◆女性に捕食されるされるスレ◆ 二口目at EROPARO
◆女性に捕食されるされるスレ◆ 二口目 - 暇つぶし2ch350:腐肉(P.N.)
10/02/02 18:08:56 /6rw+FnN
美里はパニックに襲われてもがきながらその人物の手を引き剥がそうとし、
それが手ではない事に気づいた。“舌”だ。ぬるぬるとした唾液が顔や手にべったりとまとわり付く。
違う、“姉”ではない…!
近づくにつれ、その人影が姉よりもはるかに背の高い人物であることが一目瞭然になった。だが彼女は直感的に悟った。これは、“姉”と同じ生き物である、と。
その時、襲撃者ははっとして手(正確には舌)を止めた。その人物は何か慌てたように勢い良く屈み込むと、ベッド脇の小机を乱暴に手で探った。
次の瞬間、眩い光が美里の顔を照らした。襲撃者がシェードランプを点けたようだ。美里は目を細めた。閃光の向こうに、襲撃者の姿が露わになった。
少女である。“姉”よりも少し年上のようだが、振り乱された長い髪に半分隠れたその顔にはまだあどけなさが残っている。
少女は驚いたような表情でじっと美里の顔を覗き込んだ。
「お前… 何者?」
千絵が言った。美里はよだれでべとべとになった顔を恐怖に引きつらせ尋ねる。
「…僕を食べるの?」
千絵には訳が分からない。今目の前にいるその少女は、確かに彼女を怪物にしたあの忌まわしい化物の顔をしている。それが千絵を前に目に涙を浮かべて恐怖に脅えている。
こいつはどう見ても人間だ。
ふと、千絵はある事に気づき、脅える少女の布団を乱暴に引き剥がした。美里が短く悲鳴を上げるが、今度は手で口を塞いで黙らせる。
怪物の目から身を隠していた布団が取り去られると、美里は本能的にベッドの上で無防備に丸くなる。だが千絵は容赦なく彼女の体を掴み、勢い良くパジャマを引き裂いた。
美里が呻き、抵抗しようと手足をばたつかせるが、怪物の力の前にはなす術もなく、あっと言う間に丸裸にされてしまった。
千絵は呆然と美里を見下ろしていたが、すぐにその顔に邪悪な笑みを湛えて呟いた。
「やってくれるじゃん…この変態。」
その時、背後で扉の軋む音が聞こえ、千絵はさっと振り返り身構えた。だがそこに居たのは佳奈だった。
肩に引っ掛けたパーカーのファスナーの隙間から、ぱんぱんに膨れ上がった腹がでんと突き出している。肥大した太鼓のような腹の中で、
何かがびくびくと不規則に痙攣している。それが叔母である事くらい、“姉”の正体を知っている美里にも分かった。
「どうしたの?」
佳奈は、泣き叫ぶ中学生女子を引ん剥いてベッドに押さえつけている親友に尋ねた。待ちに待った瞬間が訪れたにしては、何か様子がおかしい。
「殺らないの? …まさかここまで来て人違い、とか…」
佳奈がそう言いかけるのを制止し、千絵が言う。
「こいつ、“雄”だ。」
「へっ?」
佳奈は頓狂な声を上げる。
「変だと思った。今日一日尾行してても、何の気配もしない筈だよ。普通の人間なんだから。」
千絵はそう言って、全裸のまま枕に縋って泣いている“周防美里”をベッドから引き摺り下ろした。
「いやっ…!」
“美里”は悲鳴を上げ、すぐさま手で下半身の辺りを覆い隠そうとした。だがすかさず千絵の足が股間の辺りに踏み下ろされ、
“美里”は呻き声を上げたきり動かなくなった。目は天上を仰いだきり、額に玉の様な汗が浮かび、ひゅうひゅうと喉から空気の漏れるような音を立てている。
「こいつ、喰われたって言われていた“弟”だ。」
千絵が“彼女”の股座から足をどけると、睾丸と縮み上がったペニスが露わになった。


[続]

351:名無しさん@ピンキー
10/02/02 18:38:31 MfEPOI++
こんな可愛い子が女の子なわけがなかった

352:名無しさん@ピンキー
10/02/02 22:27:24 lgK7mPIL
>>351
ナンテコッタイ

353:名無しさん@ピンキー
10/02/02 23:47:59 Gkpd8hiF
ショタ嬲り殺し食いフラグ!!

354:名無しさん@ピンキー
10/02/02 23:53:25 HyYJ5LZ3
まさかの女装ショタ
お姉さんの為だっては分かるが、もう少し何かやりようがあっただろうにw

355:名無しさん@ピンキー
10/02/03 00:48:24 l83jH+Sl
だからこの世界、変態が多すg(ry

356:名無しさん@ピンキー
10/02/03 21:43:43 sziUALlP
>>355
呼ばれたきがした・・・・

357:名無しさん@ピンキー
10/02/03 23:26:12 ykAwai5F
女装少年のタマタマ責め(*´Д`)

358:名無しさん@ピンキー
10/02/05 03:02:35 AviBTtdl
と、ショタ少年の登場に沸き立つ住人たちであった・・・

359:腐肉(P.N.)
10/02/05 22:35:12 7mMRNkpK
周防美里は、優しく物静かな少女だった。元々病弱で、学校も休みがちだったのだが、その歳の春休みに、中学校へ入って初めて出来た友人らから小旅行に誘われた。
子供たちだけでの外泊は不安だったが、仕事の都合で普段あまり家に居られない美里の両親は喜んで娘を送り出した。
だが旅行中、彼女らは事故に巻き込まれ、美里以外の3人の女子児童が死亡した。3日後に病院で目を覚ました美里も、事故の前後の記憶を失っていた。
ともあれ、美里の両親と弟は、幸運だったと喜んだ。それが全ての惨劇の始まりであるとも知らずに。
美里の身体に異変が起こり始めたのは半月程経ち、新学期が始まった頃だった。
最初は、近頃は体調が良くなってきたと喜んでいたのだが、次第に何かがおかしいと気付き始めた。
元々少食だったにも関わらず食事の量は増え続け、生肉に対する渇望が生まれた。やがて近所の野良猫を手にかけた時、彼女は「自分が人間ではなくなっている」と確信した。
だが生来の引っ込み思案が災いし、誰にもその事を打ち明けられずに居た。ただ1人、弟を除いては。
歳が2つ離れているものの、2人の兄妹は瓜二つの顔立ちで、幼い頃からとても仲が良かった。だから弟美和が、姉の異変に気付かない訳が無かったのである。
しかし気づいたからと言って、何が出来る訳でも無い。弟には、姉が初めて人を殺して食した時、かばってやる事しか出来なかった。
2ヶ月程経つと、美里は一日家を空けて遠くへ出かけるようになった。目的は人間の捕食である。元々両親は留守が多く、病弱だったために学校の欠席も珍しくなかった。
蓮杖千絵の住んでいた街へやって来たのも、この頃である。それは、自分の身近な人間を巻き込みたくないという精一杯の優しさからだった。
だが8月の半ば、猛暑の続いていたある夜、ついに彼女の中の獣が暴発した。あまりに突然の事で、弟には為す術も無かった。
不運にも珍しく早く帰宅した両親をあっと言う間に呑み込むと、美里は家を飛び出した。悲鳴も聞こえなかった。1時間もしない内に団地は全滅した。
周防美里は姿を消した。美和は、姉を探して血反吐に塗れた団地をふらふらと彷徨っている所を警察に保護された。
名前を尋ねられたとき、彼は咄嗟に「美里」と名乗った。全ては、姉の存在を世間の目から隠すため。姉を護るためだった。
彼は環境庁の手で拘留された。だが事件があまりに突然で規模が大きかったために、すぐにマスコミが嗅ぎ付け、生存者の少女の存在が取り沙汰された。
事件直後のどさくさの中で、環境庁は彼が“オブジェクト”ではなくただの人間であると分かると、非難を浴びる前にすぐに解放した。性別すら調べずに。
こうして彼は“周防美里”として、親戚に引き取られた。それから“姉”を探し出すのに1ヵ月掛かった。
再開も束の間、今や彼は、突如現れた別の怪物少女によって、身寄りの無い自分を引き取ってくれた親切な叔母を喰われた挙句に捕らえられている。

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深夜の最終バスは、居酒屋やコンビニエンスのネオンで明るい大通りから、人気の無い暗い住宅街へ差し掛かった。
こんな時間だから当然と言えば当然だが、バスには運転手以外、泥酔し窓にもたれて鼾を
かいているサラリーマン風の男と、こんな時間にどこへ出かけるのかという杖をついた老婆だけしか乗っていない。
千絵は最後部座席に、膝の上に美和を乗せて座っていた。千絵の腹の辺りから延びた触手が、端からはそうと分からないよう背中から美和のスカート
(“美里”として引き取られたために、男物の服は持っていなかった。)の中に延びており、触手はパンツの中で美和の小さな陰茎をしゃぶっている。
ペニス走る快感と、このまま喰われてしまうのではないかという恐怖に、美和は今にも悶絶しそうな表情である。
これが謂わば、黙らせるための武器であった。弟の存在がまだ“餌”として使えると判断した千絵と佳奈は、ひとまず日下部家を離れ少年をアジトへ連れ帰る事にした。
念のために、千絵と佳奈は別々に家を出た。日下部家も監視されている可能性があるからだ。佳奈は今別行動を取っている。
今頃佳奈はどこかで妊婦と間違われて手を差し伸べたり席を譲られたりでおろおろしている事だろうと思うと、千絵は笑いが込上げるのを堪え切れなかった。

360:腐肉(P.N.)
10/02/05 22:36:31 7mMRNkpK
その時、膝の上の少年が耐えかねてもぞもぞと動いた。
「ひゃぅ…!」
千絵は小さく悲鳴を漏らす。くすぐったい!運転手がちらりとバックミラー越しにこちらを見たが、すぐに正面に視線を戻した。
「ちょっと、動かないでよ…。」
千絵は美和の耳元で囁いた。美和のペニスがびくんと震えるのを感じた。
「ご、ごめん…なさい…。」
美和は泣きそうな声で謝る。
「名前は?」
千絵が尋ねる。
「よ、よし…かず…。」
「どう書くの?」
「美しい、に…平和の和。」
「みわ?」
「本当は…女の子が生まれるって言われてて、それで付けたんだけど…」
美和は小さく呟いた。
「男だったから、読み方を変えて、よしかず…。」
「案外適当だね。」
千絵は素っ気無く感想を述べた。
一方、そう言えば自分の名前の由来を知らない事に思い当たった。両親共に別に絵が好きでもないし、千絵、なんていかにも適当につけられたっぽい。
「私、千絵。みわ、だったら似てるね。」
二文字である以外どこが似ているかはともかく、千絵は気を取り直して自己紹介した。
「これからしばらく一緒に行動してもらうから…」
全く、顔だけ見ていれば女の子みたいに可愛いのに、余計なものが付いているのが癪に障る。
千絵はペニスに齧り付いた舌を動かし、ぐりぐりと少年の一物を嬲った。
「覚悟しなよ?」
その時彼は射精した。初めてだった。前代未聞の快感が全身を貫き、美和は思わず身を屈めて呻き声を上げた。すぐさま千絵の手がかっちりと少年の口を塞ぐ。
少年は尚も喘ぎ、千絵の指の間を唾液が伝った。有頂天になった陽物からはまだどくどくと熱い液が流れ出ている。
チューブ状の触手が、ごくごくとそれを飲み下した。
「気持ち良いの…?」
千絵は少年の口から手を離す。唾液が糸を引いた。少年ははあはあと荒い息の間に呟く。
「い、いや…」
「嫌?」
千絵は唇が触れるほど耳元で尋ねた。
「じゃあ、もっとやったげる。」
再び陰茎の上で触手が力強く蠢いた。途端に美和は勢い良く二度目の射精をする。彼の解き放った精液は、触手を通って千絵の胃の中に吸い込まれて行った。
「終点、杉並車庫前。お降りの際はお手持ちのお荷物ご確認の上、足元にご注意してお降り下さい。」
運転手のアナウンスが告げ、バスが停車した。老婆はすぐに立ち上がったが、杖をつく足取りは蝸牛のように遅い。
サラリーマンは眠ったままだ。運転手は立ち上がると溜息を吐きながら後部へ歩いて来る。
「お客さん、着きましたよ。」
サラリーマンは呻きながら顔を上げた。運転手は次に最後部にいる千絵と美和の方に目を遣り、声をかけた。
「大丈夫ですか?」


[続]

361:名無しさん@ピンキー
10/02/05 23:12:39 A47Cc8WM
tes

362:名無しさん@ピンキー
10/02/06 19:02:22 AEnDoxKQ
ちょっと美和そこ代われ

363:名無しさん@ピンキー
10/02/07 01:57:07 htAbp8DP
うらやましすぎる

364:腐肉(P.N.)
10/02/07 23:09:58 sz329SO2
「ええ。」
千絵が答えた。その時、顔中から汗を噴き出し目に涙を浮かべた美和が小さな声で呟いた。
「たすけて…」
「えっ?」
運転手はびっくりしたように少年(彼には少女に見えるだろう)と千絵の顔を交互に見つめる。千絵はすかさず触手を引っ込めた。
行き場を失った精液がパンツに染み込み、千絵の膝を塗らした。
「酔っちゃったみたいで。」
千絵は気遣わしげに言う。だが運転手は不審に思ったらしく尚も追求した。
「失礼ですが、あなたお姉さんかな?」
「違います、助けて…!」
触手の枷から解放された美和が掠れた声で叫んだ。運転手は今度こそ不信感を露わにし千絵を睨みつけた。
「ちょっと、君、どういう…」
「はぁ… めんどくさいなぁ。」
千絵は呟きジャケットの前を徐に開くと、“第二の口”を勢い良くぐぱっと開いた。弾丸のような速さで触手が延び、運転手の身体を捉えるとそのまま千絵の方に引き寄せた。
運転手は半身を千絵の口に飲まれたまま悲鳴を上げ、脚をじたばたさせる。
だがその声はすぐにボキっという骨が砕ける嫌な音と共に途絶え、彼の身体はひくひくと痙攣しながら少女の胃袋に消えた。
酔っ払いのサラリーマンは、たった今自分の目の前で起こったことがアルコールの見せた幻影なのではないかと疑るような惚けた顔で千絵を見つめた。
千絵はサラリーマンの頭を片手でがっしりと掴み、そのまま持ち上げるように立ち上がらせた。男は頭を締め上げられる激痛でこれが錯覚ではないと認識したらしく、悲鳴を上げた。
だが次の瞬間には、少女の胸の亀裂に並んだ無数の牙に噛み砕かれていた。
鮮血が飛び散りバスの窓を赤く染めた。幸い、歩道側の席だったため、脇をすり抜けていく車両からは見えない位置だ。
「感想は?」
千絵は血の付いた顔を、硬直したまま殺戮を凝視している少年に向けた。
「ああああああああ…」
美和は弱弱しい悲鳴を上げて後ずさった。千絵は少年に抱きつくように身を寄せると、彼の耳元で囁いた。
「お前なんかいつでもこう出来るの。」
千絵は少年の耳たぶをすぅっと舌でなぞる。彼女は気付かなかったが、少年は三度目の射精をしたところだった。
さて、急いでバスを降りねば。人通りは今のところ無いが、ここは交通量が多いようだ。千絵は美和の手を引き、乗降口に向かった。
改札の所で、まだ老婆が杖をついていたが、どうやら彼女は耳も遠いらしく、後ろで起こった出来事に気付いていないようだ。
水気が無く不味そうでもあるので、千絵は彼女を素通りしてさっさと下車し、住宅街へ延びる路地へ入った。
人目の無い所へやって来るなり、千絵は少年の襟首を掴みぐいと持ち上げた。
「もしまた逃げようとしたら、まずその締まりの無いちんちん引き裂いて、殺さない程度にいたぶって…」
「何してる!」
キキッという自転車のブレーキ音がして、背後から声が飛んできた。振り返ってみると、悪い事に巡回中の警官が、自転車に跨ったままこちらを見ている。
「ああ、もう今日災難… 君のせいだぞ。」
千絵は美和に言った。
「その子を下ろしなさい。」
警官が路傍に自転車を停め、懐中電灯に手をかけこちらに向かってこようとしたその時、突然警官の腕が消えた。
「っ…!」
警官が声を上げる間もなく、切断され宙を舞った腕が夜露で湿ったアスファルトの上にぐしゃりと落ち、血を撒き散らす。
と同時に、二度目の攻撃が警官の肩からわき腹にかけての肉を、肋骨ごとそぎ落とした。断面からこぷんと音を立て内臓が溢れ、腰の辺りにだらりとぶら下がる。


