10/02/25 00:38:38 /gdXfdjm
その頃だと135がまだ産まれてないんじゃ
再放送とかかもしれんが
後、ここというよりNTRスレの方が発掘しやすいかもしれんな…そういうシチュは
151:名無しさん@ピンキー
10/02/25 00:49:45 CxtzghEg
時代とか抜きにすれば逆転イッパツマンがそんな感じじゃなかったかしら
152:名無しさん@ピンキー
10/02/25 01:13:43 SRw3aqYS
いや、タイムボカンシリーズならあの頃再放送してても不思議じゃない気がする
もちろん地域にもよるだろうが、あるかも
153:名無しさん@ピンキー
10/02/25 02:43:05 rYO1P+/p
アニメじゃなくてラノベなら狗狼伝承がそれっぽいのかなあ
というかやっぱりNTRスレのほうが探しやすそう
154:名無しさん@ピンキー
10/02/25 07:11:35 Uk90FrBC
ラノベだったら「わたしの勇者様」とかあるけど
相思相愛ってわけじゃないしな…
155:名無しさん@ピンキー
10/02/25 07:17:19 FSofW3aB
エクセルサーガ見て勘違い
...無いな。
156:名無しさん@ピンキー
10/02/25 08:35:39 JqsrPhae
サイレントメビウス・・・?
157:名無しさん@ピンキー
10/02/25 09:11:48 zABUtYgB
ジェットマン…と思ったがこれはアニメじゃなかったw
158:名無しさん@ピンキー
10/02/25 12:29:55 Uk90FrBC
カテジナさん…
は、そもそもラスボスだしな…
159:名無しさん@ピンキー
10/02/25 12:31:24 Uk90FrBC
あと、熱沙の覇王ガンダーラとかは?
160:名無しさん@ピンキー
10/02/25 13:25:21 IonTSG/q
リューナイト?
161:名無しさん@ピンキー
10/02/25 14:01:03 vaPu0JXw
年代と何かの名前が分かれば・・・
URLリンク(lain.gr.jp)
この中から探して見てくれ
162:名無しさん@ピンキー
10/02/25 14:33:19 vD3whDY7
昔のだから、複数作品が記憶の中で混ざってしまってる可能性もあるでしょ。
163:名無しさん@ピンキー
10/02/25 15:57:13 uDNjB1gu
そういやアニメのドラゴンクエストって、ヒロインの女がバラモスに協力したの?
最期の方を見逃してたけど、女戦士だかもバラモスの手下だったかとか聞いた気もするし
バラモスを倒せたんだろか?
あと、ウテナだかチュチュだかとかも見逃してるんだよね
164:名無しさん@ピンキー
10/02/25 16:32:38 8MlLy15i
ドラクエは・・・と言う話だったのさ(AAのポカーンENDじゃないの
165:名無しさん@ピンキー
10/02/25 16:53:28 2pYNzeII
>>163
第二部で出てきたアドニスって男剣士の間違いじゃないか?
最後はバラモス倒して終わり
>>164
それは打ち切りの第一部
その後で続きの第二部やったんだよ
あまりにも第一部の最後がひどすぎてAAになったりしてるけど
166:名無しさん@ピンキー
10/02/25 17:11:05 VezNi9qW
レイアース(第1部)・・・・・・・なわけないか
167:名無しさん@ピンキー
10/02/25 17:43:04 cHSY7mpw
ドラクエの第一部の最後はわりと最近見たんだけど
そこだけ知らなかったから大いにふいた
168:名無しさん@ピンキー
10/02/25 20:23:12 8XAvqzQt
三国伝のラスボスこと天司馬さんは珍しいタイプだよね
邪神の魂と融合した割には闇に喰われて身体を乗っ取られるんじゃなく。事実上の制御に成功して大暴れだし
普通なら利用してるつもりが逆に利用されていて、精神を喰われて異形変化の後に悪堕ちなのに
169:名無しさん@ピンキー
10/02/25 20:35:09 MvbD0sFA
>>135がもの凄く気になる
>>161も見てみたけどヒロインが死ぬってのは結構少ない
ヒロイン以外の女キャラも含まれるのか
TVシリーズの再放送だったか、OVAっぽかったか
結構重い作風だったか、ロボやら巨神兵みたいなのは出て来たか
記憶を頑張って辿って欲しいw
「死ぬ」ってあたりからウィンダリア、マーメノイド、エルハザード、シュラト・・・この辺がぱっと思い浮かんだけど
170:名無しさん@ピンキー
10/02/25 20:41:13 Qbocd5FP
ヒロインが最終回直前で堕ちる…
ライト&ダーク?
171:名無しさん@ピンキー
10/02/25 21:40:23 MKW8p7pd
>>135
ウテナじゃね?
172:名無しさん@ピンキー
10/02/25 22:01:49 5vl+0L4g
次のポケモンレンジャーって悪の結社が洗脳機械使って世界を管理統合しようってストーリーみたいだ
対象はポケモンだけど
173:名無しさん@ピンキー
10/02/25 22:39:50 /MoStr8N
擬人化なら逝ける…かも
割とそういうネタあるっぽいし
174:名無しさん@ピンキー
10/02/26 01:58:17 vo6OERH6
>>163
一応当時見たはずだがそんな展開あったっけ?
たしか最序盤でヒロインがメダパニかけられて秘密をしゃべる…
みたいなのはあった気がするけど
175:名無しさん@ピンキー
10/02/26 06:38:57 NZBnGCYZ
女性が悪者になった姿を貼るスレが復活してたな。
176:名無しさん@ピンキー
10/02/26 07:17:22 7zdZKNUv
>>175
kwsk
177:名無しさん@ピンキー
10/02/26 19:46:16 NZBnGCYZ
「みーんな、なかーま」から行ける
178:名無しさん@ピンキー
10/02/26 20:05:52 Ma4C/aC8
ぐぐればいい話じゃね?
179:名無しさん@ピンキー
10/02/26 22:31:44 jwfedemh
♂勇者が魔王に性転換させられた挙句堕とされるって同人ないかな
180:名無しさん@ピンキー
10/02/26 23:31:25 TfZMXmaE
>>135の話で、昔なつかしの
「ライブアライブ」の中世編(アリシア姫)を思い出してしまった。
アニメじゃないから絶対違うんだけど。
181:名無しさん@ピンキー
10/02/27 00:26:11 rzoo2AaC
ヤマトタケル、じゃないよなぁ。
182:名無しさん@ピンキー
10/02/27 02:40:46 kQNEWe9b
ふたつ以上混じってると思う
レイアース第一部とあと何か別のと
183:名無しさん@ピンキー
10/02/27 03:34:32 2vsKUjT6
ヤマトタケルて最後姫死ぬんだったか?
184:名無しさん@ピンキー
10/02/27 03:51:49 RlQTbdw1
>>135
黒シスターのやつじゃね?
クロノクルセイドとかいうやつ
185:名無しさん@ピンキー
10/02/27 06:27:48 4du6YpVL
>>184
タイトルではぴんと来なかったから絵とかググれば見つかるかね
186:名無しさん@ピンキー
10/02/27 13:03:14 mPG+cG4M
クロノクルセイドではヒロイン元に戻って殺されてないんじゃ?
187:名無しさん@ピンキー
10/02/27 14:50:09 mkeLg2Uf
質問ですが、東方の悪堕ちシリーズはこのスレ的に大ヒットですよね?
188:名無しさん@ピンキー
10/02/27 14:51:41 bArhbNR4
別に
189:名無しさん@ピンキー
10/02/27 15:06:52 muJ23mYo
俺は大好物だが東方は荒れるから黙っとけ
190:名無しさん@ピンキー
10/02/27 15:21:05 NN7zOnbn
当方、東方はまったく触ってないからわからないけど
東方は荒れるから怖い。
コミケとかで辟易したし。
191:名無しさん@ピンキー
10/02/27 15:31:31 KF0EwEnJ
そこまで汚物のようにさけることもなかろう
悪堕ちはただでさえマイナーなジャンルだし
192:名無しさん@ピンキー
10/02/27 16:15:47 Fh3muRP7
流れをぶった切って久々に洗脳シーンを堪能したいんだが、誰かロイヤルブラッド2の女性捕虜データ持ってたら上げてくれないか?
193:名無しさん@ピンキー
10/02/27 16:19:37 WDyujOhc
流れをぶった切って著作権侵害のアップ依頼かよw
194:名無しさん@ピンキー
10/02/27 16:44:51 4VnRuWIp
墜ちたな・・・
195:名無しさん@ピンキー
10/02/27 17:21:24 4du6YpVL
なんて高度なギャグなんだ…
196:名無しさん@ピンキー
10/02/27 17:31:08 DgvpkiEs
ふふふ
197:名無しさん@ピンキー
10/02/27 18:23:13 yfr9Czkw
東方の悪落ちいいよねー!
198:名無しさん@ピンキー
10/02/27 18:28:23 mORJVtRU
192は乞食神だとおもふ
もんじゃ焼き
199:名無しさん@ピンキー
10/02/27 18:59:50 pOJVOG5g
突然すいませんが、SSを投下させていただきます。
洗脳装置系の話になっていく予定です。今回はオープニングで。
200:インストール
10/02/27 19:04:27 pOJVOG5g
窓一つない、冷たいコンクリートの壁に囲まれた部屋。
その部屋の中央に、一脚のベッドが設置されていた。牢獄に近い空間の中に、肌触りのいいシーツ、キングサイズの豪華なベッドは、あまりに不釣り合いだ。
異彩を放っている、と言ってもよい。
だが、この場で真に異彩を放つものがある。
それはきらびやかなベッドの上にあった。
「あ……あああ……」
シーツの上で仰向けになり、声にならないうめき声を上げる女性。
両手足は、鋼鉄の枷でベッドにつながれており、一足たりともベッドから離れることができない状態。
衣服は何も身に着けていない。全裸だった。
形のいい、釣鐘型の胸は、激しく上下運動を繰り返し、槍のように鋭くとがった桃色の乳首は、冷たい空気に反応してか、かすかな震えを見せていた。
膝を天に突き出し、股でMの字を形作るその格好で、下腹部の黒々とした茂み、またその奥にある女の秘境を、一切隠すことなく外部に開放していた。
彼女は、すっぽりと頭部を覆う、暗い紫色をしたヘルメットをかぶせられていた。
頭頂部に備えられた赤いランプがまがまがしい。
「あ、あ、あ……」
頭部のヘルメットが隠すせいで、呻きを上げ続ける彼女の表情を窺い知ることは出来ない。
身ををよじり、膝をもじつかせ、ベッドシーツを強く握りしめる手から、彼女の表情を推測せねばなるまい。
ぽた、ぽた。
静かに、一定のリズムで刻む音がある。
彼女のすぐそばの、機械制御式の点滴台から滴る薬物の音。そこから彼女の首筋にかけて、極細ながらも上部なチューブがつながっていた。
鎖よりも弱い素材ではあれど、このチューブも彼女にとっては、自らを拘束し続ける枷の一つに数えられるものであった。
緩やかだった彼女の動作が、だんだんと激しいものに変化していく。腰が持ちあがり、上下に激しく振られる。
そのたびに鎖の擦れ合う、じゃらじゃらとやかましい音が部屋中に響く。漏れる声も、だんだんと大きく、高く、淫らに変化していく。
「あああああっ!!ひっ!!いいいい!!!」
呻きはいつしか悲鳴となった。左右に激しく振り乱す頭。限界まで開かれた口。何かから逃げようとでもするかのような、身のよじり。
乳房は左右上下、思い思いの方向へ動きまわる。
あらわな股間の口から、とろとろと流れる温かい液体。止まらないヴァギナの痙攣を、外からでも見てとることができた。
さらに声は高く、高く上りつめる。動作もますます激しさを増した。頑丈な枷が頼りなく見えるぐらい、彼女の乱れようは半端なきものだ。
ベッドにいるのは人ではなく、盛りの吠え声を上げ続ける獰猛な獣ではないかと思わせるほどに。
身体が震える。震えは激しく、ケイレンと呼ぶに値する反応へと姿を変えた。
「いやああああああ!!」
コンクリートに反響する、絶叫。性感が限界を越え、荒々しいオーガズムを呼び起こす。
10数回目に及ぶ、「女の悦び」は、先ほどまでと同じように、性感体への接触を通じることなく、全てがヘルメットから与えられる暗示の力によって呼び起こされたものだ。
肉体に触れずにオーガズムを引き出す、俗に「エナジー・オーガズム」と呼ばれる悦楽の最境地は、彼女を一匹のメスへと変えるのに、十分すぎるものだった。
1分を越える、狂悦の絶頂の叫びの後、突然、糸が切れでもしたかのように、女は声を止め、身体を弛緩させた。半開きにした唇の端からは、口内にたまった唾液があふれ出し、
下の陰唇からも、熱い液体がとめどめもなく流れ落ちる。彼女の心身の虚脱とともに、ヘルメットの赤いランプは、しばらくの点滅の後、静かに消えた。女陰が、ヒクリ、と動き、液体を垂れ流す。シーツのやらしい染みがさらに拡げられた。
この部屋にはもう一人、ベッドで狂う女を見つめる人物がいた。
ベッドの脇の椅子に座り、テーブル上に広げたノートパソコンを見つめる、白衣の研究者然とした女。可愛く束ねたポニーテール、冷たく光る銀色の眼鏡。
彼女が向かっているノートパソコンは、端子を通じて、ベッドの上で拘束されている女のヘルメット、そして投与を繰り返す点滴台につなげられていた。
彼女は冷静な声で言う。
「大分、抵抗も弱くなったわね。いい調子よ」
201:インストール
10/02/27 19:07:20 pOJVOG5g
画面上に映るのは、女性のかぶったヘルメットから送信される、脳波のデータ。
一定の感覚で波打つ緑色の線が、彼女の精神の揺らぎを指し示している。
白衣の女性が、マウスをクリックすると、現在の作業の進捗状況を現す数値が現れた。「23%」
思ったよりも早い。白衣の女性は静かにほくそ笑んだ。ベッドでよがり狂いながら、
シーツを必死につかみ、はしたなく声を上げる、美しき「お嬢様」は、中々教育熱心のようだ。
データを見ながら、白衣の女性は、パソコンに多色に光るCDを挿入した。そして、パソコン横に置かれたマイクに向かって報告する。
「プログラム番号・3番に移行します」
ゆっくりとパソコンに飲み込まれていく、3枚目のCD。パソコンはすぐにデータを認識し始めた。
女が操作していくと、すぐにパソコンは「洗脳プログラム」を起動させ始めた。
プログラムは、端子を通じて黒紫のヘルメットへと流れ込む。それを受けてヘルメット頭頂部のランプは、再び凶悪な赤色に灯り始めた。
脳に直接流れ込むプログラムは、彼女の深い眠りを無理やり覚醒に導き始める。
「い……や……」
虚脱状態だった女性の口から、僅かな抵抗の言葉が漏れる。だが、既に長時間プログラムの沼の中で「調教」を受けてきた彼女は、耳に注ぎこまれる、一定の周波数の音を感じ取るとすぐに、抵抗をやめて、意識を研ぎ澄ませ始めた。
点滴台から再び、人間の理性を麻痺させ、自我を浸食する催眠薬、通称「ピュアハート」が滴っては、彼女の体内に染み込んでいく。
しばらくして、ヘルメットから流れる音のトーンが変化した。音は、耳から脳へ、そして体全体へ巡り、彼女の快楽中枢を煽ってゆく。
「はあ……」
溶けるように、熱く、淫らな響き。それが、彼女が洗脳プログラムに身を委ねた合図だった。
ゆっくり、ゆっくりと、身体を駆け巡る性感。ちりちりと身を焼く興奮。
彼女は再び、暗示を心に刻み込み始めた。当人には意識は無い。
だが、快感に身をくすぶらせながらも、徐々に、今まで築き上げてきた人格が壊され、別の誰かとしてプログラムされていく自身を、心の奥底で感じずはいられなかった。
202:インストール
10/02/27 19:11:04 pOJVOG5g
「どうですか、先生。いい感じに仕上がってきていますよ。あなたのお嬢様は」
製薬メーカー、「ヤマイメディカル」の社長室。社長の山居は、手をぶるぶるとふるわせ、苦渋を舐めるような表情を眼前の男に向けていた。
