保健室の死神でエロパロ 入室者1人目at EROPARO
保健室の死神でエロパロ 入室者1人目 - 暇つぶし2ch450:淫感覚 番外編 2
10/06/20 03:55:44 2lgHovdQ
「あ…」
両手で捏ね上げるように乳房を揉まれて、耐え切れない声が漏れた。肌の感触を楽しむように
指先が絶えず蠢いている。しばらくは乳房の形をなぞりながら巧みに肌を吸い、歯を立て、舌を
這わせていたが、柔らかな感触が次第に胸元から下がっていくのに気付いた。
未知の感覚に思わず不安な声が出る。
「何…?」
返事はなかった。その代わりに力の抜けていた膝が限界まで開かされて、疼いている中心に
顔を埋められる。
「や、ぁっ…」
まさかそこを舐められるとは思ってもいなかった。なのに指よりも柔らかく繊細な感触に現金な
身体はすぐに反応して、声はより甘くなる。ダイレクトにその反応を感じて喜んだのか、ハデスは
憎らしいほど落ち着き払って宥めてきた。
「怖がらなくてもいいですよ。あなたに痛い思いをさせないようにしているだけですから」
「だって…だって、そんなトコは…」
「とても、可愛いですよ。こことか」
言いながら硬く充血しているだろう核をいじる。
「あああっ!」
元々そこを指で探られたら、すぐに感じてしまうほど弱いのは知られている。これで『存分に』され
たらどうなってしまうのか今夜ばかりは本当に分からない。しかしその先をもっと知りたいという
期待もあった。
「そう、感じた通りに振舞って下さい」
指で悪戯をしながら舌先で丹念に膨れ上がった核やその周囲を舐め尽くされ、やがて膣の入口
の襞を分けるように広げられた。あまりにも感じ過ぎている為に一切の抵抗も出来ないまま震え
ていた美徳の耳に、ごく冷静な声が届く。
「内部に幾つか軽い擦り傷がありますね。後で処置しておきましょう」
「えっ…」
「気にされることはありません、僕のせいですから」
もしかしたら見えない何者かにつけられた傷では、という思いはハデスの言葉に打ち消された。
もちろんどちらかには間違いないが、ハデス自身も今日の事件はなかったことにしておきたいの
だろうと判断した。
そんな感傷めいた気持ちは、すぐに掻き消された。

451:淫感覚 番外編 3
10/06/20 03:57:37 2lgHovdQ
「やあああっ」
すぐに処置出来ないから、というのはただの言い訳だろう。舌先が膣内に潜り込んできた。
「ダ、ダメ…そんなの」
少し前に中に出されたものが愛液と混ざり合って溢れている。それを舐められていることに頬が
熱くなる。
「綺麗にしているんです、後で治療する為ですから」
また言い訳めいた言葉と共に一番感じるところを直接舐められ続け、もう胸の鼓動が痛いほどに
なっている。感度が上がったせいもあるのか、舐め取る音が卑猥に変化しているのがはっきりと
分かった。
「あ、あ…あ」
爪先が何度も空しくシーツを蹴る。もうおかしくなってしまいそうなほど乱れ悶えていた美徳の
目に、ようやく顔を上げて口元を拭うハデスが映った。
「逸人さん…」
「今度は痛くないと思います。美徳さんには傷一つつけたくありませんから」
霞みかけた視界を補足するように、今の感覚の全てが散々舐め尽くされて十二分に蕩かされた
そこに集中している。ずっと待ち侘びていたものの感触がようやく与えられようとしていた。灼熱
の先端が襞を擦るだけでも、肌が震えるほど感じる。
「…あぁ…」
感嘆のような声が漏れた。それが合図のようにずぶっと一切の躊躇もなく、膣の奥まで突き立て
られる。
「ああんっ!」
凄まじい感覚だった。ついさっきの行為がまるで別のことに感じるぐらいに気持ちがいい。わずか
の隙間もなく擦れ合っているお互いの粘膜越しに思いが伝わってくるように思えた。何もかもが
ぴったりと馴染んでいることも快感に更に拍車をかける。
「逸人さん、もっとぉ…」
もはや性感の虜になった美徳を満足そうに眺めて、ハデスは突き上げを一層激しくしていった。
「幾らでも差し上げます、『存分に』愉しんで下さいね」
「はぁううっ…」
もう苦しくも切なくもない、脳髄を蕩かしてしまうほどの全てを越えた特別の感覚がそこにあった。
心を許し身体を許し全てを明け渡したその先にある法悦。その境地を見た美徳はようやく女に
なったような気がしていた。

452:淫感覚 番外編 4
10/06/20 03:58:16 2lgHovdQ
「うっ…」
あと少し、というところで突然体位を変えられた。動物のように後ろから突き上げられて、必死で
シーツを握って耐える。膣内で当たる場所が変わったことも、ますます快感を増大させた。身体の
中を行き場のない熱が巡って、熱くて苦しい。けれどこの感覚はとても心地がいい。
高く上げた腰を支えるように掴んでいた手が、綺麗に反る背中を撫でてから無防備だった乳房を
強く握ってきた。覆い被さって耳を舐めてくる舌に、甘い呻き声が漏れる。
「本当に、素敵ですよ…」
「あ、ぁ…逸人さん…」
もう美徳の目にはハデスしか映っていない。無粋な時を刻んで二人のひとときを阻む置時計など、
もう存在をすっかり忘れていた。
女の意識の中で時が、止まる。






453:名無しさん@ピンキー
10/06/20 13:47:16 +wcmcovO
このハデス、雄だ!!
美徳ちゃんは大人の恋愛可愛い

454:名無しさん@ピンキー
10/06/21 22:14:51 hbnJmdFi
いやはやいやはや。
ちょっと遅れたけどGJ!

455:名無しさん@ピンキー
10/06/22 15:21:21 ++oyiJT+
みのりちゃん可愛いよみのりちゃん

やっぱりアシタバ×鈍もありなんじゃないでしょうか

456:名無しさん@ピンキー
10/06/22 23:31:05 qYXMA65P
いやいや鈍×アシタバもありだ。

457:名無しさん@ピンキー
10/06/23 00:06:36 Pq6oHxZO
鈍×みのりもアリじゃね
鈍百合っぽいし「逸人のこと教えてあげる」とか言って釣って。

458:名無しさん@ピンキー
10/06/23 00:15:12 K/tdK6X5
さあ、その勢いのままに何か書いてくれよう

459:名無しさん@ピンキー
10/06/23 08:57:31 DfmmubpM
ここは百合SSの投下も可なんだろうか?
まだ接点無いけど鈍×花とか結構好きなんだ。
もし可なら書いてみたい。

460:名無しさん@ピンキー
10/06/23 11:12:17 EjOV1KIr
百合そのものは問題ない
ただ、今現在作中で接点がないキャラ同士っていうのはどうなんだろう

461:名無しさん@ピンキー
10/06/23 13:42:01 vXrujX3h
いいんじゃないか?特に不自然なシチュエーションでなければ。

例えば、普通の美容院と思ってサロン・ユグドラシルに行った花巻が
例のごとくドジ連発で、保管していたエロ病魔を逃がしてしまい、
花巻をかばって取り憑かれた鈍が、花巻を食ってしまうとか。

462:名無しさん@ピンキー
10/06/23 13:52:24 EjOV1KIr
それもそうだな
エロパロなんだから、不自然にさえならなければありかも

463:名無しさん@ピンキー
10/06/23 20:25:39 5wax509V
>>457
こんな感じか?

「離して下さい!」
美徳は慌てて身を捩った。ここに来たのは自分からとはいえ、こんなたやすい罠にかかったこと
が悔しくてならない。
「あら、どうして?」
罠を張った女は平然として穏やかな微笑を浮かべるのみだ。
そもそも、ハデスと学生時代に親友だったというこの女に関してあまり良い感情は持っていない。
今になってもまだ何かと関わりを持とうとしてくるのが、美徳自身の足元を脅かされているようで
不安になるのだ。
「逸人のことが知りたいんでしょ?だからわざわざ来たのね。可愛いわあ~」
「う…」
決して否定は出来ない。ハデスのことはほとんど何も知らないに等しいのだ。あえて詮索しない
ことを旨としているだけに、情報には飢えている。だからつい、鈍という名のこの妖艶な女の誘い
に乗ってしまった。
「ホント、逸人には勿体無いぐらい綺麗なお嬢さんねえ…妬けるわね~」
艶やかに彩った爪がするりと頬を撫でる。身動きすら出来ないほどの恐怖を感じながらも、美徳
は何とか逃れようと足掻いていた。

464:名無しさん@ピンキー
10/06/23 22:56:32 DfmmubpM
百合可なんだな。二人ともレスありがとう!
不自然じゃ無いシチュでやってみる。

>>463
GJ!ちょっとこれ続きが凄く気になるよ…!

465:457
10/06/23 23:17:05 IPXZ26+o
>>463
GJ!!!超滾った。
なんという俺得!

466:名無しさん@ピンキー
10/06/23 23:32:37 5wax509V
百合は書いたことないから、試しにざっくりやってみた。
今度はちゃんと書き直してみる。

467:名無しさん@ピンキー
10/06/24 03:11:53 WnwJ1yf5
書いた。
そういや、美徳と鈍も今のところは接点ないな。
それ考えると、いかに自然なシチュでエロを書けるかってのは大事なこと
だと改めて思った。

468:蛇の罠 1
10/06/24 03:12:51 WnwJ1yf5
「ようこそ、ユグドラシルへ」
暗い店内に一歩足を踏み入れた途端に、絡みつくような声が聞こえた。
好奇心だけならこんなところに来たりはしなかった。美徳は懸命に目を凝らして店内に目を配る
うちに、ここが普通のサロンではなさそうなことに気がつく。
「奥へいらっしゃいな、お嬢さん」
声はどこか面白そうな、からかうような口調だ。

前日のこと。
帰宅する為に校門を出たところで一人の女に声をかけられた。
それは以前、あまり思い出したくもない出来事で顔を合わせたことのある女で、それがあるから
こそあえて無表情を通していたのに女の方は至って穏やかな顔をしている。何度見ても妖しい
魅力を漂わせている美しい女だ。側にいると余計な嫉妬心が起きそうになるので足早に通り過ぎ
ようとしたその矢先のこと。
「お久し振り~、この間は悪いことしちゃったわねえ…」
「…何のことでしょうか」
「うふふっ、まあそれはいいわ…お近付きの印に明日うちの店に遊びにいらして。逸人のことも
幾つか教えて差し上げられるかも知れないし」
とんでもないことを言い出す女に無視を決め込もうとした美徳だったが、素早く小さなメモを握ら
されてしまった。
「あっ、ちょっと」
「その時間にお待ちしているわね、ふふっ…」
追いかけて返そうとしたのだが、用件を果たした女の姿は呆気ないほど早く消えていた。メモを
開くと簡単な店の地図と時間が書かれていた。

店の奥は普段休憩室として使っているのか簡易ベッドが置かれていて、店内の様子とは違って
妙に殺風景な印象を受けた。鈍という名らしい女は休憩室の照明をつけると艶然とした微笑を
漏らす。
「ごめんなさいねえ~、さっきまで予約のお客様がいて立て込んでいたの」
「…そんなことは、どうでもいいんです」
わざわざこんなところまで来たのだ、少しは何か得るものがないと無駄足になる。そればかりが
頭の中にあった美徳はその時まだ気付いていなかった。この鈍という蛇のような女の危険性を。

469:蛇の罠 2
10/06/24 03:13:31 WnwJ1yf5
「何かお飲みになる?この時間からお酒でもいいのよ…」
「いえ、お気遣いなく」
休憩室は殺風景な上に狭かった。他に座る場所もないということで簡易ベッドをソファー代わりに
座ってと言われ、仕方なく腰を下ろした。好きで訪れた場所ではないだけに、何となく居心地が
良くない。それに、鈍の雰囲気が妙に気になるのだ。
それは本能が危険を知らせているのだと気付けば、まだ結果は違っていたかも知れない。

いきなり首筋に何かが触れてきた。
「えっ?」
振り向こうとして、それが鈍の指先だと気付く。その指が胸元に落ちてくるのを感じ、慌てて振り
きろうとしたのだがわずかに遅かったようだ。物凄い力で両手首を一纏めに掴まれて身動きが
取れなくなる。
「離して…!」
美徳は精一杯身を捩って抵抗した。ここに来たのは自分からとはいえ、こんなたやすく罠にかか
ったことが悔しくてならない。
「あら、どうして?」
罠を張った鈍は平然として穏やかな微笑を浮かべるのみだ。
そもそも、ハデスと学生時代に親友だったというこの女に関してあまり良い感情は持っていない。
今になってもまだ何かと関わりを持とうとしてくるのが、美徳自身の足元を脅かされているようで
不安になるのだ。
そんな心中を見透かしたように、鈍は罠を念入りに強化する。耳元で囁く声が猛毒のように甘くて
おかしくなりそうだ。
「逸人のことが知りたいんでしょ?だからわざわざ来たのね。可愛いわあ~」
「う…」
決して否定は出来ない。ハデスのことはほとんど何も知らないに等しいのだ。あえて詮索しない
ことを旨としているだけに、情報には飢えている。だからつい、鈍という名のこの妖艶な女の誘い
に乗ってしまった。
「ホント、逸人には勿体無いぐらい綺麗なお嬢さんねえ…妬けるわね~」
艶やかに彩った爪が弄ぶようにするりと頬を撫でる。心さえ縛られるような凄まじい恐怖を感じな
がらも、美徳は何とかここから逃れようと必死に足掻いていた。

