◆女性に捕食されるされるスレ◆ 二口目at EROPARO
◆女性に捕食されるされるスレ◆ 二口目 - 暇つぶし2ch50:名無しさん@ピンキー
09/11/16 23:36:37 AgNy0NRD
>>47
佳奈さん!!?

51:名無しさん@ピンキー
09/11/16 23:55:57 XWE1ZdR8
てっきり餌場にでもするかと思ったら、食い溜め出来るっぽいな
俺も千絵の体に呑み込まれたい・・・

52:腐肉(P.N.)
09/11/17 03:02:21 II5jLTFP
柳沢は、誰かがドアを激しく叩く音で目覚めた。自分が眠っていたという事実に気付くと、ソファから飛び起き時計に目をやる。
しまった、バスの時間が…!
再び、ドアがバンバンとやかましい音を立てて小刻みに震えた。患者の誰かだな、と柳沢には検討がついた。
「はいはい、今開けるよ。ドアを破られちゃかなわんから…」
ロックを外した瞬間、柳沢ごとドアを吹き飛ばさん勢いで江古田哲也が飛び込んできた。
「な、何だ!?」
柳沢は倒れそうになりながら江古田の肩を押さえて落ち着かせようとした。
「ばけ…!ばけ…!」
江古田は息を切らせながら必死に口を動かす。まるで瀕死の魚だ。
「どうした?ほら、落ち着いて。今ナースを呼ぶから…」
「みんな死んだあああ!!!!!!」
江古田の舌は突然潤滑さを取り戻し、びっくりするような大声で叫んだ。柳沢は呆気に取られて、この引きつった顔の若者を見つめた。
「は…?」
素直な疑問を表す言葉が思わず口をついて出てしまった。
「みんな、みんな…みんな喰われた…。」
江古田は縋るような目を柳沢に向け、今度は今泣き出しそうなほど小さな声で呟いた。
「落ち着いて、あなたは錯乱している。錯乱の意味は分かるね?」
柳沢は冷静を取り戻し言った。
2,3日ここに居れば鬱は治るかと思っていたが、彼は思ったより重症のようだ。
「錯乱じゃない!見たんだ!」
江古田は怒鳴った。
「怪物がいるの。」
その時、2人の後ろで声がした。驚いた江古田が仰け反るように振り向くと、そこに田口翔子の姿があった。
「江古田さん、見たんでしょ?」
江古田は一瞬柳沢の表情を伺うと、ゆっくりと頷いた。
「あれは神様よ。」
田口翔子はにきび跡の残る顔に薄ら笑みを浮かべた。柳沢は信じられないという面持ちで田口翔子を見つめた。
彼が彼女の担当医になってからというもの、彼女の笑顔は勿論、こんなにはっきりと喋る彼女を見たことが無かった。
「先生、本当なんです、信じてください…!」
江古田が柳沢の襟首を掴んだ。
「あの娘は電波だけど、今言ってるのは本当なんだ。怪物がやって来て、ナースと若林先生を喰った。」
柳沢はしばらく呆然としていたが、ふいに我に返ると江古田の手を振り解き誤記を強めて言った。
「いい加減にしなさい!江古田さん、ナースに連絡して注射を持ってきてもらいますよ。
それから田口さん、あなたはダイナーへ戻って皆さんと食事…。」
「かわいそう先生。分からないのね、私たちが“おしょくじ”なの。」
田口翔子は呟いた。


53:腐肉(P.N.)
09/11/17 03:04:34 II5jLTFP
柳沢は頭に血が上るのを感じた。
この状況は何だ!?
本当なら今頃自宅に帰ってゆっくりと風呂に入れた筈だというのに、錯乱状態の患者が2人、夕食時に私の部屋へ押しかけている。こんな事は初めてだ!
柳沢は田口に返答せず、黙ってデスクの端に置かれた内線の受話器を乱暴に掴んだ。
「どうして…どうして、ああ、どうして聞いてくれない…!」
その間に江古田は頭をかきむしりながら、戸口に立つ田口翔子を押しのけて部屋を出た。
「待って江古田さん、ここにいるんだ!」
柳沢が怒鳴った。そして苛立ち紛れにデスクを指でトントンと叩いた。
「ナースは何をしている。どうして誰も出ない…?」
柳沢は呟いた。
「ああ、神様…!」
江古田は廊下をうろうろしながら呟いた。田口が「そう、神様よ」と相槌を打つ。
「私は帰る!帰らせてもらう!ここから脱出して…」
その瞬間、巨大な桃色の肉の塊が廊下を押し寄せてきて、江古田哲也の身体を押し流した。少なくとも、部屋の中に居た柳沢からはそう見えた。
肉の雪崩は江古田の身体を捕らえると、廊下を逆流して戻って行った。江古田の悲鳴が物凄い速さで遠のき、唐突に消えた。
「な、ななな…!」
柳沢はたった今目の前で起きた現象が何であるのか理解できず、思考を遮断した脳は彼の喉にこんな言葉を発することしか許さなかった。
「かみさま!!!!」
田口翔子が狂ったように叫びながら部屋を飛び出していった。柳沢は我に返りあわてて彼女の後を追う。
「待て、田口!!」
部屋から飛び出すと、柳沢は綺麗に磨かれた廊下で滑って転びそうになった。
顔を上げたとき、彼は田口が駆けて行く向こうに、一人の少女が立っているのが見えた。
腹部、調度胃の辺りが妊婦のように膨れている以外は、モデルのようなスタイルの美しい少女だという事が、遠くからでも分かった。
「かみさま、あたしも連れてって!」
田口翔子は、その美少女に手を延ばす。次の瞬間、美少女の腹が裂け、イソギンチャクの触手のように、異様に長い舌が無数に飛び出してきた。
「田口!!!」
柳沢は立ち上がりきらないうちに廊下を駆けると、大事な患者を護るために、そのか細い腕を掴んだ。
と同時に、悪魔の触手が田口翔子のもう一方の腕に絡みついた。
「あうっ…!」
田口は首を仰け反らせて声を上げる。舌に巻きつかれた方の腕から蒸気が上がる。
「いた… 痛いっ…」
田口は喘いだ。柳沢は懸命に腕を引っ張るが、田口の身体は見る間に残りの触手に包まれて行った。
柳沢が少女の方に目をやると、少女は性的興奮を味わっているかのような恍惚の表情を浮かべ柳沢の目を見つめ返した。
その瞳に宿る悪魔のように残忍な光に、ぞくっと身を震わせた一瞬の隙に、田口翔子の手は彼の手を離れ怪物の方へ引きずられて行った。
舌が緩められると、怪物の体液で無残にも生きながら溶かされた身体が顕わになった。
ばらばらにされた骨格模型の上に、ピンク色のスライムをぶちまけたような姿だった。
千絵の舌がまだ細い息を吐く田口翔子の顔をぺろりと舐めると、一瞬で顔の皮膚が剥がれた。ところどころにきびの跡から膿が垂れる。
田口翔子はその顔をちらりと柳沢の方へ向けると、そのまま千絵の腹の肉壁の中へと消えていった。千絵は背筋を熱いものが駆けるのを感じた。
やっぱり女の子、好き。
千絵は地べたに転がったまま動けなくなった柳沢の前に立つと、彼に向かって第二の口から特大のげっぷを放った。
怪獣の咆哮のような轟音は狭い廊下に反響して一瞬で彼の鼓膜を破壊し、この世のものとは思えぬ悪臭が辺りに充満した。