365:腐肉(P.N.)
10/02/07 23:11:59 sz329SO2
警官はあまりの事に悲鳴を上げる余裕も無く、何が何だか分からぬ間に解体されていく自分の身体を見つめた。
色々な部位を一瞬で切り落とされたために、身体のバランスを取るのが難しくなっているようで、警官はサーカスの熊のように滑稽なステップを踏む。
踊る警官の背後に、2刀のスライサーを手にした佳奈が現れた。正確にはさっきから居たのだが、この時初めて見えた。
佳奈は血に塗れたぎらつく刃物を高らかに翳すと、止めの一撃を加えた。
警官の身体は3枚卸しになった刺身用の魚のように、背骨を軸に両脇にぼとりと肉の塊を落として倒れた。
「無用心。」
佳奈はスライサーの刃先で肉の塊を突き刺して言った。それを大きく開けた口元へ運ぶと、血の滴るそれをぱくりと頬張った。
その光景に美和は吐き気を催しその場に蹲った。
「食べる?」
佳奈は別の破片を千絵に向かって放る。千絵はぱくりと口を開けて血飛沫を上げながらそれをキャッチすると、ごくりと呑み下した。
「げふっ」
佳奈がゲップをする。
「うぅ、これ癖になるかも。」
「人が来る前に、帰ろう。」
千絵が美和を無理やり立たせながら言う。
「これ、持って帰っても良い?」
佳奈は足元に散らばった警官の残骸を指差して尋ねる。
「良いよ。余ったら、今度の家には冷凍庫もある。」
佳奈は嬉しそうに、スライサーを入れて持ち歩いているトートバッグに肉片をかき集め始めた。それを見て再び込上げる反吐を堪えている美和に、千絵はそっと囁いた。
「血生臭いの、好きなんだ、私よりも。良かったね、君をここまで連れて来たのが私の方で。」
千絵は少年の周りを一周してくっくと笑う。
「佳奈だったら、君もう死んでたよ。」
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環境庁の対策本部へ連絡が入ったのは、それから1時間後の事であった。翌朝、環境庁長官は辞意を表明した。
当然表向きには公表されていないが、事前に村雨管理官によって西東京団地事件の生存者、周防美里の再検査を進言されていたにも関わらずそれを却下した事で、
周防美里と保護先である日下部家が襲撃された責任を取るためである。
その間、村雨管理官は秘かに日下部家を張っていた伊豆波辰朗より、周防美里がまだ生きており、“オブジェクトD”と行動を共にしているとの報告を受けた。
「辻褄が合いませんね。」
村雨は電話の向こうの伊豆波に向かって言った。
「これまで私は、“D”が何らかの理由があって“オブジェクトC”を殺すために行動していると考えていました。ですが“連れ去った”となると話が変わってきます。」
「周防美里は、本当に普通の人間である可能性があります。保護しますか?」
村雨は少し躊躇したが、すぐに答えを出した。
「いいえ。これまでの経緯からして、“D”は明らかに何かの意図を持って行動しています。しばらくこのまま様子を見ます。引き続き、報告を。」
そう言って彼は電話を切った。
現在“オブジェクトD”が周防美里を人質に潜伏中の「劔持」と表札の掛かった民家から少し離れた公衆電話ボックスの中で、伊豆波はチッと舌打ちして呟く。
「どこまで冷血なんだ、あの男は…。」
村雨はオフィスのブラインドを上げた。ビルの向こうの空はもう白み始めている。彼は、今にも眠りから覚めようとしているその街を見渡した。
このどこかに、怪物が潜んでいるのだ。だがじきに一つの終局が訪れる、彼はそう確信していた。
蓮杖千絵の行動は少々予想外だが、彼にとっては目的はその行動の理解ではなく、彼女が彼らを“C”の元へ導いてくれさえすれば良いのだ。
彼女は間違いなく村雨の知らない情報を独自に得て行動している。その直感の鋭さ、行動力、大胆さは獣の本性によるものなのか。敵ながら天晴。
部下にしたいくらいだ、と村雨は思った。

[続]

366:名無しさん@ピンキー
10/02/08 00:32:30 +EfXSD+E
GJ!
クライマックスに近づいてるんだよな……
こんなに「終わって欲しくない」と思った作品も久しぶりだ

367:名無しさん@ピンキー
10/02/08 19:35:52 lAFVyekY
男には流石に容赦の無い、そこに痺れる憧れる
描写が素敵だ

9月末に始まって、四ヶ月以上ハイペースで投稿とか本当あんたすげぇよ・・・

368:腐肉(P.N.)
10/02/09 04:20:28 dup49A4w
周防美和は恐る恐る目を開けた。辺りは真っ暗だった。家へ着くなり、彼はどこか暗くて冷たい場所へ放り込まれた。
千絵に持ち上げられていたので定かではないが、階段を下るような感じがしたので、恐らく地下室だろう。かび臭くて、どこかでひたひたと水滴の垂れる音がした。
窓は無く一筋の光も挿さないが、何かの気配を感じた。鼠かも知れない。あるいは、ただ彼が極度に緊張しているために、落ち着き無くそう感じただけかも知れない。
美和は恐る恐る手を延ばし、冷たいコンクリートの床を手探りで壁まで這った。壁に着くと立ち上がり、壁に沿って歩いた。
特に目的は考えていなかった。出口を見つけたところで、恐らく脱出した途端にまた捕まってしまうだろう。だがじっとしていると気が狂いそうだった。
暗闇は地下鉄の線路内を歩き回って馴れていたが、その時はもしいざという時は姉が護ってくれるという安心があった。今彼を捕らえているのは、姉と同じ強大な力を持ち、
しかも彼に悪意を抱いている正真正銘の怪物たちだ。それは比べ物にならない恐怖だった。その時、美和は何か湿ったものに躓き、コンクリートの床にもろに頭を打った。
「痛っ…」
激痛が走り、美和は仰向けに倒れたまましばらく動けなくなった。その間に、足元にある濡れた何かから毀れた液体が背中を浸す。
ふと気付くと、股間の辺りがひりひりと痛んだ。いつからだろう?美和は無理に身体を起こすと、手探りでパンツの下のペニスを触ってみた。
触れると鈍い痛みを感じるが、どうやらまだそこにあるらしく、一安心だ。初めての精通の直後に何度も嬲られて参ってしまったのだろうか。
美和は、千絵の舌の感触を思い出した。柔らかく温かで、それでいて彼を人呑みにしてしまうような強い筋肉。それから、囁く度に耳元をくすぐる彼女の吐息。
酷い痛みにも関わらず、美和の一物は勃起した。
「痛っ…」
美和はまたそう呟くと、彼の上で蠢くあの舌の感触を忘れられず、腫れ上がったペニスに手をかけ、徐に扱き始めた。

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「さて、まず先決なのは、あいつの居場所を吐かせる事だ。」
千絵は警官の肉にナイフを走らせながら言った。哀れな巡査の肉は佳奈の手で調理され、食卓に並んだ白い陶器の皿の上に部位毎に分けて盛り付けられている。
「腿、取って。」
佳奈が自分の皿を千絵に渡して言った。千絵は焼き色の付いた塊から肉を削げ取った。所々体毛が残っているが、それも愛嬌だ。
「ありがと。」
佳奈は皿を受け取ると、肉汁の滴る塊を頬張った。
「多分脅しじゃ吐かない。“姉”のためにあそこまでする奴だもん。」
千絵が深刻そうに言う。
「よくバレなかったよね。友達居ないのかな…?」
と佳奈。
「顔だけなら可愛いのに…。」
千絵は無念そうに呟き、ロースを頬張る。
「肩、美味しいよ。」
千絵はそう言うと佳奈の皿にも切り分けてやった。佳奈は礼を言ってぱくりと口に放り込む。
「拷問なら、私がやる。」
佳奈が言った。

369:腐肉(P.N.)
10/02/09 04:21:26 dup49A4w
「…殺しちゃ駄目だからね?」
「大丈夫だよ。」
佳奈は心外だというように口を尖らせる。
「だって… このままじゃ、ちぃちゃんエロキャラになっちゃう…」
「エロキャラ言うな。」
千絵は顔を赤くしてフォークを振り回した。
「でも、ちぃちゃんよりも私の方が良い。理科の実験の時、千絵すっごい下手だった。」
「何の話?」
きょとんとする千絵に、佳奈は意地悪く微笑んだ。
「カエルの解剖、ちぃちゃん怖がって全然出来なくて、すぐに潰しちゃったじゃない。」
「う、うるさいな…中学校の時じゃん。あの時は血とか…内臓とか、気持ち悪かったんだもん…。」
そう言って千絵は、卵の殻を割るようにパキッと音を立てて頭蓋骨を真っ二つにすると、中の脳漿を啜りだした。

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錆びた鉄が軋みを上げる音で、美和は目を覚ました。いつの間にか眠ってしまっていたらしい。真っ暗な部屋に射し込む薄っすらとした光に気付き振り返ると、
開け放された扉の前に誰かが立っている。だがそれが誰であるか判る前に、パチンと電気のスイッチを入れる音と共に眩い光が部屋を満たした。
暗闇に慣れていた美和の目は一瞬視界を失う。その間に再び錆びた蝶番が軋み、扉が閉まる。ひたひたという足音と共に、誰かが地下室へ降りてくるのが分かった。
天上からぶら下がる裸電球から目を反らそうと、まだ慣れない目を床に遣ると、自分の周りにどす黒い血溜りが広がっているのが見えた。
「うわっ…!」
美和が声を上げ、尻餅をついた状態で後ずさろうとして背後に手を延ばすと、その手が何かぬるっとした不気味な感触のものに触れた。
恐る恐る目を遣ると、先ほど躓いたものの正体が判明した。所々肉のこびり付いたまま毒々しい色に変色した人間の頭蓋骨だった。
周囲にはそれ以外の部位も、それも恐らく複数の人間の骨が散乱していた。地下室の冷気に紛れて今まで気付かなかったが、もう何日かこのまま放置されているらしく、
肉は所々紫色に変色し、酷い臭いを放っている。肋骨と思しき塊の陰から、突然光に曝されて驚いた鼠が数匹、大慌てで物陰を目指してよちよちと駆けて行った。
美和が悲鳴も上げる気力も無くし血溜りの中で凍り付いていると、階段の方から声がした。
「あらあら、随分楽しんでたみたいじゃん、1人で。」
カンッという甲高い乾いた音と共に、巨大な刃物が美和の両足の間のコンクリートに突き立てられ、美和はびくっとして正面に向き直った。
裸電球を逆光に、警官をバラバラにした方の少女が立っていた。少女は、床に飛び散った美和の自慰の痕跡を裸足の親指で床に擦り込む様にぐりぐりともみ消した。
「まずはそこから潰してあげよっか。」
そう言って佳奈は、両脚を広げてへたり込んでいる美和の股間を蹴り上げた。
心臓が止まるかと思うほどの衝撃が走り、例えようの無い鈍い痛みがじわじわと美和の全身に広がる。
美和は大事な部分を押さえて前のめりに蹲った。あまりの痛みに呼吸が出来ない。その痛みは、徐々に吐き気へと変わる。
美和は無理矢理息を吸おうとして、その場に嘔吐した。


[続]

370:名無しさん@ピンキー
10/02/09 12:30:44 awodHXPO
GJ!!

371:腐肉(P.N.)
10/02/09 22:00:02 AQs7dEmq
「あれ…ちょっとハードすぎたかな…。」
佳奈は気まずそうに呟くと、屈んで美和の顔を覗き込み、罰の悪そうに笑った。
「ごめんね、男の子の身体って良く分かんなくて。」
そういい終わらないうちに、佳奈は蹲る少年の頭を、精液の付いた足でぐりぐりと踏みにじった。美和はコンクリートに顔面を押し付けられ、悲鳴を上げた。
ようやく声が出た。刺す様に強烈な血の臭いが込上げる。恐らく鼻の骨が折れているのだろう。
「さーて…」
佳奈は片手で美和を立ち上がらせると、もう片方の手で地下室の隅に立てかけてあったぼろぼろの椅子を引っ張ってきて、彼をそこに座らせた。
崩壊しそうな木の椅子に崩れ落ちた少年の目線に合う様に、美和の前にしゃがみ込むと、佳奈は楽しそうに話し始めた。
「君はどうしてここに連れて来られたのか、分かる?君が女装趣味の変態だからでも、真っ暗な地下室に閉じ込められて一人でしちゃうような変態だからでも、
蹴られて立っちゃう変態だからでもないよ。分かる?」
美和は思わず自分の股間に目を遣った。スカートを履いているので、その下の一物がいきり立っているのが一目で分かった。
その時、佳奈の指が、折れて血を流している美和の鼻をぴんとはねた。激痛が走り、美和は悲鳴を上げた。涙が溢れ、視界が滲む。
俯く美和のショートに切りそろえた髪を引っつかみ無理矢理顔を上げさせると、佳奈は額がぶつかるほど顔を近づけて凄んで見せた。
「君のお姉さんの事が知りたいの。」
少女が喋る度、彼女の唇の下に鋭く尖った歯が見え隠れする。
「これ、君のお姉さんで間違いないよね?」
佳奈は西東京の団地で見つけた写真を美和に見せた。美和は少し躊躇うが、徐に頷く。
「似てるねー、君たち。まー今はちょっと君の方が酷い事になってるけど。」
そう言って佳奈は再び美和の鼻を指ではねた。今度は悲鳴も、顔をしかめる間もなく、髪の毛をぐいと掴まれ否応無く前を向かされた。
「私たちが知りたいのは、今お姉さんがどこにいるか、なの。」
佳奈は床に突き刺さったままのスライサーを、ガキンという恐ろしい音を立てて引き抜き、片手でくるくる回しながら言う。
「どこにいるの?」
「…知らない。」
美和は断固として答えた。だが次の瞬間、右肩に激痛が走り彼は悲鳴を上げた。腕を動かそうとしたが、右腕が上がらない。見ると、刃渡り40cmはあろう太刀が、
肉を貫き肩の関節の間に入り込んでいた。身動きする度に激痛が身体中を駆け巡り、骨に金属の不快な摩擦を感じた。
じわじわと血が滲み出てシャツを濡らし、スライサーを伝った。
佳奈は椅子の前に跪くと、美和の身体に寄り添うようにして、肩に突き立てられたままのスライサーに口を寄せて、滴る血をぺろりと舐めた。
「嘘ついたらだーめっ。」
佳奈の柔らかそうな舌が、スライサーの歯の部分を撫でる。が、皮膚には傷一つ付いていない。彼女も化物なのだ。
「も一回聞こう?」
肩で息をすることも叶わず顔中に脂汗を浮かべている美和に、佳奈は哀れむような顔を向ける。
「し…しらない…」
美和が答え終わる前に、もう1本のナイフが左肩を貫いた。今度はバキンという音と共に、肩の関節を砕かれたようだ。
「いやああああああああああ!!!!!!!!」
美和は髪を振り乱して絶叫した。汗と血が飛び散り、佳奈の顔を塗らした。
「可愛い悲鳴。でも君、男でしょ?」
佳奈は千絵が良くそうするように、喉の奥でくっくと笑った。
「男らしくしてなきゃぁ。」
そう言って佳奈は、すっかり萎えて小さくなった美和の一物にそっと手を添えた。
12歳の少年がこれだけの痛みに耐えられる事にも驚きだが、これだけ肉体を苛まれて尚、まだ皮も剥けていない彼がひくんと震え
次第に血が通い出した事に佳奈はさらに驚いた。と同時に、その事実は彼女の邪な悪戯心を擽った。

