保健室の死神でエロパロ 入室者1人目at EROPARO
保健室の死神でエロパロ 入室者1人目 - 暇つぶし2ch588:鬼の霍乱 2
10/08/06 01:38:25 W4fVPvIQ
日が暮れた頃を見計らうように、ハデスは部屋を訪れた。
「…わざわざいらっしゃらなくても」
一応出迎えはしたもののあまり顔を見られたくない美徳の気も知らず、大きな手がいつものように
頬を撫でた。
「少しやつれましたね、食べていないんじゃないですか?」
「まだ、微熱があるものですから」
パジャマ姿でいることを恥じるようにただ俯いている美徳の前に、近くのスーパーの袋が突き出
された。
「何がお好きなのか分からなかったものですから、果物や飲み物を見繕って来ました。早く回復
して元気な姿を見せて下さい。では」
体調を慮っているのか、ハデスはそのまま玄関先の会話だけで帰ろうとしている。今の顔を見ら
れたくなかったこともすっかり忘れて、美徳は咄嗟に引き止めた。
「嫌…お帰りにはならないで…」
「美徳さん、熱があるのでしょう?お休みになられていた方がよろしいですよ」
「今の私では、何のおもてなしも出来ませんけど…側にいて欲しいのです」
この数日、美徳には何もなかった。
誰と会話することもなく、ただ体調の回復だけを願いながら横になっているだけの時間が堪らなく
退屈で、いつもの毎日が恋しかった。ハデスの顔を見た途端に、そんな寂しさが一気に噴出して
しまったのだ。
「それでは、しばらくお邪魔をします。でも、きちんと寝ていて下さいね」
さして迷うこともなくハデスがそんな言葉を返したのは、少しは会いたいと思っていてくれたから
なのだろうかと、こんな状態でも余計な期待をしてしまう。

結局、食欲のあまりない美徳の為にと、ハデスは袋の中に入っていた桃や林檎を器用に剥いて
皿に盛った。
「少しでいいから食べた方がいいですよ。それと、この季節に関わらず大量に汗をかくと脱水症状
を起こしやすいので水分も充分に摂って下さい。スポーツドリンクとお茶は冷蔵庫に入れておきま
した。それと、塩分も必要ですから塩飴もここにありますので」
サイドテーブルに果物の皿を置くと、大人しくベッドに横になっている美徳の傍らに腰を降ろす。
「他に、何か食べたいものがあるのでしたら作りますが。ただし、今日のところは消化の良いもの
にして下さいね」
ハデスの態度はあくまでも養護教諭としてのものだ。夏風邪をひいた相手に対してのものだから
それも妥当なのだろう。普段ならそんな素っ気無さに不満を覚えるかも知れないのだが、それほど
嫌な気もしないのはやはり心が弱くなっていたからに違いない。
少しだけ口にした桃は泣きたくなるほど甘かった。

589:鬼の霍乱 3
10/08/06 01:38:57 W4fVPvIQ
「今夜はあなたが眠るまで側にいますよ、いいですね」
額に当てられた手は冷たくて心地良い。それだけで何だか安心出来る。このまま眠ってしまえば
少しは楽になりそうに思えた。
「ありがとう、逸人さん」
「どう致しまして」
額や頬を滑る指の感触が催眠術のように眠気を誘った。子供の頃、初めて風邪で寝込んだ時に
母親に見守られていた懐かしい記憶と重なる。目覚めたら一人になっていたとしても、今夜の
心地良さがあれば平気に思えた。






590:名無しさん@ピンキー
10/08/06 02:25:54 W4fVPvIQ
ついでに今週の小ネタから思いついたこと。

591:金やら銀やらの話
10/08/06 02:26:19 W4fVPvIQ
常伏中2年A組の藤がある朝、遅刻しそうになったので思わず持ち出した箸とご飯茶碗を(中身は
完食済)うっかり通学路のドブ川に落とした時のこと。
突然、そのドブ川が光り出して変なオバ…女神様が現れてこう言った。
『あなたが落としたのは、この金の箸と金のご飯茶碗ですか?』
女神様を見た藤が咄嗟に考えたのは(面倒臭ぇ)だった。大抵こういう場面に遭遇すると、ろくな
ことがないに決まっている。何もないとしても、とりあえず今日は確実に遅刻する。
なのでこう返事をした。
「落としたのはフツーの箸と茶碗だから、そっちにしてくれ」
『では銀の箸と銀のご飯茶碗ですか?』
女神様は藤の言うことなど全然聞いちゃいなかった。というよりも定型通りの受け答えをした方が
この手の話の歴史的にも楽だったからだろう。
「いいから、返してくれるんなら金でも銀でもないフツーの箸と茶碗返せよコラ。そもそも何でドブ
に女神がいんだよ」
トイレに女神様がいるぐらいなので、ドブにいてもおかしくはない。しかし正直者だが面倒臭がり
の藤に鷹揚に対応していた女神様も軽くブチ切れたらしい。
『……分かりました。ではあなたが落としたのはこれで間違いないですね』
そう言い残し、藤が落とした箸とご飯茶碗を置いて消えていった。
しかし、女神様の腹いせなのか箸と茶碗には残念な感じで微妙な金メッキが施されていて、物を
粗末にするなと兄の山蔵からブン殴られたのは言うまでもない。






592:名無しさん@ピンキー
10/08/06 17:22:35 IDl4wIJF

誰か藤と花巻さん頼む

593:名無しさん@ピンキー
10/08/07 00:45:35 K1HF33T/
>>589
GJ!
やっぱハデス×みのりんは良いなぁ……

ところで今週の話から
安田とふるえが偶然街でばったり→ミスター&ミスポジティブで街を楽しく遊覧→色々あって想像がエロ的にぶっ飛んだ2人→ホテルへ
という電波を受信したんだけど形に出来ない……

594:名無しさん@ピンキー
10/08/07 01:21:02 ZRax9AhD
>>593
それ楽しそうでいいな。
書けそうな気がするよ、明日投下する。

595:名無しさん@ピンキー
10/08/07 15:32:12 s9HAb7rs
この暑さなら全裸待機も平気だね
正座して待ってる

596:名無しさん@ピンキー
10/08/07 17:15:50 K1HF33T/
>>594

超ありがとう
俺も全裸で待つわ

597:名無しさん@ピンキー
10/08/07 22:29:06 mXCzpDh/
お前ら、暑くてもポンポンは大事だから腹巻ぐらいしろw
夜中は意外と冷えることがあるぞ

598:名無しさん@ピンキー
10/08/08 03:40:31 ydPc8dxe
書いた。
なんか方向性がおかしくなったけど。

599:ポジティブな夏のエロい二人 1
10/08/08 03:41:31 ydPc8dxe
夏休みに入って一週間ほど経ったとある日。
毎日課された宿題以外は特にすることもなく、暇を持て余していた日暮ふるえは真昼の繁華街
で何となくぶらぶらしていた。
家にいてもそれほど面白くない、出かければきっと何かあるかもと思ったのだが案外それほど
都合良く目的のものが落ちている筈もなく、つまりは街にたむろしているほとんどの人々と同じ
ようにただ漂流している気分を楽しんでいたのだ。
別にそれでも良かった。以前のように何の根拠もなく自分で怖いことを探し出して怯えていたこと
を考えれば、今の方がよっぽど発展的に思える。
コーヒーショップで涼みながら道を往く人々を眺めているだけでも、旺盛なる想像力を刺激されて
面白い。今日もまた、そうして過ごしていくつもりでいた。
「あれ?何してんのこんなトコで」
ぼんやり窓の外を眺めていると、背後で素っ頓狂な声が聞こえた。驚いて振り向くと安田が興奮
したように突っ立っている。
「あ…この間はどうも」
「ここ、座っていいかな。ちょうど混んでいて席がなかったんだよな」
「…どうぞ」
そういえばこの間のお礼はまだ言ってなかったことを思い出して、ふるえは口篭りながら向かい
の席を指した。
「助かったー、サンキュ!」
「い、いえ…」
安田は小脇に抱えていた本の包みをテーブルに置いて、暑いのかぱたぱたと手で顔や胸元を
あおいでいる。涼もうとしたものの座れそうな席にたまたま見知った顔がいたので近寄って来た
だけなのだろう。でも、何となく気が紛れて楽しくなった。
「ちょっと荷物見ててくれないかな、注文して来るんで」
「あ、ええ、どうぞ」
荷物というのはテーブルの上に置いてある本のことだろう。ビニール袋からうっすらと背表紙が
見えるが、まさかエロ本だったりしたらベタだろうなと考えると笑えてきた。エロいのが良いこと
なのかどうかはともかくとして、退屈を知らずに過ごせるのはやはり羨ましい才能だ。
そんなことを考えているうちに、飲み物とベーグルを手にした安田が戻って来る。
「いやー、やっぱ夏休みになるとどこも混むよな」
また、賑やかな空気が蘇った。

600:ポジティブな夏のエロい二人 2
10/08/08 03:42:36 ydPc8dxe
混み合っている店内はとても落ち着ける雰囲気ではなかったが、そこで他愛もないことを話して
いるうちに、いつの間にか二人は打ち解けていた。夏休み明けまで続く退屈を本当は持て余して
いたことも同じで、その流れから近くのカラオケ店に行くことにまで話が落ち着いていた。
それまで誰かとこんな風に一緒にいることなどなかっただけに、ふるえは今日の怒涛の展開に
自分でも驚いていた。これではまるでデートだ。
「さー、何歌おっかなー。やっぱAKY108は外せないよなっ」
コーヒーショップを出てからも、安田は相変わらず呑気にそんなことを言っている。気楽そうな後ろ
姿を眺めているうちに、別に余計なことなど何も考えなくてもいいのだと開き直るような気持ちに
なってきた。どんなことであれ、ポジティブでいる方がいいに決まっている。
「日暮は何歌いたい?」
「えっ?」
「やっぱアイドルかな。何でもリクエストしてくれよ」
「う、うん。ありがとう」
ネガティブだった頃の癖がまだ抜け切らず、口篭ってしまうと突然安田がぐいっと顔を近付けて
きた。
「なに…?」
「今日の服、イケてるじゃん。姫ワンピって奴?可愛いんだからその方が制服より全然いいな」
「あ、りがと」
途端に頬が熱くなって、胸がドキドキしてくる。可愛いなんて言われたのは今まで両親以外には
なかった気がする。ネガティブな自分のままだったら、きっとこんな嬉しいことは聞けなかったの
だろうと思うと、改めて安田が救世主のように見えてきた。
「さっ、あそこ。入ろ入ろ」
安田はふるえの手を握ると、さっさと目的の店を目指して歩き出した。カラオケには慣れてそうな
ところを見ると、いつもヒトカラをしているのだろう。
デートじゃないけど、そう思ってもいいかなとまた頬が熱くなった。

カラオケ店の個室内では安田の独断場だった。
AKY108のヒット曲からアルバムに収録されているようなあまり知らない曲まで、全部きっちりと
振りつきで歌いまくって一人で盛り上がっていた。普通であればそんな姿はひたすら寒いと思う
だけなのだが、あまりにも安田が楽しそうなのでふるえも思わずつられてしまった。
「よし、じゃあ『真夏HANABIガール』は日暮が歌ってくれよ」
「えー、私一回しか聞いたことないよお」
「大丈夫、一緒に歌うからさ」

601:ポジティブな夏のエロい二人 3
10/08/08 03:43:55 ydPc8dxe
エキサイトしきった安田は、画面を見ながらノリノリでふるえの拙い歌い方をサポートというか、
ほとんど邪魔しながらもやっぱりきっちりと最後まで歌いきった。カラオケはこれまであまり経験
がなかったふるえも、こんなに楽しいものだったのかと目から鱗がポロポロ落ちる思いだった。
カラオケに限らず、気の合う相手となら何をしてもきっとこんな風に楽しいのだろう。
ほとんど歌ってもいないのに喉がすっかりカラカラになって、注文したジュースを飲み干しながら
目はずっと安田を追っていた。
知り合う前は色々な噂があったからずっと変な人だと思っていたのに、こうして親しくなってみると
特別変でもエロくもない。いや、エロいのは間違いなくても噂で聞くほどの物凄い奇行があるとは
とても思えない。どこにでもいるごく普通の男子だ。
「あー歌った歌った。日暮」
全曲コンプリートを果たしてようやく休憩を入れる気になったのか、安田は満足しきった顔でどさり
とソファーに座り込んだ。
「え、あ、はいっ」
「好きなの入れて歌っていいよ。俺ばっかじゃ不公平だろ」
「え、でも私音痴だから…」
「んなの気にしてたら俺なんてどうなるよ。それに」
喉を鳴らしてコーラをごくごくと飲んでしまってから、安田は言葉の続きを継いだ。
「いい声してんじゃん」
「そんな…」
今日は一体どうしたというのだろう。今までになかったことばかり、しかも嬉しくて楽しいことが
立て続けに起こっている。また顔が赤くなったふるえの反応が気になったのか、安田が隣に
寄って来た。さっきまで賑やかだった個室内が一転して静まり返る。
「俺、何か悪いこと言った?」
「う、ううん」
「日暮が可愛いからさ、つい悪ノリしちまったかもな」
もう何も言えなくなってしまった。覗き込んでくる顔がとても近くて、顔が熱い。
「キス、していいかな」
だからもう訳も分からなくなって、つい頷いてしまった。そのまま接近してくる顔に目を逸らせなく
て瞼を閉じることも出来ずに唇が重なった。それはほんの少しの間のことで、触れただけだった
けれど紛れもなくふるえにとっては初めてのキスだった。

602:ポジティブな夏のエロい二人 4
10/08/08 03:45:06 ydPc8dxe
室内は静かなままだ。
何かの話で聞いただけだが、密室状態だからとこんな場所でアレとかコレなことをするカップル
もいるらしい。もしかしたら今日ここでそうなってしまうかも知れないと思いながら、ふるえは声も
出ない状態でずっと安田を見ていた。
「…ヤベ」
何故か妙に切羽詰った様子で、安田が声を漏らす。
「なんか最後までヤりたくなったかも」
「……え?」
「いいかな」
「うん、いいよ」
「だよなー、会っていきなりってのはちょっと…って、えええーーー!」
こんなことは当然断られると思っていたのだろう。言い出したのは安田の方なのに面白いほど
動揺していた。
「私いいよ。考え方を変えられたのは安田くんのお陰だし」
「…マジで?」
「うん」
驚きでしばらく目を見張っていた安田は、気を取り直したのかまた近付いて来た。今度こそ最後
までいってしまうかもと感じてはいたが不思議と不安は感じなかった。
「じゃあ、いただきます」
もう一度顔が近付いてくる。期待を込めて目を閉じたその時、室内の電話が鳴った。せっかくの
雰囲気をそがれてがっくりと肩を落とした安田が仕方なさそうに電話を取る。
『そろそろお時間になりますが、延長はなさいますか?』
どうやらフロントからのものだったらしい。もちろん延長はせずに出ることにした。