54:腐肉(P.N.)
09/11/17 03:07:51 II5jLTFP
柳沢の身体はそれを感じる間もなく、溶け出した。胃から込上げたガスに粒子状になって混じった胃液が、スプレーのように高圧で噴射されたためである。
柳沢は悲鳴を上げるが、すぐに喉が溶けて声が出なくなる。
悪臭に刺激されてこみ上げてきた胃の内容物は、口まで達する前に胸や喉に空いた穴から膿のようにどろどろと垂れた。
身を捩ってもがいても、全身に付着した強酸が、清潔な白衣や彼の肉と反応して生じた化学変化はもう止められなかった。
瞬く間に泥状の液体となった柳沢医師の身体は、彼自身の下呂と混ざり合った。
彼の医師としての威厳はおろか、人としての、いや知的生命体としての尊厳は、その肉体と一緒に消し飛び、無様な染みのように床に広がった。
「んー… ちと、やり過ぎたかな…。」
その様子を見た千絵はそう呟くと、廊下の真ん中にちょこんと腰を下ろし、這い蹲るようにしてその液体をぴちゃぴちゃと舐めた。
彼女の胃袋は限界を知らない。彼女を支配する貪欲な食欲は、まだ次の獲物を欲していた。

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その少し前、千絵が桂朱美をバラバラに引き裂いて食い荒らしていた頃、206の病室で一人の男が目を覚ました。
彼の名前は冠木正和。
左手首に包帯を巻かれ、革のベルトでベッドに固定されていた。
また失敗したのか…。今度はうまく逃げ果せると思ったのだが。
計画は完璧だった。間抜け面の看護師は彼の仮病を信じたし、彼はうまく隙をついて脱走した。ガラスも綺麗に割れた。
あの白衣姿の木偶の坊共が慌てふためいてやって来ても遅いんだ。
俺は奴らの消毒臭い手をするりと逃れて、この世からおさらばできる筈だった。
だが目覚めたらまだここに居る。
彼は拘束具を振り解こうと、身体をもぞもぞ動かした。ひどく腹が減っていた。
そう言えば、窓の外はもう真っ暗だ。この世界に復讐しようとした俺なんかには、まずい晩飯も与えられないと言うのか。
その時、彼の残り短い人生を変える瞬間が訪れた。獣の咆哮のような恐ろしい音が、建物の壁を振動させながら階下から上がってきた。
冠木は動くのを止めた。怪物の吠え声はもう止んだが、窓ガラスはまだガタガタと震えていた。
よくよく耳を澄ますと、階下の方から、何か巨大なものが動き回る音が聞こえた。それから、人の叫び声。
それらがしばらく続いた後、再び怪物が吠えた。先ほどより遠いが、より大きく、よりおぞましく。
彼がこの世界から逃れられない内に、世界が崩壊を始めたのだ。
冠木正和は子供の頃、狂った母親が読み聞かせてくれた物語のドラゴンを思い出した。
「ドラゴン…」
彼は呟く。そう、ドラゴンだ。巨大で、恐ろしい姿をした、残忍なモンスター。誰もドラゴンからは逃れられない。
そんな事があってたまるか!
彼は恐怖に震え上がった。
冗談じゃない。彼はこの世界の誰よりも早く、この世界を脱出するのだ。そしてその先には、彼だけの世界が待っている。
ドラゴンなんかに、やられてたまるか!彼の世界を侵されてたまるものか!
その時彼の心の中に奇妙な感情が芽生えた。
ドラゴンを退治してやる。
そう思い立つと、冠木は再び拘束具から逃れようと身体を揺り動かし始めた。すると、包帯の巻かれた左腕のベルトがカタリと外れた。
しめた!看護師が手首を傷つけないよう緩く締めていたのだろう。
彼は傷の痛みも忘れ、自由になったその手で残りのベルトを外しにかかった。


