10/09/05 21:20:05 tgnPQmg/
>>553
野田乙
556:名無しさん@ピンキー
10/09/05 22:56:55 Lf3ZppId
>>554
ネタだったのに・・・
557:名無しさん@ピンキー
10/09/06 00:03:16 6B6OiUXt
>>547
GJ
続きが気になって仕方がない。ゆりっぺルートも見たかったってつくづく思う
ゲーム化キボンヌ
>>553
冗談で言ってても不快に思う人いるからw
558:Wind
10/09/06 00:42:04 pX7ZYhYj
こういうSSっていうのかな?
書ける人ってすごいですね…!
559:名無しさん@ピンキー
10/09/06 01:40:06 65H2NTo8
>>557
ゲーム化ってして欲しくない人とか、やっぱり結構いるのかな?
俺はゲームが出たらそのハードごと買うのに。
560:名無しさん@ピンキー
10/09/06 01:40:48 lS2kuVkH
エロゲー化なら待ってる
561:名無しさん@ピンキー
10/09/06 07:02:32 5Dij8x+S
エロゲ化は声優変わっちまう人いるだろうからなぁ…
562:名無しさん@ピンキー
10/09/06 14:58:38 v9WxokLO
自前のエロゲなら持ってるが
563:名無しさん@ピンキー
10/09/06 15:12:06 ZyvU30/Y
ゆりっぺは草食系
天使ちゃんは肉食系&体育会系
564:名無しさん@ピンキー
10/09/06 18:18:33 65H2NTo8
keyだし、無理じゃ無いよな。リアルに。
565:名無しさん@ピンキー
10/09/06 18:51:29 FCsrNB/e
山のない話ですが勘弁。野田×ゆり書いてみた。
566:野田×ゆり未満
10/09/06 18:52:33 FCsrNB/e
色とりどりの花が咲き乱れている校内の庭園の片隅で、
野田はハルバードを振るっていた。天使と闘うための訓練だ。
水平・垂直斬り、袈裟斬り、突き、を幾度となく繰り返す。
汗の飛び散るその筋骨隆々とした肉体はSSSでも指折りだが、
いざ実戦となるとチャーに引けを取る。椎名には手も足も出ない。
なので当然、ゆりには時間稼ぎ程度の戦力としてしか見られていない。
が、皮肉なことに、野田自身は自分の力に一片の疑念もない。
<いつもの勇姿>をゆりに見せつけるため、今日も励んでいるという訳だ。
そんな、どこか可哀相な彼が構えを変えて斧槍を握りしめたとき、
木陰の奥から聞きなれた声が飛び込んできた。
入江さん、こんなところにいきなり呼び出してごめんなさい!
たぶんびっくりしてるよね、でも伝えたいことがあるんだ。
率直に言うよ。
僕はあなたのことが好きです!
考えれば考えるほど胸が苦しくなるんだ。
入江さんのことを見かけるだけで胸が苦しくなって、
どうしたらいいのか分からなくなるんだ。
ドラムをずんばん叩いている君の姿が焼き付いて離れない。
初めて見たとき、すごく輝いて見えたんだ。
それはきっかけに過ぎなかったけど、
一緒に食事を摂ったことがあったよね、それからずっと、
笑顔も、やさしい声も、なんだか臆病な姿も、
そのすべてにどきどきするようになって、頬が熱くなるんだ。
僕の心はいつも、入江さんのことでいっぱいなんだ。
567:野田×ゆり未満
10/09/06 18:53:34 FCsrNB/e
消えて無くなっちゃいそうな気持ちになる。
けど、入江さんと僕とはSSS以外では接点がないし、
一緒にいるときなんて、思うように話すことができないんだ。
こんな状況がつづいたらどうにかなりそうだよ!
もう入江さんの側にいても、一人でいても、ずっとずっと胸が苦しい。
きっと今までのような関係じゃいられなくなっちゃうと思うけど、
気持ちを抑えておけなくなっちゃったんだ。
自分の都合だけで、しかも本当に突然の告白で、ごめんね。
思いを伝えたからって楽になれるかは分からない。
でもこんな風に思いを伝えられる相手がいてくれて、それだけで嬉しいんだ。
入江さん、僕は誰よりもあなたのことが好きです―
腹から声が出ておらず、とても気弱そうなので、
飯はしっかり食ってるんだろうか、と野田は思った。
そこで思考がそれたのか、いつの間にかハルバードを振り下ろしていた。
そう、自身が昼食を摂っていないことに気付いたのだ。
そしてこのままこの場所にいるのも無粋だということにも。
なので即座にタオルで汗を拭い、シャツと制服に袖を通し、学食へと向かっていた。
左手に斧槍を握ったまま、右手の箸でチキン南蛮をつつく野田に好奇な視線が注がれる。
同席している日向、高松が口々に言った。
「それ明らかに邪魔だろ、食事のときくらいせめて床にでも置けよ」
「常に足でボールを触っているサッカー少年やハンドクリップで握力をつけている野球少年のようですね」
野田は話を聞いているのか、いないのか分からない調子で頷く。
というより食べることに意識を傾けている。聞いていない。
568:野田×ゆり未満
10/09/06 18:54:12 FCsrNB/e
そんな野田を見て日向は気になっていることを投げかけた。
「お前ってホントゆりっぺのことしか見えてないよな」
ぴくりと手を止めた野田であったがぶれる様子もなく答えた。
「俺の視力は悪くない。あの柱に掲示されている献立表だってすべて見える」
ちぐはぐな会話に日向はため息を吐くよりほかなかった。
「メガネが無くても過ごせるというのはなかなかに羨ましいことですね。しかし身体では負けませんよ」
「ふっ、競うまでもない」
よほど自信があるのだろう。高松の肉体もなかなかのものなのだが、それも意に介していない様子だった。
「でもな」日向が煽る。「ゆりっぺは頭悪いやつ嫌いだからな。その点じゃ高松の方がまだ分があるな」
「そうですね。私もあなたも文化系ではありませんがあなたには負けていないつもりです」
「なんだと? もう一度言え」
がたりと椅子から立ち上がった拍子に机にぶつかり、高松のラーメンの汁がトレーに零れた。
どうにも熱しやすい性格のようだ。対照的に、高松は冷静だった。
「何か一冊読書でも始めてみたらどうですか。なんだったら校内新聞を読むことから始めてもいいと思いますが。
もっとも、日常的な知識はそれだけで身につくとは思いませんけれども」
「それ面白いかもな。とりあえずお前が本読んでる姿なんかイメージできねぇよ。竹山から何か借りてみたらどうだ?」
「つまらん」
「まぁそう言うなって、ものは試しだ。あいつならお前にあった本を探してくれるんじゃねーか?
読書ソムリエ竹山に期待だな。……あーでもあいつ電子書籍とか、そういう方に走っちゃってんのかな」
「とはいえ今のあなたがゆりっぺさんに好かれることはおそらくないでしょうね。今までとは違った努力が必要ということです」
「何故だ」野田は断言した。「ゆりっぺは俺を認めている。何故俺が今のやり方を変えねばならない」
そんな野田を軽んじて日向は言った。
「お前そんなんじゃ一生捨て駒だぞ。きっとゆりっぺならそんな風に見るな」
「要するにゆりっぺさんはあなたのことを認めてなんていないということです」
とそのとき、野田が机を激しく叩いた。その拍子に日向のタコライスが浮き上がり、サルサソースとレタスが宙を舞った。
焦りを顕わにした野田は定食もほっぽり、何も言わずに背を向けた。
「おい野田、もったいないだろ。どっか行くにしても食べてからにしろよ」
569:野田×ゆり未満
10/09/06 18:55:06 FCsrNB/e
野田は利き手に移したハルバードの鈍色に光る切先で威圧しながら日向を指した。
「貴様、ゆりっぺが俺を認めていないだと?」
日向は言葉を選ばずに言い放った。
「俺にはそう見える」
高松も同調した。「私も同じ意見です」
納得のいっていない様子の野田だが、まったくの聞く耳を持っていないという訳でもないらしい。
そうか……ゆりっぺが……、などとぶつぶつと呟いたあと、食堂から姿を消した。
彼が立ち去ったあと、日向と高松が感想を漏らす。
「相手はゆりっぺだぜ? 一筋縄じゃいかないことはあいつ以外誰だって分かるようなもんだ。
ただ分かってる連中はゆりっぺにちょっかい出しやしないことだし、ライバルは少ないよな。
俺もあいつのことを一瞬、刹那的には異性として意識したことはあるが、まぁ幸運にも恋愛対象には至らなかったな」
「しかし並々ではない恋ですね。上手くいくと良いのですが」
両名ともゆりが築いている心の壁のようなものを、敏く感じているようであった。
男子寮、竹山の部屋の前にやって来た野田は呼び鈴も鳴らさずにドアノブに手をかけた。
無用心にも鍵はかかっておらず、ガチャリという響きとともに戸が開かれた。
無断であることとも思わず、ずかずかと侵入していく。
六畳一間の約三分の一を占めている二段ベッドが幅をきかせていることが目に付く。
そしてリビングテーブル、本棚、食器棚、衣装箪笥、二つの学習机。これだけでもう目一杯に窮屈だ。
野田はその狭い部屋の奥の本棚に近寄ると、ぎっしりと詰まった本の背表紙をしげしげと見つめた。
竹山がいてくれたなら何かしら薦めてくれたに違いないが、彼がいないのでそうはいかない。
散文、詩、史書、実用書、事典・辞書、ほかにも様々な本が立ち並んでいるがどれを手にとっていいのやら、皆目見当がつかない。
だから、思い切って勘に身を任せることにした。それより方法が無かったとも言える。
本棚の上段の一番右端に収まっている少し怪しげな黒い背表紙の本を手に取っていた。
銀色の文字で『薄紅色の野苺~淫蕩性春白書』と書かれている。
漢字の割合が多いからなんだか賢そうなところと、うすべにいろ、を読めたことが選択された要因だ。
テーブルの上に置かれていたメモ用紙に「竹山へ かりていく 野田」とだけ記し、黒いカバーの本を大事そうに小脇に抱えた。
そしてゆっくりと読める場所を求めて図書室へと立ち入った。(……のだが、追い返された。)
570:野田×ゆり未満
10/09/06 18:56:06 FCsrNB/e
「僕は白……の…らみに顔を埋めていた。彼女は目を…り、…としていた。
舌先を乳首に…わせると、「んっ……んっ……」と…えようとする。
玉…のように白い…部に…し付けた若…が徐々に赤…けて、…り出した」
ここは作戦本部室。図書室で朗読を始めたため、追い出された末に辿り付いた場所だ。
野田はろくに読めやしなかったのだが、ときおり、乳首、だの赤いビロード、だのという語が委員の耳に届いた結果だ。
だがこの作戦本部室とて自由に使用してよい場所ではない。
今は野田とゆりしかいないが、ゆりは野田が何を読んでいるのかくらいは気付いている。
「……な肉花に中指を…し入れ、あえかな木の芽を人差し指で弄ぶ。
それに応えるように彼女は「ああっ、そ、そこ……」と…びながら、
僕の……の実を…で包み込むように…んだ。欲情の…りが下着を…らす」
冷淡な目でそれを迎えるゆり。
「……あたし居るんだけど。それ紛うことのないセクハラだからね」
「なんだそれは。それより、読めない字が多いから手助けしてくれ」
あまりにも鈍感な野田の言葉から、単なる学習なのかと割り切ることが出来たゆりは、少しだけ手伝ってみようと思った。
「と、なに……?
僕は白磁器の膨らみに顔を埋めていた。彼女は目を瞑り、凝としていた。
舌先を乳首に這わせると、「んっ・・・…んっ・・・…」と堪えようとする。
玉葱のように白い臀部に擦り付けた若鮎が徐々に赤剥けて、滑り出した。
(中略)
玲瓏な肉花に中指を挿し入れ、あえかな木の芽を人差し指で弄ぶ。
それに応えるように彼女は「ああっ、そ、そこ……」と悦びながら、
僕の胡桃の実を掌で包み込むように揉んだ。欲情の滾りが下着を濡らす……」
ゆりはそれきり読むと、ぱたりと本を閉じた。
「どういう意味だ。ゆりっぺ」
「野田くん、あなた……」
「本を読むと頭が良くなると言われた。だから竹山の部屋から持ち出した」
571:野田×ゆり未満
10/09/06 18:57:02 FCsrNB/e
「なかなかのセレクトね、でもあなたの意図がいまいち分からないから、もう少し詳しく説明してくれる?」
野田は躊躇無く答えた。
「ゆりっぺは頭の悪いやつが嫌いだと聞いた」
「そうね」
「俺自身はゆりっぺに認められてると思っているんだ。だが日向や高松はそれは勘違いだと言う」
「うん、それ半分正解」
ゆりの即答を聴いた野田は慄きながら問うた。
「俺には分からない。ゆりっぺ。俺は……」
野田は最後まで言い切るつもりはなかったに違いない。
それにしてもゆりにしてみればSSSとして、聞きたくない話だった。
「止めろぃ!! それ以上は言わないでくれる?」
そこで、中途で話が止まった。
けれどその代り、不憫に思ったのか、恋についてのアドバイスを手ほどいていた。
「……恋人が欲しいのならまず自分を愛してあげなさい。
それでも寄ってこないような人は縁がないのよ。放るの。
あなたが幸福でなければあなたの相手だって幸せにはなれないわ。
少なくともあなたが幸せな恋愛を送りたいと思うのならそうすることね」
真面目な顔をして野田は聴いていた。ゆりからこんな話を聞けることは普段まずない。
「気持ちを感じ取る力、想像力といってもいいのかしら。そういったものを鍛えることも大事よ」
ゆりは饒舌に語り始めた。
「たとえばだけど、あたしにとっていいこと、
―あたしの椅子がアルゴノミクスに基づいて作られたちょっとお高めの椅子になったとするじゃない。
するとあたしは快適よ。腰痛の心配はまるでないわ。でも日向くんや藤巻くんは文句の一つくらい言ってくるでしょうね」
572:野田×ゆり未満
10/09/06 18:57:43 FCsrNB/e
滞りなく語る。
「また、あたしにとって悲しいこと、
―不覚にも竹山くんをクラなんとかと呼んでしまったり、高松くんの肉体で吹いてしまったりするとするじゃない。
滑稽だわ。考えただけ胸が痛くなるわ。
そしてユイがそんなあたしを気遣ってもいいのか迷うとするじゃない。それはまさに傷口に塩を塗る行為。
それだけならまだしも、遊佐さんが活動履歴として記録してしまったとする。
後日、日誌に目を通しているあたしがそんな記述を見つけて「ふふっ」と思い出し笑いなんてしてしまう。
それはかなりの恥辱ね。さらに、こんな記録残したりして、ひょっとして遊佐さんってあたしを小ばかにしちゃってる?
