調教や洗脳などで悪の奴隷になるヒロインpart35at EROPARO
調教や洗脳などで悪の奴隷になるヒロインpart35 - 暇つぶし2ch400:名無しさん@ピンキー
10/03/11 22:25:58 PGX3+TTL
洋画はダメだ
日本語吹き替えでも無反応
やっぱり日本人にかぎるNE

401:名無しさん@ピンキー
10/03/11 22:43:02 0m8sI6sG
実写はダメだ
やっぱり悪堕ちは非実在に限る

402:名無しさん@ピンキー
10/03/11 22:52:53 LJUkN3yN
スピーシーズの最初の奴とか好きだぜ

403:名無しさん@ピンキー
10/03/11 23:27:57 7UtX2BlS
スピーシーズ悪堕ちって最初の電車の部分か
あれはハンパなくエロかった

404:名無しさん@ピンキー
10/03/12 00:13:13 z2jJJWYy
まさかスピーシーズの流れになるとはな
自ら繭作ってるの
あれはやばかった

405:名無しさん@ピンキー
10/03/12 00:56:15 7aus3dz+
>>392
あれはヒロイン3人組の内2人分で終わってしまったので、
せめてあと1人、もしくは最後まで書ききって欲しかったなあ
もしくは、個別ではなく連鎖堕ちにして欲しかった

406:名無しさん@ピンキー
10/03/12 02:02:44 EkWlw2Ul
規制とかスレ違いがウザ
ロリコンが必死過ぎ
そん事でスレを巻き込まないでほしい

407:名無しさん@ピンキー
10/03/12 04:05:08 TUE1OYur

時々何書いてるかわからん奴がいるよなこのスレ

408:名無しさん@ピンキー
10/03/12 04:07:00 9s/WN3Nt
洗脳されてんだろ

409:名無しさん@ピンキー
10/03/12 09:10:26 WC84Q1ax
>>400
むしろ外人の方がある意味非実在的でしっくり来るな
自分も下の人と同じであまりこの属性で生々しい部分があると受け付けないらしい

410:名無しさん@ピンキー
10/03/12 12:58:56 ykaSA3cG
話を切って悪いが
ヒロインとかが洗脳される場合、主人公は悪と正義のどっちの立場の方がいい?
俺は主人公はあくまでも正義で悪のやつらにヒロインが洗脳されるのが好きなんだが…できればエロはなしで

411:名無しさん@ピンキー
10/03/12 13:56:52 w0jtoVCs
俺は逆に悪側視点の方が好きだな
悪視点ってのはなかなか商業ではやりにくいと思うんで
同人や二次創作ならではの魅力ではあるんだよね
だが結局は人それぞれだからなぁ

SS書く為に聞いてるのなら、自分の好きな視点の方で書いた方がいいんじゃないかね
その方が書き易いだろうし、敵側に感情移入する読み方もあるから俺はそれでも歓迎したい

412:名無しさん@ピンキー
10/03/12 16:53:13 ykaSA3cG
いやいや、ssを書くためじゃないよ
ただ、エロゲとかってほとんど主人公が悪で、なんか個人的に悪堕ちって感じがしないんだよね
むしろ、エロゲの快楽堕ちがない一般向けのアニメの悪堕ちのほうが萌えるから、そう考えてるやつとかいるのかな、って思って

しかもエロゲとかの洗脳のCGってキャラのアップにしすぎてカプセルに入れられてても、なにこの異空間みたいなの多いから一気に萎えないかい?
もっとカメラ引いてくれ…楽だからってキャラのアップやめてくれよ

413:名無しさん@ピンキー
10/03/12 17:00:43 TUE1OYur
寝取られスキーと寝取りスキーの差じゃなかろか
俺はどっちでもOK
ていうか下手に男主人公の視点が入るくらいならヒロイン主人公でいい

414:名無しさん@ピンキー
10/03/12 17:15:40 QUqMcwU0
どっちでもOKという点では、いつもは寝取られスキーの舞方氏も、今回は寝取り話のようだな。
でも、今回の話はヒロイン視点でやったほうがよかったんじゃないだろうか。

415:名無しさん@ピンキー
10/03/12 18:32:05 Q6nE300F
そうか?
俺はNTR大嫌いだけど、悪堕ちに関しては男は正義側の方がいい
>>412も言ってるけど、そうじゃないとなんか悪堕ちっていうより改造に近い感じがするんだよな
まあ百歩譲って悪側でもいいけど洗脳とエロを絡めるのはやめてほしい快楽堕ちになるから


416:名無しさん@ピンキー
10/03/12 19:46:36 +L5qKHt2
NTRと言えばバハムートドラグーン

417:名無しさん@ピンキー
10/03/12 20:01:30 TUE1OYur
>まあ百歩譲って悪側でもいいけど洗脳とエロを絡めるのはやめてほしい快楽堕ちになるから

さすがに関係ない性癖語りを混ぜるなよ、とちょっと思った

418:名無しさん@ピンキー
10/03/12 20:07:54 Q6nE300F
スマン
ちょっと言い過ぎたかな

419:INHUMAN
10/03/12 22:34:28 gg5TITjg
ちょっと、あんたたち!!
こんなスレッドを立てて非人間的だと思わないの!?
削除依頼を出して消してもらうかどうか分からないけど、
一応の覚悟はしてなさいよね!!

さあ、潰れるざます!
逝くでがんす!
フンガ~!!
まともに潰れなさいよ~!!


420:名無しさん@ピンキー
10/03/12 23:25:43 GtOInZYi
419 名前:あぼ~ん[NGName:INHUMAN] 投稿日:あぼ~ん

421:名無しさん@ピンキー
10/03/13 08:02:50 4PTg44nq
快楽=欲望のために他人を踏みにじれるようになるなら悪堕ちだと思うんだけどなあ

422:名無しさん@ピンキー
10/03/13 08:42:03 24Hj2Ktf
でもおれも快楽で堕ちるとなんか萎える

423:名無しさん@ピンキー
10/03/13 08:51:03 mQ8Y/h55
拷問で堕とすのが好きなんだがこれ萎える人多いみたいな

424:名無しさん@ピンキー
10/03/13 08:52:26 ega+EEHf
>>420はスルー。

425:名無しさん@ピンキー
10/03/13 09:49:33 xUhSZYIy
快楽堕ちスキーの俺としては逆にビンビンなんだがなぁ
触区シリーズとか大好き

426:名無しさん@ピンキー
10/03/13 10:49:18 V1+GSZzw
触区は初代が至高だな。
2はどうもギャグ色が強い。主人公も善人すぎるし

427:名無しさん@ピンキー
10/03/13 12:47:52 2wiIE7Ba
快楽堕ちじたいはまぁいいんだけど
快楽堕ちってエロゲ・エロ漫画シチュエーションで
セリフとかがワンパターンで苦手。

428:名無しさん@ピンキー
10/03/13 14:02:42 TH50hMja
>>427
悪の大魔王:あーそれそれ
正義の味方:きもちー
悪の大魔王:あーそれそれ
正義の味方:わたしはあくのだいまおうさまのものです
こんな感じか

429:名無しさん@ピンキー
10/03/13 15:00:13 xUhSZYIy
連鎖堕ちに特化しててアリナも含めて全部すきだったな
EDが無理やりハッピーエンド感はあったけど

快楽堕ち以外だったら
味方への不信感を煽ったり不満を募らせたりして悪サイドに引き込むのがいいな
悪の組織の方が自分を認めてくれると思い始めたりとか
Zガンダムでティターンズにレコアが行ったみたいな

430:名無しさん@ピンキー
10/03/13 15:26:01 t/Xt4zDU
う~ん、まあでもZガンダムの組織は良くも悪くもどっちもどっちだしなw

431:名無しさん@ピンキー
10/03/13 15:36:36 U07AyCAT
そうか?確かに組織の立場は近いが
作中の善悪はわりとあるけどな

432:名無しさん@ピンキー
10/03/13 15:57:46 xUhSZYIy
0083とかはどっちもどっちにかかれてるけどZはシロッコが悪サイドでかかれてるからな
まぁそこはおいといて

悪堕ちを後押しはするけど根幹は本人の心の闇なのがポイント
後でその積もった恨みを正義の味方にぶつけるも良し
説得されて心を揺さぶられるのも良し
引き込んだ奴に感謝の意を伝えるも良し

433:名無しさん@ピンキー
10/03/13 16:04:15 87pwAdZ2
心の闇を突かれた後、アイテムやパワーで悪堕ちするパターンが一番好きです

434:名無しさん@ピンキー
10/03/13 19:01:59 itmguHva
俺は真っ白な正義を洗脳装置とか洗脳魔法とか闇の装備とかで強制的に真っ黒に染めるのが好き

435:名無しさん@ピンキー
10/03/13 19:16:56 TVjrtOSb
うんうん
何の心の隙もない正義のヒロインを強制的にと言うのもいいよね。

436:名無しさん@ピンキー
10/03/13 19:36:51 24Hj2Ktf
>>433
>>434
うまい酒が飲めそうだ

437:名無しさん@ピンキー
10/03/13 19:48:44 3gj4ZCI5
また自分の性癖語りスレになってるな
フェチ板行けフェチ板

438:名無しさん@ピンキー
10/03/13 19:51:19 OoksHSU9
自治厨うざいでチュー

439:予定調和
10/03/13 22:21:35 rW04+53t
前回投下したSSに目を通してくださった方々、ありがとうございます。

前回の粗筋
秋生陥落。春香は黒の一族に捕まってしまう。

それでは続きをどうぞ。

440:予定調和
10/03/13 22:27:08 rW04+53t
意識がぼんやりしながらも、あたしは現状把握に努めようとしていた。
視界は真っ暗。目が慣れてきても「どこかの部屋」ということしかわからない。
足は自由に動かせるけど、手は片手ずつ手錠でパイプのようなものに繋がれていて外せない。
そしてなにより、全身を覆っている脱力感。魔法も一切発動できない。
手錠くらいならあたしでも何とかなりそうなのに、何もできない今だとびくともしない。
「あら、春香ちゃん。目が覚めたみたいね」
不意に暗闇の中から先輩の声が聞こえたような気がして、びくっとしてしまった。
気絶する前の記憶がはっきり思い出せないけど、確かあたしは月夜女姫にやられたからここに囚われているはず。どうして先輩の声が聞こえるの?
「赤坂さん、お久しぶりです。本当は昨日会ったばっかりですけど」
今度は蘭ちゃんの声……疲れてるからかな、空耳が酷い。それか夢だ、夢に違いない。
「ちょっと、聞こえてるなら返事くらいしなさいよ」
「ひゃいっ!?」
何か尖ったもので頬をつんつんと突かれて、素っ頓狂な声が出てしまった。もしかして夢じゃない……?
「あの、ひょっとして先輩と蘭ちゃんですか?」
「そうそう。でね、春香ちゃん。今の自分の状況わかってるかしら?」
「わかりません……まず、ここはどこなんですか?」
「ホワイトウイングの元本部よ。だからそんなに怖がらないで」
「え、そこって今は月夜女姫がいるって報告があったような。先輩たちも捕まっちゃったんですか?」
「違うわ。なぜなら、春香ちゃんを捕まえさせたのは私だから」
うぅ、頭がこんがらがってきた。月夜女姫と戦ってやられて捕まってるはずなのに、
先輩があたしを捕まえさせたってどういうことだろ?ひょっとしてやられた後に保護してくれたとか?
それともあたしを奪還するためにここまで来てくれたか。どっちだろ?
「えっと、なんだかよくわからないですけど助けてくれたんですね、ありがとうございます」
「なんか赤坂さん、勘違いしてない?」
「『助けた』という表現はあながち間違ってはいないわね。間違ってはいないけど、おそらく勘違いもしている」
「どういう意味、ですか」
少し真実を知るのが怖かった。小さな灯り1つとない真っ暗な部屋で、私は先輩や春香ちゃんの姿が全く見えないのに、
先輩たちはまるであたしがきちんと見えているかのような話ぶりだからだ。いや、まさかね。暗視スコープとか着けているんだろう、きっと。
しかし次に先輩が発した言葉でその楽観的な予想はあっさりと否定された。
「私が助けたのは『晴川から』ということ。あと、私が月夜女姫である、ということよ」
最初に交戦したときからなんとなく似ている気はしていた。でも、あの時は月夜女の印象のほうが強かったのだ。
先輩本人の口から告げられても、事実を素直に受け入れられない。
「じゃあ、今まで戦ってきた月夜女姫は全部先輩だったってことですか!?」
「そうよ。ここを最初に襲ったのも、あちこち都市を壊して回ったのも、ホワイトウイングを襲ったり惑わせたりして追い詰めたのも、
 全部私。春香ちゃんのよく知っている先輩、天道彩の仕業なのよ」
「そんなわけない!あの優しかった先輩がそんなことするなんて、ありえないです!どうして……ひぐっ」
泣いちゃだめだ。いくら酷いことをしたといっても、先輩にも何か事情があるのかもしれない。
先輩は理由もなく他人を困らせて楽しむような性格じゃない!
「どうしてって言われてもねえ。滑稽だから。それだけ」
「ただ自分が面白いからって理由だけで、何の罪もない人をたくさん殺したりしてたんですか……?」
「そうよ。悪いかしら?本当は普通の人間に配慮なんてする必要は全くないのだけど、無計画に殺しすぎると数が減るからね。
 事前に避難する時間をあげているのだからむしろ感謝して欲し」
「そういう問題じゃないでしょう!!どうしちゃったんですか、先輩。元に戻ってくださいよ……」
こんなの、あたしの知ってる先輩じゃないよ……。
「それは無理ですよ、赤坂さん。お姉様は月夜女様に力を戴いて今の力を手にしたんです。私はお姉様から。
 そこの元ホワイトウイングの2人も完全に堕ちちゃってるし、黒の一族が世界を支配するのも時間の問題だと思いますよ。
 だれもお姉様には敵わないんですから。誰もそんな力を自分から手放したりするわけがないじゃないですか」
月夜女から力を貰った?そんな力が月夜女にあったなんて。そのまだ誰も知らない重要なことを私に教えるってことは、
もしかして、生きて返すつもりがない……?それともう1つ、
「そこの元ホワイトウイングの2人ってどういうことですか!?」