「さーて、どこに行きますか?」
カラオケ店を出てから、二人ともテンションがおかしくなっていた。いい雰囲気になりかけたところ
で突然寸止めを食らったせいなのだろう。
「それは、やっぱり…」
「だよねー、ホテルとか」
「私、行ったことないよ」
「俺もないけど、何とかなるだろ」
閉じられた室内ならともかく、そんな話題を口にしながら歩いている中学生というのは随分異様
に見えたのだろう。通り過ぎる人々がどことなく遠巻きにしているように思えた。しかし今の二人
にはどうでもいいことだった。

603:ポジティブな夏のエロい二人 5
10/08/08 03:45:43 ydPc8dxe
一番の問題があるとすれば、それは料金のこと。
二人合わせても数千円しか持ち合わせがなく、まずは安いところを探すしかなかった。とはいって
もあまり長いこと中学生同士がホテル街をうろうろするのも格好がつかない。なので一巡りして
ある程度目星をつけてから一番安いホテルに決めようと、周囲の通行人たちが眉を顰めるのにも
気付かずに声高に話し合った。
「じゃ、そういうことで。行こうか」
大体話がまとまったところで、ホテル街へと歩き出そうとした安田の足が止まる。何が起こった
のかと様子を伺ったふるえが見たものは地面にボタボタと垂れ落ちる鼻血だった。
「…大丈夫?」
「じゃ、ないかも…」
興奮していたからなのか、それとも暑いからのぼせたのかは分からないが、とにかく今までエロい
方向に盛り上がっていた気分は一気に萎えた気がした。さすがに血を見るのは穏やかではない。
さすがに今日はもう無理だろう。

結局、事は後日に持ち越しとなったまま実現はされずじまいになっている。
もちろんお互いに携帯番号は交換したものの、その場の勢いがなければ何となく気まずいもの
があって、なかなかあの日の続きについて切り出せない。
お互いに勢いづいてエロい方に突っ走っていたその時がまた来るまで、待っていてもいいかな
とふるえは思っていた。
安田はといえば、エロリストの本領発揮でデリカシーの欠片もなく毎日のように誘ってくるだけ
なのだが。






604:名無しさん@ピンキー
10/08/08 07:57:41 cN3t8qKF
>>598
朝から神降臨しなすった
GJ

605:名無しさん@ピンキー
10/08/08 14:36:36 kGQuyLbQ
>>603
素晴らしいGJ!

606:名無しさん@ピンキー
10/08/09 21:49:32 kUNDb3ce
>>589>>603もGJ!

安田とふるえ、いい組み合わせだな…
ところでここってイラスト貼るのおk?

607:名無しさん@ピンキー
10/08/10 01:42:12 cj7J5cCU
エロパロの趣旨に合ってれば、いいと思う

608:名無しさん@ピンキー
10/08/10 16:58:14 pk88intD
ほけがみ男女はもっと語る場所あってもいいと思うんだ…
ここエロ板だからエロ無しの男女話は気が引けるしさ…

609:名無しさん@ピンキー
10/08/10 21:28:52 VnFzQ32f
男同士の萌え語りも、キャラ語りも、他の作品同様完全に住み分けは出来ている
んだし、男女であればここでもいいと思うよ
てか、そこまで規定を細かくする必要性を感じないし

610:名無しさん@ピンキー
10/08/11 01:12:50 44xO1pNI
今週のような、ものすごくアホなことを、ものすごく真剣に、
それも一大軍事作戦のような勢いで悪ガキどもが行なうというのは
昔、押井守が好んで使った展開だが、個人的には大好きだ。安田偉いw

エロパロ的には、まず男子総がかりで敵の最強の武将(鏑木)を討ち、
その上で大将(みのりちゃん)を仕留める展開に持っていってほしかった。
もちろん性的に。

611:名無しさん@ピンキー
10/08/11 02:04:37 5claF66Z
>>608
スレ立てれば?

612:名無しさん@ピンキー
10/08/11 02:26:49 vDQNWiDX
>>608
既存のスレでは語れないものがあるのなら、スレ立てて思う存分語ってくれ

613:名無しさん@ピンキー
10/08/11 08:28:09 zUd9zlnG
そりゃ正論だが、実際どこに立てるんだ、って話で
週漫に立てりゃすぐ消えるだろうし、だからって漫画サロンじゃ過疎るだろうし
漫画キャラ板なんかに立てたら下手したら凄い荒れそう

614:名無しさん@ピンキー
10/08/11 08:44:23 BPdNW49S
まあ、過疎ると誰もが思ってるから誰も立てないわけであって。
信者わらわらいる漫画とはわけが違う。

615:名無しさん@ピンキー
10/08/11 15:06:58 zE7KP3Vp
まだ現時点じゃ腐人気くらいしか無いからなー
これがもうちょっと人気出ればノマカプ人気も付くんだろうが

616:名無しさん@ピンキー
10/08/11 18:21:58 GPzSeyuN
SS投下を邪魔しない範囲でなら、多少のカプ談義も問題はないと思うがな

617:名無しさん@ピンキー
10/08/12 01:50:11 2IhTaDaR
テス

618:名無しさん@ピンキー
10/08/12 01:53:15 2IhTaDaR
おっ!解けてた

というわけで自分を追い込むために、一週間以内に花巻さんの続きを投下するって宣言
追い込まなくてもこなす美っちゃんはやっぱり凄いよね。

619:名無しさん@ピンキー
10/08/13 11:41:34 LD7MLVHR
本好乙wwwww
楽しみにしてるよー。

620:名無しさん@ピンキー
10/08/13 19:12:08 4gwyn7LC
本好のエロって想像できないな…
春酔も効いてなかったみたいだし

621:名無しさん@ピンキー
10/08/13 21:58:57 sgUA9RGl
z

622:名無しさん@ピンキー
10/08/13 22:14:00 sgUA9RGl
あ、書き込めた。
本好のエロってのも、難易度高いから書き甲斐があるかも。
ただし、今のところ良さげな相手がいないからなあ。

美っちゃんだと板違いになるし。

623:名無しさん@ピンキー
10/08/14 03:46:49 KPxJKRMN
本編が夏でプールで水着だったので、ついエロ魂に火がついてこんなものが
出来た。
生まれ変わりがどうとかってのは、単なる雰囲気作りなのであまり深く考えず
読んで欲しいと思う。

624:夜光人魚 1
10/08/14 03:47:45 KPxJKRMN
「今夜九時、プールに来て頂けますか?」
いきなり切り出した誘いに、携帯の向こうで息を呑む気配がした。
とんでもないことをと思っているのだろう。もちろん美徳も以前ならそんな非常識な振る舞いなど
思いつきもしなかった。言い訳などするつもりもないが、恋が全ての感覚を支配してしまった今、
どうすれば恋うる相手と少しでも長く過ごしていられるか。そればかりが頭の中を占めている。
それだけなのだ。
『あなたはいつも突然ですね』
苦笑する声には柔らかい響きがある。驚き戸惑ってはいながらも、きっと時間通りに来るに違い
ない。
「そうです。お嫌でなければいらして下さい。お待ちしています」
通話を終えても、あの特徴のある優しい声が耳に残っている。思い出すだけで自然と身の内が
熱くなった。
恋に魂が焦げていく。いっそ全てを投げ打ってもいい。
これほどに身を灼くほどの恋をした最初のきっかけがそもそも何であったかは、もう何も思い出せ
ない。それほどに人は一気に気持ちを傾けて溺れていくものなのだろう。

誰にとっても、誰か特別の人がいる。その人は別の時代からやってくる。時間の海を越えて、
天の次元の深みから、あなたと再び一緒になるためにやってくるのだ。

学生時代に読んだ本の一説を不意に思い出す。
その著者はアメリカの精神科医で、患者の治療に退行催眠を使ってみたのがきっかけで生まれ
変わりを研究するようになったという人物だ。
物語としてならとてもドラマティックで面白かったが、それ以上の感想は特に持たなかった。ただ、
死などでは切れない繋がりをもって人は何度でも生まれ変わり、またいつか出会うという奇跡は
素晴らしいと感じた記憶がある。
さすがにハデスと遠い昔に何らかの因縁があるとまで痛いことは考えていない。それでも、次に
また生まれ変わったとしてもやはり同じように出会いたいとは思った。

午後九時の校内に、他の教職員たちは誰も残ってはいなかった。
夜間の定期巡回の時間は決まっている。入口の門は固く閉ざされていて、夏休み中の浮かれた
生徒たちが立ち入ることもない。
調べものがあるからと理由をつけて保健室に残っていたハデスは、備え付けの懐中電灯を片手
に暗い廊下を歩き出した。
程なくして近付いたプールからは密かな水音がする。見れば、暗い水面にゆらゆらと見え隠れ
している人影。

625:夜光人魚 2
10/08/14 03:48:28 KPxJKRMN
「美徳さん」
声をかけると、人影は水中からゆっくり立ち上がった。
「来て、下さったのですね」
「あなたに誘われたのですから、断る訳はないでしょう」
ずっと一人で泳いでいたのだろう、美徳はプールから上がると身を震わせた。真夏とはいえ夜の
プールは水温がぐっと下がっている。泳ぎ疲れたのか、どこかとろりとした眼差しはこの世ならぬ
者のように思える。その姿はまるで永遠なる混沌の海を泳ぎきって、ただひとつの真実として目の
前に現れた人魚のように美しかった。
「どうしても、今夜ここで会いたかったのです…逸人さん」
髪から滴り落ちる水滴を払って嫣然と微笑む美徳が、猫のようにしなやかな動作で腕を回して抱き
ついてきた。間近で見る双眸は妖しく煌いている。
「この間の夏風邪からずっと控えていましたからね。寂しかったのですか?」
「…当たり前じゃないですか。私だけが焦れているようで、それが悔しかったんです」
「それは申し訳ありませんでした」
「逸人さん」
美徳は昼間の溌剌とした様子からは想像も出来ないほど、妖艶な眼差しを向けたままハデスの
手を取って身体に触れさせる。
「私は、綺麗ですか?」
「ええ…今夜のあなたはとてもお綺麗です」
「では」
ハデスの返答に、ふわりと淫蕩な笑みが美しい顔に浮かんだ。濡れて身体にはりついた水着を
両の肩から滑り落とす。途端に薄い布地では収まりきれないほどのはちきれそうな乳房があらわ
になった。
「抱いて下さいますね?」
「もちろんです、美徳さん」
わずかにさざなみの立つ黒い水面を背後にして妖しく微笑むこの女性は、いつも側にいてハデス
自身も見知っている女性に間違いはない。しかし、このような面も持ち合わせていたのはこれまで
知ることがなかった。いや、美徳本人も意識はしていなかっただろう。
ともすれば度を越すほどの真面目さで職務をこなす美徳を、夜の媚態とはいえここまで変えてしま
ったのは紛れもなく自分なのだ。
人を求めながら特定の誰かと深く関わることは避けてきたが為に、心中を察することに疎くなって
しまったのはハデスの不覚だ。けれどそれでも構わずに追ってきたこの女性を愛しいと思わない
筈がない。

626:夜光人魚 3
10/08/14 03:49:17 KPxJKRMN
夏の夜は肌に纏わりつく空気が随分ねっとりとしている。
そんな隠微さが美徳の心を惑わせたのかも知れない。それでも目の前にいるこの男とどうしても
ここで会いたかった。それだけは決して衝動などではない。
「身体が冷たいですね、唇も」
頭の芯が痺れて機能しなくなるほど、長いキスを繰り返してから心配を滲ませる声音でハデスが
囁く。冷たいのは待っている間ずっと泳いでいたからだろう。それなのに身体の奥はどうしようも
ないほどに熱い。唇に触れてくる長い指先を噛むように言葉を刻む。
「私は、とても熱いのです…あなたにもすぐに分かるでしょう」
ハデスの黒いシャツの襟元を、熱を帯び始めた指がなぞった。もどかしくボタンを一つ一つ外して
いき、次第に露出してくる身体のひび割れに舌を這わせる。
「気持ちがいいですか?」
「…よく、分かりません」
「そうですね、まだ始めたばかりですから」
美徳の手は休むことなく、シャツのボタンを全て外し終えてから次はベルトを外しにかかる。固い
バックルに手間取りはしたものの、何とかベルトを緩めてスラックスをくつろげさせた。下着の中
から目的のものを引き出した途端に、ずっと無抵抗だったハデスがためらうように制止させようと
してきた。
「美徳さん、それは…」
「させて下さい、私、今夜は何でも出来る気がするのです」
美徳は床に膝をついて行為を続けた。手に握ったものは既にある程度の硬さがあった。言葉や
態度では伺いにくいことでも、性感にダイレクトに繋がることであればこれが直接教えてくれる。
先端を一度舐め上げてから慈しむように全体を口腔内に含み込むと、さすがに感じ入るものが
違うのかわずかに反応があった。
やはり気持ちが良いのだと嬉しくなって、そのまま知る限りの舌技と手技を尽くして愛撫を続けて
いるうちに、手もなくその一物は見事に反り返るほど硬くそそり勃った。
「ふふっ…」
その成果を間近にして、美徳の微笑は一層妖艶になった。挑むようにハデスを見上げてから豊か
に張り詰めた乳房を両手で押し上げ、勃ち上がったものをその間に挟み込んだ。これにはひどく
驚いたのだろう、男の声が明らかに上擦る。
「…美徳さん、そんなことをしては…」
敏感になっている一物を滑らかな二つの乳房で擦られている感触は、口でするのとはまた違った
快感があるに違いない。辛うじて冷静さを保っていたハデスの様子が変わった。

