宝さんが自分で切ったというより、話している間に誰かに切られたような感じだ。
もちろん、堂上晃だろう。
婚約を白紙に戻すよう唆したのも、あいつに違いない。
私の中の、堂上晃に対する怒りはさらに倍加した。
大体、詩宝さんに媚薬を呑ませたからと言って、それが何だと言うのか。
詩宝さんがいくら媚薬を呑んでいても、私に“女”を感じていなければ、襲ってくれることはなかったはずだ。
襲ってくれたのは、私をメスだと認識していたから。
つまり、媚薬がなくても、詩宝さんと私が結ばれるのは既定事項だったのだ。
それなのに……
「あいつ……生まれてきたことを、後悔させてやるわ」
「お嬢様?」
「ボス?」
エメリアとソフィが、青ざめた顔で私の方を覗き込んできた。
2人とも、今の会話で、ただならぬ気配を感じ取ったことだろう。
「詳しいことは、屋敷で話すわ」
私は一度屋敷に戻ることに決め、車を出させた。


500: ◆0jC/tVr8LQ
10/10/18 01:11:30 nzeKkCQd
今回は以上になります。
現物支給の方とは、交互ぐらいに投下していきたいと思います。
では、また……

501:名無しさん@ピンキー
10/10/18 01:20:54 WYEHQC68
リバースと触雷!の作者GJ!!

長期連載してる二人が帰って来てくれて一安心です!
次も期待してます!

502:名無しさん@ピンキー
10/10/18 01:33:52 KHlVxKsd
極乙

503:名無しさん@ピンキー
10/10/18 01:35:20 SytvMM1S
やべー…
吸血鬼の話超おもしろかったです。それから触雷!の作者さんもGJです

最近投下がなかったのですごくうれしいっす


504:名無しさん@ピンキー
10/10/18 02:01:09 oqXfCFsq
どうも初投稿者の名無です。
いよいよ、秋も深くなっていきましたね。
秋という事で、少しヤンデレ(?)物のSSを書かせてもらいました。
レスの、無駄遣いになるかも知れませんが、投稿させていただきます。
駄文注意、厨二病注意です。
ローペースで更新していく予定なので続編が、
どれだけ先になるか分かりませんが、何とか最後まで書きます。
では、投稿します。
タイトルは、『特級フラグ建設士』です。

505:名無しさん@ピンキー
10/10/18 02:03:15 oqXfCFsq
落ちている。
いや、物が道路に落ちているってわけじゃなくて。
俺が、高所(約300mのタワー)から落ちている。
そう、落下しているのだ。
なんて事無い、突き落とされただけだ。
「あ~あ、俺の人生ここまでか」
落下している中、俺は溜め息を吐き呟いた。
そう言えば、人は約200m/mで落下するって聞いたな。
「丁度落とされた所だし、数えてみるか…1」
淡々と、数え自分の死があと何秒かに来るか予想をしていたら。
いきなり、落下が止まった。

506:名無しさん@ピンキー
10/10/18 02:05:58 oqXfCFsq
「あれ?これもフラグになるわけ?」
俺は、自分の生還を祝いつつ、もう一度溜め息を吐いた。
空中で、ふわふわと浮きながら。
どうやら、『自分の生を諦めて死ぬまでの時間を数えるのは生存フラグ』になるらしい。
らしいってのは、自分でもよく分かってないからだ。
何がって?このフラグ建設能力の事だ。
取り合えず、分かっている事を言う(?)と、
自分に死亡フラグが立って回収された時、
自分に何かしら生存フラグを立てると回収されるらしい。
回収された結果、超常現象で生存してしまうようだ。

507:名無しさん@ピンキー
10/10/18 02:08:41 oqXfCFsq
さて、自分の変な能力の説明も終わった事だし、なぜこうなったか説明でもしようか。
自己紹介が遅れたが俺は、神条整(かみじょうせい)だ。
名前の意味は、神々の条約を整える者って意味らしい。
このタワーから落下していたのは、学校の奴に突き落とされただけだ。
突き落とした理由?知らぬ。
取り合えず学校の奴に突き落とされたって事実だけしか、俺は知らぬ。
ここ最近、何故か死亡フラグすぐにが立ってしまう。
昨日は、通り魔に襲われるし、
先週は、交通事故に遭いかけるし、
その度に、このフラグ建設で何とか生き残っているわけだが。
そうこう考えているうちに、警察のヘリがやってきた。
下の野次馬の内の一人が通報でもしたのだろう。

508:名無しさん@ピンキー
10/10/18 02:11:17 oqXfCFsq
「君!!大丈夫かね?」
「普通に大丈夫です」
平然としながら返事をして、ヘリに乗った。
取り合えず、救出され、事情聴取を受け、マスコミからの取材を流し、家に帰った。
家に着き、寛いでいたら、
ふと、俺を突き落とした奴の顔を思い出した。
「そう言えば、俺を突き落とした奴って…早川さんだよな」
明日にでも本人に聞けばいいか…
と、twitterで呟いた。


509:名無しさん@ピンキー
10/10/18 02:16:06 oqXfCFsq
駄文ですみません
短文ですみません
レスを無駄遣いしてすみません
色々と、皆様には謝らなくてはいけないことがありますが、
取り合えず、『特級フラグ建設士』1話は、ここで終了です。
投稿してみて思った事なのですが、
物凄く心臓がバクバクと鳴っていて、とても緊張しました。
さて、そんな作者の心境の為だけに、スクロールバーを長くしてしまって、
すみません。
最後まで、謝っていてすみませんでした。
では、また遭う日までさようなら。

510:名無しさん@ピンキー
10/10/18 02:33:08 IfrFr50b
GJ
トリつけたほうがいいぞ

511:名無しさん@ピンキー
10/10/18 02:35:03 oqXfCFsq
>>510
あわわわわ、GJ有難うございます。
次からは、タイトルでトリップ付けていきます。
遅れましたが、トリップをつけていなくて、すみませんでした。


512:名無しさん@ピンキー
10/10/18 10:52:39 KKYs10Ps
>>466のものです。とにかく投下します。


「お~い、美香ぁ、起きろぉ~」
「う~ん、・・・・・・あっ、おはよう!お兄ちゃん。」
「おはよう」
やっと起きたこいつ、美香ことおれの妹だ、自分でイうのもあれだが、
こいつはお兄ちゃんこだから、おれが一人暮らしするといって、そしたら、こいつも付いてきた、
ので、今俺はこいつと2人ぐらしだ。
「お兄ちゃん、今日はお兄ちゃんが朝ごはんつくってね」
「え?おれ?なんで」
「だって、おにいちゃんのつくったごはんが食べたいんだもん」
「はぁ~、しょうがないなぁ。じゃあつくってやるよ。」
「わ~い、おにいちゃん大好き~」
とまあ、こんな日常を毎日繰り返しているのである。
・・・・・でも、この日常が俺にとっては一つの幸せだ。だからこんな幸せがこんな形で崩されるとは思っても見なかった。

ある日のこと、
「おにいちゃん・・・」
「ん?なんだ美香。」
「おにいちゃんさ・・・・私のこと、好き?」
「は?なにいってんだおまえは、」
「・・・・・おにいちゃんは私のこと嫌い?」
「嫌いじゃねえけど・・・・なんだ 急に、」
「ううん、別になんでもないの・・・・あ、いまのきにしないでね」
・・・・・どうしたんだ?美香のやつは。謎だ、なんてゆうか何考えてんのかわからん妹だな。
まあいっか。

とある日
今日はなんか、美香用事があるとかなんとか、
とそんな時にクラスの同級生に
「ねえ、康太一緒に帰らない?」
「まあ。いいけど、そうだ、帰りによっていってもいいか?」
「いいけど、どこ行くの?」
「まあ、今晩のおかず・・・かな?」
「ふ~ん、とりあえず行こっ」
このときの俺はおもいもしなかった、まさかこの行動があんなことになるなんて。

「まあ、今日のおかずはこれでいいか。お~い愛子、行くぞぉ」
「あ、うん、いまいくぅ~」
とまあ、こんな感じに買い物すませて、愛子と一緒にかえって
「じゃ、また明日な。愛子」
「うん、また明日~」
こんな感じで無事帰宅。まあごはんの用意したし、あとはあいつをまつだけなんだが、暇だし
ゲームでもしてよっと、今日こそあいつを狩るんだ。
・・・・・・・20分後
「クソっ、なんでこいつにかてないんだ。ボウガンがイケナイのかちくしょう!」
てとこであいつが帰ってきた。
「ただいま~おにいちゃん。あっ、ごはん作ってくれたの?ありがと~うおにちゃ~ん」
「おかえり、美香、なにしてたんだ?」
「えっ?あ、うんちょっとかいものと用事を済ませてきたの」
「ふ~ん、そうか、まあ食おうぜ」
「うん、いただきます。」
 






513:名無しさん@ピンキー
10/10/18 12:33:20 yp3v6RP1
終わり?

514:名無しさん@ピンキー
10/10/18 17:05:32 8QY9wZ/Y
偉そうにしてたくせに投下終了宣言もできなけりゃ
タイトルもトリもつけられてない。
内容もヘッタクソだし、もう投稿しなくていいよ。

515:名無しさん@ピンキー
10/10/18 17:11:26 NNZe2DSW
書かない奴が何言っても無駄だがな

516:名無しさん@ピンキー
10/10/18 17:36:43 kEDheu3S


517:名無しさん@ピンキー
10/10/18 18:04:19 cww3l3lQ
>>515
右に同じ

518:名無しさん@ピンキー
10/10/18 19:04:37 bs9gjOai
上に同じ

519:名無しさん@ピンキー
10/10/18 19:05:17 Q0tRwjqX
投下ラッシュだー!
皆さんGJです

520:名無しさん@ピンキー
10/10/18 19:59:19 HV3Qv+bU
GJ!

