【ととモノ。】剣と魔法と学園モノ。8【エロパロ】at EROPARO
【ととモノ。】剣と魔法と学園モノ。8【エロパロ】 - 暇つぶし2ch50:名無しさん@ピンキー
10/01/27 01:01:35 4ZIF8YhJ
おれはディアボロスで人が寄りつかないことは自分がよく知っていた。とはいえ、そのうち声がかかるだろうと思い一人だけで冒険に行って帰ったら食堂へ行き、食べ終わったらとっとと寝る。
気がついたら他のやつはすでにパーティを組んででかけていたので、入れてと言っても満員なのでもう遅い。
俺は一人、残り物になってしまったのだった。
だが、この生活も無駄になった訳ではないのだ。
他の奴がパーティを組んでいた間、一人、敵を倒しつづけたのだ、レベルが低い訳がない、基本的な魔法や忍者用のスキル、暗殺を覚えて装備も充実したので声がかかってもおかしく無いと思っていた。
そんなある日食堂にて・・・
「隣の席いいか?」
こえがしたほうを向くと・そこにはバハムーンの男がいた。
「え?あ・・どぞ」
いきなりだったもので思考が遅れてしまう。
でそいつはすぐとなりに座り、
「いきなりだがおまえってまだフリーか?」
「え?」
「まだパーティにはいっていないのか?」
「そうだけど・・・」
「よし・俺のパーティ来ないか?」
キターーーーッ
この嬉しさを心に押し込みながら
「いいけど」
とフツーに答えてみる。でも内心ウレシーすんごく。
「よし!すぐ来い

51:名無しさん@ピンキー
10/01/27 01:02:11 4ZIF8YhJ
しまったとぎれてしまったナンテコッタイ
次から続きかきます


52:名無しさん@ピンキー
10/01/27 21:08:56 +X+OCg+R
とりあえず落ち着いてメモ帳に一度書くべきだな。
それからコピー&貼り付けを利用すれば切れることはないぞ。
あと、途中で切れても動じずもう一度書き直すんだ。
謝るのはあとがきにするとスムーズに読めて読み手からしても楽だし、書き手も何度も謝らずにすむ。

しっかりと最後まで書けば次の力になる。
諦めずにがんばれ、楽しみにしてる。

53:名無しさん@ピンキー
10/01/31 20:17:59 MN7K7Csu
意外にもNPCキャラの作品て少ないんだな

54:名無しさん@ピンキー
10/02/01 00:34:39 nqZzssgV
毎回会えるわけじゃないからキャラ掴みにくいんだと思う。
先生やメインの6人はともかくとして。
翼が折れてるセレスティナの名前、覚えてるかい?
おれは忘れた。

55:名無しさん@ピンキー
10/02/01 01:34:14 AU5rQB/F
アスティの名を忘れるとは良い度胸だ

56:名無しさん@ピンキー
10/02/01 01:53:01 65Fj1y8K
オリーブがグロテスクワームの苗床になるSSは絶対誰か書くと思ってたのに未だに見ない

57:ライン
10/02/01 16:55:40 3+Nz+f7j
キャラが死ぬたびに何度も思うけど
あんな可愛らしいキャラが灰になったり首狩りされたりって…慣れんなぁ

58:名無しさん@ピンキー
10/02/01 18:16:59 OqBHOajR
>>57そんなハートフルボッコ感がととモノの魅力なんじゃないかな

59:名無しさん@ピンキー
10/02/01 19:52:40 Ewkg/9dP
各々書き手さんによってキャラの口調が違うのが良い意味でおもしろい
大抵セレスティアは敬語だが

60:名無しさん@ピンキー
10/02/01 20:35:16 Rin8ZpW3
でも丁寧語だったり「~でしてよ」みたいな言い方だったり、やっぱり微妙に差があるよな

61:名無しさん@ピンキー
10/02/02 03:08:04 FkGNE6ZE
個人的に「~~でしてよ」系の喋り方はエルフっぽいと思ったり

62:名無しさん@ピンキー
10/02/02 08:24:16 JbxTknMQ
暴力的なツンデレ嫌いな自分としてはフランは良かったな
ただ一人称が残念だった…アタシならよかったのに

63:ライン
10/02/02 16:43:44 bfkrutc1
ノームって機械的で冷静な種族だと思ってたけどリモンと会って一気にそのイメージが崩れた件

64:恵方巻
10/02/02 21:59:09 52+nR2oP
「あ、エルフ君..」
「やあ、セレスティア。どうしたんだい?」
「あの..今日は何の日か、知ってる?」
「ん?節分..だったっけ?」
「そう。それでね、私の田舎では節分に”恵方巻”っていう習慣があるの」
「“恵方巻”?」
「うん..節分にね、縁起の良い方角を向いて大きな太巻を食べると、
その年はいい事があるんだって」
「太巻..って何?」
「ええとね、ご飯の中にお刺身や玉子やかんぴょうを入れて、海苔という
黒い皮で太い筒状に巻いた食べ物なの」
「へぇ、面白そうだね」
「..実は今日作って来たの..あなたに食べてもらいたくて..」
「本当?嬉しいなあ。どれどれ..あ、これは美味しそうだ」
「で、こっちの方角を向いて、一気に食べてね。ゆっくりでいいから..」
「一気にか..これだけ太いと大変だなwではいただきまー..あ?そういえば
一本しか無いね?セレスティアの分は?」
「わ、わ、私は、お、お夜食でいただきますから..」
そう言って真っ赤になって俯きつつ、その手をエルフの太ももから股間へと
滑らせるセレスティア..

恵方巻
節分の日にその年の無病息災を願って、太巻という黒い皮で包まれた
筒状の食べ物を縁起の良い方角に向かいながら一気に食べる、
セレスティアの出身地に伝わる伝統的な風習..らしい。

65:名無しさん@ピンキー
10/02/03 00:34:56 XbmAixZR
>>64
ま、まさか喰うのか?

66:普段はROM専門@誰かニックネーム付けてください
10/02/07 01:12:55 6xUjITiZ
テスト

67:普段はROM専@誰かニックネーム付けてください
10/02/07 01:19:03 6xUjITiZ
今晩は。
普段はROM専です。
過っ疎過疎なのできました。
キャラクターはオリジナルかつ自己パ。
エロ?
まぁどうぞ。

68:普段はROM専@誰かニックネーム付けてください
10/02/07 01:19:55 6xUjITiZ
ここはクロスティーニ学園からさほど離れていない所にある、初めの森。
冒険者を目指す若者が最初に訪れる森であり、此処で戦いに慣れない自分を鍛え、仲間との信頼を築く。
これは冒険者の避けては通れない最初の一歩であり、熟練の冒険者達の思い出として刻まれる。
そしてまた、初めの森は新たな冒険者達を生み出そうとしていた―

「うわー、うわー!」
声の主であるフェアリーは毒針ネズミ三匹を相手に、叫びながら逃げ惑っていた。
「えーい!落ち着けフェアリー!」
そう言い放ち、ヒューマンは持っているダガーを大きく振りかぶり毒針ネズミを豪快に切り裂く。
その途端残った毒針ネズミはヒューマンへと目標を変え、襲い掛かる。
だがそのうちの一匹はヒューマンへ攻撃が届くことなく、炎に包まれた。
「まったく、これだから……。あれ程わたくしは『一人で先に行くな』、と忠告したはずですわよ?」
ファイアを放ったエルフはフェアリーに淡々と愚痴を並べる。
「ご、ごめん。少し好奇心が……」
「おい、ちょっと俺の方を見てくんねぇかな?」
毒針ネズミの攻撃をダガーで止めつつ、フェアリーの言葉を遮る。
攻撃を防いでいるのがダガーだけに、今にも毒針ネズミの牙が手に食い込みそうになっている。
「待ってて、今助けるから!ファイ……」
「や、やぁ!」
フェアリーがファイアを唱えようとした時後ろの方で見ていたセレスティアが、持っていたマイクで毒針ネズミを強打した。
強打された衝撃でよろけた毒針ネズミを、ヒューマンが一気にダガーで切り裂く。そしてそのまま振り向き、セレスティアに笑顔を向ける。
「ありがとう、セレスティア。マイクも意外と鈍器になるんだな」
「そ、そうですね」
ヒューマンは冗談混じりに言ったのだが、セレスティアは緊張してか真面目に答える。
「そんなに真面目だと、この先持たないヨー?ほーら、笑顔笑顔」
いきなりかえるの人形を目の前に出され、少し驚くセレスティア。だが少し緊張が解れたように息を吐き、微笑みを浮かべる。
「少し驚きましたけどありがとうございます、クラッズさん。」
「ヒヒヒ、緊張が解れて良かったネー。小生はまだ緊張気味だけどネー」
先程クラッズが言ったように緊張気味なのか、ニヤリとひきつった顔で笑いを浮かべ、セレスティアへと顔を向ける。
その時、フェアリーが何かに気づいたように辺りを見渡す。

69:普段はROM専@誰かニックネーム付けてください
10/02/07 01:21:25 6xUjITiZ
「ん、どうした?」
挙動不審になっているフェアリーに流石にヒューマンが気付き、声をかける。
「いや、ね、彼女……。フェルパーがいなくなってるなって……」

ガサッ。

フェアリーがそう口にした途端、近くにあった木から飛び降りてきて―そして謝った。
「ご、ごめんなさい!ゴメンナサイ!僕、どうしたら良いか分からなくって!本当にごめんなさい!」
謝り倒すフェルパー。大丈夫、と宥めるヒューマン。しまいにはフェルパーが泣き出し始め、クラッズとセレスティアを巻き込んでの騒動になった。
やれやれ、と言った表情でエルフはフェアリーに耳打ちする。
「なんであんな―人見知りのフェルパーなんか連れて来たんですの?どうせならノームの方が……」
フェアリーはエルフにされたように耳打ちを返す。
「ど、どうせなら強い子……ノームよりフェルパーの方が良いでしょ?」
「……はーっ。仮にも貴方がリーダー。わたくしには拒否権はありませんものね」
「ご、ごめん」
そう言い終わると、ヒューマン達が半ベソのフェルパーを連れて戻ってきた。
「どうしたノー?二人で話なんかしテ……もしかして、もうそういう関係なのかナー?」
ヒヒヒッ、と笑って二人を茶化すクラッズ。
これに対しエルフが憤怒していたが、フェアリーは俯いていた。
(い、言えない……)
実はノームを探していたこと。
学園内で道に迷っていたフェルパーのこと。
道を教えてあげたら、俯きながらフェルパーがついて来たこと。
―で、仕方なく彼女の了承も得ずに皆に紹介したこと。
(皆に、言えないよなぁ……特にエルフには)
そんなことを考えながら俯いていたら、セレスティアが声をかけてきた。
「どうしました?具合が悪いのですか?」
顔を覗き込みながら聞いてくるセレスティアに、フェアリーは
「いや、大丈夫だよ」
と答えるしかなかった。

このパーティーは、リーダーのフェアリーが魔法使い学科、副リーダーのヒューマンが侍学科、クラッズが人形使い学科、エルフが魔法使い学科、セレスティアがアイドル学科、そしてフェルパーが戦士学科。
バランスは悪くないが連携が取れない、いわば戦い慣れしていないパーティーだった。

初めの森から帰還し、それぞれの荷物を置きに寮へ戻り、反省会をリーダーであるフェアリーの部屋で開いた。

70:普段はROM専@誰かニックネーム付けてください
10/02/07 01:22:06 6xUjITiZ
「えー、では反省会を始めます」
フェアリーの締まりの無い声で始まった反省会だった。
「まず始めに副リーダーであるヒューマンからお願いします」
「はい、初めの森ではうまく連携が取れずにいたので、次に初めの森に繰り出す時は陣形を決め、連携に繋げられるよう心掛けたいです」
「はい、次は……」
このような調子で始まった反省会だったが、ヒューマン、エルフ、セレスティア、クラッズまでは何事もなかった。
だが、フェルパーの順になり、言葉が途切れた。
「えーと……あの、その……敵との遭遇時には、その……」
そこまで、話すとエルフが突然立ち上がり叫んだ。
「あーっ、もう!間怠っこしいですわ!フェアリー、なんとかなりませんの!?」
「え、ーっと?」
フェアリーは何がなんだか分からない、と言った顔をしエルフを見る。
するとエルフはまた苛々とした顔をし、怒りの矛先をフェアリーへと向ける。
「貴方が、そのフェルパーを、連れて来たんですわよ!?貴方がなんとかして頂戴!」
そこまで言うと、エルフは部屋の扉を勢いよく開き出て行ってしまった。
「……副リーダーの権限で今回の反省会を解散する。いいな、フェアリー?」
「……自分は、構わないよ」
「では……これをもって反省会を解散する。それぞれの部屋に戻ってくれ」
その発言を境に、それぞれが自分の寮へと戻っていく。
……ヒューマン以外は。
「フェアリーとフェルパーはよく話し合ってくれ」
ヒューマンは立ち上がり、扉へと歩きだす。
フェアリーの隣で歩みを止め、小さく
「そこからどうするかは、リーダーしだいさ」
そう耳打ちする。
その言葉を最後に、ヒューマンも自分の寮へ戻ってしまった。
「にゃ……」
フェルパーが申し訳なさそうに小さく呟く。
「ごめん……なさい、僕、人見知りな上に臆病だから、だから僕このパーティーには」
「勝手に入れたのは自分。それにまだ初日、皆慣れないのは当たり前さ」
フェルパーの発言を遮り、フェアリーが淡々と話し始める。
「それに、リーダーの権限!皆の了承も得なきゃならないし、何より初日。もう少し頑張って欲しい。……君から選んでくれたし、さ」
フェアリーは鼻を擦り、微笑みながら「臭かったかな?」とフェルパーに言う。


71:普段はROM専@誰かニックネーム付けてください
10/02/07 01:24:11 6xUjITiZ
フェルパーはというと、伏せていた耳を戻し、尻尾の先をピクピクと動かしながら
「全然、臭い台詞じゃないよ!」
叫んでしまった。
顔が赤く染まっていくのが自分でも分かったが、どうにも止まらない。
「言ってることは正しいし、何より……」
そこで言葉が詰まった。
(そんな小さな優しさに惚れたなんて……言えない!)
「にゃー!」
再度、叫んでしまった。
道に迷った時、人見知り故に誰にも話かけれなかった。
そんな時に向こうから「どうしたの?」と話掛けてくれた。
こちらが言葉を出さずに地図で説明すると、優しく丁寧に道を教えてくれた。
そんな小さな親切に、種族は同じフェルパーではなくても惚れてしまったのである。
「ど、どうし」
「フーッ!」
興奮状態のフェルパーは咄嗟にフェアリーに飛び掛かり、口を塞いだ。
……自分の口で。
フェアリーは唇を奪われたこともあってだが、混乱していた。
だが、一つ言えることができた。それは……
(あぁ……興奮してる猫の喧嘩を止めるのが危険という意味、少し分かった……)
そのままバランスを崩したフェアリーはベッドの足に後頭部を強打する。
フェルパーはそんなことはお構い無しにフェアリーの唇を貪る。
舌を一方的にフェアリーの舌と絡ませ、濃厚なディープキスを味わった所で少し理性を取り戻す。
(これって……強姦なのかなぁ……)
冷静になり、フェアリーの上から離れる。
フェアリーはようやく解放されたといった感じに起き上がり、ぶつけた後頭部をさする。
「だ、大丈夫?」
「自分は、大丈夫……それより落ち着いた?」
フェルパーはこくんと頷く。
どうやら冷静になったと同時に恥ずかしくもなったらしく、顔を赤くしていた。
「じゃあ……ベッドの上で、続き、ね?」
恥ずかしくなったのはフェアリーも一緒だったようで、ほのかに顔が赤く染まっていた。
二人はベッドへと移動すると、どちらから言い出したでもなく軽くキスを交わす。
最初は軽いキスだったが、時間が経つに連れ先程の様なディープキスになっていた。
しかし、さっきと違うのはフェアリーもフェルパーの舌へと自分の舌を絡めていたことだった。
最初はフェルパーの舌のざらざらに動きこそ止めたものの、だんだん積極的に舌を重ね、絡めるようにフェルパーを味わった。
やがて胸に手が伸びた時―突然扉が開いた。

