保健室の死神でエロパロ 入室者1人目at EROPARO
保健室の死神でエロパロ 入室者1人目 - 暇つぶし2ch494:汝のこゑ 1
10/07/06 02:55:15 YwF1sJMf
日曜の夜、賑わう街の中で美徳は前後不覚の状態に陥りそうになっていた。
「…こんなところで…」
「いけませんか?」
「いえ…ただ、せめて私の部屋でなら」
激情に流されそうで、吐息のような声が漏れる。
二人が声を潜めているのはほんの少し路地の奥に入っただけの場所だ。すぐ側の大通りを何も
知らない人々が行き交っているというのに、いつ誰が入り込んで来るか分からないのに、こんな
ところで行為に移るのはどうしても憚られる。
なのに、いつもは無理なことなど決して言わないハデスが何故か今夜ばかりは妙に強引で、
戸惑っているのだ。
「ここではちょっと…」
「待てないんです」
ワンピースの裾はたくし上げられて、既にショーツの中に手が潜り込んでいる。思う存分指先で
感じる部分を掻き回されて、今にも意識が飛んでしまいそうだった。膣内から指を伝って溢れて
いる愛液が膝から踝までを濡らしていて、膝に力が入らなくなってきている。
壁に押し付けられたまま欲望を引き出されて、美徳はもうどうしていいのか分からなかった。
「気持ちがいいんですね?」
唇も舌も痺れてろくに動かなくなるほど長いキスの後、耳に流し込まれる低い囁きが心まで一気
に麻痺させてしまう。
「はい…」
焦点の合わなくなっている目の前に、愛液で濡れた指先が突き出される。
「こんなにして、本当に可愛い人ですね」
「あ…逸人さん…」
身体の奥がずっと熱く疼いている。膝どころか身体の力も抜けてしまいそうで震える美徳の片足
が突然担ぎ上げられた。
「…あぁ、ダメっ…」
わずかにずらされたショーツの脇から強引に突き入れられ、声を失うほどの快感に襲われながら
も必死で縋りつく。まさかこんな賑やかなところで本当に事に及ぶとは考えてもいなかったので、
身体の反応に頭がついていかない。
それでも、一度感じた快感は抱かれることで際限なく膨れ上がっていく。

495:汝のこゑ 2
10/07/06 02:55:54 YwF1sJMf
「幾らでも、差し上げますから…もっと感じて下さい」
「逸人、さん…あああっ」
激しく揺さぶられて、一気に極限まで追い上げられていく。もう美徳にはここがどこなのか、何で
事に至ったのか、分からなくなっていた。

「…?」
気がつくと、見慣れた自分の部屋にいた。
どうやらうたた寝をして夢を見ていたらしい。
まだ夢の中の生々しい光景が頭から離れないせいか、ベッドから起き上がることもせずにしばらく
時を過ごした。
まさかあんなエロティックな夢を見てしまうなんて、一体何があったのだろうと自分ながら不思議
に思うほどだ。あれは隠された願望なのだろうか。強引にされることを本当は望んでいるのだと
したら、それは決してハデスに知られてはいけない気がした。
あんな夢を見て感じてしまうような淫らな女など、きっと男は引いてしまうに違いない。そう思うと
心に迷いが生じてしまう。
「どう、しよう…」
夢の中で印象に残っているのは、あの魅惑的な声。普段でも心地良く聞こえるのに、二人だけ
でいる時に耳に響くあの声音といえば、もうそれだけで心が蕩けてしまう。心を奪われた相手の
声であればどんなものでも例えようもない魅力を感じるものとはいえ、あの声だけは本当に特別
だった。
「…逸人さん」
急に寂しくなって名前を呟いた途端、枕元に置いた携帯が鳴る。時計を見れば時刻はもう午後
八時を過ぎている。一体こんな時間に誰だろうと思いながら取ると、夢の中でも焦がれていた声
が流れてきた。
『こんばんわ、美徳さん』
「…逸人さん、どうしたのですか」
『今、駅前の電話ボックスにいます。これからそちらに伺っても宜しいですか?』
「えっ」
信じられないことが起こった。もう明日にならなければ会えないと思っていたのに、ハデスの方
からここに来るという。しかも、あまり好きではないという電話を使って連絡をしてきたのだ。
それは自惚れても良いのだろうか。
『ご都合が悪いですか?』
「いえ…お待ちしています」

496:汝のこゑ 3
10/07/06 02:56:33 YwF1sJMf
携帯を切った後、美徳はざっと部屋の中を見回した。別に散らかっているところや見苦しいものは
ない。このまま迎え入れても構わないだろうと思えることが嬉しい。
もう、ここで会うことに理由などなくなっているのだ。
ハデスにとって、まだ美徳は至らないことばかりある女には違いない。それでも歩み寄って来るし
こちらからも歩み寄りたい。そして普通に恋人と言えるようになったらまた女として一段踏み出せ
るのだろう。
あの優しい声に導かれれば、どんな風にでもなれる。今は心からそう思えた。






497:名無しさん@ピンキー
10/07/06 02:59:06 YwF1sJMf
今回は短いけど、これだけ。
デレ進行してるよ。

498:名無しさん@ピンキー
10/07/06 19:19:51 H5J/ux4a
GJ!最初らへん一瞬クルエルが抜けたハデスかとオモタw

>>493
案外鋭いこと言うよなーさすがみっちゃんwww

499:名無しさん@ピンキー
10/07/06 21:32:23 MncL/z2p
GJ!
まだ知らない大人の世界を見られるのはいいね

>>493
やっぱり美っちゃんは言うことが違う、さすがだよ

500:名無しさん@ピンキー
10/07/07 07:12:13 g2KRwiAo
本好、こんなとこにまで来んなw
中学生の来るところじゃない

501:名無しさん@ピンキー
10/07/08 09:10:40 pSkg/BuT
>>499はあのごうm……勉強部屋に入ってしまったんだよ……。

そしてデレ進行中のみのりちゃんGJ

502:名無しさん@そうだ選挙に行こう
10/07/10 22:41:02 DX9F6wZW
美っちゃん凄いよね。投下すりタイミング失ってもチャンスを作ってくれたり
そういう細かい所にこそ美っちゃんの優しさっていうのかな?そういうものが表れてると思うんだ


というわけで次レスよりようやっとアシタバくんと花巻さんの触りまで書けたから投下

503:名無しさん@そうだ選挙に行こう
10/07/10 22:42:14 DX9F6wZW
もとより臆病であるから、必要以上に疲れることが多い。
夏と言うには随分と過ごしやすい爽やかな休日というのに少年-明日葉郁は背
に汗が伝うのを感じていた。
いくら図書委員が推薦しようと、夏休みに読書をする生徒は、言われなくても
本を読むし、読まない生徒はいくら訴えかけようと読まないのだ。学校も分か
ってはいるだろえが、教育機関という手前、健全な建前を、無駄だからと一蹴
するわけにもいかなかった。もっとも我らが常伏中学の校長に限っては、そん
なことも簡単に無視しそうではあったが。
図書委員と言うのは、概して休日を学校に献上せねばならぬ事態に愚痴を漏ら
さないような従順な生徒がつく役職である。アシタバもそうであり、いま慌てて
駆けてきたクラスのもう一人の図書委員-花巻美玖も例外でない。
「ご、ごめんなさい!!遅れちゃ…ひゃう!?」
何もないのにところで足を絡めて転びそうになり、美玖は素っ頓狂な声をあげ
た。
「危な…!!」
「ひっ!」
-どすっ…-
転びはしなかった。飛び出したアシタバに寄り掛かる形で美玖は止まった。
すこししてからそれが一体どんな絵なのか、パニック気味の頭で思い描くと、
美玖は慌てて身を離した。すでに心臓が苦しい。
「ほ、本当にごめんなさい!!」
「えっ、いや…ぜ、全然。花巻さんは大丈夫?怪我はない?」
「う、うん。だ、だ、大丈夫!ありがとう…」
「じゃあ…うん。い、行こうか?」
「うん…」
この町で一番人通りが多い駅前で、周りの目から逃げるように二人は目的の本
屋に向かった。