470:蛇の罠 3
10/06/24 03:14:29 WnwJ1yf5
「あら、ダメ…おいたはいけないわ…」
子供をたしなめるような優しい声を出しながらも、鈍は掴んでいた美徳の両腕をようやく開放した
かと思うと今度は後ろ手に縛り上げた。そのあまりの早技に、すぐには何をされているのか分か
らなかったほどだ。
「や、やだっ!」
もう心底恐ろしくなって、身が竦んでしまう。だが、鈍は相変わらず穏やかに美徳を眺めている。
まるで鼠をいたぶる猫か獲物をなぶり殺す蛇だ。
「ごめんなさいね~威勢のいいお嬢さんの扱い方はよく分からないの…だからちょっと我慢して
てね。暴れると腕に痣がつくわよ…」
目を細めて笑う鈍の表情は、こんな時でも魂を抜かれるほど綺麗だった。もしも美徳が男であれば
全てのプライドをかなぐり捨ててその足元に膝まづくことだろう。
「ふふっ…」
一層細めた目が蛇のようにぎらりと光った。全身を舐めるように見られるのは嫌で仕方ないのに、
何故か視線に晒されているだけで身体が熱くなってくる。ハデス以外の誰かにまで、まさかこう
なってしまうとは思いたくもなかった。
なのに、否定しようとしても一度着火した身体の熱はどんどん燃え上がり始めている。
「あっ…」
疼きを察したように、白い手がゆっくりと身体を撫で回し始めた。その間にするすると服が脱がさ
れていく。とはいっても、後ろ手に縛られたままの体勢なので、シャツがはだけられてブラが引き
上げられるに留まった。
それでも直に乳房を撫でられて、恐怖と快感がない交ぜになった悲鳴に近い声を上げる。
「やだ、やめてっ…」
この女は一体何をいるつもりなのだろう。これからどうなってしまうのだろう。考えるだけで美徳
は軽率な行動をしてしまったことを悔いた。
こんな女の誘いなんかに、最初から乗るんじゃなかったと。
「まあ、とても綺麗な肌ね~、何を使っているのかしら…」
そんな美徳の気持ちにも構うことなく、鈍は面白いオモチャでも手に入れた子供のようにとても
嬉しそうだった。わざと力を入れて乳房を揉んだり握ったりして手に伝わる弾力を愉しんでから、
じっくりと唇や舌を這わせてくる。

471:蛇の罠 4
10/06/24 03:15:12 WnwJ1yf5
ハデスにされている時とは全く違う、最初から性感を鷲掴みにされるようなダイレクトな感覚に
肌が粟立った。
「やめてったらぁ…」
美徳の声はもう懇願になっていた。これ以上何かされたら本気でおかしくなりそうで、自制出来る
自信が持てない。なのに、鈍はますます楽しそうだ。
「ホントに綺麗な肌ね…逸人ったら、跡一つつけてないなんて随分律儀だこと…うふふ」
「うっ…」
鈍の口からハデスの名を聞きたくはなかった。耳を塞ぎたいのに、わざとなのか何かにつけて
その名前を出すこの女の残酷さに涙が滲んだ。
「あらあ~、そんなに気持ちがいいのねえ…じゃ、ここもかしら」
細く綺麗な手がジーンズ生地の上から一度するりと股間を撫で、ファスナーを開くなりショーツも
一緒に脱がしてきた。すっかり身体の力が抜けきっていた美徳には、もうどうすることも出来なか
った。こんなことは本当に嫌なのに、抵抗さえ封じられているのが悔しい。
「そんな顔、しないの」
あらわになった箇所に滑らせた指が、びっくりするほど優しい仕草で感じ入っている核をなぞる。
二本の指を擦り合わせるようにして核を挟み込んでは、時折刺激を与えるように摘まみ上げられ
て、その度に肌がざわりと波立った。
「ねえ、お嬢さん…ここ、逸人はどうやって可愛がってくれるの?教えて…」
「や…そんな…」
激しい快感に、息が上がっていく。とてつもなく気持ちがいい。けれどこれはまやかしの快感で
しかなかった。美徳が心から燃え上がれるのはハデスが与えてくれるもので、それ以外は一切
受け入れたくない。それが本心だ。
それでも、今は自分を守る為にひとまず鈍の手に落ちることを選択するしかなかった。この快感は
それほどまでに逃れ難く、心を切り離さなければ壊れてしまいそうだったのだ。
「あっ、あぁ…」
身体が震え出した。もう限界を迎える時が来ている。
「うふふふっ、こんなに濡らして…素直でいい子ね…さあ、いっちゃいなさいな」
内部を掻き回す指の動きが早まっていく。思うように操られて、ギリギリのところまで追い詰めら
れて、美徳にはもう何も残されてはいなかった。細い指がぐいっと奥までを深く抉り抜いたタイミ
ングで、身体中の意識が束になって天へと駆け上がっていく。
「ああああっ!」
室内を震わせるほどの絶叫を上げながら美徳は達してしまった。

472:蛇の罠 5
10/06/24 03:15:48 WnwJ1yf5
しばらくは身体を動かすのも億劫なほどだった。
「…ちょっと遊びすぎたかしらね~、ごめんなさいね…」
後ろ手に縛られていた手首はすぐに開放されたが薄く跡が残っていた。すぐに消えてしまう程度
のものでも数日は人目から隠しておかなければいけないのだろう。
鈍は簡易ベッドに横たわったままあまり反応のない美徳の髪を撫でてきた。
「逸人のことを教える約束だったわね…そうね、逸人はいつでもとても寂しそうだった…だから、
この間再会した時は別人だと思ったほどよ。それはお嬢さんのお陰かしら…」
「…それだけ?」
事後、初めて美徳は口を開いた。
「ええ、そう。今はね」
「…そう、それで充分よ。私その為にここに来たんだもの…」
それだけを言うと、美徳はずっと張り詰めきっていた意識を手放した。

「三途川先生ですか?実は才崎先生がこちらにおりまして、訳あって迎えを頼みたいと思うの
ですが逸人を呼んで貰えますか?はい、ありがとうございます…」
携帯を切ると、鈍は眠り込んでいる美徳の頬を撫でた。
「お嬢さん、今日は楽しかったわよ…あなたは後で逸人にたっぷりと慰めて貰えるんだから、
忘れてしまいなさいな」
その声はとても楽しそうだったさっきまでの調子とは全く異なっていて、軽い羨望の混じった苦い
ものだった。きっと鈍自身も意識していないものだったに違いない。






473:名無しさん@ピンキー
10/06/24 20:28:03 98WeyYlq
>>467
GJ過ぎるありがとう神…!!
投下の早さに感動した!
二人とも可愛いよー。
鈍ちゃんが悪女のままで終わらず切ないのがいい!

474:名無しさん@ピンキー
10/06/26 01:48:34 hSpkEyFE
GJ!百合もいいな


シンヤ分が足りないので誰か頼む

475:名無しさん@ピンキー
10/06/28 18:32:56 vkPktBKU
ハデス先生がすごく興奮すると黒髪になるのか……。

476:名無しさん@ピンキー
10/06/28 18:55:25 yKyV8vvK
いい設定が追加されたな。
それだけでも、今後色々書けそうな気がするよ。
とりあえずエロなしシンヤが出来たので投下。

477:ifで逢いましょう 一
10/06/28 18:56:57 yKyV8vvK
土曜日の午後九時半、真哉は賑わう繁華街にいた。
午後から封切りになった映画を観に行き、それから買い物がてらしばらくぶらぶらして食事をする
といういつものコースを辿っていて、もう少ししたら帰るつもりだった。
本当なら弟の刀哉を連れて来るつもりだったが、映画の内容が好みではなかったようで、今日は
ずっと一人で行動していた。だからなのか、あまり気分は盛り上がらないままだ。
「…そろそろ帰ろうかなあ」
コーヒーショップの席からぼんやりと行き交う人々を見るともなしに眺めていると、そこに良く知る
人の姿を見かけた気がした。人違いかと目を凝らしても見間違いなどではない。
「先、生…?」
真哉は反射的に立ち上がると、慌ててバッグを抱えてショップの外に出た。姿を見失ってしまって
は何もならない。人影に紛れそうになってはいるが、見慣れた後ろ姿は確かにハデスだ。そして
隣には女がいる。それもまた良く知っている人物に間違いない。
「どうしてこんなところに」
思わず呟いてしまう。
別に何かやましいことなどある訳でもない。ハデスも職務を離れれば普通の若い男なのだし、
プライベートで何をしようと自由ではある。ただ、その隣に美徳がいたのが意外だと思っただけ
のことだ。
学校では何かとハデスに突っかかっている美徳が、今は随分親しそうに話し、そして屈託なく
笑っている。その笑顔が観たこともないほど柔らかく穏やかなものだったことも手伝って、急に
嫉妬心が湧き上がってきた。
あんなに幸せそうに振舞うことなど、真哉には許されてはいないのだ。

最初はそのつもりもなかったのに、いつの間にか二人の後をつけていく形になっていた。
二人は真哉がつけていることなど全く知ることもなく、談笑しながら街の中を歩いていく。一体
どこまで行くのか分からなかったが、こうなったら意地だった。
やがて街の中心部を離れてきた頃、とあるアパートの前で立ち止まった二人は低い声で何か
しばらく話していた。美徳が引き止めているような素振りを見せている。どうやらハデスの方は
送って行ってすぐに帰るつもりだったらしい。だが、それもわずかの間のことだった。
声など聞こえて来なくても分かる。二人の間にある濃密な恋人同士の雰囲気は、些細な仕草
だけで全てを伝えているのだ。見つめ合う表情そのものが誰も立ち入らせない。
やがて二人はアパートの一室に入って行った。多分今夜はそこで過ごすのだろう。さすがにそれ
以上追求するのは憚られた。あまりにも分かり過ぎていることで、自分が惨めになるだけなのは
明らかだったからだ。
「…何してんだろう、私」
一人残された真哉は街灯の下で呟く。
今日は本当につまらない日だったけれど、最後の最後でとどめを刺された気がした。

478:ifで逢いましょう 二
10/06/28 18:57:39 yKyV8vvK
あの夜の二人の姿がいつまでも頭の中に残っていたせいか、月曜日になっても真哉の気分は
優れないままだ。そのせいか三時間目の体育の授業で柄にもなく派手に転んで膝を擦り剥いて
しまった。
「あ…」
傷は浅いものの、結構大きく擦っている。放っておいてもすぐに治りそうなものではあったが、
クラスの友人たちが余りにも痛そうだと騒ぐこともあって、仕方なく授業を中断して保健室へと
向かう羽目になった。
「跡が残ったら大変だから、すぐに行きなさいね」
怪我の状態を見て、美徳もあっさりと促した。
本当はこんな重い気分を抱えてハデスの顔を見たくはなかったのだが。

「珍しいね、鏑木さんがこんな怪我をするなんて」
ハデスはいつもと全く変わりがなかった。いつものようにとても優しく、いつものように適切に傷口
を消毒してから処置を施す。何もかもが変わらなさ過ぎて拍子抜けするほどだ。
あの夜美徳を見ていた愛しそうな表情ではなく、生徒の誰にでも見せるただの養護教諭としての
笑顔を向けられても、それはもう巧みに本音を隠す大人のずるさにしか思えなくなっていた。
「鏑木さん?」
椅子に座って処置を受けている真哉の反応が全くないせいか、ハデスは不思議そうな顔をして
いた。
「あ、私…ちょっとぼんやりしていて…」
「女の子なんだから、気をつけないとね」
「先生」
ずっと静かだった真哉は急に語調を強めた。
「今、好きな人がいるのですか?」
「何を…」
予期もしていなかったことを聞かれて、ハデスは面食らっているようだ。
本当なら、こんなつまらないことでこの優しい人を困らせたくはないのに、どうしてもあの夜の表情
がちらついてしまう。真哉などただの生徒の一人でしかないのだと思い知らされるのなら、いっそ
困らせてでも少しでも長く側にいたいと思ってしまう。
「聞きたくなっただけです」
「…うん、いるよ」
嘘がつけそうにないハデスがどんな言い訳をするのかと思いきや、さして迷うこともなくそんな
言葉を返してきた。そこに軽い驚きを感じた。

479:ifで逢いましょう 三
10/06/28 18:58:35 yKyV8vvK
ずるい大人ならば、たかだか生徒のそんな質問などには適当な嘘を与えておけば済むことと
高を括る。実際にそうした方が世間的にいえばずっとスマートだろう。
なのにハデスは嘘すらも言わなかった。それほどに美徳の存在が心の中で大きくなっている
のだろうか。
「…どんな人なのですか?」
「とても可愛い人だよ。脆くてすぐに傷だらけになっても、決して挫けない強さもある」
それは間違いなく美徳のことだ。何にでもすぐに欲情する男子たちは美徳の顔に、胸の大きさ
やスタイルに、いつもいやらしい妄想絡みの話をしている。だが、もちろんその程度のくだらない
女性ではないことなど同じ女だから分かる。
だからこそ悔しく、また焦りにも似た気持ちがあった。
別に真哉には何の約束があった訳でもない。ただ十年経って大人になった頃にまだハデスが
一人でいるのであれば、遠慮なく近付けると思っただけのことだ。当然気持ちは変わらずにいる
つもりだったし、きっと願いは叶うだろうと根拠もなく信じていた。
なのに、こんなに早く覆されるなんて思ってもみなかった。
最初から真哉の一人相撲だったのは分かっている。分かっているからこそ余計に悔しいのだ。
「そうですか…そんなにその人を」
膝に巻かれた包帯の下で、擦り傷がじくじくと痛む気がした。こんな子供にまで嘘も言えない
ほど好きなのであればもう第三者がどうこう言える筈もない。

授業が終わって家に帰って来てからも、気分は最悪なままだ。
あれほどはっきりと好きな人がいると言われるとは思ってもいなかったのもある。もしかしたら、
それは変に期待を持たせてせっかくの時間を無駄にさせないようにというハデスなりの配慮だった
のかも知れないが、もうどうでも良いことだ。
真哉に出来るのはこれから十年、思い続けることだけ。
こんなことを考えるのはいけないのだろうが、あの二人が今後上手くいくかどうかは当人同士でも
分からないことだ。十年の間に真哉が目論んだ通りになっている可能性だってある。わずかでも
可能性があるのであれば、決して諦めることなど出来ない。
身体の中に、ハデスがしてくれたことが刻み込まれている。それがある限りは望みを繋げることは
出来るのだ。
「絶対、待つんだから…」
男勝りでさっぱりした気性だとよく人には言われる真哉だが、やはり根は女だった。望むものが
あればどんなことをしてでも手に入れようとする。その為の情熱や時間は惜しまない。
それで万に一つでも願いが叶うのであれば安いものだと思っていた。

480:ifで逢いましょう 四
10/06/28 18:59:12 yKyV8vvK
時は緩やかに過ぎていく。
真哉もまた、何事もなかったように昼休みには保健室に行く。何もかもがいつもと変わらないと
ハデスは思っているのだろう、相変わらずの笑顔を見せている。
変わらない筈がないじゃないですか。
素知らぬ顔でお茶を受け取りながら、真哉は胸の内で呟いた。
変わらないものなどこの世に何一つないし、もしかしたら考えもしなかった事態が今すぐに起こる
ことだってあるだろう。
そして。
いつものように開く保健室のドアが、ある日わずかだけ違う世界に繋がっていることだって有り
得るのだ。その世界の保健室にいるハデスなら無条件で真哉を受け入れてくれるかも知れない
と妄想するだけで、毎日の希望が持てる。
先生、私を愛してくれるあなたにいつか逢いに行きますね。
その日は遠い未来かも知れない。明日か、明後日なのかも知れないけれど。






