パワポケでエロパロ16at EROPARO
パワポケでエロパロ16 - 暇つぶし2ch550:名無しさん@ピンキー
10/08/30 18:19:18 rdR/TDwq
>>576
クエストの条件が厳しいのもあるな
できる限り全員仲間にする俺には大変だった

考えてみるとクエストバグって救済措置みたいな物だな
これ無しでは相当厳しい

551:名無しさん@ピンキー
10/08/30 19:29:01 LZLFQSmS
でも裏最強はぶっちぎりで12主だろう。
射撃、鷹の目、高速装填、冷静、強靱+MPドゥームズデイ。
もしくは
剣、二刀流、炎の扱い、錬金術+フレイムイーター二刀。 

552:名無しさん@ピンキー
10/08/30 23:07:21 Pu59hWoc
規制中だからこっちに書かせてもらいたい
つか運営死ねよクソが

命を軽々と奪うパワポケにはこんな死に様があってもいいと思うんだ
URLリンク(imepita.jp)

553:名無しさん@ピンキー
10/08/30 23:11:42 IphnxUll
>>583
土台が違うのに最強とかFFとドラクエで最強を比べるようなもんだぞ

554:名無しさん@ピンキー
10/08/30 23:13:40 tZlzbruS
imepita厨死ね

555:名無しさん@ピンキー
10/08/31 00:34:03 T9WF8A2e
八つ当たりとかだらしねえな。
そこは許容の心だろ?

556:名無しさん@ピンキー
10/08/31 00:44:21 OmVLYtm2
>>585
その前にここはエロの妄想を競うスレなんだが・・・

557:名無しさん@ピンキー
10/08/31 01:14:59 vI9yyOmb
真央ちゃんの頭撫で撫でしたい胸を揉みしだきたい
それ以上の事は恥ずかしくてここには書けん!

558:名無しさん@ピンキー
10/08/31 08:01:58 Ld5x7wTm
>>587
ここはニコニコじゃありませんよ^ ^

559:名無しさん@ピンキー
10/08/31 21:24:14 rjfwBA0f
エロじゃないけど妄想を上げてもいいかな?

560:名無しさん@ピンキー
10/08/31 21:49:58 hfsGVW7u
>>591
どうぞー

561:名無しさん@ピンキー
10/09/01 00:17:44 pYZtdwuD
まず言い訳ですが創作に行き詰ってしまい、
この方向性でいいのかと悩んでいるのであげてみることにしました。
かなりおかしな事になっているのでご注意下さい。


「野球の試合ですか…」
パソコンが載った机が均等に並んでいるオフィスの中でも一際大きなデスクの前でそう質問した。
机の主は蛍光灯が太陽の代わりであるこの部屋でも遮光度の高そうな黒いサングラスを掛けている。
瞳孔が開いてることは間違いなさそうだが、それ以上のことは口から説明して貰わないと分からない。
両手をポケットの辺りに落ち着かせ指令を待った。
「公式試合ではないがな。 移動日を挟んだ後、阪神甲子園球場にて開催されるオールスター第一戦目だ」
オールスターとは羽振りの良い話だが野球には興味がない。俺にはチケットが勿体無い話だ。それに気になる点もある。
「オールスターの観戦に空きなんてあるんですか?だって年に一度のお祭りじゃないですか」
「ある、それを示すのがこれだ」
デスクの上を滑ってきた紙束を手に取り目を通す。ざっと見ただけでも1枚目の数字と2枚目の数字にはかなりの開きがある。
1枚目の数字は50万を超える数字がいくつかありあわや7桁に届くかという数も見受けられるが、2枚目は最高値が50万を割っている。
他の太字も20万をはみ出る程度だ。平均値や総和に直すと差は2倍は下らないかもしれない。 
「選手選出の投票数は年々減少傾向にある。
 海外への流出もあるが現状のオールスターは選手間での馴れ合いの場だ。それが見破られているのかもしれないな」
灰原隊長の意見と似たようなものをどこかのニュースソースで見かけた覚えがある。
確か携帯電話やインターネットの普及は選手同士でのコミュニュケーションを促したが、同時に敵としての意識も取り払ってしまったという論調だった。
ただ、彼等は戦いのプロだ。フィールドに立てば敵も味方も関係無いとは思うが。
「でも俺一人が観戦に行ったところでさくらにはなれないと思いますけど…」
ビールでも飲んでやればらしくなるだろうか。
「一人ではない、20名の捜査官が各自ペアを組んでの観戦だ。分かるな」
「……了解です」
つまりはそういうことなのだろう。始球式か商品の贈呈時か、目立つようなことはしないはずだ。
「ペアはこの2日の内に決め、決まり次第報告だ。忘れるな」
「あ、ちょっと待ってください」
「どうした?」
「席の指定を頼みたいんですけど」

562:名無しさん@ピンキー
10/09/01 00:18:31 pYZtdwuD
「で…なんでこんなところを希望したわけ?」
夏至を1月程すぎたためか、目の前の緑の芝生とその向こうにある黒土の景色には太陽の光とナイターの照明が入り混じっている。
17:00にもなっていないため暗くなるにはまだ早いが、それでも陽は少しづつ翳ってきているのでライトを点けているのだろう。
首を左に動かすとファールポールが目の前を通過し内野席と外野席の狭間にあるアルプスタンドが見えてきた。
なんでも1929年の中学野球の折に、席に陣取っていた観衆の白いシャツが万年雪のように見えたことから付けられた名称らしい。
確かにこうして見ると山のように高い座席群だ。
「聞いてますか~?」
そう思っていたところ後ろから女の声が聞こえてきた。声の主は今回余り物同士でペアを組んだ白瀬 芙喜子その人だろう。
言葉を返すためフェンスのラバー部分を掴む手はそのままで首だけ振り向かせて言葉を返した。
「バックネットも内野席もグラウンドを高い網で阻んでるけど、ここはスッキリしてるだろ」
射撃をするにしてもグラウンドに乱入するにしても障害物の無いここが最適だ。
後ろの席の段は山脈のように高く、その山肌には観客が各球団の色をあしらったメガホンを両手にプレイボールを待ちわびている。
色彩がバラバラなのはオールスターだからだろう、今日はホームチームのファンに気を使ってビジター応援席へと逃げる必要はない。
「はぁ~…金曜の夜にわざわざ兵庫まで出張して、こんな冴えない男とこんな衆人監視のもとこんな視聴形態として駄目駄目な手段で
 18人のおっさん達を見続けるなんてホント最悪!」
「頼むから言葉に気をつけてくれ」
周りに大勢いる観客を怒らせることになってしまう。
「大丈夫よ、凄いうるさいじゃない。私達が喋ったところで周りに聞こえやしないわよ」
「だからこそだろ?何かあってからじゃ遅いんだ。スポンサーが変わったことで式典の進行に何か変化や遅延が出てくる。
 彼等が行動を起こすとしたらそこしかない」
そう言ってから左側に置いたボストンバックから6倍率の双眼鏡を手に取った。それを目の前に持っていきマウンド付近に視線を拡大する。
見えてきた景色は内野のダイヤモンドを駆け回る選手達だ。視線を二塁から右に移すと27.431mの隙間を抜かせまいと人が懸命にグラブを伸ばしている。
ショートの選手だろう。守備においては足と肩と反射神経という全てに優れていなければならない大役だ。
彼が纏っている服の色はホッパーズのホームユニフォームである赤と白のツートンになっている。
「彼等って誰よ?」
双眼鏡をバッグに入れ、代わりに外側についたポケットからパンフレットを取り出し広げてみる。
ビジターチームの守備練習の後はホームランダービーとスケジュールには記されていた。
アナログの腕時計を見てみると二つの針は16:45を示している。まだホームのノックが始まったばかりなのでパンフレットは畳んでおいた。
「聞いてる?」
「…さぁ、車工場に解雇された日雇い労働者かもしれないし、誤審問題を上げつらわれた審判員かもしれない。
 NPBと関係の深い人物も考えられるね。栄養費問題とかは沈静化したけど選手指名におけるブローカーの存在は高野連も認めたがらないだろ?
 あれ怪しいと思うんだ。金田正一が小池秀郎の指名交渉に行った時も元海軍参謀が」
「ストーップ!ポールに登ろうとするな!」
「大丈夫、一応は右利きだし」
弾薬の射出角を考慮してライトスタンドをとってくれるよう隊長には頼んでおいた。
その通りになったのはさすがというべきか何というべきか。
「上まで登ったら見えないって皆から空き缶ぶつけられるわよ。それでもいいのね?」
掴まれた右腕を振り払ってから反論した。
「でも47808だぞ。なるべく高いところから見渡したほうがいいんじゃないか」
まず満員と見て良いだろう。隊長の読みは外れ、監視に払う労力もとてつもないがこれはこれで良いことだ。
エンターティメントを守る為にも監視カメラは多いほうが良い。
「…あのね、後ろの大勢の観客達の観戦を邪魔しちゃうのよ。それぐらいは計算できるわよね」
「…かもな」
「それに『20人の捜査官で5万人を監視しろ!』なんてこと隊長が命令するわけ無いよ。あんたの考えすぎ~」
「何言ってんだよ、47788人だろ」
「いいから黙りなさい、そんなことは有り得ないから」

563:名無しさん@ピンキー
10/09/01 00:19:45 pYZtdwuD
「そうか?皆がフル出動してこの球場に10個の監視線を張ってるんだぞ。こんなの絶対に何かあってのことじゃないか」
上から見れば10個の直線が球場中心目掛けて交差し20個の平方体に分割しているといったところだ。
皆の配備位置はレフトのポールやネット裏、ファールスタンドなど。
スタンドの上と下を2人で監視する点を線とし、それが左右対称の監視位置となるように組まれているとのことだ。
「隊長からそう言われたの?」
言われてはいないが防諜のためには味方にも真相を話さないのがセオリーだ。
「そういうわけじゃないけど、最悪のケースは想像しておくべきだろ。
 君はスタンドの上の方の監視を頼むよ。広告看板の隙間からゴルゴ13が出てくるかもしれないし」
「ナイナイ、それこそ有り得ないから。だって周りに見張られてる中でどうやってM16を持ち出すのよ。
 スミス&ウェッソンの10㎜×22mmだとしても…」
そう言って白瀬は腰に手を当て銃を取り出す素振りをして見せた。その後は片目を瞑りながらマウンドへと仮想の銃口を向ける。
「1回表、0.254mのマウンドに立っている1.86mの大神博之をファールポールの影から狙撃、フェンスラバーの高さは1.9m」
その距離はおおよそ85.222763364506247993480305101792mだ。と、甲子園を見たピタゴラスが教えてくれた。
「浜風も吹くし最終的なジュールは9mmパラベラムに格下げね、ボウリングで14ポンドの球投げつけるのと一緒」
俺が距離を測っている間に白瀬は弾薬の発射モデルを組み立てたらしい。
彼女の証明を疑うわけではないが少し気になる点があったので質問をしてみた。
「じゃあ人を殺すには十分だろ。貫通力は弾頭の方があるし、殺傷力はブラックタロンが一番だって…」
「それを当てる保証ができないって言ってるの。突風率も考えると私でも頭吹っ飛ばせる自信ない。
 一般人なんて7ヤードでも3発に1回しか当てられない下手糞なんだから、そんなことしようとは思わないわよ」
隊長によると腕の良い狙撃手なら突撃用のアサルトライフルでも300m先の頭を撃つことが出来るそうだ。
ただアサルトライフルは目立つから使えない、白瀬の言わんとすることは俺に対しての反証だろう。
「じゃあレーザーポインターはどうだ。あれは下手に目に入ったら失明するし、選手が狙われたことも何度かあったし」
「うん、光ならイタズラで済むもんね。でもそんなことのために私達が呼ばれたなんて考えられないよ。
 球場での安全管理は警備員の仕事でしょ」
白瀬の意見は筋が通ってるような気もするがそれで納得するわけにはいかない。
「だったらこれは何なんだよ」
「そうね…慰安旅行でもないし、何しに来たのかしらね?デートにでもしとく?」
いつものからかい気味の笑顔と口調でなじってきた。ただ、最近はこいつの扱い方もなんとなくだが分りつつはある。
「そう言ったからには責任持てよな」
「うん、持つ持つ。その代わり代金は全部アンタ持ちだからね」
目を逸らし後ろの外野席を仰ぎ見るようにして首を上げた。目に入ったのは肩から飲料をぶら下げ階段を下りてくる売り子の姿だ。
「……すいませーん!生一つとオレンジジュースで!」
「言っとくけどそれアンタが処理してよね」
階段を降り売り子が近づいてきたが、飲料を手渡される前に訂正をしておいた。
「すいませんやっぱりコーラとオレンジで」
ボックスの中には氷と供に色鮮やかな飲料が幾つか目に入った。
売り子は沢山のペットボトルの中から黒っぽい液体とオレンジ色の液体を取り出し白瀬に手渡した。
「それでよし。 はいオレンジジュース」