なんていう逆恨みさえ抱いてしまうかもしれない」
「つまり……どういうことだ……」
「悪例を持ち出してまであたしが言いたいのはね、人の幸福を自分の幸福のように感じられるように、
人の悲しみを自分の悲しみと感じられるような人になりなさいということよ。間違っても日向くんのようになったらいけないわ。
椅子の例でいえば、『すわり心地のよさそうな椅子だな、でも高貴さが足りないかな。
いっそチッペンデールのような職人でも養成して室内装飾をも込めて椅子作りをさせないとゆりには似合わないよ。
でも待てよ、どんなに華美な装飾もゆりの前ではかすむな。
ゆりが可憐だってことは永遠普遍だから。そうだな、結局はその椅子でもいいな』とか言え、
ということよ。気障ったらしくなく媚びた調子にもならず、心から自然と言えることがポイントよ。
そして最低限の話だけど、
自分が何に対しても自信が持てなくったって、人の話くらいは聞けるでしょ。
相手が苦しんでいるときに話を聞いてあげられれば、最終的にはそれで十分よ。違う?」
「ぐーっ……」
野田は寝ていた!
573:野田×ゆり未満
10/09/06 18:58:54 FCsrNB/e
「って寝るなあぁあああーーーっ! あたしの長広舌はなんだったんだあぁああああーーーっ!!」
ゆりは校長席から立ち上がってつかつかとソファーへと近づいた。
腹いせにソファーに横たわっている野田の右頬にビンタを食らわせた。
ぴしゃり、といい音が鳴った。が、彼は目覚めない。
「お前は眠り姫ならぬSleeping Princeかっ! キスで目覚めたいんか!」
と、ゆりが喚きたてていたその瞬間だった。
至近距離に入っていたゆりのその左肩に、野田の右腕が絡みついてきた。
「うきゃわっ」
無論野田に意識はない。偶然の寝返りで、ゆりの肩に腕をかけてしまっただけに過ぎない。
潜在的にはそういったものもあったのかもしれない。ただ、それを知る術は無い。
だが野田は、ある想いを口にし始めた。
……率直に言う。俺はゆりっぺのことが好きだ。
考えれば考えるほど胸が苦しくなる。
見かけるだけで胸が苦しくなって、どうしたらいいのか分からなくなる。
地下で出会ったあのとき、それからずっと、
笑顔も、強気な声も、ときおり見せる寂しそうな姿も、
そのすべてにどきどきするようになった。胸が熱い。
日向をずんばん突き落としているゆりっぺの姿も焼き付いて離れない。
初めて見たとき、輝いて見えた。
俺の心はいつも、ゆりっぺのことでいっぱいなんだ。
消えて無くなりそうな気持ちになる。
けど、ゆりっぺと俺とはSSS以外では接点がないし、
一緒にいるときは、上手く、思うように話すことができない。
こんな状況がつづいたらどうにかなりそうだ。
もうゆりっぺの側にいても、一人でいても、ずっと胸が苦しい。
今までのような関係ではいられなくなってしまうのかもしれないが、
気持ちを抑えてはおけない。
574:名無しさん@ピンキー
10/09/06 19:00:43 Inmd1OI5
超支援!!!!
575:野田×ゆり未満
10/09/06 19:00:46 FCsrNB/e
自分の都合だけの、しかも突然の告白で、悪い。
思いを伝えたからって楽になれるかは分からない。
でもこんな風に思いを伝えられる相手がいてくれて、それだけで嬉しい。
俺は誰よりもゆりっぺのことが好きだ……zzz
訓練中に聞いてしまった告白の内容をほぼ暗記しており、
金太郎飴ではあるが、自分の気持ちに即して声に出していた。
これが寝言であろうとも、模倣であろうとも、真意であろうと思われた。
あまりにも思いがけない言葉に、ゆりはぴたりと止まってしまった。
なんだか慰められたような気持ちになっていた。
「もうみんな来るから起きてよね。今の言葉はひとまず覚えておくから。
あなたみたいな馬鹿、一人はいてくれないと困るのは確かね」
そう言うと、ゆりは野田のおでこに接吻をしていた。
―それに加えて、肋骨に肘鉄を食らわせた。
「ぐぉほっ」
さすがの野田もこれには目を覚まさずにはいられなかった。
ゆりは清々しささえ湛えた微笑を浮かべた。
「スキだらけね。それじゃあ何の役にも立たないから」
「っ……不覚だ……」
「椎名さんの門下生にでもなってみたら?
ん、でも椎名さんはここのところ音無くんにご執心でそんな時間なんて無いかしら」
「じゃあゆりっぺがメニューを組んでくれ」
「ええー、あたし? そんな面倒くさい。
そりゃ多少は接近戦も出来るけど、あたしに頼るくらいなら自分でなんとかなさい」
「そうだな。今までもそうしてきた。ただ、俺は遠回りをするかもしれない」
「そのときはそのときで考えなさい。今のところは、期待してるわ」
576:名無しさん@ピンキー
10/09/06 19:03:13 FCsrNB/e
―終わりです。正直支援あって嬉しい。ありがとう。
ゲーム化するとしたらいつ頃になるんだろか、あれば待つ派。
577:名無しさん@ピンキー
10/09/06 19:05:20 JIAsygPH
リアルタイムgj!
そして>>574!
空気読んでくれ!
578:名無しさん@ピンキー
10/09/06 19:25:37 c8t/zM4M
GJ
野ゆりサイコー
579:名無しさん@ピンキー
10/09/06 20:18:20 5Dij8x+S
初の野ゆりだな、GJ
580:名無しさん@ピンキー
10/09/06 21:25:29 Inmd1OI5
>>577
あまりに嬉しくてつい。すまん
>>576
じいいいいじぇえええええ!!!
581:名無しさん@ピンキー
10/09/06 23:07:36 r3tLLvxB
ゆりっぺ「野田くん×高松くんなんかいいわぁ~」
582:名無しさん@ピンキー
10/09/07 11:38:50 n7oByXs6
山の上のホテルと音無×遊佐は完結したのかな?
>>576
GJ!
583:名無しさん@ピンキー
10/09/07 14:16:02 2sOjqiFH
山の上は書きかけッス、また気が向いたら書くッス
ゆっさゆさはあれでおわり
584:名無しさん@ピンキー
10/09/07 23:45:33 ReAIHlCF
>>555
野田が漢字書けるわけないだろ?
人のせいにすんな芋っぺ
585:前スレ176改め27
10/09/08 00:12:16 1i36OGl8
ガードスキル『規制解除確認カキコ』
586:27
10/09/08 00:15:01 Qtx7oSwn
少々間隔が開いてしまいましたが、>>31の続き、8話Bパートのギルド跡降下のところのネタの続きです。
大山、直井まで書きました。
大山はなんか性格変わっちゃった感が(というか鬼畜)、直井は天使に一方的に攻められますので、嫌な方はNGお願いします。
-ギルド連絡通路B12-
幾つ目のゲートかもう誰も数えていないがやっぱりゲートがあって、例によって赤目天使が冷たい目で微笑みながらハンドソニックをかざして待ちかまえていた。
「またですか、どうしましょう日向先輩」
「さあて、どうすっかぁ」
そんなやりとりの後ろで、直井が大山の肩を掴み、囁いた。
「さあ、気づくんだ、お前はピエ」
「うわぁぁぁぁぁぁぁん!」
直井の目を直視しないうちに大山は泣き叫び、赤目天使に突進していった。
「僕の椎名さんを返せぇぇぇぇぇ!!」
「催眠術使ったのかお前最低な」
ジト目で直井を睨みつける音無。
「あ、音無さん違うんですよ、言葉のアヤなんですぅっていうか催眠術使おうとしたらかかる前からいきなり」
「アホね」
「アホですね」
「アホだな」
「次は僕がイキますから」
そんなやりとりも知らずして、大山はハンドソニックをかわして赤目天使を押し倒した。
「ひっ」
「僕のっ、僕の椎名さんを!」
馬乗りになって赤目天使の制服をビリビリと引き裂いていく。
「誑かしたのは! この貧乳か!!」
「ひぃっ」
露わになった、微乳という名の美乳を鷲掴みにして責め苛む大山。
「いやぁっ」
半泣きになりながらも、顔が上気してほのかな桜色に染まりつつある赤目天使。
「何だいもう乳首が固くなってるよ、貧乳のくせに生意気な」
「おい大山、なんかキャラ違ってねぇか?」
「何か言った?」
「いや、何でもない」
座った目で戦線メンバーを一瞬睨むと、さらに赤目天使の微乳を執拗に揉みしだく。
「あ…」
「おっぱいを揉んだだけで感じるだなんて、とんでもない淫乱生徒会長様だね」
「い…嫌ぁ」
「嫌だって? 下の口はそうは言ってないよ」
赤目天使のスカートをまくり、薄いグレーのショーツに手を突っ込みぐちゅぐちゅと音を立ててかき回す大山。
そしてショーツからゆっくりと手を抜くと、淫液にまみれて糸を引く指を赤目天使に見せつけた。
「これでも嫌なのかい? 責められて悦ぶ変態生徒会長様は」
「う…」
「変態生徒会長様の下の口の涎で汚れた指を綺麗にしなよ」
顔を背ける赤目天使の口に、無理矢理指を突っ込む大山。
「うぐっげほっげほっ」
むせる赤目天使の苦しげな表情に、どす黒いオーラを滲ませながら、加虐感を高ぶらせていく。
「しょうがないなぁ、淫乱生徒会長様は」
赤目天使の口から手を離すと、今度は腰からナイフを取り出して制服のスカートに切れ目を入れ、そして引き裂く。
「ははは、こやつめ! ショーツがエッチな液体でグチョグチョだよ」
「い、いやぁ」
「嫌なもんか、ますますエロい涎が染み出してきたよ」
半泣きで赤面しながら顔を背ける赤目天使を言葉で嬲り、さらにねっとりと潤った秘唇を指で嬲る大山。
ショーツを引きずり下ろすと、今度は無毛の恥丘から淫核にかけてをじっくりと責め立てる。
「あ…う」
息が荒くなり紅く上気した顔に、涙目の瞳は焦点が合わず瞳孔も開きっぱなし、可愛らしい唇からはだらしなく涎が垂れてきた。
そんな赤目天使の淫惑の表情に、大山がさらに口撃を加える。
587:27
10/09/08 00:16:38 Qtx7oSwn
「エロ生徒会長様ばかり気持ちよくてもしょうがないよ、僕のハンドソニック、しゃぶってよ」
大山はズボンのチャックを下ろし、おもむろに股間のハンドソニックを掴んで取り出すと、赤目天使の頬をぺちぺちと叩いた。
「あ、そうそう、歯を立てたり咬んだりしたらこれだからね」
腰に差した拳銃を抜くと、銃口で赤目天使の頭を小突く。
「うわーやっぱキャラ違うよ」
「まさに外道、って奴ですね」
「なんか言った?」
またまた座った目で戦線メンバーを一睨みすると、股間のハンドソニックを赤目天使の口にねじ込み、頭を押さえつける大山。
「さあ淫乱生徒会長様、巧くしゃぶりなよ」
つぶらな瞳からは涙を、上の口からは涎を、下の口からは愛液を滴らせながら、赤目天使は一生懸命に、股間のハンドソニックという名の猛々しい肉棒を音を立てながらしゃぶり、大山に奉仕していく。
「ん…さすがスケベ生徒会長様、可愛い顔して意外にフェラチオが巧いなんて」
「おふぉふぁひふんひひほはれはふぁは(音無君に仕込まれたから)」
「音無お前、天使に何てことを仕込んだんだよ」
「音無さんそんな女にさせなくても僕がして差し上げます!」
「後で天使に上手なフェラのコツを教えてもらおうかな」
「音無クン、詳しい話を聞かせてもらいましょうか」
「まてまてまて、俺はナニもしていないぞ」
戦線メンバーのそんなやりとりの中、激しい口淫により大山の股間のハンドソニックが一瞬ビクっと震えると、赤目天使の口内に勢いよく白濁液を放出した。
「うはっ出ちゃったwwww流石は生徒会長様、これからはオナホ生徒会長様って呼んであげるよ」
そして賢者モードに入りつつある大山は、ゆっくりと拳銃を握ると、赤目天使にその銃口を向けた。
「でも、僕の椎名さんを奪ったことだけは許せないな。この落とし前だけはつけさせてもらうよ」
「おい待て大山、いくら何でもそれは非道だ-」
音無が止めようとするも、それよりも先に引き金に指がかかる。
「待てっ」
-パンッパンッ-
乾いた銃声が通路内に響く。
「え…」
大山の腹から血が滲みだしてきた。
この直前、白濁液と涎で周りがベトベトになった赤目天使の口から微かに言葉が紡ぎ出されていたことに、大山も戦線メンバーも、誰も気がつかなかった。
赤目天使の口から発せられた言葉、即ち「ガードスキル『ディストーション』」に。
「「「大山ー!」」」
「これは自業自得なのかな」
「ディストーションって撃った方向に戻すことも出来たのか」