55:腐肉(P.N.)
09/11/17 03:12:28 II5jLTFP
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佳奈は、ノイズの多い画面に映った、たった今3人の人間を死に至らしめた親友が、這い蹲って腰を左右に艶かしげに動かしながら床を舐める姿を見ながら果てた。
息は荒く、動悸がした。膣の周りの筋肉が小刻みに震え、そこから分泌された粘っこい液体が指を滴り落ちた。
経験した事の無い陶酔と、幸福がしばらく続いた。体中の熱が覚めやらぬ内に、突然パネルの脇に引っ掛けられた無線機が擦れた音を発した。
「佳奈、応答せよ。」
佳奈は驚いて椅子から転げ落ちそうになった。
「佳奈?」
無線機が再び、千絵の声で喋った。
「こ、こちら佳奈!き、聞こえてるよ!」
佳奈は慌てて無線機に向かって言った。思いの外自分の声が枯れて、息切れが激しい事に驚き、少し恥ずかしくなった。
「今ね、ナースステーションなんだけど、まだ生き残ってるの、居る?」
見ると、ナースステーションに設置された監視カメラの前で千絵が手を振っていた。当然裸のままだ。
「ちょっと待って…。」
佳奈は床に転がった警備員の死体が着ている制服で指を拭うと、カメラ映像を切り替えるためのダイヤルを回した。
「えと、202に一人、男の人。それから…206。あとは… あ、病棟3階の廊下に何人か固まって居るよ。3人… 4人かな?ごめんね、ここからじゃよく分かんない。」
「それで全部?」
「多分…」
「さんきゅ。一応、ここからは無線は持って行くから。」
そう言うと、無線機はザザっという音と共に静かになった。
佳奈は座り直そうと、回転する椅子の上でしばらくもぞもぞと動いていたが、やがて溜息を吐くと立ち上がり、びちょびちょに濡れた履き心地の悪いパンティを脱ぎ捨てた。


[続]
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56:名無しさん@ピンキー
09/11/17 06:21:24 aE4WknBA
グッジョブ。
相変わらず上手いな。
酸で溶かされていく被害者の様子がCUBEを思い出した。

57:名無しさん@ピンキー
09/11/17 07:44:02 dCCsMpFi
GJ!!
毎回違うバリエーションが出てくるのはすごいと思う

58:名無しさん@ピンキー
09/11/17 14:47:12 LQEm81O4
豪快な捕食シーンで最初気がつかなかったが
江古田さりげなく死亡フラグ建ててたのか

59:名無しさん@ピンキー
09/11/17 20:55:18 Cs4FVg8I
すげぇな
一人一人の人物の描写がちゃんとしてる
続きが楽しみ

60:名無しさん@ピンキー
09/11/17 23:31:05 laD6QXb6
中だるみ無しとかたまんねぇ

61:名無しさん@ピンキー
09/11/19 11:59:44 GsM1EuBC
lov2のロックブーケのカードに
吸収の対象:美女という美女すべてと書いてあった。
吸収ってどういうふうにやるんだろう。

62:名無しさん@ピンキー
09/11/19 14:34:58 GsM1EuBC
補足
多分lov2のゲーム中に吸収できるわけじゃなく
(lov2やったこと無いので詳しく知らないけど)
ロックブーケ属する七英雄はモンスターなどを吸収してパワーアップする
という設定があるのでそれについて詳しく書かれているだけだと思う。

63:名無しさん@ピンキー
09/11/20 22:17:07 iz5ULIiH
ロックブーケは霊とか精霊系のモンスター吸収しているのかと思ってたが人間吸収してたのかw
あのまとわりついてる幽霊は吸収された女の霊か・・・
そういえばスービエはゲームが進んでいくと海の主の娘を吸収してたな
ワグナスも男なのに女のモンスター吸収したのか女の姿になってた
第二形態は顔だけ男に戻ってたけど
ロマサガ2は中々このスレの住人にはおいしいネタが多いな

ヴァルキリープロファイルのJ・D・ウォルスって女魔導師も美しくなるために
大量の人間の命を吸収したらしい
あの設定も好きだった

64:名無しさん@ピンキー
09/11/21 00:46:11 2xx7F91X
そういえば、ロマサガ2のラスボスは
アストラルゲートという、
プレイヤーキャラを巨大な顔みたいな物体の口に吸い込んで
混乱させる技を使う