564:名無しさん@ピンキー
10/09/01 00:20:40 pYZtdwuD
本当はコーラが飲みたかったのだが、それを言うのも癪だと思いポケットから460円を取り出してオレンジジュースと交換した。
それにしてもとんでもないボッタクリだ。コーラの元になるシロップ、つまり原液のことだがこれは読んで字のごとくコーラの味の素だ。
1ガロン(3.78ℓ)当たり4ドル25セントで取引されているこれを、コップに9セント分いれ、上から400mlの炭酸水を注ぐことでコーラのMサイズが完成する。
言ってみれば俺が今持っているコーラは本来は9円にも満たない商品というわけだ。
ただ、この換算は小売業者、つまりマクドナルドなどにシロップを卸す場合の原価になり、自社でボトリングをするのであれば原価は更に下がる。
平成7年時に迫る今の円高の影響も考慮すれば、5円玉を真っ二つにしてしまうぐらいの元値だろう。
残りの22x/230がさっきの売り子のアルバイトにどれぐらい払われるかは定かではない。
兵庫府の1時間当たりにおける最低労働賃金は721円だが甲子園の売り子のバイトは完全歩合制らしく、どれだけボトルを捌けたかがその人の給料になる。
運輸や包装の賃金を引いてみても利益は200円は残るはずだ。売り子の取り分が100円とすれば7本を売った時点で時給は最低賃金に迫る700円になる。
だが末端が50%もリベートを貰える筈は無い。とんでもないボッタクリをされているのは俺もさっきの子も同じなのかも。
「…! ぶっ!」
「うわ、汚っ」
コーラのことを考えていたためかオレンジジュースを飲み込んだことに気管支が驚いてしまった。
闇鍋と同じだ、蛇や蛙といった俗に言うゲテモノでも暗闇なら普通にイケる。だが明るい場所では視覚による先入観が味覚に影響を与えてしまう。
オレンジとコーラの発想は危険だった。バニラ味のコーラもゲテモノに近い。最前列であったことが幸いだった。
「……これ…おかしい。オレンジの味がする」
ファンタにしておけばよかった。
「さっきから何ふざけてんのよ。あんまり恥ずかしいことしないでよね」
「あぁ…気をつけるよ」
一応は謝っておく。
「頼むからね。…にしても、こんなに暑いのに5万人の蒸し風呂は勘弁してほしいな~」
「だからさ…お前も気をつけろって」
少々注目が集まっていたため先ずは注意から入った。
「大体、ちっともおかしくなんてないさ。野球は日本の国技みたいなもんだし象徴だろ。これを見てるのは5万人どころじゃないと思うぞ」
「そうかしら。1回テレビで見たことあるけど視聴者クイズとか試合中なのに選手のインタビューとか入れてて凄くゴチャゴチャしてたわよ」
確かにスポンサーが出資をしている以上はそれは避けられない事態だ。
物事の裏側を見てやろうという視点は捜査官には必須だが、つき合わされる身としては中々にめんどくさい。
「隊長も人気落ちてるって言ってたじゃない。そもそも野球って世界的にみたら競技人口も少ないマイナー競技だもん。
 過熱してるのはアジアだけ~」
WBCもカバーしてるらしい。白瀬の捻くれた意見に同調したわけではないが良く挙げられる問題点を口に出してみた。
「人数が必要、道具もいる、競技面積も広大、だから気軽に楽しむには適さない…」
仮に環境が整っていたところに入れたとしても、そこには序列がありまずは球拾いから始めなくてはいけないというパターンが多いそうだ。
下手をすれば長い間ボールをそれでしか触らせてもらえないということもあるらしい。
飛んでいったボールを集める人員が必要なのだろう。
「そんなところかな。野球のワールドカップだ!なんてお偉いさんは言ってるけど正直お寒い現状だよね」
後ろからの視線がなんとなしに気になったので話題を転換した。
「でもこの世で一番数字を使うスポーツじゃないか。そこは面白いとは思わないのか?」
「数字って例えば?」
数字に関しての質問を返されるとは思わなかった。何かあるかと思い記憶をふるいにかけてみる。
「ほら、セイバーメトリクスとか君なら分かるだろ。俺にはさっぱりだからさ、教えてくれると助かる」
「…あのね、巨人と横浜の対戦成績が巨人が8勝で横浜が1勝なの。ぶっちゃけると巨人の8勝1敗ってこと」
その数字は5日前に新聞で見た記憶がある。前半戦の成績を言っているのだろう。

565:名無しさん@ピンキー
10/09/01 00:21:30 pYZtdwuD
「確率論なんてものじゃないけど野球の試合を9回やって8勝1敗になる確率は約1.7%なの。なんでそうなるかは大丈夫だよね」
「えっと…全部の勝敗のパターンが512通りあって…8勝1敗がその内9通りしかないから…」
「正解。でもこれは引き分けがない場合よ。もっと言うなら表と裏を決めるコイン投げでの確立なの」
「…それが?」
「ここではμを0.5ってことにしてるから1.7%をそのまま確立測度に代入してみるね。
 そうすると57シーズン戦えば8勝1敗の結果が出ることになる」
「57回投げればってことか」
「そ、でも巨人が横浜に沢山勝ったのは今年に限ったことじゃないよね。
 何回も表を出し続けてたら誰だってコインに細工してるんじゃないかって思うはず」
コインに例えるとはおかしな話だ。なんとなくだが嫌な予感がする。
「でもそんなこと言ってる人はいないわ。何でかって言うと」
「…それは巨人が横浜より強いからで、金を使って球団を補強してるのがコインの細工だから」
「そうそう、良く分かったね」
いつもよりキツイ皮肉だと思った。この細工は誰もが見破っている。
「セイバーメトリクスも結局はホームランを打てる選手が必要だもん。
 数字を使うっていうのも突き詰めればお金を使った競争って意味なの、そういうところは好きかな♪」
少々気分が悪くなる物言いだったので口を挟むことにした。
「一応言っとくけど長打率はランナーを進塁させる能力であってパワーを表してるわけじゃないからな」
「あ、そうなんだ?じゃ (1×1B)+(2×2B)+(3×3B)+(4×HR)/AB これでいいよね」
「日本語でお願いします」
「ったく…ようは塁打数を打数で割ったの。アンダスタン?」
ここはシカトしておこう。
「ファンタジーリーグ・ベースボールって知ってる?」
「何それ?」
「SRBAっていうアメリカの野球研究学会があってさ、そういった野球好きな人達が試合のデータを分析してありとあらゆる選手の成績を算出するんだよ。
 OBPとかSLGとか…この二つを足せばあのOPSになるんだ。出塁率と長打率を足した日本でも人気の得点貢献度モデルなんだぞ」
「フーン」
「でもメジャーでは1981年にそれより進んだモデルが提唱されてるんだ。野球は27個のアウトを取られるまで攻撃が続くスポーツだろ。
 それを数式に表したトータルアベレージていうのがあってその公式が」
「やめろー!さっさと本題に入れ!」
「…それで30人で選手達をドラフト指名していって30チームを作る。仕上げに色々な得点算出のアルゴリズムを掛けてシーズンを戦わせる。
 数学が得意だったら誰でもGMになれるんだよ。凄く面白そうだから頑張って日本版を作ってみようぜ」
グラフィカルな野球ゲームより面白そうだ。
主要な選手の成績は頭の中にあるが、アルゴリズムの組み方はまるで分からないのでそこは白瀬にやってもらおう。
「へぇ~データ入れて見守るだけの野球ゲームってとてもとても斬新ね。貴方1人でどうぞ」
予想に反して毒がありつつもそっけない反応が返ってきた。
「なんでだよ。メジャーではそういう統計分析を使って選手を雇ってるんだぞ。
 それを日本でも試してみようってことだよ。黒星がひっくり返るかもしれないんだ」
「無理だと思うわよ、オセロじゃあるまいし」
「茶化すなよ、上手いこと言おうと思ったわけじゃない」
「ん?そう思ってたの?」
「違うって…。セイバーメトリクスはさ、防御率や打率をパッと見ただけじゃその選手の実力は分からないって事を言ってるんだ。
 相手がいるスポーツだから結果は相手に左右されるけどフォアボールとかはそうじゃないだろ?
 解説者だって投手の一人相撲は良くないとかストライクからボールになる見極めが大事だって言ってるしさ」
「まぁ裏づけにはなってるわね。それで?」
「だからセイバーメトリクスを研究すればシーズンのシュミレーションも出来るし本当の戦力だって明らかにできる。
 多分、君が作った地理的犯罪予測の精度向上にも役立つよ」
実際に他球団から解雇された選手やベンチの選手をかき集めワールドシリーズを制した球団もいる。
昔はセイバーメトリクスが浸透していなかったため本当は優秀なのに首を切られた選手が大勢いたというわけだ。
今の日本でもそうなっている危険性はある。数学は人の可能性を見つけ出す学問だ。

566:名無しさん@ピンキー
10/09/01 00:23:43 pYZtdwuD
「あのねぇ…数学は魔法じゃないのよ?」
そう思っていたところそれとは真反対の意見が飛び出してきた。
俺は少なからず動揺した。誰よりも数学を信じている白瀬がそれを否定したからだ。
「野球は選手がするものなの、それを数学に置き換えようなんてオタクのすることよ。
 風向きとか試合中の怪我、ボーク、守備妨害、サインミス、人工芝、ナイターの照明、ショートバウンド、ストライクゾーンの違い。
 球場の中で起こることなんて46次元ユークリッド空間でも収まらないって。
 株価の予測とかもそう、変数が多すぎるのよ。あれが上がったー下がったー、戦争がおきたー平和になったーとかでね。
 最低でもこの世界は68億次元はあるわ、野球に限らず未来を予測するなんてできっこないの」
白瀬は強い口調でそう言いきった。犯罪予測のモデル設計は失敗に終わったのだろうか。
「それに選手の能力がゲームみたいに正確なわけないじゃない。酷だけど監督の采配はゲームのコントローラとは違う。
 代打の切り札がヒットを打ったってそんなの偶然かもしれないんだから」
結果は全てまぐれ当たりだというのか、それではあまりにもだ。
「じゃあ満塁ホームランや三球三振は奇跡なのかよ」
「そこまでは言ってないけど…なんでそう思うの?」
「なんでって打球の初速が最大になるのはボールを仰角27度で打った時だし、速いストレートがホップして見えるのはマグナス効果と1/2gt^2の関数がボールにあるからだろ。
 だから空振りもホームランも絶対に理由がある、結果を回帰していけばグリップのテークバックとボールのリリースポイントを三角測量で測るとこから始まる筈だよ。
 ランディジョンソンの奪三振率が歴代の奪三振王の中でぶっ契りなのも
 腕が長いからマウンドとホームベースまでの距離が短くなってストレートが届くのが速かったからだって論説があるんだぞ」
特に2001年はとんでもないSORである、これを1試合平均に割り振ると 13.43 SO を計上していたことになる。
「ヘェ、ソレハシラナカッタ」
「だろ?腕の長さを最大限に生かすための工夫もしてるんだ。
 大きく踏み出した足を回転軸にサイドスロー気味に投げる、そうすれば腕の遠心力を生かしながら距離を短くできるって事に彼は気付いた。
 ただこのやり方だとリリースがほんの少しずれるだけでバッターを殺しかねない、腕の振りも速いから指先に掛かる遠心力が強くて制御も難しい。
 バイクでコーナを曲がる時と同じ力が指先に掛かるんだよ」
「それで大体いいけど、遠心力は半径の大きさに反比例するのよ、それは分かってる?」
「腕が長いと軽減されるってことだよな。ランディはそれを満たしてたからこのフォームの適正はあったんだと思う」
「でもコントロールに苦しんだんでしょ?」
「遠心力を克服するまではね、ハンドルの切り方を掴んだのかは知らないけど歳とともにフォアボールの数は少なくなっていった。
 でも若い頃のランディはフォアボールもデッドボールも凄く多かった。
 思うんだけどさ、スピードとコントロールって負の関連があるのかもしれない、ノーランライアンも暴投王だし」
新垣渚も暴投王だ。
「じゃあその二人をセイバーメトリクスしちゃえば伝説のOBなのに要らない選手になっちゃうね。…ほら、数学っておかしいでしょ」
「いいや、そうじゃないって分かってるはずだ」
「もう…拘るなぁ」
「三振が取れる投手は自力でアウトを取れるから優秀なんだ。
 野球は良い当たりでも捕れるように野手が配置されてるから被打率じゃ本当の実力は分からない。
他にも守備シフトっていってバッターの打球の偏り具合で配置を変えたりもする。
 例えば典型的なプルヒッターの場合…そうだな、ここは小笠原にしよう。
 小笠原は左打者でライト方向に引っ張った打球を飛ばす期待値が高い。
 ただ数の少ないホームランの方向別数値で期待値を出したから、データとしては不完全だけどね」
全てのヒットを幾何学的に表しているデータがあれば良いのだが、それは入手するのも集計するのも難しいだろう。

567:名無しさん@ピンキー
10/09/01 00:24:31 pYZtdwuD
「小笠原諸島はライト方向にあったのね!」
「それ素晴らしいよ。その情報を元に野手達は打球の分布図に居座るんだ、宝の地図みたいに」
「誤解するなー!皮肉で言ってんの!」
「?…なんで?」
「…分かんなくて良いから続けなさい。選手達はライト方向に舵をとりました」
「あぁ、シフトの変更はダウジングでボールを捕るのはサルベージだ。
 強烈なライナーがセカンドの真正面に飛べば、それは野手のお手柄だ」
「先生~それだと小笠原選手が流し打ちをしてしまった場合はどうなるんでしょうか?」
「あ…えっと…ライト側にずれるって事は定位置より何歩か左に行くって事だから……幾何学的にやってみよう、2次元だけどね」
パンフレットには球場の見取り図があったのを思い出したのでボストンバッグのチャックを開けて引きずり出した。
細かいグリッド線が書かれた写し紙も取っておく、ペンは胸ポケットに挟んでいる物でいいだろう。方眼用紙をパンフレットに被せて話を始めた。
「まずスタジアムを直交座標系に見立ててから守備の定位置に印をつける。記号は野球の数式に則って123456789にしよう」
「升目からはみ出すから…」
「そうだな…点にしとくよ。次に定位置から右のx軸にずらした座標とセカンドベースの少し後ろの座標に印をつける、これがシフトと打球だ。
 打球が抜けるまでの時間は(ホームベースの座標と打球の座標を結んだ線の長さ/打球速度)で割り出す。
 出したタイムリミットを選手の守備範囲(打球に反応するまでの時間+{√(Xi-Xn)^2+(Yi-Yn)^2/加速度})で引き算する。
                               (打球を捕るための最短距離)
 そのためには選手を走らせてみないといけないけど…ここでは線でシュミレーションしてみよう。
 打球の速さに基づいて線を引けばいい、その間に引ける線の長さが選手の守備範囲だ」
二本目のペンを左手に取った、一応は右利きだが射撃の訓練は左右両方を行なっているので両手で線を引くぐらいはできる。
「じゃあ選手は加速度m/s^2や打球速度m/sの表示が義務付けられるのね」
「それ分かりやすくて良いよ、良いデータだ」
「そうね、弾薬や戦闘機みたいで素敵」
同感だが話が逸れてきたので打球の線を引いていく。
「打球の線が引かれたらそれに反応して守備の線を引いていく、守備の線に打球の線が突き当たればアウト。逆ならヒットだ」
「アウトだ…センターの右に伸びていく打球をショートが捕った。でもアンタの妄想よね?」
そう思って当然だが100%デタラメというわけではない。
「去年の6月2日、ロッテ対巨人の4回表で実際にあったことさ、この日小笠原は似たような打球をもう一本打って捕られてる」
勿論だが俺は機械じゃない。速度を完全に再現できているわけはないが白瀬を黙らせるにはある程度のハッタリは必要だ。
「このシフトでヒットになった場合は定位置からも同じように線を引いてみる。それでアウトになっていればヒットは野手の責任だ。
 最後にこのやり方で出した定位置で捕れた確率と捕れなかった確率、
 シフト変更で捕れた確率と捕れなかった確率をベイズ統計にぶち込めばそのチームの守備期待値が出る…かな。合ってる?」
選手の加速度や反応速度を数値化するところがかなりの障害になってきそうだ。
用済みになったペンやパンフレットを元あった場所にしまいながら白瀬の返答を待った。
「あ~ぁ、どうしてこんなに馬鹿なんだか…」
「式がおかしいのなら言ってくれよ、アドバイスが欲しい」
「じゃなくて!もし、それで捕れたとしてもバッターの足の速さに焦って1塁へ悪送球をしてしまった。そうは考えられない?」
「あぁ 捕球に掛かった時間+(塁までの距離/送球の速度)-(塁までの距離/打者の加速度)がある。後捕ってから投げるまでの時間を」
「ふざけてないで真剣に聞いて」
捕球に掛かった時間に加算し、バッターがファーストを踏むまでの時間にスタートを切るまでのタイムラグを加算すればより正確になる。
と言おうとしたところでいつになく真剣な白瀬の声が聞こえてきた。

