キモ姉&キモウト小説を書こう!part32at EROPARO
キモ姉&キモウト小説を書こう!part32 - 暇つぶし2ch400:名無しさん@ピンキー
10/10/19 23:21:51 XbJIl+pZ


401:名無しさん@ピンキー
10/10/20 00:02:54 hlgV7MA/
あれ? wikiって作品ごとの閲覧者数とか、わからんのか

402:名無しさん@ピンキー
10/10/20 00:13:37 fgSrBt6x
そういうのあればいいのにな
人気のないやつにスレを荒れさせずわからせることができるし、人気の作品にはやる気を出してもらえる

403:名無しさん@ピンキー
10/10/20 00:14:41 ihQWKf3c
>>402みたいなのがいるから閲覧数とか無くて正解だよね

404:名無しさん@ピンキー
10/10/20 00:23:51 Td1dPmsc
キモウト&キモ姉がいるのにプロポーズとか、死亡フラグ過ぎでワロタ

兄or弟「俺、この戦争が終わったらプロポーズするんだ」
姉&妹「……」

405:名無しさん@ピンキー
10/10/20 05:27:46 EFyhAbfz
妹→兄→姉→弟→妹→……

というドロドロなキモ家族

406:名無しさん@ピンキー
10/10/20 12:57:44 KUZJ59AL
URLリンク(komachi.yomiuri.co.jp)

社会人 兄

学生  キモウト

恋人未満 泥棒猫


で、美味しいネタが出来上がるよね?

407:名無しさん@ピンキー
10/10/20 18:16:46 my0Lw1zi
>>406
なんていうか泥棒猫のお題に妹が自演で答えまくってるように見えるわ
「あなたはさっさと別れるべき」って回答が複数あるのも納得できる

408:名無しさん@ピンキー
10/10/20 18:43:57 cmpjF6Or


409:名無しさん@ピンキー
10/10/20 19:01:31 rtot+sWb
お兄ちゃんコントロールの作者、このスレ見てんじゃねーか?と読む度に思ってしまう

410:魔法少女すーぱーシルフ(中)
10/10/20 21:02:54 BRhPIVxv
今晩は。
表題について投下いたします。

411:魔法少女すーぱーシルフ(中)
10/10/20 21:04:09 BRhPIVxv
倒れたお兄ちゃんは、体勢を直して片膝を付いた。
切られた部分のシャツが裂かれ、太く黒い線が肩から腰まで延びる。
「ったく、格好付けるもんじゃないな、死ぬほど痛い」
私の方へ首だけ向けながら、苦々しげにお兄ちゃんが呟く。
「逃げて、お兄ちゃん!!
 どうして、なんでこんな事してるの!?」
《シルフさん、落ち着いてください。
 お兄さんにはシルフさんだって分かりません。
 それよりも我々の本隊が来ます、今のうちに逃げて下さい!!》
”うるさい!!”
「本当は俺の大事な子を探してたんだ。
 だけど、君を見ていたらその子にそっくりでさ」
お兄ちゃんはまた影を見据える、だからお兄ちゃんの顔はもう見えない。
「見た目の話じゃない。
 そうやって、無理をしてでも誰かの為に戦おうとするところとか。
 なのに、皆に理解されないでいるところとか。
 寂しそうなところ、健気なところ」
しっかりと刃先を地面に立てる。
「あと、自分を大切にしてくれないところとかが、悲しくって。
 それで、君が危ないのを見たら体が自然に動いちまったよ」
刀を杖の様にして立ち上がる。
「君は、シルフと同じで幸せにならなきゃ駄目だ。
 だから、こんな所で死ぬ必要なんて無い、逃げろ」
「お兄ちゃん、もう止めて!!」
影が刀の切先をすうっとお兄ちゃんへ向ける。
「さてと、じゃあもう一回行ってみようかぁ~?」
お兄ちゃんも刀を影に向けて構えなおす。
けれど、体がぐらりと揺れてその場に崩れ落ちる。


412:魔法少女すーぱーシルフ(中)
10/10/20 21:04:37 BRhPIVxv
「毒……か…?……まず…体……が…」
「嘘、お兄ちゃん!?」
倒れたお兄ちゃんを必死で抱き留める、体が冷たい。
「君は……逃げ…ろ」
「嫌だ、お兄ちゃんを置いてなんて、絶対に嫌!!」
けれど、お兄ちゃんの目は虚ろになり、その間にも体はどんどん冷たくなって行く。
「お願いだから、お兄ちゃんと最後まで居させて!!」
「逃…げ……」
お兄ちゃんの声が途切れた。
静かに影が刀を振り上げる。
どうやら、私たちの会話が終わるのを待っていてくれたようだ。
「……結構、優しいのね」
当然、影は答えない。
私はお兄ちゃんの体を強く抱き締める。
「いいわ、早くして。
 私はもう戦う気なんてないもの」
「何を…言って…る……良いから……逃げ……て」
お兄ちゃんが最後の力を振り絞って必死に私へ語りかける。
でも、嫌だ。
《シルフさん!!
 せめて、あなただけでも逃げてください。
 お兄さんの思いを無駄にする気ですか!?》
「ば……か…、逃げ…」
影が振り上げた刀を正中に戻し、突きの体制になる。
二人の胸を同時に貫く、そういう影なりの気遣いなんだと思う。
もう一度、力を入れてお兄ちゃんを抱き締める。
間違っても離したりしないように。
うん、大丈夫。
私かお兄ちゃんのどちらかが犠牲になれば、片方は逃げられるかも知れない。
でも、私はお兄ちゃんの居ない世界で生きたくないし、お兄ちゃんの居ない世界にも行きたくない。
大丈夫、怖くなんてない。
大丈夫、お兄ちゃんが一緒だから。

……これで最後なんだからちゃんと言わないと。



413:魔法少女すーぱーシルフ(中)
10/10/20 21:05:09 BRhPIVxv
「お兄ちゃん、ずっと言えなかったけど、わた《あの~、すいません、お兄さん》
私のずっと言えなかった言葉は場違いに暢気な通信で台無しにされた。
《忘れてましたけど、お兄さんはラテン語少し読めるんでしたよね。
 お忙しいところ申し訳ありませんが、ちょっとこれを読んでいただけませんか?
 あ、頭の中で読んでいただければ結構ですよ、読み取りますから》
そう言いながら、虚ろなお兄ちゃんの目の前に文字を投影する。
”いや、あのさ、俺達これから死ぬんだけど?
 ていうか、今、その子が何か大切な事を言おうとしてなかったっけ!?”
《まま、良いから、良いから、冥途の土産だとでも思ってください》
もし、右足が動いたら、
もし、お兄ちゃんを抱き締めていなかったら、
この空気の読めないポンコツを壊れるまで踏み躙ってやりたかった。
”まあ、そこまで言うなら……。
 Petite et accipietis,pulsate et aperietur vobis
 (求めよ、さらば与えられん、叩け、さらば扉は開かれる)”
《はい、ありがとうございました、ゆっくり休んでくださいねー》
”お、おう、じゃ、気を取り直してもう一度逝くぞ。
 よしっ、……ごめんな…シルフ……雪風…もう……無理…だ”
そんな気の抜けた会話の後、お兄ちゃんの体からゆっくりと力の抜けた。
きっと私の腕の中でお兄ちゃんは最期を迎えた。

414:魔法少女すーぱーシルフ(中)
10/10/20 21:10:08 BRhPIVxv
《コード認証、すーぱーシルフ、FCSオールグリーン》
アルの黒く艶の無いボディから機械音声が響く。
その途端、私の体は強い光に包まれた。
体の中に力が流れ込む。
その膨大な力が背中から発散され、光が巨大な翼の形を作り出す。
《認証成功、これが本当の魔法少女すーぱーシルフの性能です。
 最大出力140,000kg、最高速度マッハ3の超高機動型魔法少女です。
 超高速追尾弾頭・グリーン、電磁連装砲・グリーン、etc……、オール・グリーン
 さー、行きますよー、ここからが高機動型の……》
アルが言い切るよりも早く、私は翼の莫大な推力で飛翔し影を鷲掴みにして、そのまま壁に打ち付けた。
《あの、シルフさん、高機動格闘戦用兵器が……》
誰かがが何かを言っているけど、聞く必要なんて無い。
「……あなたの事はそんなに嫌いじゃないと思う。
 お兄ちゃんと一緒に終わらせようとしてくれて。
 それに、私とお兄ちゃんの話を待っていてくれた事も……」
ごめんね、すぐ行くから。
でも、もうちょっとだけ、待ってて。
《シルフさん?》
壁に埋まった影に拳を突き立てる。
ゴン、と鈍い音がする、まるで金属の様にそれは堅かった。
手に血が滲む、まるで腕が根元から砕けたみたいに痛い。
けれど、今の私にはその痛みがとても嬉しかった。
お兄ちゃんが受けた痛みを少しでも感じたかったから。
「……だから、先に言っておくわ、さようならって。
 私…もう……考える事……できない…から」

415:魔法少女すーぱーシルフ(中)
10/10/20 21:10:55 BRhPIVxv
*****************************************

初めは金属を叩くような鈍い音だった。
けれど、何回か殴っている内にぐちゅりという音がした。
それからは殴ると、ぐちゃ、ぐちゃという水気のある音がするようになった
すぐに、外皮に相当するだろう部分が破けた。
そして、破けた影の腹の中から、丸い何かや、細長い何かをずる、ずる、と何度も引きずり出す。
もう影はとっくに機能を停止しており、生き物であれば絶命と言える状態である。
それでも、魔法少女は淡々と影の残骸をただひたすら解体する。
周囲には本国から来た援軍が展開していたが、彼女を遮ろうとは試みもしない。
無言でそれを眺めるだけだった。


「あ、あのさ、魔法少女さん。
 その、いくら憎いからって、あの。
 もうそろそろ、そいつを許してやってくれないかな?」


やや引き気味なその言葉で彼女は正気に戻り、ぼろ布の様になった影の残骸を捨てる。
そして、声を出すよりも、涙を流すよりも早く、声の主に抱きついてた。
「お兄ちゃん!! お兄ちゃん!!」
少女が青年を抱き締める、嘘じゃない事を確かめるように。
「ちょ…、息が……でき…ん」
ただ、ちょっと、かなり力が強すぎる。
《シルフさん、落ち着いてください!!
 せっかくさっきの魔法発動で回復したのにお兄さん死んじゃいますよ!?》
「ご、ごめんなさい!!」
魔法少女が慌てて手を離す。
ごほごほ、と青年が首を抑えて咳き込む。
《それから申し訳ありませんが、撤退です》
”え、でももう少し……”
《ですが、お兄さんと接触のし過ぎです。
 このままではお兄さんのジャミングが解けて、
 魔法少女の正体がシルフさんだと……》
「アル、今すぐ帰ろう!!」
「あ、待ってくれ、魔法少女さん!!」
その言葉に魔法少女が振り向く。
「君の名前、教えてくれ」
「私は……、魔法少女すーぱーシルフ。
 さ、さようなら!!」
咄嗟にそう答えて、少女は光の翼で空へ飛翔した。
「すーぱー、シルフ」
一人の、青年の呟きだけが広場には残された。

416:魔法少女すーぱーシルフ(中)
10/10/20 21:12:16 BRhPIVxv
「おい、陽、無事だったか!?」
「よう、圭。
 沙紀は大丈夫か?」
「うーん、大丈夫」
疲れた様子の少女が答える。
「しかし、お前らもデートとはね。
 まさかここで会うとは思わなかったよ。
 あ、そうだ、さっきは勝手に桜花を借りて悪かったな」
そう言って少女に赤く禍々しい刀を渡す。
「しかし、貧血か?
 いつもあれだけ鍛えてるのに、珍しいな」
「うーん、何だか、体からどろっとしたものが出たような気がして、立眩みしちゃった。
 でも、今は妙にすっきりしているんだよねー。
 確か、けー君が売店の雌豚と仲良く手を握っているのを見てたら、急に……」
晴れ晴れとしていた沙紀の目がまた、急にどろりとどす黒く濁った。
「……ところで、けーくん、さっきは売店の雌豚と何をしていたのかなー?」
ソフトクリームを受け取った以外に何があるんだ、と二人の青年は思った。
”Nマチ、セーフハウス・ハリー、2300、ゴウリュウ”
陽と呼ばれた青年が視線を送る。
”コピー・ザット、バディ”
そして、けー君と呼ばれた青年は直後、脱兎の如く駆け出した。
「うふふふ、かくれんぼだネー。
 イイヨー、100秒待ッテカラオ仕置キシテアゲルカラネー」

417:魔法少女すーぱーシルフ(中)
10/10/20 21:13:05 BRhPIVxv
***************************************

夕ご飯が終わった後、いつもと同じように私たちはお茶を飲んでいた。
珍しく、テレビが点けられている。
画面には荒れる魔法少女、動物園で大暴走とテロップが出ている。
そして、ぼやけた人型がぬいぐるみの首を蹴り千切る姿が写っていた。
《プロパガンダ戦です》
忌々しそうに、アルが言う。
《奴らが憑代に可愛らしいぬいぐるみを使うのはこういう為です。
 こうやって、世論を反魔法少女に持っていって、排斥運動を行うのが奴らの手口です。
 そのせいで魔法少女側は妙にファンシーな攻撃や光線の使用等、
映像の残虐性を薄める為の対抗策を取る事を強いられます。
 お蔭で強力な魔法兵器の殆どは、使用される事もなく備品倉庫にお蔵入りです。
 他にも、魔法少女が輪姦される、触手に襲われる等の事実無根のコンテンツをねつ造して、
 魔法少女の志願者数にダメージを与えるような事もしばしばです》
私は今日何度目か分からない頭痛に悩まされた。
そんな嫌がらせの様なプロパガンダ戦の何処に魔法を使う必要があるのだろう?
もう飽きるまで勝手にやっていて欲しい、私と関係のない所で。
「ふうん、じゃあ兄さんはこんなの嘘で本当は妖精さんみたいな子だって言うの?」
姉さんが不機嫌そうに指差す。
今日のお茶の時間はもう一つ、いつもと違う事がある。
お兄ちゃんが今日あった出来事を話し続けている事だ。
主にすーぱーシルフについて。
「さっきから言ってるだろ。
 妖精なんてそんな程度の物じゃないんだ。
 神々しく美しくて、純真無垢で、あれは間違いなく天使だ。
 まるで神様の作った芸術品だよ」
その喋りようは、いつも冷静なお兄ちゃんには有り得ないぐらいに饒舌。
これって、どういう事なの?
《すーぱーシルフはお兄さんの目からは全くの他人として映るんですよ。
 ですから、あれは客観的に見たシルフさんへのお兄さんの感想ですね》
アルが私の頭の中に割り込んでくる。
”客観的?”
《ええ、家族としての関係を抜いてシルフさんを見た場合です。
 つまり、お兄さんにとってのシルフさんは、この世の物とは思えない位美しくて、
 神々しくて、純真無垢で健気で、お兄さんにとっての天使そのもの。
 いえ、神様の芸術品、シルフさんマジ天使、とさっきから何回もうんざりするほど言っている訳です。
 恐らく、吊り橋効果もあるとは思いますが》


