【ととモノ。】剣と魔法と学園モノ。8【エロパロ】at EROPARO
【ととモノ。】剣と魔法と学園モノ。8【エロパロ】 - 暇つぶし2ch2:名無しさん@ピンキー
09/12/24 19:28:15 XBwlJBFO
>>1乙!

3:マジック・ショー1
09/12/24 19:51:38 d08gH0X9
1です。スレ立てだけでは寂しいので、小ネタでも一つ。

「申し訳ありません!!本当に、本当にお詫びの言葉もございません!!」
学生寮の食堂の特設舞台に隣接する楽屋でフェルパーが床に額を
こすらんばかりに土下座する。
「..いえ、大丈夫..です..から..全然気にして..ません..から..うっ!!」
言葉とは裏腹に、長椅子に横たわり、全身から脂汗を流しながら、
息も絶え絶えに答えるノーム。その隣では、ヒールの心得がある
エルフがもごもごと呪文を詠唱している。

 クロスティーニ学園学生寮恒例のクリスマスパーティーでフェルパーと
ノームが披露した隠し芸はちょっとしたマジックショーであった。錬金術科の
ノームが意外な材料を使って剣を錬成し、剣士科のフェルパーが
その剣を使って樽に入ったノームを串刺しにする、という定番かつ古典的な
マジックだったのだが..。
 事前にリハーサルを繰り返し、万全の準備で臨んだ本番。観客の受けも
まずまずで、ショーは成功かと思われたが、舞台の袖まで下がると、ノームが
腹を押さえて倒れこんでしまった。慌てて駆け寄ったフェルパーがノームを
介抱しながら調べてみると、その舞台衣装の胴回りにはきっかり60度ごとに
剣で刺したような穴がくっきりと残されていた。
「ごめんなさい..ごめんなさい..お願いだから死なないで..」
ノームの手を取り涙を流すフェルパー。何事につけつまらなさそうな、
斜に構えたいつもの表情はそこには無く、森で迷子になった少女のように目を
真っ赤にして泣きはらしている。
「今までも..何回か..死んだこと..あります..から、この..くらい..なんでも..」
フェルパーに心配をかけまいと答えるノーム。すると突然その体が光に
包まれた。
「..はい、ヒール完了。クリスマス特別ご奉仕で"メタ"つけておいたわよ。
これで大事に至る事は無いと思うから安心して」
一仕事を終え、安堵感を含んだ笑顔を浮かべるエルフ。
「本当ですか?ありがとうございます..うわああああ!!」
ノームの体に突っ伏して泣き崩れるフェルパー。
「ありがとう、エルフ..いたたた..痛いです、フェルパーさん..」
そしてノームの言葉にはっとして起き上がるフェルパー。そんな二人を見て
呆れたようにエルフが尋ねる。
「..それにしても、どうしてこんなことになったのかしらね?ちゃんと練習したの?」
「 し ま し た !!リハーサルもタネの確認もちゃんとやりました。それとも
何ですか?私がわざとこんなことをするとでも?そんなことする訳無いじゃないですか!!」
エルフの襟首を掴まんばかりに詰め寄り抗議するフェルパー
「..何もそこまで言ってないじゃない。そんなにムキにならなくても..ノームも
痛かったら痛いって言えばいいのに」
「あはは..」
曖昧な笑顔でごまかすノーム。
「やれやれ..後片付けは明日だから、しばらくここで休んで行ったらどう?それじゃね」
困った二人ね、といった顔でそう言い残すと、エルフは楽屋から出て行った。

4:マジック・ショー2
09/12/24 19:55:04 d08gH0X9
楽屋に取り残された二人。イベントもあらかた終了し、辺りは静まり返っている。
「..大丈夫ですか?」
「..はい。だいぶ楽になりました」
「..ごめんなさい」
「..いえ、もう気にしてませんから.」
しばらく二人の間に気まずい沈黙が流れる。
「..あの、僕はもう少し休んでいきますけど、フェルパーさんは..」
お先にどうぞ、とノームが続けようとしてフェルパーの方を見ると、彼女は
彼の枕元で両手で顔を覆ってさめざめと泣いていた。
「..ごめんなさい..ごめんなさい..こんなはずじゃなかったのに..」
嗚咽をこらえ、一言一言押し出すように話し出すフェルパー。
「本当に..本当に今日のショーは楽しみにしていたのに..一生懸命
準備して、リハーサルも何回もやって、本番前のチェックだって..
それなのに、どうしてこんなことに..」
「..ええ。あなたの努力は僕もそばで見ていましたから知っています。
今回のことはあなたのせいでは..」
「違うんです..そうじゃないんです..」
首を振り、蚊の泣くような小さな声でノームの返事を遮るフェルパー。

「1週間前、私が誤って舞台セットを壊してしまったとき、みんなが私を取り囲んで
責める中、ノーム様だけはかばってくださいました。それだけでなく、舞台練習の
合間に率先して修理に参加して、今日の舞台に間に合わせてくださいました。
私、本当にドジで要領が悪くて人付き合いが苦手で..だから、あの時はとても
嬉しかったです」
口元を押さえ、時々しゃくりあげながら続けるフェルパー。
「以来、私は少しでもあなたにご恩返しが出来るように心がけて参りました。
でも、やっぱり舞台練習ではご迷惑をお掛けしっぱなしで..。にもかかわらず、
嫌な顔一つ見せず根気強く練習にお付き合いいただいて、丁寧に指導して下さって..。
足手まといになるばかりの私でしたけど、それでもようやく昨日縫い上げた舞台衣装を
お見せしたとき、とても喜んでくださって..これで少しはお役に立てたかと思うととても嬉しくて..」
 ふと、自分が着ている舞台衣装に目をやるノーム。素人臭い野暮ったいデザインに、
良く見ると大きさがまちまちの縫い目。しかし、それが手抜きによるものではないことは
縫い目を少し撫でるだけで彼にも理解できた。
「..この一週間、ノーム様の暖かいお心遣いに触れ、私は本当に幸せでした。ショーが終われば、
またそれぞれの学科、パーティの生活に戻ります。でも、舞台では幕が下りる瞬間まで
私とノーム様の二人きり..学園生活最高の思い出になるはずだったのに..それが、この手で
あなたのお腹に剣を突き刺してしまうことになるなんて..うわあああ..あ..あ..あ!!」
再び泣き崩れるフェルパー。

5:マジック・ショー3
09/12/24 19:58:35 d08gH0X9
どう声を掛けたらよいものやらと、ノームが思案を巡らせていると、しゃくり声が
落ち着いてきたフェルパーが再び顔を上げた。
「..私、ノーム様のことを心よりお慕い申し上げております。今回の事は決して故意では
無いことだけは信じてください」
正座に直り、両手を床について深々と頭を下げるフェルパー。
「う、うん」
「..ありがとうございます。この度は多大なご迷惑をおかけしました。今日のことは
私にとっては一生忘れられない出来事になるでしょう。本当に申し訳ありませんでした」
「うん、本当に気にしていないから..。あの..君がそんな想いを抱いていたことを、今初めて知りました。
その..こんな時に言い出すのもなんだけど、もし良かったらこれから僕と付き合ってくれませんか?」
ノームが尋ねるとフェルパーはゆっくり立ち上がり、涙に濡れた右目の目頭を人指し指でこすりながら、
微笑を浮かべて答えた。
「お気遣いありがとうございます。でも、しばらくはあなた様のお姿を見るのが辛うございます。
いずれ何らかの形でお返事したいと思いますので、少々お時間を下さいませ」
「う、うん..」
何か気まずいものを感じながら頷くノーム。
「..あの、もしお許し頂ければ私はこれで..」
「あ、うん、僕はもう大丈夫だから」
「それでは失礼します..さようなら」
深々と一礼するとフェルパーは踵を返して楽屋から出て行った。
(何だろう..この漠然とした不安感は..)
楽屋のドアが閉じられた後、ノームはフェルパーの言葉を思い返してみた。
-あなた様のお姿を見るのが辛うございます-
-いずれ何らかの形でお返事したい-
-さようなら-
(いくら剣士だからといって..まさか..まさかね..)
頭の中では半信半疑であったが、体は長椅子から跳ね起き、楽屋から飛び出していた。

 楽屋を後にしたフェルパーは、小道具置き場からノームが錬成した剣を
一腰持ち出すと、その足で街道から外れた森の奥へと向かっていた。空気は
深々と冷え込み、寒空には月が蒼白く光っている。眠りを邪魔されたがぶりんちょが
二羽飛び掛ってきたが、白刃一閃で切り捨てたフェルパーは、その辺りが少し開けた
草むらであることに気がついた。
(この辺でいいわよね..)
 着ている舞台衣装の上を脱いで草むらの真ん中に敷き、その上に剣を横たえ、
その前に正座する。
(辞世の句、考えてなかったな..)
月を見上げながら暫く頭の中で考えていたフェルパーだが、良い句が思い浮かばなかったのと、
書き留める筆記用具を用意していなかったことに気がつき、諦めることにした。


6:マジック・ショー4
09/12/24 20:02:50 d08gH0X9
 しばらくの間、目を瞑り気を落ち着ける。気持ちが定まるとゆっくり目を開き、横たえていた剣を取ると、
敷いていた舞台衣装を刃の真ん中あたりに巻きつけた。刃に舞台衣装がしっかりと巻きつけられ、
ずれない事を確認すると、その部分を両手に持ち替え、目をきつく閉じると剣先を下腹部に当てた。
(..!!)
 正直な所、死にたくは無い。その思いで体が動かなくなる。しかし、脳裏には先ほどの舞台の様子が
鮮明によみがえる。
 ノームが入った樽に剣を差した時の感触。リハーサルの時に比べて多少渋いとは思ったが、そのまま
突き刺してしまった自分。その時既にノームの体を3本の剣が貫いていたのだ。そして激痛に耐えつつ
笑顔すら浮かべて観客の拍手に応え、舞台の袖に下がり観客の目が届かない所までたどり着いた
途端、崩れ落ちるように倒れこんだノーム..。
(..私なんかに生きる資格なんて無い!!)
 -私はノームと同じ苦しみを味わって死ぬべきなのだ。ならば、彼が錬成した剣で命を絶てるのは、むしろ
本望ではないか-
「ええいっ!!」
そう決意すると、フェルパーは剣を持つ両腕に力をこめ、その剣を勢い良く自分の下腹部へ向かって突き立てた。

「..フェルパーさん、大丈夫ですか?フェルパーさん」
どれだけ時間が経ったのだろうか?フェルパーは自分を呼ぶ誰かの声に気が付き、草むらにうずくまったまま
固く閉じた目をうっすらと開ける。
(あれ?..痛..くない..)
さらに下腹部からあふれ出て来ているはずの生暖かい感触も無いことを不思議に思ったフェルパーは、
ゆっくりと上体を起こした。
「..よかった..間に合いましたか..」
目の前には胸元に右手を当て、ホッと一息ついて安堵の表情を浮かべるノームの姿があった。
自分の腹に目をやると、両手には自分の舞台衣装だけが残されており、それが堅く巻き付いて
いたはずの剣の刃は一本のひもとなっていた。
「..私..死ねなかったんですね..」
冷え切った草むらに座り込んだまま力無くうなだれて涙を流すフェルパー。ノームは立膝で彼女を迎え、
両腕をその頭の後ろに回して自分の胸元で抱きしめた。
「..うくっ..ノーム様は残酷です。三本もの剣に刺されれば、並の者なら死んでおります。私はあなたを
刺し殺したも同然なのに、あなたは私をこうして優しく赦して下さる。しかし、あなたに優しく
されればされるほど、私は無能な自分を惨めに思うだけ。あなたが私を赦して下さっても、私は自責の念と
羞恥心に耐えられそうもありません。私とてもののふの端くれ。この先ウジウジと自分の感情を
持て余して生きて行くのはとても辛いです。一思いに死なせてくださいませ..お願いです..」


7:マジック・ショー5
09/12/24 20:06:29 eWQSIXc8
そう言って自分の胸元を濡らすフェルパーの耳元に、ノームは静かにささやいた。
「..あなたに剣で刺されたとき、なぜ僕は我慢していたか、わかりますか?」
ノームの胸元で横に首を振るフェルパー。その感触を確かめると、ノームは続けた。
「あなたのことが、好きだからです」
その言葉にはっとして、顔を上げるフェルパー。穏やかな微笑を浮かべ、目を閉じて回想しつつ
言葉をつなげるノーム。
「いつからあなたのことを意識し始めたのか、僕もよく覚えてはいません。しかし、練習におつきあい
しているうちに、あなたの一挙手一投足に、目を奪われるようになりました。つま先から頭の先まで
すっと芯の通った立ち姿、一切無駄のない所作、練習中の真剣で引き締まった表情と、その合間に
見せる屈託のない笑顔。朗らかで礼儀正しく、何事にも手を抜かない真摯な人柄。鍛え上げられた
華麗な剣技..。いつの間にか、僕はあなたに惹き付けられてしまったのです」
そこで静かに目を開くノーム。煌々と輝く月の光を受けて、湖の水面のように深く青く光る双眸。
「ショーを成功させたかった、という気持ちは僕もあなたと変わりません。舞台のセットが壊れたときに
率先して修理したのは、僕自身があなたが舞台に立つ姿を見たかった、その一心でした。そして今日、
あなたが仕立てた舞台衣装を纏い、並んで舞台に立つことが出来た..僕は充分満足でした」
 フェルパーを抱きしめるノームの腕に力が入る。思わず身を固くするフェルパー。
「だから、最初の剣が刺さった瞬間、僕が思ったのは"このショーを壊してはいけない"ということでした。
どうしてマジックが上手く行かなかったのか、僕にも判りません。でもこの土壇場であなたと僕の努力を
無駄にしたくなかった..。幸い僕はノームです。剣の2-3本が刺さっても即死することはありません。
だからショーが終わるまで我慢すればいい..いや、しなければならない、そう思ったんです」
 しばらく堅く抱きしめた後、腕を解き、フェルパーの両肩をつかんでその瞳を見つめる。
「..しかし、そこで僕が我慢したことが、却って誇り高き剣士であるあなたを傷つけてしまったようです。
ですから、どうしても腹を切りたいというのでしたら、二度と止めはしません」
ノームがパチンと指を鳴らすと、地面に落ちているひもが再び剣へと姿を変えた。そしてその剣を拾い
上げるとノームは真剣な眼差しをフェルパーへ向けた。
「しかし、ここであなたを死なせてしまったら、今度は僕が後悔と喪失感に悩まされることになるでしょう。
ここであなたを失った先、僕は生きていく自信はありません。ノームはもともと土の精霊です。この場で
あなたと共に土へと還り、その亡骸を抱いて過ごすことになるでしょう」
そう言いながらフェルパーに剣を差し出すノーム。
「..だから、もう一度..お願いします..僕に..もう少しだけ、お付き合いください..。楽屋では、おざなりの言葉に
聞こえたかもしれません..でもこれは僕の本心です。もし、聞き入れられないとき..は、先に..僕を斬ってから..」
と、深く頭を下げるノーム。その頭から光る粒が零れ落ちるのをフェルパーは見た。
-ノームが..泣いてる..-
性格上常に冷静で感情表現に乏しい上に、依代の機能に依存するため、人によっては一生見ることが
無いというノームの涙。それを今、自分の前で、自分のために流してくれている..。