441:予定調和
10/03/13 22:31:12 rW04+53t
「私のすぐ後ろにいるじゃないですか。って、普通の人間の赤坂さんには見えてないんだっけ。ほら、2人も赤坂さんに話しかけてあげたら?」
2人も捕まって先に黒の一族にされたのかな?だとしたら、私もいずれ……。
「あなたがここまで間抜けだとは思わなかったわ。
 だって、晴川より私と接触する機会が多いのに私が黒の一族になっていることに微塵も気付く気配がないんだもの」
「おかげで、私の魔眼にきれいにかかってくれましたね」
「冬子ちゃん、白石さん……そんな」
もう無理だ。既に2人も敵側に回られていては、ホワイトウイングに勝ち目は無い。
蘭ちゃんの言ったとおり、世界が黒の一族に支配されるのは時間の問題。
「冬子ちゃんなんて気安く呼ばないでくれる?まだ私とあなたが対等な立場のままだと思ったら大間違いよ」
肝臓の辺りに何の前触れもなく鈍い衝撃が与えられる。肺の中の空気が押し出されて息をするのが苦しい。
暗闇だから殴られたのか蹴られたのかはわからない。
「ふーん、いつからお前はそんなに偉くなったのかしら?」
「でもこいつは普通の人間ですよ?それにこれから黒の一族になったとしても私より立場は下のはずではないですか?」
「誤解しているようだけど、お前の立場はただの人間よりほんの少し上なだけよ。
 春香ちゃんには蘭と同等のポジションに就いてもらうわ。つまりお前より上ってこと」
「ちょっとそれどういうことよ!私のほうが先に」
「文句あるの?」
姿が全く見えないのに、凍てつくような殺気が全身で感じられた。
月夜女姫と対峙したときでも、これほどの殺気を感じたことはまだない。特に寒いわけでもないのに鳥肌が収まらない。
「……ありません」
「穀潰しが調子に乗ってんじゃないわよ、全く」
誰にでも優しくできて、決して我侭を言わなかった先輩とはまるで別人だ。本当に先輩本人なのか疑いたくなってくる。

でも、テレビを通した犯行声明の後はあたしのよく知ってる優しい先輩に戻ったように感じた。人質の扱いとしては手厚すぎるくらいだ。
食事は今まで食べたことのないくらい豪華なものが出たし、外に出たり外部と連絡を取ったりする以外の要求はほぼすんなり聞いてくれる。
拘束具は全部外してくれたし、部屋の照明も先輩が眩しくならない程度なら許してくれた。しかし全身の気だるさはいつまで経っても抜けず、
魔法もずっと発動できない。そうやってたくさんの無関係な人の命と引き替えに生かされている自分が嫌になって、
2人で逃避行を続けているであろう晴川さんと夏菜ちゃんに申し訳なくなった。

先輩があたしを軟禁し始めてから、既にかなりの時間が経っていた。
犯行声明で言ったことを実行していれば、相当な数の人が犠牲になっているはずだ。
「もう何万もの人間が死んでいるのに何も行動を起こさないとは、
 実は晴川って自分以外の人間はどうなってもいいって思ってるんじゃないのかしら」
「実際に殺してるのは先輩たちじゃないですか!晴川さんのせいみたいに言わないでください!」
「世間の非難の矛先は晴川に向けられてるわよ?」
そんなの、長いものには巻かれることしかできない一部の人だけだ。大多数の人は黒の一族が悪いってわかってるはず。
「晴川さんはそんなことでへこたれたりするほど弱くないです」
「じゃあ、そこに春香ちゃんが黒の一族になって襲って来たらどうなるでしょうね」
「やっぱり、先輩……」
遅かれ早かれあたしもこうなる運命なのは簡単に予想できていたた。
軟禁されて最初に変わり果てた冬子ちゃんと白石さんを見てから覚悟はできている。
「私の言ったことに誘われてあいつらがここに来てくれたら目の前で春香ちゃんを黒の一族にするのを見てもらう予定だったけど、
 このまま待ってても来そうにないしね」
先輩が両肩をがっしりと掴み、そのまま押し倒してきた。すごい怪力だ。
あたしがベストコンディションだったとしても、振り払うことはできなさそう。
そして間髪入れずに首筋に噛み付いてきた!!
「く……ぁ……」
途端に声が出せなくなる。元々の気だるさに加えてさらに力が吸い取られたように脱力して、弱弱しい抵抗しかできない。
痛いわけじゃない。しかし自分の体の中に異物が染みこんでいくおぞましい感触に体の震えが止まらない。
<どうしてそんなに嫌がるの?何もデメリットなんてないのに>
体の中がぐつぐつ煮えたぎっているみたい……火あぶりになっているかのように全身が熱くなって、汗が滝のように噴き出してくる。

442:予定調和
10/03/13 22:34:21 rW04+53t
<デメリットならあります……あたしが黒の一族になったら、それこそ世界の終わりです!>
<終わりではないわ。私と一緒に世界を作り直すの>
<そんなの……きゃあああああああ!!やだ、爪が……>
爪が硬く、鋭くなり、まるで刃物のように変化していた。もう時間がない!
<ほらほら、次は耳が尖ってきてるわよ?>
もっとゆっくり変化するものと思っていただけに、動揺が隠せない。先輩に耳を撫でられて、余計に意識がはっきりしなくなる。
<んはあ……>
このまま先輩の好きにさせたらだめだ。間違いなく、黒の力に飲み込まれる。
あたしが、あたしでなくなってしまう。
<そろそろ翼が生えてくる頃かしら?>
だめ……飲まれちゃだめ、絶対だめ!
頭がぼうっとしてくるにつれて全身の倦怠感はいつの間にか消え去り、代わりに力が漲ってる。今なら反撃することもできるかもしれない。
体は黒の一族にされようとも、心まで汚されるわけにはいかない。
<はあ、はあ、ふぁあああああ!!>
崖っぷちに片手1本でぶら下がっているような危機的状況で、脳髄を焦がすほどの快楽に襲われる。
それを気持ちいいと頭が認識したがるのを懸命に打ち消していく。我慢に我慢を重ねて、反撃の機会をじっと待つ。
<これはまた立派な翼ね……体の変化はこれで完了。次は心を……>
突然、どんよりとしていた思考が晴れてクリアになる。先輩の羽毛の1本1本、壁の僅かな歪みまでくっきりはっきり見える。
周りの動きが全部スローモーションに見えるくらい、感覚が研ぎ澄まされてる。
きた……今だ。
<させ……ないっ!!>
思いっきり手に力を込めて先輩を引き剥がそうとすると、バチッと黒い火花が飛んで先輩の体が壁まで吹き飛ばされた。
「効いた……?御神刀でも駄目だったのに」
黒の力だと闇界障壁は効果がないのかな?
「いたた……やってくれたわね」
さっきは不意打ちだから当てられただけで、1対1だと能力差がありすぎる。
ここは晴川さんと合流して改めて作戦を練り直したほうがいいかもしれない。有効な攻撃手段ができただけでも大きいはず。
先輩がどのくらいこの迷路のような本部に詳しいかわからないけど、あたしだって何回も出入りしてるから土地勘はある。
黒の一族になったせいで視界もよくなったし、逃げ切ってみせる!

先輩が体勢を立て直す前にバッテリーの抜かれていた通信機を回収して部屋を飛び出し、一直線に出口を目指す。
照明がギリギリまで抑えられている今でも、転移阻止装置は働いているらしく空間転移は使えない。
「そこまでよ!」
やっぱりそう簡単には逃がしてくれないみたい。白石さんと冬子ちゃんの2人がかり……しかも、黒の一族となった2人だ。
あたしもパワーアップしているとはいえ勝負になるかどうか。
「器用貧乏だったあなたが、私に敵うかしら?」
「このままホワイトウイングに合流されると色々と困りますからね。反逆者は洗脳してあげないといけません」
「あたしは負けない!」
いつも通り光球で攻撃しようとしたけど、いつもよりかなり弾が大きい。
その分反動も大きくて撃った後によろめいてしまった。色もいつもなら真っ白なのに今は赤紫っぽくて異様だ。
「「きゃあああああ!!」」
爆煙が晴れると、2人は力なく横たわっていた。あれ?こんなに2人とも弱かったっけ。それともあたしが強くなったから?
でも、これなら……この力があれば、ホワイトウイングの逆転も夢じゃない。早く合流して3人で平和を取り戻すんだ!

春香が通り過ぎた直後に2人の黒の一族はむくっと起き上がり、顔を見合わせてぷっと吹き出した。



どうしよう。
晴川さんと連絡が取れたのはいいんだけど、なぜか透明化できないから目立ちまくりだし。
それに本部の外に出ても転移もできないってどういうこと?おかしいなあ、黒の一族になる前でも少しなら透明化と転移はできてたのに。

443:予定調和
10/03/13 22:38:39 rW04+53t
「うわっ、出たあ!ば、化け物お!!」
「とと、ごめんなさいー!!」
休んでいた路地に入り込んできたおじさんにいきなり驚かれて、化け物呼ばわりされたあたしもびっくりして逃げ出してしまった。
この調子だとこのまま晴川さんと夏菜ちゃんに会っても疑われそうな気がする。なんとかしないと……。
そうだ、白石さんや冬子ちゃんが普通の人間の姿でホワイトウイングに潜伏できたのなら、今のあたしも普通の人間の姿に戻れるはず。
ふらふらっと立ち寄った駅の中の化粧室で自分の今の姿を確認する。
目が紅い。充血しているわけじゃなくて、普通はこげ茶色のはずの虹彩が鮮やかな紅に染まっている。瞳孔が縦に割れていてまるで猫みたいだ。
長く伸びた爪はかなり切れ味がよくて、気を付けていないとあちこちに切り傷を付けてしまってすごく迷惑。早く爪切りで処理したほうがよさそう。
耳たぶは尖っているだけで硬さは以前と変わらないけど、やっぱり奇怪なことには変わりはない。
そしてさっきから邪魔な大きくて黒い翼。烏の羽によく似ているけど、どういうわけか軽く羽ばたいただけでかなり浮き上がることができる。
飛びすぎて天井に頭をぶつけてしまったくらいだ。
「お願い、戻って……」
頭の中の知識を頼りに、目を瞑って念じてみる。
目を開けてみると、見慣れた自分の姿が鏡に映っていた。
「よかったあ……一生あの格好でいることになんてならなくて」
これなら化け物呼ばわりされることもないはず。
大丈夫、黒の力を手に入れても心はそのままだし、あたしは力に振り回されはしない。
「おい、あれって人質になってた赤坂ってヤツじゃないか?」
人通りの多い場所に来ると、あたしを指差してはこそこそと話をしている人があちこちにいる。
いやー、あたしもすっかり有名人だなあ。え、ちょっと、そんなにぞろぞろ寄ってこないでよ、照れるってば。
「あんたが捕まってなかったら俺の子供は死なずに済んだんだよ!責任取れよ、偽善者め!」
え……?
「被害者面して同情誘ってるのがみえみえですげームカつく」
いや、やめて、どうしてそんなこと言うの……?
「何万人も犠牲にしてのうのうと生きてるなんて恥ずかしくないの!?黒の一族を倒せないんだったら、さっさと死ねばいいのに」
あたしはあたしなりに精一杯頑張ってるんだよ?それなのにどうしてこんなこと言われなくちゃいけないの?
皆……そんなにあたしが嫌いなの……?あたしは皆の味方なのに、どうして応援してくれないの?ねえ、どうして、どうして!?
「い、いや……いやあああああああああっ!!」
感情の乱れに伴って、体の変化を抑えていられなくなる。
蹲って普通の人間の姿に戻ろうとしても両手の爪はギリギリと音を立てて伸びてくるし、翼も勝手に広がってくる。
尖ってきた耳を両手でふさいでも、罵声は全部シャットアウトできない。
「うわ、こいつ黒の一族だったのか!?」
「きゃああああああああ!化け物!殺される!!」
そう、だよね。あたしは化け物だよね。あってるよ、それで。皆、人の心は覗けないもんね。
「はあ、はあ……うぅ……えぐ……ひっく……」
漸く落ち着いて自分の変化が静まったとき、あたしの視界には誰もいなかった。
晴川さんならこういうことを言われても平気そうだけど、あたしは晴川さんほど図太くないから……はっきり言って、辛い。
心が折れそうだよ……。

その傷悴した春香の様子を、物陰から声を殺して笑いながら眺めている人物がいた。



晴川さんと落ち合う場所として指定されたのは、街から離れた港だった。ここなら人目につかないし、落ち着いて話もできる。
「春ちゃーん!よかったあー、ほんとに無事に帰ってきて……」
夏菜ちゃんは懐中電灯を持ってぶんぶん手を振っていたからわかりやすかった。
近くに寄って顔を見直してみるとなんとなくやつれているような気がする。やっぱり逃避行はきついんだろうなあ……。
「春ちゃん、捕まってからあいつらに変なことされなかった?私はてっきり春ちゃんも黒の一族になって襲ってくるものかと……」
「大丈夫だよ。あたしは見ての通り自力で脱出してきただけ。それに月夜女姫も人質の扱いに慣れてないのかな、やたらと丁重に扱われたし」

444:予定調和
10/03/13 22:42:20 rW04+53t
それから2人にあたしが手に入れた情報、それと黒の力について包み隠さず話した。
あたしが黒の一族になった姿を見たときにはびっくりしてたけど、改めてホワイトウイングに味方することを告げると意外とすんなり納得してくれた。
「改造手術で脳改造の直前に脱出かあ。
 『彼女を改造した黒の一族は、世界征服を企む悪の秘密結社である。改造人間赤坂春香は人間の自由のために、黒の一族と闘うのだ!』
 ……おおっ、これはお約束の正義の逆転フラグ!最高のシチュエーション!よーし、燃えてきたあ!!」
夏菜ちゃんのいつもと変わらないペースにあたしもやる気を分けてもらえる。攻略の糸口は掴めた。
もう、何をするにも中途半端で「器用貧乏」と言われてたあたしじゃない。
チームのお荷物……とまでは思ってなかったけど、最底辺から一気に主力に躍り出た。
「いや、改造人間って夏菜ちゃん……まあ、似たようなものだけどさあ」
改造人間の前に秘密結社もどこか違うような気がするけど、そんな些細なところを突っ込んで夏菜ちゃんのやる気を削がなくてもいっか。
「でも、これで大幅な戦力アップですね、晴川さん。……晴川さん、あんまり嬉しそうじゃないですね。もしかしてまだ疑ってますか?」
せっかくあたしが命からがら脱出してきたんだからもう少し嬉しそうにしてもいいのに、晴川さんの顔はいつもに増して険しい。
「赤坂、普通の人間の姿に戻ってくれるか?」
「あ、はい」
本当は黒の一族の姿でいたほうが楽なんだけど、あの格好は目立つからなあ。