418:魔法少女すーぱーシルフ(中)
10/10/20 21:14:16 BRhPIVxv
「ん? どうしたんだシルフ?
 顔が真っ赤だぞ、風邪か?」
「何、でも、ないの……」
「ふ~ん、そんなに可愛かったんだその子?」
姉さんが笑いながら、兄さんに尋ねる。
ただ、その笑顔を見ると、私の本能的な部分が震えた。
そんな姉さんの様子も気にならない位にお兄ちゃんは夢中で話していた。
「違うんだ、可愛いなんてレベルじゃない。
 あれを表す言葉なんてそもそも無謀、いや愚かだ、な、シルフ?」
「わ、私は見れなかったから、分からないよ」
「そうか、それは残念だったな。
 あの子を見れないなんて人生の損失だったよ。
 本当に天使が居るっていうのを……」
そう言って、お兄ちゃんがまたすーぱーシルフの事を褒め続ける。
その言葉を聞く度に、私の体が熱くなり続ける。
ついでに、姉さんの笑顔がその度に黒くなっていく。
「私、お風呂に入ってくるね!!!」
とうとう私は耐えられなくなって、居間から逃げ出した。

419:魔法少女すーぱーシルフ(中)
10/10/20 21:15:16 BRhPIVxv
以上です、ありがとうございました。
一つ訂正があります。
「最大出力 → 最大推力」
失礼しました。

420:名無しさん@ピンキー
10/10/20 23:05:42 cmpjF6Or


421:名無しさん@ピンキー
10/10/21 07:37:42 5TJk0J5h
ソーナイスだね

GJです

422:名無しさん@ピンキー
10/10/21 12:23:37 i4FrkAfq
本編も楽しみにしてます

423:名無しさん@ピンキー
10/10/21 20:07:05 f7FAzKYR


424:『きっと、壊れてる』第9話
10/10/21 21:40:45 v8AocJEJ
こんばんは。
『きっと、壊れてる』第9話、投下します。
注意:申し訳ありませんが今回もエロなしです

425:『きっと、壊れてる』第9話(1/9)
10/10/21 21:41:12 v8AocJEJ
「あ~しらきたくま君だ~!!」

東京、夜の繁華街。
巧は特に用事もないクセに、ふらふらと出歩いていた自分を精一杯呪った。
よりにもよって、今現在一番遭遇したくない人物にバッタリ会ってしまったからだ。

「名前、違います」
巧は玉置美佐にそう言うと、そのまま通り過ぎてしまえばよかった、と思った。
何がそんなにおもしろいのか、美佐は満面の笑顔を見せながら巧に近付いてくる。
蜘蛛の糸に絡まった蝶の気持ちが今なら理解できる。

「そうだっけ? まぁなんでもいいじゃない。それよりも今ヒマ?」
「いえ、忙しいです」
無表情でそう答えると、巧は足早にその場所から去ろうとした。
雨が上がったばかりで、そこら中に汚い水たまりができていたが、
履いてきた新品のスニーカーが汚れようと、知った事ではない。

「よかったぁ~ヒマなのね? ついてきなさい。お姉さんがお酒奢ってあげるから」

美佐は巧の歩こうとした方角に先回りすると、どこか小生意気な顔をして道を塞いだ。
今まで人を殴った事などないが、この女は殴っても許されるのではないか。
巧は道行く人に一人ずつアンケートを取りたい気分になった。

「いえ、今ちょっと待ち合わせしてるんで」
冗談ではない。
ただでさえ関わりたくない相手なのに、近い内に、また得体の知れない物を届ける予定がある巧は、
できるだけ接点など持ちたくなかった。

「じゃあ、その待ち合わせ相手も連れてきなさい。どうせ男の子でしょ? こんな美人と飲めるんだから万々歳じゃない」
「……すいません、嘘です」
「うん、知ってる。大丈夫だって~。すぐ解放してあげるから! さっ行こう行こう」
これ以上抵抗しても無駄だと判断した巧は、「すぐに開放する」という美佐の言葉を信じて、ついて行く事にした。
何か悪い霊でも取り憑いているのか、首を傾げながら巧は歩いた。

5分程歩くと、美佐と巧は料理全品均一料金が売りのチェーン居酒屋に入った。

「あ~気持ち良い~」
美佐は店員から受け取ったおしぼりで首の周りを拭くと、「とりあえず生2つ」と注文した。

「……おしぼりで手以外を拭く女性、初めて見ました。」
「は~? 別にいいじゃん、汗でベタついてるし。ギャップ萌えってやつ? あのカワユイ美佐たんがこんなオヤジ臭い事を! みたいな」
「とりあえず、あなたがお酒を飲みたいだけって事は理解しました」
「そーゆー事。で~? 君は? 一人でフラフラと何してたわけ? あっ好きな物頼んでいいよ?」
「腹減ってないんで、けっこうです。……さっきは散歩してただけです」
箸でお通しの芋の煮付けを一つ掴み、口の中に放り込んだ。
素朴な味という表現が一番適切だろうか、下手に弄られていない芋の甘みが巧の好みだった。

店員の声が店内に響き渡る回数が増えてきた。
居酒屋の中は、美佐と巧が席に着いた直後から急に混み合い始め、入場待ちをしている人もそれなりに出始めたようだ。

入る前にもう少しだけ粘れば、帰る言い訳ができたのに。
巧は目の前にいる美佐を一瞥すると、深いため息を吐き、二つ目の芋を取った。

「一人で散歩? 私も嫌いじゃないけど、客観的に見ると少し寂しいね。君は彼女とかいないの?」

ありきたりな質問。
恋人がいるなら、あんなお使いをするわけがないだろう、と巧は言いたくなった。

426:『きっと、壊れてる』第9話(2/9)
10/10/21 21:41:45 v8AocJEJ
「いないですよ」
「なんで~? おっ!! もうビール来た!! ハイ乾杯、お疲れ~!」
ジョッキを店員から受け取った美佐は、それを巧の前に置かれたもう一つのジョッキに強く押し当てた。

「そんなに強く当てるとこぼれますよ。……なんで? と言われても。モテないからだと思いますけど」
「ノンノンノン」
「ん? 何ですか?」
美佐はビールで喉を潤しながら、左手の人差し指を左右に振った。

「ぷはぁ~! 私はね、『なんでモテないのか』と聞いているのさ。つまり自己分析は出来ているのかって事」
「オレは……あまり社交的ではないですが、顔はブサイクだとは思ってないし……正直よくわかりません」
美佐に言われ、自分に恋人がいない理由を考えて見ると、特にこれといった理由はないように思えた。
自分のような人間は他にはいるはずだ、オレだけが特別ではない。
巧は頭の中で整理すると、美佐にそう伝えた。

「ほほ~」
ニヤリと口元を緩めると、美佐は通りがかった店員にいくつか料理を注文した。
「居酒屋の刺身ってボッタクリよね~、こんなんで600円とか取るんだもん」
左手の親指と人差し指で輪っかを作り、刺身の量を表現している美佐を見て、巧はある事に気付いた。

おそらく、この人のリアクションがいちいち大きいのはワザと……いや、無意識だろうけど、天然の物じゃない。
オレにも経験があるから理解できる。
自分の話や仕草で、相手の性格や接し方、心理状態を図っているんだ。

なぜか、人間が怖いから。
怖くて恐ろしくて。
でも、一人で生きて行くのは寂しいから、境界線を乗り越えないように調査する。
相手の、キャパシティから自分が溢れないように。

自分と玉置美佐は違う人種。
今まで、そう弁別していた巧はなぜだか、少しだけ微笑ましい気持ちになった。

「そんでね、さっきの話だけど、確かに君はモテなさそうなオーラが出てる。シュワシュワ~って」
湯気を表現しているつもりなのか、美佐は人を小馬鹿にしたような顔で、ジェスチャーをした。

「そんなにモテないわけでもないですよ。ただ『付き合いたい』と思える人と出会っていないだけです」
美佐が自分と同人種、巧はそう考えるとなぜか今までより強気に、ハッキリと喋る事ができた。
おそらく、自分と目の前にいる人間が同価値だと思えたからだった。
よくニュースで見る、小さい子供や老人ばかりを狙った犯罪は、おそらく自分より弱いと確信しているからこそ、
ああいった凶行に走る事ができるのだろう、と巧は思った。
はっきり言ってテレビ越しに聞いていても、虫唾が走る。
ただ、そういった犯罪者達と自分は、さほど変わりない精神を持っているのかもしれなかった。

「ほう? どうでもいい女は寄ってくるけど、目当ての人には振り向いてもらえない感じ?」
「そんなところです」
「あ~あるねぇ! でもね、それって世の中が正常に回っているって事なんだよ?
男と女なんて、結局同レベルの人間同士がくっつくんだから」

「あなたは、オレにケンカ売ってるんですか?」
「うん! この前のお返し」
「そんなに明るく言われても」
「でもね、けっこうスッキリしたから。もういいや。これで水に流してあげる」

美佐は心底スッキリした顔を見せた。

427:『きっと、壊れてる』第9話(3/9)
10/10/21 21:42:17 v8AocJEJ
「そうですか。じゃあ用も済んだ事ですし、オレはこれで」
美佐を覆う霧が、少しだけ晴れたからと言って、敵と慣れ合うほど巧はお人好しではなかった。
黒髪の美女から預かっている、封筒。
十中八九、あの中には美佐の気分を揺さぶる何かが入っているはずだった。
自分が美佐に、また悪意を届ける事になる事を思うと、巧は少しだけ心が痛んだ。

「ちょっとちょっと! まだこれからが本番なのに!」
席を立ち上がった巧の服を、テーブルを挟んだ向かい側から掴んだ美佐は、焦った様な顔をしていた。

「ちょっと! 引っ張らないでくださいよ!! 服が伸びる! わっ、わかりました!! 帰りませんから離してください!!」
どうやら、美佐は巧に報復をする事が目的で誘ってわけではなさそうだ。
しかし、赤の他人である自分に他に何の用があるのか、巧は不思議だった。

「なんです? 仕事の愚痴とか言われてもオレにはわかりませんよ?」

「そんなもん、同僚にすればいいだけの話じゃん。今日はね、恋愛の愚痴」

やはりこの女は異常だ。
恋愛の邪魔をしている男に恋愛の愚痴をこぼしてどうする。

「……やっぱり帰ります」
「なんでよっ! せっかくだから聞きなさいよ! ビール飲んだでしょ!」
「あっ! ちょ、本当に! 伸びる! 服が伸びる!! わかりましたよ!!」
「……ったく、最近の若い子は礼儀を知らないわね」

強引に巧を席に戻すと、美佐はいつの間にか取り出していた煙草に火を付け、気だるそうに煙を吐いた。
お前だけには言われたくない、と言いたかったが、話が進まないので巧は流す事にした。

「……煙草、吸うんですね。医療系の人ってみんな吸わないのかと思ってました」

「たまにね。嫌な事あった時だけ。……あぁ、別に君は関係ないから気にしないでも大丈夫」
「そうですか。で、その恋の愚痴とやらは友達にでも話した方がいいんじゃないですか?」

「それがさぁ! こういう時、女は面倒でね~。女の友達って、急な誘いだと断る奴多いのよ。
自分がヒマ人だと思われるのが嫌みたい。くだらないプライドよね~」
美佐はヤレヤレといった表情で、右手に持った煙草を灰皿に置き、枝豆の実を取り出して口の中に入れた。

「あなたの人望がないだけじゃないですか?」
「おっ!? 言う様になったね~青年。……そうかもね、私少し変わってるらしいし」
「……すいません」

美佐をからかう目的で軽口を叩いたつもりだったが、予想しなかった寂しそうな微笑みに、巧は戸惑いを隠せなかった。
まだ2回しか会っていない人物だが、こういう負の感情を露わにする事はないと思っていた。
「いいよ……でね! 仕方ないから一人で立ち飲み屋でも行くかな~っと思ってたら、丁度いい生贄を見つけたってわけさぁ!」

「生贄……ですか、まぁいいですよ。どうせヒマですし、聞きます」
人の心は不思議な物だ、と巧は思った。
ついさっきまで、帰りたくて仕方なかったのにも拘わらず、今は玉置美佐の話を聞いてみてもいいか、という気分になっていた。
玉置美佐が少しだけ見せた弱さに共感したからだろうか。よくわからなかった。
ただ、恋の話なら『村上浩介』についての情報も得られる事が出来るはず。
『村上浩介』と黒髪の美女との関係、彼女が自分を使って嫌がらせをしている理由。
真実に近付ける絶好のチャンスだった。

「おっ!! 良い子だね~!? デザート食べる? 私は今一つ食べて、最後の方にもう一回食べるけど」
「いえ、それよりも腹が減っていて。肉系の物頼んでいいですか?」
巧がそう言うと、美佐は少しだけ驚いた表情をして、母親のような笑顔で頷いた。

428:『きっと、壊れてる』第9話(4/9)
10/10/21 21:42:51 v8AocJEJ
「おい少年!! 聞いてるの!! クソッ! 寝てんじゃねーよ!!」
「少年って歳でもないし……寝てませんよぉ……あんまり頭揺らさないで……」

2時間後、酒に弱い巧はテーブルに頭を突っ伏し、うな垂れていた。
自分を揺すり、お構いなしに喋り続ける美佐に、情けない声で返事をする事が仕事になっていた。

「普通さぁ!! 復縁してまもない彼女を置いて、女と旅行とか行く!? 私には日程決めた後の事後報告で!!」
思考が半分停止しているので、情報はツギハギだが、要するに『村上浩介』が今現在、女性と旅行に行っているらしい。

「はははっそりゃアレっすね、浮気性ってやつっすね」
5分前後の休憩で、少しだけ気分が良くなった巧は顔を上げ、美佐を顔を見た。
酒に強いのか、美佐は顔つきもしっかりしており、あまり酔ってもいなさそうだ。

「はぁん!? 浮気とは限らないじゃない! 私の男、馬鹿にしてんの!?」
同調してほしいのかと思い賛同した巧だったが、もう何も言わずに聞き役だけに徹しようと思った。

「でも、女と旅行なら十中八九浮気なのでは?」
「……事情が少し複雑でね。そうね一番近い表現だと……もう関係は切れている『元彼女』と旅行に行ってる感じ」

「全然わかんないですよ。今の彼女置いて、なんでモトカノと旅行に行くんですか」
黒髪の美女は、『村上浩介』の元彼女という事だろうか。
もしそうならば、玉置美佐に嫌がらせをしている事について、納得まではいかないが理解はできる。
だが、それだと『村上浩介』の行動がよくわからない。
黒髪の美女と旅行に行きたいならば、行けば良い。ただ、なぜ現彼女である玉置美佐に、馬鹿正直に報告する必要があるのか。