504:名無しさん@そうだ選挙に行こう
10/07/10 22:43:21 DX9F6wZW
~~~~

一体自分はどういう状況にいるのか。アシタバは何度も何度も頭の中で整理を
続けた。
図書委員の仕事として、花巻美玖と二人で町の本屋に向かった。緊張こそした
が、問題なく仕事も終わり、解散にしようとした。その時美玖がアシタバの袖
を掴みながら言ったのだ。
-もうちょっとだけ、一緒に…-
学年で、いや恐らくは学校で一番アガリ症な美玖からの予想外の提案に、戸惑
いは隠せなかった。
「アシタバくん…」
「な、何?」
「ご、ご、ゴメンね。無理言っちゃって…」
喫茶店で向かい合って座った二人は、お互いに視線を合わせられずに、びくび
くと震えながらカップを手に取る。喫茶店などアシタバは滅多に行かない上、
女の子と二人きりなど人生で初めてのことだ。
「そんな!もう予定もないし、全然気にしないで」
「アシタバ君には、お礼言わないとって思ってて…」
「お礼?」
「うん…ほ、ほらっ!私あんまり友達いないから…」
確かに美玖が友人と一緒にいるところを、アシタバは見たことがなかった。
ルックスもかわいらしいのに、男が積極的にアプローチしている様子もない。
全ては極度の引っ込み思案からなのだろうか。
「そ…それで、えと、それなのに、ほら…アシタバ君は嫌な顔出さないで接し
てくれて。それが、私にとっては凄い嬉しかったから…」
「嫌じゃないよ!」
あまりの消極的な思考に驚きを感じつつ、アシタバは続けた。
「もっと花巻さんは自信持っていいと思う」
「自信なんて…」
「ぼ、僕は花巻のこと可愛いと思うよ…すごく…」

505:名無しさん@そうだ選挙に行こう
10/07/10 22:44:12 DX9F6wZW
「はひぇっ!?そ、そ、そ、んな…」
一度言葉にしてしまうと、普段は言えなかったものが平気で口から出て来た。
「花巻さんって頭も良いし、性格だって優しいし。僕は…」
「ま、待って……!!こんなこと初めてで……」
パニックになりそうな美玖の手の平を握ってやる。思っていたよりもずっと小
さな手だった。
「僕は花巻さんの味方だから」
「…アシタバ君」
心臓が痛くて仕方がない。離すタイミングを失った手が机の上で宙ぶらりんに
なっている。目が合うと逸らすことが出来なくなり、ただじっと見つめ合った。
「…………お客様」
「たひゃう!!?」
ウェイトレスが咳ばらいをして存在を告げると、二人は慌てて手を離した。ど
こまでいこうと、所詮は小動物。木葉の擦れる音一つで不安になってしまうの
だ。
「チョコレートケーキをお持ちしました」
「えっ?」
「べ、別のお客さんじゃ…」
「毎月第三日曜日は学生のカップルのサービスデーとなっていますので」
カップルという単語に、顔を真っ赤にしながら二人はケーキを丁重に受け取っ
た。弁解する冷静さも、断る勇気もない。
「では、ごゆっくり」
ウェイトレスは足早に立ち去る。別の客に呼ばれたのだろう、こちらから見え
ない所に消えた。
「う、運良かったね…私知らなかった……」
「そ、そうだね…」
冷静になってしまった。決して嘘ではなかったが、あれだけのことを言った直
後に冷めてしまったために、ひどくぎくしゃくしていた。

506:名無しさん@そうだ選挙に行こう
10/07/10 22:47:52 DX9F6wZW
「なんで話しかけちゃいけないのでしょうか?」
「愚物か、本当に神経が通っているのか?」
アシタバ達が喫茶店に入っていた時、喫茶店にはもう一組の男女がいた。
「しかし、あの花巻君が選ぶだけのことはあるな、客が全然いない」
「三途川先生、声が大きいです…」
男は長身。恐ろしい容貌に似合わぬ柔らかな物腰で、向かいの女に振り回され
ていた。
もう一人は、男とは対照的な小さな女。人形のような容姿と格好をしているが、
何一つ憚らぬ言動だ。全てが対照的な二人たが共通して『奇しい』。
「あ、君」
男の諌言を無視して女はウェイトレスを呼び付ける。
「はい、ご注文ですか?」
「あっちの二人にケーキを。できるだけ甘い奴が良いな」
杖でアシタバ達の方を指し示す。
「カップルにサービスをしている、と言っておけばいい」
「はぁ…」
「お代はこちらから出す。あ、あとこっちにマロングラッセとカプチーノ」
どうも解せぬといった表情のまま、ウェイトレスは奥に消えた。
「三途川先生」
「どうした逸人君?」
「一体何を?」
「私が甘いもの好きなのは知っているだろう?」
女は小さく微笑んだ。この女が雲霞のような掴みきれないもので構成されてい
るのは、男も重々承知している。
「じゃあもう一つだけ…」
「なんだ?」
「ここの支払いは…」
「勿論君に決まっているだろう」

507:名無しさん@そうだ選挙に行こう
10/07/10 22:52:17 DX9F6wZW
以上。
「おせーよ、この馬鹿。ヒーロー気取りか」
某ヒゲのコラムの一節がずんと来るほどに遅れてしまいました…
しかも触りだけとかね…。出来次第持ってきます。期待せず待つべし

508:名無しさん@そうだ選挙に行こう
10/07/11 17:32:00 Buh2kKr/
即GJしようと思ったら規制されてた……
GJ!!小動物組めちゃくちゃ可愛い
続き期待!

509:名無しさん@ピンキー
10/07/14 01:13:55 fUdj76Wl
ふと思ったんだけど、ハデスってクルエルで感情食われてんだろ?
勃つのか?

・・・・・・・・・・・・・・・って思ったら、
ハイジの『立った立った!! クララが立った!!』を即思い出した orz..

510:藤花
10/07/15 00:27:13 Fmqyy9e6
・今更「春酔(ヌーディズム)」ネタ
・エロなし



「……さん! どうしたのあなたまで!」
 才崎の叫び声が聞こえる。また誰かが服脱いでるんだろう。
 ハデスは才崎の声がする方に走る。俺たちもそれに続いた。
 才崎はこちらに背を向けて、誰かを羽交い絞めにしているようだ。
 生徒の姿は見えないが、ニーソックスを履いてるようだから女子だろう。……ニーソックス?
「才崎先生!」
「あ……は、ハデス先生。ちょうどよかった」
 才崎がこちらを振り向く。抱え込んだ生徒が見えた。
 しぶしぶとスカートを腰の高さで押さえている女子は、どう見ても花巻だ。
 花巻はいつも以上に真っ赤な顔で泣きそうになりながらホックを留めようとしている。もう正気に戻ってるのか?
「う、ううう……」
 ホックを留めきらないまま、花巻が硬直してうめきだした。なんだどうした? なんか後ろで男の興奮した声と「あれは凶器です」って鏑木の声が聞こえたけどそれどころじゃない。
「どうした」
 俺が声をかけると、花巻は首をぶんぶん振って「やっぱりだめぇ!」と叫び、―履きかけていたスカートをぐいと下ろした。
 こいつまだ罹ってやがる!
「しっかりしろ花巻!」
 俺は花巻を押さえつけるように壁際に追いやり、他の男子の視線から花巻を隠した。
「はっ! ふ、藤くん!?」
「ばか服着ろ……」
 下着を見ないようにして、俺は花巻のスカートを引き上げた。きちんとシャツの裾まで入れて、ホックを留めようとする。
 初めは驚いて硬直したまま俺のやることを見ていたが、はっと我に返るとむずかる子供のようにいやいやと体をよじった。
 目じりに涙をためて、頬を真っ赤にそめて上目遣いに訴えてくる。
「やあっ……恥ずか、しいの……っ」
 おい、と俺が押さえつけると更に嫌がって俺の手を振り払い、スカートをずり下ろしてシャツの裾をたくし上げた。
 ほっそりとした白いもも、淡い紫色の下着、ふっくらとした腹―が、俺の目の前にある。
「……っ!」
 無意識に俺は花巻の両手首を強く握って、縫いとめるように壁に拘束していた。
 頭が熱い。
「花……っ」
 そのとき、花巻の表情が、すっと呆けたような無表情に戻った。
 それから俺を見て飛び上がり、自分の姿を見て悲鳴を上げた。
 花巻から病魔が抜けたことで俺も頭が冷える。
 俺は、俺はなんてことをしようと……!
 しかし恥と後悔に浸る間もない。目を離した隙に、花巻は服を整えながら窓枠によじ登ろうとしていたのだ。
「なんてことをしようと……! 私、私もう生きていけない!」
 俺は引き戻そうと、花巻の腰を後ろから抱きしめる。
「しっかりしろ花巻、はやまるな!」
 廊下に引きずり下ろすと花巻は、真っ赤な顔をノートで隠して駆け去った。あいつこういうときだけ足速いな……。
「いやーっ! ぴーちゃん巻き戻してえええ!」
 後姿から聞こえた悲鳴がなんとも不穏だった。

511:名無しさん@ピンキー
10/07/15 00:28:47 Fmqyy9e6
いつかやろうと思ってたらこんなに遅くなってしまった。
えろなしですまん。

512:名無しさん@ピンキー
10/07/15 00:47:42 CB9yAfM+
>>511
GJです!
オチが好きw

513:名無しさん@ピンキー
10/07/16 00:31:33 67cKJQr7
GJ!
花巻可愛いな。

ところでようやく規制から開放された。
遅ればせながら>>498
それはちょっと狙ったw
クルエル抜けた黒ハデスとみのりちゃんが出会う日はいつだ。

てなことで規制明けの喜びで小品書いた。予告を見てからwktkが止まらないw

514:あんなの
10/07/16 00:32:31 67cKJQr7
とあるのどかな日の休み時間、エロリスト安田がとんでもないことを言い出した。
「やっぱ保健室の先生ってのは男の夢だよなあ。前は良かったのに」
「はあ?」
席の近い美作が呆れたように声を上げる。
「お前、相変わらずな。何しに学校来てんだよ」
「んなもん、決まってんじゃん。女子の萌えるベストタイミングだよ。いつそれが拝めるか分から
ないワクワク感っての?それがなきゃつまんないだろ」
当然のようにさらりと言ってのける安田に更に呆れ返ったのか、美作はもう何も言う気がなくなっ
てしまったようだ。間髪入れずに言ったところを見ると、本当にそう思い込んでいるのだろう。
「あーあ、せめて保健室の先生が前みたいに女だったらどんだけいいか」
一度口に出したことで調子が出たのか、安田の妄想劇場が始まった。若くて美人で巨乳で、
その上優しくてエロくて時々保健の授業をプライベートでしてくれるような、そんな理想の女性へ
の妄想は膨れ上がるばかりだ。
さすがに何も言う気がなかった美作も、適当なところで止めておかないととんでもないことになる
と危惧したのだろう。既に女子たちが遠巻きに白い目で見ている。とっくに変態認定された安田は
もうそんな周囲の目も気にならないのだろうが、そんなのと仲間だと思われたら困るどころの騒ぎ
ではない。
「どこのエロゲーキャラだよそれ、もう休み時間終わるぞ」
「…ちぇっ、萌えぐらいいいじゃんか」
調子良く萌えを語っていたのに、突然冷めるようなことを言われたのが気に障ったのか、安田は
口を尖らせてぶーぶー文句を言う。
「あーあ、保健室にいるのがあんなのじゃなくて、エロいお姉さんだったらなあ」
その声が、偶然廊下を歩いていた美徳の耳に届いた。
午後からは体育の授業があったのだが、不用意な一言のせいで安田は地獄を見たという。






515:名無しさん@ピンキー
10/07/16 23:47:45 upUyxro6
GJ!
みのりちゃんの怒りは天の怒りだな
明日のジャンプが楽しみだ

516:名無しさん@ピンキー
10/07/17 04:56:15 Hqo2YQwL
鈍ちゃんガチレズくさいな

517:名無しさん@ピンキー
10/07/17 11:05:45 gpKBFkN+
ジャンプにエロパロが載ってた…だと…?

518:名無しさん@ピンキー
10/07/17 11:41:58 nSbeSoTy
間違いなくあれはエロパロです
作者自ら空耳プレイとおっぱい×おっぱいを描いてくれるなんて眼福や

519:名無しさん@ピンキー
10/07/18 13:39:39 lWUh45sw
鈍はファッションとして「お姉さま」な雰囲気を強く出してるけど、バイっぽい感じがあるなあ。

あと安田のカード出す姿が無駄に凛々しくてクソワラタ

520:名無しさん@ピンキー
10/07/19 01:20:21 mXoMKN+k
ハデ鈍を見るために覗いたらハデ鈍がマイナーだと知った
そうかハデみのか…その発想は俺にはなかった…

誰かハデスを強引にアレする鈍ってシチュでエロパロ書いてくれー!

521:名無しさん@ピンキー
10/07/19 03:04:25 R6nNlKdh
よし分かった。
明日投下するよ。

522:名無しさん@ピンキー
10/07/19 11:35:48 mXoMKN+k
>>521
神と呼ばせてくれ

523:名無しさん@ピンキー
10/07/19 14:09:11 T77/XWVM
>>521
あなたが神か

正座して待ちます

524:名無しさん@ピンキー
10/07/19 16:36:40 5YtkKpA7
「…」
男が通るだけでざわめきたった。もともと怖面であると言うのに、幽鬼なよう
に力無く歩く姿は、生徒にとって白昼の悪夢だった。
「お、おはようございますハデス先生」
そんな彼に臆することさえしないが、どこか緊張した様子で同僚の才崎美徳が
声をかける。渡り廊下で待ち構えていたわけではないと自分に言い聞かせた。
「…あ、才崎先生……」
どうしたことだろうか。普段の彼なら挨拶など、こちらが恥ずかしくなるくら
い丁寧に返してくる筈だ。それが今日はまるで虫か何か関心の無いものを見つ
けたかのように声を出すだけ。
「ハデス先生?」
「はい、何か…?」
「少し、痩せられました?」
「ハハハ…」
「いや笑うところじゃ…」
「ちょっと私事で、節約していまして」
美徳は何か好機だと直感した。そして、自分でも驚くほど早くに動いていた。
「食べていないのですか…?」
「え?えぇ少し…」
間違いなく好機。直感は確信に変わり、女の研ぎ澄まされた眼光が光る。
「迷惑でなければ、私がお弁当作りましょうか?」
「えっ!?宜しいのですか!?」
想像以上の食いつきには流石に動揺したが、ここで退く訳にはいかない。
「えぇ、毎日作っていますから。一人分増えるのなんて」
「助かります!!本当に何と言えばいいのやら!」
ぎゅっと手を握られ、全身が冷たいやら熱いやら、とにかく美徳は正常な判断
が出来ないほど高ぶっていた。


「ほう…もう少し無給でいたほうが良いかも知れないな」
クスクスと笑いながら、校長室より眺めている魔女がいるのを、二人は気づく
由もなかった。

525:名無しさん@ピンキー
10/07/19 16:39:10 5YtkKpA7
減給となったオチから、今週はこうなると思っていたが、藍ちゃんに想像を越える公式をやられた…
というかこんなんやるならさっさとアシタバナの続きを書けというね…

526:名無しさん@ピンキー
10/07/20 01:00:21 r2mWh4zQ
>>524
神ありがとう!

みのりちゃん、可愛いよみのりちゃん!
うきうきしながらお弁当作っているのが
目に浮かぶよ、みのりちゃん!

527:名無しさん@ピンキー
10/07/20 03:22:08 9jNyzA2j
>>524
みのりちゃん可愛いなあ。
きっとお揃いだよ、慣れない星型とかハート型のおかず作ったりするんだよ。

ところでハデ鈍書いた。
投下するよ。
相変わらずタイトルがダサくて泣けるよ。