8:マジック・ショー6
09/12/24 20:11:26 2pKfWMNf
「ノーム..様..」
しばらくの間呆然とその様を眺めていたフェルパーだが、突然ノームが差し出した剣を払いのけると、
ノームに抱きつき、草むらの中へ押し倒した。
「フェ、フェルパーさん!?」
突然のことに驚くノーム。しかしフェルパーはお構い無しにノームにのしかかる。ノームの両腕ごと
抱きかかえ、お互いの頬をすりつぶすような勢いで頬ずりする。そして両腕を解くと今度は手の平で
額を撫で回し、髪をかき混ぜ、頬を両手で包み込むと、潤んだ瞳であっけに取られているノームの
瞳を覗き込む。
「ノーム様..愛しゅうございます..」
そうつぶやくと静かに目を閉じ、自らの唇をノームのそれにそっと重ねた。
 フェルパーの胸元から、手のひらから、そして唇から、その暖かさが伝わってくる。とくんとくんという
心臓の鼓動も聞こえてくる。ノームも静かに目を閉じ、両腕を回してフェルパーの体を軽く抱きしめ、
少し首を傾げて合わせた唇を薄く開いた。それに誘い込まれるようにフェルパーの舌がおずおずと
差し込まれてくる。軽く舌先を合わせてやると、それを合図にノームの口腔内をまさぐり始めた。
次第に気持ちが高ぶってきたのか、フェルパーの息遣いが荒くなり、合わせた体の間から汗のにおいが
漂ってくる。
 しばらく抱擁と接吻を続けた後、やがてどちらともなく唇を離し、うっすらと目を開けて見つめあう。
二人の間に繋がる白銀の糸がだんだんと細くなり、途切れていく。
「..ノーム様..」
フェルパーがノームにささやく。
「今度は、あなたの"剣"で私を貫いてくださいまし..。そしてその痛みと傷をあなたの愛の証として抱いて
生きていきます..それが私の答えです」
「..ありがとう..フェルパーさん..」
穏やかに微笑みを返しながらノームが応える。
「..しかし僕はこうも思うのです。せっかくの二人のマジックショー..これを失敗のまま思い出にして
しまって良いのか、と」
その言葉に、左の胸の辺りにズキンと痛みを感じるフェルパー。
「僕としてはあなたとの思い出を汚れたままにはしておきたくない..ここまで気分を盛り上げて
おいて言うのもなんですが、来年もう一度二人でマジックショーをやりませんか?そして今度こそきっと成功
させましょう」
一瞬うつむいて考え込んだフェルパーだったが、すぐににっこり笑って大きく頷いた。
「それでは..」ノームも満面の笑みを浮かべて言った。「性交は成功の後に、ということで」

-Merry Christmas-

9:名無しさん@ピンキー
09/12/25 00:44:45 i8wG4RHr
うまいこと言うなノームw
それはそうと、何か暖かい感じになれるSSだったな。GJ

10:7-7
09/12/26 00:26:07 23hH5WnY
GJ!
フェルパーの武士道に感動する自分。
ノームの男らしさに感動する。
暖かい話ですね。

そして前スレの穴埋めをしてくださった◆BEO9EFkUEQ師にも。
乙です。
ドワーフモフモフドワーフモフモフ。
幸せの呪文ドワーフモフモフ。

では本題に

お久しぶりです。
覚えてる方、いますか?
前スレの7です。
ようやく第一話が描き終わりました。
消費期限を遥かに過ぎたものですが予告通り投下します。
懺悔はあとがきに。

11:7-7
09/12/26 00:28:20 23hH5WnY

「は、ずいぶんと楽な依頼だったな」
そういって黒髪のエルフは騎竜の上で横になった。
両手を頭の後ろで組み、片足を手綱に絡ませている姿が妙に様になっている。
彼は一応クロスティーニ学園の制服を身に着けていたが、着るというより羽織っており、その下は洗いざらしのシャツ一枚。
長い黒髪も後ろで簡単に縛っただけで、さほど手入れはされていない。
このとてもエルフとは思えないエルフがサイファー、学園でも五指に入る騎竜士のエースだ。
「また相棒に負けたな。10体ほど及ばなかったか」
サイファーの右隣から唸り声が聞こえてきた。
生徒手帳を開いて唸っているフェアリーはサイファーの相棒であるピクシー。
他の騎竜士から『片羽の妖精』と呼ばれているエースだ。
「くっくっく、剣と魔法でそれだけしか差が無い方がすごいぞ、ピクシー」
サイファーは彼特有の含み笑いをしてそういった。
確かに剣と魔法では一度に多数の敵を倒せる魔法の方が有利だ。
特に騎竜士同士の戦闘では相手にギリギリまで接近しなければならない剣は圧倒的に不利になる。
しかしピクシーは難なくそれをこなす。故に彼はエースなのだ。
「二人ともおかしいっすよ!何でそんなに倒せるんですか!?」
今度はサイファーの左隣を飛んでいるヒューマンが泣きそうな表情で叫んだ。
「PJ、今日のお前の成績、7体だったぞ。ちなみにドベだ」
「嘘だ!?だって少なくても10体は……」
「キチンと急所を射抜けて無かったんだ。死んでないのが5、6体いたぞ」
ピクシーの言葉にがっくりと肩を落としたこのヒューマンはPJ。
1年生にしてはなかなか良い腕をしているのだが、残念なことに比較対象がサイファーとピクシーの為、本来の実力より不当に低く評価されている。
ちなみにPJとはパトリック・ジェームズの略で、趣味はポロ。あの、馬に乗ってやる奴。
「で、ピクシー。ヒヨコの戦果は?」
サイファーがピクシーにもう一人の戦果を聞いてくる。
ピクシーが口を開く前に、威勢の良い声が飛んだ。
「ヒヨコって呼ぶなぁ!!」
声の主はピクシーの右隣を飛んでいたヒューマンの女子、アシェルだ。
まだ転科したばかりの新米騎竜士で、金髪。ゆえにヒヨコだ。
「ヒヨコはヒヨコだろ。こんな適切な表現他にねぇよ」
サイファーがからかうように言う。
というか実際にからかってる。
「だからヒヨコって呼ぶなぁ!!」
再び威勢のいい声が飛ぶ。
「落ち着け、アシェル。騎竜が怯えてるぞ。騎竜士なら騎竜を気遣え」
「何!?ピクシーまで私をヒヨコって呼ぶの!?」
「呼んでないだろ!」
アシェルは単純で勘違いしやすい。しかも一度突っ走るとなかなか止まらない。
下手に注意すればこちらが被害を受けることをピクシーはよく知っている。
ゆえに言葉には十分注意して落ち着かせる。ピクシーはそのつもりだったが……
「いいから落ち着け!ったく、世話のかかる「ヒヨコだぜ」

12:7-7
09/12/26 00:29:55 23hH5WnY
ピクシーの顔から一気に血の気が引いた。
慌ててサイファーに振り向く。
サイファーは心底楽しそうに含み笑いをしている。
ピクシーはサイファーが自分の声真似をしたと理解した。
同時に、そんなことを考えてる暇が無いことも一瞬で理解した。
「へー、そうなんだ……?」
ピクシーは背後からのぞくりとするような声を聞いた。
彼は一瞬このまま逃げることを考えたが、逃げたところで学園で会う事になる。
下手すれば彼の部屋に向かってナパームやグレネードが投下される可能性もある。
彼は覚悟を決めて振り向いた。
そしてすぐさまなだめにかかる。
「勘違いするなよ、アシェル?今のは俺じゃなくて相ぼ「問答無用!!」
そう叫んで、彼女はナパームを投げた。
「いや、おい、ナパームは洒落にならない!!」
ピクシーは手綱を引き、一気に地表近くまで急降下した。
直後、先ほどまでピクシーの居た空間に巨大な火球が現れる。
安心する間もなく第二波が襲ってきた。今度は一個ではなく十個だ。
今度は速度を上げ、ナパームの雨から抜け出す。
先ほどとは比べ物にならない大きさの火球が空気を焦がす。
ピクシーは騎竜を急上昇させ、アシェルよりも高い位置に逃げた。
その後も再びただ急降下、加速、急上昇を繰り返す。
本来ならこんな単調な動きはしないのだが、幸い彼女は機動に関してはまだ素人だった。
現にアシェルはこんな動きでもピクシーを追いかけたりしてこない。
例え追いかけたとしても、片羽の妖精を追い詰めるような機動は出来はしない。
ピクシーはアシェルが落ち着くまで逃げることを決めた。

結局、彼はそれから10分ほどアシェルから逃げ続ける羽目となった。


10分後、再び隊列を組んだピクシー達は、一番騎の高笑いを聞く羽目になった。
「はーーははははは、は、は、な、なかなか良い逃げっぷりだったぜピクシー、くっくっく」
「相棒、頼むから今度からはこんな事しないでくれ。ただでさえアシェルは勘違いしやすいんだ」
「どーせ私は話に乗せられやすい馬鹿ですよーだ……」
「だからそうじゃなくてだな……」
思わずピクシーは頭を抱えた。
この二人を相手にするのは片方を相手にするよりも2乗疲れる……。
「ははは、分かったよ、ピクシー。善処する」
「いや、お前の善処ほど信用できないものは無い。あとで誓約書にサインしてくれ」
「うわー本格的ですね。でもそうしてもらえると嬉しいっす」
そう言ってきたPJはいつの間にか上着を脱いでいた。
「ん?PJ、お前なんで上着脱いでんだ?」
「ああ、これっすか。さっきのナパームで上着が燃えたんであわてて脱ぎ捨てたんですよ」
「ああ、なるほど……」
さっきのナパームとは初撃の事だろうと、ピクシーは思った。
彼に向かって投げられたナパームは、彼が避けた後爆発した。
あの時は隊列を組んでいたから、騎竜と騎竜の間はかなり狭かった。
そこで起きた爆発だ。
そうなる事を予想していた彼の相棒は彼より速く逃げていたが、PJは反応し切れなかったのだろう。
ただ、位置が離れていたから上着が燃えるぐらいで済んだ。
直撃だったら騎竜ごと黒焦げになってもおかしくないのが騎竜士用のナパームだ。
GJのサインが入ったそれは見た目も威力も通常のものから遠くかけ離れている。

13:7-7
09/12/26 00:30:55 23hH5WnY
「ご、ごめん!PJ!」
「いいんすよアシェル先輩。どうせ学園の上着ですから。いくらでも練成できます」
「で、でも……」
「PJがいいっていたんならそれでいい。そうだろ?ところで相棒、ちょっと聞きたい事があるんだが……」
「ん、なんだピクシー?」
騎竜に寝転がったままサイファーはピクシーを見る。
「最近、どうもモンスター達の活動が活発じゃないか?」
「活発か……確かに最近、多いな」
先ほどの防衛戦のことだ。
「ああ、普通なら2ヶ月に一回くらいが普通だ。それが今月で三回目、しかもあれほどの軍勢だ」
「……でもそれは俺達には分からないな。まぁ、今頃調査依頼が掲示板に張られているだろう」
サイファーとピクシーはお互いの騎竜を近づけて会話していた。
ちなみに完全に話から閉め出されているアシェルとPJは……
「PJはどれぐらい戦闘に出たことがあるの?」
「俺ですか?そうっすね、小さいのも入れれば多分20回以上は出てると思います」
「へぇ、それじゃあ、ああいう大きいのは?」
「さっきのも入れて2回です。めったにあるもんじゃありませんしね。それになかなか二人が連れてってくれませんし」
「ふーん、私だけじゃなくてPJもなんだ」
こちらもこちらでちゃんと会話をしていた。
「まぁ、これでしばらく落ち着くな」
そういってピクシーは大きく息をついた。
あれだけ大量にモンスターを狩れば、流石のモンスターもしばらくは迷宮外に出てこない。
つまりあの規模の戦闘はしばらく発生しない。
そういう意味でピクシーは言ったのだが、サイファーはくつくつと含み笑いで返した。
「ピクシー、それはNGだ」
「相棒?」
ピクシーは首をかしげた。
サイファーに今の言葉の意味が通じないわけが無い。
なのにそんな反応を返した相棒にピクシーは不審の目を向けた。
それを気にも留めず、サイファーは体を起こし、手綱を握った。
「たしかに、妙に活発だ!!」
サイファーの騎竜がいきなり急降下した。
その行動の意味を、相棒であるピクシーは瞬時に読み取る。
「PJ!アシェルを守れ!!」
「へ?」
「馬鹿!お客さんだ!!」
そう言ってピクシーは剣を抜いた。
普段はあまり騒がない騎竜が興奮している。
これで、相手が相当の魔物であることが分かる。
周りに気を配る。
時折、下から爆音と断絶魔が聞こえてくる。
ピクシーたちの遥か下でサイファーが何かと戦闘を繰り広げているのだ。
遠すぎてここからじゃ相手の正体は分からない。だが、必ずここまで来るとピクシーは確信していた。
直感的に、ピクシーは剣を振るった。
確かな手応えが刃先から伝わってくる。
彼は自分が斬ったモノを見て、小さく舌打ちした。
「ゴアデーモンか!!こいつはちょっとまずいな」
彼は騎竜を走らせた。
デーモンが竜に喧嘩を売ってきた。一体だけのはずが無い。
ようやく今の状況に気がついたPJ達も騎竜を寄せ合って敵を探す。
ピクシーはアシェル達の安全を確認しながらデーモン達の襲撃に備えた……。




14:7-7
09/12/26 00:31:31 23hH5WnY




魔女の森―冒険者学校の生徒なら必ず訪れる迷宮の一つ。
比較的簡単な迷宮だが、上級生であっても決して油断できない魔の森。
それは空から近づく者達にとっても同じ事だ。


魔女の森の上空で、一騎の騎竜が小さな機動を描いていた。
その機動を追うように、10体以上のデーモンが空を飛ぶ。
しかもゴアデーモンなどという可愛いものではない。
全て上位悪魔、グレータデーモンだ。
追われる騎竜に乗っているのはサイファーだ。
彼は騎竜を細かく動かし、デーモンの追撃から逃げる。
だが細かく動かすたびに騎竜のスピードが落ち、デーモンとの距離は縮まっていった。
サイファーはすばやく呪文を唱え、シャイガンを後方に飛ばす。
反応のいいデーモン達はそれを簡単に避けたが、そのせいで体勢が崩れる。
そこに、サイファーが杖を振るった。
巨大な炎が辺り一面を焼きつくさんと現れる。デーモン達は突然現れた炎から逃げることが出来ず全身を焼かれた。
しかしそれだけでは致命傷にはならない。炎の中から数体のデーモンが飛び出してくる。
サイファーは騎竜を回転させデーモン達をかわすと、それに向かって再び魔法を唱えた。
デーモンを中心に大爆発が起きる。ビックバムだ。
直撃を食らった一体が黒焦げになって森へと落ちて行く。だが生き残った数体が再びサイファーに攻撃を仕掛ける。
上級悪魔、グレータデーモンの一撃は一流の冒険者であっても即座に死に至るほど強力だ。
数発もくらえばいかに騎竜といえど、まともに飛ぶことは出来ない。
だがそれを見てもサイファーは安全な上空へと逃げず、むしろ低空を低速で飛んだ。
明らかな誘いに、多少なりとも知恵のあるデーモン達は二の足を踏んだが、やがて意を決したようにサイファーに襲い掛かった。
そして