372:腐肉(P.N.)
10/02/09 22:00:51 AQs7dEmq
「すごいね、男の子って。こんな時もえっちな事考えてるんだ。」
佳奈は、先ほど自分が蹴り潰した睾丸にすっと指を這わせる。痛みで敏感になっていた陰嚢はその優しい感触に耐えられなかった。
快感と痛みが同時に美和の中を込上げた。彼は再び声を上げる力を奪われ、短く細い息を立てるだけで必死に苦痛と抵抗と、それから快楽を表現しようとした。
「1人でするの、好き?」
佳奈が尋ねた。彼女の視線は熱心に少年の勃起したペニスに向けられていた。
「あたしは好き。」
彼女は頬を染めて呟いた。
「よく、ちぃちゃんの事考えてするの。」
少年の一物がひくんと震え、精巣の片隅に残っていた僅かな精液が小さな穴からとろりと流れ出た。
「んくっ、かわいい。」
佳奈は徐にそれに顔を近づけ目を瞑ると、そっと舌を出して白い粘液を舐め取った。少年はじわじわと込上げる快感に身体を震わせ、途端に両肩の痛みに悲鳴を上げた。
「君は何を考えてするの?」
執拗に美和のものを舐めながら、佳奈が尋ねた。
「お…ねえ…ちゃん…」
美和は涙を流して喘ぎながらか細い声で答えた。
「それは素直に答えるんだね… 変態。」
佳奈は彼の性器から舌を離すと顔を上げた。見捨てられたと思った美和は思わず「あっ…」と無念の声を上げる。佳奈が意地悪く微笑んだ。
「ね、2人でした事、ある?」
美和は頬を紅潮させて、一瞬佳奈の真直ぐな目から顔を背けて言う。
「な…ないです…」
今度は、優しく頬に手を添えられて顔を前へ向けられた。佳奈は椅子の脇に脚を延ばすと、少年の膝に跨った。
「して、みよっか。」
スライサーを避けるように腕を回して、少女は、少年と向き合うようにして抱き付いた。
少年はペニスの先に当たる少女の感触で、初めて彼女が何も履いていない事に気付いた。
「教えてくれたら、優しく、したげる。」
佳奈は熱く濡れた陰をいきり立つ肉棒に押し付け、リズムを刻むように腰を前後に動かし出した。
「あ…んっ…」
美和は声を上げた。
「ほらほらぁ、入りたがってるよ?」
佳奈が意地悪く笑う。
「可哀相…。」
そう言って股の下で彼女の虜になっている小さなペニスに触れると、腰を動かす度に膣から毀れる涎で覆われていた。
佳奈はねっとりとした唾液のついた指を美和の口元まで持っていくと、赤子に離乳食を与えるように唇に塗りたくった。
美和は口元を震わせながら舌を延ばしてそれを舐め取る。
「んふ。変態。」
佳奈はにっこりと笑い蔑むような目で少年を見下ろす。
「お姉ちゃんと私、どっちがすき?」
「あっ…あなたがすき…」
佳奈が少年の唇から指を離すと、彼は快楽に肩の痛みを忘れ、佳奈の方に身を乗り出そうとした。途端に、その身体を貫く二刀の刃物に阻まれる。
「うぅっ…」
「じゃあ、私のお願い、聞いて。教えて。」
少年は舌を延ばし、乞うような目を佳奈に向けて、はあはあと吐き出す荒い息の合間に精一杯の力を振り絞って答えた。
「はい…。」


[続]

373:名無しさん@ピンキー
10/02/09 22:45:22 Wp9kCLm2
佳奈もめでたくエロキャラに
というかもうスライサー抜いてやれよw

374:名無しさん@ピンキー
10/02/10 00:42:37 NY+cf0XF
前半がSAWの拷問シーン並みにエグくて悶えたぜ
GJ

375:名無しさん@ピンキー
10/02/10 13:18:31 dz10SGsk
ながれぶったぎってすまないが、
今週の週刊少年マガジン11号の「ぷあぷあ?」って漫画で
女の子が、葛藤を表す天使と悪魔を食べちゃう話があった。

376:名無しさん@ピンキー
10/02/10 21:32:54 WLzPT5C6
千絵、SAWとか好きそうだな

377:名無しさん@ピンキー
10/02/10 22:04:03 STDLr5ME
SAWは噂で痛いだけって話を聞いて、パッケージも微妙だから避けてるが
面白いのか?ストーリーとか

378:名無しさん@ピンキー
10/02/10 23:30:38 cyqxPzqN
1はまぁまぁ楽しんで見たけど、結末ありきかなー。結末分かってしまうともう見る気しない。
2は『ブレアウィッチ2』よりはマシ。3は冒頭のヘルレイザーみたいなシーンは良かったけどそんだけ。
4以降見てない。
そして捕食シーンはない

379:腐肉(P.N.)
10/02/11 02:01:21 ovoCBzyw
千絵はテレビの前のソファに凭れて、時が過ぎるのをただ待っていた。
テレビでは映画番組をやっていたが、ブラウン管に向けられた彼女の目にはその内容は映っていなかった。
時折階段下の地下室の扉に目をやってはそわそわと時計を見る。階下から甲高い子供の悲鳴が聞こえるたびに、千絵はやはり様子を見に行こうかどうしようかと迷った。
佳奈は、やばい。気心の知れた親友の彼女でさえ、素直にそう思った。
いや、恐らく変成が始まったばかりの、怪物になりたての頃は、佳奈も千絵に対して同じ感覚を持ったに違いない。
だが、佳奈が千絵の事を好いていると確信していなかったら(そして千絵も佳奈の事が好きでなかったら)、時々千絵でさえ彼女の所業が怖くなる。
5回目の悲鳴が聞こえたら、流石に様子を見に行こう。そう決め手から随分と時間が経った。まさかもう殺してしまったのではなかろうか。
そう心配しかけたとき、再び少年の悲鳴が聞こえた。幸い庭の広い家であるし、地下の音が近所にはっきり聞こえることはないだろうが、そろそろ不安だ。
千絵はソファから跳ねる様に起き上がると、地下室へ向かった。
陰嚢を含む陰部を丸ごと食い千切られ、だらだらと黒っぽい血を垂れ流し椅子の上に枝垂れた少年を見つけるなり、千絵は佳奈を咎めるように睨みつけた。
下半身を少年の血で塗らした佳奈は、ぐったりしている少年を横目で見つつ、粗相をしでかした犬のような目で段上の親友を見つめた。
「ごめんね、ちょっと、やり過ぎちった。」
かわいい!と、思ったが、すぐに千絵は溜息を吐いて階段を降りた。「ぶたないで!」と言わんばかりに身を縮めて佳奈が慌てて繕う。
「ま、まだ生きてるよ。かろうじて…だけど。」
「普通の人間は、私とするのとは違うんだから。」
千絵は頬に血が上らないように努めて冷たく言うと、少年の前に跪き、傷口を舐め始めた。股間の傷を舐めながら、肩の刃物を両手で引き抜く。
僅かに血が噴き出し、少年が呻き声を上げた。千絵の胸の辺りから別の舌が2本這い出し、それぞれ傷口を舐めた。
周防美和は遠のく意識の中で、バスの中で味わったあの感触を再び感じた。彼の全身を包み込む、温かく、圧倒的に強い存在。
だがその心地良さを感じる部分がもう自分に残されていない事に気づくと、彼は少女たちに気付かれないよう一人涙した。

--------------------------------------------------------------------------

美和を地下室に眠らせると、佳奈は千絵の待つ居間へ上がって、千絵の隣りのソファに腰を下ろして切り出した。
「東京に来て、初めて地下鉄に乗った時に話した事、覚えてる?」
「ん?何だっけ。」
「“あいつ”が地下に潜んでいるかも、って話。」
「ああ…そうだっけ。」
「“あいつ”は地下に居る。地下鉄の路線に沿って、移動してる。だから警察には見つからない。」
佳奈は、美和の供述を千絵に伝えた。千絵は唖然として口をぽかんと開けたまま、佳奈を見つめた。
「あの子にだけ分かるように目印を残してる。あの子、前にも地下に潜って“あいつ”に会いに行ったんだって。」
千絵の脳裏を様々な疑問が渦巻いた。あまりにも単純すぎやしないか?周防美和は嘘を吐いているのか?それとも何かの罠なのだろうか?

380:腐肉(P.N.)
10/02/11 02:02:26 ovoCBzyw
「…どうして、地下鉄の事件から一月近く経つのに、まだ地下に居るんだろう…?東京なら他に隠れる場所はあるだろうし、地上の方が餌にも困らないでしょ?」
千絵は最大の疑問を口に出して言った。
「知らないよそんなの…。」
佳奈は、待ちに待った答えに対する千絵の反応が案外と小さい事に不満げに口を尖らせる。
「あの子が嘘吐いてると思うの?」
「お姉さんを護るために女装までしてた奴だよ?しかもあんなにズタズタにされたんじゃ、自棄になったかも。」
千絵は咎めるような目を佳奈に向ける。
「ううん、あの子は嘘吐いてないよ。」
佳奈はむっとして断言した。それからちょっと頬を赤らめて呟くように付け足す。
「それにちんちん食べたのは喋った後だもん…。」
「かーわいそー。ひどいやつだな。」
「ちぃちゃんに言われたくないなっ。」
千絵がからかう様に言うと、佳奈はぷいとそっぽ向いてしまった。千絵はくっくと笑うと、再び目の前の問題について考え始めた。
いずれにせよ、確かめる方法は一つしか無いのだ。幸いまだ周防美和は生きている。
「終電が終わる頃、地下に入ろう。あの子も連れて。」
千絵はすっかり拗ねてしまった佳奈の背中に話しかけた。佳奈はちょっと千絵の方を振り返って呟く。
「…いいけど。」
佳奈が、まだ何か言いたげなのを感じ取り、千絵は首を傾げて親友の背を見つめた。やがて佳奈が徐に向き直り、伏目がちに口を開いた。
「もし、本当だったら…最後の戦いになるかもしれない。そうでしょ?」
「…ん。」
千絵は頷く。それから佳奈はしばらく迷うような目で何事かを考え始め、沈黙が流れる。
だがやがて決意したような顔で千絵に向き直ると、まっすぐ彼女の目を見つめて言った。
「私も、同じにして。」
「え?」
千絵は佳奈が何の事を言っているのか分からずに戸惑った。
「“あいつ”が…6月にちぃちゃんにしたのと同じ事、私にもして。」
佳奈が何を言いたいのかをやおら理解すると、千絵は拒むように首を振った。佳奈は、千絵に自分を殺せと言っている。自分の中に“卵”を産み付けて。
やがて腹の中でそれが孵り、臓器を喰って身体を突き破って生まれてくる。そうして佳奈は怪物になるのだ。
「駄目だよそんなの…佳奈、分かってない。それってつまり…」
「分かってるよ。死ぬんでしょ?それでいい。千絵と同じになりたい。」
佳奈は真剣な眼差しを彼女に向ける。千絵は自分の顔が引きつるのが分かったが、取り繕う余裕は無かった。
「“あいつ”は私を犯して、殺したんだ。怪物を産むために。目が覚めた私がどんな気持ちだったか、佳奈には分からない!
自分が自分だって意識はあるのに、もう違う、怪物なんだ!そんな、私なんかへの憧れのために、佳奈にそんな想いはさせたくない。
ただでさえ、佳奈はもう人間じゃない。」
千絵は声を張り上げた。だが佳奈は引かない。
「こんな中途半端な状態じゃ嫌。私の変成はもう止まってるの。千絵の血を飲んだだけじゃ、完全には変成しないんだよ。」
「それが救いだ!」
千絵は顔を真っ赤にして叫んだ。
「私は佳奈を巻き込みたくない!」
「もう遅いんだよ!“あいつ”と戦うなら、私は今のまま足手まといになりたくない。完全な怪物になって、一緒に戦う。」
千絵は耐えかねて佳奈から目を背けた。
「出来ないの…。」
千絵は泣き声で言う。親友の望みを叶えてやれない。これほど泣きたい気分なのに、涙は出なかった。
「私には、産卵能力が無いの。」
千絵は悲しげに呟いた。佳奈は言葉を失って、ただうな垂れる親友を見つめた。
「何度か、やってみようとした事がある。もちろん、佳奈にじゃないけど。でも私には、“卵”作る器官が、無いみたい。普通のセックスも、もう出来ない。
私のあそこには歯が生えてるし…」
千絵は顔を上げた。佳奈がこちらにゆっくりと歩み寄ってきて、徐に肩に手を置いた。その手には引力があるかのように、千絵の火照った頭を引き寄せた。
千絵は佳奈の肩に頭をもたせ、少し離れたところで光っているテレビ画面をピントの合わない目でぼんやりと眺めながら呟いた。
「ごめんね、佳奈。」
千絵は佳奈が泣いているのが分かった。冷たい涙が、千絵の首筋にぽたぽたと落ちる。
佳奈はなぜ泣いているのだろう?千絵のようになれなくて、泣いているのだろうか?
それとも、一人ぼっちの怪物を哀れんで泣いているのだろうか?あるいは、運命を狂わされた少女、2人のためだろうか。千絵には分からなかった。
夜が明けるまで、2人はその話題には一切触れず、慰めあうように交わった。怪物がこの世で唯一、温もりを感じ合うことを許される相手と。


[続]

381:名無しさん@ピンキー
10/02/11 07:34:51 ZhRkMOe+
なんでこんなに投下速いの?


382:名無しさん@ピンキー
10/02/11 11:03:15 lp/JOuOo
神様だからさ…

383:名無しさん@ピンキー
10/02/11 13:39:08 3Otf8rpO
いったいどんな風にチンコ食いちぎったんだろうな…

384:名無しさん@ピンキー
10/02/11 14:05:31 lp/JOuOo
>>383
佳奈は下から食えるからなあ
普通にそうしたのかねえ

385:名無しさん@ピンキー
10/02/11 15:24:28 CQHY0MAW
せめて舌で嬲っていればまだ結果は違ったろうが・・・
少年はどんな結末を迎えるのだろうかね

>>383
チンコ膣にはめて、少年が興奮した瞬間食いちぎったと思う

386:腐肉(P.N.)
10/02/11 17:19:55 FN9yKcNn
千絵→肋骨が無くなってて代わりに触手が基礎を成す第二の口がある
佳奈→骨盤が変形していて膣が口になっている

みたいな感じです。わかりにくくて、というか描写すっとばしてすみません。

387:名無しさん@ピンキー
10/02/11 18:08:12 3Otf8rpO
腐肉さんご丁寧に解説ありがとうございます。
個人的に佳奈が良すぎる…!