528:シザーレイパー 1
10/07/20 03:23:14 9jNyzA2j
突如として保健室にやって来た女に、ハデスは目を見開いた。
「…鈍、どうしてここに」
「ふふっ…」
鈍と呼ばれた女はなかなか用件を言わずに、ただ保健室の様子やハデスを眺め回しているだけ
だった。しかし元々の不審さにどことなく異様な雰囲気が加わっている。
「わたし、あなたに会いに来たの…普段どうしているのかと思ってね」
「だったらもう充分分かっただろう。帰ってくれないか」
「あら…嫌よ~、だって」
あの娘をまだ見ていない、と言いかける寸前で止めた。孤独で人を遠ざけていた昔の友人の姿
からは想像も出来ないぐらい幸せそうなハデスの様子に、その遠因である筈のあの美しい娘を
思う。
壁を作られてあえて遠ざかっている間に、この不器用な友人がそれなりに葛藤しながらも幸せを
掴もうとしているのが何となく癪に感じていた。その上で、まだ相変わらず自己犠牲的な生き方を
しているのもまた何となく気に入らない。それでは結局、いずれあの娘も巻き込まれて不幸にして
しまうだけだ。
周囲の人間にはやたらと気を遣ってばかりだというのに、どうしてそこに考えが思い至らないのだ
ろうとあまりの迂闊さに溜息が漏れる。
一体どこまでこの身勝手な男は浅はかな自己判断で人を振り回し続けるのだろうと思うと、つい
たちの悪い悪戯心が湧くのもこの女の性根ゆえか。

結局、埒も明かないままああだこうだと言い争う形になっている途中で乱入者があったせいで、
室内の空気は一気に変わった。
顔を見た途端に不機嫌になった例の娘と、いつものことのように保健室に集ってくる生徒たちの
様子から、今のハデスの居場所は確かにここなのだと知れたのは収穫だったと思うべきなのだ
ろう。それでも、このまま大人しく引き下がるつもりもなかった。
「今日はこれで帰るわ…じゃあね」
立ち去り際、娘や生徒たちに気付かれないようにハデスに一言二言告げてみる。それで応じな
ければそれだけのこと。ただ、やたら律儀なこの友人の気性上、決して応じない筈はないだろう
と踏んでいた。

529:シザーレイパー 2
10/07/20 03:23:48 9jNyzA2j
午後九時、学校近くの公園に鈍はいた。
確率は今のところ五分五分、といったところか。まあ来なければそれで良しと思うつもりでいた。
どのみち昔のことでもある。
そんなことを考えているうちに、出入り口に人影が見えた。
「…何のつもりだ、鈍」
「さあ…」
誤魔化しながら近付いていくと、ハデスは夜目で一層不気味に見える顔を曇らせた。
「随分変わったと思ったけど、そういう律儀なところは同じね…あのお嬢さんを泣かせることに
ならなければいいいけど、ふふふっ」
「冗談のつもりなら、帰るぞ」
「ダメ」
警戒しているのか、ハデスの表情は硬い。周囲の街灯だけが光源となっているこの場所では、
何を言ったとしてもただの痴話喧嘩にしか聞こえないだろう。それも狙いだった。
「じゃあ、もう一度言うわね…あの時の返事、もう一度聞かせてくれないかしら」
「だからそれは」
顔を逸らして言葉を濁すずるい男の頬に、鈍の手が触れた。
「わたしたち、あまりにも子供だったわよね~、だからわたし、振られても額面通りにしか受け取
れなかったの…でも今なら多分」
病魔に罹った中学生の頃のハデスが選んだのは、自らを犠牲にする罹人の運命だった。そんな
ものに負けた鈍はその選択を表面上受け入れるしかなかった。なのに大人になった今、ハデス
は昔のことなど全て忘れてしまったように別の女と恋をしている。
それが今でも納得出来てはいない。
「よさないか、鈍」
「…ホント、綺麗なお嬢さんよね~、あの人。生まれてこの方、この世の醜いものや悪いものを
一切知らずに大人になったのかしら…羨ましいわ。そんな風に育っていたら、逸人、あなたも
わたしを最初から選んでいたのかしらね」
言葉もないまま立ち尽くしているハデスの側に更に近付き、首に腕を絡めた。唇が重なる寸前、
それを遮るように手が当てられる。静かな拒絶を受けてもなお、挑もうとする心積もりが挫ける
ことはなかった。
「そう…それが逸人の本心ってことね、でもね~」

530:シザーレイパー 3
10/07/20 03:24:28 9jNyzA2j
蛇のような執着心を一気にあらわにして、鈍は渾身の力を込めてハデスの鳩尾を突いた。女の
力を侮っていた訳ではないだろうが、不意を突かれたせいで声を上げることも出来ずに長身の
身体が地面に崩れ落ちる。
気を失ったハデスの頬を撫でながら、鈍は慈母のように優しい表情と凍りつくほど恐ろしい声で
語りかけた。
「わたしが許さないの。分かる?女の情が冷えたらどうなるか、思い知らせてあげる…」

ハデスが目覚めたのはそれからものの数分後のこと。
しかし、様相は完全に変化していた。
両手、両足は紐で縛り上げられ、両手の先はベンチの足にくくりつけられてほとんど身動きが
取れなくなっている。
「ふふふっ…逸人、ようやくお目覚めかしら。気分はいかが?」
楽しそうに話しかける鈍の手には、スラックスを開いて取り出したハデスの一物が握られている。
最初からこうして事を進めるつもりで公園に誘い出したのは正解だった。ここならば、誰がどの
ような振る舞いに及ぼうとも、また他者の目に触れることがあろうとも特に問題はない。
警戒しながらでも、わざわざここに来る方が悪いのだ。
「に、鈍…何をするつもりだ」
「うふふっ、さあどうして差し上げましょうか…」
鈍の指先は勃ち上がりかけて粘液を滲ませているものの先端をくるくると撫でていた。ダイレクト
な刺激ではないが、触られているというだけで昂らせる効果ぐらいはある。
「そんなことをしたところで、僕が」
「黙って!」
気分良く遊んでいたのに無粋な言葉で邪魔されて、妙に気に障った鈍は上着の内側に装着
されたホルダーから鋏を取り出した。月のない夜ではあったが、街灯の明かりを受けて銀色の
鋏はぎらぎらと恐ろしく輝いている。
「美容師を怒らせるものじゃないわよ…怪我をしたくなければね」
冷たく哂う鈍は、力任せに鋏を振り上げて地面にざくりと突き立てた。ハデスの黒いシャツが
一点で地に縫いつけられる。
「お嬢さんに見つかって咎められるような怪我をしたくなければ、従うことよ」
「鈍…お前はそんな奴だったのか?」
「それは逸人の認識不足というものだわ…関心がないから見落としていたのね」

531:シザーレイパー 4
10/07/20 03:25:10 9jNyzA2j
どうあってもこの男の心は傾かない。
今更ながらにそれを感じて、鈍はぎゅっと唇を噛んだ。だからといって始めたことを中断する気
などない。心がなくても身体がこうして反応しているのなら、それで首尾は上々というものだと
手の中に握ったものに徐々に力を強めていった。ぬるつく粘液を手に纏わりつかせて、そそり
勃つ幹全体をゆっくりと扱き上げていく。
「うぅっ…」
その刺激が堪らないのか、ハデスが呻く。
男なんて生き物は一皮剥けばこんなものだ。ここでものを考えて、ここで行動する。それならば
もっと狂わせてやればいずれ心も落ちるかも知れないのだと悪魔の考えが頭をよぎった。
あの、内も外も綺麗で一点の汚れもない娘に対抗出来る目があるとすれば、まさに今夜しか
ないのだ。
「鈍…や、めろっ…」
「嫌よ」
あくまでも抵抗の意を示しているのか、ハデスは必死で腰を捩って愛撫を加える手から逃れよう
としている。そんな哀れな奴隷に再び慈愛の笑みを注ぐと、鈍は握ったままの一物に舌を這わせ、
先端を舐め上げ、口腔内に含んだ。
「やめろぉっ…」
病魔に感情を食われているせいで、何事にも関心がない、性的なことなど全くの蚊帳の外とでも
言いたげな普段の冷淡なハデスの態度からは想像も出来ないほど、鈍が玩具にしているものは
欲望を生々しいほど剥き出しにして収まる場所を求めていた。
「ふふっ…」
夢中でフェラを続けながらも、鈍は笑いが止まらなかった。
もう心なんかいらない。身体さえ自由に扱えるのであれば、どう足掻こうが男は陥落するだけの
ことだ。こうして玩具のように手慰みに出来るだけで嗜虐心は満足する。
鈍の異様なまでの様子に、ハデスの表情が凍りついた。
「やめろ、鈍。これで止めれば忘れてやる。だから」
「…嫌」
もちろん言いなりになるつもりはない。むしろ、本番はこれからなのだ。身の内を焼くほどの熱に
突き動かされながら、鈍は腰に纏わりついているパンツと下着を脱ぎ捨てた。
「鈍!」
男の声など、もう耳には入らない。指で探り当てた膣からは既に充分過ぎるほどの愛液が溢れ
ていた。これからこの男を征服するのだという興奮が余計に昂らせたのだろう。

532:シザーレイパー 5
10/07/20 03:25:53 9jNyzA2j
「ふふふっ…」
逃れることも出来ずにただ目を見張っているばかりのハデスを見下ろして、鈍は薄い笑いを唇に
浮かべた。また何か余計なことを言い出して興がそがれないうちにと、跨って腰を落とす位置を
決める。再び握ったものは、さっきよりも大きさを増していた。
的確に先端が膣内へと潜り込んでいく。じゅぶ、と濡れた音が響いた。
「あぁ…」
不覚にも濡れた声が漏れる。膣内を擦り上げてくる男の欲望の感覚があまりにもリアルで、これ
までの経験が全て吹き飛ばされてしまった。性急にするには何となく惜しくもあり、殊更ゆっくり
腰を沈めていく。
時間をかけて全て身の内に取り込んだ後、鈍は腕を伸ばして地面に突き刺さっている鋏を取り
上げた。
「あーあ…刃先がボロボロ。でも、研ぎに出すつもりだったからいいか」
そして、腰を揺らめかせながら嬉しそうに欠けた鋏の刃を舐めた。深まる歓喜が膣内の蠢きを
更に淫らなものにしていく。
「ふふ…うふふっ、素敵よ逸人…これが欲しかったんだから…」
鋏がまるで先程まで弄んでいた一物ででもあるように舌先でじっくりと舐めずりつつも、腰の動き
は次第に早まっていく。その癖、膣壁が引き入れた獲物を決して逃すまいと巧みにうねり、絞り
上げていく。
それが快感となっているのだろう。反応をするまいとしているハデスが時折顔を歪めて低い声を
漏らしている。
「逸人、気持ちがいいならお言いなさいな、そうすれば、もっと良くしてあげる…」
何か言おうとすればあらぬ声になってしまうのだろう。ハデスは頑固に口を結ぶだけだ。別に
それでも構わなかった。膣を通して快感は直に伝わっている。陥落するまいと耐えることが既に
この性の奈落への入口に立っている証だ。
何も気を遣う必要はない。今はただ互いに欲望のままあればいいのだ。どのみち男と女など、
そのように出来ている。心があろうとなかろうと。
「あ、ああ…本当に、すごい…」
鈍は身体が疼くままに身悶え、激しく腰を振って奥へ奥へと獲物をいざなった。衣服に包まれて
いる豊満な乳房が動きに合わせて重そうにゆさゆさと揺れる。
手にした鋏の刃先は一体どこを向き、何を傷つけようとしているのか皆目見当がつかない。あまり
にも美しく、また恐ろしい狂女の如き鈍の姿にハデスはひたと目を据えている。
引いているのかも知れないが、それは今どうでもいいことだ。

533:シザーレイパー 6
10/07/20 03:26:37 9jNyzA2j
すっかり快感に没頭してしまったのか、鈍は獣のような声を上げながら腰を振りたて、不規則に
蠢く膣壁を駆使して獲物を攻めたてていく。
「ぅああ…いい、逸人が、こんなにいいなんて…!」
身も世もない濡れきった声を上げて、鈍は思い切り膣内を締め上げた。焦らすようにゆっくりと
この行為を愉しむつもりが、思った以上に良かったせいで結局は性急なものになってしまった
ようだ。
「ダメだ、鈍…離れろ!」
もう射精感がせり上がっているのか、ハデスが焦ったような声を出す。しかし、もちろんそんなこと
でこの快感を簡単に手放す鈍ではなかった。膣内を凄まじい力で絞りながらも、ぞっとするほど
艶っぽい表情で笑って無視をしただけだ。
「逸人、わたしを狂わせるあなたを今だけは許してあげる…だから、出して」
その表情のまま、もう一度鋏の刃を舐めた。
「鈍!」
「出しなさいな、逸人!」
その途端、これまでのことがまるで児戯かと思えるほどに絶妙なタイミングで膣壁が獲物に絡み
つき、全体で擦り上げた。一足先に鈍が達したようだった。
さすがにその絶技に抵抗出来る筈もなく、哀れな獲物もまた呆気なく精を吐き出して果てた。

「うふふっ」
月も見下ろすことのない夜、鈍はまだ鋏を玩具にしながら上機嫌だった。ベンチの側ではようやく
拘束を解かれたハデスが憮然として座り込んでいる。色々思うところがあるには違いない。この
友人の性格は嫌というほど分かっている。どうせあの娘への罪悪感で一杯なのだろう。
本当に面倒臭い男だと思った。こんな男とまともに付き合っていけるのは、やはりあの娘だけ
なのかも知れない。
「逸人、まだそんな顔をしてるの?」
「お前には、分からないよ…」
「分かるわよ…ふふっ」
隣に座って顔を覗き込むと、露骨に嫌そうな表情になった。まあそれも無理はない。女に犯される
とは思ってもいなかっただろうから。ただ、今夜のことは鈍自身の気持ちのけりをつけるには丁度
良かったとも言える。

534:シザーレイパー 7
10/07/20 03:27:31 9jNyzA2j
どんなに思っても応えない男を追うのは辛い。
その男が愛した娘にただ嫉妬しただけと捉えてくれてもいい。この混沌とした気持ちに最初から
理路整然とした筋道などはないのだ。鈍自身にも説明は出来ない。
ただ、側に誰がいたとしても幸せにはなって欲しいと思った。それだけは真実の感情だ。
「ねえ逸人」
まだ黙り込んでいる友人に、鈍は声を潜めて囁く。
「病魔の呪いがかかった王子様を助けて、元の姿に戻してくれるお姫様は誰なのかしらね…」






535:名無しさん@ピンキー
10/07/20 06:14:33 8mBnniem
なにこの予想外。。。 GJ!!

536:名無しさん@ピンキー
10/07/20 08:08:22 aZMwX0qN
切ねぇぇぇええええ
GJ!

537:名無しさん@ピンキー
10/07/20 20:13:20 8mBnniem
むしろ、ハデス先生はイった瞬間だけ、もとの健常な姿に戻るのかもしれないな。

って、おもた。

538:名無しさん@ピンキー
10/07/20 23:30:30 D+nvJ5JK
相変わらず素ん晴らしい腕前wグッジョブっす!

539:名無しさん@ピンキー
10/07/21 03:57:47 N7Hg+3ku
直接は続いていないけど、後日談のようなもの。
一応ハデみの職人なんでフォローはしとかないと、と思った。
鈍はもちろん嫌いじゃないよ。

540:アフターケア 1
10/07/21 03:59:05 N7Hg+3ku
部活に勤しむ生徒たちもほとんど帰宅してしまった時刻、人が少なくなったことに乗じて美徳は
保健室にいた。
鈍というあの女が乗り込んで来たのは昨日のことで、正直まだハデスに対しては怒りを覚えた
ままだ。突然のことで対処も出来なかったのは仕方がないだろう。それでも、以前にも深夜に
呼び出されていたことがあるというのに、危機感を持たないにも程があると。
「…まだ怒っていますか?」
お茶を淹れてくれたハデスは、美徳の様子を伺うように声をかけてくる。妙に疲れてでもいるのか
今日は何となく元気がないように見えた。その原因を美徳は知らないし、知ってはいけないとも