そこから先は、見るも無残な惨殺行為が行われた。
いきなり晴川さんが銃を取り出して至近距離からあたしの頭を狙って全弾発射。叫び声をあげる暇さえない。弾がきれた後は御神刀で滅多斬り。
体から頭が離れて足元に大きな血溜まりを作った。
信じていた晴川さんに裏切られたと認識できたのは、胴体がうつ伏せに倒れた後。
頭の中の大事にしなければならないものが、純粋な悪意と憎悪と殺意に侵食されていく。
おかしいな、死んでも不思議じゃない怪我なのに、まだ意識はある。
頭にあれだけ銃弾を撃ち込まれて、さらに頭と体が切り離されてもまだ生きてるって……黒の一族の体の頑丈さに寒気がすると同時に、感謝した。
まだ、あたしは死ねない。
「ちょっと晴川さん、何やってんのよ!?」
春香の返り血を浴びた晴川に夏菜は食ってかかる。その晴川は春香から目を逸らして怒りをあらわにして口を開いた。
「あのな青野、お前さっきの赤坂の話が本当だと思ってるのか?あんなできすぎた話がありえるか。
 白石と黒松のときはわからなかったが、今回はあからさますぎたな。俺をみくびるのもいい加減にしろ!」
「春ちゃんが裏切ったっていう証拠は何もないでしょ!どうして春ちゃんを信じてあげないの!?
 信じられなくて疑うより、信じて裏切られたほうがいいに決まってるでしょ!やりすぎだって言ってんのよ!」
「そんな甘い考えだと、油断して背を向けた瞬間に何をされても文句が言えないぞ。しかし、もう少し楽に逝かせてやればよかったな」
行きすぎた人間不信が晴川と夏菜の間に軋轢を生じさせる。
「晴川さんのバカ!仲間を信じてあげなくて正義の味方が務まるわけないでしょ!」
「綺麗事ばかり並べていればいいと思うなよ。そういうのがもう通用しない戦いだってのがまだわからないのか?今はこの死体の処理を考えろ」
順調にきていたときには目立たなかった、晴川の度を超えた現実主義と夏菜の理想主義の違いが浮き彫りになる。
「自分で仲間を殺しておいてよくそんな台詞が吐けるわね……」

「ちょっと2人とも、人を勝手に殺さないでよ」

「「え……?」」
のそりと立ち上がり、手足を軽く解しながら2人を見やる。
さっきまで死体と思われていた人物が立って話をしていれば驚くのも無理はない。想像以上の再生速度にあたしもびっくりしたくらいだ。
「まさかホワイトウイングにもあたしの居場所がないとは思わなかったよ……
 もうあたしを受け入れてくれる人は先輩しかいないんだね……うふふ」
どうせこいつ、あたしのことを月夜女姫と戦う駒としか見てないんだ。
それにこいつ、あたしの力なしで先輩に敵うと思ってるんだ。
そんな思い上がった蛆虫はあたしが殺しておかないとね。

445:予定調和
10/03/13 22:46:20 rW04+53t
「思ったとおりか……あれでまだ死んでいないとは信じられんな」
心の底に渦巻く闇が、溢れんばかりに溜まった負の感情が、あたしを取り返しのつかないところまで堕としていく。
もう、どうなってもいいや。
「春ちゃん、晴川さんが信じてなくても、あたしがいるじゃん!一緒に月夜女姫を倒そうよ!」
何よそれ。あたしに先輩を殺す手伝いをして欲しいって?笑えない冗談はよしてよ。
「夏菜ちゃんだってこいつに従ってるだけの犬じゃない。もう……遅いよ」
正義の味方のつもりでいた自分が急に馬鹿馬鹿しくなる。いくら高い給料を貰ってても、
どうして普通の高校生が生活を投げ打ってまで命を危険に晒さないといけないの?しかも最近は負け続けでこのままいっても勝ち目ないし。
頑張ってるのに一般人から浴びせられるのは罵詈雑言。そもそもあたしを殺そうとした奴の言うことなんて聞いていられない。
「やるしかなさそうだな。青野、覚悟を決めろ」
「う……春ちゃん、ごめん!」
こいつらがあたしを殺そうとするのなら、返り討ちにしてやる。
夏菜ちゃんは後回し。まずはあたしの人生を滅茶苦茶にしてくれたあの男だ。
この男さえいなければ、あたしは正義の味方ごっこなんてしていないで普通の高校生活が送れたのに。こいつさえいなければ!
「死ねえええぇーーーー!!」
「む、でかいっ?!」
この距離なら夏菜ちゃんは間に合わない。晴川も避けられない。
「晴川さん!」
力の限りの怨恨を込めて放った光弾はコンクリートの地面をガリガリ削りながらも速度を一定に保ち、完全に晴川を捉えていた。
1発だけで十分な気もしたけど、すっきりしたかったから必要以上に乱射した。
「死ね死ね死ね死ねええええええぇぇーーー!あはは、楽しい……あ、あれ?」
晴川に今のあたしの術を止める力はないはず。誰かが、晴川を守ってる……?
爆煙が晴れたとき晴川の手前に立って障壁を張っていたのは、
ホワイトウイングに補充された新しいメンバーとかそんなことはなくて……少し前にあたしが突き飛ばしてきた、先輩だった。
「月夜女姫?!」
「先輩?!どうして……」
先輩のところから脱走してきたばかりなのに、怒っているようには全然見えなくて、むしろ優しく微笑んでいるようにさえ見える。
その笑顔が今は逆に怖い。
「ダメじゃないの春香ちゃん。こいつを殺したら」
「おい、どういうつもりだこれは」
「あら、命の恩人に対してその言い草はないんじゃないかしら。私が割り込んでなかったら、お前は消し屑も残ってなかったわよ」
先輩は月夜女を殺したホワイトウイング、特にそのリーダーである晴川を殺したいほど憎んでいるんじゃなかったっけ。
なのに今更助けるってどういうことなの……?
「先輩、どうして邪魔するんですか?こいつは先輩の敵のはずじゃ」
「春香ちゃん、とりあえず落ち着こうか」
先輩がまるで仏のような優しい笑顔を浮かべながらあたしに向かって歩いてくる。
頭に手を置いてなだめる様は、昔あたしが友達と喧嘩して先輩に感情に任せて八つ当たりしたときの対応そのままだった。
「今あいつを殺したらもったいないわ。あいつには世間への見せ物役と、私の玩具役と、
 人間が私に支配される様を見届ける役をやってもらわないといけないからね」
「そう、ですよね、殺しちゃったらそれでおしまいですよね。……何なの、私は先輩と話してるの、邪魔しないでくれる?」
あたしが邪魔をしてきた夏菜ちゃんに手を出すより先に、先輩があたしと一緒に倉庫の屋根に転移して2人を見下ろす格好になった。
「私があの2人を大人しくさせてくるから、春香ちゃんはここで待ってて」
2人と対峙した先輩は余裕たっぷりで、あたしの知っている先輩より何倍も輝いて見える。
あたしはそれをだらしなく口を開けて見蕩れてしまっていた。
「晴川さん、どーすんの、逃げるの、戦うの?」
「逃げるぞ!」
あれは晴川がいつも使ってる閃光弾!先輩は懐中電灯を向けられて眩しかったのか咄嗟の対応ができていなかった。

446:予定調和
10/03/13 22:49:27 rW04+53t
「くうっ!また……」
「先輩!あたしが代わりにあいつらを追います!」
「待って春香ちゃん、急ぐ必要はないわ。あの2人で蘭たちを突破するのは無理でしょうから、ゆっくり行きましょう」

あたしが追いついたときには既に2人は蘭ちゃんと白石さん、冬子ちゃんの3人に組み伏せられていた。
蘭ちゃんの強さはあたしも戦ったことがあるからよくわかってる。5人がかりでも蘭ちゃんが手加減してやっと互角だったんだっけ。
2人だといい遊び道具にしかならなかったんじゃないかな。
「蘭、よくやったわね。後で何かご褒美をあげましょうか」
「えへへ、やっぱりお姉様に褒められるのが1番嬉しいな」
蘭ちゃん、先輩に褒められてすごく幸せそうな顔してる。あんなに至福の表情をした蘭ちゃんをあたしは見たことがない。
「月夜女姫様、私も頑張りましたよ!」
夏菜ちゃんを押さえつけている冬子ちゃんも嬉しそうに先輩に報告する。
「あ、そ」
「え……私には何もないんですか?」
「ただの駒が苦労の押し付け?まだ自分の立場がわかっていないようね。お前は私の命令をこなして当たり前なの。
 そこに見返りを求めることが間違ってるのよ」
「なんですってえ……」
さっきの蘭ちゃんへの対応とは正反対だ。ご褒美はなくても、せめて労いの言葉の1つや2つかけてあげてもいいのに。
ここまで露骨に差別されると冬子ちゃんがかわいそうだ。
「冬子様、ここは黙って引いておいたほうが」
白石さんがいきり立つ冬子ちゃんをなだめると、冬子ちゃんは不満を前面に押し出しながらも口をつぐんだ。
「……」
「先輩、冬子ちゃんに冷たく当たりすぎじゃないですか?もう少し優しく接してあげても……」
口に出してから、しまったと思った。あたしだって先輩に逆らえば冬子ちゃんのように酷い扱いをされる可能性だって十分にある。
昔は誰にでも分け隔てなく接してきた先輩が今は他人を平気で虐げているのだから、従順なふりはしておかないと不味い。
でも、あたしに向けられた言葉は叱責の類ではなかった。
「春香ちゃんはまだ完全に黒の一族にはなっていないようね」
「それはひょっとして……心、ですか」
体のほうは自分で鏡を見て確認したとおり、黒の一族の特徴が欠けることなく発現していた。
心のほうは先輩に手を加えられる前に脱走したから、まだそのままの状態にあるということかな。
「今ならホワイトウイングに戻ってその黒の力を使って私を倒そうとすることもできるけど、どうする?」
「そんなの、言うまでもありません」
あたしは白石さんに組み伏せられている晴川の顔面をしゃがみこんで侮蔑の目を向けた。
どうしてあたしは今までこんな男の言いなりになっていたんだろう。憎たらしくて仕方がない。
「どうしてあたしを助けてくれなかったの?」
「あれは明らかに俺たちを釣るための罠だろ、飛び込むわけにはいかない」
「それで言い訳のつもり?それでも危険を顧みずに助けにいくのが正義の味方でしょ?この薄情者」
絶対に許すもんか。そのまま死ぬまで一生、自分の犯した罪に苛まれ続けろ。
「よくもあたしを殺してくれわね。あのときあたしがどんな思いでいたかわかる?
 痛いとか苦しいとかももちろんあるけど、それだけじゃない。
 信じてたあんたに裏切られて、悲しいやら悔しいやらで頭がぐちゃぐちゃになった……」
「つまり、俺が殺そうとする前は邪心のひとかけらもなかったんだな?」
「そうよ!でも今更謝っても遅いわ。あんたが何をしようと、あたしは許さないから」
先輩が近くに寄ってきて、仲介をするかのようにあたしを晴川から遠ざける。
「これでわかったかしら?お前は自らの手で春香ちゃんを黒の一族に寝返らせたのよ。
 春香ちゃんを信じていれば強力な戦力になってたでしょうに、もったいないわね」
「全部、俺のせいだって言うつもりかよ?」
「少しは自分で考えたら?ふふふ……」
先輩がぐいっと顔を近づけてくる。こうして近くでじっくり先輩の顔を見る機会はすごく久しぶりだ。
前から美人だなとは思っていたけど、今は整いすぎて冷たいくらい。綺麗すぎてむしろ怖いという表現がぴったりだ。
先輩に落ち度は全くないけど、正直これは周りから嫉妬されても当たり前だ。アイメイクを一切せずにあの睫毛はあたしも反則だと思うから。

447:予定調和
10/03/13 22:54:15 rW04+53t
「じゃあ春香ちゃん、これから心のほうもしっかり黒の一族になってもらうからね」
「はい……」
「赤坂、今ならまだ間に合う!」
「んう……」
晴川が呼びかけても、春香の返事が帰ってくることはなかった。
春香は月夜女姫に抱えられたまま噛み付かれていて、外から見たのでは意識があるのかどうかすらわからない。
<あれ、さっきと違って体が熱くならない……むしろ冷たい……>
<春香ちゃん、さっきはごめんね。本当はこっちからやるべきなのだけど、
 体の拒絶を押し切って無理矢理体だけ変化させたから、きつかったでしょう?>
<ううん、いいんです、先輩。私こそ脱走なんてしちゃってすみませんでした>
外気に晒されて体が冷えるのとは逆で、体の芯からだんだん四肢が冷たくなっていく今まで経験したことのない不思議な感覚を私は楽しんでいた。
何かあたしの闇界障壁に当たったのか、鈍い衝撃が体に伝わる。
「ちっ、無防備な今なら大丈夫だと思ったんだけどなー」
「こいつ、私が目を離している隙に……申し訳ありません月夜女姫様、ひいっ!?」
絶対に何か罰を受けると思って身構えた冬子だったが、月夜女姫はギロリと睨んだだけで何もしてこなかった。
何も言ってこないことが冬子の恐怖心をさらに煽る。
<もう体が凍えて、血が通ってないみたい……>
<ねえ、春香ちゃん。今の私のこと、どう思ってる?>
<え?そうですねえ……かっこいい、ですかね>
あたしに言わせれば、先輩はアレに関すること以外は非の打ち所がない完璧超人だ。それは今も昔も変わらない。
その高嶺の花っぷりに引いてる人が多いらしいけど、そんな偉大な先輩と関わろうとしないなんてもったいない。
昔の先輩とは色々と変わっちゃったかもしれない。それでも先輩は先輩なわけで。
<どうして?今の私は月夜女姫で、世界を闇で覆いつくそうとしているのよ?>
<自分勝手な理由で黒の一族を駆逐しようとした人間が悪いんです。先輩はそれに反発しただけ>
今になってやっと、初めて月夜女姫と戦ったときに言っていた意味がわかった気がする。
月夜女姫、つまり先輩がたった1人のいじめられる側で、私たちホワイトウイングが大人数のいじめる側だったんだ。
こういう場合、どんな理由があろうといじめる側が悪いに決まってる。
<よかった、春香ちゃん……きてくれたのね>
<できたら、先輩のお手伝いをしたいな。……ダメですか?>
<ふふ、その言葉を待っていたわ。もちろん大歓迎よ>
<やったあ、嬉しい……>
<春香ちゃんの身も心も全部私のもの、それでいいのね?>
<奴隷でも何でも、先輩の好きなようにこき使ってくれていいんですよ。私は先輩のお手伝いができるだけで幸せですから>
束縛の鎖でぎゅうううっと心を締め付けられると嬉しすぎて泣きそうになる。
束縛してくれるということはあの素晴らしい先輩があたしを認めてくれたということだし、
これからずっと憧れの先輩と一緒にいられるということだから。
<じゃあまずは、さっき邪魔をしてきたゴミのお仕置きといきましょうか。勢い余って殺したらダメだからね>
<わかりました、先輩……>

あたしが夏菜ちゃんのすぐ側に立つと、夏菜ちゃんはあたしから顔を背けて呆れたようにため息をついた。
「はあ~、ついに春ちゃんまで黒の一族になっちゃったかあ。で、次は私ってこと?」
「先輩、どうするんですか?」
「お前には特別お世話になったからねえ。その分をみっちり楽しませてもらおうかしら」
「だってさ。楽しみだね、夏菜ちゃん♪」

「……どいつもこいつも毒されちゃって、バカじゃないの」
夏菜がボソッと呟いたその言葉は、冬子に暴行を加える春香の狂声にかき消されて誰の耳にも届くことはなかった。





私が目を覚ますと、周りは全く光のない闇と化していた。両手にがっちりと手錠が嵌められていて動作に制限がかかっているものの、
それ以外は自由に動けるらしかった。少し離れたところでガチャガチャと金属が触れ合う音が聞こえる。

