【友達≦】幼馴染み萌えスレ20章【<恋人】at EROPARO
【友達≦】幼馴染み萌えスレ20章【<恋人】 - 暇つぶし2ch850:名無しさん@ピンキー
10/10/17 00:18:36 09OOmeQz
やばいGJすぎるぜぃ
さすがかおるさとーさんだ
あなたの書く文章が好きです
これからもどのスレでも頑張ってください

続きwktk!!!!

851:名無しさん@ピンキー
10/10/17 00:26:04 UyCJBOUR
王道だ

852:名無しさん@ピンキー
10/10/17 01:23:16 SjhY6zDU
GJ
華乃視点を見てみたくもあるけど、そっち側は脳内補完で自由にニヤニヤするのでもいいか
続き期待してます

853:名無しさん@ピンキー
10/10/17 06:44:51 DHuHjnJc
うひょーGJだぜー!やっぱりうまいねえかおるさとーさんは。

854:784
10/10/18 02:12:14 zCrBBEnZ
>>827の続きですが、投下します
しかし、予定を守れずまたまた途中までとなってしまって申し訳ない
次こそ本当に必ずエロを書きます

855:全天星座
10/10/18 02:13:42 zCrBBEnZ
食事が済み、もうすぐ昼休みも終わろうとしていた。
今は屋上に誰もいない。俺達も出口へと向かっていた。
「雄也」
俺の名前を呼んで、前を歩いていた理恵が扉の前で立ち止まり、振り返った。
「その・・・もしよかったら・・」
何か言いよどんでいる。
「今日、一緒に帰らない?」
本当に、珍しいことは続くもんだ。まさか理恵が帰りの約束まで取り付けてくるなんて。
こんなことは恐らく初めてだろう。
子供の頃は、いつも俺のほうから「帰ろーぜ」と言っていたのだから。
「ああ、いいよ」
そう言った瞬間、理恵は瞠目した。
「・・・じゃあ、校門で待ってるね」
「分かった」
俺が返事をした途端、理恵は間髪いれず時計を見た。
「もう時間だから、行くね」
理恵は少し赤ら顔で微笑み、その後俺に背を向け、小走りに階段を下りていった。
こうして俺は屋上に一人取り残された。
あんなに急ぐなんて、もしかしたら次の授業は移動教室なのかもしれない。それに―
(あいつ、顔赤かったけど、夏の日差しにやられたのかな。大丈夫だろうか)
などと物思いに耽っていた俺を、チャイムが現実へと引き戻してくれた。

「待たせたな」
俺は校門の前に行き、先に待っていた理恵に声をかけた。
「ううん、私も今来たところ」
「そっか、じゃ帰ろうぜ」
「うん」
俺達は歩き出した。
高校から自宅まではそんなに時間がかからないので、徒歩で通っている。

「しっかしまぁ、今更言うのも何だけど、高校までお前と一緒の学校になるとはな」
「受験勉強、大変だったよね」
「入試の一ヶ月前くらいだっけか。『数学教えてくれ』って俺がお前に泣きついたのは」
「うん。久しぶりに家に来てくれた時の第一声がそれで、少し驚いたけど。
 そのあと、私達が同じ高校受けるって分かったんだよね」
中学のときは、本当に理恵との交流は少なかった。
同じクラスだったことはなかったし、一緒に登下校することもなかった。
せいぜい、廊下とかで会った時に会話する程度だった。
「でも俺、嬉しかったな」
「えっ」
「理恵が同じ学校に行くんだと分かって」
「・・・・」
「知り合いが一人でもいてくれたら、心強いからな。期待もあれば不安もある新生活だし」
俺がそう言ったら、それまで俺と顔を合わせて話していた理恵は、急に目をそらした。だが―
「・・・私も、嬉しかったよ。雄也と一緒の高校に行けて」
と言ってくれた。
やはり、人見知りの激しい理恵も同じ気持ちだったのだろう。
「受かることができたのも、お前の指導のおかげだよな。改めて礼を言わせてもらうよ」
「が、頑張ったのは雄也で、私の教え方なんてそんなに―」
「あーー、もう。こういう時は『どーいたしまして』でいいんだよ」
「ど、どういたしまして・・・」
俺が少し大声を出したら、理恵は驚いて俺の方を向き、小さくそう言った。


856:全天星座
10/10/18 02:15:20 zCrBBEnZ
そんな風に談笑しながら歩いていると、やがて十字路に出た。
ここを右折すれば、後は10分程まっすぐ歩くだけで俺達の家に着く。
そしてその道は、幼い頃の俺達が何度も一緒に歩いた道だった。
ガキの歩幅では長く感じた道も、今となっては短いものだ。
普段は何とも思わず通っているが、今日は理恵が一緒なので懐かしく思えてしまう。
ちなみに、今来た十字路を右折せず、そのまままっすぐ行けば俺達が通っていた小学校が見えてくる。
「懐かしいね」
理恵もそう思ったのだろう。
「ああ、そうだな」
俺達は昔を思い起こして、少し感慨にふけっていた。
言葉を交わさず歩いていたが、しばらくして理恵が沈黙を破った。
「ねぇ、雄也」
「ん?」
「昔、言ってくれたこと・・・覚えてる?」
「どんなこと言ったっけ」
「ここから見えない星座を見に行くときは、一緒に連れて行ってくれって」
そういえば、そんなことを言ったような気がしないでもない。かすかな記憶しかないが。
「ああ。それで?」
「その・・・」
理恵は押し黙った。だが、俺は何が言いたいのか察しがついてしまった。
「まさか・・・夏休みに、星座を見に旅行しようなんて言うんじゃないだろうな」
俺を見る理恵の顔は、まさに図星を指された表情だった。
「な、何言っているんだよ。年頃の男女が一緒に旅行なんて」
今日のこいつはどこかおかしい。急に昼飯や下校に誘ったり、挙句の果てには―
「お父さんもお母さんも、雄也となら良いって」
確かに俺はこいつの両親とは気心知れた仲だが。
だからって、大事な一人娘を男と旅行に行かせてもいいだなんて、あの人たちは何考えているんだ。
俺がそう思いをめぐらせ、逡巡していると、
「やっぱり、ダメだよね」
理恵がそう言ってきた。
「ごめんね。変なこと言って」
この言葉を最後に、理恵は口を閉ざした。

857:全天星座
10/10/18 02:16:18 zCrBBEnZ
俺達はまた黙って歩いていたが、その気まずさに耐えかね、今度は俺の方から口を開いた。
「俺とはダメだったけど、誰と行くつもりなんだ」
理恵は答えなかった。
「もしかして、諦めたのか」
小さく首を横に振った。
「じゃあ誰と―」
「一人で行くよ」
とんでもないことを言い出した。
「ば、馬鹿。一人でなんて危ないだろ。まして夜に出歩くんだから」
「大丈夫だよ」
俺は大丈夫ではない。女の子一人で見知らぬ土地を夜に出歩くなんて、どんな所でも危険だと思えるから。
それに、―偉そうに言うのもなんだが―理恵は容姿も悪くない。いや、むしろ俺は可愛い方だと―
本当に、ここ数年でますます女の子っぽくなったと思う。
だからもし、悪い奴らに何かされてしまったらと考えると、不安でたまらない。
なぜなら、俺はこいつの友人だからだ。友達を危険な目には合わせたくないに決まっている。
「やめろって」
「・・・でも、もう決めたから」
相変わらず、星のこととなると理恵は積極的かつ行動的になる。
こいつの星への情熱は、子供の頃からちっとも変わっていない。
「他にいないのか。一緒に行ってくれそうな人」
「うん。友達はみんな色々予定があるみたいだから」
「家族旅行で行けばいいじゃないか」
「二人とも働いているから、なかなか都合が合わないよ」
俺は考えあぐねてしまった。このままでは、本当に一人で行ってしまうだろう。

・・・俺の足りない頭に残された手段はもう、これしか残っていなかった。
だから、思い切って理恵に伝えた。

「分かった。俺も行く」
「えっ」
「俺もついていく」
「・・・本当?」
「ああ」
その途端、理恵は嬉しそうな顔をし、礼を言ってきた。
(全く、仮にも男と一緒の旅行なんだから、少しは警戒しろよな)
そう言いたかったが、手を出すとしたら本能に忠実な男という生き物、すなわち俺の方からなので、それは飲み込んだ。
代わりに俺は、自分自身を心の中で戒めた。

「で、どこに行くんだ」
理恵は俺の顔をまっすぐ見て、場所を告げた。
「宮古島、かな」

858:全天星座
10/10/18 02:17:39 zCrBBEnZ
          ・
           ・
           ・

『お母さん』
『なぁに、理恵』
『もう、来てくれないのかな』
『え?』
『もう、私と星みるの、嫌になったのかな』
『雄也くんのこと?』
『・・・・』
『大丈夫。そんなことないから』
『どうして分かるの』
『この時期の男の子はね。女の子と遊ぶのが何となく気恥ずかしくなる頃なの』
『・・・・』
『だから、今はあまり来てくれなくても、きっとまた来てくれるから』
『本当?』
『ええ、本当よ』
『じゃあ、待ってるね』

『理恵』
『なに?』
『もうクラス替えないけど、再来年、中学になったら、また雄也くんと同じクラスになれるといいわね』
『うん』
『あらあら、素直な子ね』

           ・
           ・
           ・


夏休みが始まり、今はもう8月の半ばである。
「それじゃ、行ってきます」
出発の挨拶をし、俺はキャリーバッグを引きずりながら理恵の家へと向かった。
玄関の前には、あいつとその両親が立っていた。
「おはよう、雄也くん」
俺が来たことに気付いたおばさんが挨拶をしてきた。仕事着に着替えているから、今日もパートに出かけるのだろう。
「おはようございます」
買い物帰りの彼女に、俺は道でよく会う。その度に、少し会話をしたりする。
「おはよう。すっかり大きくなって」
今度はおじさんが声をかけてきた。彼とは随分久しぶりに会う。
スーツ姿だから、こちらもこれから仕事に出かけるのだろう。
「ご無沙汰しています」
「すまないね。理恵のわがままに付き合わせてしまって」
「あ、いえ」
本当に、何の心配もしていないんだな。まぁ、信頼されているのは嬉しいが。
すると、理恵が一歩前に出てきた。
「おはよう」
「ああ、おはよう」
俺がそう言い終わった瞬間、理恵は自分の両親の方を向き、
「いってきます」
と挨拶した。
「いってらっしゃい。理恵、雄也くん、気をつけてね」
こうして俺達は家を出た。

859:全天星座
10/10/18 02:19:10 zCrBBEnZ
「それ重くないか」
理恵は、明らかに俺より大きいキャリーバッグを右手で引いていた。
「ううん、平気」
「女子だとやっぱり、男より荷物が多くなるんじゃないか」
「そうでもないよ。2泊くらいだし」
「まぁ」
「それに、必要なものはもうホテルに送ってあるから」
必要なもの―恐らく天体望遠鏡だろう。
確かにあれは荷物になるから、あらかじめ送っておいた方が無難である。
「そうか。でも、辛くなったらいつでも俺のバッグと交換してやるぞ」
「・・・うん、ありがとう」
本当は、どっちも俺が持ってやりたいんだが、理恵の性格上それは許してくれないだろう。

まず俺達は新幹線で東京駅へ行き、そこから羽田空港へと向かう。
東京に着いた俺達は、見渡す限りの人海に驚いた。
そして、何より東京での電車の乗り換えに四苦八苦させられた。
山手線に乗り、浜松町で降りる。その後、モノレールに乗り、ようやく羽田空港へと着いた。
時間にゆとりを持って家を早めに出すぎたせいか、飛行機の時間まではまだ余裕があった。
「いやー、疲れたな」
「・・・ごめんね」
「あ、その、・・・気にするなよ。ちゃんと言っただろ」
俺は東京に着いてからの道中、理恵のバッグを引きずってきた。
右往左往し、押し寄せる人の波を避けながら重い荷物を運んでいくのは、運動が得意でないこいつには少々辛かったようだ。
「飛行機の時間までまだまだだし、近くの喫茶店にでも入って休憩するか」
そう問いかけたら、理恵は首肯した。

860:全天星座
10/10/18 02:20:13 zCrBBEnZ
昼過ぎとなり、飛行機で出発のときが来た。直行便は取らなかったので、また飛行機を乗り継ぐことになる。
宮古島に着くのは、恐らく日が傾いている頃だろう。
やがて俺達を乗せた飛行機が離陸した。
空を飛んだことにより、今から泊りがけで旅行に行くのだという実感がようやくわいてきた。
それと同時に、とある罪悪感もまた押し寄せてきた。理恵に何度も感謝することで、払拭したつもりだったが。
「理恵」
俺は隣に座る相方に声をかけた。無言で首をこちらに向け、一瞥してきた。
「金、絶対にすぐ返すからな」
俺は情けないことに理恵から旅費を立て替えてもらっていた。
常日頃散々友達と遊び歩いているから、手持ちはもちろん貯金も微々たるものだった。
両親に小遣い数か月分の前借りを頼んでも、当然ながら答えはノーであった。
「でも、私が無理矢理誘ったから・・・」
「何言ってんだ。最終的には俺が自分で付いて行くって決めたんだ。必ず返す」
とはいったものの、当てがない。
俺も理恵を見習ってバイトでも始めようかな。でも、そうすると自由な時間が少なくなってしまう。
(せっかく3年間しかない高校生活なのに。もっと遊んでいたいじゃないか。どうせ大人になったら嫌でも働くんだし―)
などと考えてを巡らせていた俺に、理恵が、
「雄也、本当に返すのはいつでもいいよ。そんなに思いつめなくても・・・」
と言った。どうやら俺はかなり真剣な顔で思いつめていたらしい。
「ごめん、助かる」
再び感謝の念を表した瞬間、
「だからって、無駄遣いばっかりしちゃダメだよ」
という声が聞こえてきた。
「うっ・・・」
「雄也って、昔からそうだったよね」
理恵の言うとおり、俺はガキの時から金をもらえばすぐに使ってしまう奴だった。
この浪費癖を何とかしようと思ったが、思っただけで歳月は過ぎていった。
そういえば、無駄遣いばかりして俺が母さんに怒られていた傍らで、理恵が心配そうに見ていたこともあったな。
こいつは今、そのことを思い出したのだろうか。
だが、理恵の言葉にはまだ続きがあった。
「だから、雄也が双眼鏡をくれた時は凄く驚いたかな」
双眼鏡―確かいつぞやの誕生日にプレゼントしたことがあった。
あの時だけだな。俺が珍しくこつこつと小遣いを貯めていたのは―
何故そうできたのか、今ではもう分からないが。

その話題をきっかけに、沖縄までの機内では思い出話に花が咲いていた。
さらに、お互い疎遠気味であった中学時代の話もして、大いに盛り上がった。
俺達は遠い昔のようにまた、二人でいる時間を存分に楽しんだ。
―過ぎ去ってしまった日々を埋め合わせるかのように。