「どうしたのですか。折角、御社が開発なさった麻薬を使って、麗子嬢を喜ばせて差し上げているのに」
「麻薬ではない!!」
怒りをぶつける山居の声に、男は大げさに、驚いて見せた。
「これは、これは……ははっ。先生らしくもない」
「『クリア・ハート』は催眠導入剤だ。このような、恐ろしいことに利用するものでは……」
「言い方が悪かったですか。ではこう言いましょう。―ドラッグ、ヤク、『ピュアハート』。はははっ。
御社の技術力は大したものですな、先生。私の発明した洗脳教育プログラムは、ピュアハートなくしては完成しないのですからね」
愉快そうに笑いながら、男の目は、テレビ画面に注がれていた。映るのは、ベッドで裸体をさらす山居社長の令嬢、麗子。
そして、プログラムを遂行する―。
「アンリ、先生はもっと自社の薬の力を見たいそうだ。もう少し投与してやれ」
手元のレシーバーを口元に寄せて、男は言った。邪悪な意思に染まる瞳を「先生」に向けて。
「やめろ!」
狼狽し、突進してきた山居を軽くいなして、男は言った。
「これは先生らしくない。私を今どうこうしても、麗子嬢は戻ってくるどころか、その無骨な手をかすめて行ってしまうだけですよ。
たとえ、私を拷問したとしても、お嬢様の居場所を知ることは不可能であることは先に言ったでしょう」
画面内では、マイクに向かって語りかける白衣の女、アンリが一言、〈0.2グラム投与〉と、冷たい報告を口にしていた。
アンリがパソコンを操作し始めると、隣のベッドであられも無い姿をさらし、ヘルメットから送信されるプログラムによって「教育」を受ける麗しき令嬢の様子が、僅かに変化を見せ始めた。
〈ア―アアア―〉
令嬢の声がどこか機械的な、抑揚のない声に変化した。投与された薬が、プログラムと深く結びつき、効果をさらに高めた。結果、彼女はさらに深いトランスに導かれ、無感動な人形へと変えられていったのだ。
それでも、与え続けられる性感を感じるだけの意識はとどめているのだろうか。それとも、体が心とは別に、勝手に反応しているにすぎないのかもしれない。
麗子嬢は、鎖につながれた中で出来る最大限の動作で、体に堆積し続ける澱のような性感に、ただ耐えていた。
現地から遠く離れた社長室のモニタからも、その異様な光景ははっきりと見ることができた。
男が持つモニタのリモコンを操作すると、画面の拡大・縮小、音量調整、視点変更と、好みの設定に変更することができる。臨場感ある映像を見せつけられる山居の精神は、ずいぶん前から疲弊していた。
〈ア!……ヒッ、ヒッ!〉
「麗子っ!」
愛娘の悲鳴に心を乱されながらも怒りに肩を震わせる山居を見据えて、男はさらにたたみかける。
「さあ、先生。何度も言いますよ。お嬢さんをあなたとは全く縁のない『別人』に変えたくないのでしたら、早く用意してくださいよ。
何、先生なら簡単なことだと確信しているからこそ、こう何度もお願いしているのではないですか」
街の象徴となって久しい、リンテンビルディング、その最上階での出来事である
203:インストール
10/02/27 19:12:13 pOJVOG5g
オープニングは以上です。改行等、読みにくくなってしまいすいません。
204:名無しさん@ピンキー
10/02/27 19:22:47 1vHJKISK
頑張ってくださいね。
続き楽しみにさせていただきます。
205:名無しさん@ピンキー
10/02/27 20:58:21 rmN7PsPV
麗子の堕ちっぷりに期待。続き待ってます。
206:名無しさん@ピンキー
10/02/27 23:38:21 tEsQXTlR
無限のフロンティアに笛の音で他人の意識を操るキャラが出てきたぜ
一戦闘すれば正気に戻るから足止めにしか使えないようだけど
モチーフはハーメルンの笛吹きかな
207:名無しさん@ピンキー
10/02/27 23:56:12 BwRZCc6J
> お嬢さんをあなたとは全く縁のない『別人』に変えたくないのでしたら、早く用意してくださいよ。
『別人』に変えて欲しいと思ったのは私だけではあるまい。
208:名無しさん@ピンキー
10/02/28 00:10:28 90bDe3nf
>>206
発売前に公式のキャラ紹介見て期待してたが、
さすが旧バンプレの中の人はわかってるな
角煮のbsmhスレによると外見の変化がないらしいんで少々がっかりだが
209:名無しさん@ピンキー
10/02/28 00:55:54 LGmP6HWm
>>174
あれメダパニなのかw
喋るというか、記憶を探られてる感じだったな。
ヨギの爺様やらアリアハンの王様は喋らされてたが
女性が全くノータッチだったのが残念だった。
210:名無しさん@ピンキー
10/02/28 04:16:55 bR4WNmnQ
Magical☆Girlっていうところが出してる同人ゲーの新作で
第一作目のヒロイン二人が悪堕ちして出てきたので一応報告
ただ尺がかなり短い(Hシーン1つしかない)ので
悪堕ち目的で買うのはあまりおすすめしないけど・・・
211:名無しさん@ピンキー
10/02/28 10:11:54 ztK1AmDy
>>135
真夜中の探偵 ナイトウォーカー
主人公が吸血鬼で、ラスボス戦で瀕死になったヒロインを吸血して命は救ったものの
ヒロインはどんどん病んでいく……
……という夢オチだった。
別に敵に寝返ってはいなかったしちょっと古いから違うだろうけど
主人公号泣で思い出した。
ラストがアッーーな展開で俺も号泣した。
212:インストール
10/02/28 21:50:35 kZXfpOPT
先日に続いて、SS「インストール」を投下させていただきます。
今回は催眠成分がありますが、エロはありません。
前回はオープニング、今回で1話目になります。
213:インストール
10/02/28 21:52:07 kZXfpOPT
病院内の丸椅子に腰かけてはいるものの、古鳥舞実が行っているのは受診ではなく、とある事件に関する捜査だった。
だが、彼女の子供っぽい外見のせいで、どうも雰囲気にしまりがない。
「催眠剤……ですか」
目の前に座る女医は、白衣の上に聴診器をかけていた。あごに軽く手を当てた格好で、考えるそぶりをしていた。
どこかのんびりとした、優しいお姉さん然とした人だ。
ここが診察室ではなく、病院の先生達が短い休憩をとる仮眠室である筈なのに、白衣の人と向かいあっているだけで、
診察を受けているような気分になってくるのはなぜだろう。白衣が患者に与える影響は大きいという話は本当なのだなと、漫然と舞実は思った。
催眠剤は危険性があるのですか?それが先ほど舞実が女医にした質問である。
捜査中の事件に、期待の新薬として名高い、催眠剤「クリアハート」が関わっている可能性があると、本部から指令があったため、
古鳥捜査官はこうして病院に足を運び、専門家の意見を仰いでいるのだ。
あごに当てた手を離し、女医は再び話し始めた。
「催眠剤に関わらず、どのような薬も使いすぎれば毒ですからね」
女医は、ポケットから小さな紙の箱を取り出した。「クリアハート」。半年前に、病院で広く使われるようになった新薬である。
「これなんかもですね、やっぱり、過ぎると毒ですよ」
言葉を続けながら、彼女は箱の中から1枚の銀紙を取り出した。錠剤が6つ、封入されている。
「私たちが患者さんに渡すのは1つだけですね。これはメーカーさんからも強く言われていることでして」
どこかのんびりとした女医の声は、患者さんに安心感を与えるのだろうなと感想を心で述べながら、舞実は尋ねた。
「このクリアハート、具体的にはどのような作用があるのですか」
「効果はですね、脳の神経系に働きかけて、不安や興奮を抑えるのが主ですね。
飲むと、1分ほどで身体の緊張がほぐれて、心もとてもリラックスできる状態になります」
17歳、優秀なる事件捜査官。なのに、未だに診察室では落ち着くことができなくなる舞実には、それは夢の新薬に思えた。
「それとですね。副作用で、ちょっとだけ、眠くなったりしますね。ほんの少し、まぶたが重くなるぐらいですか。
それぐらいのかる~い眠りです」
女医の聞くかぎり、それほど怖い薬ではなさそうだ。催眠と聞くと、どうしてもテレビで見るような、
操り操られの世界を思い浮かべてしまう。例えば、恥ずかしいことをぺらぺらと喋らされたりとか。
女医が、かる~い優しい声で続ける。
「クリアハートが使用されるようになるまでは、鎮静催眠薬を使用していたのです。これも、クリアハートと同じような、
緊張感を和らげ、不安を取り除く作用を持っています」
「効果は同じなのですか?」
「ほとんど変わりません。ただ、用法が違いますね。鎮静催眠薬は主に不眠治療に使いますが、クリアハートは催眠療法に使うのです」
そこで女医は舞実の前で大きく伸びをした。
「ごめんなさい、昨日あまり寝ていないものですから」
仮眠室を借りての意見交換は酷だったのだろうか。
気になさらずにと女医は続けた。
「他の病院さんでもそうではないですかね。クリアハートを不眠治療に使うと言うのはあまり聞かないですから」
「でも作用は同じですよね」
「効果は同じでも、効きかたがまた違いますね。この新薬のほうが、鎮静催眠薬よりも、
より深いリラックス感を患者さんに与えることができます。でも睡眠の方面には効果が薄いです」
再び言葉を切る女医。今度は腕時計を見始めた。
「すいません、忙しいみたいなので後日……」
舞実が申し訳なさそうに言うと、女医はもっと申し訳なさそうに「ごめんなさい、特に意味はないのです」と返した。
小さく咳払いをしたあと、女医は続けた。
214:インストール
10/02/28 21:52:35 kZXfpOPT
「催眠療法を患者さんに適用するのに大切なのは、まずある程度の信頼関係を築くこと、そして緊張をほぐしてあげることですね。
この新薬は、その内の、緊張感をほぐす効果があるのです」
「信頼関係が大切、ですか」
「医療は患者さんと信頼しあうことから始まるのです。特に『催眠』という分野に関しては、テレビで放送されます、
催眠ショーのイメージがありますから、誤解される方もおりまして。なかなか、信頼感を持つことは難しいです」
「え、テレビで大人が子供みたいになったり、動物のようになったりするのは、あれはただの演技ですか?」
舞実の言葉に、女医は少し困ったような苦笑いを見せた。
「いえ、あれも催眠の力で出来ることの一つです。でも、あれは受け手が心の中で与えられる暗示を『許可』しているからできることなんですね。
催眠状態は、意識を失って、簡単に操られる状態を指すのではないのです。意識はちゃんと、はっきりしていますし、誘導者の声も理解できます。
ですから、催眠状態にあっても、嫌な暗示をはねのけることも可能です」
一つ誤解を解いた上で、舞実は質問を変えた。
「事件の被害者はどんな状態なのでしょう?クリアハートの大量摂取が原因なのだといわれていますが」
舞実の質問に、女医は先ほど見せた、あごに手を当てる格好をとる。小説の名探偵が、難しい事件を推理する時にみせる格好みたいだ。
「どうでしょうね。大量に薬を投与されるとああなるものなのかな?私たちは容量を守っていますから……」
「今のところ、クリアハートはまだ店頭販売は禁止されていましたよね。裏の市場では、ダウナー系のドラッグとして出回り始めているようですけれど。
たしか、「ピュア」という名前だったかな」
「依存性はないようですけどね~」
舞実が捜査している事件は、女性ばかりが何日間か行方不明となった後、昏睡状態で発見されるという怪事件だ。
現代の神隠しと呼ばれ、メディアを騒がせると同時に、世の女性の恐怖心をあおり続けている。
被害女性の体内から、クリアハートの成分が多量に検出されていることから、事件を引き起こす何者かが、新薬を悪用していると見られている。
薬の発売元、「ヤマイメディカル」も相当の打撃を受けているとのことだ。
依存性はない、その言葉を聞き、舞実は自分のことのように胸をなでおろした。
舞実がここ、里の水病院に足を運んだのも、目の前の専門家、綾野女医が事件の被害者の一人を担当しているからであるのだが、
まだ専門家をしても上手く説明できないのが現状であるようだ。
「患者さんはどのような状態ですか」
「一応、意識があるのは見て取れます。ペンライトを目にかざして揺らしますと、光を追う反応を見せますし。
けれど、表情がなく、ぼんやりとした感じですね。目はまるで焦点があっていないようですし、大きな音を立てても、
何の反応も示しません。催眠でもなく、睡眠でもない、私どもも、手に余るというのが本音ですね」
綾野女医の説明は、舞実にとって、もうひとつ、ピンとこない話ではあった。催眠について説明を受けはしたものの、
「催眠術」のイメージが未だ根強く残る彼女にとっては、患者の様子が催眠状態ではない、という言葉も、いま一つ納得がいくものではなかったのだ。
そこでふと、思いついたことがあり、舞実は切り出した。
「先生、一回、私に催眠をかけてもらえませんか。時間が無ければ無理は言いませんが、どのようなものなのか、知るのもいいかなと思いまして」
「良いですよ。誤解を解くにも丁度よいでしょうし。やってみましょうか」
215:インストール
10/02/28 21:53:10 kZXfpOPT
清潔感のある診察室の中で、舞実はベッドに横たわり、綾野女医の声を聞いていた。
「……では始めましょう。今から古鳥さんは、気持ちよくリラックスするために、深い催眠状態に入っていきます」
綾野女医の、相手をリラックスさせる優しい声は、ベッドに横たわる舞実にも作用していた。聞きなれた筈の声は、
先ほど服用したクリアハートの効果を受けてか、とても心地よいものとして感じることができた。
ぼんやりとした、眠気にも似た心地の中で、舞実はクリアハートの効果を実感していた。
ベッドに横になる前に、1錠の薬をコップ半分の水と一緒に飲み込んだ。すると、その後すぐに、体からゆっくりと緊張が抜け、
入れ代わりにとても心地よいリラックス感が体中に染み込んできた。まぶたが僅かに重く、考えるのがなんだか面倒になってきた。
なぜこの薬が一部でドラッグ扱いを受けているのか、分かった気がした。
綾野女医に促され、ベッドに横になると、すぐに舞実は、うとうととする気持ちよさの中で、
ぼんやりと視線を天井に彷徨わせはじめたのだった。
「では、まず深呼吸を始めましょう。私の指示するタイミングで、ゆっくりと……体中の力が抜けていくのを感じながら……」
吸って、吐いて。
吸って、吐いて。
もっと深く吸って、ゆっくりと吐きだす。
呼吸と一緒に、舞実の胸が緩やかに膨らんでは縮んでいく。
指示に従って、深呼吸を繰り返していくと、
だんだんと力がぬけて、体がベッドに沈み込むような感じを覚えた。
手、足、お腹、胸、頭。
力が抜け、ベッドに身体を完全に預けるような格好をとり始める。
「では、深呼吸しながら、天井にぶら下がっている、クマのぬいぐるみを見てください。しっかりと、目を離さないで……」
白い天井に、紐で吊られた、小さなクマのぬいぐるみが見えた。僅かに頬笑みを浮かべているようにも見える、可愛いクマのぬいぐるみ。
それをじっと見つめながらも、指示に従って深呼吸を繰り返す。
まぶたが重い。
「まぶたが重く感じるかもしれません。でも、クマさんを頑張って見続けてください。まだ、まぶたは閉じないでください」
閉じたくなるまぶたを頑張って開き、ぬいぐるみを見つめる。それでも、徐々にまぶたは下がって閉じようとする。
そのたびに、綾野女医の声に励まされながら、よりクマのぬいぐるみに意識を向けた。
216:インストール
10/02/28 21:53:43 kZXfpOPT
「つらくなってきましたか。では、目をつむってみましょう。私が10から、0まで、順に数えていきます。
私が0といえば、すっとまぶたが下りていきます。それまで我慢して、じっとクマさんを見つめていてください。
0で、すとーん、と落ちていきます」
綾野女医がゆっくりと数えていく。10から9。ゆっくりと降りていく数。じれったくなるような早さだった。
「……8……7……6……」
舞実は頑張ってまぶたを開き、クマのぬいぐるみを見ながらも、数字を数える声を聞いた。
「……5、4、321」
(えっ?)