521:名無しさん@ピンキー
10/10/18 23:29:49 kEDheu3S


522:名無しさん@ピンキー
10/10/18 23:50:59 yp3v6RP1


523:名無しさん@ピンキー
10/10/19 00:04:21 0ZXhOe+E


524:名無しさん@ピンキー
10/10/19 00:08:18 D6E2IATW
そろそろ黒い陽だまりとかきてほしいな

525: ◆0jC/tVr8LQ
10/10/19 00:55:41 O8N0WXGP
別の作品で申し訳ありませんが、投下します。

526:現物支給 ◆0jC/tVr8LQ
10/10/19 00:56:18 O8N0WXGP
「ああんっ! 気持ちいいっ! レイプ最高っ!」
―これでは約束が違う!
『やはりあなたは、わたくしの主にふさわしくありません。さようなら』
となるのではなかったのか。陣氏は抗議した。
「ちょっと! 気持ちよくならないんじゃなかったの!?」
「ああっ! そうですっ! この王女の皮を被ったはしたない雌豚を、もっと罵倒してくださいっ!」
「いや、罵倒してるんじゃなくて、遺憾の意を表明してるんだけど!」
「はいいっ! イカ臭いご主人様のオチンポに犯されて、淫乱奴隷のフェルデリアは感じていますっ!」
会話が成立していない。陣氏は一度、フェルデリアから一物を引き抜こうとした。
だが、抜く前に、気配を察したらしいフェルデリアが背後の陣氏にヒップを押しつけてきた。
そればかりか、器用に足をかけてくる。バランスを崩し、陣氏は仰向けに倒れた。
「ぐげっ!」
「あうっ……あああ……いい……」
倒れた陣氏の股間の上で、フェルデリアは腰を複雑にくねらせた。
とても処女とは思えないが、確かに破瓜の血は出ているようだ。
四方から絡み付いてくる粘膜の刺激で、陣氏はだんだん限界が近づいてきた。
「どいてくれ。そろそろ出る……」
「何ですか、その妄言は?」
途端にフェルデリアは動きを止め、冷たい視線を陣氏に向けた。
「いや、だって……」
「子種汁出してやるから、しっかり精液処理マンコで受け止めろ、ぐらいのことを言えないのですか?」
「でも、さすがに中は……」
「早くなさい!」
王女の威厳だろうか。陣氏はその言葉に逆らえず、フェルデリアの台詞を繰り返した」
「ええと……子種汁出してやるから、しっかり精液処理マンコで受け止めろ」
「真剣味が感じられません。もう一回」
「そんな」
「それに、さっきから膣を犯すだけで、他にわたくしの肉体を辱めることはなさらないのですか? 胸を責めるとか、肛門をいじるとか、何か考えられませんか?」
「…………」
もう何を言っても無駄だ。とにかく一回終わりにしよう。
陣氏は右手を伸ばしてフェルデリアの乳房を後ろから鷲掴みにし、できるだけ感情を込めて言った。
「子種汁を出してやる! 精液処理マンコで受け止めろ、淫乱王女!」
「ああっ! かしこまりました、ご主人様あっ!」
フェルデリアは、再び腰を高速で振動させた。たまらずに陣氏は、彼女の中に精を放ってしまう。
「うぐあっ……」
「おおお……ご主人様の精液が、雌豚奴隷の汚ない膣一杯に……」


527:現物支給 ◆0jC/tVr8LQ
10/10/19 00:57:22 O8N0WXGP
「あのさ」
性交が終わって人心地ついた後、陣氏は騙されたような気分になり、フェルデリアと向かい合って言った。
「今ので、俺がフェルデリアの主にふさわしいって感じ、みたいな? になっちゃったけど、それでいいの?」
「はい」
フェルデリアは跪いて即答した。
「でもさっきは、心までは譲らないとかどうとか……」
「ご主人様は、わたくしの故国で、戦車を撃破されたことを覚えておいでですか?」
「戦車? ああ……」
そう言われてみれば確かに、陣氏は戦車に向けてバズーカ砲を発砲した。
撃破したかどうか、戦果までは確認できなかったが。
「あれは、反乱軍共の戦車でした。それがご主人様に破壊されたのが要因の1つとなって、わたくしの家族は国外に逃れることができたのです」
「うわ……」
俺ちゃんてば、そんな海外情勢を左右するような、大それたことやっちゃったのね。陣氏はいささか青ざめた。
「じゃあ、俺って君の国の新政府に睨まれてるんじゃ……」
「いいえ。戦車がご主人様に向けて発砲したので仕方ないと、泣き寝入りすることにしたそうです」
「ははあ」
―強気なのか弱腰なのか分からないな、その新政府……
そう陣氏は思った。
「まあ、同盟国に喧嘩売りまくって、核ミサイル向けてくる国に媚売りまくるよりマシか……」
「え?」
「いや、何でもない。それより、今の話が、君が俺の奴隷になる理由なの?」
「そうです。家族を救ってくださったご主人様に、わたくしの生涯をかけてご恩返しをいたします」
フェルデリアは、そう言って深々と頭を下げた。
―そういうことか。うーん……
腕を組んで考え込む陣氏。とりあえず、フェルデリアが自分の奴隷になることを志願した理由は分かった。
しかし、だからと言って、いつまでもフェルデリアを奴隷としてここに置いておく訳には行かない。
ここは陣氏1人の家ではない。今でこそ1人暮らしだが、いつ家族が帰ってきてもおかしくないのだ。
それに、近所の目もある。フェルデリアはその容姿だけでも相当に目立つから、例え実情が知れなくとも、あらぬ噂が立つのは時間の問題だろう。
―どうしよっかなあ。
考えていると、フェルデリアが急に赤面しながら話しかけてきた。
「あの、ご主人様……」
「ん? 何?」
「おトイレに、行かせてください……」
またそれか。陣氏はすぐに許可した。
「いいよ。行ってこいよ。トイレはここを出て、左の突き当たりだ」
フェルデリアが出て行くと、陣氏はほうっと溜息をついた。
―行きたいときは勝手にトイレに行けって何度言っても、聞いてくれないんだよな……
しばらくすると、フェルデリアが戻ってきて、こう言った。
「ご主人様、プラスのドライバーを貸していただけますか?」
「え? ああ、いいけど……」
陣氏は深く考えずに、工具箱からドライバーを取ってきて渡した。


528:現物支給 ◆0jC/tVr8LQ
10/10/19 00:58:33 O8N0WXGP
「何でこんなことしたの!?」
取り外されたトイレのドアを前にして、陣氏はフェルデリアを詰問していた。
自分も用を足そうと陣氏がトイレに行くと、見事にドアがなくなっていたのである。
「必要ないからです。わたくしの排泄行為は、ご主人様の管理下に置かれているわけですから、いつでもご覧になれるようにするのが当然かと」
「それについては異論もあるけど、100歩譲ってまあいいとしよう。でもトイレは、俺も使うんだよ?」
「はあ? ご主人様、気は確かですか?」
フェルデリアは、頭脳の不自由な人を見るような目で陣氏を見た。
「ど、どういう意味だよ……?」
「これからご主人様が用を足されるときは、わたくしがお世話をするのです。なおさらドアなど不要ではありませんか」
「な、何ですと……?」
「では、早速失礼いたします」
フェルデリアは、ドアのないトイレに陣氏を押し込めると、自分も中に入り、陣氏のズボンのチャックを無造作に開けた。そのまま手を突っ込み、ペニスを露出させる。
「こ、これから毎回これを……?」
「当然です。出し終わったら仰ってください」
「でも……」
「何かご不満でもあるのですか? ああ、分かりました。わたくしの口に出すのですね?」
フェルデリアは口を開くと、何の躊躇も見せずに、陣氏のペニスを頬張った。
「……便器の方に、向けてください」
敗北感に満ちた声で、陣氏は言った。

その後、陣氏は首輪を買いに外に出た。フェルデリアから執拗に要求されたのである。
「奴隷が首輪なしでは、外にも出られないではありませんか」
―そう言われてもなあ……
首輪を着けるのは200歩譲っていいとしても、それで外に出るのだけは勘弁してほしいところだ。
何とか、こちらの要望も聞いてもらえるようにはならないものか。
重い足取りで、陣氏はできるだけ自宅から離れたペットショップに行き、犬用の首輪を購入した。
実は、首輪の他にも、ロープやら鞭やら蝋燭やら手錠やらというおどろおどろしい買い物リストをフェルデリアから突き付けられていたのだが、ハードなネゴシエーションの末、それだけは免れていた。
「金がない」
の一点張りで陣氏が頑強に抵抗し、ついにフェルデリアも、
「まあ、今日のところはいいでしょう」
と折れたのである。


529:現物支給 ◆0jC/tVr8LQ
10/10/19 01:00:08 O8N0WXGP
首輪を買った陣氏が自宅に戻ると、フェルデリアが全裸のまま、居間で携帯電話をいじくっていた。
陣氏の携帯電話ではない。彼女自身のものだ。
―おっと。プライベートな時間を邪魔しちゃいけないな。
陣氏がそっと居間から出て行こうとすると、フェルデリアの慌てた声が聞こえた。
「あっ、ご主人様。申し訳ありません。お出迎えもせず……」
「いい。続けてろよ。俺はしばらく、自分の部屋で休むから。フェルデリアも好きなことしていろよ」
「そうは参りません。ご主人様のお出迎えもできない愚かな雌豚奴隷に、お仕置きをお願いします」
そう言って四つん這いになり、無防備にヒップを向けてくるフェルデリア。
疲れ果て、自室で横になりたい一心の陣氏は、強引に話を逸らそうとした。
「め、メール打ちかけなんじゃないの? それだけ先にやっちゃえば?」
「メールなら、先程一括送信しましたので。もう大丈夫です」
「一括送信?」
何気なく聞いた陣氏だったが、フェルデリアの返答を聞いて肝を潰した。
「はい。わたくしがご主人様のお世話になっていることを、わたくしの縁のある者達に伝えました」
「ギャアアアアアアア!!」
「どうなさいました? ご主人様」
「お、お、俺の奴隷になってるって、まさか知り合いみんなに言っちゃったの?」
「ご心配には及びません」
フェルデリアは立ち上がり、胸を張って言った。
「メールは、王家に連なる者にしか分からない暗号で書いてあります。例え盗読されても、ここの住所が漏れることはありません」
「ああ、うう、ぐう」
住所まで書いてもーたんかい。
陣氏は気が遠くなった。
それこそ、ご主人様の許可を得なければいけないことだろうに。
「まさかとは思うけど……」
気丈にも陣氏は意識を保ち、フェルデリアに問いかけた。
「メール見た何人かが、ここに来るってことはないだろうね?」
「いいえ。それはないかと思います」
「それなら、まだいいか……」
陣氏は全身から脂汗を流しながら、ソファーに座った。
「今こちらに向かっているというメールは、まだ1通しか返信がありませんので」
「ウーム……」
今度こそ陣氏は気絶した。

ピンポーン
「うっ!」
呼び鈴の音で、陣氏は目を覚ました。
すっかり暗くなっている。何時間ほど気を失っていたのか。
気が付くと、ソファーに横たわっていて、毛布をかぶっていた。フェルデリアがかけてくれたのだろう。
ピンポーン
再び呼び鈴が鳴る。
―今時分に、誰だ……?
陣氏は立ち上がり、壁にかかっている受話機を取った。これで呼び鈴を押した相手と、話すことができる。
「……どちら様で?」
恐る恐る言うと、相手の声が聞こえた。
『夜分に恐れ入ります。こちらは、朝霧陣氏様のお宅でよろしいでしょうか?』
女性の声だった。日本語だ。しかし、外国訛りがある。日本人ではない。
「そうですが、あなたは……?」
『フェルデリア様にお仕えしている、アレウナと申す者です。門を開けていただけますか?』
―もう来たのか!
陣氏は、己の心身が戦慄するのを感じ取っていた。


530: ◆0jC/tVr8LQ
10/10/19 01:01:31 O8N0WXGP
今回は以上になります。
なお、このSSも、触雷!同様に団体戦に発展させる予定です。
苦手な方はご注意ください。

531:名無しさん@ピンキー
10/10/19 01:12:45 D6E2IATW
GJ!
触雷!のほうもがんがれ~

532:名無しさん@ピンキー
10/10/19 02:10:17 +Hs3ffMD
ふう・・・GJ!