861:全天星座
10/10/18 02:21:11 zCrBBEnZ
宮古島のホテルに着いたときには、もう日の光はほとんど見当たらなかった。
俺達はまず各々の部屋に行き、荷物を置いてきた。
その後一緒に夕食をとり、それを終えてから星が見えてくる時刻まで、各自風呂や洗面を済ませておくことにした。

俺は自室で湯船につかりながら、考え込んでいた。
(理恵の奴、どうしたんだろう)
ホテルに着いてからというもの、あいつの様子が少しおかしい。妙にそわそわし、食事中も上の空であることが多かった。
(初めての土地に来て、緊張しているのか)
そうだとしたら、やっぱり付いてきて正解だったかな。あんな注意力散漫な状態だと、非常に危なっかしいから。
でも、きっと天体観測を始めたらすぐに活気付くだろう。とても楽しみにしているはずなのだから―
思考を止め、俺は浴室を出た。

理恵が俺の部屋まで迎えに来てくれた。天体望遠鏡と三脚、それに手さげを持っていた。
「随分な荷物だな」
俺が迎えに行くべきだった。自分の配慮のなさを反省した。
「望遠鏡と三脚、俺が持つよ」
「ありがとう」
理恵はもう観念しているのだろう。すぐに荷物を渡してくれた。
「じゃ、行くか」
「うん」

ホテルの前にはビーチがある。俺達はそこで天体観測をすることにした。他に人の姿は見当たらない。
少しばかりの人工光はあるものの、それでも外はたくさんの星が瞬いていた。
空を見上げれば辺り一面に広がる光の点が、実に壮観だった。
隣にいる理恵の顔を見てみると、心ここにあらずといった感じで見惚れていた。
そして、物凄く幸せそうな表情をしていた理恵の顔に、俺も一瞬見惚れてしまった。
それを誤魔化すかのように、少々咳払いをしてから声をかけた。
「やっぱ違うな、俺達の住む場所からみる星とは。こんな綺麗な風景なら毎日見たいと思うかもな」
「・・・・」
理恵は無言で俺の方を向いた。その顔は少し強張っているかのように見えた。

862:名無しさん@ピンキー
10/10/18 02:22:12 rBzLu5AL
支援

863:全天星座
10/10/18 02:22:27 zCrBBEnZ
「どうした?」
「う、ううん」
理恵は明らかに何か言いたそうだった。もう一度問うために口を開こうとしたが、その動作は、
「行こう、雄也」
という言葉に遮られた。
「あ、ああ」
俺達は波が足にかかる3歩手前くらいの位置に来た。なるべく星を近くで見るために。
理恵はそのすぐ後ろに天体望遠鏡をセットした。
「そういえば、ここに来ないと見えない星座って何なんだ」
「今の時期だと、ぼうえんきょう座かな」
「『ぼうえんきょう』って、これ?」
俺は理恵の天体望遠鏡を指しながら言った。
「うん、まぁ。星座全体の形はここ含めてもっと南の方じゃないと見えないの」
「へー、そんなんもあるんだな」
「でも、望遠鏡のおかげで星を見ることができるから、私はお気に入りの星座かな」
「お前は星座、いや星なら全部気に入っているだろ」
理恵は小さく頷いた。そして、少し後ろの方に下がり三脚もセットした。
地面においていた手さげから高そうなカメラを取り出し、さらにそれを三脚の上に固定した。
「そのカメラも三脚もバイトの金で買ったのか」
恐らくそうだろうと確信して聞いたのだが、理恵の答えは違った。
「これは・・・親が買ってくれたの。中学のときに」
俺は特に何も驚かなかった。理恵が星好きなのは当然おじさんもおばさんも知っている。
可愛い一人娘に高価なものをプレゼントしたとしても、別段不思議ではない。
まして理恵は、子供の頃からモノをねだらない奴だった。
だから、少しくらい奮発した代物を子供に送ったからといて、行き過ぎた愛情表現にはならないだろう。
「よかったじゃん」
「・・・うん」
そういって理恵は望遠鏡の前に立ち、星を覗き込んだ。
しばらく俺達はだまっていたが、やがて理恵が「あった」と言った。
「ぼうえんきょう座?」
「うん。見てみる?」
「ああ」
俺は望遠鏡を覗き込んだ。
「え、あれ・・・だよな」
「そうだよ」
「正直よく分からん。つーかちょっと暗くないか」
「他の有名な星座と比べればね」
「よく見つけられたな」
「それは・・・」
そう言った瞬間、理恵は言葉を続けずに押し黙った。
「理恵?」
俺は望遠鏡から目を離し、理恵を見た。

864:全天星座
10/10/18 02:24:29 zCrBBEnZ
理恵は少しそわそわしていたが、やがて俺の名前を呼び、それからこう言った。
「あの赤い星、分かる?」
理恵が指差した方を見てみると、その赤星が俺の目に飛び込んできた。
「分かるよ。昔、お前に何度も教えてもらったからな」
一呼吸置き、俺はその星の名前を告げた。
「アンタレスだろ。さそり座の」
そして、さそり座は俺の誕生星座でもある。
「ぼうえんきょう座は、さそり座の近くにあるから」
「そうなんだ」

理恵はカメラをぼうえんきょう座の方へ向け、何回かシャッターを切った。
写真を1枚撮るごとに、深呼吸していた。

その後、手さげに再び手を入れて、そこから懐中電灯と、一つのルーズリーフ用バインダーを取り出した。
だが、理恵はしばらくその場に固まっていた。その顔は、何かを思いつめているかのようだった。
声をかけようかと思った途端、あいつはそれらを手に持ち、俺の方に歩いてきた。

「雄也・・・その・・」
理恵の目が少し泳いでいる。
「何だ?」
「見てほしいものがあるの」
そう言って、バインダーと懐中電灯を俺の前に差し出した。
「これって、そんなにおどおどして渡すものか?」俺は微笑して尋ねた。
「・・・・」
「まぁ、いいや。拝見させてもらうよ」
懐中電灯を点け、その光をバインダーにあてる。
そこには何十枚ものルーズリーフがしっかりと固定されていた。
そのルーズリーフには、1面に1つずつ星座の写真が貼り付けてある。
各星座の写真の下に、名称と日付と、そして理恵の字で書かれたコメントが記されていた。
「これ、前にも・・・」
そうだ。確か小学生の頃、理恵はノートに星座の写真を貼り付けていた。
でも、俺は「これじゃ、全部入らない」と言った。
だから、バインダーにしたのだろう。ルーズリーフなら何枚も追加もできるし、順番を整理することも容易だ。
「作り直したんだ」
「うん」
何分か無言のままであった。
俺は理恵の作品を見るのに夢中だったし、理恵はそんな俺の様子を一歩下がった距離からじっと見ていたから。
半分くらいまでめくって見て、俺は感想をもらした。
「写真も、前のよりずっと綺麗だな」
日付を見てみると、ほとんどが中学のときのものだった。
あの一眼レフで撮影していたのだろう。
「・・・・」
理恵は相変わらず静かに俺を無言で凝視している。でも、なんだか落ち着かない様子であった。
(理恵?)
その様子が気になった俺は、バインダーを閉じてあいつの傍に向かおうとした。しかし―
「雄也、最後まで見て・・・くれる」
そう懇願されたため、俺は返事をして再び目を通し始めた。でも、今のあいつの声は若干震えていた。
(理恵の奴、どうしたんだよ一体・・・)
俺は理恵の近くに早く行きたいがために、ペースを少々速めて紙をめくっていった。
そして、最後のルーズリーフを見た。

その星座は、S字型に星が並んでおり、真っ赤な星が一際目立っていた。
俺の誕生星座―さそり座であった。
そのコメントには短く、

『雄也の星座。私の、大好きな幼馴染みの』

と記されていた。

865:全天星座
10/10/18 02:26:33 zCrBBEnZ
俺は、思わず理恵の方を見た。
理恵は伏目がちになっていた。
(と、友達として、だよな―)
無論、そうではないことは分かっていた。いくら俺でもそこまで鈍感ではないつもりだ。
理恵は、ここで俺に告白するつもりだったのだろう。だから、ホテルに着いてからはあんなにそわそわと―
まず直接伝えないのが、こいつらしかった。少し恥ずかしがり屋の、俺の幼馴染みだから。
「ごめんね・・・遠回りな告白で・・・」
やはりそうだった。理恵が俺のことを―
やがて、理恵は堰を切ったかのように話し始めた。
「・・・ずっと、好きだった。子供の頃からずっと・・・」
そんなに前から、なのか。
「でも、言えなかった。もし、断られたらと思うと―」
俺は言葉の続きを待ち続けた。
「私は、今のままでも十分だったから。たまに話しかけてもらえるだけで・・・」
理恵の声は震えていた。
必死になって自分の想いを俺に告げてくれているのだろう。
こんなに一方的に話してくる理恵を、俺は見たことないから。
「今まで雄也は男の子としか遊んでなかったから、私もどこかで安心しきっていた」
確かに、俺はこれまで女子と親しく話していたことはなかった。
「だけど、雄也が女の子と楽しそうに話しているのを見て、このままじゃいけないって・・・」
理恵と同じクラスの女子と、カラオケに行くために教室に集まり、談笑していた時か。
これで、あの時理恵が切なそうな表情をしていた謎が解けた。―やはり見間違えではなかったのだ。
「・・・だから雄也に彼女ができる前に、ちゃんと告白しようと思ったの。
 失敗してもいいから。ただ、雄也が彼女と楽しい学生生活を過ごす中で、私のことを忘れてしまう前に・・・」
―俺を買いかぶりすぎだよ、理恵。
ちょっとおしゃべりして、ちょっと遊びに出かけたぐらいで、彼女なんて俺にはできなかったよ。
それに、例え彼女ができたとしても、俺がお前を忘れるわけがない。
ガキの頃からいつもそばにいてくれた、お前のことを―
「ごめんね。こんなことのために、こんな遠くまで連れ出して・・・」
この頃、理恵が妙に積極的だったのは、このためだったんだな。
「でも、ありがとう。雄也とここで見た星空は、最後だとしても、最高の思い出になったよ」
礼を言いたいのは俺も同じだった。こんな綺麗な景色を見れた上に、何年も俺を好いていてくれたなんて―

866:名無しさん@ピンキー
10/10/18 02:27:02 2q3iTpz5
惜しみないGJを贈らせてもらう
続きも楽しみに待ってる

867:全天星座
10/10/18 02:28:19 zCrBBEnZ
そして、理恵は深呼吸をし、少しばかり潤んだ瞳で俺の目を見据えてこう言った。
「雄也、好きです。・・私と・・付き合って下さい・・」
もし波が来ていたら、その声はかき消されていただろう。それほどまでに、か細い涙声だった。
だが、俺にははっきりと聞こえた。そして、俺も自分の想いを乗せて返答をした。

「はい」

俺は、理恵と恋人同士となることを望んだ。
「・・・・」
「これからもよろしく頼むよ、理恵。だから、最後なんて言わないでくれ」
そう言い終わった瞬間、理恵の頬を一滴の涙が伝った。そして、その体はかすかに震えだした。
俺はそんな幼馴染みの前に行き、その震えを止めんばかりに彼女を抱き寄せた。
「ありがとう、理恵。長年慕ってくれてて」
「・・・・」
「俺も好きだよ、理恵のこと」
そう言って、俺は理恵の顔を覗き込んだ。その顔は、涙に濡れながら微笑んでいた。

・・・・・・・・・・・・・  

理恵からの告白はきっかけに過ぎなかったのかもしれない。
さそり座に書かれていたあのコメントを見たときから、俺の気持ちはもう固まっていたから。
もし、彼女が自分の口から何も言わなかったときには、俺の方から言い出していたことだろう。
「俺もお前が好きだ」と。

多分、俺は子供の頃から無意識に理恵のことを好きだったのだと思う。
今にして思えば、思い当たる節はかなりある。
―浪費癖のある俺が、大好きなお菓子や玩具を我慢してまでコツコツと貯金して双眼鏡を買えたこと。
―たった一人で星座を見に行くと言った幼い頃の理恵に、「俺もついて行く」と言ったこと。
―何となく理恵といるのが気恥ずかしくなって、友達との遊びを理由に距離を置くようになってしまったこと。
―思春期を向かえ、身近な異性、つまりは理恵を少しでも性の対象として意識しないように努めたこと。
特に最後のは決定的だ。中学に入って、理恵は体つきも本当に女の子らしくなっていったから。
ずっとそばにいれば、いつしか理恵に手を出してしまいそうで怖かった。それで今までの関係が崩れたりしたら。
まして、天体観測なんて夜にやるものだから、余計に行きづらかった。

小さい頃は理恵が喜びそうなことをやりたかった。
大きくなるにつれて理恵を避けるようになった。でも、たまには一緒に話したかった。
それらは全部、理恵のことが好きだったからだろう。

その感情を、理恵に告白されるまで自覚できなかったなんて、やっぱり俺は鈍感だな。

・・・・・・・・・・・・・

「でも、理恵」
夜のビーチで、俺は幼馴染みに話しかけた。
「もしもだぞ。もし、俺がノーって言ったらどうしたんだ」
「えっ」
「旅行は2泊3日だぜ。残りの日数、すげー気まずかっただろうな」
「・・・・」
「へへっ、本当にお前って、たまに抜けているところあるよな」
俺は理恵に笑いかけた。すると、向こうもつられて一緒に笑った。

俺達はしばらく笑い合っていたが、やがて理恵が微笑みを止めた。
それを契機に、お互い見つめあった。
そして、やがて理恵がそっと目を閉じた。
俺にはその意味が分かった。覚悟を決めよう、男として。

こうして俺達は、幾千の光点が瞬いている中で、口付けを交わした。

868:784
10/10/18 02:31:26 zCrBBEnZ
以上です
無駄に長くなってしまったことを本当にすまないと思う
次スレに行くまでには何とか完結させたいと思います

869:名無しさん@ピンキー
10/10/18 02:31:58 rBzLu5AL
GJ!
そしてまだ続く

870:名無しさん@ピンキー
10/10/18 03:01:25 UMRzM5Gl
かおるさとーさん、ありがとう

871:名無しさん@ピンキー
10/10/18 08:21:45 FBPS3crg
こんな幼馴染はいつ俺の前に現れるんだ・・・?