サイファーは笑う。

恐らくデーモン達は驚いたであろう。
彼らがサイファーに殴りかかった瞬間、爆発と共にサイファーの姿が消えたのだから。
そして彼らがサイファーを探す間も無く、彼らは背後から飛んできた火球の直撃を受けた。
前方にいた4体は火球から逃れられた。
しかし他のデーモンは全滅だった。
先ほどの火球は、デーモンの体を灰すら残さずに完全に焼き尽くした。
生き残った4体も、すぐに仲間の後を追う事になった。
デーモン達を焼き尽くした炎から、騎竜が飛び出して来た。
先ほどのような低速ではなく、本来のスピードで。
飛竜の加速に、ビックバムの爆発を利用した、急速加速。
この加速が、サイファーの得意とする技だ。
下手をすれば飛竜ごと自滅しかねない危険な技だが、サイファーは難なくそれをこなした。
竜本来のスピードに、デーモン達は反応する事も出来なかった。
4体のうち2体は騎竜の爪に引き裂かれ、一体は騎竜の口から放たれた火球に焼き尽くされ、
最後の一体はサイファーの杖に目と頭蓋を貫かれ声を上げる間もなく絶命した。
サイファーは自らが突き刺したデーモンを森に放ると、上空の仲間に加勢すべく、上昇した。




15:7-7
09/12/26 00:32:34 23hH5WnY

上空ではピクシーがゴアデーモンの相手をしていた。
しかしかなりの苦戦を強いられていた。
本来ならピクシーにとってゴアデーモンなど敵ではない。
サイファーのような派手さは無くとも、彼の空戦技術と技量を持ってすれば一撃ごとに一体ずつ排除する事など、例え相手がグレータデーモンでも難しい事ではない。
だが今は余計な荷物を二つも背負っている。こうなると話は違ってくる。
何せPJもアシェルもレベルが低い。特にアシェルは騎竜の操作すら満足に出来ないのだ。
そんな2人を守りながら十体を超えるゴアデーモンを相手にするのはいくらピクシーでも苦しいものがあった。
ゴアデーモンも、ピクシーよりも動きの鈍い2騎を優先的に襲っていた。
PJもアシェルも必死に応戦するが、デーモン達には脅しにすらならない。
今もPJの銃が連射した弾の雨を掻い潜り、2体のデーモンがPJを襲いかかっていた。
「うおぉっと!!へへ、そんな攻撃喰らうかよ!」
PJはとっさに回避行動をとりデーモン達から逃げるが、それはデーモン達の誘いだった。
逃げた先には他のゴアデーモンが待ち受けていた。
「え、ちょっと!これはまずい!!」
すぐに回避行動をとろうとするが、デーモン達がそれを許さない。
先ほどの2体がPJの前に立ちふさがった。
PJは銃を乱射したが、2体は軽々とそれを避け、再び襲い掛かってくる。
今度は左右からも2体、ゴアデーモンが突っ込んできた。
PJは一瞬どう避ければいいか分からなかった。
本来なら、その一瞬が命取りとなる。
だがPJには一つの幸運があった。『片羽の妖精』と共にいたことだ。
「PJ!前に逃げろ!!」
PJに襲い掛かったデーモンのうち、前方のデーモンの首が跳ね飛ぶ。
PJは、というよりPJの騎竜はすぐさま前方へと飛翔した。
騎竜の後方で左右から襲ってきたゴアデーモン達がぶつかり合う。
そこに向かってすでに主の言うことを聞いていないアシェルの騎竜がブレスを吐いた。
ブレスを受けた事により、デーモン達の動きが止まった。
その隙を見逃す片羽の妖精ではない。
騎竜を返し動きの止まったデーモン達の横をすり抜ける。
一瞬後、デーモン達の体は二つに裂け、、森に落ちていった。
他のデーモン達も片羽の妖精や騎竜士の意思を無視して動き回る騎竜に次々と落とされ、数を減らしていく。
そこにさらに追い討ちがかかった。サイファーが合流したのだ。
一分も経たないうちに、デーモン達は全滅した。

「よぉ相棒、まだ生きてるか?」
「それはこっちのセリフだピクシー。少しなまったんじゃないか?」
「かもな。学園に戻ったらダンテ先生に指導してもらうか」
「そうしろ。しかし、ヒヨコは仕方ないとしても、PJ。まーた騎竜に助けられたな」
PJは顔を真っ赤にして俯いた。
騎竜士のレベルが低いと騎竜は時々勝手に行動する。
大体は自分自身に危険が迫った時生き延びるために動くのだが騎竜が勝手に動くということは未熟者の証なのだ。
レベルが上がれば例え嵐に突入しようと決して騎竜士の意思に逆らおうとはしない。
中には自我すら捨て、騎竜士に尽くす騎竜も居るほど、騎竜は騎竜士を信頼するものなのだ。
ただし高レベルに限るが。
「騎竜とのコミュニケーションが足らないんじゃないか?もっと世話してやったり、遊んでやった方がいいぞ」
と、ピクシー。
「そうそう、彼女と乳繰り合ってる暇があるんならたまには竜舎に顔出しな」
これはサイファーだ。
「乳繰り合ってなんかいません!!」
PJは先ほどとは違う理由で顔を真っ赤にして叫んだが、サイファーには逆効果だ。
「ほぉー、そりゃNGだな。なんなら色々教えてやろうか?夜のテクニックとか」
「結構です!!」
『……はぁ』
ピクシーとアシェルがほとんど同時に息を吐く。

16:7-7
09/12/26 00:34:50 23hH5WnY
「今日のサイファーは何?」
「多分ソルジャーだな」
アシェルの質問にピクシーが即答する。
サイファーは一日ごとに性格が変わる。
逃げる敵を容赦なく焼き払った次の日に、手負いには興味がないと傷を負った敵を見逃すなんて事がよくある。
サイファーの性格は3つに分けられる。
強さを求める、というか力を振るうのが好きなマーセナリー。
自由に生きる、一番素に近いソルジャー。
仲間と生きる、騎士道精神の塊みたいになるナイト。
この三つだ。これが毎日ランダムで入れ替わる。
ようは毎日ランダムで善、中立、悪が極端に入れ替わるということだ。
「はぁ、ずっとナイトだったら楽なんだけどね」
「それはそれできついぞ。相手を後ろから攻撃するだけでこっちまで攻撃されるからな」
「でも密集してる時にファイガンやビックバムをぶっ放すマーセナリーよりはましでしょ?」
「あれは酷かったな……PJなんか死にかけてたしな」
運悪く、PJはそのとき直撃をくらったのだ。
「結局ソルジャーが一番マシなのかな?」
「マシといえばマシだろう。ただ普通とは遥かにかけ離れたマシだが」
「さっきからなかなか酷い事言ってくれるな、ピクシー?」
いつの間にかサイファーがPJをからかうのをやめていた。
「でも本当の事だろ?」
「まぁな。それはOKだ」
くつくつとサイファーが笑う。
「別に俺はそれを責めようと話しかけたわけじゃないぜ?」
「ならなんだ?」
ピクシーが聞くと再びサイファーが笑った。
「お前ら、気付いてないみたいだな」
「何を?」
「とっくのとうに学園に着いてるぜ?」
「何!!?」
慌てて地上を見たピクシーの目に、学園の青い屋根が映った。
「早く言えよ相棒!」
「くっくっく。さて、それじゃあお先に失礼させてもらうぜ」
「あ、待てコラ!」
「ま、待ってよぅ!!」
一気に高度を下げるサイファーに、それを追うピクシー、なんとか2人について行こうとするアシェル。そして一人置いてかれるPJ。
これが彼らのパーティの日常だった。



全員が騎竜から降りた所でガルム隊は解散した。
アシェルは女友達と共に食堂に、PJは彼女との約束とかですぐに寮へ消えた。
ピクシーは私用があるといって校舎のほうへ走っていった。
サイファーは夜まで特にすることもなかったので、ぶらぶらと校内を歩くことにした。
ちなみに騎竜士のパーティにはパーティ名をつけることが義務付けられている。
これはただの古い風習なのだが、どこのパーティかすぐ分かるため現在でも続けられている。

ぶらぶらと行く当ても無く廊下を歩いていたサイファーは、掲示板に新しく記事が張られているのを見つけた。
特に興味はないが、他にすることも無い。
暇つぶしにと、サイファーはそれを読む。
「ん、ドラゴンオーブ争奪戦の途中経過か。2対2、今のところ引き分けか。まぁ、どっちが勝ってもオリーブとジェラート以外に影響は無いだろうな。
というか、この記事、作ったのはオリーブだな。図書委員の特権こんなところで使うのはあいつぐらいだ。しかもジェラートのクラスに対する敵愾心がよくこめられてる」
やや呆れながら、サイファーは他の記事に目を移した。
「バルタクス校の制服の少女、保健室に運び込まれる、か」
バルタクスは海の向こうの大陸にあるここと同じ冒険者育成学校だ。
ただあまりに遠過ぎるため両校の間に交流は無い。
一人だけこっちから向こうの学校に入りに行った奴も居るとサイファーは聞いていたが、そいつがセレスティナであること以外サイファーは知らない。
その記事にはなぜバルタクスの生徒がここにいるのかという事に対する推測が書かれていたが、サイファーは興味が無いので読まなかった。
他にもめぼしい記事はないかと見ていたが、特に無く、仕方がなくまた校内を歩き始めた。


17:7-7
09/12/26 00:35:52 23hH5WnY

しばらくして、前から校長が歩いてくるのが見えた。
他に歩いている生徒が居なかった為、校長もサイファーを見つけたようだ。
足を止めて、サイファーに声をかけてきた。
「おや、君は確か、サイファー君ですね」
「はい、こんにちわ、校長先生」
いつもの笑顔の校長に、礼儀正しく頭を下げるサイファー。
そうは見えなくともサイファーはエルフである。目上の人に対する礼儀はちゃんとわきまえている。
「こんにちわ。どうしたんですか、こんな所で」
「いえ、空から帰ってきて暇でしたので、散策を」
「ほほ、そうですか。でも校内よりも外を散歩したほうが気持ちいいですよ」
「ええ、確かにそうかもしれませんが、たまには暖かで騒がしい風を感じるのもいいと思いまして」
無論、エルフであるため詩的表現も用いる。ただし相手がエルフの時だけだが。
他の種族に使っても分からないだろうし、サイファー自身何を言ってるか分からなくなるからだ。
「ほ、なるほど。確かに外は冬、凍える静寂より暖かな喧騒ですか。なかなかいい考えです」
校長もそれを用いて返してきた。
「はい、それでは自分は散策に戻りますので」
「ええ、邪魔をしてすいませんでしたね」
「いえ、こちらこそ。校長先生も何か用事がおありでしょうに」
「おお、そうでしたそうでした」
校長は思い出したというようにポンっと手を叩いた。
「ちょっと大事な用事があったんですよ。すいませんね。それでは」
そういって校長は早歩きで去っていった。入れ違えるように、ピクシーが現れた。
「お、ピクシーじゃないか、奇遇だな」
「ん、なんだサイファーか」
ピクシーはサイファーの顔を見ると小さく息を吐いた。
「何だとはひどくないかピクシー」
「パーネ先生を探しているんだ。この前、宿題を出されてな」
「ああ、またか」
そういってサイファーはピクシーの抱えている大きな封筒を見た。
ピクシーは剣の腕や肉弾戦には優れているが、魔法は下手なのだ。
特に聖術はひどく、何度も赤点を取っている。
だからたまにパーネ先生から宿題を出されるのだ。
「職員室にはいなかったのか?」
「いなかった。聖術準備室にもな」
「ふ~ん、そうか。なら他の先生に預かってもらえばいいじゃないか」
「ん、まぁ先生によるけどなぁ」
「お、ちょうどいいところに」
サイファーは横を通り過ぎようとしていた先生を捕まえた。
「……サイファーにラリーか」
ダンテである。
「ダンテ先生、ピクシーがまた宿題を出されたみたいなんですよ。代わりに預かってやってくれませんか?」
ダンテに対してはサイファーは砕けた話し方をする。
ダンテは騎竜士学科の担任であるため、他の先生よりも近い存在だ。
そのため話し方も自然と砕けたものとなっている。

18:7-7
09/12/26 00:37:21 23hH5WnY
「宿題?」
ダンテはピクシーの方を向いた。
「はい、ダンテ先生になら安心して預けられます」
そういってピクシーは抱えていた封筒をダンテに渡した。
一瞬、ダンテの表情が歪んだが、サイファーはそれを見ていなかった。
「わかった。後で渡しておく」
ダンテはそれを服の内側のポケットにしまい、今度はサイファーの方を向いた。
「所でサイファー、お前、この前休んだ武術の試験、まだやっていなかったな」
サイファーの表情が引きつった。
ピクシーは魔法が苦手だが、その相棒である彼は逆に武術が苦手なのだ。
一応冒険者のためそれなりには強いが、相手が素人ならばの話で、剣士であるピクシーには数段劣る。元アイドルのアシェルにすら劣る。
代わり魔法にかけては同族きっての才能を持っているが。
とにかく、そんなサイファーがすべきことは、今は一つしかない。
「失礼しました!」
そういって、一目散に逃げ出す。その速さ、ダンテが反応しきれない程。
急加速は騎竜に乗っているとき限定の技ではないのだ。
無論、オリジナルの加速呪文を用いてはいるが。
一瞬で最高速まで加速しダッシュ、数秒もしないうちにその姿は曲がり角に消えた。
ダンテはサイファーが消えた角を無言で見つめ、やがて小さく息を吐いた。
「まったく、あいつめ」
「サイファーらしいな。見事な逃げ足だ」
そういってピクシーはダンテを見た。
口では苛立ちげにいったがその顔はかすかに笑っているように見えた。
だがすぐにいつもの表情に戻った。いや、いつもよりもさらに暗い表情だ。
「ダンテ先生……」
ピクシーの表情も堅い。ダンテはゆっくりとピクシーの方を見た。
数秒、二人は無言で向かい合う。
「……お気をつけて」
それだけ言ってピクシーは廊下の向こうに飛び去った。
「……お前もな」
少ししてからダンテはそう呟き、目的の場所に向かって歩きだす。
そこは、今さっき校長が向かった場所でもあった。
ダンテの剣が、チャキン、と小さく音を鳴らした。




―同時刻、グラニータ氷河の西岸に上陸する多くの影があった。




  TO THE NEXT MISSON



19:7-7
09/12/26 00:40:03 23hH5WnY
第一話終了です。
クリスマス関係ないので25日は避けました。
クリスマスネタが入っていないのは書き始めが夏だったからです。
……4ヶ月かかりました。
でもしょうがないんです。途中でパソコンが2台もお釈迦になったんです。
……言い訳ですね。本当にすみません。終焉の理とアルマゲドン以外ならなんでも受けます。
しかも時間がかかったわりに内容が……
しかし、なんて動きの遅い手だ。速さが足りない!!
第二話はもっとはやく書きます。
……といって4ヶ月かかったのが第一話。
あの短いプロローグでも一ヶ月。
せめて半分の時間で書けるようにがんばります。
あと、おそらくエロは第4話以降になります。すみません。
それでは

   体が 動かない……



20:名無しさん@ピンキー
09/12/27 12:48:24 tRzDmhOr
獣臭いドワ子とか最高すぎる
スパッツに顔を埋めて思い切り深呼吸したい

21:名無しさん@ピンキー
10/01/02 22:13:53 gWnLbwvw
あけましておめでとう保守

22:ライト
10/01/06 16:34:12 9pIxdO4a
あのー・・・

23:ライト
10/01/06 16:36:50 9pIxdO4a
↑ミスです。
始めまして、ライトです。
俺のパーティですがヒューマン♂(普通)、フェルパー♂(戦士)、ヒューマン♂(剣士)
ヒューマン♀(普通)、クラッズ♀(レンジャー)、フェアリー♀(魔法使い)でエロパロを作っていいですか?
ヒューマンが3人もいますが・・・。「2」の方ですが

24:名無しさん@ピンキー
10/01/06 16:41:09 nSMojOh/
自分のパーティで作っちゃダメとか言ったら職人の大半消えるだろこのスレはw

25:ライト
10/01/06 16:42:49 9pIxdO4a
じゃあいいって事ですか?

