調教や洗脳などで悪の奴隷になるヒロインpart35at EROPARO
調教や洗脳などで悪の奴隷になるヒロインpart35 - 暇つぶし2ch550:予定調和
10/03/22 23:16:57 ImjFNJGV
「そういえばさあ、貴方がさっき言ってた『りょうじょく』とか『りんかん』って何?」
蘭がゴミに靴を舐めさせながら、さっきのクズの発言に食いついている。
蘭には知る必要もないし、世の中には知らないほうがいい情報もあることを教えておかなければならない。
「ああ、それはですね……」
「お前は蘭と口を利くな!蘭が穢れる!」
急に立ち上がったから、春香ちゃんの手を踵でゴリッと踏みつけてしまった。骨が折れてしまったかもしれない。
そんなことより今は蘭のことが大事だ。
「あ、ちょっと、お姉様!」
蘭の手を引っ張って別の部屋に連れて行き、クズとの関わりを絶たせる。
一旦興味を持ったものを「調べるな」と止めても人間の好奇心というのはそう簡単に抑えられるものじゃない。
「蘭、ちょっとこっちを向いてくれる?」
「何、お姉……さ……ま……」
私を強く拒絶している相手ならともかく、蘭なら心の壁を瓦解させることなど容易い。魔眼を使って蘭の意識の全てを私に集中させる。
ああ、なんて可愛いのかしら。
可愛いだけじゃなくて可憐さも併せ持つ顔立ちに、私と同様の長い睫毛。
子供と大人の両方の魅力が掛け合わさった、ベストなタイミングで体の成長が止まっている。
さっきの貫禄と余裕に満ち溢れた顔もいいが、こうやって魂を抜かれたような惚けた表情もいい。

魂を抜かれたような惚けた表情をしているのは今の私も同じだった。
「私が蘭に見蕩れちゃってたらダメじゃないの」
気を取り直して蘭の記憶を弄り始める。優しく、ゆっくり、確実に。
蘭には学校の保健体育で教えてもらうくらいの知識があればいい。
男が出した精子がどうやって女の子宮に到達するか?そんなもの、蘭は知らなくていいし知る必要もない。
だが他の人間全員まで制限するつもりはない。そうすると人間がいなくなってしまう。
だからこれは姉である私のただの我侭。
記憶を消すだけではまた今回と同じことが起こるかもしれないので、
ああいうのはただひたすら下品でわいせつなものだという偏見を植え付けておく。
蘭は一生純潔無垢のままでいて欲しい。
ずっと人間の汚い部分を知らないままでいて欲しい。
尿が出る不浄なところを舐めたりする現実があるなんて知って欲しくない。
もし私の蘭に風紀紊乱なことを吹き込もうとする不埒な奴がいたら、全員八つ裂きにしてやる。
「これでよし、と。ほら、蘭、何ぼーっとしてるのよ」
蘭の肩を軽くぽんぽんと叩いて意識を覚醒させる。蘭は寝ぼけ眼で私を見た後、自分の今の状況を判断するまで少し時間がかかった。
「う~ん……あ、あれ?ごめんなさいお姉様、私ちょっと気が抜けてたみたい」
「少し疲れてるのかもね。今日は早めに寝なさい」
それにしてもあのクズ、普段は大人しいふりをして本性はあんな淫乱女だったとはね。ほんと、人は見かけによらないわ……。

自分がどうして怒られたのかわからない秋生は、自分の作った血溜まりを掃除していた。そこに部屋に残っていた春香が声をかける。
「いやー、見事にあたしの予想どおり先輩の地雷を踏んじゃったね、白石さん♪」
「赤坂さん、知ってたなら言ってくれてもいいのではないですか」
「何でわざわざ自分で楽しみを取り除かないといけないのよ。
 黙ってれば2人のうちどっちかは引っかかるとは思ってずっと楽しみにしてたのに」
「……赤坂さん、なかなかえげつないことをしますね」
秋生の恨みのこもった目つきも、今の春香には弄りがいのある獲物にしか見えていない。
「蘭ちゃんに2人がまだ激しく怒られてないって聞いてたから、その時点で2人に言っておけばこういう事態は未然に防げたかもね。
 でも、あたしはあんたに卑猥な発言をしろとは言ってないし、勝手に引っかかったのが悪いんじゃない?」
春香の言い分は無茶苦茶ではあるが、月夜女姫に叱られて動揺している秋生の心の傷を抉るには十分だった。

551:予定調和
10/03/22 23:20:17 ImjFNJGV
「先輩も変わってるよねえ。内臓とかグロテスクなのは平気なのに、あっち系のことは耐性ゼロだし。
 昔から軽い下ネタ程度で嫌な顔してたけどね。あ、グロテスクなのがだめだったら医者やっていけないか」
「あそこまで毛嫌いする人は初めて見ましたよ。化石みたいな貞操観念ですね」
「あたしも先輩以外には知らないなあ。どんな育ち方をすればああなるんだか。どこの時代の頑固親父ですかって感じよ」
元々天道彩はグロテスクなものは苦手で、ごく普通の感覚を持つ女の子であった。
医者を目指すのにそれではいけないと思い、中学生の間に自分で克服したのだ。
それが今は黒の一族となって残虐性が増幅されているに過ぎない。
月夜女姫がその方面の話が未だに苦手なのは、親が無菌状態で育てすぎたのが原因だった。
「あそこまできついセックスヘイターじゃなかったら、先輩は頭も顔も運動神経もいいし、
 友達想いで性格もいいから人間関係も円滑にできただろうにねえ……今言っても遅いけど」
「そういえば、今晴川と青野さんを一緒の牢に入れてますけど、大丈夫なのですか?」
秋生から見れば、月夜女姫が男と女を同じ牢に入れていることが信じられなかった。
見張りも置いていないし、そういう行為に及ぶ可能性も十分に考えられる。
「先輩のことだから多分わかってないだろうね。でも、あの2人は『色恋沙汰とかめんどくさい』って言うタイプだから心配ないと思うよ」
男1人に女4人という組み合わせで2年近く何も起こらずに済んだのも、晴川の貞操観念が強かったからに違いない。
しかしその情に流されない過剰なまでの冷血さが春香を堕とすことになった。
「それに、2人を同じ牢に入れておくのは目的があるらしいよ。あたしは知らないけど」
春香はこれから2人を待受ける運命に心を躍らせ、秋生はその運命に少しだけ同情した。



晴川と夏菜の2人は別の部屋に移動させられて、そこで壁から生えた短い鎖で手足を拘束された。
牢屋と同じくここも真っ暗で、黒の一族でない者は視界が完全に閉ざされる。晴川たちは目隠しをしているのも同然だった。
「まずはオーソドックスに鞭からいってみましょう。覚悟はいいかしら?」
「……やりたいならさっさとやればいいだろ」
晴川はふてぶてしい態度で月夜女姫の言葉を受け流す。
「そうやって冷静を装うのもいつまで持つかしらね!」
言いながら勢いよく鞭を振り下ろすが晴川に当たることはなく、先端が月夜女姫自身の闇界障壁に当たって跳ね返った。
「このっ、このっ、どうして当たらないのよ……」
「先輩、あたしは夏菜ちゃんのほうをやってもいいですか?」
「ええ、いいわよ。……鞭も練習しておくべきだったかしら……」
「じゃあ私も夏菜ちゃんのほうにしよっと」
春香が床を鞭で叩いてバシィンと景気のいい音を響かせるが、夏菜のほうもそれで恐がる様子もない。
「1回やってみたかったのよねー、これ」
春香も初めてなのは変わらなかったが、初回の振り下ろしで夏菜の太股に赤い筋を付けた。そのまま腕や顔に次々と赤い筋を刻んでいく。
その間夏菜は打たれた瞬間に眉をひそめるだけでそれほどきつそうには見えない。
「あれ?なんか……楽しい……」
「……」
夏菜からは春香が見えていないはずなのに、夏菜は氷のような清冽な鋭さをもった目で春香を冷静に睨みつけている。
「こうなったら、意地でも悲鳴を上げさせてやる……」

月夜女姫は晴川に当たった回数より自分の闇界障壁に当てる回数のほうが多く、鞭を振り慣れていないのが一目瞭然だった。
「月夜女姫様、私がやりましょうか?さっきから全然当たってないじゃないですか」
「う、うるさい!お前たちはそこで指をくわえて見てなさい!」
春香は上手くできているのに自分はできていない焦りから、月夜女姫はさらに鞭の精度を落とした。
「お姉様も赤坂さんも全然ダメだなあ。赤坂さん、代わってもらってもいいですか?」
「全然ダメって……あたしも?」
蘭は夏菜の前に立つとにいっと口を歪めて、鞭を水平に構えた。
これから蘭に打たれる夏菜は来るであろう衝撃に備えてぐっと気合を入れなおす。
「本当の鞭打ちっていうのは、こうやるんだよ!」
春香の鞭とは段違いに威力の高い鞭打ちが夏菜を襲う。その威力は腹部の服が破け、さらにその下の柔らかい肌まで裂けて血が滲むほどだった。
「っ……!」

552:予定調和
10/03/22 23:25:11 ImjFNJGV
「さあて、夏菜ちゃんはいつまで耐えられるかなあ?フフフ……」
夏菜からは見えていないのに、はっきりと感じられる雰囲気だけでぞっとさせるような薄ら笑いを浮かべながら蘭は鞭を振り上げた。

相変わらず悪戦苦闘している月夜女姫に、蘭の興奮する声が届いてくる。
「しけた声出すなぁ!もっと叫べぇ!」
「いいっ……」
あちこちの皮膚が破れ、足を伝って血が流れている。奥歯が欠けるのではないかと思えるほどぎいっと歯を食いしばって耐えている夏菜の様子からは、
絶対に悲鳴を上げるものかという執念がこれでもかというほど伝わってくる。
「蘭、いつの間にマスターしたのかしら……」
蘭は月夜女姫が見たこともないような酷薄な表情で鞭打ちを楽しんでいた。
自分の妹があんなに上手に扱えているから、月夜女姫の拙さが余計に際立っているように感じる。
目の前の晴川も顔には出さないが心の中で嘲笑っているに違いない。
羞恥に耐えられなくなった月夜女姫は、次の蝋燭責めにうつるように指示した。



しかし、蝋燭責めは鞭打ちに比べるとかなり短い時間で終わった。

蝋燭責めが終わると2人は鎖を外され、元の牢屋に連れ戻された。
首輪をつけたまま晴川は剥き出しのコンクリートの床にゴロンと大の字に寝転がり、夏菜は膝を抱えて小さく蹲った。
「青野、その傷何ともないか?」
「……すっごいヒリヒリする。ところでさ、ああいうのってボンデージ衣装とかでやるのがお約束じゃないの?
 月夜女姫は漆黒のドレスだからまだいいとしても、その妹とか服だけなら清純系の正統派ヒロインにしか見えなかったんだけど」
「服だけは、な。それ以外の見た目や言動は悪魔以外の何者でもない」
固まった血がこびりつき、さらに焦げ付いている夏菜の服は原形を留めておらず、辛うじて布が肌に引っ付いていると言ったほうが近い状態である。
「でもお前があの鞭打ちに耐えられるとは思わなかったな。大したものだ」
「月夜女姫が蝋燭責めで『眩しいから止める』って言い出してなかったら間違いなく悲鳴上げてたけどね。
 まあ、お約束をわかってない連中なんて所詮あの程度よ。鞭打ちもあの妹以外は下手糞だったでしょ」
蝋燭程度の明かりすら直視できないのか初めは目を背けながら責めていたものの、
眩しいのが我慢できずに月夜女姫が早々に中止するように言ったのだった。
「あいつらの目的は拷問でも屈服させることでもなく純粋に俺たちの反応を面白がっているだけだからな。
 無反応を徹底すればいずれ飽きるだろう。今回はよくそれを守った」
「晴川さん、次は何が来ると思う?」
「鞭打ちといい蝋燭といいあいつらのやっていることは所詮SMプレイの真似事だ。となると……青野、SMプレイってほかに何があるんだ?」
「19歳の普通の女子大生にそんな知識があるわけないでしょ」
「ま、まあ、あいつらも慣れてないみたいだからそこまで多彩な責めはしてこないはずだ。ただ、陵辱は覚悟しておけよ。
 悪者に捕らえられたヒロインが犯されるという展開はありがちだからな」
「ちょっと止めてよ、私まだそういうことやったことないのに」
「最悪、俺を操って犯させるかも知れん。あいつらは全員女なんだからこれが1番可能性高いかもな」
「……」
夏菜もこの歳になれば悪者に負けたヒロインがどうなるかくらい知っている。そのまま殺してしまうケースは少ない。
春香のように他の仲間を釣る餌にされることもある。または、懐柔されて悪者の言いなりになるか。
しかし、夏菜の知識にあるのはここまでだ。
その方面の本を読んだことがない夏菜は、ヒロインが犯されて頭が壊れた雌奴隷にされることがあるとは知らない。
「今日鎖に拘束されるときに服を脱がされなかったから、やらない可能性も考えられるが……悪い、不安にさせた」
今日の鞭打ちや蝋燭責めももちろん初体験だったが、「犯される」というのはどのような気分になるのか夏菜には想像しにくかった。
その分未知の恐怖として夏菜の体を締め付ける。
「そ、そういえばさ、晴川さんはこの状況で何かしたいと思わないの?」
「何かって何だ」
「そりゃー……真っ暗な密室に男と女が2人きりで時間があり余るほどあるから……って、恥ずかしいこと言わせないでよ!」