872:名無しさん@ピンキー
10/10/18 08:44:55 9w7s5PGU
iPhoneから書き込みテスト

873:名無しさん@ピンキー
10/10/18 08:49:21 9w7s5PGU
おお、書き込めた。

かおるさとー氏も784氏もGJ!
抜群の信頼感があるのにお互いの思いに無自覚だったり素直になれなかったりするのが幼馴染のいいところだよね。
この焦れったい距離感がうまく書けてて、続き読むのが待ち遠しいっす。

874:名無しさん@ピンキー
10/10/18 12:42:55 tJezQdDG
>>887
とってもとってもGJです。

875:名無しさん@ピンキー
10/10/18 16:16:53 EnXFHlW+
>>784
GJ!
気弱そうなのに沖縄旅行など思い切った行動。
美味しく頂きました

876:名無しさん@ピンキー
10/10/18 18:00:28 F+rjua+P
すごいの発見したぞ!
URLリンク(www.qrbeen.com)

877:名無しさん@ピンキー
10/10/18 22:16:19 LW0PUznl
お二人ともGJでした。小ネタ投下させて頂きます。
ハロウィンネタで幼なじみ成分少なくエロなしです。
嫌な方はスルーでお願いします。


オレ達が自室で寛いでいると、
「とりっくおあとりーとお菓子をくれなきゃ悪戯しちゃうぞ」
と、いきなり何の前フリもなく隣に座っていた幼なじみ兼恋人のA子が言い出した。
「何言ってんだ?てか、英語のつもりか?明らかに日本語の発音だろそれ」
オレはA子の戯れ言にいつも通りバッサリ言い捨てる。
「も~今日はハロウィンなんだよ~お菓子をくれないと悪戯されちゃう日なんだよB男君~」
顔をムスッとさせながらA子が言いつのってくる。
ハロウィンなのは知っているが、お菓子を上げないと悪戯される日って…どういう解釈の仕方なんだ…。
はぁ…と溜め息を吐きつつオレはA子に向き直った。
「じゃあ悪戯してみろよ」
「ふぇ?」
オレの言葉に間抜けな声を上げるA子。顔まで間抜けヅラになってるぞ。
「だから菓子なんて用意してなかったんだよ…だから悪戯しろよ」
「…」
オレの提案に面食らったのかA子が挙動不審な態度を見せる。
そんな顔も我が幼なじみながら、馬鹿わいい…と思ってしまうオレは
病院に行って検査してもらった方が良いのだろうか。


878:名無しさん@ピンキー
10/10/18 22:18:43 LW0PUznl
しばらくうーうー唸っていたかと思うと、急に顔を上げオレを見つめる。
「ふにゅ!」
変な掛け声と共にA子がズボンの上からオレの下半身…平たく言うとオレの息子をむんずと掴む。
「ふご!?」
いきなりの行動にオレまで変な声が出てしまった。
「な…何してんだお前は!?」
目の前でオレの息子をモミモミフニャフニャしているA子に声を掛ける。
あ…声が上擦ったかもしれん。
「ぶーB男君、前にここがオレの弱点だって言ってたから…」
そう言いながらも、なおも息子を揉んでくるA子。あ…マズい息子が少し固くなってきたかも。
「前にエッチした時に、その…おちんちんが弱いって言ってたから…だから悪戯です!」
勝ち誇ったように言いながら、延々と揉んだりさすったりしてくるA子。
「お前…馬鹿だろ!」
言うが早いかオレはA子をサクッと持ち上げベッドに連れて行った。
「ななな…なんでB男君~!?」
いきなりの事にA子はバタバタと手足を振り回すが、そんな物じゃオレの息子はおさまらないぜ。
「今度はオレが悪戯する番だからな…覚悟しろよ?」
そう言うとオレは恋人の唇を塞いだ。



以上です。

879:名無しさん@ピンキー
10/10/18 23:40:24 Ioa517Bn
>>887
GJ
続きが楽しみだ

880:名無しさん@ピンキー
10/10/22 22:15:39 U23hunTh
>>886
ありがとう。
ただA子より女とかつけた方が良かったかな

881:名無しさん@ピンキー
10/10/22 23:35:33 X4fEM9dr
その昔
プロジェクトA子というアニメがあってな…

882:名無しさん@ピンキー
10/10/25 00:43:40 AvnP/GC5
続き期待

883:784
10/10/25 01:32:26 RqLLFIW1
>>886の続きを投下します
今回がラストです
こんな長々とした文に付き合ってくれた人に感謝です

884:全天星座
10/10/25 01:35:38 RqLLFIW1
俺達はホテルに戻った。
望遠鏡やら三脚やらを置きに行くため、俺は理恵の部屋に寄った。
「ありがとう」
荷物を置いた瞬間、感謝の声が聞こえてきた。
「どういたしまして、っと」
時計を見てみると、もう真夜中を過ぎている。
理恵の方をちらりと見た。今はうつむいていて髪をいじっている。
(本当に、こいつと恋人同士になったんだよな・・・)
もちろんそうだ。その証を、先程ビーチでしたばかりなのだから。
(でも、恋人同士になったら普通は・・・その・・キスだけじゃなく・・・)
俺は、健全な思春期男子の例にもれず、とんでもない妄想をしてしまった。
そんな雑念を払拭するように、俺は理恵に言った。
「じゃ、俺も自分の部屋に戻るよ。おやすみ」
そして、この部屋を立ち去ろうとした。
―しかし、それは叶わなかった。理恵が俺の袖をつかんで引っ張ったのだ。
「ど、どうした、まだ何か用か?」
「・・・・」
「おーい」
反応がなかったので、もう一度尋ねた。その瞬間―
「行か・・ないで・・・」
消え入りそうな声で、理恵が俺にそう告げてきた。
「えっ」
「・・・・」
理恵は無言の上目遣いで俺を見つめいる。
その可愛らしい顔を見て、俺はますます情愛を感じた。そして、同時にある欲望も。
だが―
「な、何言っているんだよ。もう遅いから寝ないと・・・」その衝動を消そうと声を少し張り上げた。
しかし、理恵は俺の顔を見据えて袖を離さないでいる。
高鳴り続けている俺の鼓動は、一向に収まる気配がない。このままでは、本当に欲望の赴くままに行動してしまう。
そんな俺に、さらなる追い討ちがかけられた。
「一緒に・・・いて・・」
俺の心臓は爆発寸前だった。理恵だって子供じゃない。それがどういう意味か分かっているだろう。
「ば、馬鹿言うなよ。俺はおばさん達からお前を託されているんだぞ」
その信頼を、自らの手で裏切るわけには行かない。
「大丈夫だよ、雄也だから」
突然、俺は甘い香りと柔らかい感触に包まれた。―理恵が抱きついてきたのだ。
「お願い・・まだ・・・離れたくない。せっかく雄也に、好きって言ってもらえたから・・・」
もう、理性は残っていなかった。俺も理恵を抱きしめ、そしてゆっくりとベッドの上へと押し倒した。

885:全天星座
10/10/25 01:37:49 RqLLFIW1
「いいんだよな?」俺達は体勢を立て直し、ベッドに垂直に座って見つめ合っている。
理恵は静かに頷いた。
「今日は、・・・大丈夫な日だから・・」
「お前・・・」
「好きなこと・・何でもしてくれていいから・・」
おずおずしながら、俺の目をじっと見てこう言った。
「他の女の子とは・・・しないでね・・」
その言葉を聞き、俺の中で何かが弾けた。衣服を脱ぎ、まずは上半身を裸にする。
そして、今度は理恵の衣服を脱がすのを手伝った。
丸みを帯び、柔らかそうな肌色の上半身が現れ、今はブラジャーだけが着いている。
その谷間を見て、俺の愚息は膨れ上がっていく。しかし、ズボンがそれを妨げる。
俺は急いでジーンズを脱いだ。もう、身に着けているのはパンツだけである。
理恵の方を見てみると、ブラのホックに手をかけている。
やがてホックを外し終えたが、そのままブラをとることなく、手で胸を押さえている。
羞恥心からか、その頬は真っ赤に染まっている。
「それじゃ、見えないぞ」
俺がそう言ったら―意を決したのだろう―ゆっくりと手を離し、ブラを落とした。胸があらわになる。
理恵の乳房は、とても綺麗だと感じた。
当たり前だが、一緒に風呂を入っていた頃の体つきとはもう違う。立派に成長した女性の体だった。
胸は大きくもなく、かといって小さくもなく、形は凄く整っている。
それを見た俺は、もう欲情にかられるばかりだった。

「理恵」
俺は、最愛の幼馴染みの名前を呼びながら顔を近づけ、キスをした。
さっきの軽い口付けとは違い、今度はもっと踏み込んだものだ。理恵は目をつむり、すぐ受け入れてくれた。
「ん・・・ぁ」
理恵が吐息をもらす。俺はさらに舌を絡めていった。ぴちゃぴちゃと音がする。
「あ・・んぁっ・」
俺の舌は理恵の口内を侵食していく。とても甘い味だ。
「はぁ・・んっ・・・んぁ・・」
理恵の息遣いが少しばかり荒くなってきた。
だが、俺はもっと近くに理恵を抱き寄せた。その瞬間、乳房が俺の胸に当たった。
その感触は、何ともいえないものだった。

俺は深い口付けを止め、口を拭いながら理恵の顔を見た。
向こうも同様に口を拭い、俺を見ている。
右手を理恵の頭の後ろにやり、左手でゆっくりと体を押し倒した。
そして、そのまま左手で右の乳房をやさしくつかみ、揉んでみた。
最高に、柔らかい感触がした。
「あ・・やぁ・・」
理恵はかすかな声をもらす。どうやら気持ち良さを感じているようだ。
幼馴染みの聞いたことない嬌声に、俺は興奮しっぱなしだった。
もっと快楽を与えたくて、今度は両手で左右の胸を揉んでみた。
「んぅ・・あぁ・・ん」
その乳房の感触と、快楽の混じった切なげな声を聞いたことにより、俺の逸物はもうはち切れんばかりに勃っている。

886:全天星座
10/10/25 01:40:48 RqLLFIW1
右手で理恵の乳首をいじりながら、俺は左手を股間の方へと伸ばしていった。
スカートを脱がせ、理恵を下着一枚の姿にした。
その布の上から若干の膨らみに手をかけ、割れ目をなぞった。
「きゃっ・・・んぁ・・ん・・」
理恵は、秘部に触れられた瞬間驚いたが、すぐに俺の行為を許容してくれた。
「あぁ・・んぅ・・・ふぁあ・・あ・・」
今までの比ではないくらい、理恵は感じている。
俺はすぐさま最後の下着を脱がせようとした。
理恵も俺の意図に気付いたのか、協力してくれた。
そして、俺は思わず生唾を飲んだ。
理恵の大事な部分には、少しばかりの産毛が生えていた。―はじめて見る、“女”へと変貌を遂げた幼馴染みの性器。
「雄也、その・・・」
申し訳なさそうに理恵が声をかけた。顔全体が真っ赤だ。
「あ、悪い」
俺は理恵の大事なところを凝視しすぎていた。

今度は直に、割れ目の少し奥に触れてみる。
「あぅ・・」
再び嬌声が聞こえた。そして、その性器はもう充分濡れていた。
「ん・・あぁ・・・。ゆ・・うや・・」
理恵が俺の名を呼ぶ。それが合図なのだろう。
「理恵、じゃあ、入れるぞ」
「・・・うん」
俺は恐ろしいくらいに緊張している。だが、それは理恵も同じであろう。
だから、俺は平静を装って安心させなくてはならない。男の俺がリードしなくては。
俺は理恵の股を広げた。そして、その間に体を入れ、俺の男根を理恵の割れ目に近づけた。
ゆっくりと、挿入していく。
「ん・・んあぁ!」
突然、理恵が聞いたこともない大声を出した。やはり痛かったのだろう。
「り、理恵」
俺は情けなく慌てふためいた。そんな俺に理恵が、
「だ、大丈夫だよ」
と微笑みかけてくれた。
「ごめんね、驚かせて・・・。平気だから、最後まで続けて・・・」
その言葉に感謝し、俺の男根は理恵の中に侵入し続けていった。
「あっ・・ん、んっっ・・」
理恵は小さな声で必死に痛みに耐えている。彼女の両手はベッドのシーツを固く握り締めている。

887:全天星座
10/10/25 01:42:02 RqLLFIW1
何とか最後まで挿入できた。
この世のものとは思えないほどの気持ちよさが、俺に押し寄せる。
「理恵、入ったよ」
俺は労わるつもりで、彼女の頭を撫でてみた。
「はぁ・・はぁ・・んぁ・・」
理恵は荒い呼吸を上げている。ずっと痛みに耐え、頑張ってくれたのだ。
しかし、俺の方はというと、初めて味わうあまりの気持ちよさため、早くも射精感を感じていた。
だが、理恵が頑張ってくれた矢先に、俺だけ絶頂に達してしまうわけにはいかない。
一刻も早く、一緒に―
「動くぞ」
「・・うん」
その返事を聞き、俺は腰を前後に振った。
「ああぁ、あ・・あん・・」
理恵の艶っぽい喘ぎ声が響く。
「あっ、あ、あぁん・・」
その声は、とても俺を興奮させてくれるのだが、少し大きかった。ゆえに、
(部屋の外まで聞こえないだろうか?)
俺はそんな懸念を、欲情にまみれながら、頭の片隅に抱いた。
ここはラブホテルではない。もし、この喘ぎ声を誰かに聞かれたら―
俺は理恵と視線を交わした。
理恵は、そんな俺の思いを感じ取ってくれたのだろうか。右手で自らの口を塞ぎ、声を若干押し留めてくれた。
「んむぅ・・・ん・・んぁ・・」
幾分ボリュームの下がった、快楽のくぐもり声が聞こえる。
「ん、んぁ、ん、んぅ・・」
性交の最中でも、そんな風に気遣ってくれる様を見て、俺はますます理恵をいじらしく思った。

「理恵、もう・・」
何分かは堪えていたが、ついに限界を迎えた。こみ上げる射精感をこれ以上我慢できそうにない。
「んっ・・ん・・雄也・・」
彼女の方も、もうすぐでイキそうな様子であった。
とはいえ、いくら安全日だとしても中出しはまずい。
俺は、絶頂を迎える瞬間に逸物を抜いた。
そして、解放された男根から、勢いよく精液が飛び出した。白濁が理恵の裸体にかかる。
「はぁ・・・はぁ・・はぁ・・」荒い呼吸が聞こえる。理恵もどうやら一緒に絶頂を迎えたようだった。
かかった精液に少しも目もくれず、体を震わせて息を弾ませている。
俺はティッシュをとり、自らで発した液体を拭く。
そんな俺を、理恵は快楽の余韻を味わいながら見守っていた。

888:全天星座
10/10/25 01:44:01 RqLLFIW1
「シャワー、浴びてくるね」
「ああ。・・・悪いな」
「ううん。ありがとう、中に出さないでくれて」
そう言って、理恵は浴室へと入っていった。やはりその辺は、いくら安全日といえど気にしていたのだろう。