「大山先輩って鬼畜の割にあっけない最期でしたね」
「次イキましょ」
腹から滲み出た血の海に沈み気が遠くなっていく大山と、放心状態でへたり込む赤目天使を後に、一行はさらに奥へと進んでいった。
588:27
10/09/08 00:18:01 Qtx7oSwn
***注意***
この先天使ちゃんが天使ちゃんでなく、悪魔ちゃんになります。
あと直井が責められてぐっちょんぐっちょん、浣腸責めでスカトロプレイの直前です。
嫌な人はNGお願いします。
一行がさらに進むと、またまた赤目天使が無表情でゲートの前に一人ぽつんと立っていた。
「音無さん、ここは僕に任せてください」
そういうと直井は、余裕たっぷりの表情で赤目天使に
近づいていき、ハンドソニックがぎりぎり届かないと目測した距離で、立ち止まった。
「さあ、僕の目を見るんだ」
「ガードスキル『ハンドソニック』」
次の瞬間、赤目天使が揺らめいたように見えた。
「「「えっ!?」」」
と同時に、直井の制服が一瞬にして切り刻まれ、床に散っていった。
「うわぁ音無さん!」
思わぬ状況に硬直し、身動きがとれなくなった直井。そんな直井を脇目に、戦線メンバーはひそひそと囁きあった。
「制帽と靴下だけ残して裸にひん剥くなんて、随分とフェチだな」
「女の子みたいに綺麗な肌ですね…なんか微妙に敗北感が…あぅ」
「お前より綺麗かも」
「なんじゃとゴルァ」
「股間のハンドソニックは意外と大きいのね」
「ガードスキル『荒縄』」
まばゆい光とともに空中に出現した荒縄を掴むと、赤目天使は一瞬にして直井を縛り上げ、床に転がした。
「なにをするんだすぐにほどけ僕は神だぞ」
「あー日向先輩、あれって先輩の部屋にあったえろ本に載ってたえすえむの縛り方ですよね」
「まてこら秘蔵のエロ本ってかお前俺の部屋勝手に漁るんじゃねぇ!」
「一瞬にして亀甲縛りとは、恐ろしい娘!」
「あれをガードスキルと呼んでいいのか?」
「おいそんなこと言ってる場合じゃないだろう、誰か助けてやれよ」
「いや、私武器持ってないし」
縄を解こうともがく直井。だが、もがけばもがくほど、その柔肌に縄が容赦なく食い込んでいく。
「貴様、僕の目を見ろ!」
「ガードスキル『アイマスク』」
「なにをするうわやめろ」
「ガードスキル『ボールギャグ』」
「ああっ、音無さんっ助けムググ」
「どう見てもガードスキルじゃないような気が…」
「ガードスキル『ハンドソニックver.4.1a』」
光の粒子とともに、赤目天使のハンドソニックが鞭に変化した。
「あー日向先輩、あれって先輩の部屋にあったえろ本に載ってた女王様が使ってた鞭ですよね」
「いやまてだから俺の部屋勝手に漁るな」
赤目天使は床に転がされて芋虫のようにもがく直井の柔肌に、容赦なく鞭を打った。
視覚を奪われた不安感が他の感覚をむしろ鋭敏にしていくのか、直井は一段ともがき苦しむ。
「ぐっ!うぐぐぅっ!」
その透き通る白い柔肌に、幾重にも赤い筋が刻みつけられていく。
赤目天使のどことなく幼さを残す表情が、次第に妖艶な女の表情へと変わっていった。
「ガードスキル『ボンデージスーツ』」
まばゆい光が赤目天使の全身を包み、そして光の粒子がゆっくりと引いていくと、そこには制服ではなく漆黒のボンデージスーツを身につけた、小悪魔とも言うべき存在が現れた。
「あの体型で女王様の格好、アンバランスさがたまんねぇな」
「日向先輩マゾだったんですね!それならば私がいたぶってあげます!」
「あれもまた天使の内面の一つだというの…?」
「ガードスキル…なのか?」
589:27
10/09/08 00:20:22 Qtx7oSwn
そんなやりとりをひそひそと続ける戦線一同を横目に、赤目天使はさらに直井の股間をブーツで踏みにじる。
「ふぐぅっ!」
男性器を踏みにじられた痛みなのか、股間のハンドソニックへの刺激に対する快楽なのか、直井自身にもどちらともわからない感覚が、股間から全身に広がっていく。
「ガードスキル『言葉責め』」
赤目天使が、直井を蔑んだ目で睨みつける。
「ふふっ、ここを踏みつけにされて喜ぶなんて、とんでもない変態の豚ね」
「むぐぅーお゛ほ゛」
「しかもカウパー液だだ漏れってやつかしら」
さらにグリグリと直井の股間を責め苛む。
「この変態豚、あなたが裏でやっていたこと、すべてお見通しよ」
「う゛う゛う゛」
「陰でNPCに暴力を振るってたことも、そこの芋っぺが私を陥れた時に気がつかない振りをして、漁夫の利で権力を得たことも」
「芋っぺですってぇ!?」
ゆりっぺが食ってかかるが、音無が後ろから肩を掴んでなだめすかす。
「とりあえずここは押さえろ」
そんなゆりっぺを一睨みして、赤目天使は続ける。
「7話以降いつの間にかSSSのアジトに入り浸って生徒会長代行の職務を疎かにしたのにとどまらず、音無君に色目を使ったり」
「相当腹に据えかねているようだな」
「でも、一番許せないのは」
「う゛ぶぅ!」
鞭を握りしめて思いっ切り直井の柔肌を打ち据える赤目天使。
「6話で音無君とお楽しみだったところを邪魔したことよ。中途半端にSSSの連中を痛めつけたせいで芋っぺに音無君を呼び出す隙を与えた。これは万死に値するわ。おかげでせっかくのお楽しみを中断して助けにいかなくちゃならなかった」
「いやそれは単に八つ当たりだろうってか音無お前やっぱり俺らがひどい目に遭ってたときに天使とよろしくヤってたんじゃねぇか!」
「音無クン、詳しい話を聞かせてもらいましょうか」
「音無先輩、ひどいですぅ」
「いやまて、みんな落ち着けっていうか言葉責めはガードスキルじゃないだろう」
内輪揉めを始めた戦線メンバーを脇目に、赤目天使はさらに直井をいたぶる。
「そんなわけで、お・し・お・き」
「ぬ゛う゛ぅ」
「ガードスキル『ローション』」
例によってまばゆい光と共に出現したローションのボトルを掴むと、赤目天使は仰向けになっていた直井を足で転がし、うつ伏せにした。
「あ゛ぶぅっ」
桃尻に一発鞭をかまし、ボトルからローションをドバドバとぶちまける。
尻の割れ目にぶちまけられたローションをねっとりとのばしていく赤目天使。
590:27
10/09/08 00:23:04 Qtx7oSwn
「ふふ、お尻をローションまみれにされて、股間のハンドソニックからもエッチな涎が垂れてるわね。こっちも気持ちよくさせてくださいって催促かしら」
「む゛む゛む゛」
「でも股間のハンドソニックは気持ちよくさせないわよ。お仕置きだから」
ローションにまみれた赤目天使の指が、直井の菊門にふれる。
「あ゛あ゛ん゛」
そしてねっとりと菊門をほぐしていくと、やがて指の動きが止まった。
「!? ずいぶんと緩いケツの穴ね…」
赤目天使の表情が曇る。
「まさか…」
ゆっくりと、そして確実に中指を尻穴に挿入していく。
そして奥まで入れると、中でグリグリとかき回す。
「ひぐぅっ」
前立腺を刺激されたのであろう、一瞬ビクっと反応する直井。
「いい反応だけど…これは…」
人差し指を追加すると、スムーズに入っていった。
さらに薬指を追加する赤目天使。
やっぱりするすると入っていく。
「あ゛あ゛あ゛」
快感でビクビクと戦慄く直井。
「指三本も喰わえ込むなんて、開発済みなのね?」
「あ゛う゛う゛」
「白状しなさいっ、音無君にケツマンコを開発されたのね!」
「音無お前…コレなのか?」
「BL系の同人誌を書く戦線メンバーがいたから、彼女達にネタとして提供しておくわ」
「音無先輩…直井はいいけど、日向先輩は私のモノですからね」
「いや待てお前ら、俺は直井に指一本入れてないぞ」
そんなやりとりも脇にほっといて、赤目天使はさらに続ける。
「どうしても白状しないつもりね、ならばこれよ。ガードスキル『エネマシリンジ』」
まばゆい光の粒子とともに、空中に極太の浣腸器が出現した。
すでに浣腸液は充填済みである。
凶悪なサイズの浣腸器を抱えると、その先端を直井のケツマンコに突き立てる赤目天使。
「む゛ぐぐぐ」
ケツマンコを刺激されての快楽か、それともこれからさらに責め苛まれるであろうことへの期待なのか、本人にもどちらともつかない感覚で、全身を震わしていく直井。
赤目天使がゆっくりとピストンを押して、浣腸液を腸内に流し込んでいく。
直井の腹が徐々に膨らんでいき、しまいにはまるで妊婦のようになっていった。
「ガードスキル『アナルプラグ』」
光の粒子が引いていくと、出現した太めのアナルプラグを掴んで、直井のケツマンコをゆっくりと嬲りながら挿入する。
「ん゛ぶぶぅ」
浣腸液の便意による苦痛と、アナルプラグが前立腺を刺激しての快楽がない交ぜになり、もはや訳も分からず身体を震わす直井。
「どう? 白状する気になったかしら」
さらに赤目天使がブーツでアナルプラグをグリグリと踏みにじる。
「いや、ボールギャグを咬まされて白状もなにもないだろう」
「アホね」
「アホでもいいわよ、コレはお仕置きなんだから」
そういうと赤目天使は、直井の腹をブーツのつま先で小突いた。
「アナルプラグで栓をしてても、あれだけの浣腸液を入れられた上にあんなことやったら、そろそろヤバいことに」
「おしっこならともかく、さすがの私でも大きい方はちょっと…」
「これ以上やるならスカトロスレに逝けとかツッコミが入る前に、次イクわよ」
「直井、後で助けるから耐えてくれ」
「まあ何だ、達者でな」
「う゛ぶぅー、ぶふぅー」
ゴロゴロと腹が鳴って脂汗を垂らしている直井と、そんな直井を蔑むように薄笑いを浮かべながらアナルプラグをブーツでグリグリと踏みにじる赤目天使を後にして、一行は薄暗い通路を先へと進んでいった。
591:27
10/09/08 00:23:53 Qtx7oSwn
以上です。
大山ファンのみんな、すまん。
少しかわいそうかとも思ったんだが、やっぱこういうキャラクターなのかな、と。
罪滅ぼしに、いずれ椎名さんとのラブラブなSSを書きたい思います。
あと直井ファンのみんなもすまん。
悪気はないんだが、普段強気な小僧が一見か弱い女の子にぐっちょんぐっちょんに攻められ涙するというシチュエーションにすげぇ興奮するんで。
ちなみに直井のケツマンコは「音無さんを想いながら自分で開発した」と直井が電波を飛ばしてきました。
あと天使ちゃんごめんなさい。マジごめんなさい。
このあとどう云うわけか本編と違う展開で遊佐、ひさ子、関根、入江が出てくるという電波を受信したので、書いているところです。
ではおやすみなさいませ。
592:名無しさん@ピンキー
10/09/08 06:09:16 68zqaF6A
乙
ある意味すごいよ
593:名無しさん@ピンキー
10/09/08 06:48:46 kNqzDctg
>>591
gっっっっj!!!!!
鬼畜大山サイコーーー!当然日向もあるんだよな?
594:名無しさん@ピンキー
10/09/08 06:57:52 RSPW0hIW
>>591
直井乙wwwwひでぇ
遊佐、ひさこ、関根、入江が出る、だと!?
つか日向の展開が想像出来ないのだが
595:名無しさん@ピンキー
10/09/08 19:24:57 OFLfXEMK
>>591
乙。M直井と鬼畜大山とS天使ちゃんたまんねぇ
確かに日向は想像できないな…ユイにゃんの前で天使を犯すのか
直井みたいに侵されるのか…どっちにしろユイにゃんショックうけちゃいそう
596:名無しさん@ピンキー
10/09/08 22:31:52 kNqzDctg
まじ天使ちゃんにかうぱーきもちいいの?
変態!って言われたい
597:名無しさん@ピンキー
10/09/08 23:56:03 d/MBkwnv
>>595
一緒に犯しちゃえばいいんじゃないかな
598:名無しさん@ピンキー
10/09/09 01:12:12 fcTg1HmX
まさかの3P…
その発想はなかった
599:名無しさん@ピンキー
10/09/09 06:18:19 oUTwlbZJ
あの世界では処女膜破れても
しばらくしたら処女に戻るのか?
傷とかは自動的に治るみたいだし
600:名無しさん@ピンキー
10/09/09 07:37:34 pxdQ/2ZA
ずっと挿入したまんまだったら処女膜がナニに絡みついてくんのか
601:名無しさん@ピンキー
10/09/09 13:43:00 WYX17kox
何それ怖い
602:名無しさん@ピンキー
10/09/09 13:59:20 ukJHpt9z
抜けなくなるのね?
