【友達≦】幼馴染み萌えスレ20章【<恋人】at EROPARO
【友達≦】幼馴染み萌えスレ20章【<恋人】 - 暇つぶし2ch248:名無しさん@ピンキー
10/05/07 00:11:10 qxrr8XXv

昼休みになって、周太郎は弁当箱を空けて、そしてふたを戻した。
鴨だ。鴨鍋の香ばしいにおいがした。惜しむらくは油が浮いてしまっていることだろうか。
今日弁当箱を受け取ったときから、嫌な予感はしていた。
母の誇りのために言っておくと、昨日の鍋の時点ではうまかった。
このまま頭を抱えているわけにも行かないので、腹を決めて周太郎は汁をずるずるすする。

「じじくさいぞ。お前学生じゃないだろう」

「玄人っぽいだろう」
「いや、そうでもない」
深いため息が出た。
「そういえば、先週末の、どうだったんだよ」
「準決勝で敗れたらしいぞ」
「・・・また佐藤は出なかったのかよ、部長なのに」
「・・・私だってやりたくてやっているわけではないんだって」
「佐藤が出れば少しは違っただろうに」
苦い顔を作ってうう、と唸った彼女は、それには答えずに飲みかけの鴨汁に手を伸ばすと、少しすすって、やはり同じようにため息をついた。
「はあ、どうしたもんかね」
そのしぐさはどう見ても学生ではないようだった。彼女のように才ある人間でも悩むんだなと思った。
俺と彼女の違いは、悩みのためにそこに留まるか前進するかだ、とも思った。

結局、道場は千里が継いだ。
彼女の腕は相当なもので、彼女は中学の部活動で全国で争い、準優勝という快挙をうちたてたものだから
金井家の血を流していない彼女でも、千里本人を除いては、周囲の誰も反対しなかった。
そういうわけで、彼女は現在の高校の剣道部では、二年生になったとたん半強制的に部長の役を充てられた。

対して周太郎は、高校に入って剣道をやめた。絶賛帰宅部である。そういう手前、周太郎は中学のときより千里が、引け目もあって、さらに恐ろしく感じられた。
そして、そういう自分を周太郎は心底嫌いであった。


帰り道は、人通りの少ない裏通りを抜ける。
もう冬が近く、まだ5時なのにあたりは薄暗かった。自転車の規則正しいペダルのきしむ音を聞きながら
ふと思いついて、回り道だが、昔よく二人で通った駄菓子屋に向かったことがある。
ついてみると、入り口のシャッターが閉まっていた。
閉店時間だろうか、いや、そうでないことは明確だった。二階は柱や梁がむき出しになっており、作業中につき立ち入り禁止の看板があった

この駄菓子屋は近々消えてなくなるだろう。昔とは変わったことを知った。
町の休憩所だった駄菓子屋も今は廃れ、途絶えそうだった金井家の道場は彼女が師範(代)になってから若い入門生が増えた。

小学生のころは、無心で竹刀を振り合ったのになあ。

立ち入り禁止の看板が風にあおられてぱたぱた揺れた。街灯の明かりが不規則に点滅を繰り返した。
かっこつけて、That's my soul up there.と呟いてみたが、風の音にかき消された。柄じゃないか。


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