感じていた。何故だかも分からないけれど。
「別に、とは言えません」
「そうですか…」
もう来客もない時刻でもある。ハデスは一度ドアを見遣ってから美徳の隣に腰を降ろして大きな
溜息をつく。やはり今日の様子はいつもとは明らかに違っていた。怒りはもちろんまだ残っては
いるが、そちらの方に気が逸れてしまう。
「あの、お具合でも悪いのですか?」
「…いいえ、どうしてですか?」
「今日は朝から何となく違っているようでしたので」
いよいよ本気で何かあると心配をし始めた美徳に、ハデスは誤魔化そうとでもいうのか下手な
笑い顔を作った。
「私はそんなに頼りになりませんか?」
「美徳さん?」
普段の顔とは違う表情を見て、頭に血が昇った。
「嫌なんです…私。あなたが自分で何もかも背負い込んで、一人で解決しようとしているのは。
もちろん、それで済むのなら何も言いません。でも荷が重い時だってあるでしょう?そんな時に
頼ってはくれないのですか?」
「…そうではありません、ただ…」
ハデスは何か言いかけて、やはり途中で止めた。女の勘ならずともいぶかしむには充分過ぎて
かえって不安になる。この男に一体何が起きたのだろうと。
本来、もう少しずるく立ち回ろうとすればこの程度のことなら平気で嘘をつく筈だ。それも出来ず
にただ下手な誤魔化しをしようとするばかりなのは、それだけハデスが根っから善良な気性で
ある証拠なのだろう。だから今日までの間に何かがあったことで、一人で悩み苦しんでいる。

541:アフターケア 2
10/07/21 03:59:45 N7Hg+3ku
「…もう、いいのです」
まだ今の時点で美徳の中で解決しているものは何一つない。怒りも心配も言いようのない感情
も全てひっくるめて心にわだかまったままだ。
それでも、目の前で懊悩しているハデスの姿はあまりに痛々しく、わずかでも責めるようなことは
言えなくなってしまった。
「私はただ、あなたのことが心配で…どうすれば良いのでしょう」
理由を詮索することなど尚更出来ない。だとすれば少しでも気が晴れるようなことがあればとも
思うが、混乱しているせいか少しも思いつかなかった。
「…では」
不意に俯いていたハデスが口を開いた。
「今夜お伺いしてもよろしいですか?」
「…え?ええ…それはもちろん構いませんけど」
ハデスなりの言い回しではあるが、それは『泊まりに来る』ということだ。しかし、これまでは週末
だけのことで、翌日も出勤する平日に言い出すことなど決してなかった。律儀なこの男があえて
自分で取り決めたことを破るほどのダメージを受けているのであれば、黙って要求を呑むのも女の
役目なのだと思う。
「ありがとうございます、美徳さん」
顔を上げたハデスは、間合いを詰めて手を握ってきた。白髪の奥から覗く眼差しがとても真摯で、
視線を逸らすこともなく見入ってしまう。この男の真実を知りたいのならいつでもそこにあるのだと
思えた。
「そんなことで少しでも癒せるのであれば、嬉しいのですが」
「…美徳さん」
視線に絡め取られてしまったように身動きが出来ない。息を呑んでいる間に寄せられた唇が耳を
撫でた。それをきっかけにして戯れるように形をなぞられる。
「あっ…」
ただ、それだけなのに身体がざわめいた。最初の夜からこれまでの間に延々と蓄積され続けて
いる莫大な快感はいつ露出するのか美徳にも分からない。些細なことでスイッチが入ったように
この男の為の身体に変貌するのだ。
今この時に、そうなってしまいそうなのが怖かった。
「ああ…逸人さん…」
「もう少しで帰宅時間になります、一緒に帰りましょう」
「…はい」

542:アフターケア 3
10/07/21 04:00:36 N7Hg+3ku
軽く耳を愛撫されているだけなのに、身体だけが勝手に暴走を始めてもっと強い刺激を待ち望ん
でいる。完全にスイッチが入ってしまったようだ。
「身勝手なわがままを聞いて頂けて嬉しいです」
美徳が昂っているのを察しているのか、ハデスはなおも緩い愛撫を続ける。間近で聞くだけで
心が蕩けきってしまうほど大好きな声が産毛を撫で、煽るように歯が敏感になっている耳朶を
微かに噛む。
「…っ、あの…」
これ以上されたらここでして欲しいと形振り構わずねだってしまいそうで、美徳は強く目を閉じて
その甘い誘惑を振り切った。
「私、職員室に戻ります…支度します、からっ…」
抱き込もうとする腕から逃れるように慌てて立ち上がり、ドアを目指す。約束を取り付けたことも
あるのか、ハデスは先程より生気を取り戻したように見えた。

今夜は帰途の足がとても軽く思える。
いつも平日は一人で帰るのに、今夜は隣にハデスがいるのだ。学校での他愛無い出来事など
を話したりしながらも、思いはその先へと繋がっていた。ようやく少しだけ鎮まった身体の熱は
依然として美徳を悩ませている。
早く人目の届かないところで互いにゆっくりと愉しみたい。それだけが頭の中を占めていた。
アパートまではそれほどの距離もない。程なくして部屋に着いた二人は開いたドアの前で黙った
まま目を見交わし、中へ入る。
ドアの内鍵を掛けるなり、美徳の身体は玄関の壁に押し付けられた。
「逸人さん…?」
「すみません、ずっと我慢をしていたんです…少しこのまま…」
驚いたものの、口腔内に捻じ込まれた舌に応えているうちにまた頭の芯が蕩けてくる。そうして
いる間にもハデスの手は美徳の服をはだけてブラを引き剥がし、剥き出しになった乳房を両手で
ぐいぐいと揉んでいた。
「ぁふっ…」
息もつけないほどのキスの合間に酸素を求めて喘いだ喉が引き攣れる。
「あぁ…こんなところじゃなくて、ベッドで…」
そんな美徳の声もまるで聞こえていないのか、ハデスは乳房に齧りつくように歯を立て、乳首を
中心に舐め回していた。いつになく強引で執拗な遣り方に、身体はどうしようもなく追い上げられ
ていく。

543:アフターケア 4
10/07/21 04:01:37 N7Hg+3ku
「はぁんん…ダメ、です…そんな…」
乳房への愛撫が続けられている間、美徳は必死で膝が崩れそうになるのを耐えていた。まさか
こんなところで立ったままされるとは思ってもいなかった。それでも、経験のない行為のせいで
余計に昂ってしまうのは確かで、今日はまだ指一本触れられもいない体の中心が疼いて仕方が
なかった。ショーツの感触が不快になってきたのは、もうはしたなく濡れているからなのだろう。
「…逸人さん」
懇願するような美徳の声に、ハデスはようやく乳房から顔を上げた。
「…取り乱しまして、申し訳ありません」
「いえ…」
今夜のハデスを怖いと思わない訳ではない。それでも、こうしていることで少しでも救われること
があればいいと美徳は一度も拒絶の言葉を口にしなかった。いつもどことなく人を避けている
様子のハデスが、ここまで人を求めていることに意味があるのだから。
「ベッドに行きましょう…」
「はい、逸人さん」
ようやくのことでベッドに辿り着いた美徳は、乱れた服を脱ぐこともままならないうちに抱き締め
られて気が遠くなった。
「早く、私を思う存分抱いて下さい…」
頭の芯がぼんやりしている。ジーンズの生地が肌に貼り付くほどに溢れた愛液のせいで、足
から抜き去るのが大変だった。ショーツも正視できないほどびしょ濡れになっていて、恥ずかしい
ほどだった。そんな思いをも越えて、今夜は最高に高まり合いたかった。
「随分濡れてますね、慣らさなくてもいいですか?」
あの声が耳を撫でる。もちろん美徳もそのつもりだった。安全日に入ったのも好機だ、今夜ばかり
は二人を縛るものは何もない。
「はい…そのまま来て下さい」
そう答えるか答えないうちに、膣内を侵略してくるものが美徳を喘がせた。
「あぁあっ…」
その途端に身体が悦びに溢れた。女としての快感を得て愛される実感で肌も髪も見違えるほど
に潤み輝く。
「美徳さん…」
「逸人さん、もっと…」
もう二人とも我慢出来なかったのだ。一切の躊躇もなく激しく突きまくられながら、美徳もまた心
置きなく甘い声を上げ、悶え狂った。愛される一人の女として色鮮やかな美しい花を咲き誇らせる
姿は眩いほどだった。

544:アフターケア 5
10/07/21 04:02:11 N7Hg+3ku
その夜は二人とも何かに憑かれたように時間を惜しんで抱き合った。
体位を何度も変えながら交わった為か膣内で擦れ合う場所が微妙に変化していて、それがまた
新しい昂りを呼ぶ。
「上に、乗って頂けますか?」
最後にはその要求通りに馬乗りになって腰を振った。他の体位とは全然違って、最も奥までを
自分で導く体勢に肌が染まり上がったが、それ以上に激しい快感が身の内を突き上げて何も
かも分からなくなってしまった。
何度抱かれたのかも、もう分からない。

「もう朝ですから、僕は帰ります」
明け方、しっかりと抱き合って眠っていた男がそう告げた。
幸せな眠りの中から目覚めた美徳の唇にキスをすると、耳元で囁く。
「昨日は無理をさせてしまいました。この埋め合わせはまた週末に」
「…少しは私、お役に立ちました?」
ずっと気にかけていたことを尋ねると、男はいつもの優しい微笑を返してきた。
「もちろん、嬉しかったですよ」
美徳はただ、立ち去る後ろ姿を眺めるばかりだった。結局のところ、ハデスが抱えている問題が
こんなことで解消した訳ではないだろう。美徳もほとんどのことは知らない。それでも、少しは
気の晴れる手段としてでも繋がりを持っていたかった。
「また学校でね、逸人さん」
最初から艱難のある恋なのは美徳も承知の上だ。今更些細なことで手放す気になどとても
なれない。






545:名無しさん@ピンキー
10/07/21 19:13:46 C7HtN22e
GJ!
やっぱりハデスはみのりちゃんに癒しを求めたかw

546:名無しさん@ピンキー
10/07/21 19:36:50 rKAT2atz
ハデスがこんなにオッパイスキーだったなんて・・・・・w

547:名無しさん@ピンキー
10/07/21 23:49:45 C7HtN22e
そりゃ、ハデスも男だ。
その上みのりちゃんのおっぱいならもう…。

548:名無しさん@ピンキー
10/07/22 06:07:31 HH765HEb
みのりちゃんお誕生日おめでとー

逸人さん美徳さんの関係でもなく、エロもないけど
電波受信したのではじめての作文置いてみる

549:名無しさん@ピンキー
10/07/22 06:08:48 td2zfjWO
夏休み―
チャイムに縛られていない校内の見回りは学期中以上に気を使う。
いつものように「私がしっかりしなくちゃ」と
張り切って校内を回っていた才崎美徳は、
ふと、ある部屋の前で足を止めた。
トントン…
返事を確認して、引き戸を開ける。
「こんにちわ。見回りですか?才崎先生」
くるりと振り返ったのは相変わらず不気味な顔の養護教諭。
「ええ。」

ただ。
不気味は不気味だけれど。
彼の今の表情が、彼なりの笑顔だということはわかる。
…わかるようになった。いつの間にか。

閑散とした保健室の片隅には、給水用のポットが山盛りになっている。
「今日も暑いですからね。生徒たちが熱中症にならないように
準備しているんです」
美徳の視線に気付いたハデスが、拳を握って力説する。
「いつ生徒たちが来ても平気ですよ。才崎先生も一杯…」
「それで、今日は何人が?」
食い気味で質問をすると、びくりとハデスの肩が震える。
「………………」
「ハデス先生?」
保健室に立ち寄ったのは、怪我の生徒がいないかの確認のためだ。
ちゃんと答えを聞かなければならない、と美徳は口調を強めた。
「何人、ここを訪れたのですか?」
「……才崎先生が一人目です」
「そう、ですか……」
気の毒なくらいに肩を落としているハデスに美徳は一瞬かける言葉を失った。

もうすぐ17時になる。
部活動の生徒も撤収を始めている。
今日はもう生徒は来ないだろう。

「子供たちがみんな元気なのは素晴らしいことです」
慰めにもならない言葉をかけて美徳は苦笑する。
「ポットの片づけ、お手伝いしましょうか?」
「いえ、それは大丈夫です。僕が自分で片付けます。それより才崎先生」
ハデスが、優しく笑った。

「コーヒー、飲んでいかれませんか?」

550:名無しさん@ピンキー
10/07/22 06:10:37 Lh0WRJ5B
(何やってんの、私ってば…)

うきうきとコーヒーを淹れるハデスの背中を見守りながら
美徳は少しふくれていた。

(確認だけ取ったらすぐに退散するつもりだったのに)

(ついうっかり頷いただけなのに、あんなに嬉しそうな顔をするんだもの)

(仕方なくよ、仕方なく。だって誰も来てないのは可哀想だもの)

(職場の人間関係を良好にするために、私は社会人として…)

「…んせい…才崎先生?」
「え、あ、はい。…きゃっ」
目線をあげると、至近距離で、ハデスの顔。
「お疲れですね」
「いえ…その…」
(近い、近い、近い!)
白髪が頬に触れた気がして美徳は思わず仰け反った。
「こころなし顔も赤いですね。大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫です!!」
「そうですか、あまり無理はなさらないように」
訝しげな顔をしながら向かいのソファに腰掛けるハデスをみて、
美徳はほっと息をついた。
「どうぞ、召し上がれ」
テーブルにコーヒーと、ピンポン玉より少し大きいくらいの白い和菓子が二つ。
「…これは?」
「まずは、一口」
促させるままに手に取ると、ひんやりしている。
「アイス、ですか?」
黙って、にこにこと見守っているハデスを軽く睨んで美徳はそれを口に入れた。
シャリ…シャリ…
(冷たくて、美味しい。これは、いちご?)
確認するように二つ目を頬張ると、そちらにもアイスに包まれたいちごが入っていた。
凍りついたいちごを舌の上で転がすように味わう。
甘くて、ほのかにすっぱい。でもそれが美味しい。
美味しそうに頬張っている美徳を満足げに見つめながらハデスが口を開く。
「好きなんです」

(……な、何を突然…)
美徳の動きがぴしりと止まる。
「いちご大福、子供たちが」
咽そうになりながら、美徳は口の中のアイスいちご大福をなんとか嚥下した。
「こ、子供たち…そうですか…」
(び、っくりした…)
「どうですか?」
「美味しい、です」
「それはよかった。これは才崎先生のために買ってきたものですから」
美徳をまっすぐに見つめながらハデスが微笑んだ。
その視線の強さに、胸が苦しくなる気がして美徳は小さく喉を鳴らす。
「私の…?」

「誕生日には、いちごでしょう?」

美徳は息を飲んだ。

551:名無しさん@ピンキー
10/07/22 06:14:40 PZNbs5Am
ちらりと横目でカレンダーを確認する。
今日は7月22日。
間違いなく、自分の誕生日だ。

「どう…して?」
「この前の健康診断のときに、全校生徒を覚えていたんですけれど
 校長先生に先生方も覚えろと指導されまして」
(校長先生に…?)

ちょっと、胸が、ちりっとした。
自分の誕生日を知っていてくれていたことに喜んだ気持ちが
急速にしぼんでいくのがわかった。
しぼんだ気持ちは、そのまま怒りに変換されていく。
「先生方全員に贈られているの?大変ね」
つん、と横を向きながらコーヒーを一気に飲む。
「いや…それは…その…」
「ごちそうさまでした」
あたふたしているハデスを後目に、美徳はすっと立ち上がった。
「戸締り、忘れないようにしてくださいね。お疲れさまでした」
