10/03/19 12:50:49 nkZsNatN
「ちく…しょう、なんでこんなことに」
登山中、霧が出たと思ったら仲間とはぐれて道を誤り、適当に進めばそこはまさしく魔境となる。
そこ、適当に行くな馬鹿とか言わないでくれ。 俺だって反省している。
「だいたい…さっきからなんだ? 何かに見られているような気すらする」
まあ、一人なせいで神経が昂ぶっているのだろう。 まして深い森の中。
いまだ昼下がりとはいえ人気がなくては、そう思っても仕方ない。
…ん?
「…あな?」
目前にあるのは完全に穴である。 ぽっかりと空いた、人一人が入っても余裕そうな穴である。
不思議に思い近寄って覗いてみるが、底も見えない。
…少し考えたが、まあ現状打開の一助にならないことは明白。
「なんなんだか、この穴…まあいいや。しかしまあ、いくら降っても麓につかないな…」
一人、ぼやく。
「降りたいの?」
「そりゃまあね。 疲れたし、腹減ったし…?」
くるりと振り向きこんにちわ。
なんか全身が妙に白く、口の端に牙っぽいのが生えている少女がいましたよ。
なんだろうか、その如何にもハンドパワーといわんばかりの突き出すような形の両の手の平。
「えへへ…」
ふむ、いい笑顔だね?
よ~く見ればあどけなさの残る可愛い子なのだが、頭の先には触覚があるし、肌の色は色白というレベルを一段階超えた色白さである。
腕にもよく分からない軟体の篭手みたいなのを装着しているし、なによりも特筆すべきは全裸であるということかもしれない。
しかし、だ。
「人間…じゃ、ない?」
「大、正~解!」
ドンッ、と突き落とされる。 背後には変わらずに厳然として穴。
いやあ、突き出す腕はそのためか。 ハハハマテヤー!
笑顔で突き落とすとか止めてください…て、深さの分からない穴に落とされるとか死…!