何の前触れも無く速まるカウントに、目はクマを見ながらも、舞実は心の奥底で混乱する意識を感じた。
1秒にも満たない混乱は、彼女が懸命に保とうとしていた集中力を一気に切り落とした。
「0」
パチンと、指が鳴る音が聞こえた。まるで電気のスイッチを切るような、軽い音。
すとーん。
まぶたが落ち、ぼやけていた視界は、あっという間に暗闇に閉ざされた。
「落ちます。落ちていきます。沈みます。何も考えません。ただ落ちます。どんどん落ちます。落ちてください。
気持ちいい。落ちるのが気持ちいい」
何も考えない舞実。次々と与えられる誘導、暗示。従う舞実。沈む意識。
既に真っ暗な筈の視界は、もっと暗く、深くなっていくようだった。視界だけではない。
意識自体に、もやもやとした霧がかかったよう。霧が、舞実から現実を切り離していく。
考えることが面倒。初めての感覚なのに、当たり前のように抱く安心・安らぎ。
深いはずなのに、意識がある。意識があるのに、何も考えない。
考えられないのではなく、考えたくない。
辿りついた先は、暗くて、とても不思議なところだったが、そこは舞実にとって、気持ちのいい、素晴らしい空間だった。
気がついた時には、舞実と綾野女医との間に、確かな信頼感が築かれていた。
217:インストール
10/02/28 21:56:10 kZXfpOPT
「手を叩きます。……はい、目を開きましょう」
パン、と手を叩く音で、舞実は驚いたように目を開いた。
あれだけ深いところにいた筈の舞実は、手拍子と共に一息で現実に帰ってくることができた。
朝、気持ちよく目が覚めたときのような、清々しい気分。
「気持ちよくまぶたが開いたと思いますが、あなたはまだふわふわとした、催眠状態にいます。
今もまだ、考えるのが面倒に思えるのがその証拠です。ですから、私がもう一度、指をならす音を聞けば、
またさっきの深いところへ戻っていくことができます」
確かに考えるのが面倒だ。すっきりと目覚めたのに、早くさっきのところに戻りたいという気持ちがある。
最初感じていた、催眠に対する恐怖心は無く、むしろ催眠状態を楽しむ気持ちが強く溢れていた。
綾野女医の、やさしい指示が聞こえる。
「パチン、と指を鳴らす音で、あなたはもう一度、すとん、と目をつぶります。我慢できずに落ちます。
我慢する必要はありません。いいですね。……では、天井のクマさんを見ましょう」
舞実はクマのぬいぐるみを見つめた。
「じっと。……次は右に目を動かしましょう」
右に視線を移動する。壁にかかるカレンダーが見えた。
「クマさんを見てください」
もう一度、真上のクマを見る。
「左を見ましょう」
左を見る。
「右に目を動かして」
パチン。
(あっ)
眼球が右の壁のカレンダーを向く前に、まぶたが落ち、意識はずーん、と深くなる。
「さっきよりも深い。ふかーい。気持ちいいですねー」
また、考えるのが面倒になる、けれど、意識はある、不思議な世界へ、落ちる。
「深い。ただ深い。どんどん深く」
ふわふわと漂う意識。沈み込む心。楽しい。気持ちいい。
「そこはさっきよりも深いですか?ではもう一度目を覚まします。一気に現実へ。……はい」
パン
すっきりとした目覚め。まるで朝起きたような パチン
( )
パチン パチン パチン
218:インストール
10/02/28 21:56:37 kZXfpOPT
「これからあなたは催眠の世界から現実に戻ります。催眠の世界と同じぐらい、楽しくて、おもしろくて、
嬉しいことがいっぱいの、素晴らしい現実の世界です。1から10数えますので、ゆっくりと、体に力を入れていきましょう。
10で催眠は解けますが、解けた後も、あなたが望むなら、またこの世界に戻ってくることができるでしょう。
だから安心して、元気に、起きることができます」
「1。体が温かい」
「2。体に力がみなぎる」
舞実の手が、ぴくっと動いた。
「3。4。5。ほら、私が数えている間にも、元気が溢れてくる」
楽しい気分、高揚感が舞実の心に訪れる。
「6。早く色々なことを考えたい。7。早く体を動かしたい」
ふうっと、体が持ちあがる感覚。意識の海の底から、すうっと体が浮きあがる。
「8。目を閉じている筈なのに、なんだかまぶしい。9。ほら、あの音が聞こえます。10」
パン。
219:インストール
10/02/28 21:57:13 kZXfpOPT
「すごく気持ちよかったです。体が軽くなったし、元気がでてきましたし」
ベッドに腰掛け、はしゃぐ舞実に、綾野女医は優しく微笑みかける。
「古鳥さんが体験されたのが催眠です。これを応用して、私たちは患者さんの悩みを解消しているのです」
綾野女医は、二つのコップにお茶を注ぎ、一つを舞実に勧めた。
「本当は、もっとじっくり時間をかけて催眠状態に入ってもらうのですが、クリアハートを使用すると、
格段に短い時間で深い催眠状態に入っていただけるようになります。催眠に中々入れない人も、この薬を服用すれば、
楽に深い催眠に入ることができるようになりますし。本当に助かっていますよ」
熱いお茶をうまそうにすすりながら、綾野女医は言った。
麻薬のような扱いで裏市場に出回ったり、奇怪な事件に使用されたりで、またたく間に悪評が立ったクリアハートだが、
ホームグラウンドではかなりの活躍をしているようだった。考えれば、モルヒネも麻薬と同等の扱いをされることがあるが、
実際は痛み止めで使われる薬であるし、抗がん剤も、激しい副作用があるからと、使われないことも多いようだが、
多くの人をがんから救っているの薬なのだ。どの薬も、使いどころによって見せる顔が変わるのだろう。
催眠療法ですっきりしたところで、舞実は本題に入った。
「患者さんは、催眠状態でも、睡眠状態でもなさそうなのですね」
「そうですね。あのような状態はちょっとおかしいです。意識はある筈なのに、意思がない状態です。まるで……」
言葉を探すように、綾野女医は目をつむった。
「……まるで『催眠術』の中にいるような」
さきほど、「催眠」を説明した女医とは思えない発言だった。舞実は思わず「えっ?」と声を漏らしてしまった。
女医はあわてて言葉を継ぐ。
「もちろん、あれは催眠ではないですよ。……ですが、実際に患者さんと接して思うのです。
フィクションの世界で、術者が催眠術を解くまで、催眠にかかったまま解けずにいる、という話が出てきますでしょう。
あれに似ているかなと」
舞実が持っていた催眠のイメージ。術者によって意識を意のままに操られる女性。ほくそ笑む催眠術師。
「私がメーカーに尋ねた話では、クリアハートの大量摂取は、体に大きなダメージは無いものの、長い倦怠感、
思考力の欠如が引き起こされると聞きました。ですが、それでも意識を失うだとか、あのような状態になるとは……」
そこで、綾野女医は考え込んでしまった。長い時間が流れたあと、彼女が継いだ言葉は、「私には何とも言えません」だった。
「薬の大量摂取の影響かどうかは分かりません。けれど、クリアハートだけでは、あのような状態にはならないと思うのです」
これは医者の勘です、と女医は付け足しだ。
220:インストール
10/02/28 21:57:52 kZXfpOPT
「桜木さ~ん。少し目を開きますね~」
綾野女医は、ベッドに横たわる患者にやさしく語りかけた。そして、閉じられたまぶたをゆっくりと開く。
「すこしまぶしいですよ~我慢してくださいね~」
そう言って、綾野女医は、胸ポケットからペンライトを取り出す。スイッチがオンになると、
温かさを感じさせるオレンジ色の光が先端からのびた。
女医の様子を見ながら、なるほどと舞実は思った。事件の被害者、桜木真帆は、まるで女医の言葉など、聞こえてもないようだった。
だが、綾野女医の向けるライトには、はっきりとした反応を見せる。右へ光が行けば、右へ、左へ移れば、左へ。
しっかりとした動きで光を追う彼女の様子を見れば、意識があるのだと思いたくなる。
「今はこんな状態です。薬はもう、切れていてもおかしくは無いとは思うのですが」
綾野女医は、聴診器を耳に付けて、桜木真帆の胸元にベルを当てた。
始終、反応を見せないのに、なぜライトには反応するのだろう。女医の話では、音には反応しないらしい。この違いは何なのだろう。
昏睡状態と自分達は片づけているが、彼女はそもそも「眠り」の状態にあるのだろうか。
考え出すときりがないが、担当者の綾野女医は、舞実とは比較にならないほど広く想像の根を伸ばしている。
それでも皆目、分からないのだ。
「あ……あ……」
突然、小さくか細い声が、桜木真帆の口から洩れた。舞実が驚いて、横になる桜木真帆を見ると、彼女は口だけではなく、
まぶたをもしっかりと開き、光なき瞳で天井を仰いでいた。
「い、今反応が」と希望の声をだした舞実だが、綾野女医は残念そうな顔をした。
「ときどき、声をだすことはあるのですが、こちらから声をかけても反応はないのです」
そう言いながらも、まだあきらめ切れてはいないようだ。
綾野女医は、必死に「桜木さん。聞こえますか。桜木さん」と繰り返し呼びかけていた。
だが、その甲斐むなしく、桜木真帆は心持大きいこえで「はあっ……」と喘ぐ声を出したあと、また目を閉じ、静かになってしまった。
「睡眠状態でもなければ、催眠状態でもない」
桜木真帆から手を離した綾野女医は、つぶやくように言った。誰に宛てた物でもない、むなしさが漂う声だった。
221:インストール
10/02/28 22:00:06 kZXfpOPT
1話はこれで終わりです。オープニングで出てきた登場人物は3話目で登場予定です。
あと、今回も誤字脱字があると思います。ごめんなさい
222:名無しさん@ピンキー
10/03/01 00:14:34 7QkiBH5i
>>211
ナイトウォーカー懐かしい
トライガンがやってた頃だったな……
223:名無しさん@ピンキー
10/03/01 01:58:34 ztX0NxOw
おいおい投下してんだからスルーすんなよ。
嘘でも続きが早く読みたいです!ぐらい書いてあげろよ。
投下直後に黙殺とか前にもあったが、反応してあげようや
224:名無しさん@ピンキー
10/03/01 02:31:51 INdUPcKk
露骨なほど作者を叩きやすくするための煽り
同じマイナージャンルを愛好する数少ない同志なんだから、
もっと純粋に楽しんでもいいではないか
>>221
投下乙
催眠シーンと端正な文章につき、これからに期待
しかし悪堕ちはまだ出てきてないため、これ以上の感想は控えさせてもらう
これから何回か分けて投下する雰囲気だが、くじけることも多々あるだろう
ご武運を
それとおそらく知ってるだろうが、催眠スレも一応ある
225:名無しさん@ピンキー
10/03/01 03:49:34 XPJUN7EO
>>221
乙です
元ネタがよくわからないのだがオリキャラってことでいいのかな?
226:名無しさん@ピンキー
10/03/01 03:54:44 HBHJW0W3
続きが早く読みたいです!