72:普段はROM専@誰かニックネーム付けてください
10/02/07 01:25:10 6xUjITiZ
「あー、やっぱりあったネー。心配したヨー」
入ってきた主はクラッズ。
どうやら人形を忘れたようで、こうして取りに来たようだ。
急いでフェアリーとフェルパーは唇を離し、何事もなかったようにする。
「あれ、今頃お楽しみだと思ったんだけどナー」
クラッズはがっかりしたと言いたげに人形を拾い上げる。
「クラッズ、計ったな……」
「ンー、何?小生は何も知らないナー」
クラッズがそう言った時に不意に扉の向こうから声が聞こえた。
「おい、クラッズ……!余計な詮索はしない約束だったろ……!」
「ヒューマン……」
声を押し殺しているが、誰かはわかる声量だった。
どうやらヒューマンはずっと部屋の外で待っていた……もとい、聞き耳を立てていたらしい。
そこで人形を取りに来たクラッズと会い、余計な詮索はしないという約束で突入させたとのことだった。
「いや、話し合いで何か現状解決してくれるかと思ったら、まさか……ねぇ?」
「エッチなのはいけないと思うネー」
「いや、だから自分は……」
(は、恥ずかしい……)
結局一晩中四人で話し合うことになり、フェルパーはフェアリーの事が好きなことと理由、フェアリーはフェルパーに対する最初の気持ちがばれてしまった。
フェルパーはフェアリーの本当の気持ちを知った為、最初こそうなだれていたものの、「今はノームじゃなく、フェルパーを選んで良かった」と言ったことで機嫌を持ち直したのは言うまでもない。

翌日、食事をとる為に食堂へ向かうと既に皆が待っていた。

73:普段はROM専@誰かニックネーム付けてください
10/02/07 01:25:33 6xUjITiZ
「皆、どうしたの……?」
「食事を取りに来ただけですわ」
そう言い、優雅にパフェを食べるエルフ。
「何言ってんだよ。お前が言い出しっぺだろ、フェアリーを待とうって。コイツ、フェアリーが遅いからってパフェを三つも……」
「そろそろ、その口を閉じなさい!」
食べていたパフェをヒューマンの顔にぶつける。
「目がぁぁ!」
「……で、昨日の話し合いで何か決まりましたの?」
ヒューマンのことなど気にもとめず、フェアリーへと質問を投げかける。
フェアリーは昨日の一部始終をエルフに話した。
「という訳で、エルフがフェルパーの事を嫌いなのは分かってるけど、フェルパーはもうパーティーの一員だ。抜けさせないよ」
そこまで言うと、エルフが意外そうな顔をしながらフェアリーを見た。
「私情を挟むのは構いませんけど、わたくしは別にフェルパーの事は嫌いではありませんわよ?」
「へ?」
思わず素っ頓狂な声を上げるフェアリーにエルフは続ける。
「わたくしは別に戦闘に参加しないならいらないだけであって、連携云々、強さ云々はこれから磨いて行けば良いだけですわ」
そこまで言うと突然エルフは目を閉じ顔を横へ向ける。
「戦闘に参加しないんでしたら……友情云々も築いて行けませんものね」
そして後ろを向いてしまう。
「エルフはツンデレだな。顔が赤いぞ?」
「うっ、五月蝿いですわ!」
エルフは茶化すヒューマンを杖で殴る。
直撃を受けたヒューマンもさすがに椅子に座ったまま気絶する。
「ほ、ほらっ!今日も初めの森に行きますわよっ!」
ヒューマンを引きずって歩くエルフをフェアリーとフェルパーは笑いながら見送った。

初めの森。
冒険者を目指す若者が最初に訪れる森であり、此処で戦いに慣れない自分を鍛え、仲間との信頼を築く。
これは冒険者の避けては通れない最初の一歩であり、熟練の冒険者達の思い出として刻まれる。
このぎこちないパーティーもやがてこの場所が『思い出』に変わるだろう。

やがて、学園で伝説と言われるほどに強く、絆が深いパーティーなることを、まだこの時の彼等は知らない―

74:普段はROM専@誰かニックネーム付けてください
10/02/07 01:32:40 6xUjITiZ
どうも、普段はROM専です。

今回は自分の処女作であり、お目汚し申し訳ございません。
一人称考えるのに小一時間、名前は付けるか小一時間かかりました。
結局、名前は付けずに終わりましたが、その方が愛着が沸きやすいですかね?

今回は一週間書くのに費やしましたが、次はもっと早く書きたいです。
続きを書くかは不明、続きでエロがあるかは不明ですが、また現れた時に親しみやすいニックネームが付くことを楽しみにします。

では……
普段はROM専は逃げ出した!

75:普段はROM専@誰かニックネーム付けてください
10/02/07 01:43:22 6xUjITiZ
アウチ!やってしまった……

>>68-73の作品タイトルは【未来の思い出と『絆』】で1/6~6/6まであります。

では今度こそ……
普段はROM専は逃げ出した!

76:名無しさん@ピンキー
10/02/07 19:05:19 xq/1/T5u
GJ先生ー。エロい続きも期待してるw
名前はあった方が愛着はわくけど、
ない方が名前を説明する手間がないというか。まあ一長一短だよな。

77:二番煎じ
10/02/07 23:00:58 6xUjITiZ
どうも、元普段はROM専です。
前話の小ネタと名前を引っ提げてきました。
名前は
フェアリー→ラファ
フェルパー→カレン
ヒューマン→ラグナ
エルフ→レミア
クラッズ→ノイル
セレスティア→セレーネ
です。
モロ自己パの名前です。フェアリーだけ偽名です。実名プレイなので……
エロ無しです。
どうぞ。

78:少し未来の思い出と『絆』1/3
10/02/07 23:03:14 6xUjITiZ
あれから一週間過ぎた。
まだ少しぎこちないものの、パーティーとしての連携も取れ始めて来ていた。

「ふぅ、疲れたネー。そろそろ寮に戻ろうカー?」
「そうだな。女子は女子で、話しが弾んでるみたいだしな……。おーい、一旦戻るぞー!」
ラグナの叫ぶ声に気付いた様に、少し遠くの木陰でレミアが手を振る。
その隣にはカレンがいた。
「一旦戻るとラグナが言っていましたわ。わたくし達もあちらへ戻りましょうか」
「うん、分かった!」
どうやら二人は仲良くやれているようで、時々、主にカレンのラファに対する相談をレミアにしているようだ。
「で、貴女達は最初の口づけ以来、関係を持っていない訳ね」
「う、うん……」
カレンは今まさにラファの相談をレミアにしていた。
レミアははぁーっと溜息をつき、カレンにダメだしをする。
「駄目ですわよ?貴女は女性としての美しさはあるのですから、積極的にいかなくては……」
「そうだヨー、胸だってこんなに大きいんだかラー」
「う、うにゃあ!?」
いつの間にか後ろにいたノイルに胸をわしづかみにされ、悲鳴にも似た声をあげる。
「フムフム……一般女性の平均値を越えてるネー、このパーティーでは一番大きいんじゃないノー?」
「へぇ……では私は『このパーティー』では、どの位置なのかしら?」
「一般女性よりも小さい位だかラー、このパーティーでは一番小さ」
「このっ……ムッツリスケベ!」
怒り浸透のレミアに気付かずにノイルは素で答え、そしてスタッフでの一撃を受ける。
パーティー二日目にラグナに炸裂した一撃とは、威力もキレも比べ物にならなかった。
ノイルは薄れゆく意識の中で、強くなったネー……、と呟いた。
「どうしました?ラファさんもラグナさんも行ってしまわれますよ?」
三人が遅いため、様子を見に来たセレーネにレミアは
「大丈夫、モンスターをやっつけただけですわ」
と、ノイルを引きずりながら答えた。

79:少し未来の思い出と『絆』2/3
10/02/07 23:03:57 6xUjITiZ
いつもの日課になりつつある『反省会』を行うため、皆はラファの寮へと集まった。
ラグナが扉をノックし、それに合わせてラファが「入って来てー」と締まりのない声で受け答える。
ラグナが先に扉をくぐり、残りの四人が入って来る。
皆で円を描くように座り、ようやく反省会が始まる。
「では、反省会を―と言いたいけど……そろそろ反省会を開くのはやめにしない?」
開口一番がこれだったので、流石のラグナも開いた口が塞がっていない。
「お、おい、それどういう」
「だって、もう一週間だよ?」
どうやら始めから一週間、というのは決めていたらしい。
始めこそラグナは渋っていたが、反省会を開かない事で落ち着いた。
「まぁ……リーダーが決めたことだもんな、俺に異論はない。」
「ごめんね、勝手に一人で決めちゃって。だけど、皆を見てみて意思の疎通はできてたから」
敵との遭遇時に不測の事態に陥った時、それぞれが最良の行動、連携をとっていたのを見て、下した決断だった。
「それに最初から、どの敵が現れたらどう動くとか決めるのだって、窮屈でしょ?」
皆はお互いの顔を見合わせ、そして皆一致で頷いた。
「そんな決められた行動は嫌だ。それに自分達はパーティーであり個人、それを自分は大切にしたい。」
ラファは照れた様に鼻を擦る。
「じゃあ、これにて『話し合い』は終わり!皆、自分の寮に戻っても良いよー」
今日はこの発言とともに皆が自分の寮へと戻っていく。
ラファは独り、ボソリと
「これで、良いよね……」
と、呟いた。

80:少し未来の思い出と『絆』3/3
10/02/07 23:04:56 6xUjITiZ
カレンはと言うと、レミアの寮へと来ていた。
「リーダーは、普段ヘタレなのに言うときは言うんですわね……」
「うん……惚れ直しちゃった、僕」
先程の事をレミアと語り合っていたようだった。
ふと、レミアはカレンに問い掛ける。
「貴女は、リーダーの……ラファの、どこが良いんですの?」
カレンはというと、目を丸くしてレミアをみたあと、ふっと笑い、語りはじめる。
「普段は頼りなさそうだけど、誰にでも親切で、優しいところかな……。あ、これじゃあ最初に惚れた理由か」
あと、決めるときに決める所かな?と付け足し、ほんわかとした顔を浮かべる。
するとレミアは部屋の天井を見つめ、ポツリと呟く。
「何となく、惚れた理由もわかりますわ」
「え、なんて?」
よく聞こえなかった―そういいたげなカレンにレミアは叫ぶ。
「何でもないですわ!ほら、自分の寮に戻りなさい!」
そう言い、カレンを扉の外へと押し出す。
カレンはうにゃあ、と言うと扉を閉められてしまった。
ガチャリという音からして、鍵をかけられたのだろう、カレンはわからない、といった表情で自分の寮へと歩きだす。

「他の人が好きな殿方を好きになるなんて駄目ね、わたくしも……」
レミアは、誰も居なくなった部屋でポツリと呟いた。

81:二番煎じ
10/02/07 23:10:58 6xUjITiZ
どうも、現二番煎じです。
前作の感覚が短くても、名前のテスト的投稿です。
前作に名前を合わせて、名前有、名前無のどちらが良いか決めて欲しいです……
それと前作、ヒューマンことラグナさんは侍学科ではなく剣士学科です、申し訳ございません。

ではまた。
二番煎じは逃げ出した!

82:名無しさん@ピンキー
10/02/08 17:56:50 VhP8gBtY
無しの方がいいかな
つかフェアリー♂だったのね
でフェルパーが♀なのね
じゃあ男はヒューマン、フェアリーだけ?

83:名無しさん@ピンキー
10/02/08 19:25:15 D/u0xgLr
クラッズもかな。
フェア男ってこのスレではまったくといって良いほど出番ないから、是非とも頑張ってほしいw

84:二番煎じ
10/02/15 03:08:11 fTKEUJaS
どうも、二番煎じです。
今回はバレンタインでの小ネタを引っ提げて来ました。
このパーティーは最初は一回ポッキリの予定でしたので、小ネタでしかでないかも……
ではお話をどうぞ。

85:バレンタインキッス 1/2
10/02/15 03:10:26 fTKEUJaS
初めの森から帰還し、夜遅すぎるため食堂が閉まっていたために皆でフェアリーの寮に集まり晩御飯……もとい夜食を食べていた。
「ヤー、今日も疲れたネー」
「魔法壁しか使ってなかったじゃありませんの?」
「魔法壁も意外と疲れるヨー?」
そのような会話をしながら、冒険中に手に入れた食料を皆で思い思いに手にとっては頬張っていく。
そんなとき、セレスティアが口を開いた。
「そういえば、バレンタインデーだったんですね……」
「ん?あぁ、そういえばそうだな……。だけどもう過ぎてるぞ?」
ヒューマンが時計を見ながら話す。
「あーあ、今年もゼロか……」
「しょうがないよ、自分達は朝から初めの森にいたんだから……」
「うにゅう……ねぇ、『ばれんたいんでー』って何?」
フェルパーのびっくり発言に落ち込んでいたヒューマンとフェアリーが光の速さでフェルパーを見る。
「フェルパー、バレンタインを知らないのか?」
「うん、僕は初めて聞いた。……あれ?どうして皆でこっちを見てるの?」
フェルパー以外の皆がフェルパーの方へと視線を集中させていた。
ある者は信じられない、またある者は天然記念物でも見るような目でフェルパーを見ていた。
そこで、再度セレスティアが口を開く。
「フェルパーさん、バレンタインというものはですね、女性が好きな男性にチョコレートを渡す習わしですよ?」
最近は逆チョコ、友チョコというものも流行っていると続けるセレスティア。
しかし、フェルパーの耳には届いていないようで顔を赤くしながら慌てている。
そんなフェルパーを横目にエルフはポツリと呟く。
「わたくしは、用意はしていましたけど……過ぎてしまいましたものね」
「朝がくるまではその日だぞ、エルフ!」
「なんですの、そのいい加減な言い分は!」
ヒューマンにツッコミをいれるエルフ。
やがて目を閉じ、溜息をついた後にヒューマンにチョコを差し出す。
「はい、チョコですわ。言っておきますけど、仲間としての義理チョコですわよ?」
「エー、一人にあげるノー?」
「う、五月蝿いですわね!ニヤニヤしないで下さる!?」
怒るエルフだが、クラッズが笑いを止めないため諦めた顔になる。

