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あたしはグラウンドにある水飲み場で顔を洗ったあと、そのまま用を足して女子トイレから出た時だった。
前方に見える、大きな背中。
髪の色、背丈で音無くんだとわかる。声をかけようと思ったが、音無くんの左右には二人の女生徒がいた。
言うまでもなく、金髪と紫紺のロングヘアーが特徴の入江さんと関根さんだった。
「いやー、助かったよ音無先輩。正直あたしたちだけじゃ、ちょっと荷が重かったし」
「別に気にしなくていいよ。見ていて危なっかしかったしな」
話の内容を聞くに、どうやら先ほど日向くんの言っていた手伝いとやらがちょうど終わったところ、だろうか。
「あ、そうだ形無し先輩」
「誰だよ!?」
「失礼。噛みました」
「嘘付け、絶対わざとだろ。噛むような名前じゃないじゃないか」
「噛みまみた」
「あれ!? わざとじゃないのか!?」
「揉みました」
「なにを!? 部位によっては卑猥だからやめてくれ!」
どこかで見たことがあるようなやり取りを交わす二人と、そんな二人を見てクスクスと笑う入江さん。
「あはははっ。話の続きですけど、手伝ってくれたお礼にジュースおごっちゃいますよ」
「いや、いいって。俺は別に見返りが欲しくて手伝ったワケじゃない」
「それじゃわたしたちの気が済まないんです。ね、しおりん」
「そうだねみゆきち。というワケで、自販機までレッツゴー」
「お、おい、わかったから引っ張るなって!」
仲良く雑談しながら、入江さんと関根さんは満面の笑みを浮かべて、転びそうになる音無くんの両手を掴んだまま、あたしに気づくことなく走っていってしまった。