603:名無しさん@ピンキー
10/09/10 02:44:37 jZsAJMGI
身体が服ごとバラバラに切り裂かれても布地を巻き込まず、
ちゃんと一固体の人間として傷が治るから、急速な
自己治癒能力によるものではないよね。
もっと別の力が働いているのではないかと思われる。
だから、他人の臓器同士が癒着することは無いんじゃないかな。
なったらなったで合体したまま学校生活を送ることに・・・
>>602
抜くときにまた処女膜が破れるか広がるだけで済むかと。
604:名無しさん@ピンキー
10/09/10 23:47:37 kBcHv4Xv
そういうときのハンドソニックですよ
605:名無しさん@ピンキー
10/09/11 00:18:30 LC+xkFDa
最近涼しくなったからひさ子と大山も有りかもしれ無いと思い始めた
606:名無しさん@ピンキー
10/09/12 02:42:47 2VBB4cOr
>>605 www
607:名無しさん@ピンキー
10/09/12 14:12:35 aqeSqk7u
天使「バイブレーション」
ヌルッ
ゆりっぺ「あああああ」
608:名無しさん@ピンキー
10/09/12 18:08:54 ZkJnZ+7h
>>607
なにそれ面白そう
609:名無しさん@ピンキー
10/09/12 19:01:26 HHK1f980
天使「Vibration」
ゆり「ひああっ!もぅ、やめ、ふぁああ!」
天使「……やめない」
ゆり「私が、何したって、あひゃああっ!?」
天使「何もしてない」
ゆり「なら、なんで、んはああっ!?」
天使「これから先、するかもしれない」
ゆり「そんな、曖昧な、あぁぁああぁあん!」
天使「だから念のため」
ゆり「ちょ、二本目ってどこに、ちょっと!そこは、らめらってえぇぇぇえええぇえぇぇええ!!」
610:名無しさん@ピンキー
10/09/12 19:07:24 kPnEaJ5b
>>609
GJ
遊佐とかに見られてるんだろうなw
611:名無しさん@ピンキー
10/09/12 19:30:53 k5xef2KX
>>609
ゆり「私が、何したって」
……どの口がそれを言うw
612:名無しさん@ピンキー
10/09/13 06:31:16 H4+PQ+lP
>>609
gj!後ろで野田がハァハァしてそうww
613:名無しさん@ピンキー
10/09/13 16:05:08 x7uww1ZT
かなでから、「この山を越えた向こうに中学時代に死んだ魂が集まる学校が、そのまた向こうに
小学生で死んだ魂の学校がある」と聞き、妹に会えるかもしれないと山越えを決意する音無
614:名無しさん@ピンキー
10/09/13 16:15:18 M8D0prpq
音無「かなでの元へ還り、再びかなでから生まれることで永遠にかなでと一緒にいられるはず」
615:名無しさん@ピンキー
10/09/13 16:48:21 YACwaJe0
>>614
ぬらりひょんの孫乙
616:名無しさん@ピンキー
10/09/14 01:24:09 kTKSynVP
ひさ子と大山をムリに絡めてみた。ソフト路線。しかし長いです。
以下文中の読みづらい語。
あんたん そうりん へんぱ しまおくそく きょうぼく かつぜん けんこん あいたい かくかく かかわらず らつみ
けだし ひんしゅく いささか ひばり そしゃく ふるえる とろける とく ためらう きめ なめらか にゅうし 麻雀用語
617:かなでは興味を持たなかった話 -博打ー
10/09/14 01:25:06 kTKSynVP
仰ぎ見れば、空は雨雲が漂い、天鼓が閃光を放ち、風が猛り狂い、暗澹としていた。
耳を側立てれば、校内の外れにある叢林から、夜鷹の鳴き声が盛んに響く。
偏頗な揣摩臆測が飛び交い、独りきりとなった。友人たちも次第に、未練を解消して消えていった。
彼女はいつしか愛想を失った。
望みとなったのはここで得た役職と、ようやく巡り会えた恩人らしき人物。
しかしそれさえも、見えなくなりそうだった。
喬木は風に妬まれる。ローファーと階段の滑り止めとの接触によって生じた戛然たる音も聞かず、
月色に照らされた乾坤暗き闇のなか、かなでは佇み、靉靆としていた。
或る昼食時、赫々とした一枚の皿が音無の視線に触れた。
油分はそれ程浮かんではいないが、異常に健康に悪そうな料理が皿に盛られていた。
クラス、学年、どころか生徒全体が手を付けないにも拘らず、献立から抹消されない不可思議な一品。
それは食堂のおっさん、おばさんの遊び心によって誕生したメニューか。
価格にして¥300。大手チェーン店の牛丼と同じくらいの価格。その名は麻婆豆腐。
罰ゲームとして成り立つ程の刺激は、山椒による痺れである麻味、唐辛子の辛さである辣味からくる。これらはそもそも
苦味、酸味、甘味、塩味、旨味といった五味とは違い、痛覚に訴えるものであるので味覚と呼んでよいのか疑問であるが、
例外的にその麻婆豆腐に限っては、その麻辣の後に濃縮された何とも言えない味わいがおとずれる。
ただ、その味わいを知っている者はほぼ誰もいない。品行方正なNPC達は手をつけないし、
手をつけるのは、根性試しをする一部のPCや、一部の偏食家くらいなものなので、いつ廃止されてもおかしくない物であった。
「かなでが食べなくなったら幻のメニューになりそうだな」
毎日手をつけているのはかなでだけだということを、音無は知っていた。
材料の維持費もある。需要が無くなれば意外にあっさりと姿を消してしまうのかもしれない、とそんなことを思っていた。
蓋しその通りだろう。と、かなで自身もそうは思ってはいたが、顰蹙して一語も発しなかった。
音無が諷した内容は受け入れがたかったようで、かなではにべもなく目の前にある麻婆豆腐にレンゲをつけ、ぱくぱくと口に運んだ。
618:かなでは興味を持たなかった話 -博打ー
10/09/14 01:25:54 kTKSynVP
だが、音無は皮肉を言いに来た訳ではない。
もしも麻婆豆腐がリストから外れてしまったときのことを考えて、かなでが気に入るんじゃないかと思えるような代替えの品を用意してきたのであった。
「今月から始まったメニューみたいなんだけど、これ面白そうじゃないか?」
音無が掲示した学園大食堂・フードコート、と書かれた食券の中央には、大きな文字で<別品>と記されていた。
今のところ推薦している音無自身も試食していないので、まったくの未知数の品だ。というより券売機にこのメニューがあったのかさえ怪しい。
NPCはもとよりPCたち、日向やユイといったSSSの戦員たちも日頃のメニューで満足しているので、まだ誰も手を出していない。
しかし音無には、玄人限定っぽさを醸し出しているこのメニューこそが、かなでの新たな好みとなるような気がしていた。
「それじゃ引き換えてくるから、ちょっと待っててくれ」
音無は笑顔で食券を手にかざして、まだ混雑しているカウンターの前に縦列に並び、そこそこの時間をかけて引き返してきた。
するとかなでは、寂然としながらも些か興味を示してトレーを眺めた。
「丼もの?」
トレーの左には蓋付きの陶器の丼、右には椀、隅には山椒の小袋が置かれていた。
「何だろうな、期待していいのか?これは?」
見たところ天丼、親子丼、牛丼といったあたりのようにも見えたのだが、山椒が付いているところがポイントだ。
とはいえ、いかんせん、蓋を開けてみるまでは分からない。
音無がひそやかな好奇心を抑えながら間取草紋の蓋をそっと開けると、湯気が立ち昇った。
それとともに独特の甘い香りが漂った。たれの香りだ。
身の側ではなく、焼いた皮の方を表にして、御飯の上に、炭火で焼き上げられた鰻が並べられていた。
「道理でいい値段な訳だ」
かなではどこか嬉しそうにしている音無を横目にしながらも、麻婆豆腐をぱくぱくと口に運んでいた。
もう7割ほど食べ終わっている。そのため、彼女の胃袋はとても空腹とは言えない状態だ。
「かなでも一口食べてみてみろよ。非常時のときのために味見しておいたほうがいいと思う」
「期間限定じゃないの?」
「鰻なんていまや年中食べられる。何も丑の日だけって訳じゃないから。
というより、この世界に季節ってあるのか?」
619:かなでは興味を持たなかった話 -博打ー
10/09/14 01:26:48 kTKSynVP
よくは分からないわ、でも、と前置きをした上でかなでが答えた。
「春の訪れは雲雀が告げてくれるし、夏には瑠璃菊が咲くわ。
秋は空が澄んでいるから星が流れ去るところを見る機会もあるし、冬は……雪こそ降りはしないけど水たまりも凍るの」
「俺が知らないことばかりだな。そうなのか。それもいずれ分かることか。まーともかくはさ、食べてみてくれよ。
いやっしかし不味かったら……うん、まずはじゃ、俺が毒味するよ」
大分腹が減っていたということもあった。なので音無は先に箸をつけた。
四分の一ほどの長さに切り取って、御飯とともに口にかき込んだところで、旨い、と唸った。
未知への期待があったことで、かなでも少しは、食べてみようかな、という気持ちになっていた。
かなでは麻婆豆腐を食した後の赤々としたレンゲをそのまま使用して、鰻の端をちょこんと切り取った。
そしてそれを口に含み、もくもくと咀嚼した。
しばらくはふたりして黙々と顎を動かしていた。そんなさなか、余韻に顫えるような細い声でかなでが言った。
「ほっぺたがおちそうなくらいおいしい」
「そりゃ良かった。試してみた甲斐があった」
「白身魚のように柔らかくて、舌の上でふわっと蕩けて、サッパリしていて癖がなくて、甘過ぎない」
存外なほど称賛していた。
「頑張れば校内グルメレポーターになれるな」
音無は新しい発見を分かち合えた喜びを感じた。
「そういえばさ」
話を弾ませようとして、音無は、最近起きたという事件についての話を始めた。
教室の後部座席には雀卓が並べられ、136牌34種の牌を巡り、冷ややかな熱戦が繰り広げられていた。
当初は、まともに授業を受けていると成仏してしまう可能性があるから、という理由から始められた余興であったが今は違う。
食券分の代金や、時にはそれ以上の金額を賭けるハイレートな賭け事へと変貌していた。
松下はヤマから一枚ツモり、そのまま捨牌にした。
首からぶら下げた手錠を揺らしながらTKが言った。「それポンですね」
620:かなでは興味を持たなかった話 -博打ー
10/09/14 01:27:59 kTKSynVP
白の刻子だ。狙いは単純明快。配牌がよくなかったので、他家に振り込まないように注意しながらさっさと和ってしまおうということだ。
続いて直井がツモった。中盤まで1・9牌がまるで捨てられていなかったので、彼は純金帯の可能性がある。
それに加えてどことなくあざとい直井のことだ、三色・一盃口を絡めてくることさえ考えられた。
対して、藤巻は食いさらしてはいるが、多面待ちで清一色を整えにかかり、テンパイとなっていた。
それから数巡して直井がローワンを捨てたとき、藤巻はやさぐれた風姿には似合ない沈着な声で言った。
「ロン、清一ドラ一。ハネ満直撃っと」
藤巻は算盤を弾くようにして牌を整列させた後、皆の前に広げた。
松下五段とTKがその腕を評した。
「ツいてるな。一人勝ちか」
「これだけ藤巻氏が優勢なのは実に珍しい光景ですね。僕は後半に巻き返したいところですが」
藤巻は穏やかに言った。「まぁ慌てるな、ここからが勝負のしどころってところだからな。ゆっくりと考えろよ」
新たに局を始めようとして皆でジャラジャラと洗牌をした。
そしてヤマを積もうとしたそのとき、直井の蝋石のような白い手によって藤巻の腕が掴まれた。
四人の視線が集中した。
「ふざけた真似はするな、貴様はこの神の目を欺けるとでも思っていたのか?
もっと練習してこい。続けていい手が出ていたからどうもおかしいと思っていたが案の定だな」
そう、直井が見抜いたのはいわゆる<積み込み>だ。ヤマに自分が有利になるように牌を仕組む不正行為だった。
「………」
アンフェアな行為は松下五段をも無言にさせた。
五段は藤巻を肉うどんの食券でパシッ、とはたいた。醜態に拍車がかかった。
「これはオムライスに換えてくれ」直井が憮然として点棒を投げた。
「くそ、俺がこの場所を紹介してやったんじゃねぇか」
「子供だましだ、貴様は馬鹿な真似をしたもんだ。下らない手はもう二度とこの僕の前では使うな」
「藤巻氏、僕は秋刀魚定食二枚分の勘定なのでよろしくお願いしますね」
TKさえも見限って出て行こうとする。それに追いすがるようにして藤巻は言った。
621:かなでは興味を持たなかった話 -博打ー
10/09/14 01:29:04 kTKSynVP
「待てっ、俺もここにはもう用はない、だから飯でも食いに行こう」
だが藤巻は歪んだ笑みを浮かべた直井に恫喝された。
「貴様には残ってもらう」
「何を……する気だ。こんなことしたのは初めてなんだぜ?金は払う」
「見損なわせるな」松下は諦観の念を抱いた。
「五段!頼むから俺も連れて行ってくれ。俺のことはよく知っているだろうが」
後悔を実感し始めた藤巻は次第に狼狽していった。
そこへ、「座れ」と、直井が、蔑みを込めて命令をした。
直井の黒く鋭い眼の色が徐々に赤く染まっていった。
不可視の力が働いたためか、藤巻は彼の目から反らすことが出来ない。
「そう、貴様は泳ぐことがこの上なくスキで堪らない水泳部のホープだ。
まだ先輩や監督には認められていないため、練習せずにはいられない―」
「うく……」
外見上は何も変わらない。だが藤巻の内部に変化が起こった。
ある種の躁状態へと向かっていた。
「そんなことしたらこの人確実に溺れてしまいますって。いくらなんでも酷くありませんか。
赦してあげたらどうです?」TKが擁護する。
「ああ、貴様らならいつもそうして馴れ合っているのだろうが、今日は駄目だ。お礼をさせてもらう」
「気の毒だがどうすることもできんな……」松下も哀れむばかりだった。
彼をよく知っている人からすれば明らかにおかしく見えた。
へっ、と笑う仕草のほか、表情が見られない。
作り物のような顔をしていた。
「記録を塗り替えてやるぜ……」
どこで見繕ったのかも分からないビキニパンツを履き、無謀にも、スタート台の上に悠然と立っていた。
622:かなでは興味を持たなかった話 -博打ー
10/09/14 01:29:58 kTKSynVP
藤巻は記録どころか、足の着くプールでも溺れる素質を持っている。
が、大きく屈伸をした後、勢いよく地獄へと飛び込んだ。
5秒、10秒と潜水が続く。
オリンピックなどで見られるような前へと押し進むような泳法は見られない。台から約2メートルの地点で見事に沈んだままだ。
NPCの水泳部員に救助されるまで土左衛門と化すのであろう、とそう思われたとき、
薄っすらとした褐色の肌を持った女生徒が駆けつけて、迷うことなく助けに飛び込んだ。
プールサイドから藤巻のもとへと力強く泳いでいく。その身なりは制服のままだ。
水難救助の方法としては間違っていたかもしれないが、彼女はなんなく藤巻を引き上げた。
8分かそこら沈んでいた藤巻はもう意識がなかった。呼吸もない。
したがってまず、藤巻をあおむけに寝かせ、額に片手を当て、
もう一方の手の人差し指と中指の二本をあご先に当て、あごを持ち上げて気道の確保を行った。
次に、呼吸の確認をすれども、胸が動いておらず、吐息も感じられない。
なので彼女は、仕方ないか、という様子で藤巻の鼻をつまみ、もう一方の手をあご先ににそえて気道を確保したまま、
いくらか厚みの足りない口辺で彼の口を覆い、空気が漏れないように二度、息を吹き込んだ。
そしてすかさず胸骨を3.5センチほど、垂直に、幾度となく押し下げて、また、人工呼吸へと移った。
そうした活動を献身的に繰り返しているうちに、ようやく藤巻が、かはっ、と息を吹き戻した。
それを見て彼女は言った。
「TKと五段から聞いたんだ。まー間に合ってよかった。ったくなんでまたイカサマなんてやってんだよ。
あんたが負けがこんでたことは知ってたよ。でも勝負ごとを続けるんだったら、自己管理が出来ないやつになるなよ」
今の藤巻には言い返す気力はなかった。
「あーあ、制服びしょ濡れじゃねーか。どうしてくれるんだよ」
張り出した胸も、引き締まった腰のラインも全てが浮かび上がっていた。
「ひさ子……」
「ん、なんだ?話せるのか?」
623:かなでは興味を持たなかった話 -博打ー
10/09/14 01:30:49 kTKSynVP
「相変わらずいいスタイルしてんな」
「……たった今死にかけていたやつが言うセリフかよ」
ひさ子が足蹴にしたので、藤巻はもう一度プールに落っこちそうになった。
それも優しさか。
すっかり言葉を発することが出来るようになっていた藤巻は、今回の件を振り返ってひさ子に呟いていた。
「博打はこれっきりにしようぜ。一緒に止めよう」
「はぁ?」
ひさ子は理解しきれない様子だった。
「何甘っちょろいこと言ってんだよ。仮にもみんな仲間なんだからケツの毛むしるような真似はしないよ。水死は容認してもさ」
「それ怖えぇんだよ」
「今日は救われてよかったじゃないか。二度目は助けないけどさ。