533:名無しさん@ピンキー
10/10/19 02:22:52 trf1013N
GJ!!
なんかえれぇことになっとるな

534:名無しさん@ピンキー
10/10/19 07:28:53 ac9FAYGw
GJ

最近の奴隷はあんなに偉そうなの?

535:名無しさん@ピンキー
10/10/19 17:18:08 7aMhkNqS
いいえ、エロそうなんです

536:名無しさん@ピンキー
10/10/19 17:57:44 qz/1SxA5
奴隷こわい

537:名無しさん@ピンキー
10/10/19 18:15:44 6riWNUmW


538:名無しさん@ピンキー
10/10/19 18:17:16 8q518ols
GJ!

まとめ更新の方も乙です

539: ◆Uw02HM2doE
10/10/19 20:15:33 VKPE3Ad+
こんばんわ。今回はリバース14話を投下します。
よろしくお願いします。

540:リバース ◆Uw02HM2doE
10/10/19 20:16:44 VKPE3Ad+
修学旅行の翌日。
二年生は昨日まで修学旅行だったということで、今日は休校日になっていた。
「じゃあ行ってくるね、里奈、兄さん!」
「おう、いってらっしゃい」
「いってらっしゃい!」
学校へ行く潤を玄関で見送る。隣にいる里奈は元気良く手を振っていた。
「さ、もう一眠りするかな」
「じゃああたしもカナメと一緒に寝る!」
俺の左腕を掴む里奈。
どうやら修学旅行で俺が家にいなかった間、潤と里奈は仲良くなったようだ。
今も里奈が潤を見送りに来ていたし、今朝の朝飯を作っていた潤を自ら手伝っている里奈を見ると二人はまるで仲の良い姉妹のようだった。
「この家には慣れたか?」
「うん!カナメは好きだし、ジュンも最初は怖かったけど今は優しいもん!」
嬉しそうに言う里奈。確かに最初里奈を連れて来た時の潤の反応は異常だった。
しかし今はこうして里奈にも好かれている。きっと何かが潤に心境の変化をもたらしたのだろう。
もしかしたらあの雨の日、潤が倒れた日に何かがあったのかもしれない。
とにかく潤は変わろうとしている。それはとても喜ばしいことだった。
「カナメのベットに一番乗り!」
里奈は俺の部屋に入って一目散にベットに飛び込む。
「おいおい、俺のベットだろ」
苦笑しながらもこんな一日も悪くないな、と思う。今日は久しぶりにゆっくり出来そうだ。
ふと視界に点滅した光を放つ携帯が入る。
「メールか。一体誰だろう?」
「カナメ~、早く来てよ~」
「分かったからちょっと待っててくれ」
里奈に急かされながら携帯を開く。やはり受信メールが一件あった。差出人は―
「…………っ!」
「カナメ?どうしたの?」
「…い、いや何でもない。さ、もう一眠りだ」
「……うん」
なるべく動揺を悟られないように携帯を閉じる。里奈を連れてそのままベットに潜り混んだ。



送信者:大和撫子
件名:無題
本文:今日の正午、桜ヶ崎駅東口で待ってます。
   あたし達、恋人だもんね。来なかったら……分かるよね?


541:リバース ◆Uw02HM2doE
10/10/19 20:17:47 VKPE3Ad+

桜ヶ崎駅東口。寝ている里奈を起こさないようにして家を出た。
「ここか……」
以前にも呼び出されてここに来た。前回は会長、そして今回は―
「時間ピッタリだね。合格だよ、要君」
「……撫子」
"恋人"の大和撫子だ。彼女は瑠璃色のポニーテールを揺らして駅前の柱に寄り掛かっていた。
「本当は5分前行動がベストなんだけど……許してあげる」
俺の左腕を取り自分の腕に絡める。撫子からは仄かに甘い香りがした。
「お、おい」
「さあ行きましょ。今日は一杯歩くんだから。覚悟しておいてよね」
嬉しそうに腕を組む撫子を見ているとつい忘れそうになる。彼女がどれほど恐ろしい存在か、ということを。
「あ、ああ……」
でも忘れてはいけない。この"恋人"がいる限り、俺に安らぎは訪れないのだから。



海上娯楽施設"アクアマリン"。桜ヶ崎駅からモノレールで20分程の所にある、海を題材としている巨大テーマパークだ。
休日になると家族連れやカップルで賑わう、我が県のイチ押しといっても過言ではない場所である。
「うわぁ!綺麗……」
「……確かに」
海底をイメージしたエントランスは撫子の言う通りとても綺麗で幻想的だった。
色とりどりの貝殻が周囲を飾り、正面ゲートには本物のアクアマリンがこれでもかという程たっぷりと散りばめられている。
「これ、藤川君のお父さんが作ったんだよね……」
「まあ正確には会社が、だけどな」
このアクアマリンは英の父親である藤川栄作が経営する、藤川コーポレーションが建設したテーマパークだ。
これは東桜では殆どの生徒が知っていることだし、俺も英から直接教えてもらった。
「あたしアクアマリン来たことなかったんだ。よぉし、今日はとことん遊ぶぞぉ!」
「ちょ!?おい、引っ張るなって!」
腕を組みながら俺をぐいぐい引っ張ってゲートに行く撫子。今日は平日だから別に混んではいないし、そんなに焦る必要もないのだが。
それでも目を輝かせながらゲートを通る撫子を見ていると、何だかこっちまで楽しい気分になってくる。
「アクアマリンにようこそ!」
海をイメージした青色を基調とした制服を着るスタッフに出迎えられ、俺達はゲートを潜って行った。


542:リバース ◆Uw02HM2doE
10/10/19 20:18:47 VKPE3Ad+

「ジェットコースターだって!あたしジェットコースター大好きなんだ!乗ろっ!」
中に入って早々走らされてジェットコースター乗り場へ。
別に平日の真昼間なんだから焦る必要なんてないと思うんだが、撫子が楽しそうなのでそれで良いかな。
「何々…"海へ突き出たレールがここでしか味わえない興奮を貴方に"…か」
入る時に貰ったパンフレットに書いてある説明を見る限り、かなり本格的なジェットコースターのようだった。撫子は隣でそわそわしている。
「海へ突き出す!?絶対楽しいに決まってるよ!」
「よくジェットコースターでそんなにテンション上げられるな……」
隣で無邪気にはしゃぐ撫子はまるで子供のようだ。どうやら余程ジェットコースターが好きらしい。
「よし、絶対にジェットコースター系は制覇するからね!」
「おいおい……」
乗り場へとスキップしながら登って行く撫子を見ていると、何だか俺までワクワクして来てしまった。恐るべしポニーテール。



「来るよ来るよ!」
「あ、ああ……」
日本の技術力は凄いと思う。
"海へ突き出たレールがここでしか味わえない興奮を貴方に"
確かにその通りだ。一体どうやって支えているのかは分からないが海面スレスレにレールがあり、まるで海へダイブするような感覚になる。
ただ一つ、"ここでしか味わえない興奮"が人によっては恐怖になる場合を除いてだが。
「さん、にぃ、いち……!」
「う、うわぁぁぁぁあ!?」
最初に一気に急降下して海面スレスレまで行った後は、激しいアップダウンを繰り返して一回転する。そしてカーブしながらまた海へ飛び出すのだ。
「さいっこぉぉぉお!」
「あぁぁぁぁあ……」
隣でテンションが最高潮まで上がっている撫子とは正反対な俺。しかしそれは当たり前のことなのだ。
いくらジェットコースターが好きだと言っても普通2、3回乗れば飽きるもしくは体力的に辛くなるものだ。
しかし隣にいる大和撫子という人間には限界がないらしい。
「きゃぁぁぁぁあ!!」
「…………」
既にこの本格的なジェットコースターに乗ること7回目。
さすがに係員にも顔を覚えられ始めた。後何回乗れば隣のスピード狂は満足するのだろうか。

543:リバース ◆Uw02HM2doE
10/10/19 20:20:00 VKPE3Ad+

「いやぁ、楽しかったね!マリンコースターもアクアジェットも良かったけどやっぱり一番はジ・オーシャンだったよ!」
「……気持ち悪い」
結局"海へ突き出たレールがここでしか味わえない興奮を貴方に"が売りのジェットコースター、ジ・オーシャンには12回乗った。
その後も休憩を全く挟まずにアクアマリン内にある絶叫アトラクションを全て最低3回ずつ乗り回ったのだった。
「情けないなぁ。しっかりしてよ要君」
「いや、俺は頑張った方だと思うんですが……」
空には既に月が出ている。まさか一日中ジェットコースターに乗らされるとは思わなかった。
これが撫子の言う"デート"ならこれからはデートするのは考えた方が良さそうだ。
「こんなのまだ序の口だよ?……あ」
「うん?」
急に立ち止まる撫子につられて立ち止まる。目の前には工事中のビルが立っていた。
「アクアポート、もうすぐ完成するんだ。半年前に駄目になったばっかりなのに」
「アクアポート?」
俺の質問に撫子は驚いたように目を見開く。
「要君、まさか知らないの!?」
「えっと……何が?」
撫子は信じられないといった様子だが俺にもよく分からない。
この工事中のアクアなんちゃらとかいうビルを知らないことが、そんなにも問題なのだろうか。
「はぁ……。ニュースくらいちゃんと……って要君、記憶喪失だったんだね」
「あ、ああ……」
「このビルはね、半年前、完成間近に事故で爆発しちゃったんだ。当時のニュースで大々的に扱ってたから知らない人はいないと思う」
「爆発……事故……」
何かが引っ掛かる。確かつい最近、そんな話をどこかで聞いたような気が―