388:名無しさん@ピンキー
10/02/11 20:39:58 DDmEkpwP
それでも生きてる少年が凄いわw

389:名無しさん@ピンキー
10/02/11 20:42:41 Hl7sSGha
でもちんこって切ってもちゃんと処置すれば死ぬもんじゃないんじゃね?宦官とか
問題は肩と合わせての出血多量か・・・

390:名無しさん@ピンキー
10/02/11 21:31:36 CQHY0MAW
後はショック死とか
いろんな意味で凄い男だな美和

391:名無しさん@ピンキー
10/02/11 21:32:40 0pkNoUzI
尿道癒着とかな

392:腐肉(P.N.)
10/02/12 01:03:01 QeUAdY5a
“エコーズ”には数組の客が居るのみだった。このカラオケ店でアルバイトを始めてから一ヶ月、中西明はすでに仕事に飽き始めていた。
最初は、同い年くらいでちょっと綺麗な女性が来店すればときめいたりもしたが、そんな事で出会いにつながるはずもなく、同僚はと言えば加齢臭漂う中年親父か、
救いようの無いデブ女か、メイクがかえって醜さを引き立たせるような厚化粧女くらいのものだ。
中西明は、さもやる気無げに受付カウンターに頬杖を付いてあくびをした。奥の通路に並ぶボックスのいくつかから、音痴な熱唱が聞こえてくる。
窓の外は爽やかな小春日和だというのに、こんな午後にカラオケなどにやってくる人々に彼は同情した。
平日のこんな時間には大抵客は少ないので、その時シフトに入っているのは彼と例の“デブ女”だけだった。彼女は今ドリンクを作りに行っている。
中西は時計に目を遣った。シフトが終わるまで後2時間半、彼はこの退屈を生き延びられそうにない。その時、エレベーターランプが点灯し、客がやって来た。
鉄の扉から現れたのは2人の美少女だった。中学生か高校生くらいだろうか。どちらも、思わず目を奪われるほど可愛かった。
中西は慌てて頬杖を崩し背筋を伸ばした。本来なら、学生がこんな時間にカラオケ店に居る事を不審に思うべきだ。学生証を提示させ入店は断らねばならないのだが、
今の彼にとってはマニュアルなど糞食らえ、だ。
「いらっしゃいませ。」
中西は声を上ずらせて言った。「会員証はございますか?」「お時間は?」「ご希望の機種は?」など、決り通りの文句を機械のように並べながら、
彼はカウンターの前で何やら興奮気味にひそひそと相談している少女たちを観察した。背の高いロングの方が好みだと思ったが、近くで見るとショートの子も外せない。
「当店では先にドリンクをオーダーしていただいております。ご注文承ってもよろしいですか?」
彼はラミネートコートされたメニュー表をカウンターの上に広げて尋ねた。少女たちはまだ何か相談しながら、中西に向き直り言った。
「コーラと、アイスティー、ミルクとガムシロップは3つ。それから、新鮮な…」
ロングの少女がいきなり彼の腕をがしっと掴んだ。中西は何が起こっているのか分からず、動揺した。だが、少女の腕は筋張っていたが白く美しかったし、
その動揺は期待と興奮の入り混じった動揺であった。その時は。少女は唇にそっと指を当てると、彼の目をじっと見つめて言った。
「…お、に、く。」

--------------------------------------------------------------------------

“エコーズ”の個室の一つで、喜多崎茜は溜息を吐きながら、先ほど街で知り合ったばかりの男が熱唱するシャ乱Qを聞き流していた。
その朝、彼女は母と喧嘩をした。今となってはくだらない事だが、つい悪ぶりたくなって学校をサボったのだった。そのまま夜まで帰らないつもりだった。
あの分からず屋に心配をかけさせてやりたいと、その時は思っていた。
だから行きずりの軽そうな男を捕まえて時間を潰そうとカラオケ店に入ったのだが、ものの5分でその野望は挫けた。
自己紹介の時に「俳優」と名乗ったのが嘘である事くらいは初めから彼女にも分かっていたが、目の前で調子外れにまくし立てている男は恐らく地球上で最もくだらない
人物に違いない。彼女には残り1時間半、この空間を耐え抜く自身は無かった。こんな事なら強がらずに学校へ行っていれば良かった。
今頃、みんなは体育かなあ…。そんな事を思っていると歌が終わり、自称俳優が隣りにどさりと腰を下ろした。喜多崎茜は無意識に腰を浮かせて、男から少し離れた。
「じょ、じょうずですね…。」
喜多崎は愛想笑いを浮かべる。
「俺的には95点ってとこかな。」
男の鼻にかかった喋り方が、彼女を苛立たせる。

393:腐肉(P.N.)
10/02/12 01:04:30 QeUAdY5a
「茜っち、何歌うの?」
誰だよ、それ。彼女ははらわたの煮えくり返るのを堪えながら、カタログに目をやる。
「一緒に歌っちゃう?」
男が尋ねる。
「それとも、もっと良い事する?」
男の手が、制服のスカートの下から延びた太腿に触れる。喜多崎茜は飛び退くように男から離れた。ありったけの嫌悪をこめて言う。
「や、やめてくださいっ。」
「ちょっとちょっとちょっとぉ。」
男は小馬鹿にしたように大袈裟に腕を広げて言う。
「誘ったのそっちよ?それってちょっと失礼ってもんじゃない?」
近づこうとする男に、こうなったら力ずくで抵抗する覚悟を決めて身構えたその時、ボックスのドアが開いた。
「あぁ!?ちょっと何よ…」
男はそう言いかけて振り向いた。どうやら店員だと思ったらしい。喜多崎の位置からは、戸口に立っている人物の顔は男の陰になって見えないが、店員ではない。
女性だ。男は彼女の姿を見るなり態度を一変させた。
「あれぇ!?君、渋谷にいた子だよね。」
女性は首を傾げ、ややあって言う。
「…えっと、ごめん、誰だっけ?」
「俺だよ俺、佐野河。俳優の!“クレアヴォヤンス”ってクラブで、一緒に踊ったじゃん?悲しいなぁ、忘れられちゃって、俺可哀そ…」
自称俳優が最後まで言い終わらない内に、彼女の脚が男の頭を一撃した。佐野河は人形のように吹き飛び、反対側の壁に激突して床に崩れ落ちた。
「世間は狭いにゃあ。」
戸口に立つ人影が少女の声で言った。助けに来てくれたのだろうか?何故?そもそも誰?
喜多崎が呆気に取られていると少女が彼女に駆け寄り、ぐいと肩を掴んだ。びくっとして震える彼女に、少女は息の掛かるほど顔を近づけ、黄色い声で叫んだ。
「うわぁあ、可愛っ!!」
「…へっ!?」
顔を輝かせる蓮杖千絵に抱かれ、喜多崎はぽかんと口を開けて頓狂な声を上げた。その時、倒れていた佐野河が蹴られた頭を労わりながら起き上がった。
「痛って… おいおいおいおい、いきなり何しやがんだこのっ…」
そして彼は再び最後まで言わない内に、千絵のすらっと長い脚に踏み抜かれ、壁に頭を打ち付けられた。隣りの個室から「うるせぇ!」という声が響く。
千絵は脚を上げて男の頭を壁に押さえつけたまま口を開けた。にゅるりとながい舌が数本現れた。
「きゃあああああ!!!!!!」
喜多崎は悲鳴を上げた。目の前で、突如現れヒーローのように彼女を救ってくれた少女の口から、触手が現れ彼女をナンパした男を呑み込もうとしている!
まるで飲み込まれかけの巨大な蛸のようなその触手は、悲鳴を上げる佐野河の身体に捲きついた。千絵が脚を壁から離すと、佐野河の身体は触手に持ち上げられ宙に浮いた。
男は言葉にならない叫びを上げ、ばたばたと手足を振り回して抵抗しようとしたが、テーブルの上のグラスやマイクが床に落ちて音を立てただけで、彼の身体は呆気無く、
千絵の口に収まった。顎が外れているのではないかと思うほど大きく開いた口から、タイトな皮のパンツを履いた佐野河の脚が突き出し、一瞬ばたばたともがいたかと思うと、
あっと言う間に少女の体内へと消えて行った。驚いた事に、男一人の身体を丸ごと呑み込んだと言うのに、少女の腹はバスケットボールほどしか膨らまない。
「五月蝿い男は嫌いだな。」
千絵は呟くと、これ見よがしにゲップを吐いた。血や汚物の臭いの混じった腐臭が、喜多崎茜の鼻を突いた。

394:腐肉(P.N.)
10/02/12 01:05:45 QeUAdY5a
「い…いや…」
喜多崎は震えながら、がしりと彼女の肩を掴む怪物の手から逃れようともがいたが、物凄い力で締め付ける少女の腕はびくともしない。
「んくっ…かあいい。」
千絵は喜多崎茜の頬を伝う涙をぺろりと舐めた。
「でもごめんね、愉しんでる時間が無いんだ。」
怪物が残念そうに呟くと、彼女の下顎から腹にかけてがぱっくりと割れ、人体が縦に真っ二つに開いた。巨大な亀裂のような口を無数の鋭い歯がのこぎりのように縁取り、
その中でぬるぬるした太い触手が何本も蠢いている。
「ひっ…」
喜多崎は悲鳴を漏らす。神様、これがサボった罰ですか。ママと喧嘩した罰なんですか。
「痛くしないよ。」
千絵はそう呟くと、彼女の身体をそっと抱き上げ、胃の中に寝かせた。恐怖に抵抗する意志も挫かれただ震えて涙を流すことしか出来ない喜多崎茜の前で、
牙の生えた肉の扉が閉まった。怪物の腹は彼女の容積で膨張して、薄くなった皮膚からぼんやりと外の光が透け中はピンク色に見える。
彼女は脈動する胃袋の中で身を捩ろうとしたが、肉壁に圧迫されて身動きが取れない。ふと、自分の手が何か拳大の硬いものに触れた。
目だけを動かして腋の間から下を見遣ると、そこに佐野河の股間があった。彼の身体は腰の辺りで尻と背中がくっ付く様な形に真っ二つにへし折られており、
彼女の手はズボンの下で勃起したまま硬直した彼のペニスに触れていた。
「きゃっ…!」
喜多崎は悲鳴を上げて手を離そうとしたが、肉の壁の中では腕を動かす余裕すら無かった。その時ごぽごぽという音と共に、彼女の手の下、つまりぺしゃんこに潰れた
佐野河の身体の収まっている辺りから何やら液体が湧き出してきた。その液体は佐野河の肉体を浸すとしゅうと音を立て、鼻を突くような刺激臭のする湯気を上げた。
佐野河の身体が見る見る沈んで行き、喜多崎はやっと彼の汚らわしい一物から手を離す事に成功した。液体に触れた手の平に何か肌色のクリーム状のものが付着している。
彼女はそれを脇腹の辺りで拭おうとし、途端に手の平に激痛を覚えた。クリーム状のそれは、溶解した彼女の皮膚である。
見ると、クリームの中から血が滲み出し、剥がれた部分には筋繊維がむき出しになっている。
「いやぁあ…っ!!」
喜多崎茜は怪物の強い酸性の胃液に浸かろうとしている。佐野河の身体は沈んだのではなく、溶けて小さくなったのだ。
男の下半身という浮き島がなくなった今、彼女の身体はずるずると胃袋を降下し、甘酸っぱい臭いの毒液にどっぷりと浸かった。
彼女はもがくが、狭い胃の中で脱出の見込みは無く、もがけばもがくほどしぶきが上がり胃液は全身に付着し制服のブレザーが煙を上げた。
彼女は身に付けた衣類が消え、やがて水に入れたラムネのように自分の身体から皮膚が溶け出て行くのを感じた。だが酸の中で彼女の痛覚はいつの間にか一切麻痺し、
心地良ささえ感じた。腰の辺りに佐野河の骨がぶつかると、尻の周りの脂肪がふわっと一気に分解され、身体が軽くなる。
その時、上の方から眩しい光が挿した。すでに瞼を失い眼球も分解しかけていた彼女の目はかろうじて光だけを捉えたが、どうやら怪物が口を開けたらしい。
その光が翳ったかと思うと、上から大きな何かが落ちてきてばしゃんとしぶきを上げた。胃の中に飛び込んできたそれには、顔がついており、手足もあった。人だ。
哀れにもその酸の世界の仲間となった新たな犠牲者は、最初は喜多崎茜と同様消化されて行く手足を必死にばたつかせてもがいた。
肉のこびりついた骨格と化していた喜多崎の身体は、その新たな犠牲者に蹴られてばらばらになった。やがては彼も、彼女と同じ運命を辿るだろう。


[続]

395:名無しさん@ピンキー
10/02/12 21:21:04 D0Aqc6S+
体内の様子に萌えた
マジで文才ありすぎw

396:名無しさん@ピンキー
10/02/12 23:24:52 QNvYKbq3
CUBEゼロの初っぱな、酸性シャワー浴びせられてグズグズに溶けていく犠牲者思い出した。
最凶な怪物ながら、たまにネコアルクっぽい千絵がかわいいにゃあ。

397:名無しさん@ピンキー
10/02/12 23:51:16 i9GumL+i
やってる事は外道この上無いのになぜか千絵は憎めない

>>375
天使と悪魔ってだけで探したから手前の漫画で引っかかったぜ、同じシーンがあるとは
デフォルメだからか俺はそんなに興奮しなかったわ

398:INHUMAN
10/02/13 15:52:03 jNqgKuoF
ちょっと、あんたたち!
こんなスレッド立てて恥ずかしくないの!?
そのうち削除依頼を出して、
消してもらうつもりだから、
覚悟してなさいよね!!

さあ、潰れるざます!
逝くでがんす!
フンガ~!!
まともに潰れなさいよ~!!


399:名無しさん@ピンキー
10/02/13 18:23:15 hB9Pqmt+
>>398
wwwwwwww

400:名無しさん@ピンキー
10/02/13 19:04:46 wTfcKqBp
>>398
ナイス!
GJ!

401:名無しさん@ピンキー
10/02/13 21:51:54 5KqRYiYk
いい年こいたオッサンが>>398書いてると思うと泣けるな・・・

402:名無しさん@ピンキー
10/02/13 23:08:17 wTfcKqBp
>>401はスルー。

403:名無しさん@ピンキー
10/02/14 01:13:01 7jQqbMIZ
INHUMAN

人間(の中に)に入る

丸呑み

 千絵

404:名無しさん@ピンキー
10/02/14 18:20:20 VjkYEO7V
>>403
ひとの なかに いる!

405:名無しさん@ピンキー
10/02/14 18:51:38 VwER58Jz
テセラックはQ方向にいる!