627:夜光人魚 4
10/08/14 03:49:55 KPxJKRMN
存在を確かめるように何度も髪が撫でられる。
「あなたにそこまでさせるなんて…」
もう美徳にとってお互いに感じ合う行為に一切の抵抗はなかった。傍目にはどれほど淫らなこと
をしているかなど、もうどうでも良かった。思う男が悦んでくれるのであれば、それでどんなことも
してしまえる潔さを知ってしまっている。その先に身も心も蕩けてしまうほどの快感が待ち受けて
いるからだ。
「逸人さん…もっと感じて下さい」
上気した表情で擦り続ける美徳に、切羽詰った声が降ってきた。
「もう、離れた、方が…!」
限界が近いのだろう。乳房に挟まれた一物はひどく熱くなっている。懇願にも似た声を無視して
更に続けるうちに、それは突然大きく震えて勢い良く精を放出した。乳房だけではなく髪や顔に
まで白い飛沫が満遍なく飛び散り、重く流れ落ちた。
「気持ち、良かったのですね」
美しい顔に似つかわしくない淫らな微笑を浮かべながら美徳は呟き、頬に散ったものを指で拭う
とぺろりと舐めた。
「…美味しい」
夢を見ているように微笑む頬に、長い指が滑り落ちる。
「すみません…今夜はあなたにして貰っているばかりですね。すぐに差し上げますから」
「はい、逸人さん。たくさん下さい。私、その為にここにいるのです」
上半身だけ脱いだ水着はそのままにして立ち上がると、やんわりと金網まで追い込まれて抱き
締められた。もう何も考えられなくなりそうで、思わず背中に腕を回して白衣を掴む。
「ぁ…」
水着の端が押し広げられて、まだ触れられてもいなかった敏感な箇所に指が差し入れられる。
既にすっかり蕩けてしまっていることは指先に感じる粘膜の柔らかさと潤みですぐに分かるのだ
ろう。ここまで簡単に快感に陥落する身体に仕立て上げられたことは、誰かの為にある女として
嬉しくも誇らしかった。
もう受け入れるに充分なほど濡れきっている内部を探られることすらもどかしく感じて、無意識に
ねだる声がわずかに掠れる。
「逸人さん、早くいらして下さい…」
股間を探ると再び勃ちかけているものが一気に熱を帯びて硬度を増した。もうすぐこれによって
狂おしく乱されるのだと思うと身体中すべてが疼き出す。髪一本ですら口付けられれば達して
しまいそうなほどだった。

628:夜光人魚 5
10/08/14 03:50:54 KPxJKRMN
「今、差し上げます…美徳さん」
口腔内をひとしきり舌で探られて貪り尽くされた後、熱の篭った言葉が唇を啄ばんだ。そこから
じんわりと甘い痺れが伝わってくる。
「あぁ…ん、早、くっ…」
次第に身体に力が入らなくなって、必死でもたれていた金網に縋りつく。その背後から抱き締め
られて水着を腰に纏わりつかせたまま、熱い塊が押し入ってきた。
「んんっ…!」
待ち続けた刺激を与えられて、快感のあまり背中がしなる。金網に絡ませた指に力を込めなけ
れば、身体が崩れ落ちてしまいそうだった。途切れてしまいそうな正気を懸命に繋いで突き上げ
てくる動きに合わせながらも、時折ずれるタイミングが更なる刺激を呼ぶ。
「…素敵、逸人さん…もっと…」
男の動きに翻弄されてこれ以上ないほどの法悦を感じながら、美徳は滴るように甘い声を落と
して暗くうねる女の奥底へと誘うようにねだる。
思う存分快楽に浸りきって淫らに身悶える姿に誘発されたのか、ハデスは無防備になったまま
ふるふると揺れていた乳房を鷲掴みにしてきた。
「あなたは本当に、素晴らしい人ですね」
耳元で囁かれる低い声が堪らない。金網が軋むほど激しくなっていく動きに目が眩んでしまい
そうで、力が抜けきった右腕を愛しい男の首に絡める。そのまま引き寄せると間近で熱を孕んだ
視線が絡み合った。
「もっと、もっと私を見て下さい…私だけ、こんなに夢中なのは、嫌…」
「そう見えていたのなら、申し訳ありません…けれど、あなただけが僕を」
引き寄せられてバランスを崩しそうな体勢を立て直すように、右足が抱え上げられてぐっと腰が
深く入る。膣の奥の奥までを犯されて、一層掠れた声が上がった。
「ひぁっ…」
「ただの男として混沌から引き摺り出すんです。普通でいることを諦めた僕を」
「あ、ぁ…それは、お嫌なのですか…?」
「いいえ。こうしている時であれば、僕は喜んであなたの望むものになりましょう」
二つの視線が一つとなり、瞼を閉じることも忘れて美徳は差し入れられる舌に夢中で応えて付け
根が痛くなるほど強く絡ませ合った。翻弄される、もう何も考えられなくなって頭が霞む。最初に
望んだ通りの素晴らしい時を過ごしていることが幸せで、知らず知らずに涙が零れた。

629:夜光人魚 6
10/08/14 03:51:46 KPxJKRMN
もうお互いに限界が近い。
内部で擦れ合う粘膜が只ならぬ熱をもたらして、激しい快感を生む。声を上げることすらも忘れ
果てたように最後の追い上げを仕掛ける男と、少しでも長くこの戯れを継続させたい女の吐息
だけが肉を打つ行為の合間に響いていた。
「…や、あああっ!」
唐突に一声叫んで、先に美徳が頂点へと駆け上がってしまう。
反射的に膣内が締め上がって射精を促される前にハデスは一物を引き抜き、咄嗟の難を逃れた
ようだったが、達した直後のことで記憶がブレていてあまり良く覚えてはいなかった。

プールの黒い水面がわずかに波立っていて、生き物のように不気味に見える。
行為を終えても二人はしばらく座り込んだまま動かなかった。
どの恋人たちにとってもそうであるように、夏の夜は殊更離れ難いものがある。誰にも咎められる
ことのないまま恋をする危うさが美徳にもやはりある。一切脇目も振らず相手のことだけしか見え
ずに突っ走るこの逸る心の暴走は、果たしてどう思われているのだろう。
今になって後悔めいたものを感じ始めた美徳の身体を、白衣が包んだ。隣でハデスが穏やかに
微笑んでいる。
「あなたは、あなたのままが一番なのです」
「逸人さん」
抱き寄せられるままに身を預けると、それまでになかった充足感が心の中に波のように満ちて
きた。さすがに疲れを覚えて目を閉じる。
生まれ変わりは今でもそれほど信じてはいない。けれどこの男との縁は今生で終わらせたくは
なかった。それが執着というものであるなら、どんなものにでもなろう。
今の人生で女として生まれたのはまさしくこの男と出会う為だったのだと、美徳は肩を抱かれな
がら小さく笑った。


誰にとっても、誰か特別の人がいる。その人は別の時代からやってくる。時間の海を越えて、
天の次元の深みから、あなたと再び一緒になるためにやってくるのだ。

―ブライアン・L・ワイス






630:名無しさん@ピンキー
10/08/14 11:08:51 3EguEBXF
GJ!

きれいでエロくてドキドキした~
最後ちゃんと抜けるハデス先生の
冷静さがなんだかニクいw

631:名無しさん@ピンキー
10/08/15 01:22:33 66zg98fa
GJ!
みのりちゃんをどう思っているのか、今までよく分からなかったけど
それなりの気持ちはあるんだろうな

632:名無しさん@ピンキー
10/08/17 21:17:14 2zWkf74C
先生は温泉好きか、ニヤリ

633:名無しさん@ピンキー
10/08/18 01:34:02 Dx6BJOUc
例の聖地でみのりちゃんがヤラれまくってる本探したけど、案外ないもんだな
思ったほど買えなかった

634:名無しさん@ピンキー
10/08/18 13:02:05 BmKicj2v
自分は2サークルしか見つけられなかったけど他にもあった?

635:名無しさん@ピンキー
10/08/19 01:23:14 kYeK54Mn
いや、やっぱサークルは2つしか分からなかった

636:名無しさん@ピンキー
10/08/20 01:41:55 SYjT2Rjq
まにあった!
このままにげたんじゃあ かっこわるいままれきしに のこっちまうからな!


間に合ってません。
約一時間四十分遅れで>>506の続きを投下します

637:名無しさん@ピンキー
10/08/20 01:43:18 SYjT2Rjq
「花巻さんは、ここによく来るの?」
「えっ!?う、ううん!初めてで…ごめんなさい、気に入らなかったかな…」
「あ、いやそういうことじゃなくて…。凄い良いお店だと思うよ」
(良かった…!!)心の底から安堵したようで、美玖はほっと息をついた。店内
に流れるコーヒーの香りと、穏やかな音楽にようやく気がついた。今の今まで
頭が真っ白だったのだ。湯気が薄くなってきたコーヒーにやっと口を付けた。
砂糖も何も入れていない事に気がついたのは、口に充分含んでからだった。

「もう夕方だね」
入店してから数時間、ハプニングが立て続けに起こり、店を出てみればすっか
り空が燃えていた。
「ご、ごめんなさい!私のせいで」
「ううん、楽しかったよ」
それでもアシタバに無理をさせている気がしてならなかった。心が重くなる。
「また…」
「?」
「また、二人で来ない?」
全ての音がやんだ。
美玖の意識は、必死に落ち着きを保とうとするアシタバにのみ向けられていた。
「二人、で…?」
「う…うん。駄目…かな?」
「ううん…!!アシタバ君からそんなこと言ってもらえるなんて…」
(多分、アシタバ君もきっと…私のこと…)
らしくもなく自信があったが、アシタバの心を聞くのを恐れた。嫌われたくな
い。そんな気持ちが先立って、少女に二の足を踏ませていた。
千載一遇の好機だ。血が出るほど握りしめて、意を決した。
「じ、じゃあ。また明日、学校で」
「あ、アシタバ君!!」
自分でも信じられないほど大きな声が出た。アシタバが驚くのも仕方ない。
「…今日はありがとう」
転ぶように
踏み出した一歩。ファーストキスはコーヒーの香りがしたが、苦いとは感じな
かった。走り去る美玖を呆然と見つめたアシタバはその場でしばらく立ち尽く
していた。

638:名無しさん@ピンキー
10/08/20 01:44:04 SYjT2Rjq
「あっ…おはよう」
「!お、お、おはよう」
翌日、顔を合わせる事も出来ない二人を、見た人間は大きく三つに別れた。
勘繰る者・まさかあの二人が、と信じぬ者・他人事ながら応援したくなる者で
あった。残念ながら擁護教諭はこの三つに属さぬ「何も分からぬ者」であった
が、彼に恋する鏑木真哉は「応援したくなる者」だった。
「アシタバ君」
「どうしたのシンヤ?」
「ちょっと話が…」
昼休み、いつものように保健室でたむろするアシタバに真哉が話しかけた。
「どうしたの?そんな改まって」
「い、いや。あのあんまり人に聞かれたくない…って、私がじゃなくて…えっ
と…その方がアシタバ君の身のためだよ?」
「何言ってんの!?」
「い、いいから!!」
肩が抜けるほど力強く腕を引っ張られ、アシタバは倒れそうになりながら保健
室を抜けた。
「な、何!?」
わざわざ体育倉庫の裏まで走らされたアシタバは、膝に手をつき大粒の汗を浮
かべている。
「アシタバ君と花巻さんって、図書委員で一緒だったよね?」
「えっ?う、うん…」
美玖の事を聞かれると、昨日の事で頭がいっぱいになり、アシタバは酷く動揺
した。
「な、な、仲良いの?ほ、ほら私花巻さんとあんまり喋ったことないから…ア
シタバ君から聞いといたら話しやすいかな~ってね?」
「僕と花巻さんが!?ど、どうかな…」
「図書委員って休日も一緒に活動するから、結構…つ、付き合ったりしちゃう
って聞いたけどな~」
えらく不自然に真哉は話題を変えていったが、動揺しているアシタバはそれに
気づけず、完全に真哉のペースに飲まれていた。
「んな、なに言ってんのさ!?」
「いや~アシタバ君と花巻さんって似たところあるからさ~気が合ったりする
んじゃないかなぁってね」
余裕が生まれたのか、真哉は悪戯っぽく笑ってみせた。ご自慢の冷静さも欠い
てアシタバは目を走らせる。
「誰にも話さないからさ…デートとかしたの?」「そ、そんな訳……」『無い』
と言って良いのだろうか。アシタバは喉元まで迫った言葉を馬鹿正直に押し返
した。昨日の喫茶店での時間は、紛れも無くデートではないのか。
「……したの?」
「ふ、二人で…喫茶店に入っただけ…うん。それだけ…」
「キ、キ……キスは?」
「………」
「したの?」
「…」
「した…のね?」
ごまかしきれない。アシタバは一度小さく頷いた。

639:名無しさん@ピンキー
10/08/20 01:46:28 SYjT2Rjq
三ヶ月ほど経った日のこと-


「ん…」
美玖がアシタバにすがりつくように寄りかかる。重ねた唇が、ゆっくりと離れ
る。アシタバは真っ赤になった美玖の頬に手を添えた。
誰もいないからと言って、保健室でこんなことをしているのは、我ながら異常
だと、こんな時でも幸か不幸か明晰な脳は自嘲気味に考えた。
「もう、一回…いい?」
「うん…」
頭が蕩けたように現実味がない。布の擦れる音は、二人の服が奏でているのだ
ろう。密着し、抱きしめて、求めあった。
なんでこんなことになっているのか。もう当人たちでもわからない。
「好き」
そう言ってもらえるのが嬉しくて、美玖は彼の胸に顔を押し付けて泣いた。
「アシタバ君…」
「うん…」
「する…の…?」
何を-
そんなことは言葉に出せるわけもない。
「だめ、かな?」
ダメなわけがない。初めて好きになった男から求められているのは心から嬉し
かった。ただ、少しだけ…
「怖い…」
のだ。
「大丈夫だよ」
彼は強がっている。それは普段の彼を見て入れば簡単に分かる。瞳も震えてい
るし、背中を抑えるアシタバの腕は力んでいた。それでも、こんなことを言っ
てもらえると、不思議と安心感がこみ上げてきて、美玖は身を委ねようと決心
がついた。
「うん…アシタバくんのこと信じてるから」
服がまくられ、冷たい感覚が生々しい。美玖はぎゅっと目をつむって待った。
アシタバの荒くなる息が聞こえて、こちらまで鼓動が早くなる。
前戯などしらぬ稚拙な情交であったが、美玖の秘所は確実に濡れていった。
「アシタバ君…」
「…何?」
「私も好き」
今言う事なのかはわからない。どうしても伝えたくなって、言葉を抑えること
が出来ない。
「僕もだよ」
目を開いて、もう一度キスをすると、どちらが言うでもなく、アシタバはズボ
ンを引き下ろした。
「じゃあ…」
「うん」
今日自分は女になるのだ。美玖はアシタバの手を強く握った。


640:名無しさん@ピンキー
10/08/20 01:49:54 SYjT2Rjq
痛い。
深く入り込んでくるアシタバのモノは異物感の塊であったし、純潔の証
はこんな時にひどい痛みを与えた。
「っつふ…」
「無理しないで。み、美玖ちゃん」
「いいの、続けて…」
下の名で呼ばれるのは、くすぐったいがやはりうれしい。不快感以上につなが
った喜びに涙が頬を伝う。そして、純粋に気持ちいという感覚。
「ねぇ…」
「どうしたの?」
「ありがとう」
それだけいうと美玖はこみ上げてくる快感に体をよじらせた。……
………
「すごいこと…しちゃったね…」
「う、うん…」
あれほどまでに頼れる男だったアシタバも、あれほどまでに女としての悦び
を甘受していた美玖が、そろって真っ赤になりながら、保健室のシーツを直
していた。
―がらっ…!―
「ひゃい!!」
「あれ?アシタバ君に花巻さん。どうしたの?」
「ハ、ハデス先生!?」
「ど、ど、ど、どうして…」
「どうしてって…ここは保健室なんだけど…えっと、二人は何を?」
二人して額に汗を浮かべながらベットメイキングにいそしむ様を、ハデスは
凝視した。バレたとしても、この男なら
「はっ!ま、まさか…!!」
「ひぃ…!」
「藤君が使ったベットを綺麗にしていてくれたの!?」
この学校の養護教諭が、とことん鈍くて本当に良かった。このときばかりは
おとなしく優等生な二人も、教員の鈍感さを利用しつくそうと目で合図を送っ
て結託した。


「ふむ…今日のことで、随分と互いの呼吸を心得たか」
優位に立つ二人よりもさらに上、魔性の女が笑っていたのは、誰ひとりとして
知らない。

641:名無しさん@ピンキー
10/08/20 01:54:12 SYjT2Rjq
以上です。
かなり時間がかかってしまった。
では

642:名無しさん@ピンキー
10/08/20 22:43:46 H+vHynj8
>>641
GJです本好くん!!
本屋さんの話の影響で前から明日葉×花巻のラブイチャ見たかっただけに余計続きが楽しみになるぜ。

643:名無しさん@ピンキー
10/08/21 18:46:20 yZikO4Wa
GJ
この2人かわいすぎてニヤニヤしてしまった自分きもい

644:名無しさん@ピンキー
10/08/22 12:25:14 tH2dE7n2
アシタバはシンヤ呼びしない
サブメインキャラでシンヤ呼びするのはみっちゃんだけ

645:名無しさん@ピンキー
10/08/22 20:13:58 WsffPang
>>641
投下お疲れ様
GJ!