「あああああの、さ、才崎先生!」
「なんですかっ!」
一瞬前まで美味しそうにお菓子を頬張っていた女性が、今では何故だか怒っている。
呼んだはいいが、次が出なくてハデスは途方にくれたまなざしで美徳を見上げた。

「お誕生日おめでとうございます」

しばらく迷った末に、一つ息をついてハデスが言った。
一つしか返答の選択肢のない言葉に、美徳はいちごの酸味の残る唇を一度きゅっと閉めて、開いた―







552:名無しさん@ピンキー
10/07/22 06:16:38 6/2C5lvr
おそまつさまでした。


神様がエロくて幸せなみのりちゃんを落としてくれますよーに

553:名無しさん@ピンキー
10/07/22 17:03:00 Vv6ysfOy
GJ!!すげえにやにやしたww
好きなんです~校長に のあたり原作でもありそうで上手いと思った。
これ読むまでみのりちゃん誕生日って知らなくてごめん

554:名無しさん@ピンキー
10/07/22 20:17:04 +KZkvj1C
GJ!
そういやそろそろみのりちゃんの誕生日だなと思ってたけど、すっかり忘れてた。
思い出させてくれてありがとう。
何か書きたいけど、エロくならないかも。

555:名無しさん@ピンキー
10/07/22 22:32:22 AIeaHocI
カモン!

556:名無しさん@ピンキー
10/07/22 22:45:22 3kiSNKSS
オ~ゥ イエス イエス! カマァ~ン!!

557:名無しさん@ピンキー
10/07/22 23:55:49 eu6092jp
何とか今日中に間に合った。
みのりちゃん、誕生日おめでとう。
こんなもので良ければ進呈するよ。

558:真夏の夜の薔薇 1
10/07/22 23:56:50 eu6092jp
「才崎先生」
ここ数日は真夏日が続いてうだるような午後の廊下で、美徳は思いがけなくハデスに話しかけ
られた。
「…何でしょう」
たまに羽目を外すこともあったりなかったりするが、職場である校内では他の職員と同じように
一線を引いた付き合いを素知らぬ顔で続けている。この関係は校長の三途川(と、アシタバ)
しか知らないことだ。別に後ろめたいことは何一つないのだが、何となく自然とそういう感じに
落ち着いている。
ハデスとの関係は相変わらず良好なのが何よりのことだ。
「今日はお誕生日でしたね」
「……あ」
期待していなかったこともあって、自分の誕生日などすっかり忘れていた。しかし異常と思える
ほどに周囲の人に気を遣いまくる性格のハデスが、美徳の誕生日を忘れる筈もないことをことも
あろうに失念していたようだ。
思わず嬉しくなってしまったのだが、次の台詞で脊髄反射してしまう。
「確か」
「それは言わないで下さい!」
「…は?」
マッハの速さで言葉を返した美徳に、ハデスは唖然としている。
きっと年齢のことを言われると思ったのだ。
年齢、それは世の女性たちにとっては現実という地獄の入り口である。
二十代前半までならまだ若さを誇って浮かれていてもいいだろう。しかしそれを過ぎれば愕然と
するばかりだ。
四捨五入するなんてもってのほか。
両親がそろそろ結婚しろとうるさくなってくる。
鏡を見るのが辛くなってきた。
など、悪いことばかりが見えてくる。正直誕生日が来るのはあまり有り難くないのだが、ハデス
がこの日を覚えてくれていたことだけは純粋に嬉しい。
それでも年齢の話題だけは避けたい。
そんなことばかりが頭の中をぐるぐる回っていて、また一人だけで空回っていた。

559:真夏の夜の薔薇 2
10/07/22 23:57:35 eu6092jp
「あの…それでですね」
美徳の反応に驚きながらも、ハデスは話を続けようとしてきた。
「以前、薔薇がお好きだと聞いたことがありましたので、これをどうぞ」
「…え?」
「たくさん差し上げられないのが心苦しいですが」
そう言って、白衣の陰に隠し持っていたものを差し出してきた。一輪だけラッピングされた真紅の
薔薇だった。
「これ、私に?」
「ええ、どうぞ。僕が不甲斐ないせいで今はこれしか…でも来年はもっと」
「そんな…とても嬉しい…」
ハデスが今、経済的に余裕がない事情はある程度知っている。だからまさかプレゼントなんて
想像もしていなかった。少ない中からわざわざこうして捻出してくれた心遣いが嬉しい。この男が
花屋でどんな顔をして薔薇を買ったのだろう。その場面を考えると微笑ましくも思えた。そして、
恐らくハデスは何も知らずにいたのだろうが、一輪の真紅の薔薇には意味がある。千も万もの
豪奢な薔薇の花束よりも価値があるものが隠されている。
女なら誰でも心から欲しいと願うそれを、美徳は確かに貰うことが出来たのだ。嬉しく思わない
筈がない。
「大事にしますね」
受け取った薔薇はまさにこれから咲かんとしている状態で、色鮮やかで艶やかな花弁がとても
綺麗だった。
「喜んで頂けたようで、嬉しいです」
「それで、ですね…」
よほどうっとりした顔をしていたのだろう、ハデスがその瞬間引いたように思えた。以前、突然
欲情した時のことを思い出したのかも知れない。EDにならなくて良かった、と今この場ではどう
でもいいことを考えてしまう。
「キス、して貰えますか?」
幸い、時期は夏休みに入ったばかりで生徒も部活で来ている者しかいない。こんなところで長話
をしていても誰も咎めないし知ることもない。
「それで、よろしければ」
何となくほっとした様子のハデスが、廊下の端から端までを見渡してから身を屈めて唇を重ねて
きた。来年も、再来年も、こんな日が来るのであれば年齢のことなんて忘れてしまえるほど瑣末
な問題だ。この男ならば何年経とうと変わることなく誕生日には一輪の薔薇をくれるのだろう。

560:真夏の夜の薔薇 3
10/07/22 23:58:16 eu6092jp
保冷材のお陰か、帰る頃になっても薔薇は綺麗なままだった。すぐに水に挿せばしばらくは目を
楽しませてくれる。いつでも一番大切な人が側にいてくれるように思えるのだ。
しかしその後数日に渡って、薔薇を眺めてはニヤニヤしたり急に顔を赤くしてベッドで物凄い勢い
で転がり回る美徳がいたことを誰も知らない。
ハデスもそんな姿をうっかり見たら、また引いたかも知れない。






561:名無しさん@ピンキー
10/07/23 00:28:53 NuY9LFuZ
あ、まーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーい!!!!
GJ!!

562:名無しさん@ピンキー
10/07/23 01:06:52 zDSxbpv/
ちょっみのりちゃん可愛いな・・・!!
ベッドで物凄い勢いで転がりまわったのは俺だ!
GJ!!!

563:名無しさん@ピンキー
10/07/23 06:24:40 uEYFLRun
GJ!
ニヤニヤした!
ニヤニヤしたよう~
みのりちゃん幸せそうでこっちまで嬉しくなります

ハデス先生、一輪の薔薇が様になりますね。

564:名無しさん@ピンキー
10/07/23 22:47:34 n5HfxKG1
誰かシンヤと鈍で描いてくれる神はいないものか

565:名無しさん@ピンキー
10/07/25 03:21:03 JQjm4qqN
ハデシン…

566:名無しさん@ピンキー
10/07/25 07:46:55 C/hWPi7U
一巻から読み直したら、アシ花と藤シンが見たくなった

567:名無しさん@ピンキー
10/07/25 14:43:38 40iAtusG
シンヤ厨って必死だな
悲壮感すら漂っているよ…

568:名無しさん@ピンキー
10/07/26 12:15:35 9ZDrFNHi
だけど俺はシンヤを支援しつづける!
藤シンも案外いいと思うんだ

569:名無しさん@ピンキー
10/07/26 12:27:57 MuTWAnMw
その熱意を作品として文章にしてみると、もっといいと思うよ

570:名無しさん@ピンキー
10/07/26 20:52:20 AlMjY26s
アシタバと校長が良い

571:名無しさん@ピンキー
10/07/27 00:16:43 Pmmhn20r
アシタバと校長は俺も考えたことはある
校長と生徒ってのと、更にそれと矛盾したあの体型からくる背徳感がいいよな

572:名無しさん@ピンキー
10/07/27 11:43:19 QPWRMvdI
>>567
頼むから煽らないでくれ

573:名無しさん@ピンキー
10/07/30 00:37:51 LH7YOygD
ちょっと不思議な感じを狙っただけなんで、エロなし。

574:透明夜
10/07/30 00:38:50 LH7YOygD
「今夜も送りますよ、美徳さん」
この頃は帰途につこうとすると、当たり前のようにハデスが促す。
もちろん拒むつもりなど微塵もない。
学校では一緒にいる時間などなかなか取れないのだ。職務を離れた時ぐらい共に過ごす機会が
あってもおかしくないだろう。ハデスの方にばかり負担がかかるからと最初こそ抵抗があったの
だが、それは穏やかに受け流された。
「あなたに何かあってはいけませんから」
確かに一人で帰る夜道は暗がりから何かが出て来そうで怖い。学生時代から柔道を続けてきて
体力にも自信がある美徳でもそう思うのだ。普通の女性であるならどれほどの恐怖を感じること
だろう。
「…私も女なのですね」
「あたら危険な目に遭わせたくはありませんので」
決して押し付けがましくなく、寄り添う影のようにアパートまでの道をただ付き添っているだけでも
守られている実感がある。そして大切に思われている喜びがある。
泊まりには来ない平日でも、その充実感があれば寂しいとは感じずに済んでいた。

途中の歩道橋の上でふと足を止めると、夜間でもひっきりなしに流れる車の波が流れる閃光の
ようで、見慣れているとはいえしばらく心を奪われてしまった。どの光の中にもそれぞれの一日
がある。喜びも悲しみも感じながら生きている。
けれど、この夜の中ではただの光の一つになって流れていくだけだ。
美徳もまた、今こうして夜目に紛れている限りはどこの誰とも知れない存在だ。中学校の教員で
あることなど通り過ぎる人は誰も知らない。ただの若い女であるという、それだけ。
「どうかされましたか?」
立ち止まったまま絶え間なく車が流れる道路を眼下に眺めている美徳を不思議に思ったのか、
ハデスが尋ねた。
「今の私は、誰でもないのですね…あなたも」
「それは一体」
あまりにも抽象的に過ぎるその言葉の意味を表情から察したのか、愛しい男は黙ったまま隣で
同じように車の流れを眺め続けた。
「綺麗…ですね」
「そうですね、美徳さん」

575:透明夜 2
10/07/30 00:39:31 LH7YOygD
歩道橋の上で、ただ流れる光を眺める美徳は無心になっていた。
「逸人さん、もし私があなたの知る女ではなく、他の何者でもなかったとしても…同じように側に
いて下さいますか?」
それはまるで禅問答だ。あまりにも現実味のない光景を前にして、魂が浮世へと剥離している
せいで口から出る言葉も普通であれば到底まともに捉えられなくなっている。
しかしそれでもハデスは馬鹿正直に言葉を返す。
「もちろんです、美徳さん。それがあなたの望むことであるのならば」
「決して強制ではありません。それでも」
「ええ、それでもです。そうして欲しいと思うのでしょう?」
「……はい、きっとそうです」
この世ならぬ光に釣り出されて浮遊しかけていた魂が、現実に立ち戻る。あまり長くここにいたら
いけない、そんな気がした。
「さあ、行きますよ」
危険な気配を察したのか、再び光に魂ごと連れ去られそうな美徳の肩を抱いてハデスが囁く。

奇妙な夜だった。
歩道橋から離れてしまっても、まだ瞼の裏にあの絶え間ない光の明滅と流れが焼きついている。
忘れてしまおうにも、激しい閃光を眼前で見たように決して消え去らないのだ。時折立ち止まって
目頭を押さえる美徳に、影のように寄り添う男が労わるように何かと気遣う。
「お疲れになったのですか?」
「いえ…何でも」
「何か冷たいものを買って来ますから、ここに座っていて下さい」
そう言って、傍らにあったベンチを差す。
お願い離れないで、と言おうとした口は何故か動かなかった。
こんな感覚は今までになかった。
以前の自分なら有り得ないことで、恋を知ってから目に見えて弱くなっていることを自覚するしか
ない。誰かに心を許し、全てを任せることがこれほど人を弱くするのならば、以前の自分は決して
恋を選択しなかった。孤独でも一人でいることを望んだだろう。
それを知っていながら、今の美徳は迷いもなく手中にした恋を選ぶのだ。どれほど心弱くなろうと、
それは単なる今後の試練でしかない。
だから怖くはないのだと未知の恐怖に震え上がる心に必死で言い聞かせる。

576:透明夜 3
10/07/30 00:40:13 LH7YOygD
「お待たせしました」
ベンチに座ったまま身を竦めている美徳の隣に、ハデスが腰を降ろした。そして水滴の浮かぶ
冷たいミルクティーの缶を握らせる。
「…冷たい」
「夜になっても暑いですからね、体調も悪くなるでしょう。気が済むまで休んでいていいですよ、
付き合いますから」
「はい、ありがとうございます」
体調そのものは別にどこも悪くない。ただあの光に目が眩んだだけだ。それでも、こうして少し
でも一緒にいられる機会が出来たのであればそれは美徳にとって喜ばしいことだ。本当に、
学校では接する時が少な過ぎる。
ハデスがこの間初めて携帯を買ったという知らせは、生徒たちの間で一通り伝わってからよう
やく耳に入ってきた。それは詮索しない主義を通しているのでまあいい。けれど番号を教えて
貰った今でも、一体いつかければ良いものかと躊躇している。
こういう仲になった今でも、きっかけが掴めないでいるのだ。
あれこれと迷うのも変な感じで、結局まだ一度も電話をしてはいない。そうしてただ偶然の機会
があればこうして嬉しくなるだけの日々を繰り返している。
本当に、面倒臭い女だと嫌になるほどだ。
「美徳さん?」
決して答えもあてもない思案に耽っていると、心配をしたのかハデスが話かけてくる。驚くほど
顔が近くてその分真剣な目の色が心をぐさりと射る。つまらない考えに陥っていることに罪悪感
を覚えるほどに深い色をしていた。
「…いえ、何でもありません…逸人さん、一つわがままを言ってもよろしいですか?」
「ええ、どうぞ」
片時も離れたくない、ずっと側にいて安堵を感じていたい。思いが深まる度にそんな不安感が
募るばかりだ。そんな子供じみた独占欲など馬鹿げたことだと思ってはいても、心が次第に蝕ま
れていくのを感じている。
恋とは、本当に厄介なものだ。
「私は、あなたを愛しています」
「嬉しいですよ、美徳さん」
「私にも、そう言って貰えますか?たった一度でいいのです…」

577:透明夜 4
10/07/30 00:40:43 LH7YOygD
思えば、最初の夜から今まで、ハデスからその類の言葉を聞いたことはない。一緒に過ごせる
ことが嬉しくて言葉をねだることもなかった。だけどやはり女なら思う男から直接心からの告白を
聞きたい。
そんなわずかな鬱積が今、心の隙間から突然口を突いて出てしまった。
「そうですね、まだあなたに言っていませんでした…僕の不覚です。それでは」
ハデスは慌てることもなく、頬に寄せた唇をそのまま耳元に滑らせて美徳が一番欲しい言葉を
