10/05/26 00:55:07 rS5Rld4m
「……ひろちゃん、久しぶり。」
「……おう。」
俺は2年ぶりに言葉を交わした幼馴染にどんな言葉をかけていいのかわからず、
愛想のない返事を返した。
そんな俺に対して、少し悲しそうな笑顔で彼女は笑った。
◇
俺とあいつは赤ん坊の頃から幼馴染で、家は隣、同じ小学校に通って、同じ中学に通って、
同じ高校にも通った。
付き合っていたこともある。高校になってしばらくして、あいつの提案で正式に付き合うこと
にしたのだった。
それまでも一緒に通学したり、一緒に勉強したり、一緒に遊びに行ったりもしていた。
遊びにいくのがデートになって、たまにキスしたり、たまにセックスしたりするようになった。
ただそれだけだった。
「今までと、なにか変わったのかな……?」
彼女がそうつぶやいて、俺たちの恋人としての関係は終わった。
俺たちはお互いについて何もかも知りすぎていた。生い立ちから始まって、好み、得意なこと
苦手なこと、癖、お互いの体のほくろの位置、傷跡のワケまで。なんら新鮮味がなかった。
俺にはあいつとの関係の心地良さを気に入っていてそんなモノ必要なかったけど、あいつには
不満だったらしい。
俺たちは高校を卒業して、初めて別々の大学へと進学した。
そしてあいつは合コンで出会ったイケメンと付き合うことになって、卒業と同時に結婚して
専業主婦になった。
結婚式には俺も招待されたけど、結局出席しなかった。
あいつが不幸になることは望んじゃいなかったけど、でも他の男のためにウエディングドレスを
着て笑うあいつを見て祝いの言葉を口にできるほど俺の度量は大きくはなかった。
で、まあ、俺は恋人を作ることもせず、地元の企業に就職してただあくせく働く日々を送っていた。
それが、1月ほど前に突然あいつが隣の実家に戻ってきた。
たった1年ちょっとで離婚したらしい。
おばさんが家の母さんと話してるのをちらっと聞いた限りでは、相手の男が浮気してたのが
原因らしいけど、細かいことはよくわからなかった。
俺はあいつと会ったときにどんな顔をしていいのか、何を話したらいいのかわからなくて、
1月の間、合わないようにしていた。
昼間は会社、退社後も飲み屋で時間を潰してから帰った。
でも今日、夜中にコンビニに出かけた帰りに道端でばったりあってしまったのだ。
◇
道端で立ち話もなんなので、近くの公園に場所を移した。
子供の頃一緒に遊んだ小さな公園のベンチに腰掛ける。
「……」
「……」