ってかあたしだってTKからたまたま聞くことが出来たからこうしているだけだから」
「ひさ子くらいヤミテン見破ることが出来りゃあいんだけどな」
「アドバイスになるか分からないけど一つ助言してあげるよ。藤巻、お前はテンパイになると急に他家の捨て牌を見始める癖がある」
「それってやっぱ目立ってんのか……」
「なんだ、自覚はあるのか。だったら後は直すように努力するだけなんじゃない?」
「だよな……」
藤巻は横たわったまま、己の技力に失意を感じていた。
「やめとけ」
「今度の集まりはポーカーなんだよね。だったら僕も参加できるよ」
三階の廊下の窓に肘をかけて雲を眺めていた藤巻に、大山が食い下がってきた。
SSSでときおり開くゲーム大会でも大山は常に3位、4位といった好成績を残している。
ダウト、UNO、将棋、人生ゲーム、ジェンガといった定番のゲームをどれも落とすことがない。
神経衰弱や花札などもなかなか強いので記憶力もいいに違いなかった。
624:かなでは興味を持たなかった話 -博打ー
10/09/14 01:31:36 kTKSynVP
きっと大山が加われば新鮮な空気が入り込んで、他のメンバーも触発されることになるだろう。
ところが、藤巻はそれを良しとしなかった。
藤巻はこの間のイカサマ騒動のおかげで、このひと月、一日一食しか食べていない。
仲間同士と言えど案外シビアなのだということを伝えなければならなかった。
「お前はハムスターやミドリガメの飼育とか、そういうのが似合ってる。この世界は甘かねぇ」
「ええーっ、どうして生き物係なの。僕もジャックダニエルとかバランタイン片手にLet' play pokerといきたいよ!」
どうにも自分の腕というものを試したい、という傾向が伺えた。そこで藤巻は、大山の心根を折ることに決めた。
ひさ子、藤巻、直井、TK、松下、そして大山の6人でポーカーをして、力で巻き上げようという魂胆だ。
「そこまで乗り気なら……しょうがねぇ、招いてやるか」
「やった!ありがとう藤巻くん。よーし張り切っちゃうぞー!」
藤巻は無線を取り出すと、すぐさま4人と連絡を取りつけた。
時間は戌の時。場所は男子寮、藤巻の部屋。
4人は前回の騒動を気にはしていたもののトータルとしては得をしていたので、
快くとはいかないまでも藤巻主催のこのゲームへの参加を思いのほかあっさりと承諾した。
「楽しみで仕方ないよ!」
大山の無邪気な笑顔は、譬えれば冬の湖のひと所に、ちらりと太陽が光を落としたような輝きであった。
一方の藤巻はといえば、勝ちにいかなければならないこれからの勝負のことを思い、刻薄な顔付きをしていた。
「ちとハングリーにならないといけねぇかな」
窓の外は晴れやかながら、却って冷笑的であるように見えた。
時は経ち、亥の刻。親は大山だった。
左から順に一枚ずつカードが配られ終えたところで皆に聞いた。
「どうかな」
ひさ子は「やる」とだけ言い、チップを賭けた。
「TKと松下五段は?」
625:かなでは興味を持たなかった話 -博打ー
10/09/14 01:32:18 kTKSynVP
眉根をひそめて二人は言った。「降ります」「降りた」
「藤巻くんは?」
「俺は500と、あと500だ」ワンペアしか揃っていない。完全なブラフだ。
一方直井の手札はエースのスリーカード。なかなかの好カードだと言えた。
だが他者を騙すために手持ちのカードを見ながら逡巡する素振りをしていた。
ひさ子、藤巻、直井はともに二枚交換。大山は「一枚」と宣言をして手札を交換した。
どこかで練習でもしていたんじゃないかと思えるくらい、大山のカード捌きは手慣れた感があった。
そして順に開示していったとき、直井は動揺した。
大山の手がフラッシュだったからだ。これにはひさ子のストレートも及ばなかった。
「……やるじゃねぇか」
藤巻は何事もなかったかのような調子で呟いた。
その割に、自身のカードを人に見られる前にそそくさとヤマに混ぜ込んだ。
「もう開始してから2時間は経ちますね、ここからが本番でしょう」と、TKが頃合を見計らったときだった。
「ちょっといいかな、カードにくせが出てきてる。関根に電話してつまみとカードを持ってきてもらうけど構わないよな」
「ああ、それでいいぜ」
ひさ子の提案を受けて皆で小休止を取ることにした。
これまでの経過を言うと、藤巻の計算は外れ、大山がひさ子を僅差で抜き、トップとして君臨していた。
藤巻の頭の中には、もう一度イカサマをしてしまおうか、という良からぬ雑念がよぎったのだが、
そんなことをしてしまえば、ギャンブラーとしての誇りを失うことにもなりかねない。
それになによりも、他のメンバーにばれるようなことがあれば、さらなる過酷を強いられることは必死だった。
「どうしたもんか……」
何にせよ運と実力と我慢の世界だった。
藤巻は、どうにか大山を突き落としてみせる、とその意志を改めて堅固なものにしていた。
ひさ子が電話を掛けてから20分くらい経ったろうか、
関根がポテトチップやらチョコチップやらと一緒にバイシクルトランプを持参してきた。
滑りがよく手触りが心地いい有名なトランプだ。
626:かなでは興味を持たなかった話 -博打ー
10/09/14 01:33:00 kTKSynVP
「さあ第二ラウンドといくか」
藤巻の掛け声とともに、場が緊張に包まれた。
―依然、大山のツキは落ちない。安定して勝っているということはカードの取捨選択がいいのだろう。
だがこの手の賭け事において一ゲームも落とさない者などはいない。
隙に付け込むように直井、ひさ子が追い上げていた。
おそらくこれが山場になるであろう一番勝負で、大山が引き当てたのはフルハウスだ。
ほぼ勝てるカードだ。大山はチップを5000上乗せした。
勝ち目がないと見るや、TKと藤巻はそのまま降りた。
松下と直井は大山の手札にやや疑問を抱いていたのでそのままコールした。
「今日はもう決まりだね」
すると大山は新たにチップを5000積み重ねた。
これには松下も直井も参ったのか、ドロップしていった。
「ヤマちゃん、強いですねー。初参加とは思えない」
TKはいつも2位、3位になることが多いので若干の余裕があるのか、大山に賛辞を送っていた。
片や、ひさ子は退かなかった。
「コール」
大山はその火照ったような頬に、さっと冷気を浴びせられた。
ひさ子は顔色一つ変えずに大山と同数のチップを重ねた。一騎打ちだ。
TKは畏敬の念を抱いて言った。
「流石ですねひさ子姐さん。貴方が最後の砦です」
そしてカードは開かれた。
大山は…交換なし。フルハウスのまま。
問題のひさ子は……フォーカード。
627:かなでは興味を持たなかった話 -博打ー
10/09/14 01:33:52 kTKSynVP
「ええっっ!そんなまさか」
「いや、ここで来るものなのだな」
松下も驚きの強運だった。
すかさず藤巻が言った。「さ、今の大勝負でお前のチップも尽きただろう。
今日はもうお開きにしよう。それと大山、お前はもうここには顔を出すな」
「ええぇえーっ!どうしてっ」
大山は松下を上回る驚愕の声を上げていた。
しかしひさ子までがこう言った。
「どうしてもだよ。あんたとやってもつまんない」
「残念だよ、そんな……」
「ま、ひさ子の言う通りだ。大人しく聞き入れることにしろよ」
がっくりと肩を落とした大山は悄然としていた。
雀牌も片付けて、菓子も食べ終わり、ひと段落が着いたころには子の刻も近くなっていた。
ひさ子も帰ろうとしていたところで、直井が尋ねてきた。
「まさかでしたね。藤巻さんのみならず、貴方までがイカサマをするなんて」
沈黙が流れた。
「……気付いてたのか」
「はい、関根に替えのトランプを持ってこさせたでしょう。これも子供だましですね。
トランプの端に、小さくマークが書かれていました。多分僕以外は誰も気付いていないでしょうが」
「ちっ……なんでまたお前みたいに厄介な奴に」
「何故ですか? あんなイカサマなんてしなくとも貴方は2位で上がれたはずです」
ひさ子は胸の内を明かした。
「あいつだよ。大山。あいつは大勝ちもするけど大負けもするタイプだ。だから賭け事はこれっきりにさせてやろうと思ったんだよ」
628:かなでは興味を持たなかった話 -博打ー
10/09/14 01:35:06 kTKSynVP
「なかなかの才能だったと思いますよ」
「それは言えるけどね」
大山の今後のためを思い、ひさ子はイカサマに手を染めていた。
これには先ほど藤巻が賭け事で悩んでいたことを目撃したということが影響していた面もあったか。
「お前がどう思うかは分からないけど、あたしがイカサマしたのはこれが初めてだから」
いい訳めいてもいたが、それはひさ子にとって偽りのない言葉だった。
だが有無を言わさず、直井は罰を与えるため、眼を赤く染め、彼女の意識を奪った。
「そんなことは関係ありません。恨みこそありませんが、僕は不正には鞭を打つ主義だ。
貴方にはそれなりの仕打ちが待っていますよ」
そして手首から指先に至る掌を微妙に動かし、独特の技巧を交えて指を揺らした。
「そう、貴方は大山のことがこの上なくスキで堪らなくなった無個性な存在だ。
彼と一緒にいたいという気持ちが高鳴って、抱きしめずにはいられなくなる―」
「うぁあっ……」
外見上は何も変わらない。だがひさ子の内部に何かが芽生えてようとしていた。
彼女自身は無縁だと思っていた感情が呼び起こされようとしていた。
非常灯が灯る閑散とした男子寮の廊下にひさ子の姿があった。
もう日付は変わろうとしていた。
つややかなポニーテールの長い髪先が首元に触れるたびに彼女は息を吐いた。
鼓動が止まらない。何も考えられない。こんな思いは彼女にとって初めてだった。
左右の耳が淡あかく縁取られている様からも火照りが感じられた。
自制心という錘を抱えていながらも、疾く大山の部屋の前に立っていた。
経験のない気持ちに脆くも振り回されていた。
真夜中の寮内にトツトツと二度、訪問を告げる戸の音が響いた。
中からは大山と日向の声がした。
629:かなでは興味を持たなかった話 -博打ー
10/09/14 01:36:39 kTKSynVP
男が叩くような強いノックではなかったので、二人は訝しんでいたようだった。
こういう時に率先して動くのは日向だ。
「誰だよ?」
戸を開けずに訊いた。
「あ、あたし。さっきみんなでトランプやってたんだけどそのことで大山に用がある」
「何だひさ子か。大山のやつ最後の最後で大敗したってくやしがってるよ。ちょっと待ってな」
この時間は寮長が自動販売機の電源を全て切ってしまうので何も買えない。
なのでひさ子はたまに、こんな時間でも飲料水やちょっとした食べ物をねだりに来ることがあった。
とはいえそれはガルデモの活動をしているときの話だ。夜中、一人で過ごしているときは来ない。
だから非常に希なケースだったのだけれど、日向はそれに気付いてはいなかった。
ガチャリと音がして、戸の隙間から大山が顔を覗かせた。
大山はパジャマ姿だった。
「どうしたの?」
「うん、あの……」思わず、躇うような甘える言い方をしてしまっていた。
まるで十二三の少女に返ったかのようだった。
「ここじゃ話したくないから付いてきてくれない?嫌か?」
「そんなことないよ」
室内にいる日向に向けて出かけてくるよ、と言って大山はスリッパを履きこんだ。
大山の上背はほとんどひさ子と同じくらいなので、立ち上がったとき、視線が交差した。
黒い眸の奥にはひさ子の眼が鮮やかに浮かび上がっていた。
5秒ほど、じっと見詰め合ってしまったので、大山は場を取り成した。
「行こっか。……でもどこに行くの?」
「どこでもいいんだ。なるべく二人きりになれるところがいい」
「えー、そんなところどこにあるんだろ?みんな意外と結構起きてるよ?」
「食堂も、閉まってはいても、明かりつけて話しに来てるやつとかがいるか」
「さすがに空き教室だったら誰もいないと思うけど、まさかそんなところ行かないよね」
630:かなでは興味を持たなかった話 -博打ー
10/09/14 01:37:35 kTKSynVP
「……いっそあたしの部屋に来てみるってのはどうだ」
いつもは頼りなく感じる大山の細身の体に、並んで歩いているだけなのに、
その首すじ、その手足から、妙にすんなりとした色気のようなものを感じていた。
「ええぇえっ!それは出来ないよ!
だって起きてる人まだ多いし、時間が時間だから変なうわさでも立ちかねないよ!」
「うわさって?」
「いや、僕が変質者だとか、良からぬ好事家だとか、その、ひさ子さんと付き合ってる……、とかそういうの」
始めひそひそとしていた声がさらに尻すぼみにひそひそとして、最後には何かもかもかとしか聞こえなかった。
「そんなつもりで来るのか?違うならいいじゃないか。言わせたいやつには言わせておけば」
「僕の身にもなってみてよ!こんな時間に女の子と二人きりだなんてただでさえ緊張するのに」
どうやら大山もひさ子のことを異性と―背のすらっとした快活な姿に、それを―認めていた。
恐ろしいことに、催眠術だというのにひさ子の胸は一段と高鳴っていた。
「……別にあたしはここだっていいんだ」
「えっ、じゃあ……ってでもここ廊下だから話をするには……」
と大山が口篭もったとき、ひさ子はふと抱きついた。
均斉のとれた肌理の細かい膨らみの間に、大山の顔は埋もれた。
きわめて豊かで膩かだが、張りがあって硬さもあった。
そして彼女の乳嘴にあたる部分が、制服と下着越しとはいえ丁度頬にあたっていた。
「わっぁぷ、ひ、ひさ子さ……」
いくら乱れようとも深く抱かれていたので、却って感触は強まるばかり。
重みと鼓動とが大山に伝わっていった。
背中には腕が回され、足の間には膝頭が滑らかに滑り込んでかっちりと密着していたため、
大山のパジャマははだけて、ひさ子のスカートはいくらか捲れていた。
髪と汗の匂いの混じった、さっぱりとした香料の香りがしていた。
631:かなでは興味を持たなかった話 -博打ー
10/09/14 01:39:51 kTKSynVP
あまりにも突然のことだったので、大山には性的興奮というものはなかったが、
ひさ子の呼吸は作為的なほど、荒く弾んでいた。
「はぁっ…ぁ……」
が、しかし。
「……あれ…」
「や、止めてよひさ子さん……」
大山がよがりだした頃、ひさ子は理性を取り戻した。
「……てめー、何してんだ」
「…ぁ…ぇ……えっ!」
状況証拠的には、結局は男と女なので、ひさ子が襲われているように見えた。
最悪のケースとして受け取って見れば強姦未遂だろうか。
催眠術によって創られたひさ子の欲求は、抱きしめたことで自然と解消されていた。
訳も分からないまま連れ出された末に嫌疑がかかった大山は空しい存在だった。
けれども、存分にひさ子の胸に埋もれていたのだから、天秤では計れない。
彼はむしろ無数の痣と引き換えにいい思いをしたのではないだろうか。
さて、この一件がもたらしたものは何か―
大山は賭け事の味を知ったが、最後にはあのような目に遭ったので、賭け事からは一切身を引いた。
ひさ子はイカサマをしてはいけないということを学んだが、これをきっかけとして大山に興味を持った。
物事は実に、どのような方向に転ぶのか分からない。
直井は、むやみに催眠術を使うものじゃないということを知った。藤巻に知らしめられて。
この一件がもたらしたもののなかでも、もっとも怖いものは風聞だろうか。
632:かなでは興味を持たなかった話 -博打ー
10/09/14 01:40:46 kTKSynVP
音無は伝え聞いたところを語った。
「詳しくは知らないんだけどさ、賭け事で揉めたか何かで大山がちょっとおかしくなっちゃって、
ひさ子を襲おうとした事件があったんだって」
「そう……」
かなでのリアクションは微々たるものだった。どことなく重苦しい。
「でも人によっては見方が違うみたいなんだ。
TKや五段は大山は確かに負けたけど、そこまで落ちたことをするとは思えない、って言うし、
直井なんかはあれには理由があるんですよ音無さん、とか含みをもたせてたしな……
まぁでも、当事者のひさ子なんかはもう水に流しちゃってるみたいだからなんてこともなかったのかもな。
大山自身は深く傷ついている上にゆりから罰を受けてるみたいだけど」
「事実だとしたら報いは受けるべきだと思うわ」
「俺は大山はそんなことするとは思えないんだけどな。帰ってきたら訊いてみることにするよ」
「それがいいと思うわ」
「とは言っても、拘束衣を脱いで監禁室から出てくるのは三日後くらいになるかな……」
「そう……」
気が付けば、かなではいつも通りに麻婆豆腐をぱくぱくと口に運び、一皿を終えていた。
633:名無しさん@ピンキー
10/09/14 01:41:31 kTKSynVP
なんか長い割に物足らないかもしれないけどこれはこういうものということでよろしく
634:名無しさん@ピンキー
10/09/14 05:00:38 WCZJx5vv
TKが……喋っt「GJ!」
635:名無しさん@ピンキー
10/09/14 06:32:16 2zTyQjV8
>>632
お前ええええええええええ!!!!!