考えても、答えは出なかった。
ただ、巧が一つだけ確信した事は、村上浩介は包容力のある男性、という事だった。
巧が突っ伏している間、美佐は延々と一人で喋り続けた。
お酒が入っているからか、それも一般人と少しだけずれた感覚の話。
『個性的』よりも、『変人』という表現の方が適切なその演説は、巧が途中疲れて反応を示さなかった間も続けられていた。

オレにはこんな女無理だ……。
巧は心から『村上浩介』に敬意を表した。

「うるさいわねぇ、それで納得しなさいな。とにかく!! 帰ってきたらたっぷりと説教してやる。慰謝料付きでね!!」
「それでフラれたりしたら、おもしろいですね、ハハハッ」
「何がおもしれーんだよ? おらぁ!!!」
「ちょっと! 頭振らないで! 本当にマズい! アーーーー!! 本当に……ウプッ」

トイレに駆け込む巧を見た美佐は、少しだけ落ち着きを取り戻し、
先程注文した抹茶パフェを口に入れ、これからの事を考えていた。

ていうか……まったく興味はないけど、異性と二人で飲みに来るのはマズかったかな。
ボカしてあるとはいえ、浩介達の事喋っちゃたし……。
後で、もう一回頭振っておくか。

でも浩介も浩介だ。
妹でも茜ちゃんはモトカノみたいなもんでしょうが。
それに加えて、楓とかいう小娘……じゃなかった、新しい妹……って言い方もおかしいか。
とりあえず、得体が知れないからUMAでいいや。

もし、茜ちゃんが浩介を取り戻そうとして、UMAを自在に使える立場にあったとしたら。
あぁ、考えてみれば……今トイレでマーライオンになってる子の雇い主もいるのか。
さらに、可能性は極小だけど『4年前の怪文書の犯人』すら別人で、
私と浩介が復縁した事を知っていたとしたら……最悪の場合、4対1。
さすがに、うっとおしいなぁ。
これは先手を打っておいたほうがいいかも。
こんな所で油売ってる場合じゃなかったわ~。

美佐は自分に気合を入れる様に力強く頷くと、店員の呼び出しボタンを押し、会計を済ました。

429:『きっと、壊れてる』第9話(5/9)
10/10/21 21:43:25 v8AocJEJ
コンッコンッ

「う……スイマセン、もうちょっと待って下さい」
男子トイレの便器にしがみつき、胃の中から逆流してくる物を必死に吐き出そうとしていた巧は、
擦れるような声を出した。

「マーライオン君、私。大丈夫?」
「!? ちょっとここ男子トイ……げほぉ!」
「お~盛大だねぇ、きっと綺麗な虹が掛かるよ。悪いけど、急用が出来たから私帰るね。話、聞いてくれてありがとう」
「別に……不本意ですけどオレも良い気分転換に……ゴホッ! ゴホッ!」
「ハハハッ、会計はしておいたから、気を付けて帰るのよ? じゃね~」

軽やかな口調で別れを告げ、美佐は出て行った。
バタンとトイレの入口ドアが閉まる音がして、遠くから聞こえる喧騒と巧の息遣いしか聞こえない状況に戻った。
こんな状態でどうやって、気を付けて帰るんだよ、と巧は思ったが、なぜか怒りの感情は湧き上がってこなかった。

玉置美佐は掴み所がない。
ただ、黒髪の美女とは違い、対等な対場で巧と接してくれているような気がした。
自分と同じ位置に立ち、同じ目線でぶつかってきてくれる、それが例えノーガードの毒舌だったとしても。
それが巧にとっては嬉しかった。

居酒屋を出て、駅で言うと3つ離れた自宅のある街まで、夜道を歩く。
頬に当たって酒で溜まった熱を冷ましてくれる風が、心地良い。

『村上浩介』という男。

年齢は玉置美佐と同じ25歳。
玉置美佐とは4年前も交際していた。
現在、旅行に行っている。

ハッキリ言って、何の役にも立たない情報だった。
おそらく玉置美佐が、情報統制していたのだろう。

本当に可笑しな女だ。

巧は、居酒屋での美佐との会話を思い出していると、自然に笑みがこぼれた。
久しぶりに『会話』をして、体の中にある溜まっていた物を吐きだしたからなのか、
巧は自分の身体が、少し透明になった気がした。


…………北海道富良野、午後1時。

浩介達は青空のもと、紫色に輝く大地を目の前にしていた。
日本一のラベンダー畑は、言葉を失うほど美しく、デジタルカメラを構えるのも忘れ、3人は美景を瞼に焼きつけていた。

空は快晴。
遠方には山が連なっていて、青く光っているように見える。
視線を下ろすと、サッカーコートが3つ入るぐらいの敷地に、縦20メートル程の列が横に50列程。
柵で囲まれているそれを1ブロックとし、全体では10ブロックの花畑がその色彩を披露していた。

「すごい……本当に綺麗……」
口元を両手で押さえた楓は、まさに感無量といった目を花畑に向けている。

「兄さん、ラベンダーではないけど、あっちも綺麗よ」
茜に言われ、顔の向きを90度右へ向けると、赤、黄、白、オレンジなどの色とりどりの、画が浩介の前に広がった。

「綺麗だな」
その言葉以外に適した言葉はなかった。
「本当に自分が住んでいる場所と同じ国なのか」と疑いたくなるほど、浩介は花が放つ甘美な香りに酔いしれていた。

430:『きっと、壊れてる』第9話(6/9)
10/10/21 21:43:51 v8AocJEJ
「そうね、でもね花畑は勝手に出来上がるわけじゃないわ。除草したり、刈り取りをしたり、
管理者たちの努力があってこそ、この美しさがあるのよね」
「そうだな。すごいよ。俺も定年したらやろうかな」
「フフッ、ぶきっちょな兄さんじゃ、花ごと刈ってしまいそうね」

茜はラベンダーに負けないくらいの可憐な微笑みを見せると、ゆっくりと歩き始めた。

浩介は昨夜の事を思い出した。
茜の目。一人の女としての瞳。
本人に聞くべきなのか、浩介は迷っていた。
仮に聞くとしても、なんと言えばよいのか。

「まだ俺の事を愛し続けるつもりか?」とでも言うのか。

浩介は、自分の対応力のなさにほとほと呆れ果て、『とりあえず茜の様子見』という結論を出さざるを得なかった。

いつの間にか、花畑を挟んで向かい側まで歩いていた茜の姿を目で追いかけていた。

柵に囲まれた花畑を、眩しそうに見つめる茜の横顔が印象的で、周りにいる他の観光客など浩介の目には入らなかった。
ラベンダー畑と茜。
その情景は、どんな名画よりも浩介の心に世界の美しさを印象付けた。

…………。
……。

「きゃ~! 超かわい~!!」
花畑を満喫した浩介達は、ファームの入口近くにある土産屋に立ち寄っていた。
材木で立てた小屋のような建物から、素朴さが滲み出ていて雰囲気の良い店舗だ。

楓は、ラベンダーで作られたらしい透明石けんを手に取ると、甘えるような顔で浩介を見た。
言葉を発さなくても楓の言いたい事はわかる。
こういう時、喜怒哀楽がはっきりしていると便利なものだ、と浩介は思った。

「いいよ、買ってやる」

「やった! でもね、ボディソープも欲しいから、やっぱり入浴セット一式が良い! お願い! おにいちゃ~ん!」

最初からそれが目的だったのか、楓は上の棚に陳列されていた石鹸、ボディソープ、ハンドソープなどがセットになった商品を指差した。
安い物で許可を取り、後付けで本来の目的を果たそうとする行動は、倫理上あまり好ましくないと浩介は思ったが、
腕を取り、さらに甘える声で纏わりつく楓に、頷く事しかできなかった。
ただでさえ、美人の女性二人を連れて歩く浩介は目立っていたからだ。
おそらく浩介が恥ずかしがり、ヤケになるのを計算した上でのオネダリだった。

「兄さん、私はこれ」

振り返ると、それまで一人黙って何かを熱心に見ていた茜が後ろに立っていた。
手に持ったぬいぐるみのような物を浩介の胸の前に突き出すと、茜は「よろしくね」と言わんばかりに頷いた。

受け取った物を見る。
『ラベンダー色』とでも言うのか、薄い紫の体色をした小さい熊のぬいぐるみだった。
雌なのだろうか、頭に付けられた一房のラベンダーの装飾が、間抜けな顔をより一層引き立てる。

「……これ? ……これが欲しいのか?」
「うわぁ……お姉ちゃんの趣味、相変わらず」

そんな浩介達の文句にも顔色一つ変えず、茜は黙ったまま目で浩介の答えを待った。

431:『きっと、壊れてる』第9話(7/9)
10/10/21 21:44:27 v8AocJEJ
『熊嵐』読んだ後でよく熊のぬいぐるみ買う気になるな。
俺が楓のワガママを断れないと察して、便乗しただろう?

言いたい事は山ほどあったが、茜の真剣な表情に押され、結局浩介は妹達の甘えを受け入れた。

後になって気付いた事だが、茜がせがんだ熊のぬいぐるみは、値段が比較的手頃だった。
おそらく浩介のお財布状況を知っていたのだろう。

浩介は、人に気付かれない、偽善的ではない優しさを持った茜が、とても誇らしかった。

それでも。茜が物を強請るなんて、いつ以来か。
浩介は温かい気持ちが胸から溢れそうだった。

札幌のホテルの一室。
街から少しだけ離れたこの宿の外は、散歩するのにも注意が必要なほど完全なる闇だった。
時計の針は深夜の2時を指し、大勢の人間が一つ屋根の下に宿泊しているのにも拘わらず、
辺りは何の音もしない。

近頃、真夜中に急に目が覚める事が多い。
先日受けた健康診断では、特に異常は見当たらなかったので、体の問題ではなさそうだ。
浩介はベランダ側のベッドの中で「フゥ」と溜め息をつくと、何の変哲もない天井を見つめていた。

明日には東京へ帰る。
そして1週間もしない内に、また日々の生活に戻るかと思うと、
このまま瞼を閉じて、すぐに二度寝してしまうのはもったいないような気がした。

少しだけ顔を横に向けると、入口に一番近いベッドに茜の後ろ姿が見えた。
こちらに背を向け、規則正しく肩が上下している。
思えば、ついこの間まで一緒に寝ていた相手だ。
浩介は恥ずかしくり、そして罪悪感が湧いた。
すぐに目線を自分と茜の間で眠っている楓に向けると、浩介は思わず仰け反りそうになった。

妖しい目。

普段とは何かが違う楓の瞳がこちらを凝視していた。
シーツに包まり、浩介の方を向いて寝そべっている。
いつから起きていたのか、浩介と目が合うと楓はクスリと笑い、小声で声を掛けてきた。

「こんな時間にどうしたの? 眠れないの?」

「驚かすなよ。心臓止まるかと思った」
昼間とは違い、全て下している楓の黒く長い髪は、
日本人形を思わせ、暗闇の中では美しくも不気味な何かのように思えた。

「俺はさっき急に目が覚めたんだ」
「ん? 聞こえないよ」
「さっき、目が覚めたんだ」
「あぁ、『さっき目が覚めた』ね。……ねぇお兄ちゃん、そっち行ってもいい?」
楓は浩介の返事を待たず、自分にかかっていたシーツを剥がすと、
小動物のように素早く浩介のベッドの中に潜り込んできた。

「おっ、おい! 何やってんだ!」
「ヘヘヘッ久しぶりだね、お兄ちゃんとこうやって話すの。温いなぁ」
楓の顔が目の前にある。
こうしてマジマジと見ると、普段は細か過ぎて気付かない茜の顔との違いを発見する事が出来る。

「いいから、戻れ。もう子供じゃないんだから」

432:『きっと、壊れてる』第9話(8/9)
10/10/21 21:44:56 v8AocJEJ
浩介はそう言いながらも、多分素直には従わないだろう、と思った。
楓の行動には振り回されてばかりだからか、ある種あきらめのような気持ちもある事は事実だ。

「少しだけ。眠くなったら、戻るから」

その内飽きて、自分のベッドへと帰るだろう。
浩介はそう思い、もう肯定も否定もしなかった。
吐息がかかるほど楓の顔が近くにあった。
それに、子供時代とは決定的に違う場所、白い胸元が少しだけはだけた浴衣から、垣間見えた。
目のやり場に困った浩介は、顔を再び先ほど眺めていた天井に向けた。

「久しぶりだね、お兄ちゃんとこうやってお話しするの」
浩介の方を向いたまま、楓は身を擦り寄せた。

昔、楓が夜に怖い夢を見ると、浩介の部屋まで駆けて来て、ベッドに潜り込む事があったのを思い出した。
同じ部屋に茜が居るじゃないか、と浩介が聞くと、「おねーちゃんは女の子だからオバケを退治できない」と真剣な表情で、
言い張っていたのを憶えている。
そうやって、浩介は半泣きになりながらも部屋まで駆けてくる楓を、自分のベッドへと迎え入れ一緒に寝ていたのだ。

当時の事を思い出し、浩介は苦笑いを浮かべた。
そしてチラリと目を配り、茜の定期的に上下している肩を確認した後、胸をなでおろした。

「ありがとね、お兄ちゃん」

先程から浩介がまったく返事をしていないのにも拘わらず、楓は一人ボソリと呟いた。
そして楓はシーツの上位置を上げると、浩介と楓の頭を覆うように被せ、密閉した空間を作った。
浩介の視界には真っ白なシーツが広がり、横を見ればシーツの白以外は、楓の顔しかない状態になった。

秘密基地のように、境界を張った空間。
おそらく、多少声のボリュームを上げても外に漏れないからだろう。
茜への配慮だ。

「満足したなら、自分のベッドへ帰ろうな」
「あははっ、違うよ。この旅行の事」
「楽しかったか?いや、まだ後1日あるけどな」
「うん、もちろん楽しかったよ。お姉ちゃんもすごくハシャいでいたみたい。本当に来れて良かった」

確かに茜は近年稀に見る上機嫌だったように思う。
昨夜の事だけは気がかりだが、全体として見ればやはりこの旅行は正解だった。

「また、その内連れて行ってやるよ。今度は函館行こうな」

優しい目をして、そう語りかける浩介の声に楓はゆっくりと頷いた。
しかし、次に楓の口から出た言葉は、浩介の予想に反したものだった。

「ありがとうお兄ちゃん……でもね、もう終わりなんだ」

「終わり? 何が?」
「こうして兄妹3人、昔のままの関係で、昔のように仲良くするのが」
楓の瞳は真実を語るものだった。

「え? なんでだ? まさか結婚でもするのか!?」
「相手は誰だ!」と、続けて言おうとした浩介は楓の様子がおかしい事に気付き、軽口を叩くのをやめた。
浩介は冗談で言ったつもりだったが、楓は少しだけ微笑んだだけで、すぐに真剣な表情に戻っていたからだ。