手持ち無沙汰になった俺は、少々自己嫌悪に陥っていた。
というもの、結局欲望に勝てず、嫁入り前の女の子とつながってしまったからだ。
だが、もう後悔しても遅い。・・・実際は、物凄く良かったから後悔なんてないのだが。
必ず責任はとろう。だから理恵と―
(いやいや、飛躍しすぎだろ俺。気が早すぎるって・・・)
などと、しばらく考え事をしていたら、理恵が一糸纏わぬ姿で浴室から出てきた。
「どうしたの?」
俺の様子を見るなり、すぐにそう尋ねてきた。これからも、こいつに隠し事はできそうにないな。
「お前の両親に、なんて顔を合わせればいいかなって」
俺は正直に胸中を打ち明けた。
「・・・・」
理恵は無言で俺の背後に行き、そしてそのまま抱きついてきた。
「理恵?」
「・・・大丈夫だよ」
体が密着しているため、ふくよかな胸の感触を感じる。甘い吐息が耳にかかる。体がびくりとした。
「だって、少なくともお母さんは、私が雄也のこと好きなの知っているから」
「えっ」俺は目を丸くした。
「旅行に行く前日、私になんて言ったと思う?」
「用心しなさい、とか・・・?」
「頑張りなさい、って」
・・・全く、あの人は。理恵の生みの親とは思えないくらい、その、…大らかな性格というか。
「それに、私の方から誘ったようなものだから」
「けど―」
「もう止めよう。私は、嬉しかったよ・・・」
それは俺も同様だ。振り向いて理恵を見る。目が合った瞬間、彼女が破顔した。
俺はまたもや欲情を感じてしまった。本当に、自分の若さ溢れる体が嫌になる。
もう逸物は最大限に膨れ上がっていた。落ち着いてくれそうにはない。
「理恵・・・もう一回いいかな?」
理恵は頷き、自らベッドへゆっくり倒れこんだ。そして、俺をじっと見つめ、
「雄也・・・」と俺の名を呼んだ。
こうして、俺達は再び愛し合った。

889:全天星座
10/10/25 01:45:22 RqLLFIW1
揺れを感じる。
「・・きて・・」
誰かの声が聞こえる。いや、この声は―
「起きて」
理恵だ。意識が覚醒する。俺を起そうとしているのだ。
俺はゆっくりと目を開けた。目の前には、慣れ親しんだ幼馴染みの顔があった。
「おはよう、雄也」
「・・・おはよう」
そう挨拶を交わし、俺は起床した。

理恵はすでに衣服を纏っている。時計を見てみると10時を過ぎていた。
夜遅くまで、行為に及んでいたツケであろう。
理恵は9時くらいに起き、洗面や着替えなどの身支度をしてから俺を起こしたそうだ。
「お前が起きたときに、一緒に起してくれたらよかったのに」
「だって、あまりにも気持ちよさそうに寝てたから」
そんな会話をしながら、俺も朝の身支度をしている。
「しっかし、久しぶりだよな、お前に朝起されるの。何年ぶりかな?」
理恵が首をかしげた。そのくらい、久々なのだろう。
「よし」俺は着替え終えた。「飯でも行くか」
「うん」
俺達は部屋を出た。

2日目の午後は、観光をし、そして夜には再び星を見た。
今は、また理恵の部屋にいる。
「これって、タイトルとかつけないのか?」
俺はバインダー、すなわち理恵が撮った星座写真集を手にして言った。
「うーん・・・」理恵はうなっている。
「まぁ、いいや。それにしてもよく集めたもんだよな」
再び目を通す。聞いたことのない星座も多く収められている。
そして、日付はほとんどが中学の時もの。多分、たった一人で撮り続けていたのだ。
俺は自省した。どうして一緒にいなかったのだろう。
理恵は俺のことを子供の頃から好きだといってくれた。
一緒にいて星空を撮っていれば―自惚れかもしてないが―この写真集は俺達にとってもっと思い出深いものとなったはずだ。
過ぎ去った時間はもうかえって来ない。
俺は理恵を一瞥した。その視線に気付いた彼女は、微笑みながら「どうしたの、また考えごと?」と聞いてきた。
その笑顔を見て、俺は吹っ切れた。
過ぎた時間を嘆いても仕方がない。これからが肝心だ。
理恵とたくさんの思い出を作っていこう。―子供の頃のように、二人で一緒に。
「何でもねーよ。ちょっと決心しただけ」
「何を?」
「帰ってからも、またお前と一緒に天体観測しようって」
理恵はとても嬉しそうな声で「ありがとう」と言ってくれた。

890:全天星座
10/10/25 01:48:26 RqLLFIW1
「じゃあ、部屋に戻るよ。明日は早いからな」
飛行機を乗り過ごすわけには行かないので、今日は情事をしないことにしていた。・・・ゴムもないしな。
「おやすみ」
「ああ、おやすみ」
理恵の部屋を出て、俺は自分の部屋まで戻りベッドに潜り込んだ。


飛行機の中で、理恵が俺に尋ねた。
「今年の冬休みも、宮古島に旅行していいかな?」
「・・・今度は何の星座だ?」
「レチクル座、かな」
「れちくる?」
「望遠鏡に、また小さな望遠鏡みたいなのが付いてたでしょ。ファインダースコープって言うんだけど」
「ほぅほぅ」
「本体は視界が狭いから、そのファインダーでまずは星を探すの」
「ふむふむ」
「それで、そのファインダー越しに見える、照準を合わせるための十字線をレチクルって言うの」
「へー、じゃあ十字型の星座なのか」
「ううん、ひし形」
「・・・何だよそれ」
「でも、今回見たぼうえんきょう座とは縁があるよね」
「確かに、今の話を聞く限り、望遠鏡とレチクルはいつも一緒だもんな」
「・・・うん、そうだよ。いつも・・・一緒なの」
こんな話を交えながら、俺達は帰路についていた。


見慣れた道を歩いている。俺達の家までと続く、理恵と子供の頃によく歩いたあの直線道だ。
「今日は、あまり見えないな」
夜空は雲で覆われていた。
「でも、月は見えるよ」
雲の隙間から、月だけが運よく顔を出していた。
「ホントだ」
しばらく俺達は無言だった。キャリーバッグを引きずる音だけが響く。
やがて、俺が声を出した。

891:全天星座
10/10/25 01:49:21 RqLLFIW1
「・・・俺達が初めて会った時のこと、覚えているか?」
夜に月を見た俺は、唐突に昔のことを思い出した。
「・・・うん」
「月を見ているお前に、俺が急に声をかけたんだよな」
「驚いて、何ていったらいいか戸惑っちゃったよ」
「はは、それは悪かったな」
「ううん。むしろ、ありがとう。あのとき声をかけてくれたから、今この時間があるんだよ、きっと」
「確かにな」
そして、もう一度俺は月を見た。そんな俺を見て、理恵も空を見上げた。
「綺麗な満月だったよな」
「中秋の名月だもんね」
「そうそう。その言葉も、昔お前から教わったな」
「・・・また、見たいね。二人で・・・」
理恵が俺を見つめてそう言った。その顔と言葉で、俺は何故だか照れてしまった。
それをごまかすために、冗談めかして
「けど、その日に限って、今日以上の曇り空で月が隠れたりして」
と言った。すると、理恵が少し悲しそうな顔で「あっ」と声をもらした。
そんな表情を見て、いたたまれなくなった俺はすぐに
「け、けど、今年がダメでも来年があるし、来年がダメでも再来年が―」
と告げた。そうしたら理恵が、
「・・・ありがとう・・・」
と嬉しそうにお礼を言ってきた。どうやら気を取り直してくれたようだ。

すると突然、理恵が自身のバッグを引きずる手を右手から左手に替え、右腕を俺の左腕に絡めてきた。
そして―
「雄也、大好き・・・」
と言ってくれた。
同じ言葉を返すのが気恥ずかしかった俺は、代わりにその小さな右手を握った。
理恵は少し驚いたようだが、すぐに握り返してくれた。
俺達はこのまま、手をつなぎながら自宅へと向かっていった。


892:全天星座
10/10/25 01:50:25 RqLLFIW1
季節は12月になり、俺達が付き合い始めて約4ヶ月が経った。
休日にはデートをしたり、夜には天体観測をしたり、・・・たまにはエッチをしたり―そんな風にして日々は過ぎていった。
俺は理恵のおかげで、思い描いていた理想の高校生活を過ごせている。

だが、いま俺はちょっとしたピンチを迎えていた。

「本当に、悪かった。ごめん」
「・・・・」
俺は現在、理恵の部屋にいる。昨日のことを謝りにきたのだ。
彼女はベッドの上で枕を抱えながら座って、俺を見ている。―ややふくれっ面で。
「あの雰囲気の中で、俺だけ帰るわけにはいかなかったんだよ」
実は昨夜、理恵との天体観測をすっぽかしてしまったのだ。もちろん、連絡は入れたが。
「男にも付き合いってものがあるんだからさ」
「それは分かっているけど・・・」
昨日は夜遅くまで、彼女に振られたという友達をみんなで慰めていたのだ。
俺は、この世の終わりみたいな顔していたそいつのことが気がかりだった。
それに何より、そんな奴の前で「俺、これから彼女と約束があるから」なんて言って抜け出せるわけがなかった。
「頼む理恵。今回ばかりは許してくれ、いや、下さい」
「・・・でも、昨日がピークだったんだよ。ふたご座流星群」
「うっ」
「すごく綺麗だったよ。一緒に見たかったのに・・・」
そう言って、理恵は枕に顔をうずめてしまった。

困った俺はある行動に出た。
理恵の机の上にあるバインダーの表紙にペンで文字を書いたのだ。
この先も、理恵と星を見ていくことを誓った証として。
「理恵」
俺が名前を呼ぶと、枕から顔を上げてこちらを見た。
「これ、いつか絶対完成させような。二人で一緒に」
俺は理恵にバインダーをつき出している。
「タイトルに偽りがあっちゃ、ダメだもんな」
そう言って俺は理恵の機嫌を直そうとした。
「・・・もう少し、綺麗な字で書いて欲しかったな・・・」
「なっ」
「ふふ、冗談だよ。ごめんね」
理恵が笑った。機嫌を直してくれたみたいだ。そして―
「ねぇ、雄也。今日も一緒に見てくれる?」
と言った。俺の返事は決まっている。
「いいぜ、もちろん」
その言葉を契機として、理恵はベッドから腰を上げて、俺の腕をつかんだ。
「行こう」
「ああ」
そう言って俺達は部屋を出た。今日も、星空を見るために。

部屋を出る直前、俺は手に持っていたバインダーを机の上に置いていた。
その表紙には、俺の無骨な字で『全天星座』と書かれていた。

[完]

893:784
10/10/25 01:56:11 RqLLFIW1
以上です
それでは失礼します

894:名無しさん@ピンキー
10/10/25 02:01:17 b1ZZENHB
GJ

リアルタイムで読めてよかった
ほんとかおるさとーさんの作品は安心して読めるな

895:512
10/10/25 04:08:02 GzRd6zGZ
どなたかこんな幼なじみを私にお譲りください。
とりあえず1ダースほど。

896:名無しさん@ピンキー
10/10/25 05:23:14 zkmnl54+
>>912
GJ! 星好きというのが最後までいい空気を醸し出してておもしろかった

>>913
違う人だぞ

897:名無しさん@ピンキー
10/10/25 09:03:06 wpkcYmee
>>912
GJです
理恵ちゃんが可愛い過ぎる

>>913
いや違う人だろw

898:名無しさん@ピンキー
10/10/25 09:33:13 27R0ovGP
>>912
最高でした・・・

899:名無しさん@ピンキー
10/10/25 11:22:38 nwa1c0c1
俺にもこんな幼馴染くれ、いや、下さい!
ちくしょう・・・ちくしょー!!

900:名無しさん@ピンキー
10/10/25 18:31:36 60gs0TZn
>>912
お母さ~ん。GOOD

901:名無しさん@ピンキー
10/10/25 22:32:19 8fYs6JQ1
>>912
本当にGJです

>>915-916
違う人ってどーゆーこと?

902:名無しさん@ピンキー
10/10/25 22:35:53 8fYs6JQ1
すまん
なんでもなかった

>>912
もいちどGJ

903:名無しさん@ピンキー
10/10/26 00:05:53 u64J9Jk4
>>912
いいはなしだなぁ
末永くお幸せに…

904:名無しさん@ピンキー
10/10/26 08:16:55 87+IjQgx
>>912
ありがとうございます

905:名無しさん@ピンキー
10/10/27 17:11:27 xd2pxHvo
元々友達だったし、活動的でもあったのでジーパンとシャツが定番の彼女
ただブラつくつもりで近所だってのもあり…彼女は初デートにジャージで来た orz

俺「もう少しどうにかならん?ジャージはないだろ」
彼女「アンタとでかけるのになんでお洒落しなきゃなんないの」
俺「別にいいけどさぁ…なんか寂しい(TT)」
したら急に手を引かれ路地裏に連れ込まれ
「スカートだと履かない訳にはいかないよ」と言われ俺の手を尻に・・・

滲みの存在を忘れてた様で、それ以来ジャージは履いて来ないw




906:名無しさん@ピンキー
10/10/31 00:29:56 qL4SpWC8
俺の知り合いは幼馴染みに告白したら
幼馴染みがビックリし過ぎて体調崩して
3日学校休んだらしい
因みにその幼馴染みは幼稚園~高校まで
その3日以外は休んだ事無いとか

907:名無しさん@ピンキー
10/10/31 01:55:10 QyavKmdl
問題は幼馴染の返事次第でリアルの幼馴染の話するなよかいい幼馴染ですねかが変わることだが

908:かおるさとー ◆F7/9W.nqNY
10/10/31 02:10:05 4JZnHj+f
こんばんは。
>>866の続きを投下します。
『In vino veritas.』第二話です。
今回は素面です。

909:かおるさとー ◆F7/9W.nqNY
10/10/31 02:11:57 4JZnHj+f
 
 物事は一度目より二度目の方が難しい、という格言があったような気がする。
 ところで一度目を憶えてない場合、それはどうなるんだ?