481:名無しさん@ピンキー
10/06/29 01:12:21 gj+B6rcI
おおおおおGJ
切ないw

482:名無しさん@ピンキー
10/06/30 03:11:13 S8NyulKl
日本代表ベスト8ならず。
試合見ながらこんなの書いてた。

483:その気になりたい 1
10/06/30 03:12:09 S8NyulKl
「あなたという人はあああーーーっ!!!」
五時間目が始まって十分ほどした頃、突如として保健室の方から絶叫が聞こえてきた。
「お、今日は随分派手だな」
校長室で食後のお茶を嗜んでいた三途川がしみじみと呟く。多分時間的にいって生徒も教師も
誰一人聞いてはいないだろうが、一体何があったのかそのうちハデスにからかいがてら尋ねて
みようとほくそ笑んだ。

保健室で髪を逆立てているのはもちろん美徳だった。
今日は五時間目に担当するクラスもないことだしとハデスの顔を見がてら保健室にやって来た
ものの、そこであるものを見つけてしまったからこその逆上だ。
「こ、こ、こ…こんなものが何でここにあるんですか?」
震える手が握り締めているのはエロ本だった。恐らく昼休みに入り浸っている生徒たちの誰か
が悪ふざけで持ち込んだのだろう。
「…いや、それは僕にも分かりませんが、とにかく落ち着きましょう」
保健室に来てすぐにこんな感じで劣化の如く怒り狂っている美徳に、ハデスも及び腰になって
必死で宥めている。
「た…たとえ生徒が持って来たものだとしても、それを指摘するのも教師の役割でしょう。しかも、
こ…こんなものを…」
エロ本は言わずもがなの巨乳女教師ものだ。以前ならその類のものは見る度にいちいち勘に
触って仕方なかったものの、さすがに今はまあ隠れて見るぐらいなら、と寛容な気持ちになって
いる。
ただし生徒限定でだ。
こんな下品なものをハデスが目にしたかも知れないと思うと、どうしようもなく怒りが湧いてきて
止まらない。
「とにかく、こんなものがここにあることが嫌なんです」
「分かりました、分かりましたから…落ち着きましょう。お茶を淹れますから」
やや腰が引けていながらも、ハデスは何とか美徳をソファーに座らせてお茶を淹れに行った。
まだ怒りは収まらないものの、一人でぷんぷん怒っているのも何だか滑稽に思えてきて少し
だけ落ち着きを取り戻してくる。
手持ち無沙汰なせいもあってまだ手にしていたエロ本をぱらりと開いてみると、目も眩みそうな
刺激的な写真がずらりと並んでいて、思わず呆気に取られてしまった。

484:その気になりたい 2
10/06/30 03:12:51 S8NyulKl
以前なら目の毒過ぎて絶対に見られなかった、そんなあまりにもエロティックな場面の写真の
迫力にすっかり怒りも忘れて見入ってしまう。
若く美しく巨乳の女教師が場所も時間も憚らず生徒たちや同僚教師との情事に耽って歓喜して
いる。男子生徒たちはいつもこんなものを眺めて発散出来ない欲求の憂さを晴らしているのだと
思うと、少しだけ気の毒に思えてしまう。
それは少しだけ美徳が大人として成長したということだろうか。
しかし、それよりも困ったことが起こってしまった。

「はい、どうぞ」
熱い湯呑みを置いたハデスは、すぐに異変に気付いたのか奇妙なものでも見るように美徳の
顔を覗き込んだ。
「何か、あったんですか?」
「…ええ、まあ…」
美徳は頬が熱くて堪らず、俯くしかなかった。エロ本を見ただけで身体の奥が疼き始めている
なんて、自分でも信じられないほどだ。男たちに貫かれながらも悦びに打ち震えている女教師
の姿に一瞬にして共感してしまったのだ。こればかりは理屈でも何でもなく、女の本能ともいう
ものだろう。
あんなに放埓に、好き放題に快感に浸れたらどんなに素晴らしいことか。
そう思っただけでも、身体の奥を叩き続ける熱が止められなくなってしまった。
「…ハデス先生…いいえ逸人さん」
「何でしょうか」
急に呼び方が変わったことで、ハデスは更に何かあったのかと首を傾げている。そんな様子に
構うことなく、美徳は立ち上がって側に駆け寄った。
「…あの、美徳さん…?」
「したくなりました」
「えぇ?ちょっと待っ…」
とんでもない展開に驚いているハデスを壁際まで追い詰めると、美徳はぴったりと身体を寄せて
抱き着いた。教師の癖に授業時間中にこんなことをしようとしているなんて、以前の自分なら考え
もしなかったに違いない。
「あ、あの、いいから落ち着きましょう。ね?」
ハデスはしどろもどろになりながらも何とか宥めようとしているが、熱情に突き動かされている今
の美徳には全く効果がなかった。

485:その気になりたい 3
10/06/30 03:13:25 S8NyulKl
「逸人さん、私をこんなに変えてしまったのはあなたです。あなただけに、こんなにいやらしい女
になってしまったのです。だから…付き合って下さいね」
「え、いや。せめて夜まで待って貰えれば」
「嫌です」
至近距離でガン見している美徳の目は完全に据わっている。どのみち授業時間中に生徒や他の
教師がここに立ち入ることは滅多にないし、あるとすれば各種学校行事が絡む時ぐらいのものだ。
それを見越しているからこそ、ここまで大胆になれる。
「もう身体が熱くて堪らないんです、六時間目が始まるまでに鎮めて頂かなければ…私、仕事に
なりそうもありませんわ。ね、お願い…」
追い詰めながらも更にじりじりと身体を密着させてくる美徳の気迫に、ハデスは戸惑いつつもまだ
宥めようと無駄なあがきを見せる。
「学校の中ではさすがにまずいですから…」
「生徒たちや職員の怪我、病気、体調不良に対処するのは養護教諭の仕事ですよね?だったら
今の私を何とかして下さるのも仕事の一つなのですよ」
もう逃げ場のないハデスの股間を、熱を帯びた手がすりすりと擦る。さすがにそこを刺激されたら
どんな男でも適わない。ましてその気バリバリに漲っている見るからに肉食女子な美徳に対して、
普段から三大欲求ことごとく希薄な草食男子ハデスでは絶対に勝ち目はない。
「あ…それはちょっと…」
声を荒げることなど、そして突き放すことなど出来ないハデスは、心底困り果てたように美徳を
見ている。万が一、気が変わってくれることを期待しているようだ。
絶対に相手が逃げないと知った上で物凄くいい顔でにっこりと笑いながら、ファスナーを下げて
勃ち上がりかけているものを取り出している美徳の姿は肉食獣のメスそのものだった。
「癒して、頂けますね?」
愛撫を覚えきった手が丁寧に形をなぞりながら指を這わせる。既にぬめりを滲ませている先端を
撫でながら、全体に塗り広げていく。それを潤滑材にして扱き始めた。
「う、ん、んっ…」
直接握られて愛撫されるのはさすがに感じ入るのだろう。ハデスが懸命に声を堪えている。その
顔をうっとりと眺めながらも、美徳の手の動きが少しずつ早くなっていく。身体を密着させて囁く
声が一層熱っぽくなった。
「嬉しい…私にもっと感じて下さい、もっとです…」
少し上擦った声は本当に嬉しそうな響きを持っていた。

486:その気になりたい 4
10/06/30 03:14:00 S8NyulKl
やがて充分な硬度を直に感じたのか、声が更に上擦る。
「…もう、欲しい…」
一度背伸びをしてキスをした後、長身の身体をゆっくりと床に倒させてからジャージとショーツを
足から抜いた。ハデスはもう覚悟を決めたのか黙ってされるがままになっている。
「逸人さん、軽蔑しないで下さいね。私、こんなに狂おしくなれるのはあなただけなんです…」
ふうっと息を吐いて馬乗りの体勢になる。片手で勃起しているものを握りながら、もう片方の手で
それを受け入れる膣を探った。
「んっ…」
ただ触っただけなのに、自分の指に感じてしまう。
何もされていないのにもう内部はすっかり濡れそぼって柔らかく蕩けていて、膝まで愛液が垂れ
落ちてきていた。これならこのまま挿入しても大丈夫かも知れないと口元が緩む。ここまで快楽
に従順な身体になってしまっていることはきっと喜ぶべきことなのだろう。こんな戯れなど、たった
一人とだけしか行わないのだから。
「あぁ…逸人さん…」
濡れたものが擦れ合う音がする。そこに押し当てた硬い一物の先端に、襞が歓喜してきゅっと
吸いついているのが分かった。
「もう…ダメ…」
身体を支えている膝に力が入らなくなってきている。快感に後押しをされて、美徳は緩やかに
腰を沈めていった。もちろんすぐに欲しい。すぐに激しい快感をもっと知りたい。けれど今のこの
じれったい感覚も味わっていたかったのだ。少しずつ内部を擦り上げていくものの硬い感触に、
逸る膣壁が絡みつく。
形さえ分かるほどにぴったりと纏わりついて離さない熱い内部の蠢きが、お互いをますます追い
上げていく。
「あ、あぁ…すごい」
根元まですっかり呑み込んでしまっても、まだ足りないと言わんばかりに盛んに腰を捩る美徳の
表情はとても幸せそうだった。夢でも見ているように閉じた瞼が、わななく唇が、染め上がる肌が、
どれだけこの交わりで深く感じているかを伝えている。
「は…うっ」
最初はゆったりと腰が動き始める。掻き回すように緩くグラインドした後で不意を突くように激しく
揺れながら、翻弄してでもいるように不規則な動きを繰り返していった。決して意図している訳
ではないのだろう。ただ、より快感を得る為の本能がそう動かしているのだ。

487:その気になりたい 5
10/06/30 03:14:40 S8NyulKl
「あんっ…すごいぃ…」
漏らす声が甘く濡れている。もう何も考えられなくなりそうだった。少しでもこの快感を長引かせる
為に先端が内部で擦れる位置を変えながら、激しく腰を振りたてる。緊張で張り詰めきった背中が、
動きを変える度に大きく震えた。
「もっと、もっと欲しいっ…」
男の上で跳ねながら、美徳は声をも震わせて深い歓喜に浸っていた。
「もっと、おっ…」
奥の奥、子宮口までを何度も突きながら声を絞り上げる美徳の嬌態に、ずっと押し黙ったまま
だったハデスが慌てて身体を引き離そうとする。
「…いけません、中で出したら…」
その突然の動きがまたとない刺激になった。膣内が恐ろしいほどの力でぎりっと締め上がって
美徳は絶頂を迎えてしまった。
「あ…!」
「ちょっ…ダメです…」
膣壁に絞られて、抵抗も空しくハデスは中に放ってしまったようだ。
時と場所を憚って、大きな声が上がらないように咄嗟に両手で口を押さえた美徳は、それでも
達した後の倦怠感を伴う感覚にしばらく放心していた。その間に少しずつ甘く蕩けていた表情が
変わっていく。
「…逸人さん、ごめんなさい…私、何てことを」
快感から開放されて、美徳はようやく正気に戻った。一人で勝手に欲情した挙句、最初から最後
まで強引にしてしまった。こんな乱暴な女は嫌われるに決まっている。そう思うと悲しくなってきて
まともにハデスの顔が見られなくなった。
「美徳さん」
「ごめんなさいね…」
どうすることも出来ないでいると、宥めるように頬を撫でられた。
「びっくりしましたけど、気にすることはありません。こうしたかったのは本当のことでしょう?」
「ええ、そうです…すぐに、したくなって…」
「ならばその通りにしていいんです。僕はいつでも受け入れますから」
まだ繋がったままハデスは身体を起こした。すぐ近くに顔が見えて、収まった筈の鼓動がまた
激しくなる。

488:その気になりたい 6
10/06/30 03:15:17 S8NyulKl
「そんな…今日のことは私が勝手に」
そこまで優しい言葉をかけられて、もうどう答えていいのか分からない。もごもごと口の中で言い
たいことを咀嚼しているうちに、また頬を撫でられる。
「僕の前では、あなたは幾らでもやりたいようになさって下さい。ただし、ここ以外のところでね」
「逸人さん…」
本当に、この人はどこまで甘やかしてくれるのだろう。もう何も見えなくなりそうに嬉しくて、美徳
は思わず抱き着いてしまった。
「で、あの…」
そんな耳元に、幾分困ったような声が届く。
「はい」
「そろそろ五時間目が終わりますので、抜いて欲しいのですが」
「あ」
こともあろうに、まだ繋がっていたことをすっかり忘れていた。それを思い出すとまた感じてしまい
そうで、出来るだけ中のものに刺激を与えずに抜き出すことに一苦労をしてしまった。
あまりにも気持ちが良かったせいでつい中に出させてしまったけれど、それは後でアフターピルを
飲めば何とかなることだ。
そうこうしているうちに、めくるめくような五時間目が終わる。

それから後、保健室に生徒たちがエロ本を持ち込むのを禁止されたのは言うまでもない。






489:名無しさん@ピンキー
10/06/30 07:22:27 oIUm8JYK
>>488
GJ!みのりちゃんがエロいっていいね!
ここの職人さんはマジで巧い

490:名無しさん@ピンキー
10/06/30 08:21:04 oIUm8JYK
>>480
うわスマン最新投下しかみてなかった、GJだ!
真哉の芯のつよさがかえって切ない
10年待つって決意できる彼女に惚れた

491:名無しさん@ピンキー
10/07/02 22:57:48 /itc7U3J
GJ!
なにこの投下ラッシュ
みのりちゃんがだんだんエロくなってるよ
いいぞもっとやれ

492:名無しさん@ピンキー
10/07/03 21:04:55 oP7cLqiA
GJ!みのりちゃん確実にツンからデレに移行してるwww

493:名無しさん@ピンキー
10/07/04 21:17:12 KZJysgxE
「ああいうのに限って気を許した相手にはスゲー可愛くなっちゃったりするモンだぜ」
美作談