448:予定調和
10/03/13 22:57:09 rW04+53t
「そこにいるのは誰?」
「お、青野か。まさか一緒の部屋に入れられているとは思わなかったな」
よく聞き慣れた、晴川さんの声だ。
「見ての通り真っ暗だ。悪いが魔法の火力を調整して明かりをつけてくれないか」
「こういうのは春ちゃんが得意なんだけどな……」
春ちゃんは今この場にいないし、黒の一族になってしまっている。私はぶっ放すのは得意でも細かい調整はダメなのだ。
「うわっ!?」
案の定失敗して、暴発した魔法が天井に穴を空けてしまった。別に脱出しようとして穴を空けたんじゃないから!
……って言っても多分通用しないんだろうなあ。どうしよ。
しかし天井が壊れて結構大きな音が出たにもかかわらず、外はシーンと静まり返ったままだった。
「どう見ても牢屋だな、ここ」
正面は鉄格子で、隙間から覗いてみても見張りらしきものはいなかった。
それ以外は窓もない普通のコンクリートの壁……じゃなかった、1ヶ所だけ扉がある。
中は水洗トイレだった。
「トイレが設置してあるということは、この監禁は短期間で済ませる気はないと考えたほうがいい。ご丁寧に布団もあるしな」
「そんなあ……ねえ、あの天井の穴から脱出できない?」
風が吹き込んできているから、外に繋がっているのは確実だ。
「このままここにいても何をされるかわからんからな。よし、ここは脱出に賭けよう」
こんなざる警備じゃ、脱出してくれと言っているようなものだ。天井を上に登るとすぐに外に出たらしい……が、
部屋の中と同じく真っ暗だった。月明かりどころか、外灯や建物の明かりすら見えない。ここは人が全然住んでない山奥なのかな?
手錠を繋ぐ鎖は魔法で壊すことができたけど鋼鉄の輪の部分は壊せないのでそのままにしたまま、
私の魔法の明かりを頼りにしばらく闇夜の中を彷徨った。
晴川さんは御神刀や閃光弾など装備を全部奪われて丸腰だし、私の魔法は月夜女姫には通用しない。一刻も早く戦力の増強が必要だ。
いや、そうじゃない。
私が、私自身が強くならなきゃいけないんだ。黒の一族全員を倒せるくらいに強く。この魔法の力をもっと自分のものにするんだ。
「だめだよー、勝手に外に出ちゃ」
開けたところに出た時点で聞きなれた声で背後から話しかけられ、警戒を強めながら2人揃って振り向く。
背中から黒い翼を生やし、一目で人外に堕ちたとわかる姿の春ちゃんが紅い目を細めて笑っていた。
「しまった、つけられた!?」
「つけてないよ。埋め込んだものはあるけど……発信機なら。生体エネルギーで動く最新型らしいよ。
 だからあんたたちがどこにいようとわかるってわけ」
「いつの間に……」
逃げても無駄だとわかった以上、ここで春ちゃんを倒すしかない。
御神刀は今ないから戦闘不能にして拘束までしかできないけど、うまくいけば人質として使える。
「赤坂、お前1人か?」
「そうよ。本当はどうしようもないゴミ2人と一緒に来るはずだったんだけど、
 あたしが殺してしまいそうだからって先輩に言って1人にしてもらったの。あの2人、力もないくせに生意気なのよ。
 おまけに先輩にやたらと突っかかるし」
「ゴミ2人って……白石と黒松のことか。仮にも仲間なのによくそんなことが言えるな」
本人がいないから好き勝手に言っているわけではなさそうだ。この言い方だと本人の前でも平気で罵っているに違いない。
正義の味方としてのやる気はイマイチだった春ちゃんだったけど、仲間意識だけは4人の中の誰よりも強かったのに。
「仲間?あの2人とはそんな対等な関係じゃないよ。ゴミじゃないとしたら……駒、かな。
 何でも言うこと聞いてくれて便利だよ、あんまり役に立たないけどね」
さりげなく逆手で髪の毛を耳にかける仕草が上品で、子供っぽさが抜け切れてなかった以前の春ちゃんとは違う。
私より1つ下には全然見えない。裾が膝上までと短い真っ赤なショートラインの豪奢なドレスも今の春ちゃんにはよく似合っている。
本当にこれが春ちゃんなの?
威圧感、というよりこれは邪気……全身にこれを浴びているだけで悪寒と吐き気がしてきて、気分が悪くなってくる。
「ほら、どうしたの?折角あたしが先手を取らせてあげようと思って待ってるのに、もう戦う前から諦めてるの?」
春ちゃんは自分の闇界障壁の強さを過信して油断してる。チャンスだ。
あいつらの闇界障壁みたいな全方位型のバリアは1点集中攻撃に弱いのがお約束……のはずなんだけど、それはダメだった。ならば!

449:予定調和
10/03/13 23:00:07 rW04+53t
「とっておきを見せてあげる!」
「夏菜ちゃんの技なんてもう全部見てるよ。今更とっておきも切札もないでしょ?」
「アレをやる気か」
「そう、アレよ。晴川さんは危ないから離れてて」
月夜女姫と初めて対決した日からいざというときのために皆に隠れて練習してたんだ。私の機動力を最大限に生かした全包囲攻撃。
攻撃中に敵の周りを縦横無尽に駆け回ることにより、敵を翻弄して真正面からのまともな防御はさせない。
「アクセラレイト!」
力の全てを足に込め、誰も追いつけないほどに速く。
「え、ちょっ……」
春ちゃんは私の動きについてこれてない。目で追うことすらできていなかった。
「身体能力は上がっても、戦闘技術はそのままみたいね!」
攻撃の瞬間だけ、足のブースターを切る。攻撃が終わった直後から再び加速。
この切り替えを早くスムーズにできるようになるのに私がどれだけ修練を積んだと思ってんの。これを打ち破れるものなら、打ち破ってみろ!
「くっ……」
「青野、いけるぞ!そのまま押し切れ!」
余裕ぶっていた春ちゃんに初めて焦りの色が見えた。さらに闇界障壁にいくつも亀裂が走る。ここまでくればもう少し!
「……フフフ、闇界障壁にヒビ入れただけで嬉しそうにしちゃってさあ」
春ちゃんの纏う雰囲気が一変した。
手を額に当てながら不敵な顔をちらっと見せて、もう一方の片手から赤紫の光弾を何発も撃ってきた。
私のレーザーはそれに簡単に打ち負けて、一斉に私自身に襲い掛かってくる。焦っているように見えたのはフェイクだったの?!
数が多い上に1つ1つが大きくて、避けきれない!!
「うあ……!!」
「青野!大丈夫か!?」
つ、強すぎ……模擬戦じゃ春ちゃんには1回も負けたことなかったのに、この違いは何なの……。
「残念でしたー。なーにが『アクセラレイト!』よ。小手先の技に頼ったところで絶望的な能力差は埋めようがないのに」
「くそ、以前の赤坂とは次元が違いすぎる……」
以前の春ちゃんの光弾は威力が低く、牽制以外には使い道がなかったくらいだ。それが黒の力を得ただけでこれほどまでに変わるものなの?
「この力、ほんとにいい。この力があれば全部あたしの思い通り。誰もあたしに逆らえないの、アーハッハッハッハ!」
あり余る力に溺れ、月夜女姫にいい様に使われていることにすら気が付かない哀れな春ちゃんの姿がそこにあった。
「春ちゃん、自分が何やってるかわかってんの?」
「わかってるよ。正義面して先輩を殺そうとしてたり、なあんにも考えずにそれについていったりしてるあんたたち2人より、余程ね!」
真正面から説得にかかってもダメだ。まずその高慢な態度を力ずくで止められないと話にならない。
「変わったな、赤坂。その傲岸不遜な態度、月夜女姫にそっくりだ」
哀れみを込めて晴川さんが言った言葉に、春ちゃんは逆に嬉しそうに目を細めた。
何を考えているのか、春ちゃんは口の中でクスクスと笑い声を上げる。
「それはあたしが先輩に近付いたってこと?憧れの先輩に似てきたって言われるのは悪くないね。じゃあ帰ろっか、2人とも」
こうして、私たちは再びあの真っ暗な牢獄の中に逆戻りしてしまった。



脱獄を実行した割には何の懲罰もなく、あっさりと晴川さんは部屋に戻された。
「で、私は特別待遇ってわけ?」
「特別待遇ってわけじゃないわ。少し操り人形気分を味わってもらおうと思ってね」
魔眼を使うつもりね……わざわざ予告してくれるとはありがたい。
直接相手の目を見なければ絶対にかからないんだから、顔を逸らして目を瞑っていれば言いなりになんてならないはず。
「ほら、顔を逸らさない」
片手なのにすごい力だ。でも目を開かなければ魔眼も通用しまい。
その考えが浅はかだったことをすぐに思い知らされる。
硬く瞑っていた瞼が手によって強引に開かれ、私の左目は不意にグワッと見開かれた。
「やばっ……」
眼球を動かせばまだ抵抗できたが、そこまで時間の猶予は与えられなかった。目を逸らそうと思ったときにはもう目が動かせない。

450:予定調和
10/03/13 23:02:38 rW04+53t
「ふふふ……これでお前は私の傀儡ね。返事は?」
「はい……」
やられた……自意識はそのままで、全身の自由を奪われた。
自分の意思だと指一本動かせないのに、月夜女姫の言うことは体が勝手に動いて命令を実行してしまう。
何をやらせる気なの……?

「今度は逃げたりしないようにね。またきついお仕置きをされたくはないでしょ?」
首輪に繋がれている長い鎖を鉄格子に繋ぎ、再び晴川さんと牢屋で2人きりになった。
「お仕置きって言ってもなあ……別に何もなかったじゃないか。青野、お前何かされたのか?」
「いや、全然」
嘘付け、現にこうやって操られてるじゃん!と訂正しようにも、それができないもどかしさだけが残る。
早く私が操られてるってことを知らせないと……体の主導権は月夜女姫が握ってるからそれもできない。
「はあ……はあ……」
「どうした青野、さっきから息が荒いが風邪でも引いたのか?」
「平、気……大丈夫、だから。ほら……」
手にともした明かりで自分の顔を照らす。鏡でわざわざ自分の顔を見て確認しなくても、顔の筋肉が緩みきっているのが感じ取れる。
熱病にうなされているというよりは、興奮に頬を紅潮させているといったほうが近い。
「顔がすごくいやらしいんだが。ああなるほど『あっち』かよ。まあ1人で勝手にやるのは構わんが、無駄な体力を使うなよ」
いつもの私ならそんなだらけた顔しないでしょ、いい加減気付いてよ!
さらに口から舌を垂らしたまま、四つんばいになって晴川さんに近付いていく。
もう、やだ……こんなことしてるとほんとの犬みたいじゃない!
そうこうしているうちに晴川さんの背後から正面に両手を回して、抱きつく。これ、明らかに晴川さんに何かしようとしてる……。
「うふふ、捕まえたあ……」
これが自分なのかとびっくりするくらい色っぽい声で晴川さんを官能の世界へと誘う。
バカね、晴川さんにそんな色仕掛けが通用すると思ったら大間違いよ!
「こら、やめろ、暑苦しい」
ぐわっと口を大きく開けて、その口を晴川さんの首に近づけて―これって、まさか。
「あ~む!」
がぶりと、いった。
「ぐあああっ!?」
操られるままに晴川さんの首筋に噛み付き、
予め砂糖が入ってるコンデンスミルクにさらに砂糖を加えたようなどろっとした甘ったるい味が口いっぱいに広がる。
私は甘いものが大嫌いだからすごく不味い……気持ち悪くて吐き出したいけど、それもできない。
やっとのことで私を振りほどいた晴川さんは、今の私が放つ異様な雰囲気に気圧されてる。
「あ、ごめん。痛かった?殺すまで吸い尽くすつもりはないから、大人しく吸わせてよ、ね?」
「……こいつ、操られてやがる」
これがお仕置き……こうやって、回りくどいやり方で私と晴川さんの仲を引き裂こうってわけね。
こんなもの、私くらい精神力が強ければ……んん……。
「逃げられないよ。晴川さんだって鎖に繋がれてるのは一緒でしょ?」
鎖を手繰り寄せて晴川さんとの間合いを詰めていく。晴川さんは今武器を持ってないのに、
私が魔法で一方的にいたぶるつもりなの?どうにかしないと……。
「この、目ぇ覚ませ!!」
小気味いい音が部屋に反響した。
「痛た……あ、魔眼解けてる」
「ふう、ビンタ程度で解けるくらいの強さの魔眼でよかった。前回お前が操られたみたいに数日拘束するわけにはいかないからな。
 その前にあのまま青野に殺されるほうが早かったかも知れん」
暴走してチームの皆に迷惑をかけた嫌な記憶が頭をよぎる。
あの後しばらく「バーサーカナ」なんてあだ名が付けられて皆に散々弄られたのに、晴川さんまであのことを思い出させないで欲しい。

451:予定調和
10/03/13 23:05:47 rW04+53t
「ごめん、晴川さん」
「もういい、不可抗力だったんだろ?」
「そうだけど……」
「まずは状況確認が先だ」
魔法で周囲を明るく照らして確認してみると、最初に入れられた牢屋と全く同じつくりだった。
ただ、今回は拘束具が手錠から首輪に変わっている。鎖の壊れた手錠はそのままだ。
首輪自体は手錠と似たような素材でずっしりと重くて簡単には壊せそうになかったけど、首輪と鉄格子を繋いでいる長い鎖は何とかなりそうだった。
「でもこれ壊しても私たちの行動が筒抜けだから意味ないかあ……」
「それにまたアレをさせられるのはお互いきついしな。ここは大人しくしておいたほうがいいか」
晴川さんは私を先に寝かせてくれようとしたが、
これから何をされるのかという緊張と寝ている間にまた暗示をかけられたりしないように警戒していたから、結局一睡もできなかった。





この続きは次回までまったりお待ちください。

452:名無しさん@ピンキー
10/03/13 23:10:02 1qwJxiJp
ちょうど遭遇。
GJ。

453:名無しさん@ピンキー
10/03/14 00:08:23 qlWdD6Xx
まったり待てとか……もっと腕を上げてから言ってくれ

454:名無しさん@ピンキー
10/03/14 00:11:41 Ev7UOMAL

バーサーカナってパワポケ11かw

455:名無しさん@ピンキー
10/03/14 04:26:51 PPNzFElu
たまたまコレクターユイを全話見る機会があったが、
エビルハルナって一瞬で終了なのな
しかも意識のないただの操り人形で全く喋らないし、残念
精神従属属性じゃなくてコス変化属性向けか~