      ◇   ◇   ◇



 買い物に出かけたのは、昼の一時を過ぎてからだった。
 華乃との話が済んだときにはもう十一時を回っていた。身支度を整えて朝食兼昼食を
摂るころには、すっかり午後になってしまっていた。
 戸締りをして、部屋を後にする。俺たちの住む部屋は一階奥の105号室で、廊下をまっ
すぐ抜けるとそのままマンションの出入口に出ることができる。
 外は快晴だった。空には雲のかけらさえなく、絶好のお出かけ日和だ。
 華乃はそんな空を仰ぎながら、ニコニコしている。
「なに笑ってんだよ」
「んー、いい天気だしね」
「晴れの日はいつもニヤニヤするのかお前は」
 気持ち悪いだろ。
「そんな不審人物になった覚えはないよ。そうじゃなくて、お出かけするの久しぶりだから」
「……そうか?」
 俺たちは並んで商店街へと歩き出す。
 華乃はなかなか規則正しい生活を送っている。講義もサボらず毎日出席し、バイトにも
精を出している。夜更かしは、してもせいぜい日付が変わるころまで。朝も七時には起き
るし、約束通り食事の用意も欠かさない。食事に関しては俺は別にそこまで律儀に守ら
なくてもいいと思っているが、料理は好きだからと、華乃がそれを怠ることはない。
 そんなわけで、華乃は活動的な毎日を過ごしている。外に出ない日はない。だから
華乃の久しぶりという言葉に違和感を覚えた。
「久しぶりだよ。涼二と一緒にお出かけするのは」
 あ。
「……そういえば最近ないな」
「そうだよ。誰かさんは本当に生活が不規則だもんね」
「すまん」
 俺の最近の生活は実に大学生らしいものだ。
 はっきり言ってしまうと、遊んでばかりだ。合コンには行かないが、友達とよく呑みに行く。
週に一回は麻雀も打つ。タバコはやらないが、酒や賭け事はそれなりに好きなのだ。
 それが原因で、華乃とは一日顔を合わせないこともある。
 華乃の作った料理を冷蔵庫から取り出すとき、いつも申し訳なく思うが、しかし俺はこの
生活を改める気はあまりなかった。
 部屋にいると、どうしても華乃を意識してしまうためだ。
 夜などは特にその思いが強くなる。華乃は俺の前だと無防備な姿をよくさらすし、幼馴
染みだからか遠慮がない。それが俺の心を大いに乱す。
 精神衛生上、大変よくない。そう思って夜遊びをするようになったのだが、しかしそんな
俺の意図も夕べの件で無駄になってしまった。
 まあ憶えてないので実感自体は薄いわけだが。気まずさだけがあるというのも理不尽な
話だ。

910:かおるさとー ◆F7/9W.nqNY
10/10/31 02:14:25 4JZnHj+f
「でも、これからはもう少し控えることになるんじゃない?」
「? なんで」
「だって、これから夜は忙しくなるよ」
 呼吸が鈍った。
「何驚いた顔してるの? 今から買いに行くのだって、それが目的でしょ」
 まったくその通りである。
 食料の買出しも兼ねてはいるが、一番の目的は、その、避妊具を買いに行くことだったり
する。
「い、いや、それは」
「……うーん、覚悟が足りないなあ」
 華乃は腕を組んで、わざとらしく唸った。
「もう少し度胸が必要だね。じゃないと、いざというとき女の子をリードできないぞ」
「悪かったな」
「ふふ、でもちょうどいいかもね」
 華乃は小さく笑った。
「何がだよ」
「涼二にとっても、いい練習になるってこと」
 俺は咄嗟に言葉が出ない。
「お互いこれで経験値を上げてさ、素敵な相手を見つけられればいいんじゃない?」
「そういうのは複数の相手とすることで鍛えられるんじゃないか?」
「それができるほど涼二クンは女の子の扱いに長けてるのかなー?」
「……」
 お前はどうなんだよ、と言いかけてなんとか止まる。
 こいつが他の相手と付き合うところを想像して、嫌な気分になったのだ。
 今のところ、それはないはず。大丈夫だ。
「まずはあれだ。服装から変えていく必要があるかもな」
「え?」
 俺は彼女の全身を上から下に順に眺めやった。
 無地のブラウスにジーンズ。体にフィットして活動的な華乃にはよく似合っているが、
ファッションとしては簡素にすぎる気がする。
「いつもジーンズ着てるよな」
「んー、そんなことはないと思うけど」
「スカートとか着ないのか? ワンピースとか」
 それを聞いて華乃の口元がUの字をうっすらと描いた。
「ほほーう、涼二クンはスカート姿をお望みかね」
「ちょっ、なんだその嫌な笑みはっ」
「いやいや、なるほどねー」
 華乃は腕を解くと、ブラウスの裾を軽くつまんだ。
「これくらいの軽い服装の方が、重くなくていいんだけどね。でも涼二がそう言うなら着て
みてもいいかな」
「別に俺は、」
「前にメイド服姿をご所望だった憶えがありますけど?」
「……」
 閉口するしかない。

911:かおるさとー ◆F7/9W.nqNY
10/10/31 02:15:35 4JZnHj+f
「男ってどうしてそんなにスカートが好きなんだろうね。今からの時期は寒いだけだよ」
 華乃はおかしそうに笑う。
「……スカートはともかく、シンプルすぎる服装はどうかと思うって話だ」
「涼二だって同じようなものじゃん」
 自分の服装を顧みる。ジーンズにジャケットを合わせた格好は、いかにも普通の組み
合わせだ。
「上着いっつも黒だし。もっと色合いを考えてさー」
「と言われてもな」
「無彩色ばっかり。たまには明るい色とかどう? 赤とか黄色とか。私の見立てでは
オレンジが似合いそう」
「そうか? なんかイメージしづらい」
 自分の容姿や服装のバランスを客観的に見るスキルは、俺には備わっていない。
だから色も無難なものを選んでいる。
「いや俺よりお前の話だよ。好きな奴にアタックしたかったら、もう少しおしゃれした方が
いいんじゃないか?」
 すると、華乃はぐっと顔を強張らせた。
 はっきり傷ついた表情を見て、俺は口をつぐむ。
 華乃はふいっ、と視線を前に戻す。
 前方に駅前の踏み切りが見えてきた。カンカンと鳴る音が響いてきて、遮断機が降り
ていく。
 俺たちは無言のまま歩く。
 踏み切りの前で止まったとき、華乃は言った。
「私は、別に告白する気はないよ」
 音に負けないようにだろう、やや張り上げた声だった。
「……なんで?」
 俺もまた大きな声で訊き返したが、それは単純に驚いたせいでもあった。
 練習って言ったじゃないか。
「いいの。私は今でも十分満足だから」
 華乃の表情は平静そのもので、ひどく落ち着いていた。先ほど見せた動揺も収まって
いる。
 その内心を推し測るのは難しかった。いくら幼馴染みといっても、心まで見透かせる
わけじゃない。むしろわからないことだらけで、俺は戸惑ってばかりだ。
 ただ、その顔は、
「私は……あなたが」
 電車の音が言葉をさえぎった。
 十両編成の車両が目の前を轟音とともに駆け抜けた。空間を突き抜けるような衝撃が
空気の震えから伝わり、思わず身を引いた。腹に響く振動は、電車の質量を実感させる
ように重い。
 特急だったのか、電車は駅には停まらず、そのままホームを通り過ぎていく。
 音が過ぎ去ると、またのどかな町の空気が戻ってきたような気持ちになった。耳に
微かに金属音が残っている。
 華乃は遮断機が上がるのを穏やかに見つめ、それからゆっくりと歩き出した。
「……華乃?」
 さっき何か言いかけたように思ったのだが、気のせいだろうか。華乃は俺の呼びかけに
「ん?」と反応したが、何も言い出さない。
「あ、いや……」
 うまく訊き返せず、俺は口ごもってしまう。
「変な涼二」
 おかしげに微笑む彼女の表情は、いつもと同じように柔らかかった。


912:かおるさとー ◆F7/9W.nqNY
10/10/31 02:16:57 4JZnHj+f
 
 商店街は線路を越えた反対方向にある。
 基本的に食料品・日用品などの買い物はここで済ませるが、アレが置いてあるのは
コンビニや薬局だろう。この辺りに薬局はあっただろうか。
「ゆっくり回ってみればいいんじゃない」
 華乃の適当な提案にうなずき、とりあえずぶらぶら歩き続けることにした。
 日曜日ということもあってか、スーパーへの買い物客が多く見られた。しかし商店街
全体で見ればそこまでにぎわっているわけではない。寂れているというより、のんびり
した空気が漂っている。靴屋、金物屋、米屋に八百屋、様々な店舗が建ち並んでいたが、
そちらにはあまり客は入っていない。何か作業をしながら、隣人同士で談笑していたりも
する。のどかな町並みだ。
「雑貨屋に置いてあったりするかな?」
 古本屋の隣にある店に目を向けながら、華乃はぽつりとつぶやいた。
「いや、どうなんだろう。というか、このあたりは全然わからん。スーパーにしか行かないし」
 帰り道、たまに買い物を頼まれることがあるのだ。
「入ってみようよ」
 華乃は楽しそうだ。
 そんな彼女を見ていると、不意に懐かしい思いにとらわれた。
 小さいころは二人でいろんなところに出かけた。小さな町の近所に限ったことでは
あったが、小遣い片手によくお菓子を買いに行ったものだ。
 家々の隙間や知らない道を一緒に歩くのが、妙に楽しかった。
 その思い出が穏やかな空気に交じって頭に流れ込んでくるような、そんな気分だ。
 促されて雑貨屋へと足を向ける。
 入口の前には花が並んでいた。中に入ると少し空気のこもったような埃っぽい匂いが
した。どこかで嗅いだことがあるように思えるのは気のせいだろうか。食品やお菓子
類は保存の利くものばかりで、カップラーメンやクッキーがそれなりに多く陳列していた。
奥には文具と事務用品が並び、隅の方に電池やカセットが置かれていた。
 俺たち以外に客の姿はなかった。たぶん近くのスーパーに客を取られているのだと思う。
「あ、これ懐かしい」
 声に誘われて見ると、ビスケットの入った袋が華乃の手にあった。一つ一つがアルファ
ベットの形をしたもので、昔よく食べた憶えがあった。
「食べ始めると止まらなくなるのね。だから涼二よく怒られてた。憶えてる?」
「……いろいろ言われたな。あまり食べ過ぎないようにしなさいって注意されたけど、
つい、な」
 節分の時に落花生を食べるのにも似た感覚だ、あれは。特別美味いわけでもないの
だが、中毒性があった。
「でも子どもはみんな好きだと思うよ。こういうお菓子」
「かもな」
「うん。これ買おう」
 華乃はそれだけを持ってレジに向かう。
「おい、他にはいいのか?」
「ざっと見た感じ、アレはないみたいだし、いいよ」
 とはいえ、俺は異性と付き合った経験が舞いので、アレの入った箱というものをじっくり
見たことはないのだが。ぱっと見でわかるものなのだろうか。一応見回してみたが、確かに
それっぽいものはなかった。絆創膏と湿布薬の箱が無造作に置かれてあるだけだった。
 俺はシャーペンの芯が残り少ないのを思い出して、それを買った。レジにいた店番の
中年女性は愛想のいい顔を見せていたが、あれはひょっとしたら俺たちみたいな若い
客が物珍しかったのかもしれない。
 今度からここに寄ってみるのも悪くない気がした。
 

913:かおるさとー ◆F7/9W.nqNY
10/10/31 02:18:57 4JZnHj+f
 
 しばらく二人で適当にぶらついた。
 目的のものはそっちのけで、いろいろなところを回った。節操なく冷やかして、何も買わ
ずに店を出る。それだけでなんとなく楽しかった。華乃の隣にいることが居心地よかった。
 思えばそれは久しぶりのことだった。最近の俺は華乃の隣にいることに気まずさばかり
感じていて、それをどこかで疎ましく思っていたのかもしれない。
 華乃は楽しそうに微笑んでいる。それは俺の知っている昔からの笑顔に限りなく近かった。
 大人になった分だけ、差異が出ているのかもしれない。俺たちは昔のように一緒になって
近所を走り回ることができない。
 それでもこうして一緒にいるのは、やっぱり仲がよかったためだろう。いくら幼馴染み
でも、普通は同棲まではいかないと思う。
 いつから俺はこの幼馴染みが好きだったのだろう。
 はっきり意識したのは同棲し始めたここ最近だが、それ以前からもなんとなく「いい」
とは思っていた。
 昔から華乃は明るいやつだった。活発というよりは快活な女の子だったと思う。はっきり
ものを言う性格だったし、俺に対しては遠慮も少なかった。その一方で細かい気遣いも
できる奴だった。
 一言で言えば、かっこよかったのだ。
 別に運動が人一倍できたり、成績が抜群に優れていたわけではない。俺よりは優秀
だったが、それもまあ並の範疇に収まっていたと思う。
 ただ、華乃はいつも堂々としていた。
 自分というものをはっきり持っていたのだろう。何かに流されたり、負けてしまったり、
そういうことがほとんどなかった。
 小学生のとき、クラスのいじめに正面から立ち向かったこともあった。俺は華乃に加勢を
したが、教師を介さずに解決させた辺り、華乃はいじめ側にも公平に動こうとしていたに
違いない。
 小林華乃は、つまりはそういうやつだった。
 自分の中に確かな芯を持っていて、それがぶれないでいる。
 どうして彼女がそうあったのかは知らない。しかしそれは同年代の中で少し違って
見えた。それが俺の目にとてもかっこよく映っていたのだ。
 俺は普通だ。自分でもそう思うし、周りもそう見ていたと思う。華乃はよく「涼二は優しい
よね」と言ってくれたが、それは褒め言葉じゃない気がする。
 だからだろう。彼女が他とは違うように見えて、それに憧れた。元はそんな幼心が理由
なのだろう。
 今でも基本的に彼女は変わらない。そんな彼女に、俺は今恋をしている。

914:かおるさとー ◆F7/9W.nqNY
10/10/31 02:19:47 4JZnHj+f
「薬局、ないね」
 しばらく歩き回ったが、結局アレの置いてそうな店はなかった。
「離れてるけど、線路沿いに行ったところにコンビニあるだろ。あそこに行くか?」
 いつもは徒歩ではなく自転車を使っていく場所だ。1㎞は離れているのであまり気は
進まないが、この際仕方ない。
「その必要はないでしょ」
「え、でも」
「あそこにあるんじゃないの?」
 華乃はすっ、と斜め前の建物を指差す。
 さっきから度々話題に上っていたスーパーだ。まだまだ客の出入りは途切れそうもない。
 俺はきょとんとなった。
「え、置いているのか? あそこに」
「え? 置いてないかな?」
 華乃は不思議そうに首をかしげる。
「最近はああいうところにもあるんじゃないの?」
「そうなのか? ……だったらなんで俺たちこんなに歩き回ってたんだよ」
 早く教えてくれればいいのに。
「もう、馬鹿。できるだけ入りたくないからに決まってるでしょ」
「どうして」
「……涼二、何を買うか本当にわかってるの? 恥ずかしいじゃない」
「……」
 確かに多くの客が出入りする場所で避妊具を買うのは恥ずかしい。いや、慣れれば
そうでもないのかもしれないが、できれば避けたいと思うのは至極もっともな意見で。
 別に忘れていたわけではない。ただ、まだ実感が伴わないために、そういうことに
まるで気が回らなかった。華乃と歩くのが楽しくて、そこに意識が行かなかったのも
あるが、
 ……今さらながらに、俺は隣に立つ彼女のことを意識した。
 さっきまでの思い出に浸るようなセンチメンタルな意識ではない。もっと現実的な、
鼓動が脳髄に響くような緊張を伴う意識だ。
 今朝の感触がよみがえる。裸の彼女が隣にいて、腕に、背中に感じた肌の温かさが、
「……エッチなこと考えてる?」
「えっ!? あ、ちが、」
「スケベ」
「―だ、だから違う、そんなんじゃ」
 華乃はくすりと笑った。
 それから耳元に唇を寄せると、囁くように言った。
「部屋に帰ったら、涼二の好きにしていいから」
 心臓が止まりかけた。
 慌てて華乃を見るが、すでに身を引いて視線を前に戻している。
「……」
 俺はカラカラになった喉を潤すために、何度も唾を飲み込んだ。
 