26:ライト
10/01/06 17:36:42 9pIxdO4a
重い展開にするのは苦手なので比較的軽いストーリーにしたいと思います

27:名無しさん@ピンキー
10/01/07 22:59:44 oWfCTKAn
OK、作品が多いことはいいことです。

28:ライン
10/01/08 17:11:33 nc8nYzT0
以前まで書き込めなかったのですが

29:ライン
10/01/08 17:12:29 nc8nYzT0
自分の本当の名前はラインです。
無駄にログを使ってすいません・・・。
現在ワード2007で作成中です

30:アフター・マジック・ショー1
10/01/09 07:05:05 al0HBTr7
「バカかお前は?なんでそこまで行ってヤっちゃわなかったんだよ?ノーム」
鍊金術科棟から学生食堂へ至る渡り廊下。ノームがクラスメイトに頭を小突かれながら
歩いている。
「..いや、その..予想外の展開で”オプションパーツ”の準備してなくて..」
「Oh my God!!クリスマスだぞ?男と女がペアになったら何が起こるかわからない
ラグナロクな夜にお前は一体何を考えて..」
そういってノームの頭をヘッドロックで固め、容赦なくナックルを叩き込むクラス
メイト。
「痛い痛い痛い!!..だってあれ付けて動き回ると擦れて痛いんだよ」
そう言い訳するノームに向かって、彼は
「ばーか!!この根性無し!!俺なんか相手もいないのに常時装着臨戦態勢だぞ。見ろ!!」
下半身を突き出し、ノームの目の前で制服のズボン越しに股間の”オプションパーツ”を
ひくつかせて見せた。
「俺に一言言ってくれれば、こいつ貸してやっても良かったのに」
「..いや、さすがにそれは遠慮する。それにタイミングもホントギリギリだったし。
わざわざ借りに行ってたら今頃彼女はこの世にいないよ」
クラスメイトの下品さに顔をしかめながら、ノームは食堂へ入る曲がり角を曲がって
いった。

「信じらんない!!そこまで行ってなんにも無かっただなんて!!」
剣士科棟から学生食堂へ至る渡り廊下。フェルパーが「頭大丈夫?」と言わんばかりの
あきれ顔をするクラスメイトと一緒に歩いている。
「..いや、その..まさか追いかけて来てくれるとは思ってなくて..」
「Oh my God!!クリスマスよ?女と男がペアになったら何が起こるかわからない
ラグナロクな夜にあなたは一体何を考えて..」
そう言ってフェルパーの背後から手を回し、胸を揉みしだくクラスメイト。
「いやんいやんいやん..それに死ぬつもりで舞台衣装一つで飛び出しちゃったから、
いざ生きようと思い直したら寒くて寒くて..」
そう言い訳するフェルパーに向かって、彼女は
「ばーか!!この根性無し!!私なんか相手もいないのに来るべき時に備えて毎年元旦の
滝行に参加してるのよ?見て!!」
制服の上を脱ぎ捨て、上半身ブラジャー一丁の姿でヘラクレスのポーズをとってみせた。
「そんなこと言うなら今年は引きずってでも滝行に連れて行く!!」
「..いや、さすがにそれは遠慮するわ。というか、毎年そんな煩悩丸出しで滝に打たれて
たわけ?」
クラスメイトの下品さに顔をしかめながら、フェルパーは食堂へ曲がる曲がり角を
曲がって行った。


31:アフター・マジック・ショー2
10/01/09 07:08:57 al0HBTr7
「「あ!!」」
食堂の入り口でばったり鉢合わせするノームとフェルパー。瞬時に真っ赤になって
炎上する二人。
「お、お、お食事ですか?」
クラスメイトに脇腹を肘で小突かれたフェルパーが尋ねる。
「..え?あ、まあ、それと舞台の撤収に..」
クラスメイトに後頭部を平手ではたかれたノームが答える。
「「..よろしかったら、ご一緒..」」
と、同時に言いかけて、また真っ赤になって俯いてしまう二人。その後ろでは二人の
クラスメイトが頭を抱えている。
(( 全 く お 似 合 い だ よ 、 お 前 さ ん 達 ))

一時間後
「あーあ、幸せ一杯じゃないの。あんなにしっぽ、ビンビンに立てちゃって」
フェルパーのクラスメイトがぽつりとつぶやく。その視線の先ではノームとフェルパーが
仲良く向かい合って折り畳み机を運んでいる。
「それにしても、もっと上手く行くと思ったんだがなあ。こういうのも”恋は思案の外”
っていうんだろうか?」
そう言って、ノームのクラスメイトが頭を掻く。
「策士が策に溺れたわね。直前にマジックのタネ抜いて剣を刺させるなんてやり過ぎ
なのよ。どうするの?あの二人だったら本当に一年間我慢しちゃうわよ?」
「来年のクリスマスに募り募った一年分の熱い想いをぶつけ合ってもらうしか無いだろうな。
くぁー !!それまでサポートしてやんなきゃならないのか。めんどくさいな」
そう言いつつもどこか楽しそうなノームのクラスメイト。テーブルに片手で頬杖をつき、
細めた横目でその顔を眺めていたフェルパーのクラスメイトが、ぽつりと言った。
「ねえ、めんどくさいついでに、私たちも付き合っちゃわない?」

..というのを12/25に投下しようと思ったら規制されてました..orz。


32:ライン
10/01/09 16:41:13 WEN+1aS6
「あぶないパンツ」ネタにしようかな

33:名無しさん@ピンキー
10/01/09 22:13:24 h5rfdY1J
>>32
職人ならもうちょっとストイックな気質を持とうや
何か一本書き終えるまでは書き込みを控えるくらいの姿勢で頼むよ

34:名無しさん@ピンキー
10/01/10 18:27:25 9ui55SRH

 「う~ん…」
 「ん?どうした?ヒュム男」
 悩んでいる戦士ヒュム男に精霊使いエル男が話しかける。
 本来、ヒューマンとエルフはバハムーン程ではないにしろ、相性は少々悪い。
 「エル男か…いや~、どうしようか迷っててな」
 「迷ってる?いつも迷わない君が珍しいな…何を迷ってるんだ?」
 「俺と同期のフェア子と同期だけど学校がブルスケッタのフェア子、どっちにしようかと迷っててな~」
 ちなみに、ヒュム男の同期のフェア子はレンジャーで、ブルスケッタのフェア子は賢者である。
 「…それって、つまり恋かい?」
 「そうだけど?」
 ヒュム男が言った事にエル男は質問したが、ヒュム男はあっさりと答えた。
 「そうか…それなら僕から言える事はただひとつだけだ」
 「お?そりゃなんだ?」
 エル男に対してヒュム男は期待するような感じでいる。しかし…
 「とりあえず…滅びろ!ビックバム!!」
 「ええっ!?なんでーーーっ!?」
 エル男が放ったビックバムがヒュム男は避け切れず直撃してしまう。
 煙が巻いた後にはヒュム男らしき物体があるだけだった。
 「贅沢だ…君の悩みは贅沢なんだよ…僕は…僕はまだ…1人の女性をも導けてないというのに…」
 彼は写真を見ながら嘆くように言っていた。移っていたのはガンナーのヒューマンの女の子であった。


35:名無しさん@ピンキー
10/01/11 17:25:44 r7dwCjBl
>>31
つまり今年のクリスマスは二人の募り募った熱い思いを
ぶつけあう姿が見られるのですねわかります

36:名無しさん@ピンキー
10/01/11 20:38:30 A8qzxCIj
>>31
来年のクリスマスまで耐えられるかな?
案外夏休みの肝試しであれ、いまなにか光ったような。

>>34
お前ならイけるさ!エル男!
さぁ、エルフの一族に伝わるエロフの秘薬を使ってヒュム子を導くんだ!!
あれ、また空が光っ―

37:ライン
10/01/12 16:58:54 hBk+G8b1
いきなりビッグバム…エル男容赦無い(汗)

38:名無しさん@ピンキー
10/01/19 01:04:47 Lu/Dc0oa
ところでいまでもととモノ1ネタはOKなのかい?

39:名無しさん@ピンキー
10/01/19 15:06:00 S45lrZBx
もちろんOKで大歓迎だろ。

40:名無しさん@ピンキー
10/01/19 19:22:04 0u3+oU9J
とんでもない矛盾が無い限りクロスオーバーも許す。

41:名無しさん@ピンキー
10/01/24 01:03:09 9za6XfCd
一月は書き手の人は忙しいのかな。保守

42:ww
10/01/24 01:04:33 hAaEKtHZ
オナニーするならココでしな!!w
ごっつい安いでー♪
URLリンク(kaiketu-c.cocolog-nifty.com)

43:名無しさん@ピンキー
10/01/25 00:30:14 YOkozTWY
>>34の者です。
予告:女アイドルの中で誰が1番可愛いかヒュム次とフェル男とクラ男
   で話し合います。エル男も一応登場しますが興味ない様子。

…という感じです、時間かかるかもしれない。

44:名無しさん@ピンキー
10/01/25 23:18:23 XAwc/Oft
OK、わかった
けど予告はこれくらいにしとけ
ネタを先に言うのはデメリットも多いから。
大丈夫、このスレにはいつでも待っているROMの人がいる。
多少遅くなったぐらいでも読んでくれるさ。
……ただし半年経つとさすがにアウトだからな。
上に失敗例がいるから教訓にしなよ。

45:名無しさん@ピンキー
10/01/26 23:39:32 frlgg8D1
よし!勇気持って俺もかいてみます。多分半年はかからなそうなので。 

46:名無しさん@ピンキー
10/01/26 23:55:09 3hGljBSH
だから書いてみますとか○○書くとかいちいち報告せずに、書き上がってからスレに書き込めと

47:名無しさん@ピンキー
10/01/27 00:03:43 4ZIF8YhJ
<<45が書きますよ。
ディア男xセレス子



・・俺はこのクロスティーニ学園に来る前、ってか直前には、
「いいパーティに入って彼女作って最高の学園ライフを過ごしてやるっ!」
と思っていた俺がいた。
でも、そううまくいけるわけがない。
そりゃ、                                    

48:名無しさん@ピンキー
10/01/27 00:05:30 frlgg8D1
<<45が書きますよ。
ディア男xセレス子



・・俺はこのクロスティーニ学園に来る前、ってか直前には、
「いいパーティに入って彼女作って最高の学園ライフを過ごしてやるっ!」
と思っていた俺がいた。
でも、そううまくいけるわけがない。
そりゃ、                                    

49:名無しさん@ピンキー
10/01/27 00:10:45 4ZIF8YhJ
しまったとぎれてしまったナンテコッタイ
次から続きかきます


50:名無しさん@ピンキー
10/01/27 01:01:35 4ZIF8YhJ
おれはディアボロスで人が寄りつかないことは自分がよく知っていた。とはいえ、そのうち声がかかるだろうと思い一人だけで冒険に行って帰ったら食堂へ行き、食べ終わったらとっとと寝る。
気がついたら他のやつはすでにパーティを組んででかけていたので、入れてと言っても満員なのでもう遅い。
俺は一人、残り物になってしまったのだった。
だが、この生活も無駄になった訳ではないのだ。
他の奴がパーティを組んでいた間、一人、敵を倒しつづけたのだ、レベルが低い訳がない、基本的な魔法や忍者用のスキル、暗殺を覚えて装備も充実したので声がかかってもおかしく無いと思っていた。
そんなある日食堂にて・・・
「隣の席いいか?」
こえがしたほうを向くと・そこにはバハムーンの男がいた。
「え?あ・・どぞ」
いきなりだったもので思考が遅れてしまう。
でそいつはすぐとなりに座り、
「いきなりだがおまえってまだフリーか?」
「え?」
「まだパーティにはいっていないのか?」
「そうだけど・・・」
「よし・俺のパーティ来ないか?」
キターーーーッ
この嬉しさを心に押し込みながら
「いいけど」
とフツーに答えてみる。でも内心ウレシーすんごく。
「よし!すぐ来い

51:名無しさん@ピンキー
10/01/27 01:02:11 4ZIF8YhJ
しまったとぎれてしまったナンテコッタイ
次から続きかきます


52:名無しさん@ピンキー
10/01/27 21:08:56 +X+OCg+R
とりあえず落ち着いてメモ帳に一度書くべきだな。
それからコピー&貼り付けを利用すれば切れることはないぞ。
あと、途中で切れても動じずもう一度書き直すんだ。
謝るのはあとがきにするとスムーズに読めて読み手からしても楽だし、書き手も何度も謝らずにすむ。

しっかりと最後まで書けば次の力になる。
諦めずにがんばれ、楽しみにしてる。

53:名無しさん@ピンキー
10/01/31 20:17:59 MN7K7Csu
意外にもNPCキャラの作品て少ないんだな

54:名無しさん@ピンキー
10/02/01 00:34:39 nqZzssgV
毎回会えるわけじゃないからキャラ掴みにくいんだと思う。
先生やメインの6人はともかくとして。
翼が折れてるセレスティナの名前、覚えてるかい?
おれは忘れた。