嘘です
227:名無しさん@ピンキー
10/03/02 20:06:06 Q9R6ycVn
てす
228:名無しさん@ピンキー
10/03/02 21:18:42 SvYcTtWw
復帰すなあ
229:名無しさん@ピンキー
10/03/02 21:38:14 1ou2reEL
調教や洗脳などで悪の奴隷になるサーバー
230:名無しさん@ピンキー
10/03/02 23:41:03 pl1yre+v
ある意味悪に落とされたなww
231:名無しさん@ピンキー
10/03/03 04:43:17 4eC64vY7
>>223
SSはどうでもいいって奴もいるんだしスルーすんなと言われてもなぁ
そういうのはSS楽しみにしてる奴に任せた方が良いだろ
232:名無しさん@ピンキー
10/03/03 07:23:10 933j44dP
まーた荒らしと荒らしに気づかないやつが言い合いを始めるのか
233:名無しさん@ピンキー
10/03/03 10:05:13 nrnsqtOp
これはゴルゴムの仕業だな
間違いない
234:名無しさん@ピンキー
10/03/03 12:10:51 5QqlcH9O
そうやって何でもウリのせいにすれば良いニダ
まあ実際、ウリのせいニダ゙けどね
235:名無しさん@ピンキー
10/03/03 14:32:47 XBUanv71
というか他人にどうこうしろと言いながら自分は何もしないで
さらに「嘘でもいいから」とかつまらないと言っているのと同じだし
そんな奴が最悪だろう
236:名無しさん@ピンキー
10/03/03 15:00:22 hKRULkbV
アイルで魔受胎2出るみたいだな
前作よかったから期待したい
237:名無しさん@ピンキー
10/03/03 15:14:42 933j44dP
あれって、「何この抜きゲー」って思ってやったら
内容が意外にしっかりしててビックリした記憶がある。
でもまぁ、悪堕ちではないような気もする…
238:名無しさん@ピンキー
10/03/03 15:15:52 RAJBwOHb
別にSSの感想を書こうが雑談を書こうが強制は良くない
>>223みたく感想を書けとか大きなお世話、反応したくなるようなSSなら、言わんでも書く
上手い下手以外に好みかどうかもあるし、書き手も気にせず投稿すればよし
煽ったり、けなしたり、ヨイショしたり、そういうのは個人ね感想に留めて押し付けはしない
239:名無しさん@ピンキー
10/03/03 15:21:55 Pc8Z+4Xh
>>237
洗脳装置あり異形化ありの上に悪堕ちENDばかりじゃん
あれを悪堕ち作品といわずしてなにを悪堕ちというのか
240:名無しさん@ピンキー
10/03/03 15:23:45 u+Mbe0vT
魔受胎ってやったことないけどそんなにいいのか?
241:名無しさん@ピンキー
10/03/03 15:27:15 317Wyb7W
kwsk
242:名無しさん@ピンキー
10/03/03 16:29:17 hKRULkbV
HPできてるよ
243:名無しさん@ピンキー
10/03/03 17:52:23 2n1hJKAG
>>240
メインっ子が気に入ったならいいと思う
個人的には敵方の女と親友キャラの堕ちパターンの方が良かったんだが
どちらもシーンが少なくてちょっと物足りなかったな
244:予定調和
10/03/03 23:03:01 4ftfFKS3
前回投下したSSに目を通してくださった方々、ありがとうございます。
前回の粗筋
蘭陥落。それと、いのちだいじに。
それでは続きをどうぞ。
245:予定調和
10/03/03 23:11:20 4ftfFKS3
ホワイトウイングで接近戦を担当している黒松冬子(くろまつとうこ)は、倒壊したビルの影から月夜女姫の様子を伺っていた。
呼吸を整え、バンデージを巻いた拳を握り直す。冬子が晴川から叩き込まれたのはルールのある1対1の一般的な格闘技ではなく、
純粋に相手を壊す武術だった。ナイフすら闇界障壁で弾かれてしまうため武器は一切使えず、
あくまで殴る、蹴るでしか黒の一族にダメージが与えられない冬子だったが、元々武道を嗜んでいたこともあり、
相手の飛び道具をかわして懐に入れるようになってからは敵の障壁を崩して攻撃の起点を作るのに重要な役割を担っていた。
本部を襲撃し、わたしたちを撃退したあの黒の一族の個体は「月夜女姫」と名前が付けられた。最初に誰が呼び始めたのかはわからない。
いつの間にかテレビや新聞でもそう呼ばれていたし、容姿も月夜女にそっくりで違和感がなかった。
しかし月夜女という名前自体は世間に広まっていないはずなので、月夜女姫自身が名乗り始めたのだろうと晴川さんが言っていた。
本部が襲撃されてから、わたしたちは各地の基地を転々としながら月夜女姫の行方を追っていた。
晴川さんはあり余るほどのお金とコネを持っていて、放浪生活でも初めのほうは大して苦に感じなかった。
でも、その財力とコネをちらつかせて従えていた協力者が次々と月夜女姫に引き剥がされていき、
それまで存在すら世間から隠されていたホワイトウイングがマスコミに丸裸にされた。
もちろんわたしたちの顔も割れ、「日本の平和を裏で守ってきた正義の戦士」なんて一時期は持ち上げられたけど、
次第に誰が流したのかわからない根も葉もない噂がこびりつき始めた。
月夜女姫とその妹が各地で暴れ始めてからはわたしたちが役立たずと罵られるようになり、晴川さんも様々な嫌がらせをされていた。
さらには予め1時間の避難する時間を与える慈悲深さ、それと清々しいまでの残虐さを併せ持つギャップ、
何者も寄せ付けない強さと美しさで月夜女姫を崇拝する人さえ出てくる始末だ。
あの人間離れ……いや、現実離れした美貌にわたしも少し羨ましいと思わなくもないけど、
それを足しても街を壊して暴れまわっている化け物を崇めるなんて馬鹿げてる。
何がカリスマよ。どうせ自分の住んでいる街が襲われたら一目散に逃げるくせに、人の苦労も知らないで。
なんで正義側のわたしたちが世間から叩かれなきゃいけないのよ。月夜女姫の印象操作のせいにしても、わけがわからない。
しかし、このまままた5人で月夜女姫を襲撃したとしても倒せる可能性はかなり低い。
なにしろ1回フルメンバーで挑んで、本体に傷1つ付けられずに負けているのだ。傷を付けたのは月夜女姫を守る強力な障壁だけ。
今まで戦ってきた黒の一族にも全員闇界障壁は存在していたけど、普通の銃とかは防げてもわたしたちの魔力を使った攻撃には無力だった。
御神刀でひびが入ったということは完全に無敵じゃない。それでも今のわたしたちの火力では壊すことがほぼ不可能な強度だった。
どんな強固な障壁も例外なく壊せてきたわたしの拳もあれには通用しない。
1回目の戦闘で苦戦しても、2回目で対策を立てれば倒せたこれまでの敵とは違う。
勝てる気がしない。でも、戦わなくてはならない。わたしたちが戦わなければ、黒の一族がこの国を破壊し尽くすだけだから。
今わかっている唯一の弱点は、わたしたちと違って月夜女姫は戦闘慣れしていないこと。そこを突くしかない。
で、どうしてわたしがこんなところに1人でポツンといるのかというと、索敵だ。
月夜女姫は街を破壊するときのみ単独行動することがわかっていて、ヘリコプターなんて目立つものを使うと2人がかりで襲われることもわかっている。
1人でも勝てそうもないのに、2人だと勝率は絶望的だ。
なので、大人数でバラバラに効率よく索敵して、後から合流するという作戦になった。
大人数とはいえ実際に戦うのは私たち5人だけだからそれ以外の人はあんまりいないけど。
今回はたまたま襲われた街の近くにわたしたちが滞在していて、月夜女姫の単独行動のうちに見つけられたというまたとないチャンス。
これを逃したら次はないかもしれない。
後は合流を待つだけだけど……通信機の位置表示を見ると全員かなり離れている。これは間に合うか―
「ねえ、そこの貴方。面白そうな機械持ってるじゃん。私にも見せてよ」
「しまった!」
246:予定調和
10/03/03 23:15:41 4ftfFKS3
月夜女姫を注視するあまり、後方の警戒が疎かになっていた。まさかこんなに近くに妹のほうがいるなんて!
ここはまず身の安全を確保しないと。それから仲間に連絡!
わたしは妹のほうから距離をとるべく、かつ月夜女姫に見つからないように瓦礫の隙間を全速力で駆け抜けた。
「晴川さん、妹のほうの襲撃を受けました!引き付けつつ、街の中央を目指します!」
「わかった!それと……」
引き付けるとは言ったものの、落ち着いて周りを見渡すと誰もいなかった。ひょっとして速く走りすぎて振り切ってしまったかしら?
「いっただきいー♪あれ、このマークって……ホワイトウイング?」
信じられない……あの速さについてくるどころか、回り込まれた?そんな!?
「おい、どうした黒松!応答しろ!」
「貴方がお姉様の言ってた晴川さん?はじめまして、天道蘭です♪」
ん、天道?どこかで聞いたことがあるような……。
「なっ、お前、黒松をどうした!」
「え、黒松?それって……」
「返して!」
通話に意識が向いている今なら取り返せると思ったけど、能力が未知数のこいつには無謀な賭けだった。
「嫌」
蘭は2メートルほど飛び上がり、わたしが拳を空振りした隙を狙って脳天に踵落としを食らわせてきた。
頭の中がぐらぐらして平衡感覚が保てなくなる。
もし蘭の履いているものが踵の尖ったハイヒールだったならば、これだけで頭が割れて即死していてもおかしくない。
「そうそう晴川さん。黒松さんだけど、早く助けてあげないとお姉様が何をするかわからないよ。何されるんだろうねえ……」
クスクスと影のある笑い方をして、蘭は通信機を地面に叩きつけると靴のつま先でグリグリと液晶部分を割って使い物にならなくした。
あの分だと通信機は生きているかどうかわからない。
「じゃあ黒松さん、何して遊ぶ?」
一瞬清廉な顔立ちに戻った蘭の顔が、すぐに狂気に塗り変えられた。
逃げることも叶わず、わたしは完全に蘭の玩具にされていた。
姉の月夜女姫と同じ性能の闇界障壁を持つだけでなく、姉より力を使いこなしていて戦闘自体も上手い。
おまけに得意の接近戦で打ち負けるとなれば、最初に蘭に見つかった時点でわたしの運命は決まっていたのかもしれない。
「黒松さん、治癒術かけてあげるからもう1ラウンドやらない?」
「ふざけ、ないで……ぐ……見下すのも……はあ……いい加減に……」
もう、体が倒れないように支えるだけの力しか残ってない。
動き辛そうなロングスカートのくせに月夜女姫とは段違いのあの機敏な動作……思い出しただけでさらに戦意が削がれる。
「だってさあ、私がかなり手加減したのにこれでしょ?まさかさっきので全力でした、なんてことはないよね?」
「……」
悔しいけど、言い返せなかった。少し組み合っただけで、それほどまでに力の差があることを痛感したから。
これでは5人全員で挑んでも簡単に殲滅させられるかもしれない。
そうなると他のメンバーに出直してきたほうがいいと伝えたいけど……通信機は壊されている。
「ちょっと、ほんとにさっきので全力なの?どいつもこいつも張り合いがない……こりゃあ5人揃って本気の半分でやっとちょうどいいくらいかなあ」
嘲弄されることに慣れていないわたしに、蘭の一言一言が鋭利な棘となって心に突き刺さっていく。
明らかに手を抜かれてるのは感じられたけど、まさかここまで差があるとは。
時間稼ぎならできた気がした……でもそれは「できた」わけじゃなくて「わざとさせられた」だけだったみたい。
もう1人誰かがここに近付いてくるのを感じる。急いでいないということは、わたしの仲間じゃない。と、いうことは……。
「蘭、さっきホワイトウイングの通信機を拾ったんだけど、誰か見かけてない?」
心身共に傷だらけでこの姉妹に1人で対峙することになろうとは。早く誰か助けに来てくれと祈る以外にわたしに何ができる?
でも……ここで皆と合流してもこの姉妹を撃退できるだけの戦力が5人合わせても足りそうにない。
撃退どころかわたしを助けて逃げることすら難しい。
「ああ、それならこの人、黒松さんのだよ」
「えーと……蘭がボコボコにしすぎて、よくわからないのだけれど」
今のわたしの顔って、そんなに酷いの。服は上下ともビリビリに破れボロ布同然になっていたし、
全身傷だらけで骨も何箇所か折れているのはわかるけど、顔は鏡がないからよくわからない。
「まあ、この見覚えのある黒のリボンで纏めたツーサイドアップは間違いなく黒松さんね」
247:予定調和
10/03/03 23:18:27 4ftfFKS3
これからこの2人に好きなだけ弄られ、精力を吸われ尽くされて死んでしまうの?
ホワイトウイングに入ってから、命の危機を感じたことはこれが初めてじゃない。
何度も死にかけたし、敵の罠に嵌められて泣きたくなるような状況も経験した。
それでも諦めなかったから、黒の一族を残り数体のところまで追い詰められたんだ。
心を折られなければ、まだ勝機はある。いざというときに安心して背中を任せられる仲間がわたしにはいる。皆を信じよう。
「可愛い顔が台無しよ……痛かったでしょう。よく我慢したわね」
「……」
「それにこんなにボロボロになっても立っていられる精神力、賞賛に値するわ」
「あなたに褒められても嬉しくないんだけど」
何をするつもりなのよ。褒め殺しでわたしが心変わりするとでも?
「そんなに刺々しくしないで。これから私たちと一緒にやっていくんだから」
「……はあ?わたしがあなたたちに手を貸す?全く、悪い冗談だわ」
普通の人間と黒の一族は永遠に相容れない存在なの。仲良く共存なんてできるわけがない。
人間を食べる黒の一族に協力しろだなんて、こいつは自分の言っていることの意味がわかっているのかしら。
「私も蘭も、元々は普通の人間だったの」
「それは初耳だわ……本当に?」
「あら?晴川は私が人間から変化するところを見てるはずだけど、聞いてないの?」
もし月夜女姫の言っていることが本当なら、今後黒の一族はどんどん増えていく。そうなると世界が廃墟と化すのもますます早くなる。
むしろ既に数え切れないくらいに黒の一族が増えているのかも……大変!早くこのことを皆に知らせないと!
