10/08/09 14:00:12 qcQIKO9Q
その夜。
あたしは再び校長室にいた。今度は遊佐さんもちゃんといる。
「……もう死にたい…」
「わたしたち、すでに死んでいる身なんですが…」
遊佐さんのツッコミに返す元気もないくらいに、あたしは衰弊しきっていた。
紆余曲折あったが、なんとか音無くんも納得してくれて、それからは何事もなかったかのように普段通りに接してくれた。
「そういえばさ、今日のあれ、本気なの?」
机と融合するように突っ伏していた顔を上げて、遊佐さんに問いかける。
「秘密です」
またこれか…。
何度聞いても、遊佐さんは「秘密です」の一点張り。
彼女の場合、本気っぽく言っても実は冗談だったり、冗談っぽく言ったら実は本当のことだったり、逆に本気っぽく言ったら実は本当のことだったりと、本気なのか冗談なのか、心境がまったく読めない。
おまけに素性、生い立ち、死亡経緯、その他諸々がとにかく謎に包まれすぎているから、余計に気味の悪さに拍車をかけている。
この娘、下手をすればTKよりも正体不明の謎キャラなんじゃないかしら。
「しかしゆりっぺさん、ご自分の発言を撤回なさるなんて、意外とチキンだったんですね」
「チキン言うな! もしそうだとしても、あなたに言われるとなんかすごく腹が立つわ!」
「失礼しました。仮にも恋のライバルなんですから、心配なんですよ」
「……別にあなたに心配してもらわなくても大丈夫よ」
恋のライバルについてはもういいわ。
どうせ聞いたところで同じ返答しか帰ってこないことは目に見えているので、敢えてスルーする。
まぁ、遊佐さんなりにあたしのことを心配してくれていることについては嬉しいんだけど。
「ホテルは取りましたか? ティッシュはありますか? 避妊具はいりますか?」
「なんの心配してんの!? 実はあなた、あたしのこと全然心配してないでしょ!?」
「……そんなことありませんよ。じゃあそうですね……レモン食べますか? クラシックかけます? もうベビーベッドは買いましたか? お子さんの名前は決めました?」
「接続詞おかしくない!? そもそも妊娠もしてないから!」
「では二人で全裸待機でもしていましょうか」
「猥褻物陳列罪!」
それ以前にこの世界って妊娠できるのかしら、なんて考えつつ、あたしとスターを取ってフリーダム状態となっている遊佐さんの、理解不能のアホトークは深夜の3時過ぎまで続いた。
……ってかあたし、また寝不足じゃん。主にこの人のせいで。