てなことでデレ進行中なみのりちゃんなのであった

494:汝のこゑ 1
10/07/06 02:55:15 YwF1sJMf
日曜の夜、賑わう街の中で美徳は前後不覚の状態に陥りそうになっていた。
「…こんなところで…」
「いけませんか?」
「いえ…ただ、せめて私の部屋でなら」
激情に流されそうで、吐息のような声が漏れる。
二人が声を潜めているのはほんの少し路地の奥に入っただけの場所だ。すぐ側の大通りを何も
知らない人々が行き交っているというのに、いつ誰が入り込んで来るか分からないのに、こんな
ところで行為に移るのはどうしても憚られる。
なのに、いつもは無理なことなど決して言わないハデスが何故か今夜ばかりは妙に強引で、
戸惑っているのだ。
「ここではちょっと…」
「待てないんです」
ワンピースの裾はたくし上げられて、既にショーツの中に手が潜り込んでいる。思う存分指先で
感じる部分を掻き回されて、今にも意識が飛んでしまいそうだった。膣内から指を伝って溢れて
いる愛液が膝から踝までを濡らしていて、膝に力が入らなくなってきている。
壁に押し付けられたまま欲望を引き出されて、美徳はもうどうしていいのか分からなかった。
「気持ちがいいんですね?」
唇も舌も痺れてろくに動かなくなるほど長いキスの後、耳に流し込まれる低い囁きが心まで一気
に麻痺させてしまう。
「はい…」
焦点の合わなくなっている目の前に、愛液で濡れた指先が突き出される。
「こんなにして、本当に可愛い人ですね」
「あ…逸人さん…」
身体の奥がずっと熱く疼いている。膝どころか身体の力も抜けてしまいそうで震える美徳の片足
が突然担ぎ上げられた。
「…あぁ、ダメっ…」
わずかにずらされたショーツの脇から強引に突き入れられ、声を失うほどの快感に襲われながら
も必死で縋りつく。まさかこんな賑やかなところで本当に事に及ぶとは考えてもいなかったので、
身体の反応に頭がついていかない。
それでも、一度感じた快感は抱かれることで際限なく膨れ上がっていく。

495:汝のこゑ 2
10/07/06 02:55:54 YwF1sJMf
「幾らでも、差し上げますから…もっと感じて下さい」
「逸人、さん…あああっ」
激しく揺さぶられて、一気に極限まで追い上げられていく。もう美徳にはここがどこなのか、何で
事に至ったのか、分からなくなっていた。

「…?」
気がつくと、見慣れた自分の部屋にいた。
どうやらうたた寝をして夢を見ていたらしい。
まだ夢の中の生々しい光景が頭から離れないせいか、ベッドから起き上がることもせずにしばらく
時を過ごした。
まさかあんなエロティックな夢を見てしまうなんて、一体何があったのだろうと自分ながら不思議
に思うほどだ。あれは隠された願望なのだろうか。強引にされることを本当は望んでいるのだと
したら、それは決してハデスに知られてはいけない気がした。
あんな夢を見て感じてしまうような淫らな女など、きっと男は引いてしまうに違いない。そう思うと
心に迷いが生じてしまう。
「どう、しよう…」
夢の中で印象に残っているのは、あの魅惑的な声。普段でも心地良く聞こえるのに、二人だけ
でいる時に耳に響くあの声音といえば、もうそれだけで心が蕩けてしまう。心を奪われた相手の
声であればどんなものでも例えようもない魅力を感じるものとはいえ、あの声だけは本当に特別
だった。
「…逸人さん」
急に寂しくなって名前を呟いた途端、枕元に置いた携帯が鳴る。時計を見れば時刻はもう午後
八時を過ぎている。一体こんな時間に誰だろうと思いながら取ると、夢の中でも焦がれていた声
が流れてきた。
『こんばんわ、美徳さん』
「…逸人さん、どうしたのですか」
『今、駅前の電話ボックスにいます。これからそちらに伺っても宜しいですか?』
「えっ」
信じられないことが起こった。もう明日にならなければ会えないと思っていたのに、ハデスの方
からここに来るという。しかも、あまり好きではないという電話を使って連絡をしてきたのだ。
それは自惚れても良いのだろうか。
『ご都合が悪いですか?』
「いえ…お待ちしています」

496:汝のこゑ 3
10/07/06 02:56:33 YwF1sJMf
携帯を切った後、美徳はざっと部屋の中を見回した。別に散らかっているところや見苦しいものは
ない。このまま迎え入れても構わないだろうと思えることが嬉しい。
もう、ここで会うことに理由などなくなっているのだ。
ハデスにとって、まだ美徳は至らないことばかりある女には違いない。それでも歩み寄って来るし
こちらからも歩み寄りたい。そして普通に恋人と言えるようになったらまた女として一段踏み出せ
るのだろう。
あの優しい声に導かれれば、どんな風にでもなれる。今は心からそう思えた。






497:名無しさん@ピンキー
10/07/06 02:59:06 YwF1sJMf
今回は短いけど、これだけ。
デレ進行してるよ。

498:名無しさん@ピンキー
10/07/06 19:19:51 H5J/ux4a
GJ!最初らへん一瞬クルエルが抜けたハデスかとオモタw

>>493
案外鋭いこと言うよなーさすがみっちゃんwww

499:名無しさん@ピンキー
10/07/06 21:32:23 MncL/z2p
GJ!
まだ知らない大人の世界を見られるのはいいね

>>493
やっぱり美っちゃんは言うことが違う、さすがだよ

500:名無しさん@ピンキー
10/07/07 07:12:13 g2KRwiAo
本好、こんなとこにまで来んなw
中学生の来るところじゃない

501:名無しさん@ピンキー
10/07/08 09:10:40 pSkg/BuT
>>499はあのごうm……勉強部屋に入ってしまったんだよ……。

そしてデレ進行中のみのりちゃんGJ

502:名無しさん@そうだ選挙に行こう
10/07/10 22:41:02 DX9F6wZW
美っちゃん凄いよね。投下すりタイミング失ってもチャンスを作ってくれたり
そういう細かい所にこそ美っちゃんの優しさっていうのかな?そういうものが表れてると思うんだ


というわけで次レスよりようやっとアシタバくんと花巻さんの触りまで書けたから投下

503:名無しさん@そうだ選挙に行こう
10/07/10 22:42:14 DX9F6wZW
もとより臆病であるから、必要以上に疲れることが多い。
夏と言うには随分と過ごしやすい爽やかな休日というのに少年-明日葉郁は背
に汗が伝うのを感じていた。
いくら図書委員が推薦しようと、夏休みに読書をする生徒は、言われなくても
本を読むし、読まない生徒はいくら訴えかけようと読まないのだ。学校も分か
ってはいるだろえが、教育機関という手前、健全な建前を、無駄だからと一蹴
するわけにもいかなかった。もっとも我らが常伏中学の校長に限っては、そん
なことも簡単に無視しそうではあったが。
図書委員と言うのは、概して休日を学校に献上せねばならぬ事態に愚痴を漏ら
さないような従順な生徒がつく役職である。アシタバもそうであり、いま慌てて
駆けてきたクラスのもう一人の図書委員-花巻美玖も例外でない。
「ご、ごめんなさい!!遅れちゃ…ひゃう!?」
何もないのにところで足を絡めて転びそうになり、美玖は素っ頓狂な声をあげ
た。
「危な…!!」
「ひっ!」
-どすっ…-
転びはしなかった。飛び出したアシタバに寄り掛かる形で美玖は止まった。
すこししてからそれが一体どんな絵なのか、パニック気味の頭で思い描くと、
美玖は慌てて身を離した。すでに心臓が苦しい。
「ほ、本当にごめんなさい!!」
「えっ、いや…ぜ、全然。花巻さんは大丈夫?怪我はない?」
「う、うん。だ、だ、大丈夫!ありがとう…」
「じゃあ…うん。い、行こうか?」
「うん…」
この町で一番人通りが多い駅前で、周りの目から逃げるように二人は目的の本
屋に向かった。