告げた。
「…嬉しい」
「お望みであれば、幾らでも…」
不安やら、渇望やら、そういった負の感情が簡単な言葉一つで霧散していく。恋は厄介なもの
には違いない。それでも、互いの心が伴ってさえいれば様々な面倒事は越えられるのだ。
先程まで瞼の裏で明滅していた、美徳の心をあらぬ世界へと剥離させていくあの妖しい光はもう
消え失せていた。
それでも、光の支配そのものはまだ続いていて存在を隠す。
その夜、誰でもない男と、誰でもない女が、無言のまま睦まじく寄り添い、囁き合う姿を見た者は
誰一人いなかった。






578:名無しさん@ピンキー
10/07/30 20:41:46 geN/pXck
GJ!
いつもの感じで終わるのかと思いきや、変化球できたか

579:名無しさん@ピンキー
10/08/02 02:26:50 zOtkyGvw
アシタバと花巻の話のつもりで書いたけど、まだ照れがあったので方向性を
間違った。なのでエロはない。

580:初恋未満 1
10/08/02 02:27:44 zOtkyGvw
夏休みに入ってから、何となくつまらない。
そんな気持ちがアシタバにはあった。
元々それほど学校が好きという訳ではない。自分なりに勉強はしているが特に目立つ成績でも
ない。それでも毎日学校に行っていれば友達もいるし毎日楽しく過ごせていたのに、それがなく
なっただけで妙に空虚な気分のまま過ごしているのだ。
家の中にいても自分の居場所はそこにはない気がする。だから日のあるうちは近くの図書館に
行って宿題をするなり本を読んだりして時間を潰す毎日を送っている。
しかし、昼近くになってから行ったことも関係しているのか、今日はいつも以上に人がいて、とても
落ち着ける雰囲気ではなかった。仕方ないので家に帰る途中の公園でよく知る少女の姿を視界
の端に見つけて驚く。
「あれ花巻さんじゃ…」
まさかこんな猛暑の屋外で会うなんて思ってもいなかったので、興味を引かれて近付いてみた。
花巻は日陰のベンチに座り、膝にいつも抱えているノートを置いて眠っている。わざわざこんな
暑いところにいるなんてと思ったものの、大分長い間ここにいるのか左腕が日陰の位置から出
そうになっている。女の子が変な日焼けをしたら嫌だろうなと可哀想になって、色々迷った末に
揺り起こすことにした。額に玉のような汗が浮いているので、これ以上ここにいたら熱中症になり
かねないことも心配だった。
「花巻さん…」
呼んでも起きない。肩を軽く揺すっても起きない。あまり乱暴なことも出来ないのですっかり困り
果てているうちに、眠れる姫がゆらりと瞼を開いた。
「あ、良かったぁ」
「…ひゃっ」
目を覚ました花巻は目の前にいるアシタバに驚いて小さな声を上げ、膝の上のノートを落としそう
になっていた。咄嗟にそれを拾い上げて手渡しをする。
「ごめん、はい」
まだ花巻は驚いて固まったままだ。もしかして、ノートの中を見られたと思っているのだろうかと
つい気になってしまう。しかし単にどうお礼を言っていいのか分からないで戸惑っているだけの
ようだった。恥ずかしがりでテンパりがちなこの少女の目の中で、明滅する感情の光が驚くほど
多彩なのが目を引いた。きっと口には出せないだけで、信じられないほどたくさんの言葉や感覚
が詰まっているのだろう。

581:初恋未満 2
10/08/02 02:28:25 zOtkyGvw
「あ、あ…りがとう」
ようやくぎこちなく唇が動く。
「どう致しまして。でもここにいたら暑くない?」
「暑いけど…図書館が混んでいたから」
どうやら花巻も今日の図書館の混みように閉口したクチのようだった。何となく同士が見つかった
気がして、気が楽になったアシタバはこの少女ともっと話をしたくなった。
「今が一番暑い時だし、長い間ここにいたら大変だよ。喉渇いてない?何か奢るよ」
「あ…でも」
自販機がすぐ側にあるのは知っている。何がいいのか聞かなかったが、缶コーヒーやジュース
よりはお茶の方がいいだろうと判断して同じものを二つ買った。
「はい、どうぞ」
「…ありがとう、アシタバくん」
やはりとても喉が渇いていたのだろう。花巻は遠慮しながらも缶入りのお茶を一口飲んでほっと
したように息をついた。
「美味しい…」
ベンチの隣に座って冷たいお茶を喉に流し込んでから、アシタバもようやく人心地がついた気が
した。本当に、この夏の暑さは異常というしかない。既に今朝のニュースでも熱中症で何人も倒れ
たと言っていた。
中身がなくなってもまだ冷たさの残っている缶を手の中で転がしている花巻の横顔が、今日は
妙に綺麗に見えて仕方がない。会わない筈の場所で顔を合わせたからだろうか、それとも見慣
れないシンプルなワンピース姿だからなのかと胸がドキドキしてくる。
そんな気持ちを誤魔化すように、平静を装って話しかけた。
「ここじゃ暑いから、家に帰った方がいいね。図書館はまだ混んでいるだろうし」
「…うん、調べものがあったんだけど今日は諦める…今日はありがとう」
そう言って、花巻は立ち上がった。
「あの、缶…」
「え?」
「それ、一緒に捨てとくから」
「…うん、ありがとう」
空き缶を渡してくる手と受け取る手がほんのわずかに触れる。その瞬間、まるで電流でも走った
ように感じたのはアシタバだけだったのだろうか。

582:初恋未満 3
10/08/02 02:29:03 zOtkyGvw
花巻と別れた後、アシタバ自身は家に帰る気がしなくて結局足が向いたのは学校の方向だった。
部活などの用事がない限り、休みの期間は校内に足を踏み入れてはいけないことになってはいる
のだが、普段の慣れがどうしても出てしまう。
保健室の入口で立ち止まると、二回ノックをした。
「はい、どうぞ」
いつもと変わらないハデスの声が中から聞こえてくる。
戸を開けて中に入ると、机に向かっていたハデスが驚いたように目を見張っていた。生徒は休み
でも教職員に休みはない。部活で学校に来ている生徒たちに不測の事態があるかも知れない
ので、ハデスも待機しているのだ。
そういう、いつもと変わりない雰囲気が今は嬉しかった。
「アシタバくん?どうしたの」
「図書館が混んでいたんです。なんか家にも帰り辛くて…」
「そう、じゃあ少しここにいなさい。外は暑いから熱中症になったら大変だしね」
机の上には保健関係の資料らしい書類が山積みになっている。直接生徒たちに接する職務では
ないが、大事な役目を担っているのは同じだ。やることなど幾らでもあるのだろう。つまらないこと
でここに来てしまったことを少しだけ後悔したが、ハデスの言葉で少し救われた気がした。
「ちょうどいい、夏休み中の日射病と熱中症対策の保健便りをまとめていたんだ。少し手伝って
くれると嬉しいんだけど」
「そんなことで良ければ」
「じゃあ、この中から該当する文章を書き出して」
渡された十枚ほどの資料の中から側のメモ帳に書き写していく仕事を与えられた。量としては
大したことはないのだが、ここに自分はいても良いのだと思うと少し気が楽になる。
言われるまま作業をしているうちに、ふと花巻の顔を思い出していた。あれから無事に家に帰り
着いたのだろうか。あのノートの中には一体何が書いてあったのだろうと。
思い出すとまたドキドキしてきた。きっと花巻にも好きな相手がいるに違いない。あれだけ可愛い
のならもしかして両思いだったりするかも知れない。そんな幸せな相手は誰なのだろうと。
「アシタバくん」
再び机に向かっていたハデスが突然口を開いた。
「はい」
「二学期になったら、数回に分けて全学年全クラスで保健指導の授業を受け持つことになった
からね」

583:初恋未満 4
10/08/02 02:29:40 zOtkyGvw
「え…そうなんですか?」
「夏休みが明けた頃は普段の生活習慣が変わっている場合があるし、その際にきちんと指導
しておく必要性があるからね」
今度はアシタバが驚いた。
元々ハデスは養護教諭という職務に熱心に取り組むたちではあった。しかし微妙に空回りする
こともよくあった。なのに最近は随分言動が的確になってきている。
それも全て好きな相手がいるからなのだろうか、と思い至れば何もかもが符合する。
正直、アシタバは他人の色恋に興味を持つことは一切ない。経験がないだけに想像することが
出来ないのだ。なので以前、屋上で一度だけ見た光景が目の前にいるハデスと結びつかない
でいる。その先にあるものも当然全く想像がつかないし、今はまだ知らなくてもいいことなのだと
思っている。
ただ、恋すら知らないことは何となく損をしているような気がした。
「先生」
「何?」
「人を好きになる気持ちって、どんな感じですか?」
唐突にそんなことを言い出したアシタバに、ハデスは何を思ったのかわずかに顔を顰めた後で
答にもならない言葉を返した。
「僕じゃ、参考にならないと思うよ」
確かに、こればかりは人によって異なることで参考にはなりそうもない。けれど、たかが子供の
言うことだからとハデスは誤魔化すつもりはないのだろう。
やはりこの人は自分にとって尊敬出来るのだと思った。






584:名無しさん@ピンキー
10/08/02 15:36:16 +2/0dBU5
グッジョブ

今週の病魔は口にチンコ突っ込みたくなるな

585:名無しさん@ピンキー
10/08/03 05:07:04 M9Hdy0x0
脳にも突っ込めそうだ

586:名無しさん@ピンキー
10/08/06 01:37:02 W4fVPvIQ
最近、ギャグは面白いんだけどエロ魂を喚起させるネタが薄いかな。
もっとエロが欲しい。

587:鬼の霍乱 1
10/08/06 01:37:50 W4fVPvIQ
猛暑の最中の夏休み。
日頃から鍛錬を怠っていないと自負していた筈の美徳が、体調不良で学校を休んで三日目に
なろうとしていた。

「…最悪」
その日も朝から熱は下がらなかった。
体温計を何度も見直しても平熱とはとても言えない体温のままだ。教師がそんなことではいけ
ないとは思うものの、まともに動けそうにもないので今日も休むしかなかった。夏休み中だった
のが不幸中の幸いと言うべきなのだろうか。
夏風邪をひいたのは初めてだったが、まさかここまで長引くとは思ってもいなかった。小学校に
入学して以来、風邪もほとんどひかなかった。当然休むことなど滅多になかっただけに、大人に
なってからこうなるなど信じられなかった。
熱のせいであまり物も食べられない成果、少し気弱になってしまって、ただベッドで臥せっている
だけの自分がこの上なく情けない存在に思えてしまう。
今日も無為に終わるのかと思い始めた夕方、枕元の携帯が鳴った。
ハデスからだった。
「…はい」
『お加減はいかがですか?』
「ええ、あまり芳しくはありません」
声も嗄れているのが自分でも分かった。
『そうですか、今年は暑さが厳しいですからね。体調を崩されたのですから無理をされてはいけ
ませんよ。それで今夜、様子を見に伺いますがよろしいですか?』
「えっ…」
それは困る、と正直思った。何日も熱で寝込んでいたせいで、今の顔はとても人前で見せられる
ものではない。
「それ…は…」
『では、また後で』
どう上手い返答をしようかと回りきらない頭で思案しているうちに、今日は妙に押しの強いハデス
の方から電話が切られた。
「ああ、もう…」
どうすれば良いものか分からず、美徳は困り果てたまましばらく携帯を握り締めるばかりだった。

588:鬼の霍乱 2
10/08/06 01:38:25 W4fVPvIQ
日が暮れた頃を見計らうように、ハデスは部屋を訪れた。
「…わざわざいらっしゃらなくても」
一応出迎えはしたもののあまり顔を見られたくない美徳の気も知らず、大きな手がいつものように
頬を撫でた。
「少しやつれましたね、食べていないんじゃないですか?」
「まだ、微熱があるものですから」
パジャマ姿でいることを恥じるようにただ俯いている美徳の前に、近くのスーパーの袋が突き出
された。
「何がお好きなのか分からなかったものですから、果物や飲み物を見繕って来ました。早く回復
して元気な姿を見せて下さい。では」
体調を慮っているのか、ハデスはそのまま玄関先の会話だけで帰ろうとしている。今の顔を見ら
れたくなかったこともすっかり忘れて、美徳は咄嗟に引き止めた。
「嫌…お帰りにはならないで…」
「美徳さん、熱があるのでしょう?お休みになられていた方がよろしいですよ」
「今の私では、何のおもてなしも出来ませんけど…側にいて欲しいのです」
この数日、美徳には何もなかった。
誰と会話することもなく、ただ体調の回復だけを願いながら横になっているだけの時間が堪らなく
退屈で、いつもの毎日が恋しかった。ハデスの顔を見た途端に、そんな寂しさが一気に噴出して
しまったのだ。
「それでは、しばらくお邪魔をします。でも、きちんと寝ていて下さいね」
さして迷うこともなくハデスがそんな言葉を返したのは、少しは会いたいと思っていてくれたから
なのだろうかと、こんな状態でも余計な期待をしてしまう。

結局、食欲のあまりない美徳の為にと、ハデスは袋の中に入っていた桃や林檎を器用に剥いて
皿に盛った。
「少しでいいから食べた方がいいですよ。それと、この季節に関わらず大量に汗をかくと脱水症状
を起こしやすいので水分も充分に摂って下さい。スポーツドリンクとお茶は冷蔵庫に入れておきま
した。それと、塩分も必要ですから塩飴もここにありますので」
サイドテーブルに果物の皿を置くと、大人しくベッドに横になっている美徳の傍らに腰を降ろす。
「他に、何か食べたいものがあるのでしたら作りますが。ただし、今日のところは消化の良いもの
にして下さいね」
ハデスの態度はあくまでも養護教諭としてのものだ。夏風邪をひいた相手に対してのものだから
それも妥当なのだろう。普段ならそんな素っ気無さに不満を覚えるかも知れないのだが、それほど
嫌な気もしないのはやはり心が弱くなっていたからに違いない。
少しだけ口にした桃は泣きたくなるほど甘かった。

589:鬼の霍乱 3
10/08/06 01:38:57 W4fVPvIQ
「今夜はあなたが眠るまで側にいますよ、いいですね」
額に当てられた手は冷たくて心地良い。それだけで何だか安心出来る。このまま眠ってしまえば
少しは楽になりそうに思えた。
「ありがとう、逸人さん」
「どう致しまして」
額や頬を滑る指の感触が催眠術のように眠気を誘った。子供の頃、初めて風邪で寝込んだ時に
母親に見守られていた懐かしい記憶と重なる。目覚めたら一人になっていたとしても、今夜の
心地良さがあれば平気に思えた。






590:名無しさん@ピンキー
10/08/06 02:25:54 W4fVPvIQ
ついでに今週の小ネタから思いついたこと。

591:金やら銀やらの話
10/08/06 02:26:19 W4fVPvIQ
常伏中2年A組の藤がある朝、遅刻しそうになったので思わず持ち出した箸とご飯茶碗を(中身は
完食済)うっかり通学路のドブ川に落とした時のこと。
突然、そのドブ川が光り出して変なオバ…女神様が現れてこう言った。
『あなたが落としたのは、この金の箸と金のご飯茶碗ですか?』
女神様を見た藤が咄嗟に考えたのは(面倒臭ぇ)だった。大抵こういう場面に遭遇すると、ろくな
ことがないに決まっている。何もないとしても、とりあえず今日は確実に遅刻する。
なのでこう返事をした。
「落としたのはフツーの箸と茶碗だから、そっちにしてくれ」