俺の願望を具現化するとは・・!!!GJGJGJGJGJGJGJGJGJGJGJGJ!!!
636:名無しさん@ピンキー
10/09/14 20:44:52 NFhdZgDN
>>633
ちょwTKww
gj
637:名無しさん@ピンキー
10/09/14 22:35:43 igExRgBx
馬鹿TKの英語は意訳されて書かれてるんだよ
TKが喋るわけ…ないよ…ねぇ?
638:名無しさん@ピンキー
10/09/15 02:20:54 zytVMCES
ひさ子の胸にはさまりたい
639:名無しさん@ピンキー
10/09/15 18:41:58 SHuatkt6
TKキャラコメで普通に喋ってなかったか
640:名無しさん@ピンキー
10/09/15 18:47:29 Ytwmk3us
転生して日向がとうとうユイを見つけたと思ったら
音無とすでに付き合ってました的なの頼む
641:カレナック
10/09/15 21:22:47 wWKrLRNp
たのむ
642:名無しさん@ピンキー
10/09/15 22:19:50 lr82rAYi
>>638
`¨ - 、 __ _,. -‐' ¨´
| `Tーて_,_` `ー<^ヽ
| ! `ヽ ヽ ヽ
r / ヽ ヽ _Lj
、 /´ \ \ \_j/ヽ
` ー ヽイ⌒r-、ヽ ヽ__j´ `¨´
 ̄ー┴'^´
643:名無しさん@ピンキー
10/09/15 22:23:34 cHtPqwPE
ひさ子と出会い頭にぶつかって倒れこんでひさ子の乳に埋もれて平手打ちされたい
644:名無しさん@ピンキー
10/09/15 23:01:28 lr82rAYi
>>643
俺は太ももにつかまりたい
645:名無しさん@ピンキー
10/09/15 23:34:50 SExhac/1
>>640
つまりはこういうやつか?
イメージと違っていたら悪いな。
やっつけですまんww
5レス程度失礼します
来世で日向が窓ガラスパリーンしたけどユイは音無と付き合ってる設定で。
何だが残念。エロ無で残念。
646:①
10/09/15 23:35:47 SExhac/1
パリーンッ
「やべえ……やっちまった」
俺の打ち上げたファウルボールが近所の民家にダイブしていった。
これが本当のホームイン! なんて上手い事を言っている場合ではなく……。
最悪の状況に思わず冷や汗がでる。
それなのにどこか胸が弾んだ気がした。
どうしてだろう、俺はずっと前からこうなることを知っていた気がする。
いや、望んでいたのかもしれない。
つまり俺は、怒られる恐怖より理由もわからない期待を胸に、その家のインターホンを押したのだった。
『……はい?』
若い女性の声。
「あ、あのすいません、先程こちらに野球ボールが飛んで来たと思うんですけど……」
事情を話すとその女性は俺を咎めることも無く出てきてくれ、
どうやら娘さんの部屋の窓ガラスを割ってしまったということで謝るために家に上げてもらった。
「ユイー、ボールの持ち主さんが謝りたいっていらしてくれたわよ」
「へ? あ、うん。いいよ」
少し戸惑ったような了承の声が聞こえて、俺が部屋に入るとベッドに横たわった少女が照れたように笑って俺を見ていた。
「……あ」
なんだ、これ……?
既視感とは違う。けど俺はこの子に、どこかで会ったことがある―?
まだ日が高いというのにパジャマ姿の少女。
風邪でも引いているのかと思ったが、普通の家ではあまり見ない特殊なベッドと、その脇に置かれた車椅子がそうではないと否定してくれた。
「…………」
「…………」
って、謝りに来て俺は一体何をしているというのか。
「……すいませんでしたっ!! 怪我とかはないですか?」
「……大丈夫。ねえ、野球、やってるの?」
少女はそんなことよりもと言った感じで目を輝かせてくる。
その手のひらには先程俺がかっ飛ばしたボールが乗せられていた。
647:②
10/09/15 23:36:49 SExhac/1
「ああ。野球好きなのか?」
「はいっ、テレビでしか見たこと無いけどいつか生で見てみたいなって」
少女はよく喋る奴だった。
何年も野球をやっている俺にだって匹敵するくらい熱心に語ってくる。
そして頭の作りがちょとアレなのか、話は気づくと全く違う方向へと脱線していた……面白い奴だ。
「じゃあ今度さ……って、名前なんて言うんだっけ?」
「え? あ、ユイっていいます」
「ユイか。俺は日向な、好きに呼んでくれていいぜ」
少女、ユイは日向さんと呼んだ。さっき知ったことだが年下らしい。
何だかもっと違う呼び方をしてくれる様な気がしていたので、少しばかり固い呼び方がむず痒かった。
しかし、他にどんな呼び方があるというのか……。
随分とユイと話こんで、そう言えば練習の途中だったじゃねえか、と思いだした頃、
「よう、悪い遅れ―ん?」
「あっ」
「うおっ」
「あら、音無くんこんにちは」
三者三様の反応で俺達はその人物を迎えた。いや、俺は迎えていないが。
突如見知らぬ男が部屋に入ってきた。
俺自身ここに来るのが初めてなので知っている人間が来るはずもないわけであるけれども。
年は俺と同じくらい、優男と言った感じで割とイケメンだ。
「だ、誰ですか?」
当然だがそいつは俺を訝しい目で見てきた。
「さっきねあたしの部屋に野球ボールが入って来てね、その持ち主さん。日向さんって言うの」
ほらあそこ、とユイの視線の先には俺が割ってしまった窓ガラスが応急処置と言うことで貧相な姿になっていた(因みにそれをやったのは俺である)
「おいおい、怪我はなかったのか?」
「うん、大丈夫だよ」
心配そうにユイに駆けよるその男にも俺はすいませんでしたと謝る。
何だか二人の関係は特別なように思えだからだ。
648:③
10/09/15 23:38:02 SExhac/1
「こちらね音無くん、ユイの彼s」
「ち、ちがうよお母さんっ、音無さんはそんなんじゃないよ」
「違うのか?」
「え? ち、違くな……うぅ……」
音無と呼ばれた男の問いに頬を赤くするユイの姿。
やっぱりなぁ、と心の中で呟きながら、この空しさは如何なものかと自問自答を繰り返していた。
今日出会ったばかりの少女に彼氏がいたからなんだというのだ。
あれ? 俺もしかして結構ショックを受けて―
「音無です、よろしく」
「あ、ども、日向です」
何だかよろしくされてしまったので俺はそれに答えてもう一度考える。
しかし俺のちっぽけな脳みそは答えを出してくれなかった。
***
練習は仕方ない今日はサボろうと覚悟を決めて、ユイと音無と喋りだすこと数時間。
二人とも初対面とは思えない話やすさがあり、俺はずっと前から一緒にいる友人と話してるような、そんな気分になった。
音無は医者を目指しているらしく、研修体験で行った病院で、たまたま来ていたユイと知り合ったそうだ。
まあ見たところ、二人は両想いなんだろうな。
「俺そろそろ帰るわ、この後監督に怒られるだろうし」
「そうか……また来いよ。おまえがいるともっと楽しい。なあユイ?」
「はいっ」
「……おまえ、『コレ』なのか? つーか待てよ、どう考えても俺邪魔じゃねえか」
「そんなことないですよ。忙しくなかったら、ぜひまた来てください」
八重歯を見せてはにかむユイが妙に眩しくて、その笑顔を見ると心からそう思っているのだと感じられて、
「……ああ、わかったよ」
頷いてしまっている、自分がいた。
それから、主に部活が無い日にユイの家へ顔を出すようになった。とは言えユイと音無の邪魔にならない程度に、だ。
俺とユイは結構気が合って、音無には理解できないが二人で盛り上がれるような話題があり、
そんな時は馬鹿みたいだが嬉しかったりもした。
まあその後は呆れたような音無に、俺が謝るのが常だったわけだけど。
本来なら邪魔者である俺の存在を、二人は気にすることなく受け入れてくれた。
それが嬉しくて、俺は……。
そうだな、少しだけ深入りし過ぎちまったんだろうな。
649:④
10/09/15 23:39:20 SExhac/1
「おまえさ、なんかやりたいこととかねえの?」
ある休日。
練習の無い俺がユイの家を訪れるとその日は音無は来れないらしく、
おばさんも少しだけ用事があると数分前に出て行ってしまった昼下がり。
「やりたいこと?」
「ああ、あるだろ? 言ってみろよ」
そんなことを言い出したのは単なる気まぐれみたいなものだったが、
俺はユイに願った夢を出来るだけ叶えさせてやりたいと思ったのだ。
それは決して俺がしてやることではないと分かっていたけれど。
「うーん、プロレスかな」
「プロレスぅ!?」
いきなり無理難題が来てしまった。
ユイは幼い頃の事故が原因で歩くことや立つことはおろか、首から下を動かすことさえできないのだ。
「それもジャーマン!」
「ジャーマンだと!?」
「うん。あとサッカー5人抜きでしょ、それにフェンス越えホームラン。バンドもやってみたいなぁ」
「……大量だな」
「だって、言うだけなら自由でしょ。どうせあたしには、何も叶えられないんだから」
……あ、と俺が情けない声を出すのと、ユイが少しだけ俺から視線をそらして
枕に顔を埋めてしまうのはほぼ同時だった。
「そんなこと……ねえよ。ほ、他にはねえのかよ?」
「実はさ、ここまでは音無さんにも言ったことあるんだ」
「音無に?」
「うん。でもね、ひとつだけ音無さんには言えなかった願い事があるんだ」
「なんだよ?」
俺はそれを少しばかり軽い気持ちで訊いてしまった。そして直ぐに、後悔した。
650:⑤
10/09/15 23:41:22 SExhac/1
「結婚」
「…………っ」
たった一瞬だったけれど、息がつまった。
「それこそ音無が、いるじゃねえか」
「へへへ……」
どうしてそんな悲しそうに笑うのだろう。
「あたし何も出来ないもん。何もしてあげられないもん。迷惑かけるだけだから言えないよ」
「…………」
そんな風に幸せを否定して欲しくない。
『神様ってひどいよね。あたしの幸せ、全部奪っていったんだ』
―だから、そんな風に自分の幸せを……そんな風に? これは、何の記憶だ?
思いだせない、思い出せないけど、俺は、俺は―
「俺が」
「……?」
「……その夢、俺が叶えてやんよ」
「へ?」
「って言ったら?」
「……な、な……」
ユイは顔を少しだけ赤くして、その顔を覆おうとしたが両の手を動かすことは出来ずに、そっぽを向いてしまった。
出かけていたおばさんが帰って来たのか、下から物音が聞える。
「はは……冗談に決まってんだろ。おばさん帰って来たみたいだ、俺帰るわ。
さっきの、音無に言ってやれよ。ちゃんと答えてくれるぜ?」
こんな風に答えるつもりではなかったのに、本音を言ってくれたユイを結果的にちゃかすことになってしまい、
俺はきっとユイを傷つけた。
本気で答えることなど出来ないのだから、深入りをするべきではなかったのだ。
だから今にも泣きそうに唇をかみしめたユイの顔を、俺はまともに見ることなど出来なかった。
ああ、馬鹿だ。
「……日向さん、また来てくれる?」
「なんで、俺に訊くんだよ」
「…………」
「じゃあな」
651:⑥
10/09/15 23:42:40 SExhac/1
「日向……?」
「お、音無!? おまえ、来られないんじゃなかったのか?」
「いや、時間が出来たから来たんだ」
急いで来たのか、額からは汗が噴き出ていて暑そうだった。
本当に音無はいい奴だと思う。
「日向どうした? 気分悪いのか?」
「んなことねーよ。俺は帰るけど、ユイが待ってんぜ?」
頬をかきながら笑った音無を見て思う。こいつならきっとユイを幸せに―
その日以来、俺はユイの家に行くのを止めた。
甲子園が近いなんて理由は建前で、本当はそうじゃないことをユイだけは知っているはずだ。
遠い記憶の中で何か大切な約束をしたはずなのに、思い出せない。
END
以上
なにこのひどい出来……目汚しサーセンでしたノシ
夏も終わるからひさ子さんもアリかなって思う。
652:名無しさん@ピンキー
10/09/16 00:28:16 yWBWANpZ
>>651
GJ!
こういう現実は甘くないって感じのもいいね
653:名無しさん@ピンキー
10/09/16 00:50:27 ShkYXDtp
GJとしか言えない。うまー
654:名無しさん@ピンキー
10/09/16 03:42:43 6INcmM3c
切なくていいな・・・GJ
655:名無しさん@ピンキー
10/09/16 04:43:33 MERt9dKZ
え?用意してた?
ってくらい出来が最高だな!