456:名無しさん@ピンキー
10/03/14 10:43:28 RVRTYGuN
>>455
一応、「消えてなくなれー!」みたいなセリフは喋ってたぞ

457:名無しさん@ピンキー
10/03/14 11:42:48 hf2pg+Zx
>>451
全然抜けない。長文荒らし消えろ

458:名無しさん@ピンキー
10/03/14 12:09:11 KyyBVJZG
>>451
よかったよ。乙

459:名無しさん@ピンキー
10/03/14 12:10:32 +1E4To52
バカテス8話がMC回だった

悪魔コス瑞希(人格も変化)
URLリンク(f40.aaa.livedoor.jp)

悪堕ちミニキャラ(目色変化など)
URLリンク(f40.aaa.livedoor.jp)
URLリンク(f40.aaa.livedoor.jp)

悪コス変化シーン後の瑞希
URLリンク(f40.aaa.livedoor.jp)

瑞希の虚ろ目(これは何故か解除に近いシーンなんだが)
URLリンク(f40.aaa.livedoor.jp)

460:名無しさん@ピンキー
10/03/14 12:11:54 +1E4To52
すまんURIをアドレスバーにコピペで

461:名無しさん@ピンキー
10/03/14 12:21:29 JupMJMDG
>>451
味方サイドを利用して落とすのっていいね

462:名無しさん@ピンキー
10/03/14 13:07:33 3HK/8VXt
やだ…なに…この自演擁護祭り

463:名無しさん@ピンキー
10/03/14 13:57:10 Sjr+Nd8K
久本を洗脳してアンチ創価にしてみたら面白そう
抜けないけど

464:名無しさん@ピンキー
10/03/14 14:54:09 Hff7q8zC
久本が洗脳されると逆墜ちじゃね?
普通の娘が久本に洗脳される方が悪墜ちらしいだろ



465:名無しさん@ピンキー
10/03/14 18:48:51 ZpLXGdNt
レベルが低いSSは荒らしだな
スレが簡単に荒れるし

466:名無しさん@ピンキー
10/03/14 18:58:27 uenh934H
>>451
GJ。晴川の行動が予想通りすぎて笑った。
ヒーローボスと敵サイドの両方が悪ってのはおもしろい。
正義っぽいのはある意味操られてた女の子5人だが…バーサーカナが陥落して、このまま正義が滅びてしまうのかな。

467:名無しさん@ピンキー
10/03/14 19:00:55 ItdQh3ek
批判来たら被せるようにフォローしてるのは必死に見えてかえってSSアンチ臭いからスルーしとけよ。

468:名無しさん@ピンキー
10/03/14 19:08:27 ZpLXGdNt
一人が自作自演でGJしてるんだろ
批判レスきたら光速でGJ
気持ち悪い

469:名無しさん@ピンキー
10/03/14 19:31:54 t8LZ9Edb
挑発や扇動などで荒らしの闘場になるスレッドpart35へようこそ

470:名無しさん@ピンキー
10/03/14 19:51:04 JupMJMDG
すまん俺のGJレスが迷惑をかけてしまったようだ
ただ普通に俺は好きなんだけどねぇこのSS

471:名無しさん@ピンキー
10/03/14 19:56:54 Jt9zF6xL
触れるのが一番迷惑だと気づいて

472:名無しさん@ピンキー
10/03/14 20:01:23 hScNkzn/
普段ROMだったがレスしてみる
SS書いたら荒れるとかこのスレおかしいだろww
誰も書かなきゃ書かないで誰か書けって言うし
このままだと誰も書かなくなってこのスレ自体なくなるんじゃね?
それか>>1のテンプレ変えたほうがいい気がする

473:名無しさん@ピンキー
10/03/14 20:11:51 WFy9yNQs
この悪のスレを洗脳しようと企むもう一方の悪……
これもまた悪対悪の構図か……

474:名無しさん@ピンキー
10/03/14 20:13:55 sGfg5USb
こないだの「もうこのスレSSなんていらんだろ」って言ってた奴に、そんなわけあるかここはエロパロ板だと
猛反発していた人達はどこへ行っちゃったんだろうねえ

まあ件のSSが荒いのは確かだが、それでも今回は頑張った方だと思う
正義サイドの疑心暗鬼から悪堕ちの引き金を引かせるというのは結構ありだしな

ただ晴川がド外道すぎるのがちょっとマイナスに作用している気がする
カタルシスが半減してしまっているというか
今後夏菜をどう動かすか、オチをどういう形に持って行くか気になるな

475:名無しさん@ピンキー
10/03/14 20:20:40 Hff7q8zC
まさに連鎖堕ち

476:名無しさん@ピンキー
10/03/14 20:35:14 gu6c1wWz
全ての意見の持ち主が全ての時間に一様に待機しているわけがないだろうに
ましてや、エロパロ板でSSが完全に放逐されることなんてありえないと思ってる人も多いだろうから
いちいち反論して長引かせるよりは無視というスタンスの人もいるだろう

477:名無しさん@ピンキー
10/03/14 20:42:27 Yx1YFrD4
>>476
その通り
批判コメなんて書いたら余計長引くんだし興味ないならスルーするべき

478:名無しさん@ピンキー
10/03/14 20:46:32 WFy9yNQs
まあ冷静に見たらGJに対してやたら絡んでくるのが一人いるだけだしな
そいつだけスルーしとけば良い話

479:名無しさん@ピンキー
10/03/14 20:48:48 FYDVCsOa
興味のないSSはスルーしてるというかNGに入れてるし自然にスルーだな
エロパロ板の作者の人は大抵タイトルやトリつけてくれてるから
NGネーム使えば連載物は勝手に消えてくれるし

480:名無しさん@ピンキー
10/03/14 20:59:11 jEaBtEtB
個人的には好き
続きを期待しています

481:名無しさん@ピンキー
10/03/14 21:07:17 ZpLXGdNt
ここはいつになっても学習しないスレだな
『レベルが低い』SSが投下されると荒れるように洗脳されてるのかよ
どんだけ贅沢な乞食なんだよ

482:名無しさん@ピンキー
10/03/14 21:12:54 +fB7Ao0T
正義サイドのボスがクズな場合、悪堕ちじゃなくて単なる寝返りだからなあ

483:名無しさん@ピンキー
10/03/14 21:36:51 /XTxRMFl
個人的に合わなかったSSだからスルーしてるってやつは問題ない
GJしてるやつも、もちろん問題ない

マジキチはスルーしてるやつにGJがどうとか言ったりSSそのものにわざわざ批判的なことをレスるやつ

484:名無しさん@ピンキー
10/03/14 22:47:31 cG51VNPu
>>481
いや、むしろレベルの高いSSはもっと荒れるよw

SS嫌いなやつからすれば、そういうSSこそ一番排斥されるべき存在だろうしな
レベルが低いSSは皆から叩かれ、誰も弁護せず、結果としてほとんど荒れないw

本当にレベルが低いSSは警戒すらされず皆からスルーされ、結果やっぱり荒れないw

485:名無しさん@ピンキー
10/03/15 01:01:54 JPWskjwQ
今更だが、ポケモンレンジャー光の軌跡に出るポケモンナッパーズの持つ小手って洗脳ですよね?
(ポケモンレンジャーの持つスタイラーも、怯えたポケモンを正常化させ従わせたり、疲れたポケモンを正常化させ従わせたり、色んな意味で興奮したポケモンを正常化させ従わせたり、)
あと、ワンピースのオカマ王の性転換させる技の後も洗脳したかの様にベラベラとお答えしたり。

486:名無しさん@ピンキー
10/03/15 01:33:30 +7/G6RL3
>>485
スレ違い

ここは、調教や洗脳などで 悪の奴隷になるヒロイン スレ
                  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


487:名無しさん@ピンキー
10/03/15 02:07:17 3QVL1s+L
URLリンク(jun.2chan.net)

488:名無しさん@ピンキー
10/03/15 02:43:36 vYFbGBnp
自分の悪巧みをペラペラと得意げに話す>>484であった

489:名無しさん@ピンキー
10/03/15 02:53:01 xDxkQ0GQ
URLリンク(blog.livedoor.jp)

春ちゃん悪堕ち

490:名無しさん@ピンキー
10/03/15 06:49:01 vjy6w+AO
>>484
つーか本当にSS嫌いな奴は読まないし話に触れもしないだろ。
単に荒らしたい奴にとってホットなネタがSSなだけ。
他のスレでもSS叩きは普通にあるけどね。大体そういう場合は特定の職人個人が対象なんだよな。
ここの場合はSSの存在そのものをネタにしてるのが他とちょっと違うね。

491:名無しさん@ピンキー
10/03/15 08:29:31 1hxTD54L
>>486
横から失礼、男性や人外も扱うスレはないんですか?できれば健全鯖で

492:名無しさん@ピンキー
10/03/15 09:22:58 zpUZl2dc
ないんじゃない?
いくら雑食のジャンルとはいえ
野郎相手で健全ならさすがに独立した方がいいんじゃないか

493:名無しさん@ピンキー
10/03/15 10:56:33 yQ/bk/sl
>>491
ここでいうのもなんだがニッチだなw

494:名無しさん@ピンキー
10/03/15 11:05:56 nNbonbzQ
>>485
ポケモンは基本システムからして洗脳。
野生生物を叩きのめして抵抗力を下げて、洗脳装置(モンスターボール)にかけて支配する。

>>486
メス型ポケモンなら漏れ的にはヒロインと認めるが。

495:名無しさん@ピンキー
10/03/15 11:06:37 CSWmRIKb
>>491
いらっしゃいw

催眠・洗脳・操りスレッド
URLリンク(babiru.bbspink.com)

496:名無しさん@ピンキー
10/03/15 14:47:25 CgWykrVC
洗脳とか関係ないけど黒星紅白のブログのティナがよかった

497:名無しさん@ピンキー
10/03/15 18:15:31 79UScHcJ
>>496
情報㌧クス!!!!!!!!!!
ケフカ×ティナ好きにはたまらん一枚だった。

498:名無しさん@ピンキー
10/03/15 19:42:25 IXy00xE6
セラムンネタ、エロ無し

499:蘇る闇
10/03/15 19:43:05 IXy00xE6
※一応このお話はセーラームーン S 第123話 「破滅の影! 沈黙のメシアの目覚め」
の後のifとして書いています

「準備は全て整いました…」
 どことも知れぬ闇の中、ダイモーンに心を奪われた土萌教授は、ミストレス・ナインに告げた。
「あとは沈黙のメシアであるあなたのその手で、この装置に聖杯をセットしていただければ…
闇の光がタウ星系を照らし出します。我らが偉大なるマスター、異次元エネルギー生命体
ファラオ・ナインティを導くためには、その輝きが必要…ファラオ・ナインティがこの宇宙に
出現するとき、全ては崩壊し、地球は沈黙に包まれる…」
 自分の言葉に酔いしれるように、説明を続ける教授。
 だがミストレス・ナインは彼を冷ややかに見やると、言った。
「その必要はない」
「今、何とおっしゃいました?」
「その必要はない、と言ったのだ、哀れなるわが下僕よ」
 ミストレス・ナインは薄く笑みを浮かべ、宙に手を差しのべる。
 すると、そこに映像が浮かび上がった。
 ピュアな心を奪われ、死の淵にあるちびうさと、その魂を現世につなぎ止めようと必死の衛の姿だ。
「これは…あのときの少女?」
「そう…この娘には、ピュアな心の裏に、底知れぬ闇の力をも備えている…
 その力を解放すれば、ファラオ・ナインティは苦もなくこの地球に出現することができる。
 この娘とひとつになることによって、な…」
 ミストレス・ナインの笑みが深くなる。
 しかしそれは一切の感情が抜け落ちたあとのような、空虚で、そして冷たい笑みだ。
「娘のもとへは、私が直々に向かう。お前はセーラー戦士の邪魔が入らぬよう、ここで遊んでやるがよい」
「かしこまりました、ミストレス・ナイン様…」
 その言葉と共に、ミストレス・ナインの姿が消える。あとには、深々と頭を垂れたままの、
土萌教授の姿だけが残った。


 地場衛の住むマンション。
 彼は戦いに赴いたセーラー戦士たちと離れ、意識をなくしたちびうさと共にいた。
 衛の生命力をちびうさに注ぎ込み、なんとか彼女を生かしているため、
彼はここに残るしかなかったのだ。
「ちびうさ…」
 自らの娘に対する愛情を込めて呼びかける衛。と、突然明かりが落ちたかのように、
部屋が暗闇に包まれた。
「これは、いったい…」
「ちびうさちゃん…」
 どこからともなく、声が聞こえる。
「ちびうさちゃん…見つけた…」
 闇を割って、すらりと背の高い女性が姿を現した。
 床に広がるほど長く、妖艶ともいえるほどつややかな黒髪、胸元の開いたドレス、
そして額には黒い五芒星…沈黙のメシア、ミストレス・ナインの姿がそこにあった。
「お前は…!?」
 衛がちびうさの体を抱きしめ、ミストレス・ナインをにらみつける。
「地球の男よ、お前の役目は終わった」
 かっと目を見開くミストレス・ナイン。それと同時に、衝撃波が衛を襲う。
「くうっ!」
 なすすべもなく吹き飛ばされ、壁に叩きつけられる衛。しかも、ちびうさの姿はその手の中にない。
「ちびうさっ!!」
 意識のないまま、宙に浮かんだちびうさの体。
 それが、音もなくミストレス・ナインのもとへ吸い寄せられていく。
「さあ、ちびうさちゃん、私と一緒に、素敵な夢を見ましょう…」
 ちびうさの体を抱きとめ、ミストレス・ナインがつぶやく。
「くそっ、その手を離せ! ちびうさ、ちびうさッ!!」
 衛の叫びも虚しく、ミストレス・ナインの姿は、現われたときと同様に、闇の中に消えていく。
「ちびうさーッ!!」
 衛の悲痛な叫びが、闇の中、虚ろに響いた。