504:名無しさん@そうだ選挙に行こう
10/07/10 22:43:21 DX9F6wZW
~~~~

一体自分はどういう状況にいるのか。アシタバは何度も何度も頭の中で整理を
続けた。
図書委員の仕事として、花巻美玖と二人で町の本屋に向かった。緊張こそした
が、問題なく仕事も終わり、解散にしようとした。その時美玖がアシタバの袖
を掴みながら言ったのだ。
-もうちょっとだけ、一緒に…-
学年で、いや恐らくは学校で一番アガリ症な美玖からの予想外の提案に、戸惑
いは隠せなかった。
「アシタバくん…」
「な、何?」
「ご、ご、ゴメンね。無理言っちゃって…」
喫茶店で向かい合って座った二人は、お互いに視線を合わせられずに、びくび
くと震えながらカップを手に取る。喫茶店などアシタバは滅多に行かない上、
女の子と二人きりなど人生で初めてのことだ。
「そんな!もう予定もないし、全然気にしないで」
「アシタバ君には、お礼言わないとって思ってて…」
「お礼?」
「うん…ほ、ほらっ!私あんまり友達いないから…」
確かに美玖が友人と一緒にいるところを、アシタバは見たことがなかった。
ルックスもかわいらしいのに、男が積極的にアプローチしている様子もない。
全ては極度の引っ込み思案からなのだろうか。
「そ…それで、えと、それなのに、ほら…アシタバ君は嫌な顔出さないで接し
てくれて。それが、私にとっては凄い嬉しかったから…」
「嫌じゃないよ!」
あまりの消極的な思考に驚きを感じつつ、アシタバは続けた。
「もっと花巻さんは自信持っていいと思う」
「自信なんて…」
「ぼ、僕は花巻のこと可愛いと思うよ…すごく…」

505:名無しさん@そうだ選挙に行こう
10/07/10 22:44:12 DX9F6wZW
「はひぇっ!?そ、そ、そ、んな…」
一度言葉にしてしまうと、普段は言えなかったものが平気で口から出て来た。
「花巻さんって頭も良いし、性格だって優しいし。僕は…」
「ま、待って……!!こんなこと初めてで……」
パニックになりそうな美玖の手の平を握ってやる。思っていたよりもずっと小
さな手だった。
「僕は花巻さんの味方だから」
「…アシタバ君」
心臓が痛くて仕方がない。離すタイミングを失った手が机の上で宙ぶらりんに
なっている。目が合うと逸らすことが出来なくなり、ただじっと見つめ合った。
「…………お客様」
「たひゃう!!?」
ウェイトレスが咳ばらいをして存在を告げると、二人は慌てて手を離した。ど
こまでいこうと、所詮は小動物。木葉の擦れる音一つで不安になってしまうの
だ。
「チョコレートケーキをお持ちしました」
「えっ?」
「べ、別のお客さんじゃ…」
「毎月第三日曜日は学生のカップルのサービスデーとなっていますので」
カップルという単語に、顔を真っ赤にしながら二人はケーキを丁重に受け取っ
た。弁解する冷静さも、断る勇気もない。
「では、ごゆっくり」
ウェイトレスは足早に立ち去る。別の客に呼ばれたのだろう、こちらから見え
ない所に消えた。
「う、運良かったね…私知らなかった……」
「そ、そうだね…」
冷静になってしまった。決して嘘ではなかったが、あれだけのことを言った直
後に冷めてしまったために、ひどくぎくしゃくしていた。

506:名無しさん@そうだ選挙に行こう
10/07/10 22:47:52 DX9F6wZW
「なんで話しかけちゃいけないのでしょうか?」
「愚物か、本当に神経が通っているのか?」
アシタバ達が喫茶店に入っていた時、喫茶店にはもう一組の男女がいた。
「しかし、あの花巻君が選ぶだけのことはあるな、客が全然いない」
「三途川先生、声が大きいです…」
男は長身。恐ろしい容貌に似合わぬ柔らかな物腰で、向かいの女に振り回され
ていた。
もう一人は、男とは対照的な小さな女。人形のような容姿と格好をしているが、
何一つ憚らぬ言動だ。全てが対照的な二人たが共通して『奇しい』。
「あ、君」
男の諌言を無視して女はウェイトレスを呼び付ける。
「はい、ご注文ですか?」
「あっちの二人にケーキを。できるだけ甘い奴が良いな」
杖でアシタバ達の方を指し示す。
「カップルにサービスをしている、と言っておけばいい」
「はぁ…」
「お代はこちらから出す。あ、あとこっちにマロングラッセとカプチーノ」
どうも解せぬといった表情のまま、ウェイトレスは奥に消えた。
「三途川先生」
「どうした逸人君?」
「一体何を?」
「私が甘いもの好きなのは知っているだろう?」
女は小さく微笑んだ。この女が雲霞のような掴みきれないもので構成されてい
るのは、男も重々承知している。
「じゃあもう一つだけ…」
「なんだ?」
「ここの支払いは…」
「勿論君に決まっているだろう」

507:名無しさん@そうだ選挙に行こう
10/07/10 22:52:17 DX9F6wZW
以上。
「おせーよ、この馬鹿。ヒーロー気取りか」
某ヒゲのコラムの一節がずんと来るほどに遅れてしまいました…
しかも触りだけとかね…。出来次第持ってきます。期待せず待つべし

508:名無しさん@そうだ選挙に行こう
10/07/11 17:32:00 Buh2kKr/
即GJしようと思ったら規制されてた……
GJ!!小動物組めちゃくちゃ可愛い
続き期待!

509:名無しさん@ピンキー
10/07/14 01:13:55 fUdj76Wl
ふと思ったんだけど、ハデスってクルエルで感情食われてんだろ?
勃つのか?

・・・・・・・・・・・・・・・って思ったら、
ハイジの『立った立った!! クララが立った!!』を即思い出した orz..

510:藤花
10/07/15 00:27:13 Fmqyy9e6
・今更「春酔(ヌーディズム)」ネタ
・エロなし



「……さん! どうしたのあなたまで!」
 才崎の叫び声が聞こえる。また誰かが服脱いでるんだろう。
 ハデスは才崎の声がする方に走る。俺たちもそれに続いた。
 才崎はこちらに背を向けて、誰かを羽交い絞めにしているようだ。
 生徒の姿は見えないが、ニーソックスを履いてるようだから女子だろう。……ニーソックス?
「才崎先生!」
「あ……は、ハデス先生。ちょうどよかった」
 才崎がこちらを振り向く。抱え込んだ生徒が見えた。
 しぶしぶとスカートを腰の高さで押さえている女子は、どう見ても花巻だ。
 花巻はいつも以上に真っ赤な顔で泣きそうになりながらホックを留めようとしている。もう正気に戻ってるのか?
「う、ううう……」
 ホックを留めきらないまま、花巻が硬直してうめきだした。なんだどうした? なんか後ろで男の興奮した声と「あれは凶器です」って鏑木の声が聞こえたけどそれどころじゃない。
「どうした」
 俺が声をかけると、花巻は首をぶんぶん振って「やっぱりだめぇ!」と叫び、―履きかけていたスカートをぐいと下ろした。
 こいつまだ罹ってやがる!
「しっかりしろ花巻!」
 俺は花巻を押さえつけるように壁際に追いやり、他の男子の視線から花巻を隠した。
「はっ! ふ、藤くん!?」
「ばか服着ろ……」
 下着を見ないようにして、俺は花巻のスカートを引き上げた。きちんとシャツの裾まで入れて、ホックを留めようとする。
 初めは驚いて硬直したまま俺のやることを見ていたが、はっと我に返るとむずかる子供のようにいやいやと体をよじった。
 目じりに涙をためて、頬を真っ赤にそめて上目遣いに訴えてくる。
「やあっ……恥ずか、しいの……っ」
 おい、と俺が押さえつけると更に嫌がって俺の手を振り払い、スカートをずり下ろしてシャツの裾をたくし上げた。
 ほっそりとした白いもも、淡い紫色の下着、ふっくらとした腹―が、俺の目の前にある。
「……っ!」
 無意識に俺は花巻の両手首を強く握って、縫いとめるように壁に拘束していた。
 頭が熱い。
「花……っ」
 そのとき、花巻の表情が、すっと呆けたような無表情に戻った。
 それから俺を見て飛び上がり、自分の姿を見て悲鳴を上げた。
 花巻から病魔が抜けたことで俺も頭が冷える。
 俺は、俺はなんてことをしようと……!
 しかし恥と後悔に浸る間もない。目を離した隙に、花巻は服を整えながら窓枠によじ登ろうとしていたのだ。
「なんてことをしようと……! 私、私もう生きていけない!」
 俺は引き戻そうと、花巻の腰を後ろから抱きしめる。
「しっかりしろ花巻、はやまるな!」
 廊下に引きずり下ろすと花巻は、真っ赤な顔をノートで隠して駆け去った。あいつこういうときだけ足速いな……。
「いやーっ! ぴーちゃん巻き戻してえええ!」
 後姿から聞こえた悲鳴がなんとも不穏だった。

511:名無しさん@ピンキー
10/07/15 00:28:47 Fmqyy9e6
いつかやろうと思ってたらこんなに遅くなってしまった。
えろなしですまん。

512:名無しさん@ピンキー
10/07/15 00:47:42 CB9yAfM+
>>511
GJです!
オチが好きw

513:名無しさん@ピンキー
10/07/16 00:31:33 67cKJQr7
GJ!
花巻可愛いな。

ところでようやく規制から開放された。
遅ればせながら>>498
それはちょっと狙ったw
クルエル抜けた黒ハデスとみのりちゃんが出会う日はいつだ。

てなことで規制明けの喜びで小品書いた。予告を見てからwktkが止まらないw

514:あんなの
10/07/16 00:32:31 67cKJQr7
とあるのどかな日の休み時間、エロリスト安田がとんでもないことを言い出した。
「やっぱ保健室の先生ってのは男の夢だよなあ。前は良かったのに」
「はあ?」
席の近い美作が呆れたように声を上げる。
「お前、相変わらずな。何しに学校来てんだよ」
「んなもん、決まってんじゃん。女子の萌えるベストタイミングだよ。いつそれが拝めるか分から
ないワクワク感っての?それがなきゃつまんないだろ」
当然のようにさらりと言ってのける安田に更に呆れ返ったのか、美作はもう何も言う気がなくなっ
てしまったようだ。間髪入れずに言ったところを見ると、本当にそう思い込んでいるのだろう。
「あーあ、せめて保健室の先生が前みたいに女だったらどんだけいいか」
一度口に出したことで調子が出たのか、安田の妄想劇場が始まった。若くて美人で巨乳で、
その上優しくてエロくて時々保健の授業をプライベートでしてくれるような、そんな理想の女性へ
の妄想は膨れ上がるばかりだ。
さすがに何も言う気がなかった美作も、適当なところで止めておかないととんでもないことになる
と危惧したのだろう。既に女子たちが遠巻きに白い目で見ている。とっくに変態認定された安田は
もうそんな周囲の目も気にならないのだろうが、そんなのと仲間だと思われたら困るどころの騒ぎ
ではない。
「どこのエロゲーキャラだよそれ、もう休み時間終わるぞ」
「…ちぇっ、萌えぐらいいいじゃんか」
調子良く萌えを語っていたのに、突然冷めるようなことを言われたのが気に障ったのか、安田は
口を尖らせてぶーぶー文句を言う。
「あーあ、保健室にいるのがあんなのじゃなくて、エロいお姉さんだったらなあ」
その声が、偶然廊下を歩いていた美徳の耳に届いた。
午後からは体育の授業があったのだが、不用意な一言のせいで安田は地獄を見たという。






515:名無しさん@ピンキー
10/07/16 23:47:45 upUyxro6
GJ!
みのりちゃんの怒りは天の怒りだな
明日のジャンプが楽しみだ

516:名無しさん@ピンキー
10/07/17 04:56:15 Hqo2YQwL
鈍ちゃんガチレズくさいな

517:名無しさん@ピンキー
10/07/17 11:05:45 gpKBFkN+
ジャンプにエロパロが載ってた…だと…?

518:名無しさん@ピンキー
10/07/17 11:41:58 nSbeSoTy
間違いなくあれはエロパロです
作者自ら空耳プレイとおっぱい×おっぱいを描いてくれるなんて眼福や

519:名無しさん@ピンキー
10/07/18 13:39:39 lWUh45sw
鈍はファッションとして「お姉さま」な雰囲気を強く出してるけど、バイっぽい感じがあるなあ。

あと安田のカード出す姿が無駄に凛々しくてクソワラタ

520:名無しさん@ピンキー
10/07/19 01:20:21 mXoMKN+k
ハデ鈍を見るために覗いたらハデ鈍がマイナーだと知った
そうかハデみのか…その発想は俺にはなかった…

誰かハデスを強引にアレする鈍ってシチュでエロパロ書いてくれー!

521:名無しさん@ピンキー
10/07/19 03:04:25 R6nNlKdh
よし分かった。
明日投下するよ。

522:名無しさん@ピンキー
10/07/19 11:35:48 mXoMKN+k
>>521
神と呼ばせてくれ

523:名無しさん@ピンキー
10/07/19 14:09:11 T77/XWVM
>>521
あなたが神か

正座して待ちます

524:名無しさん@ピンキー
10/07/19 16:36:40 5YtkKpA7
「…」
男が通るだけでざわめきたった。もともと怖面であると言うのに、幽鬼なよう
に力無く歩く姿は、生徒にとって白昼の悪夢だった。
「お、おはようございますハデス先生」
そんな彼に臆することさえしないが、どこか緊張した様子で同僚の才崎美徳が
声をかける。渡り廊下で待ち構えていたわけではないと自分に言い聞かせた。
「…あ、才崎先生……」
どうしたことだろうか。普段の彼なら挨拶など、こちらが恥ずかしくなるくら
い丁寧に返してくる筈だ。それが今日はまるで虫か何か関心の無いものを見つ
けたかのように声を出すだけ。
「ハデス先生?」
「はい、何か…?」
「少し、痩せられました?」
「ハハハ…」
「いや笑うところじゃ…」
「ちょっと私事で、節約していまして」
美徳は何か好機だと直感した。そして、自分でも驚くほど早くに動いていた。
「食べていないのですか…?」
「え?えぇ少し…」
間違いなく好機。直感は確信に変わり、女の研ぎ澄まされた眼光が光る。
「迷惑でなければ、私がお弁当作りましょうか?」
「えっ!?宜しいのですか!?」
想像以上の食いつきには流石に動揺したが、ここで退く訳にはいかない。
「えぇ、毎日作っていますから。一人分増えるのなんて」
「助かります!!本当に何と言えばいいのやら!」
ぎゅっと手を握られ、全身が冷たいやら熱いやら、とにかく美徳は正常な判断
が出来ないほど高ぶっていた。


「ほう…もう少し無給でいたほうが良いかも知れないな」
クスクスと笑いながら、校長室より眺めている魔女がいるのを、二人は気づく
由もなかった。

525:名無しさん@ピンキー
10/07/19 16:39:10 5YtkKpA7
減給となったオチから、今週はこうなると思っていたが、藍ちゃんに想像を越える公式をやられた…
というかこんなんやるならさっさとアシタバナの続きを書けというね…

526:名無しさん@ピンキー
10/07/20 01:00:21 r2mWh4zQ
>>524
神ありがとう!

みのりちゃん、可愛いよみのりちゃん!
うきうきしながらお弁当作っているのが
目に浮かぶよ、みのりちゃん!

527:名無しさん@ピンキー
10/07/20 03:22:08 9jNyzA2j
>>524
みのりちゃん可愛いなあ。
きっとお揃いだよ、慣れない星型とかハート型のおかず作ったりするんだよ。

ところでハデ鈍書いた。
投下するよ。
相変わらずタイトルがダサくて泣けるよ。

528:シザーレイパー 1
10/07/20 03:23:14 9jNyzA2j
突如として保健室にやって来た女に、ハデスは目を見開いた。
「…鈍、どうしてここに」
「ふふっ…」
鈍と呼ばれた女はなかなか用件を言わずに、ただ保健室の様子やハデスを眺め回しているだけ
だった。しかし元々の不審さにどことなく異様な雰囲気が加わっている。
「わたし、あなたに会いに来たの…普段どうしているのかと思ってね」
「だったらもう充分分かっただろう。帰ってくれないか」
「あら…嫌よ~、だって」
あの娘をまだ見ていない、と言いかける寸前で止めた。孤独で人を遠ざけていた昔の友人の姿
からは想像も出来ないぐらい幸せそうなハデスの様子に、その遠因である筈のあの美しい娘を
思う。
壁を作られてあえて遠ざかっている間に、この不器用な友人がそれなりに葛藤しながらも幸せを