86:バレンタインキッス 2/2
10/02/15 03:12:19 fTKEUJaS
「これは、フェアリーの分ですわ。ヒューマンと同じで仲間としての義理チョコですから、勘違いしないで下さる?」
チョコを渡した後に顔を急いで背けるエルフ。
「あれ、なんで顔が赤いんだい?」
「へ、変なことを聞くものではありませんわ!」
フェアリーにエルフの拳が襲い掛かるがフェアリーはひょいとかわし、軌道上にいたクラッズにクリーンヒットした。
「……私はちゃんと皆さんの分を用意してありますから」
セレスティアは一日遅れですいません、と断りをいれ、フェアリーとヒューマンに手渡し、横たわっているクラッズの隣にチョコを置いた。
「ぼ、僕は、チョコなんて……」
オロオロしながらしまいには泣きそうになるフェルパーにヒューマンは何かを耳打ちした。
「行け、フェルパー!今日は恋する乙女の為の日だぞ!」
「リ、リーダー、御免!」
「うぶす!?」
フェルパーがフェアリーに飛び掛かり、唇を奪う。
半ば強制的だがヒューマンにそそのかされたのだから仕方がないといえば仕方がない。
「あーあー、チョコより甘いねー」
「ヒューマン、それはクラッズのチョコですわよ?」
「気にするな。こっちは口寂しいんだよ……」
クラッズが気絶しているのを良いことにクラッズの貰ったチョコを食べるヒューマン。
エルフはやれやれといった表情をし、ヒューマンに軽く口づけをする。
「な、なぁ!?」
「ん、少し甘いですわね……。貴方が口寂しいと言っていたからしてあげただけですわよ?」
髪をさらりとかき上げ、クスリと笑うエルフ。
「い、一瞬びっくりしたぞ……」
「安心なさって、別に貴方に興味はありませんから」
「……泣いても良いか?」

一日遅れても、幸せなバレンタインを過ごすことができたフェアリー達。
朝になるとまた冒険に明け暮れるだろうが、これも思い出の一つに残ることだろう。

この後目を覚ましたクラッズが、チョコを貰っていないことを三日間ほど歎いていたのはまた別のお話。

87:二番煎じ
10/02/15 03:15:38 fTKEUJaS
どうも、二番煎じです。
一日遅れのバレンタインということで、勢いで一時間ほど費やして書きあげました。反省はしてない。
リアルで充実した人は果しているのか!?
ではでは。
二番煎じは倒れた!

88:>>34 バレンタイン1/2
10/02/15 15:07:01 Oi6RMAEt
あの事件から3ヶ月後…クロスティーニ学園のいつものと変わらない日常に戻った。
そんな日常は今日だけは変わろうとしていた。ここは食堂…
「今日はやけに皆そわそわしてるね…」
教室の様子がおかしい事を疑問するクラッズ男、名前はクラ男。職業:戦士。
「ん?クラ男、お前今日バレンタインデーだぞ?様子を見て気づかないのか?」
クラ男の疑問に答えたヒューマン男。名前はヒュム男。職業:ガンナー。
「バレンタインデー?ああ、そういえば…」
「セレ子もフェア子もダメだったし…エル子やクラ子もダメだろ?今日は探検に行く必要は無いな」
「そうだね…」
会話をしていると
「おはよーさん。」
「おはよう。」
「お、フェル男にエル男か、お前らも一緒にどうだ?」
後からやってきた2人、2人は別パーティーだが同期入学のフェルパーの男のフェル男、職業:剣士と
エルフ男のエル男。職業:精霊使い。
「ええんか?」
「いいって、いいって遠慮なんかするな。」
「それじゃあ、遠慮なく座らせてもらおうかな?」
ヒュム男とクラ男の空いてる席に、フェル男とエル男が座った。
「ん?そういえば、女性陣がいないな、断られたのか?」
「君たちもか、こっちも似たような理由さ」
「それにしてはドワ男もいないようだけど…?」
「ん?ドワ男なら下駄箱にいるんとちゃうんか?」
「下駄箱?なんで?」
「下駄箱にチョコレートが入ってる場合があるのさ」
「ま、無駄やと思うけどな」
「いったい、ドワ男はチョコ何個もらっているんだ?」
ヒュム男の質問にフェル男は…
「0個や」
「あれ?パーティーの女性陣すら貰ってないの?」
「前の学校はわいはドワ男と同じ学校やってんけどな、わいだけも貰てあいつは貰てへんかったで?」
「なんか…1人だけ寂しい話だね…」
「やっぱあいつがチョコ貰えへん原因はやっぱ職業柄とちゃうんか?」
「あと、野蛮な所とかな」
「「ハハハ…」」
フェル男とエル男の会話にヒュム男とクラ男は苦笑した…。


89:>>34 バレンタイン2/2
10/02/15 15:08:36 Oi6RMAEt
今日もクロスティーニ学園の授業が終わって療に戻ろうとする僕とヒュム男さん
しかし、ヒュム男さんは寄る所があると途中で別れた。
「今日は女性陣の出席率0だったな…ドワ男君も暴れだすし…早く帰ろう…」
帰ろうとする僕に誰かが僕に声をかけた
「クラ男君♪」
「ん?あ、クラ子ちゃん」
僕に話しかけたのは僕と同じ種族で同期入学のクラッズ女のクラ子ちゃん、職業:風水士
「クラ男君、今暇?」
「え?うん、帰ろうとしてた所だし…」
「あのね…今日一緒に行けなくてごめんなさい」
「いや、いいよ。用事があったのなら仕方が無いし」
「今日…何の日か知ってる?」
「ああ、煮干の日でしょ」
「煮干の日?」
「全国煮干協会が制定したんだ「に(2)ぼし(14)」の語呂合せだよ」
「知らなかった…クラ男君物知りなんだね」
「あと、バレンタインデーだね、それで」
このままだと話が別方向にそのまま行ってしまいそうな気がしたので、ボケるのをここで断念し、話をあわせる。
「クラ男君、私からのバレンタインチョコだよ♪」
そういって渡されたのは赤青い包みで黄色いリボンがラッピングされた箱、話の流れからしてチョコが入っているのだろう
「ああ、ありがとう」
「しかも、手作りだよ♪」
僕とクラ子ちゃんが、話をしていると
「あ、いましたわ!」
突然誰かからの声がなった。
「あれ?エル子さん?」
駆け寄ってきたのは、同期入学のエルフ女のエル子さん、職業:精霊使い
でもなんでか、顔がまっかっかなんだろう?
「クラ男君に渡したいものがありますわ!」
「なんで顔が真っ赤なのかな~?ヒュム男君に向けての予行演習?」
「!何を言ってますの!誰があんな男と!!」
「その割には随分興奮してない?」
「興奮してませんわ!クラ男君、はいチョコですわ!言っておきますけど義理ですからね!」
「じゃあ~ヒュム男君へのチョコは本命チョコなのかな~?」
「へ、変な事聞くものじゃありませんわよ!」
「はは…」

その後、セレ子さんとフェア子ちゃんからもチョコを貰って(ヒュム男さんとエル子さんは一騒動あったけど渡せた)
寮でヒュム男さんと一緒に義理チョコ→本命チョコを一緒に食べたのでした。


その頃、エル男とフェル男は…
「うん、やっぱヒュム子の作ってくれたチョコはうまいな」
「お前、その他のチョコ全部断ったもんな…わいなんて本命なしで全部義理やで…」
「もらえるだけマシじゃないのか?アレに比べたら」
「ああ、アレね…」
エル男が向けた方向をフェル男が見ると、片隅でないているドワーフ男ドワ男が泣いていた、職業:狂戦士
「シクシク…なんでだよ…なんで俺は0個なんだよ…俺のどこがいけないって言うんだ…」
「やっぱ職業のせいとちゃうんか?」
「いや、職業柄の以前に性格が問題だな」
「うるせぇーーーーーーー!!!!」

それはまた別の話である…

90:名無しさん@ピンキー
10/02/15 15:15:37 Oi6RMAEt
>>34の者です。
アイドルがなにがいいの話が今詰まってて、外伝(今作)を書いてるうちに
出来上がってしまったのでこちらをあげました。

チョコを貰った記録はというと
クラ男……本命1(クラ子)  義理3
ヒュム男…本命1(エル子)  義理3
エル男……本命1(ヒュム子) 義理0(断った数…8個中8個全部)
フェル男…本命0       義理4(エル男のパーティー以外にクラ男のパーティーのセレ子に貰っている)
ドワ男……本命0       義理0(なし)
という結果です。

アイドルがなにがいいの話の制作頑張りま~す
では。

91:名無しさん@ピンキー
10/02/16 23:23:40 aLanXgSQ
お二人ともGJ!やはりバレンタインはいいものだ。
しかし、ここって普段人少ない割にたまに思い出したようにいっぱい来るよなw

92:ディモレアさん家の作者
10/02/19 23:04:38 jpF7qiHn
こんばんはっと。
うん、凄くお久しぶりになりました、ディモレアさん家のシリーズの俺です。
しばらく見ぬ間に職人様増えてますなw皆様、GJであります!
しかしバレンタインっていいものだなぁと。

今夜は第6話を投下であります。

93:血塗られた王たちの記憶 6ページ目
10/02/19 23:05:39 jpF7qiHn
 カガリのお腹がだいぶ膨らみ始めた頃、エドは久しぶりに外の街に出た。
 必要な物資の大体はアイザ地下道に潜れば手に入るが、それでも街でなければ手に入らないものというのは少なく無い。
 しかし、そこでエドが感じたのは、人の影が少ない事だった。

 そう、まるでゴーストタウンと化したかのように。
「…………」
 普段にぎわいを見せる市場ですら、閑散としている。店を出す者もいつもの三分の一ぐらいしかいない。
 何の冗談だ、と思いつつエドは長い買い物リストを片手に市場を行く。
 しかし、目的のものは見つからない。当然である。いつもの三分の一しか店が無いのに探しようが無い。
「……やれやれ」
 ため息をつく。だが、ため息をつくのはエドだけではない。
 街を歩く数少ない人々は暗い顔のまま、ため息をついては歩いて行く。救いも何も無いかのように。かつての喧噪を忘れたかのように。
 エドは知らなかった。
 幾多の街に、伝染病が広がっている事を。
 墓地に於かれた墓石の数がここ数ヶ月没で異様に増えている事に気付くまで、エドは知らなかった。


「新種の、伝染病……?」
 ランツレート学院まで急ぎに急いで来たエドは、ちょうど通りがかったダンテを捕まえ、死者が増えた理由について聞き込んだ。
「発生は数ヶ月前で、有効な治療法も特には。病原体そのものは見つかった、って聞きましたけど」
「で、気がついたら街はゴーストタウンって訳か」
「街だけじゃなくてウチやマシュレニアの生徒にも患者が出てるんですよ……正直、参ってます」
 ダンテは疲れた様子で言葉を続ける。感染者が出ている、という中で明確な治療法も見つからないまま同じ場所で暮らしているのだ。
 倒れた仲間になす術も無い、というのもあるだろうがいつ自分も倒れるか解らない、という恐怖もあるのだろう。
「医者だけじゃなくて魔術師や錬金術士も色々調べてるみたいなんですけど」
「成果なし、か」
「………エド先輩は、どうなんですか」
 ダンテの呟きに、エドは視線を逸らす。目を合わせられなかった。
 自分やディモレアが己の研究と行き先に悩んでいた頃に、世界は崩壊の道を歩みつつあった。
「……やれるだけやってはみる」
 そうは呟いたが、エドの脳裏に浮かんだのは、紅い秘石の事だった。
 あれを手にした時、世界の破滅を限りなく望んでいた事を思い出す。
 どっちにしろ、自分がやらずとも世界は破滅するのだったのだろうか。否、そんな筈は無い。
「ダンテ。お前、これからどうするつもりだ?」
「へ?」
「生徒にも患者がいるんだったらうつされるかも知れないだろ。お前も、俺らんとこに逃げてくりゃいい。別に一人ぐらい増えた所で問題ねぇよ」
 土地とスペースだけはありあまっているのである。
 エドの言葉に、ダンテは首を大きく左右に振る。

94:血塗られた王たちの記憶 6ページ目
10/02/19 23:06:36 jpF7qiHn
「俺に逃げろってんですか」
「……ほとぼりが冷めるまでな」
「バカ言わないでください」
 ダンテは言葉を吐き捨てるように呟く。
「先輩やディモ姉は、強引だったけど、それでも前に進んでた。先輩達と一緒にいた時です。バカみたいに喧嘩しようと、何かエド先輩がヤバい事で悩んでいようと、カガリ先輩が頭を抱えていようと、それでも、何であろうとがむしゃらでも前に進もうとしてた」
 ほんの一年前。学生だった頃、エドが考えていたのは世界の破滅。
 でも、ダンテから見れば何か悩んでいても前に進もうとしていたと見えたのだろうか。
「エド先輩も、ディモ姉も諦めが悪い人だった」
「……まぁ、否定はしねぇ」
「だからですよ。尚更、こっから逃げる訳には行きませんって。で、今の先輩はなんて言いました? ほとぼりが冷めるまで安全な所に逃げろと?
 先輩自身はどうするつもりですか? ほとぼりが冷めるまで死ぬ人を眺めてると。ふざけないでください」
「…………なんとかしろ、そう言いたいのか」
「まぁ、柔らかく言えばそうです」
「変わったな、ダンテ」
 一年前まではディモレアの尻に敷かれてひぃひぃ言っていたのが嘘のようだ。
 エド達と離れた事で、彼もまた成長したのだろう。
「……そりゃ変わりますよ。守ってくれる人がいなきゃ、一人で強くなるっきゃない。守りたい人がいるなら、守ってやるしか無い」
 ダンテの言葉に、エドは内心驚く。ここまで変わるものかと。
 それに比べて、自分は何をやっていたのだろう。自らの城に引きこもり、ただ自分のあり方について考え続けていた。
 ダンテの言うように前だけ見て進んでなどいない。進んでいたのは学生だった頃だ。
 今は進んで何かいない。停滞している。まるで、固まった石像のように。
「………………」
 壊れつつあるこの世界で、自分の後ろに隠れていた筈の少年は前を見てなんとかしようとしている。
 直視出来ない。自分の姿が恥ずかしすぎるから。
「ダンテ」
「……なんですか?」
「俺は馬鹿だ」
「……はい?」
「実はな。カガリが俺の子を身ごもったんだ」
「………え? カガリ先輩と!? ちょ、ちょっと待ってください」
 ダンテは頭を抱えて記憶を整理する。
 ダンテの記憶が正しければエドワードはダンテの従姉であるディモレアに対して好意を抱いていて、それを学生時代に明言していた。
 二人が卒業後に姿を消してどっかの研究所にこもっているのも研究協力しているのも二人が好き合っているからだ、とダンテは理解していた。
 それなのに、今、エドワードの口から漏れたのは何だ?
「………ディモ姉は?」
「……一緒に、いる。カガリとも、一緒に、いる」
「………………」
「俺は、二人とも、離れたく無い、だから、どうすればいいのか解らなくて、その事で悩んでた。研究もろくにせずに」
「…………それで?」
「それとな、もう一つ言う。俺が……研究所にこもった、逃げてた本当の理由はな。この世界をぶっ壊そうと考えてたからだ。学生の、時から、ずっと」
 エドの言葉を、ダンテは黙って聞いていた。
 だが、先ほど迄浮かんでいた惑いは消え、何を浮かべていいのか迷った顔を続けていた。
「だから正直、今の話を聞いた時……俺がどうしようと世界は壊れるのかって思ってた」
「………先輩……先輩は、今は、世界を……」
「今はそうは思っちゃいねぇよ」
「………と、言う前に……」
 ダンテが視界から消えた、とエドが思った直後。