406:名無しさん@ピンキー
10/02/14 19:04:05 +U2M1HBy
良く分かったな
俺ぜんぜん分からんかったよ

407:名無しさん@ピンキー
10/02/14 21:32:37 IUaEbkVJ
三次元は四次元に丸呑みされているんだと考えると
なんかドキドキしてきた。

408:名無しさん@ピンキー
10/02/14 23:44:40 mhHZHKaz
なんつー酷いこじつけだ

409:名無しさん@ピンキー
10/02/15 00:39:08 +2SFiRfK
ピクシヴで丸呑みって検索

410:名無しさん@ピンキー
10/02/15 00:50:09 u2vyHmxg
っつーかみんなピクシブ見れるの?

411:名無しさん@ピンキー
10/02/15 01:20:57 DUoN+LyJ
登録制だが無料だし少なからず居るんじゃね

412:名無しさん@ピンキー
10/02/15 02:24:22 PBN6et1K
絵が描けないからなぁ。

413:名無しさん@ピンキー
10/02/15 02:38:59 UatyAKMb
ミルダケタダ、ミルダケタダネ、シャチョサン

414:名無しさん@ピンキー
10/02/15 03:13:16 idek24Z6
前に腐肉さんの漫画化した人もピクシブだったが…なんか最近あのサイト重い

415:腐肉(P.N.)
10/02/15 05:07:21 CwOsGmA2
蓮杖千絵と小山内佳奈は、来るべき決戦に向けてエネルギーを蓄えておかねばならなかった。
カラオケボックスは理想的な餌場だ。獲物が悲鳴を上げても問題は無し、密室性が高く、平日の日中ともあれば邪魔が入る心配も無い。
佳奈は我ながら良い考えを思いついたものだと得意になっていた。千絵がカウンターの従業員を平らげると、佳奈は素早くシフト表をチェックした。
千絵が個室の方に向かうと、佳奈はもう一人の従業員を始末すべく、廊下の突き当たりのドリンクバーを目指した。
20代半ばと思われる太った女性が彼女に背を向けカクテルのグラスをマドラーでかき回していた。
佳奈は肩に掛けたスポーツバッグを徐に床に降ろすと、中から布で覆った例の凶器を取り出した。
太った従業員は彼女の存在に気付いていない。佳奈は残忍な笑みを浮かべて刀を振り下ろした。
スライサーは本来、人間の頭蓋骨を真っ二つに叩き割るほど強靭な刃物ではない。それを成し得たのは単に佳奈の文字通り怪物的な腕力によるものだった。
太った女性には何が起こったのかさっぱり分からなかった。急に視界が滲み、手にしたカクテルグラスにどこからか赤い液体が数滴ぽたぽたと落ちてきた。
それが自分の顎の辺りから突き出した鋼色に鈍く輝く刃物の切っ先から垂れている自らの血だと気付いた瞬間、彼女は絶命した。
佳奈は女性の下顎骨で閊えているスライサーを、そのまま力任せに下へ振り切った。飛び散った血しぶきは僅かだったが、
制服のスカートが調度真ん中の辺りでぱっくりと分かれてはらりと落ちるや否や、女性の身体は左右対称に真っ二つに割れ、床に崩れ落ちた。
「きゃああああああああああ!!!!!!!」
その時、佳奈の背後で悲鳴がした。振り向くと、一人の女性が廊下の向こうに立ちすくみわなわなと震えている。大方タイミング悪くトイレにでも立ったのだろう。
「何?」
悲鳴を聞きつけ、離れた個室の扉が開いた。
顔を覗かせた中年の男は、2本の長い刃物を手にした佳奈と、床に屑折れた血塗れの店員の亡骸を見るなり、野太い叫び声を上げて扉を閉めた。
佳奈は無言で踵を返し、中年男性は無視してつかつかと廊下を女性の方に向かって歩き出した。途中、スライサーをぶんと一振りして付着した血液を払った。
女性は脅えた目で彼女を凝視したまま数歩後ずさり、すぐに廊下を反対側へ駆け出した。
仕事が早く掃けて友人とちょっとこの店に立ち寄っただけであった彼女は、パニックに陥っていた。
あまりに混乱していたため、廊下の角で妊婦のように腹をぽっこりと膨らませた少女とすれ違った事にも気付かなかった。
少女はちょっと女性を振り向くと、すぐに廊下の向こうからやってくる佳奈を認め、逃げる女性を無視して廊下を進んだ。
千絵はすれ違い様に、佳奈に向かってハイタッチの姿勢で左手を上げた。
両手に刃物を握っていた佳奈はタッチする代わりにスライサーの研ぎ澄まされた刃を千絵の鋭い爪に当ててカンっと乾いた音を立てた。
佳奈が廊下の角を曲がって姿を消した途端、金属が有機体を切り裂く湿った音が木霊した。
廊下の向こうの壁に血が飛び散るのをちらりと見てから、千絵は先ほど中年男性が身を隠した個室のドアを蹴り開けた。蝶番が砕け、ドアは内側に吹き飛ぶ。
中から太い悲鳴が聞こえる部屋に、千絵は無言で踏み入った。次の瞬間、血しぶきが上がった。
血しぶきはドアの無くなった部屋から飛び出し、廊下の反対側の壁を赤く染める。
やがて巨大な口が肉を呑み込む下品な音だけが、店内を満たした。
----------------------------------------------------------------------------

416:腐肉(P.N.)
10/02/15 05:10:18 CwOsGmA2
「ねぇ、佳奈?」
ぼってりと膨れた腹を抱え、ドリンクバーの前の地べたに脚を広げて座ると、千絵は言った。佳奈は隣で、店員の裂けた頭から脳髄をすすり出しながら、千絵の方を向く。
「昨日の話…ごめんね、叶えてあげられなくて。」
ずびっと音を立てて、佳奈は柔らかい薄桃色の髄の最後の一欠片を吸い込む。
「何が言いたいかって言うと…その… 足手まといなんて、思ってないから。佳奈が居なかったら私、今頃死んでたかもしれない。
だから、佳奈がこうなってしまった事も、もう私のせいだとか思わない。佳奈はどっちにしろ、私と一緒に最後まで戦ってくれたと思う。怪物でなくても。」
佳奈はごきゅっと音を立てて頬張った脳を呑み込むと、微笑んだ。
「私にとって、千絵は千絵だよ。怪物なんて、思ったこと無い。これが私たちの、あるべき姿なの。」
そう言って佳奈は親友の腹にキスをした。その優しい唇の感触に千絵の腹は微かに震える。
「ごめんね、私こそ我がまま言って。」
「謝らなくていいよ。私が…」
その後は、口付けに遮られた。やがて千絵は立ち上がると、どこかの個室に置いて来た上着を探して持ってきた。
佳奈にそれを渡すと、自分も肩から引っ掛けて言う。
「さて、まだ日暮れまで時間があるけど、どっか行きたいところある?」
千絵は、立ち上がろうとして自分の腹の重みでよろけそうになっている佳奈に手を貸した。
「出来れば、腹ごしらえが出来る場所がいいなっ。まだ足りない…“あいつ”と戦うには。」
すでに消化が進み小さくなり始めている腹をさすって千絵が言う。
「あんまり食べ過ぎると、メインディッシュが入らなくなるよ?“あいつ”を食べるんだから。」
佳奈はそう言いながら少し考えるように俯くと、顔をぱっと輝かせて言う。
「動物園に行きたいなっ!」
「今から?もうすぐ閉園なんじゃないかな…。」
千絵は廊下に掛かった時計にちらりと目を遣り残念無念というように呟く。
「それでも良いよ。今なら、入れるでしょ?」
佳奈は無垢な笑顔を千絵に向ける。千絵は敵わないと知っている。
「ねっ?」
千絵は折れて仕方ないな、というように笑う。
「…それもそうか。修学旅行の時とは、違うもんね。」

------------------------------------------------------------------------------------

カラオケ店“エコーズ”から19人の人間が消滅した頃、“劔持”と表札の掛かっているとある民家の前に、一人の警官が現れた。
と言っても、伊豆波辰朗の姿を一目見て警官であると判別できる人間はそう居ないだろう。
ジャンパーにニット帽というカジュアルな服装に身を包んだ彼は、周囲の様子、特に家の中の様子を覗いながら玄関の前に立つと、2度チャイムを鳴らした。
返事は無い。それはそうだろう。
彼や村雨の推測が正しければ、この家の住人である劔持夫妻は、5日前に突如現れた蓮杖千絵と小山内佳奈、通称“オブジェクトD”及び“オブジェクトE”によって既に殺されている。
そして彼が監視している2体の怪物は、今日の昼過ぎに家を空けた。だが恐らく現在、家の中には拉致された西東京事件の生存者、周防美里が監禁されている筈である。
最悪の場合、殺されているかも知れない。
それだけでも確かめようと、伊豆波はこっそり裏口に回ると、勝手口の鍵を出来るだけ傷の残らないようにしてこじ開けた。
家の中に入ると、伊豆波の心臓は早鐘のように鳴った。家には誘拐された少女以外無人である筈なのは分かっている。
だがそこは何か、人が立ち入ってはならないような空気に満ちていた。まるで獣の檻である。いつでも銃を抜けるように右手を脇腹のホルスターに掛けると、
伊豆波は足音を立てぬよう抜き足差し足して台所を横切った。台所のゴミ箱から、恐らく人間の骨と思しき焼け焦げた塊が覗いていた。
あの日の午後、村雨オフィスで聞いたとおり、彼が相手にしているのは正真正銘の人を喰う怪物なのだ。
最初は信じられなかったが、今は、彼の30年余りの人生で培った価値観、この世界に対する見る目が全て覆されてしまっている。
だが今は、すでに死んだ人よりも、これから救える可能性のある人の事を考えるべき時だ。伊豆波は腐臭を放つ残骸を無視すると、廊下へ出た。
すぐに階段下の地下室へ通じる扉に目が行くが、その前に居間や浴室をチェックする。二階からも物音はしない。
完全に無人である事を確認すると、伊豆波は地下室へ通じる扉を開けた。中から強烈な腐臭と鉄の臭い…血の臭いが立ち込める。
もう手遅れかもしれない。そんな予感を胸に覚悟を決めると、伊豆波は軋む木の階段を降り始めた。


[続]

417:名無しさん@ピンキー
10/02/15 13:32:51 ratlpaL2
GJ!!投稿早いですね

418:腐肉(P.N.)
10/02/15 19:00:33 slHcAvc5
窓の無い地下室は昼でも真っ暗で、一寸先も見えない。
ただ噎せ返るような悪臭が壁のように待ち構えるのみだ。伊豆波は打ち放しのコンクリート壁を手で探り、電灯のスイッチを見つけた。
天上からぶら下がった裸電球に光が灯る。照らし出された地下室は、悪夢のような光景だった。
糞のように茶色く変色した、肉の削がれた人骨が数体、汚らしい粘り気のありそうな液体を床に染み付かせて転がっている。
その周囲を蝿が舞い、数匹の鼠が慌てて逃げて行った。
地下室の中央に、古い木製の椅子に歪んだ金属でがんじがらめに縛り付けられた少女の姿があった。伊豆波は骸骨を避けながら彼女に駆け寄る。
「周防美里か?」
彼は声を殺して尋ねる。
「大丈夫か?」
「ん…」
少女は呻き声を上げた。服はずたずたに裂かれ殆ど裸で、血塗れだがその血は既に乾いており、襤褸のように身体に貼り付いている。
両肩に癒えかけた歪な深い傷がある。それから…。
伊豆波は視線を下に移して驚いた。少女の裂けたスカートの中に、ぐちゃぐちゃになった肉が見えた。
血は止まり皮膚も再生しかけて、もはや古傷のように見えるが、それは明らかに女子の肉体ではなかった。
そこにあったものが、引き千切られた痕跡である。そして縛られた“少女”は、自らの手で股座をまさぐっている。
本来性を感じる部分を奪われ、代わりに肛門を刺激して自慰をしている。
伊豆波はその光景にしばし呆然としたが、すぐに状況を飲み込み、辛抱強く話しかけた。
「君は弟の方か。」
“少女”は黙って頷こうとした。鉄の枷が首に巻き付いているので頭は動かせなかったが、伊豆波はそれをイエスと受け取った。
「やはり、姉が… 周防美里は、怪物なんだな?」
「うっ…」
周防美和は掠れる声で呻いた。歪な鉄のロープが喉を圧迫しているようだ。
「待ってろ、今外してやる。」
伊豆波は屈み込み、少年をがんじがらめにする金属の拘束具に手を掛けたが、びくともしない。恐らく、元は何かの柄か配管だったものだろう。
それをこんなにもぐにゃりと曲げてしまうとは、何と言う怪力だ。伊豆波は何度か首の部分だけでも外せはしないかと力の限り引っ張ったが無駄だった。
「すまんな…。」
彼は息を弾ませながら呟く。
「でも心配するな、今すぐここから連れ出してやるから。」
彼は椅子ごと少年を運び出そうと、ぼろぼろの椅子の背に手を掛けた。その時少年が呻いた。
「だめ…」
「何だって?」
「見つかる…」
「心配要らない、守ってやるから。」
「お姉ちゃんが…」
その言葉を聞いて、伊豆波は手を止めた。

419:腐肉(P.N.)
10/02/15 19:01:23 slHcAvc5
「姉の居場所を知っているのか?」
「うぅ…」
少年は細目を開けて伊豆波を見つめた。
「千絵…おねえちゃんと、佳奈おねえちゃん…連れて行く。行かなきゃ…」
「あの2人を、お前の姉のところへ案内するんだな?」
伊豆波は興奮気味に少年の放す内容を纏めて繰り返す。少年は頷こうとして顎を動かした。
「お姉ちゃん… あいつらを殺す。」
「お前の姉が、蓮杖千絵と小山内佳奈を殺すのか?」
「うん…」
伊豆波は背筋を冷たいものが駆けるのを感じた。恐ろしい事だが、一方でそれはある種の喜びだった。
“オブジェクトD,E”を“C”に引き合わせる。相打ちにするために。
こんなにも物事が上手く進むとは思っても見なかった事だ。しかもこの少年は、自らその罠を仕掛けその役を買って出ようとしている。
「よし…」
伊豆波は呟いた。彼が嫌悪していた人間、村雨の思考が、今や彼の心を支配しようとしていた。
目的のため、目の前の囚われの少年を犠牲にしようとしていた。
「君は、私に会った事は絶対にあの2人には言っちゃだめだ。予定通り、あの2人を姉の元に案内するんだ。」
伊豆波は声を震わせ言った。
「そうすれば、我々もあの2人を殺すのに協力する。大丈夫、君の安全は守ってやる。もちろん、君のお姉さんも。」
伊豆波は少年に微笑んで見せた。空虚な、偽りの微笑を。
「やれるか?」
「うん…」
少年は言った。
「よし…。」
伊豆波はごそごそとポケットを探ると、警官が証拠品を入れる透明な密封袋を取り出した。中に小指の爪ほどの黒いチップが数個入っている。
伊豆波はその内の一つを取り出すと、美和に見えるように目の前に掲げて言う。
「これは発信機だ。これを身につけていれば、私たちには君の居場所が分かるからね。これを飲むんだ。飲めるか?」
伊豆波はチップを少年の口元に持っていった。
「大丈夫、身体に悪いものじゃない。薬のカプセルと同じくらいのものだ。」
少年は口を開けて舌を延ばすと、チップを受け取り口に含んだ。
首を締め付けられており飲み込むのに多少時間がかかったが、彼は無事に発信機を体内に納めた。
「よし…。」
伊豆波は立ち上がり言うと、少年の方を向いたまま階段の方へ一歩下がった。
「心配するな、ちゃんと離れたところから見張ってるからな。」
そう言って彼は地下室の明かりを消した。離れて行く刑事の足音を聞きながら、周防美和は心の中で呟いた。
姉は、あの男も殺すだろう。殺して喰い千切って、ばらばらにして、呑み込んで…。


[続]

420:名無しさん@ピンキー
10/02/15 23:04:15 DUoN+LyJ
美和の精神ぶっ壊れたか・・・南無

421:名無しさん@ピンキー
10/02/15 23:45:52 Ypj3kdg4
だれか美和くんにぶっといおちんちんつけてあげて!