「ううん、違う。でも……もう実家へ帰れなくなるって所は同じかな」
「はぁ? 意味がわからない。楓、ちゃんと説明してくれよ」
話をぼやかす楓に少しだけ焦れた浩介は、問い詰める様に楓の目を見た。

433:『きっと、壊れてる』第9話(9/9)
10/10/21 21:45:31 v8AocJEJ
深く黒い瞳。
……どこかで、見た事がある。
浩介は気付かないフリをした。

「お兄ちゃんはさ、お姉ちゃんの事好き? 愛している? それとも今の彼女の方が良い?」

心の傷口を塞いだ絆創膏を、不意に一気に剥がされたような感覚だった。
楓の表情に変化はない。
黒い瞳は瞬きもする事なく、浩介の瞳まで取り込まれてしまいそうな気がした。

「っ……楓……俺達が家を出た理由を知っていたのか?」
浩介はおそるおそる楓の口元に視線を向けた。
「何の事?」と言ってくれるのを、祈る様な気持ちで歯軋りをした。

「知ってるよ」

どこから漏れたのか。やはり両親か。
仕方ない。自分はそれだけの事をしたのだ。
実の妹に忌み嫌われ、一生を過ごそう。しかし、それでも茜だけはなんとか救わなくてはいけない。
浩介が「茜は何も悪くないんだ」と言いかけた、その時だった。

「私も同じだから」

「『私』……? 『同じ』?」

「きっと私達兄妹は、生まれた時から壊れているのね、兄さん」

それは低く、冷たい、凍えてしまいそうな声だった。

そして、気付いた時にはもう遅かった。
すぐそこにあった楓の柔らかそうな唇は、浩介の唇と繋がり、中の唾液を啜るように音を立てていた。

「ちゅ……ぴちゃ……。はぁ……兄さん、あなたを迎えに来たの。フフッ……私の可愛い兄さん」
浩介の頬を左手で撫でると、楓は妖しく笑った。

「あ……かえで……」

頭の中が混乱して、どうしていいかわからなった。
浩介は被さっていたシーツを力任せに取り除くと、火事でも起きたかのようにベッドから抜け出した。

「どうして……楓……」

薄暗い部屋の中、浩介は助けを求める様に茜を探した。
デパートで迷子になった子供のように、不安が溢れた。
茜を視界に捉えるまでの1秒と掛からない時間が、やけに長く感じた。

茜は、こちらに背を向けたまま、微動だにしなかった。

第10話へ続く


434:『きっと、壊れてる』第9話
10/10/21 21:46:44 v8AocJEJ
以上です。ありがとうございました。

435:名無しさん@ピンキー
10/10/21 22:21:05 qSvEa3QS
>>434
うおー
続きが気になる
投下乙!

436:名無しさん@ピンキー
10/10/22 01:00:44 9aGjuXwb
>>434
乙です
キモウトターン来たなーw

437:名無しさん@ピンキー
10/10/22 01:32:10 CKlRJN+8
一杯盛られたかな

438:名無しさん@ピンキー
10/10/22 09:07:31 RxedwbTV
>>434
GJ!!
一体誰が勝つんだww

439:魔法少女すーぱーシルフ(下)
10/10/23 02:08:05 U63JI2Ma
今晩は。
表題のとおり、投下をいたします。

440:魔法少女すーぱーシルフ(下)
10/10/23 02:08:26 U63JI2Ma
お風呂から上がった後、私は自分のベッドに座って体を冷ましていた。
多分、この火照りはお湯の所為だけじゃないと思う。
《ところで、痛みは大丈夫ですか?》
”うん、かなり引いた”
後で聞いたけど、影に傷つけられても命には別条ないそうだ。
ただ痛みは本物だし、一時的に生命力も奪われる。
だから、傷つけられれば辛い事には変わり無い。
”ねぇ、お兄ちゃんの体にもまだ残っているのかな……?”
《恐らくは……》
こんこん、とノックの音が聞こえた、お兄ちゃんだ。
「うん、入って」
「今日は悪かったな、折角のデートを台無しにしてしまって」
「ううん、お兄ちゃんは全然悪くないの」
「その、お詫びにはならないかもしれないけど、これ」
そう言って、お兄ちゃんが大きな袋を私に手渡す。
中にはとても大きなライオンのぬいぐるみが入っていた。
たてがみがふわふわしてて、顔が寛いだ顔をしてて、すごくかわいい。
「かわいい」
「そうか、気に入ってくれたか?」
「うん!! 
 この子、大事にする、ベッドに置いて一緒に寝る!! 
 ねえ、お兄ちゃん……」
「ん、なんだ?」
「ありがとう!!」
とても嬉しかったのでつい大きな声で言ってしまった。
お兄ちゃんはそんな私をぼおっとした様子で見ていた。
「……?
 どうしたの?」
「いや、どうもしてないぞ?
 それよりも喜んでくれて嬉しいよ、本当に」
お兄ちゃんが何かを誤魔化すように笑顔を作る。

441:魔法少女すーぱーシルフ(下)
10/10/23 02:09:39 U63JI2Ma
「それから、ちょっとごめんな」
「え、お兄ちゃん!?」
お兄ちゃんが私の足を掴んだ。
「お前、やっぱり怪我してたのか」
お兄ちゃんがポケットから薬と包帯を取り出す。
それから、私の足に丁寧にそれを巻いてくれる。
「さっきから、少し痛みを我慢するような顔をしていたから気になってたんだ。
 昔から変わらないよな、そうやって心配させないように無理するところ」
お兄ちゃん、気付いてたんだ。
「ごめんなさい」
「いや、良いんだ。
 きっと、今日、あの変なのが暴れてた時に誰かを助けようとしてたんだろ?
 お前がそういう心の優しい子で俺は嬉しいんだからさ」
でも、とお兄ちゃんが言う。
「でも、危ない事はもう絶対にしないでくれよ。
 シルフはもっと自分を大切にしてくれ、頼む。
 もしシルフが傷ついたら、俺は辛すぎて耐えられないよ」
「……お兄ちゃんこそ、危ない事、絶対にしないでね」
「ん、俺か、ほら、俺はへたれだから大丈夫だ。
 今日だってシルフを見つけたら、さっさと逃げるつもりだったんだからさ」
そう言ってお兄ちゃんは、あっはっはと声を立てて笑った。
私は知っている、お兄ちゃんが嘘を付いてるのを。
今日、お兄ちゃんは自分の命を捨ててでも私を守ろうとしてくれた。
お兄ちゃんが守ってくれた時、とっても嬉しかった。
でも、あんなの全然嬉しくなんて、ない。

442:魔法少女すーぱーシルフ(下)
10/10/23 02:10:05 U63JI2Ma
”アル、私……”
《了解です、コールサイン・すーぱーシルフは本日2200付で廃番とします》
”意外とすんなり辞めさせてくれるんだね?”
《我々も人々の幸せの為に戦う組織ですから》
”そう”
《ところで、こちらをどうぞ。
 短い間でしたが働き分の褒章が出ますので、選んでください》
突然、私の前に分厚い装丁の施された魔導書のような物が現れる。
《協力者に送られるギフトカタログです》
”カタログ?”
《ええ、ミッションクリア時や倒した敵毎に与えられるポイントでそのカタログの品と交換できるんです。
 因みにシルフさんの場合は甲種偵察任務、Gクラス10機、Aクラス1機撃墜で2万と5100Pです。》
”……結婚式の引き出物みたい”
《よく言われるのですが、最近はこういう方が喜ばれるみたいで……》
魔法の癖に、何でこんなに世俗的なんだろう?
私は頭を抑えながら魔導書?を開いてみた。
フライパンセット5P、石鹸詰め合わせ1P、等々。
”何だか内容も引き出物みたい……”
《そちらは低ポイント用ですからね。
 高ポイントになると魔法を使用する権利なんてものもありますよ》
”魔法、例えばだけど、その、好きな人と結ばれる魔法みたいなのは、無いの?”
《はい、一応あるのですが、256頁です》
私は慌ててそのページを見る、あった、意中の人と赤い糸を結ぶ魔法。
26000Pだから、ちょっと足りないけど。
《ただ、その魔法は色々と使用に条件がありまして、実際には使いづらいんです》
”条件?”
《ええ、それは魅了の禁呪を相手に掛けるのですが、
 相手にとっては無理やり誰かを好きにさせられるという事で、人権問題になるんです。
 だから、使用には相手に現在恋人等が居ない事、使用者が相手を純粋に想っている事、等要件が煩雑なんです》
”それって、もう殆ど両想いじゃないと使えないっていう事?”
《平たく言えばそうなります。
 ですので、実質的にこの魔法の意味がないかと。
 一応、これでも治安維持任務に特別の功績のあった人への褒章で特例中の特例なんです。
 我々の世界では違法に禁呪を使用した場合は終身刑以上の刑罰が確定しますから》
”私は、その、別に……”
《あ、大丈夫ですよ。
 ちょっと要件をチェックしてみますね》
アルが演算を開始する。


443:魔法少女すーぱーシルフ(下)
10/10/23 02:23:26 U63JI2Ma
《残念ですが、1件だけ足りていません。
 お兄さんからの好意が要件水準を満たしていません、あと一歩なんですが》
”え、でもお兄ちゃんは私に好きって言ってくれた事が何回もあるよ?”
《それなのですが、お二人が義理とは言え兄妹なので家族としての”好き”と判断せざるを得ないものでして。
 例えば、彼女にしたいとか、付き合いたいのようなもっと直接的なものでないと……》
”そうなんだ……”
《申し訳ありません、お力になれず》
”いいの、やっぱり魔法になんて頼らないで私がしないといけない事だから”
「どうしたんだ、シルフ。
 そんな落ち込んだような顔をして?」
お兄ちゃんが心配そうに私の顔を覗き込む。
「ううん、何でもないの」
そんな私の頭をお兄ちゃんがわしゃわしゃと優しく撫でてくれる。
それが心地良くて思わず目を細めた。
お兄ちゃんが私の髪の毛先をそっと摘まむ。
「そういえば、シルフみたいな綺麗な髪だったな。
 今日のあのすーぱーシルフって子にまた会えたりするのかな?」
ふと、お兄ちゃんが思い出したようにそう呟いた。
「やっぱり、気になるの?」
そう尋ねると、お兄ちゃんはしまったという様子をしてから、気まずそうな顔になった。
「いや、その実はな、……雪風には言わないでくれよ。
 何でか知らないんだが、あの子に会ってから、どうもあの子の事が頭から離れないんだ。
 まあ今日は色々とあったからな、疲れているんだろう。
 いや、別に一目惚れだとか、そういう意味では全然ないんだ。
 俺は誰よりもシルフの恋人でいたいからな、……それが俺の本当の気持ちだ」
お兄ちゃんの言った最後の部分は、よく聞こえてなかった。
”すーぱーシルフに一目惚れ⇒好き ∧ すーぱーシルフ=私”
私の頭の中ではこの図式がぐるぐると回っていたから。
突然、ぽんっ、と頭の上の電球が灯った。
私の頭の中で一つのアイディアが生まれた。
「ねえ、お兄ちゃんはもしもあの子が恋人になったら嬉しいって少しは思う?」
《あの、シルフさん、それはいくらなんでも強引過ぎるかと……。
 それから、お兄さんの言葉の最後の部分聞いてらっしゃいましたか?》
”黙って、大事な所なの!!”
「え、いきなり何を言い出すんだよ!?」
「いいから、早く答えて!!」
「真面目にか?」
「正直に答えて。
 そうしてくれなかったら、お兄ちゃんでも許せないかも知れないから……」
私がそう念を押すと、お兄ちゃんは覚悟を決めた顔をして答えた。

444:幸せな2人の話 8
10/10/23 02:25:11 U63JI2Ma
「……嬉しいよ」
”アル!?”
《……可です》
「いや、確かに嬉しいけど、それはあんな子が恋人になったら男は誰でも嬉しいだろうって事で。
 別に特別にあの子を探して告白しようとか、そういう意味じゃないから勘違いをしないでくれ。
 って、すいません、シルフさん?
 あの、何でガッツポーズをとっていらっしゃるのですか?」
「お兄ちゃん」
「は、はい!!
 何でしょうか!?」
「私、頑張る」
「えっと、何を?」
「頑張る」
「そうか、が、頑張れ。
 ただ、さっきも言ったけど危ない事はしないでくれよ?」
「大丈夫、危なくなんてないから」
うん、大丈夫。
今度からは最高速で接近してそのまま首を落として、抵抗する間も与えずにぐちゃぐちゃに潰せば、安全。
危なくなんてないから、お兄ちゃんとの約束は破っていない、大丈夫。
《え~と、では、契約続行という事で宜しいでしょうか?》
”うん、あと900P分頑張る”
《そうですか、それは何よりです。
 では、暫らくですがよろしくお願いします、シルフさん》
”うん、お願い”
そこで、アルの表面に車輪の回るような光の模様が浮き上がる。
”緊急事態のサイン?”
《ええ、どうやらそのようです。
 ……ただ、情報どおりなら今までに例のない位の脅威です。
 本国の大隊クラスでないと恐らくは対応不可と推測されます。
 ですので偵察のみで結構です、決して今日の様な無茶はしないで下さい》


445:魔法少女すーぱーシルフ(下)
10/10/23 02:26:35 U63JI2Ma
”うん、分かった。
 もう今日みたいな事は絶対しない”
私は目を閉じて心に念じる。
”すーぱーシルフ、インゲージ!!”
けれど、何も起こらなかった。
”あれ、どうしたんだろう、変身できないの?”
《ちょっと待っていてください、確認します。
 先程の戦闘時にお兄さんがアクティベートの呪文を唱えましたよね?
 そのせいで、すーぱーシルフは複座型として登録されたみたいなんです》
”複座型?”
《ええ、つまり格闘戦はシルフさんがして、お兄さんが呪文を唱えるという事です。
 そして、変身の起動権もお兄さんに譲渡されているようですね。
 それから複座型の都合上、現地での変身が必須なんです》
”じゃあ、お兄ちゃんと一緒に現場へ行かないといけないって事?”
《はい、ご理解頂けますでしょうか?》
”大丈夫、お兄ちゃんは私がお願いすれば、ちゃんと一緒に来てくれるから”
《そうですか、それなら良いのですが。
 あと蛇足ですが、シルフさんの変身前後の記憶はお兄さんから抜けますけど、
 そこに居たという事までは忘れませんので注意し下さい、つまり、あの》
緊急事態だというのに、なぜかアルは歯切れが悪い。
”それより早く行こう。
 場所は何処なの?
 お兄ちゃんにお願いしないと”
《その、大変申し上げにくいのですが、N町のラブホテル街の中心部です》
”え、それって……”
《つまり、お兄さんとご一緒にそちらの方に出向いていただかないと……》
顔が一気に熱くなった。
お風呂から出た時よりも、ずっと熱い。
「ど、どうしたんだシルフ!?
 顔が真っ赤になっているぞ、やっぱり病気か!?」
「な、なんでもないの。
 お、お兄ちゃんが、私と、私とラ、ラブ……。
「え、ラブ?」
「ち、違うの、何でもないの!!」
「そ、そうか」


446:魔法少女すーぱーシルフ(下)
10/10/23 02:27:10 U63JI2Ma


同時刻、N町ラブホテル街


一人の少女がホテル街をゆらゆらと歩く。
瞳はどろり、とこの世のものではないような濁り。
その手には血の様に真っ赤な刀が握られている。
「ふふ、けーくんたら照れ屋さんなんだから。
 ホテルに逃げたっていう事はそういう事だよねー。
 でも、ちゃーんとさっきのお仕置きは受けてもらわないと、ふふふ」
けー君どーこー、とかくれんぼを楽しむ鬼のように声を掛ける。
本当はもう沙紀は彼が何処にいるのか本能で大体は分かっている。
「その前にちょっと出てきてくれないかなー?」
けれど、すぐに会いには行けなくなった、やる事が出来たから。
路地裏の暗がりを切り裂くかのような鋭い目で睨み付ける。
”くすくす、よくわかったね”
ゆらりと少年ぐらいの大きさの人影が路地裏に浮かぶ。
一つ普通の人影と違うのは闇を切り取ったように真っ黒な点だ。
「ええ、うちは居合い道場だけど、昔からそういう類も代々相手にしてきたの。
 それに今日の騒ぎもあなたの仕業ね、やられたわ。
 でも、今はこの桜花があるからあなたじゃ相手にはならない」
そう言って、すうっと赤い刀を向ける。 
”ははは、君が強いのはよく分かるよ、だから話し合いをしようじゃないか?”
「話し合い、物の怪なんかが何を話せるって言うの?」
”ふふ、僕らは分かり合えるさ。
 僕は、まあ闇の魔法使いっていう奴さ、末永くよろしくね。
 さっき君の負の感情を取り込んだときに実に素晴らしかった。
 だから君と組みたい、その代わりに君の願いを好きなだけ叶えてあげよう。
 僕は最上級の存在、何でも出来るんだ。
 そうだねお近付きに一つ叶えよう、言ってごらん?”