646:名無しさん@ピンキー
10/08/23 17:22:34 8mikiCsd
てすてす

647:名無しさん@ピンキー
10/08/24 05:15:17 Fw+TWjKQ
しおりちゃん再登場記念上げ

648:名無しさん@ピンキー
10/08/24 20:42:45 KVi1Zelb
じゃあアシタバでガッチュンガッチュンするのを

649:名無しさん@ピンキー
10/08/25 19:55:41 5AhAaMp6
今週の扉絵いいなすごく萌えた
浴衣でグループデートとかウマーだろ

個人的には小動物コンビのデートを再び見たい

650:名無しさん@ピンキー
10/08/25 23:45:30 cd6ksf24
アシタバが奥で赤面してるのが意味深だ

651:名無しさん@ピンキー
10/08/26 07:43:15 /U2d51Ey
扉絵の藤が花巻さんを見てるように見えた

652:名無しさん@ピンキー
10/08/26 19:12:09 3QnIH6ew
>>650
「ゆ、浴衣の下って下着つけないんだよね? つまり花巻さんも鏑木さんも
 今はノーパ・・・うあわわわ、鼻血が!」
こんなところだろうなw

653:名無しさん@ピンキー
10/08/27 00:43:50 pM1a7sAO
むしろ美っちゃんがそういうことを考えてそうな

654:名無しさん@ピンキー
10/08/27 02:49:15 pM1a7sAO
ちっこいネタが降ってきたので書いた。エロは入れられなかった。

655:夏祭り小景
10/08/27 02:49:41 pM1a7sAO
夏祭りは楽しい。
いや、楽しかった。
子供の頃は両親が連れて行ってくれるのが嬉しくて、指折り数えて待っていた。
そんな時期を過ぎた今はといえば、一人で大通りを往く御神輿や屋台を眺めたりして、やっぱり
それなりには楽しいと思う。幼い頃のワクワク感は特別のものがあるとしても。

今夜、花巻は一人で夏祭りに来ていた。母親が着付けてくれた浴衣は帯が苦しいけれど、今年
デパートで見つけて買って貰った浴衣を着られる喜びがある。特別の日に着るものを着て、普段
の静けさとは打って変わった賑わいを見せる神社の境内を何とはなしに歩いているだけでも、
心が浮き立つのを感じている。
わたあめやいか焼きを食べて、屋台でおもちゃの指輪を買って、金魚すくいをして。
結局、金魚は全然すくえなかったけど、一匹サービスで貰ったので手元ではビニール袋に入った
赤い金魚がすいすい泳いでいる。
「明日、金魚ばち買おうっと。他に必要なものあるかな」
楽しそうに行き交う浴衣姿の人々の中にいて、花巻は小さな金魚 に見入っていた。二時間ほど
ぶらぶらしながら屋台を冷やかしていたので、そろそろ帰ろうかなと思っていた頃。
「あれ、花巻じゃん」
後ろから声をかけられた。
聞き間違える筈もない、この声は藤だ。偶然にしてもこの人込みの中から見つけてくれたのかと
嬉しくなって振り向くと、思わず声を上げそうになった。
「…っ!」
「そんな驚くかぁ?」
甚平姿の藤は狐のお面を被っていた。花巻を見かけたので、ただの悪ふざけのつもりだったの
だろう。
「…ごめんなさい」
うっかり取り落としそうになった金魚入りのビニール袋をしっかりと握って、花巻は思わずぺこりと
頭を下げた。せっかくこんなところで会えたのに、変な反応をしてしまって気を悪くしたのかなと
思ってしまったのだ。
「謝ることなんか、ねーよ」
狐面を取った藤は、相変わらず見蕩れてしまうほど秀麗だった。

656:夏祭り小景 二
10/08/27 02:50:20 pM1a7sAO
「一人で来てたのか?」
「う、ん…藤くんは?」
「ハゲとハゲの娘と一緒だったんだけど、はぐれちまった」
「??あ、そ…そう」
何を言っているのかは良く分からなかったが、とにかく藤は一人ではなさそうだ。少しがっかり
した気持ちを押し隠して、花巻は無理矢理会話を繋ぐ。
「じゃあ探さないと。はぐれたままじゃ困るでしょ」
「…いやー、別に。あいつらなら、先に帰ってるだろ。いつものことだし」
藤の方は、他人事のように飄々として全く意に介していない。それでも、と気が逸ってしまった
花巻の手を取ると強く握ってきた。
「今は俺も一人だから、同じだ。それに」
にっと邪気もなく笑いかけられて、途端に心臓が跳ねる。元々付き合えるとは思ってもいないの
だが、やっぱりこうして接していると心が弾む。
「こんなトコに一人でいると、誰かに連れ去られるぞ」
「…えっ」
そのまま手を引かれて、二人は人気のない木陰へと歩を進める。これから一体どうなってしまう
のかは考えないことにした。それがこんな夜には相応しいと思えた。
その後の出来事は、一匹の金魚だけが知ること。






657:名無しさん@ピンキー
10/08/30 01:06:43 wyqKz3lh
やっと書き込めるようになった
遅ればせながらGJ

658:名無しさん@ピンキー
10/08/30 02:18:25 CCUCb79a
藤と花巻さんやっぱいいな
乙です

659:名無しさん@ピンキー
10/09/04 11:01:17 7d4jNsdz
花巻兄がなかなかの良キャラだったので、何か書いてみたい

660:名無しさん@ピンキー
10/09/04 22:42:54 AfB+P4Ea
>>659
オナヌーしている最中に妹の悲鳴を聞きつけ、下半身むき出しのまま
駆けつけてみると、妹もオナヌー中。しかもペットボトルがアソコから
抜けなくなってしまっていた。
「待ってろ、今助けてやる!」と駆け寄ろうとするも、つまづいて
妹に抱きついてしまい、その勢いで顔射


くらいのことはありうると思う。あのドジっ子兄妹ならw

661:名無しさん@ピンキー
10/09/05 00:13:08 u+JJmnXc
それはさすがに無理だわww

662:名無しさん@ピンキー
10/09/06 22:28:40 FNAIMIx6
こういうスレもあるんだ
藤シンお願いします
なんだかんだでけっこうフラグはあると思うんだよね

663:名無しさん@ピンキー
10/09/07 00:42:07 fP6guI9X
何度か書き込んでいる例の人か?
ネタが気に入ったらすぐに書いてくれる職人さんもスルーしてるんだから、
君が自分で書いたらどうだろう

664:名無しさん@ピンキー
10/09/07 12:27:38 uAsS9HN/
ところで藤とシンヤのフラグってあったっけ?
そりゃメインキャラ同士だからそれなりに接触はあるだろうが、藤自身は女とも
思ってないような気がする

665:名無しさん@ピンキー
10/09/07 12:40:40 l8RtZpUv
シンヤに関してはアシタバかリュウキか弟の方がフラグあるかも
藤に関しては花巻さんが藤用のキャラだと思ってるが

666:名無しさん@ピンキー
10/09/07 13:21:17 oDTQwSOx
ま、エロパロ板だし、何でもありでしょう。
周りがだらしないので、男らしい美作に惹かれるとか、
それに嫉妬した本好に監禁陵辱されるとか。

667:名無しさん@ピンキー
10/09/07 16:34:46 XrQ2X771
藤花も藤シンも大好物です

668:名無しさん@ピンキー
10/09/08 03:10:27 iPsXPTsp
結局男に萌えてる感じが何とも

669:名無しさん@ピンキー
10/09/08 06:17:45 OlLGtNhl
んなこたあない

670:名無しさん@ピンキー
10/09/08 14:49:12 9kIbhso3
>>659
兄が風呂に入ろうとバスルームへ行ったら全裸か半裸もしくは下着姿の妹に遭遇
この兄妹なら日常茶飯事でやってそうだw

671:名無しさん@ピンキー
10/09/09 02:29:54 ty+YFNPu
山蔵は学生パパなんだな。奥さんも同年代くらいかな
保健は十代後半女性が薄いから登場楽しみ
名前だけでも出てくれ

政略結婚でこども有り
夫(ああ見えて)大学生
家は老舗料亭(=布団派)
とかわくわくする設定だわ
ハゲ意外と他人にも情に厚そうだし元彼女と別れて結婚→子作りの過程で色々煩悶してそうで良い

672:名無しさん@ピンキー
10/09/09 18:45:35 xMyvOeDk
藤と花巻で1日嶺々の世話する話こないかな
最後に山蔵の嫁も出れば尚良し

673:名無しさん@ピンキー
10/09/10 01:54:04 nEVydq+x
花巻が藤の屋敷上がって無事でいられるわけがない
(罠除けあるとはいえ嶺々は小さいのによくあの罠だらけ平気だな)

まぁ花巻だから怪我でなくラッキースケベか

674:名無しさん@ピンキー
10/09/11 00:24:42 HCZy1u9H
飛んできた弓矢がスカートに刺さって、俯せで腰突き上げた状態でパンツめくれまま動けなくなっちゃうんだな

675:名無しさん@ピンキー
10/09/11 03:19:16 xwX86Uvv
通り魔に犯されるとかで充分だよ

676:名無しさん@ピンキー
10/09/11 11:25:38 lAIvVqIZ
>>675
それはさすがに気の毒だけど、似た感じでなら書けるから今夜投下する。

677:名無しさん@ピンキー
10/09/11 12:20:52 fY5HV0MU
>>676
全裸体育座りで待機しとく

678:名無しさん@ピンキー
10/09/12 04:42:14 6kuVYOyi
書いた。
なんかエロくならなかった。
>>45でグダってた時に書きかけて、そのまま中断していたものを再利用した。

679:恐怖の降る街 1
10/09/12 04:43:44 6kuVYOyi
どこまでも、どこまでも。
何かが追いかけてくる気配を感じて、花巻は必死で帰宅の足を早めた。なのに街は陰湿に
ゆうらりと陽炎の如く揺らめくばかりで怪しい何者かからの距離を広げてはくれない。いつもなら
あと少しで家の灯りが見えるというのに、目の前に広がるのは虚無のように暗く果てしのない
景色だ。
怖い、怖い、怖い!
息を切らして走り出そうとしても、その足は逆に動きを止めてしまった。
どうして、怖い!
叫びたいほどの恐怖に身が竦んでしまう。

そこで全てがドラマの終わりのように途切れてしまった。
額にじっとりと嫌な汗をかいていて、不愉快な気分ばかりが長いことねっとりと糸を引いている。
こんな嫌な目覚めはこれまで経験したことがなかった。
「夢…かあ」
気持ちの悪い嫌な夢だ。だが、同じ夢をこの三日ばかりずっと見続けているのは何かの因縁で
でもあるように感じていた。このまま放置していたらあの恐怖が現実になりそうで、不安で仕方
ない。けれどどうして良いものか全く分からないままだ。

「…確かに顔色が良くないけど、どうしたの?花巻さん」
最近ようやく怖いと思わなくなった保健室で、養護教諭のハデスが心配そうに顔を覗き込んで
くる。
「最近あまり眠れてなくて…でも大丈夫ですから」
「そう?でも」
「…ご心配をお掛けしました。でもホントに大丈夫なんです。ありがとうございました…」
あまり眠れていないのは正直キツい。本当は少しこのまま眠ってしまいたいところだが、またあの
夢を見てしまうのは嫌だ。けれど人に心配させてしまうのはとても心苦しい。こんな性格が過剰に
ブロックをかけて余計に花巻自身を追い詰めていく。
なのに、花巻本人が何一つ気付かないまま事態は深刻化していくことになる。

680:恐怖の降る街 2
10/09/12 04:44:36 6kuVYOyi
また追いかけられている。
何度か同じ目に遭ったことで、あの夢の続きがまた再開しているのだとはっきり知覚はしていた。
ノートを抱き締めて花巻は恐怖に襲われながらも、本能的に少しでも灯りのある方へと近付いて
いく。追いかけてくるのが何者かは分からない。
そして、何故逃れようとしているのかも。
ただ、逃げなければならないことだけが頭の中を占めている。その思いだけが恐怖で竦む気力を
奮い立たせて足を進ませるのだ。息を切らして暗がりの道を早足で進む花巻は、どこまでも一人
きりのままだ。
もうすぐ、住宅街に入る。
そう思った瞬間、背後の何者かとの距離が縮まったことを忘れてしまう。
「あ…ぁっ」
わずかな油断が隙を作った。足元も見えない闇の中、何かに足を掬われて花巻はあえなく転んで
しまった。途端にどこから湧いたのか知れない何者かが無数に襲い掛かってきた。形も知れない、
顔も知れない者たちは意思のない人形のように、てんでに動き回る。
「い、いやぁああっ!!」
怯えきってもう逃げることも忘れてしまった花巻の身体を何者かの手が這い回り、纏うものを引き
剥がしていく。怖くて、嫌で仕方がないのにここから逃れるすべなどなかった。これから何をされ
ようとしているのか、考えることなどおぞましいだけだ。
そんな目に遭うぐらいならいっそ死んだ方がましなのに、それすらも遮られる。
「お願い…やめて、やめてよお…」
弱々しくも必死に懇願する声に構うこともなく、闇が具現化したような者たちは花巻の最も敏感で
薄く形作られた部分に触れ、強引にこじ開けた。

