11/01/10 01:25:45 vg31hJej
そんな短い号令と共に―組み上げられた薪の山に、火がつけられる。
ロザリアはその光景を、これ以上ないほどに目を見開いて見つめていた。油を染み込ませているのだろう、薪
は瞬く間に燃え上がり、やがて礼拝所の建物へと燃え移った。
悪魔の舌のような炎が教会を包んでいく。しばらく呆然とその光景を見つめていたロザリアの唇から、ああ
あ、と呻き声が漏れた。
「ぁぁあ……あああ……あああああああッ!!」
燃え上がる礼拝所。火に飲み込まれる十字架。石造りの教会は燃え落ちることこそないが、しかし巨大な石窯
と化したそれは中の者たちを確実に蒸し殺す。
ミリア! ロビン! ジョシュア! エミリー! スザンナ! ダミアン! フランシス!
ロザリアは力の限り子供たちの名を呼んだつもりだったが、その声は人間の言語になることはなく、侵略者た
ちの耳には獣の咆吼のようにしか聞こえなかった。
狂乱して暴れるロザリアを難なく担ぎ上げ、男たちは燃え盛る教会を後にする。屋根の上の十字架がグラリと
傾き、礼拝所の扉を塞ぐように落ちた。
その日、丘の上の教会を焼いた炎は朝まで消えることがなかったという。孤児たちと共にいたはずの年若い修
道女がその後どうなったのか、知る者はいない。
おしまい