65:名無しさん@ピンキー
09/11/22 15:25:27 H2gSVpVV
俺は今が食べ頃

66:腐肉(P.N.)
09/11/23 00:31:02 A2we5den
3階廊下の奥、搬入用エレベーターの鉄扉の中で、3人の患者は十分に距離をとって隠れていた。
お互い、近づきたくないのだ。
潔癖症の少女2人は、310号室の患者前島を連れ出すのに一苦労した(この初老の男は「大佐」と呼ばれないと振り向きもしない。)後、
エレベータールームの赤い扉を開けるのにもう一苦労した挙句、電源が落ちているのか、動かないエレベーターを前に絶望を味わっていた。
おまけにエレベータールームの扉は締りが悪く、閉めようとしたら10センチほど隙間を残してびくともしなくなってしまった。
前島大佐は一言も喋らず、禿げ上がった頭を壁に付けぼぅっと床を見つめていた。
とその時、廊下の向こうで何かの音がした。巨大なものが動いている。それが一歩踏み出す度に、廊下に足音が響き渡った。
仁科栄子は悲鳴を上げそうになるのを堪えようと、口に手を当てる。その隙に、彼女の猫が彼女の腕から滑り落ちた。
「ベッキー!」
飼い主の呼び声を無視し、灰色猫のベッキーは扉の隙間から廊下に駆け出していった。仁科栄子は悲鳴を上げる。
「しっ!ちょっと、静かにしてよ!!」
水戸愛莉が声を殺して叫ぶ。次の瞬間、廊下の向こうからギニャン!という猫の悲鳴が聞こえた。仁科は泣き出した。
「静かにしてってば!」
水戸は仁科に駆け寄った。手で口を塞いでしまおうかと考えるが、そんな事は出来なかった。素手で他人に触れるなど。まして口など!
近くへ来たものの、水戸には何も出来ず、仁科は悲鳴を上げ続ける。怪物に見つかるのは時間の問題だった。
足音はどんどん近づいてくる。近づけば近づくほど、音は重量感を増して行く。やがて鉄の扉がぎぎっと軋みを上げたかと思うと、次の瞬間凄い勢いで壁から引き剥がされた。
水戸愛莉も思わず悲鳴を上げる。驚いた事に、それまで、もしかしたら喋れないのではないかとさえ思っていた大佐が一番大きな声で叫んだ。
だがその声は、びちゃっという液体の飛び散る音と共に一瞬で途絶えた。車ほどある巨大な蛸の脚のような巨大な触手が、大佐の身体を持ち上げたのだ。
その衝撃だけで、前島の胸は押しつぶされ、凄まじい量の血が辺りに撒き散らされた。
触手はぬらぬらと光る液体を滴らせながら、大佐の身体をもてあそび、捻り上げた。湯気の立つどす黒い血が絞り出された。
触手の向こうで、怪物がそれを浴びて歓喜に震えるのが分かる。
水戸愛莉はあまりのおぞましさに悲鳴を上げる。やがて固く絞った雑巾のようになった大佐の肉は、ぽいと捨てられ、エレベーターの扉にぶつかってびしゃりと飛び散った。
その肉片と汚物を全身に浴び、水戸はもう声も出なくなった。糸の切れた人形のように、床にへたり込んだ。
触手がするすると怪物の口の中に仕舞われていった。そのピンクの肉塊が消えると、鮮血を浴びた少女が現れた。
これが怪物なのか?彼女と大して年も変わらないではないか。
「にゃん?」
怪物が、その残忍な本性に似つかわしくない子猫のような声で鳴いた。
「これ、君のかにゃ?」
怪物が喋った。水戸愛莉は怪物の視線の先を追って、その時久しぶりに仁科栄子の存在を思い出した。仁科は彼女よりも引きつった顔で、怪物を凝視している。
「毛玉が痞えるから返すにゃ。」
そう言って怪物は、べとべとの塊を2人の前に吐き出した。それはところどころ灰色の毛に覆われたスライムのようなものだった。


67:腐肉(P.N.)
09/11/23 00:31:52 A2we5den
そのヘドロのような汚物が頭と思しき部位をもたげ、苦しげに「ぎにゃあ」と鳴いた。2人の少女は悲鳴を上げた。
「ベッキー!!!!!」
仁科栄子は、顔を涙や鼻水や唾液など、本来彼女が我慢できない筈の液体でぐしゃぐしゃにして、その汚い塊に縋りついた。
次の瞬間、怪物の腹の辺りから再び触手が伸びてきて、仁科に襲い掛かった。
細長い触手は仁科の胴体に巻き付くと、肉の壁のように変形し彼女の身体全体を包み込んだ。中で仁科が悲鳴を上げてもがくのが分かる。
怪物はこくりと首をかしげ、もう一つの触手を水戸愛莉に向ける。
「いや、来ないで!!!」
この期に及んでも、命の心配よりも、その触手に対する嫌悪感の方が勝っていた。彼女は愚かにも、怪物の方へ駆け出していた。千絵の腕が彼女を捉える。
「君の悲鳴、好き。」
怪物はその可愛らしい顔を彼女に向けて言った。
「もっと鳴いて。」
首の辺りをがっしりと手で捕まれ動けなくなった水戸の脚に、怪物の触手が絡みついた。熱く、ぬるぬるとした粘液で彼女の肌を湿らせながら、力強く締め付けてくる。
水戸は泣き叫んだ。怪物はまるでその声に欲情しているかのように身を震わせて言った。
「もっと戦慄け。」
別の触手が彼女の腕を捉えた。振り解こうともがいたら、ゴキンという嫌な音と共に肩の関節を外された。その痛みに、彼女はまた悲鳴を上げる。
「君、可愛いね。顔は最後にしてあげる。」
怪物の口がそう言っている下で、仁科栄子を包み込んだ舌が、彼女の身体ごと怪物の腹に収められて行った。
べとべとの舌で乳房を蹂躙され、水戸愛莉は激しく嘔吐した。すると、怪物少女はその小さな唇を、下呂で汚れた水戸の口に宛がうと、激しい接吻を交わした。
「交わした」というより、「押し付けた」。長く湿った舌を喉の奥まで入れると、執拗に口内をまさぐった。
自分の唾液と怪物の唾液が混ざり合うのを感じ、彼女はまた吐き気を覚えるが、込上げてきた胃の中身は触手に押し戻された。
彼女はパニックに陥り、呼吸が出来なくなった。咳き込もうにも口を塞がれ叶わない。
股間から溢れ出た尿が腿を伝って滴るのを感じる。その間も怪物は可愛い顔で彼女を陵辱し続けた。
ふと、水戸は怪物の口から別の液体が流れ込んでくるのが分かった。
すっぱい…。
そう思った瞬間、激しい痛みと猛烈な熱さが口の中に広がった。彼女はうめき声を上げる。
溶けている!
焼けるような熱さは喉に流れ込むと、食道を焼きながら身体の奥深くへ侵食した。
水戸愛莉の身体は触手に包まれ身動き一つ取れず、怪物の胃液を口移しで流し込まれる容れ物と化した。
自分の顔から煙が立ち上るのが見えた。だが、すぐに視界が白濁して見えなくなる。眼球が沸騰を始めたのだ。
鼻や耳から酸が溢れ出て肌や髪を焼き、顔中の皮膚が泡を立てて弾けた。
「ぷはっ。」
千絵は背徳感に頬を紅潮させ、哀れに溶解した少女から唇を離した。
口からとろりとこぼれる胃液の残りを手の甲で拭うと、少女の肉の残った部分が舌の中で溶け行くのを存分に味わった。
苦痛と嫌悪の中で、水戸愛莉は息絶えた。怪物の舌は彼女の亡骸をくるむと、筋肉にぎゅっと力を込めその骨を押し潰し自らの胃袋に納めた。
千絵は第二の口を閉じると、猫のように、手についた胃酸や水戸愛莉の唾液や嘔吐物をぺろぺろと舐めて綺麗にした。
腹がずしりと重い。手で支えてやらないと床へ擦ってしまいそうだ。