 強烈なストレートパンチが飛んで来た。

「ほぐはっ!?」
 同年代と比べてやはり小さい身体のエドは成長期で伸びつつあるダンテのストレートを受けて見事に吹っ飛んだ。一年前とは段違いだ。
「何を考えてるんですか先輩はッ! て、言うか人の従姉相手に堂々と二股宣言すんなっ!」
「……お前にそんなツッコミが出来るとはぐほぉっ!?」
「茶化すな人の話を聞けーッ!」
 やはり人とは変わるものだ、とエドは薄れ行く意識の中でつくづく思っていた。

95:血塗られた王たちの記憶 6ページ目
10/02/19 23:07:11 jpF7qiHn
「……お久しぶりです、エドワード先輩」
 ダンテのせいでノックアウトしたエドが保健室へと運ばれた時、出迎えたのはある意味誰よりも付き合いの長い後輩のパーネだった。
 相も変わらず大鎌を振り回していた。
「ああ、久しぶりだなパーネ」
「それで。ディモレア先輩との淫らな生活を楽しめてはいないようですね」
「誰が淫らな生活だ」
「まぁ、それはともかく私のエド先輩に何をしたのですか不届きなディアボロスのダンテ君」
「すみませんでした」
 保健室の隅では床の上で土下座を続けるダンテの姿があった。
 ディモレア卒業後はパーネの尻に敷かれているようだ。
「……まぁ、それはともかくですね」
 パーネは困ったように呟く。
「エド先輩。今回の伝染病について……なんとかなりません?」
「……まぁ、努力はするさ」
 エドは頭を抱えながら呟く。とは言っても、具体的な手だてがある訳でもない。
 病気について調べるにしても、必要なものは多々ある。
「これどうぞ」
「ん? なんだこりゃ」
「患者の血液です。必要ですよね?」
 パーネはさも当然のように呟くと、鎌を振りかざす。
「それとですね、エド先輩」
「……なんだ?」
「二股はダメですよ?」
「………お前までいうか」
 エドは頭を抱えた。
 ダンテはようやく土下座するのをやめると、一度保健室の外へと出て行く。
 パーネは近くの椅子を引き寄せて座ると、深く腰掛けて視線を伏せる。
「…………エド先輩」
「……なんだ?」
「私は……実は少し悔しかったんですよ? 卒業後、いなくなった事は。エド先輩がマシュレニアにいた頃から、何か抱えていたのは知ってました。
 けど、正直な話、その事がなんであろうとエド先輩なら道は間違えない筈、そう思ってました。
 昔から、私が間違えそうな所を正しいのはこうだろとか言ってましたからね。だから、自分で間違いに気付くだろう、と。だから放置してました」
 パーネは視線を伏せたまま呟く。普段、パーネはそんな表情を見せたりしなかったから。
 エドにとっては少しだけ意外だった。いや、勘に鋭いパーネなら、エドが世界を壊そうとしていた事について、気付いていたもおかしくはない。
 それを知っていて止めなかった、というのが不思議ではあったが。
「でも、エド先輩はいつまで経っても間違いに自ら気付かない。不思議でしたよ、私としては」
「……………」
「カガリ先輩や、ディモレア先輩が言う迄は、ね」
「あの頃の俺はどうかしてたさ」
「今でもどうかしていますよ、あなたは」
 エドの呟きに、パーネは顔を近づけながら呟く。
「今の貴方は……本当に……」
 その唇が動くのが、何故か遠くに見えるな、とエドは思った。
 パーネの唇が、エドの唇に触れたのは、ほんの一瞬。

「だからもう、貴方は……私の手の届かない所の、私の人じゃない」

 そう囁くパーネ。後輩として、エドの側にいた彼女は、もういない。
 ダンテと同じように。また、彼女も変わってしまった。
 人は変わる。
 そう、時間も、月日も、思想も、行動すらも。



96:血塗られた王たちの記憶 6ページ目
10/02/19 23:07:44 jpF7qiHn
 アイザ地下道の先の研究所にエドが戻って来た時、既に夜中になっていた。
 元々そう長い時間空けるつもりは無かった。だいぶ時間はかかりはしたものの、一日で戻って来れたのはよくやったと言えるだろう。あくまでもエドから見れば、だが。
「……ただいま」
 すっかり変わったダンテやパーネの事を思い出しつつ、通路を通り部屋まで戻る。

 灯りの落ちた部屋に、ディモレアがいた。
「うおっ」
 あまりの唐突な登場に、エドは思わず声をあげた。
「ん? ああ……お帰りエド」
「ど、どうした。俺の部屋に」
 本当に珍しい事である。用がなければディモレアはエドの部屋にいたりしないだろう。
「……まぁね。その……」
 ディモレアは喋りにくそうに口を動かしている間、エドはともかく椅子に座り込んだ。
 ディモレアを前にしても、考えている事はダンテとパーネの事だった。
「…………ふぅ」
「実はあた……なんか言いたそうね、エド」
 ディモレアは口を開きかけた事を止めてエドに視線を向ける。
「お前が先に言え。言おうとしたんだろ」
「後でもいいわよ。何かあったの?」
「………まぁな。俺らが知らない間に、街の方でヤバい事になってる」
「外の世界で? 何か?」
 エドは声の調子を落としつつ、未確認の伝染病が広まっている事、学園にも被害が出ている事、錬金術士や魔術師も動員して研究しているが対処法が無い事などを話した。
 ディモレアは最初は黙って聞いていたが、研究云々の所で顔をしかめた。
「それ、本当の話?」
「ダンテに言われたんだから間違いない」
「じゃあ間違いないわね」
 ディモレアは息を吐くと、言葉を選ぶように口を開いた。
「……アタシらが外の世界を見てない間にそんな事が起こってるのね……。昔と一緒だわ」
 ため息をつき、少しだけ頭を抑えたがすぐに首を振る。
「……でも、放ってはおけないわね。何かサンプルとか持って来たの?」
「ああ。パーネからもらった」
「なら、今すぐにでも始めるしかないわね。アタシらが研究生活に入ったのも、そういうのを止める為でしょ?」
「…………」
 まだマシュレニアにいた頃。ディモレアがそんな事を言っていたのを、エドは思い出す。
 自分と違って、ディモレアはただ日々を無為に過ごしていた訳じゃなかった。
「……そう、だな」
「……酷い顔してるわよ。どうしたの?」
「今まで、こんな場所で何やってたんだろうって思ってな……ダンテとかパーネも結構必死になってなんとかしようとしてたのに」
「………しょうがないでしょ、知らなかったんだから」
 ディモレアは呆れた顔で呟く。そう、どうにもならないと言った顔で。
「ここに籠って、研究を続けようとしたのはアタシとあんたの意志。それで外の変化に気付かなかったとしても、アタシ達が外に向けない限り、外の事に気付く事は無い」
「………」
「今からでも遅くは無いわ。まだ、外は手遅れになってないんだから」
 ディモレアはそう言い放つと、エドの背中に手を置き、言葉を続ける。
「アタシも手伝う、だから、ね」
 知らなかった事。知る事も出来ない事。
 外へと、知識を欲し、外へと目を向けない限り、気付かないもの。気付く事が出来ないもの。

 そしてエドは知らない。
 ディモレアが言いかけた事を。カガリだけでなく、彼の血を宿した子が、彼女の仲にも出来たという事を。
 エドはまだ、知らない。聞いていない。
 そして、もう一人。

97:血塗られた王たちの記憶 6ページ目
10/02/19 23:09:10 jpF7qiHn
 深夜。カガリが目を覚ました理由は、身体の熱さだった。
 今の時期、ここまで熱いというのはまず無い。熱でもあるのか、と思いつつカガリはベッドの縁に手を置き、身体を起こそうとする。
 崩れる。身体に力が入らない。
「っ……!」
 腹を庇うように、近くのサイドテーブルに文字通り頭をぶつけて、どうにか倒れそうになるのを支える。だが、それまでだ。
 熱くて、苦しい。
 息を吐く。熱い吐息が漏れ、どうにか身体を支える。
「なに……これ……」
 ベッドの上へとどうにか身体を戻し、大きく息を吐く。たったそれだけの行為に、信じられない程の体力を使っていた。
 何故、と呟く。
 身重になってから体調管理はしっかりしようと思っていたのに、これではまるで出来ていない。
「落ち着いて、そう息を吐いて……ゆっくり……」
 冷静を保て、私は大丈夫、大丈夫だ。
 そう言い聞かせて呼吸を整える。だがしかし、身体は言う事を聞かない。待て、どうする。
 扉まで、せめて、急ぐ。身体を動かす。落ちないように、ある力を振り絞る。
 そして、カガリは何度も扉を叩き、その後、気を失った。

 エドとディモレアが飛んで来たとき、カガリの意識はもう無かった。


「…………」
 気まずい空気が、二人の間に流れていた。
 エドが外の世界の流行病の話を持ち込んだその日、カガリがその流行病に倒れたという事実に。
 今すぐにでもなんとかする、しようにもその手だてが無い。
 どうすればいいのか、二人には解らない。
「……どうするのよ」
 ディモレアが口を開き、エドは顔を上げて首を振る。
「どうしろって……こんなすぐに」
「被害は出てるんでしょ? あちこちに」
 外の世界では拡大している流行病。他の魔導師や錬金術士達が日夜努力しているのだ、エド達がやらなくていい理由は無い。
 そして、やろうと決めたその矢先に、だ。
「…………」
 だが。
 ダンテからその被害の話を聞いた、とはいえ外の世界の事だ、とエドは思っていた。
 いや、エドは心の奥底でそう思っていたのだろう。そうでなければ、今、カガリが倒れるという事態に直面して、こんなに焦っているなんて事は無い。
 もう少し、落ち着いていた筈だ。
 それなのに、今更になって、今この場に直面して。

 エドを襲っているのは、強烈な無力感だった。

 何かしよう、何をすればいい、何ができる、何もできない。
 そんなループが頭の底から全身へと巡って戻って来る。その繰り返し。ディモレアの言葉も実はろくに届いていない。
「…………」
「何か、考えとかないの。カガリが……倒れたのよ」
 ディモレアはそう言って少しだけ声の調子を落とす。
「カガリのお腹の中の子も、危ないかも知れないのよ」
「………わかってる。わかってんだけどよ……」
 何をすればいいのか、解らない。

98:血塗られた王たちの記憶 6ページ目
10/02/19 23:09:45 jpF7qiHn
「あんたねぇ! 今、自分がすべき事ぐらい――」
「今、この場で今すぐ取りかかって」
 エドは口を開く。
「どこまでできる。俺やお前以外の魔導師や錬金術士が必死こいて探してるのに無いものを、俺たちがどうしてできる」
「…………」
「俺たちだって、限界はある。ついでに言うと、学校卒業したばっかのボンボンだ」
「………けど」
「無茶苦茶言うなよ……!」
 エドは、自分の限界がどれほどかを知っている。いや、知ってしまった。
 ダンテと再び会った事で、卒業後にろくに成長せず停滞してしまった自分を見て。
 だが。
「……アホっ!」
 ディモレアが叫び声をあげなければ、エドは更に自虐的なスパイラルを続けていただろう。
「………他の連中が出来ないからアタシ達が出来ないなんて誰が決めたのよ」
「………けど」
「アンタ……あれはまだ持ってるでしょ?」
「あれ?」
「隕石だって呼べるあれよ!」
 ディモレアの言葉に、エドは思い出す。一度、世界を壊そうとした時に使ったあれを。
「………あれが、使えるのか?」
「違うわよ。今こそあれを使うときじゃない。何か出来るかもしれない」
 ディモレアはエドに視線を合わせる。それは絶望に染まってなどいない、前だけを見て、そして仲間を救う手だてを探す為の。前へと向いた瞳。
 エドの、停まってしまった瞳とは違う。
「…………」
 そしてエドに、そんな彼女の言葉が届く。
「……よし!」
 エドは立ち上がる。やれるだけの事はやってみよう。
 後悔するのは、後だって出来る。


 二人の日々が始まった。
 カガリとその胎児の容態を見る、次に紅い石の効果についての研究、パーネにもらって来た患者の血液から病原体の検出、
 そして培養と解析、石が如何なる効果を持ち、そして使えるかどうか。
 やるべき事など、山ほどある。だがしかし、カガリの容態が長く保つとは思えなかった。
 一人前の冒険者ですら倒す流行病に、身重のカガリが勝てる筈は無い。
「…………やっぱ無理か」
 エドはそう呟く。始めてから一週間、カガリはよく保った方だと思う。
「ええ、そうね……」
 ディモレアも肩を落とす。どんなカタチであれ、自分は親友を救えなかった。その事実が、ディモレアの気を落とさせた。
 カガリはほとんど目を覚まさなかった。熱に冒され、時折うわごとのように呟く事はあっても意志の疎通までは出来ない。
「……………」
「どうする?」
 エドは、ディモレアに問う。カガリと、その子供の事である。
 カガリが助からないという事に気付いた、ならその子供はどうする?
 エドの子供でもあるのだから。
 出産には、まだ時期がある。まだ早い。今すぐ出したとしても未熟児として生まれ、抵抗力が低いだろう。
 ならば堕ろすか。いいや、時期が経ちすぎている。そして、エドもディモレアも、そんな事は出来ない。カガリも子供も、まとめて死んでしまう。
 ならば。
「……出す、しかないか」

99:血塗られた王たちの記憶 6ページ目
10/02/19 23:10:20 jpF7qiHn
 エドは呟く。もっとも、出産に立ち会った事など無い。当たり前だ。エドがかつて暮らしていた故郷でも、パーネが生まれて来たときだって立ち会った事は無い。
 そりゃそうだ。エドはまだ幼かったから。
「なぁ、ディモレア。お前、赤ん坊取り上げた事って」
「ある訳無いでしょ」
 ディモレアもあっさり答える。だが、その瞳に不安が混じっているのは解った。
「……でもやるしか無いでしょうね……カガリにも聞いてみるけど……」
 ただ、今のカガリと意思疎通が出来るか解らないけれど。