「…っ」
夢が、唐突にまた終わった。
カーテンの隙間から漏れる明るい光がいつもの現実に戻してくれる。しかし心は日に日に重くなる
ばかりだ。
毎日毎日、黒く悪い夢が断続的に続いていく。次に眠り込んだら、もうこの世界に戻れないような
気がして怖くて仕方がない。
なのに、誰にもこんなことは話せなかった。家族にすらも。

681:恐怖の降る街 3
10/09/12 04:45:29 6kuVYOyi
「花巻さん」
体育の時間、あまりにも気分が悪そうに見えたのだろう。体育教師の才崎が呼び止めた。
「あなた、もう無理はしなくていいから保健室に行ってらっしゃい」
「あ、でも…」
「そんな真っ青な顔して、何言ってるの。倒れてからじゃ遅いのよ」
促されるまま、また保健室に行く羽目になってしまう。昨日よりも顔色が悪いと傍目からも分かる
のなら、ハデスはもっと心配をするだろう。しばらく保健室で休むように言うかも知れない。だが、
今の花巻にとっては眠ることなど更なる恐怖の入り口だ。
「じゃ、俺も行くわ」
「…えっ?」
どうやって断ろうと考えあぐねていた時、背後から思いがけない藤の助け舟が出された。才崎が
呆れたような声を漏らす。
「藤くん、あなたには関係ないと思います」
「こいつまだ保健室には慣れないみたいだからさ。付き添うぐらい、いいだろ」
「…すぐに戻って来るのですよ」
何を言っても無駄だと思ったのか、意外にあっさりと才崎は引き下がった。
「じゃ行こうぜ」
「あ、あ…うん」
体育館から出て後ろも振り向かずにどんどん歩いて行く藤に着いていくと、廊下の曲がり角で
急に立ち止まられた。
「…?」
一体何事かと首を傾げた花巻の前で、藤は何故かひどく苛ついたように吐き捨てた。
「俺はそんなに頼りにならないかよ」
「え?」
「そんな具合悪そうなのに、何で誰にも言わねーんだよ!」
「…だ、だって…そんなのは」
どんなに嫌な夢でも、たかが夢だ。そんなことでいちいち人に頼るのは気が咎めた。それに、
人に話せる内容でもない。
そんなことを考えながらもじもじしている花巻に更に苛立たしさを感じたのだろう。藤は乱暴に
手を取るとそのまま黙って保健室に向かって歩き出した。

682:恐怖の降る街 4
10/09/12 04:46:19 6kuVYOyi
ハデスは昨日よりも顔色の悪い花巻を見て、顔を顰めた。
「花巻さん、君はしばらく休んでいた方がいいね」
「…でも、私は…」
たとえ少しでも休んで、もし眠り込んでしまったらまた夢の続きが始まる。二度とこの現実に戻れ
ないかも知れない夢など見たくない。なのにそんなことは誰にも話せなかった。丸椅子に座って
身を硬くしている花巻の横で、藤はハデスと話していた。
「先生、こいつに何か憑いてるってことはないのか?」
「生憎と、病魔の気配はないね。花巻さんが一体どうしてこんな状態になっているのかは僕にも
…」
曖昧に言葉を濁しかけたハデスは、ある一点に気がついたのか物凄い勢いで花巻に近付いて
尋ねてきた。
「花巻さん、君は以前病魔に憑かれていたことがあったね。僕が咀嚼したけど」
「…は、はい」
「まさか罪悪感なんて、持ってないよね?」
「はぁあ!?んな訳あるかよ」
藤が素っ頓狂な声を上げた。
「ぴーちゃん…に?」
以前、花巻は藤に対して何も出来ない臆病な気持ちに付け込まれて、何度も時間を巻き戻す
病魔に憑かれたことがあった。あの病魔は花巻の味方だとうそぶいていた。だがその力を借りて
甘え続けていたら、きっと今でも何一つ前に進めないままだったに違いない。
それでも、もう必要ないからといって最後の最後に見捨てた形になったことを思い出した。今まで
すっかり忘れていたけれど、心のどこかでハデスの言うように罪悪感を持ち続けていて、それが
あんな夢を見せていたのだろうか。
「私、ぴーちゃんにひどいことした…」
目を見開いてうわ言のように呟いた花巻は、魂が抜けたように丸椅子から崩れ落ちていった。

闇の街に花巻は囚われている。
蠢く闇に犯され続けている。一人しか受け入れたことのない膣内をありったけの闇が突き上げ、
好き勝手に蹂躙していた。身動きすることも出来ずただ受け入れるしかないことに絶望しながら、
もうこの夢から逃れられない恐怖で涙を零す。
「助けて…誰か助けて」
懇願しながら蠢く闇の間から必死で伸ばした指が、何かに当たった。

683:恐怖の降る街 5
10/09/12 04:47:18 6kuVYOyi
「始めっからそう言えばいいだろ、全く」
花巻の手を取ったのは、藤だった。
「…どうして、ここに」
「そりゃあ、夢だからだろ」
花巻の、無意識のうちに増大していた恐怖が支配していた世界は、その瞬間に闇の均衡がぼろ
ぼろと崩れていく。そしてあっと言う間に現実と同じ景色に立ち戻ってしまった。
「つまんないことをいつまでも悩んでんなよ。ほら」
藤は夢の中でも変わりがない。素っ気なく握った手を引いて立ち上がらせようとしている。何となく
胸の中が暖かくなった。

すうっと現実に戻っていく。
次に花巻が目覚めたのは、保健室のベッドの上だった。慌てて壁の時計を見るとどうやら一時間
ほど眠っていたらしい。でももうあんな夢は終わった。何もかも終わったのだ。
「あ、起きたんだね」
気配を聞きつけたのだろう、ハデスがカーテンの向こう側から声をかける。
「あ、は…はい。ど、どうも…ご迷惑をおかけしました…」
「少し休めたのなら良かったよ。さっきまで藤くんが付き添っていたんだけどね」
「えっ?」
「戻るのが遅過ぎるって才崎先生に引張られて行ったよ」
「そ、そうですか…」
藤にはいつも醜態を見せてばかりだ。でも今日ばかりはどうしてもすぐにお礼とお詫びを言わな
ければいけない。どんなに恥ずかしくても。
ベッドから降りた花巻は、一大決心をしていた。

ジャージから制服に着替えて教室に戻ろうとする途中、廊下で偶然藤と出くわしてしまった。
決心をしてはいたものの、突然顔を見てしまうとどう言っていいのか分からなくなる。
「お、少し顔色は良くなったようだな」
「あ、う、う…ん。あの、あのね」
今日はありがとう、そしてごめんなさい。
それだけ言えばいいだけなのに、何故か口が動かなくなっていた。だが藤は別に気を悪くした
様子もなく、手を差し出してきた。
「お前も色々難儀だよな。でもさ」
「えっ…」
「つまんないことをいつまでも悩んでんなよ」
その手があの黒い悪夢を崩壊させてくれた。つられるように花巻は手を取る。そこでようやく夢と
現実の均衡が取れたような気がした。
怖い夢など、きっともう見ないだろう。






684:名無しさん@ピンキー
10/09/12 04:52:34 6kuVYOyi
途中まで書いてはみたもののタイミングを逃したとか、ネタがかぶったりして
続きを書く気が失せたりしたものがまだ幾つかある。
せっかく書いたものだし勿体無いので、また何とか再利用したい。

685:名無しさん@ピンキー
10/09/12 23:11:08 BLVVgjQ6
>684
GJ!
面白かった!
ぴーちゃんに罪悪感抱くのが花巻らしいし
そっけないけど何だかんだと優しい藤がよかった
他のも膝抱えて待ってます

686:名無しさん@ピンキー
10/09/13 03:31:30 xZ4dlad3
今週はシンヤずばっといったなぁ
校長と花巻さんが輝きすぎ

687:名無しさん@ピンキー
10/09/13 12:31:00 SHpdc7M7
校長、無敵すぐるw

688:名無しさん@ピンキー
10/09/13 14:38:42 35u2S5gh
今週は親指立てる本好が大好きなんだけどw

689:名無しさん@ピンキー
10/09/13 22:29:59 e1kkclGf
ロリっ子先生にドッサリキノコで「たくさん食べてね」…とはな・・・

690:名無しさん@ピンキー
10/09/15 00:57:41 nURMXt2v
>>684
GJ!!
繊細な花巻と神経太い藤がいい感じ

今週は、
花巻さん限定でうろたえる藤とか、
アシタバゲットな勢いの校長とか、
鈍ちゃんと婚約旅行なつもりの経一とか、
色々とおいしかったww

691:名無しさん@ピンキー
10/09/16 12:09:41 yWduvoiR
鈍ちゃん、服がはだけてたわけじゃないのにあのエロさ。

692:名無しさん@ピンキー
10/09/18 22:11:26 V5zAKscl
操SSまだきてないのか

693:名無しさん@ピンキー
10/09/18 22:29:21 OrEcv3/c
操かわいい
だれか書いてくれ

694:名無しさん@ピンキー
10/09/18 23:11:34 JKgN5OSq
今、別ジャンルのを書いてる最中だけど、それが終わったら書けるかも

695:名無しさん@ピンキー
10/09/18 23:41:36 OrEcv3/c
ありがたや~

696:名無しさん@ピンキー
10/09/18 23:47:15 iRSFz90v
9歳だからな、オパーイがわずかながら膨らんでくる時期ではないかな?
一緒に風呂に入った経一が、不埒な出来心を起こす展開で是非。

697:名無しさん@ピンキー
10/09/18 23:48:53 JKgN5OSq
残念、ハデス絡みなら書けるんだ

698:名無しさん@ピンキー
10/09/19 04:36:59 uMQ1esXQ
初カキコなんですが、ココって今までうpされたストーリーの
踏襲しないと書いちゃだめって事はない?
暗黒面に堕ちたハデス×みのりの構想があるんですけど・・。

699:名無しさん@ピンキー
10/09/19 05:16:28 UQFCni/D
>>698
誰でも何でもOKですよ。待ってます。

700:名無しさん@ピンキー
10/09/19 05:17:45 uMQ1esXQ
返答ありがとう。頑張ってみるw

701:名無しさん@ピンキー
10/09/19 14:45:34 nvS2E8OB
操を書いた
エロ展開は自粛しておく

702:少女毒 1
10/09/19 14:46:45 nvS2E8OB
それは突然のことだった。
「おひさしぶりです」
目の前に現れた幼い少女に、ハデスは声を失った。
いや、今日のこの時まで何故か少女ではなく少年だとすっかり思い込んでいた。それほど以前
対峙した時には手こずった相手でもあったのだ。結局は異常な父親に振り回されて心身の健康
を損なった犠牲者でもあった訳だが、今こうして眺めれば、随分と回復しているようだ。
やはりあの父親が最大のガンだったのだろう。
このまま何事もなく成長して普通の少女になっていければいいのだが、と思わずにはいられな
かった。

「あの子はカオスね」
鈍がぽつりと呟く。
「父親の呪縛が完全に解けきれているとは言えない。開放されるまでにはまだ随分時間も手間も
掛かるわね…とても厄介だわ」
蛇の女が出来るだけ感情を消して続ける言葉が気になった。しかしまだ今はこれ以上、他者が
何かを助力出来る時期でもない。ゆっくりと、ただ確実に魔毒のように浸透した呪縛が解けるのを
待つしかなかった。

操は一人で石を積み上げている。飽きもせず。
「操ちゃん」
「ハデス先生」
「それは、何?」
「すとーんへんじを作っています、操はいま超こだい文明にこっているのです」
「そう、面白そうだね。手伝ってもいいかな」
「…はい」
まだ人と接することに慣れていないのか、ぎこちない言葉が痛々しい。それでも、失われた子供
の時間を少しずつ自力で取り戻してきている。それは無残なほどに損傷してしまったと思われて
いた柔らかい心の、奇跡的に目覚しい復活でもあった。

703:少女毒 2
10/09/19 14:47:31 nvS2E8OB
石を持つ手が配置に迷っている。
まだ完成しない小さなストーンヘンジは、それでもなかなか良く出来ていた。どこで見て興味を
持ったのかは知れないが、操の知能や感性そのものは人並み以上であることが分かる。九歳
という年齢を考えれば驚くべきことだろう。
そんな幼い横顔がぽつりと呟く。
「いつか、ブリテン島にいって本物をみたいのです」
「そうだね、いつかきっと行けると思うよ」
「…本当?」
ぱっと顔を上げた操の表情は今までにないほど輝いていた。本来の子供らしさが大分戻ってきて
いることを感じて、つられるように笑みが漏れる。
「操ちゃんならね」
「ハデス先生がいうことなら、しんじます」
恥らうように染まる頬がとても愛らしい。なのにあの父親はこんな風に娘と普通の会話を交わした
ことすらなかったのか、一体この子の何を見ていたのだろうと今更ながらに憤るばかりだ。
積み上げた石がバランスを崩して一つ落ちた。
「操ちゃんは、今幸せなんだね」
「はい、ここはみんなとてもやさしいです」
「それは良かった」
しかし操は一瞬、表情を曇らせる。
「でもおとうさんはどうして操になにもおしえてくれなかったのでしょう」
「えっ…」
「操はわるい子だったのですか?」
見上げる瞳が微かな不安に揺れていた。あれだけ強く洗脳されきっていても、やはり心の隅には
疑念が残っていたのだろう。それだけはまだ解決されていないまま残っていたのだ。
「だからおとうさんは操がきらいだったのでしょうか」
「…そんなことはないよ、操ちゃん」
ハデスは言葉を濁すしかなかった。操は何も悪くはない。ただ、あの父親が只の自分の自尊心
を満たす為の道具としてだけではなく、純粋に娘を愛していた部分が少しでもあったのかどうかは
まだ誰にも分からないことだ。
願わくば、もし残酷な結果であったとしてもこの少女が傷つきはしないようにと祈るしかない。

704:少女毒 3
10/09/19 14:48:16 nvS2E8OB
「みんなが優しいのは、操ちゃんがいい子だからだよ」
その言葉に、あどけない綺麗な瞳が潤んだように見えた。
「では、みんな操がすきなのですね」
「そうだよ」
「いい子でいれば、いつかおとうさんにも会えますね」
「…それはまだ保証出来ないけど、多分ね」
少し考えていたのか、時間を置いてから再び操が恥らいながら口を開く。
「ハデス先生も、操がすきでいてくれますか?」
「うん、もちろん」
「じゃあ、操ははやく大人になります」
言ったと同時に持っていた石を放り出して、ハデスに抱きついてきた。突然だったので振りほどく
ことも出来ないままでいるうちに、安心したように操が少し笑った。
「そしたらおよめさんにしてくれますか?」
「それは」
「やくそくですよ、ハデス先生」
「操ちゃん…」
操の変貌に戸惑いながらも、ハデスは考えを巡らせる。どのみちこんなものは他愛ない子供の
言葉だ。父親という大人の男の愛情が完全に欠乏していたから、本能が闇雲に求めているだけ
のことでしかないのだろう。
「そうしたら、操はもうさびしくなりません」
縋るように腕を回してくる操の華奢な身体から、体温が伝わってきた。幼いながらに必死で自分
を再構築しようとしている。そして居場所を探している。決して安易な返事などは出来ないと思い
つつも、何が最善の言葉なのかは分からずにいた。

そんな危うい雰囲気を、つんざくような美作の叫び声が打ち消した。何か異変が起こったらしい。
思わず声が響いた場所に駆けて行こうとしたハデスに、再び一人残される操が声をかけた。
「やくそく、わすれないでくださいね」






705:名無しさん@ピンキー
10/09/20 00:08:27 8OAuF2xX
とても良かったです
ありがとう

706:名無しさん@ピンキー
10/09/20 17:51:05 GdgYjYIN
一通り見た感じ、操はハデスかアシタバと絡むのか
女の子だとバレたあたりの描写から経一とのカプを想像してた

707:名無しさん@ピンキー
10/09/20 18:50:24 S/lf/WBe
エロパロでエロ自粛する意味がよく分からん

708:名無しさん@ピンキー
10/09/20 19:26:09 YJkHMKDx
操の年齢考慮しただけじゃね?
俺もロリは好きだけど、ストレートにエロにいかれると萎える

709:名無しさん@ピンキー
10/09/20 20:03:26 eKpYLFHO
>>708
ストレートとは、本番のことかな。
例えば

操と一緒に風呂に入り、体を洗う経一
子供だと思って、無造作に操の股間もゴシゴシ
「あ…」と頬を染める操
彼女の中の女が目覚めたのだった

くらいならどうかね?