553:予定調和
10/03/22 23:33:46 ImjFNJGV
首輪で鎖に繋がれているとはいえ、便所に行けるくらいの行動の自由は残されている。
実際にやろうと思えば暗くて相手が見えずともやること自体は可能だろう。
夏菜もこれまでの過酷な逃亡生活でやつれていながらもまだ肌は荒れていないし、健康的な若さを保っている。
夏菜は性格こそ子供っぽいが器量は中々で、体型も無駄がなく洗練されている。
並の性欲の持ち主とこの状況で2人きりだと襲われても不思議ではない。
しかしこれを晴川は月夜女姫の罠と踏んだ。
「あのな、青野。お前こそ今の状況を考えろ。余計なことして体力使ってる場合じゃないだろう。それとも、誘ってると受け取っていいのか?」
「そんなわけないでしょ、言ってみただけ。私は今も昔も色恋沙汰には興味ないから」
秋生と冬子には彼氏がいると晴川は聞いたことがあった。春香は厳しい部活とホワイトウイングの活動の両立で彼氏を作る暇がないというのはわかるが、
夏菜の高校時代の部活はあまり活動のない家庭科部。大学も特定のサークルに属しているわけではない。
「その顔で男が寄り付かないとは思えないな。付き合ったこととかないのか?」
「高校のときに1回だけ、告白されて付き合ったことはあるよ。
 でもねえ……別に相手の人が嫌いだったわけじゃないんだけど、恋愛って面倒じゃない?
 どうして皆あんなにくっついたり離れたりに必死なのかわかんないわ」
外見や服装に気を使うのも異性の気を引くためでなく、あくまで身だしなみの範囲。夏菜にとってはそれ以上の意味を持たない。
「それにそういう色恋沙汰で人間関係が壊れる人も多いでしょ?それなら友達のままでいいじゃんって思うんだけど。
 色んなものを犠牲にしてやっと男をもぎ取ってもその人と一生付き合うわけじゃないしさ。
 こういうことがわかんないから、皆から子供って言われるのかなあ」
夏菜がそんなことを言えるのも、夏菜はまだ人を本気で好きになった経験がないからだった。
夏菜の学部には掃いて捨てるほど男がいるのに、仲がよくても皆男友達止まり。
そこに夏菜を落とそうと企む男がいたとしても、まずは夏菜の恋愛観から変えなければならないので攻略難易度は高い。
「女でそこまで恋愛に興味がないのも珍しいな」
「今時恋愛以外にも楽しいことがいっぱいあるんだから、おかしくはないでしょ?
 私はね、皆のヒーローを目指してたの。ジャンルは何でもいいから、弱きを助け強きを挫く、みたいな感じのヤツをね」
「警察でも目指してたのか」
「警察とはちょっと違うんだよね、それじゃ点数稼ぎに忙しくて勧善懲悪にならないし。
 でも今私たちがやってることは正に皆のヒーローでしょ、平和を守る正義の味方。
 憧れてたけどまさか自分がなるとは思わなかったなあ。相変わらずそれっぽい変身スーツや巨大ロボは出てこないけどさ」
誰もが子供時代に憧れ、やがてそれが作り物の世界にしか存在しないことを知って諦める夢。しかしそれらは普通男子の夢だ。
「いつも思っていたんだが、どうして変身スーツや巨大ロボなんだ?お前は女なんだからそこは魔法少女だろ?」
「あー魔法少女ね……あれはどれもこれも衣装がやたらヒラヒラしてて戦いにくそうだし、変に肌の露出が多いからやだ」
「問題はそこなのかよ。……俺は、正義の味方側になるべき人間ではなかったのかもしれないな」
化け物退治ということで甘えを捨てようとしたところが行き過ぎて非情になった。
仲間を脅迫で集める、仲間を見捨てる、仲間を最初から信じないで切り捨てる……これではどちらが善でどちらが悪かわからない。
平和を愛する心はあっても結果を重視するあまり、正義の味方として根本的なものを軽視してしまっていた。
「お前みたいな純粋な心の持ち主が1番正義の味方に向いてるよ」
「いや、私も……現実の戦いを舐めてたよ。ゲームみたいに負けたら最初からなんてわけにはいかないんだから、
 時には晴川さんみたいに非情になる必要もあると思う。月夜女姫より前の敵はたまたま弱かったから上手くいってただけで、
 今思うとあんなふざけた戦い方をしてたら途中でいつやられててもおかしくなかったよ」
そのやり方でそれまで大した挫折を味わわずにここまできたのだから、夏菜の能力の高さが伺える。
「俺は聖人君子にはなれないが、もう少し正義の味方らしくしてみるとするか」
晴川は寝転がった体を起こしてあぐらを組んで座りなおし、静かに宣言するように言った。

554:予定調和
10/03/22 23:36:30 ImjFNJGV
「よーし、そうなったらまずはお約束の変身スーツだね!」
「どれだけ変身スーツが好きなんだよお前は。
 まあ、2人でここを出ることができたら白瀬に頼んでみるから、それまで名乗り口上でも考えておくんだな」
「うん!」
暗くて顔を見ることができなくても、声のトーンから夏菜が顔を輝かせて喜んでいるのがはっきりとわかった。
いつまで続くかわからない牢獄生活を耐えるモチベーションを保つためのわかりやすい指標だった。
月夜女姫たちが私刑に飽きたところで、晴川たちを解放するとは限らない。だが、そこで悲観的になっていても事態は好転しない。
「『夏菜参上!とぉうっ!』……これじゃシンプルすぎる。でもあんまり長いと名乗ってる間に敵に先制されるからなあ、うーん……」
命ある限り戦う、そう「思い込まされて」いることに2人はまだ気付いていなかった。



晴川と夏菜の2人は昨日鞭打ちと蝋燭責めをされたあの部屋にまた入ることになった。
今回は壁の鎖ではなく、台の上に革のベルトで手足と頭を固定される。
今回も暗闇で部屋の中に何が用意されているか2人は見ることができない。
「2人とも丸1日飲まず食わずでは辛いと思うから、今回はミネラルウォーターくらい飲ませてあげるわ。喉がカラカラでしょう?
 飲みやすいようにキンキンに冷やしておいてあげたから、たっぷり飲みなさい」
晴川の頭のすぐ側にドン!と音を立てて2リットルペットボトルに入ったミネラルウォーターを置く。
もう1人の方にも同じように蘭が置くと、僅かに顔が引きつるのが見えた。
「じゃあ飲ませてあげるから口開けて。はい、あーん」
思いのほか素直に応じた晴川に、口内の粘膜が傷つくことなどお構い無しにペットボトルの口を突っ込んだ。
「ちょっとお、口開けてくれないと飲ませてあげられないじゃん。早く口開けてよ」
すんなり言うことを聞いてくれた晴川とは逆で、蘭は言うことを聞かない青野とかいう女に手こずっているようだ。
喉を握ってえずかせ口が開いた隙に押し込んでいた。
最後は多少苦しそうな顔を見せるも、晴川は2リットルの水の一気飲みをこなした。
一方の青野とかいう女は半分を少し過ぎたところで限界が来たらしく、激しくむせて体をばたつかせている。
昨日の鞭打ちには耐えられても、今日の水責めには耐えられなかったらしい。
「お腹の中空っぽなんだからまだ入るでしょ?飲まないと息ができなくて余計に辛いと思うけど」
「ごぼっ、おぶぶ、ごぶぶぶ……」
「ほらあ、ちゃんと咥えてないからいっぱい零れてる」
飲みきれなかった水が溢れて、台の下にぽたぽたと垂れている。1本目が終わっただけで青野とかいう女は既に満身創痍で息も絶え絶えになっていた。
もちろん、1本だけで終わらせる気など全くない。
「あっちも飲み終わったみたいだし、2本目にいきましょうか」
「飲めばいいんだろ、飲めば」
口では強気な晴川だったが、1本目に比べると飲むペースがかなり落ちている。
ペットボトルの腹を凹ませて水を流し込む早さを上げると、ついに晴川も苦悶の表情を浮かべてもがき始めた。
「んおっ、ごぼ、げぼげぼげぼっ……」
「早く飲まないと息が続かないわよ……って、鼻が開いていたわね」
飲ませられながらも最低限の呼吸が出来ていた鼻を急に指で摘むと、拘束具を壊しかねない勢いで晴川が暴れだす。
その動きが多少弱まったところで、2本目のペットボトルは空っぽになった。
「ゲホッ、がはっ……はあっ、おぶうっ!?」
水から解放されて大きく息を吸い込もうとした晴川の口に、春香ちゃんが3本目のペットボトルを捻じ込んだ。
気管に水が入り込んだのか、苦しげに眉を寄せ目に涙を浮かべながら全身をのたうたせている。
「あんたなら休憩時間なんかいらないよね♪」
鼻は私が摘んだままなので、晴川が息をするにはこれを飲み干すしかない。
息を整える暇さえ与えられずに矢継ぎ早に水を飲まされては、精神力の強い晴川も限界に違いない。

晴川の腹が水でみっともなく膨れたのを確認して、私はもう片方の女の様子を見に行った。
こちらも妊婦のように腹が膨れ上がっていて、その瞳の中の光は弱弱しいものになっている。
水で内臓が圧迫されているのか、ひゅうひゅうと呼吸に擦れた音が混ざり普通に息をするだけでも苦しそうだ。

555:予定調和
10/03/22 23:40:09 ImjFNJGV
「それじゃ、腹を押すなり殴るなりして吐かせて。あと、そのままだと吐瀉物が気管に詰まって窒息するから顔は横にするのよ」
「夏菜ちゃんいくよー、せーの!」
「ぐげええええっ!」
蘭の全体重を腹にかけられ、希釈された胃液がごぼごぼとあの女の口から溢れ出す。
「けほっ、うえっ、おえっ……」
「もう1回お腹の中空っぽにしちゃおっか。まだまだ水はたくさん残ってるからさあ……」
一方、私は春香ちゃんに晴川のぶっくりと膨れた腹に拳を叩きつけさせていた。
元々武道の経験もなく腕力もか弱い春香ちゃんだが、黒の一族となった今では腕力自慢の男くらいはゆうにある。
「先輩、何か吐く水に血が混ざってるみたいなんですけど大丈夫ですかね?もしかしてあたし殴りすぎですか?」
「いいのよ、そのくらいで。ここでしっかり吐いておかないと後々苦しいわよ」
殴られている晴川に答えている余裕はない。いつもならこの程度のパンチなど腹筋に力を込めて軽減できるのに、
度重なる水責めで憔悴しきった体ではそれも叶わない。ただ私に無様な面を晒すだけだ。
水っぽい胃酸の血の割合が高くなってきたところで、春香ちゃんの手を止めさせた。
「今の気分はどうかしら?」
「……」
「ふーん、あくまで無反応を貫くつもりなの。まあいいわ、今のうちからギャーギャー喚かれてたら、この先耐えられないでしょうから。
 それじゃ、続きといきましょうか」
水責めは晴川が腹を押されなくても勝手に真っ赤な水を吐き出すようになるまで続けられた……。



まだ疲れが残ってふらついているというのに、晴川たちはまたあの部屋に連れてこられた。
今回は晴川だけを台の上に固定し、夏菜は隣で見学するように指示される。
黒の一族が眩しがることもなく、普通の人間の2人はお互いの様子がよく見えるように、薄暗い明かりがつけられた。
「昨日は水を飲ませてあげたけど、まだ食べ物を食べてないからお腹が空いたでしょう。
 これが終わったらお前たちにも食べさせてあげるから、もう数時間辛抱することね」
私は晴川のボディーガードのような服を破いて、みっちり鍛えられて綺麗に6つに割れた腹筋をあらわにする。
ボディービルダーとまではいかないが、おそらく一般人ならここまで鍛えないだろう。その腹も今は昨日殴ったせいで青痣だらけになっていた。
「そうだ、この晴川の腹から目を逸らしたらダメだからね」
「何をする気なのよ」
「ふふ、いいもの見せてあげる。でも、流石にこのまま切ると不味そうね」
一旦治癒をかけて傷を治してから、みぞおちから腰の辺りまでつつっと爪を走らせると、
ワンテンポ遅れて赤い線が引かれたように血が滲み出る。次は左右の肋骨に沿って。
大学は解剖実験とかやる前に出てきてしまったから、私に専門的な知識はない。
それでも、何回も普通の人間を実験台にしてこんなふうに腹を裂いてきた。腹の皮をはがすだけならそこらの外科医より上手いかもしれない。
必要な分の切込みを入れ終わったところで、あの女はこれからやることにやっと気が付いたのだろう、
カタカタと震え必死に目を逸らそうとしている。さっき私が暗示をかけたのだ、どうせ無駄な足掻きでしかない。
「嫌、やめて、こんなの見たくない……」
見たくないと言いつつ、目は私の指示した位置に釘付けになったままだった。
それを確認して、最初に入れた体の中心の傷に手をかけて腹の皮と肉をメリメリと音を立てて引き剥がす。
まだ元気に脈打っている、健康的な人間の臓器が目に飛び込んできた。
「ぐあああああああああっ!」
「いやああああああああっ!」
「初めてまともに叫んでくれたわね……その調子でもっと泣き叫んで頂戴」
普通に生きていればまずお目にかかれない、人間の内臓。
人体の構造が書かれている本でも大抵は絵で説明されているので、それ以外だと人体模型くらいしかない。
見る機会といえば手術か、交通事故などで内臓が飛び出した怪我人か。
それと同じまだ生きている人間のものだ、精肉屋に並んでいる肉とは新鮮さが違う。
「どう?なかなか見られるものじゃないわよ」
「うっ……早く……閉じなさいよ……気持ち悪い……」
「冗談でしょう?これからが本番なのに。じゃあまずは」

556:予定調和
10/03/22 23:44:11 ImjFNJGV
爪で中を切らないように腸のあたりに慎重に手を突っ込み、臓物を引きずり出していく。生臭さが鼻を突くが、もうこんなものは慣れている。
「ぐ……がはぁ!」
太い血管を上手く避けて切開できたから、出血量は大したことはない。
出血量さえ多くなければ、人間というのは内臓を外部に露出させても半日くらいは生きられるという。
ただ、こうやって内臓を引きずりだされると人によってはあまりの痛みにショック死することもある。だから慎重にいかなければならない。
「お姉様、こいつ寝ちゃったよ」
「塩、そこにすり込んで。用意させてたでしょ。でも一気にすり込んだらダメよ、ナトリウム過多になるから」
「ぐげぐぎゃああああああ!」
「もうやめて!こんなこと……う……う……うげええええぇぇっ!」
青野とかいう女の両手で口を塞いだ隙間から胃液が溢れ出てくる。
黒の一族を散々殺したくせに人間の内臓見ただけで戻してしまうなんて、意外と軟弱者なのね。
「ありゃー、また見事に吐いちゃったねえ。免疫なかったんだ。夏菜ちゃんってこういうのに強いと思ってたけど」
「げほ、げほっ……春ちゃんこそ何でこんなもの平然と見ていられんのよ」
「あたし?あたしはもう慣れちゃった。だって人間なんてたんぱく質と脂肪とカルシウムの固まりでしょ。
 それに夏菜ちゃんだって黒の一族の腕をもぎ取ったことがあるじゃない」
「たまたま光線が当たって腕が取れたのと、今の状況を一緒にしないでくれる?あの時だって精一杯我慢してたのよ……」
私は消化器官を大方出し終えると、ほぼ空洞になった体の中で未だに鼓動を続けている器官に手を伸ばす。
血管の繋がったままのそれを取り出すと、晴川たちの顔色が一気に青くなった。
「ちょっとそれ、どうするつもりよ。まさか……」
「あ、そうだ。折角だからお前に止めを刺させてあげましょう。蘭、小ぶりなナイフを1本出して」
「こんなのでいい?」
蘭が出したのは私が思っていたものより大ぶりではあったが、ナイフには違いない。
「ありがとう。では青野さん、このナイフで晴川の心臓を刺しなさい」
空洞になった晴川の腹から目を逸らせない青野とかいう女の暗示を上書きし、血みどろの両手で優しく彼女の手にナイフを握らせる。
「誰が……え?」
前回操られたときとは違い口が利けることを知ると、なぜか女は勝ち誇った顔になり、
「かけ方が……甘いのよ!」
握らされたナイフをポロリと足元に落とした。
それでもなおナイフを拾おうとする体に脂汗をかきながら抵抗しているため、小刻みに体が震えている。
馬鹿な女だ。今回暗示を甘くかけたのはわざとで、そうやって必死に暗示に抗う格好を見て私は楽しんでいるというのに。
落としたナイフを再び女ががっしりと逆手で掴み、頭上まで掲げていた。
そんなに高く上げなくても心臓に穴を空けるには軽く刺すだけで十分なのに、張り切っちゃってまあ。
「こんなところで死ねるかよ……!」
「晴川さん……私ならまだ、平気だから。大丈夫。まだ、耐えられる」
「でもさあ、このまま心臓出しっぱなしにしてたらどっちにしても死ぬと思うよ?
 こいつも苦しいだけだからさっさと逝かせてあげたほうが良いと思うなあ」
「黙れ……気が散る……」
夏菜は鬼気迫る顔で春香を睨むが彼女は全く気にも留めず、
「そう?じゃあ……鞭打ちも追加しちゃおっか?この前使ったイバラ鞭はどこにいったかなあ」
「お前らなあ!人が苦しんでいるのを眺めて何がそんなに楽しいわけ?はっきり言って頭いかれてるんじゃないの?!」
「嬉々として月夜女様を狩っていたお前には言われたくないわね。これは私の大切な人を奪った報いよ」
初めて自分の本棚からあの本を見つけたときから決めていた。
絶対にこの女と晴川はあの本に書いてあるような死んだほうがマシと思えるような責め苦を与えてやろうと。
「夏菜ちゃんだって自分の嫌いな人が痛い目に遭ってたらいい気分になるでしょ?それと同じだよ。そーれ!」
「違う!……ああっ!」
背後からイバラ鞭でざくざくと傷を付けられた痛みに耐え切れず、夏菜は思わず掲げたナイフを振り下ろしてしまう。
刃を肉に突き立てた感触が夏菜の心を削るが、突き立てられたのは心臓ではなかった。
「ぐうっ……げほっごぷっ」
胃液で酸化していない、鮮やかな色の血の泡が晴川の口から吐き出される。
「へえ、肺に穴を空けてさらに苦痛を与えるなんて、お前もこいつに恨みがあったの?」