『……半年くらい前にビルの爆発事故で行方不明になってさ。そこに写っているメイドと一緒にね』

「っ!?」
急に頭痛がする。頭が割れそうだ。何かを、忘れてはいけない何かを忘れてしまった気がする。
「だから半年しか経ってないのにまた完成間近……要君!?」
「ぐっ!?」
何なんだ、この感じ。最近頻繁に起きる発作的な頭痛とこの感じ。忘れてはいけないことが思い出せそうで思い出せない。
「やはりここにいたか要」
「……えっ?」
聞き覚えのある声。顔を上げるとそこには会長が立っていた。
しかし何故だろう。いつもの要組の時の会長とは打って変わってその碧眼は冷たく撫子を射抜いている。
そして彼女の紅い髪も燃え盛る業火の如く揺らめいていた。

544:リバース ◆Uw02HM2doE
10/10/19 20:21:19 VKPE3Ad+

「……生徒会長さんが何の用?」
「要、体調が悪そうだな。外に車を用意してある。家まで送って行こう」
撫子を完全に無視して会長がこちらへ近付いて来る。途端に理解する。彼女は怒っているのだ。それも尋常でない程に。
「ちょっと待って。要君はあたしの彼氏よ。勝手なことしないで」
近付く会長の目の前に立ちはだかる撫子の声は氷のように冷たかった。撫子もまた怒っているが会長とは正反対に静かな怒りだった。
「……君は一体誰だ?」
「あたしは大和撫子。後ろにいる白川要君の彼女よ。人に名前を聞く時はまず自分からじゃないの、会長さん?」
撫子の挑発とも取れる自己紹介に会長は眉をひそめる。しかし5秒程の沈黙の後、会長が話し始めた。
「私は美空優。そこにいる白川要の婚約者だ。要はもう私の両親への挨拶も済ませている。そうだろ、要?」
「馬鹿言わないで。要君はあたしと付き合ってるの。もう愛し合った仲なのよ。ね、要君?」
会長と撫子がこちらを睨んでくる。何なんだこの修羅場。撫子の言っていることに間違いはない。
でも会長の言っていることも"婚約者"以外は間違ってはいないのだ。
いや、それよりも問題なのは今までこの危うさに気が付けなかった俺自身なのだろうか。
「愛し合った?君は単なる要の性処理道具、つまりオナホだ。要が君なんかに欲情するわけないだろう」
「面白いこと言いますね。ただ乳がでかいだけの年増の何処に要君が欲情するんですか」
二人は睨み合い場の雰囲気が凍り付いているのが分かった。
少し前にも会長と潤の睨み合いがあったが、それとは比べものにならない程空気が張り詰めている。
「分からないのか、君は要には似合わない。どうせこの関係も君が押し付けたものだろうな」
まるで知っているかのように切り捨てる会長。
恐らくあてずっぽうだが、あながち間違ってはいない。撫子はゆっくり息を吐いてから反撃する。
「適当なこと言わないで貰えますか。貴女、偉そうで大嫌いです」
「奇遇だな。私も君が大嫌いだ」
ゆっくりと歩み寄る二人。お互いの射程距離を計っているようだ。緊張は極限まで膨らんでいた。後は何かきっかけがあれば―
「優お嬢様。そろそろお時間です」
そんな時、会長の執事であろう初老の紳士がやって来た。
「……そうか。それでは今日は引き上げよう。君、夜道には気をつけた方が良い」
「……そちらこそ」
「要、また学校で会おう。修学旅行のお土産、期待してるからな」
「あ、はい……」
そのまま会長は紳士を連れて、去って行った。

545:リバース ◆Uw02HM2doE
10/10/19 20:22:27 VKPE3Ad+

「今日、楽しかったな」
「うん……」
「えっと……撫子はジェットコースター乗りすぎなんだよ」
「そうだね……」
アクアマリンからの帰り道。会長と対峙してから撫子はずっと俯いて何かを呟いていた。
こうして帰り道を歩いていても生返事しかしない。やはり会長に言われたことが堪えているのだろうか。
「えっとさ……」
「……要君」
突然撫子が立ち止まり俺を見つめてくる。彼女の目は一切の光を写してはいなかった。生気のない、暗闇しか写さない目。
「要君は逃げないよね?裏切らないよね?側に……いてくれるよね?」
覗き込んでくる撫子。その目の暗闇に吸い込まれそうになる。
一切の光がない暗闇が目の前に広がっているようだった。無意識に後退りする自分がいた。
「俺……帰らないと……」
怖かった。とにかく怖かった。昼間一緒にいた彼女とはあまりにも違いすぎて。
一刻も早くこの場所から立ち去りたい。ただそれだけを考えてしまう。
「……そう。分かった」
「あ、撫子……」
声をかけるが撫子はそのまま背を向けて去って行った。
「……くそっ」
彼女は俺を脅していたんだ。それならばこれで良かったはずなのに、何だろうこの胸に広がる罪悪感は。
ただ一つ分かるのは俺がどうしようもなく情けないということだった。



「…………」
家に帰ると里奈に何処へ行っていたのかしつこく聞かれたが、謝ってごまかした。
潤も聞きたそうな様子だったが俺を気遣ってくれたのか、直接何も聞こうとはしなかった。
そんなこんなで気まずい夕飯を終えてベットに飛び込む。
「……会長……撫子……」
一体俺はどうするべきだったのだろうか。根拠はないが俺は何かをすべきだったのではないか。
少なくともあのまま撫子を帰してはいけなかったような気がしてならない。
「……わかんねぇ」
考えていても仕方ない。ふと時計を見ると午後10時ちょうどだった。何か面白い番組、やっていたかな―

『少し時間をあげる。明後日の午前0時、要の家の近くにある公園で待ってる。その時に答えを聞かせて』

「っ!?」
急に蘇る記憶。いや、これは修学旅行の時の記憶だ。鮎樫らいむに言われた言葉を思い出す。
そう、確かに彼女は言った。明後日、つまり今日の午前0時に公園に来いと。そしてそこで答えを聞かせて欲しいと。
「……本当に意味わかんねぇ」
行って何になるというのだろうか。あいつは鮎樫らいむじゃない。
それは亙さんのおかげで分かった。だったらわざわざ会う必要はないのではないか。
「……馬鹿馬鹿しい」
俺は布団を被り直した。行ってたまるか。
ただでさえ混乱しているのに、自分から面倒を増やす必要はない。それでも彼女の言葉は耳から離れなかった。

546:リバース ◆Uw02HM2doE
10/10/19 20:24:45 VKPE3Ad+

午前0時。俺は公園のベンチに向かっていた。
「……寒っ」
結局鮎樫らいむの言葉が忘れず、のこのこと近所の公園まで来てしまっていた。
自分でも馬鹿だとは思うが仕方ない。何故か彼女の言葉を無視出来なかったのだ。
「こんばんは」
「……こんばんは」
鮎樫らいむは前回と同じようにベンチに座っていた。相変わらず真っ赤なワンピース一枚でこの寒空の中、何ともない様子で座っている。
「やっはりワンピースか。……ほら」
そんな鮎樫らいむに自分が着ていたジャケットを手渡す。ちょっと照れ臭いので目は合わせない。
「……ありがとう。座ったら?」
鮎樫は微笑みながらそれを受けとった。そして自分の隣を指差す。別に逆らう理由もないので彼女の隣に座った。
「綺麗な星空でしょ。確かあれは……オリオン座だっけ?」
「いや、あれはオリオン座じゃないだろ」
確かに見上げた空には星が輝いておりとても綺麗だった。
「あれ?二人でプラネタリウムに行った時に教えて貰ったんだけど……。じゃああれは北極星!?」
「……違うと思うぞ」
明らかに飛行機の赤く点滅ライトを北極星と言う鮎樫に思わずため息をつく。つーか俺達プラネタリウム行ったのかよ。
「うーん……。もう忘れちゃったな」
「まあ人間は忘れる生き物だからな。また思い出せば良いんじゃないか?」
俺の言葉に鮎樫は「そうだね」と呟いた。
深夜ということもあって辺りは静まり返り、このベンチだけが別世界へと切り離されたような感覚に陥る。
「……答え、聞かせて?」
「……ああ」
鮎樫が静寂を破った。
俺を真剣な眼差しで見つめる。俺は"答え"をゆっくりと口にする。
「……色々考えたけど、やっぱり知りたいんだ。一体俺が今まで何をしてきて、どんな奴だったのか」
「……うん」
俺も鮎樫の目を見つめて話をする。
「確かに思い出したくはないこともあるかもしれない。でも……それも全て含めて"俺"だから」

547:リバース ◆Uw02HM2doE
10/10/19 20:25:50 VKPE3Ad+
鮎樫や潤、英や亮介、会長や遥、桃花や桜花や里奈、撫子、亙さんとライムさん。他にも色々な人達との出会いがあった。
そしてそれら全てが今の俺を形作っている。たった4ヶ月でこんなにも多くの人達との思い出がある。
だったら過去を忘れたままなんて出来ない。だってそれらも全て含めて俺、白川要という人間なのだから。
「…………そっか」
鮎樫はゆっくりと立ち上がり俺の目の前に来る。微笑む彼女は何処か寂しそうだった。
「分かった。要が決めたなら、それが一番だもんね。立って、要」
鮎樫に言われた通り立つ。すると彼女は俺の両手を握ってそのまま前に出した。まるで二人で円を作っているようだ。
「私の本当の名前を言って。それで貴方はきっと全てを思い出せる」
「……分かった」
何故名前を言えば記憶が蘇るのか。その理由は分からない。でも何となくそうなると思っている自分がいた。
結局俺は最初から彼女を、鮎樫らいむを信じたかっただけなのかもしれない。
「最後に一つだけ。……要、たとえ離れても私はずっと貴方を見ているからね」
「ああ……」
「……じゃあ……お願い」
鮎樫は目を閉じる。俺に全てを任せるようだ。ゆっくりと深呼吸をする。心臓が破裂するくらい鼓動しているのが分かる。覚悟を決めろ。
「お前の本当の名前は……」
「………」