447:魔法少女すーぱーシルフ(下)
10/10/23 02:27:29 U63JI2Ma
「そうなんだー。
 実はね、今けー君を惑わしてる雌豚を探しているんだー。
 でも、もう面倒だからけー君に関わる雌豚を全部始末してしまいたいの、デキルヨネ?」
”いいね、いいね、実に僕好みの願い事だ。
 一体何人を消せば良いのかな、10人?、20人?”
「そうだねー、概算でざっと33億人かナー?」
”いやいや、ちょっと待って、それ人類の半分だよね!?”
「うん、けー君はとーーーーっても素敵な男の子だもん。
 けー君を見て好きにならない女なんて、この地球に私の友達の2人しか知らないヨ?
 だから、それ以外の雌豚を綺麗にしちゃいたいなー、ナンテ」
”いや、僕はそこまでしたくなんてないから!!
 人類種の天敵になんて流石になりたくないよ!?”
そう言って逃げようとする黒い影の首を沙紀の腕が掴む
「逃がさないヨー」
”え、どうして僕を素手で掴めるの!?
 ありえないから、僕は精神生命体だよ!?”
「いちいち、煩いなー。
 出来ナイッテ言ウナラ、私ガスルカラチカラダケ貸シテヨ?」
そう言って深々と赤く、禍々しい刀を影の胸に突き立てる。
”うわ、ドス黒くて赤い何かが侵食して来る!?
 ちょっと待って、僕が取り込まれてるよ!?
 助けて、これ本当に洒落にならないから、誰かー!!” 

448:魔法少女すーぱーシルフ(下)
10/10/23 02:28:08 U63JI2Ma
*********************************************

・次回予告

「けーくーん、どーこー?
 二度と外せない首輪を付けてあげるから出て来ようねー?
 ふふ、早く出てこないと……、まずは一億人ぐらいサクッと逝っちゃうよ」
《新たなる敵、謎の魔法狂戦士しんかー沙紀》
”……誰だか分からないけど、よく知ってる人のような気がする”

「あはははは、もう、私の計画台無しだよ~。
 シルフちゃんはへたれで役に立たないし。
 どうでも良いから早く撃たれて、消えてくれないかな~?」
《マスター、警告、フレンドリー・ファイヤです。
 彼女は敵ではありません、友軍です》
「あはははは、そんなの知らないわ。
 雪風の敵はすーぱーシルフとか言う泥棒猫だけだよ~」
《敵か味方か、第2の魔法少女めいぶ雪風》
”……明らかに私の方が狙われている気がするんだけど”

「行くな圭、行ったら死ぬんだぞ!!」
「だが、俺が行けば皆も、お前だって助かる」
「一人の命の上にある、一億人の命なんて!!」
「もう良いんだ陽、さ、離してくれ」
「ふざけるな、俺はお前の手を絶対に離さない!!」
「陽……」
《二人の絆は魔法だって、運命だって乗り越えて見せる》
”……キャスト不足だからって、新林さんをヒロインポジションにするの?”

「次回、魔法少女すーぱーシルフ第2話『キモウトとかが舞う迷惑な空』」




449:魔法少女すーぱーシルフ(下)
10/10/23 02:29:36 U63JI2Ma
以上です。
ありがとうございました。
次回からはまた本編に戻りますので、
よろしくお願いいたします。
また、次回予告は冗談ですので続きは考えておりません。
失礼いたします。

450:名無しさん@ピンキー
10/10/24 03:46:01 /oRq5xij
GJ!!
本編も期待してるZE!!

451:名無しさん@ピンキー
10/10/24 18:52:29 TKWLTO69


452:名無しさん@ピンキー
10/10/24 21:37:08 X1OAFaLR


453:名無しさん@ピンキー
10/10/24 23:24:07 5qkBJOdd
シルフみたいな妹もとい嫁が欲しい

454:名無しさん@ピンキー
10/10/24 23:30:56 bSwjV3qX
おい、今>>453の後ろで妹さんが何か……あ、いや
なんでもないです見間違いでした

ご結婚おめでとうございます

455:名無しさん@ピンキー
10/10/25 12:36:25 /jKTmSpG
俺の妹がこんなにキモいわけがない

456:名無しさん@ピンキー
10/10/25 23:17:25 UTQp8/c+
だが、しかし……俺は黒猫派だ

457:名無しさん@ピンキー
10/10/25 23:19:24 wDm1nOnU
兄さんと呼んでくれる赤の他人な偽妹でも良し

458:名無しさん@ピンキー
10/10/25 23:25:08 UTQp8/c+
>>457


459:名無しさん@ピンキー
10/10/25 23:26:21 UTQp8/c+
>>457
そこに気がつくとは……やはり天才か……

460:名無しさん@ピンキー
10/10/25 23:38:24 irQnq/rR
本気で「お兄ちゃんのお嫁さん」を狙う義妹に釣られて
実妹がキモへの扉を開いてしまう…

461:名無しさん@ピンキー
10/10/26 14:52:28 0Db6CEcc
実妹「血の繋がりに勝てるとでも?」



血と書いてふとキモ妹が事故にあって兄から輸血して貰ったらどういう反応するんだろうか

462:名無しさん@ピンキー
10/10/26 15:54:12 ECU/0OpB
キモ姉キモウトが事故るとか確率低すぎワロス

むしろ兄弟が事故ってキモ姉妹が輸血する場合のが

463:名無しさん@ピンキー
10/10/26 18:23:28 m9DsG8a2


464:名無しさん@ピンキー
10/10/26 20:39:53 kwMhz1x5
>>461
実妹「ちょっと事故ってくる!」

465:名無しさん@ピンキー
10/10/26 20:40:14 YFafYESH
>>461
義妹「家族と他人を使い分けられる強みを思い知れ!」

466:名無しさん@ピンキー
10/10/26 21:31:35 8zI1Sg8X
骨髄移植すると文字通り全く同じ血が流れることになるよ

467:名無しさん@ピンキー
10/10/26 21:33:17 YFafYESH
そして骨髄移植のドナーは、兄弟姉妹が最適


468:名無しさん@ピンキー
10/10/26 21:54:29 H0dpJeV2
従妹「すべて兼ね備えたイトコこそ至高」

469:名無しさん@ピンキー
10/10/26 22:52:52 m9DsG8a2


470:名無しさん@ピンキー
10/10/26 23:00:54 YFafYESH
実妹と義妹が兄を取り合う話…考えれば考えるほど実妹が不利すぎる…

義妹「甘いぞ。私は養女だから兄さんのお嫁さんになれるのを忘れたか!」
親  「義妹が兄と結婚?…嫁姑問題とか親戚づきあい問題は発生しようがない嫁か。悪くないな…実妹?論外だ」
友人「実妹。こう言っちゃなんだけど、これは勝負にならないよ。義妹は兄さんと結婚できるけど、あんたはできない。この時点で戦わずしてあんたの負けだ」

そして当の兄は
「いや…妹にプロポーズされた兄ってのは、どういう反応をしたらいいんだ? 血縁はない? そういう問題じゃなくて…」


471:名無しさん@ピンキー
10/10/26 23:03:07 ri6Eq/Wk
結婚がアドバンテージ?嗤わせてくれるわッ!

472:名無しさん@ピンキー
10/10/26 23:05:08 S0bnbynA
突然出来た義妹を猫可愛がりする兄と
素直になれない実妹…萌えます

473:名無しさん@ピンキー
10/10/26 23:15:22 awoxdk2s
でもさ結婚できるが離婚もある。しかし実妹なら離婚ないし一生妹でいれて子供も産めるしよくね? 所詮は義理の妹じゃあねえ

474:名無しさん@ピンキー
10/10/26 23:42:12 1XJzw8Kw
>子供も産めるし
待て

475:名無しさん@ピンキー
10/10/26 23:46:36 i3Po+f8g
えっ何もおかしくないでしょ?

476:名無しさん@ピンキー
10/10/26 23:53:27 lNEoABui
俺は>>468も支持したい

477:名無しさん@ピンキー
10/10/27 00:16:28 +Mn78ECS
>>473
義妹は何かの事情で子供が産めなくて、実妹が
「あたしを見てよ! あたしはちゃんとした女だよ!お兄ちゃんの赤ちゃんだって産めるんだよ!!」
とか叫ぶというパターンが唐突に浮かんだ。

478:名無しさん@ピンキー
10/10/27 14:18:16 tBp1otO7
>何かの事情
初潮が来てないんだな

479:名無しさん@ピンキー
10/10/27 14:39:01 C/DtiJ1b
そしてその兄にもついに彼女ができる!

480:名無しさん@ピンキー
10/10/27 16:00:49 UuktZRZQ


481:名無しさん@ピンキー
10/10/27 19:49:19 +Mn78ECS
>>478
それってつまり…「私はやりたい放題よ」ってことですな。
子供? そんな先のことはどうでもよい。というか必要なら養子で万事解決
何しろ自分が養子なんだから、血縁にこだわる理由もないし。

482:名無しさん@ピンキー
10/10/27 21:12:52 edu/WNww
ここまでみゃー姉なし

483:三つの鎖 29 前編 ◆tgTIsAaCTij7
10/10/27 21:51:10 TckWV/As
三つの鎖 29 前編です。
※以下注意
エロ無し
血のつながらない自称姉あり

投下します

484:三つの鎖 29 前編 ◆tgTIsAaCTij7
10/10/27 21:52:20 TckWV/As
三つの鎖 29

 今日の朝、私は幸せだった。
 幸一くんとのデート。何を着るかを考え、お化粧し、履いて行く靴を選ぶ。
 待ち合わせ場所に行くのも足取りが軽かった。
 幸一くんは誠実な男の子だ。にもかかわらず、夏美ちゃんという恋人がいるのに私と遊びに行く事を了承した。
 本来なら絶対にあり得ない。夏美ちゃんをほったらかしにして、他の女の子と遊びに行くなんて、幸一くんは絶対にしない。
 でも今回は私の誘いに幸一くんは応じてくれた。
 嬉しかった。例え幸一君が追い詰められていたとしても、私といる事を選んでくれた。
 隣町のショッピングモールで私は幸一くんと遊んだ。幸一くんの手を握り、腕を組んでも幸一くんは困ったように笑うだけで嫌がらなかった。
 楽しかった。幸せだった。嬉しかった。
 夏美ちゃんに勝ったと思った。幸一くんがあるお店に入るまでは。
 幸一くんが入っていったのは、シルバーアクセサリーを扱うお店だった。私のしている指輪を幸一くんが購入したお店。
 「夏美ちゃんにプロポーズしたいから、指輪選びに付き合って欲しい」
 最初、幸一くんの言っていることが分からなかった。
 「まだ高校生だし、ちゃんとした指輪は買えないけど、何かいいのをプレゼントしたい」
 誰が、誰に、何のために、何をプレゼントするの?
 どういう意味?
 私を選んでくれたんじゃないの?
 コウイチクンハナニヲイッテイルノ?
 視界が歪む。まっすぐ立っているはずなのに、足元が定まらない。
 私の考えをよそに、幸一くんは真剣な表情で指輪を見ている。
 その横顔に胸が締め付けられる。
 私と一緒にいるのに、私の事を考えていない。
 幸一くんが考えているのは夏美ちゃんの事。
 私じゃない。
 私じゃ、ない。
 気がつけば幸一くんはすでに指輪を購入していた。
 サイズの違う2つのシンプルな銀の指輪。
 私は拳を握りしめた。私の左手の指輪の感触。
 指輪をケースに入れる幸一くんの横顔。
 真剣な決意を秘めた表情。
 二人でバスに乗り、私達の街に戻る。
 バス停で降り、幸一くんは私を見た。
 「今日はありがとう。春子のおかげで気持ちが楽になった」
 そう言ってほほ笑む幸一くん。
 「今から夏美ちゃんの家に行ってくる。成功しても失敗しても後で報告する。それじゃあ」
 そう言って幸一くんは私に背を向けた。
 「待って」
 私は思わず幸一くんを引きとめた。
 振り向く幸一くん。私を見つめる誠実な瞳。
 「何で幸一くんは夏美ちゃんのためにそこまでするの?」
 握りしめた拳が微かに震える。
 「幸一くん、何も悪くないのに夏美ちゃんにひどい事をされたんでしょ?」
 幸一くんの瞳の色が微かに揺れる。
 「知ってるの?」
 全て知っている。リアルタイムで盗聴していた。
 夏美ちゃんが幸一くんに言った事は、全て聞いた。
 「うんうん。でも、幸一くん、泣いてたじゃない。お姉ちゃん、分かったよ。夏美ちゃんと何かあったって」
 幸一くんの表情が微かに陰る。
 夏美ちゃんがした事は、幸一くんを傷つける事だった。一人で泣くぐらい、幸一くんは傷ついていた。
 昔からそう。どれだけ悲しくても寂しくても、幸一くんは人前では絶対に泣かない。私の前でも泣こうとしない。悲しくて寂しくてどうしようもない時は、誰もいないところで幸一くんは一人で泣いている。
 「最近の夏美ちゃん、様子がおかしいよ。学校でも教師に目をつけられているし。噂、聞いたでしょ?」
 唇をかみしめる幸一くん。
 「夏美ちゃんは悪くない」
 「そうかもしれないよ。でもね、夏美ちゃんの評判が悪いのは本当だよ。お姉ちゃんね、心配なの。幸一くんの身に何か起きそうな気がするの」
 私は幸一くんの手を握った。
 大きくてごつごつした手。でも、温かかい手。
 「しばらく夏美ちゃんと距離を置いた方がいいよ。梓ちゃんの事もあるでしょ」
 幸一くんの瞳の色が微かに揺れる。