557:予定調和
10/03/22 23:49:14 ImjFNJGV
目が血走り、心が狂い乱れてぐちゃぐちゃになっているのがはっきりと見て取れる。
髪を振り乱しながら振り下ろしたナイフは今度こそ晴川の心臓に突き刺さった。
晴川は目玉が飛び出しそうなほど大きく目を見開き、一際大きな呻き声を上げて心臓から噴水のように鮮血が噴き出す。
「ああ……アア……」
「大丈夫よ、このタイミングで治癒をかければ」
理屈は未だにわからないが、どうみても助かりそうにない怪我や病気でもこの治癒術を使えば治せる。
この程度なら10秒もあれば完治するだろう。黒い霧が晴れると私が腹を切開するまえの状態に戻っていた。
引きずり出した内臓も全て元の位置に戻っている。
「ほらね、飛び散った血はそのままだけど体は元通り。殺さないって言ったでしょ?」
「うう……ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……」
私の声が聞こえていないのか、壊れた人形のように謝罪の言葉を繰り返している。
「じゃあ次はお前の番ね」
「それで大人しく従うと思ったら大間違いよ!」
私は「殺さない」と言っているから、これ以上失うものはない。だからこの女は命令を素直にきかなければならない理由もない。
しかし、決して逃げられない檻の中で強がったところでちっぽけなプライドが保てるだけだ。
「夏菜ちゃん、変なところで意地張らないほうがいいよ。時間をかけるともっと過激で残酷な私刑になるかもしれないしね」
「くそ……」
夏菜は生きたまま麻酔も無しに腸を引きずり出すより辛い私刑は思いつかなかったが、ここで無意味に突っ張ったところで何も進まない。
観念せざるを得なかった。
「私の爪は切れ味がいいからそこまで痛くないはずだけど、内臓をかき回されるのは尋常じゃない痛さらしいから覚悟しておいたほうがいいかもね」
この一連の解剖で女の方は精神的にかなり参っている。
あんまり急に事を進めると壊れて復讐の効果が薄れるかも……そのときは治癒で回復させて責めを続行すればいいだけの話だ。
「ああ、そうそう。晴川にはやるのを忘れてたけど、今度は自分で自分の胃を握り潰してもらおうかしら」
「できるわけないでしょ!死ぬわよ、そんなことしたら!」
胃を握り潰したくらいでは人間は死なない。
そのまま放置すれば死ぬかもしれないが、胃を全部切除しても生活できている人間もいることをこの女は知らないのかしら?
「握る手の骨を砕いておいたら時間がかかってさらに楽しめるわね」
「最低!最っ低よ、この人でなし!」
「これで最低なんて言ってもいいのかしら?こんなの、まだまだ序の口よ」
私刑が思っていた以上に過酷なものだと理解し、この女の顔からみるみる血の気が引いていく。拷問という言葉すら生温い。
普通の拷問ならば傷の治療のためにある程度の休憩時間を与えるが、この私刑では瞬時に傷が癒せるのでそれは必要ない。
私が止めるまで絶え間なく苦果が続く。
「お前、私たちをどこまで痛めつければ気が済むのよ……」
どこまでって、決まってるじゃない。
「私が飽きるまでよ。それまで精々楽しませて頂戴ね、囚われの正義の味方さん」
飽きるまでとは言ったが、いつ飽きるかは私にもわからない。

まさか、殺してもらえるなんてそんな甘いこと考えてたということはないわよね。
簡単に楽になろうとしてんじゃないわよ。



生きたまま麻酔無しで解剖という肉体的・精神的苦痛を同時に味わう私刑の後、月夜女姫は約束どおり晴川たちに食事を提供した。
それもコンビニ弁当などではなく、一食が2000円以上もするような豪華なものばかり。
毒が入っていると警戒しても、栄養剤を無理矢理飲まされるので意味がない。
月夜女姫がそこまで気を使うのも、「弱った虫を虐めても反応が薄くてつまらないし、私刑には万全の体調で臨んでもらいたいから」
という理由だった。怪我も私刑を受ける前に治療され、破れてしまった服もまともなものが支給される。

558:予定調和
10/03/22 23:53:42 ImjFNJGV
もちろん酸鼻を極めた様々な私刑も続行された。口から泡を吐いて気絶するほどの電気ショック。
焼きごてを前座として、さらに焼け爛れて皮がべろりと剥けるほどの火あぶり。
爪を自分で剥がさせたり、指と爪の間に火薬を詰めて爆破したり。
引き伸ばし器で関節を外され、腹を裂いた部分から傷口を広げて内臓だけで体が繋がっている状態にされたこともあった。
わざわざ切れ味の悪いぶつ切り包丁で指の先からゆっくり骨を粉砕されたり、
大きな杭を四肢に打ち込まれて壁に固定されて磔の形にされたり。自分で引き千切った自分の肉を食べさせられたこともあった。
そこまで凄惨な扱いをされながらも、晴川たちは決して自殺を図ることはなかった。
いや、できなかったのだ。なぜなら、月夜女姫の暗示により戦い続けることへの執着が強められているから。
だからいっそのこと死んだほうが楽であろう私刑でも「殺してくれ」とは言わなかったし、生きて帰るために必死に耐えていた。
するだけ月夜女姫が喜ぶので、許しを請うこともしなかった。

そして今日もいつもの部屋に首輪の鎖を引かれながら歩いていく。
「なあ、お前らどこでこんな拷問の方法を仕入れたんだ?とても20歳前後の小娘が持ちえる知識とは思えないんだが」
元は若い女ばかりの今の黒の一族がここまで自分たちに苦痛を与える手段を知っていることに晴川は驚きを隠せなかった。
その分野に詳しいような危ない人種はいなかったはずだ。
「月夜女様の遺品のおかげよ」
「あいつの仕業かよ。全く、とんでもないものを遺してくれたな」
「月夜女様があの本を遺しておいて下さらなかったら、お前たちをこれほど痛めつけることも出来なかったでしょうし、感謝してるわ」
「ただのSMプレイの真似事だと思った俺が馬鹿だったか……」
晴川はこれ見よがしに大きなため息をつくと、恨めしげに月夜女姫を見上げた。
「お前……こんなことして、満足か?俺たちを痛めつけているのは本当にお前の意思なのか?
 俺たちを痛めつけたところで、月夜女は生き返ったりしないんだぞ」
晴川の首輪の鎖を引いて前を歩いていた月夜女姫はそこで初めて振り向いて、
その綺麗すぎて触れてはいけないような顔を晴川の目の前に晒した。
「自分がやりたいからやってるに決まっているじゃない。追い詰められて死に物狂いのときに見せる抵抗なんて、最高の見せ物よ。
 その凛々しい顔が恐怖に染まる様をもっと見たいわね」
人を傷付けて楽しむその心が元々「天道彩」が持っていた心を大きく歪められてできたものだというのは
以前の彩を知る人物なら容易く見破れるほど、今の月夜女姫には昔の天道彩の印象は変わっていた。
変わらないのは、整った顔立ちが見せる優しそうな笑顔。しかしその笑顔は向けられた者に癒しを与えることはなく、逆に対象を萎縮させていた。
「悪趣味極まりないな」
「それに月夜女様の失われた幸せは戻ってこなくても、その幸せを奪ったお前たちの幸せは奪うことができる」
月夜女姫は晴川たちを苦しめることが第一で、それ以外は二の次だった。
いかに苦痛、屈辱、絶望を刻み込むことができるか、それだけを考えていた。
「安心しなさい、今日は多分1番楽な部類だから」
部屋に入ると今回も真っ暗で、晴川たちには何も見ることができない。
ただ、地を這う生き物が大量にいることだけは音でわかった。
「せんぱーい、言葉の通じない生き物を操るのってやっぱりかなり難しいんですけど」
「そこまで精密に操る必要はないわ。ただ本能のままに襲わせればいいの。さて、今日は一切の拘束を行わないわ。
 この部屋の中で蛇と遊ぶだけ。簡単でしょ?」
昨日までの壮絶な責めに比べたら、随分と温い。
出血毒は痛みを伴うが肉を引き千切られたり骨を砕かれたりするよりかははるかに軽い痛みだ。
しかし夏菜は手にともした明かりで春香の周りに蠢く蛇の姿を見るなり悪寒に襲われたかのようにブルブル震えだす。
そして一目散に入り口の扉に向かって走り出した。
「無理無理無理、蛇は無理ー!!」
前方を確認する余裕もないほど必死に逃げていたため、入り口で待ち構えていた秋生に顔面からぶつかってしまった。
「あら、青野さんは蛇が苦手でしたか?」
「いった……ちょっと白石さん!退いてよ!!」
「退けませんね、月夜女姫様の命令ですから。それより後ろ、来てますよ」
「ひいぃっ!?」
夏菜が振り返ると、おぞましい数の蛇が床を覆いながら彼女に近付いてきていた。
種類の判別までは出来ないが、「蛇」という事実だけで夏菜に苦痛を与えるには十分だった。

559:予定調和
10/03/22 23:56:41 ImjFNJGV
「蛇はダメだって……言ってるでしょうが……」
それまでの怯えた顔から一変して真剣な表情になり、一息ついて力を溜め始める。
「待て青野、その方向で撃ったら俺に当たる!俺がそっちに行くまで待って……」
だが夏菜はその警告が聞こえていないのか、溜めるのを止めようとはしなかった。
「消し飛べえ!!」
軽く溜めただけで簡単にコンクリートの壁に穴を開ける威力の夏菜のレーザーが、今回は全力で射出された。
大量の蛇は壁際まで吹っ飛ばされ、部屋の隅に塊となって残った。
「これで助けるのは2回目よ、晴川」
一方の晴川は月夜女姫の張った障壁のおかげで無傷で済んでいた。
魔法覚醒剤で能力が発現した4人は同時に対魔法抵抗力も上がっているらしく、
普通の人間なら消し飛ぶような威力の魔法攻撃でも戦闘不能に陥るだけで済むくらいまで軽減できる。
御神刀にもそれと同程度の防護作用があるが、今の晴川は御神刀を持っていない。
夏菜の攻撃を生身で受ければ間違いなく晴川は消しカスと化していた。
「……頼んだ覚えはないんだがな」
夏菜は苦手な蛇を一掃してやっと平静を取り戻したのか、へなへなとその場に座り込んで呼吸を整えていた。
「はは、は……誰よ、私は蛇が大の苦手っていうのばらしたのは」
月夜女姫がこの弱点を知っているはずもない。このことは仲のよい数人にしか話していないことだからだ。
「私ですよ」
ホワイトウイングにいたときには誰も見た事のなかった意地悪い笑みを浮かべながら、夏菜の後ろにいる秋生が告げた。
「白石さん!?」
「思っていた以上の反応っぷりでしたね。私も月夜女姫様に申し出た甲斐があったというものです」
口調こそ丁寧だが、結局は秋生も夏菜を遊び道具としか捉えていないという事実を突きつけられる。
「白石さんもあいつらと同じだってことをすっかり忘れてたよ」
「それに、まだ安心するのは早いですよ」
「くそ、こいつらまだ生きてやがる!」
夏菜が晴川のほうを見ると、あれだけ派手に吹っ飛んだ蛇たちが何事もなかったかのように晴川に纏わり付いていた。
既に太ももの辺りまで巻きつかれた晴川は歩くこともままならない。
「晴川さん!」
「お前は離れとけ。近付いたらお前も餌食にされるぞ。寄られたくなければ手にともした明かりを消せ!」
夏菜が魔法を使うのを止めた後も、晴川に纏わりつく蛇の数は増えていく。
そして夏菜も自分に近付いてくる存在の気配が多くなってきているような嫌な予感がしていた。
両腕を抱えて震えていると、二の腕に刺されたような痛みが走る。
慌てて明かりをともして確認してみると、やはり蛇が噛み付いていた。
噛まれた痛みはそこまでないが、二の腕にぐるりと巻きついて鱗と肌を触れ合わせられるだけで身の毛もよだつような嫌悪感に襲われる。
「きゃああああああ!なんでこんなに囲まれてるの?!」
「この蛇、夜行性に決まってるでしょ。元々視覚に頼ってないんだよ。
 夏菜ちゃんの体温が室温と同じにならない限り、明かりを消しても意味ないんだよ」
逃げ道を封じられた夏菜は以前脱獄したときのように天井を壊してここから脱出しようと考えた。
蛇から逃れられるならこの後のことなど考えていられない。
だが、この部屋の天井は夏菜の射撃を受けてもびくともしなかった。
「嘘……でしょ?」
「夏菜ちゃんの行動なんて全部お見通しだよ。天井が低いから飛んで逃げることもできないし……どうするの?」
春香が言葉で追い詰めなくても、夏菜は最初に噛み付いた蛇を引き剥がすことに必死で動くことができなかった。
一度噛み付いた蛇は片手で引っ張っても中々離れず、魔法による刺激を与えても少し怯むだけで大した効果がない。
「この蛇、普通の蛇じゃない!?」
「あ、そうそう。言い忘れてたけど、その蛇たちは私の魔法で強化してあるからちょっとやそっとじゃ死なないよ」
蛇を操っている春香は夏菜が魔法で抵抗するのを見越して先手を打っていたのだ。
そもそも生身の蛇なら最初の夏菜のフルパワーの攻撃で消し飛んでいるはずであり、2人はそこまで気が回らなかっただけだった。