55:名無しさん@ピンキー
10/02/01 01:34:14 AU5rQB/F
アスティの名を忘れるとは良い度胸だ

56:名無しさん@ピンキー
10/02/01 01:53:01 65Fj1y8K
オリーブがグロテスクワームの苗床になるSSは絶対誰か書くと思ってたのに未だに見ない

57:ライン
10/02/01 16:55:40 3+Nz+f7j
キャラが死ぬたびに何度も思うけど
あんな可愛らしいキャラが灰になったり首狩りされたりって…慣れんなぁ

58:名無しさん@ピンキー
10/02/01 18:16:59 OqBHOajR
>>57そんなハートフルボッコ感がととモノの魅力なんじゃないかな

59:名無しさん@ピンキー
10/02/01 19:52:40 Ewkg/9dP
各々書き手さんによってキャラの口調が違うのが良い意味でおもしろい
大抵セレスティアは敬語だが

60:名無しさん@ピンキー
10/02/01 20:35:16 Rin8ZpW3
でも丁寧語だったり「~でしてよ」みたいな言い方だったり、やっぱり微妙に差があるよな

61:名無しさん@ピンキー
10/02/02 03:08:04 FkGNE6ZE
個人的に「~~でしてよ」系の喋り方はエルフっぽいと思ったり

62:名無しさん@ピンキー
10/02/02 08:24:16 JbxTknMQ
暴力的なツンデレ嫌いな自分としてはフランは良かったな
ただ一人称が残念だった…アタシならよかったのに

63:ライン
10/02/02 16:43:44 bfkrutc1
ノームって機械的で冷静な種族だと思ってたけどリモンと会って一気にそのイメージが崩れた件

64:恵方巻
10/02/02 21:59:09 52+nR2oP
「あ、エルフ君..」
「やあ、セレスティア。どうしたんだい?」
「あの..今日は何の日か、知ってる?」
「ん?節分..だったっけ?」
「そう。それでね、私の田舎では節分に”恵方巻”っていう習慣があるの」
「“恵方巻”?」
「うん..節分にね、縁起の良い方角を向いて大きな太巻を食べると、
その年はいい事があるんだって」
「太巻..って何?」
「ええとね、ご飯の中にお刺身や玉子やかんぴょうを入れて、海苔という
黒い皮で太い筒状に巻いた食べ物なの」
「へぇ、面白そうだね」
「..実は今日作って来たの..あなたに食べてもらいたくて..」
「本当?嬉しいなあ。どれどれ..あ、これは美味しそうだ」
「で、こっちの方角を向いて、一気に食べてね。ゆっくりでいいから..」
「一気にか..これだけ太いと大変だなwではいただきまー..あ?そういえば
一本しか無いね?セレスティアの分は?」
「わ、わ、私は、お、お夜食でいただきますから..」
そう言って真っ赤になって俯きつつ、その手をエルフの太ももから股間へと
滑らせるセレスティア..

恵方巻
節分の日にその年の無病息災を願って、太巻という黒い皮で包まれた
筒状の食べ物を縁起の良い方角に向かいながら一気に食べる、
セレスティアの出身地に伝わる伝統的な風習..らしい。

65:名無しさん@ピンキー
10/02/03 00:34:56 XbmAixZR
>>64
ま、まさか喰うのか?

66:普段はROM専門@誰かニックネーム付けてください
10/02/07 01:12:55 6xUjITiZ
テスト

67:普段はROM専@誰かニックネーム付けてください
10/02/07 01:19:03 6xUjITiZ
今晩は。
普段はROM専です。
過っ疎過疎なのできました。
キャラクターはオリジナルかつ自己パ。
エロ?
まぁどうぞ。

68:普段はROM専@誰かニックネーム付けてください
10/02/07 01:19:55 6xUjITiZ
ここはクロスティーニ学園からさほど離れていない所にある、初めの森。
冒険者を目指す若者が最初に訪れる森であり、此処で戦いに慣れない自分を鍛え、仲間との信頼を築く。
これは冒険者の避けては通れない最初の一歩であり、熟練の冒険者達の思い出として刻まれる。
そしてまた、初めの森は新たな冒険者達を生み出そうとしていた―

「うわー、うわー!」
声の主であるフェアリーは毒針ネズミ三匹を相手に、叫びながら逃げ惑っていた。
「えーい!落ち着けフェアリー!」
そう言い放ち、ヒューマンは持っているダガーを大きく振りかぶり毒針ネズミを豪快に切り裂く。
その途端残った毒針ネズミはヒューマンへと目標を変え、襲い掛かる。
だがそのうちの一匹はヒューマンへ攻撃が届くことなく、炎に包まれた。
「まったく、これだから……。あれ程わたくしは『一人で先に行くな』、と忠告したはずですわよ?」
ファイアを放ったエルフはフェアリーに淡々と愚痴を並べる。
「ご、ごめん。少し好奇心が……」
「おい、ちょっと俺の方を見てくんねぇかな?」
毒針ネズミの攻撃をダガーで止めつつ、フェアリーの言葉を遮る。
攻撃を防いでいるのがダガーだけに、今にも毒針ネズミの牙が手に食い込みそうになっている。
「待ってて、今助けるから!ファイ……」
「や、やぁ!」
フェアリーがファイアを唱えようとした時後ろの方で見ていたセレスティアが、持っていたマイクで毒針ネズミを強打した。
強打された衝撃でよろけた毒針ネズミを、ヒューマンが一気にダガーで切り裂く。そしてそのまま振り向き、セレスティアに笑顔を向ける。
「ありがとう、セレスティア。マイクも意外と鈍器になるんだな」
「そ、そうですね」
ヒューマンは冗談混じりに言ったのだが、セレスティアは緊張してか真面目に答える。
「そんなに真面目だと、この先持たないヨー?ほーら、笑顔笑顔」
いきなりかえるの人形を目の前に出され、少し驚くセレスティア。だが少し緊張が解れたように息を吐き、微笑みを浮かべる。
「少し驚きましたけどありがとうございます、クラッズさん。」
「ヒヒヒ、緊張が解れて良かったネー。小生はまだ緊張気味だけどネー」
先程クラッズが言ったように緊張気味なのか、ニヤリとひきつった顔で笑いを浮かべ、セレスティアへと顔を向ける。
その時、フェアリーが何かに気づいたように辺りを見渡す。

69:普段はROM専@誰かニックネーム付けてください
10/02/07 01:21:25 6xUjITiZ
「ん、どうした?」
挙動不審になっているフェアリーに流石にヒューマンが気付き、声をかける。
「いや、ね、彼女……。フェルパーがいなくなってるなって……」

ガサッ。

フェアリーがそう口にした途端、近くにあった木から飛び降りてきて―そして謝った。
「ご、ごめんなさい!ゴメンナサイ!僕、どうしたら良いか分からなくって!本当にごめんなさい!」
謝り倒すフェルパー。大丈夫、と宥めるヒューマン。しまいにはフェルパーが泣き出し始め、クラッズとセレスティアを巻き込んでの騒動になった。
やれやれ、と言った表情でエルフはフェアリーに耳打ちする。
「なんであんな―人見知りのフェルパーなんか連れて来たんですの?どうせならノームの方が……」
フェアリーはエルフにされたように耳打ちを返す。
「ど、どうせなら強い子……ノームよりフェルパーの方が良いでしょ?」
「……はーっ。仮にも貴方がリーダー。わたくしには拒否権はありませんものね」
「ご、ごめん」
そう言い終わると、ヒューマン達が半ベソのフェルパーを連れて戻ってきた。
「どうしたノー?二人で話なんかしテ……もしかして、もうそういう関係なのかナー?」
ヒヒヒッ、と笑って二人を茶化すクラッズ。
これに対しエルフが憤怒していたが、フェアリーは俯いていた。
(い、言えない……)
実はノームを探していたこと。
学園内で道に迷っていたフェルパーのこと。
道を教えてあげたら、俯きながらフェルパーがついて来たこと。
―で、仕方なく彼女の了承も得ずに皆に紹介したこと。
(皆に、言えないよなぁ……特にエルフには)
そんなことを考えながら俯いていたら、セレスティアが声をかけてきた。
「どうしました?具合が悪いのですか?」
顔を覗き込みながら聞いてくるセレスティアに、フェアリーは
「いや、大丈夫だよ」
と答えるしかなかった。

このパーティーは、リーダーのフェアリーが魔法使い学科、副リーダーのヒューマンが侍学科、クラッズが人形使い学科、エルフが魔法使い学科、セレスティアがアイドル学科、そしてフェルパーが戦士学科。
バランスは悪くないが連携が取れない、いわば戦い慣れしていないパーティーだった。

初めの森から帰還し、それぞれの荷物を置きに寮へ戻り、反省会をリーダーであるフェアリーの部屋で開いた。

70:普段はROM専@誰かニックネーム付けてください
10/02/07 01:22:06 6xUjITiZ
「えー、では反省会を始めます」
フェアリーの締まりの無い声で始まった反省会だった。
「まず始めに副リーダーであるヒューマンからお願いします」
「はい、初めの森ではうまく連携が取れずにいたので、次に初めの森に繰り出す時は陣形を決め、連携に繋げられるよう心掛けたいです」
「はい、次は……」
このような調子で始まった反省会だったが、ヒューマン、エルフ、セレスティア、クラッズまでは何事もなかった。
だが、フェルパーの順になり、言葉が途切れた。
「えーと……あの、その……敵との遭遇時には、その……」
そこまで、話すとエルフが突然立ち上がり叫んだ。
「あーっ、もう!間怠っこしいですわ!フェアリー、なんとかなりませんの!?」
「え、ーっと?」
フェアリーは何がなんだか分からない、と言った顔をしエルフを見る。
するとエルフはまた苛々とした顔をし、怒りの矛先をフェアリーへと向ける。
「貴方が、そのフェルパーを、連れて来たんですわよ!?貴方がなんとかして頂戴!」
そこまで言うと、エルフは部屋の扉を勢いよく開き出て行ってしまった。
「……副リーダーの権限で今回の反省会を解散する。いいな、フェアリー?」
「……自分は、構わないよ」
「では……これをもって反省会を解散する。それぞれの部屋に戻ってくれ」
その発言を境に、それぞれが自分の寮へと戻っていく。
……ヒューマン以外は。
「フェアリーとフェルパーはよく話し合ってくれ」
ヒューマンは立ち上がり、扉へと歩きだす。
フェアリーの隣で歩みを止め、小さく
「そこからどうするかは、リーダーしだいさ」
そう耳打ちする。
その言葉を最後に、ヒューマンも自分の寮へ戻ってしまった。
「にゃ……」
フェルパーが申し訳なさそうに小さく呟く。
「ごめん……なさい、僕、人見知りな上に臆病だから、だから僕このパーティーには」
「勝手に入れたのは自分。それにまだ初日、皆慣れないのは当たり前さ」
フェルパーの発言を遮り、フェアリーが淡々と話し始める。
「それに、リーダーの権限!皆の了承も得なきゃならないし、何より初日。もう少し頑張って欲しい。……君から選んでくれたし、さ」
フェアリーは鼻を擦り、微笑みながら「臭かったかな?」とフェルパーに言う。


71:普段はROM専@誰かニックネーム付けてください
10/02/07 01:24:11 6xUjITiZ
フェルパーはというと、伏せていた耳を戻し、尻尾の先をピクピクと動かしながら
「全然、臭い台詞じゃないよ!」
叫んでしまった。
顔が赤く染まっていくのが自分でも分かったが、どうにも止まらない。
「言ってることは正しいし、何より……」
そこで言葉が詰まった。
(そんな小さな優しさに惚れたなんて……言えない!)
「にゃー!」
再度、叫んでしまった。
道に迷った時、人見知り故に誰にも話かけれなかった。
そんな時に向こうから「どうしたの?」と話掛けてくれた。
こちらが言葉を出さずに地図で説明すると、優しく丁寧に道を教えてくれた。
そんな小さな親切に、種族は同じフェルパーではなくても惚れてしまったのである。
「ど、どうし」
「フーッ!」
興奮状態のフェルパーは咄嗟にフェアリーに飛び掛かり、口を塞いだ。
……自分の口で。
フェアリーは唇を奪われたこともあってだが、混乱していた。
だが、一つ言えることができた。それは……
(あぁ……興奮してる猫の喧嘩を止めるのが危険という意味、少し分かった……)
そのままバランスを崩したフェアリーはベッドの足に後頭部を強打する。
フェルパーはそんなことはお構い無しにフェアリーの唇を貪る。
舌を一方的にフェアリーの舌と絡ませ、濃厚なディープキスを味わった所で少し理性を取り戻す。
(これって……強姦なのかなぁ……)
冷静になり、フェアリーの上から離れる。
フェアリーはようやく解放されたといった感じに起き上がり、ぶつけた後頭部をさする。
「だ、大丈夫?」
「自分は、大丈夫……それより落ち着いた?」
フェルパーはこくんと頷く。
どうやら冷静になったと同時に恥ずかしくもなったらしく、顔を赤くしていた。
「じゃあ……ベッドの上で、続き、ね?」
恥ずかしくなったのはフェアリーも一緒だったようで、ほのかに顔が赤く染まっていた。
二人はベッドへと移動すると、どちらから言い出したでもなく軽くキスを交わす。
最初は軽いキスだったが、時間が経つに連れ先程の様なディープキスになっていた。
しかし、さっきと違うのはフェアリーもフェルパーの舌へと自分の舌を絡めていたことだった。
最初はフェルパーの舌のざらざらに動きこそ止めたものの、だんだん積極的に舌を重ね、絡めるようにフェルパーを味わった。
やがて胸に手が伸びた時―突然扉が開いた。

72:普段はROM専@誰かニックネーム付けてください
10/02/07 01:25:10 6xUjITiZ
「あー、やっぱりあったネー。心配したヨー」
入ってきた主はクラッズ。
どうやら人形を忘れたようで、こうして取りに来たようだ。
急いでフェアリーとフェルパーは唇を離し、何事もなかったようにする。
「あれ、今頃お楽しみだと思ったんだけどナー」
クラッズはがっかりしたと言いたげに人形を拾い上げる。
「クラッズ、計ったな……」
「ンー、何?小生は何も知らないナー」
クラッズがそう言った時に不意に扉の向こうから声が聞こえた。
「おい、クラッズ……!余計な詮索はしない約束だったろ……!」
「ヒューマン……」
声を押し殺しているが、誰かはわかる声量だった。
どうやらヒューマンはずっと部屋の外で待っていた……もとい、聞き耳を立てていたらしい。
そこで人形を取りに来たクラッズと会い、余計な詮索はしないという約束で突入させたとのことだった。
「いや、話し合いで何か現状解決してくれるかと思ったら、まさか……ねぇ?」
「エッチなのはいけないと思うネー」
「いや、だから自分は……」
(は、恥ずかしい……)
結局一晩中四人で話し合うことになり、フェルパーはフェアリーの事が好きなことと理由、フェアリーはフェルパーに対する最初の気持ちがばれてしまった。
フェルパーはフェアリーの本当の気持ちを知った為、最初こそうなだれていたものの、「今はノームじゃなく、フェルパーを選んで良かった」と言ったことで機嫌を持ち直したのは言うまでもない。

