11/01/19 00:23:49 xqpAILKe
翌朝、破壊された王宮の正門前広場に薪が積まれた。
傍らに王と王妃の無惨な遺体が並べられている。
ギュトン兵達と生き残った民を前に、ハンミョウ尼僧長の説教が始まった。
「ラスピアの皆さん!貴方達は今日、この日に救われました!
これが皆さんを欺き罪の道へ誘った悪魔どもの末路です!
唯一にして絶対なる天の主と
その御方に選ばれし聖ギュトン様は…………」
情熱的に喋りまくるハンミョウを見て、ファティアは唇を噛み締めた。
(あんなゲス女が尼さんとは滑稽な!
こいつらの前じゃ、場末のポン引きも山賊どもも天使様だわ!)
昨晩は、このまま犯され続けて死ぬと思っていた。
だが兵士の多くが王宮へ矛先を向けたので、九死に一生を得たのだ。
痛む全身にボロ布を纏って、ファティアはここに立っている。
王と王妃、どちらも二目と見られない状態だった。
特に王妃の方は性に疎い者が見ても、陵辱されたと一目でわかる有様だった。
二人の遺体が火中に投じられ、勝利者達が歓声を上げる。
ラスピアの民はうなだれて涙し、あるいは放心状態で炎を見つめるしかなかった。
(……いつの日か、何倍にも返してやる……
ギュトンの屑どもは地上から永遠に消え去るのよ!
それまでは奴等の靴を舐めてでも生き延びなきゃ……)
やがてハンミョウと兵士達は、ギュトン派専用の賛美歌を歌い出した。
『愛』『主よ』『恵み』などと叫ぶだけで、荘厳さのかけらもなかった。
ヘズラ教の伝統的なミサ曲とは比べ物にならない稚拙さである。
(仮にも神様に捧げるんだから、マシな歌作ればいいのに……
そんなモノ、いる訳ないけどね)
ファティアは階級の高そうな兵を見つけると、うやうやしく歩み寄った。
必死で笑顔を浮かべながら。
終わり