68:腐肉(P.N.)
09/11/23 00:34:41 A2we5den
「千絵、聞こえる?」
無線機が鳴った。
「聞こえるよ、オーバー?」
「ごめんちぃちゃん、ちょっと目を離してる間に206の患者さんが居なくなっちゃった…。」
佳奈が申し訳無さそうな声で言う。
「建物からは出れないはずだから、逃げたとしてもこの中だよ。」
「そか… 今ちょっと、追っかけたりはきついから後回しにする。」
千絵は片手で腹をさすりながら、もう片方の手で持った無線機に言った。
「もう一人いるよね?」
「うん、202。」
無線機から返事が返ってきた。
「じゃあそっちが先にゃ。もし206さん見つけたらマークしといてね。」
千絵はそう言って通信を切った。

------------------------------------------------------------------------------

近くの踊り場の陰から、冠木正和はその様子を伺っていた。見つからないよう必死で息を殺したが、それでも彼は興奮を隠しきれなかった。
どでかい腹を抱えた少女が、裸で廊下を歩いているのだ。
彼女はドラゴンだ。たった今3人の人間を食ったのを、彼は見た。だがあっさりと対峙してしまうにはあまりに惜しい。
長い間忘れていた欲望が、冠木正和の下半身を疼かせた。
彼は身を潜めながら、千絵の整った顔やプロポーション、細いが筋肉のついた腕と脚、
軽自動車ほどの大きさに膨張した真っ白な腹をじっくりと観察し、密かに身を震わせた。
ドラゴンは無線機を使っている。という事は、その先に話している相手がいる筈だ。
冠木の脳裏に、素晴らしい作戦が浮かんだ。
うまくすれば、彼は彼女をものにすることが出来る。
ドラゴンを己が手に入れることが出来るのだ。


[続]

69:名無しさん@ピンキー
09/11/23 01:04:46 40CDo3qp
GJ!!

そして、佳奈がアブナーイ!!

70:名無しさん@ピンキー
09/11/23 01:46:19 iMVmKXf2
GJ!

71:名無しさん@ピンキー
09/11/23 04:21:25 FZrL4ZdH
GJ!
続きが気になるなぁ

72:名無しさん@ピンキー
09/11/23 10:58:06 02iainIl
続き凄い気になる

73:名無しさん@ピンキー
09/11/23 22:04:32 wEE1mwz0
猫の声マネをする千絵に不覚にも萌えた

74:腐肉(P.N.)
09/11/24 01:58:46 1E+D6t1U
202号室の戸を開けた千絵は、少し驚いた。
そこに横たわっていたのは、点滴に繋がれた、千絵よりも幼い少年だった。
千絵の中に、忘れていた感情が再びぼんやりと形をとるのが分かった。
何だっただろう、この想いは…。
3年生になったばかりの頃、受験などはまだ遠い先の事で、千絵は残り僅かとなった部活に学校生活の大半を費やしていた。
そんなある日、部活の後のグラウンドで声をかけられた。千絵は汗をかいていて、恥ずかしかった。
ひどい顔になってないかな、とか、汗臭くないかな、とかそんな事ばかり考えて、顔から火が噴出す思いだった。
だが彼はそんな私に好きだと言ってくれた。あんまり喋ったことも無いのに、私に興味を持ってくれた。
それが嬉しかった。私も彼に興味を持った。彼の感じることを全て一緒に感じたいと思った。
…何だっただろう、彼の名前…。
初めてのデートや、手をつないだ時、キスをした時の事は覚えていないが、あの日の事は覚えている。
彼が死んだ日の事。彼の身体の温もりを、初めて全身で感じたあの日、私が…。
千絵は、つっと涙が頬を伝うのを感じた。
どうしよう… 私、処女だったんだ。
あの日、彼とホテルへ行った。私は緊張していた。ちょっぴり怖くもあった。でも嬉しかった。それが、何もしないうちに、人生最悪の悪夢になった。
私は処女だった。怪物になるまでは。
この身体になってから、何人かの男と、彼らを喰う前の前戯として徒に交わった。
もちろん彼女はもう人間のペニスに対しては何も感じないし、妊娠したりもしない。だが大切にしていたものを、気付かずに失くしてしまったのだ。
千絵は泣いた。名前も顔も思い出せない彼の事を想って泣いた。
今になって後悔しても遅いのだ。運命は、どうしてこんなにも残酷なのだろうか。彼女は、この世で最強の生き物なんかではない。
一匹の、ただの哀れなけものだった。
千絵は涙で濡れた手で、少年の身体に触れた。その時千絵ははっとした。少年の身体は氷のように冷たかったのだ。
見ると、点滴は空になり、濃いワインのような色の血がチューブを逆流して点滴袋に溜まっていた。どのくらいこのまま放置されていたのだろう。
どうしてもっと早く気付かなかった!
「うそ…。」
千絵は慌てて少年の首筋に手を当てた。
脈が無い。本来なら手首に当たる筈の、生暖かい吐息も無い。少年の身体は千絵の冷たい手よりも、さらに冷たかった。
いつからこの状態なのだろう?ナースは来なかった。当たり前のことだ、彼女が食べてしまったのだから。
遠くの方で、雷鳴が低くうなりを上げ、窓の外では風が吹き始めていた。
千絵は、少年の口に自らの口を宛がい、息を吹き込んだ。
たくさんの命を奪ってきたその口で、少年に再び命が吹き込まれる事を願って。そんな事は無駄で、もう遅いと分かっていながら。
息を吹き込めば、あばらの浮き出た少年の薄い胸が上下するが、それでも、彼の命は返って来なかった。
千絵は床にへたり込んだ。涙はもう流れてこなかった。
こんな時だけ、獣の冷静さを取り戻して簡単に死を受容してしまう。ならいっそ、感情なんて消えてしまえ。
千絵は少年の、異様に軽いその身体を抱き上げた。
千絵には彼がどうして死んだのか分からない。点滴が空になったからと言って、多少の空気が血液に混入したくらいで人は死なない事を彼女は知っていた。
ただ、彼は死んだのだ。彼女にとってはそれだけだった。
彼がどんな人物だったか、どこで生まれ、どんな人に育てられ、どんなものが好きでどんな友人がいたか、もう彼女には、そんな事を想像する能力が無かった。
それなのに、なぜこんなに気分が悪くなるのだろう。他に何十人もの人間を、喰うだけでは飽き足らず嬲り辱めて殺してきたと言うのに。


