10/05/01 08:47:41 zlxt25pO
そいつとは女性専用車両で出会った。
「あんた、ついてんだろ?ふたなりが女性専用車両にいていいのかよ?」
今、沙希は困ったように涙目を浮かべる同じ年くらいの女を小声で脅している。
女はどうやったらこの状況を逃れられるかとか全く考えてないらしく、沙希の
前で泣き始めた。
あ~あ、これだから温室育ちのふたなりお嬢ちゃんは…
沙希は心の中で舌打ちする。別に沙希はこの女がふたなりだという証拠を握っているわけではない。
ただ、さっき満員の状態の時この女の腰が不自然に動いて前にいる女の尻をこすりあげていたのだ。
それで早速いつもの生業の「かつあげ」に走ったわけだが…。
ここは女性専用車両の中。
沙希はここらに住む女子高生、まあ、いわゆる不良ってやつで。今日も遊び金欲しさに隠れふたなりの女を脅して金を巻き上げている。
沙希の傍に仲間が二人いて三人で彼女を挟んでいる形になっているから、
周りはよっぽど気をつけないと今ここでかつあげが行われているとは気付かないはずだ。
が、気付いたやつがいた。その日に限って。
「あのー…」
やけに間延びした声を出してそいつは沙希の前に現れた。ひょこっと顔を出して
あろうことかにこにこ微笑んでいる。
「…なんだ?お前」
仲間の一人がそいつにむかってすごむ。メガネをかけた女は、特に身長が高いわけでもなく、
男性的というわけでもない、でもだからといって女らしいわけでもなく、なんというかどっちつかずな印象だ。
女は動じることなく平気で、その人を解放してあげてくださいと言った。
「はあ?あんた馬鹿?そう言われてはい、そうですかと言うとでも思うわけ?」
「はい今、解放してくれれば、私はあなたたちに何もしませんよ」
三人に沈黙が訪れる。こういう低姿勢かつきっぱりと物を言う大人とは会ったことがないのか、
これ以上どうおどしていいのかわからなくなってしまったようだ。