422:名無しさん@ピンキー
10/02/15 23:58:18 99/qCd+I
>>421
うっかり佳奈さんの体液を口にして二重感染してたらどうする
なんかうじゅるうじゅると変なもの生えてきたらどうする

423:名無しさん@ピンキー
10/02/16 00:37:42 e2yuOryk
>>422
佳奈たんなら「でもこれってスレ違いよね」とか言いながら
生えてきたのを次々にばくばく食べてくれるはずだ!

というかそもそも美和くんのちんこ切れたのって
佳奈たんが絶頂したときにうっかり食い千切ったんであって
実は事故だよね?

C,D,Eと先に進むたび獣としての能力と本能が劣化していくというのは
つまりオブジェクトたちに未来がないことを示していて悲しすぎる。
そして何故千絵より上位であるはずのCは地下に閉じこもっているのか。
獣が身を隠すときは……と考えていくと今後の展開はヤバすぎる気がするぜ。

424:腐肉(P.N.)
10/02/16 22:29:50 /rIO2ksi
太陽は桃色の残光を暗くなった空に残しビルの向こうへ消えた。木津三平は腰から懐中電灯を取り出すと、石畳の通路を照らしながら檻の間をゆっくりと歩き始めた。
夜の動物園は気味が悪いが、閉園直後のこの時間にはまだ飼育員もかなり残っていると思うと少し気が楽だ。
夜間も警備員の他に必ず3人は常駐しているのだが、それでも、一人で見回りというのは心細い。基本的に肉食獣は夜行性で、檻の向こうの闇や、
薄明かりの灯った小屋から唸り声や身じろぐ音がする度に、木津は肝を冷やす。早くこんな仕事を辞めて転職したかった。彼は溜息を吐き、再び檻の間を歩き始めた。
昼間は子供や家族連れで賑わう楽しげな通路も、夜にはただ閑散と寂しく、不吉な獣の臭いが立ち込める。だがどうだろう。その日は心なしか、臭いが薄く感じた。
檻の中から唸り声も、毛皮の擦れる音も聞こえない。動物が興奮するので、檻の方には懐中電灯を向けてはいけない事になっていた。
そこで木津は目を凝らして、鉄格子の中の暗闇を見た。その中にいる獣を確認しようとしたのだが、何も見えない。檻のプレートには“ジャコウネコ”とある。
つまり、夜行性だ。妙だな、山猫をどこかへ移したのだろうか?その時、ベルトから下げた無線機がザザっとノイズ音を吐き出し静寂を破った。
木津は驚き飛び上がりそうになりながら、無線機を引っ掴む。今夜のもう一人の警備員である韮澤の声が、機械からくぐもって聞こえた。
「木津さん、“ゴリラの森”ってもう通りました?」
「いや、まだだ。」
「センターから連絡で、飼育員2名がまだ戻らないそうです。」
木津が蛍光盤の付いた時計に目を遣ると、7時を回ったところだった。そろそろ清掃員や土産物店のスタッフ、夜勤ではない飼育員などは皆帰ってしまった頃だ。
「遅いな。」
彼は呟く。
「ええ、そうなんです。何かトラブルかも知れないんで、確認お願いできますか?」
韮澤が言う。
「了解。」
木津は答えると、園内の一番端にあるゴリラの区画へ向かった。ゴリラはとても敏感な動物で、閉園後は檻の脇にある飼育小屋の屋内へと入る事になっていた。
木津が“ゴリラの森”と呼ばれるゾーンに近づくにつれ、明らかな異常が判明してきた。
ガラスで仕切られた檻の明かりが点いている。閉園後は担当飼育員が消灯するはずだ。
という事は、閉園前か閉園直後から、担当飼育員はここへ来ていない。木津はごくりと唾を飲み込むと、意を決して飼育小屋の方へ向かった。
ステンレスの扉をノックすると、ゴンゴンという重い音が響いたきり、返事は無い。ノブを回してみると、カチャリと音を立てて扉はゆっくりと開いた。
木津は鼓動が早まるのを感じながら、懐中電灯を小屋の中へ向ける。だが中は電気が点いていた。入ってみると、そこに人の姿は無かった。
檻の戸は閉められ、掃除用具や餌やり用具は整然と並べられ何一つ乱れた所は無い。木津はほっと胸を撫で下ろし、懐中電灯を下げた。だがすぐに妙な事に気づいた。
ゴリラが居ない。外のケイジにも姿は見当たらなかったし、檻の鍵はしっかりと鎖で巻かれ錠がかけられている。
木津は檻を一周しようとしてふと、鉄格子の端が大きく歪んでいるのを発見し愕然とした。だがゴリラの腕力をもってしても、動物園の檻を捻じ曲げる事など不可能だ。
そんな事は重機でも持ち込まない限り不可能だ。ゴリラは逃げたのではない。まさか、盗まれたのだろうか?
木津は慌てて無線機のスイッチを入れ韮澤を呼んだ。
「韮澤、今ゴリラの檻だ。鉄格子がひん曲げられて、ゴリラが消えてる。」
すぐに韮澤のくぐもった声が応え、木津は少しほっとした。
「何ですって?何頭?」
「全部だ。一頭残らず消えてる。飼育員も居ない。」
ややあって韮澤が言う。
「すぐ、そっちへ行きます。」

425:腐肉(P.N.)
10/02/16 22:31:34 /rIO2ksi
プツッという音と共に交信が終わると、木津はすぐに飼育小屋を離れた。
気味が悪くて中で待ちたくなかったのだ。外へ出て、韮澤の駆けて来る足音がしないかと耳を済ませる。
その時彼は気付いた。遠くを走るかすかな車の音や水の流れる音以外、園内は静まり返っている。全くの無音なのだ。
動物園には300種以上の生き物が飼育されている。そのうち彼の居る区画だけでも大型哺乳類が40頭は居る筈だ。
それが1匹たりとも物音一つ立てずにじっと静止しているなどという事がありえる筈が無い。
木津は背筋に走る悪寒と戦いながら駆け出した。シロクマの檻に近づくと、彼は規則に反し囲いの中に電灯の光を向けた。
途端に信じられない光景が飛び込んできた。ずたずたにされてところどころ血で汚れた毛皮と、折り重なる肉の削がれた骨の山だ。シロクマのものだけではない。
恐らくゴリラのものと思われる巨大な頭蓋も転がっていた。木津は元々動物好きという訳ではなかったが、そのあまりの惨たらしさに思わず口に手を当てて顔を背けた。
犯人は何の目的でこんな事をしたというのだ?以前外国の動物園で、毛皮を剥ぐ為に飼育動物が殺されるという事件があったと聞いた事があるが、これはまるで違う。
毛皮は残骸の中に打ち捨てられている。まるでより強い捕食動物が食い荒らした跡のようだ。その時足音が聞こえ、木津は素早く振り返った。
韮澤の懐中電灯が弾むように近づいて来るところだった。
「木津さん…!大変です!!」
若い声が叫ぶ。彼は木津に追いつくと息を整える間もなくまくし立てた。
「あっちでトラが死んでます。クマも1頭残らず消えてる!鳥と、猿とか小型動物だけ無事ですが、何かにひどく脅えて隠れています。」
「飼育センターに連絡したか?」
木津は韮澤の背中をなだめるようにさすって尋ねる。
「それが…繋がらないんです。」
「一人もか?」
その時また何かの足音が聞こえ、2人の警備員は顔を上げた。途端に、2人は胃袋に氷水を注ぎ込まれたかのようにその場に凍りついた。
巨大なライオンが2頭、彼らめがけて駆け寄ってくる!
「ああああああああっ!!!!!」
韮澤が情けない声を上げ、その場にくず折れる。彼の肩を掴んでいた木津も、全身の力を奪われ韮澤に釣られて地面にへたり込む。
あの猛獣どもが果たして、他の動物をこんなにした犯人なのか?そんな疑問が彼の脳裏を過ぎった。2頭の百獣の王は、何かから逃げているように見えたのだ。
次の瞬間、空から何かが降ってきて先頭の雄の上に着地した。雄ライオンは頭を踏み抜かれ、その場に倒れると動かなくなった。
ふさふさの美しい鬣はあっと言う間に血で汚れたモップのように変わり果てた。
2人の警備員がライオンの死骸から視線を上げると、美しい色白の少女が身体中を獣の血に染め立っていた。
腹が異様に大きく膨らみ、その重みで倒れそうになっている。
少女は警備員らを無視してライオンの上に覆いかぶさると、素手でバリバリと毛皮を剥ぎ取り、露わになった湯気を上げる真っ赤な肉を食い千切った。
もう一頭の雌ライオンは逃げようとして再び警備員の方へ駆けて来る。
「ひぇっ…!」
韮澤が声を上げたその時、彼らの背後のシロクマの囲いから何かが飛び出し、雌ライオンを捕らえた。
それは見たことも無いような巨大な蛸の足のような桃色の触手だった。
触手がライオンの体を締め上げると、お手拭を絞ったように猛獣の身体は捩れ、バツンと音を立てて毛皮がはち切れた。百獣の王の断末魔が夜の動物園に木霊する。
「あれっ、いつの間にか観客が居るよ、佳奈。」
背後で何者かの声がして、木津と韮澤は跳ねるようにして振り返った。そこにもう一人別の少女が長い髪を妖艶に夜風になびかせ立っていた。
少女の胸の辺りから巨大な触手が延び、ライオンを捕らえていた。彼女は深さ5メートルはあろうかというシロクマの囲いの堀の上に、浮いている。
いや、よく見ると、腹の辺りから出ている別の触手を梯子のようにして囲いの中に立っているのだ。
少女がにっと笑うと、触手はライオンの肉を絡めたまま物凄い速さで引っ込み、胸元の亀裂に消えた。少女の腹がびくんと震え、また少し大きくなる。
少女は天を仰ぐと、獣の咆哮のような、いやそれよりも大きく耳を劈くようなゲップをした。木々が震え、無数の鳥が危険を察知して飛び立った。


[続]

426:名無しさん@ピンキー
10/02/16 23:10:41 cTJGvGps
>>425
佳奈に触手実装きたー

427:名無しさん@ピンキー
10/02/17 00:16:50 RrOkMsot
もはや底無しの食欲ってレベルじゃねぇw
クラス全員食べたのがまだ少ない方だったとは・・・

>>426
触手を出したのは千絵で佳奈は普通にそのままいってるぞ
俺も一瞬勘違いしたけど

428:名無しさん@ピンキー
10/02/17 01:48:23 YgByKE8l
熊やゴリラより強い千絵タン・・

429:INHUMAN
10/02/17 11:21:30 N4adS/tA
ちょっと、あんたたち!!
こんなスレッド立てて恥ずかしくないの!?
そのうち削除依頼を出して、
消してもらうつもりだから、
覚悟してなさいよね!!

さあ、潰れるざます!
逝くでがんす!
フンガ~!!
まともに潰れなさいよ~!!