 何が必要か解らないのでとりあえずいっぱしの治療器具といざという時は錬成して作るのが錬金術士なのである程度の素材を集めてカガリの部屋へ向かうと、カガリはちょうど眠っていた。
 熱はまだ高いが呼吸は落ち着いている。
「……大丈夫?」
 ディモレアがそう声をかける。返事は無い。
「……今から、赤ん坊をなんとかする」
 エドが、聞こえるかどうかは解らないが声をかける。
「……ごめん。お前を助けられない」
「………ごめんね、カガリ」
 二人はそう言うと、それぞれ道具を手に取り、手袋をはめる。
 息を飲む。今から、始める。

 それは長時間に渡った。
 親友の死を看取るかも知れない、いや、これから看取るその前に。彼女の血をこの世界に残しておく為に。
 その間。
 カガリが明確に意識を取り戻す事は無く、ただ呻きを繰り返すだけだった。
「……女の子、か?」
「そう、みたいね」
 お腹の中にいた子は、まだ外に出るには早そうではあった。だが。
「ここで殺す訳には、いかないんだ」
 カガリの子供。エドの子供。仲間の、親友の、大切な、一緒にいたいと願った仲間が残すものを。捨てる訳には。
 いかない。
「……いいか、臍の緒……切るぞ」
「ええ」
 臍の緒を震える手で切り離し、ディモレアが子供を抱き上げる。
 子供は取り出されたばかりだとは思えないほど、まだすやすやと眠っている。
「……ぅ………」
 直後、カガリが小さくうめき声をあげた。エドとディモレアは、思わず顔を見合わせる。
「……カガリ」
 ディモレアが、口を開く。
「女の子よ。貴方の子供……女の子よ………」
「……テ……ナ……」
 カガリの口が、小さく動く。口の形が、何度か動く。
「え? なに?」
「名前、か? 名前か?」
 カガリが頷くかのように、身体が少し上下する。
 その口の動きを、エドは読み取ろうと目をこらす。
「かて……りーな? カテリーナ、か?」
「………ぅん…………」
 彼女の名前なのだろう、腕の中で眠る小さな命の名前。
 エドが小さくその名を呟いたとき、カガリの唇が再び動いた。
「………ありがとう……いままで」
「?」
 エドもディモレアも、その瞬間を見ていなかった。でも、確かに今。

 その声が、聞こえた。

「………カガリ」
 ディモレアが、もう一度だけ呟く。手を、そっと腕に置く。
 そして腕から首筋へ、そして心臓へ。
 彼女の鼓動は、もう聞こえなかった。


100:ディモレアさん家の作者
10/02/19 23:11:45 jpF7qiHn
投下完了。
やはり一ヶ月以上も間があくのはまずいかも知れない……。

最近になってようやくPSPが復活した。やっぱ1000型は中古で凄く安いね。

101:二番煎じ
10/02/19 23:42:57 5simZKZi
>>100
超GJです!

成る程…参考になりますねー。
自分のペースを崩さないよう、無理しないように頑張るのが吉だと思いますよw

さて…そろそろ何を書こうか試行錯誤して来まするー。

102:名無しさん@ピンキー
10/02/28 19:27:43 lVjzXTln
圧縮警報

103:名無しさん@ピンキー
10/03/03 02:05:03 jw7KmwmP
>>100
GJ!というか、カガリーー!!
…………(黙祷)

やっぱ一度はクリアしないと分からないね。うん。
続きやろうかな。ランツレート奪還からだったかな。
でもディスガイアが……


104: ◆BEO9EFkUEQ
10/03/04 00:10:26 auNbT54d
以前書いた『絆』で、出そうと思ってたけどあまりに使いにくすぎて出せなかったキャラが二組。
そのままほったらかしも何なので、久しぶりに1のネタ。
ただ、長くなってしまったので二度に分けて投下します。

注意としては、前半は百合モノ。構成はバハ子×クラ子、バハ子×ドワ子。
そして後半は♂×♀だけど、♂×♂に見えるような部分があります。
なので苦手そうな方はスルーお願いします。楽しめる方は楽しんでもらえれば幸いです。

105: ◆BEO9EFkUEQ
10/03/04 00:11:02 auNbT54d
あってないようなものの消灯時間が過ぎ、寮に灯る明かりも少しずつ減り始めていた。
地下道探索の疲れで、とっくの昔に寝ている生徒がいれば、まだ地下道に残っている生徒もいる。転科のために夜遅くまで起きて勉強を
続ける生徒もいるし、中には夜通し遊ぶために起きている生徒もいる。
そんな寮の一室。明かりは既に消されているが、中では二つの荒い息遣いが漏れていた。
「んん……あうっ…!」
甲高い喘ぎ声を上げるクラッズの女の子。その表情には、快感とも苦痛とも取れない表情が浮かんでいる。
「やっ……こんな格好、恥ずかしいよぉ…!」
「クラちゃん、可愛い…」
自身も仰向けに転がり、クラッズの小さな体をその上に寝かせ、執拗に攻めるのはバハムーンの女の子である。
ほんのりと膨らんだ胸に手を這わせ、とめどなく蜜を溢れさせる秘部の小さな突起を指で弾く。その度に、クラッズの体はビクンと跳ね、
悲鳴に似た喘ぎ声を上げている。
「ね、ねえ……もう、十分でしょぉ…?三回もなんて、聞いてないよぅ…」
「まだ、聞きたいな。クラちゃんの声…」
「バハちゃん、もうやめてってばあ…!明日も、探索行くんじゃ……ひゃうっ!」
バハムーンが、クラッズの耳を甘く噛む。クラッズの言葉が止まると、指でそっと彼女の秘所を広げる。そこに尻尾を押し当てた瞬間、
クラッズはハッと我に返った。
「だっ、ちょっ、待ってっ!ストップっ!やめて!」
必死にバハムーンの腕を振り払い、足を閉じて抵抗するクラッズ。さすがにそうされては、バハムーンも中断せざるを得ない。
「……ダメ?」
「ダメだっていっつも言ってるでしょ!?そんなの入れられたら、私死んじゃうってば!」
「一回でいいから、してみたいなぁ…」
「バハちゃん……本当に怒るよ?」
その一言で、バハムーンはビクッと身を竦めた。
「や、やだぁ……怒らないでぇ…」
「……うん、いや、怒らないから。しなければ、だけど」
「うん……ごめんね、クラちゃん…」
言いながら、バハムーンはクラッズのうなじをつぅっと舐める。ぞくぞくした快感に、クラッズはピクンと身を震わせる。
「んあ……それ、結構好き……かな…」
「いっぱい、気持ちよくしてあげるね…」
首筋にキスをし、今度は尻尾の代わりに指を押し当てる。そしてクラッズの呼吸に合わせ、ゆっくりと彼女の中へと沈めていく。
「んうっ……うああ……あっ!」
熱い吐息を漏らし、身を震わせるクラッズ。その姿に、バハムーンは何ともいえない嬉しさのようなものを感じる。
「気持ちいい?一気に、イかせてあげるね…」
言うなり、バハムーンは指の角度を変え、腹側を擦るように指を曲げる。さらに、親指で敏感な突起をグリグリと刺激し始めると、途端に
クラッズは体を弓なりに反らせ、全身を強張らせる。
「きゃあっ!?だ、ダメぇ!それっ……ダメっ!強すぎるぅ!うああぁぁっ!」
「二箇所責め、いいでしょ?また、イクときの声、聞かせて…」
「ま、待ってっ……くっ、はぁ……や、ダメ……わ、私、もう……あ、うああぁぁ!!!」
必死の抵抗も虚しく、ガクガクと体を痙攣させるクラッズ。さすがに三回も絶頂を迎えていては、もう彼女の体力は限界だった。
何かバハムーンが言っているのは聞こえるが、それを声として認識できない。やがて、凄まじい快感の中、クラッズの意識はすうっと
暗く沈み込んでいった。

106: ◆BEO9EFkUEQ
10/03/04 00:11:41 auNbT54d
日光が目を直撃し、クラッズは目を覚ました。見ればかなり日は高く、だいぶ寝坊してしまったらしいことは想像がついた。
「んん……バハちゃん…?」
見回しても、バハムーンの姿はない。朝食でも買いに行ったのだろうか。
とりあえず、ベッドから降りる。が、そこで部屋の中に違和感を覚えた。
「……?」
部屋の中をじっくりと見回す。最初は気付かなかったが、徐々に頭が覚醒するにつれ、その正体に気づいた。
バハムーンの荷物が、ない。探索に行く時の消耗品も、消えている。
クラッズの頭が、急速に覚醒を始める。さらに、テーブルの上に紙切れを見つけ、クラッズは大慌てでそれを手に取った。
「うーそーでーしょーっ!?」
クラッズの絶叫が、朝の寮に響き渡った。

それより少し前。同じ寮の一室で、バハムーンの男子が目を覚ましていた。
目を開けると、茶色いふさふさした毛が目に映る。まだ寝ているらしく、気持ちよさそうな寝息と共に、体が規則正しく上下に動いている。
「おい……朝だぞ」
腹の上で寝るドワーフは、バハムーンの声など耳に届いていないようで、実に幸せそうな顔で寝ている。バハムーンとしても、自分の
上で腹ばいになっているドワーフの温もりは心地よかったが、かといっていつまでも、そうしているわけにはいかない。
「朝だぞ、起きろ」
「んん~…」
軽く肩を揺するも、ドワーフはバハムーンの胸に頭を摺り寄せ、再び寝息を立て始めた。
「おい、起きろ。もう朝だ。飯の時間だぞ」
「んあ……ああ、バハムーン、おはよ…」
飯、という言葉に反応したのか、眠そうな目を何とか開けるドワーフ。次いで、今度は大口を開けて欠伸をする。鋭い歯が並ぶ口内が、
バハムーンの眼前に広がる。
「その歯を見ると、少しゾッとするものがあるな」
「ん、別に噛むわけじゃねえんだし、いいだろー」
ドワーフは少し体を起こしたが、すぐにまたバハムーンの体にしがみついた。
「……おい、何をしている」
「ん~、その、あんま離れたくねえな、ってさ……へへ」
「やれやれ、朝から何を言ってるんだ」
そう言いつつ、バハムーンの顔も笑っている。バハムーンは体を起こすと、ドワーフを抱き上げてベッドから降りた。
「お、おいおい!何するんだよ!?」
「離れたくないんだろう?だから、こうしてやったまでだ」
「あ、いや、それはその、嬉しいけど……あの、着替えなきゃなんねえから、下ろして…」
「わがままな奴だ」
「それはしょうがねえだろー!できるんだったら、一日中だってああしてたいけどさ…」
ぶつぶつ言いつつ、ドワーフは服を身に着けていく。着替えるとはいえ、二人とも服は着ていない。
「それにしても、お前また筋肉ついたな」
「お、わかる?オレもそろそろ、お前に負けないぐらいにはなったかな、へへ!」
「俺には、まだまだ程遠いぞ。そもそも種族が違うんだ、こればかりは負けられんな」
「ちぇー、絶対いつか抜いてやるからな」
言いながら、ドワーフはパンツを穿き、ズボンに足を通す。続いてシャツを羽織り、上着はまだ着ずに置いておく。

107: ◆BEO9EFkUEQ
10/03/04 00:12:18 auNbT54d
「学科も、僧侶では戦闘向きではないからな。転科を考えてみたらどうだ?戦士とか君主なら、お前には合ってそうだが」
「転科かあ。でも、オレこの学科好きなんだよ」
「ま、そもそも君主になれるかどうか、些かの疑念もあるがな」
バハムーンの言葉に、ドワーフはムッとした顔を向ける。
「……それ、言いっこなしだろー」
「はっはっは、気にするな。何であろうと、お前が俺の彼氏だということは変わらん」
そう言い、バハムーンはまったく反省のない笑顔を向ける。
「ちぇ、いっつもそうやってごまかす」
だが、そう言いつつもドワーフの尻尾はパタパタと振られている。
ともかくも服を着ると、二人は揃ってハニートーストを頬張る。朝は甘い物を、というのがバハムーンのこだわりで、最近はドワーフも
それに倣っている。
「んーで、今日はどこ行くんだ?」
「まだ決めてはいない。最近ずっと探索続きだから、いっそ休みでもいいかと思っているがな」
「何だよ、じゃあ起きなくてよかったじゃねえか」
「まだ決めてはいないと言ってるだろうが。あくまでも、案の一つとしての話だ」
「ん~、たまには、その……ゆっくり、一緒にいたいけどな…」
少し恥ずかしそうに言うドワーフ。それを見て、バハムーンは楽しげな笑顔を浮かべた。
「その意見には、俺も全面的に賛成だ」
「何だよ!じゃあ最初っからそう言えよな!くそー、いちいち言わせやがって…!」
「お前の意見も、尊重しなきゃならんからな。そう愚痴るな」
絶対嘘だ、と言いたいところだったが、確実にうまくはぐらかされるので黙っていた。
食事を終えると、二人は揃って大きな伸びをする。
「しかし、ずっと部屋に篭っているのも良くない。少し購買にでも行くか?」
「あ、そだなー。明日のパンも買いたいしな」
「ついでに、面白い装備でも入っていればいいんだがな」
部屋を出ると、バハムーンがドワーフの肩を抱き寄せる。が、ドワーフはすぐにその腕を振り払う。
「なんだ、嫌か?」
「いつも言ってんだろ!?外ではやめろよ!」
「部屋の中だろうが外だろうが、大した違いはないだろうに」
「全然違うだろうがっ!いいか、とにかく外ではやめろ!」
部屋で二人きりだと、今では自分から甘えるようになったドワーフ。しかし一歩でも外に出ると、相変わらずいつも通りに振舞っている。
そのため、二人の関係が大きく変化していることに気付く生徒はいない。
廊下を歩き、その端にある階段へ向かう。そして階段に差し掛かった瞬間、階段を飛び降りるように走ってきた影がドワーフにぶつかった。
「うわっ!?」
「きゃっ!?」
よろめいたドワーフをバハムーンが支える。
「ドワーフ、大丈夫か?」
「あ、ああ。オレは平気だけど……えっと、大丈夫か?」
相手は小さなクラッズだった。ドワーフの体に吹っ飛ばされ、尻餅をついている。少し捲れたスカートの下からちらりと白い物が見え、
ドワーフは慌てて視線を逸らした。