710:名無しさん@ピンキー
10/09/20 20:44:31 YJkHMKDx
うん、それぐらいなら大丈夫かな
>>696の不埒な出来心ってのも、経一のキャラからするとちょっとどうかと
思うし

711:名無しさん@ピンキー
10/09/20 23:38:24 S/lf/WBe
いや、エロパロだからストレートいってなんぼだと思うが…
過程はまぁ書く人がそれぞれ工夫するだろし

712:名無しさん@ピンキー
10/09/21 00:46:18 yZWZuzUr
アシタバは将来ロリトリオに逆レ4Pされる、間違いない

713:名無しさん@ピンキー
10/09/21 03:34:45 fuP5Oxqz
>>712
ロリトリオって誰だよw
操と人形の女の子と…三途川先生?

714:名無しさん@ピンキー
10/09/21 08:54:06 I8+bavpT
6年…いや3年後ぐらいなら操もエロでいける

715:名無しさん@ピンキー
10/09/21 09:07:47 yZWZuzUr
>>713
妹・操・しおりの3人

716:名無しさん@ピンキー
10/09/21 21:37:10 QFRkFPmR
>>714
今がド真ん中だぜ?

717:名無しさん@ピンキー
10/09/22 12:03:39 7CV/tsre
保健室に住みたい

718:名無しさん@ピンキー
10/09/22 19:02:59 LA+RIPRq
みのりちゃんのファスナーがどんどん下がってる

花巻さん「服着てるの恥ずかしい」
みのり「その趣味は否定しない」

Σ( ゜д゜) はっ…!

719: ◆rnZrKZqoCA
10/09/22 22:46:22 eDwYj5JH
>>700ですがなかなかすんなり書けないw
しかも長くなりそう・・・。

>>718
おみやげドゾー
URLリンク(chan.sankakucomplex.com)

720: ◆rnZrKZqoCA
10/09/23 05:04:37 7y5Ea8jb
書き上がりましたー。が、導入部分がちょっとあるのでいらない方は3章からどうぞ。
一応、1・2章のあらすじを。

ハデスがアシタバと看板立ててたらみのり先生に怒られた。
アシタバにも注意がいったので「冷血」使ってみのり先生の「怒り」を吸収。
アシタバに悟られ、注意されたのでお詫びにみのり先生を食事に誘う。

ここから3章です。

721:悪の罠 序章 ◆rnZrKZqoCA
10/09/23 05:05:31 7y5Ea8jb
俺の本性は何だ?

子供の頃は泣き虫だった。
それが原因でよくいじめられていた。
いくら泣いてもいじめられ続けた俺は些細なことでも怒るようになった。
感情の発露が止められなくなり普通なら気にならないような事でも見咎め、煽り、怒りをぶちまける。時には暴力も。
辺りかまわず感情を爆発させ続ける俺から人はいつしか離れていった。
いじめはなくなったが代わりに俺は孤独になった。

悔しかった。辛かった。誰かに助けて欲しかった。
そんな時、ヤツに出会った。
「冷血(クルエル)」
コントロールできない感情を喰ってくれるという言葉に乗り、更なる悪夢に迷い込んだ。
地獄から救ってくれた4人の恩人。

僕は今、善人でいられる。

722:悪の罠 1章 ◆rnZrKZqoCA
10/09/23 05:06:28 7y5Ea8jb
「ごめんね、アシタバくん。手伝って貰っちゃって」
校庭横の手洗い場でハデスはデカイ看板を立てていた。
木枠にブリキ板を釘で打ちつけたそれには、
【水は浄水器から飲みましょう。生水を飲むとおなかを壊します。】
と、白地に赤ペンキでデカデカと書かれていた。
「いやぁ運ぶだけなら・・。でも、こんなのいつ作ったんですか?」
「勤務の合間にね。簡単な物だからすぐに・・・」
答えかけた時、背後から大声が飛んできた。
「ハデス先生!!」
「さ、才崎先生?」

ハデスが何かを作ってみのりに注意されるのはいつもの事である。
アシタバが(またか・・・)と思うのも無理も無い事であった。
「いったい何を作っていらっしゃるんですか!?」
「いえ、ここの所かなり気温が上がってきてますので生徒達が水の飲み過ぎで腹痛など起こさないようにですね・・・」
「でしたらプリント也を配って注意喚起して頂ければ結構です。勝手に看板を設置されては困ります!まして風で倒れて生徒が怪我をしたら・・・」
「そ、それは確かに・・・」
ハデスがみのりに怒鳴られている間、特大看板を支えていたアシタバは「いつまで持ってたらいいんだろう・・」等と他人事であった。
しかし、
「だいたいアシタバ君もいけないわ。ハデス先生が変な事を始めたら何故私に報告しないの!?」
この一言で風向きは急変した。

それから怒涛の攻撃が始まった。普段から藤に「口やかましい」等と言われているみのりだが基本的にお説教の時でもちゃんと生徒のフォローをしている。
だが今回はハデスの行為のおかげでヒートアップしているのか、フォローも無い上にかなりキツイ口調だ。
「あの・・、才崎先生・・・?悪いのは僕ですから・・・。アシタバ君は何も・・・・」
ハデスは懸命に助け舟を出そうとするが、それが癪に障ったのか全くの逆効果であった。
「ハデス先生は黙ってて下さい!アシタバ君の担任は私です!!それからアシタバ君。用もないのに保健室に入り浸る事がいけない事ぐらい君なら分かって・・・」
自分にとって最悪の話題が出始めたところで、ハデスはみのりの肩に手を置いて言った。
「才崎先生。下校時刻も迫ってますし、もう、この辺にしませんか。悪いのは僕です。アシタバ君に責任はありません。」
「え・・ええ、そうですね。では、ハデス先生。今後、何かを設置するときは職員会で許可を得てからにして下さい。アシタバ君も早く下校するように」
不思議な事にあれだけ熱くなっていたみのりが急におとなしくなり、その場を去っていった。
「????」
「さ、アシタバ君も帰りなさい。後片付けは僕がキチンとしておくからね」
「・・・は、はい」

その日の夜中、ハデスは腹の奥底で違和感を覚えた。だが、それはまどろみに紛れ夢か現実か判断できなかった。

『美味ェ・・・』

723:悪の罠 2章1 ◆rnZrKZqoCA
10/09/23 05:08:01 7y5Ea8jb
看板騒動から数日後、ハデスは自身の変化に気付き始めていた。元々食への興味など無いに等しかったが、あの日を境に翌日の献立を考える様になっている。
睡眠時間も普段は6時間前後、最低限休まなければならない程度だったものが昨日の休日など昼過ぎまで寝ていた。
前日に酒を飲んだわけでもなく、特に疲れていたわけでもない。
だが変化に気付いても、それをどうこうしようという意識はなかった。食事に気を遣う事が悪いわけでは無し、休みに少々寝過ごす事等、誰にでもあるだろう、と。

午前中は保健室に来客は少ない。
いや元々終日利用者は殆どいないのだが、いつも集まってくれるメンバーは大体、昼休みと放課後だ。
しかしこの日は珍しく1時間目が終わって早速生徒がやってきた。
「失礼します・・・」
とはいえ、いつものメンバーの一人に変わりはないのだが。
「やぁ、アシタバ君。どうかしたの?」
「はぁ・・その・・・」
「?」
何か言いにくい事を切り出そうとしているのは容易に分かったが、それが何かは気付かなかった。
しかし、それが分かった途端、背筋に寒気がした。
「この間、みのり先生に何かしませんでしたか・・・?」
「!?」
「おかしいですよね?あんなに怒ってたのに急に・・・」
「相変わらず・・・・鋭いな・・・・君は・・・・」
観念したのかハデスは事のあらましを語りだした。

「僕の力は病魔だけを喰うわけじゃないんだ。人の精神、感情を喰うんだよ。病魔は感情の塊だ、だからこそこれで退治できる」
「じゃあ、あの時はみのり先生の・・・?」
「そう。怒りの感情を少しね。本来絶対にしちゃいけない事だった・・・。才崎先生に謝らないと」
「いや、それを本人に言うのはどうかと・・・。病魔の事も知らないしバカにされてると思って逆に怒り出しそうですよ?」
「そ、それは困るな。どうしよう・・・?」
「お詫びの印に何か送ればいいんじゃないですか?病魔云々は伏せておいて、看板の事だけ謝るとか・・・。あ、もう時間が・・・、じゃあ僕はこれで」
「うん、何か考えておくよ。あ!アシタバ君!!」
退出しかけたアシタバをハデスが呼び止めた。その顔は本当に辛そうな、切なそうな表情だった。
「ごめんね。本当に・・・ありがとう・・」

本当に嬉しいのだった。

724:悪の罠 2章2 ◆rnZrKZqoCA
10/09/23 05:10:05 7y5Ea8jb
(2-1最後の「本当に~」はコピペミスですorz)

アシタバが去った後、ひとしきり自己嫌悪に陥ってから意を決して引き出しを開ける。
アシタバは何かプレゼントして、と言ったが女性が好む物どころか世間の流行すら全く知らないハデスに「みのりが貰って喜ぶ物」など見当がつくはずが無い。
下手なものを送って激昂させては詫びどころか嫌がらせである。しかもそれは不本意ではあったものの以前にやらかした事だ。
二回も繰り返せばどうなるか、考えるまでもない。
ハデスが手に取ったのは、備品のカタログに付いて来たフリークーポン誌だった。
近場で予算ギリギリのなるべく女性受けしそうな、更に言えばどこを選んでも自分も初めての店になるので注文で悩まないようコース料理のある店を片っ端から探しまくる。
散々迷った挙句、なんとか店を選び予約を入れようとした所で、ハタと手が止まる。
(才崎先生の予定も都合も聞かずに予約していいのだろうか?)
生まれて初めて女性を誘い、店の予約をしようとしているハデスである。
「キャンセル」などという単語が思い浮かぶはずもない。
「先に聞いてから電話しよう・・・」

「え!?」
授業後、職員室に戻る途中で呼び止められたみのりは真っ赤になって聞き返した。
「いえ、ですから、先日・・というか最近ずっと大変な御迷惑をお掛けしていたお詫びと以前、食事に招待して頂いたお礼をですね・・・」
欠片も予期していなかったハデスからの誘いである。耳元で自分の心音が聞こえるほど舞い上がったが、勤務中の校内ゆえ努めて冷静に振舞う。
「こ、光栄ですけど、そ、そ、そのようなお話は勤務後に、な、なさ、なされりゅ・・」
冷静に対応していると思っているのは本人だけなのだが。
「そ、そうですよね。申し訳ありません。全く僕は・・・」
いや、ここにもいたらしい。みのりの動転ぶりに全く気がついていない。
「あ、いえ、お誘いは本当に・・。きょ、今日は予定もありませんので・・・」
「え?では・・?」
「は、はい。あの、詳しい事は放課後に・・」
「はい!ありがとうございます!」
「あら、そんな・・・」
その後は頬が緩みっぱなしであった。帰りのHRの時など美作から「みのりちゃん、なんか良いことあっただろ?」と詮索される始末である。
自分がハデスに対して四苦八苦していた事をハデスが自分にしてくれている事がとても嬉しかった。
見た目はさて置き、絶えず何かを作っては騒動を起こす人物だが、一部とはいえ生徒からの信頼は誰よりも勝ち得ている。
生徒からちゃん付けで呼ばれている自分にはない、ある種のカリスマ性があるのでは?そう思う事も多くなってきた。
それに常中史上最大の問題児とまで言われる安田を一時とは言え別人のように更生させたのは後にも先にもハデス唯一人である。
どんな指導をしたのか想像もつかないが今の自分では絶対にできない事だ。
「それに・・・」
(優しい)
慈愛という言葉がこれほど似合う人物もそうはいないはずだ。
誰に対しても平等に接するハデスが自分に対して特別な事をしてくれているというのが本当に嬉しいのだった。

725:悪の罠 3章1 ◆rnZrKZqoCA
10/09/23 05:11:21 7y5Ea8jb
異変を感じたのは店を出た後の事だ。
昼間に返事を貰い、すぐに予約を取った。放課後、落ち合って店に行き食事を堪能し、アルコールも入った。
あまり飲まなかったハデスに対し、緊張していたのかみのりは結構なペースで杯を重ね、今はハデスの腰に手を回し支えてもらって歩いている。
学校ではないのだからと「逸人さん」と気さくに名前で呼びかけられ少々驚きはしたものの、自分も思い切って「みのりさん」と呼ぶ事にした。
ここまでは良い。上出来である。しかし・・・。
「逸人さん、ちゃぁんと部屋まで送って下さいね。途中で帰っちゃ嫌ですよ。とっておきの紅茶、ご馳走しますわ」
(いくら酔っているとは言え、才崎先生はここまで明け透けだったか??)
「もちろん、きちんとお送りしますよ、さい・・みのりさん。ですが、少しどこかで休まれた方が・・・」
「ま、どこに連れ込む気ですか、いやらしい」
「え!?いやいや、そのような事は決して・・・ぇ!?」
紳士の務めとして車道に近い左側を歩いているハデスの右わき腹辺りに、「明確な意図の元」胸の膨らみが押し付けられてきた。
これだけならみのりは酔うと変わる、で終わるのだが問題はこの先にある。
(・・・・・・・・・・・!!!!!!)
制御しきれないほどの劣情がハデス自身を襲い始めたのである。自分が酔っていれば多少理解もできようが、ハデスが口にしたのはグラスワイン1杯だけだ。
いくらなんでも、これで酔うほどの下戸ではないのは自分が一番よく知っている。
「嘘。嘘です。知ってます、逸人さんがそんな事考える人じゃないことぐらい。言ってみただけですわ」
上目遣いで胸を押し付けられながら囁かれると、そのまま押し倒してしまいたくなる。
実際、肩を抱いている手の指先には知らず力が込められていた。
「冗談は止めてくださいよ・・・」
「ふふ。でも私の部屋ならいいですわよ?他に誰もいませんし」
「才崎先生・・・、本当にもぅ・・・」
「みのり。そう呼んで下さらないともっと言いますわよ?」
「ああ、すいません。でも、もう困らせないで下さい、みのりさん」
「普段いつも困らせて頂いてますもの、お返しです」
「これは・・・参ったな・・・・」
自然と二人とも笑い出す。しかし、あの劣情は消えない。