翌日、食事をとる為に食堂へ向かうと既に皆が待っていた。

73:普段はROM専@誰かニックネーム付けてください
10/02/07 01:25:33 6xUjITiZ
「皆、どうしたの……?」
「食事を取りに来ただけですわ」
そう言い、優雅にパフェを食べるエルフ。
「何言ってんだよ。お前が言い出しっぺだろ、フェアリーを待とうって。コイツ、フェアリーが遅いからってパフェを三つも……」
「そろそろ、その口を閉じなさい!」
食べていたパフェをヒューマンの顔にぶつける。
「目がぁぁ!」
「……で、昨日の話し合いで何か決まりましたの?」
ヒューマンのことなど気にもとめず、フェアリーへと質問を投げかける。
フェアリーは昨日の一部始終をエルフに話した。
「という訳で、エルフがフェルパーの事を嫌いなのは分かってるけど、フェルパーはもうパーティーの一員だ。抜けさせないよ」
そこまで言うと、エルフが意外そうな顔をしながらフェアリーを見た。
「私情を挟むのは構いませんけど、わたくしは別にフェルパーの事は嫌いではありませんわよ?」
「へ?」
思わず素っ頓狂な声を上げるフェアリーにエルフは続ける。
「わたくしは別に戦闘に参加しないならいらないだけであって、連携云々、強さ云々はこれから磨いて行けば良いだけですわ」
そこまで言うと突然エルフは目を閉じ顔を横へ向ける。
「戦闘に参加しないんでしたら……友情云々も築いて行けませんものね」
そして後ろを向いてしまう。
「エルフはツンデレだな。顔が赤いぞ?」
「うっ、五月蝿いですわ!」
エルフは茶化すヒューマンを杖で殴る。
直撃を受けたヒューマンもさすがに椅子に座ったまま気絶する。
「ほ、ほらっ!今日も初めの森に行きますわよっ!」
ヒューマンを引きずって歩くエルフをフェアリーとフェルパーは笑いながら見送った。

初めの森。
冒険者を目指す若者が最初に訪れる森であり、此処で戦いに慣れない自分を鍛え、仲間との信頼を築く。
これは冒険者の避けては通れない最初の一歩であり、熟練の冒険者達の思い出として刻まれる。
このぎこちないパーティーもやがてこの場所が『思い出』に変わるだろう。

やがて、学園で伝説と言われるほどに強く、絆が深いパーティーなることを、まだこの時の彼等は知らない―

74:普段はROM専@誰かニックネーム付けてください
10/02/07 01:32:40 6xUjITiZ
どうも、普段はROM専です。

今回は自分の処女作であり、お目汚し申し訳ございません。
一人称考えるのに小一時間、名前は付けるか小一時間かかりました。
結局、名前は付けずに終わりましたが、その方が愛着が沸きやすいですかね?

今回は一週間書くのに費やしましたが、次はもっと早く書きたいです。
続きを書くかは不明、続きでエロがあるかは不明ですが、また現れた時に親しみやすいニックネームが付くことを楽しみにします。

では……
普段はROM専は逃げ出した!

75:普段はROM専@誰かニックネーム付けてください
10/02/07 01:43:22 6xUjITiZ
アウチ!やってしまった……

>>68-73の作品タイトルは【未来の思い出と『絆』】で1/6~6/6まであります。

では今度こそ……
普段はROM専は逃げ出した!

76:名無しさん@ピンキー
10/02/07 19:05:19 xq/1/T5u
GJ先生ー。エロい続きも期待してるw
名前はあった方が愛着はわくけど、
ない方が名前を説明する手間がないというか。まあ一長一短だよな。

77:二番煎じ
10/02/07 23:00:58 6xUjITiZ
どうも、元普段はROM専です。
前話の小ネタと名前を引っ提げてきました。
名前は
フェアリー→ラファ
フェルパー→カレン
ヒューマン→ラグナ
エルフ→レミア
クラッズ→ノイル
セレスティア→セレーネ
です。
モロ自己パの名前です。フェアリーだけ偽名です。実名プレイなので……
エロ無しです。
どうぞ。

78:少し未来の思い出と『絆』1/3
10/02/07 23:03:14 6xUjITiZ
あれから一週間過ぎた。
まだ少しぎこちないものの、パーティーとしての連携も取れ始めて来ていた。

「ふぅ、疲れたネー。そろそろ寮に戻ろうカー?」
「そうだな。女子は女子で、話しが弾んでるみたいだしな……。おーい、一旦戻るぞー!」
ラグナの叫ぶ声に気付いた様に、少し遠くの木陰でレミアが手を振る。
その隣にはカレンがいた。
「一旦戻るとラグナが言っていましたわ。わたくし達もあちらへ戻りましょうか」
「うん、分かった!」
どうやら二人は仲良くやれているようで、時々、主にカレンのラファに対する相談をレミアにしているようだ。
「で、貴女達は最初の口づけ以来、関係を持っていない訳ね」
「う、うん……」
カレンは今まさにラファの相談をレミアにしていた。
レミアははぁーっと溜息をつき、カレンにダメだしをする。
「駄目ですわよ?貴女は女性としての美しさはあるのですから、積極的にいかなくては……」
「そうだヨー、胸だってこんなに大きいんだかラー」
「う、うにゃあ!?」
いつの間にか後ろにいたノイルに胸をわしづかみにされ、悲鳴にも似た声をあげる。
「フムフム……一般女性の平均値を越えてるネー、このパーティーでは一番大きいんじゃないノー?」
「へぇ……では私は『このパーティー』では、どの位置なのかしら?」
「一般女性よりも小さい位だかラー、このパーティーでは一番小さ」
「このっ……ムッツリスケベ!」
怒り浸透のレミアに気付かずにノイルは素で答え、そしてスタッフでの一撃を受ける。
パーティー二日目にラグナに炸裂した一撃とは、威力もキレも比べ物にならなかった。
ノイルは薄れゆく意識の中で、強くなったネー……、と呟いた。
「どうしました?ラファさんもラグナさんも行ってしまわれますよ?」
三人が遅いため、様子を見に来たセレーネにレミアは
「大丈夫、モンスターをやっつけただけですわ」
と、ノイルを引きずりながら答えた。

79:少し未来の思い出と『絆』2/3
10/02/07 23:03:57 6xUjITiZ
いつもの日課になりつつある『反省会』を行うため、皆はラファの寮へと集まった。
ラグナが扉をノックし、それに合わせてラファが「入って来てー」と締まりのない声で受け答える。
ラグナが先に扉をくぐり、残りの四人が入って来る。
皆で円を描くように座り、ようやく反省会が始まる。
「では、反省会を―と言いたいけど……そろそろ反省会を開くのはやめにしない?」
開口一番がこれだったので、流石のラグナも開いた口が塞がっていない。
「お、おい、それどういう」
「だって、もう一週間だよ?」
どうやら始めから一週間、というのは決めていたらしい。
始めこそラグナは渋っていたが、反省会を開かない事で落ち着いた。
「まぁ……リーダーが決めたことだもんな、俺に異論はない。」
「ごめんね、勝手に一人で決めちゃって。だけど、皆を見てみて意思の疎通はできてたから」
敵との遭遇時に不測の事態に陥った時、それぞれが最良の行動、連携をとっていたのを見て、下した決断だった。
「それに最初から、どの敵が現れたらどう動くとか決めるのだって、窮屈でしょ?」
皆はお互いの顔を見合わせ、そして皆一致で頷いた。
「そんな決められた行動は嫌だ。それに自分達はパーティーであり個人、それを自分は大切にしたい。」
ラファは照れた様に鼻を擦る。
「じゃあ、これにて『話し合い』は終わり!皆、自分の寮に戻っても良いよー」
今日はこの発言とともに皆が自分の寮へと戻っていく。
ラファは独り、ボソリと
「これで、良いよね……」
と、呟いた。

80:少し未来の思い出と『絆』3/3
10/02/07 23:04:56 6xUjITiZ
カレンはと言うと、レミアの寮へと来ていた。
「リーダーは、普段ヘタレなのに言うときは言うんですわね……」
「うん……惚れ直しちゃった、僕」
先程の事をレミアと語り合っていたようだった。
ふと、レミアはカレンに問い掛ける。
「貴女は、リーダーの……ラファの、どこが良いんですの?」
カレンはというと、目を丸くしてレミアをみたあと、ふっと笑い、語りはじめる。
「普段は頼りなさそうだけど、誰にでも親切で、優しいところかな……。あ、これじゃあ最初に惚れた理由か」
あと、決めるときに決める所かな?と付け足し、ほんわかとした顔を浮かべる。
するとレミアは部屋の天井を見つめ、ポツリと呟く。
「何となく、惚れた理由もわかりますわ」
「え、なんて?」
よく聞こえなかった―そういいたげなカレンにレミアは叫ぶ。
「何でもないですわ!ほら、自分の寮に戻りなさい!」
そう言い、カレンを扉の外へと押し出す。
カレンはうにゃあ、と言うと扉を閉められてしまった。
ガチャリという音からして、鍵をかけられたのだろう、カレンはわからない、といった表情で自分の寮へと歩きだす。

「他の人が好きな殿方を好きになるなんて駄目ね、わたくしも……」
レミアは、誰も居なくなった部屋でポツリと呟いた。

81:二番煎じ
10/02/07 23:10:58 6xUjITiZ
どうも、現二番煎じです。
前作の感覚が短くても、名前のテスト的投稿です。
前作に名前を合わせて、名前有、名前無のどちらが良いか決めて欲しいです……
それと前作、ヒューマンことラグナさんは侍学科ではなく剣士学科です、申し訳ございません。

ではまた。
二番煎じは逃げ出した!

82:名無しさん@ピンキー
10/02/08 17:56:50 VhP8gBtY
無しの方がいいかな
つかフェアリー♂だったのね
でフェルパーが♀なのね
じゃあ男はヒューマン、フェアリーだけ?

83:名無しさん@ピンキー
10/02/08 19:25:15 D/u0xgLr
クラッズもかな。
フェア男ってこのスレではまったくといって良いほど出番ないから、是非とも頑張ってほしいw

84:二番煎じ
10/02/15 03:08:11 fTKEUJaS
どうも、二番煎じです。
今回はバレンタインでの小ネタを引っ提げて来ました。
このパーティーは最初は一回ポッキリの予定でしたので、小ネタでしかでないかも……
ではお話をどうぞ。

85:バレンタインキッス 1/2
10/02/15 03:10:26 fTKEUJaS
初めの森から帰還し、夜遅すぎるため食堂が閉まっていたために皆でフェアリーの寮に集まり晩御飯……もとい夜食を食べていた。
「ヤー、今日も疲れたネー」
「魔法壁しか使ってなかったじゃありませんの?」
「魔法壁も意外と疲れるヨー?」
そのような会話をしながら、冒険中に手に入れた食料を皆で思い思いに手にとっては頬張っていく。
そんなとき、セレスティアが口を開いた。
「そういえば、バレンタインデーだったんですね……」
「ん?あぁ、そういえばそうだな……。だけどもう過ぎてるぞ?」
ヒューマンが時計を見ながら話す。
「あーあ、今年もゼロか……」
「しょうがないよ、自分達は朝から初めの森にいたんだから……」
「うにゅう……ねぇ、『ばれんたいんでー』って何?」
フェルパーのびっくり発言に落ち込んでいたヒューマンとフェアリーが光の速さでフェルパーを見る。
「フェルパー、バレンタインを知らないのか?」
「うん、僕は初めて聞いた。……あれ?どうして皆でこっちを見てるの?」
フェルパー以外の皆がフェルパーの方へと視線を集中させていた。
ある者は信じられない、またある者は天然記念物でも見るような目でフェルパーを見ていた。
そこで、再度セレスティアが口を開く。
「フェルパーさん、バレンタインというものはですね、女性が好きな男性にチョコレートを渡す習わしですよ?」
最近は逆チョコ、友チョコというものも流行っていると続けるセレスティア。
しかし、フェルパーの耳には届いていないようで顔を赤くしながら慌てている。
そんなフェルパーを横目にエルフはポツリと呟く。
「わたくしは、用意はしていましたけど……過ぎてしまいましたものね」
「朝がくるまではその日だぞ、エルフ!」
「なんですの、そのいい加減な言い分は!」
ヒューマンにツッコミをいれるエルフ。
やがて目を閉じ、溜息をついた後にヒューマンにチョコを差し出す。
「はい、チョコですわ。言っておきますけど、仲間としての義理チョコですわよ?」
「エー、一人にあげるノー?」
「う、五月蝿いですわね!ニヤニヤしないで下さる!?」
怒るエルフだが、クラッズが笑いを止めないため諦めた顔になる。

86:バレンタインキッス 2/2
10/02/15 03:12:19 fTKEUJaS
「これは、フェアリーの分ですわ。ヒューマンと同じで仲間としての義理チョコですから、勘違いしないで下さる?」
チョコを渡した後に顔を急いで背けるエルフ。
「あれ、なんで顔が赤いんだい?」
「へ、変なことを聞くものではありませんわ!」
フェアリーにエルフの拳が襲い掛かるがフェアリーはひょいとかわし、軌道上にいたクラッズにクリーンヒットした。
「……私はちゃんと皆さんの分を用意してありますから」
セレスティアは一日遅れですいません、と断りをいれ、フェアリーとヒューマンに手渡し、横たわっているクラッズの隣にチョコを置いた。
「ぼ、僕は、チョコなんて……」
オロオロしながらしまいには泣きそうになるフェルパーにヒューマンは何かを耳打ちした。
「行け、フェルパー!今日は恋する乙女の為の日だぞ!」
「リ、リーダー、御免!」
「うぶす!?」
フェルパーがフェアリーに飛び掛かり、唇を奪う。
半ば強制的だがヒューマンにそそのかされたのだから仕方がないといえば仕方がない。
「あーあー、チョコより甘いねー」
「ヒューマン、それはクラッズのチョコですわよ?」
「気にするな。こっちは口寂しいんだよ……」
クラッズが気絶しているのを良いことにクラッズの貰ったチョコを食べるヒューマン。
エルフはやれやれといった表情をし、ヒューマンに軽く口づけをする。
「な、なぁ!?」
「ん、少し甘いですわね……。貴方が口寂しいと言っていたからしてあげただけですわよ?」
髪をさらりとかき上げ、クスリと笑うエルフ。
「い、一瞬びっくりしたぞ……」
「安心なさって、別に貴方に興味はありませんから」
「……泣いても良いか?」

一日遅れても、幸せなバレンタインを過ごすことができたフェアリー達。
朝になるとまた冒険に明け暮れるだろうが、これも思い出の一つに残ることだろう。

この後目を覚ましたクラッズが、チョコを貰っていないことを三日間ほど歎いていたのはまた別のお話。

87:二番煎じ
10/02/15 03:15:38 fTKEUJaS
どうも、二番煎じです。
一日遅れのバレンタインということで、勢いで一時間ほど費やして書きあげました。反省はしてない。
リアルで充実した人は果しているのか!?
ではでは。
二番煎じは倒れた!