75:腐肉(P.N.)
09/11/24 02:03:00 1E+D6t1U
千絵は少年の顔を、自分の柔らかく獰猛な胸に押し当てた。
するりと口が開き、まるで母親が赤子を乳母車へ戻すように優しくそっと、彼の死体は千絵の中に包み込まれた。
いつの間にか、食欲はどこかへ失せていた。だが彼女は、少年をこのまま冷たい場所に置いて行きたくなかったのだ。
「かな…。」
千絵はかすれた声で、無線機に向かって言った。この部屋での出来事も、見られたのだろうか。千絵は少し恥ずかしくなった。
だが、返事は無い。
「…佳奈?」
無線機は無言で、千絵を冷たく見つめ返すばかりだ。千絵の中の獣が、悪い予感を告げていた。佳奈の身に何かあったのだ。
千絵の胸の奥の人の心が、きゅっと縮み上がった。

--------------------------------------------------------------------------

警備センターに近づくにつれて、千絵は次第に鼓動が早まっていくのを感じた。久々の感覚だった。
「佳奈。」
千絵はまだ胃袋が重く垂れ下がっているにも関わらず、国体選手並みの速さで病棟を駆け抜けた。
彼女の重みで、床のリノリウムにひびが走り、微かな破片が舞った。
千絵は半ば蹴り飛ばすように警備センターの扉を開けると、勢い余って中へ転がり込んだ。
千絵を出迎えたのは、ざらざらした光を放つ無数のモニターと、床に転がった警備員の死体だけだった。
「佳奈…。」
千絵はモニターに駆け寄ると、画面の隅々に目を凝らした。アングル切り替えのダイヤルを回しながら、どこかに消えた親友の姿が無いか必死に探した。
階段の映像に切り替わった一瞬、彼女の獣の動体視力はある異変を捉えた。
襲撃の前にこの部屋から施設中の出入り口を完全にロックした筈なのに、屋上へと通じる扉が半開きになっていた。
佳奈は何をしに屋上へ行ったのだ?
佳奈に限って、千絵に黙って作戦を危険に晒しかねない行為に及ぶとは思えない。
ふと、行方不明になっている206号室の患者の存在が脳裏を過ぎる。そう言えば、たった今施設中の監視カメラをチェックしたのにどこにも映らなかった。
カメラに写らない場所に隠れているのか、あるいは… 佳奈と一緒にいるのか?
千絵は胸騒ぎを覚えた。無意識に拳に力が籠もる。
彼女は苛立ち紛れに壁一面に並んだブラウン管テレビの画面に向かってその拳を突き出した。モニターガラスが砕け散り、小さく爆発しながら火花を散らした。
「殺す…。」
千絵は呟くと、壁の穴から拳を引き抜き、屋上へ向かうために警備センターを後にした。


[続]
--------------------------------------------------------------------------
いつも感想や励ましの言葉を書いてくださってありがとうございます。とても嬉しいです。

76:名無しさん@ピンキー
09/11/24 23:41:03 TFWl2mCK
>>腐肉さん
アナタ(作品も)がチュキダカラー!!