568:名無しさん@ピンキー
10/09/01 00:25:29 pYZtdwuD
「ベイズの定理も結局は過去の確率から推論で未来を考えてるのよ。あの場合はこう、この場合はこう、だからこうなるだろ!って風にね。
 でも今これから起きることは過去を数学で洗ってみても導き出せない、それはベイズも分かってたはずよ。
 夢を追うなとは言わないけどその現実は理解しなさい」
それは嘘だ、天気予報もテロを予測するソフトウェアもこの世界にはある。ただそれが100%では無いだけだ。
「そりゃあ…エラーを導き出す方程式はないけど、シフトはアウトの確率を変えるフォーメーションにはなるはずだよ。
 バッターが広角に打てるタイプだったら動かなければいいし、方向が偏ってたらそっちを固めればいい。
 だから…話が逸れたけど守備で失点を少なくする工夫はできるから、投手を選ぶ上では奪三振率が重要なんだ」
「と、思ったらランディとライアンが危険球で退場だ~」
「……そうはならないために四球と三振の比率を掛け合わせたモデルもシーズン分あるんだ。
 それをエクセルにいれてから線形近似のオプションで分析して、そこから信頼区間を」
「だ・か・ら!それに偶然って要素が関わってるの!満塁で手に汗かいてたとかガッツポーズした相手へのピーンボールだったとかね。
 それまで予測しろって?」
「…そうは言ってないよ、君が予測できない変数は俺が集める。それに言ってたじゃないか、神はサイコロを振らないって」
少なくとも俺はそう思いたい。
『神は…』とは量子論の発展のさなかに生まれた発言だ、つまり物理の言語と数学が産み出した哲学でもある。
白瀬は量子力学の課程に入ってからこれを良く口にし、こう言っていた、この言葉にはロマンがあると、俺もそれに同感だ。
物事に偶然はない、これこそがロマンだ。
「最近はそうでもないかなって思ってる。あいつって意外とギャンブル好きなのよ」
いつもより少しトーンダウンした口調だった。声に元気が無いが、分かるのはそれだけだ。俺に白瀬の苦しみは良く分からない。
量子の世界はゼノンのパラドックスの時点でチンプンカンプンだ。反論したいが何も言えない。
「数学は確率を操作するものじゃなくて事実を確認するだけのものなの。
 月が地球に落ちてこないのは自由落下運動に水平運動を加えれば説明がつく、楕円軌道の面積速度が一定なのも角運動量保存則でバッチリ。
 これが何の変哲も無い本当の数学よ。セイバーメトリクスで確率を変えようとするのはその真理に反してるわ。
 神様には逆らえっこないし、隕石の軌道は変えられない。石油も増やせないし、横浜が巨人に楯突くことも許されません」
「巨人も神様なのかよ…」
白瀬は強い人間だけが数学を使って好き勝手していると言いたいのだろうか。
確かに素粒子の発見は原爆の扉をこじ開けもした。だが放射線でガンを治療することも可能とした。
セイバーメトリクスも野球の競技性を破壊したりはしない、使う人間が悪用すればそうなってしまうだけだ。
「そうよ、たまにBクラスに降りてくるけどね♪」
「…なんだそれ」
「順位も数字を使って決めてるけどあれも一つの指標よね。
 Aクラスになった巨人阪神中日がBクラスのヤクルト広島横浜から優秀な選手を取り上げる。
 トランプの大富豪みたいで面白いよね」
どうしようもない事実だがそれが全てではないはずだ。偏っていく勝率を変える方法もある。
「でもさ、戦力の格差を無くそうって努力もしてるじゃないか。メジャーなんかは放映権料も各球団ごとに分配してるから球団の独自採算がとれてる。
 他にも一つの球団の年棒総額が高くなりすぎたらMLBが税金を徴収して弱い球団の補強の当てにしたり、
 ドラフトも弱い球団から良い選手を獲ってく完全ウェーバー制で…」
「うん、分かってる。でも全部大リーグのことだよね」
「……………」
「それにお金を使って強くなるのが悪いだなんて思ってないよ。だって強い奴が良い思いをするのは当たり前じゃない。
 それを野球で再現してくれてるだけでしょ。だったらそれを楽しまなきゃ!」
「……お前ってさ、やっぱ相当の捻くれ者だよ」
「そう?」
「ああ、普通の人は物事をそんな穿った視点で見たりはしない」
「あ、褒めてくれてるんだ?」
「逆だよ、可哀相な奴だなと思って。そんな生き方してて辛くないのか?不思議だよ」
気丈に振舞ってはいるが、この世に希望も何もあったもんじゃない。そう言っているようにしか聞こえない。

569:名無しさん@ピンキー
10/09/01 00:26:24 pYZtdwuD
「心配してるのか馬鹿にしてるのか良く分からないけど御心配なく。私はむしろ貴方の方が心配です」
「……はぁ?」
お前は俺の母親か。
「意外と深刻に考え込むタイプでしょ。これで正しいのか間違ってるのかって」
「いや…思春期はもう卒業してるから」
少しばかり前の自分ならそうだったかもしれない。でも今は体と心の釣り合いが大分取れてきた気がする。
俳優や政治家に腹を立てたり自分と違う価値観を認められないなどということは無くなったはずだ。
「思春期どうこうじゃなくてアンタの性格!考えとか言いたいことも結構溜まってるんでしょ?このお姉さんに話してみなさい」
今度は姉か。
「別にないよ」
まるで俺が野球界の現状に不満を持っているかのような言い草だ。野球選手になるわけでもないしそんなことに興味は無い。
「そうやって自分に嘘をつく…」
「嘘なんてつく必要ないだろ」
「でも野球に興味ないって言ってた割には結構詳しいよね。それってなんで?」
ボトルキャップに口をつけたところ、顔を覗き込むようにして白瀬は質問をしてきた。
気にせずボトルを傾けたがいつまでたってもジュースが降りてこない。
諦めて傾きを戻すと視界には再びグラウンドが姿を現した。だが未だに白瀬が右横で俺の言葉を待機している。
そこまで聞きたいのであれば、少しびびらせてやる必要があるかもしれない。
「……じゃあ言ってやるよ。全部君の言う通りで、ドラフトでの裏金やFA制度にプロアマ規定っていう問題もある。
 ちょっと前までは逆指名っていう選手が球団を選べる制度があって、選手に裏金を贈る温床になってたんだ。
 贈与は選手だけじゃなくてさっき言ったブローカーにあたる指導者にもウチを指名させてくださいって賄賂を贈るんだよ。
 まだこの慣習は残ってる。プロとアマが接触しちゃいけないって言っといてこの様だ」
ポカンと口を半開きにしている白瀬の顔が横目に見て取れた。言いたいことを忘れない内にと眼をノックに向けてから口を動かした。
「メジャーの草刈場になったらいけないなんて言ってるけど、その大元であるFAで選手を買い漁ってきた本人がそれを言っても説得力がないよ。
 それに日本のFA制度には裏があって獲得選手の年棒×0.8の補償金か0.5+人的補償かを元いた球団に払わなくちゃいけないことには触れてない」
「ど、どういうこと?」
「消費税が50%以上は付くってことだよ。だから控えの選手が他の球団でレギュラーをとろうとしてもそう簡単には売買されない。
 でも選手に消費税がつくのは国内のFAだけでメジャーに移籍する場合はつかない、というよりつけられない」
「それホントなの?」
「ホントさ。だから球団側としてはFAで出て行かれるよりも金の入ってくるポスティングシステムで選手を売りたいんだ」
FAの補償制度は選手の自由移籍を阻害する最悪の制度だ。ただ発足当時に比べればかなり緩いものにはなってきている。
それでも年棒でAランクBランクという記号がつけられた選手はまだ補償制度の檻の中だ。
「メジャーのFA補償は金や選手じゃなくてドラフトの指名権を譲渡するって形をとってる。これ良く考えられてると思わないか」
「つまり?分かり易く喋って」
「警察と俺達とで考えてみてくれ、まず容疑者を20日間拘留するわけだけど、
 令状が政治資金規正法違反だったもんだから捜査2課とか弁護士とかから色々と茶々が入る」
「警察さんはこっちによこせと、弁護士さんは保釈金は払うぞと言いました」
「だな。でも金で売ることはしないから弁護士は除外だ。切羽詰った政治家は捜査2課でなら調べを受けてもいいって言い出した」
「巨人に移籍したいよ~」
「……ここでは捜査2課にコネを持っているということにしておこう。で、どうにも移籍は濃厚だ。君ならどうする?」
「そうね、政治家の意向に逆らえないんだったら警察と取引をするわ。このホシはくれてやるから他の山をよこせってね」
「捜査権の譲渡だな。メジャーのFAも同じで、実力のあるベテランと新人を発掘する権利を交換するってことだよ」
「成る程ね。でも犯罪者に例えるってのは良くないわよ、あんたの意図は分かるけど野球選手が怒りそう」
そこは誤解しないで欲しい、けして選手が犯罪者だと言っているわけではない。
「人的資源って点では同じさ、この制度なら現役選手が振り回されることもないしチームの世代交代や戦力の増強も同時に行なえる。
 これって凄く合理的なアルゴリズムだよ。このアイデアを思いついたMLBのコミッショナーは凄いよ」
「う、うん…まぁね」

570:名無しさん@ピンキー
10/09/01 00:27:19 pYZtdwuD
「本当の意味でメジャーへの流出を止めたいのならFA制度の問題点や、MLBを見習った戦力格差の是正をしなくちゃいけない。
 でもそれはせずに、NHKのメジャー中継をやめさせろってオーナー会議で喚いてるだけだ。
 くだらないよ。あんなのが阪神のご意見番で読売テレビの放映権料集中構造がある限り日本球界は奴等と供に沈没さ」
サンテレビも言い方は悪いが阪神にジャックされているため同じ関西に拠点を置くオリックスの試合はほとんどが映らない。
パリーグが交流戦でしか見られない現状もおかしな話だ。ファンの取り合いを最初から有利な形で彼等は行っている。
「すっごい早口だったけどよぅく分かったから大きな声出さないで!熱狂的な阪神ファンがいたらどうすんのよ」
白瀬の突っ込みも中々際どいところではあると思う。
「馬鹿にしてるつもりはないよ。悪いのは経営体制や制度であって選手やファンはむしろ被害者だ。
 選手は補償金や人的補償のせいで一つの球団に縛り付けられるかお金のある球団に買われるかしか選択肢がない。
 ファンの人達が巨人はずるいとか阪神だって同じじゃないかとか、そんなことを言い合ってしまうのも金が全てのルールがあるからだ。
 球界の格差を何とかしたいなら巨人ファンも阪神ファンも一緒になって声を上げるべき……なんだと思う」
何を下らないことを言ってるんだ。神はサイコロを振らないの足元にも及ばない。
台詞が偽善じみていて気持ちが悪い。俺は阪神ファンは大嫌いだ、道頓堀で溺れてしまえばいい。
「お、出ました。小波節」
「あのさ…別にかっこつけた訳じゃないからな。今すぐ忘れろ」
もしかすると相当青クサく聞こえたかもしれない。不本意だ。
「分かってます。でも、ちょっと赤っぽかったからそこは気をつけてね」
「…どこらへんが?」
赤、つまりコミニストは平等や公平を謳ってはいるが、買収に弱く仲間を売ることが非常に多い。追い討ちをかけられた気分だ。
「う~ん…これって言えるわけじゃないけど打倒資本主義!みたいなとこ」
「分かった。気をつけるよ」
「いけないって言ってるわけじゃないわよ?ただそういう意見を無闇やたらに言ったら危ないからね」
「?…なんで危ないんだ?」
「あのね、自分の仕事が何なのか分かってるでしょ?レッドパージされたいのならご自由に」
レッド、つまり赤であり共産主義者の英語版か。
「だから赤じゃないって言ってるだろ、俺は今の給料や訓練を無駄にしたくない。
 そもそもレッドパージって何年前の話だよ。多分、3(俺の人生+2)ぐらいだそ」
GHQ占領後でベルリン封鎖や朝鮮動乱があったあたりだから1950年当たりか。
「意味分かんないこと言ってないで赤狩りは今でもあるんだからから気をつけるように!言っとくけど巻き添えはゴメンだから」
「今でもって…そうなのか?」
「目に見えないとこでね。選手会が提案した代理人の交渉とかも随分叩かれたじゃない。あれもその一環だと思うなぁ」
「代理人を連れてきたら年棒を下げるって言ってたな」
スポーツ欄の紙面内容を噛み砕いて言ってみた。
「そうね。でも叩いてるほうが悪い奴で叩かれてるほうが良い奴だとも言えないわよ。だって今の野球選手って貰いすぎだよね。
 査定が低い~って言うけど私の給料と比べたら全然多いくせに!って思っちゃうかな」
白瀬の言うことも分かるが、その分平均生涯賃金に達する選手はごく僅かだ。
選手会の活動は戦力外通告を受けた選手に対する就職斡旋や厚生年金の導入などをNPBに要求していたのが主だったと思う。
「分からないでもないけど俺達だって多いじゃないか、それにオーナーと選手がそれで納得してるんだから俺達が口を出すことじゃない」
「あれ~?それっておかしくない?」
「…なんでだよ」
「だって球団の賃金格差を無くすことが目標なんでしょ。だったらその第一歩じゃん」
「あ…」
頭と心臓が握りつぶされたような感覚がした。いつの間にか論理の展開に無理が生じていたのかもしれない。