みのりが部屋着に着替え、紅茶を用意する間、ハデスは考えていた。
(どう考えてもおかしい。何かが変だ。病魔?違う。そんな気配は全然・・・)
「お待たせしました。さ、どうぞ」
着替えたみのりの姿を見るや、ハデスの目が見開いた。
「な・・・・な・・・・・・」
シースルーではないが肩紐のネグリジェというかミニドレスというかそんな姿なのだ。
(どうなっている!?夢か、これは!??)
狼狽するハデスの前に紅茶が並べられる。
飲んで少しは落ち着かなくてはと思い、口を付けるが動悸は早まるばかりだ。
「逸人さん・・・」
左隣に座ったみのりが潤んだ目で見つめながらしな垂れかかってきた。
(!!!!!!!!!!!!)
「ちょ、ちょっと、みのりさん!?」
「魅力・・・ないですか・・・?」
「とんでもない!あり過ぎて困ってるんです、僕は・・・」
「良かった・・・。嬉しい・・・・」
言うが早いか、みのりの両手がハデスの頭を捕らえ、唇を重ねてきた。間髪入れず舌を絡めてくる。
(!?・・・・才崎・・・・せん・・・)
頭の中が真っ白になり、疑問も不安も罪悪感も快楽の前に吹っ飛んだ。冷静さなど、とうに消えている。
「ふぁ・・・」
みのりが唇を離すと二人の舌に唾液の糸がひいた。
惚けているハデスの左手を取って微笑む。
「触って・・・・下さい・・・・」
そのまま胸元に手を導いた。
手の平に吸い付くような瑞々しい肌と大きさ、何よりその柔らかさ。全く未経験の触り心地であった。
「みのりさん・・・」
指先に力を込める度、みのりの息が大きくなる。
無心になって感触を楽しんでいた時だ。

726:悪の罠 3章2 ◆rnZrKZqoCA
10/09/23 05:13:30 7y5Ea8jb
『羞恥心の無い女は大胆だねぇ』
(!?)
声が聞こえた。みのりではない。自分の中からだ。
(貴様!?どうして?何故!?)
声の主は「冷血」。ほぼ完全にハデスの意思でコントロールしていたはずが、その呪縛を解いていた。
『何故もなにも。腹が減った。それだけだ』
(ふざけるな!病魔(ごちそう)はやってるし、僕の感情(エサ)も食わせているだろう!)
『まぁな。だがエサに飽きた』
(なんだと・・・・?)
『前に喰った安田とかいうガキの感情はテメーのエサと大して変わらなかったがな。この女の「怒り」ってのは抜群に美味くてなァ』
(!??)
『網張って待つのは得意だからな。テメーの感情をあえて喰わずにしたりよぉ。こんなに早くありつけるとは思ってなかったがな』
(き・・・さ・・・・ま・・・・!!)
『この女の羞恥心と自制心はかなり美味かったぜェ?快感はもっと美味そうだ。早く食わせろ!』
(ふざけるな!!誰がそんな真似!!)
『そうかい。じゃあ好きにしな』
感じるのは「冷血」の声だけだ。しかし、ハデスははっきりと分かった。ニタニタしながら笑う「冷血」を。
『俺が喰わなかった「欲望」をお前が自分でどうにかできるもんならなぁ!』
「グッ!」

「冷血」との会話中に肉体の自由を奪われたわけではない。だが、ハデスの手は休むことなくみのりの乳房を弄んでいた。
そればかりか、さらに奥へ手を差し込み、指先で探り当てた乳首もいじくり始める。
「・・・あっ?」
硬くなったそれに触れられた瞬間、みのりが声を上げた。
「あ、あの、みのりさん・・・」
「嬉しいですわ・・。邪魔だから、脱ぎますわね・・・」
ハデスの手を抜き取り、手早く服を脱ぎ落とす。二つの白い乳房を隠すものは無くなった。
(よせよせよせ。やめろやめろやめろ!!)
頭でいくら叫ぼうが声にならない。体は本能の向かうまま動き出す。
今までハデスがどんな事態でもほぼ冷静に対応できていたのは自身の精神が優れていた訳ではない。
全て「冷血」がその時の障害となりうる感情を喰らっていたからこそなのだ。
そのブレーキ役が職務を放り出し、自分の感情が暴走しかけている今の現状はペーパードライバーがアクセル全開で高速道路を走るに等しい。
コントロールなぞ、できるわけがないのだ。

727:悪の罠 3章3 ◆rnZrKZqoCA
10/09/23 05:14:21 7y5Ea8jb
「んっ・・・」
乳首を口に含み、舌先で転がすように舐めまわす。両手はもちろん柔らかい塊を優しく揉みほぐし続けている。
舌を突き出し乳首の根元を掘るように動かす。歯で軽く刺激を与える。乳輪を舐め、乳首を吸う。
「んっ・・・くぁ・・・・あぁっ・・・・」
何かをする度、押し殺したように甘い声を漏らし、それが更にハデスを興奮させた。
自分から唇を求め、舌を絡め、唾液を啜る。耳たぶを噛み、首筋を舌でなぞった。
「ひゃうっ・・・・。い、逸人さ・・・ん・・・・」
「みのりさん・・・・、し、下も触って・・・?」
「えぇ・・・・。もち・・・ろん・・・・」
一応、確認してから最後の下着の中に手を入れる。茂みをかき分けトロトロになった亀裂に指を這わせた。
「んきゅっ・・・」
胸とは違った柔らかさの箇所を体液を絡めながら刺激しているとみのりの声が明らかに変わってきていた。
「んあっ!・・・そっ・・・こっ・・・・ひぅあ・・・んっ!んっ!んっ!」
手を引き抜いたハデスは今度は了解を得ずに、みのりを全裸にした。そのままさっきまで指で弄っていた所に口を付ける。
「いっ、逸人さん!そんな、汚い・・・」
「気にしません」
舌先を亀裂にねじ込んだ直後は刺激が舌に伝わったが、奥の肉穴から次々溢れ出す液体がすぐさまその刺激を中和していった。

「やあぁ・・・・あんっ!・・・・んっ!あぁっ!・・・はぁっ!・・・う・・・そ・・・何で・・・」
「嫌ですか?」
「違ッ・・!気持ち・・いい・・・。私・・・こんな・・・・」
肯定の言葉を聞くとハデスは行為を再開した。電気は付いたままなので色艶、形もハッキリ見て取れる。
肉穴に舌を差込んで愛液をかき出し、尿道を舐め、唇で陰唇を刺激してクリトリスを舌で押し潰す。
一連の動作を延々としていると、みのりの腰が跳ね上がり中断してしまった。
「みのりさん・・・。じっとして・・・」
「ご、ごめ・・・なさ・・・。でっ!・・でもっ!・・・か、勝手にぃ!」
「仕方ないな・・・」
両手でみのりの腰を持ち上げ、そのまま抱え込んでから股間に口を付けた。
「ひんっ!・・・や・・・ぁあ・・・」
しかし、その内これでも暴れ始めてしまった為、ハデスは諦めてみのりをベッドまで連れて行き、横たわらせた。

「い、逸人さん・・・、ごめんなさい・・・」
「気にしないで下さい。僕が・・・しつこ過ぎましたね」
「そんな・・・」
衣服を全て脱いだハデスはみのりの上に覆いかぶさった。
「指なら大丈夫ですかね?」
「・・え?・・・・うんっ!」
右手の中指を一本、膣口に潜り込ませる。十分に濡れていた穴はすんなりと異物を受け入れた。
中は狭く、大量の愛液と相まって肉壁の凸凹が指に絡みつくような感覚を覚える。
「すごいな・・・。締め付けてるのが分かりますよ・・・」
みのりの返事は無い。息を荒げてしがみついてくるだけだ。
「・・・動かしますね」
「っっっっ!!」
抱きついたまま、頷くのが今の精一杯の返事のようだ。
指を出し入れし、一番奥でかき混ぜる様に動かす。そんな事を繰り返している間、みのりは必死で声を抑え、ハデスにしがみ付いていた。
だがそれも束の間。すぐに声が上がり始める。
「いっ・・ひと・・・さっ・・・!。わっ!わたっ・・。もう・・・」
「・・・いいですよ。一度・・・終わらせましょう・・・」
口づけをしたまま、指を激しく動かし続ける。膣口が締め付けられるのと背中に爪を立てられたのは同時だった。

728:悪の罠 3章4 ◆rnZrKZqoCA
10/09/23 05:15:11 7y5Ea8jb
柔らかい体を抱きしめる。汗ばんでいた。
「大丈夫ですか?」
「は・・・い・・・。あの、背中・・・・ごめんなさい・・・」
「傷にもなってないですよ。平気です」
みのりの額に軽くキスをする。
「次・・・、いいですか・・・?」
「・・・はい」
「じゃぁ・・・いきますよ・・・」
すっかり準備のできていた自身をみのりの体内に埋め込んでいく。
「んっ!ぐっ!逸人さん、・・・痛い」
指一本でも狭く感じたところに明らかにそれより太いものを挿入しているのだから、痛みも当然であろう。
「ゆっくり・・・します・・から・・・。我慢・・・して下さい・・」
返事は無い。それどころかハデスの腰に手を回し引き付けてきた。
「・・・みのりさん?」
「痛く・・なくなりました・・・。平気です・・・」
(・・・・また貴様か!!)
『御名答。「苦痛」もいけるなぁ』
(二度と手を出すな!)
『いいのか?その女の「苦痛」と「嫌悪感」「羞恥心」が出てきたら困るのは誰だ?』
(だまれ!!)
『ヒヒャハハハハハ・・・』
「逸人さん・・・?」
形相のハデスを見て、みのりが心配そうに声をかける。
「だ、大丈夫です。痛みがなくて・・・良かった。・・・動いても?」
「ええ・・・」
初めはゆっくりと、そして段々と加速していき数分後、みのりがまた声を上げた。
「あっあっあっあっ!んっくっ!あっあっあっ!!」
声が一気にうわずり、間隔が短くなったと思った瞬間パタリと止んだ。
「みのり・・・さん?」
果てたかと思って顔を覗き込むと、不思議そうな表情で見つめ返された。
「逸人さん・・?今、私・・・その・・・イキそうになって・・でも・・・」
すぐに理由がわかった。「快感」を喰われた、と。
(二度と手を出すなと言ったぞ・・・)
『これが目的だってのに引っ込むバカがいるかよ。心配するな、お前の「快感」も摘んでるから女より先に果てる事はないぞ。女に負けちゃカッコつかねえだろォ?』
(こ・・・の・・・)
『何、普通より少し長めに時間かかるだけだ。誰も損しねぇよ。アハハハハ!』
「逸人さん・・・ごめんなさい・・・。私、もう大丈夫ですから・・・。動いて・・・」
「え?あ、はい。・・・わ、わかりました」
みのりが声を上げ、果てる直前ふいに黙り込む。そんなやり取りがもう5、6回も繰り返された時だろうか、叫び声が上がった。
「逸人さん!私、私イキたいッ!お願い、イキたいのッ!イカせてッ!お願い!・・・助けて・・・」
「みのりさん!」
(いい加減にしろ!もういいだろう!!)
『ゲェ~ップ・・・。狂われても困るな。お開きにしてやるよ』
(クソッ!!この・・・!!!)
「お願い、早く!お願い・・・お願い・・・・」
「みのりさん、大丈夫ですから!落ち着いて。すぐ、終わらせますから・・・」
思い切り抱きしめ、メチャクチャに動いた。
「きひっ!?アッ!クァッ!アッアッアッ!!やぁっ!こわっ・・・れ・・・、ぅああああああああ!!!」
みのりの全身が硬直し直後、弛緩した。だが、余韻が残っているのか太ももは痙攣し続け、時折体も震わせている。
少し経って体を離すとドロリとした液体がみのりの膣内から太ももを伝いシーツに流れ落ちた。
「逸人さん?」
「あ・・・・あの・・・」
困惑しきりのハデスをみてみのりは優しく微笑んだ。
「平気ですわよ。嬉しいです、とても。もう一つ、お願いいいかしら?」
「・・・なんでしょう?」
「朝まで一緒に・・・。お願い・・・」
「・・・・・もちろんです」

729:悪の罠 4章 ◆rnZrKZqoCA
10/09/23 05:16:20 7y5Ea8jb
翌朝。
ハデスは目を覚ました瞬間、戸惑った。上半身だけ起こし、辺りを見回す。
(・・・そうだ、ここはみのりさんの・・・)
近くにあった時計を見ると午前5時半。外がようやく明るくなり始めていた。
隣に目をやると裸のみのりが幸せそうに眠っている。その寝顔を見つめていると体が震えだした。
(僕は・・・・なんて事を・・・・!!)
『おいおい、言い訳は男らしくねーぜェ?』
(全て貴様のせいだろうが!!!)
『・・・寝ぼけんなよ?』
「冷血」が今までのチャラけた物言いとは打って変わってドスの利いた口調になった。
『俺が喰ったのは女の「羞恥心」「警戒心」「恐怖」「嫌悪」「自制心」「苦痛」「快楽」。お前の「快楽」だけだ』
(な・・・に・・・?)
『お前の「自制心」やら制止、抑止型の精神には一切手を出してない』
(で、でたらめを・・・・!)
『あの女をお前が抱いたのはな、お前が抱きたかったからだ』
(!!!!!!)
『言ったハズだ。俺が喰わなかった「欲望」を自分で制御できるならやれ、とな。結果は?見ての通りだ。お前はガキの頃から変わってない。俺の喰った残りカスの感情を制

御していたくらいで「大人」になれたと思っていたか?お前が俺を制御していたんじゃない。俺がお前を制御してたんだ』
(やめろ・・・)
『ああ。・・・・いつでも助けてやるぜェ!?ヒャハハハハ!アハハハハハハハ!!』

笑い声が耳に残った。頭を抱え込み、声を押し殺して・・・・・、泣いた。

(僕は・・・・・、悪人だ・・・・・)



730:名無しさん@ピンキー
10/09/24 07:22:28 AtMpbuzr
GJ!
こういうハデみのもいいね


731: ◆rnZrKZqoCA
10/09/26 01:26:39 I/pjiNk0
>>730
お褒め頂き恐縮です。
暗黒堕ちとか言った割には、ハデスが常識的な言動で堕ちる前って感じになってしまいました。
続き考えようかどうしようか迷ってたりしますw

732:名無しさん@ピンキー
10/09/26 21:28:35 ov8jXPJF
こういうの・・・待ってました!!
GJ過ぎてGJだぜ

733:sage
10/09/26 23:09:41 bioyWV8Z
萌えたぜ!
先生の過去設定が好きだっ
是非続き書いてほしい

734:名無しさん@ピンキー
10/09/26 23:41:35 ov8jXPJF
おっと、テンション上がり過ぎてageちまった。
すまねぇ。 新たな職人の誕生を心から祝います!