クライマックスの予感・・・ゴクリ

77:腐肉(P.N.)
09/11/25 00:39:35 5FRvZfTN
吹き付ける風が、屋上へ続く扉をゆらゆらと揺らし、時々バタンと音を立てて枠に叩きつけていた。
ひたひたと階段に足音を響かせながら、千絵は冷たい素足でその扉に近づいた。扉を開けた瞬間、雷光が迸りコンクリートの屋上に彼女の影を大きく落とした。
そこには、脅えきった目の親友と、彼女の首に注射器を突きつける男の姿があった。
痩せた男は拘束具のような服に身を包み、血走った目で千絵を睨むと、汚い歯を見せにやりと笑った。
「千絵…!」
佳奈が少し安心したような声を漏らす。千絵は佳奈を優しく見つめなだめるように言う。
「大丈夫だよ、佳奈。もう大丈夫だから…」
「こっち見ろぉ!!!」
突然男が叫んだ。佳奈は男に首を掴まれ短い悲鳴を上げる。
「俺を見くびるなよ、ドラゴン。」
ドラゴンって何だ? …あ、私の事か。
「この女放して欲しかったら言うとおりにするんだ。」
千絵は黙って男を睨みつけた。それをイエスと受け取った冠木正和は、勝利を確信した。
場所を広いところに選んだのは正解だったようだ。狭い廊下と違ってここではドラゴンが「舌」を出して来ても、こっちにはかわす余裕がある。
さて、どうしてやろうか?
「そこにうつ伏せになれ。」
冠木は千絵に指示した。千絵は黙って冷たいコンクリートの上に腹ばいになった。押し付けられた乳房にざらざらした感触が広がる。
その姿を見ただけで、冠木は自分の体が疼くのを感じた。這い蹲って彼を見上げる千絵の攻撃的な目が、彼を勃起させた。これで全て彼の思い通りだ。
だがドラゴンを犯す前に、こっちのガキを先に犯るのも悪くない。冠木は佳奈の濡れた瞳を見つめ、唾を飲んだ。雷鳴が轟く。
「服を脱げ。」
「えっ…」
佳奈はびくりと身体を硬直させ、目に涙を浮かべ、懇願するように冠木を見た。その表情がかえって彼を興奮させた。
「ぬ、脱ぐんだ。全部。」
「やめろ…。」
千絵が言った。そのあまりに威圧的な声に、冠木は一瞬怯んだ。
「う、動くな。こいつを殺すぞ!!?」
「佳奈は私んだ!!!!!!」
千絵は声の限り叫んだ。突風に吹かれたような感覚が冠木を襲い、思わず佳奈から手を離した。その瞬間、佳奈のひじが冠木のぺたんこの腹に突き刺さる。
「ごふぅっ…!!」
冠木は咳き込む。
しまった!!
そう思い、慌てて体勢を立て直した瞬間、彼は物凄い力で地面に叩きつけられた。
驚いた事に、背中の下でコンクリートが割れてその破片がいくつか彼の肉に突き刺さった。彼は絶叫しながら、ぎゅっと握った注射器を当てずっぽうに振り回した。
針の先に手ごたえを感じ、ふと見ると針の先がドラゴンの腕に深々と刺さっていた。
やった!
冠木はピストンを押す。だが、びくともしない。次の瞬間、怪物の細い腕に筋肉の筋が浮き上がり、鋼鉄の針はパキンと折れた。
怪物が更に力を込めると、細かった腕に筋肉が隆起し、折れた針がぽろりと抜け落ちた。怒りと憎しみに握り固められた少女の拳が、唖然とする冠木の顔面を貫いた。
顔のパーツの大半を押しつぶした拳は、脳漿と血液をぶちまけて後頭部から外へ突き出すと、ひびの入ったコンクリートの地面を更に砕いた。
冠木の身体は力を失い、腕をだらりと横たえて動かなくなった。だが千絵は手を止めなかった。
拳を引き抜くと、床に崩れ落ちた冠木の身体に馬乗りになると、再び拳を振り下ろした。頭蓋骨が粉々になり、中の脳や顔の肉片が飛散した。
この時点で冠木の頭部は、まるで高所から地面に勢い良く叩きつけられたトマトのように形象を失い血肉と骨の飛沫と化した。
だが千絵は止め処なく拳を繰り出し、その度に一人の男の肉体は人の形を失って行き、代わりに
床の染みとコンクリートの亀裂がどんどん広がって行った。建物自体が軋みを上げている。


78:腐肉(P.N.)
09/11/25 00:44:51 5FRvZfTN
「千絵!!」
千絵が再び腕を振り上げた瞬間、佳奈が両腕で千絵の腕を押さえようとした。千絵は勢い余って、しがみついた佳奈ごとその手を振り下ろす。
佳奈の身体は軽々と宙を舞い、床に広がった血溜りの上にぐしゃりと叩きつけられた。
「い、いた…っ。」
「佳奈…。」
千絵は我に返り、仰向けに倒れた佳奈を覗き込む。口から血が流れている。
「佳奈!!」
「だ、だいじょうぶこれくらい…。」
佳奈は苦しそうに呟くが、口の中に血が溜まっているのか噎せ返った。
「こう見えても結構頑丈なんだよ…?」
無理やり起き上がって「へへ」と笑う佳奈を見て、千絵は泣き出した。
「どうしたの、ちぃちゃん…?」
千絵は佳奈の小さな胸に頭をもたせかけた。
「佳奈、佳奈、私… 私…!」
千絵は想いを言い表そうとしたが、言葉にならなかった。硬くなった筋肉が、嗚咽に合わせて上下に震える。
「決めたんだ、何があったって… 佳奈だけは護るって…。」
佳奈は濡れた犬のように震える千絵をそっと抱いた。
「私は大丈夫だよ… ありがとう、千絵。」
ぽつり、と空から落ちてきた冷たい雫が千絵の髪を濡らした。やがて降り出した雨は、少女たちの涙と混ざり合い、地面に広がった血の染みを薄めて広がる。
少女たちは、しばらくそのままぎゅっと抱き合って泣いた。雨はどんどん強くなり、時折稲妻の閃光が辺りをかっと照らしては夏の夜空に向かって吠えた。
しばらくして、千絵が顔を上げた。潤んだ真っ赤な目を佳奈に向け、「いたくない?」と尋ねる。その顔はどうしようもなく可愛かった。
千絵は無理に起き上がろうとする佳奈の、肩と腿の辺りに手を回して抱き上げようとした。
佳奈がやたらと拒否するのでなぜかと思ったら、どうやら下着を履いていないようだ。
千絵は笑い出した。真っ赤な顔の佳奈をお姫様のように抱き上げると、浴室に連れて行く事にした。ノーパンの理由は聞かなかった。
冠木正和の肉片は、片付けずにそのまま残した。まだ胃袋に空きはあったが、千絵はこの男を、例の少年と同じ場所に入れたくなかったのだ。
雨が止む頃には綺麗に洗い流されているだろう。
ふと、浴室の入り口の大鏡に自分たちの姿が映っているのを見て、佳奈が呟く。
「血まみれだね、私たち。」
「美女と野獣だね。」
長い髪から血を滴らせながら、千絵は腕の中の佳奈に弱弱しく笑いかける。
「ううん。」
佳奈は首を振る。
「野獣は居ないよ。」
2人は身体をシャワーで洗い流すと、ゆっくりと湯に浸かった。佳奈はちょっとした打撲だけで骨折は無かった。
佳奈は痛む背中を千絵に舐めてもらい、彼女の膨れ上がった腹を撫で回しては嬉しそうな顔で笑った。
千絵はほっとしたのと満腹感から、風呂を出るとすぐに眠くなってしまった。
2人は無傷の個室を見つけると堅いベッドで裸のまま寄り添い、佳奈は千絵の大きな腹を枕代わりにして、お互いの身体を感じながら眠った。
夜の時間はゆっくりと流れた。