「海有朔夜(ウミアリサクヤ)」

その瞬間、視界が歪んだ。今まで体験したことのない激しい頭痛が俺を襲う。
気が付けば手を離し地面に這いつくばっていた。耳鳴りがし、目が開けられなくなってきた。
「―――――!!」
あまりの痛みに叫ぶが何を言っているのか聞こえない。意識が朦朧としてくる。そんな中確かに俺は聞いた。鮎樫、いや海有朔夜の声を。



「さようなら、要」






「……んっ」
空には満天の星空が広がっていた。どうやら気絶していたらしい。
「…痛っ」
地面に倒れていたので起き上がる。頭の痛みはまだ引いていなかった。
「いねぇ……」
周囲を見回すが海有朔夜はおらず彼女に渡したジャケットがベンチに置いてあった。
「……とりあえず帰るか」
記憶が戻った実感もなければ昔のことを覚えているわけでもない。だからといっていつまでもここにいるわけにもいかないので家に帰ることにした。



これが平穏の終わり、そして惨劇の始まり。

548: ◆Uw02HM2doE
10/10/19 20:28:53 VKPE3Ad+
今回はここまでです。次回からいよいよヤンデレタイムに入る予定です。
ここまで読んでくださった方、ありがとうございました。
投下終了します。

549:名無しさん@ピンキー
10/10/19 20:44:39 xAk9EuMj
GJ!リバース来るの楽しみにしてました!

続きが気になる……orz

550:名無しさん@ピンキー
10/10/19 23:42:10 7ZxWcG2e
GJ!本当の名前は海有朔夜っていうのか
次回のヤンデレタイムに期待!

551:名無しさん@ピンキー
10/10/19 23:47:33 jYKHrGgb
GJ!次回から惨劇のヤンデレタイム楽しみです!

552:名無しさん@ピンキー
10/10/20 00:35:34 9afGcwA8
gj!
既に会長と撫子の修羅場でワクワクしてる俺がいる

553:名無しさん@ピンキー
10/10/20 00:59:02 JkA2+jOu
GJ!リバースも14話か、早いな。
次回に期待!

554: ◆lSx6T.AFVo
10/10/20 12:11:18 KgIpHWOW
第六話、投下します。

555:私は人がわからない ◆lSx6T.AFVo
10/10/20 12:14:05 KgIpHWOW
 ―あなたみたいな人間が誰かに好かれるなんて、不可能よ。
 何の変哲も無い、いつもの朝方の教室でのことだった。
 ホームルーム前の教室は相変わらず賑やかで、あちらこちらと会話が生まれ、正に談論風発としている。
 そんな中、私は彼等の輪の中に入ろうという気も起きず、深海魚のようにじっと座って、ぼんやりと何処か遠くを眺めていた。
 そんな風にしていたのがいけなかったのかもしれない。
 不意に昨日の言葉が頭を過り、私は顔をしかめたのだった。
 ハァと、恋する乙女のような物憂げな溜め息をしてから、眉間の辺りを指で揉む。気分は一向に良くならない。
 久しぶりの斎藤ヨシヱとの邂逅は、私にとってはもはや消し去りたい過去のひとつになっていた。
 昨日のことは、何度思い出しても恥ずかしくなる。柄にも無く感情的になって、自分の内面の一角を安々とさらけ出してしまった。あのことは確実に、私の黒歴史の一ページに刻まれたことだろう。
 ああ、駄目だ。
 考えれば考えるほど、心がむずむずとこそばゆくなる。しかし逆に彼女のことを考えないように意識すると、より一層濃く残滓するのだ。
 まるで呪いだな、と私はうんざりした。
 斎藤ヨシヱと会った後は、いつもこうだった。
 彼女はいつも、私の仮面の下の素顔を暴こうと何らかの揺さ振りをかけてくる。
 しかも嫌らしいことに、彼女ならそんな仮面簡単に剥がせる筈だろうに、あえてそうしないのだ。じわりじわりと私を追い詰め、いつもギリギリのところで手を引く。
 そういう人を手玉に取っているような行動は、はっきり言って腹が立つものだった。自分が道化のような気がしてならないからだ。
 あのサディストめ、と私は心中毒づいたが、懲りずに茶道室へと通い続ける私も、またマゾヒストなのかもしれないと思い直し、再び苦い気持ちになる。
 とにかく、昨日のことは早く忘れるが吉だ。
 私はいやいやするように、軽く頭を振るのと同時に雑念をも振り払った。
 そして、何気なく前を見る。
 と。
 そこに、見覚えのある背中を見つけた。
 小動物を思わせる雰囲気を纏ったその背中は、間違いなく彼女だろう。
 田中キリエ。
 確か、昨日は風邪を患わって休んでいた筈だが、どうやら無事に回復したらしい。
 本人は、身体が弱く欠席することが多いと言っていたけれど、あまり病を長引かせるタイプでもないみたいだ。


556:私は人がわからない ◆lSx6T.AFVo
10/10/20 12:15:15 KgIpHWOW
 それにしても。
 たった一日会わなかっただけというのに、彼女を見るのも随分と久しい気がする。
 そう思えるということは、田中キリエは私が想像しているよりもずっと大きい存在になっているのかもしれない。
 私が無意識にじぃと見つめていたせいだろうか。
 突然、彼女が後ろを振り返った。
 必然と目が合う。
 そのまま目を逸らすのもアレなので、私はニコリと微笑んで会釈した。
 すると、田中キリエもはにかみながら会釈を返してくれる。その笑顔に病の余韻は伺えない。
 よかった、ちゃんと治ったみたいだ。
 私は安心し、それで朝の挨拶も終わりだと思ったのだが―
 あれ?
 何故か、彼女はまだ私のことを見つめていた。
 何かを期待するような、もしくは示唆するような、そんな視線を私に寄越し続けている。
 どうしたのかしら。
 不思議に思って私も目を離せずにいた中、ガラガラとしたローラー音と共に教室のドアが開いた。
 担任が入って来た。
 早く席に着け、という鶴の一声によって散らばっていた生徒達も自分の席へと戻っていく。
 私も田中キリエもそこで視線を離した。
 それから、朝のホームルームが始まったのだが、
「…………」
 まだ、見てる。
 彼女は、担任の目を盗んではチラチラと私の方を見ていた。
 もしや、私の顔に何かついているのか。
 そう思って自分の顔をぺたぺたと触ってみたけれど、特に変わったものはついていないように思えた。ついているものといえば、馴れ親しんだ形の悪い目や鼻や口ぐらいだ。
 うーん。
 私は困ったように頬を掻く。というか実際困っていた。
 しばしの思案の後、結論を出す。
 無視しよう。
 正直、自分からわざわざ、一体全体どうしたのですかと聞きに行くのも面倒臭いし、それに彼女だって子供じゃないんだから、用があるのなら自分から言ってくるだろう。大して気にすることでもない筈だ。
 なので、私は担任の話に集中することにした。
 なんの面白みの無い平板な声が耳に届く。
 期末テストが近いせいか、担任の話は全てテスト関連の話だった。テスト対策や日程について、しつこく生徒達に聞かせている。少しでもクラスの平均点を上げたいのだろう。
 私はテストの杞憂よりもむしろ、もうそんな時期になるのか、という時の流れについて驚いていた。


557:私は人がわからない ◆lSx6T.AFVo
10/10/20 12:16:46 KgIpHWOW
 中間テストをやったのもついさっきのような気がしているのに、もう期末が始まってしまう。まるで私だけが流行に乗り遅れてしまったみたいで、妙な孤独感を感じた。
 私は、おもむろに窓の外に目を向ける。
 夏の間は緑色に繁っていた桜の木も、今では木の葉ひとつ無かった。
 時間は、たしかに流れていっているのだ。
 期末テストが終われば、冬休みが始まし。冬休みが終われば、新学期が始まるし。そして新学期が終わる頃、卒業式が行われる。
 そして卒業式が終われば―上級生である斎藤ヨシヱは、この学校を去っていく。
 そんなことを考えている時。私はなんとも言えない複雑な気持ちになる。
 私と彼女の関係は、一言で表せない程に目茶苦茶なものだ。
 一応、友人関係ということになってはいるが、実際はポケットにつっこんだイヤホンのコードみたいに、私達の関係はこんがらがっている。
 なので私には、彼女が卒業するのは悲しいことであるのと同時に、嬉しいことでもあるのだ。矛盾した言い方であるが、他に適した表現も見つからないので仕方ない。
 そういえば、斎藤ヨシヱは進路はどうするのだろうか。
 無難なのはやはり進学だが、彼女が大学生っていうのもなんだかイメージが湧かない。そもそも、高校生である今でも違和感を感じているというのに。斎藤ヨシヱは、あの達観している態度のせいかやけに年上に見えるのだ。
 まあ、いいか。
 今度まとめて聞いておこう、と私は思った。
 そんな中でも、視線の矢は未だに私を捉え続けていた。

 結論から言えば、無視出来なくなった。
 田中キリエは、一限目の数学の時も、二限目の日本史の時も、三限目の現代文の時も、ずっとずっと私のことを見続けていた。
 しかも彼女の見方の巧みなことやら。
 田中キリエの座る最前列の廊下側という位置上、後列にいる私を見るためには否が応でも後ろを振り向かなくてならないのだが
 彼女は周囲の人間が気をそらしたその瞬間を見計らって後ろを振り返るという高度な技術を駆使しているため、私以外の人間は気付いた風ではないのだ。
 そんな状況に、思わず私も眉根を寄せる。
 こうも見られてしまっては、全く授業に集中出来なかった。
 ここまでくると、もはや盗み見というより、むしろ監視だ。気分はまるで看守と囚人。