485:三つの鎖 29 前編 ◆tgTIsAaCTij7
10/10/27 21:54:19 TckWV/As
 「プロポーズなんてしてどうするの。幸一くん、まだ高校生だよ。そんな事してなんになるの。考え直して。今は梓ちゃんの事を解決するのが先決だよ」
 うつむく幸一くん。
 「お姉ちゃん、協力するから。きっと梓ちゃんと仲直りできるよ。そうすれば誰にもはばかることなく夏美ちゃんと付き合える。だから考え直して」
 もし幸一くんが夏美ちゃんにプロポーズしたら、夏美ちゃんはきっと受け入れる。
 そうしたら、幸一くんは完全に夏美ちゃんのものになっちゃう。
 そんなの絶対にいや。
 「春子」
 幸一くんは私を見下ろした。
 その真剣な表情に胸が痛くなる。
 考えているのは夏美ちゃんの事。
 私じゃない。
 私じゃ、ない。
 「馬鹿な事をしているって自分でも分かっている。でも、僕にはそれぐらいしか思いつかないんだ」
 大人びて落ち着いた表情。その表情に顔が熱くなる。
 それと同時に胸が苦しくなる。
 「僕の気持ちを伝えたい。好きだって。愛しているって。夏美ちゃんと一生いたいって。一生傍にいて欲しいって」
 幸一くんの一言一言が私の胸に突き刺さる。
 全て私の望み。
 それなのに、幸一くんが望むのは私じゃない。
 「だからプロポーズしようと思う。夏美ちゃんに知って欲しい。それぐらい好きだって事を」
 幸一くんはそっと私の手をほどいた。
 「馬鹿な弟でごめん。姉さん。行ってくるよ」
 そう言って幸一くんは笑った。
 落ち着いた大人の笑顔。
 私に背を向けて歩く幸一くん。その後ろ姿が徐々に小さくなる。
 幸一くんが、私の手の届かない場所に行ってしまう。
 気がつけば私は走り出していた。
 「幸一くん!!」
 振り向いた幸一くんに私は抱きついた。幸一くんの背中に腕をまわし、思い切り抱き締める。
 この腕をほどいたら、幸一くんは私の手の届かない場所に行ってしまう。
 「いやっ!!行っちゃいやっ!!」
 私の声は震えていた。
 「お願い!!行かないで!!夏美ちゃんのものにならないで!!」
 目頭が熱い。涙で視界がにじむ。
 「好きなの!!幸一くんが好き!!愛している!!」
 涙の雫が頬を伝う。
 幸一くんの胸に額を押し付けたまま、私は喋り続けた。
 「ずっと好きだったの!!小さい時からずっと幸一くんを好きだったの!!お願いだから私を見て!!」
 私は顔をあげた。幸一くんの顔が近い。
 戸惑ったように、悲しそうに私を見下ろす幸一くん。
 胸が締め付けられるほど澄んだ瞳が私を見つめる。
 幸一くんの瞳が雄弁に語る。
 一人の女として愛しているのは私じゃないって。
 「何でなの!?何で夏美ちゃんなの!?何で私じゃないの!?私の方が幸一くんの傍にいた!!ずっと見ていた!!ずっと好きだった!!それなのに何で夏美ちゃんなの!?何で私じゃないの!?」
 涙がとめどなく溢れる。頬を伝い、足元に落ちる。
 幸一くんはそっと私の涙をぬぐってくれた。
 「私の何がいけないの!?夏美ちゃんみたいに髪の毛が短い方がいいの!?小さい方がいいの!?お料理ができない方がいいの!?年下の方がいいの!?」
 幸一くんが悲しそうに私を見下ろす。
 その視線が堪らなくつらい。
 「幸一くんが望む女の子になる!!幸一くんが望むならなんだってする!!だからお願い!!行かないで!!夏美ちゃんのものにならないで!!傍にいて!!傍にいさせて!!」
 そっと私の肩を押す幸一くん。
 悲しそうに私を見つめる澄んだ瞳。
 「ごめん」
 申し訳なさそうに、本当に申し訳なさそうに答える幸一くん。
 「本当にごめん。姉さんの気持ちには応えられない」
 「姉さんって言わないで!!」
 幸一くんは驚いたように私を見た。
 「私が幸一くんのお姉ちゃんだから駄目なの!?お姉ちゃんだから恋人にしてくれないの!?」
 私はずっと幸一くんのお姉ちゃんだった。お姉ちゃんとして傍にいた。それが嬉しかった。
 でも、今はそれが足かせになっている。

486:三つの鎖 29 前編 ◆tgTIsAaCTij7
10/10/27 21:55:34 TckWV/As
 「私ね、幸一くんの事が好きだった。幸一くんが望む私になろうって思ってた。覚えてる?最初に会った日。私ね、今でも覚えているよ」
 公園で梓ちゃんと一緒にいる幸一くん。梓ちゃんは幸一くんにべったり甘えていた。
 幸一くんは寂しそうだった。甘えたい年頃なのに、甘えられるご両親はいつもお仕事。
 だから傍にいてあげようと思った。幸一くんが甘えられる存在になろうと思った。
 私の方が一日だけ早く生まれたから、幸一くんのお姉ちゃんになろうって思った。だから私は幸一くんのお姉ちゃんだった。
 それが幸一くんのためだから。幸一くんの望みだから。
 「私ね、幸一くんのためにお姉ちゃんでいたんだよ。幸一くんが望むからお姉ちゃんでいたんだよ」
 幸一くんを抱きしめる手が震える。
 「それなのに、夏美ちゃんを選ぶの。お姉ちゃんとしての私が必要なくなったから、私はもういらないの。幸一くんはお姉ちゃんとしての私を必要としてくれたのに、女の子としての私は必要としてくれないの」
 涙が足元にぽたりぽたりと落ちる。
 「こんな事になるなら、幸一くんのお姉ちゃんになるんじゃなかった」
 私は顔をあげられなかった。幸一くんの顔を見られなかった。
 「春子には言葉に尽くせないほど感謝している。ずっと僕の傍にいてくれた。ずっと僕を助けてくれた。梓に嫌われていた日々、春子の存在にどれだけ支えられたか、春子でも分からないと思う」
 落ち着いた声で話す幸一くん。
 「春子のためなら何でもしてもいいと思っていた。でも、それだけは駄目だ。僕の恋人は、夏美ちゃんだから」
 幸一くんの言葉が胸に突き刺さる。
 涙がとめどなく溢れ、地面に落ちる。
 「春子の気持ちは嬉しい。でも、応えられない」
 嬉しくなくてもいい。感謝してくれなくてもいい。
 憎んでもいい。嫌われてもいい。
 恋人じゃなくてもいい。都合のいい女でもいい。
 お姉ちゃんでも、そうでなくてもいい。
 だから、私を幸一くんの傍にいさせて。
 そう言おうとして、言えなかった。
 幸一くんは泣いていた。
 顔をぐちゃぐちゃにして、私を見下ろしていた。
 涙は頬を伝い、地面に落ちる。
 「ごめん。本当にごめん」
 幸一くんは泣いていた。
 本当に悲しそうに泣いていた。
 私の気持ちに応えられなくて。傷つけて。
 その事で、本当に泣いていた。
 嬉しくない。嬉しくないよ。
 涙なんかいらない。
 ただ、私の傍にいてくれたらいい。
 それなのに、私は何も言えなかった。
 悲しそうに泣く幸一くんに、何も言えなかった。
 だって、幸一くんは何も悪くない。
 幸一くんは自分の気持ちに嘘をつかなかった。私の言う事に適当に合わせることもできるのに、しなかった。あくまでも誠実に、真剣に私の気持ちに応えた。
 その結果が、拒絶。
 でも、幸一くんは何も悪くない。幸一くんは私の気持ちに誠実に真剣に応えただけ。
 例えその結果が拒絶でも、それは幸一くんが真剣に考えた結果。
 幸一くんは悪くない。
 悪いのは、私。
 「ごめん。僕、もう行くよ」
 幸一くんはそう言って私の顔を見た。
 大人びて、落ち着いた男の人の表情。
 そっと私の涙をぬぐい、私にハンカチを握らせ、幸一くんは私に背を向けた。
 だんだんと小さくなっていく幸一くんの背中。
 幸一くんは振り返らなかった。
 私は追えなかった。

 私は失意のままに家に戻った。
 その後、夏美ちゃんの家をずっと盗聴していた。
 警察に連絡したのは私だ。
 非通知設定で、ボイスチェンジャーを使用した。
 夏美ちゃんを必死に庇う幸一くん。
 もし警察が夏美ちゃんを連れていけば、真実は全て明らかになる。
 夏美ちゃんが幸一くんを殺そうとした事も。
 警察は尋問のプロだ。素人の夏美ちゃんは簡単に真実を話してしまうだろう。

487:三つの鎖 29 前編 ◆tgTIsAaCTij7
10/10/27 21:58:10 TckWV/As
 幸一くんはそれを分かっているから、必死に庇う。
 夏美ちゃんにあれだけ酷い事をされ、刺されても、幸一くんは夏美ちゃんと別れない。
 ただ単に夏美ちゃんにお父さんに頼まれたからだけじゃない。
 幸一くんは、心の底から夏美ちゃんに惚れている。
 それが悔しい。悲しい。
 私は幸一くんのお姉ちゃんだった。
 手間のかかる弟は、どこに出しても恥ずかしくない立派な男の子になった。
 でも、幸一くんが選んだ女の子は夏美ちゃん。
 私じゃない。
 姉としての私の期待に応えてくれても、女の子としての私の気持ちには応えてくれない。
 弟として幸一くんは私の期待に応えてくれた。けど、男の子としては私の気持ちに応えてくれない。
 幸一くんはやってきた警察の人と夏美ちゃんと一緒に部屋を出ていった。
 しばらくして、幸一くんと夏美ちゃんは帰ってきた。
 音だけだから良く分からないけど、幸一くんは夏美ちゃんの部屋をお掃除しているみたいだった。
 きっと、夏美ちゃんが幸一くんを刺した痕跡を全て消すつもりなんだ。
 ぼんやりとそんな事を考えていると、がたんという大きな音が聞こえた。
 いえ、もしかしたら小さい音なのかもしれない。盗聴器のすぐそばで発生した音は大きく聞こえる。
 『春子。聞こえている?』
 スピーカーから聞こえた幸一くんの声に、心臓が止まるかと思った。
 『警察に連絡したのは匿名だったらしい。僕が刺された状況を知るためには、この家の状況をどこかで知るしかない。盗撮か盗聴。そう思って調べたら、これがあった。多分、盗聴器だ』
 淡々とした幸一くんの声。
 『盗聴器を仕掛ける人の心当たりは春子しかいない。救急車に連絡してくれたのは感謝している。聞いていたと思うけど、夏美ちゃんにプロポーズした』
 幸一くんの言葉が胸に突き刺さる。
 『夏美ちゃんは承諾してくれた。もちろん、結婚は当分先になる』
 そうだ。幸一くんは夏美ちゃんにプロポーズして、夏美ちゃんはそれを断らなかった。
 幸一くんは、夏美ちゃんのものになってしまった。
 「やめて」
 私の気持ちが言葉となって溢れ出す。
 「お願い。そんな事言わないで。夏美ちゃんのものにならないで。お姉ちゃんね、幸一くんの事が好きなの。愛しているの。だから、そんな事言わないで」
 幸一くんに言葉は届かないのは分かっている。幸一くんの音声はこっちに届くけど、私の音声は幸一くんに届かない。
 それでも、言葉は止まらない。
 「お願い!!夏美ちゃんのものにならないで!!お姉ちゃんを見て!!私を愛して!!」
 目頭が熱い。頬を涙が伝う。
 『春子には感謝している。ありがとう』
 「ねえ!!幸一くん!!」
 『また会った時に報告する。それじゃあ』
 「幸一くん!!」
 音声は途切れた。モニターには、盗聴器からの信号が途絶した事を示す表示が映るだけ。

 気がつけば随分と時間が過ぎていた。既に夜遅い。
 いつの間にこんなに時間がたったのだろう。
 遠くでシロの吠える音が聞こえる。
 窓から見下ろすと、幸一くんが歩いていた。
 見るからに悲壮な表情。
 夏美ちゃんにプロポーズして、受け入れられたとは思えない思いつめた瞳。
 そういえば幸一くんは梓ちゃんに報告したのだろうか。
 まだに違いない。もし報告していたら、幸一くんも夏美ちゃんも無傷のはずがない。
 幸一くんは加原の家に入って消えた。
 私は急いで盗聴のためのツールを再起動した。


投下終わりです。読んでくださった方に感謝いたします。
ありがとうございました。
HPで登場人物の人気投票を行っていますので、よろしければご協力お願いします。
URLリンク(threechain.x.fc2.com)

488:名無しさん@ピンキー
10/10/27 22:57:47 Aes13hLz
GJです

うーむ、まあ自業自得だわな>春子
これまでの行為が行為だけに、哀れみの念も湧かないというのが正直な感想
さて次回は流血ありになってしまうのか…?

489:名無しさん@ピンキー
10/10/27 23:05:42 RVtbDzWH
春子まだやるのか....
梓が謎すぎる。

490:名無しさん@ピンキー
10/10/27 23:14:54 FCvu5oEq
乙!春子に関しては「策士、策に溺れる」の一言かな… 次回流血必至か……good lack

491:名無しさん@ピンキー
10/10/27 23:37:33 c8aHCDwC
こりゃあ血を見るなw
作者さんGJ

492:名無しさん@ピンキー
10/10/27 23:51:35 uVOkxrSG
いやしかし正しいキモ姉の姿だろ?俺は応援している。

493:名無しさん@ピンキー
10/10/28 00:44:46 C604v2/e
春子はキモ姉としてはよくやったって感じですね。
これから梓に知られた時どうなるか、春子がまた強攻策にでるのかに注目ですね

Good Job!