「それで、今まで何人の人間を黒の一族に堕としたの?」
「まだ私は蘭だけよ。そしてお前が2人目」
「あなたの味方になってホワイトウイングの皆に迷惑をかけるくらいなら、死んだほうがマシよ!」
こういう状況のときの模範解答のような台詞が、口から出せた。
だが、意地に体がついてこなかった。
「生きたい」という生命にとって当たり前の欲求が、わたしの理性を押さえ込んでいた。
「そう言って実際に舌を噛み切って死ねる人間は殆どいないけどねえ。怖くないよ、最初はチクッとするけどすぐ楽になるから」
「そうそう。さあ、力を抜いて……」
「あなたが魔眼を使うことくらい、晴川さんから聞いてるわよ!」
目を逸らしたから噛み付かれる瞬間はわからなかったけど、噛み付かれた首筋だけでなく、全身を鋭い痛みが駆け回った。
「いっ……」
<これからゆっくりお前を真っ黒に染めてあげるからね>
何なの、この感覚は……頭の中に月夜女姫の声が響いてくる。
その言葉は脳に直接刻まれるような強制力さえ感じられて、自意識を保つのが急に難しくなる。
<勝手にわたしの中に入ってこないで……頭がおかしくなりそう>
<お前が黒の一族になれば、今やっている街の無差別破壊はやめてもいいわ>
<信用できないわ。他にもっと酷いことをやるつもりね>
<しないわよ。大体、そんな約束も守れないような人が、わざわざ避難する時間を設けると思う?>
<それもそうね……>
頭のネジを1本ずつ外されているような危険な心地よさ。
脳を直接撫でられているような不快だけど癖になる不思議な感覚。
このままでは手遅れになる、一刻も早く引き剥がさないと、とは思っていても力がまるで入らない。
<それに、私たちの目的は普通の人間との共生よ。晴川みたいに黒の一族だけを一方的に排除しようとするほうが間違っていると思わない?>
言われてみればそうだ。能力が発現してから晴川さんに「黒の一族は存在しているだけで世に災厄をもたらすから排除しなければならない」と言われて、
今まで特に何も考えずに黒の一族を討伐してきたけど、盲目的な行動だったのではないかと思えてくる。
<私は晴川のような過激派さえいなくなれば、これまで黒の一族を駆逐してきたホワイトウイングを許してもいいと思ってるわ>
<晴川さんが、わたしたちを洗脳していたというの?>
この時点で既に冬子の体は完全に月夜女姫にもたれかかる姿勢になっていて、
手足はだらりと垂れ下がったままで時折ピクッと痙攣する以外に動きはなくなっていた。きりりと引き締まっていた顔はもう面影もなく、
ぼんやりと開かれた口からは甘い声が漏れ始めている。
<そう。月夜女様があいつに殺された時は悲しくて、悔しくて、涙が止まらなかった……>
どうしてだろう。月夜女を散々痛めつけたのはわたしなのに、まるで自分の大切な人を亡くしたように胸が痛い。
どれがわたしの感情で、どれが月夜女姫の感情なのかわからなくなってきた。
248:予定調和
10/03/03 23:22:48 4ftfFKS3
<お前がしている行為は、殺人と大差ないのよ>
<そんな……>
そう言われると、罪悪感に押し潰されそうになる。今まで数え切れないほどの黒の一族を狩ってきた。
直接手を下したのは全部晴川さんだけど、わたしがしたのはその手助けに違いない。
冬子が意思を感じられない目からぽろぽろと涙を流す様を蘭が興味深そうに覗いていた。
<でも大丈夫。お前がやったことは全部晴川のせい。そうでしょう?>
<……その通りです……>
すーっとしみこんで来る声を聞き続け、なんだか瞳孔が広がっているような気持ちいい感覚に浸ってる。
<素直に答えてね。自分を捻じ曲げた晴川が憎い?>
<はい……憎いです>
月夜女姫の質問に肯定するたびに、底なし沼に引きずり込まれているような気分に陥る。
まだ頭の片隅では質問に疑問符が浮かんでいるのに、体が先走って制御できていない。
気付いたときにはもう沼の水面が首の辺りまで達しているようで、自力で出られそうになくなっていた。
<私は晴川に復讐しようと思っているのだけど、協力してくれない?>
<はい、わかりました……つきよ、め……ひめ、さ……ま>
会話に流されるままに月夜女姫様に心からの隷従を誓った瞬間、邪な力が魂を汚していく早さが急激に上がる。
でも、それでいい。真夏の生暖かい風が冷え切った私の体を撫でるのが気持ちいい。
ん?何か背中がムズムズして……。
<もう、大丈夫そうね>
月夜女姫様が口を離して数秒も経たないうちに、ボロ布同然だった服の隙間から立派な黒い翼が生えてきた。同時に全身が発火しそうなほど熱くなる。
「う……ああ……ああああアアアア!!」
両手の爪がギリギリと音を立てて鋭く伸び、暗くてよく見えなかった周囲の様子もはっきり見えるようになった。
黒の一族は暗闇だとこんなふうに見えているのか。元の裸眼の視力も悪くはなかったけど、これなら遠くの仲間も格段に見つけやすい。
「おめでとう。これでお前もただの人間から私の手駒に昇格ね」
「はい、ありがとうございます」
うふふ、月夜女姫様に認めてもらっちゃったあ。嬉しい。この期待を裏切らないように、しっかり働かないとね。
「これから言う私の指示に従いなさい。蘭も聞いておいて」
月夜女姫様の手足となって働けることの喜びに心が震える。
ああ、今なら月夜女姫様を崇拝する人間が出てくるのもわかる気がする。なんとなく、私の心が月夜女姫様の鎖に縛られているのがわかる。
晴川に従っていたときにはない、魂の呪縛による強制力に頭と体が突き動かされる。それがたまらないほどに心地いい。
人間の精力ってどんな味がするのか、今から楽しみね。
晴川たちホワイトウイングが現場に駆けつけたときに見たものは、蘭に足蹴にされている冬子だった。
蘭は短い髪をかきあげて晴川たちを紅い瞳で一瞥すると、ニヤリと不敵に笑った。
「黒松!しっかりしろ!」
「あ、晴川さん……?」
「ギリギリセーフってところだね。もう十分サンドバッグにして遊んであげたから、黒松さんは返してあげるよ。それっ!」
「きゃっ!ん……」
乱暴に蹴飛ばされてホワイトウイングに返された冬子は、服が血をたっぷりと吸っていて見るからに痛々しい。
「おいおい、助かるのかこれ……足が変な方向に曲がっちゃってるけど」
「ごめん、なさい……皆が来るまで、持ち堪え、ごぼっ!」
「治癒は私に任せて!皆さんは黒の一族の相手をお願いします!」
上は涼しげなキャミソールで、下は動き辛そうな薄手の生地のロングスカートという華美な装飾のない服を身に纏った蘭は、
敵が目の前に現れたというのに余裕を崩さなかった。
「今日はほんとについてるよ。さっきは若いカップルを襲ったんだけどさあ、女のほうの反応が最高だったね。
操って彼氏を痛めつけさせてから意識を戻してあげたら『もう嫌……生きていけない……』だってさ!
彼氏を傷付けたくらいで自己嫌悪に浸ちゃってんの。『殺してください』って言うからゆっくりじっくり殺してあげようと思ったら、
今度は死ぬのが怖いって泣き叫ぶの。それが楽しくて楽しくてさあ……くくっ、お腹が捩れるかと思ったね」
「こんな悪魔がまだ生き残っていたとはな……人の心を弄ぶその行為、最低だな」
倒れた冬子と治療に徹する秋生を庇うようにして、残りの3人が前に出る。
249:予定調和
10/03/03 23:27:08 4ftfFKS3
「さらにこうやって正義ぶってるおっさんも虐めることができるんだから、ラッキーとしか言いようがないね!」
「そうやって調子に乗っていられるのも今のうちだよ!」
春香の影に隠れて密かに力をためていた夏菜が、急に飛び出して一気に蘭との間合いを詰める。
「これでも食らいな、デビルバニッシュ・デュアルアサルト!!」
夏菜が圧縮された高密度のレーザーを蘭に放つが、間一髪で避けられてしまう。
しかしレーザーは闇界障壁を貫通し、蘭本体にもそれなりのダメージを与えていた。
「いてて。へえ、なかなかやるじゃん」
「ふっふっふ。レーザーを極限まで圧縮することにより、類稀な貫通力と衝撃波による追撃ができるようにしたのがこの技よ!」
「馬鹿!暢気にこっちを向いて技の解説なんぞしてる場合か!」
「夏菜ちゃん、危ない!」
春香が横から夏菜を押し倒したことにより、蘭が放った光弾は夏菜には当たらずにコンクリートの破片を細かくしただけで済んだ。
「もー、夏菜ちゃんはいちいち技名を叫んで使用後はポーズをとらないと気が済まないの?」
「テンションが上がらないのよ。冬子だって毎回叫んでるじゃん、『せぇい!』とか『とぉっ!』とか」
「あなたと一緒にしないでもらえるかしら?」
春香と夏菜が振り向くと、腰に両手を当てて不満そうな顔をした冬子が立っていた。
「あ、冬子ちゃん。もう戦えるの?」
「ええ、流石白石さんだわ。もう腕も足も全く問題なし。それより、お喋りしながら勝てる相手じゃないわ、集中して!」
月夜女姫と同じ魔法を防ぐ闇界障壁を持つものの、硬さは夏菜か冬子の攻撃で壊せるくらいで無敵というほどではなかった。
その代わり月夜女姫より戦い慣れしていて、致命打になる閃光弾や晴川の攻撃は確実にかわしてくる。
攻撃も広範囲を一気に焼き払う術が厄介だが月夜女姫ほどの威力はなく、このままいけば何とか倒せそうには見えた。
「やっぱりこのくらいがちょうどいい刺激ね」
蘭に焦りは見えないものの初めに見せていた余裕は消え去り、確実にその体に疲労を蓄積させている。
「まだ……やれる!」
4人が一斉に蘭に飛びかかろうとしたとき、後衛にいる秋生が声を張り上げた。
「皆さん、待ってください!何か違う気配が近付いてきています!」
いち早く別の存在の接近に気付いた秋生が背後を振り返ると、月明かりでも大きな翼が確認できる距離に月夜女姫がいた。
「白石、どうした……くそっ、出やがったか!」
「蘭、いい加減遊びすぎよ。朝になっちゃうじゃない」
ここで晴川は後一歩まで追い詰めた蘭の討伐を諦め、全員に逃走を指示した。
いくら片方が手負いとはいえ、以前負けた相手が同時に襲ってこられては勝ち目がない。
「素直に逃がしてあげると思った?」
蘭は自分のほうに向かってきた5人に対し、両手を広げてまだ戦意があることを明らかにする。
「そのボロボロの体で、止められるものなら止めてみろ!」
「満身創痍なのはお互い様でしょ」
今なら逃げ切れると思ったが、逃げるのに成功したのは冬子のみで残りの4人は挟まれたままだった。
閃光弾は使い切っていてもうない。しかしまだ煙幕が残っている。
「それに私、まだ治癒術使ってないし」
ホワイトウイングが身を削ってやっと追い詰めたと思っていたのに、蘭に焦りが全く見えなかったのはそういうことだったのだ。
「次に会うときは必ず倒す」
まさか平和を守る正義側の自分たちがその言葉を吐くことになるとは思いもしていなかった晴川は、
次の月夜女姫の一言により逃走すら安易にできるものではないと思い知らされる。
「そういう台詞は必ず逃げられる状況で言うものじゃないの?」
初回の交戦での月夜女姫の射撃の精度は最低ランクと言ってよいほど未熟だった。前回はそれを物量でごまかして当てていただけだ。
距離をとれば弾幕の密度も薄くなり避けるのは容易いと晴川は考えていた。
だが、煙幕を2人にぶつけて視界を奪い逃げ出した晴川たちは足元に走る赤黒い線に気付く。
「どこに逃げようと無駄よ。どんな避け方をしようと関係なく当たる術を編み出したから、大人しく力の差を思い知りなさい」
「晴川さん、上にも!」
「何だこの馬鹿でかいのは……」
巨大な魔法陣が夏の夜空に描かれていた。魔法陣自体が大きすぎるのでどのくらいの高さに描かれているのか目測ができない。
足元の魔法陣は端が見えないほどに大きい。
お前たちがどこに逃げようと関係なく当たる―つまり、この魔法陣の覆っている部分全てが術の有効範囲。
250:予定調和
10/03/03 23:34:59 4ftfFKS3
「白石、上だ!上に目一杯障壁を向けろ、お前なら防げる!」
「それ、無駄だよ。だってお姉様のこの術、足元からもくるから。
ついでに言っておくと、貴方程度の障壁の強度じゃお姉様の術は防ぎきれないよ」
晴川たちの背後から攻略のヒントとも絶望を加速させる覆しようもない事実ともとれる言葉を蘭が投げつける。
「ぐあああああぁぁぁぁああああぁっ!」
足元と頭上の魔法陣から大量の黒い稲妻が発生して天と地を紡ぎ、身を貫く。
1方向からの攻撃しか防げない晴川たちにはこの術に対抗できる方法など、ない。
幸いなのは、月夜女姫が殺傷力を抑えたおかげで動けなくなるだけで済んだという点だ。命までは取られていない。
月夜女姫に思いっきり顔を踏みつけられて、ようやく晴川の意識がはっきりしてくる。
「お前たちを生かすも殺すも私の気分次第ということがこれでわかったかしら?」
「この……悪魔め。調子に、乗るな」
月夜女姫の暗示が効いているのか、ここまで完璧にやられても晴川は強気な姿勢を崩さない。
その態度が暗示の優秀さを示し、ますます月夜女姫に自信をもたせる。
「まだそんな態度がとれるの。本当に気丈ね。その気丈さに免じて、今日はこれで終わりにしてあげる」
敵に情けをかけられて晴川は自尊心を傷付けられたが、自分の命が月夜女姫の手の上であることは否定できない事実なので言い返せない。
「次は私のほうから遊びに行くから、ビクビク怯えながら待ってなさい。
それじゃあ頑張ってね、せ・い・ぎ・の・み・か・た・さ・ん♪あははははは……」
陽が山の隙間から顔を出す頃にはこの地に大きな傷跡を残した2人は別の場所に移動したらしく、
廃墟と化した元市街地でホワイトウイングのメンバーだけが絶望に打ちひしがれていた。
俺が黒の一族を狩り始めたのは、偶然やつらを見かけたときの単なる生理的嫌悪感からだった。
普通の人間にはありえない色の紅い目に猫のように縦に裂けた瞳孔、大きくて先がツンと尖っている耳、
背中から生えている黒い翼はフィクションによくいる悪魔にしか見えない。それに人目を忍んで夜にこそこそと人間の精力を吸っている。
少なからず人間に危害を加えているのだ、それを駆除して何が悪い。俺はやつらを蚊やゴキブリと同じ害虫としか見ていなかった。
さらに当時の俺には駆除するだけの金とコネがあった。やつらを狩るためだけに俺は私兵集団「ホワイトウイング」を組織し、
同時に数えられる程度の業界の実力者を抱き込みうるさいマスコミや警察を黙らせた。
しかしその害虫の駆除には想定外の障害があった。
やつらを殺そうにも銃器、刃物、爆発物、毒ガスと様々なものを試したが、闇界障壁という奇妙なバリアのせいで全て効果がないのだ。
おまけに怪しい術まで使ってくる。ますますやつらを野放しにするわけにはいかなくなった。
古今東西のあらゆる武器を試しても駄目な中、とある神社に祀られている御神刀を使ってみてはどうかという意見があった。