掴もうとしているのが何となく癪に感じていた。その上で、まだ相変わらず自己犠牲的な生き方を
しているのもまた何となく気に入らない。それでは結局、いずれあの娘も巻き込まれて不幸にして
しまうだけだ。
周囲の人間にはやたらと気を遣ってばかりだというのに、どうしてそこに考えが思い至らないのだ
ろうとあまりの迂闊さに溜息が漏れる。
一体どこまでこの身勝手な男は浅はかな自己判断で人を振り回し続けるのだろうと思うと、つい
たちの悪い悪戯心が湧くのもこの女の性根ゆえか。

結局、埒も明かないままああだこうだと言い争う形になっている途中で乱入者があったせいで、
室内の空気は一気に変わった。
顔を見た途端に不機嫌になった例の娘と、いつものことのように保健室に集ってくる生徒たちの
様子から、今のハデスの居場所は確かにここなのだと知れたのは収穫だったと思うべきなのだ
ろう。それでも、このまま大人しく引き下がるつもりもなかった。
「今日はこれで帰るわ…じゃあね」
立ち去り際、娘や生徒たちに気付かれないようにハデスに一言二言告げてみる。それで応じな
ければそれだけのこと。ただ、やたら律儀なこの友人の気性上、決して応じない筈はないだろう
と踏んでいた。

529:シザーレイパー 2
10/07/20 03:23:48 9jNyzA2j
午後九時、学校近くの公園に鈍はいた。
確率は今のところ五分五分、といったところか。まあ来なければそれで良しと思うつもりでいた。
どのみち昔のことでもある。
そんなことを考えているうちに、出入り口に人影が見えた。
「…何のつもりだ、鈍」
「さあ…」
誤魔化しながら近付いていくと、ハデスは夜目で一層不気味に見える顔を曇らせた。
「随分変わったと思ったけど、そういう律儀なところは同じね…あのお嬢さんを泣かせることに
ならなければいいいけど、ふふふっ」
「冗談のつもりなら、帰るぞ」
「ダメ」
警戒しているのか、ハデスの表情は硬い。周囲の街灯だけが光源となっているこの場所では、
何を言ったとしてもただの痴話喧嘩にしか聞こえないだろう。それも狙いだった。
「じゃあ、もう一度言うわね…あの時の返事、もう一度聞かせてくれないかしら」
「だからそれは」
顔を逸らして言葉を濁すずるい男の頬に、鈍の手が触れた。
「わたしたち、あまりにも子供だったわよね~、だからわたし、振られても額面通りにしか受け取
れなかったの…でも今なら多分」
病魔に罹った中学生の頃のハデスが選んだのは、自らを犠牲にする罹人の運命だった。そんな
ものに負けた鈍はその選択を表面上受け入れるしかなかった。なのに大人になった今、ハデス
は昔のことなど全て忘れてしまったように別の女と恋をしている。
それが今でも納得出来てはいない。
「よさないか、鈍」
「…ホント、綺麗なお嬢さんよね~、あの人。生まれてこの方、この世の醜いものや悪いものを
一切知らずに大人になったのかしら…羨ましいわ。そんな風に育っていたら、逸人、あなたも
わたしを最初から選んでいたのかしらね」
言葉もないまま立ち尽くしているハデスの側に更に近付き、首に腕を絡めた。唇が重なる寸前、
それを遮るように手が当てられる。静かな拒絶を受けてもなお、挑もうとする心積もりが挫ける
ことはなかった。
「そう…それが逸人の本心ってことね、でもね~」

530:シザーレイパー 3
10/07/20 03:24:28 9jNyzA2j
蛇のような執着心を一気にあらわにして、鈍は渾身の力を込めてハデスの鳩尾を突いた。女の
力を侮っていた訳ではないだろうが、不意を突かれたせいで声を上げることも出来ずに長身の
身体が地面に崩れ落ちる。
気を失ったハデスの頬を撫でながら、鈍は慈母のように優しい表情と凍りつくほど恐ろしい声で
語りかけた。
「わたしが許さないの。分かる?女の情が冷えたらどうなるか、思い知らせてあげる…」

ハデスが目覚めたのはそれからものの数分後のこと。
しかし、様相は完全に変化していた。
両手、両足は紐で縛り上げられ、両手の先はベンチの足にくくりつけられてほとんど身動きが
取れなくなっている。
「ふふふっ…逸人、ようやくお目覚めかしら。気分はいかが?」
楽しそうに話しかける鈍の手には、スラックスを開いて取り出したハデスの一物が握られている。
最初からこうして事を進めるつもりで公園に誘い出したのは正解だった。ここならば、誰がどの
ような振る舞いに及ぼうとも、また他者の目に触れることがあろうとも特に問題はない。
警戒しながらでも、わざわざここに来る方が悪いのだ。
「に、鈍…何をするつもりだ」
「うふふっ、さあどうして差し上げましょうか…」
鈍の指先は勃ち上がりかけて粘液を滲ませているものの先端をくるくると撫でていた。ダイレクト
な刺激ではないが、触られているというだけで昂らせる効果ぐらいはある。
「そんなことをしたところで、僕が」
「黙って!」
気分良く遊んでいたのに無粋な言葉で邪魔されて、妙に気に障った鈍は上着の内側に装着
されたホルダーから鋏を取り出した。月のない夜ではあったが、街灯の明かりを受けて銀色の
鋏はぎらぎらと恐ろしく輝いている。
「美容師を怒らせるものじゃないわよ…怪我をしたくなければね」
冷たく哂う鈍は、力任せに鋏を振り上げて地面にざくりと突き立てた。ハデスの黒いシャツが
一点で地に縫いつけられる。
「お嬢さんに見つかって咎められるような怪我をしたくなければ、従うことよ」
「鈍…お前はそんな奴だったのか?」
「それは逸人の認識不足というものだわ…関心がないから見落としていたのね」

531:シザーレイパー 4
10/07/20 03:25:10 9jNyzA2j
どうあってもこの男の心は傾かない。
今更ながらにそれを感じて、鈍はぎゅっと唇を噛んだ。だからといって始めたことを中断する気
などない。心がなくても身体がこうして反応しているのなら、それで首尾は上々というものだと
手の中に握ったものに徐々に力を強めていった。ぬるつく粘液を手に纏わりつかせて、そそり
勃つ幹全体をゆっくりと扱き上げていく。
「うぅっ…」
その刺激が堪らないのか、ハデスが呻く。
男なんて生き物は一皮剥けばこんなものだ。ここでものを考えて、ここで行動する。それならば
もっと狂わせてやればいずれ心も落ちるかも知れないのだと悪魔の考えが頭をよぎった。
あの、内も外も綺麗で一点の汚れもない娘に対抗出来る目があるとすれば、まさに今夜しか
ないのだ。
「鈍…や、めろっ…」
「嫌よ」
あくまでも抵抗の意を示しているのか、ハデスは必死で腰を捩って愛撫を加える手から逃れよう
としている。そんな哀れな奴隷に再び慈愛の笑みを注ぐと、鈍は握ったままの一物に舌を這わせ、
先端を舐め上げ、口腔内に含んだ。
「やめろぉっ…」
病魔に感情を食われているせいで、何事にも関心がない、性的なことなど全くの蚊帳の外とでも
言いたげな普段の冷淡なハデスの態度からは想像も出来ないほど、鈍が玩具にしているものは
欲望を生々しいほど剥き出しにして収まる場所を求めていた。
「ふふっ…」
夢中でフェラを続けながらも、鈍は笑いが止まらなかった。
もう心なんかいらない。身体さえ自由に扱えるのであれば、どう足掻こうが男は陥落するだけの
ことだ。こうして玩具のように手慰みに出来るだけで嗜虐心は満足する。
鈍の異様なまでの様子に、ハデスの表情が凍りついた。
「やめろ、鈍。これで止めれば忘れてやる。だから」
「…嫌」
もちろん言いなりになるつもりはない。むしろ、本番はこれからなのだ。身の内を焼くほどの熱に
突き動かされながら、鈍は腰に纏わりついているパンツと下着を脱ぎ捨てた。
「鈍!」
男の声など、もう耳には入らない。指で探り当てた膣からは既に充分過ぎるほどの愛液が溢れ
ていた。これからこの男を征服するのだという興奮が余計に昂らせたのだろう。

532:シザーレイパー 5
10/07/20 03:25:53 9jNyzA2j
「ふふふっ…」
逃れることも出来ずにただ目を見張っているばかりのハデスを見下ろして、鈍は薄い笑いを唇に
浮かべた。また何か余計なことを言い出して興がそがれないうちにと、跨って腰を落とす位置を
決める。再び握ったものは、さっきよりも大きさを増していた。
的確に先端が膣内へと潜り込んでいく。じゅぶ、と濡れた音が響いた。
「あぁ…」
不覚にも濡れた声が漏れる。膣内を擦り上げてくる男の欲望の感覚があまりにもリアルで、これ
までの経験が全て吹き飛ばされてしまった。性急にするには何となく惜しくもあり、殊更ゆっくり
腰を沈めていく。
時間をかけて全て身の内に取り込んだ後、鈍は腕を伸ばして地面に突き刺さっている鋏を取り
上げた。
「あーあ…刃先がボロボロ。でも、研ぎに出すつもりだったからいいか」
そして、腰を揺らめかせながら嬉しそうに欠けた鋏の刃を舐めた。深まる歓喜が膣内の蠢きを
更に淫らなものにしていく。
「ふふ…うふふっ、素敵よ逸人…これが欲しかったんだから…」
鋏がまるで先程まで弄んでいた一物ででもあるように舌先でじっくりと舐めずりつつも、腰の動き
は次第に早まっていく。その癖、膣壁が引き入れた獲物を決して逃すまいと巧みにうねり、絞り
上げていく。
それが快感となっているのだろう。反応をするまいとしているハデスが時折顔を歪めて低い声を
漏らしている。
「逸人、気持ちがいいならお言いなさいな、そうすれば、もっと良くしてあげる…」
何か言おうとすればあらぬ声になってしまうのだろう。ハデスは頑固に口を結ぶだけだ。別に
それでも構わなかった。膣を通して快感は直に伝わっている。陥落するまいと耐えることが既に
この性の奈落への入口に立っている証だ。
何も気を遣う必要はない。今はただ互いに欲望のままあればいいのだ。どのみち男と女など、
そのように出来ている。心があろうとなかろうと。
「あ、ああ…本当に、すごい…」
鈍は身体が疼くままに身悶え、激しく腰を振って奥へ奥へと獲物をいざなった。衣服に包まれて
いる豊満な乳房が動きに合わせて重そうにゆさゆさと揺れる。
手にした鋏の刃先は一体どこを向き、何を傷つけようとしているのか皆目見当がつかない。あまり
にも美しく、また恐ろしい狂女の如き鈍の姿にハデスはひたと目を据えている。
引いているのかも知れないが、それは今どうでもいいことだ。

533:シザーレイパー 6
10/07/20 03:26:37 9jNyzA2j
すっかり快感に没頭してしまったのか、鈍は獣のような声を上げながら腰を振りたて、不規則に
蠢く膣壁を駆使して獲物を攻めたてていく。
「ぅああ…いい、逸人が、こんなにいいなんて…!」
身も世もない濡れきった声を上げて、鈍は思い切り膣内を締め上げた。焦らすようにゆっくりと
この行為を愉しむつもりが、思った以上に良かったせいで結局は性急なものになってしまった
ようだ。
「ダメだ、鈍…離れろ!」
もう射精感がせり上がっているのか、ハデスが焦ったような声を出す。しかし、もちろんそんなこと
でこの快感を簡単に手放す鈍ではなかった。膣内を凄まじい力で絞りながらも、ぞっとするほど
艶っぽい表情で笑って無視をしただけだ。
「逸人、わたしを狂わせるあなたを今だけは許してあげる…だから、出して」
その表情のまま、もう一度鋏の刃を舐めた。
「鈍!」
「出しなさいな、逸人!」
その途端、これまでのことがまるで児戯かと思えるほどに絶妙なタイミングで膣壁が獲物に絡み
つき、全体で擦り上げた。一足先に鈍が達したようだった。
さすがにその絶技に抵抗出来る筈もなく、哀れな獲物もまた呆気なく精を吐き出して果てた。

「うふふっ」
月も見下ろすことのない夜、鈍はまだ鋏を玩具にしながら上機嫌だった。ベンチの側ではようやく
拘束を解かれたハデスが憮然として座り込んでいる。色々思うところがあるには違いない。この
友人の性格は嫌というほど分かっている。どうせあの娘への罪悪感で一杯なのだろう。
本当に面倒臭い男だと思った。こんな男とまともに付き合っていけるのは、やはりあの娘だけ
なのかも知れない。
「逸人、まだそんな顔をしてるの?」
「お前には、分からないよ…」
「分かるわよ…ふふっ」
隣に座って顔を覗き込むと、露骨に嫌そうな表情になった。まあそれも無理はない。女に犯される
とは思ってもいなかっただろうから。ただ、今夜のことは鈍自身の気持ちのけりをつけるには丁度
良かったとも言える。

534:シザーレイパー 7
10/07/20 03:27:31 9jNyzA2j
どんなに思っても応えない男を追うのは辛い。
その男が愛した娘にただ嫉妬しただけと捉えてくれてもいい。この混沌とした気持ちに最初から
理路整然とした筋道などはないのだ。鈍自身にも説明は出来ない。
ただ、側に誰がいたとしても幸せにはなって欲しいと思った。それだけは真実の感情だ。
「ねえ逸人」
まだ黙り込んでいる友人に、鈍は声を潜めて囁く。
「病魔の呪いがかかった王子様を助けて、元の姿に戻してくれるお姫様は誰なのかしらね…」






535:名無しさん@ピンキー
10/07/20 06:14:33 8mBnniem
なにこの予想外。。。 GJ!!

536:名無しさん@ピンキー
10/07/20 08:08:22 aZMwX0qN
切ねぇぇぇええええ
GJ!

537:名無しさん@ピンキー
10/07/20 20:13:20 8mBnniem
むしろ、ハデス先生はイった瞬間だけ、もとの健常な姿に戻るのかもしれないな。

って、おもた。

538:名無しさん@ピンキー
10/07/20 23:30:30 D+nvJ5JK
相変わらず素ん晴らしい腕前wグッジョブっす!

539:名無しさん@ピンキー
10/07/21 03:57:47 N7Hg+3ku
直接は続いていないけど、後日談のようなもの。
一応ハデみの職人なんでフォローはしとかないと、と思った。
鈍はもちろん嫌いじゃないよ。

540:アフターケア 1
10/07/21 03:59:05 N7Hg+3ku
部活に勤しむ生徒たちもほとんど帰宅してしまった時刻、人が少なくなったことに乗じて美徳は
保健室にいた。
鈍というあの女が乗り込んで来たのは昨日のことで、正直まだハデスに対しては怒りを覚えた
ままだ。突然のことで対処も出来なかったのは仕方がないだろう。それでも、以前にも深夜に
呼び出されていたことがあるというのに、危機感を持たないにも程があると。
「…まだ怒っていますか?」
お茶を淹れてくれたハデスは、美徳の様子を伺うように声をかけてくる。妙に疲れてでもいるのか
今日は何となく元気がないように見えた。その原因を美徳は知らないし、知ってはいけないとも
感じていた。何故だかも分からないけれど。
「別に、とは言えません」
「そうですか…」
もう来客もない時刻でもある。ハデスは一度ドアを見遣ってから美徳の隣に腰を降ろして大きな
溜息をつく。やはり今日の様子はいつもとは明らかに違っていた。怒りはもちろんまだ残っては
いるが、そちらの方に気が逸れてしまう。
「あの、お具合でも悪いのですか?」
「…いいえ、どうしてですか?」
「今日は朝から何となく違っているようでしたので」
いよいよ本気で何かあると心配をし始めた美徳に、ハデスは誤魔化そうとでもいうのか下手な
笑い顔を作った。
「私はそんなに頼りになりませんか?」
「美徳さん?」
普段の顔とは違う表情を見て、頭に血が昇った。
「嫌なんです…私。あなたが自分で何もかも背負い込んで、一人で解決しようとしているのは。
もちろん、それで済むのなら何も言いません。でも荷が重い時だってあるでしょう?そんな時に
頼ってはくれないのですか?」
「…そうではありません、ただ…」
ハデスは何か言いかけて、やはり途中で止めた。女の勘ならずともいぶかしむには充分過ぎて
かえって不安になる。この男に一体何が起きたのだろうと。
本来、もう少しずるく立ち回ろうとすればこの程度のことなら平気で嘘をつく筈だ。それも出来ず
にただ下手な誤魔化しをしようとするばかりなのは、それだけハデスが根っから善良な気性で
ある証拠なのだろう。だから今日までの間に何かがあったことで、一人で悩み苦しんでいる。

541:アフターケア 2
10/07/21 03:59:45 N7Hg+3ku
「…もう、いいのです」
まだ今の時点で美徳の中で解決しているものは何一つない。怒りも心配も言いようのない感情