571:名無しさん@ピンキー
10/09/01 00:28:22 pYZtdwuD
「いや…そういう意味じゃないよ。なんていうか…一つの球団に力が集まることが良くないって言ってるだけで」
他の球団ではレギュラーを張れる選手が能力の高い選手が集まっているばかりにベンチで100試合ほど座っているケースもある。
こういった飼い殺しを防ぐためにも戦力の分散は必要なことだ。と思うがそれとこれとを結びつけるのは些か飛躍しすぎなのかもしれない。
「あ~ごめんごめん。ちょっとからかってみただけ」
「……あ?」
「やっぱ深刻に考え込むタイプだね。引っ掛けるの簡単」
「悪い…状況が良く把握できない」
整理すると嵌められたということなのだろうか。
「でも真面目な話、貴方が目指す球界の改革には障害になってくると思うわよ。だって選手の年棒が高くなりすぎたら球団も運営に困っちゃうじゃない」
それは良く分かっているがいつの間にか改革を目指してる事にされているのは遺憾だ。
「小波委員長!サラリーキャップの導入はプロスポーツの健全化において必須事項だと私は思います」
「どういうノリだよそれ…。言っとくけど俺は野球になんて興味ないし球界を改革したいなんてことも思ってない。勝手に変なイメージを作らないでくれ」
「いいじゃない、そっちの方が面白そうだもん!」
ストーリを作ることが好きな白瀬がこうなってしまったらもう話は聞いてくれないだろう。好きにやらせることにした。
「まず選手会ね。ゲームにおける肖像権の管理問題について運動した実績があるけど、結局企業がNPBを買収したり、
 最高裁で負けたりして権利は球団の物になってる。戦力としては点で当てにならないわね」
「戦力って…お前戦争起こす気かよ」
どこまでの事態を想定してるのだろうか。野球が元で血が流れるということだけはやめておいてほしい。
「次に消費者である観客だけど、あんたが言うようにファン同士での摩擦もある。選手の年棒に対する苛立ちもある。
 だから連帯は望めそうにない…。あ~ぁ…こりゃ絶望的かな」
「もういいだろ。そういうのは地道にやっていくしかないし、そもそもそんなこと考えながら観るのは良くないよ」
少なくともスタジアムにある野球はそういった経済のしがらみや社会体制からは切り離して考えるべきだ。
「そうね…でも1回あんたが言ったようなことがあったんだよね。それ覚えてる?」
白瀬の言葉に額に手を当てて考えてみた。球界を激震をさせたという事件は幾らかある。
黒い霧事件やドラフトでの裏金問題がそれだ。ただ労働争議となると一つしかない。
「ストライキのことか?」
経営難の親会社の都合で職を失いそうになった組合員達は連帯してNPBや企業に声をあげていた。
スコアラーやトレーナーにスカウト、その他諸々の人々も意見を同じくして2日間試合をボイコットし、新規参入企業の導入までこぎつけた。
強行的な手段をとりはしたが、最終的にはNPBとの話し合いで事態を進展させた良いストライキだったと思う。
「ううん、もしかすると私達がまだ産まれてなかったぐらいの時のこと。ストの時ってアンタ12、3才でしょ?」
「…産まれてなかった時のことを思い出せって?」
「うん!頑張ってね♪」
図書館で読んだメジャーの労働運動の文献を大雑把に思い出してみた。
労使協約の内容は、日本より3年短い期間で取得できるFA権、肖像権の選手帰属、
最低年棒や年金制度にトレード拒否権、代理人を使った交渉の許可などだ。
このような充実した制度を得るために選手会は球団と戦いかなりの犠牲を払った。
ファンから見れば球団も選手も金持ちであることに変わりはなく億万長者と百万長者の戦いと揶揄されたのだ。
1994年のストライキはそのファン離れが最も顕著だったものだ。
「多分94年のストのことじゃないかな」
「う~ん、どうだろ…内容言ってみて」
「えっと…サラリーキャップ制の導入で年棒が抑制されることを懸念した選手会は1994年の8月12日からストを敢行した。
 ストは長期化し、残りの公式戦やプレーオフだけではなくワールドシリーズも中止になった。
 事態を重く見た大統領は交渉の調停に乗り出したが収拾できなかった。結果ストは232日間続きサラリーキャップ制の導入は見送られた」

572:名無しさん@ピンキー
10/09/01 00:29:30 pYZtdwuD
「な~んか、ごね得って感じね」
「何言ってんだよ。その代案として今の収益分配制や贅沢税ができたんだぞ。行き過ぎた賃金カットを止めたかったってだけだろ」
「甘い!アンタが考えてるほど労働者は清く正しい存在じゃないのよ」
やはり物の見方が穿ちすぎてる。
「自分の尊厳を守りたいだけだなんて言ってるけど本音はお金が欲しいだけなの。でなきゃ選手の年棒がうなぎ上りになってる説明がつかないでしょ」
「じゃあお前そういう人を実際に見たことあるのかよ」
「あるわよ、年棒を脱税してた選手とかアンタも調査したことあるわよね。それが真実じゃない」
「…あんなのごく一部じゃないか、全員そうだって言ったらいけないよ」
「はぁ~、あんたってやっぱ良く分かんない…。
 いい?人間は欲望を抑えきれない生物なの!それを抑えるためのサラリーキャップ制なの!」
かもしれないがそれが行き過ぎた裁きになってしまうこともあると思う。
「1回その波が広がったこともあったけど途中でポシャっちゃったよね。あれなんだったけ?」
「さぁ、サラリーキャップが野球界で適用されたことはないよ。何かと勘違いしてるだけじゃないのか」
考えられるのはアメリカンフットボールだろう。レベニューシェアリングというリーグ全体の運営収益をプールして均等に配る制度がある。
試合日程や移動距離なども優勝チームが一番負担がかかる行程が組まれており、格差を表すチームの最大年棒比率は1.47倍。
全ての球団が黒字運営だそうだ。スポーツビジネスの理想的な運営体制だろう。
「勘違いなんかじゃないわよ。喉まで出掛かってるのに思い出せない…なんだったかなぁ…」
「無いよ、君の勘違いだ」
労働運動が盛んなメジャーですらサラリーキャップは導入されてない。
過去にそれが民主的に確立されていたとしたら球史に残る一大事件として文献に残っていたはずだ。
「えっとね、法務機関よ。プロフェッショナル・ロウヤーズ……」
「…ペイメント・レプリゼンタティヴ」
「うん、それそれ!知ってたんじゃない。そういう名前の雇用代行機関あったよね」
「違う、そいつらはスポーツの発展や健全化なんて目指しちゃいなかった。
 その証拠に6年前のスポーツゼネストの煽りを受けて地下経済のネットワークごと粉々に吹き飛んだよ」
選手の権利を守ってきたのは選手会なのに、よりによってプロペラ団のことをそんな風に思っていたとは酷い誤解だ。
少なくとも俺の好きな文献にはそんな長ったらしい横文字が登場したことは無い。早く誤解を解かなければ。
「そうなんだ…でも高すぎる年棒を抑えるためにってサラリーキャップを球界に組み込んでたじゃない。
 一時期は成果も上げてたわよね。どうして駄目になったの?」
「駄目も何も結局やつ等はゴリゴリの利権集団なんだよ。そういうもっともらしい難癖をつけて選手から年棒をカツアゲしてたんだ」
「だけど親会社の赤字は減ってた」
「それは…そうだけど、そういうのは減益増収って言うんだよ。人件費をカットして儲けを上げてたらデフレになるよ」
「分かってるけど赤字が出てたら仕方の無いことじゃない。親会社の経営を球団が圧迫したら共倒れよ」
脳味噌がねじ切れそうだ。テレビで禿散らかしたオヤジが言っているようなことを白瀬が言って欲しくない。
「あんたとは少し違ったアプローチだけどスポーツを良くしたいって気持ちは根っこにあったんじゃないの?」
「はぁ?俺は野球なんか愛してないしそいつらも野球を愛してなんかいやしないよ。
 高校野球のブローカーなんかよりもっと低俗で下劣でえげつない集団で、言うなれば野球選手を食い尽くすハイエナの群れなんだぞ!」
何分昔の話だ、活動を事細かにファイリング出来てるわけではないだが断片的な資料を見ただけでも彼等の本性は分かる。
ピラニアかショウジョウバエか、それともシロアリか又はサナダムシ。ハイエナは死肉を食いはするが狼の要に団結して狩りをすることもある。
自立して餌を探す彼等ではなく宿主を吸い尽くす寄生虫がお似合いだ。

573:名無しさん@ピンキー
10/09/01 00:30:57 pYZtdwuD
「あいつらは有望なアマの選手を見つけては小額の賄賂で抱き込んだり、逆らったらプロは無理だとか因縁つけたりして、安い値付けて球団に卸してた。
 それで球団は良い選手が安く手に入ったお礼としてプロペラ団に手数料を払ってた。こんなの企業と暴力団の関係そのままだろ。
 これのどこがサラリーキャップだよ。プロアマ規定はどうしたって言ってんだよ!」
「ど、どうどう」
「ふざけてんじゃねぇ!」
「ちがーう!暑苦しいって言ってんの!伝えたいことがあるなら冷静に話せ!冷めた頭脳に熱いハートがあんたの持論でしょうが」
「…そんなこと言ったっけ?」
冷えたコーラに26℃のエアコンだったと思う。
「言った。秋霜烈日がどうのってね」
「ああ…それね」
「頭冷えた?では続きをどうぞ」
そうは言われても一度途切れてしまった会話の取っ掛かりを簡単には見つけられない。
それに、多分俺の憤りは白瀬には伝わっていない。でなければこんなにあっけらかんとした対応はできないだろう。
「もういいよ。もう言いたいことは言った、みっともないとこ見せてすみませんでした」
そもそも、もう演説は疲れた。プロペラ団には腹が立つけどそれを我慢するのが理性であり大人の考えだ。
底の浅い見識で世の中を斜に構えて解釈するのはガキのすることだ。
「もう…。じゃあ質問するけど、どうしてプロフェッショナル・ロウヤーズ」
「プロペラ団!」
「怒んないでってば、どうしてプロペラ団を暴力団なんかに例えたりしたの?」 
「なんかってなんだよ。やってることは暴力団と同じだぞ、彼等は」
「静粛に!」
「…どした?」
「客観的事実に基づく冷静な判断をお願いします小波検事」
「お前頭大丈夫か」
どうやら今度は検察官が俺の役柄らしい。
「ご心配なく、白瀬裁判所は24時間営業よ。では検察側が被疑者を暴力団と結びつけた根拠から示してもらいます」
舞台設定は法廷だそうだ。こいつのおままごとに付き合うのもいい加減飽き飽きだ。
「…暴力団のアルバイトがどれくらいあるかは知ってる?」
「知らない。あんたみたいに公安と一緒に捜査してないから」
「公安は暴力団を監視する組織じゃないぞ。あれは…」
「検事!要点だけ簡潔にお願いします!」
「分かった分かった…また今度な。まぁ色々あるんだ、総会屋とか倒産整理とか商品クレームとか」
「借金の取立てとかもそうよね?」
「ああ、会社の不良債権とかも取り扱ってるけど、大体はアパートの扉をバンバン叩いたりしてる。
 売春とかもそう。俺の女に手を出したなって言って金をせびる。出会い系サイトは大体そういうことするための釣堀」
「あんた引っかかったことあるの?」
「ないよ、そもそもこういうのは民事介入暴力って言ってそんなには儲からない。何でかって言うとせびる相手がそんなに金持ってないから」
「ふんふん。アパートの扉を叩いても出てくるお金はたかがしれてるのだ!ってことね。……ね、今のどうだった?」
「いいんじゃないか。で、沢山儲けるにはそういう小口じゃなくて大口の企業対象暴力に切り替える必要がある」
一応、企業への暴力介入も広義の意味では民事なのだが、ここは法人相手の商売ということにしておこう。
「会社からお金をせびるってことよね」
「それもあるけどちょっと違う、企業の為の別働隊になるってことだよ」
「別働隊ね、具体的にどうぞ」
「えっとな…一番時給の良いバイトは不動産関連なんだけど…」
ボストンバッグに双眼鏡があったことを思い出したのでチャックを開け中からそれを取り出す。


574:名無しさん@ピンキー
10/09/01 00:32:05 pYZtdwuD
「お前、この席嫌だって言ってたよな」
「そうね、選手が小さく見えるしカウントとかも分かりづらいし」
「じゃあどこだったら良いか教えてくれ」
言って白瀬に双眼鏡を手渡そうとしたのだが。
「こんなの使うまでもないわよ。特等席はマスコミ関係者や大手企業が座ってるバックネット裏に決まってます」
「だよな、じゃあ君の為に俺が特等席を取ってくるよ」
「ホント?ワーイ」
「といっても今日は満席だ。君が座りたい席には部長が張っていてコーラをすすってる」
「え~なんとかしてよ」
「分かった俺のスミス&ウェッソン ビクトリーモデルで退かしてやるよ」
「うわ~頼りになるなぁ~。カッコイイ~!」
「というわけで席が空きました。報酬としてコーラは貰ってもいいですか?」
「うん。別にいいよ」
了承を得られたのでこのふざけた芝居は終わりだ。手持ち無沙汰になっていた右手をバッグに入れて、双眼鏡を手放す。そして話を再開した。
「これが"地上げ"ってやつの正体なんだ。君は企業で俺は暴力団、部長は土地の持ち主でコーラは資産価値。
 チケットっていう権利があるから退かせられない相手を暴力で追い払ってそのお零れを貰う。意外と稼げる商売なんだぜ」
大抵は脅したり弱みにつけこんで追い払うのだが威圧が効かない場合は暴力に出ることもある。
借地権を持つ人間を追い払えれば土地を底地という法的な意味での更地にすることができるからだ。
これが地上げという名で呼ばれてる由縁だ。
「借地権はそこで野球を見ることよね。で、営業権とかも奪い取る…」
「そう、パソコンや帳簿とかにあるデータも資産価値になる。この場合は記者席を乗っ取って記事を書くとかがそれだよ。
 そういう雑所得もまとめて奪い取れるのが強い暴力団で、強い暴力団をバックにつけているのが強い企業なんだ」
「つまりプロペラ団は地上げみたいに選手を脅して、値切って、球団に売って、手数料を貰って儲けてたってこと?」
「そうだけど…」
野球選手が野球をする権利を奪われるとあったら大事だ。
なのに首を捻りながら不満そうな表情で問いかけてくる白瀬に少し苛立った。
「ちょっとわかんないなぁ…何で地上げと選手との交渉がイコールになるのよ」
「…なんで?」
交渉だと。
「だって地上げって身包み剥がして売っぱらって終わりってだけじゃないよね。その土地を使って営業したりもするし、
 テナントとかで権利がゴチャゴチャしちゃった土地を建て直すためにもやってることじゃない。
 企業と借地主の仲を取り持つビジネスにしてる暴力団も多いって聞くよ」
「…フーン。あっそ、結構詳しいんだな」
それは知らなかったが、白瀬は予備知識があった上で俺の話を聞いていたようだ。
だというならばあんなふざけた芝居に黙って付き合って俺をおちょくっていたのか。
「これでもエージェントですから。だからプロペラ団の行為も選手の身売りってだけじゃないと思うわよ。球団と選手の相互理解って言うか」
結局意見は平行線だ。でもそれは当たり前のことだ。人は主義を一つしか持てない。
「ねぇ、聞いてる?」
一人の人間の頭に新自由主義と共産主義の思想が両方入ってるなんてことは有り得ない。この二つは水と油の関係のため脳が拒否反応を起こす。
そのため主義主張が対立する人間も拒絶しあうように出来ている。俺は赤ではないから白瀬と俺はさながら水と油だろう。
「違うって言ってんだろ、お前は何にも分かってない」
そう言うと溜まっていた鬱憤が一気に爆発した。