500:蘇る闇
10/03/15 19:43:43 IXy00xE6

 ひんやりとした感覚が、全身を包んでいる。
 それに、自分を抱いている、柔らかな感触。
 心地よいその感触に、全てを委ねたくなる。
「ちびうさちゃん…ちびうさちゃん…」
 優しげな声が聞こえる。
 ずっとこの感触に身を委ねていたい、という思いと、その声に応えたい、という思いが交錯する。
 やがて、後者が前者に打ち勝ち、少女は目を開いた。
「ほたる、ちゃん…?」
 目を覚ましたちびうさに微笑みかける少女の姿に、彼女は声を漏らす。
 ちびうさは重力のない空間で、ほたるに抱きしめられていた。
「あたし…どうして…?」
 混乱するちびうさの頭に、断片的な記憶がよみがえる。
 そうだ、ほたるちゃんのことが心配で、あたしは…
 思い出そうとするちびうさを遮るように、ほたるが言った。
「ちびうさちゃん、ありがとう」
「ほたるちゃん?」
「ちびうさちゃんのおかげで、私は本当の自分に目覚めることができたの」
「ほんとうの、じぶん…?」
「そう、運命を受け入れて、あるべき自分に戻ったの」
「ほたるちゃん…その、大丈夫なの?」
「ええ、私はもう大丈夫」
 ほたるはまた微笑んだ。
 そのことが嬉しくて、ちびうさも微笑みを返す。
「だから、そのお礼に、ちびうさちゃんにあげたいものがあるの」
「お礼? いいよ、そんなの…ほたるちゃんが元気なら、それだけで」
 その言葉に、ほたるが首を振る。
 にこやかなままのほたるの表情に、得体の知れない影が差した。
「フフ…ちびうさちゃん、あなたにも、本当の自分を教えてあげる」
 その言葉と同時に、ほたるの体が変化をはじめる。
 背が伸び、髪は長く、体は大人の女性のものに、制服はドレスに。
 ミストレス・ナインの姿になったほたるが、微笑む。
「なんで…ほたるちゃん、なんだか怖いよ…」
「怖くなんてないでしょう? だって、ちびうさちゃんも同じだもの」
「おな、じ…?」
「そう、闇の力が大好き、破壊が大好き、沈黙が大好き」
「ちがう…あたしは、そんなんじゃ…」
「いいえ、違わない…思い出すの…闇の力の快感を…」
 ミストレス・ナインの言葉と同時に、ちびうさの体の周囲を闇のエナジーがとりまく。
 その闇に、ちびうさは、どこか懐かしいものを感じていた。
 そうだ。この感触は、前にも味わったことがある。
「ちびうさちゃん、思い出して…あなたは力を振るうことに、悦びを感じていた…そうでしょう?」
「そう、かも…」
 自分の中に封じこめ、夢のなかの出来事のように、ぼんやりとしか認識していない過去。
 ワイズマンの甘言に騙され、セーラー戦士に戦いを挑んだときのことが、頭に浮かぶ。
 けれど、それは本当に、騙されただけのことだっただろうか?
 強大になった自身の力を母やその友人に振るうたび、感じていたモノ。
 それは、力を振るうことで、自分の存在を認めさせることができる、そんな思い。
 そして、その奥底にあるのは…
 自分の中に眠っていた何かが覚醒していくのを、感じる。
 それは、ずっと否定してきた、しかし紛れもない自分自身。


501:蘇る闇
10/03/15 19:44:15 IXy00xE6

「ちびうさちゃんは、友達の私に嘘なんてつかない、そうでしょう?」
 こくり。
 ミストレス・ナインの問いかけに、ちびうさは、自然にうなずいていた。
 そうだ。自分は、ほたるに嘘をついたりしない。
「じゃあ、もう一度聞くね? ちびうさちゃんは、力を振るうのが大好き」
「うん…あたしは、力を振るうのが、好き…」
「ちびうさちゃんは、闇が好き」
「あたしは、闇が好き」
 口にするたび、ちびうさの心にえもいわれぬ開放感と、快感が生まれる。
「破壊が好き」
「あたしは、破壊が好き」
 押さえてきた感情がほとばしるのを感じる。
「そして、沈黙が好き」
「そう、あたしは、沈黙が好き」
 自分が、生まれ変わるような気分。
 その果てにあるものを、ちびうさは知っていた。
「さあ、言って。あなたは、何者?」
「あたしは、あたしは…!!」
 快感の頂点で、ちびうさは叫ぶ。
「暗黒の女王、ブラックレディ!!」
 瞬間、闇のエナジーが彼女を包み込み、闇の繭を形成する。
 ちびうさの形をしたその繭は、瞬く間に成長し、妖艶なボディラインを持つ女性の姿へと変わる。
 闇の繭が、闇の光とでも呼ぶべきものを激しく放つ。
 それと同時に、空間を割り、不定形の何かが姿を現した。
「ファラオ・ナインティ、今こそ、この宇宙へ!!」
 ミストレス・ナインの叫びに応えるように、闇の繭へ向かうファラオ・ナインティ。
『それ』は闇の繭にとりついたかと思うと、ずるずるとその内部に侵入していく。
 永劫に近い時か、それとも一瞬か。
 ファラオ・ナインティであったモノの全てが、闇の繭に収まる。
 期待に満ちた目で見守るミストレス・ナインの前で、とうとう繭にヒビが入る。
 ヒビはあっという間に繭全体に広がり、そして、弾けた。
 後に残ったのは、美しく成長したちびうさの姿。
 深くスリットの入った黒いドレスを身に纏ったその姿は、かつてのブラックレディそのもの。
 一つだけ違うのは、その額に黒く輝くのが逆三日月ではなく、五芒星である点だ。
「マスター・ファラオ・ナインティ。ようこそ、地球へおいでくださいました」
 ミストレス・ナインが膝をつき、頭を垂れる。
 だが成長したちびうさは、そんな彼女の顎に手をかけ、上を向かせた。
 見あげたミストレス・ナインの目に、微笑む
「あたしのことは、ブラックレディと呼びなさい、ミストレス・ナイン」
 そう告げたブラックレディは、ミストレス・ナインを促し、立たせる。
 そうして、突然、その唇を奪った。
「あむ、ん、んちゅ、ちゅぅ…」
 一瞬、驚きに見開かれたミストレス・ナインの目が、幸福と快楽に染まる。
 体の緊張が、すぐにブラックレディに身を委ねるものへと変わる。
 ブラックレディの舌使いに合わせ、はじめはおずおずと、次第に激しく、
彼女を求めていく。
 どのくらいの時間、そうしていただろう。
 ようやく体を離した二人だったが、ミストレス・ナインはただ荒く息をつきながら、
それでも物欲しげな視線をブラックレディの唇に送っていた。
「フフフ…これは、目覚めさせてくれたお礼よ…『ほたるちゃん』」
「はぁ、ん…身に余る光栄ですわ。ブラックレディ様」
「さあ、行きましょう。この世界を、闇で満たすの」
「仰せのままに、我がマスター」
 そうして二人の姿は消えた。
 あとに残ったのは、どこまでも続く、闇だけだ。
 
 終

502:名無しさん@ピンキー
10/03/15 20:09:48 UjagH4wk
GJ!
そして懐かしい!

503:名無しさん@ピンキー
10/03/15 20:11:49 eoTFlOIQ
>>499-501
乙です
受けかと思われたちびうさが一転…という訳ですな
こういうオチも面白いw

504:名無しさん@ピンキー
10/03/15 20:13:18 OUTQehtZ
たまにはオリジナルじゃないのもいいNE
パロディだと筆力をカバーできるしNE

505:名無しさん@ピンキー
10/03/15 21:11:41 PS10s6uY
GJ
やっぱ改行が適度だと読みやすいね

506:名無しさん@ピンキー
10/03/15 23:17:56 vYFbGBnp
いいねぇ
次はもうちょい長文で頼む

507:名無しさん@ピンキー
10/03/16 00:25:50 RgggnX/B
いまさらセーラームーンとな?

いいぞもっとやれ!

508:名無しさん@ピンキー
10/03/16 02:13:29 8r0p+TH4
なんでそういう書き方しかできないのかな

509:名無しさん@ピンキー
10/03/16 02:46:06 qgbz4Hnx
解らないのか?洗脳されてるからに決まってるだろ。

510:名無しさん@ピンキー
10/03/16 05:33:03 ZY+vRhfP
だから男を(ry


だが男の娘を悪に堕として
最終的に性転換させるならいける

511:名無しさん@ピンキー
10/03/16 07:02:27 Ud5+uMf/
510がキモすぎてこのスレが臭くなったわ

512:名無しさん@ピンキー
10/03/16 07:26:28 yYzkHcfv
他にも言ってる人いたけど、なんとか戦隊とかのグループ系での悪堕ちはいいな

513:名無しさん@ピンキー
10/03/16 12:24:50 xncRKSre
虐襲4のテキスト募集始まったな

514:名無しさん@ピンキー
10/03/16 12:26:47 v3KFHJQD
感染4も出してぇ

515:名無しさん@ピンキー
10/03/16 18:17:18 0oRX73yM
>>496みたいな白目が黒いの最近よく見るけど元ネタみたいなのがあるの?
それとも昔からよくある表現なの?

516:名無しさん@ピンキー
10/03/17 02:00:46 EZYBdc/D
>>514
ナゼググらない?

517:名無しさん@ピンキー
10/03/17 02:20:45 oh4i/m2p
>>498
>エロ無し
残念。十分エロい。
そして素晴らしい。

518:名無しさん@ピンキー
10/03/17 06:39:00 /XStRaFj
今日のテレビで「セレブ令嬢誘拐洗脳」というドキュメンタリーがあるので期待している

519:名無しさん@ピンキー
10/03/17 07:17:34 b9Ve0mXc
>518
ストックホルム症候群のことやるだけじゃね?

520:名無しさん@ピンキー
10/03/17 15:59:35 nehpTVAD
ああセレブが洗脳でゲリラにか。
あれはアメだかがどんだけ酷いかとかを延々をやって罪の意識で満たし
彼らと共に戦う!&彼らの為に身体をもって謝罪みたく
謝罪出来ると喜々として身体を差し出してそうだわ。

救出されて、洗脳というか順応が解けたら解けたで、トラウマに苦しむんだろな。

521:名無しさん@ピンキー
10/03/17 16:18:04 HdO/M531
それ前もテレビでやってたな。確かその後、売れない女優になった奴だろ

522:名無しさん@ピンキー
10/03/17 18:50:41 pFhxQm7r
よし録画する

523:名無しさん@ピンキー
10/03/17 20:39:32 22nuADXb
きょうも自作自演する仕事がはじまったお………

524:名無しさん@ピンキー
10/03/17 22:07:50 8GjWEttg
書く前に設定を考えるんだけど
だんだん形になってきたと思ったらキカイダーとめっちゃかぶってることに気が付いた

525:名無しさん@ピンキー
10/03/17 22:14:03 T+I4NkgS
ゼロワンにすればおっけー

526:名無しさん@ピンキー
10/03/17 23:26:48 VfHtezEF
うぅ…お願いです、感想をください
【では我々の望む悪堕ちSSを書くと誓うか?】
あなたたちに従えば感想をもらえるとでも言うの!?
あたしが書きたいのはただのSSじゃない、そう…作品なのよ
【SS書きとして今までどれほどのGJをもらった?住人はお前にGJと言ってくれたか?
むしろ高尚乙ではないのか?】
それは…良い物を書けば自然と感想はもらえるわ
【SSなど必要ないという流れになっても?】
違う!ここはエロパロ板。SS書きがいちゃいけない理由はない…はず…なのに…
【お前の書くものは単なる自己満足ではない言えるか?自分だけが楽しんで他人を置き去りにしたことがないとは言わせないぞ】
うぁっ…スルーしないで…
【さぁどうする、一言言えば良い。我々に忠誠を】
………お願いです、私にコメントをください
ください!GJって言ってください!一言でいいから感想をください!!
【よかろう、今よりお前は我らの忠実な僕。我々のためにヌケる悪堕ちSSを書くのだ】

ふふっ何を悩んでいたのかしら、何も難しく考える必要なんてなかったのにね
スレの趣旨に沿ったエロパロを投下する
それがSS書きのシゴト
あなたも書いてみなさいな、住民からGJと言われる快感に染め上げてあげるわ


麩まんじゅうの時はあんなにスラスラかけたのに、何書きたいのかわからなくなってきた
自己満足も大事だしSS書きは住民の萌え製造機でもないが、読んでもらう努力も必要だと思うのよ

そしてフェチ板に誤爆した、死にたい

527:名無しさん@ピンキー
10/03/17 23:55:58 tnFsIhc6
まさに今日やってた123だなw
率直にGJ

528:名無しさん@ピンキー
10/03/18 00:54:01 mtHVbNg8
>>525
いや、ノアにすべきだろ

529:名無しさん@ピンキー
10/03/18 01:16:28 kwUjtQjK
good joke!

530:名無しさん@ピンキー
10/03/18 14:58:36 qhQvECFF
ミヤネヤを悪堕ちさせる丸岡いずみ

531:名無しさん@ピンキー
10/03/18 23:29:46 2LUuSfHb
>>528
                _,,,_   _,,_
              ,.ィ":::::ミ''彡::::`丶、
              /:::::::::::彡 ミ:::::::::::::::::ヽ
             /::::::::::::::::彡:..:ミ::::::::::::::::::::ヽ
          /::::::::::::::::/⌒"⌒丶、::::::::::::::',
            |::::::::::/l:/      ノハ:::::::::::::i   ドンドンドン!!!!!
           、::,イ==、  :,. ===リ:::::::::::::|  こんばんわー―!!こんばんわー―!!
          ヾ:| rt:。ュ、', .'ィt:。ュ,/`'ソ!::::::ノ  ネオトピア男子部のノアでーす!
              「! `¨¨´ .: :. `¨¨´   ,リ´i′
            、!    r: .: 、    fシ'/       r‐、
               、、   `~ ¨´ 丶  ├f′       r‐| |´
             ヽヽ ヾ三三 シ'   /:/         |.. |.. |
             ヽ'、` ― '´  ,イノ       |.. |.. |
             /'{丶、___,. ´/ ヾ\       |.. | |
          _,.  ':| \     /   |::: `` ―---|'´
      ,. ‐ '´::::::::::::|   \  /   ,':::::( ̄`丶、ノ
   ,. ‐'´:::::::::::::::::::::::::::l    ,>‐<     /:::::::::``丶、.:
  /::::::::::::::::::::::::::::::::::::::|   ,.イ:::::::::>、 ./:::::::::::::::::::::::>.、_

532:名無しさん@ピンキー
10/03/19 19:03:55 F7GnzTRf
>>530
このスレ的には逆のほうがよさそうな気がする

533:名無しさん@ピンキー
10/03/19 20:47:39 jOniPv9h
ネオトピア?
SDGF……コントロールホーン……マドナッグ……

534:名無しさん@ピンキー
10/03/19 21:30:03 eSZJOHnm
>>533
黒リリは予告で期待してたのにがっかりだったな
まあこのスレとは関係なく彼女には萌えたが

535:名無しさん@ピンキー
10/03/19 21:35:39 1iEZeJy0
悪堕ちして女装してレイプされるんですね
わかります

536:名無しさん@ピンキー
10/03/20 05:06:30 oldpR5uW
前にちょっと話題に出たケロロクエストだけど、
ナツミ姫(こっちは洗脳解けちゃったけど)だけじゃなくモモカも洗脳されてるみたいだな
・・・しかしやっぱりまるっきりナイトガンダムだなこれ

537:名無しさん@ピンキー
10/03/20 07:38:44 jbo4HnJ9
だって朴李ですもの

538:名無しさん@ピンキー
10/03/20 13:20:03 JRDKe59p
パロディと言いなさい!

539:名無しさん@ピンキー
10/03/20 18:04:22 9eGGYQEx
正直な話、全く他と似てないのって無理だろ

540:名無しさん@ピンキー
10/03/20 19:12:02 FupGO4BR
ジャンプの読み切りで天使による洗脳ネタが有った

541:名無しさん@ピンキー
10/03/20 23:43:32 f/zdkmWD
>>526
目を覚ませ!
麩まんじゅうで本気のGJをもらったお前なら真の悪堕ちを書けるはず…

誤爆は諦めろ、うん

542:名無しさん@ピンキー
10/03/22 01:07:18 sDPIv0Y8
ガイアメモリによる精神汚染は悪堕ちと言えるかな
別に誰かの支配下にってわけじゃないんだけど無理やりにでも使用させれば堕とすことはできそうだ

543:名無しさん@ピンキー
10/03/22 03:33:56 v++vhECF
URLリンク(migzou.blog84.fc2.com)

さすが100メガショックだぜ!