494:名無しさん@ピンキー
10/10/28 00:46:57 zcGRfLm2
ある意味死刑台に向かう気分だな、幸一は

ともかく投下ありがとうございます
次も首長くして待ってます

495:名無しさん@ピンキー
10/10/28 06:21:03 nY8EIF+z
GJ
春子も絶対あきらめないと信じてる
梓が何するか本当に怖い・・・

496:名無しさん@ピンキー
10/10/28 17:46:29 b0zRRkDO


497:名無しさん@ピンキー
10/10/28 18:14:08 tqkgob0p
春子みたいな姉を嫁にしたい

498:名無しさん@ピンキー
10/10/28 21:36:55 xm5Dj2Az
ホントにいいキモ姉だな春子はGJ

499:名無しさん@ピンキー
10/10/28 23:54:14 YF2X2b5m
まさにコレ!こういうの探してました。
URLリンク(www.pororichannel.com)

500:名無しさん@ピンキー
10/10/29 00:22:34 /44qEKDU
GJ
る意味当然だけど、幸一の春子の信用してなさにはワロタ

501: ◆wBXWEIFqSA
10/10/29 03:20:11 c2Sj2Nz/
>>373の続きを投下します。
今回もエロ有りです。


502:狂依存 13
10/10/29 03:20:53 c2Sj2Nz/
「はぁ……」
本当にどうしよう。
どうしてこんな事になったんだろう?
どうすれば諦めてくれるんだろう?
考えても思いつかない。
家を出るか?
いや、行く当てなんかある訳ない。
友達の家に泊まりこむと言ったって、何日もお世話になる訳にはいかないし、それでは何の解決にもならない。
誰かに相談すると言ってもこんな事誰にも相談出来ない。
第一実の姉に迫られて困ってます、なんて誰に相談すれば解決するんだ?
両親にも友達にも相談出来るような事じゃないしなあ。
彼女を作れば諦めて……いや、あの様子では難しいだろうな。
そもそもウチは男子校だから、異性との出会いなんて皆無だし、元々特に親しい女子もいない。
「(つか、そんな理由で彼女作るなんて、相手にも失礼だよな……)」
やっぱり、自分で説得するしかないか……
「では、この例文の訳を……三船。」
「はい。」
そうだ、今は授業に集中しよう。大事な時期なんだしな。

キーンコーンカーンコーン
「はぁ……もう終わりか。」
授業が終わるのがこんなに憂鬱なのは初めてかもしれない。
「よう、大輝。一緒に帰ろうぜ。」
「あ、ああ……」
いつも一緒に帰ってる友人達と下校する。
何とか話を合わせていつもの様に振舞ったが、その間もずっと麻由お姉ちゃんの事が離れなかった。
もしかしたら、こんな日常ももうすぐ終わってしまうかもしれない。
そんな予感さえしてきてしまった。

「大輝。お風呂沸いたから、先に入っちゃっていいわよ。」
「あ、うん。」
夕飯も食べ終わり、部屋でテレビを見てくつろいでいた所、麻由お姉ちゃんがそう告げてきた。
昨日あんな事言っていたけど、今の所何もしてこないな……
朝も普通に起こしてきたし。
まあ、今日は気分が乗らない日なのかな。
こういう平凡な日々がずっと続くと良いんだけど……

「はあ……」
頭を洗い終わり、思わず溜め息をつく。
これからの事を考えると溜め息しかでない。
毎日あんな事されたら、本当に何をしてしまうかわからない。
麻由お姉ちゃんはどうしてあんな風になっちゃたんだろう?
ずっと考えているが、検討がつかない。
「どうしてなんだ……?」
何か些細な事が原因かもしれない。
必死に記憶を辿ってみる。



503:狂依存 14
10/10/29 03:21:35 c2Sj2Nz/
「ねえ、お母さん。もうお風呂入っても良い?」
「ん?ああ、今お姉ちゃんが入っているから、もうちょっと待ってて。」
「わかった。じゃあ、すぐ入っちゃうね。」
「うん。」
「………え?」
ふふふ、麻由お姉ちゃんと一緒にお風呂っと。
僕達は夫婦になるんだから、一緒にお風呂に入って裸同士の付き合いをするのは当然だよね。
うん、一分の隙もない正論だ。
「ここ何年か一緒に入ってなかったからなあ。」
最後に入ったのいつだったっけ?
最近は恥ずかしがって一緒に入ってくれないけど、そろそろ一緒にお風呂に入ることぐらいには慣れてもらわないとね。
後何年かしたら、もっとエッチな事する関係になるんだから……
ガラっ
「麻由お姉ちゃん、僕がお背中流してあげるよ!」
「………!」
おっ丁度体を洗っている所だったか。
麻由お姉ちゃん、中学生になってから本当にスタイル良くなったよなあ。
テレビや雑誌で見るどのモデルよりも、麻由お姉ちゃんが一番可愛いよ。
「えへへ、僕も体洗うの手伝ってあげるよ。ええと……」
「………いい加減にしろおおおおっっっっ!!!!」
スコーン
うおっ!洗面器が顔面にモロに……
「ああん、何するの、麻由お姉ちゃん。」
「それはこっちの台詞だ!一体何度言えばわかるのよ!!入ってくるんじゃないって言ってるでしょうがっ!!」
もう、素直じゃないんだから……
「麻由お姉ちゃん、僕たち大人になったらもっと凄い事するんだからこのぐらいで恥ずかしがってちゃ……ぐはっ……」
「いいから出てけっっ!!」
バンっっ!!
「大輝っ!あんた、また何やってるのよっ!」
「ええ?何で姉弟でお風呂に入っちゃいけないの?それに僕達は将来夫婦になるんだし……」
「いつまでも、馬鹿な事言ってるんじゃないの!あんたももうお姉ちゃんと一緒に風呂に入る年じゃないって言っているでしょうが!」
「お母さん!私が出るまでその変質者縛っといて!!もう我慢の限界よ!!」
うーん、相変わらず麻由お姉ちゃんはガードが固いな。
僕は精通まだだから、間違いが起こる事はないのに……
いや早いとこ精通済まして、間違いを起こしたいんだけどね。
「大輝!こっちに来なさい!」
「ちょっ!パンツぐらい履かせて……」
今日の所はこれで退散しとくけど、近い内に一緒にお風呂でエッチな事しようね、麻由お姉ちゃん。

「……あれ?何だこの記憶は?」
おかしいな?こんな事あったけ?
きっと宇宙人とかに植え付けられた、偽の記憶か何かだよな、うん。
「はははは、そうだよな。こんな馬鹿な弟いる訳………」

……


504:狂依存 15
10/10/29 03:23:11 c2Sj2Nz/
ヒイイイィィィィィっっっ!!似たような記憶が、まだまだたくさん溢れ出てくるっ!
あの後しばらく麻由お姉ちゃんが風呂に入ってる間、手錠かけられてたんだっけか!
「ごめんなさいっ!ごめんなさいっ!ごめんなさいっ……」
もうそれしか言葉が出ないです。
ひでえ!酷いなんてもんじゃねえ!
いくら麻由お姉ちゃんの事が好きで好きでしょうがなかったからって、何故あんな事を……
つか、嫁とか夫婦とか何を根拠にそんな事言ってたんだ?
別に結婚の約束もした覚えもないし……
正直、子供の頃の事は変な熱に浮かされていたとしか説明のしようがない。
ああ、麻由お姉ちゃんは何年も僕が今味わっていた様な苦しみを味わっていたんだね……
だったら、今の麻由お姉ちゃんを怒る資格は僕には無いのかもしれない。
「もしかして、あの時の仕返しをされてるのかも……」
いや、だったら男女の関係をあそこまで必死になって迫ってくるのは変だよな。
あんな事されたら、冗談でも好意なんか持つ訳ないし……
うーん、わからない。
とにかく、今この状況をどうするか考えないと
ただでさえ麻由お姉ちゃんは弟の目から見ても美人でスタイルも良いのに、これ以上迫られたら……
何とか説得して止めさせないと。
大丈夫。話せばきっとわかってくれるよ……

ガラっ
「っ!?」
「大輝♪一緒に入ろう。お姉ちゃんが体洗ってあげる。」
「ええ!?ちょっと駄目だよ!」
バスタオルも巻かないで、堂々と入ってくるなんて……
でも麻由お姉ちゃんの裸……
本当に綺麗だな……
「ふふ……何じろじろ見てるのよ。お姉ちゃんの裸そんなに見たい?いいわよ、好きなだけじっくり見て……」
「い、いいから早く出てよ!出ないなら僕が出るから!」
「そんな事言って……本当はお姉ちゃんとエッチな事したいんでしょ。」
ふに
うっ!
後ろから抱き着いて、背中に胸を押し付けてくる。
ああ……おっぱいが直に背中に当たって気持ちいい……
ふにふに
「ふふふ……ほら、もう大輝のち○ぽこんなに大きくなって……やっぱり私に欲情してるんじゃない。実のお姉ちゃんなのに……」
だからこんな事されたら、誰だって反応するの!
「その元気なおち○ちん、私のおま○こに入れてほしいなあ……」
「うっ……!」
麻由お姉ちゃんは手でち○ぽをコキながら、耳元で甘く囁いてくる。
これは悪魔の囁きそのものだ。
「ほら……ちゅっ、ちゅっ……早くぅ……ちゅっ……」
「麻由お姉ちゃん、もう止めよう。お願いだから……ね? 」
「……ちゅっ、ちゅっ……うん?何か言った?……ん、んちゅっ……」
僕の言ってる事を完全に無視して胸を押し当てながら耳元や頬にキスし、手で肉棒をさすってくる。
「ちょっと、いい加減に……」
「こんなに勃起させちゃって……口じゃ拒否しても体は嘘を付けないみたいね。」
そんな、悪役みたいな台詞言わないでよ。
「ふふふ……さあ私がお背中流してあげるね。」
そう言うとボディソープを自分の体中にかけ、泡立たせていく。
やっぱり、そう来るか……
「さあ、行くわよ……ん、んっ……」
麻由お姉ちゃんは僕の背中にたっぷりと泡立たせたおっぱいを押し付け、優しく擦ってくる。
擦れ合う感触が本当に気持ち良い……
柔らかい乳房と乳首を使い背中を丁寧に万遍なく洗い、手を使って僕の胸の辺りをゆっくりとさする。
「(う……乳首を指で……)」


505:狂依存 16
10/10/29 03:23:57 c2Sj2Nz/
「どう?気持ち良い?ふふふ……こんなにおち○ちん勃起させて……変な我慢したら体に良くないわよ……」
肉棒を指でくりくりと弄り、耳元で囁く。
本当に何が何でも僕に襲って欲しいのか……
「ん……んっ……ほらっ…んっ……早くぅ……お姉ちゃんを犯してえ……んっ……」
もう無理にでも突き飛ばして……いや、麻由お姉ちゃんに怪我させちゃ悪いし……
でも、止めてって言っても聞かないし……とにかく今は耐えるしかないか……
「んっ……ん……もう、背中はこのぐらいでいいわね。大輝、こっち向いて。」
「え?」
麻由お姉ちゃんの方を向くと、またボディーソープを体にかけ泡立たせる。そして……
「んしょっと。ふふ……」
「ちょっとっ!何……」
今度は真正面に向かい合ったまま、乳房を僕の胸に押し付けてきた。
うう……この態勢はやばすぎるだろ……
「はあ……んっ……大輝の胸もこんなに逞しくなって…んっ……んっ…」
「お姉ちゃん、この胸で思いっきり抱かれたいな……んっ……んちゅっ……」
僕の胸をおっぱいで擦りながら、顔にキスしてくる。
その快楽は豊満な乳房がもたらす快楽と連動して凄まじい物であった。
「ん、んく……ちゅっ…大輝……愛してるわっ…ちゅっ……お姉ちゃんはあなただけがいればいい……ん……ちゅっ…」
「麻由お姉ちゃん……僕だけがいればいいなんて悲しい事言わないでよ……」
もし本気で言ってるのだとしたら寒気がしてくる。
どうしてだ。何でそこまで……
「あん……大輝のおち○ちん、少し萎えちゃったね……また勃たせないと……」
「ん……んっ……お姉ちゃんの手でまた元気にしてあげる。……んっ……」

う、また手でコキ始めてきた……
泡でヌルヌルと滑りやすなった柔らかくてしなやかな指が、陰茎を優しくさすり、肉棒を徐々に膨張させる。
「うふふ……また大きくなった……ねえ?これ、お姉ちゃんのおま○こに入れて欲しい?」
僕のち○ぽを軽く握りながら尋ねてきた。
「…(ぶんぶん)」
目を瞑り爆発しそうな欲情を必死に抑えながら、首を振る。
もう、早くイカせて……
「『僕のおち○ぽを麻由お姉ちゃんのおま○この中に入れて下さい』ってちゃんと言ったら入れてあげる。言わなきゃ入れてあげない。入れたかったら、自分で入れるのね。」
うう……この言葉責めは本当にきつい……
耳元で囁かれる麻由お姉ちゃんの言葉一つ一つが、理性をどんどん破壊していく様な感じだ。
むにゅっ。
「ほら……この逞しい肉棒で……んっ…エッチなお姉ちゃんのおま○こを早く犯してえ……ん、ほら……」
太股でち○ぽを軽く弄りながら、おっぱいを僕の胸に押し付けて擦り、耳元で挑発していく。
麻由お姉ちゃんは言葉責めと軽い愛撫で焦らしながら、僕の理性を徐々に破壊して襲わせるつもりみたいだ。
どうやらこのままイカせるつもりは無いようだな。
「はやくぅ……んっ、お姉ちゃんの処女膜ぶち破ってえ……あっ、うん……」
「(このままじゃ埒があかないな……)」

「あん……ん、んちゅっ……ちゅ、お姉ちゃんのおま○こ……ちゅっ…いつでも大輝のおち○ちん……ん、ちゅっ…受け入れる用意出来てるわよ……ちゅっ、ちろ……」
「麻由お姉ちゃん、ごめん!」
「きゃっ!」
僕は麻由お姉ちゃんを抱きしめると、そのまま肉棒を麻由お姉ちゃんの体に押し付け、強引に肉棒を擦る。
このまま、一線を超えるよりはまだマシな筈……
「あんっ!ちょっと……やんっ!あっ……」
流石に驚いたのか、ちょっと悲鳴を上げ、苦しそうな表情をしている。
「(ごめんね、ごめんね……)」
心の中で何度もそう呟きながら、姉の体を押し付け無理矢理絶頂させようとする。
麻由お姉ちゃんの体をこんな風に使うなんて……
もしかしたら嫌われちゃうかもしれない。
そんな恐怖感を覚えながらも無我夢中で行為に没頭する。
「あんっ!ちょっ、あん……やっ……あっ、あんっ!」
先ほどの余裕に満ちた表情から一転して苦しそうな顔をして、喘いでいる。