108: ◆BEO9EFkUEQ
10/03/04 00:12:53 auNbT54d
「痛たた……ご、ごめんね。だいじょ……ぶ…」
そこまで言った口が、二人の姿を見て止まる。『ああ、またか』と、ドワーフは心の中で悲しいため息をついた。
「え、え~~~っと……ほ、ほんとごめんね、あはは、は……じゃ、じゃあ、その、私はここで~…」
「大丈夫なようだな。行くぞ、ドワーフ」
「ちょっ、ちょっと待てよ!引っ張んな!」
何とか留まるドワーフに対し、クラッズは引きつった笑顔を向ける。
「わ、私はほんと、平気だからさ!だから、その、えっと、ほんと、大丈夫だから…」
元々、バハムーンは男子連中から非常に恐れられており、今でも二人に近づく者はいない。女子には被害がないはずなのだが、それでも
さすがに心象が悪すぎるため、彼は女子からも恐れられていた。今では公認の彼氏となったドワーフも、その例外ではない。
「いや、でもさ、なんかすっげえ急いでるみたいだし、何かあったのか?」
「急いでる邪魔をしては悪いだろう。さっさと行くぞ」
「だぁから引っ張んなっ!ったく、お前女にはほんと冷たいのな…」
「男でなければ興味はない」
「男でも興味持つなっ!」
二人のやり取りを、クラッズは苦笑いを浮かべて見ていた。少なくとも、ドワーフの方はさほど警戒しなくてもよさそうな人物だと、
心の中でホッと息をつく。
「えっと、じゃああの、ちょっと聞きたいんだけど、バハムーンの女の子見なかった?」
「って言われてもな……どんな子?」
「え~、こう髪はこのくらいで、無口で内気でポアッとしてて…」
「無口で内気って……そんなバハムーン見たことねえよ…」
「まったくだ。そいつは本当に俺と同じ種族か?」
「だよねぇ……あ~、じゃあやっぱりもう行っちゃってるんだ~…!」
そう言い頭を抱えるクラッズ。さすがに、何か大変なことになっているのだと言うことは、二人にも理解できた。
「どうしたんだ?よければ、話聞くぞ?」
「おいドワーフ…」
「うるせえっ!黙ってろ!」
「えっとね、その子私の友達なんだけど、私寝坊しちゃって……それで、一人で地下道行っちゃったみたいなんだ」
「一人で?どこまで?」
「予定通りなら、たぶんトハス」
「トハス!?」
二人が同時に声を上げた。二人でも楽とは言えないところなのに、一人でそんなところに行くとは何を考えているのか。
「で、でも、一人でそこまで行けるって事は、それなりに力はあるんだろ?」
「だけどあの子、たまに勝手に宝箱開けちゃうんだよぉ~!もし、スタンガスとか死神の鎌とか引っかかったら…!」
「とんでもない女だな。そんな奴、放っておけばいいだろう。一度痛い目に遭えば、嫌でもわかるというものだ」
「それは、そうだけど…!でも、放っておけるわけ、ないじゃない…!」
本気で心配そうな顔をするクラッズに、ドワーフは心の底から同情した。きっと、この性格のせいで苦労しているのだろう。

109: ◆BEO9EFkUEQ
10/03/04 00:13:30 auNbT54d
「でも、君一人じゃ、トハスまで行くのはきついだろ?」
「そう……だけど、でも、逃げ回れば何とかなるし!それに…!」
「いいよ。オレ、一緒に行ってやるよ」
「え?」
「おいおい、ドワーフ…!」
呆れたように話しかけるバハムーンを睨みつけ、ドワーフは続ける。
「一人でも仲間いれば、少しはマシだろ?」
「あの、気持ちは嬉しいけど…」
「いいよ、こいつは。ほっといたって、死にやしねえし」
バハムーンは少し不機嫌そうに、二人のやり取りを聞いている。
「何も初対面の相手に、そこまですることないだろうに」
「じゃあ、お前が俺に会った時はどうだったんだよ!?ったく、お前はいいよ。部屋に戻っててくれ。この子送り届けたら、
すぐ戻るからさ」
「……ほんとに、いいの?」
「いいっていいって。困ったときはお互い様ってね」
クラッズは人懐こい笑顔を浮かべ、頭を下げた。
「ほんと、ありがとう!すっごく助かる!」
「気にするなって。困った女の子放っておくなんて、できねえしな」
そう言い、ドワーフはあてつけがましくバハムーンを睨む。バハムーンは相変わらず不機嫌そうに、二人を見ている。
「じゃ、ちょっと行ってくるから。悪いけど、少し待っててくれな」
バハムーンの脇をすり抜け、二人は階段を降り始める。バハムーンはつまらなそうな顔で、それを見送っていた。
階段を降り、寮のロビーを抜ける。その時、上から大きな声が響いた。
「忘れ物だ!」
二人が見上げた瞬間、巨体が二階の窓から飛び出してきた。そして、着地際に退化した翼を思い切り羽ばたかせ、着地の衝撃を軽減する。
「やっぱ、来てくれたんだな」
そう言い、ドワーフはバハムーンに笑いかけた。が、当のバハムーンはつまらなそうな顔をしている。クラッズの方も、ようやく
離れられたと思った彼が再び現れ、その顔を引きつらせている。
「まったく、何の用意もなしで、どこに行くつもりだったんだ」
装備一式を手渡しながら、バハムーンは実に不機嫌そうな声を出す。
「休んでてもいいんだぜ~?元々はその予定だったんだし」
「やれやれ、お前を放っておけるわけないだろう。ちっ、休みの予定が、とんだ割を食わされたもんだ」
そうぼやく彼に、ドワーフは笑顔を向ける。
「けど、ついて来てくれるんだろ?お前ならそうしてくれると思ったぜ」
「ふん。期待に沿えて光栄だ」
「つ、ついて、来てくれるん……だぁ…。あはは……は…」
引きつった笑顔を向けるクラッズに、バハムーンは蔑むような視線を送る。
「貴様のような下等種族と、こいつだけをトハスなんぞに送り出せるか」
「こいつ、口は悪いけどさ。そんな悪い奴じゃないから、心配しなくていいぜ」
恋人の証言ほど、信用ならないものもない。今では、クラッズの心の中は友達に対する心配より、自分の身に対する心配でいっぱいに
なっていた。

110: ◆BEO9EFkUEQ
10/03/04 00:14:07 auNbT54d
地下道入り口に着くと、ドワーフは重装備に身を包み、ポジショルを唱えた。
「……ん、もうポストL2にいるみたいだな。すぐ追いかければ間に合うかな」
「さっさと追いつくぞ。こんな奴等のために、無駄な時間を食いたくはない」
「だぁから、そういうこと言うなっての!」
「あの……ほんと、ごめんね。でも、ありがとう」
申し訳なさそうに言うクラッズ。だが、バハムーンは彼女を一瞥しただけで、あとは無視を決め込んだ。
「気にすんなって。さて、早く追いつかなきゃいけないのは確かだし、頑張るかー!」
ドワーフが言うと、バハムーンは何も言わずに先頭に立ち、地下道へと歩き出した。二人もすぐに、その後をついて行く。
正直なところ、クラッズは二人にさほどは期待していなかった。自身もそれなりに実力はあり、何よりいつも一緒にいる相方の実力は
飛び抜けたものである。とにかく探索好きで、戦闘も嬉々としてこなす彼女に比べ、この学校でも有数の問題児である二人が、それほどの
実力を持っているとは、とても思えなかったのだ。
が、最初の戦闘から、クラッズは目を見張った。バハムーンもドワーフも、今まで見た中でも相当な実力者である。ドワーフは重装備で
敵の攻撃を弾き返し、相手によって魔法と物理攻撃とを使い分け、的確に回復もこなす。
バハムーンの方は、軽装に素手ながらも敵を一撃で打ち倒し、相手の攻撃など掠りもしない。まして、彼の吐き出すブレスは、彼女の
相方であるバハムーンのものよりも強力だった。
そんな二人と一緒のため、進行は異常に速い。あっという間に地下道を通り抜け、一行はドゥケット岬の中継点に出た。
「ふう。さてと、君の友達は…」
一息つくと、ドワーフはまたポジショルを唱えた。
「……意外と速えな。ポストR2だ」
「ふん。それなりの実力はあるようだな」
「二人とも、すごく強かったんだね。私、こんなに強い人だって思わなかった」
クラッズが正直に言うと、ドワーフは笑った。
「オレはそうでもないって。こいつにくっついてるおかげだよ」
「背中を預けるに値する相手がいなければ、その実力も出せんがな」
そう言って笑う二人を見て、クラッズは少し羨ましくなった。自分の方は、盗賊と戦士という組み合わせであり、戦闘はバハムーンが、
宝箱や扉の鍵は自分がというように役割分担されている。戦闘も少しはこなせるが、背中を預けられたことなど一度もない。
「二人とも、ほんとに信頼しあってるんだね」
「オレの場合、入学してすぐこいつと一緒になったからなー。……でも出会い自体は最悪だったっけな」
ドワーフがいたずらっぽい笑顔を向けると、バハムーンは曖昧な笑顔を返した。
「結果がよければ、過程などどうでもよかろう。さあ、話はこれぐらいにしてさっさと行くぞ。追いかけるこっちが置いていかれては
たまらんからな」
そしてまた、三人は地下道へと入って行った。この地下道の道のりは長く、仕掛けも複雑なものが多いが、三人ともここに来ることは
多い。そもそも、今回は探索が目的ではないため、大して手間取ることもなく、順調に進行していく。
信じられないほど早く地下道を抜け、一行はポストハスにたどり着いた。そしてまた、ドワーフがポジショルを唱える。
「……よし、追いついてきたぞ!トハスL3だ!」
「結構なことだ。さっさと見つけて、さっさと帰るぞ」
ここまで来ると、さすがに敵も強い。バハムーンもたまには攻撃を受けるようになり、クラッズに至っては一撃でかなりの傷を負うことも
あったが、ドワーフの援護のおかげで進行自体には支障をきたしていない。

111: ◆BEO9EFkUEQ
10/03/04 00:14:42 auNbT54d
フロアを移動するごとに、ドワーフはポジショルを唱える。だんだんと両者の距離は縮まっていき、そしてトハス中央に来た時、
ドワーフが叫んだ。
「……よしっ、追いついたぞ!」
「ほんと!?二人とも、付き合わせちゃってごめんね。それと、ここまで送ってくれてありがとう!あとは私、一人で探せるから…」
そう言いかけるクラッズを遮るように、バハムーンが言葉を重ねた。
「ドワーフ、どうせこいつを一人にさせる気はないんだろう?」
バハムーンの言葉に、ドワーフはニッと笑った。
「さすが、よくわかってるよなあ」
「ちっ、そうくるだろうとは思ったが……乗り掛かった船、ということもあるか」
「い、いいよいいよ!?そこまでお世話にならなくたって…!」
クラッズは慌てて言いかけるが、ドワーフは優しく笑う。
「盗賊の君一人じゃ、ここはきついだろ?それに、手分けすれば早く探し出せるしな」
「手分け、か。なるほど、そうすれば早く帰れるな。それじゃあ、俺は向こうを…」
歩き出したバハムーンの背中に、ドワーフが慌てて声をかけた。
「ちょっと待ってくれよ!お前にはこの子と一緒に行ってほしいんだ」
「は…?」
「えええ!?」
バハムーンとクラッズは同時に声を上げ、同時にお互いを見、同時に顔を逸らした。
「俺より、お前が一緒の方がいいんじゃないのか?大体、俺はこんな奴と二人でなど…」
「お前、ヒーリング使えるだろ?それに、お前強いけど魔法には弱いよな。オレは防具も見ての通りだし、いざとなったらバックドアルが
あるし……何よりさ、俺としてはお前がついててくれる方が、安心できるんだよ」
そう言われると、バハムーンも断りにくくなってしまう。ややあって、バハムーンは渋々といった感じで頷いた。
「……仕方ないな。なら、お前の言うとおりにしてやる」
「そ、そっかぁ……ま、まあ、ドワ君がそう言うなら、しょうがないか。あはは…」
クラッズも相当に気が進まない様子だったが、手伝ってもらっている手前、拒否もできない。結局、クラッズとバハムーンは二人で
探索をすることに決まってしまった。
「一応、お互い何かあるといけない。探している奴が見つかろうと見つかるまいと、10分後に一度この入り口で落ち合うぞ」
「ああ、わかった。んじゃ、お前も無理すんなよー」
「ドワ君も気をつけてね。それと……は、早く見つかるといいよね…」
「それはオレの台詞だろ?まあいいけど、君も気をつけてくれよな」
三人は二手に分かれると、それぞれ別の方向へと歩き出した。
ドワーフは一度周囲を見回し、人影がないのを確認すると近くの小部屋に入っていく。ここは非常に見通しが利くため、ざっと見回して
見当たらないのなら、あとは小部屋か、相当遠くにいるかしか考えられない。
たまに出現する敵は、強敵が多い。しかし幸いなことに、ほとんどが闇属性の敵であるため、僧侶であるドワーフとしては戦いやすい
相手である。
そうしていくつかの小部屋を回り、二重構造になっている小部屋に入った時、ドワーフは足を止めた。
入ってすぐ左の空間、メタライトルの光が辛うじて届く場所に、誰かがうずくまっている。その制服はランツレートの物であり、
背中の翼から、種族はバハムーンだとわかる。恐らく、彼女がクラッズの探していた相手だろう。

112: ◆BEO9EFkUEQ
10/03/04 00:15:23 auNbT54d
念のため、驚かせないようにそっと近寄る。ふと見ると、彼女の前には金の箱が置いてあった。それを、彼女はじっと見つめていたのだ。
「……何してるんだ?」
ドワーフが声をかけると、バハムーンは顔を上げた。どことなく内気そうな、いわゆる一般にイメージされるバハムーンとは、随分と
隔たりのある表情だった。
「……箱」
「いや、そりゃ見ればわかるって。お前、まさかそれ開ける気か?」
「……開けてみようかなって思うけど、罠がわかんないから…」
ドワーフは宝箱に向かってサーチルを唱えた。詠唱が完成すると同時に、宝箱に仕掛けられた罠の情報がドワーフの頭に流れ込む。
「……ボムだ。結構強烈だから、開けるのはやめ…」
ドワーフの言葉を終わりまで待たず、バハムーンは何の躊躇いもなく宝箱を開けた。
直後、辺り一面に凄まじい爆音と爆風が巻き起こった。咄嗟に盾で防いだにも関わらず、ドワーフは爆風で数メートルほど
吹き飛ばされる。一方のバハムーンは、腕で顔を庇っただけで、相変わらず宝箱の前に立っている。
「痛っててて…!てめえー!!!何考えてやがんだぁー!?」
中身を取り出そうとしたバハムーンの体が、ビクッと震えた。そんな彼女に、ドワーフは大股で歩み寄る。
「ボムだっつってんだろうが!?どう考えてもオレ巻き込まれるだろ!?てめえ、オレまで殺す気かよ!?」
「……あ」
「『あ』じゃねえだろ!!!」
これは確実だと、ドワーフは確信した。この口調といい、行動といい、クラッズの証言にぴったり一致している。
「にしても、やっぱりお前か!あのなあ、お前友達置いてここ来ただろ!?あのクラッズの女の子!」
「え……クラちゃん、知ってるの…?」
「知ってるも何も、オレ達はそいつ連れてきたんだよ!ああ、今はお前探すために別行動とってるけど……とにかく来てるんだよ。
お前を追って、あの子一人でここに来ようとしてたんだぞ!?あんないい子に、心配掛けさせんじゃねえよ!」
一気にまくしたてるドワーフを、バハムーンはぼんやりした顔で見つめていた
「……お前、聞いてるか?オレの話…」
「うん」
「ほんとかよ…?とにかく、待ち合わせすることになってるから、お前はオレと一緒に来る!いいな?」
「うん。でも、その前に宝箱…」
バハムーンは改めて、宝箱の中身を漁る。中から出てきたのは、何かの素材とがらくただけだった。
「何だろうね、これ…?」
そう言い、嬉しそうに笑うバハムーン。確かにこれは放っておけないなと、ドワーフは頭の隅でクラッズの言葉に納得していた。
「ったく……まあ、ボムに巻き込んだのは許してやるけど、あの子には心配かけたこと、ちゃんと謝れよ」
ぶつぶつ言いつつ、ドワーフはメタヒーラスを唱え、自分と彼女の傷を治療する。そして彼女の前に立ち、さっさと入口に向かって
歩き出した。その後に続き、バハムーンも歩き始める。
「にしても、こんなとこまで本当に一人で来るとか……実力があるのは認めるけど、もうちょっと周りのことも考えてさぁ…」
説教じみたことを言いつつ歩くドワーフの背中を、バハムーンはじっと見つめている。
「大体、勝手にいなくなるなんて最低じゃねえかよ。置手紙したからって、何でもやっていいわけじゃねえだろ?お前だって、あの子の
性格はよくわかってんだろうにさー」
「……ふかふか……小っちゃい……でも男の子…」
ぼそりと、バハムーンが呟いた。
「なのに……んお?何か言ったか?」
「……ううん」
「そうか?じゃあ空耳か…」