560:名無しさん@ピンキー
10/03/22 23:58:33 nYZea0Co
ながいわw

561:予定調和
10/03/22 23:59:58 ImjFNJGV
「はあ、はあ、これじゃ、きりがない!」
夏菜が初めに噛み付いた1匹を漸く振り落としたときには、新たに5匹の蛇が体のあちこちに噛み付いていた。
それが10匹になり、20匹になり、やがて噛み付くスペースがなくなってくる。
「晴川さん……たす……け……」
蛇に噛まれた痛みと蛇自体の重さのせいで夏菜の動きは緩慢になっていき、遂にどさりと床に横たわった。
もう体のほとんどを蛇で覆われているのに、さらに夏菜に蛇が殺到する。
「青野!しっかりしろ!」
自身も顔まで蛇に巻きつかれながら懸命に夏菜に呼びかける晴川だったが、夏菜は倒れたままピクリとも動かなくなってしまう。
「おいお前ら、青野をこのまま放っておいたら死ぬぞ!殺したくはないんだろ!?」
「大丈夫よ。あの蛇、毒は持ってないもの」
「おい、あれ……!」
視界が蛇で覆われていく最中、それまでじっとしていた夏菜が弓なりに体を仰け反らせるのが晴川から見えた。
「んんー!んうー!!むぐううう!!」
噛む場所が無くなった蛇が、夏菜の口の中に入ろうとしていた。
咄嗟に噛み切ろうとした夏菜だったが、激しく動く鱗の皮膚を噛み切るだけの余力はなく、一気に食道まで蛇の侵入を許してしまう。
そうなるとざらざらした鱗が粘膜を傷付けるだけでなく、あちこちを蛇が食い破って耐え難い苦痛と嫌悪を夏菜に与えた。
「春香ちゃん、女の方は一旦引かせて。その分を晴川に回して」
「わかりました。上手くいくかな……」
春香がまるで子供をあやすような動作で夏菜に群がっていた蛇たちを誘導し、晴川に向かわせていく。
蛇が引いた後に残ったのは、夏菜が吐いた血に塗れたまま夏菜の体内を蹂躙する1匹の蛇だけだった。
赤く染められた尻尾を口からはみ出させてくねくねとのたうっている光景は長い舌にも見える。
月夜女姫はその蛇の尻尾を掴むと勢いよく引き抜いた。
「ぐげぐぎゃぁぁっぐげぐっぐぐがぁぁぁあああああ!!!」
引きずり出された真赤に染まっている蛇はやや弱っていたが、月夜女姫はそれを晴川に放り投げる。
そのとき飛び散った鮮血が夏菜の顔に斑点を作り彩を添えた。
「ごほごぼっ!あ、がは……」
「そこに突っ立ってるクズ、この女息ができてないみたいだから喉に治癒術かけてやって」
「はい、かしこまりました」
虚ろな目を天井に向けながら噛み痕だらけの全身を晒している夏菜に、
秋生は治癒術をかけながら月夜女姫に聞こえないようにそっと耳打ちした。
「青野さんは運がいいですね」
「なん、でよ」
気管の傷が治りかけてきている夏菜が苛立たしげに口を利く。
「蛇を使う拷問は口に入れられるものもありますが、性器に入れられるものも定番なのですよ。知っていましたか?」
「知るわけないでしょうが……」
「あなたたちはまだ性器周りの責めをされないだけ幸せなのです。
 今までの私刑も初めから服を脱がせてからやれば効率がよいのですが、月夜女姫様は人の裸を見るのが嫌いみたいですからね」
どうせその類の責めがなくても、代わりの責めなどいくらでもある。
夏菜にとってはその類の責めより、本来処刑に使われる責めの後無理矢理治療されるほうが辛かった。
人外の治療技術だからまだ命があるのであって、普通の人間の治療法では2桁は確実に死んでいる。
「そこで、今度赤坂さんが月夜女姫様の目を盗んでやってみようと提案しています。
 責めすぎてアソコがガバガバになってしまうかもしれませんね。覚悟しておいたほうがいいですよ」
「い、今更処女を失ったところで、私がショックを受けるとでも?」
「声が震えていますよ」
「くっ……」
夏菜も晴川と同様に性に淡白だったので、自慰は辛うじて知っていてもそれ以上は友人の話をたまに聞く程度であった。
夏菜の体のほうは十分に成熟していても、知識のほうはまだまだ子供同然。
強がりをあっさり秋生に見破られ、夏菜は遠くから聞こえる晴川の呻き声を聞きながら未知の恐怖におののくのだった。

562:予定調和
10/03/23 00:07:35 ZR+MuTSP
また投下ミスしてしまいました。あってもなくてもあまり意味は変わりませんが一応。

556と557の間
「いや、これは手元が狂っただけで……私、何てことを……」
「暗示に身を任せればお互い楽できるのに、素直じゃないからこんなことになるのよ」
「うううう……ああああアアアア!!やめてええ!こんなこと、私にさせないでええええ!!」

いよいよ次回は皆さんお待ちかねのエロシーン。属性は「輪姦・レズ・触手・逆強姦」となっております。
この続きは次回までじっくりお待ちください。

563:名無しさん@ピンキー
10/03/23 00:14:48 rf/DrBz/
なに大物気取った書き方してんだよ
お待ちかねとか以前に無駄に長いんだよ

564:名無しさん@ピンキー
10/03/23 00:18:48 5tqcyskn
相変わらず荒れるレスが・・・。
いいじゃないの。きっちり真面目に書いているSS書き手がいらっしゃるんだから・・・。
目障りだったらNGにしておけばいいし。

565:名無しさん@ピンキー
10/03/23 00:19:19 XGe2f5wU
乙乙

俺は堕ちるまでの過程も好きだから、長いSSでも大好きっす
続きを楽しみにしてますよ

566:名無しさん@ピンキー
10/03/23 00:37:23 torGLlyJ
>>563は荒れるようなレスをするよう
>>666に洗脳されたんだよ

567:名無しさん@ピンキー
10/03/23 00:47:22 UY6XTXkD
おつ
たっちーを乗り越えたおれに死角はなかった
しかし治癒の使い道間違いまくってるなw
ドSにもたせると回復魔法って怖い能力だね

568:名無しさん@ピンキー
10/03/23 01:10:18 nR8VB7kf
乙~

ってか、こえーよwww
誰が最初の投稿からここまで行くと予想できただろうか。
天道彩って誰だよほんと

569:名無しさん@ピンキー
10/03/23 01:23:50 VPEeEauj
>>666様のおおせのままに・・・

570:名無しさん@ピンキー
10/03/23 01:58:00 Pfy+Tz2/
これだけ言われてもNGに入れず文句言うのは逆に期待してるんじゃないのと

571:名無しさん@ピンキー
10/03/23 05:31:33 8S6eBZnR
むしろ長いSSじゃないと読まないな俺

572:名無しさん@ピンキー
10/03/23 10:18:34 rWoS3w+l
愛のムチですね
わかります

573:名無しさん@ピンキー
10/03/23 12:57:58 zhp8/grP
いちいちスレに投稿しないで
ブログに書いてURLはっつければ荒れないんじゃねえのかね

574:名無しさん@ピンキー
10/03/23 13:25:40 fUzHbd5u
ぐだぐだ寒い口上並べてないで男らしくスパッと投下すりゃいんだよ

575:名無しさん@ピンキー
10/03/23 13:28:10 rWoS3w+l
>>573
こんなことしたらブログがメチャクチャに荒らされるかもしれないじゃん
恥ずかしいこといわせるなよ

576:名無しさん@ピンキー
10/03/23 13:30:32 ylnKgb3a
さすがにそれはない

577:名無しさん@ピンキー
10/03/23 13:45:23 KPMfQYKA
ブログ立てても日に20人も閲覧があるかどうかだろうし自意識過剰もいいとこだ

578:名無しさん@ピンキー
10/03/23 13:56:57 BTlNKkiJ
ブログのURL貼ったって宣伝乙って言われるだけだろ

579:名無しさん@ピンキー
10/03/23 14:01:51 ylnKgb3a
NGnameにしてるから俺は何も言わないな、他の奴は知らんけど
てか熱心な読者がいるのならブログが欲しいんじゃね?と思うな
この作品まとめサイトに掲載されてないっぽいし

580:名無しさん@ピンキー
10/03/23 14:22:54 VxUUGVIN
思いっきり言ってんじゃねーかw
SSを追い出そうとするのはやめろって
今までに何人潰してきたんだよ

581:名無しさん@ピンキー
10/03/23 14:28:56 sykBHV3i
>>562
乙です。まったり頑張ってくださいね。

そういえば前にこのスレにあがっていたグラナドエスパダ。
今度はマインドコントロールやるんだね。

582:名無しさん@ピンキー
10/03/23 16:19:01 +KqUJede
SS総叩きの印象の強いこのスレだが、単にSS自体が下手あるいは需要に合わないというだけで叩かれるケースは実は少ない
そういうSSは大抵の場合スルーされている。やはり叩かれる主原因は、余計な前書き後書きに尽きるだろう
ホストを気取りたいのが透けて見えるから、ブログでやれとも言われるわけだ

583:名無しさん@ピンキー
10/03/23 17:11:37 qVRwXEf0
だらだらと書かれて寸止めされるのは嫌だな
SS投下を批判したくはないが一度全部書き終えてから推敲して
一気に投下してほしい
正直完結するまで何カ月もかかるSSは読みたくない

584:名無しさん@ピンキー
10/03/23 17:35:47 Pfy+Tz2/
>>582
スルーしたら感想書けよって基地外が現れてそこからまた荒れるけどな
でも批判コメよりスルーされる方が書き手には答えるだろうね

585:名無しさん@ピンキー
10/03/23 17:52:35 fx9ihoT8
>>583
しかもなんか対抗心見せて更に長く水増ししてきてるからなぁ

586:名無しさん@ピンキー
10/03/23 18:03:43 XGe2f5wU
長いSSの場合、少しづつ投下することで読み手の反応をみようってのもあるんじゃないの?
別にそれは悪いことじゃないと思うけどね
苦労して一気に書き上げて、いざ投下したら袋叩きになる可能性を考えたらそりゃ慎重にもなるさ

587:名無しさん@ピンキー
10/03/23 18:35:22 hVV2TUJ/
>>583
少しずつ投下される事は悪くないだろ
新聞小説や漫画はどうなるんだよ

推敲しろってんだったら漫画家みたいに2,3話書き溜めしといて
整合性高めるのもありだが

588:名無しさん@ピンキー
10/03/23 19:53:47 V/742YaY
予定調和は文学

589:名無しさん@ピンキー
10/03/23 20:54:13 kgnLS/xh
全く同じやり取りを以前して、情報や議論はフェチ板のほうでって分裂したんじゃなかったっけ?

590:名無しさん@ピンキー
10/03/23 21:03:03 ylnKgb3a
勝手にスレ立ててじゃあお前らこっちなと言われてもな
それにフェチ板の雰囲気的にかなり場違いというか
スレにそんな感じがしたな

591:名無しさん@ピンキー
10/03/23 22:03:58 8S6eBZnR
なんなのこのスレ
だから中年は邪魔なんだよ。わけのわからん考え方しかしない
他のスレでも少しは見てこい。長いのがどうだとか短いのがどうだとか、そんなんどうでもいいんだよ
いい作品ならGJ、合わなかったらスルー、それでなんの問題もないだろ

592:名無しさん@ピンキー
10/03/23 22:06:28 rWoS3w+l
やだ……
またループはじまってる………
もう何回目なのかしら

593:名無しさん@ピンキー
10/03/23 22:40:47 jizMl94n
繰り返すことで洗脳は進んでいくんだよ

594:名無しさん@ピンキー
10/03/23 22:47:21 oTCbT8su
単純な行為の無限とも思えるほどの繰り返しと、
現実社会からの隔離と、体内時計を狂わせること、
あとは精神的な消耗と、飴と鞭は 洗脳の基本だぞ。

595:名無しさん@ピンキー
10/03/23 23:04:17 PR/Eh039
文学少女シリーズ2巻で飢え空腹食欲をコントロールした精神的な消耗と、飴と鞭、
現実社会からの隔離で元恋人の娘を手懐けてるのを思い出した

596:名無しさん@ピンキー
10/03/23 23:56:04 /DzyZ2W2
>>592
この流れがまさに予定調和。俺たちは何回繰り返せばいいんだ、教えてくれ

597:名無しさん@ピンキー
10/03/24 02:11:34 aleRTWVy
8回くらいかな

598:名無しさん@ピンキー
10/03/24 04:25:41 X6+AlAoN
そしたら会心の一撃連発だな

599:名無しさん@ピンキー
10/03/24 04:49:03 uSr+8/jZ
∞のループ

600:名無しさん@ピンキー
10/03/24 06:01:02 8PQ7HrYI
あなたのSS 呪文みたいに
無限のリピート 

601:名無しさん@ピンキー
10/03/24 06:50:11 67gtK+AF
輪姦卑行

602:名無しさん@ピンキー
10/03/24 10:11:01 sSWMzzLx
今回が、一万二千九百十四回目に該当する。

603:名無しさん@ピンキー
10/03/24 12:47:18 yBTsuCJX
なんかしらんがそろそろかめはめ波くらい出せそうな気がしてきた

604:名無しさん@ピンキー
10/03/24 22:15:16 k/PbKllc
で、どうすれば無限ループから抜け出せるの?
鍵はやっぱりベタだけど協力?和平?融和?

605:名無しさん@ピンキー
10/03/24 22:17:16 FNJsw1/e
自分に催眠かけて終わったことにしちゃえばいいよ

606:名無しさん@ピンキー
10/03/25 00:11:48 TlMxeV3O
>>604
友愛

607:名無しさん@ピンキー
10/03/25 01:15:14 CSpBRxPm
つまん

608:名無しさん@ピンキー
10/03/25 01:48:49 YXfTvqV0
夏休みの思い出

609:INHUMAN
10/03/25 18:06:02 XUHG6xOA
ちょっと、あんたたち!!
こんなスレッドを立てて非人間的だと思わないの!?
削除依頼を出して消してもらうかどうか分からないけど、
一応の覚悟はしてなさいよね!!

さあ、潰れるざます!
逝くでがんす!
フンガ~!!
まともに潰れなさいよ~!!


610:名無しさん@ピンキー
10/03/25 20:25:29 4fipY5ru
>>609
ナイス!!
GJ!!

