10/09/11 18:09:25 y/SsSWGi
最近実験が順調で良い結果が出てきたので、学会で発表することになった。
実験がうまくいくのは嬉しいけど、やっぱり発表の準備ってめんどくさい……。
データまとめて、表や図を作って、発表用のスライド作って、
……そうこうしているうちに、明日は研究室内でリハーサル。
「ああもう、スライドまとまんないよ~、助けてヒナコ~」
「黙ってやれっての!こっちはハルカに付き合ってこんな遅くまで残ってやってるんだから!」
ヒナコと私は同じ研究室の大学院生。
大学ってのは高校までと違って、関係者なら24時間建物の中に入ることができるし、いつだって建物のどこかで誰かが実験している。
私たちもそんな感じで、生活リズムなんかそっちのけの立派な大学院生だ。
既に廊下は真っ暗。
私たちのいる居室と、同じ廊下に面している50メートルほど離れた私たちの実験室、
この2部屋からの明かりだけが、廊下を照らしている。
良いデータが出たのは嬉しいけど、それでもやっぱり発表準備はしんどいよぉ~……
とりあえず黙って手を動かす。
ヒナコは実験室でも行ったのかな?気配がない。
居室には私一人。黙々とパソコンを睨みながら手を動かす。
……。
今はこの建物のこの階は、私たち2人しかいないみたいだ。
他の研究室の人は丁度誰もいない。
上の階には、忙しさのせいでその不夜城ぶりが有名な研究室があるけれど、
その研究室の人たちが私の居る階まで降りてくることはない。
……。
誰にも聞かれていないから、大声で本音の独り言を言ってみる。
「ああもう苛々してきた!いっそすっぽんぽんで廊下でも走ってやろうかな~!」
「やってみなよ!
……むしろ、やってみようよ!!」
迂闊だった。
……たった今居室に入ってきたヒナコに聞かれてしまっていた!