10/03/27 11:00:01 e0TGAGpp
ジュリアが買い物袋を持って外へ出たとき、雲ひとつない青い空に、メキシコ中を照らしだす陽気な太陽が浮かんでいた。
昨日まで降り続いていた雨が、地面のあちらこちらに水たまりを作っていたが、太陽はそれすら、自分の物だと主張するかのように水面に映りこんでいる。
前日の雨を追いだすかのような青空が広がる晴天の日こそ、絶好のバースデイ・パーティ日和に思えた。
ジュリアの恋人、ホークも、きっとそう思ってくれている筈だ。
今日はホークの誕生日だ。ジュリアが、仕事仲間を呼んでパーティを開こうと提案すると、彼は顔を赤くして恥ずかしがったのだが、
みんなとの付き合いは大事よと言うと、彼も最後にはしぶしぶ賛成した。
1年に1回の、大切な日なのだ。特別な日は、みんなで祝いたい。
ブラウンの長髪が、風に流されてさらさらと舞う。日差しを受けてまぶしく輝く髪が、彼女の楽しい気分を表現しているかのようだ。
こみ上げてくる嬉しさと手をつないで、彼女は街の中心部へと歩いていく。
歩くこと20分、次第に人通りの多い、街の心臓部がやってきた。様々な種類の店が、一様に看板を並べて、客の目を引こうと頑張っている。
ここへ来れば、食材、服、アクセサリー、おもちゃ、何でも揃うのだ。
ジュリアはいつも利用している食料品店に入っていった。スーパー「メキシカン」である。
パーティーで皆に料理を振る舞うため、ジュリアは必要な食材を見て回った。
買う物は決めていた筈だったのだが、あれこれと見て回るうちに、作りたい料理も増えていき、いつの間にか買い物かごは予定よりも多くの食べ物でいっぱいになってしまった。
「買いすぎの気もするけれど、たまにはいいわね」
かごいっぱいの食材を見て、ジュリアは満足気にうなずいた。
これだけの荷物を持って帰るのは、女性には文字通り、荷が重いのではないかと心配したくなるが、当人は全く気にしていない。
スレンダーな体型をしているジュリアだが、これでも子供の時から、林業を営む父の手伝いで、ある程度の重さの荷なら、軽々と持てる程の力を身に付けているのだ。
だが、いつもこのぐらいの荷物を持ちあるくジュリアでも、店員が大量の荷物に目を丸くするのを見ると、さすがに恥ずかしさを覚えずに居られなかった。
「よいしょ!」
両手に、食材で一杯の袋を提げて、彼女はまた来た道を戻って行く。
すでにジュリアには、今夜のパーティーの盛り上がりが頭に浮かんでいた。