735:藤花
10/10/03 05:19:43 hm7N0jgS
空気を読まず投下
覗き注意

『うっ……は、ぁ…もーちょい強くできる?』
『…こう…ですか?』
『おぅ…いいぞ花巻……っ』
『あ…かたい……』
『うぉっ!そこ、ヤバっ……』

安田貢広、通称希代のエロリスト。彼は今、普段ではありえない事態に遭遇していた。
放課後に何気なく立ち寄った保健室。扉の向こうからは藤らしき人物の声と、状況から推測するに、花巻の声が聞こえる。

(うほっ、ラッキー!誰も来るんじゃねえぞ……)
安田のエロ魂を煽るように、二人の声はだんだんと盛り上がってくる。

『ふぅ。変わってやるよ』
『え…あの…あ、ありがとう』

(変わるだとぉぉ!けしからん!けしからんそ!)

「おい、安田」
「うわっ……ってなんだよ美作かよ」
いきなり声をかけられたので繕う暇も無かったのか安田の表情は変質者のそれに近かった。
さすがの美作も若干引き気味である。
「うるせぇな。お前、遠目で見ても気持ち悪かったぞ。何やってんだよ」
「俺は今、股間のセンサーがビンビンである」
「だから?」
美作がそう切り返すと、安田は不愉快なポーズをとりつつ答えた。
「わからんのか性少年よ。保健室の中は今、俺たちの癒しという名のエロティシズムに満ち溢れている。この声を聞きたまえ、哀れな子羊よ」
「いや、意味わかんねぇよ」
「正直俺もわからん」
二人は保健室の扉に耳を近づけ、教室内の音を探る。

『あ…藤くんっ、ふ……ぁっ、イヤっ』
『イヤ?花巻の嘘つき』
『ひゃあぁ!』

「これ、藤と花巻じゃねーか!」
「うおおおお!ムカつくぜイケメン!でも俺たちに癒しをありがとぉぉ!」
「ちょ、安田うるせぇぞ!中に聞こえる!」

そんな二人をよそに、保健室からの声は大きくなるばかりだ。


736:藤花2
10/10/03 05:24:47 hm7N0jgS
『はぁ……んっ…んぅっ』
『ここはどう?』
『…ひゃあ!…あ、…あっ』
『気持ちいい?』
『あっ……気持ちぃ…です』
『こういうのは?』
『痛ぁ…あ、ごめんなさ……やっ!』
『イヤ?ほんとに?』
『んんっ……ふっ、あっ!』

安田も美作も、何かに取り憑かれたように聞き入る。
美作は普段の彼らの関係からは想像できないような色っぽい関係に軽く混乱状態に陥る。
「お、やるじゃんイケメン。イケメンはイケメンなだけじゃなくテクニシャンなのか。けしからん!」
安田は一人で何かつぶやいていた。鼻血を垂らしながら。
「ふ、藤のナニって、でかいのかな」
「はぁ!?何言ってんだよアホか!」
「いや、美作……貴殿も生粋の男子ならば気になるはずだ。藤のナニの大きさがな!」
「オイィ!…でもまぁ、気にならないわけでもない」
「だよな。コレで藤のナニが俺らのナニよりもでかかったら俺は本気で落ち込むぞ」
一瞬の沈黙。先に口を開いたのは美作だった。
「さすがにドアを開けるのはマズい。結構音が鳴るからな。なんか状況証拠的なやつで何か無いのか?」
「……そういえば、お前が来たのって交代した後だったな」
「は?なんだよ交代って」
安田の目が、ありえないくらいに見開かれる。
「それはその……アレだよ」
あの安田が言葉に詰まるなんてよっぽどのことだろう。美作は期待に胸を膨らませながら話すように促す。すると、安田も決心したように目をつぶる。
「おそらく最初に、藤は花巻に自分のナニをその、アレさせてたわけだが……」
「えええ!マジかよ!」
「気が済んだ藤は花巻のナニをアレし始めたと……こういうことではなかろうか」
「えええええぇぇぇえぇえ!!!」
「ちょっと!うるさいぞみまさ『うるせぇよお前ら』
「え?」
安田と美作の前には、冷たい目つきで二人を見下ろす藤が仁王立ちしていた。

「全部聞こえてんだよ。特に安田。お前の頭は全部そっち方向にしか変換できねぇのかよ」
「だって花巻喘いでたじゃん」
「喘いでねえよアホが。俺が花巻の肩を揉んでただけだ」
「十分エロいじゃねぇかぁぁぁイケメンコルァァ!」
「す、すまねえ藤……」
申し訳なさそうに侘びを入れたのは美作だ。
「あぁ。美作は特別に許してやるよ」
「俺は!?俺はぁぁぁ!?」
美作は安田をずりずりと引きずりながら下駄箱へと向かった。


737:藤花3
10/10/03 05:34:30 hm7N0jgS

『悪い花巻』
『ううん、大丈夫…だよ』
『変なとこで止めちゃってごめんな。続き、やろうぜ』
『うん』

安田は、実は自分の推理が当たっていたことなど知る由も無い。





例の安田の覗きに便乗してやってしまった。
なんかすっきりしないのでその後も作るかもしれません。


738:名無しさん@ピンキー
10/10/03 08:19:43 pPAttCn1
乙です!
途中まではマジで肩もみオチなんだろうなーとか思ってた

739:名無しさん@ピンキー
10/10/03 14:02:29 lPLiAnOB
乙!藤花いいな!

740:名無しさん@ピンキー
10/10/03 14:30:54 h09UhVkt
乙~
やっぱり藤花っていいよな

安田と美作は本当にこんなことしてそうだな。

741:名無しさん@ピンキー
10/10/03 21:22:01 x5m1kpWT
しばらくネット落ちしてたら素晴らしい作品が二作も!
>>720
ハデみのごちです。
超良かったので、是非とも続きを希望。

>>735
藤花いいなー。
安田は絶対いつも覗いてるだろw

藤花に刺激されたので、リハビリがてら書いてみた。

742:すぐに届かなくてもいい 1
10/10/03 21:23:39 x5m1kpWT
花巻家は毎日朝から慌しい。
大抵家族の誰かが絶叫する声から一日は始まる。

「やあああーーー!!!」
その日は妹、美玖の声で始まった。
「…るっせーな、まだ5時半だろが。時間考えろ時間」
隣の部屋から兄の満が寝ぼけ顔で出てきて、美玖の部屋のドアを叩いた。すっかり慌てふため
いている美玖は、ドアを開けると縋るような目で見上げて声を絞り出した。
「…お兄ちゃん…宿題しておくの忘れちゃった」
「はぁあ??んなのお前だったら今からだって出来るだろ。落ち着けって」
100人が100人、この二人を見たら必ず兄妹だと判断するぐらいそっくりな兄は、それでも何とか
テンパっている妹を落ち着かせようとしていた。
「ほら、椅子に座る。それから教科書とノート開け、時間はあるから出来るだろ…」
「うん、ごめんね」
半べそになりながらも宿題に手をつけ始めた美玖は、一日の始まりがこんな風に始まったことに
ちょっと不吉なものを感じていた。

「…はあ…」
登校の足取りはいつも以上に重い。
少し寝不足になりながらも、何とか宿題は完成していた。ただ、そのせいか朝からすっかりペース
が狂ってしまっている。朝食のミルクは床にこぼすし、目玉焼きはすっかり焦げてしまった。これ
ではきっとこれから一日中何かが起こるに違いないと今からびくびくしているのだ。
「よっ、おはよ。どうした?」
「えっ…?」
お腹が痛いとぐずって学校へ行きたがらない小学生のように、道端で足を止めたままの花巻の
肩を誰かが後ろから叩いた。
「…藤くん…」
最近何かと声をかけてくるようになった藤が、相変わらずぶっきらぼうに顔を覗き込んでくる。それ
だけで鼓動が乱れてしまいそうだった。
「なあに朝っぱらから暗くなってんだよ。らしくねーぞ」
「えっ、そんな…」
どう言おうかと考えるだけで、顔が熱くなる。言葉が出なくなる。

743:すぐに届かなくてもいい 2
10/10/03 21:25:42 x5m1kpWT
「まさか腹が痛いとか、じゃないな。顔色は悪くねーしさ」
「う、うん…全然大丈夫。大丈夫、だから…っ」
「そっか。じゃあな」
花巻の動揺を気にも留めないように、藤はさっさと離れてしまった。それでようやく気分が落ち着い
てくると、さっきのことはもしかしたら大変な一瞬だったのではないかとまた慌ててしまいそうになる
のだった。
しばらくはつかず離れずでようやく最近少し進展したかも、ぐらいの感覚だったのに、いきなりさっき
のようなことがあったら、心が追いついていけそうにない。
世の中の片思いをしている女の子たちは、本当にどうやって段階を踏んでいるのだろう。それが
本当に分からない。人によっても違うことだからおいそれと聞けない。
だから自分からどう出ればいいのか、全然分からないままなのだ。

ここ数日、常中の女子生徒たちの話題の中心はこの間公開された恋愛映画の話題ばかりだ。
不器用で感情表現の苦手な少女と、女の子たちの憧れの的の少年の優しくも爽やかな恋愛を
綴った物語だ。
その少年とはあまり共通点がないと思うのだが、映画を見たばかりだということで、藤とダブらせ
て興奮したように話している女子生徒たちがやたら多い。
「ねっ、そう思うでしょ?」
花巻の友人たちも何人か映画を見たらしく、同じようにダブらせているようだ。
「う…うーん、そうかなあ」
映画に興味はあるのだが、さすがにあの映画の少年と藤は似ていないと思う。確かにかっこいい
し、憧れてはいるけど、藤はあんな風に女の子の理想そのもののようには優しくない。漫画の中の
世界と現実は違うのだ。
だからこそ花巻にとっては都合がいい。
もしも藤があの映画の中の世界にいるように、優しく、思い遣りに溢れていて、花巻の気持ちをも
察してくれたとしたら、それこそどうしていいのか分からなくなるに違いなかった。今の自分にも
出来ることで、少しずつ、ゆっくり理解をして、もし進展する関係であるなら着実に進めれば良い
ことだから、とても急ぐ気分にはなれなかった。
「藤くんかっこいいもんねー、やっぱ○○くんみたいっていつも思うよ」
友人たちは花巻が返答をしなくとも全く構わず、話に花を咲かせている。声も大分大きかったの
だろう。
藤が一瞬不愉快そうにちらりとこちらを見た気がして、身が竦む思いだった。

744:すぐに届かなくてもいい 3
10/10/03 21:26:45 x5m1kpWT
「花巻、一緒に帰ろうぜ」
「えっ」
放課後、帰り支度をしていた花巻に近付いてきた藤がそう言い放った。何となく怒っているようで
ずっと気になっていたことは本当だったのだと思い知った。
「あの、藤くん…」
まだ教室には他に何人もの生徒たちがいる。普段花巻と藤はこれといった接点を持たないでいる
ので、突然のことだとその場にいる誰もが思っているだろう。
「他に用事があるのか?」
「ううん、ないけど…」
「じゃ、帰ろう」
もう教室にはいたくないのか、藤は花巻の手を引いてもう一歩を踏み出そうとしていた。慌てて
その後をついて行く花巻は、一体何を言われるのかと嬉しさよりも不安で心が弾けてしまいそう
だった。

「…藤くん」
押し黙ったまま校門を出て商店街まで進んだ藤は、そこでようやく手を離した。
「怒ってるね、怖いよ…」

「怒ってなんかない」
「じゃ、何で?」
「何でだか、なんて分かるかよっ」
怒っていないと言いながらも、藤は不機嫌な顔を隠すこともなく顔を背けている。拗ねた子供の
ようだと思いつつも下手に何か言葉をかけることすら出来ず、花巻もただしばらくの間黙り続ける
しかなかった。
夕方の商店街、そんな二人を買い物に来た人たちが邪魔そうに避けながら通り過ぎていく。
「…お前は、そう思ってないんだろ?」
「え?」
「だ、だからっ、あの映画の、○○とかいう奴がっ…」
やはり映画の中の少年と藤をダブらせている多くの声が藤自身にも聞こえていたようだ。花巻も
同じだと思っていたのだろう。それで怒る理由は分からないままだが。
「だって、私まだ映画見てないもの。原作も読んでない。だから分からないよ、そんなの」
「…そっ、そっか…」

745:すぐに届かなくてもいい 4
10/10/03 21:30:31 x5m1kpWT
ようやく少しだけ藤は態度を軟化させた。
秋の日暮れはとても早い。もう周囲は薄暗くなってきている。家に帰らなければと思う反面、何故
だかこんな藤を放ってはおけないような気がした。
本当に、全然優しくはない。勝手に勘違いして怒るし、いつもこんな風に振り回されている。けれど
それだからこそ映画などではない生身の感情であることが分かる。
「私何も知らないんだけど、多分映画を見たとしてもきっと似ているとは思わないよ。きっと」
「…当たり前だ、あんな気色悪い奴現実にいる訳ないだろ」
すっかり機嫌を直したらしい藤は、また何も言わずに花巻の手を取って夕暮れの商店街の中を
進み始めた。
「あの、藤、くん…」
「こんな時間になっちまったし、腹減ってるだろ。コロッケぐらいは奢るさ」
いつもの素っ気ない声が、わずかに揺れていた。
散々通行人の邪魔をしていたことに心を痛めながらも、花巻はこれがまた二人の関係を少しだけ
進めたことを感じていた。
「うん、ありがとう…」
二人はきっと、これでいいのだ。
現実は夢でも映画でもない。性急に事が進んでしまっては大切なことを幾つも置き忘れてしまう
危険がある。だからすぐにお互いの気持ちが届かなくても、いい。







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