575:名無しさん@ピンキー
10/09/01 00:33:13 pYZtdwuD
「地上げを資金力がある暴力団がする場合は自分から土地を回収して企業に売ってるんだ。
 そうなったら企業との力関係は逆転する。少ない金しか出さない企業には土地は売らない。
 プロペラ団もポスティングシステムを使って同じことをした。安い値段をつける球団には選手は売らないって言ったんだ!」
「まったー!はい、ピラティス呼吸法。吸って~、吐いて~」
「悪ノリするなって言ってるだろ!真面目に聞けよ!」
「こっちだって真面目に言ってるの!そもそもポスティングシステムってなんなのよ。そこが分かんない」
「…っち!」
そんなことも知らないというのにインテリ振っていたのか、むかつくアマだ。
「さっき売り子がジュースを売ってただろ、あの中からコーラを1本買うには?」
「230円出せばいいのね」
「そう!」
「なんでそんなカリカリしてるのよ」
「してない!君がコーラを230円で買ったけど俺もコーラが飲みたかった。じゃあどうすればいい」
「どうしようもないでしょ、私が先に買ったんだから」
「そのやり方が抽選指名制度。君に先を越された俺はどう足掻いたってコーラを飲むことが出来ない」
「ねぇ…さっきから気になってたんだけどコーラが良かったの?」
「それ凄くいい質問だよ。確かにコーラが飲みたかったけど俺は代わりにオレンジジュースを手に入れたろ。
 ドラフトも同じで1順当たり12/12の指名権は絶対に保護されてる。オレンジジュースは外れ1位ってことさ」
「1人1本は買えるって言いたいんだ?でも、それと何の関係があるのよ」
「ポスティングシステムではそれは通用しないってことだよ。
 君の小銭入れに230円しかなくて俺の財布に462円が入ってたらコーラもオレンジも俺の物にできる」
「1円でも高く入札した方に権利があるってこと?」
「そう。そしてプロペラ団はこの理論をドラフトに組み込んだ。金さえ出せば指名する権利を奪っていいって言ったんだ」
競りの参加数は12だったがドラフト1位の指名権は12/xという具合に変動した。xを弄るには金が物を言う。
順番に指名するというルールが無ければそうなってしまうのは自明の理だ。
なのに彼等は金欲しさにポスティングシステムを悪用して球界を骨抜きにしたんだ。
「でも、それってジュースの話じゃない。ドラフトがそんなに簡単にいくかしら」
「いったんだよ。株の見せ玉みたいにワザと高い値を付けて相手に浪費させるマネーゲームになりだしたんだ。
 最悪だったのはその煽りを選手が受けてしまったことさ。
 最低落札価格が設定されてるからそれを下回る値じゃ球団も指名できない。230円の水は買いたくないだろ」
「まぁ…そうね」
「炎天下の中なのにずっと売れ残ってたら、賞味期限切れになって廃棄される。そういった自分の将来に絶望して自殺してしまう人もいた」
「うん…」
白瀬は俯むきながら同意の言葉を吐き出した。さすがにこれは知っているようだ。
「こんなの球界の健全化じゃなくて民事介入暴力そのものだよ。
 サラリーキャップは年棒のキャパシティを決めて、戦力格差を無くして、スポーツを面白くするためのものでプロペラ団のヘソクリを貯めるための制度じゃない。
 経済と違ってスポーツを暴力で統制しても上手くいきっこない。でもいつまでたっても野球から暴力は無くならない。それが凄く嫌だよ」
プロペラ団は勿論だがその言い成りになっていた連中にも腹が立つ。
いや、多分言い成りなどではなくプロペラ団のやり方なら自分達も上手い汁が吸えていたから従っていたのだろう。餌がなければ犬はなびかない。
そして鳴り物をバコバコ鳴らしたり、野次を飛ばしたり、選手に物を投げたりする奴らも消えてしまえば良い。
そうやってくだらないことばかりしてるから野球がドンドン嫌われていくんだ。
「ごめん、野球とプロペラ団が嫌いだっていうのは分かった」
そうだ、良く誤解されるが俺は野球が大嫌いだ。ルールは複雑だし根性論だしサインの暗号化もやり過ぎだ。
「でもあんまり深刻に考えるな、禿げるわよ」
まだふざけるつもりか。

576:名無しさん@ピンキー
10/09/01 00:34:51 pYZtdwuD
「…考えるなってなんだよ?ラビットボールやコルク入りのバットを仕組んだ成績操作も全部あいつらの仕業なんだぞ。
 八百長や出来レースで野球を食い物にしてばっかで、良くしようなんてこれっぽっちも思っちゃいない。
 もしそれを思ってたとしても自分が英雄だって思ってなきゃあそこまでイカれたことは出来ないよ」
「そうね。でも成績操作をプロペラ団が仕組んだって確かなの?貴方の論証じゃないっていう物的証拠はある?」
「…そうすれば辻褄も合うし論証としては充分だろ。あれは選手会の権威を失墜させるために画策したプロペラ団の工作活動だよ」
プロペラ団が幅を利かせていた頃は打撃成績を向上させたい球団や選手が積極的にラビットボールという反発係数の高いボールを買い集めていた。
今は彼等の影響力も無くなっため来年からは日米双方で国際球の統一を検討しているとのことだ。
トライアルは繊維工業を子会社に持つゾウソウか米上院と繋がりの深いジャジメントかの一騎打ちになるだろう。
「ラビットボールを使いたいって言ったのは選手達だよね。だったら双方合意の上じゃない。
 それにコルク入りのバットだって選手が愛用してたバットがファールで折れてそれが露見したはずよ。見落としてるわけじゃないわよね?」
白瀬の言い分には納得がいかない。飛ぶボールやバットがあればそれを使いたくなるのがバッターの性というものだ。
「それになんだかあんたらしくない。プロペラ団は全て悪で選手は全員被害者って考えずに決めちゃってる感じ」
そういった需要を作り出し売りさばいた大元に責任があると思う。
現にピッチャーの立場で彼等が物を売ったことは無い、数が多く儲かる方の味方なんだ。
「なんでそんなに庇うんだよ。彼等は選手会の邪魔ばっかりしてスパイもして…」
「それは…あんたがそこまで言うんだからそうみたいね。知らなかった」
「知らなかった?完全に消滅したのは6年前なんだぞ。それまではプロペラ団の暗躍は小学生の間でも常識だったんだ。
 なのに君は知らなかったってのか」
だと言うのにプロペラ団のふざけたサラリーキャップだけは持ち上げるだなんて都合が良すぎる。こいつの論述はあやふやだ。
「怒んないでよ!本当に記憶に無いんだってば!」
「あぁ、そうかい。さぞかし友達の少ない小学生だったんだろうな。傑作だよ」
仲間内から外されて新聞やテレビからの情報をまともに飲み込んでいたんだろう。会話でしか見えてこない真実もあるというのに哀れな奴だ。
「なにそれ…友達が少ないって台詞あんたにだけは言われたくないわよ!」
「ッハ、こう見えても俺は友達多いぜ、今回お前と組んでやったのも皆から取り残されてオフィスをうろちょろしてたからさ。
 お前傍から見てても結構寒いんだよ、一匹狼気取りの迷子犬ってことにそろそろ気付けよな」
「なんですって?…」
「世俗から蚊帳の外だった理由を説明しろって言ってんだよ。お前、小学生で不登校だったのかよ」
心の毒を口に乗せて出している感覚だ、とても気分が良い。
強気で皮肉屋な白瀬は悔しそうに下唇を噛み膝の上で拳を握っている。
こいつと口喧嘩をしてもいつも敗者は俺だった。でも今日は勝てそうだ。
人間としてあまり良い傾向とはいえないがそれが楽しいし嬉しい。何よりいい気味だ。
「だから……」
「大体労働者は馬鹿だって言ったけどお前も労働者だろうが。
 そういう民衆なのに民主主義を苔にしたり、体制側の意見に格好付けて同調する奴は俺は大っ嫌いだね」
最大限の侮蔑を込めて言ってやった。白瀬の目鼻立ちの整った顔が徐々に崩れていく過程が堪らない。
言いたいことは溜め込まないで言うに限る。
「…だから……ちがうってばぁ……」
嘘泣きは女性被疑者が調書の作成を妨害するために使う良くある手だ。
「うぅ……っひ…」
「泣き真似だってのは分かってる。うざいだけだから今すぐ止めろ」
このまま置いていってもいいのだがそれでは周りの年に1度しかない観戦の邪魔になってしまう。
そもそもこいつが本当に泣く訳はないのだが一応泣き止ませた方が良いだろう。
「…聞いてるか?」

577:名無しさん@ピンキー
10/09/01 00:35:47 pYZtdwuD
「ほ…ほんとに…っひ……おぼえてないのに…ぅ…ひどいよぉ…」
「とりあえず泣き止めよ。色々と支障がでるだろ」
ボストンバックを探ってみるがハンカチとティッシュは常備していない。
嘘の涙だとしてもガンパウダーが染みついた布を顔に当てたくはないだろう。
パンフレットもスケジュールが載ってるため渡すのは無理だ。どうしたものか。
「……知らないって本当?」
「う…ぅん…」
なんとなく聞いた一言に随分としおらしい声で返答がされた。それに興奮した罰か周りの視線が刺すような物に変わっている。
小学校の頃と同じだ。女子を泣かせると周りから非難の声が轟々と浴びせられ、終わりの会という名の延長戦で皆から痛めつけられる。
それだけはゴメンだ。嘘泣きだということをこの観衆の前で証明しなければ。
「文献は…調べた?」
「しらべた……でも…そんなの……の…のって……ないし…」
「それは…まぁそうか。ステガノグラフィーでJpegにファイル変換されてるしな」
「な…なんで……しらないのか…わかんないのに……そんな……ひっ…ひどすぎるよぉ!」
「いや……その年代で知らないなんて聞いたことないからさ…てっきり嘘ついてるのかと…」
当時皆の携帯に出回っていた紛争地域での首切り動画も知らないのだろうか。
「うるさい!どっかいけぇ!」
「そ…それは無理だって、監視の任務があるだろ」
「もういい!もう顔も見たくない!あたし一人でやるからとっとと帰れ!」
まずいまずいまずいまずい。白瀬と喧嘩したため任務遂行不可能でしたなどとあの人に報告すれば俺が血を見るのは明らかだ。
女を泣かせるな、なんてことをあの人が言うはずはないが泣き止ませるのもスパイの器だとかは言ってくるかもしれない。
もっともだ。早く関係を修復して隊長には黙っていてくれるようお願いしよう。
「ごめん。お前…君があんまりプロペラ団を擁護するからさ、ちょっと腹が立って」
違う違う。これでは逆効果だ、冤罪の場合まずは自分の非を詫びなければ。
「そうじゃない…。分かって貰えなくて嫌になって、自分の意見を押し付けようとしたんだ。
 あんなこと言うなんてどうかしてたよ。本心じゃないんだ」
そう言ったが返答は無く、白瀬はそっぽを向いて目尻を拭うような仕草を見せている。
謝罪では彼女に許してもらうことは難しいかもしれない。別の策を考えたほうがいいだろう。
「腹減ったろ?外野の1階席に売店があるらしいからさ、そこで何か買ってくるよ」
これで良いはずはない。白瀬はカレーや焼きそばといった男性向けのメニューを思い浮かべているかもしれない。
「焼き鳥とかラーメンだけじゃなくてソフトクリームとかクレープもあるらしいからさ…何が良いか教えてくれ」
相手に意見を求めても返答は無い、そういう時は辛いものだ。心臓がうるさくなり体から汗が噴き出ししてくる。
緊張してるのかもしれない。今は日差しが雲に遮られており体感温度は下がっているからだ。
空に広がる雲もうっすらとだが黒色だ。この様子だといつ一雨きてもおかしくない。
「行ってくる、適当に選ぶぞ?」
立ち上がって言葉を掛けるが背を向けたままだ、それでもいつまでもここにいても意味が無い。
白瀬の目の前を通り、売店へと続く広い通路へと歩いていく。周りの視線が若干気になるが気にしたら負けだ。
この傾斜がきつく横幅の大きな全長の長い道を歩けば歩くほど、俺に侮蔑の視線を送る観客たちのホットゾーンからは離れていく。
Pin Σ=φ/(|Xi-Xn|+|Yi-Yn|)f だ。これならあの席に渦巻く侮蔑という感情から離れていく引き算ができるはずだ。
それにちょっとしたフィルダースチョイスじゃないか、女の心はナックルボールみたいに不規則でよく分からない。
「…やめよう」

578:名無しさん@ピンキー
10/09/01 00:39:05 pYZtdwuD
白瀬が泣くなんてことは今まで無かった、だから泣くとは思ってなかった。そういう甘えが自分の中にあったのかもしれない。
行き過ぎた論理は本当の知識や知性ではないとどこかの物理学者が言っていた。本当の知性は物事をどう感じてどう行動するかということらしい。
野球もそうなのかもしれない、白瀬の気持ちを汲み取らずに泣かしてしまったことも俺が馬鹿なことの証明だろう。
「相変わらずね、独り言が凄く多い」
階段を幾つか登ってからだろうか前方から聞き覚えのある女の声が聞こえてきた。
後方を振り返ってみるとネット裏のアッパーデッキと視線の高さが同じ位置にある。かなりの段数を登っていたようだ。
この高さに売店があるはずだ。
「聞いてるのかしら、小波君」
「聞いてる、聞いてるけどそれどころじゃないんだ。今立て込み中でお前からの情報よりアイスとかクレープとかの方が欲しい」
「それならこの通路を右に曲がった先にあるフードスタジアムで買いなさい。値段は300円と450円よ」
「あぁ、助かる。じゃまたな」
「情報は最後まで聞きなさい、その店イートインだから持ち帰ることは不可能よ」



とりあえず投下はここまでにしておきます。
続きは長くなりそうなのでwikiに追加ということにします。
最後に8主や白瀬ファンの方申し訳ありませんでした。

579:名無しさん@ピンキー
10/09/01 01:09:10 VJwaHgNj
面白かった。つか8主熱すぎるだろwwwww

白瀬…(ノД`)

580:名無しさん@ピンキー
10/09/01 01:20:09 QLBmg/QK
乙です。
何となく理解できるようなできないような、…できたことにしておこう。
でも、こういう話をさせるなら白瀬と8主がお似合いってのと、泣いてる白瀬も可愛いってのはとても理解できる。
白瀬は素で強すぎるから自分で話作る時に泣かせるのを遠慮しちまうんだよなぁ。

581:名無しさん@ピンキー
10/09/01 22:31:54 0NKmjin7

文系の俺には話がさっぱりだ でもパワポケに対する愛は感じて良かった。続き待ってます。

582:名無しさん@ピンキー
10/09/01 23:24:26 ICHLEnfn
なるほど、よくわからん

白瀬可愛いよ白瀬

583:名無しさん@ピンキー
10/09/02 01:18:51 qfQYM/7d
>>610
よく考えると任務の合間の下らない雑談なんだなぁ
8主と白瀬の関係って正にこんな感じな気がする。GJ!