611:名無しさん@ピンキー
10/03/25 20:31:07 rlPV/tv2
そういやドラマやるんだっけ?アレ。

612:名無しさん@ピンキー
10/03/25 20:34:05 sVBHReod
アレじゃわからねえよ
お前はジジイか

613:名無しさん@ピンキー
10/03/25 20:41:11 YXfTvqV0
もやしもんだろ

614:名無しさん@ピンキー
10/03/25 22:39:38 akQcWnsl
夏にだったけか
蛍の役は誰だろな

615:名無しさん@ピンキー
10/03/25 23:01:39 LGYcOq0T
>>609は怪物くんではなくらきすた
と悪の奴隷スレ名物マジレスをしてみる

616:名無しさん@ピンキー
10/03/26 00:30:03 A0wGBCfn
東方の聖ってキャラが見方によっては悪堕ちになるかも
妖怪退治専門の僧侶が美貌を手に入れるために妖怪の仲間になって魔女になるって設定
原作はオブラート包まれすぎだから期待するなよ

617:名無しさん@ピンキー
10/03/26 01:05:35 Zgj7a4Ma
悪堕ちで、ヒロインが敵の女幹部もしくは女首領に悪堕ちさせられた挙句に自分の相棒(もちろん女)を喜んで落とすみたいなのが少なくて困る。

618:名無しさん@ピンキー
10/03/26 01:09:18 bp5V5aUw
それはこまるな

619:名無しさん@ピンキー
10/03/26 01:15:59 +xgJI1Gw
相棒が先に堕ちて主人公に仕掛けて来るのは結構見かける気もするもなも

620:名無しさん@ピンキー
10/03/26 01:21:22 Zgj7a4Ma
>>619
でもその相棒を堕とす敵キャラは大抵男じゃね?

621:名無しさん@ピンキー
10/03/26 12:47:31 cvE12Gmm
>>616
キャラ設定見てきたが結構違うくね?
敬愛する弟が死んでしまったので生きるために妖術を使った
妖怪がいなくなると妖術が使えないので助けることにした
助けているうち妖怪が不憫に思えてきたので共存を図ることにした
どっちかっていうと暗い過去のある主人公的な感じだが…

622:名無しさん@ピンキー
10/03/26 14:19:31 p3RJ9xfO
>>621
>>616はお前さんのような界隈者じゃない。
>原作はオブラート包まれすぎだから期待するなよ
自分勝手に解釈して原作設定を否定している。
典型的な東方厨だ…多分アンチじゃない。

623:名無しさん@ピンキー
10/03/26 14:33:58 CtrbGKsN
聖、善人過ぎて悪堕ちと言われましても…
って感じだしなあ
妖怪だろうが見捨てられなかった、度が過ぎていい人だと思うよ

あー、女の子同士のちゅーで悪堕ちするSS読みたい。
純粋にべろちゅーのみで堕ちて欲しい。闇の力注ぎ込んだりしていいから。
まうすとぅーまうすで。

624:名無しさん@ピンキー
10/03/26 23:35:58 wqwaqCye
>>623
「んんっ、ん、んんんんっ!」
「んちゅ、ちゅぷ、ちゅるぅっ、フフ、だいぶできあがってきたみたいね…」
妖しい雰囲気をまとった女が、言う。
「はぁ、はぁ…こ、こんなことされたくらいで、わたしは、ぁうぷッ!」
弄ばれながら、何とか抵抗しようとする少女。
「ちゅぅうう、んちゅ、んちゅ、ンフフ、そんなこと言って、あなたの顔、もう蕩けきってるわよ…
 早く闇の快楽に身を委ねてしまいなさい、ほら、またしてあげる…」
「い、いや、はむぅん! んん、んちゅ、ちゅぷ、ちゅぷぅ」
「ちゅる、ちゅぷぅ、ぬちゅ、ぬちゅる、ホラ、言ってごらんなさい。
 いま、どんな気持ち?」
「あぁ、ああ…きもちいい…きもちいいの…」
少女の答えに、女が妖艶な笑みを浮かべる。
「やっと素直になったわね…さあ、まだたっぷりとしてあげる…
 あなたの心が完全に闇に浸るまで、存分にね…」
二人の姿が、闇の底へと堕ちていく。
どこまでも、どこまでも…

625:名無しさん@ピンキー
10/03/26 23:41:43 b+8pR6Ok
もっと……もっとちょうだぁい……

626:名無しさん@ピンキー
10/03/27 09:32:08 kWKRB8iY
こういうゲームをやってみたい。
主人公は世界征服を目論む悪の軍団のボスで平和を守るために悪である主人公に対抗する
戦士たち(女だけというのも不自然だから男は一応2人ぐらいで女は9人ぐらい)のうち、
女キャラを悪堕ちさせるゲームがしてみたい。
うまくいけば戦士たち側の全ての女を悪堕ちさせることも可能。
その世界の人々や元仲間だった男達を共に倒して世界征服を果たすのがゲームの目的。
もちろん悪堕ちした女はエンディング後も世界征服を果たした主人公の部下のまま。
「はっ、かしこまりました○○(悪軍団のボスの名前)様」とかの部下らしい言葉もほしい。
マグロ目は必須で悪堕ちして以降は常にマグロ目。
女の服装は主人公のアジトから出てきて以降は悪コスチュームで
エロ要素は別にいらないからこういうのを作ってほしい。

627:名無しさん@ピンキー
10/03/27 10:10:25 nc4pDSUX
>>626
ジャスティスブレイドは?

628:名無しさん@ピンキー
10/03/27 10:11:09 QdEFD3GJ
>>625
なぜか田中理恵の声で脳内再生された

629:名無しさん@ピンキー
10/03/27 10:59:05 e0TGAGpp
ストリートファイターの親衛隊って、一般人が堕ちるんだよね?
ということで、ユーリ洗脳を書いてみたよ!単発だけど、かなり長いんで4~5回ぐらいに区切るよ!!
属性は 機械姦 闇エネルギー注入 レズ 実験 ぐらいかな?


630:ユーリ・プロジェクト①
10/03/27 11:00:01 e0TGAGpp
ジュリアが買い物袋を持って外へ出たとき、雲ひとつない青い空に、メキシコ中を照らしだす陽気な太陽が浮かんでいた。
昨日まで降り続いていた雨が、地面のあちらこちらに水たまりを作っていたが、太陽はそれすら、自分の物だと主張するかのように水面に映りこんでいる。
前日の雨を追いだすかのような青空が広がる晴天の日こそ、絶好のバースデイ・パーティ日和に思えた。
ジュリアの恋人、ホークも、きっとそう思ってくれている筈だ。
今日はホークの誕生日だ。ジュリアが、仕事仲間を呼んでパーティを開こうと提案すると、彼は顔を赤くして恥ずかしがったのだが、
みんなとの付き合いは大事よと言うと、彼も最後にはしぶしぶ賛成した。
1年に1回の、大切な日なのだ。特別な日は、みんなで祝いたい。
ブラウンの長髪が、風に流されてさらさらと舞う。日差しを受けてまぶしく輝く髪が、彼女の楽しい気分を表現しているかのようだ。
こみ上げてくる嬉しさと手をつないで、彼女は街の中心部へと歩いていく。
歩くこと20分、次第に人通りの多い、街の心臓部がやってきた。様々な種類の店が、一様に看板を並べて、客の目を引こうと頑張っている。
ここへ来れば、食材、服、アクセサリー、おもちゃ、何でも揃うのだ。
ジュリアはいつも利用している食料品店に入っていった。スーパー「メキシカン」である。
パーティーで皆に料理を振る舞うため、ジュリアは必要な食材を見て回った。
買う物は決めていた筈だったのだが、あれこれと見て回るうちに、作りたい料理も増えていき、いつの間にか買い物かごは予定よりも多くの食べ物でいっぱいになってしまった。
「買いすぎの気もするけれど、たまにはいいわね」
かごいっぱいの食材を見て、ジュリアは満足気にうなずいた。
これだけの荷物を持って帰るのは、女性には文字通り、荷が重いのではないかと心配したくなるが、当人は全く気にしていない。
スレンダーな体型をしているジュリアだが、これでも子供の時から、林業を営む父の手伝いで、ある程度の重さの荷なら、軽々と持てる程の力を身に付けているのだ。
だが、いつもこのぐらいの荷物を持ちあるくジュリアでも、店員が大量の荷物に目を丸くするのを見ると、さすがに恥ずかしさを覚えずに居られなかった。
「よいしょ!」
両手に、食材で一杯の袋を提げて、彼女はまた来た道を戻って行く。
すでにジュリアには、今夜のパーティーの盛り上がりが頭に浮かんでいた。


631:ユーリ・プロジェクト①
10/03/27 11:00:37 e0TGAGpp
彼女が、街の中心部を離れた、人通りの少ない道へと足を踏み入れた時だった。
通りに隣接する、建物と建物の間。その暗い路地裏の中から、二つの人影が姿を現した。
その人影の正体は、まだ幼さの残る少女達だった。一人はピンク色の髪をツインテールにまとめ、もう一人は紫の髪をさっぱりとしたボブカット。
共に、16から18歳ぐらいの年齢だろうか。
彼女達は、どこにでもいる少女と言うには、あまりに異様ないでたちをしていた。 
線を強調するように体にぴったりと密着した、薄いストライプを走らせる濃紺のレオタード。
頭の上に載せられた紺色の帽子。襟元に締まる、濃紺を背景に咲き誇る黄色のネクタイ。
手首から肘近くまでを、真っ赤なナックルパーツが、脚足には細長いブーツが、それぞれの部位を保護していた。
彼女達はただ無表情で、両腕を体の横に伸ばし、直立の姿勢をとっていた。並んで静かに佇む様子は、統率のとれた軍隊を思わせる。
彼女達の目には光が無かった。ただ、じっと前方を見つめる瞳の中に、なんら感情を読み取ることは出来ない。
その光なき視線は、街を歩くジュリアに注がれていた。
だが、ジュリアは誰かが自分を見つめている、それも、獲物を射るような視線をくれていることに、全く気付きもしなかったのだ。


632:ユーリ・プロジェクト①
10/03/27 11:01:22 e0TGAGpp
女の一人が動きだした。猫のようにしなやかで、瞬発力のある動作だ。
暗い闇から光の中へ飛び出した少女は、一気にジュリアとの間合いを詰めていく。
そして、細く引き締まった腕を、ジュリアの背後から腰に絡みつかせた。
「きゃあ!」
ジュリアは思わず小さな悲鳴を漏らした。
少女達の急襲は、襲撃対象の不意を完全に突くよう、周到に計算されたものだった。
組みつかれるまで、ジュリアには襲撃者の足音さえ聞こえなかったのだ。
腰に巻き付いた、細いつるのような腕が、ぐいぐいと後方に獲物を引き込む。細身なのに恐ろしい力だ。
耐えきれず、ジュリアの足はずるずると地面を引きずりだした。
襲われている。
自分を襲った異様な状況を理解したジュリアは、とっさに悲鳴を絞りだそうとした。
しかし、後ろから伸びる手の平が、ジュリアの口にしっかりと蓋をしてしまった。
「んん~!ん~!!」
助けを乞う懸命の叫びは、口を押さえつける襲撃者の手によって、低く、くぐもった声に変換された。
口をふさがれたと同時に、何かが口内に入ってきたのをジュリアは感じた。
何か、丸くて苦いものだ。
不意を突くようにやってきた異常事態に、ジュリアの心は限界に近づいていた。
為すすべもない状況に、理性は思考を放棄した。
混乱に支配されるがまま、激しく首を振り抵抗するジュリアだったが、ただ彼女の長髪が乱れるだけで、事態は何ら変化しない。
暴れるジュリアの眼前に、もう一人の女性の姿が出現する。紫色の髪をした、まだ子供らしい顔立ちの少女だ。
彼女は感情を表さない瞳でジュリアを見つめていた。
(何、この娘)
彼女が現れるのとほぼ同時に、暴れるジュリアの腹に重い衝撃が与えられた。
「がっ!?」
目の前に現れた女の拳が、ジュリアの腹にしっかりとめり込んでいた。
とてもこの少女が放ったものとは思えないほどの、強烈な一撃。  
目を丸くし、息を詰まらせるジュリアは、叩き込まれた衝撃で先ほど口に侵入した異物を飲み込んでしまった。
異物は彼女の喉を通った後、胃に淵に辿りつき、急速に溶けはじめた。
少女は一層強い力で、ジュリアの体をぐいぐいと引っ張って行く。
この娘達は自分に恐ろしいことをしようとしている。あの目は普通じゃない。なんとかして逃げなければ大変なことに……。
恐怖に駆られながらも、ジュリアは残された力を振り絞った。力を込め、全身全霊を込めた抵抗を繰り広げる。
しかし、抵抗を諦めさせるような、急激な眠気がジュリアを襲った。
大波のような眠りは、抵抗心だけでなく、意識全てを根こそぎ刈り取ってしまう。
(駄目!)
少女がジュリアの口に投げ入れたのは強力な睡眠剤だった。
この薬を服用すると、いかに屈強な男であっても、泥に沈みこむかのような眠気に呑まれて、なすすべもなく昏倒する。
対象の不意をつき、即座に薬を投与するという行動は、彼女達が人間を拉致する際の「プログラム」に沿ったものだった。
ジュリアは、最初から彼女達の「プログラム」の中にはまり込んでいたのだ。
全てが一瞬で行われた。
ジュリアの意識は深い眠りの底に沈澱した。全身の力も、空気が抜けるように消えてなくなる。
完全に抵抗するすべを失ったジュリアを、二人の少女達は路地裏の闇の中へと引きずり込んでいく。
「任務完了。帰還します」
普段から、この道は人通りが少ない所ではあった。しかし、この日の通りはいつにも増して静かすぎた。
陽気な太陽は、素知らぬ顔でメキシコの街を照らし続ける。
誰にも知られることも無く、日常という名のベールが、また一つ、罪を覆い隠していった。

 ▽捕獲対象データ
  名称:ジュリア=カーソン
  性別:♀
  年齢:19
  出身地:メキシコ
  身長体重:164㎝ 49㎏
  捕獲理由:親衛隊増強の為。
  処理方針:シャドルーの一員としての意識を刷り込み、必要な技術を習得させる。
  備考:シャドルー重要人物ファイル№54「T=ホーク」と親交の深い人物と思われる。

633:ユーリ・プロジェクト①
10/03/27 11:01:59 e0TGAGpp
ジュリアの意識が、深い眠りの海から浮上する。
「……んんっ」
目が覚めたと言っても、完全な覚醒にはまだ至っていなかった。
頭がまるで鉛のように重く感じるし、視界もぼんやりと霞がかっている。
それになんだか息苦しい。体にもまだ力が入らなかった。
(ここは、どこ)
ジュリアがまず考えたのは、自分のいる場所がどこかということだった。
持てる全ての感覚を研ぎ澄ませて、彼女は状況の確認を始めた。
彼女は、自分が仰向けに寝かされた状態で、何かの器のようなものに入れられているのだと気付く。
白い、浴槽のようなもののようだ。しかし、それは浴槽と言うには、あまりに機械的だ。カプセルと言ったほうが正しいのかもしれない。
肌にひんやりとした空気が触れるのを感じる。
頭や腕と言った、普段から露出することの多い場所だけでなく、腹や乳房、下腹部等の、布で覆い隠すべき部分にも直接、空気が触っている。
彼女は下着さえ身につけていない状態だった。
僅かに息苦しさを感じるのは、鼻と口を覆うようにマスクが装着されているからだった。
気圧を調整された麻酔用マスクは、彼女が首を激しく振ったとしても、しっかりと吸いついて離れない。
腕に力を入れ、持ち上げようとしても、何かに阻まれて、動かすことが出来なかった。
足も同じ状態だ。手首、足首そして腹部に、丸い輪っかのようなものがはめられていて、ジュリアの動きを拘束しているのだ。
彼女が思い切り暴れて見せても、全く外れる様子はない。
彼女の体は昆虫標本のように、軽く股を広げた状態で張り付けられているのだった。
頭は固定されていないようで、僅かにだが、首を起こすことが出来た。
首を起こした状態で、ジュリアは視線を下の方へと向けていった。
見えたのは、腕や腹など、体の各所に張り付いた白い吸盤のようなもの。吸盤からは黒いコードが伸びているのが見えた。
ジュリアの目に映ったものの中で、特に異質だったのは、彼女の豊満な乳房に吸いついた、細長い透明な筒のようなもの。
筒からも、吸盤と同じように、黒いなチューブが伸びていた。