『では銀の箸と銀のご飯茶碗ですか?』
女神様は藤の言うことなど全然聞いちゃいなかった。というよりも定型通りの受け答えをした方が
この手の話の歴史的にも楽だったからだろう。
「いいから、返してくれるんなら金でも銀でもないフツーの箸と茶碗返せよコラ。そもそも何でドブ
に女神がいんだよ」
トイレに女神様がいるぐらいなので、ドブにいてもおかしくはない。しかし正直者だが面倒臭がり
の藤に鷹揚に対応していた女神様も軽くブチ切れたらしい。
『……分かりました。ではあなたが落としたのはこれで間違いないですね』
そう言い残し、藤が落とした箸とご飯茶碗を置いて消えていった。
しかし、女神様の腹いせなのか箸と茶碗には残念な感じで微妙な金メッキが施されていて、物を
粗末にするなと兄の山蔵からブン殴られたのは言うまでもない。






592:名無しさん@ピンキー
10/08/06 17:22:35 IDl4wIJF

誰か藤と花巻さん頼む

593:名無しさん@ピンキー
10/08/07 00:45:35 K1HF33T/
>>589
GJ!
やっぱハデス×みのりんは良いなぁ……

ところで今週の話から
安田とふるえが偶然街でばったり→ミスター&ミスポジティブで街を楽しく遊覧→色々あって想像がエロ的にぶっ飛んだ2人→ホテルへ
という電波を受信したんだけど形に出来ない……

594:名無しさん@ピンキー
10/08/07 01:21:02 ZRax9AhD
>>593
それ楽しそうでいいな。
書けそうな気がするよ、明日投下する。

595:名無しさん@ピンキー
10/08/07 15:32:12 s9HAb7rs
この暑さなら全裸待機も平気だね
正座して待ってる

596:名無しさん@ピンキー
10/08/07 17:15:50 K1HF33T/
>>594

超ありがとう
俺も全裸で待つわ

597:名無しさん@ピンキー
10/08/07 22:29:06 mXCzpDh/
お前ら、暑くてもポンポンは大事だから腹巻ぐらいしろw
夜中は意外と冷えることがあるぞ

598:名無しさん@ピンキー
10/08/08 03:40:31 ydPc8dxe
書いた。
なんか方向性がおかしくなったけど。

599:ポジティブな夏のエロい二人 1
10/08/08 03:41:31 ydPc8dxe
夏休みに入って一週間ほど経ったとある日。
毎日課された宿題以外は特にすることもなく、暇を持て余していた日暮ふるえは真昼の繁華街
で何となくぶらぶらしていた。
家にいてもそれほど面白くない、出かければきっと何かあるかもと思ったのだが案外それほど
都合良く目的のものが落ちている筈もなく、つまりは街にたむろしているほとんどの人々と同じ
ようにただ漂流している気分を楽しんでいたのだ。
別にそれでも良かった。以前のように何の根拠もなく自分で怖いことを探し出して怯えていたこと
を考えれば、今の方がよっぽど発展的に思える。
コーヒーショップで涼みながら道を往く人々を眺めているだけでも、旺盛なる想像力を刺激されて
面白い。今日もまた、そうして過ごしていくつもりでいた。
「あれ?何してんのこんなトコで」
ぼんやり窓の外を眺めていると、背後で素っ頓狂な声が聞こえた。驚いて振り向くと安田が興奮
したように突っ立っている。
「あ…この間はどうも」
「ここ、座っていいかな。ちょうど混んでいて席がなかったんだよな」
「…どうぞ」
そういえばこの間のお礼はまだ言ってなかったことを思い出して、ふるえは口篭りながら向かい
の席を指した。
「助かったー、サンキュ!」
「い、いえ…」
安田は小脇に抱えていた本の包みをテーブルに置いて、暑いのかぱたぱたと手で顔や胸元を
あおいでいる。涼もうとしたものの座れそうな席にたまたま見知った顔がいたので近寄って来た
だけなのだろう。でも、何となく気が紛れて楽しくなった。
「ちょっと荷物見ててくれないかな、注文して来るんで」
「あ、ええ、どうぞ」
荷物というのはテーブルの上に置いてある本のことだろう。ビニール袋からうっすらと背表紙が
見えるが、まさかエロ本だったりしたらベタだろうなと考えると笑えてきた。エロいのが良いこと
なのかどうかはともかくとして、退屈を知らずに過ごせるのはやはり羨ましい才能だ。
そんなことを考えているうちに、飲み物とベーグルを手にした安田が戻って来る。
「いやー、やっぱ夏休みになるとどこも混むよな」
また、賑やかな空気が蘇った。

600:ポジティブな夏のエロい二人 2
10/08/08 03:42:36 ydPc8dxe
混み合っている店内はとても落ち着ける雰囲気ではなかったが、そこで他愛もないことを話して
いるうちに、いつの間にか二人は打ち解けていた。夏休み明けまで続く退屈を本当は持て余して
いたことも同じで、その流れから近くのカラオケ店に行くことにまで話が落ち着いていた。
それまで誰かとこんな風に一緒にいることなどなかっただけに、ふるえは今日の怒涛の展開に
自分でも驚いていた。これではまるでデートだ。
「さー、何歌おっかなー。やっぱAKY108は外せないよなっ」
コーヒーショップを出てからも、安田は相変わらず呑気にそんなことを言っている。気楽そうな後ろ
姿を眺めているうちに、別に余計なことなど何も考えなくてもいいのだと開き直るような気持ちに
なってきた。どんなことであれ、ポジティブでいる方がいいに決まっている。
「日暮は何歌いたい?」
「えっ?」
「やっぱアイドルかな。何でもリクエストしてくれよ」
「う、うん。ありがとう」
ネガティブだった頃の癖がまだ抜け切らず、口篭ってしまうと突然安田がぐいっと顔を近付けて
きた。
「なに…?」
「今日の服、イケてるじゃん。姫ワンピって奴?可愛いんだからその方が制服より全然いいな」
「あ、りがと」
途端に頬が熱くなって、胸がドキドキしてくる。可愛いなんて言われたのは今まで両親以外には
なかった気がする。ネガティブな自分のままだったら、きっとこんな嬉しいことは聞けなかったの
だろうと思うと、改めて安田が救世主のように見えてきた。
「さっ、あそこ。入ろ入ろ」
安田はふるえの手を握ると、さっさと目的の店を目指して歩き出した。カラオケには慣れてそうな
ところを見ると、いつもヒトカラをしているのだろう。
デートじゃないけど、そう思ってもいいかなとまた頬が熱くなった。

カラオケ店の個室内では安田の独断場だった。
AKY108のヒット曲からアルバムに収録されているようなあまり知らない曲まで、全部きっちりと
振りつきで歌いまくって一人で盛り上がっていた。普通であればそんな姿はひたすら寒いと思う
だけなのだが、あまりにも安田が楽しそうなのでふるえも思わずつられてしまった。
「よし、じゃあ『真夏HANABIガール』は日暮が歌ってくれよ」
「えー、私一回しか聞いたことないよお」
「大丈夫、一緒に歌うからさ」

601:ポジティブな夏のエロい二人 3
10/08/08 03:43:55 ydPc8dxe
エキサイトしきった安田は、画面を見ながらノリノリでふるえの拙い歌い方をサポートというか、
ほとんど邪魔しながらもやっぱりきっちりと最後まで歌いきった。カラオケはこれまであまり経験
がなかったふるえも、こんなに楽しいものだったのかと目から鱗がポロポロ落ちる思いだった。
カラオケに限らず、気の合う相手となら何をしてもきっとこんな風に楽しいのだろう。
ほとんど歌ってもいないのに喉がすっかりカラカラになって、注文したジュースを飲み干しながら
目はずっと安田を追っていた。
知り合う前は色々な噂があったからずっと変な人だと思っていたのに、こうして親しくなってみると
特別変でもエロくもない。いや、エロいのは間違いなくても噂で聞くほどの物凄い奇行があるとは
とても思えない。どこにでもいるごく普通の男子だ。
「あー歌った歌った。日暮」
全曲コンプリートを果たしてようやく休憩を入れる気になったのか、安田は満足しきった顔でどさり
とソファーに座り込んだ。
「え、あ、はいっ」
「好きなの入れて歌っていいよ。俺ばっかじゃ不公平だろ」
「え、でも私音痴だから…」
「んなの気にしてたら俺なんてどうなるよ。それに」
喉を鳴らしてコーラをごくごくと飲んでしまってから、安田は言葉の続きを継いだ。
「いい声してんじゃん」
「そんな…」
今日は一体どうしたというのだろう。今までになかったことばかり、しかも嬉しくて楽しいことが
立て続けに起こっている。また顔が赤くなったふるえの反応が気になったのか、安田が隣に
寄って来た。さっきまで賑やかだった個室内が一転して静まり返る。
「俺、何か悪いこと言った?」
「う、ううん」
「日暮が可愛いからさ、つい悪ノリしちまったかもな」
もう何も言えなくなってしまった。覗き込んでくる顔がとても近くて、顔が熱い。
「キス、していいかな」
だからもう訳も分からなくなって、つい頷いてしまった。そのまま接近してくる顔に目を逸らせなく
て瞼を閉じることも出来ずに唇が重なった。それはほんの少しの間のことで、触れただけだった
けれど紛れもなくふるえにとっては初めてのキスだった。

602:ポジティブな夏のエロい二人 4
10/08/08 03:45:06 ydPc8dxe
室内は静かなままだ。
何かの話で聞いただけだが、密室状態だからとこんな場所でアレとかコレなことをするカップル
もいるらしい。もしかしたら今日ここでそうなってしまうかも知れないと思いながら、ふるえは声も
出ない状態でずっと安田を見ていた。
「…ヤベ」
何故か妙に切羽詰った様子で、安田が声を漏らす。
「なんか最後までヤりたくなったかも」
「……え?」
「いいかな」
「うん、いいよ」
「だよなー、会っていきなりってのはちょっと…って、えええーーー!」
こんなことは当然断られると思っていたのだろう。言い出したのは安田の方なのに面白いほど
動揺していた。
「私いいよ。考え方を変えられたのは安田くんのお陰だし」
「…マジで?」
「うん」
驚きでしばらく目を見張っていた安田は、気を取り直したのかまた近付いて来た。今度こそ最後
までいってしまうかもと感じてはいたが不思議と不安は感じなかった。
「じゃあ、いただきます」
もう一度顔が近付いてくる。期待を込めて目を閉じたその時、室内の電話が鳴った。せっかくの
雰囲気をそがれてがっくりと肩を落とした安田が仕方なさそうに電話を取る。
『そろそろお時間になりますが、延長はなさいますか?』
どうやらフロントからのものだったらしい。もちろん延長はせずに出ることにした。

「さーて、どこに行きますか?」
カラオケ店を出てから、二人ともテンションがおかしくなっていた。いい雰囲気になりかけたところ
で突然寸止めを食らったせいなのだろう。
「それは、やっぱり…」
「だよねー、ホテルとか」
「私、行ったことないよ」
「俺もないけど、何とかなるだろ」
閉じられた室内ならともかく、そんな話題を口にしながら歩いている中学生というのは随分異様
に見えたのだろう。通り過ぎる人々がどことなく遠巻きにしているように思えた。しかし今の二人
にはどうでもいいことだった。

603:ポジティブな夏のエロい二人 5
10/08/08 03:45:43 ydPc8dxe
一番の問題があるとすれば、それは料金のこと。
二人合わせても数千円しか持ち合わせがなく、まずは安いところを探すしかなかった。とはいって
もあまり長いこと中学生同士がホテル街をうろうろするのも格好がつかない。なので一巡りして
ある程度目星をつけてから一番安いホテルに決めようと、周囲の通行人たちが眉を顰めるのにも
気付かずに声高に話し合った。
「じゃ、そういうことで。行こうか」
大体話がまとまったところで、ホテル街へと歩き出そうとした安田の足が止まる。何が起こった
のかと様子を伺ったふるえが見たものは地面にボタボタと垂れ落ちる鼻血だった。
「…大丈夫?」
「じゃ、ないかも…」
興奮していたからなのか、それとも暑いからのぼせたのかは分からないが、とにかく今までエロい
方向に盛り上がっていた気分は一気に萎えた気がした。さすがに血を見るのは穏やかではない。
さすがに今日はもう無理だろう。

結局、事は後日に持ち越しとなったまま実現はされずじまいになっている。
もちろんお互いに携帯番号は交換したものの、その場の勢いがなければ何となく気まずいもの
があって、なかなかあの日の続きについて切り出せない。
お互いに勢いづいてエロい方に突っ走っていたその時がまた来るまで、待っていてもいいかな
とふるえは思っていた。
安田はといえば、エロリストの本領発揮でデリカシーの欠片もなく毎日のように誘ってくるだけ
なのだが。






604:名無しさん@ピンキー
10/08/08 07:57:41 cN3t8qKF
>>598
朝から神降臨しなすった
GJ

605:名無しさん@ピンキー
10/08/08 14:36:36 kGQuyLbQ
>>603
素晴らしいGJ!

606:名無しさん@ピンキー
10/08/09 21:49:32 kUNDb3ce
>>589>>603もGJ!

安田とふるえ、いい組み合わせだな…
ところでここってイラスト貼るのおk?

607:名無しさん@ピンキー
10/08/10 01:42:12 cj7J5cCU
エロパロの趣旨に合ってれば、いいと思う

608:名無しさん@ピンキー
10/08/10 16:58:14 pk88intD
ほけがみ男女はもっと語る場所あってもいいと思うんだ…
ここエロ板だからエロ無しの男女話は気が引けるしさ…

609:名無しさん@ピンキー
10/08/10 21:28:52 VnFzQ32f
男同士の萌え語りも、キャラ語りも、他の作品同様完全に住み分けは出来ている
んだし、男女であればここでもいいと思うよ
てか、そこまで規定を細かくする必要性を感じないし

610:名無しさん@ピンキー
10/08/11 01:12:50 44xO1pNI
今週のような、ものすごくアホなことを、ものすごく真剣に、
それも一大軍事作戦のような勢いで悪ガキどもが行なうというのは
昔、押井守が好んで使った展開だが、個人的には大好きだ。安田偉いw

エロパロ的には、まず男子総がかりで敵の最強の武将(鏑木)を討ち、
その上で大将(みのりちゃん)を仕留める展開に持っていってほしかった。
もちろん性的に。

611:名無しさん@ピンキー
10/08/11 02:04:37 5claF66Z
>>608
スレ立てれば?

612:名無しさん@ピンキー
10/08/11 02:26:49 vDQNWiDX
>>608
既存のスレでは語れないものがあるのなら、スレ立てて思う存分語ってくれ

613:名無しさん@ピンキー
10/08/11 08:28:09 zUd9zlnG
そりゃ正論だが、実際どこに立てるんだ、って話で
週漫に立てりゃすぐ消えるだろうし、だからって漫画サロンじゃ過疎るだろうし
漫画キャラ板なんかに立てたら下手したら凄い荒れそう

614:名無しさん@ピンキー
10/08/11 08:44:23 BPdNW49S
まあ、過疎ると誰もが思ってるから誰も立てないわけであって。
信者わらわらいる漫画とはわけが違う。

615:名無しさん@ピンキー
10/08/11 15:06:58 zE7KP3Vp
まだ現時点じゃ腐人気くらいしか無いからなー
これがもうちょっと人気出ればノマカプ人気も付くんだろうが

616:名無しさん@ピンキー