430:名無しさん@ピンキー
10/02/17 17:52:15 LYSdBwNd
これが昼間だったら、ジェノサイドモードに…

431:腐肉(P.N.)
10/02/17 20:41:37 scEF7fpH
千絵はシロクマの囲いの淵に脚をかけると、するすると触手を“第二の口”に仕舞いこみ、地上に降り立った。
何十頭もの獣たちを呑み込んだ重みで、着地の際に地震のように地面が震えた。
それが引き金であったかのように、韮澤はがばっと起き上がると言葉にならない叫び声を上げ一目散に逃げ出した。
すぐに再び千絵の胸元ががばっと大きく裂け、触手が弾丸のように延びると逃げる青年の足を捕らえた。
韮澤は勢い余って地面につんのめり、石畳に顔面を酷く打ちつけた。
「いやだ…いやだ…!」
鼻からどくどくと血を流しながら、韮澤は石畳の間に指をかけて這い逃げようとする。
だが残酷無比な怪物はするすると触手を引き上げ、韮澤の身体は石畳の上を打たれながらずるずると引きずられた。
「いやだあああああ!!!!」
韮澤はがむしゃらに腕をばたつかせてもがくが、その指がもう石床を捉える事は無かった。
彼は怪物の足元まで引きずられると、そのまま触手にぐいと持ち上げられあっけなく怪物の胃袋に吸い込まれた。
「あっ…あああっ…!」
木津はわななきながら、無意味に怪物に向かって腕を延ばした。そんな事で身を守れるべくもないと知りながら。
彼が今目にしているそれこそ、まさしく百獣の王、最強の生物だった。彼は抵抗する気力も挫かれ、あっと言う間にばくりと呑み込まれた。
雄ライオンを食い尽くした佳奈が千絵の元へふらふらと歩いてきて、彼女の足元に跪いた。一瞬何かを期待する様な目を千絵に向けると、目を瞑ってあんと口を開ける。
太く巨大なチューブ状の触手が千絵の陰門を押し開けて現れ、佳奈の唇に触れた。佳奈は触手に手を添え、フェラチオするかのようにそれをぱくりと咥える。
千絵の胃袋から触手を伝い、噛み砕かれてどろどろのペースト状になった肉が佳奈の口に流れ込んだ。
「んっ…くっ…」
佳奈は気持ち良さそうにそれを飲み下し始めた。喉がごきゅんごきゅんと規則的な音を立てる。親鳥から餌付けされる雛のように。
佳奈の捕食能力では、千絵ほど効率的に獲物を狩る事が出来ないからだ。千絵は自分の呑み込んだ分を喜んで佳奈に分け与えた。
これから2人が向かう戦いを前に、佳奈も十分栄養を取っておかねばならない。千絵は股座から出た太い肉棒に夢中で吸い付く佳奈の髪を、指で鋤く様にして撫でた。
触手の感じる佳奈の小さな舌や唇、添えられた小さく冷たい手の感触が、全て千絵の性感を刺激し、親友にしゃぶられて千絵は何度も絶頂に達した。
やがて胃袋が満たされると、佳奈は触手から口を離し小さくゲップをした。
「もう…いいの?」
千絵は頬を赤らめて尋ねた。
「んっ…」
佳奈はこくんと頷き、触手の先端から垂れそうになっている最後の一滴を舌で掬い取った。
その際触れた舌先の温かくちょっとくすぐったい感覚で、千絵はもう一度果てた。
佳奈は千絵が触手を仕舞う前に、何度も何度もそのいきり立つ肉の管にキスをした。
生き残った動物たちは、圧倒的な力を持つその2匹の獣たちが去るまで身を潜め、地獄のような一時を味わっている。
人間で言うなら調度「生きた心地がしない」といった感じだろう。
お陰で辺りはしんと静まり返り、2人が口付け合うチュッという音だけが響いた。やがて千絵が言った。
「…行こうか。」
その口調は静かだが、確固たる決意がその小さな胸に秘められている事を佳奈は悟った。
「うん。」
彼女は答え、立ち上がった。
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432:腐肉(P.N.)
10/02/17 20:43:48 scEF7fpH
11時過ぎに、2人は劔持家へ帰還した。その頃にはもう消化は粗方終わり、千絵は元の体型に戻っていた。佳奈はまだ少し胃が張っていたが、動く分には支障ない。
11時半を回った頃、2人は地下室に監禁していた周防美和を連れて家を後にした。すぐさま、待機していた伊豆波辰朗他数名の監視者が追尾を開始する。
美和の服は佳奈が切り裂いてしまったため、代わりに自分の、彼には少し大きめのワンピースにフード付きのパーカーを着せて顔を見えないようにしている。
千絵も捕食の時によく羽織っている愛用のパーカーに身を包んでおり、端から見ると千絵、佳奈、美和の順に大中小と背の違う姉妹のようにも見えた。
だが実際のところ、佳奈の背負ったナップザックには2本のスライサーが忍ばせてあったし、千絵は美和がまた逃げようとした時のために、常に彼の首筋に手を這わせていた。
その柔らかく冷たい強靭な指の感覚は周防美和をぞくぞくさせたが、千絵はそんな事を知る由も無い。
3人は最寄りの駅から地下鉄に乗ると、いつも美和が線路に降りる駅まで移動した。
到着したのは深夜過ぎで、ホームは最終電車をに間に合った飲み屋帰りのサラリーマンや芝居帰りの女性などで混み合っていた。
3人はホーム内にあるトイレに身を潜め、終電をやり過ごし、やがて最終電車が居なくなりホームに人が居なくなると、3人はトイレから抜け出した。
改札を潜ったは良いが終電には乗り遅れてしまった人々が、ホーム反対側の改札口の駅員に払い戻しを求めて殺到していた。
千絵たちは駅員がその対応に気を取られている隙を見て、ホームの端から線路へ飛び降りた。
「ここからは歩きますよ。」
美和が言った。千絵の指に、声帯の振動が伝わる。3人は闇の中へ足を踏み入れた。途端に、視界から暗黒以外のものが消える。
「どのくらいかかるの?」
千絵の隣りから佳奈の声が尋ねる。
「わかりません…移動してます。目印を辿って行かないと…」
返事を誤りその場で殺される場合を恐れ、美和の声が僅かに震えた。
「急ご。」
千絵はそう言うと、美和を先頭に立たせ歩き出した。千絵の目は瞬時に暗闇に慣れるが、佳奈はまだよく見えないらしく、咄嗟に千絵の腕に縋りつく。
「大丈夫、手、繋いで行こう。」
千絵はそう言うと、佳奈の小さな手をぎゅっと握り締めた。普通の人間である美和はまだちっとも慣れていなかったが千絵の手に首を掴まれているので離れずに済んだ。
「目印ってどれ?」
千絵が尋ねる。
「…骨です。」
「何の?」
「…地下鉄には、今は使われない線路とか待避用の駅がいくつもあって、ホームレスが住み着いてるんです。」
応えはそれで十分だった。千絵は、いつぞや故郷の橋の下で食い殺したホームレスの砂のような味を思い出して顔を顰めた。
彼女がまだ怪物になったばかりの頃の事だ。佳奈に自分の正体を打ち明けたあの夜。あれから半年も経っていないと言うのに、随分と懐かしく感じた。
10分足らずで、先回美和が訪れた時に踏み入った待避駅に繋がる線路の分かれ目に出た。美和は、壁に据えられた蛍光灯の僅かな光を頼りに、薄暗い線路を注意深く見渡す。
「あった。」
やがてそう言うと美和は、先日行ったのとは別の、もっと先へ伸びている線路の方を指差した。
なるほど気をつけていないと砂利と同じに見えるが、確かに人骨と思しき破片が線路の隅に転がっていた。
「やっぱり移動してます。どのくらい先に居るか…」
「行って見ないと分からない、ってこと?」
千絵が言うと、美和は「はい」と小さく頷く。その時、トンネルの真ん中に並ぶ柱の向こうを電車が轟音を上げて過ぎ去って行った。
地下鉄の乗客は滅多に窓の外など見ないが、もしその時たまたま延々と続くガラスの向こうの暗闇に目を遣っている者が居たなら、線路の真ん中で立ち尽くす3人の少女
(正確には1人は少年で、残りの2人も人間では無いが)を発見した事だろう。
だがそれでも、その人物は仕事帰りに飲んだ酒か、自分の目の錯覚のせいにしてやり過ごすだろう。この街では誰もがそうして生きているように。

433:腐肉(P.N.)
10/02/17 20:44:46 scEF7fpH
電車が過ぎ去ると、千絵は車輪とレールが擦れる轟音の残響が残るトンネルの奥を見つめた。配線がむき出しになった裸の蛍光灯だけの粗末な照明が、埃っぽい壁面に沿って、
まるでヴァージンロードを縁取る白い薔薇の花のように並んでいる。トンネルは少し先でカーブして先が見えなくなっているが、奥から吹き付ける生ぬるい風と、
その空気の流れが歌う混声合唱のような音が、その闇の底知れなさを物語っていた。3人は骨の欠片を辿って歩いた。
電車に乗っている時は分からないが、地下鉄の線路は思ったよりもくねくねと曲がりくねり、1時間もすると自分たちが今どの辺りの地下を歩いているのかさえ分からなくなった。
途中、電車が終わり一日の仕事を終えもぬけの殻になった駅のホームをいくつか通過した。しまった後も地下鉄のホームには常に明かりが点いているし、
清掃員や見回りの駅員がまだうろついている可能性があるので、駅を通過するときは3人は身を屈め、ホーム下の待避スペースを通った。
「その電線に触れないように。感電します。」
美和が注意を促した。
また、線路の途中に駅がすっぽり納まるくらいの異様に広い空間が突如現れる事もあった。待避用の空間なのか、それとも駅が作られる予定だった場所かも知れない。
東京の地下には、普段人間たちの目に触れない未知の世界があった。
打ち捨てられた誇りっぽく汚れた空間、忘れ去られ錆び付いた存在、それはまるでこの街のほころびのようだった。そんなものが地下に巡らされている。
“あいつ”の墓場には打って付けの場所だな、と千絵は思った。歩き続けてかれこれ2時間近くが経過した。ただでさえ体力の衰えている美和は足を引きずり始め、
佳奈も埃っぽく重圧的な地下の空気に当てられ気分が悪くなってきていた。だが千絵は、その足で鉄のレールを踏みしめれば踏みしめるほど、
その先に待つ最大最強にして極上の“獲物”の事で頭がいっぱいになっていた。
守るべきものがある彼女にとって、それがどれだけ危険な事か、この時はまだ彼女は気付いていなかった。そしてその時、親友が彼女の想いの裏で、別の考えを巡らせている事も。

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3人が地下に潜ると、追尾していた伊豆波以下7人の捜査官たちは途方に暮れた。
彼女らが地下鉄の線路を辿って“C”を探そうとしているのだとしたら厄介だ。真っ暗なトンネル内で尾行など出来る筈が無い。
「少年に埋め込んだ発信機はせいぜい1kmが圏内だ。もたもたしていると見失うぞ。」
伊豆波は苛立ちを隠そうとせずに言った。
「だからと言って地上から追っても何の意味も無い。増援を要請するべきだ。」
別の捜査官が言う。伊豆波は焦っていた。あれからずっと彼の脳裏に、椅子に縛り付けられた少年の姿が焼きついてはなれない。
発信機は、地上と地下に隔てられれば通信できなくなる可能性がある。一刻も早く決断せねば。
「一人残って村雨に連絡して増援を要請。奴らは間違いなく、線路を辿る。半分は地上から、残りはぎりぎりの距離を保って地下を追尾する。
地上部隊は増援隊と合流したら、一つ先の駅から地下へ入れ。」
「もしそれまでに“D”が“C”と遭遇した場合は?」
「まず、それまでに何かあったら、地下部隊だけで何とかするしかない。」
「それがどうした、今にもシグナルが消えようとしているんだぞ!早く追わねば、あの少年まで犠牲にする事になるんだ!」
伊豆波は声を張り上げた。何としても、少年だけは助けねばならない。理性で考えれば、彼が少年に発信機を飲み込ませた時点で、あの少年は捨て駒だった。
人類を怪物から守るための尊い犠牲となっても、仕方ない。そう思っていた。だがここへ来て伊豆波は、あの日村雨のオフィスで捨て切れていなかった枷を思い出したのだ。
良心という名の。彼自身の、一児の父親としての感情を。彼の心はその枷と人類の未来との間で揺れ動いていた。
どうちらも同時に守ってみせる、などと、簡単に言える状況で無い事だけが唯一確かなことだった。


[続]

434:名無しさん@ピンキー
10/02/17 22:09:50 AiNurZen
いよいよか・・・

435:名無しさん@ピンキー
10/02/18 07:42:15 ycBOjajg
フェラ餌付けエロス!

436:腐肉(P.N.)
10/02/18 20:37:34 YmYRBNWd
監視班からの連絡を受けた村雨はすぐに対策本部職員及び警視庁に非常事態宣言を発令した。何としても、この夜のうちにけりを付けるつもりだった。
伊豆波ら5名が地下鉄へ入って15分後、警視庁からの増援が到着した。地上班2名は渋谷付近で合流し、渋谷駅から地下鉄へ侵入した。
渋谷駅では2つの路線が終わる。そこから入れば、先回り出来る筈であった。
警視庁からの応援は、通常装備の機動隊の他に、地下での捜索のための探知機なども含まれた。
電波の届かない地下で最も有効なのは、動く物体を捕らえるソナーである。彼らはそれを頼りに、怪物たちを探した。
探知機を付けた少年を追跡中の伊豆波班からの連絡は、地上の班を経由して彼らにも伝えられた。だが土壇場で伊豆波が立てたプランには唯一誤算があった。
それは地上班からは伊豆波班の位置が分からない事である。渋谷駅から侵入した機動隊は、最新設備を有しており、常にその位置は上空のヘリから追跡されるが、
数時間前まで“オブジェクトD,E”監視任務に当たっていた伊豆波ら5名は、八手康久が行方不明になって以降義務付けられた無線発信機を身に付けていたが、
地下からは電波が届かない上、探知範囲は1kmだった。どこかで一つ間違えば、計画は破綻する。ビルの上を渡した綱を歩いて渡るような、危ない作戦である。
渋谷上空を飛ぶヘリの中で、村雨は舌打ちした。この任に就いて以来、初めて不安を感じた。
若い伊豆波捜査官が彼の助言を無視し感情に走ったせいであるのは分かっていたが、もうどうしようもなかった。賽は投げられてしまった。
そうかと言って、後は神のみぞ知る、などと何もせず暢気に構えている気は無かった。
「渋谷駅周辺を閉鎖。一般人と車両の立ち入りを禁じてください。」
村雨は眼下に広がる霞んだ街の明かりを見下ろしながら無線で指示を出した。それから身を乗り出し、パイロットに尋ねる。
「そこの交差点に着陸できますか?」
パイロットは足元まで広がっている曲面ガラスの窓からちらりと下を見遣り、頷く。村雨はその応えに満足したが、顔色一つ変えずに言う。
「では降りてください。」
この戦いが終わるまで、彼はその表情を変えるつもりは無かった。何が起ころうと。


437:腐肉(P.N.)
10/02/18 20:38:42 YmYRBNWd
「しっ!」
暗闇の中で突然千絵は足を止め、唇に人差指を当てて言った。
そんな事をしても誰にも佳奈と美和には見えない事は分かっていたが、背後から人の声が聞こえた気がしたのだ。
「…何?」
しばらく待っても千絵が何も言わないので佳奈が尋ねる。
自分たちの歩いてきたトンネルの向こうから風と共に吹き抜けてくる音に耳を澄ませながら、千絵は呟く。
「人間…複数。来る。」
佳奈と美和の動揺が、淀んだ空気越しに千絵にも伝わった。足元のレールに微かに感じる振動から、どうやら鉄道の上を歩いているようだと分かった。
千絵には、夜中に地下鉄の線路を歩く人間が、彼女らの追っ手以外に居るとは考えられなかった。だとすれば、取るべき対処は一つであると、千絵はすぐに決断した。
「2人で歩ける?」
千絵は彼女の手をぎゅっと握り締めている親友に小声で尋ねた。
「うん…ちょっとは目が慣れたから…」
佳奈はそう応えたが、その目は不安げだ。だが千絵には、佳奈が心配しているのは自分の事ではなく、千絵の事であると分かっていた。
それは千絵が一人で追っ手に立ち向かおうとしているという事だった。
「もし…銃を持ってたら…?」
佳奈が言った。握った手に更に力が籠もる。千絵は安心させようともう片方の手でその小さな手を包み込むと、微笑んだ。
「喰い千切ってやるよ。」
それから、そっと親友の手を離した。佳奈の指は縋るように千絵の手の平を撫でたが、彼女の手に包まれると自然と力が抜けてしまった。
それから急に、佳奈の手を包むのは冷たい張り詰めた空気だけになった。千絵は佳奈と美和を残し元来た道を数歩戻ったところで振り返って言った。
「先、行ってて。すぐに追い付く。大丈夫、私、強いから。」
そして目にも留まらぬ速さで、その場から消えた。
佳奈は親友の消えた暗闇を見つめ耳を済ませたが、遠くの方で砂利の転がるような音が微かに聞こえたきり、何も聞こえなくなった。
千絵の察知した“追っ手”がどのくらい離れたところに居るのかすら分からない。
佳奈は溜息を吐くと進行方向に向き直り、彼女を待ち受ける、地の底へ続くぽっかりと開いた真っ暗な口とのようなトンネルと対峙した。


[続]

438:名無しさん@ピンキー
10/02/20 01:41:43 CbFh/43D
展開にワクテカ

439:INHUMAN
10/02/20 17:17:03 Wan8Bflt
ちょっと、あんたたち!!
こんなスレッドを立てて非人間的だと思わないの!?
そのうち削除依頼を出して、
消してもらうつもりだから、
覚悟してなさいよね!!

さあ、潰れるざます!
逝くでがんす!
フンガ~!!
まともに潰れなさいよ~!!