506:狂依存 17
10/10/29 03:24:58 c2Sj2Nz/
本当にごめん……
麻由お姉ちゃんのお腹のあたりでバンバン押し付けられた肉棒は、柔肌の心地よい感触の刺激によって徐々に爆発寸前になっていく。
「(うう……出る…)」
「あんっ!はっ!やんっ、あん、は……」
どぴゅっっ!!どぴゅるるるっっっ!!
そのまま、絶頂に達し射精する。
焦らされていたせいか、かなりの量だ。
「(一滴も残らず出し切れよ……)」
どぴゅっっ!!びゅくるるるっっっっ!!!びゅくるる……
ようやく収まり、少し安堵する。
吐き出された精液は主に麻由お姉ちゃんの胸の辺りにかかったようだ。
他にも方法はあったかもしれないけど、何とかこの場は凌いだかな……
とにかく麻由お姉ちゃんの思い通りにはならなかった。
「はぁ…はぁ…ごめん……」
「はぁっ、はぁ……もう……どうせなら、私のおま○こに入れちゃえば良かったのに……」
流石に呆れた表情をしているな。
「さ、早く洗い流して出よう。」
シャワーを出して、二人の体をざっと洗い流す。
流し終わったら、湯船にもつからず、ずっと不満そうな顔した麻由お姉ちゃんを残してすぐにお風呂から出た。
「(あんな顔させちゃって……)」
本当に悪い事をしちゃったな……
例えあんな風になっても、大好きな姉にあんな顔させてしまったのはやはり後味が悪い。
嫌われてなければいいけど……
そう思いながら自室へと篭った。

うう……さっきのは傍から見たら凄くかっこ悪かったかもしれん……
でも、あの場ではあれしか思いつかなかった。
強引に突き飛ばして、麻由お姉ちゃんに怪我させる訳にはいかないし。
そうだよ、あんなに綺麗な体に傷を付ける様な事あってはいけない。
大好きな麻由お姉ちゃんの体に……
でも麻由お姉ちゃん、本当に綺麗だったな……
あの綺麗な体を本当に僕の物にしていいのかな……
麻由お姉ちゃんの体……
欲しい。
嫌、駄目だ。
でも欲しい。それにあの体を他の男に渡したくない。
駄目だ、駄目だ!実の姉なんだぞ!
でも生まれた時からずっと大好きだった。
それに本人だって好きにして良いって言ってるじゃないか。
でも……
いや一回だけなら
一回だけでもあの体を思いっきり犯してみるのも……
お姉ちゃんと麻由お姉ちゃんとセックス……
きっと凄く気持ち良いんだろうな……
いつ襲っても良いって言ってたな。
なら、今からでも……
大輝「って!何考えてんだよ!」
駄目だ、駄目だ!
今の麻由お姉ちゃんとは絶対に一線を超えちゃいけない。
超えたら、取り返しがつかないことになる。そんな気がしてならない。
「落ち着け……落ち着け……」
何とか気を静めないと……
そうだ、学校の課題が結構出てるんだった!
それをやらないと。
そう言い聞かせて机に向かった。


507:狂依存 18
10/10/29 03:25:58 c2Sj2Nz/
ふぅ……もうすぐ終わるな。
気を紛らわせる為、ひたすら課題に集中した所、思ったより早く終わりそうになった。
大気「(課題が終わったら、次は何をしよう……)」
とにかく何でもいいから、何かに没頭して麻由お姉ちゃんの事をしばらく忘れたい。
ゲームでもやるかな……

コンコン
「!!はい。」
「大輝、飲み物持って来たよ。」
「あ、ありがとう。」
良かった……嫌われてはいないみたいだな。
「ふふふ……頑張ってるみたいね。」
「あの……さっきは、本当にごめんね。痛くなかった?」
「別に謝らなくてもいいわ。言ったでしょ?大輝のして欲しい事は何でもしてあげるって。むしろ初めて大輝から私で気持ち良くなってくれて嬉しいぐらいよ。」
いや、気持ち良くなる為とかそんなじゃなかったんだけどな。
「ふふふ、でもあんなにおち○ぽを私のお腹でぎゅうぎゅうして……ちょっとお腹が痛いかなあ……」
うっ……やっぱり。
「ご、ごめん!本当にごめんね!大丈夫?まだ痛むかな?痣とか出来てない?だったら、何か湿布でも……」
「もう、謝らないで良いって言ってるでしょ。大丈夫よ。それに私、大輝が喜んでくれるならどんなに苦しい事や痛い事だって、喜んで受け入れてあげる。」
でも、痛い思いをさせちゃったのは悪いし……
「本当にごめんね。もう二度とあんな事はしないから……」
今度やられたら、また別の方法を考えないと。
「もう、そんな顔しないで……我慢できなくなったらいつでも私の体自由に使ってくれて良いのよ。私をあなた専用の性欲処理の肉便器にしてくれて良いんだから。」
「肉便器だなんて、冗談でもそういう事は言わないでくれよ……」
大好きな姉がそんな卑猥な言葉を平気で使うのは、良い気分がしない。
「冗談なんかじゃないわ。むしろ私をそうやって使ってくれて喜んでくれるなら私も本当に嬉しいんだから。だから、ね……」
ちゅっ。
「いつでも私を犯しに来てね……待ってるから……」
頬にキスした後、僕を抱きしめ耳元でそう囁く。
この囁きは本当に色々とヤバイ。
「じゃあ、勉強の邪魔したら悪いからもう行くね……お休みなさい。」
バタン

「………」
今日の所はこれで終わりか……
でも、本当に何であんな風になってしまったのだろう。
原因を何とか突き止めないと。
でないと近い内に本当に麻由お姉ちゃんと……
そう考えながら再び机に向かった。


508:狂依存 19
10/10/29 03:26:40 c2Sj2Nz/
バタン
「ふ……ふふふふ……上手くいったわ。」
これでもう、あの子は少なくとも今日みたいに私を犯す前に私の体の一部を使って強引にイクような真似はしない。
だって、大輝は私の痛がるような事は絶対にしない優しい子だもん。
ちょっと痛がっただけで、あんなにオロオロして謝って……本当に私の事を大事に思ってくれているのね。
「あの子の優しさを利用するようで悪いけど……」
でもこれは私たちが結ばれて愛し合う為に必要な事。
二人の幸せの為に必要な事なのよ。
それに……
「もう少し、もう少しね……」
お姉ちゃんにはわかるわ。
あの子が本気で私とセックスしたいと思い始めてるって……
さっきあの子を抱いた時、直感的に確信したもの。
「お姉ちゃんはあなたの事何でもわかっちゃうのよ……」
あの子はもうすぐ私を愛してくれる。
もうすぐあの子と結ばれる……
フフフ……今日にでも襲われて処女を奪われちゃうかしら。

「あん、想像しただけで……ふふ、もう……」
あそこに手を伸ばし、軽く自慰を始める。
「あんっ……んふ…楽しみだわ……ん……」
大輝は本当に優しい子。
今も昔も私の事を一番愛して、一番大事にしてくれるのはあの子だった。
今日だって、私に怪我させない為に突き飛ばしたりして強引に追い出そうとしなかったし、さっきもちょっと痛がっただけであんなに済まなそうな顔をして謝って……
「あんっ……んっ……それに引きかえ、昔の私は……んっ、あんっ……」
昔の私は、あの子がちょっとでも私に触れようとしただけですぐ暴力振るったり、暴言を吐いたりして傷つけたり、本気で見下して馬鹿にしていた。
姉を名乗る資格すらない、本当に酷いお姉ちゃんだった。
弟の事なんか少しも考えず、自分の事しか考えてなかった生きてる価値もない醜いゴミクズ以下の女だったわ……
本当にごめんね。でも……
「でも、今の私は違うのよ……」
今はあの子の事を一番に愛して、あの子の幸せを一番に願うお姉ちゃんに……女になったから……
あの子の為に身も心も何もかも全てを捧げる事のできる麻由お姉ちゃんになったから。
「あんっ……はん、あふ、だから……あっ、んふっ……ふんっ……」
だから、もう安心して。
あなたを傷つける麻由お姉ちゃんはもういないわ。
二人で結ばれて永遠に幸せになりましょう。
「だから……あん、はふっ、早くぅ……あんっ!私を犯しにきてえ……はんっ!」
今すぐにでも私の部屋のドアを蹴破って、私を獣みたいに犯して貪り尽くして!
「ふっ、ふふふ……あはははっ……あっははははははっっ!あっはっはははは……」



509: ◆wBXWEIFqSA
10/10/29 03:27:48 c2Sj2Nz/
今回は以上です。


510:名無しさん@ピンキー
10/10/29 11:53:16 vDO6rKGv
>>509
GJ!

好きだって言いまくって、相手が落ちた時には本人は正気に返ってるなんて、
ここではあまり見ないパターンですね
頑張って下さい

511:名無しさん@ピンキー
10/10/29 19:24:53 sPvDg0dx
GJ
待ちわびてたぞ

512:名無しさん@ピンキー
10/10/29 20:41:33 CjWsRCKS
ぉぉ、キモ姉分が満たされていくGJ…!

513:名無しさん@ピンキー
10/10/29 22:14:04 +MiY5pwD
ホント、お姉ちゃんに何があったんだろう・・・

514:名無しさん@ピンキー
10/10/29 23:17:29 fVfzp7PD


515:名無しさん@ピンキー
10/10/30 00:01:46 hyh+LeOh
                         イ´ : : : : : : : `丶、
                     /: : : : :}: : : : : : : : : : : : :\
                    /: : :/ : /| {: : : : : :\ : ヽ : : ヽ
                      /: : :/ : /  |: | \ : : : :/>:ハ: : : :!
                   i: : : |i / 、八{  \:</: :./| : : i|
                   | i: : |/ 斗=ミ-ヘ 、_ 斗=ミく/| : : i|
                   | i: : |i〃_ノ.:ハ   \  _ノ:.:ハ ||| : : i|
                   |八: |}' 弋/(ソ     弋/(ソ / : ;イ:|
                    (,小 "::::::    '    "::::::厶イ人|
                    __ノ: j人             / : 八: :\
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                       /: 」   |:>; .__.. イ/ : /:::::::: :|
                   /:/)/⌒Y|_;_;}   r'/ : 厶-=ミ::|
                  /:r',ニフ| 保 |:|∠  ー// : //  `ヽ
                 /: :〈'´/)|  ||:レー、/ / : /´     }
                 / : : : ∧ ,イ:| 守|:| o / / : /       /l
                 / : :/ /{ハ. |::|   |:|_,∠__/ : /      /:│
             : : / : :/ ヽrh|::l . .|:匸} / : /| /     /):│
            /: : /: : :.厂 ̄ノノ厶jヘ、|」く\| : :ト∨    / } :│
              /: : /: : : :{ア/{〈 `ー   `}\| : :|/____    l: : |
          i : :/ : : : / ´  \ー__,,ノi:i:i人:〔_      ̄\i: :│
          | :/{: : : /     /  〈 (i_i:」シ  \/ ̄ ̄ ̄∧ 〕.:│
          ∨人_ハ|     /   \       丶、  / ̄リ: :

516:幸せな2人の話 9
10/10/30 00:33:00 c6XKT+pu
こんばんは。
表題について、投下いたします。

517:幸せな2人の話 9
10/10/30 00:33:21 c6XKT+pu
お兄ちゃんと私は、母さんに私達の思いを伝えるって約束をした。
だからといって何かが変わったわけではないと思う。
お兄ちゃんのご飯を作って、居間の掃除や洗濯物を干す。
夜になると私はお兄ちゃんに抱っこされながらテレビを見ている。
最近はライオン(ぬいぐるみ)のトラも一緒だ。
そんな私達を姉さんがにこにこと見守る。
その、偶に姉さんに隠れてこっそりキスとかもするけど……。
ほとんど変わっていない、でも私の心は今までとは別。
今まで私は家事や食事を作るのはお兄ちゃんに必要とされたいからという思いがあった。
だから、お兄ちゃんに見放されるような事をしないようにしないと、という恐さと焦りがあった。
でも今は違う、お兄ちゃんはそんな事を望んでいないんだって信じられる。
そして、私は大好きなお兄ちゃんを喜ばせられる事をしようって考えられるようになった。
今こうやって夕飯を作っている時だってそうだ。
もう私は昔みたいにお兄ちゃんが突然帰ってこなかったらなんて不安に思ってはいない。
お兄ちゃんが早く帰ってきてくれて、私のご飯を褒めてくれないかなって思っている。
好きな人のために何かを出来る、それが私にはたまらなく嬉しい。

518:幸せな2人の話 9
10/10/30 00:33:44 c6XKT+pu
ただ、一つだけ気になるとすれば姉さんにまだ私たちの約束を教えていない事。
その事を言ったら、じっと考え込んだ後にお兄ちゃんから話すのでまだ黙っていて欲しいと私に告げた。
いつものお兄ちゃんと姉さんの事を考えるとちょっと変な気がする。
でも、お兄ちゃんがそう言うのだから、きっと理由があるのだと思う。
そういえば、姉さんは今の私達の関係をどう思っているのだろう?
姉さんは、私がお兄ちゃんの事をどう思っているのかな。
私がお兄ちゃんを取っちゃって怒ったりしてないよね?
怒って私からお兄ちゃんを取り上げたりなんて、昔みたいに……。
馬鹿馬鹿しい、姉さんがそんな事する訳がないじゃない。
だって家族なんだもの。
何考えているんだろう、私?
優しい姉さんがいて、大好きな兄さんと一緒。
これよりも私の望む事なんて無いはずなのに。
こうやって一人で居ると、ちょっとだけ不安になった。
うん、お兄ちゃんが帰ってきたらいっぱい抱き締めて貰おう。
そうすれば、きっとこんな気持ち直ぐに忘れられるから。

519:幸せな2人の話 9
10/10/30 00:34:10 c6XKT+pu
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「はい、じゃあ最後にこれね」
雪風が楽しそうに手提げの紙袋を渡す。
「おい、もうそろそろ限界なんだが」
「あはは、兄さんならあと4袋ぐらいはいけるよ~?」
楽しそうに雪風が答える。
毎年夏の終わり頃になると母さんから妹手当てという謎のお小遣いがシルフと雪風には振り込まれる。
何でも、女の子は良い物を着て何ぼなんだから、しっかり着飾りなさいという趣旨だそうだ。
で、これを使って秋冬物を調達するのが御空路姉妹の伝統行事だ。
過保護すぎる気もしないではないけど、まあ不在中の家のあれそれを全部やらせてる負い目もあるのかもな。
(……ところで、毎年この季節になると「サービス料(妹)*2」という名目で俺の貯金が引き落とされているのは何故だ?)
ただシルフは雪風に色々と服を試着させられるのを嫌がっていつも来ない。
代わりに雪風がシルフの分も選んでおいてくれる、その服がちゃんとシルフに似合うのだから目利きは大したものだ。
けど、シルフの服を選びながらサイズ表記を見て悔しそうに歯軋りするのは家族として止めて欲しいとも思っている、うん、怖くて言えないけど。
まあそんな訳で、この時はいつも雪風と荷物持ちの俺の二人きりになっている。


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