目まいがする。
なぜこのような状態で自分は寝かされているのだろう。何が行われようとしているのだろう。
恐怖が今さらのようにやってくる。
(誘拐されたんだ)
自分が冷たい表情をした少女達に襲われたことを、ここに至ってようやく彼女は思い出したのだ。
「対象の覚醒を確認」
唐突にやってきた誰かの声で、ジュリアの思索は終了を迎えた。
「測定を開始します。測定科目は……」
淡々とした女の声が、カプセルの外から聞こえてくる。ジュリアの存在を全く無視しているかのようだった。
(教育?測定?)
意味が分からなかった。だが、
「データを読みあげます。対象者名、ジュリア=カーソン、女性、年齢、18歳」
女性が頭上で告げる内容は、間違いなくジュリアを指し示すものだった。
「ここはどこなの?あなたは誰?」
ジュリアは近くにいると思われる女性に向けて問いかけた。その声は十分に女性の耳に届いた筈だった。
「意識レベル、安定。測定を開始します」
「答えてよ!」
女はジュリアを完全に無視していた。ここがもし病院だったのなら、ジュリアの声を黙殺するなど、あり得ない筈だ。
「測定」という単語からジュリアは、自分が病院にいるのかもしれないと想像したのだが、ここは違う。自分の全く知らない、日常からかけ離れたどこか遠いところなのだ。
機械が静かに唸り声をあげた。その音と共に、カプセルの蓋が覆いかぶさってきた。
「何するのっ!出して!」
何とかここから抜け出さなければと、めちゃくちゃに体を動かすが、拘束は頑として溶けない。それでもあきらめきれなかった。
抵抗も空しく、蓋が完全に閉じてしまった。
外が見える透明なガラスがはめられているおかげで、彼女は外からの光を奪われるようなことは無かったが、不安と恐怖を拭う要素には数えることができない。
(一体何が始まるの?) 
曇天のような分厚い不安が、彼女の心を捕えて離さない。

634:ユーリ・プロジェクト①
10/03/27 11:02:33 e0TGAGpp
外界から隔絶されたとある島に創設された、秘密結社「シャドルー」中枢本部。
最先端軍事力の結晶と称される施設の中に、洗脳教育室はある。
麻薬売買、軍事兵器密入、暗殺等、数々の悪事に手を染めるシャドルーであるが、その構成員も多種にわたる。
野望に魅了され、自ら志願することで構成員となった者。
弱みを握られたために、無理やり構成員として働かされる者。
補助を受ける代わりに構成員として尽くす者。
能力を見込まれて、スカウトされた人間も存在する。
そして、シャドルーの持つ技術力の行使によって、洗脳を施された者もいるのだ。
第1号から第5号まで設けられた洗脳教育室は、誘拐した人間に精神操作、肉体改造を施し、シャドルーの構成員とするための施設である。
洗脳に必要な設備は全てここに集結されているのだ。
ジュリアがいるのは第2号洗脳教育室だった。
その中で、三人の研究員たちは、ジュリアの解析を黙々と進めていく。
「感情パターン解析」
抑揚のない声で、研究員の一人が言い、目にも止まらぬ速さで操作盤のキーを叩いていく。
彼女達のきびきびとした無駄のない動きは、効率性を得た代償に、人間らしさを損なっているかのようにも見える。
部屋の中には、ジュリアを閉じ込めている、機械仕掛けのカプセルと、同じく複雑な機械を密集させた肘掛イスが設置されていた。
2つとも、捕獲対象を洗脳し、シャドルーに引き入れるための悪魔の装置だ。
白衣を着こなした彼女達を取り巻く環境は、傍から見れば医療の現場ともとれそうなものだったが、
ここはあくまで、日常と断絶された、秘密結社シャドルーの「教育」の現場なのである。
「アドレナリン値測定……」
機械的に動く、洗脳担当者である研究員達も、元々はシャドルーとは無関係の民間人だった。
ジュリアと同じように拉致されたあと、徹底した洗脳を施されたのだ。彼女達は洗脳教育室の卒業生とも言える存在だった。
ある一人以外は。 
「感情パターン解析終了。さあ、始めるわよ」
眼鏡をかけた、栗色の髪の女性が指示を出した。
「はい、カノン様」
残りの二人は、その女性の言葉に忠実に従う。
「そう、好い子よ」
妖しく微笑む女性、カノン=モリスンは、洗脳教育室を創設した第一人者であった。
この部屋にある装置も、彼女が一から作り上げたものだ。
もちろん、彼女は洗脳教育を受けてはいない。シャドルー総帥の持つ野望に惹かれ、自ら入社を志願した者の一人である。
今、彼女はジュリアの洗脳プログラムを進めながらも、最近シャドルーに引き入れた女性研究者の様子にも目を光らせていた。
(全く問題は見られない、か)
カノンをマスターと仰ぎ、淡々と作業をこなしていく女性研究者2名、ミランダとアリスの洗脳も、カノンの手によって行われたのだ。
元々二人は、それぞれ化学、医学を学ぶ、カレッジスクールの優等生だった。その彼女達も、シャドルーに拉致され、ベガに対する忠誠と、軍事研究についての知識・ノウハウを叩きこまれたのだ。
技術だけをみれば、洗脳教室創設者、カノンに劣るものではない。
「催淫ガスを注入しなさい」
カノンの指示に従い、二人は次々に機械を操作していく。

635:ユーリ・プロジェクト①
10/03/27 11:03:13 e0TGAGpp
プシュー……
空気が漏れるような音が聞こえてきた。と同時に、甘い匂いがジュリアの鼻孔をついた。
催淫ガスが管を駆け抜け、マスクへと送り込まれているのだ。マスクから送られる甘いガスは、蠱惑的なかぐわしさをもってジュリアに迫ってくる。
(あまい……?)
ジュリアの体の動きは次第にとまり、ゆったりとしたものになった。
先ほどまでの混乱が嘘みたいに引いていく。あとに残るのは水面を漂っているかのような穏やかさだ。
「はあ……はあ……」
(熱い……どうして……)
もしジュリアが、訓練を受けた軍人だったのなら、少しは抵抗できたのかもしれない。
だが、訓練などを受けた経験のない彼女は、体を官能の炎に包み、心を淫らに変貌させる催淫ガスの効果に、あっという間に支配されてしまった。
顔を赤く上気させ、快感にとろけた瞳を虚空に彷徨わせているのがその証拠だ。
「はあ……んっ……」 
呼吸がだんだんと荒くなる。口から、ガスを吸い込んでは胸を膨らませ、吐いてはしぼませる。
ガスが彼女を満たしていくに従って、快感が全身に感染し、呼吸の速度も加速していく。
「ああ……いい……はあ……ひもち……ひい」
(だめぇ……勝手に……こうふんして……)
全てが、淫らな思念の渦に沈んで消えた。
先ほどまで抱いていた不安をもう彼女は感じていない。
状況を理解しようという努力も、もう見えない。
マスク越しで見えにくいものの、彼女の口元が歪んでいるのは外からでも確認できた。普段の彼女なら決して、恋人の前でさえ見せない、淫らな、娼婦染みた笑みだ。
(ほしい……ほしい……)
彼女のヴァギナが、ひくひくとうごめいている。咥えたくて、咥えたくて、我慢できないと主張する子供のようだ。
愛のジュースが、とろとろと、とめどなく溢れては垂れ落ちていく。
彼女の変化を待っていたかのように、機械から一本の管が伸びてきた。
丸い粒が一杯ついた、嫌らしい形状の突起が先端に付けられている。
男性器をかたどったバイブだった。
女の興奮を掻き立てるバイブの後ろに、股間全てを覆うカバーが控えていた。
女から愛液を貪欲に絞っては吸い取っていく淫猥なマシン、膣液吸引機である。
それが、ジュリアの股の間をゆっくりと進み、彼女の秘密の近くにまで進んだ。そのことに、彼女は気付かない。



636:ユーリ・プロジェクト①
10/03/27 11:04:12 e0TGAGpp
「対象の膣液を採取するため、吸引器を挿入します」
カプセルの外で研究員が言った。ジュリアの耳は外の声を捕えていたが、彼女の心にまでは届かなかった。
それどころではない状態なのだから、当然だ。
嫌らしい突起が、ゆっくりと彼女の秘密に触れた。
「ひっ!!」
それだけで、すさまじい衝撃を感じた。
高圧の電気が流れたかのよう。彼女の体は驚き、快楽から逃げるかのように、激しくはねた。だが、腹部を固定する枷に阻まれる。
少しずつ、突起がジュリアの中へ侵入する。
突起についた粒が、ジュリアの膣壁をこすっては、愛液の分泌を急き立てた。甘い電気が彼女の脳をスパークさせる。
「ひぃぃぃぃぃ!!!!」
悲鳴があがった。ジュリアは目を固く閉じ、限界まで体を反らせた。
ゾクゾクとする。甘い感覚に、全てがはじける。
1センチ、3センチ、5センチ。
進むたびに、腰が砕けるかのような愉悦が爆発する。
ヴァギナから誕生した甘い激震は、心臓を躍らせ、体を快楽の炎に包みこむ。呼吸も不安定になった。
「~~~~~~~っ!!!」
声にならない声。快楽の爆弾から逃れるかのように、彼女の体は勝手に暴れまわる。
ジュリアは何度も限界の扉を見た。しかし、扉はいとも簡単に開かれる。その先にあるのは新たな限界の扉。
催淫ガスは女を獣のように発情させる。快楽中枢を剥き出しにされ、興奮を強制的に高められたジュリアに限界などなかった。
ついに、突起は彼女の最奥にまで達した。
ぴたりとその動きを止める。カバーが股間に密着して、女の秘図を覆い隠してしまった。
ただ入れただけなのに、既に秘唇は熱い愛液に濡れ爛れていた。股間と吸引部分の僅かな隙間から、熱い液体が涙のように流れている。
このとき既に、彼女は甘い沼の中で自身を失った状態であった。
「あっ  がっ  ああ」
いつの間にか、彼女の上げる声は無機的な声に変っていた。感じるに従って声をあげる、単純な機械がそこにいた。
吸引機の動きは止まったが、突起部分は彼女の震えに応えるように膣壁を舐めている。
その深くもやさしい快感は、先ほどの衝撃に比べればマイルドなものだった。
「興奮数値101、性感数値81」
「異常ありません。膣液のさらなる分泌を促進するため、吸引器の前後運動を開始します」
女達の声がしたすぐ後だった。
「あがっ!?」
膣内を静かに舐めていた機械が、激しく前後運動を始めた。時折回転運動を織り交ぜる不規則な動きは、ジュリアの女をかき乱しては満たしていく。
グチュ グチュ グチュ
「があああっ!ああああああ!!!おおあああああああ!!!!!」
機械と膣がもたらす水音、体がカプセルを叩くタップ音、そして快楽の叫び。
カプセル内に狂悦の多重奏が響きわたる。
「ひいぃぃぃいぃ!!!があああああああああああ!!!!」
淫らな獣が上げる甲高い咆哮。
通常、人体が感じることのできないほどの、凶暴なオーガズムをジュリアは感じていた。
神経を焼き切る程の絶頂感が、強烈なスパークを脳に叩きつけ続ける。
「ああああああああああ!!!!はああっ!!!!うあああああああ!!!!!」
(!!!!!!)
悶え狂うジュリアに構うことなく、突起は膣内で何度もピストン運動を繰り返す。
不規則に、身をひねる回転を加え、あらゆる刺激を与え続ける。
女を悦ばせる為の機械は、ジュリアの性本能を肥大化させ、破裂させていった。
何度も絶頂する。そのたびに咆哮する。膣に与えられる刺激の一つ一つが、オーガズムへ直結するスイッチと化していた。
強制的な連続絶頂で、ジュリアは完全に自身を失った。自分が何をされているのか、もう分かってもいない。

637:ユーリ・プロジェクト①
10/03/27 11:04:47 e0TGAGpp
「これは中々の逸材ね」
半ば白目をむきかけ、絶叫するジュリアの様を、楽しそうに見つめながらカノンは満足そうに言った。
ここまでの反応を示す女は初めてだった。これは教育し甲斐がある。
二人の研究員は、狂態の悲鳴に顔を向けることも無く、仕事を続けている。
「膣液を採取しました。ただいまの興奮数値134、性感度数136。オルガスムスを1分につき3回観測」
「搾乳可能状態になりました。これより射乳を促し、採取を行います」
通常、出産経験のない女性は母乳を出すことは無い。射乳を促すホルモンが生成されていないからだ。
だが、一定以上の性的興奮状態に陥ったとき、特殊な手法を対象者に用いれば、母乳の生成を促し、搾乳することが可能だ。
「分かったわ。はじめなさい」
この射乳で、大抵の者は失神する。未出産女性の強制射乳は人外の悦楽を伴うのだ。
豊満な乳房をいじられて、この女はこれ以上、どうよがり狂うのだろう。
淫らな想像を背景に、カノンは静かに笑みを浮かべた。