544:名無しさん@ピンキー
10/03/22 03:43:12 RjTxDUq9
得ろ下の世界はわからん

545:名無しさん@ピンキー
10/03/22 21:24:51 hBPsJyCi
フェチ版ってどこにあるんだ?
>>526の作品読みたいぞ

それと魔法少女えれなが近所で安く売ってたんだが、悪堕ち的にはどうだったか知ってる人いる?

546:名無しさん@ピンキー
10/03/22 22:17:15 3kdH4s1M
あれかあ。
地球侵略に来たエイリアンと主人公家族の話。
母親は予め敵に拉致されてる状態だが、初登場時に堕ちてないし、その後も堕ちず妹に殺される。
(一応BAD扱いで堕ちてるっぽいのもあるが経緯の描写は無く、妹と共に死んだ後の魂が、ラスボスである父親の肉体に吸収されててエロエロなだけ、という状態)
んで、ストーリー中盤で妹も拉致され、こいつは堕ちる。
基本的に姉へのヤンデレという形。問題はその際のこいつの堕ち描写が無い事。
拉致後、再登場の際には既に悪堕ち済みという適当ぶり。
最後は割と唐突に正気に戻って死ぬ。

メインではなくIFシーンで主人公が先に堕ちて妹を堕とすというシーンが一つだけある。

547:予定調和
10/03/22 23:04:29 ImjFNJGV
前回投下したSSに目を通してくださった方々、ありがとうございます。

今回投下する部分には過激で残酷な描写が含まれています。耐性のない方、食事中の方は回避奨励です。要するにグロ注意。
最初のほうの春香がさらっと吐いた提案で「うへえ」と感じた方は、
牢屋の中での晴川と夏菜の会話シーンまで読んだら大人しく次回のエロシーンを待ったほうがよいでしょう。
あの春香の提案は警告を兼ねています。その後の月夜女姫の台詞も別の意味で過激ですがきちんと次回に直球エロシーンはあります。
普通は鞭打ち程度で済ませる嗜虐シーンに力が入ってるのも「悪はエロより嗜虐性があってなんぼだろ」という作者の嗜好のせいです。
というわけで、今回は堕ちた側の鬼畜っぷりを堪能するためだけのお話。エロは次回にまとめました。
「嗜虐性とかどうでもいいから早くエロシーンか堕ちシーンやれよ」という方は今回はスルーしたほうが時間の無駄にならないでしょう。
人を選ぶ内容だと思いますので次回のエロシーンには過激で残酷な描写はありません。強姦を過激で残酷なものに含めなければ、ですが。

前回の粗筋
春香陥落。晴川と夏菜は捕まって私刑生活スタート。

それでは続きをどうぞ。

548:予定調和
10/03/22 23:08:38 ImjFNJGV
晴川たちが監禁されているところと同じ建物の中で、私は他の黒の一族の4人を集合させていた。
会議室というよりは机のない教室といったほうが近い部屋だ。
その部屋のホワイトボードにはこれから晴川たちが受ける拷問の数々がぎっしりと書かれている。
「とりあえず月夜女様が持っていた『拷問・処刑・虐殺全書』からよさそうなのを抜き出してみたのだけど、他にやりたいものがあるかしら?」
「先輩、どうせ瀕死になるくらい痛めつけてもすぐに治癒術で治せるんだから、もっと処刑っぽいのでも大丈夫ですよ」
「何か他にあるの?」
春香ちゃんはにこにこしたまま、元々爽やかなスポーツ少女だったとは思えないほど猟奇的な提案をしてきた。
「あたしが昔読んだ本の中に『逆さに吊って鋸で股から切る』ってやつがありましたよ。
 そうやって切ると胸の辺りまで刃がこないと死ねなくて、内臓をずたずたにされる痛みを意識がはっきりとしたままで味わい続けるそうです。
 やってみたくないですか?」
「なるほど、鋸引きはあったけどその発想はなかったわね」
股から切るとなると途中で骨盤を切ることになる。腕や足の骨とは頑丈さが違う。
それだけに長引くだろうし苦痛も比べ物にならないはずだ。直接腹を切るより楽しめる。
「お姉様は鞭使ったことあるの?」
「え、ないけど……というか、使ったことないのが普通でしょう?」
「あれ、使いこなすの結構難しいよ。私は何回か使ったことあるんだけど、上手に振らないと自分に当たるんだよね」
「蘭って素手じゃないと肉の感触が味わえないから嫌とか言ってたのに、いつの間に使ってたのよ」
「好奇心だよ。お姉様は街を襲ってたときは魔法を試してたみたいだけど、私は物質創造も満遍なくやってたから」
蘭は私より後に力を手に入れたにもかかわらず、より上手く力を使いこなそうと試行錯誤していたため技術だけなら私よりも上かもしれない。
さっきからそこで黙ってるゴミとクズとは向上心が違う。
「薬漬けはしないんですか?」
「ああ、普通は依存症なんてそう簡単に治せないから忘れてたわ。
 薬で釣ってより残酷な方法も試せるし、いいかも。問題はどうやって調達するかだけど……」
「あのー……」
「ん、何?」
薬漬けを提案したゴミでないほう―ゴミが僕にしてきた人間、白石秋生だったか―が自信なさそうに手を上げていた。
「折角青野さんは女なのですから、陵辱をなぜしないのですか?
 このような場合輪姦は行われないのが不思議なくらい当たり前の行動ですし、精神的に追い詰めるのに有効な方法だと思うのですが」
ふむ、陵辱に輪姦ねえ。クズが言っている言葉の意味はわかる。だが……。
「お前、ちょっとこっちに来なさい」
作り物の微笑を貼りつかせた顔で、たった今不躾な発言をしたクズを手招きする。なぜか春香ちゃんが1人でニヤニヤしているのが見えた。
「いかがいたしましたか、月夜女姫様」
全く悪びれる様子のないクズの首を鷲掴みにして爪を食い込ませて、そこで私が初めて怒りをあらわにする。
「あの不潔で無様な体勢でやる動物丸出しの行為がね、私は大っ嫌いなのよ!
 あんな下劣な行為をまるでステータスのように求める現代社会が異常なの!
 あれを見るなんて、どうして私が気持ち悪い思いをしないといけないの!?
 さてはお前も、アレが男女間の優秀なコミュニケーションツールとか思ってる猿ね!」
クズのほうは気管が圧迫されて呼吸も満足にできていない。黒の一族だから呼吸困難で死ぬことはないにしても、
人間のときと同等の苦しさを味わっているはずだ。喉から流れた血が私の手を赤く染めていく。
「も、申し訳、ございません、でした……」
「どうしてあんな無意味なものを皆やりたがるのかしら。
 人類を人工授精、もしくは優秀なクローンのみで作り、国が養育院でまとめて育てれば親は全部労働力になるのに。
 それがわからない発情期の獣には教育が必要ね」
クズを蹴り飛ばすと、栓が外れたかのようにどばっと首から血が溢れ出す。
すぐにクズ自身で治癒術を使っていたため出血は間もなく収まったが、それなりに大きな血溜まりができていた。

549:予定調和
10/03/22 23:12:54 ImjFNJGV
椅子の肘掛に左肘をおいて頬杖をつき脚を組んで座ると、ドレスの裾の下からちらりとブーツの先が覗く。
スムース革の黒のピンヒールのロングブーツ。最近やっとハイヒールで歩くのにも慣れてきた。
「クズを蹴ったせいで靴が汚れてしまったわ」
靴を軽く浮かせ、春香ちゃんと目をあわせる。これ以上の言葉は要らない。
それだけで春香ちゃんは弾かれたように動いて私の前に跪き、躊躇いなく舌を私の靴に這わせる。
綺麗にしろとも、靴を舐めろとも私は言う必要がない。
「んむ、れろ、れろ、んむう、ぴちゃ……」
屈辱を押し殺すどころか、逆に嬉しそうに春香ちゃんは私の靴を舐める……というより、しゃぶっている。
私が何も言わなくても靴裏まで丹念に舐めてくれる。私が具体的に指示しなくても春香ちゃん自ら進んで私の意思を汲み取ってくれる。
靴を舐めさせるという行為は、忠誠の度合いを確かめる方法としてはポピュラーなものだ。
元々先輩後輩という上下関係があったことも影響しているのかもしれない。
これを見る限り、私と春香ちゃんの主従関係は最高に固いものとみていいわね。
もちろんゴミとクズの2人もこの水準まで私に対する隷従意識を高めてある。
「ねえ、そこのゴミ。私にもアレ、やってみようか」
蘭が私の真似をして靴を浮かせる。靴は私とお揃いのものだ。徐々にではあるが、蘭も私の僕に遠慮なしに横柄な態度がとれるようになってきている。
「月夜女姫様なら別にいいけど、なんであなたの靴なんか舐めなきゃいけないのよ」
形式上の立場の違いはあるが、蘭とゴミに直接の主従関係はない。しかしゴミのほうはもっと自分の立場をわきまえて欲しいところだ。
「やってみようかって言ったら、やりなさいってことだよね?」
反抗的なゴミを、蘭が優しく脅す。見た目と口調は穏やかなままで、言っている内容だけをきつくする。
そのギャップがより一層恐怖をかきたてることを蘭もわかってきたらしい。
「春香ちゃん、反対側も」
「はい、ありがとうございます」
蘭に命令されても、まだゴミのほうは動こうとしない。動こうとはしていないが、視線が蘭の顔と靴との間を何度も往復している。
「もっとはっきり言わないとわからないかなあ」
蘭は呆れたような顔をすると共に、さらに靴をゴミのほうに突き出した。
「私の足元に跪いて、私の靴を舐めて綺麗にしなさい」
自分の妹の成長に感心する。蘭も遂にここまで言えるようになったとはね。
蘭の上から押さえつけるような物言いにゴミのほうもたじたじになっている。
「わ、わかりました……」
春香ちゃんと比べると、やはりゴミのほうは靴を舐めることにかなりの抵抗があるらしい。
両手に靴を持ってからもしばらくは唇を震わせるだけで動きが止まるし、
屈辱感を抑えられないのか舌先をちょんと触れさせただけでなかなか次に進もうとしない。
「あれ?折角『舐めさせてあげてる』のに、私に感謝の言葉もないわけ?」
勢いづいて蘭はさらに高飛車に出る。「お前の抵抗の意思など全て踏みにじってやる」と言わんばかりの強い力のこもった瞳でゴミを見つめている。
「この、いい加減に……」
ゴミが何か言いかけたが、蘭の見下すような視線を真に受けてビクっと体を強張らせた。
あの表情を見てしまえば、逆らう気が失せるのも仕方ない。気の弱い人間なら目をあわせただけで殺せそうだ。
「1回だけなら聞かなかったことにしてあげるよ?」
この貫禄こそ、私の僕に相応しい。私の真似をしているうちに自分のしていることが板についてきたみたいね。
「ありがとう、ございます……」
「まさか靴の上っ面だけを適当に舐めて終わらせよう、なんて考えてないよね?」
初めから靴底を舐めるのは抵抗があっても仕方がない。
果たして蘭は暴力に訴えずに、言葉と表情と雰囲気だけで従わせることができるかしら。
このままあの女を手懐けることができれば私の僕として1人前だ。
「あの、冬子様が無理なら、私がやりますけど……」
「貴方はもう従順だからこんなことをやらせても面白くないのよ」
あの様子じゃ、私と春香ちゃんほどの主従関係になるためにはそれなりに時間がかかりそうだ。
でも急ぐ必要はない。じっくりと立場の違いをわからせてやればいい。魔眼を使って言うことを聞かせるより、そのほうが蘭の練習になる。

550:予定調和
10/03/22 23:16:57 ImjFNJGV
「そういえばさあ、貴方がさっき言ってた『りょうじょく』とか『りんかん』って何?」
蘭がゴミに靴を舐めさせながら、さっきのクズの発言に食いついている。
蘭には知る必要もないし、世の中には知らないほうがいい情報もあることを教えておかなければならない。
「ああ、それはですね……」
「お前は蘭と口を利くな!蘭が穢れる!」
急に立ち上がったから、春香ちゃんの手を踵でゴリッと踏みつけてしまった。骨が折れてしまったかもしれない。
そんなことより今は蘭のことが大事だ。
「あ、ちょっと、お姉様!」
蘭の手を引っ張って別の部屋に連れて行き、クズとの関わりを絶たせる。
一旦興味を持ったものを「調べるな」と止めても人間の好奇心というのはそう簡単に抑えられるものじゃない。
「蘭、ちょっとこっちを向いてくれる?」
「何、お姉……さ……ま……」
私を強く拒絶している相手ならともかく、蘭なら心の壁を瓦解させることなど容易い。魔眼を使って蘭の意識の全てを私に集中させる。
ああ、なんて可愛いのかしら。
可愛いだけじゃなくて可憐さも併せ持つ顔立ちに、私と同様の長い睫毛。
子供と大人の両方の魅力が掛け合わさった、ベストなタイミングで体の成長が止まっている。
さっきの貫禄と余裕に満ち溢れた顔もいいが、こうやって魂を抜かれたような惚けた表情もいい。

魂を抜かれたような惚けた表情をしているのは今の私も同じだった。
「私が蘭に見蕩れちゃってたらダメじゃないの」
気を取り直して蘭の記憶を弄り始める。優しく、ゆっくり、確実に。
蘭には学校の保健体育で教えてもらうくらいの知識があればいい。
男が出した精子がどうやって女の子宮に到達するか?そんなもの、蘭は知らなくていいし知る必要もない。
だが他の人間全員まで制限するつもりはない。そうすると人間がいなくなってしまう。
だからこれは姉である私のただの我侭。
記憶を消すだけではまた今回と同じことが起こるかもしれないので、
ああいうのはただひたすら下品でわいせつなものだという偏見を植え付けておく。
蘭は一生純潔無垢のままでいて欲しい。
ずっと人間の汚い部分を知らないままでいて欲しい。
尿が出る不浄なところを舐めたりする現実があるなんて知って欲しくない。
もし私の蘭に風紀紊乱なことを吹き込もうとする不埒な奴がいたら、全員八つ裂きにしてやる。
「これでよし、と。ほら、蘭、何ぼーっとしてるのよ」
蘭の肩を軽くぽんぽんと叩いて意識を覚醒させる。蘭は寝ぼけ眼で私を見た後、自分の今の状況を判断するまで少し時間がかかった。
「う~ん……あ、あれ?ごめんなさいお姉様、私ちょっと気が抜けてたみたい」
「少し疲れてるのかもね。今日は早めに寝なさい」
それにしてもあのクズ、普段は大人しいふりをして本性はあんな淫乱女だったとはね。ほんと、人は見かけによらないわ……。