915:かおるさとー ◆F7/9W.nqNY
10/10/31 02:21:09 4JZnHj+f
 
 リビングのソファーに座り込み、俺はふう、と息をついた。
 華乃は買ってきた食材を冷蔵庫に仕舞っている。俺は雑貨の入った袋からおもむろに
『それ』を取り出した。
「……」
 そっけないデザインの箱。コンドームの箱はタバコのそれに似ているという話を聞いた
ことがあるが、今俺の手元にあるものは、タバコの箱よりは大きかった。白を基調とした
シンプルなデザインは、どちらかというと今日雑貨屋で見た絆創膏のものに近い。ぱっと
見ただけでは、コンドームとはわからないと思う。おかげで買いやすかった。
 夕べのことを、俺は憶えていない。
 たぶん中に出してしまったのだろう。罪悪感が拭えないのはそれも理由の一つだ。もし、
できていたら……。
 責任ならいくらでも取る。しかし華乃がそれを望むかどうかは別だ。俺はあくまでただの
幼馴染みで、彼氏ではない。そんな俺が責任がどうのと言ったところで、華乃に拒絶され
たらそれで終わりなのだ。
 だから、避妊に関しては相当気を遣う必要がある。華乃のために。
「検査とか、行かなくていいのか?」
 冷蔵庫の整理を終えて戻ってきた華乃に、俺は問いかけた。
 華乃は首をかしげる。
「夕べ俺は、お前に、その……」
 そう言うと思い至ったようで、華乃はああ、と声を上げた。
「別に大丈夫だと思うんだけどね」
「いや、大丈夫なわけないだろ」
「うーん、涼二がそう言うなら行くけど」
 何を呑気なことを言っているのだろうか。危機感がない。
「アフターピルって72時間以内に服用するんだっけ」
「さあ……いや、とにかく早めに行った方がいいだろ」
「今日はもう時間がないよ。明日明日」
「お前な……」
 俺のせいではあるのだが、それでも言うべきことはきっちり言っておかないと。そう思って
口調を強くすると、華乃はじっと俺の方を見つめてきた。
「別に責任取って、なんて言わないから。安心してよ」
「……」
 胸の内側が絞られるように苦しく、痛む。
 その言葉が俺にとってどういう意味を持つのか、こいつは知らない。
 そんなことを言われたら、俺はどうすればいい。
「華乃」
「ん?」
「シャワー浴びてくる」
「……ん、わかった。じゃあ私はごはん作るから……」
「いい」
 声が幾分低くこもる。
「え?」
「すぐ上がる。その後お前も入れ」
「……う、うん」
 華乃の戸惑った声に少しだけ安心した。まだ俺の言葉はこいつに届いている。
「明日、ちゃんと病院行こうな。一緒に」
 そう付け足すと、華乃は不安げな顔を崩して笑った。
「しつこいね、涼二は」
「ああ」
 まったくだ。
「……うん、ちゃんと行くから。ありがとう、心配してくれて」
 その言葉を聞いて、胸の痛みが治まった気がした。
 

916:かおるさとー ◆F7/9W.nqNY
10/10/31 02:22:43 4JZnHj+f
 
 バスルームから出てリビングでしばらく待っていると、シャワーを浴び終えた華乃が
ゆっくりと姿を現した。
 パジャマ姿だった。ピンクのそれは何度も見ているもので、しかしいつもより色っぽく
映る。風呂上がりのせいだろうか。
 華乃はそそくさと近寄ってきて、俺の隣に腰掛けた。
 彼女がいつも使っているリンスの匂いが、いつもより刺激的に感じる。
 華乃はそっと顔を伏せて、しばらく目を合わせなかった。
 ただ、ぽつりと言った。
「……部屋、行こ?」
 心臓の音がやけにうるさく響いた。
 しかし一方でどこか感覚が遠い。血液の流れが悪くなったかのように、全身が麻痺を
している、そんな気分にとらわれている。
 俺は震える手で華乃の手を取ると、そのまま立ち上がり、彼女の部屋へと入った。
 電気を点けると、白い光が部屋を明るく照らした。クリーム色の絨毯を踏み越えて、
正面のベッドにたどり着く。
 手をつないだまま、二人して腰掛ける。
 触れ合う手のひらを通して、互いの体温がほんのり伝わってくる。この緊張が相手にも
伝わっているかもしれないと思うと、どうにも気恥ずかしい。
 華乃はまた、今度は幾分深く、息を吐いた。
 ゆっくり首をめぐらして、こちらを見つめる。
 体格の分、少し見上げる形だ。自然と上目遣いになっていて、微かに赤くなった両頬が
いつもと違った印象を与える。
「……」
 特に言葉はなかった。ただ、訴えるような目が俺を突き動かした。
 上気した頬にそっと手を添えて、視線を間近で正対させる。
 華乃は俺にすべてをゆだねるように、目を閉じた。
 また、唾を飲む。
 しかし止まらない。俺はそのまま顔を近づけていく。
 顔をわずかに斜めに傾けて、小さく突き出した形のいい唇に、自分のものを重ねた。
「……」
 瞬間、華乃の体が少しだけ強張った。
 しかしすぐに体の力を抜くと、自分から唇を押し付けてきた。俺もそれに応えるように、
さらに深く求めた。
 心臓がますます音を強くする。
 柔らかかった。弾力のある唇はいつまでも塞いでいたいほど味わい深く思った。味わいと
いう言い方は過剰でもなんでもない。俺は華乃のみずみずしい唇を味わっている。
 名残惜しくも唇を離すと、華乃は息切れしたように呼吸を乱していた。キスをしていた
時間はせいぜい10秒くらいだったと思うが、興奮が息遣いを激しくさせていた。
 俺も少し息が速い。
 たまらなくなって、華乃を抱きしめた。
 それは愛しさに押された行動だった。想いが募りすぎて、気が狂いそうだ。
「……涼二?」
 予想外の行動だったのだろう。しかし俺は答えない。
 口を開けば、閉じた想いが一気に溢れてきそうで。
 華乃の体を抱きしめながら、膨れ上がった気持ちをゆっくり鎮めていく。この想いを伝え
ないように、俺は心の奥の小さな箱に、それをすべて封じ込めた。

917:かおるさとー ◆F7/9W.nqNY
10/10/31 02:24:41 4JZnHj+f
 ごまかすように、華乃の腰へと手を伸ばす。
「―」
 息を呑む気配。華乃の体が再び強張り始める。
 パジャマ越しに尻をなでると、今度ははっきりと震えた。その反応もまた新鮮だった。
 少し体を離して、隙間を作る。尻肉を右手で撫でながら、左手をその隙間に入れた。
「んっ」
 胸をつかんだ瞬間、華乃の口からとうとう声が洩れた。
 パジャマ越しにもはっきりわかるふっくらとした感触は、性欲をダイレクトに掻き立てる
ほどに強烈な快感を生んだ。まるで華乃への刺激が俺自身にも直結しているような、
そんな錯覚さえ起こしそうなほどに気持ちよかった。
 片手だけでは足りない。右手を腰から離し、もう一つのふくらみに触れる。
 肉に指が沈む様子は視覚的にもヤバいくらいに興奮する。鼻腔を甘くくすぐる匂いも、
口から微かに洩れ出る声も、何もかもが俺の心を煽るようだ。
 暴力的な欲が脳を支配する。まどろっこしいことはやめて、今すぐこいつと繋がりたい。
押し倒して、征服したい。そんな思いが俺の中にあったことに驚く。いや、あって当然だ。
俺だって男なんだから。こいつは本当にそのことをわかっているのか?
 体がむずむずする。指先に自然と力がこもる。
「涼二……痛い」
 華乃の声にはっとなった。
 思わず胸から手を離すと、華乃はなぜかはにかんだ。
「……なんだよ」
「ううん。やっぱり涼二は涼二だなあって、そう思っただけ」
 言っている意味がわからなかった。
 華乃は笑ったまま俺の手を取る。
「私にも興奮するんだね」
「……そりゃあ、な」
 お前だからこそだ。
「でも、我慢してくれてる」
「え」
「本当はもっといろいろやりたいんでしょう? でも涼二は、私を気遣ってくれる。それは
ちょっと嬉しいかな」
「……」
 なんだか随分都合よく解釈されているようだ。俺はうまく返答できない。
 そんなことを言われたら、意地でも理性を保つしかないじゃないか。
「華乃」
「うん」
「脱がすぞ」
「うん」
 華乃は素直にうなずくと、ベッドの上に上がった。
 俺も後に続き、華乃の真正面で膝立ちになる。華乃は邪魔にならないようという配慮か、
膝を斜めに畳んでいる。その体勢はいかにも女らしかった。
 ボタンに手をかけた。大きめのボタンは外しやすく、思ったより簡単に剥くことができる。
 前立てを開くと、下には何も着けておらず、白い素肌が露わになった。
 今朝も見たはずだが、改めて正面からしっかり見た体は、やはり惚けてしまうほどに
美しかった。
 欲を忘れそうなほど綺麗な体に見とれつつも、俺は衣服を剥ぎ取る。華乃は顔を朱に
染めてはいたが、体を隠したりはしなかった。

918:かおるさとー ◆F7/9W.nqNY
10/10/31 02:25:55 4JZnHj+f
「どう、かな」
 軽く上目遣いにこちらを窺う。俺は正直に答えた。
「綺麗だ」
「……似合わない台詞だね」
「練習が必要、か?」
「あまり言い慣れすぎるのもよくないかもね。たまに言うからぐっと来るんじゃない?」
 注文の多い幼馴染みだ。
「そんなに使う機会に恵まれるとは思えない」
「こら、私がいるだろ」
「たまに言うからぐっと来るんだろ」
 普段は、こんなこと言えない。
「こういうときでもないと、カッコなんかつかない」
「大丈夫。今の涼二はかっこいいと思うよ」
「……」
 じっと彼女を見ると、華乃は恥ずかしそうに目を伏せた。
「……あは、なんだか変だね。朝はあまり気にならなかったのに、今は……」
 どうしてだろう、とつぶやく。その赤らんだ顔には戸惑いの色が混じっている。
 それは今の状況に慣れていないせいだろう。ただの幼馴染みだった自分たちがこう
いう関係になるということに、まだ頭のどこかでついていけていないのだと思う。少なく
とも俺はそうだ。提案した側とはいえ、華乃だってそれをすんなり受け入れられるとは
思えない。
 それでも俺がこうして向き合っていられるのは、欲と想いがあるから。
 こいつが欲しいんだ、俺は。
「んっ……」
 二度目のキス。まだ慣れないが、それでもさっきよりは自然にできたと思う。華乃に
抵抗は見られなかった。
 口唇が唾液とともに深く繋がり合って、そのまま体に覆い被さるように押し倒した。
 さっきよりも大胆に求めた。唇を吸い、唾液を味わい、舌でなぶっていく。
 華乃は俺の肩をぎゅっと耐えるようにつかむと、キスにぎこちなく応えた。おずおずと
唇を開き、舌を受け入れ、自らのそれを絡ませていく。
 興奮のボルテージが一気に上がり、下半身が痛いほどに主張し始めた。寝巻き
代わりのジャージを内側から押し上げて、華乃の太ももに食い込むように当たっている。
キスをしながら思わずこすりつけると、一層気持ちよさがこみ上げてきた。
「ん……あ、涼二……それ」
 俺のものに気づいて、華乃が唇を離した。唾液が端から微かに糸を引いて、それが
いやらしく光る。
 華乃は俺の下半身にじっと視線を合わせている。俺は気まずくなって腰の押し付けを
止めた。
「……脱がないときつくない?」
「……」
 それはまあその通りなのだが、正面から言われると、反応に困る。
「……って、おい。何やってる」
 華乃の手が俺のジャージに伸びている。
「脱がすよ」
「いい。自分で脱ぐ」
「脱がしたいの。涼二ばかりずるいもん」
 そういう問題なのか。女も男を脱がしたいと思うのか。
 引っ掛かりを外すようにジャージのゴムが華乃の手によって引っ張られる。
 手術でもするかのように慎重な手つきでジャージがトランクスごと下ろされていき、
逸物が姿を現した。
 先ほどのキスや太ももの刺激もさることながら、幼馴染みに脱がされるという状況が
あまりに倒錯的で、もうすっかり俺のものは屹立していた。
「……綺麗な形じゃないよね、はっきり言って」
 確かに、客観的に見たらグロテスクなことこの上ない気がする。

919:かおるさとー ◆F7/9W.nqNY
10/10/31 02:27:01 4JZnHj+f
 と、
「っ」
 細い指が逸物をおもむろに撫でた。
「おい、華乃っ」
 慌てて制止の声を上げたが、しかし華乃の手は動きを緩めない。
 白い指先が下から上に皮ごと肉をなぞる。
 背筋がぞくりと震えた。
 華乃はただ俺のものを熱心に見つめ、上下にしごいている。
「う……」
 俺は快感に打ち震えながらも、それに負けないように動いた。
「えっ!?」
 俺の手が華乃の股間に伸びる。華乃は慌てたように俺の体を押しのけようとするが、
二人並んで横になっているこの状態では、ろくに力を入れることもできない。
 華乃の慌てふためく様子に構わず、まだ残っていた下のパジャマをショーツごと一気に
下ろした。
「ば、バカァ! 変態! なんてことするのよ!」
「いきなりズボン脱がして勝手にいじくってきた奴がそれを言うか?」
「そ、それはそうだけど……ひゃあっ!」
 剥き出しになった股間におもむろに手を入れると、華乃はびくっと身を強張らせた。
 手が太ももの内側に入る。
 すべすべした肌はしっとりと柔らかく、温かかった。
「そこはダメ……ダメ、なの……」
 どこかで聞いたことがあるような喘ぎ声だったが、俺はまたも無視して手をさらに上へと
すべらせる。
「涼二のバカ……変態」
 華乃は恥ずかしそうに顔をそむける。
「うっ」
 しかしそんな顔の態度とは裏腹に、華乃の手は俺の逸物をつかんだまま離さなかった。
 反撃をするように再び上下にしごき始める。油断していた俺は、その刺激に思わず声を
洩らした。
 顔をそむけながら華乃はつぶやく。
「そっちがそのつもりなら、私も勝手にするからね」
 細指が優しく躍る。俺の下半身で。
 指先が紡ぐ刺激は強烈で、俺は下っ腹に力を入れて懸命に耐えた。
 波が収まるのを待って反撃に転じる。
「ひゃっ」
 初めて触れたそこは、すでに潤んでいるようだった。
 どこか心許ないくらいに柔らかいそこは、熱と湿り気を帯びていて、また興奮を掻き
立てる。
 華乃の手が止まった。俺は秘部に指を這わせると、割れ目に沿って開くように撫でた。
「―っっ!」
 短い嬌声が部屋に響いた。
 こうも敏感な反応を見せられると逆に不安になる。何か間違ったことをしてしまったの
ではないかと。