俺は仏だの神だのといった類は全く信じていなかったが、他に頼るものもないので試しに実戦で使ってみると、
驚くことに闇界障壁を無視して攻撃することができた。その後の調査で闇界障壁を無効化できるのはおそらく俺だけであること、
黒の一族を殺すには翼を切り落とすのが最も有効であることを知る。
ある程度数を狩るとやつらも警戒してきて、こちらが逆に撃退されることもあった。
御神刀以外では閃光弾しか効かないので、私兵集団といってもまともな戦闘員は俺だけだった。
この状況を打開したのが俺の最も信頼できる友人、白瀬大喜(しらせだいき)の発明した薬だった。
魔法覚醒剤と名づけられたそれは、素質のある者が接種すれば闇界障壁を無効化できる力が備わるという画期的なものだった。
しかし素質のある者というのが「15歳から25歳の日本人女性の極一部」という縛りがきつい。
「15歳から25歳の日本人女性」の条件に当てはまる人間の時点で約650万人しかいない。
さらに素質の無い者が接種した場合の死亡率が0.05%という危険な薬だったが、背に腹は代えられない。
251:予定調和
10/03/03 23:39:21 4ftfFKS3
あらゆる手段を使って手当たり次第にこの薬を使った。もちろん0.05%分の死者も出たがそのたびに隠蔽した。
そうした苦労の末に能力の発現した4人を探し出し、金で釣ったり脅しをかけたりしてホワイトウイングで訓練した結果が今の彼女たちである。
周囲からはハーレムと冷やかされるが、こいつらと恋愛ごっこをしている場合ではない。
偶然か必然か知らないが4人とも無駄に器量がいいからそうやって冷やかされる破目になる。その程度の煩悩を断ち切れないほど俺は弱くない。
それに化け物退治をするのだからか弱い女より運動能力の勝る男のほうがよかったが……魔法覚醒剤の仕組みからそれは不可能だと大喜から言われた。
「……というわけだ。はっきり言って今の戦力だと勝ち目がない」
「半径約1キロだっけ?反則だろそりゃ。どう対処しろっていうんだよ」
「だよなあ……今までの黒の一族とは次元が違いすぎる」
「でもここで諦めたら、日本……いや、世界は月夜女姫に蹂躙されるんだろ?だったら可能性がある限りやるしかないだろ」
「そうだな。何か手があるのか?」
「御神刀で闇界障壁に傷が付いたのなら、その御神刀の力をより引き出せるようにする方向で研究中だ。まずあの障壁を何とかしないと話にならない」
「悪い、大喜。結局こんな大事に巻き込んでしまって」
「いいってことよ。毅みたいにどーんと金を出してくれるスポンサーがいないと俺も研究できないしな」
「ありがとう。恩に着る」
そのうち直接会ってゆっくり話がしたいが、今の状況で会うのはリスクが高すぎる。盗聴対策を施したこの通信機での通話が妥協点だろう。
ホワイトウイングの正体はマスコミに暴かれたが、魔法覚醒剤やそれを開発した白瀬の存在がまだ割れてないのは不幸中の幸いだった。
これが割れるとさらに世間のバッシングが酷くなるのは目に見えている。
それに、今滞在しているホワイトウイングの支部ならそう簡単に見つからないはずだ。前回本部の場所が月夜女姫に割れたのはおそらく尾行と思われる。
だから今回は透明化を無効化できる白石に協力してもらって徹底的に警戒した。
結局は移動中に離れた都市で天道姉妹の襲撃の報告があったので杞憂に終わったが。
未だにわからないのが、月夜女を狩ったときには確かに普通の人間だった天道姉妹が、完全に黒の一族と化している点だ。
普通の人間を黒の一族にする力でもあるのだろうか?だとすると黒の一族が指数関数的に増えていき、収拾がつかなくなるが……。
突然、侵入者を知らせるけたたましいベルの音が響き渡る。ここも本部と同様の硬いセキュリティに守られているはずだが……まさか。
「おいおい……冗談だろ……」
監視カメラに映っていたのは、紛れもなく天道姉妹だった。
俺がわざわざ助けに行ったのは仲間意識なんて綺麗なものではなく、これだけの戦力を1から再び揃えるだけの手間を嫌っただけだ。
前回は妹のほうの実力を見誤りやられてしまったが、今回は閃光弾や煙幕で初めから逃走に徹する。
月夜女姫もその妹も、正面からかち合って勝てる相手ではない。
その見通しすら甘かった。
繰り返される、一方的な展開。反撃は全て封じられ、逃げ出すことも許されず、しかし決して息の根は止めない生殺しだった。
「どうして……ごほっ、この場所がわかった……?」
「あら?思った以上に救いようのない馬鹿なのね。お前、頭に脳味噌入ってないんじゃないの?」
「発信機の類は調べたはずだが……甘かったか……」
そもそも仕掛けるタイミングすらなかったはずだ。他のメンバーにもチェックを徹底させたが、自分でも慎重すぎると思ったくらいである。
「そうじゃなくて、もっと簡単な方法があるじゃない」
月夜女姫は勝ち誇った顔で、それがさも当然のことであるかのように言った。
「裏切り」
その可能性を少しも疑わなかったわけではない。ただ、他のメンバーの言動はいつもと全く変わらず、
偽者が紛れ込んでいるという感じもなかった。そもそも、仲間を信じられなくなったら月夜女姫を倒すことなどできない。
その可能性を考えたくなかっただけかもしれない。
「頭のよろしくないお前にさらにヒントをあげましょうか。裏切り者はそこに転がっている4人の中にいるわ」
252:予定調和
10/03/03 23:44:08 4ftfFKS3
「えっ……?」
「でたらめよ!どうせ私たちの間の信頼を崩そうって魂胆でしょ!?」
「でも夏菜、それ以外にどうやって月夜女姫がこの場所を知ったのか説明できないわ」
「黒松さん……それはそうですけど……」
今までこんな敵の詭弁による揺さぶりは何度も経験してきたはずなのに、まんまと術中に嵌ってやがる。だから、俺が皆を纏めなければならない。
「お前ら、不安なのはわかるが今は喋るな!」
一喝して全員の注目を自分に集める。
「月夜女姫よ、悪いが俺は敵の言うことを素直に聞けるほど頭がよくないんでね」
「そう。別に信じたくなければ信じなくてもいいけど、放っておくとお前たちのやってることは全部私に筒抜けよ?くくく……」
何かを隠した虫唾の走る笑い方だった。俺はどうすればいい―どの行動を選んでも悪い結果にしか繋がらない、嫌な予感がする。
この続きは次回までのんびりお待ちください。
253:名無しさん@ピンキー
10/03/04 00:21:10 rTKijK6h
魔受胎か……
続編があるみたいだからそっちが発売したら買ってみるか
254:名無しさん@ピンキー
10/03/04 01:24:09 UOCY534x
アイルのゲームはどうなんだろ?
スタッフが大量離脱で開発チームが減ってて
醜聞はともかく出来が心配なんだよね
255:名無しさん@ピンキー
10/03/04 02:35:28 /pVcsw49
新作は普通に様子見でいいんじゃないかな
256:名無しさん@ピンキー
10/03/04 11:03:12 qJiFF8Zf
>>244
乙です。
黒松さんどこで正体をバラスのか楽しみだわ~
257:名無しさん@ピンキー
10/03/04 17:57:15 vWmEgTqR
ずきんちゃん悪堕ちってこの話か・・・まぁこれはこれで
カビ星人カビー
258:名無しさん@ピンキー
10/03/04 21:15:42 UOCY534x
そういやロールパンナのエロ同人誌でいいのはあるんだろか
259:名無しさん@ピンキー
10/03/05 00:11:18 dbsTdsYM
.i ,/ .,/; 三 ヾ ;;;\, ::::::;;i
.| / ソ; '`、; \、:::;;|
.| ,/ ,=、 ,=、 ヽ、:;;|
.トナ i 0 i ,; ;i 0 i .`ゝ:;;|
.|1 .ゝイ ,i、 ;ゝイ :::;;|
.i` - ____トi圭____ y"i
260:名無しさん@ピンキー
10/03/05 01:25:14 GVgOhCRB
>>244
乙でーす
エロがなくても充分おもしろい!
びっくり!
261:名無しさん@ピンキー
10/03/05 05:32:49 LwlDefY+
>>258
誰得
262:名無しさん@ピンキー
10/03/05 06:23:47 iSBqAPa8
>>258
>>261
同人誌的にはメロンパンナとの百合カプがけっこうな人気だった覚えがあるが
洗脳萌え的な同人誌としてはどうかなあ
263:名無しさん@ピンキー
10/03/05 18:04:59 cQpjydOT
舞-himeの漫画でヒロインが悪堕ちするって聞いたんだが・・・
画像とかもってる人いる?買おうかどうか迷ってるんだが・・・
264:名無しさん@ピンキー
10/03/05 18:17:17 ZaHYReCt
今やってる戦(EXA)のほう?
それともチャンピオンに載ってたほう?
チャンピオンに載ってた方なら、
確かにちょっと悪堕ちっぽいシーンラストであったけど。
戦の方は連載したばっかりだから知らん。
265:名無しさん@ピンキー
10/03/05 18:25:47 zFV/YupH
うおー、アイルの魔受胎2来たかー
悪堕ち部分としても期待だし、普通に作品としても期待だわ
そういえば、MAIKAのジャスティスブレイド3の話はどうなったんだ?
266:名無しさん@ピンキー
10/03/05 19:27:05 LwlDefY+
>>262
チャンピオン版持ってるがあれは悪堕ちでは無いかと
溺愛してたヒロインの弟が死んだ後ラスボスとして復活するんだけど
自分(弟)のいない今の世界、自分がいる新しい世界どちらを選ぶか問われて後者選択
ヒロインは皆と一緒にいたいだけなので仲間に降伏促すも拒否
主人公+別のヒロインとバトルした後、説得されて弟止めに行く
悪堕ちって言うか依存してるだけ?コスも若干変わる物の殆ど変化無い
アニメと内容が違い過ぎるし、漫画的にも残念な出来なので買うのはお勧めしない
267:名無しさん@ピンキー
10/03/05 19:45:25 S4GJZ02u
レス番間違えて大変なことになってると思う
268:名無しさん@ピンキー
10/03/05 20:01:18 LwlDefY+
oh...
失敬、>>263でした
269:名無しさん@ピンキー
10/03/05 20:41:30 fTEaO39q
俺思うんだけど
このスレはもう情報スレだって明記していいんじゃねぇ?
ここ一年間スレ内容の90%以上が情報のやりとりだったわけだし
SS投下できなくて可哀想~みたいな意見もあるだろうが、
ぶっちゃけそんなの偽善者
いくら同情みせたところでこのスレはSSを評価しないのは事実
このスレにいた書き手も軒並み追い出された形で外部に移転し
イラスト職人も追い出された形でふたばに移転
今このスレでは事情知らない新人書き手を持ち上げては叩く流れになってる
叩きに参加してない連中も知らんぷり
書き手を擁護するつもりまったく無いがテラカワイソスぎて吹けるわw
それだったら最初から情報限定スレにしたほうが慈悲というものだろう
俺みたいな情報だけ欲しい連中がほとんどなわけだし
270:名無しさん@ピンキー
10/03/05 20:50:13 X2iMs4HI
は?何、俺の意見が皆の意見みたいに言ってんの?
普通にSS読みたいわ
荒らしだと思うが、ちょっとひどいわ、お前
271:名無しさん@ピンキー
10/03/05 20:54:28 3mOoSfOP
俺
こ
こ
・・・ガッカリだ。縦読みじゃなかったお前に失望した
272:名無しさん@ピンキー
10/03/05 20:57:28 27aAcucl
SSが絡むとなぜかみんなおかしくなるよね
悪堕ちしてるみたいで面白
273:名無しさん@ピンキー
10/03/05 21:01:34 fTEaO39q
>>270
だからそういうのが偽善者だって
普段は読みたい読みたい詐欺していざ投下されたらいなくなる
最近のSS総スルー状態見ればわかるだろ
無理して慰めるくらいなら、最初から栄養剤与えんなよwww鬼畜www
みんなが情報スレにしてほしいと願ってるなら、堂々とすればいいのに
274:名無しさん@ピンキー
10/03/05 21:12:14 27aAcucl
堂々とSSを叩き倒すためのアリバイづくりですね
わかりました
外道すなあ
275:名無しさん@ピンキー
10/03/05 21:15:30 Oc5XpWNk
>>273
それはお前ぐらいだ>情報スレにしてくれと願っている
多分、本気でSS禁止したら、一気に過疎るよ。
276:名無しさん@ピンキー
10/03/05 21:17:11 TWG+qdRm
エロパロ板なのに現状エロ重視してないSSなんだから反応少なくても別におかしかないだろ
前振りだというのなら、実際エロ要素に至ってから反応すればいいだけだし、それまで静観してる人が多いってだけの話だよ
277:名無しさん@ピンキー
10/03/05 21:42:18 LwlDefY+
SSに反応する奴はするし、しない奴はスルー
それで良いじゃないか、SS投下したんだから反応しろって言ってる奴がクソなだけ
278:名無しさん@ピンキー
10/03/05 21:46:48 27aAcucl
SSちゃんはかまってちゃんなのか
かまってもらわないと死んじゃうんだな
かわうそです
279:名無しさん@ピンキー
10/03/05 21:49:04 KgyQhSva
>>263
むしろ「舞ー乙hime漫画版」の方が悪堕ちって感じかも
終盤になってhime達(舞衣 なつき など)が登場するんだけど思いっきり悪になっててチャイルド使って大虐殺やろうとしてる
フミさん(漫画版だと伝説の乙hime)も人形化って感じでセルゲイ(漫画版だとラスボス)の傀儡になって敵になる
280:名無しさん@ピンキー
10/03/05 22:02:07 fTEaO39q
SS厨必死過ぎwww
ここは>>279みたいな情報スレであることを望んでる人が大多数なんだよ
281:名無しさん@ピンキー
10/03/05 22:08:39 LwlDefY+
>>279
いいなそれ、HiMEが残念だったから乙は買わなかったのに・・・
でも最初から悪として登場して最後まで更正しないなら悪堕ちと呼べるんだろうか
282:名無しさん@ピンキー
10/03/05 22:15:00 27aAcucl
wの使用回数に比例して頭がこわれてるんだってさ
おっさんが得意顔で話してたよ
283:名無しさん@ピンキー
10/03/05 22:32:53 cQpjydOT
ID:27aAcucl
なにこのキ○ガイ・・・
ここはエロパロ板ってわかってる?ssを待つところだぞ?