113: ◆BEO9EFkUEQ
10/03/04 00:16:02 auNbT54d
意外と早く見つけてしまったため、まだ合流するまでには時間がある。入口に着いた二人は何をするでもなくボーっとしていたが、
やがてドワーフが妙にそわそわし始めた。最初はバハムーンも気にしていなかったのだが、ドワーフの落ち着きはなくなる一方である。
一体どうしたのか尋ねようとした瞬間、ドワーフが一瞬先に口を開いた。
「悪りい、ちょっとオレ外すからさ、お前はここで待っててくれよ」
「……どうしたの?」
「えっと……その……しょ、小便だよ!だから、いいな!?絶対来るなよ!」
そう言い、近くの小部屋の影に向かおうとするドワーフに、バハムーンが声をかける。
「その辺でしちゃえばいいのに…」
彼女の言葉に、ドワーフはビクリと体を震わせた。
「え、ええっと……い、一応女の子の前で、んな真似できるかよっ!」
「一応って…」
「う、うるせえ!言葉の綾だ!とにかく、来るなよ!ほんとに!」
そう言い残して壁の裏に消えるドワーフを、バハムーンはボーっとした顔で見送っていた。
当然、すぐに戻るだろうと思っていたのだが、思ったよりも時間がかかっている。おまけに、辺りのモンスターの気配も濃い。
少し悩んだ後、バハムーンはのそのそとドワーフの消えた方へ歩き出した。これでも一応は、彼女なりに気を使っているのだ。
ドワーフが消えた壁の向こう側に回ると、比較的近くにドワーフがしゃがみ込んでいるのが見えた。
「……おしっこじゃなかったの?」
「えっ!?わっ!?」
突然話しかけられ、ドワーフは大慌てで顔を上げた。
「てっ、てめえ来んなってっ……ちょっ、おい!こっち来んなってば!!!」
「……あれ?」
その時、バハムーンは気づいた。ドワーフの股間には、男にあるべきものが存在していない。そして用の足し方は、女そのものである。
「てめっ……どうして待ってろって…!くそっ、こっち見んな!」
「もしかして……女の子?」
股間を拭き、がちゃがちゃと慌ただしくズボンと腰の鎧を付け直しつつ、ドワーフは彼女の顔を睨んだ。
「うるせえなっ!オレは女じゃねえ!!男だ!!」
「……でも、女の子…」
「うるっせえなあ!!オレは男だったら男なんだよっ!!女じゃねえんだよ!!」
だが、ドワーフの言葉など、既に彼女の耳には入っていなかった。
目の前にいる、小さくてふかふかの毛を持つ、まるでぬいぐるみのような女の子。
――すっごく可愛い…。
クラッズがここに来ていると、ドワーフは言った。『オレ達は』とも言っているので、他にも仲間がいるかもしれない。となると、
近々この小さな子とは別れることになるかもしれない。
――可愛い子……でも、もうすぐお別れ……その前に、一回ぐらい…!
自分を見る目の変化に気付き、ドワーフは思わず後ずさった。
「お……おい、何だよ…?な、何するつもり…」
その言葉が終わるより早く、バハムーンはドワーフを抱きかかえていた。そして、一目散にゲートへと走り出す。
「お、おいっ!?何するんだよっ!?バ、バハムーン!!!助けっ……むぐぅ!?」
叫ぼうとしたドワーフの口を押さえ、彼女はゲートへと飛び込んだ。そして後には、元のようにただ静寂が満ちていた。

114: ◆BEO9EFkUEQ
10/03/04 00:16:36 auNbT54d
ドワーフと別れたバハムーンとクラッズは、黙々と反対側のゲートを目指して歩いていた。クラッズからすれば彼には話しかけ辛く、
バハムーンからすれば彼女とは話したくないのだ。なので、二人の間には非常に気まずい空気が漂っていたが、やがてクラッズが
それに耐えきれなくなった。
「あ、あのぉ~…」
「……なんだ?」
「あの、さ……バハ君って…」
「バハ君だぁ?」
「あっ!?えっと、そのっ!嫌ならその呼び方やめるけど、別に悪気があったわけじゃっ…!」
大慌てで弁解するクラッズに、バハムーンは面倒臭そうな顔を向けた。
「……別に、呼び方など何でも構わん。で、俺がどうした」
何とか許しを得て、クラッズはホッと息をついた。
「あの、別に大したことじゃないけど……何か、その、悪い噂ばっかり聞いてたんだけど…」
「全てではないにしろ、大半が事実だ。否定はしない」
「でも、今のバハ君って……その~、思ったより悪い人じゃないような…」
「女に興味はない。それに…」
そこで一度言葉を切ると、バハムーンは微笑を浮かべた。
「今はあいつがいる。男であっても、他の奴にはさほど興味はない」
本当に、噂ほど悪い人ではないのだろうと、クラッズは思った。彼は確かに問題児なのだろうが、少なくとも悪人ではない。
「と、ゲートか。ここまでの小部屋にも人影はなかったな」
「あれ、ほんとだ。じゃあドワ君、合流できてるかな?」
「あるいは、先に進まれたか、だな。いずれにしろ、一旦戻るとするか」
懐に入れてきたフレンチトーストを齧りつつ、バハムーンは元来た方へ歩き出す。クラッズも小腹が減ってはいたが、さすがにまだ
彼から食べ物をたかろうという気にはなれない。
橋のようになった狭い道を抜け、来るときに通ったゲートへと戻る。見たところ、まだドワーフはいないようだった。
「ドワ君、いないね」
「あいつは一人だからな。少し時間がかかっているんだろう」
特に深く考えず、二人はドワーフを待つことに決めた。しかし、いくら待ってもドワーフが来ることはなく、その気配すら感じられない。
時間が経つごとに、バハムーンの顔は険しくなり、クラッズの顔にも不安が募る。やがて、とうとう約束の時間を過ぎた時、バハムーンが
のそりと動いた。
「いくら何でも遅すぎる。探しに行く。お前はここで待っていろ」
「一人じゃ危ないよ!私も…!」
後に続こうとしたクラッズを、バハムーンはギロリと睨みつけた。
「俺は、あいつからお前を任されている。お前を危険に晒すわけにはいかない。わかったらそこにいろ」
「……わ、わかった、ごめん…」
言葉よりも視線に威圧され、クラッズは足を止めた。それを確認して、バハムーンは歩き出した。

115: ◆BEO9EFkUEQ
10/03/04 00:17:10 auNbT54d
「でも、バハちゃんもどうしたんだろ……もし会ってても、ドワ君男の子だから平気だろうけど…」
そんなクラッズの呟きを背中に感じながら、バハムーンはドワーフを探し始めた。もしもモンスターにやられたのであれば、どこかに
死体が残っているはずだ。あるいはバックドアルで逃げたのならば、ここには何の痕跡も残らない。
できることなら後者であってほしいと思いつつ、バハムーンは近くの小部屋の周囲を見回っていく。その時、足元の壁と床に黒い染みが
あるのを見つけた。その臭いから、どうやらここで誰かが用を足したらしいことはすぐにわかった。
――この染みの付き方……女か。
臭いがあるということは、これはまだ新しいものである。バハムーンはその場にしゃがみ込むと、その染みに軽く触れてみた。
思った通り、まだ僅かに温もりが残っている。となると、ここについ数分前まで誰かがいたのだ。
突然、バハムーンの脳裏にクラッズの呟きが蘇る。直後、バハムーンはゲートへと駆け戻り、驚くクラッズの胸倉を掴み上げた。
「きゃあぁ!?や、やめてぇ!!わわわ、私、女の子だし、バハ君となんかできるわけっ…!」
「答えろ!!貴様、さっきドワーフが男だから平気だと言っていたな!?」
「……へ?」
「なら、もしあいつが女だったらどうなるというんだ!?さっさと答えろ!!」
質問の意図はわからなかったが、彼の目には、はっきりと焦りの色が浮かんでいた。
「え、ええっと……あの子、小さい女の子が好きで……それで、その、その好きっていうのが、バハ君が男の子を好きだっていうのと
同じ意味で……それで、たまに暴走して…」
バハムーンの顔色が、目に見えて変わった。
「そういうことか…!くそ!やっぱりあいつを一人にするんじゃなかった!」
「ちょ、ちょっと待ってバハ君!一体何!?どうしたの!?」
ゲートに飛び込もうとする彼の腕を、クラッズが間一髪で掴んだ。
「貴様の連れにバレたようだ!あいつは男だが女だ!」
「え?な、何それ?どういう意味…?」
「心が男であるだけで、体の方は女だということだ!貴様らにわかりやすく言うなら、あいつは男のふりをした女だ!」
「え……ええええ!?じゃ、じゃあ本当はドワ君じゃなくって、ドワちゃん…!?」
「ここで話してる暇はない!向こうで会わなかった以上、あいつらはこのゲートの先だ!お前はここにいろ!……くそ、ふざけるな…!
あいつに何かあったら、絶対に許さんぞ…!」
「待ってよ!わ、私も行く!バハちゃんのことなら、私にだって責任あるもん!」
ゲートに飛び込むバハムーンの後を追うクラッズ。まったく場違いながら、クラッズはドワーフのためにここまで焦る彼を見て、
ほんの少しだけ、ドワーフが羨ましいと思っていた。

116: ◆BEO9EFkUEQ
10/03/04 00:17:42 auNbT54d
ゲートの先はマップナンバー43番。いくつもの小部屋とダークゾーンの存在するマップである。そんな場所故に、ドワーフをさらった
彼女にとっては好都合だった。ダークゾーンを走り抜け、適当な小部屋に到着すると、バハムーンは部屋の隅にドワーフを下した。
「て、てめえ何しやがるんだよ!?勝手にこんなところまで来やがって…!」
「……君、可愛いから…」
「うるっせえ!可愛いとか言うな!!大体、可愛けりゃ何だって…!」
「……可愛がってあげる」
その目に宿る異様な光に、ドワーフはようやく気付いた。それはかつて、現在の彼氏であるバハムーンに向けられたものと酷似していた。
「お、おい…!ふざけんな…!て、てめえ、それ以上近寄るんじゃねえ!!」
「男の子みたいな言葉遣い……可愛いけど、本当に男の子みたいだよ…?」
「『みたい』じゃなくって、オレは男だっ!女じゃねえっ!」
その言葉に、バハムーンは首を傾げた。
「……でも、女の子だよね?」
「ぐっ……そ、それは、その、体はそうだけど……で、でもオレは男なんだよっ!男だったら男だっ!」
「……女の子なのに?」
「だぁから男だっつってんだろうがっ!体は女でも、男なんだよっ!」
「…………よくわかんないや」
「わかんないで済ませるんじゃねえっ!!!わかれよっ!!!」
しかし、もうバハムーンは考えるのをやめたらしく、ゆっくりとドワーフに迫ってくる。身の危険を感じ、ドワーフはスターダストを
構えた。それでも歩みを止めない彼女に向かい、ドワーフはとうとう本気で攻撃を仕掛けた。
咄嗟に、バハムーンは剣で防ぐ。そして鎖が巻き付いた瞬間、バハムーンは思い切り引っ張った。
「うわっ!?」
ドワーフの手から、スターダストがすっぽ抜ける。それに気を取られた瞬間、バハムーンはあっという間に距離を詰め、ドワーフの
両腕を掴んだ。
「く、くそぉ!放せ!放せよ!!」
「暴れないで。危ないから」
「じゃあやめろって……う、うわあ!」
バハムーンはドワーフの腕を掴んで持ち上げ、片手で器用に腰鎧を剥ぎ取っていく。ドワーフは足をばたつかせて抵抗するものの、
腕だけで吊るされる痛みのため、大した抵抗にならない。
「て、てめえやめろ!もうやめろよ!ふざけんな馬鹿!やめろってば!」
ドワーフの言葉に、バハムーンが耳を貸す気配はない。鎧を剥ぎ取り、さらにズボンを剥ぎ取り、とうとうその手がパンツにかかる。
「よせーっ!やめろ!!やめてくれよ!!もうやめろぉー!!」
「大丈夫、気持ちよくしてあげるから」
「しなくていいからやめろって……うあっ!」
とうとう最後の下着まで剥ぎ取られ、ドワーフは尻尾で股間を隠し、バハムーンを睨みつける。そんなドワーフに構わず、
バハムーンはその尻尾をどかしにかかる。
「よせぇ……み、見るなぁ…!」
「……毛だらけでよくわかんない」
バハムーンは空いている腕でドワーフの片足を上げさせ、ついでに尻尾を掴む。足が上がったおかげで、毛の間に小さな割れ目が
はっきりと見えるようになる。