920:かおるさとー ◆F7/9W.nqNY
10/10/31 02:28:57 4JZnHj+f
「か、華乃?」
 指の動きを緩めて、そっと声をかけた。すると華乃は、激しく息をつきながら言った。
「……おかしい」
「え?」
 ぎくりとする。
 華乃はまどろむようにぼうっ、とした目で俺を見つめる。その目はひどく扇情的に映った。
「すごくドキドキしてる……」
 膝まで下ろしたパジャマパンツが妙にエロい。
 俺はうまく答えられずに、口をつぐんだ。
 ただ、体は素直に動いた。
「あ……」
 そうしたいと思ったときには、俺はもう華乃を抱きしめていた。そのときの華乃があまりに
かわいく見えたから。
「……昔と変わらないね」
「……?」
 何のことかわからないでいると、幼馴染みはおかしげに笑った。
「小さいころ、困ったときにはこうやって私を抱きしめてたんだよ。憶えてない?」
 ……そうだっただろうか。というか、そんな恥ずかしいことをやっていたのか俺。
「こんないやらしい場面ではなかったけどね」
「……当たり前だ」
「そうだね」
 華乃は俺の胸をわずかに押しやって、隙間を作った。そうすると互いの目が適度な
距離で向き合えるようになった。
 間近で、俺たちは見つめ合った。
「でも、今はもう大人だから」
 こういうこともできるんだよ、と。
 彼女からのキスは、俺が彼女にするより何倍も優しく、嬉しかった。



 残った服をすべて脱ぎ去り、俺たちは生まれたままの姿で向き合った。
 仰向けに横たわる彼女の体をさえぎるものは何もない。白い明かりの下で、ほくろ一つ
ないその体は、ただ純粋に見とれてしまうほどに美しかった。
 芸術品に出会えたようなその感慨も、直接触れた瞬間、泡のようにはじけて消えた。
 きめの細かい肌は、指に溶けるようになめらかだ。
 奥から返ってきた弾力が、ともすれば夢心地になりそうな意識を現実に引き戻すように
妖しく誘う。
 頬をなで、髪をなで、華乃の体に俺のことを徐々に慣れさせていく。
 ぐっと顔を近づけて、胸の先端に口付けた。ぴくりと身じろぐ華乃の反応が嬉しい。
 左手で胸を揉みながら、右手を下腹部に差し込んだ。抵抗はなく、スムーズにたどり
着けた。
 潤いはまだ保たれている。これなら入るかもしれない。いや、こいつは痛くなかったと
言っていたが……。

921:かおるさとー ◆F7/9W.nqNY
10/10/31 02:30:23 4JZnHj+f
「……まだ……しないの?」
 華乃が控えめな口調で訊ねてきた。
「私は、大丈夫だよ」
「……具合がわからん」
「具合って」
「実質初めてなんだ。つい慎重になってしまう」
「……怖い?」
「……」
 最初はそういう思いも多少あったかもしれない。だが今は、
「他の相手だったらそう思ったかもしれない。だけど、お前なら大丈夫だ」
「遠慮しなくていいってこと?」
「いや。お前が変に気を遣ってうそをつく女じゃないってことを、俺は知ってるから」
 こいつは気遣いのできる女だが、下手なうそはつかない。つくならもっと上手に、優しい
うそをつく。相手を傷つけないうそをつく。
「私だって、けっこううそをつくよ」
「それは誰も傷つけないうそじゃないのか」
 すると、華乃は寂しげに目を細めた。
 どきりとする。以前にも、そして今朝も、同じような顔を見た。
「うん……そうだったら、いいな」
「……華乃?」
 華乃は不意に俺の首に腕を回すと、唇を重ねた。
 戸惑いながらもそれに応える。抱きしめなおして、深く繋がり合った。
 急に不安になった。俺はひょっとして、何か勘違いをしているのではないか。こいつが
こういう態度を見せるのは、何か重大な理由があって、それは俺にとっても大事なこと
なのではないか。
 俺が知らないだけで、どこかで誰かを傷つけたことがあるのかもしれない。
 しかしわからない。いくら幼馴染みでも、心の内側までは読めない。
 ただ、どんなにわからなくても、こうやって抱き合えること自体はどこまでも本物で、
確かなぬくもりが感じられた。
 唇を離すと、華乃は薄く微笑んだ。
「今の、すごく気持ちよかった」
「今のって」
「キス」
 微笑んだまま、華乃はささやく。
「私、もう我慢できないかも」
「……俺も、かな」
 がちがちに硬くなった逸物は、華乃の太ももに当たる感触もあって、すぐにでも射精
してしまいそうだ。
 俺は一旦離れると、買ってきたコンドームを手に取った。一つ取り出して自分のそれに
装着する。初めて扱うそれは意外なほど薄く、心許なく感じられたが、着け終えると具合は
悪くなかった。
 じっと待っている華乃の両脚を、ゆっくりと開いた。
 まともに正面から見るそこは、よく手入れがされていた。陰毛が綺麗に整えられている。
脚をさらに大きく開くと、毛群のやや下側に秘部がはっきりと見えた。
 さすがに恥ずかしいのか、華乃は声も出さない。
 俺も無言だ。いよいよとなると、心臓が止まりそうなほど痛くなる。

922:かおるさとー ◆F7/9W.nqNY
10/10/31 02:31:39 4JZnHj+f
 両脚の間に体を割り入れた。
 そのまま腰を持ち上げて、華乃のそこに、
「んんっ」
 思ったよりもずっと楽に入った。
 最初の一呼吸で半分くらいまで入り、そこからゆっくり奥に進入していく感じだった。
締め付けはあるものの、それほど苦ではない。むしろ襞々が先のくびれに引っかかる
感触が気持ちよく、気を抜けば瞬く間に放出してしまいそうだ。
 華乃はぎゅっと目をつぶっていた。
「……痛いのか?」
 心配になって訊ねると、華乃は首をゆるゆると振った。
「頭がヘンになりそう……」
「……どういう意味だよ」
「……言わせないでよ。これでも、恥ずかしいんだから……」
 声に熱がこもっている。息が少し上がっていて、肌から伝わる熱も高いように思った。
 本当に気持ちがいいのだろう。
 俺も気持ちいい。相性がいいというのは本当かもしれない。
 ろくに経験のない俺が、好きな女の子を喜ばせることができるなんて。
 偶然が働いたのだとしたら、俺は運がいい。少なくとも華乃を失望させることはない。
 奥まで到達したとき、言い知れぬ満足感が俺を包んだ。
「華乃」
「ん……涼二」
 繋がり合ったまま、またキスを交わす。
 それが気持ちを高めたのか、華乃の中がぐっと締まった。たまらず呼気を洩らす。
 腰がうずく。ゴム越しにも華乃の締め付けはなんともいえない快楽をもたらす。これで
動いたら一体どれほど気持ちよくなるのだろう。
「華乃、動くぞ」
「うん……」
 言うが早いか俺は腰を動かし始めた。
「あんっ……!」
 華乃の高い声が俺の耳を打った。
 同時にその響きが下腹部にまで伝わるような錯覚を覚えた。
 ゆっくりと体を引き、またゆっくりと腰を入れる。先端が奥に当たる瞬間が心地よい。
 亀頭だけじゃなく肉棒全体が絞られているようで、直接中で触れ合っているわけでも
ないのに、相当な快感だった。
「あっ、あ、あ、ん、んう、んん……っ」
 華乃の口から快楽の声が洩れる。
 その声に合わせるかのように、腰の動きが次第に速まっていく。
 華乃は羞恥からか、指を軽く噛んで声を抑えようとしている。しかしリズミカルに送り
込まれている衝撃に耐えられるとは思えない。案の定、華乃の口は開いていき、その
隙間から再びあえぎ声がこぼれ出した。
 目元が潤み、熱に浮かされたように惚ける華乃の顔は、今までに見たことがなく、
その姿にますます興奮した。

923:かおるさとー ◆F7/9W.nqNY
10/10/31 02:32:30 4JZnHj+f
 もっと深く繋がりたい。俺は無意識のうちに華乃の体を両腕で抱え、自分のものを
深々と突き入れた。
「あああっ!」
 甲高い嬌声が部屋に響いた。
 いわゆる対面座位の体勢だ。俺はさらに腰を振り、体ごとぶつけるように亀頭で奥を
叩いた。
 膣奥に突き刺すたびに肉の当たる音が鳴り、内側も合わせるように蠕動した。
「ああっ、あんっ、あっ、あっ、んん、やあっ、うん、あぁっっ!」
 華乃はもう羞恥などどこかに吹っ飛んでいるようで、俺の苛烈な攻めにひたすら声を
上げ、乱れた。
「華乃……華乃っ」
 何も考えられない。この高ぶりを満足させるために、ただただ彼女を犯した。
「だめ、りょうじ……だめ……っ」
 俺の名前を呼ぶ華乃。しかしその言葉もあまり意味を成しているようには見えない。
湧き上がる快楽の波に流されながら、とにかく俺の名前を呼んだだけのようだった。
 突いては引き、突いては引き、何度も性器をこすりつけ、睾丸にまで伝わるような
性感をひたすら味わった。
「りょ……じ、わたし、もう……っ」
 息も絶え絶えの様子で、華乃が訴えた。
「ああ、俺も限界……」
 動きを緩めることはしなかった。とにかく絶頂を迎えたくて、汗が滴るのにも構わず、
俺は全力で動いた。
「あああ、んっ! りょうじ、あっ、あっ、あぁんっ!」
 華乃も汗まみれになりながら、必死に俺の動きについてくる。みだらに腰を動かし、
乱れに乱れた。
 数瞬後、その高ぶりがようやく弾けた。
「ううっ!」
 ペニスの奥が震えた。呼吸さえ止まりそうな刺激に耐えられず、俺は膣奥で思う存分
射精した。
「うあっ……あああ、……ああ……」
 遅れて華乃が震えた声を出して、俺の体にしがみつく。
 俺は断続的に欲望の塊を吐き出し続けた。奥に残った液を最後まで搾り出したくて、
ペニスをぐい、ぐい、と二度三度奥にこすりつけた。
 ゴムの中とはいえ、華乃の膣内に入れたまま射精をするのはたまらなく気持ちよかった。
 すべてを吐き出し終えると、どっと疲れが襲った。全力で動いたために、呼吸も短距離を
駆け抜けたときのように荒かった。
 華乃は俺の胸に頭を預け、肩で息をしながら目を閉じていた。
 俺もぎゅっと彼女の体を抱きしめ、しばし余韻に浸った。
 

924:かおるさとー ◆F7/9W.nqNY
10/10/31 02:34:24 4JZnHj+f
 
 後処理をしてしばらくすると、華乃がぽつりとつぶやいた。
「すごかったね……」
「……ああ」
 本当にすごかった。
 俺にとって実質初めての性交は、夢のような出来事だった。
 幼馴染みを抱くということだけでも信じられないほどなのに、まさかここまで気持ちいい
ものだとは思わなかった。華乃の言ったことは大げさでもなんでもなかったのだ。
 相性がいい。いや、よすぎる。
 射精によって出た精液の量はいつもより多かった気がするし、男根の付け根辺りには
まだ少ししびれが残っていた。こんなこと、生まれて初めてだ。
 華乃はパジャマを羽織りながら、にっと笑った。
「どう? 『はじめて』の感想は」
「……どう答えりゃいいんだよ」
 いきなりの質問に頭が働かない。いや、働いたとしてもそんなこと答えられるか。
「私はよかったよ、すっごく」
 訊いてもいないのに華乃は感想を述べる。ちょっと顔が赤い。
 まったく。
「……病み付きになる奴の気が、よくわかった」
「……ハマっちゃいそう?」
 俺はそれには答えず、ベッドから降りると、ジャージをはき直してドアへと向かった。
「飲み物取ってくる。アクエリでいいか?」
「あ、うん」
 ドアを開け、外に出ようとしたとき、
「涼二」
 華乃に呼び止められた。
 振り返ると、華乃は穏やかな笑顔を浮かべながら、言った。
「ありがとう。初めてがあなたで、よかった」
 咄嗟に返事ができず、俺は小さくうなずくことしかできなかった。



 <続く>

925:かおるさとー ◆F7/9W.nqNY
10/10/31 02:35:50 4JZnHj+f
以上で投下終了です。
次もこれくらいのペースで投下できれば、と思います。

926:名無しさん@ピンキー
10/10/31 07:01:32 jWiQUvH9
グッジョブれす。

927:名無しさん@ピンキー
10/10/31 12:47:50 rbvK8ywc
GJすぐるぜ

928:名無しさん@ピンキー
10/10/31 13:54:39 Pa8LW5Xc
GJ!設定とか心理描写がめっちゃツボです。
あとタイトルがラテン語で「酒の中に真実あり」とは洒落てるね。

今後は隔週くらいのペースか。
続きが待ち遠し過ぎる……。

929:名無しさん@ピンキー
10/10/31 14:04:07 Rc0f/i0T
さすがです
次回も期待してます

930:名無しさん@ピンキー
10/10/31 23:49:20 IdmcA98B
GJです!
表現の上手さに感心しながらだったから集中して読めないじゃないか!!w

931:名無しさん@ピンキー
10/11/02 00:25:51 P0nYFIVp
今日ボクは見てはいけないモノをみてしまった。
幼馴染が露出狂だったのだ

932:名無しさん@ピンキー
10/11/02 09:04:47 JawyT+cl
(わたしを見て、わたしを見て、わたしを見て――っ!!)