も全てひっくるめて心にわだかまったままだ。
それでも、目の前で懊悩しているハデスの姿はあまりに痛々しく、わずかでも責めるようなことは
言えなくなってしまった。
「私はただ、あなたのことが心配で…どうすれば良いのでしょう」
理由を詮索することなど尚更出来ない。だとすれば少しでも気が晴れるようなことがあればとも
思うが、混乱しているせいか少しも思いつかなかった。
「…では」
不意に俯いていたハデスが口を開いた。
「今夜お伺いしてもよろしいですか?」
「…え?ええ…それはもちろん構いませんけど」
ハデスなりの言い回しではあるが、それは『泊まりに来る』ということだ。しかし、これまでは週末
だけのことで、翌日も出勤する平日に言い出すことなど決してなかった。律儀なこの男があえて
自分で取り決めたことを破るほどのダメージを受けているのであれば、黙って要求を呑むのも女の
役目なのだと思う。
「ありがとうございます、美徳さん」
顔を上げたハデスは、間合いを詰めて手を握ってきた。白髪の奥から覗く眼差しがとても真摯で、
視線を逸らすこともなく見入ってしまう。この男の真実を知りたいのならいつでもそこにあるのだと
思えた。
「そんなことで少しでも癒せるのであれば、嬉しいのですが」
「…美徳さん」
視線に絡め取られてしまったように身動きが出来ない。息を呑んでいる間に寄せられた唇が耳を
撫でた。それをきっかけにして戯れるように形をなぞられる。
「あっ…」
ただ、それだけなのに身体がざわめいた。最初の夜からこれまでの間に延々と蓄積され続けて
いる莫大な快感はいつ露出するのか美徳にも分からない。些細なことでスイッチが入ったように
この男の為の身体に変貌するのだ。
今この時に、そうなってしまいそうなのが怖かった。
「ああ…逸人さん…」
「もう少しで帰宅時間になります、一緒に帰りましょう」
「…はい」

542:アフターケア 3
10/07/21 04:00:36 N7Hg+3ku
軽く耳を愛撫されているだけなのに、身体だけが勝手に暴走を始めてもっと強い刺激を待ち望ん
でいる。完全にスイッチが入ってしまったようだ。
「身勝手なわがままを聞いて頂けて嬉しいです」
美徳が昂っているのを察しているのか、ハデスはなおも緩い愛撫を続ける。間近で聞くだけで
心が蕩けきってしまうほど大好きな声が産毛を撫で、煽るように歯が敏感になっている耳朶を
微かに噛む。
「…っ、あの…」
これ以上されたらここでして欲しいと形振り構わずねだってしまいそうで、美徳は強く目を閉じて
その甘い誘惑を振り切った。
「私、職員室に戻ります…支度します、からっ…」
抱き込もうとする腕から逃れるように慌てて立ち上がり、ドアを目指す。約束を取り付けたことも
あるのか、ハデスは先程より生気を取り戻したように見えた。

今夜は帰途の足がとても軽く思える。
いつも平日は一人で帰るのに、今夜は隣にハデスがいるのだ。学校での他愛無い出来事など
を話したりしながらも、思いはその先へと繋がっていた。ようやく少しだけ鎮まった身体の熱は
依然として美徳を悩ませている。
早く人目の届かないところで互いにゆっくりと愉しみたい。それだけが頭の中を占めていた。
アパートまではそれほどの距離もない。程なくして部屋に着いた二人は開いたドアの前で黙った
まま目を見交わし、中へ入る。
ドアの内鍵を掛けるなり、美徳の身体は玄関の壁に押し付けられた。
「逸人さん…?」
「すみません、ずっと我慢をしていたんです…少しこのまま…」
驚いたものの、口腔内に捻じ込まれた舌に応えているうちにまた頭の芯が蕩けてくる。そうして
いる間にもハデスの手は美徳の服をはだけてブラを引き剥がし、剥き出しになった乳房を両手で
ぐいぐいと揉んでいた。
「ぁふっ…」
息もつけないほどのキスの合間に酸素を求めて喘いだ喉が引き攣れる。
「あぁ…こんなところじゃなくて、ベッドで…」
そんな美徳の声もまるで聞こえていないのか、ハデスは乳房に齧りつくように歯を立て、乳首を
中心に舐め回していた。いつになく強引で執拗な遣り方に、身体はどうしようもなく追い上げられ
ていく。

543:アフターケア 4
10/07/21 04:01:37 N7Hg+3ku
「はぁんん…ダメ、です…そんな…」
乳房への愛撫が続けられている間、美徳は必死で膝が崩れそうになるのを耐えていた。まさか
こんなところで立ったままされるとは思ってもいなかった。それでも、経験のない行為のせいで
余計に昂ってしまうのは確かで、今日はまだ指一本触れられもいない体の中心が疼いて仕方が
なかった。ショーツの感触が不快になってきたのは、もうはしたなく濡れているからなのだろう。
「…逸人さん」
懇願するような美徳の声に、ハデスはようやく乳房から顔を上げた。
「…取り乱しまして、申し訳ありません」
「いえ…」
今夜のハデスを怖いと思わない訳ではない。それでも、こうしていることで少しでも救われること
があればいいと美徳は一度も拒絶の言葉を口にしなかった。いつもどことなく人を避けている
様子のハデスが、ここまで人を求めていることに意味があるのだから。
「ベッドに行きましょう…」
「はい、逸人さん」
ようやくのことでベッドに辿り着いた美徳は、乱れた服を脱ぐこともままならないうちに抱き締め
られて気が遠くなった。
「早く、私を思う存分抱いて下さい…」
頭の芯がぼんやりしている。ジーンズの生地が肌に貼り付くほどに溢れた愛液のせいで、足
から抜き去るのが大変だった。ショーツも正視できないほどびしょ濡れになっていて、恥ずかしい
ほどだった。そんな思いをも越えて、今夜は最高に高まり合いたかった。
「随分濡れてますね、慣らさなくてもいいですか?」
あの声が耳を撫でる。もちろん美徳もそのつもりだった。安全日に入ったのも好機だ、今夜ばかり
は二人を縛るものは何もない。
「はい…そのまま来て下さい」
そう答えるか答えないうちに、膣内を侵略してくるものが美徳を喘がせた。
「あぁあっ…」
その途端に身体が悦びに溢れた。女としての快感を得て愛される実感で肌も髪も見違えるほど
に潤み輝く。
「美徳さん…」
「逸人さん、もっと…」
もう二人とも我慢出来なかったのだ。一切の躊躇もなく激しく突きまくられながら、美徳もまた心
置きなく甘い声を上げ、悶え狂った。愛される一人の女として色鮮やかな美しい花を咲き誇らせる
姿は眩いほどだった。

544:アフターケア 5
10/07/21 04:02:11 N7Hg+3ku
その夜は二人とも何かに憑かれたように時間を惜しんで抱き合った。
体位を何度も変えながら交わった為か膣内で擦れ合う場所が微妙に変化していて、それがまた
新しい昂りを呼ぶ。
「上に、乗って頂けますか?」
最後にはその要求通りに馬乗りになって腰を振った。他の体位とは全然違って、最も奥までを
自分で導く体勢に肌が染まり上がったが、それ以上に激しい快感が身の内を突き上げて何も
かも分からなくなってしまった。
何度抱かれたのかも、もう分からない。

「もう朝ですから、僕は帰ります」
明け方、しっかりと抱き合って眠っていた男がそう告げた。
幸せな眠りの中から目覚めた美徳の唇にキスをすると、耳元で囁く。
「昨日は無理をさせてしまいました。この埋め合わせはまた週末に」
「…少しは私、お役に立ちました?」
ずっと気にかけていたことを尋ねると、男はいつもの優しい微笑を返してきた。
「もちろん、嬉しかったですよ」
美徳はただ、立ち去る後ろ姿を眺めるばかりだった。結局のところ、ハデスが抱えている問題が
こんなことで解消した訳ではないだろう。美徳もほとんどのことは知らない。それでも、少しは
気の晴れる手段としてでも繋がりを持っていたかった。
「また学校でね、逸人さん」
最初から艱難のある恋なのは美徳も承知の上だ。今更些細なことで手放す気になどとても
なれない。






545:名無しさん@ピンキー
10/07/21 19:13:46 C7HtN22e
GJ!
やっぱりハデスはみのりちゃんに癒しを求めたかw

546:名無しさん@ピンキー
10/07/21 19:36:50 rKAT2atz
ハデスがこんなにオッパイスキーだったなんて・・・・・w

547:名無しさん@ピンキー
10/07/21 23:49:45 C7HtN22e
そりゃ、ハデスも男だ。
その上みのりちゃんのおっぱいならもう…。

548:名無しさん@ピンキー
10/07/22 06:07:31 HH765HEb
みのりちゃんお誕生日おめでとー

逸人さん美徳さんの関係でもなく、エロもないけど
電波受信したのではじめての作文置いてみる

549:名無しさん@ピンキー
10/07/22 06:08:48 td2zfjWO
夏休み―
チャイムに縛られていない校内の見回りは学期中以上に気を使う。
いつものように「私がしっかりしなくちゃ」と
張り切って校内を回っていた才崎美徳は、
ふと、ある部屋の前で足を止めた。
トントン…
返事を確認して、引き戸を開ける。
「こんにちわ。見回りですか?才崎先生」
くるりと振り返ったのは相変わらず不気味な顔の養護教諭。
「ええ。」

ただ。
不気味は不気味だけれど。
彼の今の表情が、彼なりの笑顔だということはわかる。
…わかるようになった。いつの間にか。

閑散とした保健室の片隅には、給水用のポットが山盛りになっている。
「今日も暑いですからね。生徒たちが熱中症にならないように
準備しているんです」
美徳の視線に気付いたハデスが、拳を握って力説する。
「いつ生徒たちが来ても平気ですよ。才崎先生も一杯…」
「それで、今日は何人が?」
食い気味で質問をすると、びくりとハデスの肩が震える。
「………………」
「ハデス先生?」
保健室に立ち寄ったのは、怪我の生徒がいないかの確認のためだ。
ちゃんと答えを聞かなければならない、と美徳は口調を強めた。
「何人、ここを訪れたのですか?」
「……才崎先生が一人目です」
「そう、ですか……」
気の毒なくらいに肩を落としているハデスに美徳は一瞬かける言葉を失った。

もうすぐ17時になる。
部活動の生徒も撤収を始めている。
今日はもう生徒は来ないだろう。

「子供たちがみんな元気なのは素晴らしいことです」
慰めにもならない言葉をかけて美徳は苦笑する。
「ポットの片づけ、お手伝いしましょうか?」
「いえ、それは大丈夫です。僕が自分で片付けます。それより才崎先生」
ハデスが、優しく笑った。

「コーヒー、飲んでいかれませんか?」

550:名無しさん@ピンキー
10/07/22 06:10:37 Lh0WRJ5B
(何やってんの、私ってば…)

うきうきとコーヒーを淹れるハデスの背中を見守りながら
美徳は少しふくれていた。

(確認だけ取ったらすぐに退散するつもりだったのに)

(ついうっかり頷いただけなのに、あんなに嬉しそうな顔をするんだもの)

(仕方なくよ、仕方なく。だって誰も来てないのは可哀想だもの)

(職場の人間関係を良好にするために、私は社会人として…)

「…んせい…才崎先生?」
「え、あ、はい。…きゃっ」
目線をあげると、至近距離で、ハデスの顔。
「お疲れですね」
「いえ…その…」
(近い、近い、近い!)
白髪が頬に触れた気がして美徳は思わず仰け反った。
「こころなし顔も赤いですね。大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫です!!」
「そうですか、あまり無理はなさらないように」
訝しげな顔をしながら向かいのソファに腰掛けるハデスをみて、
美徳はほっと息をついた。
「どうぞ、召し上がれ」
テーブルにコーヒーと、ピンポン玉より少し大きいくらいの白い和菓子が二つ。
「…これは?」
「まずは、一口」
促させるままに手に取ると、ひんやりしている。
「アイス、ですか?」
黙って、にこにこと見守っているハデスを軽く睨んで美徳はそれを口に入れた。
シャリ…シャリ…
(冷たくて、美味しい。これは、いちご?)
確認するように二つ目を頬張ると、そちらにもアイスに包まれたいちごが入っていた。
凍りついたいちごを舌の上で転がすように味わう。
甘くて、ほのかにすっぱい。でもそれが美味しい。
美味しそうに頬張っている美徳を満足げに見つめながらハデスが口を開く。
「好きなんです」

(……な、何を突然…)
美徳の動きがぴしりと止まる。
「いちご大福、子供たちが」
咽そうになりながら、美徳は口の中のアイスいちご大福をなんとか嚥下した。
「こ、子供たち…そうですか…」
(び、っくりした…)
「どうですか?」
「美味しい、です」
「それはよかった。これは才崎先生のために買ってきたものですから」
美徳をまっすぐに見つめながらハデスが微笑んだ。
その視線の強さに、胸が苦しくなる気がして美徳は小さく喉を鳴らす。
「私の…?」

「誕生日には、いちごでしょう?」

美徳は息を飲んだ。

551:名無しさん@ピンキー
10/07/22 06:14:40 PZNbs5Am
ちらりと横目でカレンダーを確認する。
今日は7月22日。
間違いなく、自分の誕生日だ。

「どう…して?」
「この前の健康診断のときに、全校生徒を覚えていたんですけれど
 校長先生に先生方も覚えろと指導されまして」
(校長先生に…?)

ちょっと、胸が、ちりっとした。
自分の誕生日を知っていてくれていたことに喜んだ気持ちが
急速にしぼんでいくのがわかった。
しぼんだ気持ちは、そのまま怒りに変換されていく。
「先生方全員に贈られているの?大変ね」
つん、と横を向きながらコーヒーを一気に飲む。
「いや…それは…その…」
「ごちそうさまでした」
あたふたしているハデスを後目に、美徳はすっと立ち上がった。
「戸締り、忘れないようにしてくださいね。お疲れさまでした」
「あああああの、さ、才崎先生!」
「なんですかっ!」
一瞬前まで美味しそうにお菓子を頬張っていた女性が、今では何故だか怒っている。
呼んだはいいが、次が出なくてハデスは途方にくれたまなざしで美徳を見上げた。

「お誕生日おめでとうございます」

しばらく迷った末に、一つ息をついてハデスが言った。
一つしか返答の選択肢のない言葉に、美徳はいちごの酸味の残る唇を一度きゅっと閉めて、開いた―







552:名無しさん@ピンキー
10/07/22 06:16:38 6/2C5lvr
おそまつさまでした。


神様がエロくて幸せなみのりちゃんを落としてくれますよーに

553:名無しさん@ピンキー
10/07/22 17:03:00 Vv6ysfOy
GJ!!すげえにやにやしたww
好きなんです~校長に のあたり原作でもありそうで上手いと思った。
これ読むまでみのりちゃん誕生日って知らなくてごめん

554:名無しさん@ピンキー
10/07/22 20:17:04 +KZkvj1C
GJ!
そういやそろそろみのりちゃんの誕生日だなと思ってたけど、すっかり忘れてた。
思い出させてくれてありがとう。
何か書きたいけど、エロくならないかも。

555:名無しさん@ピンキー
10/07/22 22:32:22 AIeaHocI
カモン!

556:名無しさん@ピンキー
10/07/22 22:45:22 3kiSNKSS
オ~ゥ イエス イエス! カマァ~ン!!

557:名無しさん@ピンキー
10/07/22 23:55:49 eu6092jp
何とか今日中に間に合った。
みのりちゃん、誕生日おめでとう。
こんなもので良ければ進呈するよ。

558:真夏の夜の薔薇 1
10/07/22 23:56:50 eu6092jp
「才崎先生」
ここ数日は真夏日が続いてうだるような午後の廊下で、美徳は思いがけなくハデスに話しかけ
られた。
「…何でしょう」
たまに羽目を外すこともあったりなかったりするが、職場である校内では他の職員と同じように
一線を引いた付き合いを素知らぬ顔で続けている。この関係は校長の三途川(と、アシタバ)
しか知らないことだ。別に後ろめたいことは何一つないのだが、何となく自然とそういう感じに
落ち着いている。
ハデスとの関係は相変わらず良好なのが何よりのことだ。
「今日はお誕生日でしたね」
「……あ」
期待していなかったこともあって、自分の誕生日などすっかり忘れていた。しかし異常と思える
ほどに周囲の人に気を遣いまくる性格のハデスが、美徳の誕生日を忘れる筈もないことをことも