638:ユーリ・プロジェクト①
10/03/27 11:05:21 e0TGAGpp
「あ……は……」
絶頂の嵐はまだ続いていた。ジュリアの声は枯れ、意識も半ば失神に向かいかけいた。
彼女が意識を手放そうという寸前で、吸引機は止まった。嵐が去って行く。
「あ……!……はあ……」
(と……とまっ……ら……?)
体の痙攣が徐々におさまってくる。だが、いったん火のついた身体はまだ疼いたままだ。
あれだけ狂悦を演じ、堪能したと言うのに、ジュリアは物欲しそうに足をすりあわせていた。
マスクも、ジュリアの興奮の炎を消さないように、間断なくガスを与え続けていた。
胸に吸いついた搾乳機が突然動きだした。チューブから、優しい風が吹いてくる。それは渦を巻くような気流となって、槍のようにとがった乳首を撫でまわし始めた。
「ああ……」
再三、絶頂を迎えたにもかかわらず、これまで全く触られていなかったピンクの突起は、気流が与えるソフトな刺激に悶え始めた。
甘い風が乳首から乳房へ、乳房から一気に全身へ。
「はああああ!!んん!!」
(むねが、からだが、しびれる!!!) 
気流は竜巻のように、小さな渦を巻いている。渦は乳首の側面を優しく、抱き締めるかのように愛撫し続ける。
「ふわっ、ふわああああああああ!!!!」 
先ほどまでのハードな刺激とは違った、ソフトな責め。
気流の責めで、乳首の感度はますます上がる。
あっという間に、二つの乳首はクリトリス並みの感度を持つ器官へと作り変えられてしまった。
「ふああ!!!ああああ!!!
ジュリアの声は止まらない。だが、先ほどまでとは違い、どこか柔らかさのある悲鳴。
少しずつ、気流の動きが変わっていった。
とがった乳首の側面を愛撫していた気流の間隔は徐々に狭まり、乳頭の先の一点に集中しはじめた。
細い、針のような、微小な竜巻が生成された。小さな竜巻は先の部分、尻尾の部分で乳首の先端を拡げ、中に押し入ってくる。
「うわあああああ!!!!!」
乳首の内壁を撫でられる感覚は、ソフトな感覚とは程遠いものだった。
やわらかいヤスリが、快楽中枢をじかにこすりつけてくるかのよう。
ゾクゾクと震える乳房。呼応するように、体全体が痙攣し始める。
再びジュリアの目が上にひっくりかえり始めた。口からははしたなく唾液を垂れ流している。
「あぐっ あ ああ」
竜巻は乳房の中にまで侵入した。乳房の内部を、竜巻は激しく愛撫し始める。
「ら  らめ ああ  おああああああああああ!!!!」
二つの乳房が、搾乳機によって激しくかきまわされる。
普段触られることのない、乳房内部の乳管を直接愛撫する異様なマッサージは、母乳の生成を強制する。
激しい疼きを感じていた。切ない気持ちがあふれ出してくる。
乳房の内部に何かがたまってゆくのをジュリアは感じた。それは先端に集中し始め、外へ出ようとしていた。
「乳の生成を確認。搾乳を開始します」
カプセル外の声と共に、搾乳機の動きが変化した。気流はかき回す運動をやめ、
一気に吸い出した。
「ぐああああああああああ!!!!!!!!」
ジュリアの絶叫が響く。
母乳が、乳首から勢いよくほとばしる。ゆっくりと出るのではなく、水鉄砲のように発射される母乳。
母乳は、発射される度に乳首の内壁をこすって、快感を置き去りに体外へと出ていく。
その様は、男性の性器官、ペニスが精を放つのに酷似していた。
母乳は過敏になった乳首から発射される。どんどん出る。
もう十分なほどの量を出したと言うのに、まだ搾乳機は乳首を吸い続ける。
二つの豊満な乳房は、白い果汁を搾りだす果物のようだった。
ジュリアの体が暴れ、乳房が激しく動作しても、しっかりと吸いついた搾乳機は全く離れる様子はない。
ガクガクと、体が全体が砕けるような痙攣がジュリアを襲った。絶えまなく続く痙攣は、彼女の思考をふるい落としていく。
ジュリアの意識がだんだんと遠くなってきた。母乳を吐きだすとともに、精神も一緒に抜けて出ていくようだった。
あそこを貫かれる快感とは違い、無理やり母乳を作り、それを搾取される等、常人には理解できない程の快楽なのだ。
苦痛にも似た、未知の快楽にジュリアは耐えることが出来ない。
「あっ!!!」
彼女の精神が壊れるのを防ぐ為、脳はぷつっと、ブレーカーを落とすかのようにジュリアの全ての機能をシャットアウトした。

639:ユーリ・プロジェクト①
10/03/27 11:06:24 e0TGAGpp
「対象の失神を確認しました」
女はそう言い、終了キーを叩いた。
ジュリアを悦ばせていた、カプセル内の全ての機能がストップする。
搾乳機は胸から離れ、ヴァギナを貫いていた吸引機も、たまった愛液を滴らせながら、ゆっくりと抜け出る。
体中に吸いついていた吸盤も次々に外されていった。
脱力したジュリアの姿を見届けて、カノンはカプセル横の検査機に向かった。
女から絞り出された体液は、カプセル内部から外へ向かう管を通り、外部の検査機に行きつく。
検査機は、膣液から本能レベルを、母乳から代謝レベルを瞬時に割り出すものだ。

女性の興奮状態により、分泌される膣液は、粘り、匂い等が多様に変化する。
性的な興奮状態にある時、女は普段脳を制御している理性を麻痺させ、奥深くに眠った本能を解放する。
猿から進化を遂げた人間が、失った獣性に全てを支配され、牝に立ち返る瞬間である。
極限にまで高められた性興奮状態で放出される膣液から、人間が潜在的に抱え持つ、「本能」を解析することが可能なのだ。
一般的に、本能レベルが高ければ高いほど、洗脳教育の成果が色濃く表れてくる。
本能レベルは、対象を教育するプランを立てる上で、最も重要視すべき項目の一つとして数えられる。

一方、母乳からは体が持つ代謝のレベルを割り出すことが可能だ。
生命を維持するために、人間は肉体の様々な箇所において、常にエネルギーを消費している。
母乳を作るのも、体がエネルギーを消費して行っているものの一つだ。
乳房を特殊な技術でマッサージし、強制的に射乳を誘発させるという行為は、人体のエネルギーを母乳の生成のために無理やり引き出すと言うことだ。
あり得ない条件下で作られた母乳から、異常な状況に置かれた肉体がどれだけのエネルギーを引き出すことに成功したのかを割り出すことが可能なのだ。
どちらも、これから行われるセッションにおいて、必要となってくるデータである。

640:ユーリ・プロジェクト①
10/03/27 11:07:39 e0TGAGpp
カノンが見た時には既に、検査機の液晶モニタには検査結果が映し出されていた。
「本能レベル94、代謝レベル98……」
素晴らしい数値だった。
一般女性の平均数値は、性興奮レベルが76、代謝レベルが67。
ジュリアのレベルは、そのどちらも大きく上回っている。
良い素材だ。これでこそ、ベガ親衛隊にふさわしい。
1号室で検査した、もう一人の親衛隊候補、エレンもなかなか良い数値を叩きだしていた。連続で優良な人間が手に入ったのは嬉しい限りだった。
彼女がほくそ笑んでいるときだった。
「どうだ、カノン。プロジェクトの調子は」
教育室の扉が突如開き、マントをはおった男が悠然と現れた。
彼が入ってきただけで、部屋の空気が一気に様変わりしたようだった。
彼が纏う、黒く、禍々しいオーラが部屋の属性に影響を与えているのだ。
男の名はベガ。秘密結社シャドルーの総帥である。
「ベガ様。全ては順調に進んでおります」
カノンは手を額に添えて敬礼をした。二人の女性達も同じように敬礼をとる。
「それは結構なことだ」
彼は両脇に女性戦闘員を侍らせていた。
二人とも、頭に小さな帽子をかぶり、濃紺のレオタードを着こんで、赤いナックルパーツを着用している。
シャドルー親衛隊のコスチュームだ。
彼女達は、一切の感情を失った、人形のような瞳をカノン達に向けていた。
二人も、かつては平和に暮らしていた一般人であった。だが、カノンの手によって教育されてからは、立派な親衛隊としてベガの傍で奉仕している。
ベガがカプセルに近づく。それに合わせるように研究員がカプセルを操作し、蓋を開いた。
静かな音を立てながら、ゆっくりと蓋が開いて、中からジュリアが女の全てを露出した姿で現れた。
ベガの指がジュリアの唇に触れた。やわらかな唇を出発点として、あご、首と降りていき、胸元、腹、下腹部の茂みに辿りついた。
「事前のリサーチ通りの娘だな。素質がある」
ベガの満足そうなその笑みは、カノンの自尊心を満足させるものだった。
「はいベガ様。彼女はベガ様を護衛する、親衛隊にふさわしい素材と言えるでしょう」
ジュリアの上で遊んでいたベガの指が離れた。
「『ユーリ』の完成、楽しみにしているぞ」
そう言い残し、彼は洗脳教育室の扉へ向かった。二人の親衛隊員も付き従う。
彼が部屋を去った後も、暗黒のオーラはその場に残っていた。
まだこの研究室に彼が存在していると思わせる濃いオーラは、カノンの胸を心地よく高鳴らせていた。
    
 
 ▽第一回測定結果報告
  オルガスムス記録回数…32回
  最高興奮値…164
  最高性感度数…143
   
  肉体組成値…145 
  特筆事項…下半身、特に脚部の組成値が著しく高い。
  本能レベル…94
  代謝レベル…98 

 ○適性診断結果(F~S)
  適性職種
  研究員…C
  戦闘員…A+
  工作員…B
  
  私見……類稀な潜在的戦闘能力。期待値はこれまでの親衛隊の中でも群を抜く。


641:名無しさん@ピンキー
10/03/27 11:12:14 e0TGAGpp
これで一回目は終わりです。
前書いた、モモタローの時に「もっと堕ち描写を」との声があったから、なんとか
頑張ってみたけれど、無駄に長くなった。御免なさいね。
だいたい完成はしているんで、2回目は今晩辺りにあげようかなと思ってます。
生殺しにはならぬように気をつけます……。

642:名無しさん@ピンキー
10/03/27 13:41:32 XH5bcYZZ
すっばらしいー
GJ

643:名無しさん@ピンキー
10/03/27 13:52:51 SYCMgK3B
王道っていいよね~
GJ!!!!!!!

644:名無しさん@ピンキー
10/03/27 14:00:40 /M5SER2O
GJ
説明文がくどいのを除けば良作だNE

645:名無しさん@ピンキー
10/03/27 14:45:37 CmdJI3tp
大作乙ですなあ
って桃太郎の人かw

646:名無しさん@ピンキー
10/03/27 20:49:27 7vEvp1Q5
モモタロウの人GJ

647:名無しさん@ピンキー
10/03/27 21:18:13 QIlRcU2B
桃太郎gj

648:名無しさん@ピンキー
10/03/27 22:11:06 e0TGAGpp
ユーリプロジェクト、2回目上げさせてイタダキマス。
1回目はこちら>>630から。
4~5回と言いましたが、どうやら3回のアゲで済みそうです。
2回目は1回目に比べてさらに長いですが……投下しまーす。


649:ユーリ・プロジェクト②
10/03/27 22:12:03 e0TGAGpp
ジュリアのまぶたがゆっくり開かれた。
ぼんやりとした意識とは正反対に、全身の筋肉ははっきりと、けだるい感覚を染み込ませていた。
「目が覚めたみたいね」
耳元で女の声が聞こえた。誰かの手が伸びてきて、ジュリアの頬に触れる。
「まだぼんやりとしているか。仕方がないかもね。あれだけ、楽しんだんだから」
楽しんだ?何を?
すぐに、暴力的な快楽に包まれて意識を失った記憶が思い出され、顔が熱くなった。
「あなた……誰?」
だんだんと視界がはっきりとしてくる。
寝ぼけたような意識も、だんだんと回復していく。
そして、自分が異常な状況下におかれているのだということを思い出した時、ジュリアに眠っていた恐怖も、むくりと首をもたげてきた。 
「ここ!?どこなのよ!?」
激しく首を動かし始めるジュリア。
この時、ようやく彼女は、洗脳教育室の全貌を知ることが出来た。
白い壁に囲まれた、殺風景な部屋。彼女が左前方を見ると、棺のような、人一人が入ることができるカプセルが設置されていた。
先ほどまでジュリアが拘束されていたカプセルである。
そして、ジュリア自身はというと、機械仕掛けの肘掛イスに座らされた状態だった。
さっきと同じく、全裸の姿だ。
手首を肘掛の上で、鉄製のリングで固定されているために、動かすことが出来ない。
足も同様に、だらしなく股を開いた状態で、イスの脚部にベルトで止められていた。
だが、彼女を取り巻く状況で最も異様なのは、頭部に取りついた黒いヘッドギアだった。
太いコードが頭部から5、6本、イスの後ろで唸り声をあげる機械へと伸びている。
ジュリアを捕えているこの装置は、シャドルーが誇る悪夢の発明の一つだった。
それも知らず、ただ戸惑いを全身で表現するジュリアの姿を、カノンはおかしそうに眺めていた。
「私はカノン。そして、ここは教育室よ」
カノンはジュリアに囁くように言った。その両手は、ジュリアの肩に置かれている。
「きょういくしつ?」
「そう。教育室。あなたが生まれ変わる場所よ」
ジュリアには、未だに今の状況が理解できていない。
あるのは、買い物の途中で女性二人に襲われて、気がつけば得体の知れない装置にかけられて、体をめちゃくちゃになるまで責められたという、支離滅裂な記憶だけだ。
だが、この女が危険な人物だろうという確信はあった。
「生まれ変わるって、どういうことなの」
「そのままの意味よ。これまで築いてきた人格を私達の都合のいいように改造して、シャドルー総帥に身を尽くし、捧げる女に生まれ変わるの」

650:ユーリ・プロジェクト②
10/03/27 22:12:40 e0TGAGpp
シャドルー。
その言葉を聞いた時、ジュリアの心に最大警報が鳴り響いた。
ホークが唾棄するように口にした、悪の代名詞、シャドルー。
世界中で起こっている拉致事件に自分は巻きこまれたのだと、ようやくジュリアは悟ったのだ。
「あなたはベガ様に忠誠を誓う戦闘マシンになるの。私が変えてあげる。……今はまだ実感が湧かないかもしれないけれどね」
さも当たり前のようにカノンは言った。 
「嘘よ!そんなこと、できるはずがないじゃない!!」
「それが出来るのよ。私達、シャドルーの精神操作と、ベガ様のサイコパワーを駆使すれば、人間を洗脳するなんて簡単なことなの」
カノンはミランダとアリスに指示をだした。彼女達は指示どおり、ジュリアの洗脳準備に取り掛かり始める。
カノンは続けた。
「あの二人も、あなたと同じ反応をしたわ。泣いて、叫んで、大変だったけれど、今は立派にベガ様の下で働いているの」
カノンの手がジュリアの首を強引に二人のいる方向へ向けた。
「どう、素晴らしいでしょ。これも教育の結果というわけ」
呆然と、ジュリアは二人の研究員の姿を見た。
淡々と動作する様は、人と言うよりはロボットのようだった。
ジュリアがいくら目を凝らしても、彼女達の姿からは全く、人間らしい感情というものは見て取ることが出来なかった。
彼女達に助けを求めたところで、こちらの言葉は一切、彼女達の心には届かないのではないか。
心を持たない人形。
自分もこのような人間に変えられる?
暗澹とした未来が、ジュリアの張りつめた平静を断ち切った。
「嫌!嫌よ!!離して!!お願い!!」
カノンはジュリアの悲鳴を無視して、彼女の耳に密閉式のヘッドフォンをかぶせた。ジュリアから聴覚を奪われる。
カノンは二人に指示を出した。指示を受けて、ミランダ達は機械を起動させる準備を始める。
イスの後ろに設置された機械は、暗黒のオーラ、「サイコパワー」を生成し、対象に送り込む装置だ。
サイコパワーは、負の感情を増幅させた力で、人間の破壊衝動を高め、肉体を強化する作用がある。
人体にサイコパワーを送り込むことで、肉体強化と共に、精神もシャドルーの構成員としてふさわしい物へ変えていくのだ。
装置が、コードを通じてジュリアのヘッドギアにサイコパワー流し込み始めた。
サイコパワーを流された瞬間、ジュリアの瞳孔が突然収縮した。目を大きく見開き、放心した表情に変わる。
「せいぜい、頑張りなさい」
カノンの冷たい励ましはジュリアの耳には届かない。