933:名無しさん@ピンキー
10/11/02 11:04:47 NFD6v0ej
>>951
なんか柚木涼香の声で再生される・・・何故だ

934:名無しさん@ピンキー
10/11/02 12:50:16 5oVUwt43
むしろ幼なじみが責任持って存分に見てやることで
欲望を満足させてやるべき

935:名無しさん@ピンキー
10/11/02 21:24:03 +n8TXxuj
>>952
柚木さんと聞くとトッキュンしか思い浮かばん俺はそうとうにアレだな。
最初に出会ったキャラがキャラだけにな……

936:名無しさん@ピンキー
10/11/02 22:30:58 NFD6v0ej
>>954
俺は……多分、というか、間違いなく
うたわれるものらじおのせいだ

937:名無しさん@ピンキー
10/11/04 17:51:24 1QyGT4Rl
>>950該当スレにぜひお越しくださいませ☆

938:名無しさん@ピンキー
10/11/04 20:49:37 qdCWP5B3
えっ?該当スレはここだよ

939:名無しさん@ピンキー
10/11/04 21:42:06 0+N9U285
ここで露出愛好家と幼馴染愛好家の対決か!!
恨むな!全ては規制が悪いんだー

940:名無しさん@ピンキー
10/11/06 07:00:59 NlkdJsUN
最近近所で、コートを開いて全裸を晒す「痴女」が出没するらしい。
本当かよ遭遇した奴マジ羨ましー、などと悪友共とそんな話題で盛り上がったその帰り道。

「わ、わたしを見ろ!」

頭を覆う帽子にサングラス、大きなマスクを着けたコートの女が、俺の目の前でコートを広げていた。
身長は150㎝くらい。染み一つ無い白い肌に、小振りだが形の整った胸には乳首を隠す絆創膏を張り、茂みの無い秘部を前張りで隠している。
うわ噂はマジだったのか、とか見せるんなら隠してんじゃねーよ、とか半ばパニックに陥っていた俺の目に、信じられないものが飛び込んで来た。
キュッと締まったウエスト、その臍の向かって右側に見える、小さな黒子。俺の脳裏に、風呂場でそれをからかったせいで泣きじゃくる、小さな少女の姿が映る。

「…………愛美……か?」
「…………え? 嘘……慎……吾?」

木枯らしの吹く住宅街の片隅で。俺とコートから全裸を晒した幼馴染みは、まるでお見合いで初めて会った男女のようにいつまでも向かい合っていた。





こんな感じかね>露出狂幼馴染み

941:名無しさん@ピンキー
10/11/06 18:02:09 MkD1wRoI
よし、続きを頼む

942:名無しさん@ピンキー
10/11/06 18:10:27 Okmxe2+p
>>959
是非とも小説化してください

943:950
10/11/06 23:11:55 5uCFUB+3
書こうと思ったが無理だった。案だけ出してごめん。
①部活からの帰宅中、露出狂痴女に遭遇。その時は固まっている間に露出狂逃亡
②翌日、クラスにその露出狂そっくり少女が転校。それがかって引っ越した幼馴染だった。
と考えたがこれ以上思い浮かばない。
>>959様、是非ともお願いいたします。

944:名無しさん@ピンキー
10/11/07 03:06:09 UTB8NnS7
>>959
前張りとか絆創膏って訓練され過ぎだろwww

945:名無しさん@ピンキー
10/11/08 05:11:56 IM6BBk0B
見られたいのは彼だけだけどスリリングさを欲してしまい
積極的なアオカンを望む幼馴染みではダメかね?

946:名無しさん@ピンキー
10/11/08 08:04:35 HSCMOyzA
むしろお互いの葛藤をうまく描写してほしいところではある
特に男の側

947:名無しさん@ピンキー
10/11/12 08:46:15 B4BPowfT
次スレは?

948:名無しさん@ピンキー
10/11/13 15:01:47 8ExFLdHI
あまりに馴染み過ぎて部屋に二人きりでも女の子として意識して貰えないので薄着になってアピール。
それでも反応が無いので徐々にエスカレートしていって、最終的にハプニングを装って裸を見せる、

って路線でお願い。

949:名無しさん@ピンキー
10/11/13 16:31:23 TYJyGmGW
今の速度だと>>980でスレ立てかな
一個投下があったら即立てる必要があるけど

950:名無しさん@ピンキー
10/11/13 22:28:41 HHPYS1iU
前に、医者か床屋で読んだ、ヤングアニマルの「ゆびさきミルクティー」のエピソード
が良かったなぁ。
女子バスケ部長の勝気娘と、美術部のインドア系男子の幼馴染で、小学生の時に、女の
方が本物の恋心の照れ隠しに、悪戯の振りして男を押し倒してキスして、動揺した男が
「気持ち悪い」と言っちゃって泣かせたり。
ずっとギクシャクしていた関係を、主人公が掻き回して、最後に教室で「きみを取られ
たくない」って男幼馴染が泣きながら告白した後、女の子が泣き笑いを浮かべて、クラ
スメイトの衆人環視の中で、また自分からキスしたり。
最後に、美術室で絵のモデルやってもらいながら、バカップル会話やったりと、
自分の幼馴染属性を直撃するような内容だった。


951:かおるさとー ◆F7/9W.nqNY
10/11/14 00:49:27 zmneRkTn
こんばんは。
『In vino veritas.』第三話を投下します。
今回は酔いまくりですが、エロ無しです。

952:名無しさん@ピンキー
10/11/14 00:50:29 nZuygDPj
支援
私ももしかしたら何か小ネタを投下するかもー

953:かおるさとー ◆F7/9W.nqNY
10/11/14 00:51:04 zmneRkTn
 彼女が一緒に飲もうと言ってきた。
 それに少し衝撃を覚えたのは、幼馴染みと酒を結びつけることがすぐにはできなかった
せいだった。
 幼馴染みとはいえ、俺は彼女のことをまだまだ知らないでいるのかもしれない。



      ◇   ◇   ◇



 秋の寒空の下、俺は帰路に着いていた。
 時刻は午後六時を回っている。辺りはすっかり暗くなっていて、光の少ない細道を一人で
歩くのは少々心細かったりする。
 今日はバイトも友達との約束もなく、部屋にまっすぐ帰るつもりだ。
 華乃はもう先に戻っているだろうか。メールを送ったら「りょーかい」としか返ってこな
かった。いないならいないとちゃんと連絡が来るので、もう帰り着いているとは思うが。
今ごろは夕食の準備を進めているかもしれない。
 冬直前の寒風が、身を震わせた。
 こんな寒い日は、華乃の味噌汁であったまりたい。ああ、スープでもいい。シチュー
だったら最高だ。
 そういうことを考える度に、あいつと同棲しているという事を強く意識する。いや、これ
ではむしろ新婚気分だ。一方的な。俺は途端に恥ずかしくなった。道端で一人身悶える
様子はとても人に見せられるものじゃない。
 馬鹿なことをやってないで早く帰ろう。俺は家路を急ぐ。
 細道から商店街を抜けて、線路を渡る。あと五分ほどで着く。
 こんな風に急いで戻るのも久しぶりだ。
 ふと、昔を思い出した。
 幼馴染みの少女とこんな暗がりをよく一緒に歩いた。それは学校からの帰りだったり、
遠くまで遊びに行った帰りだったり、お遣いの帰りだったりした。
 そんな風に常に一緒にいたのも、せいぜい小学校までだった。中学校に上がったら、
部活や友人関係に変化が生じて、共有する時間はだいぶ減っていった。
 一ヶ月前のことを思い出す。買い物をして、一緒に歩いた帰り道。
 昔とは少し違う雰囲気ではあったが、やはりどこか懐かしかったと思う。
 あの日は正直それどころではなかったが、今思うととてもいい時間だった。
 またあんな時を過ごしたい。
 そう思っているうちにマンションに到着した。
 俺は入口を通り抜け奥まで進むと、105号室の扉を開けた。
 

954:かおるさとー ◆F7/9W.nqNY
10/11/14 00:52:59 zmneRkTn
 
 
「おかえり~」
 華乃の明るい声がリビングに入った俺を迎えた。
 ソファーにもたれるように深く座り込みながら、片手にはビール缶を持っている。俺は
呆れた。
「こんな寒い日にビールかよ」
「暖房入れてるじゃん」
「いや、それでも合わないだろ」
「んー、ビールだけじゃないから」
 テーブルには市販のカクテル缶がいくつも並んでいる。それを尻目に一旦部屋に戻った。
バッグと脱いだコートを置き、楽な服に着替えた。それから手洗いうがいを済ませて(しないと
華乃に注意をされる)またリビングに戻る。
 華乃の向かいに座りながらテーブルを眺めやると、酒以外にもいくつかつまみが並んで
いた。
「買ってきたのか?」
「涼二と一緒に飲もうと思って」
「……今日は飲む気はなかったんだけどな」
 そもそもこの部屋で飲むことはほとんどない。
「でも、今日は何も用事はないんでしょ?」
「そうだけど」
「じゃあいいじゃない。飲もうよ」
 ぐいっと手の中のビールを突き出す華乃。その顔には嬉しげな笑みがあり、実に楽し
そうだ。
「腹減ってるんだ。空きっ腹にアルコールはまずいだろ」
「あ、ちゃんとごはんは作ってるよ」
「じゃあ先に飯食う。そのあとなら飲んでもいい」
「うん。持ってくるね」
 華乃は立ち上がると、台所に行って準備を始めた。まだ酔ってはいないようだ。
 やがてテーブルに温かい食事が並べられた。炊き込みご飯と魚のアラが入った味噌汁。
刺身が綺麗に大皿に盛り付けられ、きゅうりの酢の物とオニオンサラダが脇を固める。
 俺から見れば十分豪勢な料理に見えるのだが、
「今日は飲みたかったから、メニューも少なめで」
 華乃から見ればそうでもないらしい。俺は素直に礼を言った。
「いつもどおりおいしそうだよ。いただきます」
「はいどうぞ」
 華乃も一応は箸を持っているが、特にお腹が空いているわけではないらしい。刺身に
だけ手をつけている。酒に合いそうだ。
 とりあえずは飲み気より食い気。俺は空腹を満たすために、箸を動かし始めた。
 

955:かおるさとー ◆F7/9W.nqNY
10/11/14 00:54:43 zmneRkTn
 
 
 食事を一通り済ませると、華乃がにっこり笑って俺の前にチューハイの缶を置いた。
「さあ飲もう!」
「元気だな……」
 すでに五本の缶を空けている。こいつ、結構飲めるクチだったのか。
 そして気づく。考えてみれば、華乃と飲むのは初めてだ。
「涼二がお酒飲めるのは知ってるけど、どういう風に飲むのか、どのくらい飲めるのかは
知らないからね。楽しみなんだよ」
「……」
 そのお酒のせいで、こいつは俺からひどい目に遭わされているはずなんだが。
 華乃はあまりひどいと思っていないようだが、こっちはちょっと気まずい。
 かといって断るのも難しい気がする。もう目の前に用意は整っていて、あとは飲むだけ。
 まあできるだけセーブして付き合うか。俺はフタを開け、少量口に含むように飲んだ。
 ん、
「……これ、結構いけるな」
 飲みやすい。缶チューハイは最近飲んだことがなかったが、これは口当たりがすっきり
していて、軽く飲むには最適だった。
「そう? 私は好きだけど、男の人には合わないんじゃないかと思ってた」
「俺、結構カクテルとか頼む方だぞ」
「え!? 日本酒とか焼酎飲むのかと思ってた」
「いや、飲むけどさ」
 そればかりだと楽しくないだろう。いろんな種類があるんだから、試さないと損だ。
「……あー、涼二ってあまりこだわらないタイプ?」
「特にはないな。店に飲みに行くときは、最初日本酒や焼酎飲んで、後から軽いのを
入れたり。まあ何でも飲む」
 友人と飲むときは、大抵居酒屋だ。相手の家で飲むこともあるが、そのときは缶では
なく瓶酒を買って飲むことが多い。
 あと、焼酎をロックで飲むのが好きだったりする。
「私はあまり焼酎とか飲まないなあ。なんかきついの。臭いのせいかな」
「飲みやすい焼酎もあるぞ」
「え、そうなの?」
 女性向けに作られた、口当たりのすっきりしたものがある。
「今度飲みに行こうよ」
「そのうちな。……おい、ちょっとペース速くないか?」
 六本目が空になった。華乃の手が七本目に伸びる。
「涼二がノリ悪いんだよー。男なら一気飲みでしょ」
 もう酔ってるのか?
「今日はたしなむ程度でいいんだよ。それよりこの刺身が旨い」
 鰤の刺身だ。まだ旬にはちょっと早いが、十分美味しい。いや、場所によってはもう食べ
ごろなのだろうか。味噌汁もダシが効いていて、一口飲むだけで思わず息をつきたくなる
ような、そんな深みがあった。
 華乃はにっこり笑った。
「それはねー、ハマチなんだけどね、すごく安かったの。魚屋さんに寄ったらまけてくれて」
 この間から商店街に並ぶいろんな店に立ち寄っているようで、たぶんそこの魚屋だろう。
養殖ものでも学生で鰤を買う奴はなかなかいないと思う。顔を覚えられているに違いない。
「そこの主人って男?」
「なにー? 急に」
「いや、前にもサービスしてもらったような」
 美人は得だ。加えてこいつは明るくて社交性もある。自覚があるかは知らんが。
「もしかして、嫉妬?」
「違う」
「こら、即答するな!」
「どう答えりゃいいんだよ」
 酔っ払いめ。俺は席を立つと、冷蔵庫から烏龍茶を取り出した。これでも飲んで酔いを
醒ましてほしい。
 

956:かおるさとー ◆F7/9W.nqNY
10/11/14 00:56:36 zmneRkTn
 幸い、華乃は素直に飲んでくれた。
「しばらくそれ飲んどけ」
「じゃあおつまみ食べる」
「それでいい」
 ここ最近俺のほうが世話焼きになっている気がする。
 華乃は袋に手を突っ込んで、ビスケットを数枚つかみ、口に放り込んだ。ばりぼりと
食べる様子はとても男らしい。俺じゃなかったら、百年の恋も冷める光景だ。
 よく見たら、そのビスケットには見覚えがあった。
「それ、このあいだ買ったやつか?」
 アルファベット型のビスケットだ。小さいころ、二人で仲良く食べていた。ここ数年見なく
なったと思っていたが、復刻したらしい。
「これ買ったの思い出してさ、それで今日飲もうかなって思ったの」
「……いや、なんでそうなる」
 お菓子を見たら飲むのか、お前は。
「シャンパンにケーキとか合うじゃない。お酒には比較的合うよ、お菓子は」
「……」
 まずシャンパンを飲んだことがないというのはさておき。
 スナック菓子なら合うように思うが、甘い菓子はどうにも抵抗がある。しかし今飲んで
いるチューハイはどちらかというとジュースに近いので、意外と合うかもしれない。
 試しに一つ食べてみた。
 口の中に甘さが広がる。まぶしたごまの風味に交じるわずかな塩気。
 ……悪くない。
 チューハイを飲む。軽くあおってからもう一枚食べてみる。
「合うでしょ?」
 華乃の笑顔がおもしろくない。だがまあ、
「まあまあだな」
「素直に合うって言えばいいのに」
「思い出補正かもしれないじゃないか」
 昔好きだった味が採点を甘くしている可能性はある。俺はアルファベット型のビスケットを
もう一枚つまんだ。
「こんな食べ方はしなかったけどな」
「まあねー。昔はお酒なんて気持ち悪い液体でしかなかったのにねー」
 そう言いながら烏龍茶を飲み干すと、華乃はテーブルの上にティッシュを広げた。袋の
中から一枚ずつビスケットを取り出して、ティッシュの上に丁寧に並べ始めた。
「なにやってるんだよ」
「アルファベットの定番をね」
 うきうきと楽しそうに華乃は袋を探る。
 こういう規則的に形の違うお菓子は、つい全種類確認してみたくなるものだ。このビス
ケットも果たしてアルファベット26文字がすべて揃っているのか。子供のころも同じことを
やった覚えがあるが、全部揃ったかどうか、記憶からは抜け落ちている。
 しばらく華乃は文字並べに熱中した。
 俺もやってみようか。そんな思いに駆られたが、しかし華乃が袋を独占しているので
やめた。邪魔はしないでおこう。俺はビスケットをあきらめて、隅に放置されたチップスを
代わりに食べた。


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