自分がどうして怒られたのかわからない秋生は、自分の作った血溜まりを掃除していた。そこに部屋に残っていた春香が声をかける。
「いやー、見事にあたしの予想どおり先輩の地雷を踏んじゃったね、白石さん♪」
「赤坂さん、知ってたなら言ってくれてもいいのではないですか」
「何でわざわざ自分で楽しみを取り除かないといけないのよ。
 黙ってれば2人のうちどっちかは引っかかるとは思ってずっと楽しみにしてたのに」
「……赤坂さん、なかなかえげつないことをしますね」
秋生の恨みのこもった目つきも、今の春香には弄りがいのある獲物にしか見えていない。
「蘭ちゃんに2人がまだ激しく怒られてないって聞いてたから、その時点で2人に言っておけばこういう事態は未然に防げたかもね。
 でも、あたしはあんたに卑猥な発言をしろとは言ってないし、勝手に引っかかったのが悪いんじゃない?」
春香の言い分は無茶苦茶ではあるが、月夜女姫に叱られて動揺している秋生の心の傷を抉るには十分だった。

551:予定調和
10/03/22 23:20:17 ImjFNJGV
「先輩も変わってるよねえ。内臓とかグロテスクなのは平気なのに、あっち系のことは耐性ゼロだし。
 昔から軽い下ネタ程度で嫌な顔してたけどね。あ、グロテスクなのがだめだったら医者やっていけないか」
「あそこまで毛嫌いする人は初めて見ましたよ。化石みたいな貞操観念ですね」
「あたしも先輩以外には知らないなあ。どんな育ち方をすればああなるんだか。どこの時代の頑固親父ですかって感じよ」
元々天道彩はグロテスクなものは苦手で、ごく普通の感覚を持つ女の子であった。
医者を目指すのにそれではいけないと思い、中学生の間に自分で克服したのだ。
それが今は黒の一族となって残虐性が増幅されているに過ぎない。
月夜女姫がその方面の話が未だに苦手なのは、親が無菌状態で育てすぎたのが原因だった。
「あそこまできついセックスヘイターじゃなかったら、先輩は頭も顔も運動神経もいいし、
 友達想いで性格もいいから人間関係も円滑にできただろうにねえ……今言っても遅いけど」
「そういえば、今晴川と青野さんを一緒の牢に入れてますけど、大丈夫なのですか?」
秋生から見れば、月夜女姫が男と女を同じ牢に入れていることが信じられなかった。
見張りも置いていないし、そういう行為に及ぶ可能性も十分に考えられる。
「先輩のことだから多分わかってないだろうね。でも、あの2人は『色恋沙汰とかめんどくさい』って言うタイプだから心配ないと思うよ」
男1人に女4人という組み合わせで2年近く何も起こらずに済んだのも、晴川の貞操観念が強かったからに違いない。
しかしその情に流されない過剰なまでの冷血さが春香を堕とすことになった。
「それに、2人を同じ牢に入れておくのは目的があるらしいよ。あたしは知らないけど」
春香はこれから2人を待受ける運命に心を躍らせ、秋生はその運命に少しだけ同情した。



晴川と夏菜の2人は別の部屋に移動させられて、そこで壁から生えた短い鎖で手足を拘束された。
牢屋と同じくここも真っ暗で、黒の一族でない者は視界が完全に閉ざされる。晴川たちは目隠しをしているのも同然だった。
「まずはオーソドックスに鞭からいってみましょう。覚悟はいいかしら?」
「……やりたいならさっさとやればいいだろ」
晴川はふてぶてしい態度で月夜女姫の言葉を受け流す。
「そうやって冷静を装うのもいつまで持つかしらね!」
言いながら勢いよく鞭を振り下ろすが晴川に当たることはなく、先端が月夜女姫自身の闇界障壁に当たって跳ね返った。
「このっ、このっ、どうして当たらないのよ……」
「先輩、あたしは夏菜ちゃんのほうをやってもいいですか?」
「ええ、いいわよ。……鞭も練習しておくべきだったかしら……」
「じゃあ私も夏菜ちゃんのほうにしよっと」
春香が床を鞭で叩いてバシィンと景気のいい音を響かせるが、夏菜のほうもそれで恐がる様子もない。
「1回やってみたかったのよねー、これ」
春香も初めてなのは変わらなかったが、初回の振り下ろしで夏菜の太股に赤い筋を付けた。そのまま腕や顔に次々と赤い筋を刻んでいく。
その間夏菜は打たれた瞬間に眉をひそめるだけでそれほどきつそうには見えない。
「あれ?なんか……楽しい……」
「……」
夏菜からは春香が見えていないはずなのに、夏菜は氷のような清冽な鋭さをもった目で春香を冷静に睨みつけている。
「こうなったら、意地でも悲鳴を上げさせてやる……」

月夜女姫は晴川に当たった回数より自分の闇界障壁に当てる回数のほうが多く、鞭を振り慣れていないのが一目瞭然だった。
「月夜女姫様、私がやりましょうか?さっきから全然当たってないじゃないですか」
「う、うるさい!お前たちはそこで指をくわえて見てなさい!」
春香は上手くできているのに自分はできていない焦りから、月夜女姫はさらに鞭の精度を落とした。
「お姉様も赤坂さんも全然ダメだなあ。赤坂さん、代わってもらってもいいですか?」
「全然ダメって……あたしも?」
蘭は夏菜の前に立つとにいっと口を歪めて、鞭を水平に構えた。
これから蘭に打たれる夏菜は来るであろう衝撃に備えてぐっと気合を入れなおす。
「本当の鞭打ちっていうのは、こうやるんだよ!」
春香の鞭とは段違いに威力の高い鞭打ちが夏菜を襲う。その威力は腹部の服が破け、さらにその下の柔らかい肌まで裂けて血が滲むほどだった。
「っ……!」

552:予定調和
10/03/22 23:25:11 ImjFNJGV
「さあて、夏菜ちゃんはいつまで耐えられるかなあ?フフフ……」
夏菜からは見えていないのに、はっきりと感じられる雰囲気だけでぞっとさせるような薄ら笑いを浮かべながら蘭は鞭を振り上げた。

相変わらず悪戦苦闘している月夜女姫に、蘭の興奮する声が届いてくる。
「しけた声出すなぁ!もっと叫べぇ!」
「いいっ……」
あちこちの皮膚が破れ、足を伝って血が流れている。奥歯が欠けるのではないかと思えるほどぎいっと歯を食いしばって耐えている夏菜の様子からは、
絶対に悲鳴を上げるものかという執念がこれでもかというほど伝わってくる。
「蘭、いつの間にマスターしたのかしら……」
蘭は月夜女姫が見たこともないような酷薄な表情で鞭打ちを楽しんでいた。
自分の妹があんなに上手に扱えているから、月夜女姫の拙さが余計に際立っているように感じる。
目の前の晴川も顔には出さないが心の中で嘲笑っているに違いない。
羞恥に耐えられなくなった月夜女姫は、次の蝋燭責めにうつるように指示した。



しかし、蝋燭責めは鞭打ちに比べるとかなり短い時間で終わった。

蝋燭責めが終わると2人は鎖を外され、元の牢屋に連れ戻された。
首輪をつけたまま晴川は剥き出しのコンクリートの床にゴロンと大の字に寝転がり、夏菜は膝を抱えて小さく蹲った。
「青野、その傷何ともないか?」
「……すっごいヒリヒリする。ところでさ、ああいうのってボンデージ衣装とかでやるのがお約束じゃないの?
 月夜女姫は漆黒のドレスだからまだいいとしても、その妹とか服だけなら清純系の正統派ヒロインにしか見えなかったんだけど」
「服だけは、な。それ以外の見た目や言動は悪魔以外の何者でもない」
固まった血がこびりつき、さらに焦げ付いている夏菜の服は原形を留めておらず、辛うじて布が肌に引っ付いていると言ったほうが近い状態である。
「でもお前があの鞭打ちに耐えられるとは思わなかったな。大したものだ」
「月夜女姫が蝋燭責めで『眩しいから止める』って言い出してなかったら間違いなく悲鳴上げてたけどね。
 まあ、お約束をわかってない連中なんて所詮あの程度よ。鞭打ちもあの妹以外は下手糞だったでしょ」
蝋燭程度の明かりすら直視できないのか初めは目を背けながら責めていたものの、
眩しいのが我慢できずに月夜女姫が早々に中止するように言ったのだった。
「あいつらの目的は拷問でも屈服させることでもなく純粋に俺たちの反応を面白がっているだけだからな。
 無反応を徹底すればいずれ飽きるだろう。今回はよくそれを守った」
「晴川さん、次は何が来ると思う?」
「鞭打ちといい蝋燭といいあいつらのやっていることは所詮SMプレイの真似事だ。となると……青野、SMプレイってほかに何があるんだ?」
「19歳の普通の女子大生にそんな知識があるわけないでしょ」
「ま、まあ、あいつらも慣れてないみたいだからそこまで多彩な責めはしてこないはずだ。ただ、陵辱は覚悟しておけよ。
 悪者に捕らえられたヒロインが犯されるという展開はありがちだからな」
「ちょっと止めてよ、私まだそういうことやったことないのに」
「最悪、俺を操って犯させるかも知れん。あいつらは全員女なんだからこれが1番可能性高いかもな」
「……」
夏菜もこの歳になれば悪者に負けたヒロインがどうなるかくらい知っている。そのまま殺してしまうケースは少ない。
春香のように他の仲間を釣る餌にされることもある。または、懐柔されて悪者の言いなりになるか。
しかし、夏菜の知識にあるのはここまでだ。
その方面の本を読んだことがない夏菜は、ヒロインが犯されて頭が壊れた雌奴隷にされることがあるとは知らない。
「今日鎖に拘束されるときに服を脱がされなかったから、やらない可能性も考えられるが……悪い、不安にさせた」
今日の鞭打ちや蝋燭責めももちろん初体験だったが、「犯される」というのはどのような気分になるのか夏菜には想像しにくかった。
その分未知の恐怖として夏菜の体を締め付ける。
「そ、そういえばさ、晴川さんはこの状況で何かしたいと思わないの?」
「何かって何だ」
「そりゃー……真っ暗な密室に男と女が2人きりで時間があり余るほどあるから……って、恥ずかしいこと言わせないでよ!」

553:予定調和
10/03/22 23:33:46 ImjFNJGV
首輪で鎖に繋がれているとはいえ、便所に行けるくらいの行動の自由は残されている。
実際にやろうと思えば暗くて相手が見えずともやること自体は可能だろう。
夏菜もこれまでの過酷な逃亡生活でやつれていながらもまだ肌は荒れていないし、健康的な若さを保っている。
夏菜は性格こそ子供っぽいが器量は中々で、体型も無駄がなく洗練されている。
並の性欲の持ち主とこの状況で2人きりだと襲われても不思議ではない。
しかしこれを晴川は月夜女姫の罠と踏んだ。
「あのな、青野。お前こそ今の状況を考えろ。余計なことして体力使ってる場合じゃないだろう。それとも、誘ってると受け取っていいのか?」
「そんなわけないでしょ、言ってみただけ。私は今も昔も色恋沙汰には興味ないから」
秋生と冬子には彼氏がいると晴川は聞いたことがあった。春香は厳しい部活とホワイトウイングの活動の両立で彼氏を作る暇がないというのはわかるが、
夏菜の高校時代の部活はあまり活動のない家庭科部。大学も特定のサークルに属しているわけではない。
「その顔で男が寄り付かないとは思えないな。付き合ったこととかないのか?」
「高校のときに1回だけ、告白されて付き合ったことはあるよ。
 でもねえ……別に相手の人が嫌いだったわけじゃないんだけど、恋愛って面倒じゃない?
 どうして皆あんなにくっついたり離れたりに必死なのかわかんないわ」
外見や服装に気を使うのも異性の気を引くためでなく、あくまで身だしなみの範囲。夏菜にとってはそれ以上の意味を持たない。
「それにそういう色恋沙汰で人間関係が壊れる人も多いでしょ?それなら友達のままでいいじゃんって思うんだけど。
 色んなものを犠牲にしてやっと男をもぎ取ってもその人と一生付き合うわけじゃないしさ。
 こういうことがわかんないから、皆から子供って言われるのかなあ」
夏菜がそんなことを言えるのも、夏菜はまだ人を本気で好きになった経験がないからだった。
夏菜の学部には掃いて捨てるほど男がいるのに、仲がよくても皆男友達止まり。
そこに夏菜を落とそうと企む男がいたとしても、まずは夏菜の恋愛観から変えなければならないので攻略難易度は高い。
「女でそこまで恋愛に興味がないのも珍しいな」
「今時恋愛以外にも楽しいことがいっぱいあるんだから、おかしくはないでしょ?
 私はね、皆のヒーローを目指してたの。ジャンルは何でもいいから、弱きを助け強きを挫く、みたいな感じのヤツをね」
「警察でも目指してたのか」
「警察とはちょっと違うんだよね、それじゃ点数稼ぎに忙しくて勧善懲悪にならないし。
 でも今私たちがやってることは正に皆のヒーローでしょ、平和を守る正義の味方。
 憧れてたけどまさか自分がなるとは思わなかったなあ。相変わらずそれっぽい変身スーツや巨大ロボは出てこないけどさ」
誰もが子供時代に憧れ、やがてそれが作り物の世界にしか存在しないことを知って諦める夢。しかしそれらは普通男子の夢だ。
「いつも思っていたんだが、どうして変身スーツや巨大ロボなんだ?お前は女なんだからそこは魔法少女だろ?」
「あー魔法少女ね……あれはどれもこれも衣装がやたらヒラヒラしてて戦いにくそうだし、変に肌の露出が多いからやだ」
「問題はそこなのかよ。……俺は、正義の味方側になるべき人間ではなかったのかもしれないな」
化け物退治ということで甘えを捨てようとしたところが行き過ぎて非情になった。
仲間を脅迫で集める、仲間を見捨てる、仲間を最初から信じないで切り捨てる……これではどちらが善でどちらが悪かわからない。
平和を愛する心はあっても結果を重視するあまり、正義の味方として根本的なものを軽視してしまっていた。
「お前みたいな純粋な心の持ち主が1番正義の味方に向いてるよ」
「いや、私も……現実の戦いを舐めてたよ。ゲームみたいに負けたら最初からなんてわけにはいかないんだから、
 時には晴川さんみたいに非情になる必要もあると思う。月夜女姫より前の敵はたまたま弱かったから上手くいってただけで、
 今思うとあんなふざけた戦い方をしてたら途中でいつやられててもおかしくなかったよ」
そのやり方でそれまで大した挫折を味わわずにここまできたのだから、夏菜の能力の高さが伺える。
「俺は聖人君子にはなれないが、もう少し正義の味方らしくしてみるとするか」
晴川は寝転がった体を起こしてあぐらを組んで座りなおし、静かに宣言するように言った。


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