117: ◆BEO9EFkUEQ
10/03/04 00:18:16 auNbT54d
「畜生…!見るなよぉ…!」
「きれいだね……自分でしたりとか、しないの?」
言いながら、バハムーンは尻尾を放し、そこに指を這わせた。途端に、ドワーフの体がピクッと震える。
「うあっ……やめろ、触るなぁ…!」
そうは言っても、ドワーフの体はバハムーンの刺激に素直に反応し、いくらも触っていないにもかかわらず、そこはじんわりと
湿り気を帯び始める。
「敏感なんだ?思ったより慣れてるみたいだけど……中は、どう?」
全体を優しく撫で、指で割れ目を開かせると、バハムーンはゆっくりと指を入れた。その瞬間、ドワーフの全身がビクンと震えた。
「い、痛ってぇ!やめろっ、もうやめろぉーっ!!」
「きつい……もしかして、初めてなの?」
その感触とドワーフの反応から、まず間違いないようだった。この、ふわふわで小さな女の子が、しかも処女だということに、
バハムーンの胸はいやが上にも高鳴る。
「うう……そこ触るなぁ…!オレは女なんかじゃ…!」
「どうして?気持ちいいのに…」
「だから、さっきから言ってんだろ…!?オレは、女じゃねえ!!」
ドワーフは涙目になりつつ怒鳴るが、バハムーンはやはり首を傾げるだけだった。
「……気持ちいいのに、もったいないよ」
「もったいなくねえからやめろってんだよっ!!いい加減に……あっ!?」
続く言葉を完全に無視し、バハムーンは割れ目に舌を這わせた。
「うああ!やめろぉ!!やめ……んあっ……お、オレは女じゃ……んんっ!」
バハムーンの舌が、優しく秘裂を舐める。襞をなぞり、敏感な突起をつつき、そして中へと侵入する。
「ふあぁっ!?や、やだ……嫌だぁ…!うあっ!も、もうやめて……くれぇ…!」
力なく哀願するも、バハムーンはその声にますます興奮し、舌の動きもそれに従って激しくなる。
「こ、こんな……あうっ!あんっ!……ち、ちくしょぉ…!」
女そのものの喘ぎ声が漏れる。無意識に出た声に、ドワーフは唇を噛む。それと同時に、バハムーンも顔を離した。
「可愛い声……気持ちいいでしょ…?」
「やめ……ろ…!頼むから、もうやめてくれよぉ…!」
言ってから、思わず涙が浮かんだ。これほどまでに自分が女だと思い知らされたことは、今まで一度もない。
「……どうして泣くの?」
「オレは……女じゃ、ねえ…!」
「女の子じゃなかったら、そんなに気持ち良くなれないよ」
彼女としては、特に深く考えずに出た言葉だった。しかしその一言は、ドワーフの心を挫くのに十分な力を持っていた。
「う……うええぇぇ…!」
「……泣かないで。もっと、気持ち良くしてあげるから」

118: ◆BEO9EFkUEQ
10/03/04 00:18:50 auNbT54d
バハムーンは再びドワーフの秘裂を開かせると、そこに舌を這わせる。尖りきった突起を転がすようにつつくと、途端にドワーフの
体が跳ね上がる。
「うああっ!そこは、やめっ…!」
「ここ、好きなんだ…?中の方の気持ちよさも、教えてあげる」
言うなり、バハムーンは敏感な部分にキスをし、ドワーフの中に舌を突き入れた。既にだいぶ昂らされ、さらに体内で舌が動き回るという
未知の快感に、ドワーフの体はガクガクと震えた。
「や、やめろ!!やめろぉ!!うああああ!!!こ、こんなの嫌だぁ!!んあっ……し、舌動かすなぁー!!」
ドワーフは叫び、必死に抵抗しようとするが、強すぎる快感の前にそれも叶わない。
どんどん強くなる、『女』としての快感。恐ろしく不快な快感。自身の秘部から伝わる感覚は、何のごまかしも利かない、純粋な
女としての感覚だった。
頭に白いもやがかかり、体が浮き上がるような感覚を覚える。それが何であるかを悟り、ドワーフは最後の力を振り絞り、叫んだ。
「嫌だぁ!!嫌だぁー!!!こんなのでイきたくねえよぉ!!イきたくない!!やだっ……あ、ああっ!!」
そんなドワーフの顔をちらりと見上げ、バハムーンは笑った。
「無理しないでいいのに……イッちゃえ」
ドワーフの体内でさらに激しく舌を動かし、内側を強く舐め上げる。ドワーフの体が、ビクンと震えた。
「やだ……あ、ぐぅ、あ、ああああぁぁぁぁ!!!!」
一際大きな声で叫び、ドワーフの体が思い切り仰け反る。体は小刻みに震え、しかしその顔には強い絶望の表情が浮かんでいた。
「ああ……あ……ぁ…!」
やがて、その体から力が抜けていく。それと同じくして、堪えきれなくなったかのように、涙が一粒、頬を伝った。
「あぁ……イかされ……たぁ…」
涙声で、ドワーフが呟いた。絶望に打ちひしがれたような、悲しみに満ちた声だった。
そんな様子には微塵も気づかず、バハムーンは顔に付いたドワーフの愛液を舐め、妖艶に笑う。
「ふふ、可愛い……中の気持ちよさ、もっと教えてあげる…。だから、初めて……もらっても、いいよね…?」
ドワーフにとっては、死刑宣告にも等しい言葉。しかしその言葉は、もはやドワーフには届いていなかった。

119: ◆BEO9EFkUEQ
10/03/04 00:19:35 auNbT54d
以上、前半投下終了。
それではこの辺で。

120:名無しさん@ピンキー
10/03/04 07:58:37 hjE1bxhB
GJ!
お久しぶりです!
氏の作品楽しみにしておりました!

121:名無しさん@ピンキー
10/03/05 22:11:55 Z77JTczo
ここにきて男装ドワ子の再登場とか……嬉しすぎて脳内ボイスがわけわかんないことになった

122:名無しさん@ピンキー
10/03/08 11:55:04 qciTaF+G
GJ
久しぶりの氏の作品を堪能させていただきました

123:名無しさん@ピンキー
10/03/09 18:08:09 GY+pejLx
最近普通科ディアボロスがかわいく見えてきた

……おかしいだろうか

124:名無しさん@ピンキー
10/03/09 18:26:56 wpwvf7Au
まったくもって正常です

125: ◆BEO9EFkUEQ
10/03/11 00:21:33 tbv7teIj
こんばんは。それでは前回の続き投下します。
後半は衆道士バハムーンとドワーフになります。

念のため注意としては、♂×♀ですが♂×♂に見えたりします。
なので脳内変換に自信ない人はご注意を。一応前よりは♂×♀っぽいですが。
それでは、楽しんでもらえれば幸いです。

126: ◆BEO9EFkUEQ
10/03/11 00:22:21 tbv7teIj
地下道に戦いの音が響き渡る。モンスターの群れが囲むのは、たった二人の冒険者。
「ぐあっ!」
「バハ君、大丈夫!?」
「くっ……俺のことより、自分を心配していろ!」
一瞬気を抜いたクラッズ目掛け、死霊の戦士が槍を繰り出す。直前に気付いたものの、クラッズはその攻撃を避けきれず、
脇腹に槍が突き刺さった。
「あぐっ……ぁ…!」
「ちっ、これだから下等な種族は…!」
バハムーンが駆け寄り、その槍を蹴り折る。間髪入れず、死霊の戦士にも拳を叩きこみ、急所への一撃で葬り去る。
しかし、バハムーンも決して余裕ではない。既に全身ひどく傷ついており、左目は額からの流血により開けられなくなっている。
「ごめん……私、足引っ張ってる…!」
「今更何を言う。そんなこと、初めからわかっていたことだ」
続いて襲いかかる闘牛の頭の攻撃をかわし、カウンターの貫き手を喉に放つ。
「それより、すぐ治療を…」
「も、もういいよ!このぐらいならまだ戦えるし、バハ君にこれ以上迷惑かけられないよ!」
傷を押さえ、クラッズは何とか立ちあがった。
「もう、8回もヒーリング使ってもらってる!このままじゃ、バハ君がやられちゃうよ!だからお願い、自分の傷を治して!」
その言葉を、バハムーンはつまらなそうに聞いていた。やがて、その顔に不敵な笑みが浮かんだかと思うと、クラッズに手を向けた。
直後、クラッズの傷が見る間に塞がっていった。一瞬何が起こったのかわからなかったが、クラッズはすぐに気付いた。
「バ、バハ君!?どうして私なの!?このままじゃ、バハ君が…!」
「貴様のような下等な種族に心配されるほど、俺は落ちぶれていない。それに…」
次々に襲いかかる敵をカウンターで片づけつつ、バハムーンは言葉を続ける。
「これだけ傷ついていれば、モンスターはひ弱な貴様ではなく、俺を狙う。こっちにとっても好都合だ」
「だからって、そんな…!」
「俺は、あいつに貴様を任された。貴様を守るのが、今の俺の為すべきことだ。あいつの信頼に、俺は応える義務がある」
強い口調で言い切るバハムーンに、クラッズは言葉を失った。
「そして、あいつが今ひどい目に遭っているのなら、俺はあいつを助ける義務がある。それらを放り出して、あいつの恋人が務まるか!」
最後のモンスターを打ち倒し、バハムーンは血に染まった唾を吐き捨てた。
「バハ君…!」
「……だが、もしあいつに何かあったら、貴様も容赦しないぞ…!」
「う……わ、わかってる。と、とにかく早く二人探そ!」
「言われるまでもない!」
戦闘を終えた二人は、戦利品を拾うのもそこそこに、すぐ探索を再開する。ダークゾーンの多いこのフロアは厄介ではあるが、
小部屋によって分けられているため、思ったよりも探索は容易い。
やがて、隅の方にある小部屋の前まで来た時だった。
「嫌だぁ!やめろぉ!それだけは嫌だぁー!!」
中から響く悲鳴。それは明らかにドワーフの声だった。
「ここかぁ!!!」
即座に、バハムーンは扉を蹴破った。直後、二人の目の前に信じられない光景が飛び込んできた。
「バハちゃん!?」
「あ、クラちゃん…!」
ドワーフを押さえつけ、秘裂に指を入れようとしているバハムーンの女の子。ドワーフはもう抵抗する気力もないのか、ぐったりと
して見える。

127: ◆BEO9EFkUEQ
10/03/11 00:22:59 tbv7teIj
「ドワーフ…!」
彼の声に、ドワーフは顔を上げた。
「バハムーン……お、オレ、こいつに……う、うええぇぇん…!」
大粒の涙をこぼし始めるドワーフ。その状況から、バハムーンはドワーフの身に何が起こったのかを悟った。
直後、彼の気配が一変した。
「貴様……覚悟はできてるだろうな…!?」
その目はまるでダークドラゴンのような威圧感を放ち、隣にいるクラッズはおろか、同種族であるはずの彼女でさえも怯えさせた。
「こ、来ないで…!それ以上近寄ったら…!」
咄嗟に、彼女はドワーフを抱きあげ、秘裂に尻尾を押し当てた。
「……ほう、そう来るか」
「ちょっとちょっと、バハちゃん!?何考えて…!」
「だがそれは、俺も同じ真似ができるとわかっての行動か?」
「え……きゃああぁぁ!?」
言うなり、隣のクラッズを抱き上げ、同じように尻尾を押し当てて見せる。
「クラちゃん…!」
「嫌ああぁぁ!ちょっとちょっと、バハちゃん!お願いだからやめてよぉ!!」
「ついでに言うと、俺にあるのは尻尾だけじゃない。こいつの腹が裂けてもいいのか?」
「やっ……無理無理無理ぃ!!お尻とか絶対無理ぃ!!」
「クラちゃん!」
ドワーフを抱き上げたまま、彼女はギリッと歯を鳴らした。
「……ひ、卑怯者!」
「それはお前だ!」
「お前がだろ!」
「先にやったのはバハちゃんでしょ!」
「……あ」
三人同時の突っ込みを受け、彼女はようやくその事実に気付いた。
「え、えっと……で、でも、私はただ、気持ちよくさせてあげただけ…!」
「じゃあどうして、そいつは泣いているんだ?そして、そいつは俺の彼氏だ」
「彼氏…?でも、女の子…」
「体はな。だが、そいつは紛れもなく男だ。それを女として扱った貴様は、そいつを苦しめただけだ」
再び濃くなった殺気に、彼女はどんどん委縮してしまう。
「で……でも、その、私…」
「……は~…」
その時、クラッズが溜め息をついた。そして、なおも言い訳しようとする彼女をキッと睨みつける。
「バ~ハ~ちゃ~ん~!」
「ひっ…!?」
途端に、様子が変わった。その目は完全に怯え、まるで母親に叱られる子供のような顔になっている。
「あのさあ、バハちゃん。状況わかってる?それと自分が何したかわかってる?ねえ、わかってんの?」
「あ、あ、あのっ……あの、えっと…!」
狼狽する彼女を見つめ、クラッズは一瞬、自分を抱えるバハムーンに視線を送った。

128: ◆BEO9EFkUEQ
10/03/11 00:23:43 tbv7teIj
「バハ君、もう大丈夫。ちょっと放して」
「……ああ、わかった」
彼の腕から解放されると、クラッズはずんずん彼女に近づいていく。彼女は彼女で、どんどん後ろに下がっていく。
「あ、あの、ごめんなさい…!この子、放すからぁ…!」
「そんなの、当たり前でしょっ!!」
「ひぅっ!」
ドワーフが解放されても、クラッズはなお詰め寄る。もはや彼女はバハムーンと思えないほどに縮こまっており、その前に仁王立ちする
クラッズの方が大きく見えるほどである。
「一人で勝手にこんなとこまで来て、助けてくれたドワちゃんと…!」
「……『ちゃん』とか言うな…」
ドワーフが、ぼそりと呟いた。
「あ、う……ごめん、ドワ君。とにかくドワ君にも、バハ君にも迷惑かけて、おまけに何、さっきの?バハちゃん、自分が何したか、
ちゃんとわかってる?」
「ご、ごめんなさい!ごめんなさい!も、もうしないよぉ……謝るからぁ…!」
「謝って済む問題じゃないでしょ!!!」
「……貴様等の力関係は、どうにもわからんな…」
後ろで、バハムーンがぼそりと呟いた。
「ごめんなさい……ごめんなさいぃ…!クラちゃん、許してぇ…!」
「……許されると思ってるの?」
吐き捨てるかのような冷たい言葉。クラッズはドワーフを抱き起こすと、彼女を睨みつけた。
「クラちゃんん…!」
すがるように声をかけるが、クラッズは怒りに満ちた目で彼女を睨み返す。
「私だけだったらまだしも、他の人にまで迷惑かけて……バハちゃんがそんな子だったなんて、私思わなかった」
「クラちゃん……お願いだから、許し…」
「バハちゃんなんか、大っ嫌い!」
途端に、彼女は雷に打たれたように立ち竦んだ。やがて、その目には大粒の涙が溢れ、たちまち頬を伝って流れ落ちる。
「う……うええぇぇーん!!」
子供のように泣き出す彼女から視線を逸らし、クラッズは帰還札を取り出した。
「帰ろ、ドワちゃ……ドワ君」
「あ、おい…」
ドワーフが止める間もなく、クラッズは帰還札を使ってしまった。後には、バハムーンの二人組が取り残される。
「あのアマ……俺を忘れて行きやがった…」
もはや怒る気も失せたらしく、呆れたように呟く。そして、今だ泣き続ける彼女に視線を向けた。
「まあ、いい。それより貴様、覚悟はできてるだろうな」
低く、威圧感のある声に、彼女は涙に濡れた顔を上げた。だが、そこに逃げたり抵抗したりしようという意思は感じられない。
「……クラちゃんが……ひっく……あんなに怒ってるの、初めて見た……私、すごく悪い事した…」
まだ涙をこぼしつつ、彼女は続ける。
「ごめんなさい……ぐすっ……君にも、悪い事した……ごめんなさい…!罰は、ちゃんと受ける……ごめんなさい…!」
彼が目の前に迫っても、彼女は動かない。そして、静かに手を振りかざした時、さすがに怖いのか、ギュッと目を瞑った。


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