651:ユーリ・プロジェクト②
10/03/27 22:13:15 e0TGAGpp
頭に何かが流れてくる。その何かが頭に流れる度に、次第に心が喧騒しだすのをジュリアは感じていた。
(……!!)
何かは、まるで波動のように全身へと伝わる。
頭から足の先まで、満遍なく拡がる黒い波動。
全身に波動が満ちると、筋肉が激しく躍動し始めた。
拘束された手足がビクビクと痙攣する。それに合わせて、彼女の座るイスもやかましく音を立て始めた。
筋肉の躍動。そこに感覚など何もない。快感は当然のこと、痛覚さえもない。
だが、その激しい痙攣は、彼女の心の情緒を不安にするに足るものだった。
「があああああっ!!」
獣じみた声が、腹の底から絞り出された。
ヘッドギアから供給されるサイコパワーが、彼女の心に結びつき、眠っていた攻撃性を目覚めさせ始めたのだ。
理性が痺れだした。次第に考えがまとまらなくなる。
「うああああああ!!!!おおああああ!!!」
黒い思念が渦を巻き始めた。次第にそれはジュリアの心を飲み込む大渦に変化していく。  

[……たい]

最初、それは取るに足りないほどの、小さな思念に過ぎなかった。

[壊したい]

[破壊したい 殺したい]

小さな思念は、次第に膨れ上がり、強烈な衝動へと姿を変えて、ジュリアの心に迫ってきた。
[破壊したい 殺したい ]
(違う)
[無茶苦茶にしてしまいたい]
(違う!!)
[全てこの手で]
(違う違う!!)
湧きおこる、おぞましい衝動を否定するように、必死に彼女は首を振った。
『 破壊 殺戮 』
ヘッドフォンから、怖気が走るような単語が囁かれた。その女声はまぎれも無く、ジュリア自身の声だった。
『 破壊 殺戮 破壊 殺戮 』
平板で機械的な口調で、「ジュリアの声」は、ジュリアの精神に言葉を塗りこんでいく。
[破壊したい]
(そんなの、違う!!)
『 破壊 破壊 破壊』
(私はそんなこと……!!)
理性は否定するが、理性の内に秘められた本能は違った。
本能はサイコパワーの全てを受け入れて、理性の殻を破ろうとうごめいていた。
コードから伝う邪悪な波動が、本能に訴えかけると同時に力を与えているのだ。
自分が壊されていく。
彼女の虚ろな目から涙が流れ、頬を伝い始めた。
(違う違う違う!!!)
「違う!!!!」

652:ユーリ・プロジェクト②
10/03/27 22:13:53 e0TGAGpp
洗脳装置のヘッドランプが消えた。機能が停止した合図である。
機械の停止と同時に、ジュリアの激しい震えも、ゆっくりと穏やかになり、止まった。
全身の筋肉が弛緩しているのだろう、ジュリアの体は、イスにすべてを預け切った状態だった。
うなだれるように首を折り曲げ、放心した表情で、呆然と下方を眺めていた。
口端から垂れるヨダレが胸を伝って腹部に流れている。
収縮していた瞳孔は、少しずつ元に戻っていった。
「ハア、ハア、ウ……ア……ア……」
苦しげに、ひどく無機的な息を吐き、ジュリアは必死に理性を取り戻そうと喘いでいた。
理性が戻ると、真っ先に思い起こされるのは、黒き波動の与える強烈な衝撃。ジュリアの目に熱い涙があふれてきた。
痛いのではない。
苦しいのではない。
恐ろしいのだ。
底知れぬ程に暗い波動が、自分を変えようと迫ってきた。その実感が、ジュリアを恐怖の谷底へと追い込んでいる。
ジュリアを一瞥して、カノンはミランダに言った。
「『慣らし運転』の調子はどう?」
「はい、カノン様。パワー供給レベルを1に設定し、対象に送り込みました。サイコパワー伝導率は、最小値が22%、最高値は35%を計測」
ベガ様の見込み通り。
カノンは、恐ろしい程のポテンシャルを持つジュリアを歓喜の目で見つめた。
サイコパワーは人体を強化する力を無限に秘めているが、一方で、人間がもつ破壊性を異常に刺激する。
最初からサイコパワーを大量に人間に与えてしまうと、膨張した破壊衝動が精神を食らいつくし、結果、殺意に飢えた獣へと変えてしまうのだ。
「殺意の波動」とも呼ばれることのあるそれは、本来、ベガのような、負の思念を真っ向から受け止めきれる程の、類稀な素質が備わっている者でしか扱える力ではないのだ。
何もかもを壊された廃人は使い物にならない。
対象を使い物にならないようにしない為にも、最初の「慣らし」は重要だ。
どのような反応を見せたかによって、サイコパワーをどれだけ流し込んでいいものかを測るのだ。
ジュリアの反応を見て、カノンが下した決定は、
「パワー供給レベルを3に移行」
アリスが装置を起動させ始めた。機械の起動ランプが点灯し、再びジュリアへサイコパワーが送り込まれる。
先ほど供給されたものの倍のパワーだ。
「ひっ!!!!」
ジュリアが再び葛藤の世界に戻っていく。限界まで背を反らして、虚ろな目を限界まで見開いて天を仰いだ。
「いやああああああああ!!!」
「『洗脳プログラム1』を実行します」
ジュリアの悲鳴をよそに、研究員が装置の操作盤に手をかけて、手慣れた手つきで次々と操作していく。


653:ユーリ・プロジェクト②
10/03/27 22:14:30 e0TGAGpp
[破壊したい 壊したい 全てを壊したい]

「違う!!違うの!!私は!!!」

『 破壊 殺戮 破壊 殺戮 』

「もうやめて!!お願い!だから……ああああ!!!!」

[破壊したい!!全て壊したい!!! 我慢できない!!!]

『 破壊 殺戮 殲滅 殺戮 破壊』

「こわし……た……いやっ!!いやああああ!!!」

『 破壊 受け入れる 殺戮 受け入れる 殲滅 受け入れる 殺戮 受け入れる 破壊』

(壊したい……)

「駄目っ!!!だめぇえええええ!!!」

[我慢する必要はない ただ解き放つだけ]

(解き、放つ……)

「私は!!私は!!!」

654:ユーリ・プロジェクト②
10/03/27 22:15:06 e0TGAGpp
サイコパワーの供給レベルを3に移行してから一時間。彼女の心の限界はピークに達していた。
変革される精神は、負の感情を無茶苦茶な配分で掻き混ぜた、ドロドロのカクテルと化していた。
心をバラバラに破壊され、望まない形に組みかえられていく、経験したことのない苦痛の世界に彼女はいた。
抵抗しようとも、その意思が粉々に粉砕されてしまい、どうにもならない。
『 破壊 全て受け入れる 殺戮 全て受け入れる 殲滅 全て受け入れる 殺戮 全て受け入れる 』
(受け入れる……)
「……ああ!!受け……い……」
ついに本能が理性を上回り始めた。膨張した衝動を理性では抑えきれなくなり、徐々に本能に従い始めているのだ。
支配の逆転。
これまで理性に抑えつけられ、支配を受けていた本能は、サイコパワーの後ろ盾を得て、激しい反乱を起こしている。
本能が理性を凌駕すると、被暗示性が極限にまで高められ、どんな無茶な暗示さえも受け入れてしまう状態になる。
『全て受け入れる 受け入れなければならない』
『受け入れなければならない 衝動に身を任
せる 委ねる 委ねる』
洗脳装置は、対象の声を徹底分析し、独自の音声出力システムで「本人の声」を生成する。
その音声で紡がれた暗示を、ヘッドフォンを通じて対象の耳へ注ぎ入れるのだ。
本能を剥き出しにした人間は、自分の声を、そのまま自分の考えとして受け入れてしまう。
自身の声が与える暗示は、第三者が与える暗示とは比べ物にならないほどの影響を脳に及ぼすのだ。
『委ねる 全てを委ねる 逆らわない 逆らえない』
『逆らわない 逆らえない 委ねる 衝動のままに』
(さか……らわない……)
「さからわ……いや……!!さか……」
[我慢できない!!!壊す!!殺す!!!殺す!!!]
『逆らわない 逆らえない 委ねる 衝動のままに』
(ころす 破壊する)
「あああ……!!ころ……す……いあ、うわっ、はかいす……はかいする!」
自分の声が耳元で囁くたびに、ジュリアはいとも簡単に思考を操作され、自身を捻じ曲げてしまう。
崩れる心の様を体現するように、彼女の顔つきも、だんだんと力を失った、弛緩したものへと変化していった。
ジュリアの心の扉は、闇から差し伸べられる手によって開かれようとしていた。
「ころす……殺す……」

655:ユーリ・プロジェクト②
10/03/27 22:15:52 e0TGAGpp
「ストップ。休息時間よ」
カノンの指示と同時に、洗脳装置はジュリアに電気信号を送った。意識のブレーカーを落とし、強制的に失神状態に追い込むものだ。
「あっ」
驚いたような声を残して、すとんと、糸が切れたようにジュリアの意識は落ちた。
かちりと音がして、彼女を拘束していたリングは一斉に外れた。カノンの手で、頭を覆っているヘッドギアも外される。
「カプセルに運びなさい」
「はい。カノン様」
ミランダとアリスは、イスに座るジュリアの両隣りに並び、肩を担いで立たせると、カプセルの方へと歩いて行った。
二人に連れられるジュリアの顔は穏やかだった。先ほどまで抵抗の叫びをあげ続けていた者とは思えない。
ジュリアは再びカプセルの中に入れられた。手足もリングで固定される。そして、蓋が静かに閉じられた。
「休息プログラム作動」
ジュリアの口に気圧マスクが張り付いた。コードが一斉に体の各所に伸びて、先端の吸盤が柔肌に吸いついていく。
「カプセル内に栄養液を満たします」
エメラルドの液体が、カプセル内に溢れ出した。ジュリアの体をゆっくりと登り、包み込んでいく。
サイコパワーの供給は時間をかけて行われる。
精神の変調と同時に、サイコパワーは急激な肉体組成の変質を促す。
筋肉の増強は、対象の肉体に激しい疲労を刻むため、適度な休養が必要となるのだ。
また、張りつめた緊張状態にあった意識を、一度シャットダウンさせることで、脳に与えた情報を整理させるという目的もある。
液体がカプセル内を完全に満たした。
ジュリアのブラウンの髪は、高濃度栄養液の中で、なめらかに浮き沈みを繰り返していた。
体を包む栄養液は、皮膚を介して全身の筋肉を癒し、さらなる強化への基盤を作っていく。
「対象の進捗データを確保しました。読み上げます」
アリスがモニタ画面に映るデータを読み上げ始めた。
「全体進捗状況7%。筋組織増強可能容量残86%。精神支配率9%。最終抵抗数値145……」
 

656:ユーリ・プロジェクト②
10/03/27 22:16:27 e0TGAGpp
▽第二回測定結果報告
  全体進捗状況…7%
  筋組織増強可能容量残…86%
  精神支配率…9%   
  最終抵抗数値…145
  サイコパワー伝導率
 ・最小値…21%
 ・最高値…39%
  重点プログラム内容…破壊衝動に訴えかける、攻撃性の強化。
  特記事項
 ・素晴らしい筋組織。代謝レベルの示す通りの結果を現している。
  精神支配率が若干低いため、与える暗示の発声頻度を引き上げるものとする。


 ○前回測定結果
  オルガスムス回数…32回
  最高興奮値…164
  最高性感度数…143
   
  肉体組成値…145 
  特筆事項…下半身、特に脚部の組成値が著しく高い。
  本能レベル…94
  代謝レベル…98 

 ○適性診断結果(F~S)
  適性職種
  研究員…C
  戦闘員…A+
  工作員…B

 ○追記事項
  測定を見直した結果、戦闘員適性をA++に変更する。

657:ユーリ・プロジェクト②
10/03/27 22:17:08 e0TGAGpp
休憩を途中で挟みつつ、教育は進んでいった。
3度目の教育を受ける頃には、ヘッドギアから与えられるサイコパワーと、彼女自身の声によって語られる暗示に抵抗する意思も見えなくなっていた。
彼女の表情にも、目に見えて変化が現れていた。
まぶたはとろんと、半ば力なく下がり、口の端から唾液を垂れ流していた。
瞳孔の収縮した瞳は、一体、どこを見ているものか分からない。放心状態にあるかのような、呆けた表情だ。
全身の筋肉は電流を流されているかのように、ビクビクと痙攣を起こしていた。
サイコパワーが全身の代謝を異常な速度で促しているのだ。通常では考えられない速度で彼女の筋力強化は進んでいた。    
だが、順調に見えた洗脳教育、肉体改造は、4回目の教育に差し掛かった時に壁にぶつかった。
恋人の存在である。
『忘れる 忘れる 忘れる』
(ホーク!!助けて!!)
「私は……!!うう……」
消えていく恋人の姿を心から手放すまいと、彼女は頑として暗示を受け入れない。
「よくあることだけど、面倒よね」
サイコパワーにより、ジュリアの破壊衝動を膨張させ、彼女に眠る本能を解放したあと、
カノンはジュリアの持つ、余計な記憶の削除に入ったのだが、すぐに問題に直面した。
ジュリアが抱く恋人への想いは、暗示を受け付ける隙間が無い程に強固なものだったのだ。
ジュリアの心の中の大切な部分、これからベガが入るべき位置に、T=ホークという邪魔者がいるのである。
『 ホーク 忘れる 忘れる 消える』
「ホーク!!ああ!!私は……!!私は……!!」
折角封じ込めた理性が再び戻ってきている。
カノンは操作盤に向かい、音声出力プログラムを呼び出した。
ホークという存在を忘れさせるより先に、ホークに対する疑念を植え付けるよう、処理方針を変更する為だ。
「ジュリアがホークを忘れられないのは、恋人が今の状況を打開してくれると固く信じているからよ。あなたがどこまで恋人のことを想っているのか、試してあげるわ」
カノンの操作が完了すると、ジュリアに囁く言葉が変化した。
『ホーク 憎い なぜ助けてくれない ホーク 憎い 』
(嫌!!嫌!!)
「ホークは……そんなのじゃ……!」
『 なぜ助けてくれない 助けて欲しいのに 憎い 』
「ホーク……たす……けて」
彼女の虚ろな瞳から、一筋の涙が流れる。それに構うことなく、「自身の声」はホークに対する疑念を植え付けていく。
『 助けて欲しいのに なぜ なぜ 苦しい 信じられない もう信じることができない』
(信じ……)
『信じられない 信じられない 信じられない』
「信じ……られない……」
ほんの少しの疑念。そこから生じた疑心の傷口を、暗示が急速に広げていく。
「ホーク……助けて欲しいのに……」


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