GJ!
656:名無しさん@ピンキー
10/09/16 06:03:18 ShkYXDtp
>>640の話俺も書いてみた。7000字ほどになった。
自分を卑下するわけじゃないけど正直>>645の方がいいと思った。
657:名無しさん@ピンキー
10/09/16 06:04:14 ShkYXDtp
高校卒業とともに、地元の公的機関が主催している訪問介護員の養成研修講座に通った。
介護福祉士になることも考えた。けど、あの世界の出来事がただの夢じゃないのなら、
ユイは施設じゃなくて、自宅で母親に介護を受けていると思った。
だから、その手助けが出来るような最善の道を選んだつもりだった。
下半身不随でもなんでも治してやれるような医者になれたら、とも思ったけど、
俺にはその学力もなかったし、家には金もない。
東大なら学費の免除もあったとは思うが、そんなところへ行くなんてのは夢のまた夢だ。
ハンデを抱えているのは本当は俺の方なのかもしれないだなんて、
あいつの苦しみと比べてはいけないような皮肉を口にしたこともあった。
この仕事をやっていく上で、絶対に言ってはいけないことだ。
元が野球馬鹿だから、だとか、自分を揶揄するような否定的な言葉が頭をよぎるたびに、
あの世界でのことを思い出すようにしていた。
俺がちょっかいを出すとむきんなって当たってくんだ、あいつは。
歌が上手くて、背がちっこいくせにライブでは一番目立ってて……
その頃の俺の支えや動機は過去を回想することだった。
現実が! …生きてたときのお前がどんなでも、
俺が結婚してやんよ!! もしお前が、どんなハンデを抱えてても
ユイ歩けないよ? …立てないよ?
―どんなハンデでもっつったろ!!
研修を終えるとともに2級の介護員となり、主催団体の末端の職に就いて1年の実務に携わり、
それからさらに1年近く研修を受けて、ようやく1級の訪問介護員となることが出来た。
658:名無しさん@ピンキー
10/09/16 06:04:51 ShkYXDtp
世間的にはそれほどの難度ではないとは言われてはいるものの、
俺からすれば素人登山家がモンブランに挑戦するようなものだった。
なるからには担当するひと一人一人の手足となると誓って、一歩一歩あゆみを進めた。
初めは身体に障害を抱える人にとって何が不便なのかなんてまるで分からなかった。
そう、俺は健康だったし、身内に要介護者もいなかったからそういった世界とはまるで無縁だったんだ。
それは始めてからすぐに気付いたことだったが、中々感覚は掴めなかった。
目の見えない人には具体的に言った方が良いんだな、とか、
車椅子の人でも使えるトイレって意外と少ないな、とか、
エレベーターに鏡が付いているのは車椅子の人が後ろ向きで出る時に後方を確認するためだったのか、だとか、
俺はちょっとしたことを少しずつ学んでいって、なんとか登頂の足がかりにした。
まだ21だけど、高校を卒業したばかりのときの自分と、今の自分とでは目に映る世界が違う。
今は己の裾野を広げようとすることが当たり前のようになっていた。
まずユイに出会ったら、そのことだけでも感謝しないとなって思ってたんだ。
もしお前のことも忘れて、大会に出場でもしてたら、またセカンドフライを捕り損ねてたかもしれないしな。
退部するときはそれなりに苦労もしたし、
まだ野球への熱意もあったけど、
それを諦めてでもこの道を選んで良かったって、そう思えてる。
※ ※ ※
「ご苦労様、私も日向君のおかげで大分この生活に慣れてきたよ」
「不自由な思いをされていると思います、俺で良かったらいつでもこき使ってください」
「それなら……買い物を頼まれてくれるかな」
「それくらい余裕ですよ」
時間がない、とは言わなかった。
659:名無しさん@ピンキー
10/09/16 06:05:47 ShkYXDtp
立場も変わり、それなりの顧客数を抱えていたので本当のところ、飯を食う暇もない。
けど寝る時間を削れば、なんとかなるもんだということを俺は最近知った。
「私に孫娘がいるのは聞いているね、実はその子の誕生日がそろそろなんだ」
「プレゼントですか、それは喜ばれるでしょうね」
「そうそう、そうなんだ」
爺さんは口の端を伸ばしてにんまりと微笑んだ。
庭先の散歩でも、この人にとっては自由なひと時だ。とても喜んでくれる。
誰かのために働ける。これは何物にも替えがたいことだった。
俺は前輪を持ち上げるためにハンドクリップを深く握り、
あまり車体が傾かないように気を使って、
ティッピングレバーを踏み込んで、わずかな段差を乗り越えた。
「私は時計がいいと思っているんだ、シラーはこう言った。―<時>の歩みは三重である。
未来はためらいつつ近づき、現在は矢のようにはやく飛び去り、過去は永久に静かに立っている、と」
「過去は永久……ですか」
「そうだろうね、私は時計を贈ることで彼女にこういった形のない物を贈れると思っている」
もう何年経ったろうか。
俺はSSSの誰ひとりとも巡り会うこともなく、今を過ごしていた。
過去は永久、そう言われてみればそうなんだろう。
たとえこれから誰とも出会うことがなかったとしても、俺はあいつらを忘れない。
「どうしたのかね」
「いえ、なんでもないんです」
訊けば爺さんの孫娘は俺と同じくらいの年齢だという。
それもあって、自分のセンスより、君の若いセンスで選んで欲しい、と言ってきた。
彼女にでも贈るつもりで、とまで付け加えていた。
そこで俺はふと自らの半生を振り返った。
660:名無しさん@ピンキー
10/09/16 06:06:20 ShkYXDtp
やべぇ。
ユイがいると信じてきたから、何一つ青春らしきことをしてきていなかった。
俺の青春といえばまず野球だった。
恋に関して言えば初恋をしたときにメールを送信したときくらいだといっていいくらい、何もしていない。
そこで俺は断わろうと決心した。
「あの、本当に俺が買ったものなんかで喜んでくれたりしますでしょうか」
「何故そんなことを訊くのかね」
「なんて言いますか、俺のデザインとかそういうもののセンス半端ないんですよ。ダメな方向で」
「謙遜するもんじゃないぞ、身に付けてるものを見ればよう分かる」
と言って爺さんは老獪に笑ったが、俺が身に付けているものといえばシャツにパンツに、
包括センターで配布されているエプロンくらいなもんなのでセンスも何もあったもんじゃない。
それなのに何もかも任されてしまっていた。最初に引き受けてしまった自分を恨んだ。
※ ※ ※
その辺の百貨店のブランドものでも購入しようかと迷った俺だが、
それじゃ味気ないので間坂という坂がある有名な繁華街に繰り出していた。
そこらにあるセレクトショップを覗いては次の通りへ、といった感じで探してはいたものの、
自分のセンスにまったく自信が持てなくなっていた。
というより、お孫さんのことをよく聞いてリサーチしておくんだった、と後悔した。
相手がどんな人物なのかも分からないのに詳しくは決められない。
どこか途方にくれてしまっていたので、日が沈む頃になったら時間制限ということにして、
そのとき入った店で決めてしまおうと心に決めた。
有無を言わさず日は暮れたので(そりゃそうなのだが)、俺はその通りにした。
ローマ数字のインデックスが刻まれたややクラシカルなモデルだったが、
661:名無しさん@ピンキー
10/09/16 06:07:00 ShkYXDtp
換骨奪胎した創造性のある趣きがあった。現代風に修飾されているとでも言うか……
ともかく無難に済ませられる品物を入手したのでひと安心していた。
だがその帰り際だった。
「……え」
俺は一瞬にして目を奪われた。
間違えるわけがない。
記憶違いなわけがない。
交差点の片隅に、いつかのように笑っているユイの姿があった。
「マジかっ……」
思うより先に体が動いていた。
喧騒も聞こえなかった。
鼓動を抑えたくて胸を掴みながら、あいつの元へ向かっていた。
「………」
ユイは眉間をかすかに曇らせて俺を見詰めた。
俺はといえば、その存在を確かめるかのようにユイの足元から頭の先まで眺めてしまった。
頬に筋を引いて涙が零れ落ちた。
「……元気じゃねぇかっ」
「えと、はい」
張りのある声で答えていた。これは夢なんじゃないかと思った。
頭の中にある色んなものが入り乱れて、何が何だかはっきり判らなかった。
嬉しいのか、それさえもはっきりとしなかった。
なぜか情けない涙だけがぼろぼろと溢れていた。
「どこか痛いところでもあるんですか? 意外と近くに病院ありますよ?」
「やっとだ。やっと……会えた」
「へ? お兄さんちょっと怖いですよ」
662:名無しさん@ピンキー
10/09/16 06:07:40 ShkYXDtp
激情に駆られていて、向こうのことは何も考えていなかった。
ただ抱き締めた。
「やっ、きゃぁっ……先輩っ!!」
「何してんだよおまえっ!」
横っ腹に衝撃を感じた後、俺はぐしゃりという擬音がよく似合いそうな落ち方で
アスファルトの上に転げた。
が、まるで痛くはなかった。羞恥さえない。わけが判らないだけだった。
「先輩っ!! この人痴漢です!」
「そうとしか見えなかった」
「っ……だれだよっ……」
地べたに這いつくばったまま、俺はそいつの顔を見上げた。
「音無……」
「えっ、何で名前知ってるんだ……もしかしてユイの知り合いか?」
「痴漢に知り合いなんていませんって」
「ははっ……」
俺は笑っていた。それはあまりにも懐かしい掛け合いだったからだ。
「俺本当にこいつのこと知らないんだけど、こいつ大丈夫か」
「あたし119番します」
「それは待て……ていうか俺がやっといて何だけど、結構な怪我してるぞ」
確かに俺の左肘からは血がだらだらと流れ落ちていた。小石も混ざっていた。
それを見て音無は鞄から何かを取り出した。
「先輩出かけるときもそんなの持ち歩いてるんですか?」
「ああ、一応はそういう学生だしな」
「なんだよ音無。受かったのかよっ、おめでとう!」
「………」
663:名無しさん@ピンキー
10/09/16 06:08:38 ShkYXDtp
見るからに俺のことを気味悪がっていたが、消毒液と包帯を用いてささっと
傷口の手当てをしてくれた。それを終えると、音無は少しだけ首を傾げた。
「……あー、どこかで出会ってたなら悪い、俺は覚えてないんだ。
それにしても、いきなりこいつに抱きつくなんてどうかしてると思う。
安静にした方がいいぞ……って、いてぇえっ!」
いかにも文句あり気なユイがつま先で音無の脛もとを蹴っていた。
するとふたりはその場で口論を始めた。
やれ遅れたから悪いだの、どこかでこいつに勘違いさせるようなこと言ったんじゃないかだの、
それを見ているだけで、俺は随分と長いこと忘れていた感覚を取り戻すことが出来た。
真空パックして凍結されていた学生時代のあの感覚だ。
でも気付いてもいた。これはもう終わりなんだということにも。
二人は過去を知らない。それに引きずられることのない人生をあゆんでいる。
それを悟った。
「っと、わりぃ、そいつがあまりに可愛かったんで抱きついちまってた。
昔の彼女とすげぇ似てたんだ」
幾年か積み上げてきた想いを閉じ込めて告げていた。
けど音無は俺がまったく想像もしなかったことを言ってきた。
「こいつと同じくらい可愛いやつなんているか?