584:名無しさん@ピンキー
10/09/02 12:55:47 DB2Xt2gP
昔SSをたくさん書きに来てくれた名無しの人いなくなったな

585:名無しさん@ピンキー
10/09/02 13:16:21 mOVitho7
今煮詰めてるんだよ

586:名無しさん@ピンキー
10/09/02 14:44:25 QyaRoa30
11スレ目からいた人で2レスくらいでシチュなしのHを書いてしまう人がいたんだけど…
あの人はどこにいったんだろう……

587:名無しさん@ピンキー
10/09/02 14:51:44 wWk4yZmg
まあ、ここもいろいろあったからね
書きたい人が好きな時に書いてくれればいいさ

588:名無しさん@ピンキー
10/09/02 15:25:03 QyaRoa30
トリップだけの人は別のスレに行っちゃったみたいだし…

589:名無しさん@ピンキー
10/09/03 22:31:38 NR4dQcU/
遅ればせながらGJ。
ひとつ分からなかったんだけど、名字だけとはいえ、実在の選手の名前は使ってよかったんだっけ?

590:名無しさん@ピンキー
10/09/03 22:38:24 Gb0icL9j
予備校や親からの呼び出しにもめげずに・・・俺は作品を書きまっす!!
(ただし9以降限定で、とくにさらの作品を書くぜ!!!!!!!!!!)

>>621
たしか肖像権に違反するっすよ。
今すぐ削除依頼してください。

591:名無しさん@ピンキー
10/09/03 23:41:23 RU1u8p32
そろそろ13の情報がでると思うんだがwktk

592:名無しさん@ピンキー
10/09/03 23:56:39 s1bQYcJ6
すみません、二次とはいえやりすぎてしまいました。
情けない話ですが削除依頼の仕方は良く分からないので運営さんにお任せしたいと思います。
wikiには載せない方向でお願いします。

593:名無しさん@ピンキー
10/09/04 00:00:52 Vjf5HxmV
>>621
LRでは実在の人物を登場キャラとしたSSは駄目という感じだったはず

594:名無しさん@ピンキー
10/09/04 00:08:09 9s3niffA
>>624
プロ野球よく知らないけど該当部分を差し替えでいいんじゃない?

595:名無しさん@ピンキー
10/09/04 00:15:05 lMewyZyN
>>624
いまさら削除しても遅いかも・・・
肖像権、著作権違反は免れないですからね・・・

596:名無しさん@ピンキー
10/09/04 00:34:18 MHrCSgTJ
>>624
2ch(pinkbbs)の運営というか削除ボランティアは自発的には動かないよ

597:名無しさん@ピンキー
10/09/04 00:41:53 lMewyZyN
さら「あん、あん」
男がさらのマンコを何度も着く。気持ちよさに昇天寸前!!
小波「うおおおおぉーーーっ!!!!!!」
小波のフランクフルトはすでに爆発寸前だった。
さら「だめ、いっちゃう!」
さらが逃げようとするが小波は逃がさない。
腰を抑えたままよく飛ぶバッドでピストンする。
目指すはホームラン、それ以外は必要ない!!
小波「さら・・・ううううっーーーーーーーー!!」
ど真ん中のボールを打ち返すように中出ししてしまう。
さら「あん、いくっ!」
さらも同じタイミングで行った。

小波「ふうう・・・・・・」
フランクフルトを引き抜く、さらは幸せそうな顔をしていた。
小波「よし、明日も練習頑張るぞ!」

エンド

GJ待ってまうす(真薄)・・・なんちゃって!!


598:名無しさん@ピンキー
10/09/04 00:51:07 lEFaSGz2
削除依頼代行スレで依頼をとってみました。
これでいいかどうかご確認ください、お騒がせしてすみませんでした。

スレリンク(nanmin板:108番)

599:名無しさん@ピンキー
10/09/04 00:56:55 lMewyZyN
>>630
いまさら削除依頼しても遅いかと・・・
まさかこれで罪を免れるとか思っていませんよね!?

600:名無しさん@ピンキー
10/09/04 01:05:14 nvGNJVD2
むしろこちらが謝るべきでした。
>>626のように解決策を示さず、問題点のみを指摘したのは私の軽率な行動でした。
気になった点はたったそこだけですので、実在の選手を連想させないような名字設定をすれば大丈夫かと思います。

私が言えたことではないかと思いますが、続きがまとめwikiに掲載されるのを楽しみにしています。
失礼いたしました。

601:名無しさん@ピンキー
10/09/04 01:07:16 lMewyZyN
>>632
ずいぶんと甘いんですね? もしかして自演・・・?
まあどちらにせよあんたのしたことは犯罪行為だから。

602:名無しさん@ピンキー
10/09/04 01:15:27 MHrCSgTJ
>>630
そこは2chのレス削除依頼だからスレチ
2chとbbspinkは別物

ていうかスレチ(実在人物名)じゃ多分消されない

603:名無しさん@ピンキー
10/09/04 01:15:37 MiazgpRn
なんだいつものか

604:名無しさん@ピンキー
10/09/04 01:31:04 gh9pK3vc
マスター、いつもの…

605:名無しさん@ピンキー
10/09/04 01:48:24 nvGNJVD2
今日はとびきりのブラックが飲みたい気分だ・・・

606:名無しさん@ピンキー
10/09/04 01:49:06 VAudvUbb
>>636 あいよ、つけものだよ

607:名無しさん@ピンキー
10/09/04 01:49:26 lMewyZyN
>>629の感想をお願いします
人、いるみたいだから・・・ぜひお願いします!!!!!

608:名無しさん@ピンキー
10/09/04 01:54:06 MlsOOjW8
>>636
 凸凸凸凸凸   ; ;; ;;;;;;;;;;;;._、_((/λ));;;;;;
 ┳┳┳┳┳    ; ;; ; ;;;;;(<_,` / /.i;;;;;;;;;;;; 
 ┻┻┻┻┻      ; ;; ;;(二二_/_ノ;;;;;;;;;;;;;  
 |凸凸凸∧_∧  ;;; ;;;;;;i:Lions:i;;;;;;;;;;;;;;   
,/:::::::::::::::/⌒ ̄⌒ヽ)'ヽ;;: ;;;i:::::::::::::::i;;;;;;;;;;;;;;;    
 ̄ ̄ ̄/;;;;;;;;;::   ::::ヽ;; | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 
::::::::::::::::|;;;;;;;;;::  ノヽ__ノ: : :::::::: :: :: :           
 ̄ ̄ ̄l;;;;;;:::  / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

609:名無しさん@ピンキー
10/09/04 01:55:12 gh9pK3vc
パワポケ8の曲名的な意味で言ったつもりだった。

610:名無しさん@ピンキー
10/09/04 02:51:26 v9k4bE2y
全然関係ないが「あれ」の「楽しいダンス」はほんと勘弁してほしいよな。
食らうほうはたまったもんじゃないぜ。

>637
俺はすこぶるブラックとにゃんにゃんしたい気分だ

611:名無しさん@ピンキー
10/09/04 11:36:56 x6SCEbb+
ではその隣にいたピンクは自分が貰っていきますね

612:名無しさん@ピンキー
10/09/04 11:55:04 owsomwd0
さら「もうだめ・・・出ちゃう」
小波「もう少し我慢するんだ」
小波はさらに浣腸していた。苦痛にもだえるさら
小波はニヤニヤしながら、
小波「ほら、そろそろ耐えられなくなってきただろ?」
さら「んーっ、んーっ!!」
さらは我慢できなくなったのか肛門を緩める。
プスゥ~、ブリブリブリビチャビチャビチャ!!
あっという間に巨大なウンコをひりだしてしまう。
その臭さに小波は卒倒しそうになった。

さら「はあ・・・気持ちよかった・・・」
さらは気持ちよさそうだった。
小波「へへ、ずいぶんといっぱい出たな」

エンド

613:名無しさん@ピンキー
10/09/04 13:23:02 uGmxmCQD
GJ待ってまうす!!!!!!!!!!(このギャグ推し続けまっす)

614:名無しさん@ピンキー
10/09/04 13:31:54 oghXHe8e
早く新作情報来ないかなー暑いし全裸で待ってるぜ!

615:名無しさん@ピンキー
10/09/04 16:01:26 e+uYho/I
>>646
お、落ち着け!
情報が出てきても発売はたぶん12月だ
何か別のゲームでも楽しんで気長に待ってようや…

616:名無しさん@ピンキー
10/09/04 16:20:10 BP6AM0tu
DSをもっている妊娠なら当然白黒を買うはず。
僕はブラックちゃん!

617:名無しさん@ピンキー
10/09/04 16:43:59 OiuFadvV
思えばブラックと対比するように
ホワイトってキャラがいてもよかったな

618:名無しさん@ピンキー
10/09/04 17:12:13 aZ2BVl66
白はそういう色だが、黒は色ではないのかもしれないbyレッド

ブラックの対比は他のヒーロー全員で成り立ってるから必要ないよ

619:名無しさん@ピンキー
10/09/04 17:15:59 oghXHe8e
ヒーローズにいなかったか?もちろんキャラ付けはないけど
暑いなー茜がいたら暑さ倍増だ、間違いなく。
けど楽しさも倍増だろーなー

620:名無しさん@ピンキー
10/09/04 18:40:49 nvGNJVD2
リコとアイス食べたひ・・・

621:名無しさん@ピンキー
10/09/04 18:53:26 HT45sR0A
また今年もポケモン出るのか
メトロイドといい、今年もパワポケ爆死の予感…

622:名無しさん@ピンキー
10/09/04 18:58:38 gh9pK3vc
ポケモンと言えば
うそなき/だいばくはつ/なきごえ/しおふき
で武美型作ろうとした。…辛くなってやめたけど。  

623:名無しさん@ピンキー
10/09/04 19:43:49 +jH6Zmdg
>>654
だいばくはつはやめろよ…辛いじゃねえか…

624:名無しさん@ピンキー
10/09/04 20:00:24 oghXHe8e
そらをとぶ/こうそくいどう/めざめるパワー/ちきゅうなげ
槍の人微妙すぎっすw

625:名無しさん@ピンキー
10/09/04 20:25:16 VAudvUbb
パワポケのスタッフも買う人はいるのだろうか?
質問コーナーでポケモンの質問に答えてたけど……オニドリル……

626:名無しさん@ピンキー
10/09/04 20:31:15 7v61R/bB
>>644
>>629

627:名無しさん@ピンキー
10/09/04 21:18:58 gh9pK3vc
なげつける/あまえる/ゆうわく/メロメロ でリコとか

はかいこうせん/マグネットボム/のしかかり/てんしのキッス で朱里とか

みちづれ/あまえる/ふいうち/からみつく で漣とか

こらえる/したでなめる/インファイト/どくどく で主人公とかかな。

628:名無しさん@ピンキー
10/09/04 21:32:23 OiuFadvV
>>659
朱里強すぎw

629:名無しさん@ピンキー
10/09/04 21:33:59 UKsKuizU
裏に出る基準って何かわかる?

630:名無しさん@ピンキー
10/09/04 22:19:40 afEiWgSY
スタッフが扱いやすいかどうかじゃなかったっけ?

631:名無しさん@ピンキー
10/09/04 22:28:29 bXZvMyGB
アキミ…

632:名無しさん@ピンキー
10/09/05 22:28:15 QBaJ4bBG
>>657
質問コーナーに質問したいんだけどどうしたらいいかな?

>>659
リコと漣が素敵過ぎです。さらって何だろう・・

633:名無しさん@ピンキー
10/09/05 22:32:14 oWPtDLR7
さらは
天使のキッス/いあいぎり/かなしばり/そらをとぶ
かなあ
脅迫と飛び降り自殺に合った技が思い浮かばん

634:名無しさん@ピンキー
10/09/05 22:51:59 jw6mmav4
>>665
いつき相手に見せたアグレッシブさをわすれてはなるまい
っくろいまなざし
っふいうち

635:名無しさん@ピンキー
10/09/05 23:12:44 rVm0gOpu
フッキーとちゅっちゅする夢見たもう俺死んでいいや

636:名無しさん@ピンキー
10/09/05 23:57:20 QBaJ4bBG
>>665
何かそんな感じですね。天使のキッスとかされたいです。

さらみたいな子に憧れる自分は病んでますか?