558:私は人がわからない ◆lSx6T.AFVo
10/10/20 12:17:47 KgIpHWOW
 正直、ウザい。
 ノートも中途半端にしかまとめられてないし、言いたいことでもあるのなら、さっさと言ってしまえばいいのに―と。
 そこで漸く、私は気付く。
 そうか。したくても、出来ないのか。
 田中キリエの恥ずかしがり屋、常に一歩引く控え目な性格を考えると、クラスメイトの目がある教室内で異性の私に話し掛けるなど、到底出来ることではない。
 あまり付き合っていることを公言したいような子にも見えないし、むしろひた隠しにしたいタイプだろう。変に話しかけたりして、私達の仲を疑われるのは避けたいはずだ。
 まあ、そうとわかれば話は早い。
 人目がある所が駄目ならば、人目が無い所に行けばいいまでだ。
 私は三時間目が終了すると、ひとり教室を出た。
 後ろを見てみると案の定、田中キリエがひょこりと顔を出していた。それから、距離を置いてトコトコとついて来る。
 どうやら私の予想は当たっていたらしい。珍しく、今日は冴えている。
 私は、彼女がついてきてるかどうかを確認しつつ、非常階段を目指した。
 学内で人気が無いとこといえば、あそこぐらいしか思い付かないし、ここ最近は中々の頻度でお世話になっているため、へんな愛着が沸いてるからだ。
 そして暫く歩いていると、非常階段前に着いた。
 想定通り、周りには私以外誰も居なかった。遠くから生徒の騒ぐ声が辛うじて聞こえるくらいで、後は静かなものだ。この場所なら、彼女も気兼ねなく用件を話すことが出来るだろう。
 田中キリエは遅れてやって来た。
「あの、なんだかすいません。気を使わせちゃったみたいで」
 彼女はぺこりと頭を下げる。
「いえいえ、気にしないでください。それよりも、何か私に言いたいことがあるのでしょう?」
「うっ、うん」
 私がそう聞くと、田中キリエは急に顔を赤らめたり指を弄ったりと、もじもじし始めた。
 こうなってしまうと彼女が長いことは、今までの経験から知っていた。
 のんびりと話を切り出してくるのを待つことにする。
「あの、よかったら……」
 蚊の鳴くような声で、彼女は切り出した。
「よかったら、お昼ごはん一緒に食べませんか……?」
「お昼ごはんですか?」
「はい。鳥島くんがよかったらでいいんだけど」
「いや、全然大丈夫です。うん、そうですね。お昼ごはん、一緒に食べましょう」


559:私は人がわからない ◆lSx6T.AFVo
10/10/20 12:19:28 KgIpHWOW
 私がそう言うと、田中キリエの顔が太陽みたいにパーっと明るくなった。それからありがとう、と言って身体をくの字に曲げる。
 昼食ぐらいで大袈裟な人だ。
 それにしても、そんなことが言いたいがために授業中あんなに見ていたのか。
「それじゃあ、場所は―」
 と、田中キリエが言いかけたところで予鈴が鳴った。
 時計を見れば、もうそろそろ戻らないとマズイ時間だ。
「教室に戻りましょうか。昼休みになったら、またここで落ち合いましょう。場所についてはその時に教えてください」
 こくりと頷き、了承してくれた。
「後、それと」
 私はポケットから携帯電話を取り出すと、苦笑混じりに言った。
「これからは何か言いたいことがあったら、メールにしてくれると嬉しいです。その、授業中にあんなに見られると、あまり落ち着かないので」
 私の進言に彼女は、あっと目を開いて赤面した。そして、呟くようにゴメンナサイと言う。
 やはり、メールをするという発想には至らなかったみたいだ。
 そんな田中キリエを見て、可愛いらしい人だな、と私は頬を緩ませた。

 昼休みになって、私は購買部へ赴き昼食を購入した。
 残念なことにカレーパンは残っていなかったので、メロンパンとコーヒー牛乳を代替品にする。
 購入品の入ったビニール袋を片手に引っ提げて、私は足早に階段を登っていった。
 いつもならそのまま教室に向かうのだが、今日はちょっとだけ進路を変えてみる。
 自分の教室がある階をさらに飛ばして、私はさらに上へと昇って行った。
 目指す先は、屋上だ。

「お昼は屋上で食べませんか?」
 四時間目が終わった後。
 非常階段の前で再び田中キリエと落ち合うと、彼女は迷わず屋上を指定した。
 我が校では、他の高校と比べ珍しく、一般の生徒に屋上が開放されている。
 そのため、春や秋などの屋外ですごしやすい季節には、沢山の生徒が屋上で食事をしたり、お喋りをしたり、告白をしたりと中々の賑わいをみせる場所なのだが、生憎今の季節は冬だ。おそらく、屋上には人っ子ひとり居ないことだろう。
 確かに人気は無い。
 屋上ならば、彼女も気兼ね無く私と共に昼休みを過ごせることだろう。
 確かに人気は無い。無いけど。


560:私は人がわからない ◆lSx6T.AFVo
10/10/20 12:20:39 KgIpHWOW
「屋上ですか……」
 正直、彼女の提案は私としてはかなり頷き難いものであった。
 前々から言っていることなのだが、私は根っからの寒がりなのである。
 この季節に屋上など行ったら、ヘタしたら凍死してしまうかもしれない。
 ということなので、さすがの私も反論を試みようと口を開いたが、何故か肝心の言葉が何も出てこない。屋上以外に昼食をとれる場所が何も思い付かないのだ。
 結局、私は渋々承諾することになった。渋々と言っても、もちろん顔や態度には出していないけれど。
 そして話し合いの結果、弁当持参の田中キリエは先に屋上で待ち、私は購買部で昼食を購入してから屋上に向かうということになったのだった。

 階段を昇り終え、踊り場に辿り着いた。
 踊り場に田中キリエの姿は無かった。
 此処に居ないということは、おそらく先に屋上で待っているのだろう。
 というか、いっそこの踊り場で食事をしてもいいんじゃないのか、と私は思った。
 埃っぽいのさえ我慢すれば、問題など全く無いのに。わざわざ屋外で食べる意味がわからない。
 けど、そんな文句を言ったって仕方がない。
 私は、屋上へと通じる重い鉄製の扉を押し開けた。
 開け放たれた扉の隙間から、しんしんと冷え込んだ空気が漏れ出してくる。それだけで嫌になる。
 そして、屋上に足を踏み入れた。
「寒い……」
 思わず呟く。
 わかってはいたことだけど、やはり屋上は寒かった。
 寝る時に湯たんぽが欠かせないような自分には、この寒さは中々厳しい。
 私はぶるぶると震えながら、辺りを見回した。
 春や秋には賑わう此処も、今では誰も居なかった。檻のように囲んでいる転落防止のフェンスと、落書きだらけのベンチが数個設置されているだけだ。
 周囲に田中キリエの姿は見えない。
「あっ、鳥島くん。こっちこっち」
 と、聞こえてくる声は後ろからだった。
 振り向くと、田中キリエは屋上内の隅にある貯水タンクの辺りでちょこんと座っていた。
 なんでそんな所に、と私は疑問に思ったが、理由はすぐにわかった。
 暖かい。
 そこは、ぽっこりと突き出た踊り場の壁と、貯水タンク等がうまい具合に風を遮って、まるでかまくらのような暖かさがあったのだ。
 助かった、と私は胸を撫で下ろす。ここならまだ我慢出来ない程ではない。
 それにしても、田中キリエも事前に調べていたみたいに良い場所を知っている。


561:私は人がわからない ◆lSx6T.AFVo
10/10/20 12:22:19 KgIpHWOW
 私は彼女の側に歩み寄ると、その隣に腰を下ろした。
 その時、田中キリエがさりげなくハンカチを敷いて、私のズボンが汚れないようにしてくれた。気が利く子だな、と感心した。
「それじゃあご飯にしよっか」
 と言って、カバンの中から弁当箱を取り出し、さあ昼食だとなる筈だったのだが、彼女が突然あっと悲鳴を漏らした。
「どうしたんですか?」
「水筒、教室に忘れてきちゃったみたい……」
 弁当箱は持ってきているのに水筒を忘れるなんて……。彼女も案外マヌケなことをする。
 朝の睨めつけの一件もそうだけど、田中キリエは意外とドジをやらかす娘なのかもしれない。
「今から水筒取ってくるんで、先に食べててください」
 彼女はそう言い残すと、すくっと立ち上がり、お尻をはたいてから慌だたしく駆けて行った。
 そんな田中キリエの背中を見送る。
「それじゃあ、先に食べるかな……」
 お腹も空いていたので、私は彼女の言葉に甘えることにする。
 ビニール袋からメロンパンを取り出し封を開けようとしたのだが、その時ふと彼女の学生カバンが目に入った。
 チャックが開いたままのカバンの中からは、携帯電話が覗いている。もう何世代か前の、既に型落ちしてしまったスライド型の機種だ。
「…………」
 ふと閃く、ある考え。
 私は、意味ありげにその携帯電話見つめる。
 そして幾らかの逡巡の後、私はその携帯電話を利用することにした。
 学生カバンの中に手を突っ込み、そのままの状態で携帯電話を操作する。これなら、田中キリエが戻ってきても直ぐにごまかせるだろう。
 他人の携帯電話の慣れない操作に戸惑いながらも、私はなんとかメニュー画面を開いた。
 あった。
 私は画面に映るアドレス帳の項目を見つけると、迷わずそこをクリックした。

 田中キリエは意外と早く帰ってきた。
 右手には忘れ物であろうピンク色の水筒が握られていて、急いできたせいか軽く肩を上下させている。
「先に食べてて良かったのに……」
 田中キリエは、手中にある封の切られていないメロンパンを見て、申し訳なさそうに言った。
「まあ、そういうわけにもいかないと思いまして」
 私は曖昧に笑ってごまかす。
「食事は一人で摂っても美味しくないものですよ。それに、せっかく屋上まで来たんだから一緒に食べたいじゃないですか」
 なんていい感じに締めて、私は横に座るよう促した。