カレー屋に行って、サラダが妙にうまいからカレーは作らず、サラダ屋になれとでもいうのかな、こういう奴は
こういう奴のすごいところは、自分が変なことを言ってるって気づいてなくて、人と違うことを言ってる俺かっこいいい、みたいな雰囲気を出してるとこなんだよな
ああ、すごいところて言っちゃダメなのか。皮肉にも気づかなそう。気持ち悪いところ、だ
284:名無しさん@ピンキー
10/03/05 22:34:25 cQpjydOT
ああ、間違った。
ID:fTEaO39qがキ○ガイだ
ID:27aAcuclの人、ごめん
285:名無しさん@ピンキー
10/03/05 22:38:07 KgyQhSva
>>281
うーん、前作のキャラや今作でも(舞衣をのぞき)スターシステムで出てるんで 堕ちてると言えば堕ちてるかな
アニメ版と比較すればセルゲイやマシロ姫も凶悪化して堕ちてるって言えば堕ちてる
286:名無しさん@ピンキー
10/03/05 22:40:36 1XZD7IPt
ID:fTEaO39qは学校でむしゃむしゃしたことでもあったんだよ
寛大な心で許してやろうぜ
287:名無しさん@ピンキー
10/03/05 23:07:05 jIFyS3CM
SSに関しては、他人の褌でアクセス数を稼ぐ某サイトさんぐらいは
感想をきちんと書いてあげればいいのにと思ってしまうな
あとやっぱ情報に関してはなるべくフェチ板でやるべきじゃね
上の動画サイトのURL貼りまくりの流れなんて、それこそyoutube板や半角板でやるようなことだし
288:名無しさん@ピンキー
10/03/06 00:17:32 /JHV4uoI
>>286
ID:fTEaO39qは学校で何食べたんだろう
289:名無しさん@ピンキー
10/03/06 00:19:28 fHD8B8jk
>>286
いや、違うな
あの反応は会社で上司にやられたんだよ
ガキを装ったレスにみえてきたぜ
290:名無しさん@ピンキー
10/03/06 00:23:18 EcymOPsm
会社で上司にむしゃむしゃされちゃったのか
291:名無しさん@ピンキー
10/03/06 00:26:42 sPcsFaL3
まあ偽善とか以前に、SS板で『ここには情報しか書き込まん』みたいな宣言を
スレ内でしたら、板違いスレとして管理者から排斥されるわなw
292:名無しさん@ピンキー
10/03/06 00:50:00 JrEgXFjj
ssに無理に反応しろとは言わないし、いいと思ったらGJすればいいだけの話ではあるんだが
ss板でここは情報しかいらないなんて言うアホはこの総叩きにも納得だわな。
てか、ここはssを読みに来るところだべ。その合間にちょっと情報があるぐらいが普通
情報が欲しいなら自分で調べな坊や
293:名無しさん@ピンキー
10/03/06 00:55:24 7+9lP7+L
エロパロでSSがいらないなんて初めて聞いたわwむしろ情報の方がスレチだろw
まぁ、作家は減ったよな…
294:名無しさん@ピンキー
10/03/06 00:59:12 2/Eufwm1
時の砂でも撒かれたか
295:名無しさん@ピンキー
10/03/06 02:53:06 IVCR8H+a
SSの投下を楽しみに待つ
296:名無しさん@ピンキー
10/03/06 03:29:33 UmbL1R+D
前回の投稿だって、誉めてる人は居たけど止めろみたいなのは無かったし
SSを禁止とか言い出すのが突然過ぎてビックリかな。
雑談を止めて反応しなきゃ、彼らはSSを排除したがってるってのも乱暴だし
SSがある事で情報の集まりが悪くなる訳でもないのだから、NGにして各自あぼーんすればいいだけの事。
因みにチャンピオンはチェックして無いのだけど、ひふみとかどうなの?
多重人格的に。
297:名無しさん@ピンキー
10/03/06 03:36:38 FFQs3v0O
くくく・・・人間どもめもっと醜く罵り合え!
298:名無しさん@ピンキー
10/03/06 03:42:07 6ket1tay
どうせ釣りだろうからビックリするこたないんじゃないの
それはそれとして、
ここだと読む側はおかず目当てで、ともかくエロ目当てで気が短い人ばかりなのに対して
書く人は、ラノベ風バトルメイン+エロ的に書きたい人が多そうに見受けられるかな
299:名無しさん@ピンキー
10/03/06 03:57:02 6ket1tay
「ともかく」じゃなく「とにかく」だった
300:名無しさん@ピンキー
10/03/06 05:54:03 KDuc6sqV
お前たちが情報なさすぎて使えないからグダグダになるんだろ
俺は俺で独自の道を模索するわ
301: ̄ ̄ ̄ ̄ ̄V ̄ ̄ ̄ ̄
10/03/06 06:53:08 gcZxu0Ik
____ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _
/_ノ ヽ、_\ ( もう・・・俺のぱかぱか・・・・!!!
. / (● ) (● )\ ( また本心と・・・・違うこと・・言っちゃったお・・・
///////(__人__)///\ ◯ ほんとは・・・素直になりたいのに////
| | 。O  ̄  ̄  ̄  ̄  ̄  ̄  ̄  ̄  ̄  ̄  ̄  ̄  ̄  ̄
\ /
ノ \
/´ ヽ
| l \
ヽ -一''''''"~~``'ー--、 -一'''''''ー-、.
ヽ ____(⌒)(⌒)⌒) ) (⌒_(⌒)⌒)⌒))
302:名無しさん@ピンキー
10/03/06 08:31:57 8F+1ByPs
そんなことよりカレーの話しようぜ
303:名無しさん@ピンキー
10/03/06 11:49:21 zNg/goz8
カレーを使った悪堕ちか、新しいな
304:名無しさん@ピンキー
10/03/06 11:51:22 /Ek9Lra1
加齢で洗脳とか誰得
305:名無しさん@ピンキー
10/03/06 12:01:58 fHD8B8jk
「いらっしゃい」
「カツカレーひとつくださーい」
「へい カツ一丁」
「ごちそうさまでーす ここのカレーはクセがありますよねー」
「隠し味があるんだよ へへへ……」
「なんか気がついたらこの店に入ってるんですよねー」
「ククク…… またのご来店お待ちしてます……」
おおざっぱにかくとこんな感じかな
306:名無しさん@ピンキー
10/03/06 12:13:25 0yQVDnzK
>>287
『某』を使うなよ
307:名無しさん@ピンキー
10/03/06 12:25:43 8F+1ByPs
>>305
提供:coco壱
308:名無しさん@ピンキー
10/03/06 12:35:45 rxIgoIEr
>>305
カレー将軍思い出した
309:名無しさん@ピンキー
10/03/06 12:35:51 H+EIJ8AD
包丁人味平のブラックカレーだな
310:名無しさん@ピンキー
10/03/06 16:18:54 kKh4viXd
小学校の図書室に>>305みたいな話の載った怪談集があったなあ。あれはおはぎだったけど
311:名無しさん@ピンキー
10/03/06 16:44:56 UmbL1R+D
キビ団子を喰わせて、そこにナノマシンだかでペットになるんだっけ?→ぱちもそ だか。
元々の桃太郎からして犬、猿、キジをキビ団子で配下にしているし
桃太郎が成長して殿様、それも悪い殿様になったら
なびかない村の美人指導者にキビ団子を無理矢理喰わせて忠誠を誓わせ、村を裏切らせたり
一揆を企ててる村長の美人な嫁に以下略
素晴らしい能力を持ってはいるが、民の為とか正義の為にしか動かない美人軍師を以下略
みたく、洗脳アイテムとして使えるね。
美味くてまた食べたい=シャブみたいな中毒で。
また食べさせてくれるなら、自分を慕ってくれる村人も、その子供も裏切りますから!とか
312:名無しさん@ピンキー
10/03/06 19:23:37 npjqReGh
>>303
URLリンク(d-ko.1000.tv:8839)
つまりこれか。
313:名無しさん@ピンキー
10/03/06 21:02:17 DOMVgpjc
>>311
悪の桃太郎が正義の鬼娘に洗脳キビ団子食わせて
犬怪人、猿怪人、鳥怪人に悪堕ちさせて操り、
鬼娘の里を侵略するとかの電波を受信
314:名無しさん@ピンキー
10/03/06 21:25:18 NDS3wiaO
鬼から見たら、平和に暮らしていた島を襲撃されて虐殺・略奪を受けたってことだもんなw
315:名無しさん@ピンキー
10/03/06 21:44:54 KQhQXRYe
芥川のモノタロウですね。
316:予定調和
10/03/06 23:18:11 Cq04AHDH
前回投下したSSに目を通してくださった方々、ありがとうございます。
前回の粗筋
冬子陥落。しかしそのことに他の4人はまだ気がついていない。
それでは続きをどうぞ。
317:予定調和
10/03/06 23:23:17 Cq04AHDH
月夜女姫とその妹に基地の支部を追い出された私たちホワイトウイングは、晴川さんに連れられてとあるビジネスホテルに泊まった。
本部が襲われてから続いているこの放浪生活だけれど、毎日こんなホテルに泊まるお金を5人分もぽんぽん出せる晴川さんは
一体何者なのだろうといつも思う。でも、この人のおかげで終わりの見えない放浪生活のきつさもいくらか和らいでいるのも確かだ。
逃避行が野宿だと私や赤坂さんあたりはすぐにへばりそうだし、私たちの体調のことをしっかり考えてくれているという安心感がある。
「白石さん、ちょっといいですか?」
今にも布団に入って寝ようとしていた私は、オートロックのドアをノックする音でぼんやりしていた頭を覚醒させられた。
「あーごめんなさい白石さん、寝てました?」
ドアを開けると寝巻き姿の見知らぬ女性が立っていた。……違う、髪を結っていないだけでこれは黒松さんだ。
髪を解いた黒松さんを見たのはこれで初めてではなかったけれど、見慣れてないせいで毎回誰なのか判断するのがワンテンポ遅れてしまう。
「いえ、大丈夫です。何か用ですか?」
「白石さんとお話がしたいなって思って。部屋に入れてもらっていいですか?」
本当は疲れているからすぐに寝たかった。しかし、私は頼み事を断るのがかなり苦手だ。
つくづく損な性格だと自分でも思っているけれど、成人した今でも治る気配がないのでもう諦めている。
黒松さんを部屋に入れて備え付けの椅子に座ってもらってから、私はベッドの上に座って黒松さんと向かい合う。
「それで、お話っていうのは何ですか?」
「今日月夜女姫が言ってた『私たちの中に裏切り者がいる』って件です」
「それなら、私だけではなく全員で話し合ったほうがよくないですか?」
「その必要はありませんよ。もう私は誰が裏切り者なのかわかりましたし、証拠もありますから」
赤坂さん、青野さんの2人のうちどちらかが裏切り者―今日の2人の言動をよく思い出してみる。特に変わったところはなかった。
それに裏切る理由もよくわからない。弱みを握られたとか?世界を破滅に追い込もうとしている相手に手を貸さなければならない弱みって何なの……?
「根拠の無い決め付けでないのなら聞きます。赤坂さんか青野さん、どちらなんですか?」
不自然に黒松さんの口角がつりあがった。大切な仲間が敵の手に落ちているかもしれないというときに、なぜそんな顔をするのかが私には理解できない。
「きひひひ、『どちらか』ねえ……もう1人いるじゃない、目の前にさあ!!」
黒松さんが私の両肩を持っていきなりベッドに押し倒してくる。
不意を突かれたのもあるけれど、肉弾戦スタイルの黒松さんの腕力に私が敵うはずがなかった。
「な、何するんですか……」
「そうだ、暴れられると困るから先にこれをしておかないとね」
上に覆いかぶさった黒松さんの目が妖しく真っ赤に光る。急いで黒松さんを退かせようとして足をばたつかせても無駄な抵抗にしかならなかった。
「……ぁ……ぅ……」
目を背けようとしたときにはもう手遅れ。手足の自由が全く利かなくなったばかりか、声が喉に張り付いたようになって声がうまく出せなくなる。
黒松さんって肉弾戦一辺倒だと思ってたのに、いつの間にこんな力を身に付けたの?
「もうわかってると思うけど、私が月夜女姫様の言っていた『裏切り者』よ」
助けも呼べない、人目も期待できないこの状況で安直に黒松さんを部屋に入れたことを今更ながら後悔する。でもどうして黒松さんが……。
「は……」
「ん~、何か言いたそうだけど全然聞こえないなあ。そうだ、こうすれば」
顎が外れそうなほど大きく口を開けて、黒松さんが私の首筋に噛み付いてきた。一体黒松さんはどうしてしまったの?
これではまるで黒の一族そのものじゃない!
<私の声が聞こえる、白石さん?>
「ん……」
甘ったるいものが頭の中に充満したかのように、思考速度ががくっと落とされる。
<黒松さん!これはどういうことですか?どうしてこんなことを……>
<だからさっきも言ったでしょう。私はもうそっち側の人間じゃないのよ>
黒松さんの背中がもぞもぞと動いて間もなく、服を突き破って真っ黒な翼が生えて私の視界を奪った。
<そんな、これは黒の一族の翼……>
<ふふっ、羨ましいでしょう?月夜女姫様からこの力は戴いたのよ>
318:予定調和
10/03/06 23:27:55 Cq04AHDH
<黒の一族に寝返るなんて、黒松さんはこの世界がどうなってもいいのですか!?>
さも誇らしげに黒の一族になったことを告げる黒松さんだけれど、こんなのホワイトウイングでずっと一緒にやってきた黒松さんじゃない。
月夜女姫に踊らされているだけだ。
<どうなってもいいなんて思ってないわ。私は月夜女姫様の望むまま、この世を黒の一族の住みやすい世界に変えたいだけよ>
<それはエゴの塊です。月夜女姫さえよければそれでいいのですか?!>
<当たり前よ!月夜女姫様さえよければ、私はそれでいいの!>
<……う……>
言い返さなければと言葉を探すけれど、頭の中が絡まってうまく考えられなくなってきた。
―絡まっているだけじゃない。外側から順番に解されて、消されてきている。
消した後には黒くてどろっとした何かに全部置き換えられてきている。
私を、変えようとしている……。
<それに白石さんってさ、晴川に脅されて嫌々そっち側に付いているのでしょう?そこまで意地になる必要もないじゃない>
確かに私はこの仕事を自分から進んでやっているわけではない。可能ならば今すぐに普通の人間としての生活に戻りたいと思っている。
それができないのは晴川さんが私の大切な人や物をちらつかせて脅しをかけているからだ。
<それは……そうですけれど……>
<執着する理由がないわね。白石さんも今のホワイトウイングの戦力で月夜女姫様に敵うわけがないって、
口には出さなくても心の中では思ってるんでしょう?>
そんなこと、わざわざ口に出さなくても皆わかっている。わかってはいるけれど……ここで諦めたら、今までの苦労が水の泡じゃない!