637:名無しさん@ピンキー
10/09/06 03:14:18 Ls/p3xWy

ちよ なりきり/うたう/ナイトヘッド/あくむ

五十鈴 はめつのねがい/ダイビング/まきつく/たまごうみ 

寺岡さん おきみやげ/みちづれ/ドわすれ/じばく 

友子 しおふき/はさむ/すいとる/なきごえ 

とかかなぁ…

638:名無しさん@ピンキー
10/09/06 03:32:03 1/3qiZNm
>友子 しおふき



湯田、白瀬「…ビキビキッ」

639:名無しさん@ピンキー
10/09/06 04:17:12 55Ar4MUy
アキミ どろぼう/やどりぎのタネ/かえんほうしゃ/きりさく

アヤカ どくばり/きゅうけつ/かげぶんしん/ネコにこばん

オニザメ ロックオン/あなをほる/みだれづき/ハイドロポンプ

…ゴメンナサイ

640:名無しさん@ピンキー
10/09/06 09:20:23 yMB1BGCO
久しぶりに来たらポケモンスレになってたでござる

641:名無しさん@ピンキー
10/09/06 12:00:49 /dRkigOg
そのうち某シューティングゲームのようにポケモンをパワポケキャラに置き換えたゲームが出るのか
胸が熱くなるな

642:名無しさん@ピンキー
10/09/06 19:47:09 EEClyujt
パワポケ野球人形劇か

643:名無しさん@ピンキー
10/09/06 20:12:06 6uRgqLrf
野球しろwww


もし次の裏サクセスがこれだったら2つ買うわ

644:名無しさん@ピンキー
10/09/06 20:20:39 mRP19D6x
維織さんの話書こうと思ったけど文才なさすぎて書けなかった
先人偉大すぎだろ

645:名無しさん@ピンキー
10/09/06 22:05:52 Ls/p3xWy
維織さんのキャラって何か書きにくいよね

646:名無しさん@ピンキー
10/09/06 22:17:07 /dRkigOg
維「そう・・・」
主「あのー維織さーん?」
維「・・・・・・」
主「(うわぁ・・・完全にいじけちゃってるよ・・・子供だー!)」

647:名無しさん@ピンキー
10/09/06 23:25:10 GGyTThH1
>>673
詳細キボンヌ つか俺シューターなのに全く思い当たらない

STGメインの裏サクセス…じゅるり

648:名無しさん@ピンキー
10/09/06 23:36:15 Kyyc4Iu4
STGだと9裏とか舞台にちょうどよさそうだな

649:名無しさん@ピンキー
10/09/07 00:01:47 Lf4AxZvV
>>679
横からだけど某女の子いっぱいの同人STGだと思う
二つの名前を入れてググれば纏めサイトがトップに出るはず

650:名無しさん@ピンキー
10/09/07 00:17:20 HWJQdp2b
奇遇だ俺も維織さん書いてた
維織さん情事の際の扱い方が難しいな どうしよかなこの人

651:名無しさん@ピンキー
10/09/07 00:30:50 VgVTqDzp
オトメディウスにゲスト出演というのはさすがに無理か

652:名無しさん@ピンキー
10/09/07 22:19:56 TD805gZl
全然関係ないけど、パワポケってグラディウスのミニゲームはあるけど、ツインビーは無いな
なんでだろう?

653:名無しさん@ピンキー
10/09/08 19:11:08 +96o9N08
>>684
グラディウスはSTGとして基本的だからじゃね?
ツインビーは腕ついてたり、敵がアイテム落とさなかったり割りと特徴的だからな

パワポケ13の情報って何か出てたっけ?

654:名無しさん@ピンキー
10/09/08 19:46:25 RrAQH6i1
ああ…もう何日も裸で待ってるのに新作情報は来ない…


655:名無しさん@ピンキー
10/09/08 20:16:16 3qpuMcQH
>>686
いつ情報が来たって発売日はそんなにかわらんよ
気長に待ってようや

656:名無しさん@ピンキー
10/09/08 20:23:00 cMVebMY+
総合スレでやればいいのに

657:名無しさん@ピンキー
10/09/08 22:14:05 O4JcNUxb
エロSSの新作がこないな……
書く人はもういないのかな?

658:名無しさん@ピンキー
10/09/08 22:32:35 pyvcieZ3
なにはともあれだ。とりあえず服を着てくれ

659:名無しさん@ピンキー
10/09/08 23:11:14 RX4x+jHI
>>689
>>676だけど頑張ってるぞ
ただ浪人生なもんで書く時間がないし、初めてで時間がかかってるんだ

660:名無しさん@ピンキー
10/09/09 00:17:02 csTQ6tcz
>>689 そんなにポンポン来るもんでもないだろう。
どうでも良いけどパワプロやってからポケやると「デートで体力回復」が通用しなくて困る。
…弾道は勝手に上がるけど。

661:名無しさん@ピンキー
10/09/09 01:33:08 y2QB3evv
俺も書いているが気分で進みが変わるからなかなか書き終わらない。書く人がいないと思うならいいネタでも出してくれればそこから書く気になる人もいるんじゃないか?

662:名無しさん@ピンキー
10/09/09 22:54:13 jEw2l1pg
12裏をクリアした勢いでイーベルさんが書きたくなる。
しょうがないね、五十鈴も好きだからね

663:名無しさん@ピンキー
10/09/09 23:04:24 Z9bEQj+f
書きたいんだけどネタがなくて困る
モチベ自体は高いんだけどなー

664:名無しさん@ピンキー
10/09/09 23:33:50 csTQ6tcz
ネタはあるが時間がない

665:名無しさん@ピンキー
10/09/09 23:34:07 9M8gaRMI
ぶっちゃけネタを考えるのが執筆の第一歩だと思うんだよね、うん

666:名無しさん@ピンキー
10/09/10 00:06:41 gDNezBKU
完成したので投下します
初めてなんで出来の程は保証できないけどよろしくお願いします

667:名無しさん@ピンキー
10/09/10 00:08:58 gDNezBKU
少し退屈で、少し窮屈だった世界で、私は一人の青年に出会った。
思うままに行動する彼と一緒にいれば変われるんじゃないかと思った。
そんな彼を好きになったのは当然のことだったのだと思う。




「……ねぇ、准ちゃん。」
メイド服に包まれた店員、夏目准。
彼女は活発な気質で客の誰とでも仲良くなれる人間だ。だから私の疑問にも答えられるだろう。
「どうしたの維織さん?」
本に集中していなかったのが意外だったのか少し驚いてるみたいだ。
「……人と仲良くなるにはどうしたらいいの?」
「……えと、最近どんな本読んだんですか?」
本に影響されたと思ったらしいがさすがに心外だ。
「そういうわけじゃない……ただ……」
その先は言えない。たぶん、准ちゃんも小波君のことが好きだろうから。
まぁ小波君を諦めるようなことはしないけど。


668:名無しさん@ピンキー
10/09/10 00:16:51 gDNezBKU
「そうですね、軽いボディタッチは相手が近付きやすくなるらしいですよ?あと会話の内容ですよね。誕生日とか誰でも出来る会話は盛り上がりますし、維織さん誕生日近いですからそこから会話を拡げられるんじゃないですかね?」
ボディタッチに誕生日……
小波君が来たらしてみよう。



669:名無しさん@ピンキー
10/09/10 00:19:00 gDNezBKU

カランカラン

扉の開く音がする。
誰か来たみたいだ。
誰か、といっても、時間帯、足音から推測される歩幅、准ちゃんの声のトーンから考えるに小波君であることは間違いない。
「こんにちは、維織さん」
やっぱり。
「……こんにちは」
とりあえずはボディタッチ……
どうしよう……
……正面に座られたら出来ないし、隣に座ってもらうか。


670:名無しさん@ピンキー
10/09/10 00:22:16 gDNezBKU
とりあえず肩に手を置いて……

ガシッ

「えと、……どうしました?維織さん?」
……逆に手を掴まれた。ゆっくりいきすぎたか。
握手でも仲良くなれるか准ちゃんに聞いとけばよかったな。
とりあえず言い訳して続行。
「……蚊がいた。」
我ながらナイス言い訳
「……もう冬近いんですけど」
無念、どうしよう。
「…………」
「ま、まぁ維織さんがいたって言うならいたんだろうな、うん!」
…………ごまかせた。
後はこのまま会話をすればいいだけ。


671:名無しさん@ピンキー
10/09/10 00:24:36 gDNezBKU
「…………あの、維織さん?」
「……ん?」
「そろそろ離してほしいんですけど……」
「…………いや?」
「いや、年頃の男女が無意味に手をつなg」
「小波君が嫌じゃないなら無意味じゃない」
「…………そうですか……」
さすが私、完璧。すかさず誕生日の話題に移行しよう。
「……小波君、誕生日いつ?」
「誕生日?えと……ハハ……」
なんか困った顔をしてる。複雑な事情があるんだろうか。
「ちなみに私はあs」
「この変態!!」
小波君がオーダーを聞きに来た准ちゃんに叩かれてる。本気で叩いてないあたりやっぱり好きなんだろうな……
「いきなり何すんだよ!!」
「何すんだよじゃないわよ!なんで維織さんの手を握ってるのよ!」
「仕方ないだろ!!こっちだって事情があるんだよ!」
「どんな事情よ!」
「……………………たまたま持ってた接着剤が何故か破裂したんだ。」
「………………保険証ないと行けないもんね?お金貸そうか?…………トイチで」
「変な優しさを出すな!!そして出すなら最後まで出せ!!」


672:名無しさん@ピンキー
10/09/10 00:30:37 gDNezBKU
…………相変わらず楽しそうだな、特に准ちゃん。
でも、どうしよう……准ちゃんを移動させないと喋れない……
「…………准ちゃん、小波君に……ハムサンド20人前」
「はい、わかりました~!」
我ながらナイス機転。
「嬉しそうにするなー!!!」
小波君を無視して准ちゃんが厨房に入っていくのが見える。これでしばらく二人で話せるな。
「……小波君、ありがと。」
「え?なにが?」
「……その、言わないでくれて」
「そのことなら気にしてないよ!たまたま接着剤を持っていたところに蚊が飛んできたんだから仕方ないさ!」
「……そっか。」
「そういえば、さっき何か言いかけてたよね?何言おうとしてたの?」
「…………明後日が誕生日。」
小波君の顔が青ざめていくのがわかる。プレゼントをどうするか困ってるんだろうな。
欲しくないって言ったら嘘になるけど、別に無理してまで貰いたいってわけじゃないし。それに小波君がいてくれることが何よりも嬉しいから。


673:名無しさん@ピンキー
10/09/10 00:31:36 gDNezBKU
「…………明後日?」
「明後日。」
「…………維織さんの?」
「私の。」
そうとも知らずに何を用意しようか困ってる小波君は可愛いな。これからもちょくちょく困らせてみよう。
「用意できるかわからないけど……欲しい物はありますか?」
「こな…………何かが欲しくて誕生日を言ったわけじゃないから気にしないで。」
危うく本心が出るところだった。
「あー、それならいいんだけど……」
優しいな、そうは言ってもよくないって表情してるよ。




674:名無しさん@ピンキー
10/09/10 00:33:29 gDNezBKU
会話も一段落着いたところでちょうどハムサンドができたみたいだ。
「……ハムサンドお待たせしましたー」
……なんかさっきと雰囲気が違う。
…………そっか、厨房で小波君が来る前の会話を思い出したのか。
小波君は自分の為の嘘を付く人間じゃないから、だから手を繋いでるのは私の意思だってわかったんだろうな。
「はい、どうぞ!」
いつもの定型文をいつもとは別の感情で小波君に、でも視線では私に向けてこう言っている。

「恨みっこ無しですよ!」

どうやら強敵になりそうだ。


675:名無しさん@ピンキー
10/09/10 00:34:24 gDNezBKU

その視線の端には何も知らずにハムサンド頬張ってる姿が映っている。
……人の気も知らずにお気楽なもんだ。
…………とりあえずお仕置きと、それから先制攻撃だな
「小波君、やっぱり欲しい物があった」
「……えと、用意できるもn……ん!?」
「これでいい。」
いきなりのキスを目の当たりにして顔を赤らめる准ちゃんに呆然とする小波君。作戦は成功だな。
…………でも顔が熱い。自分からやっといてなんだけど恥ずかしい……
あー……顔熱いし、たぶん顔真っ赤だろうから今日は先に帰った方がいいな。
「…………今日はもう帰るから。小波君も夕飯前には帰って来てね。」
たぶん聞こえてないだろうな、私も心音が大きすぎて周りの音が聞こえないし。
たぶん私が店を出たあとに「デレデレすんなー!!」「俺のせいですかぁー!?!?」なんてやりとりをするんだろう。
でも、恨みっこ無しだもんね、准ちゃん?
あと、女の戦いにしばらく付き合ってもらうよ、大好きな小波君

676:名無しさん@ピンキー
10/09/10 00:44:37 gDNezBKU
以上です!
本当だと誕生日近辺って服がしわになるイベントあるからもっと進展してるはずだけど、そこはまぁお許しください。
あと行数エラーを直すのに必死で>>701>>702の間にあった

「……えと、今日は隣に座ればいいのかな?」
やっぱり不自然か。いつもは向かい合って座ってるのに隣のイスを引いたら不思議に思うのは当然だろうな。
「まぁ維織さんがそれを望むなら隣に座らせてもらうよ!」
さすが小波君だ、優しい。
でもまだスタートラインに立っただけ。実行しなくては。

が抜けてました、申し訳ありません。

677:名無しさん@ピンキー
10/09/10 08:50:41 BP+OzLHO
GJ

678:名無しさん@ピンキー
10/09/10 09:14:24 PDW4wVn5
GJ以外の言葉が浮かばない

後、劣化サラのアルマダは死ね

679:名無しさん@ピンキー
10/09/10 10:13:52 y/PHbT1m
>>710と俺の間に戦争が勃発したわけだが

680:名無しさん@ピンキー
10/09/10 12:04:08 BRoE7r0i
アルマダって誰?

681:名無しさん@ピンキー
10/09/10 17:11:52 46u2Egoc
超乙

682:名無しさん@ピンキー
10/09/10 19:29:46 EuunCMAB
さらのSSはまだでしょうか?

683:名無しさん@ピンキー
10/09/10 19:31:31 znVXjN3s
GJ、よかったよ
なんか久しぶりに投下されたなあ

684:名無しさん@ピンキー
10/09/10 19:42:42 a0akUjc0
ようお前さん達よかったな、13出るってよ!
それぞれ好みに合った彼女との付き合いが待ってるといいな
ここにもたくさん投稿されるような、さ…

685:名無しさん@ピンキー
10/09/10 20:22:00 BRoE7r0i
私は最初から信じてましたよ

686:名無しさん@ピンキー
10/09/10 23:55:41 oFBVh87s

さらのSSなんてこのスレだけで2つ投下されてんじゃねぇか…強欲すぎだろ…

687:名無しさん@ピンキー
10/09/10 23:59:43 4l9iAvym
>>718
さらは至高ですから
8より前の時代遅れのキャラとは違うんです

688:名無しさん@ピンキー
10/09/11 00:22:06 6OWo3t6z
マスター、いつもの

689:名無しさん@ピンキー
10/09/11 01:21:48 YXCv+NJw
ネタ思い付いたんだけど歴代主人公が複数出る場合名前ってどうするべき?