あろうに失念していたようだ。
思わず嬉しくなってしまったのだが、次の台詞で脊髄反射してしまう。
「確か」
「それは言わないで下さい!」
「…は?」
マッハの速さで言葉を返した美徳に、ハデスは唖然としている。
きっと年齢のことを言われると思ったのだ。
年齢、それは世の女性たちにとっては現実という地獄の入り口である。
二十代前半までならまだ若さを誇って浮かれていてもいいだろう。しかしそれを過ぎれば愕然と
するばかりだ。
四捨五入するなんてもってのほか。
両親がそろそろ結婚しろとうるさくなってくる。
鏡を見るのが辛くなってきた。
など、悪いことばかりが見えてくる。正直誕生日が来るのはあまり有り難くないのだが、ハデス
がこの日を覚えてくれていたことだけは純粋に嬉しい。
それでも年齢の話題だけは避けたい。
そんなことばかりが頭の中をぐるぐる回っていて、また一人だけで空回っていた。

559:真夏の夜の薔薇 2
10/07/22 23:57:35 eu6092jp
「あの…それでですね」
美徳の反応に驚きながらも、ハデスは話を続けようとしてきた。
「以前、薔薇がお好きだと聞いたことがありましたので、これをどうぞ」
「…え?」
「たくさん差し上げられないのが心苦しいですが」
そう言って、白衣の陰に隠し持っていたものを差し出してきた。一輪だけラッピングされた真紅の
薔薇だった。
「これ、私に?」
「ええ、どうぞ。僕が不甲斐ないせいで今はこれしか…でも来年はもっと」
「そんな…とても嬉しい…」
ハデスが今、経済的に余裕がない事情はある程度知っている。だからまさかプレゼントなんて
想像もしていなかった。少ない中からわざわざこうして捻出してくれた心遣いが嬉しい。この男が
花屋でどんな顔をして薔薇を買ったのだろう。その場面を考えると微笑ましくも思えた。そして、
恐らくハデスは何も知らずにいたのだろうが、一輪の真紅の薔薇には意味がある。千も万もの
豪奢な薔薇の花束よりも価値があるものが隠されている。
女なら誰でも心から欲しいと願うそれを、美徳は確かに貰うことが出来たのだ。嬉しく思わない
筈がない。
「大事にしますね」
受け取った薔薇はまさにこれから咲かんとしている状態で、色鮮やかで艶やかな花弁がとても
綺麗だった。
「喜んで頂けたようで、嬉しいです」
「それで、ですね…」
よほどうっとりした顔をしていたのだろう、ハデスがその瞬間引いたように思えた。以前、突然
欲情した時のことを思い出したのかも知れない。EDにならなくて良かった、と今この場ではどう
でもいいことを考えてしまう。
「キス、して貰えますか?」
幸い、時期は夏休みに入ったばかりで生徒も部活で来ている者しかいない。こんなところで長話
をしていても誰も咎めないし知ることもない。
「それで、よろしければ」
何となくほっとした様子のハデスが、廊下の端から端までを見渡してから身を屈めて唇を重ねて
きた。来年も、再来年も、こんな日が来るのであれば年齢のことなんて忘れてしまえるほど瑣末
な問題だ。この男ならば何年経とうと変わることなく誕生日には一輪の薔薇をくれるのだろう。

560:真夏の夜の薔薇 3
10/07/22 23:58:16 eu6092jp
保冷材のお陰か、帰る頃になっても薔薇は綺麗なままだった。すぐに水に挿せばしばらくは目を
楽しませてくれる。いつでも一番大切な人が側にいてくれるように思えるのだ。
しかしその後数日に渡って、薔薇を眺めてはニヤニヤしたり急に顔を赤くしてベッドで物凄い勢い
で転がり回る美徳がいたことを誰も知らない。
ハデスもそんな姿をうっかり見たら、また引いたかも知れない。






561:名無しさん@ピンキー
10/07/23 00:28:53 NuY9LFuZ
あ、まーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーい!!!!
GJ!!

562:名無しさん@ピンキー
10/07/23 01:06:52 zDSxbpv/
ちょっみのりちゃん可愛いな・・・!!
ベッドで物凄い勢いで転がりまわったのは俺だ!
GJ!!!

563:名無しさん@ピンキー
10/07/23 06:24:40 uEYFLRun
GJ!
ニヤニヤした!
ニヤニヤしたよう~
みのりちゃん幸せそうでこっちまで嬉しくなります

ハデス先生、一輪の薔薇が様になりますね。

564:名無しさん@ピンキー
10/07/23 22:47:34 n5HfxKG1
誰かシンヤと鈍で描いてくれる神はいないものか

565:名無しさん@ピンキー
10/07/25 03:21:03 JQjm4qqN
ハデシン…

566:名無しさん@ピンキー
10/07/25 07:46:55 C/hWPi7U
一巻から読み直したら、アシ花と藤シンが見たくなった

567:名無しさん@ピンキー
10/07/25 14:43:38 40iAtusG
シンヤ厨って必死だな
悲壮感すら漂っているよ…

568:名無しさん@ピンキー
10/07/26 12:15:35 9ZDrFNHi
だけど俺はシンヤを支援しつづける!
藤シンも案外いいと思うんだ

569:名無しさん@ピンキー
10/07/26 12:27:57 MuTWAnMw
その熱意を作品として文章にしてみると、もっといいと思うよ

570:名無しさん@ピンキー
10/07/26 20:52:20 AlMjY26s
アシタバと校長が良い

571:名無しさん@ピンキー
10/07/27 00:16:43 Pmmhn20r
アシタバと校長は俺も考えたことはある
校長と生徒ってのと、更にそれと矛盾したあの体型からくる背徳感がいいよな

572:名無しさん@ピンキー
10/07/27 11:43:19 QPWRMvdI
>>567
頼むから煽らないでくれ

573:名無しさん@ピンキー
10/07/30 00:37:51 LH7YOygD
ちょっと不思議な感じを狙っただけなんで、エロなし。

574:透明夜
10/07/30 00:38:50 LH7YOygD
「今夜も送りますよ、美徳さん」
この頃は帰途につこうとすると、当たり前のようにハデスが促す。
もちろん拒むつもりなど微塵もない。
学校では一緒にいる時間などなかなか取れないのだ。職務を離れた時ぐらい共に過ごす機会が
あってもおかしくないだろう。ハデスの方にばかり負担がかかるからと最初こそ抵抗があったの
だが、それは穏やかに受け流された。
「あなたに何かあってはいけませんから」
確かに一人で帰る夜道は暗がりから何かが出て来そうで怖い。学生時代から柔道を続けてきて
体力にも自信がある美徳でもそう思うのだ。普通の女性であるならどれほどの恐怖を感じること
だろう。
「…私も女なのですね」
「あたら危険な目に遭わせたくはありませんので」
決して押し付けがましくなく、寄り添う影のようにアパートまでの道をただ付き添っているだけでも
守られている実感がある。そして大切に思われている喜びがある。
泊まりには来ない平日でも、その充実感があれば寂しいとは感じずに済んでいた。

途中の歩道橋の上でふと足を止めると、夜間でもひっきりなしに流れる車の波が流れる閃光の
ようで、見慣れているとはいえしばらく心を奪われてしまった。どの光の中にもそれぞれの一日
がある。喜びも悲しみも感じながら生きている。
けれど、この夜の中ではただの光の一つになって流れていくだけだ。
美徳もまた、今こうして夜目に紛れている限りはどこの誰とも知れない存在だ。中学校の教員で
あることなど通り過ぎる人は誰も知らない。ただの若い女であるという、それだけ。
「どうかされましたか?」
立ち止まったまま絶え間なく車が流れる道路を眼下に眺めている美徳を不思議に思ったのか、
ハデスが尋ねた。
「今の私は、誰でもないのですね…あなたも」
「それは一体」
あまりにも抽象的に過ぎるその言葉の意味を表情から察したのか、愛しい男は黙ったまま隣で
同じように車の流れを眺め続けた。
「綺麗…ですね」
「そうですね、美徳さん」

575:透明夜 2
10/07/30 00:39:31 LH7YOygD
歩道橋の上で、ただ流れる光を眺める美徳は無心になっていた。
「逸人さん、もし私があなたの知る女ではなく、他の何者でもなかったとしても…同じように側に
いて下さいますか?」
それはまるで禅問答だ。あまりにも現実味のない光景を前にして、魂が浮世へと剥離している
せいで口から出る言葉も普通であれば到底まともに捉えられなくなっている。
しかしそれでもハデスは馬鹿正直に言葉を返す。
「もちろんです、美徳さん。それがあなたの望むことであるのならば」
「決して強制ではありません。それでも」
「ええ、それでもです。そうして欲しいと思うのでしょう?」
「……はい、きっとそうです」
この世ならぬ光に釣り出されて浮遊しかけていた魂が、現実に立ち戻る。あまり長くここにいたら
いけない、そんな気がした。
「さあ、行きますよ」
危険な気配を察したのか、再び光に魂ごと連れ去られそうな美徳の肩を抱いてハデスが囁く。

奇妙な夜だった。
歩道橋から離れてしまっても、まだ瞼の裏にあの絶え間ない光の明滅と流れが焼きついている。
忘れてしまおうにも、激しい閃光を眼前で見たように決して消え去らないのだ。時折立ち止まって
目頭を押さえる美徳に、影のように寄り添う男が労わるように何かと気遣う。
「お疲れになったのですか?」
「いえ…何でも」
「何か冷たいものを買って来ますから、ここに座っていて下さい」
そう言って、傍らにあったベンチを差す。
お願い離れないで、と言おうとした口は何故か動かなかった。
こんな感覚は今までになかった。
以前の自分なら有り得ないことで、恋を知ってから目に見えて弱くなっていることを自覚するしか
ない。誰かに心を許し、全てを任せることがこれほど人を弱くするのならば、以前の自分は決して
恋を選択しなかった。孤独でも一人でいることを望んだだろう。
それを知っていながら、今の美徳は迷いもなく手中にした恋を選ぶのだ。どれほど心弱くなろうと、
それは単なる今後の試練でしかない。
だから怖くはないのだと未知の恐怖に震え上がる心に必死で言い聞かせる。

576:透明夜 3
10/07/30 00:40:13 LH7YOygD
「お待たせしました」
ベンチに座ったまま身を竦めている美徳の隣に、ハデスが腰を降ろした。そして水滴の浮かぶ
冷たいミルクティーの缶を握らせる。
「…冷たい」
「夜になっても暑いですからね、体調も悪くなるでしょう。気が済むまで休んでいていいですよ、
付き合いますから」
「はい、ありがとうございます」
体調そのものは別にどこも悪くない。ただあの光に目が眩んだだけだ。それでも、こうして少し
でも一緒にいられる機会が出来たのであればそれは美徳にとって喜ばしいことだ。本当に、
学校では接する時が少な過ぎる。
ハデスがこの間初めて携帯を買ったという知らせは、生徒たちの間で一通り伝わってからよう
やく耳に入ってきた。それは詮索しない主義を通しているのでまあいい。けれど番号を教えて
貰った今でも、一体いつかければ良いものかと躊躇している。
こういう仲になった今でも、きっかけが掴めないでいるのだ。
あれこれと迷うのも変な感じで、結局まだ一度も電話をしてはいない。そうしてただ偶然の機会
があればこうして嬉しくなるだけの日々を繰り返している。
本当に、面倒臭い女だと嫌になるほどだ。
「美徳さん?」
決して答えもあてもない思案に耽っていると、心配をしたのかハデスが話かけてくる。驚くほど
顔が近くてその分真剣な目の色が心をぐさりと射る。つまらない考えに陥っていることに罪悪感
を覚えるほどに深い色をしていた。
「…いえ、何でもありません…逸人さん、一つわがままを言ってもよろしいですか?」
「ええ、どうぞ」
片時も離れたくない、ずっと側にいて安堵を感じていたい。思いが深まる度にそんな不安感が
募るばかりだ。そんな子供じみた独占欲など馬鹿げたことだと思ってはいても、心が次第に蝕ま
れていくのを感じている。
恋とは、本当に厄介なものだ。
「私は、あなたを愛しています」
「嬉しいですよ、美徳さん」
「私にも、そう言って貰えますか?たった一度でいいのです…」

577:透明夜 4
10/07/30 00:40:43 LH7YOygD
思えば、最初の夜から今まで、ハデスからその類の言葉を聞いたことはない。一緒に過ごせる
ことが嬉しくて言葉をねだることもなかった。だけどやはり女なら思う男から直接心からの告白を
聞きたい。
そんなわずかな鬱積が今、心の隙間から突然口を突いて出てしまった。
「そうですね、まだあなたに言っていませんでした…僕の不覚です。それでは」
ハデスは慌てることもなく、頬に寄せた唇をそのまま耳元に滑らせて美徳が一番欲しい言葉を
告げた。
「…嬉しい」
「お望みであれば、幾らでも…」
不安やら、渇望やら、そういった負の感情が簡単な言葉一つで霧散していく。恋は厄介なもの
には違いない。それでも、互いの心が伴ってさえいれば様々な面倒事は越えられるのだ。
先程まで瞼の裏で明滅していた、美徳の心をあらぬ世界へと剥離させていくあの妖しい光はもう
消え失せていた。
それでも、光の支配そのものはまだ続いていて存在を隠す。
その夜、誰でもない男と、誰でもない女が、無言のまま睦まじく寄り添い、囁き合う姿を見た者は
誰一人いなかった。






578:名無しさん@ピンキー
10/07/30 20:41:46 geN/pXck
GJ!
いつもの感じで終わるのかと思いきや、変化球できたか

579:名無しさん@ピンキー
10/08/02 02:26:50 zOtkyGvw
アシタバと花巻の話のつもりで書いたけど、まだ照れがあったので方向性を
間違った。なのでエロはない。

580:初恋未満 1
10/08/02 02:27:44 zOtkyGvw
夏休みに入ってから、何となくつまらない。
そんな気持ちがアシタバにはあった。
元々それほど学校が好きという訳ではない。自分なりに勉強はしているが特に目立つ成績でも
ない。それでも毎日学校に行っていれば友達もいるし毎日楽しく過ごせていたのに、それがなく
なっただけで妙に空虚な気分のまま過ごしているのだ。
家の中にいても自分の居場所はそこにはない気がする。だから日のあるうちは近くの図書館に
行って宿題をするなり本を読んだりして時間を潰す毎日を送っている。
しかし、昼近くになってから行ったことも関係しているのか、今日はいつも以上に人がいて、とても
落ち着ける雰囲気ではなかった。仕方ないので家に帰る途中の公園でよく知る少女の姿を視界
の端に見つけて驚く。
「あれ花巻さんじゃ…」
まさかこんな猛暑の屋外で会うなんて思ってもいなかったので、興味を引かれて近付いてみた。
花巻は日陰のベンチに座り、膝にいつも抱えているノートを置いて眠っている。わざわざこんな
暑いところにいるなんてと思ったものの、大分長い間ここにいるのか左腕が日陰の位置から出
そうになっている。女の子が変な日焼けをしたら嫌だろうなと可哀想になって、色々迷った末に
揺り起こすことにした。額に玉のような汗が浮いているので、これ以上ここにいたら熱中症になり
かねないことも心配だった。
「花巻さん…」
呼んでも起きない。肩を軽く揺すっても起きない。あまり乱暴なことも出来ないのですっかり困り
果てているうちに、眠れる姫がゆらりと瞼を開いた。
「あ、良かったぁ」
「…ひゃっ」
目を覚ました花巻は目の前にいるアシタバに驚いて小さな声を上げ、膝の上のノートを落としそう
になっていた。咄嗟にそれを拾い上げて手渡しをする。
「ごめん、はい」
まだ花巻は驚いて固まったままだ。もしかして、ノートの中を見られたと思っているのだろうかと
つい気になってしまう。しかし単にどうお礼を言っていいのか分からないで戸惑っているだけの
ようだった。恥ずかしがりでテンパりがちなこの少女の目の中で、明滅する感情の光が驚くほど
多彩なのが目を引いた。きっと口には出せないだけで、信じられないほどたくさんの言葉や感覚
が詰まっているのだろう。


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