440:腐肉(P.N.)
10/02/20 17:30:05 XhDKocBx
伊豆波辰朗は5人の捜査官らと共に線路に沿って地下のトンネルを進んでいた。
所々蛍光灯の照明が設置されているものの、奥は肉眼では殆ど暗闇であるため、懐中電灯を装備していた。
先頭を行く伊豆波が手にした、モニタの付いた手鏡のような探知機は、劣悪な電波環境の中時折周防美和の発信するビーコンを受信し、
画面上に点滅する光点として表示していた。
当然尾行を悟られるのを恐れた彼らは、目標が電波圏外になるぎりぎりの距離を保っていた。
だがそれらの光は、怪物の目に彼らの居場所を知らせるには十分過ぎた。
かつてとある地方高校の陸上部のエースだったその少女が、人体を可能な限り速く前へと押し出す美しいフォームで走る音が、
あるいはその脚力でコンクリートの地面が砕ける音が彼らの耳に届く前に、怪物は彼らの内の一人を血祭りに上げた。
全力疾走していた千絵は勢い余って伊豆波の真横を通り過ぎ、しんがりを努めていた捜査官にもろに跳び蹴りを食らわせた。
地下鉄のトンネルの天上ぎりぎりまで飛び上がった少女の脚が、弾丸のような速さで哀れな警官の身体を粉砕した。
まず足の当たった腹の部分が拉げ、体内で臓器が破裂した。次の瞬間には受け止め切れなかった衝撃が全身に拡散し、肉が文字通り、弾けた。
脆い皮膚を突き破り、筋肉と分離した骨格が身体から弾き出され、がしゃんと音を立てて線路を打った。
その音で初めて、残りの4名は異変に気付いた。
それが何の音か仲間たちが把握するより先に、千絵は第二の口を大きく開くとしんがりの肉を触手で絡め取って胃袋に収めた。
呆然と見つめる4人の警官の頭から血糊が降り注いだ。彼らの手にしたライトが、返り血で赤くなった光で怪物の姿を照らし出した。
服を脱ぐ時間が無かったため、千絵のお気に入りのパーカーは前が破れた状態で彼女の肩から垂れ下がっている。
真っ白な肌を血が赤く染めていた。
「邪魔するな。」
怪物が口を開いた。18歳の少女の声だが、それは4人の内彼女を初めて目にする3人の闘志を砕くのに十分な凄みを帯びていた。
2人はその場にへたり込み、もう1人は線路の上をふらふらと後ずさった。伊豆波だけが微動だにせず、まっすぐ千絵を見つめていた。
彼は瞬時に、自分の愚かさと、そのせいで作戦が失敗した事を悟った。
それから、彼はこの惨めな闇の中で、誰にも見取られずに死ぬのだという事も。
千絵は跳び上がると、腰を抜かして埃っぽい地べたに尻餅を付いた状態で倒れている一番手前の捜査官の胸に着地した。
肋骨が音を立てて砕けたかと思うと、千絵は再び飛び上がる。
地面に打ちつけられた弾みで浮き上がった彼の身体を、触手が素早く締め付け、あっと言う間に腹の中へと引きずり込んだ。

441:腐肉(P.N.)
10/02/20 17:30:47 XhDKocBx
すらりと締まった筋肉質な脚が、もう一人の捜査官を横殴りに蹴り上げる。埃を巻き上げながら宙を舞う彼の身体に、待ち受けていた第二の口が齧り付く。
捜査官の身体に深々と無数の牙が突き刺さり、そのすぐ後ろに立っていた伊豆波に血しぶきがかかる。
伊豆波が最後に見たのは、仲間の身体を半分咥えたまま彼に迫ってくる巨大な口だった。最後に彼の脳を過ぎったのは、自分の愚かさに対する後悔や無念や、
まして悲しみでも怒りでもなく、息子と一緒に見たアニメ映画に登場した巨大な肉食恐竜の姿だった。
千絵の下顎が蜘蛛の口のようにぱっくりと縦に2つに割れ、彼の顔面に横から齧り付いたかと思うと、ゴリンと音を立てて彼の頭部を半分、骨ごと喰いちぎった。
齧られた林檎のように凸凹と汚い断面を見せ、伊豆波の頭はこてんと後ろに仰け反り、小さな噴水のように血を吹き出した。
伊豆波の残りの部分が宙に浮かんで消えてしまうと、彼が手に持っていた探知機はレールの上に落ちてガチャンと音を立て、画面から一切の光が消え去った。
襲撃から仲間が皆殺しにされるまでの僅か10数秒ほどの間に、逃げ出した1人の警官は無線機で地上班と連絡を取ろうとしていた。
「…こ…こちら監視班溝口、“オブジェクト”と遭遇、襲撃を受けた…!」
だが地上班は既に渋谷駅から地下へ潜っており、無線機の向こうからはザーッという乾いたノイズしか聞こえなかった。その時何かが彼の身体に巻き付いた。
「ひぁあっ…!!!」
溝口という名のその男は悲鳴を上げた。見ると腹の辺りを巨大な蛸の脚のような、毒々しいピンク色の触手が締め付けている。
彼の身体は乱暴に捻られ後ろを向かされた。彼は怪物と対面する。
「誰に電話かな?」
千絵が言った。喋りながらも、腹の亀裂からは垂直に流れ出るように更にたくさんの触手が彼の身体めがけて延びて来る。
溝口は手足や首も触手に捕らわれ、地面から持ち上げられた。
エナメル革の靴先が地面から離れると腹の触手が一層強く彼を締め付け、夕食のホットドッグを戻しそうになる。
「まだ他にも居るのかな?」
千絵は触手を少しずつ腹の中に引き戻して溝口を手繰り寄せながら訪ねた。
溝口は触手に首を絞められているのとパニック状態に陥っている事から、口をぱくぱくさせるだけで声が出せない。
やがて少女の顔が目の前までやって来た時、その可愛らしい大きな瞳に世にも恐ろしい残酷な光が宿った。少女は小さな声で囁いた。
「喋らないと、喰い殺すぞ?」
その囁きはトンネル中に木霊し、近くで聞く太鼓の音のように、血管や筋肉、内臓に至るまで彼の全身を内側から震わせた。
彼女は俺を喰おうとしている。俺の命など何とも思っていないどころか、こいつは人間という存在自体をただの餌としか見ていないのだと理解した。
恐怖や畏怖などと言った言葉では言い表せない、これまで感じたことの無い感覚が彼の全身を麻痺させる。
「うあぁあああああああ!!!!!あああああああああ!!!!!」
それが彼の答えだった。
その情けない叫びで、彼の30余年間の人生は幕を降ろした。千絵は触手を使って溝口の身体を頭上に掲げ持つと、力いっぱい捻ってその脆い肉を絞り上げた。
あっと言う間に次々と骨が砕け内臓が破裂する。
悲鳴がごぼごぼという液体から泡の吹き出る音へと変わり、口からだらりと血反吐が流れ出たかと思うと、絞った雑巾のように全身から身体中の血液が流れ出た。
その血を頭から浴びた千絵が口を開けて天を仰ぐと、土砂降りの雨のような血飛沫が舌を伝って喉を潤した。
砕けた骨と擦り切れた皮だけになった溝口の残骸を線路の脇に打ち捨てると、千絵は元来た道を急いで逆戻りし始めた。
予想外の食事で容積が増えたために来た時ほどのスピードは出ないが、すぐに佳奈たちに追いつける筈だと思っていた。
後になって千絵は、あの時佳奈と美和を2人で残した事が最大の過ちであったと気付くのだが、その時にはもう全てが手遅れになっていた。


[続]

442:名無しさん@ピンキー
10/02/20 18:04:15 8jFw97Jx
GJ。
はじめは軽く捕食もののSS読んでるような軽い気持ちだったんだけど、
もう今ととなっちゃぁ、このストーリーの次がみたくてみたくてしょうがない。
腐肉さん天才だ。

443:名無しさん@ピンキー
10/02/20 19:32:10 joTovp2h
捕食描写も容赦ねぇww
ホントよくこんないろんなシチュ思い付くな
GJ

444:名無しさん@ピンキー
10/02/21 02:20:02 TJt2COZz
なんというタルカス

445:名無しさん@ピンキー
10/02/21 02:48:03 MsiHOf0g
こりゃゴリラも敵わんわな

446:INHUMAN
10/02/21 15:47:32 5gsrOuz3
>>439の修正

ちょっと、あんたたち!!
こんなスレッドを立てて非人間的だと思わないの!?
削除依頼を出して消してもらうかどうか、
分からないけど覚悟してなさいよね!!

さあ、潰れるざます!
逝くでがんす!
フンガ~!!
まともに潰れなさいよ~!!


447:名無しさん@ピンキー
10/02/21 18:40:59 K3IQ+dA/
>>446
何か萌える

448:腐肉(P.N.)
10/02/21 19:40:09 nKHc0mhU
「おねえちゃんっ…痛っ…痛いよ…」
美和は耐えかねて声を上げた。佳奈は彼の腕を掴んだまま引き摺る様にトンネルを先へ進む。
彼の肩の関節が不穏な軋みを上げ、不快な振動が身体に伝わる。
様子がおかしい、と美和は思った。千絵のいないこの状況下で、合流する前に先に美里に遭遇したらどうするつもりなのだろうか。
その時、佳奈が彼の腕をぐいっと一際強く引っ張ったかと思うと、そのまま彼の身体を持ち上げ横抱きに抱え、急に駆け出した。
「ちょっ…おねえちゃん…!」
美和は怖くなって悲鳴を上げた。自分の身体を軽々と抱きかかえる佳奈の顔を見上げると、そのこに不気味な笑みが浮かんでいる。
叫んでも暴れても少年には目もくれず、その目は真直ぐに前を、2人を飲み込もうと待ち受けるトンネルの暗闇を見据えていた。
出来るだけ早く、千絵から遠ざかるんだ。
それが佳奈の思惑だった。千絵よりも先に、周防美里を見つけるために。怪物を見つけ、捕らえる。
親友がその怪物を食べてしまう前に、佳奈はあの怪物が必要だった。
佳奈は、千絵と同じになりたかった。千絵に生殖能力が無いのであれば、別の女と交わっても彼女は構わなかった。
全ては千絵と並んで歩くために。
身も心も、千絵と同じ生き物になる事を佳奈はまだ諦めていなかった。周防美里には、彼女の願いを叶える能力がある。
彼女の中に、ヒトとしての死、怪物としての新たな命を産み落とす能力がある。
千絵が食べてしまう前に、佳奈は周防美里から産卵を受けるつもりだった。千絵の居ない今、美和が彼女の手中にある今がチャンスだ。
千絵がすぐには追いつけない距離まで離れて、美和を殺す。
彼女ら怪物は、鋭い嗅覚を持っている。自分のテリトリー内で最愛の弟が殺されれば、周防美里はすぐに気付くはずだ。
後は向こうから、佳奈の元に出向いてくれる。尤も、千絵が先に佳奈を見つけてしまった場合、計画は頓挫する。
千絵が先か、怪物が先か、それだけは神のみぞ知る、といった所だ。佳奈は胸の高鳴りを感じた。
怪物たちにも神々が居るのだとしたら、彼女はその小さな胸の中でその神に祈っていた。

------------------------------------------------------------------------------

同じ頃、渋谷駅から侵入した機動隊も何やら異変を感じ取った。
村雨管理官本人の率いる別動隊が新たに渋谷駅周辺に集結しているという連絡を受けた直後だった。
最初に異変に気付いたのは、ソナーを持っていた1人の警官だった。
潜水艦の探知にも使用される海自開発のシステムを応用した携帯型探知機で、伊豆波が持っていたものよりも数段に精度が高い。
その薄暗い画面に、一つの光点が現れた。
「前方より未確認物体、接近中。」
警官が言った。途端に場の空気が凍りつく。先陣を切っていた、元“オブジェクトD”監視班だった2人の内1人が尋ねた。
「ヒトか?」
「…いえ、もっと巨大です。」
「電車じゃないのか?」
「深夜3時だ。それに東京地下鉄には今夜一切の回送電車は運行を休止させた。」
「村雨隊か…?」
隊員たちはひそひそとあれこれ推論を言い合いながら、前方のトンネルに目を凝らした。
だが、伊豆波隊と違い彼らは懐中電灯ではなく暗視ゴーグルを装着していた。
光源のために敵から察知される恐れは減るものの、視界は酷く狭かった。
彼らにはまだ何も見えていない。代わりに、ゴーッと言う轟が聞こえてきた。
電車の音のようだが、明らかに違う。線路を滑る車輪のような一定のリズムではなく、もっと不規則な、どちらかと言うと足音に近い。

449:腐肉(P.N.)
10/02/21 19:41:05 nKHc0mhU
巨大なものがトンネル内を、天上や壁を擦りながら4つ脚で移動しているような音。次の瞬間、唐突に“それ”は彼らの前に姿を現した。
第一印象は巨大な裸体。実際にその通りだった。それはトンネルの幅一杯に四つん這いになった巨大な少女だった。
自動車程の大きさの腕に支えられた胴体には、銅鐸のような乳房が二つぶら下がっている。その上に子牛ほどの大きさの顔が乗っていた。
まだあどけなさの残る少女の顔だが、引ん剥いた眼球を血走らせ、牙をむき出した口からはだらだらと唾液を垂らし、機動隊員たちを見下ろしている。
これが周防美里の成れの果てだった。2ヶ月間東京の地下に蔓延る、地上の世界から忘れ去られた生命を食い尽くした結果である。
巨人は吠えた。その叫びは轟となってコンクリートに囲まれた地下世界を震わせ、突風となって探索者たちを襲った。
そして逃げる間もなく彼らは巨大な手に捕らえられた。軽自動車くらいなら軽々握り潰せそうなその手は一度に7人の人間を掴み取り、巨人の口へと放り込んだ。
少女の口がばくんと閉じ、頬がもぐもぐと動いて中から無数の骨が砕ける音、ぐちゃぐちゃと肉の磨り潰される音が聞こえたかと思うと、巨大な少女はそれをごくんと飲み下した。
生き残った6人の警官たちは、暗視ゴーグル越しに緑色にぼやける視界を頼りに、トンネルを引き返し一目散に逃げ始めた。
彼らの何十倍もの大きさを誇るその少女は、一足先に踏み出すだけで瞬く間に歩幅をつめる。
その内の1人は少女に追いつかれたものの、あまりのサイズの違いに存在自体を気付かれずに、その巨大な手の平で押し潰されて死んだ。
少女の口からカメレオンの舌のような長い触手がビュルリと飛び出した。
ただしそれはドラム缶ほどの直径のある、全長10数メートルに及ぶ舌で、生き残りの5名全員が一瞬でその餌食となった。
粘着質の液体に覆われたその巨大な舌は5人の人間を絡め取り、彼らが、自分の足が地面を離れたと認識する前に、物凄い速さで少女の口の中へ彼らもろとも引き込んだ。
巨人は「ごきゅん」と音を立てて5人をいっぺんに丸呑みにすると、轟くようなゲップを放った。
それからいつの間にか手にへばりついていた潰れた人間の死体をべろりと一舐めで舐め取ると、それも呑み込んだ。
僅か1分の間に13人の人間を飲み込んでも、巨人の腹は一向に膨れない。ここ数日、彼女はろくに食べていなかった。
めぼしい餌場、即ちホームレスの溜り場となっていた廃駅などは最初の一月のうちに漁りつくしてしまい、
最近はたまにふらりと迷い込んだ鉄道管理局の人間などにありつけるばかりだった。だが身体はどんどん大きくなり、そろそろトンネル内を移動するのも限界に近い。
その時、彼女は遠くの方から懐かしい臭いを感知した。この世で唯一、彼女にとって餌以外の意味を持つ人間、弟の臭い。
弟が会いに来てくれた。美里は嬉しかった。こんな姿になっても、弟だけは彼女を見捨てないで居てくれる。
8月のあの日、彼女の姿を見るなり悲鳴を上げた良心とは違い、弟だけはずっと彼女を愛してくれる。彼に会いに行こう。
弟なら、彼女がこの地獄のような地下迷宮から抜け出せる方法を思いつくかも知れない。美里は喜びと期待を胸に、膝を付いてトンネル内を移動し始めた。
彼女の皮膚は千絵よりも弱く、身体中あちこち壁や天井にぶつけて擦り傷だらけだったが、それでも彼女は気にせず前に進んだ。
弟が居る限り、彼女は何も不安に思ったりする事は無いのだ。痛みを感じる事も、恐怖することも。


[続]

450:名無しさん@ピンキー
10/02/21 20:09:37 FjhzxkY8
案の定異形化進むと理性失って規格外の化け物に成り果てるんですね。
クレイモアの覚醒者や彼岸島の邪鬼みたいだ。
佳奈が死亡フラグ立ちすぎてどうあがいても絶望。


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