690:名無しさん@ピンキー
10/09/11 01:35:33 RgNWy1LM
何でも良いよ。

一ノ瀬、二宮、三井、四方堂、五宝、六実、七島、八尾、九重、十条、十一屋、十二橋―
みたいに数字入れたりすると分かりやすいし、
逆に全く関係ない名前つけて、地の文でなんとなく誰か分かるようにするのも良い。
作品の雰囲気もあるし、自分で考えるべきだね。

691:名無しさん@ピンキー
10/09/11 01:41:27 Luf6KIzJ
>>719 貴様!のりかを時代遅れとぬかすのか!
そりゃ今だったら間違いなく地雷だろうけど

692:名無しさん@ピンキー
10/09/11 08:01:15 IKDcrPYA
>>722
それなんてあかつき

693:名無しさん@ピンキー
10/09/11 09:32:02 XHW8Z0MK
リン分が足りねぇ……

694:名無しさん@ピンキー
10/09/11 11:27:58 BZC3dGLx
10でさら久しぶりに攻略したけど可愛すぎて死にそう・・

というか何であの子と8の茜はああも可愛いんだろう。

695:名無しさん@ピンキー
10/09/11 11:56:22 hVhI6yW9
>>726
イベント担当が同じ人だからさ
お前さんの好みにピッタシなんだろう
11から手を引いちゃったがな…裏ではまだ健在みたいだが

696:名無しさん@ピンキー
10/09/11 16:39:19 mKGT+5lG
>>727
きっと博多さんはこの2年間でネタを溜め込んでるんだよ
13ではまた書いてほしいなあ

697:名無しさん@ピンキー
10/09/11 20:02:36 YXCv+NJw
彼女視点では書けたのに第三者視点だと書けない(´・ω・`)

698:名無しさん@ピンキー
10/09/11 21:16:17 Ud5uNfJl
朱里とか白瀬とかピンクが好きだな。
これも書いてるひと同じなのかな?

699:名無しさん@ピンキー
10/09/11 22:03:39 hVhI6yW9
>>730
正解…西川さんだよ
シナリオ制作の要で、1からずっと書き続けてる
藤岡さんと並んで、パワポケの生みの親
かなりの軍事マニアで、戦車が大好き

700:名無しさん@ピンキー
10/09/11 22:41:22 ad/AwZWj
その影響がティッガー編とかか
実際あんな狭い戦車の中に男と女がいたらいろいろ起きちゃいそうだよなぁw

701:名無しさん@ピンキー
10/09/11 23:48:48 9tBvu2L0
そんな前フリされたら全裸待機するしかないじゃないか

702:名無しさん@ピンキー
10/09/12 00:11:10 BlrEEwYh
お前は絶対前振り無しでも全裸待機してるだろw

703:名無しさん@ピンキー
10/09/12 00:19:28 InJhzVns
紳士たるものシルクハットと蝶ネクタイは忘れてはいけません

704:名無しさん@ピンキー
10/09/12 01:32:27 TXAWfDjD
「イーベル、君のために新しく装備を合成したんだ。
今日から装備してほしい。」

「ありがとう、パワポケ。
…シルクハット?
別に構わないが、何故こんなものを?」

「昨日恐怖ドゥームズが直撃したらしいよ。」

「それは…トラウマになりますね…」

「顔が真に迫ってるワン…」

   

705:名無しさん@ピンキー
10/09/12 07:10:15 8sFwzdgL
恐怖状態の潜伏コワイ・・・

706:名無しさん@ピンキー
10/09/12 17:21:32 8sFwzdgL
ってか、全裸にシルクハットで蝶ネクタイってどんな羞恥プレイ

707:名無しさん@ピンキー
10/09/12 17:25:40 P25R9Mr0
>>737
正直イーベルになら射殺されても許せる。

708:名無しさん@ピンキー
10/09/12 23:34:32 jYMxh19D
>>738
そうだよな
靴下脱ぐなんて恥ずかしいもんな

709:あだ名の意味
10/09/13 01:42:47 u4dK1eEv
エロなし・需要なしで申し訳ありませんが投下します。
友子グッド後の湯田と白瀬の話です。


目が覚めたら車の中だった。後部座席に座らされているらしい。
頭が混乱している。なぜ自分はここにいるのか。
確か…

「友子…友子~!」

脳裏に浮かんだのは、親友の顔。半分泣きながら、それでも幸せな顔をしていた。
感動の再会、といった感じで抱き合う二人。
…毎日公園で人を待っているのは知っていた。
冬の冷たい雨に打たれながら、凍える風にさらされながら、それでも毎日待ち続けていた。
その想いが叶ったのだろう。
良かった。本当に良かった。これ以上苦しむ姿を見ていられなかった。
だが、見ていて恥ずかしくなるぐらいに二人は愛しあっていた。抱きつき、何回も何回もキスをして…
そのうち、あんなに心配していたのが若干馬鹿らしく思えてきて、少しちょっかいをかけてやろうとしたら、隣に誰かの気配を感じて…
そこから記憶がない。
その時、運転席から声がした。若い女性の声だ。

「あら、おはよう。目が覚めたみたいね。いきなりで悪いけど、ちょっと付き合ってくれない?
…いや、違うわね。付き合うか、今すぐ車から放り出されるか、どっちがいい?」

…選びようがない。。

「付き合わせていただくでやんす。」


710:あだ名の意味
10/09/13 01:43:07 u4dK1eEv
…そんなわけで、オイラは名前も知らない相手と居酒屋で飲んでいる。

いや、「飲んでいる」のは相手だけかもしれない。
なんせオイラが一杯飲む間に三杯ほど流し込んでいる。まるでやけ酒だ。

「…そんなにバカバカ飲んで大丈夫でやんすか?」

「余計なお世話よ。まったく、これが飲まずにやっていけるかってーの!」

どうやらホントにやけ酒らしい。…一人でやってほしかった。

「というか、あんた誰でやんすか!」

「あら、あたしはあいつの同僚。白瀬よ。」

同僚…?野球選手なはずがないし、職員にも見えない。
疑問符を浮かべていたのがわかったのか、向こうから種を明かしてきた。
「ああ、同僚ってのは野球の方じゃないわよ。もうひとつの仕事の方。」

「もうひとつ…でやんすか?」

「ええ。サイボーグ対策室、CCRよ。サ対室とも言うわね。」



711:あだ名の意味
10/09/13 01:44:11 u4dK1eEv

「…そういうことだったでやんすか。確かに普通の野球選手じゃないとは思ってたでやんすけど、
まさか裏社会のエージェントだとは気づかなかったでやんす。
…それで、その元エージェントのあんたが何でこんなところで、普通のプロ野球選手のオイラと飲んでるんでやんすか?」

「だってあいつらが人の気も知らずにいちゃつくからさ、腹立ってね。
で、隣にぼろ雑巾みたいになってなあんたがいてさ、冴えない男だけどまぁいいか、って思って。
あーあ、まったく、誰のお陰で無事再会できたと思ってるのよ!」

さらにお酒が流し込まれる。
結構な量を飲んでいるが、少し顔を赤く染めているだけで、しっかりしたものだ。
…よく見ると、いい女だ。
少し幼さを残す顔立ちに、鮮やかな銀髪。
物憂げにグラスを傾ける姿は、ドキッとさせるものがある。

「…どうしたの?人の顔じろじろ見て。」

「いや…何でもないでやんす。ところで、さっき『無事に』再会できたって言ってたでやんすけど、
あの子にやっぱり何かあったんでやんすか?…爆発事故に巻き込まれた、とか。」

「爆発事故?アハハ、世間にはそう報道されてるの?あれはね、あたしたち、CCRの任務よ。
サイボーグ同盟のアジトの強襲任務。まあ、あながち間違っちゃいないけどね。」

「…! つまり、あの子もサイボーグでやんすか?」

「ええ、そうよ。森さんって言うんだけどね。アジトから逃げたその子を追って、発見して、銃を構えて、
……射てなかったのよねぇ。射つ瞬間にあいつの顔がよぎって、打てなかったのよ。どころか、逃亡の手助けまでしちゃうし…。
…こうして、あいつとあの子はハッピーエンド。あたしは寂しくバッドエンド。わかった?飲んでる理由。」

「…よくわかったでやんす。理由も、…あんたも、好きだったってことも。」

「………ええ、そうね。CCR配属直後からのパートナーで、全能力であたしを上回ってて、
そのくせ少し間抜けで、でも決めるとこはきっちりかっこよくて…。惚れてたんだろうなぁ。向こうはまったく気づいてなかったみたいだけどね。
…そうこうしてるうちに組織はあいつにつぶされて、あいつは彼女とハッピーエンド。あたしは失恋でやっぱりバッドエンド。
ついこないだまであたしにもチャンスがあったのに、あっという間においてけぼり。時間は残酷。」

「でも、あんたが二人を幸せにしたんでやんすよ。自分の恋敵と知りながら、それでも命を救って、二人をくっつけたんでやんす。
…それは正しく、でもとても辛いことだと思うんでやんす。
あんたは優しくて、強い女でやんすよ。
…でも、なにも無理して我慢することないんでやんす。人間泣きたいときには素直に泣いた方が得でやんすよ?」

「アハハハ…、別に泣きたくなんかないわよ。
それに、男の前なんかで泣いたら『やっぱり女は弱い』なんて思われるじゃない。まっぴらごめんよ、そんなの。」

「なら…、なら、なんでそんな辛そうな顔してるんでやんすか?
…無理してるでやんすよ…。」

「心配してくれてありがと。でも大丈夫よ。無理なんかしてません。」

712:あだ名の意味
10/09/13 01:45:34 u4dK1eEv
嘘だ。相変わらず表情にはどこか陰があり、いまだ笑顔を見せていない。
脆いガラス細工のような、一歩間違えば壊れそうなギリギリのところにいるその姿は、おそらく、彼女の理想の『強い女』からはかけ離れているのだろう。
一人の『女』の弱さを、押さえきれない感情を、意地で無理やり押さえつけている。
このまま放っておくと、ともすれば堪えきれない感情を不味い方向に爆発させるかもしれない。どうしたものか…。
すると、
「…ねぇ、あの、さ、一つ願い事、きいてくれない?」

「…なんでやんすか?」
嫌な予感がする。

「…あんたも男よね?」

「見たらわかるでやんしょ?」

「うん、わかる。…あの、さ、なんかもうどうしようもなく空しくてさ、だから…その…あたしとヤらない?
あんた、顔は冴えないけど、話してるといいやつみたいだし。…もういいかな、って思って。」

予感が当たった。爆弾が自分に飛んできた。しかも、単純なボムではなく、地雷のような厄介な物だ。
はぁ、とため息をつく。

「ダメでやんす。」

「…何でよ。きいてくれるんじゃないの?それともあたしに魅力なんか感じないと?!
あーあ、確かに森さんスタイルよかったもんなぁ…。案外あいつもあのスタイルにやられたのかしら。やっぱりこんな女じゃあ…」


713:あだ名の意味
10/09/13 01:47:54 u4dK1eEv
「違うでやんす!」

「な、何よ急に。」

「違うんでやんすよ。あんたは十分魅力的でやんす。


………人は忘れるから生きていけるんでやんすよ。
苦しいことや悲しいことを全部覚えていたんじゃ辛くて仕方ないでやんすよ。
だから、あんたが、あんたが同僚として一緒に過ごした日々が、交わした会話の思い出が、
…想い続けたこれまでの時間が、その全てが今はただただ辛く、苦しい記憶であるならば、
綺麗さっぱり忘れたいのなら、気は進まないでやんすが付き合ってやるでやんすよ。
…でも、よく思い出してほしいんでやんす。本当に辛いだけなのか、
本当になくしてしまいたい記憶なのか、よくよく考えるでやんす。
人を愛する、その感情はできることなら捨ててほしくないものでやんすよ…。」

「…あんた、何かあったの?」

「ああ、ちょっと妹が…でやんす。」

「そう…。…そうね、確かに今は苦しいけど、忘れたくはないわね、あいつとのことは。
…それにしても、さっきのセリフ、ちょっとクサすぎるわよ。顔に似合わず。
アハハハハ…ハハハ…ハハハハ…
ちょっと笑いすぎてっ……ははっ…なみだ、が、
あははっ……ははっ…ひっ……ぅ…ぐすっ、…ばかぁっ…あんまり…わらわせないでよぉ……ひくっ……」


まったく、罪な男だ。
朴念仁で、一人の女の想いに気付きもせず、他人の前で泣かせている。
まあ、そのぐらいは笑って許すのが親友というものだが。



714:あだ名の意味
10/09/13 01:51:37 u4dK1eEv
少し時間が経った。どうやら彼女の『笑い』はおさまっただらしい。

「…『笑わせて』悪かったでやんす。」

「ううん、いいのよ、別に。……ありがと。」

「いいんでやんすよ。それに、笑わせた甲斐があったでやんす。」

「何よ、それ。」

「ようやくあんたの笑った顔が見れたでやんす。かわいかったでやんす。魅力的でやんす。…もったいないでやんすよ。」

「ふふん、それほどでもある、かな。」

少し晴れた表情で答える彼女。やはりこっちの方がいい。

「と、いうわけで夜の方の相手はできないでやんすが、仇はとってやるでやんす。」

「仇?」

「こんないい女をほったらかしにするやつなんて、世界中のモテない男の敵でやんす!
それに、オイラの友人を泣かせ…『笑わせた』罰として、来シーズンはこてんぱんにしてやるでやんす!」

「ああ、なるほど。…がんばりなさい。あたしのためにも。」

「まかせとけでやんす。」

「ところで、いつあたしがあんたの友人になったのよ?」
え?

「…違うんでやんすか…?寂しいオイラの、数少ない女友達が増えたと思ったのに…でやんす。」

「ふふん、どうしよっかな~」
ニヤニヤ笑っている。こっちの反応を楽しんでいるようだ。
「お願いでやんす~、友達になってくれでやんすぅ~」

なぜオイラが懇願しているのだろう。

「アハハ、冗談よ。あたしも友達少ないしね。よろしく。」

携帯のアドレスを交換する。よかった。これで断られたら単なるピエロだ。

「まったく、びっくりさせないでほしいでやんす。ところで、あんた名前は何て言うでやんすか?」

「白瀬よ。さっき言わなかったっけ?」

「下の名前でやんすよ。」

「ああ、芙喜子よ、白瀬芙喜子。」

「ふむ…いい名前でやんすね。芙喜子…芙喜子…」

とあることを考える。大事なことだ。

「…どうしたの?」

閃いた。


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