俺たちはお前のことは知らないんだから、一目ぼれだったんだと白状してしまえ」
「先輩……っ、よくそんな恥ずかしいことさらっと言うつもりになりましたね」
「ものの勢いってやつだ」
時間ってのは残酷だった。ここで別れたらもう二度と会えないかもしれない。
そうとは分かっていても、二人の刻んできた時間を感じてしまったら、もう駄目だった。
「俺行くわ」
「ああ、明日になったら包帯取り替えろよ」
「さよなら、ちょっと面白い変わったお兄さん」
本当は振り返りたかった。でも俺は二人の幸せだけを考えることにした。
俺が二人と知り合いにでもなったら、ややこしくなる。
自分の気持ちを押し殺して、思考を停止してしまっていた。
俺たちは仲間だった。きっといい友達になれる。
そんなことも忘れて。
※ ※ ※
庭が広くて芝が輝かしい一軒の洋風家屋へと辿り付いた。
664:名無しさん@ピンキー
10/09/16 06:23:09 PyORk5fy
アドレス帳に記されている住所はここの……はず。
一家の爺さんから頼まれたお届けものを持参して、俺は立ち尽くしていた。
あの一件によって―転ばされた拍子に、斜がけにした背中のバッグに入っていた
時計のケースがぺしゃんこになってしまっていたからだ。
ラッピングされた包みもくしゃくしゃで、もう贈り物の体をなしていない。
しかもこれは人様からお金を預かって購入した品だ。
爺さんに一度報告してから改めて訪問したかったのだが、お孫さんの誕生日は今日だった。
何にせよ、行って、ここへ戻ってくるだけの時間がない。今日は平日なので当然仕事もある。
「納得してくれっかな……どう説明したらいいんだか……」
頭を悩ませても仕方がなかった。起きた事は起きた事だ。
だが一つ間違えばせっかく築いてきた爺さんとの信頼を崩してしまう。
それどころか、爺さんとお孫さんとの信頼まで崩してしまう恐れさえあった。
閉ざされた門の前でインターフォンを長々と眺めていた。
「あれ、変なお兄ちゃん。何か用があるの?」
「不審だね」
「僕たちの家の前でこそこそしないでよ」
姉弟らしき子供たちに声をかけられて、はっとした。
「ひょっとして泥棒さん?」
そう見られてもおかしくはなかった。
「いやんなわけないだろ。ってお前たちここの家の子なのか?」
素直そうな子が、生意気な口調で言った。
「さっき言ったって。そうだってば」
俺はその手に嵌めたグローブを見てつい余計なことを言っていた。
「……それ、大切に使えよ」
「言われなくたってそうしてるよ」
665:名無しさん@ピンキー
10/09/16 06:28:28 ShkYXDtp
「爺さんとはえらく違うな」
女の子の方がその言葉に反応して問いかけてきた。
「えっ、おじいちゃん知ってるの?」
「ああ知ってる。しばらく前に爺さん腰椎やっちゃって今車椅子の世話になってるだろ」
「なんでそんなこと知ってるの? あやしいよお姉ちゃん」
「そうだね」
姉弟会議が始まろうとしていたので食い止めた。
「やめてくれ。お兄ちゃんはちょっとだけど爺さんの生活が楽になるようにしてる人なんだ」
「えーうさんくさい。私お姉ちゃん呼んでくる」
「僕が引き止めてるから早く行ってっ」
俺は何だと思われているんだろうか。てそれもさっき言ってたか。
少しだけ悲しくなって空を見上げていた。青空に吸い込まれたかった。
というより見つかったからには覚悟を決めるしかなかった。
はー、とひと息ため息をついて、その門を開けた。
というより開いた。鍵がかかっていなかった。
「わっ、この人勝手に入ってくるつもりだよ」
「大変!」
「安心してくれて大丈夫だからそんなにわめかないでくれって」
「保証ないじゃないか」
「いやなこと言うやつだな、その歳で保証とか求めんなよ」
何だか嫌になっていた気持ちも段々とほぐれていた。
今だったら笑顔とトークでごまかせるような、そんな気がした。
「よし」
アーチをくぐって穏やかな風情に満ちた石畳の上に立った。
暖かな日差しは俺に味方をしてくれている。
666:名無しさん@ピンキー
10/09/16 06:28:55 ShkYXDtp
芝生を吹き抜けるそよ風は心地よい刺激を与えてくれた。
さっきちっこいのがお姉ちゃんとやらを呼びに行くと言っていたが、
そのお姉ちゃんとやらが爺さんのお孫さんなんだろう。(この子らもそうだろうが)
5メートルくらいまでの距離に近づいたとき、その扉は乱暴に開かれた。
「………」
呆然とした。
「あんた、強盗のつもりなら絶対に赦さないから」
今まで誰にも会えなかったというのに、どうしてこう立て続けに機会が訪れるんだろう。
「いえ、俺、……僕、や私はあの、お前、いやあなたの爺さんのヘルパーをやってる……」
「えっ、何の冗談?」
ゆりは明らかにイラッとした様子だった。
ユイたちの例もあったので俺は怖さを隠すためにまくし立てようとした。
「お、お聞きになられてはいないのですか、そうですか。
おま…あなたのお爺さんが腰椎を痛めてからもうしばらくになりますが、
それじゃあ初めて……のご挨拶になりますね」
「何間抜けなこと言ってんのよ日向くん。懐かしいわね」
「え」
「それよりお爺ちゃんのヘルパーさんが日向くんて本当? あなたがそんなこと出来るわけ?」
ああ、完全に一致した。これはゆりだ。その上俺のことを覚えてる。
相変わらずの素振りで皮肉ってくる。それがなんだか可笑しかった。
さらにゆりのことだ。
ひょっとしたらもうみんなと連絡を取り合って、こっちの世界でも集まりを作っているのかもしれない。
そう思っただけでこの歳なのにわくわくとしてきた。
「よ、ゆりっぺ」
「まだその呼び方? いい加減ゆりって呼んでほしいところね。それか仲村さんね。
667:名無しさん@ピンキー
10/09/16 06:34:00 ShkYXDtp
……けど前者だとなれなれしいからやっぱり仲村さんって呼んでね」
俺は話の骨を折るように告げた。
「今日は贈り物を用意してきたんだ」
「何よ気持ち悪い」
「ってそれ酷ぇよ。てか俺から、っていうんじゃなくて爺さんからだからな」
「それを先に言いなさいよ、たく馬鹿なんだから」
おそるおそると小包を取り出して俺は言った。
「あーと、その、誕生日おめでとう。
でもごめんな、ちょっと事情があって潰れかかってる。でも中身は無事だから……」
はたかれることは覚悟していた。
せっかくのバースデープレゼント、それも離れて暮らしている祖父からの高級品なんだから。
きっと成人祝いのとき以来の贈り物に違いなかった。
それを台無しにした俺ははたかれて当然だ。
「うん、怒っていい?」
「怒られたくはないが怒られる覚悟はある……」
だけれどゆりは俺を責めなかった。
「せっかくの再会だものね、
殴られでもしたらそれが強烈に印象に残って後々あたしと再会したことがいやになってくるでしょ」
「それはないさ」
青々とした新鮮な空気が肺に飛び込んでくるようだった。
今は心から言えた。
以上です―
668:名無しさん@ピンキー
10/09/16 10:59:04 E5y6VWVm
さすがにユイの相手は日向しかありえないだろ
669:名無しさん@ピンキー
10/09/16 14:30:05 0ipjNPuS
カプ改変の喪失感がこのSSの肝なんだろう
現実でもしょっちゅうあるわけだし
670:名無しさん@ピンキー
10/09/16 19:16:11 ol1gBg9I
この発想は無かったが読んでみると切なさがクセになるな
>>651>>657
即興に近いのにお二方GJ
671:名無しさん@ピンキー
10/09/16 21:04:51 MI6DkI4U
喪失感GJ
ところで奏は興味を持たなかったSSを読んでたら
ひさ子さんが大山を姐御っぽく慰める電波が飛んできたんだが
誰だ怪電波流した奴
672:名無しさん@ピンキー
10/09/16 21:40:36 Mf2kVV7M
藤巻×ひさ子のイチャラブが読みたい
673:名無しさん@ピンキー
10/09/16 21:42:46 ihKeICO8
だが断る
674:名無しさん@ピンキー
10/09/16 22:06:13 NLyP/MBL
>>671
速くしろ。さみぃ
>>672
`¨ - 、 __ _,. -‐' ¨´
| `Tーて_,_` `ー<^ヽ
| ! `ヽ ヽ ヽ
r / ヽ ヽ _Lj
、 /´ \ \ \_j/ヽ
` ー ヽイ⌒r-、ヽ ヽ__j´ `¨´
 ̄ー┴'^´
675:名無しさん@ピンキー
10/09/16 22:07:18 comhNr/h
初めてここ来た…
奏輪物ってあった?
676:名無しさん@ピンキー
10/09/16 22:21:18 jkMgktiT
天使ちゃんが仲間になったあたりで親睦を深めようと男子寮に呼び寄せて
天使ちゃんを囲んでワイワイ騒いでたらなんかジュースに混じってお酒が出てきたりして
気づかぬ内に程良く全員に酒が回ってきたあたりで誰かが王様ゲームしようと言い出して
音無の目の前で他の男の手によって天使ちゃんの心と身体が少しずつ剥かれていく感じの読みたい。
677:名無しさん@ピンキー
10/09/16 22:29:50 NLyP/MBL
>>676
それに乱入するゆりっぺ
678:Wind
10/09/16 23:30:46 Jfbepx0w
なんか久々に見てみたら色々追加されて
ましたねぇ、よくアイデアが思いつき
ますよね、すごいです!
679:名無しさん@ピンキー
10/09/16 23:46:50 5Zwj5d2K
さげろよ
680:名無しさん@ピンキー
10/09/17 02:54:37 a0rO/MMc
クソコテ+目欄空欄=どう見てもリア厨です、本当にありがとうございました
681:名無しさん@ピンキー
10/09/17 05:54:59 1YoQ8zJ1
>>680 厨に厳しいな
>>676 そこまで具体的に書いてんならなら書けるんじゃね
682:名無しさん@ピンキー
10/09/17 12:04:40 yFeARpVJ
ひさ子姐御のSSを書いてたら、更にユイが淫魔化する電波が飛んできた
俺のアンテナが壊れてるのか…?
683:名無しさん@ピンキー
10/09/17 12:36:53 Sqh7Mz9J
問題ない、続けたまえ
684:名無しさん@ピンキー
10/09/17 19:48:45 7CBXMEQK
何? ユイが俺に按摩?
頼んだ。
685:名無しさん@ピンキー
10/09/17 20:07:31 pqpPqav2
>>682
超支援あ
686:名無しさん@ピンキー
10/09/17 23:23:00 MQdZLpnu
ひなゆい書きたい気分
687:名無しさん@ピンキー
10/09/18 00:18:01 3zWVMM3h
>>686
速くかけ!いや書いてください
688:名無しさん@ピンキー
10/09/18 00:47:49 UuEkvFAw
やっとこさできた…んだけど姐御成分薄めだし何より俺の文章力がだな
とりあえず投下
689:ひさ子さんマジ姐御
10/09/18 00:49:07 UuEkvFAw
「痛って…」
校舎内の曲がり角を曲がったところでひさ子は何かに激突した。
モロに体当たりを食らったため尻餅をついたが、持ち前の運動神経を生かし
すぐに体勢を立て直して立ち上がり自分と同じように尻餅をついてる相手を見た。もちろん文句を言うために
「あ……お、大山?!」
出てきた言葉は文句より驚きだった。
別に校舎でSSSのメンバーに会うことは驚くことではない。が
「なんで…Yシャツ一枚…?」
大山はそれを聞いたのか、顔をあげ、ひさ子を見た瞬間
「うっ…ひっぅ……うあぁぁぁぁん!」
別に叫んでるわけではありません。大山は大声で泣き出した
「え?! あ、ちょっと何泣いてんだよ!」
「うえぇぇぇぇ…」
別に吐いてる訳じゃありません。ひさ子の質問に泣き声で答える大山
おそらくどんな質問をしても大山は泣き止まないだろう
そう思ったひさ子は、とりあえず泣き止ませることを始めた。
「えーっと…泣くな?」
「うあぁぁぁぁぁ…」
別に苦しんでるわけじゃありません。
しばらく声を掛けてあやそうとするが、さして効果は無い。
次は少し様子を見てみたが、まったく泣き止む気配は無い。
いい加減泣き止んでくれと、ひさ子は心の中で泣き始める。
690:ひさ子さんマジ姐御
10/09/18 00:52:03 UuEkvFAw
「あぁもう!」
悪態をついたひさ子は未だ泣きじゃくってる大山をそっと抱きしめた。
大山の頭がちょうど胸の部分にうずもれるぐらいに
「ほら、泣くな泣くな」
そう優しく言うと、顔を胸にうずめたのもあるだろうが次第に泣き止んでいった。
「よーしよし、大丈夫、大丈夫だから」
しばらくそうやってあやしていると大山はやっと泣き止んだ。
「…もう大丈夫か?」
「…え、えっと…はい、あ、ありがとう」
泣き止んで我に返った大山は、顔を真っ赤にして答えた。
「そっか、それじゃぁあたしは行くぜ?」
そう言うと抱きしめていた大山を放す
「あ、あの…」
行こうとするひさ子を引きとめる
「どうかしたか?」
「えっと…その、聞かないんです?」
「何を?」
「その…泣いてた理由です」
「なんだ、聞いて欲しいのか?」
苦笑しながらひさ子は問い返す
大山は顔を少し赤くして「…そういうわけじゃないんだけど」と口ごもる。
乗りかかった船だし、とひさ子は頭を掻きながら話を聞こうと壁に寄りかかる。
「実は…」
691:682
10/09/18 00:54:24 UuEkvFAw
終了、次はユイの淫魔化だな
変な電波出すなよ?
692:名無しさん@ピンキー
10/09/18 05:21:11 Ol9gjGKM
外界と隔絶されたかのような室内は、とにもかくにも暗く、傍らに控えているはずの人間の存在すらも知覚するにはあやふやで、宵のまにまに闇に融けてしまったような、一種不安感すら覚える。
慣れるにはあまりに濃い暗がりに、けれど鮮烈な光の筋が迸ったかと思いきや、向かって左側に明かりが集中する。
目に痛いほどのその強い光を、あたかもスポットライトのように一身に浴びながら、そいつは冷厳に口を開いた。
「決行の時がきたわ」
眩い逆光に眉ひとつ動かさずにゆりが小さく言った次の瞬間、どよめきが走る。
さながら恋文の文末に実はこれバツゲームだから絶対本気にしないでねという意味不明な文字の羅列を発見してしまったかのような、そんな動揺。
たまらず聞き返したのは日向だった。
「なんのだよ」
至極真っ当で、この場にいる全員がそう思っていたに違いない。
そしてこうも思っているだろう、なんなんだいきなり。
そりゃあそうだ、本当にいきなりのことだった。
毎日毎日飽きもせず、授業にも出ずに日がな一日寛ぎ居座っているこの校長室は、ほんのついさっきまでそんな日常を繰り返していたのだ。
ある者は体脂肪率を一桁前半に保つことに快感でも覚えてるんじゃないかというような過剰な筋トレを、またあるものは意味もなく白鞘から抜いた本身を恍惚とした表情で眺め、
隣に座る草食系男子を具現化させたようなやつは苦笑いを貼り付けつつさり気なく距離を空けていき、それをからかうあいつは虎視眈々と新技をかける機会を窺っていた後輩に襲いかかられたところを返す刀で瞬時に床へと押さえ込み、
危うく二人仲良くグラップラー改めダンサー目指して精進中のぬりかべに踏み潰されそうになるのを辛うじて避けたのだが、読書の邪魔だと傲岸不遜に何やらを呟いた副生徒会長のおかげで芋虫よろしく這いつくばっている。
なかなかに賑やかかつ学級崩壊でも起こしたのかと思われるようなこの光景は、けれど、まったくもっていつもどおりのものだった。
自由という言葉を安易に謳い文句にして校風に掲げている学校はそれなりの数あろうが、よもやここまで自由で奔放で不真面目な生徒たちを受け入れ、野放しにし続けるということはしないだろう。
しかも盗んだバイクならぬ盗んだ校長室でこんなドンちゃん騒ぎをしているのだから余計にたちが悪い。
若さゆえの過ちとか若気の至りなんて可愛いもんじゃない、俺が校長だったらそんな連中真っ先に退学させる。公権力にだって容赦なく突き出す。
とはいえ、かくいう自分もそいつらと十把一絡げにされるような人間なわけだが。
そしてそのはた迷惑な集団の頭目はといえば、そんな俺たちを尻目に無線片手に暢気にガーリートークに興じていた。
校内に張り巡らしている間諜と定時連絡をとってるのよ、なんて本人は言い張っていたが、嘯いていることは明らかだった。
世間話でもするようなノリで一時間も通信しっぱなしだったらどんな騙され上手だって不審がるだろう。
大方相手は遊佐だろうが、コイバナのネタなんて絶無だろうにそんな話題ばかり振られて、可哀想じゃないかと思わず不憫に思ってしまう。
内角高めのいやらしいボールを放る当の本人はニヤニヤと恥じらいもけったくそもない笑みを浮かべ、さながらセクハラ親父のようであり、実際遊佐からしたらそのものだろう。
とてもじゃないが年頃の女の子のするようなもんじゃない。
助け舟を送るつもりでそれとなくツッコミを入れたら、しれっと今の今重大な情報を送ってくるかもしれないじゃない、という反論をされたが、どんだけリアルタイムな情報が欲しいんだ。
しかもノリ云々の部分には完全にノータッチであり、あいつの耳は都合の悪いものはシャットアウトできるような便利な作りをしているのかもしれない。
それはともかく、俺のささやかなアクションは功を奏すにはあまりにみみっちかったようで、彼女はコホンと咳払いをすると何食わぬようにお喋りを再開した。
先ほどと比較すれば話題がまだライトなそれになっているのがせめてもの奮闘の結果だと思いたい。
そういう、平々凡々な日常が様変わりしたのはその直後だった。