<頑固だね、白石さんは。それじゃ、持久戦と行きましょうか>
<じきゅう、せん?>
<朝になって誰かがこの部屋に入ってくるまで白石さんが意識を保っていたら白石さんの勝ち。どう、簡単でしょう?>
この一縷の望みに賭けるしかない。後は私の精神力次第。
<いいですよ。朝まで耐えられればいいんですね>
<そうそう。耐えられればいいのよ。耐えられるなら、ね……>
冬子が秋生の動きを封じた時点で、既に勝負はついていた。
今の秋生は目が一応開いてはいるものの、深いトランス状態にあり心が全くの無防備のまま放置してあった。
「そんな心身共に疲れきった状態で私の心を揺さぶる攻撃に耐えられるわけがないじゃない。
脳味噌とろとろの状態で正確な判断を下せっていうのがそもそも無理だけどさ」
冬子は秋生の首筋から口を離し、今にも寝てしまいそうな秋生の顔をじっくりと眺めていた。
首筋には噛み跡がくっきりと残り、冬子の唾液が大量に付着している。
今なら冬子がいくら好き勝手に性格を歪めても、秋生は全て素直に従ってくれる。
ホワイトウイングの女性陣の中で最も年上なこともあって、いつも落ち着いていてニコニコ笑顔を絶やさない。
ホワイトウイングに加わるのを嫌がったのは、生き物の命を絶つ行為に関わりたくなかったからだと聞いていた。
そんな優しい秋生が自ら進んで殺掠を行うような人間になったら、それまでの秋生を知る人間はどんな反応をするだろうか。
殺戮を恋焦がれるような、今とは真逆の性格にしてみても面白い。あるいは、ただひたすら淫乱な変態に。
秋生は過去に言いがかりに近い噂を流されたことがあった。
「長年付き合っている彼氏がいながら、その大人しそうな顔に釣られた男を片っ端から食っている淫乱女」
という秋生の裏の顔の存在を主張するものだ。
そのときは本人と秋生の性格を知る人全員が否定したのですぐに噂は消えたが、それが真実になれば……。
「おっと、いけないいけない。『黒の一族にする以外に余計な刷り込みはするな』って月夜女姫様から言われていたのだったわ」
何より優先するべきは月夜女姫の意思。冬子は唾液塗れの秋生の首筋に再び噛み付くと、黒の一族に変えるべく力を流し込み始めた。
319:予定調和
10/03/06 23:31:22 Cq04AHDH
<……つめたい……きもち、いい……>
<いい、白石秋生さん。あなたは生まれ変わるの>
<うまれ、かわる……>
<黒の一族になって、月夜女姫様に全てを捧げるのよ。もう晴川に嫌々従うことはないわ>
<わたしが、くろのいちぞくに……>
<黒の一族になれば今以上の力が手に入るし、ずっとこのまま若いままでいられる。それは素晴らしいことではないかしら?>
<はい……>
秋生の顔からはは自分の体が作り変えられるという恐怖は微塵も感じられず、むしろこれから起こることの期待に染まっていた。
<よし、そろそろね>
冬子は秋生の首筋から口を離しぺろりと舌なめずりをして、これから秋生の体に起こるであろう変化に胸を高鳴らせる。
「あ……もっと……もっとしてください……」
「もう十分だから、あとはじっとしていなさい」
「そうですか……あ、耳が」
乱れてボサボサになった秋生の髪の隙間から、先の尖った耳の先端がぴょこんと顔を出していた。
「なんだか急に部屋が暑くなってきましたね……黒松さんは暑くないですか?」
「冬子『様』でしょ、冬子『様』。その力をあげたのは誰だと思ってるのよ。それに私は暑くないわ」
「申し訳ありませんでした、冬子様。先ほどから汗が止まらなくて……うぅ……はあっ……」
沈黙の暗示がとっくに切れていることに冬子が気付いて秋生の口を慌てて手で塞がなければ、
悲鳴がホテルの同じ階全体に聞こえてしまっていた。
「ん~~~~!ん~~~~~!」
長く伸びた爪で無意識に布団を引っ掻いてずたずたにしながら、
一気に生えてきた黒い翼がもたらす今まで感じたことのない感覚に秋生は酔いしれる。
「ふう、間一髪だったわ」
「もう、冬子様は乱暴です。悲鳴を上げられたら何か困ることでもあるのですか?目撃者は証拠の残らないように殺せば何も問題はないでしょう」
「月夜女姫様から目立つ行動は極力控えろと言われてるのよ」
「なるほど……これで『裏切り者』は2人目。晴川も追い詰められましたね」
「きひひひ、全くだわ。それじゃ白石さん、朝にならないうちに月夜女姫様に挨拶に行くよ。私に付いてきて」
ベッドの布団から零れ落ちた綿を放置したまま、普通の人間でない2人はすうっとそこから姿を消した。
少し考えればわかることだ。
月夜女姫が現れてから俺が見ていないところで黒の一族と接触したのは黒松ただ1人。
しかもそのときボロボロにやられている。あのときにきっと何かされたに違いない。とりあえず今日は黒松だけ別行動にしてみて様子を見よう。
とにかく今は月夜女姫の言っていた「裏切り者」を突き止めるほうが先だ。
「でもさ、何で冬子だけ単独行動なの?危なくない?」
「今回の黒松の仕事は偵察だ。機動力のある者が適任だろう。その点だと青野でもよかったんだが、お前は1人にすると調子に乗るからな」
「うー……」
青野がふて腐れるが、放っておいても問題がないので無視する。
「本当は黒松さんが『裏切り者』だと疑っているんですよね、晴川さん?」
白石め、余計なことを。わざわざ不安を煽ることを皆の前で言わなくてもいいだろうに。
「え、そうなの、晴川さん?」
「……今まで単独行動もたくさんあっただろう。別に月夜女姫の言ったことが気になるわけではない」
「そうだよね、あんなの絶対月夜女姫のでたらめに決まってるよ」
「本当かなあ……」
皆ここまで精神的揺さ振りに弱い奴らではなかったはずだが、どうしてしまったんだ?
次に俺たちが月夜女姫の襲撃を受けたのは、月夜女姫が別の街に現れたと報告があってから3時間後のことだった。
泊まっていたホテルごと焼き払われ、崩れつつあるホテルから脱出するだけで全員疲れきっていてとても戦えるような状態ではなかった。
320:予定調和
10/03/06 23:36:15 Cq04AHDH
俺たちから離れた地点をわざわざ直前に襲撃して「裏切り者は黒松ではない」ということをアピールしているようにも感じる……一体何が目的だ。
「今日は一段とチームワークが悪いわね。誰か1人いない気もするし、どうしたのかしら?」
「白々しいぞ、お前が全部仕組んだくせに」
「仕組んだ?何のことかしら。黒松さんがここにいないのはお前が別行動をさせたからでしょう?『裏切り者』かどうか確かめるためにね」
全てお見通しよ、とでも言いたげな顔で月夜女姫は地べたに転がされた俺たちを見やる。
「お前、どうしてそれを……」
「さあて、なぜかしらね。ふふふ……」
裏切り者は黒松ではなかったということか?となると考えられるのはここにいる赤坂か青野か白石かということになる。
そもそも月夜女姫は裏切り者が「4人の中にいる」と言っただけで1人とは断定していない。黒松と他にもう1人いるのか……?
もしかしたら既に俺以外の全員が月夜女姫の手に堕ちているということも……いや、俺が仲間を信じられなくなってどうする。
決して裏切り者などいない!
「絶対、この中に情報を漏らしてる人がいるよね」
「そうだね。私も仲間を疑いたくないけど、ここまでやられると……ねえ?」
「もう、晴川さんが黒松さんを疑ったりするからチームがバラバラじゃないですか!どうするんですか!?」
どうするんだって……俺が訊きたいぞ、白石。本当にどうしたものか……。裏切り者はいるのか、いないのか。いるとしたら誰なのか。
どうやって調べるのか。拷問でもして吐かせる?そんなことをしたらそれこそホワイトウイングはお互いが信じられなくなって終わりだ。
個々の力で倒せるほど月夜女姫は弱くない。だからといってこのままだと……。
まだあちこちで煙が上がっている中、天道姉妹は地面に這い蹲る4人を見下ろして嘲っていた。
「うふふ、困ってる困ってる。追い詰められて命からがら見せる抵抗ほど見てて楽しいものはないね。お姉様、次はどうするの?」
「そうね、今度はこちらが追い詰める番なのだから、ゆっくり楽しみたいわ」
次は、晴川に最後の引き金を引かせよう。ここまで疑心暗鬼になっていれば下準備は万全のはず。
自分の行動のせいで仲間が寝返ってしまうのだから、もう目も当てられないでしょう。
まだまだ苦しんでもらうからね。
ホワイトウイングのメンバー5人は、24時間営業の飲食店の机に集まっていた。
ここに来るまでに何度も天道姉妹の襲撃を受け、睡眠も満足にとることができずに全員疲労困ぱいだった。
「はーるーかーわーさーん。このまま逃げ続けてもあたしたちが消耗するだけだよ。何とかならないの?
ふあぁ、眠う。もう3日もアイス食べてないしい……」
赤坂が机にあごを乗せて今にも寝てしまいそうな顔で訴える。
きちんと飯は3食食わせているが、月夜女姫にじりじりと追い詰められているのは確かだった。
「だが、今の戦力では勝算がないだろ?そもそもまともにダメージを与えてすらいない」
何度交戦しても、月夜女姫の障壁すら破れなかった。しかも向こうはまだまだ余力を残して戦っているように見える。
「それに、閃光弾も使い切った」
この状態で戦っても、勝負になるどころか逃げることすら難しい。
「とにかく今は支部に行き、対抗策を練るんだ」
「あと半分以上かあ、きっつー……」
青野が不満を漏らすのも仕方がない。道路はボコボコ、線路はグニャグニャで使える交通手段が空路くらいしかないからだ。
一応船も使えるが、空港が無事な内は使わなくてもいいだろう。どうせ道中で襲われたら死ぬのは同じだ。
晴川がそろそろ移動しようと席を立ったとき、店の机が軽々と吹き飛ぶような爆風が晴川たちを襲った。
屋根に大きな穴が空き、店内の照明が殆どやられて視界が一気に暗くなる。
321:予定調和
10/03/06 23:40:03 Cq04AHDH
「くそ、もう見つかったか」
ここまで細かくこちらの情報が漏れていると、晴川も本格的に裏切り者の存在を否定できなくなってくる。
「一体何が……助けてくれ……」
幸いにも他の客はいなかったものの、店員が頭から血を流しながら助けを求めている。
「しっかりしてください!」
「待て赤坂、そいつに治癒術は使うな!」
「え?でも今使わないとこの人死んじゃう……」
「死にそうなのは俺たちも一緒だ。俺たちがやられたら誰が月夜女姫を倒すんだ?」
ホワイトウイングが倒されたらどちらにしてもこの店員も死ぬ。
今までは一般人の救助も戦闘中にやってきたが、今の疲弊したホワイトウイングにその余裕はない。
「見つけた」
晴川が振り返るとすぐ後ろに月夜女姫が壮絶な笑みを浮かべて立っていた。
晴川は素早く袋から御神刀を取り出し斬りつけたが、またしても障壁に弾かれる。
完全に狩る立場と狩られる立場が逆転していた。
「お前ら、まだいけるな?白石の防御が通用しない以上、纏まっていたらただの的だ。散らばって狙いを絞らせるな!」
散らばったとしてもあの超広範囲攻撃を使われると全く意味がないのだが、手加減しているのかまだ初回の1回しか使われていない。
相手に慢心があるうちがチャンスである。
晴川は夏菜に指示して店の壁を破壊させ、各自バラバラに逃げるように伝えた。集合場所は言わなくても4人はわかっている。
「その様子だと、もう閃光弾は使い切ったのかな?」
「うわっ、こっちにも!?」
夏菜は目の前に出現した蘭に行く手を阻まれ、戦闘態勢を取らざるを得なくなった。
「逃げられないってわけね……お前なら攻撃が通じる分、月夜女姫より勝てる可能性がある!」
他の4人の援護が期待できなくても、夏菜は今まで1人で黒の一族を何人も伸してきた自信から蘭に真っ向勝負を挑んだ。
蘭がここまでの戦いで本気の半分しか出していないことを夏菜は知らない。知らないからこそ、無謀にも向かっていくことができる。
「貴方ってなかなかタフだから長く遊べるんだよね。今日も楽しませてもらうよ!」
「青野、倒すことを考えるな!相手の隙を作って逃げろ!」
「わかってる!」
「わかってねえな、あれは……」
いつもなら相手から先制攻撃される前に誰かが感づいて直撃を免れているものだが、
この寒気がするほどの威圧感を放っている敵の接近に誰も気が付けなかった。それほどまでに皆疲れきっているということだ。
「きゃあああああ!!」
「大変、春香ちゃんが!」
やろうと思えば5人全員を一気に攻撃することもできるのに、今日の月夜女姫は執拗に春香ばかりを狙っていた。
チームで最も強固な秋生の障壁でさえ歯が立たないのに、薄っぺらな春香の障壁では気休めにしかなっていない。
現時点ですでに戦力は晴川たちが下回っているのに、さらに春香が欠けて決定的な差が開くのは避けなければならない。
「きゅう~」
最早立ち上がる気力すらなくなった春香は目を回して力尽きてしまった。元々春香は夏菜のように打たれ強いわけではなく、
音を上げてへばってしまうのは4人の中でいつも最初だった。
「白石!黒松!赤坂の介抱を頼む!」
ぐったりと動かなくなった春香を揺すったりして反応を見ていた秋生と冬子が、なにやらこそこそと話をしている。
「白石さん、春香ちゃんの容態は?」
「ぐっすり眠っています。心身ともに疲れきった状態で且つ信頼できる仲間ですから魔眼が非常に効きやすかったですね」
「へえ、そう。わざわざこのタイミングでかけなくてもよかったかもしれないわね。春香ちゃんって基本的に何に関しても甘いから」
「おい、白石と黒松!後ろから来てるぞ!集中力を切らすな!」
「だから何?」
冬子は晴川に冷めた目を向けると何の躊躇もなく気合の乗ったストレートを撃ち込む。
晴川はギリギリで顔を逸らして避けたものの、突然の冬子の豹変に驚きを隠せない。