88:>>34 バレンタイン1/2
10/02/15 15:07:01 Oi6RMAEt
あの事件から3ヶ月後…クロスティーニ学園のいつものと変わらない日常に戻った。
そんな日常は今日だけは変わろうとしていた。ここは食堂…
「今日はやけに皆そわそわしてるね…」
教室の様子がおかしい事を疑問するクラッズ男、名前はクラ男。職業:戦士。
「ん?クラ男、お前今日バレンタインデーだぞ?様子を見て気づかないのか?」
クラ男の疑問に答えたヒューマン男。名前はヒュム男。職業:ガンナー。
「バレンタインデー?ああ、そういえば…」
「セレ子もフェア子もダメだったし…エル子やクラ子もダメだろ?今日は探検に行く必要は無いな」
「そうだね…」
会話をしていると
「おはよーさん。」
「おはよう。」
「お、フェル男にエル男か、お前らも一緒にどうだ?」
後からやってきた2人、2人は別パーティーだが同期入学のフェルパーの男のフェル男、職業:剣士と
エルフ男のエル男。職業:精霊使い。
「ええんか?」
「いいって、いいって遠慮なんかするな。」
「それじゃあ、遠慮なく座らせてもらおうかな?」
ヒュム男とクラ男の空いてる席に、フェル男とエル男が座った。
「ん?そういえば、女性陣がいないな、断られたのか?」
「君たちもか、こっちも似たような理由さ」
「それにしてはドワ男もいないようだけど…?」
「ん?ドワ男なら下駄箱にいるんとちゃうんか?」
「下駄箱?なんで?」
「下駄箱にチョコレートが入ってる場合があるのさ」
「ま、無駄やと思うけどな」
「いったい、ドワ男はチョコ何個もらっているんだ?」
ヒュム男の質問にフェル男は…
「0個や」
「あれ?パーティーの女性陣すら貰ってないの?」
「前の学校はわいはドワ男と同じ学校やってんけどな、わいだけも貰てあいつは貰てへんかったで?」
「なんか…1人だけ寂しい話だね…」
「やっぱあいつがチョコ貰えへん原因はやっぱ職業柄とちゃうんか?」
「あと、野蛮な所とかな」
「「ハハハ…」」
フェル男とエル男の会話にヒュム男とクラ男は苦笑した…。


89:>>34 バレンタイン2/2
10/02/15 15:08:36 Oi6RMAEt
今日もクロスティーニ学園の授業が終わって療に戻ろうとする僕とヒュム男さん
しかし、ヒュム男さんは寄る所があると途中で別れた。
「今日は女性陣の出席率0だったな…ドワ男君も暴れだすし…早く帰ろう…」
帰ろうとする僕に誰かが僕に声をかけた
「クラ男君♪」
「ん?あ、クラ子ちゃん」
僕に話しかけたのは僕と同じ種族で同期入学のクラッズ女のクラ子ちゃん、職業:風水士
「クラ男君、今暇?」
「え?うん、帰ろうとしてた所だし…」
「あのね…今日一緒に行けなくてごめんなさい」
「いや、いいよ。用事があったのなら仕方が無いし」
「今日…何の日か知ってる?」
「ああ、煮干の日でしょ」
「煮干の日?」
「全国煮干協会が制定したんだ「に(2)ぼし(14)」の語呂合せだよ」
「知らなかった…クラ男君物知りなんだね」
「あと、バレンタインデーだね、それで」
このままだと話が別方向にそのまま行ってしまいそうな気がしたので、ボケるのをここで断念し、話をあわせる。
「クラ男君、私からのバレンタインチョコだよ♪」
そういって渡されたのは赤青い包みで黄色いリボンがラッピングされた箱、話の流れからしてチョコが入っているのだろう
「ああ、ありがとう」
「しかも、手作りだよ♪」
僕とクラ子ちゃんが、話をしていると
「あ、いましたわ!」
突然誰かからの声がなった。
「あれ?エル子さん?」
駆け寄ってきたのは、同期入学のエルフ女のエル子さん、職業:精霊使い
でもなんでか、顔がまっかっかなんだろう?
「クラ男君に渡したいものがありますわ!」
「なんで顔が真っ赤なのかな~?ヒュム男君に向けての予行演習?」
「!何を言ってますの!誰があんな男と!!」
「その割には随分興奮してない?」
「興奮してませんわ!クラ男君、はいチョコですわ!言っておきますけど義理ですからね!」
「じゃあ~ヒュム男君へのチョコは本命チョコなのかな~?」
「へ、変な事聞くものじゃありませんわよ!」
「はは…」

その後、セレ子さんとフェア子ちゃんからもチョコを貰って(ヒュム男さんとエル子さんは一騒動あったけど渡せた)
寮でヒュム男さんと一緒に義理チョコ→本命チョコを一緒に食べたのでした。


その頃、エル男とフェル男は…
「うん、やっぱヒュム子の作ってくれたチョコはうまいな」
「お前、その他のチョコ全部断ったもんな…わいなんて本命なしで全部義理やで…」
「もらえるだけマシじゃないのか?アレに比べたら」
「ああ、アレね…」
エル男が向けた方向をフェル男が見ると、片隅でないているドワーフ男ドワ男が泣いていた、職業:狂戦士
「シクシク…なんでだよ…なんで俺は0個なんだよ…俺のどこがいけないって言うんだ…」
「やっぱ職業のせいとちゃうんか?」
「いや、職業柄の以前に性格が問題だな」
「うるせぇーーーーーーー!!!!」

それはまた別の話である…

90:名無しさん@ピンキー
10/02/15 15:15:37 Oi6RMAEt
>>34の者です。
アイドルがなにがいいの話が今詰まってて、外伝(今作)を書いてるうちに
出来上がってしまったのでこちらをあげました。

チョコを貰った記録はというと
クラ男……本命1(クラ子)  義理3
ヒュム男…本命1(エル子)  義理3
エル男……本命1(ヒュム子) 義理0(断った数…8個中8個全部)
フェル男…本命0       義理4(エル男のパーティー以外にクラ男のパーティーのセレ子に貰っている)
ドワ男……本命0       義理0(なし)
という結果です。

アイドルがなにがいいの話の制作頑張りま~す
では。

91:名無しさん@ピンキー
10/02/16 23:23:40 aLanXgSQ
お二人ともGJ!やはりバレンタインはいいものだ。
しかし、ここって普段人少ない割にたまに思い出したようにいっぱい来るよなw

92:ディモレアさん家の作者
10/02/19 23:04:38 jpF7qiHn
こんばんはっと。
うん、凄くお久しぶりになりました、ディモレアさん家のシリーズの俺です。
しばらく見ぬ間に職人様増えてますなw皆様、GJであります!
しかしバレンタインっていいものだなぁと。

今夜は第6話を投下であります。

93:血塗られた王たちの記憶 6ページ目
10/02/19 23:05:39 jpF7qiHn
 カガリのお腹がだいぶ膨らみ始めた頃、エドは久しぶりに外の街に出た。
 必要な物資の大体はアイザ地下道に潜れば手に入るが、それでも街でなければ手に入らないものというのは少なく無い。
 しかし、そこでエドが感じたのは、人の影が少ない事だった。

 そう、まるでゴーストタウンと化したかのように。
「…………」
 普段にぎわいを見せる市場ですら、閑散としている。店を出す者もいつもの三分の一ぐらいしかいない。
 何の冗談だ、と思いつつエドは長い買い物リストを片手に市場を行く。
 しかし、目的のものは見つからない。当然である。いつもの三分の一しか店が無いのに探しようが無い。
「……やれやれ」
 ため息をつく。だが、ため息をつくのはエドだけではない。
 街を歩く数少ない人々は暗い顔のまま、ため息をついては歩いて行く。救いも何も無いかのように。かつての喧噪を忘れたかのように。
 エドは知らなかった。
 幾多の街に、伝染病が広がっている事を。
 墓地に於かれた墓石の数がここ数ヶ月没で異様に増えている事に気付くまで、エドは知らなかった。


「新種の、伝染病……?」
 ランツレート学院まで急ぎに急いで来たエドは、ちょうど通りがかったダンテを捕まえ、死者が増えた理由について聞き込んだ。
「発生は数ヶ月前で、有効な治療法も特には。病原体そのものは見つかった、って聞きましたけど」
「で、気がついたら街はゴーストタウンって訳か」
「街だけじゃなくてウチやマシュレニアの生徒にも患者が出てるんですよ……正直、参ってます」
 ダンテは疲れた様子で言葉を続ける。感染者が出ている、という中で明確な治療法も見つからないまま同じ場所で暮らしているのだ。
 倒れた仲間になす術も無い、というのもあるだろうがいつ自分も倒れるか解らない、という恐怖もあるのだろう。
「医者だけじゃなくて魔術師や錬金術士も色々調べてるみたいなんですけど」
「成果なし、か」
「………エド先輩は、どうなんですか」
 ダンテの呟きに、エドは視線を逸らす。目を合わせられなかった。
 自分やディモレアが己の研究と行き先に悩んでいた頃に、世界は崩壊の道を歩みつつあった。
「……やれるだけやってはみる」
 そうは呟いたが、エドの脳裏に浮かんだのは、紅い秘石の事だった。
 あれを手にした時、世界の破滅を限りなく望んでいた事を思い出す。
 どっちにしろ、自分がやらずとも世界は破滅するのだったのだろうか。否、そんな筈は無い。
「ダンテ。お前、これからどうするつもりだ?」
「へ?」
「生徒にも患者がいるんだったらうつされるかも知れないだろ。お前も、俺らんとこに逃げてくりゃいい。別に一人ぐらい増えた所で問題ねぇよ」
 土地とスペースだけはありあまっているのである。
 エドの言葉に、ダンテは首を大きく左右に振る。

94:血塗られた王たちの記憶 6ページ目
10/02/19 23:06:36 jpF7qiHn
「俺に逃げろってんですか」
「……ほとぼりが冷めるまでな」
「バカ言わないでください」
 ダンテは言葉を吐き捨てるように呟く。
「先輩やディモ姉は、強引だったけど、それでも前に進んでた。先輩達と一緒にいた時です。バカみたいに喧嘩しようと、何かエド先輩がヤバい事で悩んでいようと、カガリ先輩が頭を抱えていようと、それでも、何であろうとがむしゃらでも前に進もうとしてた」
 ほんの一年前。学生だった頃、エドが考えていたのは世界の破滅。
 でも、ダンテから見れば何か悩んでいても前に進もうとしていたと見えたのだろうか。
「エド先輩も、ディモ姉も諦めが悪い人だった」
「……まぁ、否定はしねぇ」
「だからですよ。尚更、こっから逃げる訳には行きませんって。で、今の先輩はなんて言いました? ほとぼりが冷めるまで安全な所に逃げろと?
 先輩自身はどうするつもりですか? ほとぼりが冷めるまで死ぬ人を眺めてると。ふざけないでください」
「…………なんとかしろ、そう言いたいのか」
「まぁ、柔らかく言えばそうです」
「変わったな、ダンテ」
 一年前まではディモレアの尻に敷かれてひぃひぃ言っていたのが嘘のようだ。
 エド達と離れた事で、彼もまた成長したのだろう。
「……そりゃ変わりますよ。守ってくれる人がいなきゃ、一人で強くなるっきゃない。守りたい人がいるなら、守ってやるしか無い」
 ダンテの言葉に、エドは内心驚く。ここまで変わるものかと。
 それに比べて、自分は何をやっていたのだろう。自らの城に引きこもり、ただ自分のあり方について考え続けていた。
 ダンテの言うように前だけ見て進んでなどいない。進んでいたのは学生だった頃だ。
 今は進んで何かいない。停滞している。まるで、固まった石像のように。
「………………」
 壊れつつあるこの世界で、自分の後ろに隠れていた筈の少年は前を見てなんとかしようとしている。
 直視出来ない。自分の姿が恥ずかしすぎるから。
「ダンテ」
「……なんですか?」
「俺は馬鹿だ」
「……はい?」
「実はな。カガリが俺の子を身ごもったんだ」
「………え? カガリ先輩と!? ちょ、ちょっと待ってください」
 ダンテは頭を抱えて記憶を整理する。
 ダンテの記憶が正しければエドワードはダンテの従姉であるディモレアに対して好意を抱いていて、それを学生時代に明言していた。
 二人が卒業後に姿を消してどっかの研究所にこもっているのも研究協力しているのも二人が好き合っているからだ、とダンテは理解していた。
 それなのに、今、エドワードの口から漏れたのは何だ?
「………ディモ姉は?」
「……一緒に、いる。カガリとも、一緒に、いる」
「………………」
「俺は、二人とも、離れたく無い、だから、どうすればいいのか解らなくて、その事で悩んでた。研究もろくにせずに」
「…………それで?」
「それとな、もう一つ言う。俺が……研究所にこもった、逃げてた本当の理由はな。この世界をぶっ壊そうと考えてたからだ。学生の、時から、ずっと」
 エドの言葉を、ダンテは黙って聞いていた。
 だが、先ほど迄浮かんでいた惑いは消え、何を浮かべていいのか迷った顔を続けていた。
「だから正直、今の話を聞いた時……俺がどうしようと世界は壊れるのかって思ってた」
「………先輩……先輩は、今は、世界を……」
「今はそうは思っちゃいねぇよ」
「………と、言う前に……」
 ダンテが視界から消えた、とエドが思った直後。

 強烈なストレートパンチが飛んで来た。

「ほぐはっ!?」
 同年代と比べてやはり小さい身体のエドは成長期で伸びつつあるダンテのストレートを受けて見事に吹っ飛んだ。一年前とは段違いだ。
「何を考えてるんですか先輩はッ! て、言うか人の従姉相手に堂々と二股宣言すんなっ!」
「……お前にそんなツッコミが出来るとはぐほぉっ!?」
「茶化すな人の話を聞けーッ!」
 やはり人とは変わるものだ、とエドは薄れ行く意識の中でつくづく思っていた。