562:私は人がわからない ◆lSx6T.AFVo
10/10/20 12:23:39 KgIpHWOW
 田中キリエは水筒を地面に置いて腰を下ろした。
「それじゃあ、今度こそお昼だね」
 彼女はそう言って、学生カバンを膝上に乗せた。そして、弁当箱を取り出そうとカバンの中に手を伸ばしたのだが―不意に動きが止まった。
「どうしたんですか?」
 コーヒー牛乳にストローを挿しこみながら、何気なく聞いてみる。
「鳥島くん、もしかして私のカバンいじった?」
「カバン、ですか?」
 私はきょとんとした表情で田中キリエを見た。
「いえ、特に何もしていませんけど……。どうかしたんですか?」
「そう、だよね……。ううん。別に気にしないで。多分、私の気のせいだと思うから……」
 そうは言うけれど、彼女は中々会得がいかない様子であった。訝し気にカバンの中を覗き続けている。
 それから漸く諦めたのか、やがてカバンから弁当箱を取り出した。それは彼女の身体に比例した、とても小さな弁当箱だった。
「お弁当は自分でつくっているんですか?」
「うん、一応」
「すごいですね」
「そんなことないよ。お弁当をつくるなんてことぐらい、みんなやってることだし」
 と言いながら、彼女は弁当箱を開けた。
 私も自然と視線を移す。
「へぇ」
 思わず感嘆の息が漏れた。
 田中キリエの弁当は凄く美味しそうだった。
 油物と野菜のバランスがいい上に、見た目の色合いもきちんと考えられていて、一目見てそれが美味しいということがわかるような、料理のお手本みたいな弁当だった。高校生の弁当にありがちな、冷凍食品の類も見当たらない。
「料理、上手なんですね」
 お世辞とか抜きに、心からそう思った。
「そんなことないよ」
 しかし、田中キリエは困ったように謙遜する。人に褒められるのが苦手なのか、早くその話題から逸れてほしそうに見受けられた。
「そういう鳥島くんは、いつもお昼は購買部で買ってるよね」
「そうですね」
「お弁当にはしないの? 家族の人につくってもらうとか」
「出来ればつくって貰いたいんですけど。残念ながら、家族はみんな朝忙しいんで、弁当をつくる暇なんてとてもとても」
 と言いながら、私は妹の鳥島リンのことを考えた。
 そういえば、リンちゃんは昼食はどうしているのだろうか。彼女も結構器用な人だし、案外自分で弁当をつくっているのかもしれない。


563:私は人がわからない ◆lSx6T.AFVo
10/10/20 12:24:54 KgIpHWOW
「それならさ」
 と、田中キリエがもじもじと太股を擦り合わせながら言った。
「……よかったら、私が鳥島くんのお弁当つくってこよっか?」
「えっ?」
 思わぬ提案に、私は目をパチクリとさせる。
「そんな、悪いですよ」
 まず口から出たのは遠慮だった。
 弁当をつくって貰うこと自体は、私としては願ってもない提案ではあったが、朝一番から彼女にそんな労苦をいとわせるのはさすがに気が引けた。
「全っ然っ悪くなんかないよっ!」
 しかし田中キリエは即座に否定する。
「私のお弁当をつくるついでだしさ、手間とか全然かからないから全然平気。というか、鳥島くんはそんなの全然気にしなくていいよ。本当、全然全然」
 全然を連呼する彼女である。
「ああ、でも、その代わり私と同じメニューになっちゃうけど、それでも大丈夫かな?」
 どうやら弁当をつくること自体は、もう決定事項らしい。
「そんなそんな。いやあ、嬉しいなあ。それじゃあ、お願いしてもいいですかね?」
「うんっ」
 田中キリエは、満面の笑みで快諾した。
 私も嬉しくなって、思わず鼻歌でも歌いたくなった。
 誰かにご飯をつくってもらうなんて随分と久しぶりだ。彼女の料理の腕は目の前の弁当で証明済みだし、これから昼食は楽しみになるぞ。
 ニコニコと微笑みながら、メロンパンをかじる。
 恋人を持つのも、そんなに悪くないかもしれないな。
 私は初めて田中キリエの存在に感謝した。

 それから、私達は弁当をつつきながら談笑に勤しんだ。
 私にとって意外だったのは、田中キリエとの会話が弾んだことだった。
 私はどちらかと言えば口ベタなほうなので、正直気まずい雰囲気になるんじゃないかと危惧していたのだが、それもどうやら杞憂に終わったらしい。
 彼女はかなりの聞き上手だったのだ。
 私の何でもない話にも丁寧に相槌を打ち、それに聞くばかりではなく、自分の意見も織り交ぜて返答するので自然と話が続く。それこそ、会話はボールのようにポンポンと弾んだ。
 自分にとって、彼女との会話の持続が一番の懸念材料だったのだけに、私はひどく安心した。
 そのせいか、多少気が緩んでいたのかもしれない。
 気が付けば、彼女のことを話に持ち出していた。


564:私は人がわからない ◆lSx6T.AFVo
10/10/20 12:26:38 KgIpHWOW
「そういえば田中さんって、マエダさんと仲が良いんですよね」
「えっ?」
 私の口からマエダカンコの名前が出たのが意外だったのか、田中キリエはただでさえ大きい瞳をさらに大きくさせる。
「マエダさんって、もしかしてカンコちゃんのこと?」
 彼女の問いに私が首肯してみせると、田中キリエは嬉しそうに破顔させた。
「うん、カンコちゃんとは凄く仲が良いよ。私にとって、一番の仲良しさんじゃないかな」
 一番の仲良しときたか、と私は思った。
 実を言うと私は、田中キリエとマエダカンコが本当に友人関係なのかを疑っていた。
 二人は見ての通り全くタイプの異なる人間だし、マエダカンコの異常愛もあるから、マエダカンコが一方的に田中キリエに好意を寄せているというセンもあったが、今の証言でそれも消滅した。
「マエダカンコって、漢字ではどう書くんですか?」
 いい機会だと思って聞いてみる。
 すると、田中キリエは空中に人差し指を掲げて、まるで虚空に浮かぶ用紙にでも書くように、つらつらと文字を連ねていく。ちゃんと鏡文字になっていないあたりの配慮が、実に彼女らしい。
 やがて、文字を書き終えた。
“前田かん子”
 空中に刻まれたその文字を、私はじっくりと見つめる。
 その時初めて、本当の意味で彼女の名を知った気がした。
「彼女とは、何時からの付き合いで?」
 私はさらに質問を重ねていく。
「えーっと、かん子ちゃんとは中学校からの付き合いになるのかな。て言っても、最初は全然話したりしなかったんだけどね。けど、あることがきっかけでそれから凄く仲が良くなったんだ」
「そのあることとは具体的に?」
 私は身を乗り出すようにして、さらに質問する。
 我ながら多少強引過ぎるとも思うが、しかし前田かん子の情報はよく聞いておきたかった。
 これから、彼女の存在は嫌でも大きなものになっていく。
 けれど、私は前田かん子のことをあまりに知らない。知っていることと言えばせいぜい、田中キリエに抱いている異常なまでの愛情と、胸が大きいことぐらいだ。
 クラスの人間に聞くという選択肢もあるが、それでは些か信憑性に欠けた。
 噂というのはたいてい何かしらの脚色がされて、妙な尾ヒレがついているからだ。
 それに比べ、田中キリエから得られる情報は確実である。
 なんせ、前田かん子の一番の友人を自負しているのだ。彼女からなら何の誇張表現の無い、ありのままの情報が得られる筈だ。


565:私は人がわからない ◆lSx6T.AFVo
10/10/20 12:27:48 KgIpHWOW
「鳥島くん」
 と、耳に届いたか細い声で我に返る。
 少しがっつき過ぎたか。
 そう思って、すいませんと謝りながら後ろへ身を引いたのだが―今度は逆に、田中キリエが私の方に身を乗り出してきた。
 あまりに突然のことだったので、私はそのまま体勢を崩し仰向けに倒れた。彼女はその上に乗っかるような体勢をとって私を見下ろし―
「ねえ、鳥島くん。どうしてそんなに、かん子ちゃんのことを知りたがるの?」
 ―静かに詰問した。
 思わず、戦慄する。
 田中キリエの顔からはいつの間にか、およそ表情と呼べるものがごっそりと抜け落ちていた。のっぺら坊のような無機質な顔で私を見つめる。
 人間ってこんな顔も出来るんだな、と少し感心した。
「大して深い意味はないですよ」
 しかし私の態度に変化は無い。
「ただ、前田さんってこの学校じゃ凄い有名人じゃないですか。だから、どんな人なのかなってちょっと気になっただけで他意は無いですよ」
 田中キリエは私を見下ろしながら、そうなんだ、と短く言った。そのくせ、彼女はこれっぽっちも納得していないように見えた。
「でも、おかしいなあ」
 わざとらしく小首を傾げてみせる。
「どうして鳥島くんは私とかん子ちゃんが友達だってことを知っているのかな?」
「それは―」
 この時、私は何故かこの質問に対して妙な間を置いてはいけないと思ってしまった。いや、思わされてしまった。
 そうしなければ怪しまれるぞ、と。
 なので、気がつけば私の舌は私の意思とは無関係に、自分勝手に言葉を紡ぎだしていた。
「それは、クラスの人達が話しているのを小耳に挟んだんですよ。前田さんと田中さんは仲が良いって―」
 あっ。やっべ。
 言ってから気付く。今の発言はマズった。
 私は慌てて口を塞いだが、もう遅い。
 田中キリエも勿論、今の失言を見過ごす訳が無く
「おかしいなあ」
 とまた呟いた。
「……何がおかしいんでしょうか?」
 私は半ば諦め気味に彼女に問いた。


566:私は人がわからない ◆lSx6T.AFVo
10/10/20 12:29:02 KgIpHWOW
「だって私、この学校では私とかん子ちゃんが友達だってことを誰にも言ったことが無いんだもの。だから、クラスの人達がそんな話をしている筈が無いんだけどなあ。
「しかも私、かん子ちゃんに学校で話したことも一度も無いんだよね。かん子ちゃん学校で話しかけられるのスゴイ嫌がるから。だから、もし会っても無視しろってきつく言われてるんだ。
「もちろん、かん子ちゃんのことは鳥島くんにも話したことないよね。ねぇ、鳥島くん。なのに、なんであなたは誰も知らないことを知っているのかな?」
 思わず、溜め息を漏らしそうになる。
 さあて、どうするかな。
「でもそれって、あくまで田中さんが話していないだけですよね」
 意味無いとはわかっているが、一応形ばかりの反論をしてみる。
「あなたたちの話をしていたその生徒が、偶然街中で二人でいるところを目撃したのかもしれないし、それとも中学時代のことを知っていたのかもしれない。例え田中さんが話していなくたって、二人の仲を知る可能性はいくらでもありますよ」
「うん。そうだね」
 田中キリエはあっさりと同意してみせる。
「確かにその可能性もあるけど、それだと話がますますおかしくなるんだよね。さっき鳥島くんも言ったように、かん子ちゃんってこの学校じゃスゴイ有名人なんだ。学校の皆が、かん子ちゃんの一挙一動に注目してる。
 そんな注目を浴びてるかん子ちゃんに友人が居ることが、しかも同じ学校に通っていることが判明して、何も起こらないと思う? 普通は何らかのアクションが起こる筈だよね。
 まず起こるのは、間違いなく話の伝播。話は人から人へとどんどん伝わっていって、やがて学校中に広まる。そうなったら、私も今頃はかん子ちゃん並の有名人になってる筈だよ。あの前田かん子の親友の田中キリエだー、ってね。
「けど、もちろん私は今有名人なんかじゃないし、誰かにかん子ちゃんのことを聞かれたこともない。ということはイコール私とかん子ちゃんが友人だってことは、学校の誰も知らないってことになる。そうだよね?」
 だーよね。私もそう思います。
 ああ、本当どうしようかな。
「ねぇ、鳥島くん」
 彼女に呼ばれて視線を上げる。
 眼鏡の奥の田中キリエの瞳は、マジックで塗り潰したみたいに真っ黒で、光が無い。