10/08/11 18:21:58 GPzSeyuN
SS投下を邪魔しない範囲でなら、多少のカプ談義も問題はないと思うがな

617:名無しさん@ピンキー
10/08/12 01:50:11 2IhTaDaR
テス

618:名無しさん@ピンキー
10/08/12 01:53:15 2IhTaDaR
おっ!解けてた

というわけで自分を追い込むために、一週間以内に花巻さんの続きを投下するって宣言
追い込まなくてもこなす美っちゃんはやっぱり凄いよね。

619:名無しさん@ピンキー
10/08/13 11:41:34 LD7MLVHR
本好乙wwwww
楽しみにしてるよー。

620:名無しさん@ピンキー
10/08/13 19:12:08 4gwyn7LC
本好のエロって想像できないな…
春酔も効いてなかったみたいだし

621:名無しさん@ピンキー
10/08/13 21:58:57 sgUA9RGl
z

622:名無しさん@ピンキー
10/08/13 22:14:00 sgUA9RGl
あ、書き込めた。
本好のエロってのも、難易度高いから書き甲斐があるかも。
ただし、今のところ良さげな相手がいないからなあ。

美っちゃんだと板違いになるし。

623:名無しさん@ピンキー
10/08/14 03:46:49 KPxJKRMN
本編が夏でプールで水着だったので、ついエロ魂に火がついてこんなものが
出来た。
生まれ変わりがどうとかってのは、単なる雰囲気作りなのであまり深く考えず
読んで欲しいと思う。

624:夜光人魚 1
10/08/14 03:47:45 KPxJKRMN
「今夜九時、プールに来て頂けますか?」
いきなり切り出した誘いに、携帯の向こうで息を呑む気配がした。
とんでもないことをと思っているのだろう。もちろん美徳も以前ならそんな非常識な振る舞いなど
思いつきもしなかった。言い訳などするつもりもないが、恋が全ての感覚を支配してしまった今、
どうすれば恋うる相手と少しでも長く過ごしていられるか。そればかりが頭の中を占めている。
それだけなのだ。
『あなたはいつも突然ですね』
苦笑する声には柔らかい響きがある。驚き戸惑ってはいながらも、きっと時間通りに来るに違い
ない。
「そうです。お嫌でなければいらして下さい。お待ちしています」
通話を終えても、あの特徴のある優しい声が耳に残っている。思い出すだけで自然と身の内が
熱くなった。
恋に魂が焦げていく。いっそ全てを投げ打ってもいい。
これほどに身を灼くほどの恋をした最初のきっかけがそもそも何であったかは、もう何も思い出せ
ない。それほどに人は一気に気持ちを傾けて溺れていくものなのだろう。

誰にとっても、誰か特別の人がいる。その人は別の時代からやってくる。時間の海を越えて、
天の次元の深みから、あなたと再び一緒になるためにやってくるのだ。

学生時代に読んだ本の一説を不意に思い出す。
その著者はアメリカの精神科医で、患者の治療に退行催眠を使ってみたのがきっかけで生まれ
変わりを研究するようになったという人物だ。
物語としてならとてもドラマティックで面白かったが、それ以上の感想は特に持たなかった。ただ、
死などでは切れない繋がりをもって人は何度でも生まれ変わり、またいつか出会うという奇跡は
素晴らしいと感じた記憶がある。
さすがにハデスと遠い昔に何らかの因縁があるとまで痛いことは考えていない。それでも、次に
また生まれ変わったとしてもやはり同じように出会いたいとは思った。

午後九時の校内に、他の教職員たちは誰も残ってはいなかった。
夜間の定期巡回の時間は決まっている。入口の門は固く閉ざされていて、夏休み中の浮かれた
生徒たちが立ち入ることもない。
調べものがあるからと理由をつけて保健室に残っていたハデスは、備え付けの懐中電灯を片手
に暗い廊下を歩き出した。
程なくして近付いたプールからは密かな水音がする。見れば、暗い水面にゆらゆらと見え隠れ
している人影。

625:夜光人魚 2
10/08/14 03:48:28 KPxJKRMN
「美徳さん」
声をかけると、人影は水中からゆっくり立ち上がった。
「来て、下さったのですね」
「あなたに誘われたのですから、断る訳はないでしょう」
ずっと一人で泳いでいたのだろう、美徳はプールから上がると身を震わせた。真夏とはいえ夜の
プールは水温がぐっと下がっている。泳ぎ疲れたのか、どこかとろりとした眼差しはこの世ならぬ
者のように思える。その姿はまるで永遠なる混沌の海を泳ぎきって、ただひとつの真実として目の
前に現れた人魚のように美しかった。
「どうしても、今夜ここで会いたかったのです…逸人さん」
髪から滴り落ちる水滴を払って嫣然と微笑む美徳が、猫のようにしなやかな動作で腕を回して抱き
ついてきた。間近で見る双眸は妖しく煌いている。
「この間の夏風邪からずっと控えていましたからね。寂しかったのですか?」
「…当たり前じゃないですか。私だけが焦れているようで、それが悔しかったんです」
「それは申し訳ありませんでした」
「逸人さん」
美徳は昼間の溌剌とした様子からは想像も出来ないほど、妖艶な眼差しを向けたままハデスの
手を取って身体に触れさせる。
「私は、綺麗ですか?」
「ええ…今夜のあなたはとてもお綺麗です」
「では」
ハデスの返答に、ふわりと淫蕩な笑みが美しい顔に浮かんだ。濡れて身体にはりついた水着を
両の肩から滑り落とす。途端に薄い布地では収まりきれないほどのはちきれそうな乳房があらわ
になった。
「抱いて下さいますね?」
「もちろんです、美徳さん」
わずかにさざなみの立つ黒い水面を背後にして妖しく微笑むこの女性は、いつも側にいてハデス
自身も見知っている女性に間違いはない。しかし、このような面も持ち合わせていたのはこれまで
知ることがなかった。いや、美徳本人も意識はしていなかっただろう。
ともすれば度を越すほどの真面目さで職務をこなす美徳を、夜の媚態とはいえここまで変えてしま
ったのは紛れもなく自分なのだ。
人を求めながら特定の誰かと深く関わることは避けてきたが為に、心中を察することに疎くなって
しまったのはハデスの不覚だ。けれどそれでも構わずに追ってきたこの女性を愛しいと思わない
筈がない。

626:夜光人魚 3
10/08/14 03:49:17 KPxJKRMN
夏の夜は肌に纏わりつく空気が随分ねっとりとしている。
そんな隠微さが美徳の心を惑わせたのかも知れない。それでも目の前にいるこの男とどうしても
ここで会いたかった。それだけは決して衝動などではない。
「身体が冷たいですね、唇も」
頭の芯が痺れて機能しなくなるほど、長いキスを繰り返してから心配を滲ませる声音でハデスが
囁く。冷たいのは待っている間ずっと泳いでいたからだろう。それなのに身体の奥はどうしようも
ないほどに熱い。唇に触れてくる長い指先を噛むように言葉を刻む。
「私は、とても熱いのです…あなたにもすぐに分かるでしょう」
ハデスの黒いシャツの襟元を、熱を帯び始めた指がなぞった。もどかしくボタンを一つ一つ外して
いき、次第に露出してくる身体のひび割れに舌を這わせる。
「気持ちがいいですか?」
「…よく、分かりません」
「そうですね、まだ始めたばかりですから」
美徳の手は休むことなく、シャツのボタンを全て外し終えてから次はベルトを外しにかかる。固い
バックルに手間取りはしたものの、何とかベルトを緩めてスラックスをくつろげさせた。下着の中
から目的のものを引き出した途端に、ずっと無抵抗だったハデスがためらうように制止させようと
してきた。
「美徳さん、それは…」
「させて下さい、私、今夜は何でも出来る気がするのです」
美徳は床に膝をついて行為を続けた。手に握ったものは既にある程度の硬さがあった。言葉や
態度では伺いにくいことでも、性感にダイレクトに繋がることであればこれが直接教えてくれる。
先端を一度舐め上げてから慈しむように全体を口腔内に含み込むと、さすがに感じ入るものが
違うのかわずかに反応があった。
やはり気持ちが良いのだと嬉しくなって、そのまま知る限りの舌技と手技を尽くして愛撫を続けて
いるうちに、手もなくその一物は見事に反り返るほど硬くそそり勃った。
「ふふっ…」
その成果を間近にして、美徳の微笑は一層妖艶になった。挑むようにハデスを見上げてから豊か
に張り詰めた乳房を両手で押し上げ、勃ち上がったものをその間に挟み込んだ。これにはひどく
驚いたのだろう、男の声が明らかに上擦る。
「…美徳さん、そんなことをしては…」
敏感になっている一物を滑らかな二つの乳房で擦られている感触は、口でするのとはまた違った
快感があるに違いない。辛うじて冷静さを保っていたハデスの様子が変わった。

627:夜光人魚 4
10/08/14 03:49:55 KPxJKRMN
存在を確かめるように何度も髪が撫でられる。
「あなたにそこまでさせるなんて…」
もう美徳にとってお互いに感じ合う行為に一切の抵抗はなかった。傍目にはどれほど淫らなこと
をしているかなど、もうどうでも良かった。思う男が悦んでくれるのであれば、それでどんなことも
してしまえる潔さを知ってしまっている。その先に身も心も蕩けてしまうほどの快感が待ち受けて
いるからだ。
「逸人さん…もっと感じて下さい」
上気した表情で擦り続ける美徳に、切羽詰った声が降ってきた。
「もう、離れた、方が…!」
限界が近いのだろう。乳房に挟まれた一物はひどく熱くなっている。懇願にも似た声を無視して
更に続けるうちに、それは突然大きく震えて勢い良く精を放出した。乳房だけではなく髪や顔に
まで白い飛沫が満遍なく飛び散り、重く流れ落ちた。
「気持ち、良かったのですね」
美しい顔に似つかわしくない淫らな微笑を浮かべながら美徳は呟き、頬に散ったものを指で拭う
とぺろりと舐めた。
「…美味しい」
夢を見ているように微笑む頬に、長い指が滑り落ちる。
「すみません…今夜はあなたにして貰っているばかりですね。すぐに差し上げますから」
「はい、逸人さん。たくさん下さい。私、その為にここにいるのです」
上半身だけ脱いだ水着はそのままにして立ち上がると、やんわりと金網まで追い込まれて抱き
締められた。もう何も考えられなくなりそうで、思わず背中に腕を回して白衣を掴む。
「ぁ…」
水着の端が押し広げられて、まだ触れられてもいなかった敏感な箇所に指が差し入れられる。
既にすっかり蕩けてしまっていることは指先に感じる粘膜の柔らかさと潤みですぐに分かるのだ
ろう。ここまで簡単に快感に陥落する身体に仕立て上げられたことは、誰かの為にある女として
嬉しくも誇らしかった。
もう受け入れるに充分なほど濡れきっている内部を探られることすらもどかしく感じて、無意識に
ねだる声がわずかに掠れる。
「逸人さん、早くいらして下さい…」
股間を探ると再び勃ちかけているものが一気に熱を帯びて硬度を増した。もうすぐこれによって
狂おしく乱されるのだと思うと身体中すべてが疼き出す。髪一本ですら口付けられれば達して
しまいそうなほどだった。

628:夜光人魚 5
10/08/14 03:50:54 KPxJKRMN
「今、差し上げます…美徳さん」
口腔内をひとしきり舌で探られて貪り尽くされた後、熱の篭った言葉が唇を啄ばんだ。そこから
じんわりと甘い痺れが伝わってくる。
「あぁ…ん、早、くっ…」
次第に身体に力が入らなくなって、必死でもたれていた金網に縋りつく。その背後から抱き締め
られて水着を腰に纏わりつかせたまま、熱い塊が押し入ってきた。
「んんっ…!」
待ち続けた刺激を与えられて、快感のあまり背中がしなる。金網に絡ませた指に力を込めなけ
れば、身体が崩れ落ちてしまいそうだった。途切れてしまいそうな正気を懸命に繋いで突き上げ
てくる動きに合わせながらも、時折ずれるタイミングが更なる刺激を呼ぶ。
「…素敵、逸人さん…もっと…」
男の動きに翻弄されてこれ以上ないほどの法悦を感じながら、美徳は滴るように甘い声を落と
して暗くうねる女の奥底へと誘うようにねだる。
思う存分快楽に浸りきって淫らに身悶える姿に誘発されたのか、ハデスは無防備になったまま
ふるふると揺れていた乳房を鷲掴みにしてきた。
「あなたは本当に、素晴らしい人ですね」
耳元で囁かれる低い声が堪らない。金網が軋むほど激しくなっていく動きに目が眩んでしまい
そうで、力が抜けきった右腕を愛しい男の首に絡める。そのまま引き寄せると間近で熱を孕んだ
視線が絡み合った。
「もっと、もっと私を見て下さい…私だけ、こんなに夢中なのは、嫌…」
「そう見えていたのなら、申し訳ありません…けれど、あなただけが僕を」
引き寄せられてバランスを崩しそうな体勢を立て直すように、右足が抱え上げられてぐっと腰が
深く入る。膣の奥の奥までを犯されて、一層掠れた声が上がった。
「ひぁっ…」
「ただの男として混沌から引き摺り出すんです。普通でいることを諦めた僕を」
「あ、ぁ…それは、お嫌なのですか…?」
「いいえ。こうしている時であれば、僕は喜んであなたの望むものになりましょう」
二つの視線が一つとなり、瞼を閉じることも忘れて美徳は差し入れられる舌に夢中で応えて付け
根が痛くなるほど強く絡ませ合った。翻弄される、もう何も考えられなくなって頭が霞む。最初に
望んだ通りの素晴らしい時を過ごしていることが幸せで、知らず知らずに涙が零れた。

629:夜光人魚 6
10/08/14 03:51:46 KPxJKRMN
もうお互いに限界が近い。
内部で擦れ合う粘膜が只ならぬ熱をもたらして、激しい快感を生む。声を上げることすらも忘れ
果てたように最後の追い上げを仕掛ける男と、少しでも長くこの戯れを継続させたい女の吐息
だけが肉を打つ行為の合間に響いていた。
「…や、あああっ!」
唐突に一声叫んで、先に美徳が頂点へと駆け上がってしまう。
反射的に膣内が締め上がって射精を促される前にハデスは一物を引き抜き、咄嗟の難を逃れた
ようだったが、達した直後のことで記憶がブレていてあまり良く覚えてはいなかった。

プールの黒い水面がわずかに波立っていて、生き物のように不気味に見える。
行為を終えても二人はしばらく座り込んだまま動かなかった。
どの恋人たちにとってもそうであるように、夏の夜は殊更離れ難いものがある。誰にも咎められる
ことのないまま恋をする危うさが美徳にもやはりある。一切脇目も振らず相手のことだけしか見え
ずに突っ走るこの逸る心の暴走は、果たしてどう思われているのだろう。
今になって後悔めいたものを感じ始めた美徳の身体を、白衣が包んだ。隣でハデスが穏やかに
微笑んでいる。
「あなたは、あなたのままが一番なのです」
「逸人さん」
抱き寄せられるままに身を預けると、それまでになかった充足感が心の中に波のように満ちて
きた。さすがに疲れを覚えて目を閉じる。
生まれ変わりは今でもそれほど信じてはいない。けれどこの男との縁は今生で終わらせたくは
なかった。それが執着というものであるなら、どんなものにでもなろう。
今の人生で女として生まれたのはまさしくこの男と出会う為だったのだと、美徳は肩を抱かれな
がら小さく笑った。


誰にとっても、誰か特別の人がいる。その人は別の時代からやってくる。時間の海を越えて、
天の次元の深みから、あなたと再び一緒になるためにやってくるのだ。

―ブライアン・L・ワイス







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