95:血塗られた王たちの記憶 6ページ目
10/02/19 23:07:11 jpF7qiHn
「……お久しぶりです、エドワード先輩」
 ダンテのせいでノックアウトしたエドが保健室へと運ばれた時、出迎えたのはある意味誰よりも付き合いの長い後輩のパーネだった。
 相も変わらず大鎌を振り回していた。
「ああ、久しぶりだなパーネ」
「それで。ディモレア先輩との淫らな生活を楽しめてはいないようですね」
「誰が淫らな生活だ」
「まぁ、それはともかく私のエド先輩に何をしたのですか不届きなディアボロスのダンテ君」
「すみませんでした」
 保健室の隅では床の上で土下座を続けるダンテの姿があった。
 ディモレア卒業後はパーネの尻に敷かれているようだ。
「……まぁ、それはともかくですね」
 パーネは困ったように呟く。
「エド先輩。今回の伝染病について……なんとかなりません?」
「……まぁ、努力はするさ」
 エドは頭を抱えながら呟く。とは言っても、具体的な手だてがある訳でもない。
 病気について調べるにしても、必要なものは多々ある。
「これどうぞ」
「ん? なんだこりゃ」
「患者の血液です。必要ですよね?」
 パーネはさも当然のように呟くと、鎌を振りかざす。
「それとですね、エド先輩」
「……なんだ?」
「二股はダメですよ?」
「………お前までいうか」
 エドは頭を抱えた。
 ダンテはようやく土下座するのをやめると、一度保健室の外へと出て行く。
 パーネは近くの椅子を引き寄せて座ると、深く腰掛けて視線を伏せる。
「…………エド先輩」
「……なんだ?」
「私は……実は少し悔しかったんですよ? 卒業後、いなくなった事は。エド先輩がマシュレニアにいた頃から、何か抱えていたのは知ってました。
 けど、正直な話、その事がなんであろうとエド先輩なら道は間違えない筈、そう思ってました。
 昔から、私が間違えそうな所を正しいのはこうだろとか言ってましたからね。だから、自分で間違いに気付くだろう、と。だから放置してました」
 パーネは視線を伏せたまま呟く。普段、パーネはそんな表情を見せたりしなかったから。
 エドにとっては少しだけ意外だった。いや、勘に鋭いパーネなら、エドが世界を壊そうとしていた事について、気付いていたもおかしくはない。
 それを知っていて止めなかった、というのが不思議ではあったが。
「でも、エド先輩はいつまで経っても間違いに自ら気付かない。不思議でしたよ、私としては」
「……………」
「カガリ先輩や、ディモレア先輩が言う迄は、ね」
「あの頃の俺はどうかしてたさ」
「今でもどうかしていますよ、あなたは」
 エドの呟きに、パーネは顔を近づけながら呟く。
「今の貴方は……本当に……」
 その唇が動くのが、何故か遠くに見えるな、とエドは思った。
 パーネの唇が、エドの唇に触れたのは、ほんの一瞬。

「だからもう、貴方は……私の手の届かない所の、私の人じゃない」

 そう囁くパーネ。後輩として、エドの側にいた彼女は、もういない。
 ダンテと同じように。また、彼女も変わってしまった。
 人は変わる。
 そう、時間も、月日も、思想も、行動すらも。



96:血塗られた王たちの記憶 6ページ目
10/02/19 23:07:44 jpF7qiHn
 アイザ地下道の先の研究所にエドが戻って来た時、既に夜中になっていた。
 元々そう長い時間空けるつもりは無かった。だいぶ時間はかかりはしたものの、一日で戻って来れたのはよくやったと言えるだろう。あくまでもエドから見れば、だが。
「……ただいま」
 すっかり変わったダンテやパーネの事を思い出しつつ、通路を通り部屋まで戻る。

 灯りの落ちた部屋に、ディモレアがいた。
「うおっ」
 あまりの唐突な登場に、エドは思わず声をあげた。
「ん? ああ……お帰りエド」
「ど、どうした。俺の部屋に」
 本当に珍しい事である。用がなければディモレアはエドの部屋にいたりしないだろう。
「……まぁね。その……」
 ディモレアは喋りにくそうに口を動かしている間、エドはともかく椅子に座り込んだ。
 ディモレアを前にしても、考えている事はダンテとパーネの事だった。
「…………ふぅ」
「実はあた……なんか言いたそうね、エド」
 ディモレアは口を開きかけた事を止めてエドに視線を向ける。
「お前が先に言え。言おうとしたんだろ」
「後でもいいわよ。何かあったの?」
「………まぁな。俺らが知らない間に、街の方でヤバい事になってる」
「外の世界で? 何か?」
 エドは声の調子を落としつつ、未確認の伝染病が広まっている事、学園にも被害が出ている事、錬金術士や魔術師も動員して研究しているが対処法が無い事などを話した。
 ディモレアは最初は黙って聞いていたが、研究云々の所で顔をしかめた。
「それ、本当の話?」
「ダンテに言われたんだから間違いない」
「じゃあ間違いないわね」
 ディモレアは息を吐くと、言葉を選ぶように口を開いた。
「……アタシらが外の世界を見てない間にそんな事が起こってるのね……。昔と一緒だわ」
 ため息をつき、少しだけ頭を抑えたがすぐに首を振る。
「……でも、放ってはおけないわね。何かサンプルとか持って来たの?」
「ああ。パーネからもらった」
「なら、今すぐにでも始めるしかないわね。アタシらが研究生活に入ったのも、そういうのを止める為でしょ?」
「…………」
 まだマシュレニアにいた頃。ディモレアがそんな事を言っていたのを、エドは思い出す。
 自分と違って、ディモレアはただ日々を無為に過ごしていた訳じゃなかった。
「……そう、だな」
「……酷い顔してるわよ。どうしたの?」
「今まで、こんな場所で何やってたんだろうって思ってな……ダンテとかパーネも結構必死になってなんとかしようとしてたのに」
「………しょうがないでしょ、知らなかったんだから」
 ディモレアは呆れた顔で呟く。そう、どうにもならないと言った顔で。
「ここに籠って、研究を続けようとしたのはアタシとあんたの意志。それで外の変化に気付かなかったとしても、アタシ達が外に向けない限り、外の事に気付く事は無い」
「………」
「今からでも遅くは無いわ。まだ、外は手遅れになってないんだから」
 ディモレアはそう言い放つと、エドの背中に手を置き、言葉を続ける。
「アタシも手伝う、だから、ね」
 知らなかった事。知る事も出来ない事。
 外へと、知識を欲し、外へと目を向けない限り、気付かないもの。気付く事が出来ないもの。

 そしてエドは知らない。
 ディモレアが言いかけた事を。カガリだけでなく、彼の血を宿した子が、彼女の仲にも出来たという事を。
 エドはまだ、知らない。聞いていない。
 そして、もう一人。

97:血塗られた王たちの記憶 6ページ目
10/02/19 23:09:10 jpF7qiHn
 深夜。カガリが目を覚ました理由は、身体の熱さだった。
 今の時期、ここまで熱いというのはまず無い。熱でもあるのか、と思いつつカガリはベッドの縁に手を置き、身体を起こそうとする。
 崩れる。身体に力が入らない。
「っ……!」
 腹を庇うように、近くのサイドテーブルに文字通り頭をぶつけて、どうにか倒れそうになるのを支える。だが、それまでだ。
 熱くて、苦しい。
 息を吐く。熱い吐息が漏れ、どうにか身体を支える。
「なに……これ……」
 ベッドの上へとどうにか身体を戻し、大きく息を吐く。たったそれだけの行為に、信じられない程の体力を使っていた。
 何故、と呟く。
 身重になってから体調管理はしっかりしようと思っていたのに、これではまるで出来ていない。
「落ち着いて、そう息を吐いて……ゆっくり……」
 冷静を保て、私は大丈夫、大丈夫だ。
 そう言い聞かせて呼吸を整える。だがしかし、身体は言う事を聞かない。待て、どうする。
 扉まで、せめて、急ぐ。身体を動かす。落ちないように、ある力を振り絞る。
 そして、カガリは何度も扉を叩き、その後、気を失った。

 エドとディモレアが飛んで来たとき、カガリの意識はもう無かった。


「…………」
 気まずい空気が、二人の間に流れていた。
 エドが外の世界の流行病の話を持ち込んだその日、カガリがその流行病に倒れたという事実に。
 今すぐにでもなんとかする、しようにもその手だてが無い。
 どうすればいいのか、二人には解らない。
「……どうするのよ」
 ディモレアが口を開き、エドは顔を上げて首を振る。
「どうしろって……こんなすぐに」
「被害は出てるんでしょ? あちこちに」
 外の世界では拡大している流行病。他の魔導師や錬金術士達が日夜努力しているのだ、エド達がやらなくていい理由は無い。
 そして、やろうと決めたその矢先に、だ。
「…………」
 だが。
 ダンテからその被害の話を聞いた、とはいえ外の世界の事だ、とエドは思っていた。
 いや、エドは心の奥底でそう思っていたのだろう。そうでなければ、今、カガリが倒れるという事態に直面して、こんなに焦っているなんて事は無い。
 もう少し、落ち着いていた筈だ。
 それなのに、今更になって、今この場に直面して。

 エドを襲っているのは、強烈な無力感だった。

 何かしよう、何をすればいい、何ができる、何もできない。
 そんなループが頭の底から全身へと巡って戻って来る。その繰り返し。ディモレアの言葉も実はろくに届いていない。
「…………」
「何か、考えとかないの。カガリが……倒れたのよ」
 ディモレアはそう言って少しだけ声の調子を落とす。
「カガリのお腹の中の子も、危ないかも知れないのよ」
「………わかってる。わかってんだけどよ……」
 何をすればいいのか、解らない。

98:血塗られた王たちの記憶 6ページ目
10/02/19 23:09:45 jpF7qiHn
「あんたねぇ! 今、自分がすべき事ぐらい――」
「今、この場で今すぐ取りかかって」
 エドは口を開く。
「どこまでできる。俺やお前以外の魔導師や錬金術士が必死こいて探してるのに無いものを、俺たちがどうしてできる」
「…………」
「俺たちだって、限界はある。ついでに言うと、学校卒業したばっかのボンボンだ」
「………けど」
「無茶苦茶言うなよ……!」
 エドは、自分の限界がどれほどかを知っている。いや、知ってしまった。
 ダンテと再び会った事で、卒業後にろくに成長せず停滞してしまった自分を見て。
 だが。
「……アホっ!」
 ディモレアが叫び声をあげなければ、エドは更に自虐的なスパイラルを続けていただろう。
「………他の連中が出来ないからアタシ達が出来ないなんて誰が決めたのよ」
「………けど」
「アンタ……あれはまだ持ってるでしょ?」
「あれ?」
「隕石だって呼べるあれよ!」
 ディモレアの言葉に、エドは思い出す。一度、世界を壊そうとした時に使ったあれを。
「………あれが、使えるのか?」
「違うわよ。今こそあれを使うときじゃない。何か出来るかもしれない」
 ディモレアはエドに視線を合わせる。それは絶望に染まってなどいない、前だけを見て、そして仲間を救う手だてを探す為の。前へと向いた瞳。
 エドの、停まってしまった瞳とは違う。
「…………」
 そしてエドに、そんな彼女の言葉が届く。
「……よし!」
 エドは立ち上がる。やれるだけの事はやってみよう。
 後悔するのは、後だって出来る。


 二人の日々が始まった。
 カガリとその胎児の容態を見る、次に紅い石の効果についての研究、パーネにもらって来た患者の血液から病原体の検出、
 そして培養と解析、石が如何なる効果を持ち、そして使えるかどうか。
 やるべき事など、山ほどある。だがしかし、カガリの容態が長く保つとは思えなかった。
 一人前の冒険者ですら倒す流行病に、身重のカガリが勝てる筈は無い。
「…………やっぱ無理か」
 エドはそう呟く。始めてから一週間、カガリはよく保った方だと思う。
「ええ、そうね……」
 ディモレアも肩を落とす。どんなカタチであれ、自分は親友を救えなかった。その事実が、ディモレアの気を落とさせた。
 カガリはほとんど目を覚まさなかった。熱に冒され、時折うわごとのように呟く事はあっても意志の疎通までは出来ない。
「……………」
「どうする?」
 エドは、ディモレアに問う。カガリと、その子供の事である。
 カガリが助からないという事に気付いた、ならその子供はどうする?
 エドの子供でもあるのだから。
 出産には、まだ時期がある。まだ早い。今すぐ出したとしても未熟児として生まれ、抵抗力が低いだろう。
 ならば堕ろすか。いいや、時期が経ちすぎている。そして、エドもディモレアも、そんな事は出来ない。カガリも子供も、まとめて死んでしまう。
 ならば。
「……出す、しかないか」

99:血塗られた王たちの記憶 6ページ目
10/02/19 23:10:20 jpF7qiHn
 エドは呟く。もっとも、出産に立ち会った事など無い。当たり前だ。エドがかつて暮らしていた故郷でも、パーネが生まれて来たときだって立ち会った事は無い。
 そりゃそうだ。エドはまだ幼かったから。
「なぁ、ディモレア。お前、赤ん坊取り上げた事って」
「ある訳無いでしょ」
 ディモレアもあっさり答える。だが、その瞳に不安が混じっているのは解った。
「……でもやるしか無いでしょうね……カガリにも聞いてみるけど……」
 ただ、今のカガリと意思疎通が出来るか解らないけれど。

 何が必要か解らないのでとりあえずいっぱしの治療器具といざという時は錬成して作るのが錬金術士なのである程度の素材を集めてカガリの部屋へ向かうと、カガリはちょうど眠っていた。
 熱はまだ高いが呼吸は落ち着いている。
「……大丈夫?」
 ディモレアがそう声をかける。返事は無い。
「……今から、赤ん坊をなんとかする」
 エドが、聞こえるかどうかは解らないが声をかける。
「……ごめん。お前を助けられない」
「………ごめんね、カガリ」
 二人はそう言うと、それぞれ道具を手に取り、手袋をはめる。
 息を飲む。今から、始める。

 それは長時間に渡った。
 親友の死を看取るかも知れない、いや、これから看取るその前に。彼女の血をこの世界に残しておく為に。
 その間。
 カガリが明確に意識を取り戻す事は無く、ただ呻きを繰り返すだけだった。
「……女の子、か?」
「そう、みたいね」
 お腹の中にいた子は、まだ外に出るには早そうではあった。だが。
「ここで殺す訳には、いかないんだ」
 カガリの子供。エドの子供。仲間の、親友の、大切な、一緒にいたいと願った仲間が残すものを。捨てる訳には。
 いかない。
「……いいか、臍の緒……切るぞ」
「ええ」
 臍の緒を震える手で切り離し、ディモレアが子供を抱き上げる。
 子供は取り出されたばかりだとは思えないほど、まだすやすやと眠っている。
「……ぅ………」
 直後、カガリが小さくうめき声をあげた。エドとディモレアは、思わず顔を見合わせる。
「……カガリ」
 ディモレアが、口を開く。
「女の子よ。貴方の子供……女の子よ………」
「……テ……ナ……」
 カガリの口が、小さく動く。口の形が、何度か動く。
「え? なに?」
「名前、か? 名前か?」
 カガリが頷くかのように、身体が少し上下する。
 その口の動きを、エドは読み取ろうと目をこらす。
「かて……りーな? カテリーナ、か?」
「………ぅん…………」
 彼女の名前なのだろう、腕の中で眠る小さな命の名前。
 エドが小さくその名を呟いたとき、カガリの唇が再び動いた。
「………ありがとう……いままで」
「?」
 エドもディモレアも、その瞬間を見ていなかった。でも、確かに今。

 その声が、聞こえた。

「………カガリ」
 ディモレアが、もう一度だけ呟く。手を、そっと腕に置く。
 そして腕から首筋へ、そして心臓へ。
 彼女の鼓動は、もう聞こえなかった。



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