567:私は人がわからない ◆lSx6T.AFVo
10/10/20 12:31:11 KgIpHWOW
「答えてよ。どうして私とかん子ちゃんのことを知っていたのかを」
「…………」
「ねぇ。ねぇ。ねぇ。ねぇ。何か言ってよ」
「…………」
「鳥島くん。黙ってたら私、なーんにもわかんないよ」
「…………」
「どうして? どうして? どうして知ってたの? 鳥島くん?」
「…………」
「何で? 何故? どうして? どのようにして? 何処で? 何時知ったの? 鳥島くん?」
「…………」
「ねぇ、鳥島くん。言ってくれないなら、私―」
「……放課後」
「えっ?」
「放課後、一緒に帰りましょうか」
「ほうかご?」
「はい。放課後です。実を言うと私、一度でいいから女の子と一緒に下校してみたかったんですよ。いやぁ嬉しいなぁ、やっと長年の夢が叶うのかぁ。長かったなぁ」
「鳥島くんっ! 私は―」
「それとも」
 私は有無を言わせぬ鋭い瞳で、田中キリエを捉える。
「もしかして、私と一緒に帰るのが嫌だったりします?」
「そっ、そんなことないよ! 私も鳥島くんと一緒に帰りたい!」
「それなら、良かった」
 私は安堵したように、ふぅと息を吐いた。
 と、そこで屋上に設置されているスピーカーからチャイムの音が鳴った。古くなっているせいか、不自然に音が割れていた。
「チャイムも鳴ったみたいですし、そろそろ教室に戻りましょうか。田中さんは先に帰っていてください。一緒に帰っているところを、誰かに見られるのは不本意でしょう?」
「へっ?あっ、うん。わかった」
「放課後については、後でメールしておきます。それでいいですね?」
「うっ、うん」
「それでは、また放課後に」
 私は片手を上げて、ひらひらと手を振った。田中キリエに余計なことを言わせる暇は与えなかった。
 彼女は学生カバンを肩に引っ提げると、足早に屋上を出て行った。
 と思ったが、最後にドアの前で立ち止まり、私のことを見た。
 田中キリエは何も言わない。
 私も何も言わない。
 私達は黙って見つめ合う。
 そして、彼女はやおら屋上を出て行った。


568:私は人がわからない ◆lSx6T.AFVo
10/10/20 12:32:44 KgIpHWOW
 田中キリエが行ったのを確認してから、私は忌ま忌まし気に言葉を吐き捨てる。
「最悪だ」
 本当に最悪だった。
 どうして私はあの時、たまたま二人のことをクラスで聞いたなんて変な嘘をついてしまったのだろうか。私があそこで嘘をつく必要など、これっぽっちも無かったのに。
 そもそも、私と前田かん子の間に面識があるのはもはや周知の事実なのだ。
 田中キリエは学校を休んでいたから知らないだろうけど、前田かん子は一昨日、昼休みに私を拉致したり、放課後に堂々と教室に登場したりと、もはやクラスどころか学校中の人間が私達の関係を認知している。
 だから私はあの時、ありのままのことを言っておけばよかったのである。私と前田かん子の関係について。なのに変に焦ってしまった揚句、失言した。こんなくだらないミスをするのは、本当に私らしくなかった。
 ミスの原因はわかっていた。
 彼女のせいだ。全部あの茶道室の魔女のせいなのだ。彼女に会ってからの私は、本当におかしい。まるで平均台の上を歩いているみたいに、精神が安定しない。
 私は腕時計の針を気にしながら、今後のことを考えた。
 今回のことで、田中キリエの中に私に対する猜疑心が生まれたのはまず間違いないだろう。
 問題はその猜疑心が今後どう動き、私にどのような影響を与えるかである。まあ、上手い方向には動かないと思うけど。とにかく、そのことについては用心しておくに越したことはない。
 私はそこで大きく伸びをした。
 それなら、さっさと切り替えよう。幸い、覆水盆に返らずって程の失敗でもないし、私ならいくらでも軌道修正出来るさ。次だ次。
 反省終了。
 私は教室に帰ろうと立ち上がった。
 その時。
 ポツリ、とコンクリートの地面に黒い染みが出来た。
 雨かしら、と思って空を見上げたが、頭上には雲ひとつ無い冬晴れの空が広がっている。
 どうやら、地面に落ちたのは私の汗のようだった。


569:私は人がわからない ◆lSx6T.AFVo
10/10/20 12:33:50 KgIpHWOW
「おかしいな……なんで汗かいてんだろ」
 冬なのに。私は根っからの寒がりだというのに。なのに、どうして汗なんか。
 制服の袖で額の汗を拭うが、汗は一向にひかない。
 もしかして恐れているのだろうか、と私は思った。
 けれど、何に?
 最初に思い浮かんだのは、やはり田中キリエだったが、私は直ぐに思いなおす。
 彼女だけは有り得ない。
 確かに、先程の田中キリエの勢いには目を見張るものがあったが、突き止めてしまえばあんなもの只の嫉妬でしかない。
 そりゃ、自分の恋人が他の女のことを聞いたりしてたら、不快になるに決まっている。しかも聞いている相手が他ならぬ恋人自身なのだ。田中キリエが怒るのも無理ないだろう。
 だったら、なんだ? なんで、私はこんなに震えているんだ?
「あっ」
 そして、私はこの感覚が初めてじゃないことに気づき、さらに震えた。
 なんで、今さら? 高校に入ってからはめっきりなくなったじゃないか。もう、終わったと思ったのに。
“やっと、わかったと思ったのに―”
 くらり、と湯あたりをしたみたいに視界が廻る。そのまま倒れるんじゃないかと思ったが、なんとか踏ん張ってくれた。
 私はかぶりを振る。
 いや、落ち着け。呑まれるな。
 こんなの、気のせいだ。少し考え過ぎてるだけだ。汗をかいてるのだってきっと、さっきのやりとりで疲れただけだ。
 だから、落ち着け。私はもう、わかってるんだ。
 私は一度深呼吸をしてから、今度こそ屋上を出て行った。その足どりに、不安は見えない。
 なのに、教室へ帰る間ずっと、汗は拭っても拭っても際限なく溢れてきた。


570: ◆lSx6T.AFVo
10/10/20 12:34:32 KgIpHWOW
投下、終わります。

571:名無しさん@ピンキー
10/10/20 12:37:09 BgR4Z8c/
うぽつ まってたょん

572:名無しさん@ピンキー
10/10/20 16:08:13 cmpjF6Or


573:名無しさん@ピンキー
10/10/20 17:28:10 81GmowxC
私は人がわからないktkr

574:名無しさん@ピンキー
10/10/20 18:10:15 KjM2393h
先が気になる作品が増えすぎて生きるのが辛い

575:名無しさん@ピンキー
10/10/20 20:48:01 3J/k5EDb
鳥島さんマジパねえ……
キリエの追及を鮮やかに打ち切るとは……

576:名無しさん@ピンキー
10/10/20 23:24:46 ePvmOyYH
GJ
相変わらず独特の空気があっていい

577:名無しさん@ピンキー
10/10/21 16:37:50 f7FAzKYR


578:AAA
10/10/21 16:48:39 6lxDgFs5
中間テスト終わったー!!
というわけで投稿再会します

579:風の声 第3話「風の恩師」
10/10/21 16:49:37 6lxDgFs5
大空 舞(おおぞら まい)
身長 俺(175cm)より少し低い。167cmくらい
ヘアスタイル 腰よりも少し長い栗色のロングヘアー
胸 特大・大・中・小・貧でいうと・・・・・大・・・

「なに人のことじろじろ見てるの?」

大空の声で俺は我に返る
階段での自己紹介の後、即行で変えるはずだったのだが
大空の「女の子を一人で帰すつもり?」という言葉に心が引っかかり
駅まで一緒に帰る羽目になってしまった。
今は駅に向かうバスの車内

「そういえばさ」
「・・・(無視)」
「屋上で何かブツブツ言ってたみたいだけど、何してたの?」

一瞬心臓が止まりそうになった。やはりあれを見られていたか。
しかし、彼女は俺が何をしていたかまでは知らないようだ。

「・・・独り言」
「屋上で?」
「あぁ・・・」
「楽しいの?」
「さぁ・・・」

俺が大空から解放されたのは駅に着き改札で「じゃあ、また明日♪」という
大空の言葉を聞いた時だった。解放され一息ついたとき、ふと気がついた。

「明日、土曜日で学校休みじゃん・・・」

駐輪場につきおもむろに携帯を出して時間を確認すると12:30
この後の予定に余裕で間に合う時間だ。何の予定かというと
人と会う予定が入っている。
俺はその人に会うためにバイクを走り出させた。

『烏羽総合病院』
ここが待ち合わせ場所、というかその人が働いている場所だ。
俺はカウンターの人にその人を呼び出してもらうよう頼みロビーのベンチに腰を掛けた
『♪~♪~♪~』
メールだ。確認すると母からだった。
『入学おめでとう。慣れない生活に戸惑うかもしれませんが頑張ってね』
俺は返信をしようとボタンに指を置いたときだった。

「院内での携帯の使用は禁止だぞ・・・風魔」

後ろから殺気に満ちた声が聞こえ、俺はその方向に顔を向ける。

「お久しぶりです・・・“先生”」
「挨拶をする前にまずは携帯の電源を切れ」


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