-----------------------------------------

翌朝、千絵は日の出と共に目を覚ました。雨はもう上がっていた。
昨夜の晩餐は完全に消化され、腹は元の細さに戻っていた。徐々に枕が低く硬くなってしまったため、佳奈は千絵の胸の上に頭を乗せて眠っていた。
佳奈の頭をちゃんと枕に乗せると、千絵は起きて服を着、佳奈のためにコーヒーか何か無いか施設を散策した。
窓の向こうには朝もやが立ち込めており、その向こうから鳥のさえずりが聞こえていた。
6時過ぎて佳奈が起き出すと、2人は森に突き出したラウンジに出て、木々の向こうに上がる朝日を眺めながら熱いコーヒーを飲んだ。
8月半ばだというのに、山の上だと朝は随分冷え込む。
佳奈の服は昨日汚れて駄目になってしまったため、千絵が予備に持ってきた服を貸した。
ぶかぶかの服に身を包んだ佳奈は、父親の服を着た娘か、予期せず恋人の家に泊まった翌日の少女のようで、千絵はそんな姿の佳奈をからかいながら
次なる獲物がのこのこと怪物の棲む病棟へとやって来るのを待った。


79:名無しさん@ピンキー
09/11/25 08:56:14 awKjEGB1
乙!
あんたのために毎日スレ見に来てるぜ!

80:名無しさん@ピンキー
09/11/25 15:55:51 8b+KIeAK
バッドエンドを覚悟してたから

ほっとしたよ

少年・・・・パルスィ

81:名無しさん@ピンキー
09/11/25 18:02:49 TlnOQOwU
投稿頻度高くて毎日wktkですなぁ

82:腐肉(P.N.)
09/11/26 04:06:48 zT3VkIzH
7時半を回った頃、一台の乗用車が常舞病院の駐車場に停車した。中から降りてきたのは、30代後半か40代くらいの女性で、もう白衣に身を包んでいた。
彼女は正面玄関までやって来ると、まだ鍵が開いていない事に疑問を覚え、ガラス越しに中を覗いた。
ナースステーションのガラスが割れている。ひっそりと静まり返ったロビーには人っ子一人見当たらない。女医が目を凝らす。
ふと、デイルームの床に何かが転がっているのが見えた。さらに目を細めて見た時、彼女はその正体に気づき悲鳴を上げた。
何かの粘液に塗れた複数の人間の白骨。それがガラス一枚隔てた、彼女の職場の床に、無造作に打ち捨てられていた。
その時、病院の奥で何かが動いた。人影が玄関に向かって近づいてくる。
真っ白な肌の美しいパワフルな身体を見せつけながら、一人の少女が一糸纏わぬ姿で現れた。
女医は一瞬戸惑うが、その少女に明らかな異様さを感じて後ずさった。
あれは患者ではない。
少女は正面ドアの強化ガラスの前まで来ると、ぴたりと止まった。一瞬女医の脅えた目と怪物の目が合う。
次の瞬間、少女の拳が、斧を叩きつけてもひび一つ入らない強化ガラスを一発で粉々に砕け散らせた。
女医は声の限り悲鳴を上げると、すぐさま駐車場に止めた車に向かって、朝靄の中を走り出した。
あともう数歩で到達するという時、金属が裂ける耳を劈くような音を立てて目の前の愛車が突然ぺちゃんこに潰された。
まるでブリキか何かで出来ていたかのようにぐにゃりと変形した車体の上に、少女が立っていた。
まるで鮫の口を縦にして人体に移植したような腹の亀裂の中で、毒々しい桃色の大蛇のような触手が、彼女を手招きするかのようにうねうねと蠢いている。
少女が車から降りようとボンネットに脚を乗せると、その重みでカバーが凹み、一緒に押しつぶされた中のエンジンが煙を上げた。
女医は病院の方へ後ずさりしようとして尻餅をついた。次の瞬間、彼女の身体は5名の職員を乗せてやって来た始発バスに撥ねられた。
洗濯された純白の白衣をどす黒い赤に染め、彼女の身体は10メートルほど飛ばされて硬いコンクリートの地面にぐしゃりと落下し血飛沫を撒いた。
バスの扉が開き、中年の運転手が血相抱えて外へ出てきた。途端に、何があったのか見ようと窓にへばり付いていた乗客たちが悲鳴を上げる。
たった今自分が跳ねた、地面に転がった人間の死体しか眼中になかった運転手は、その悲鳴で「何だろう」と初めて顔を上げた。
彼の目に信じられない光景が飛び込んでくる。
彼の娘くらいの年の少女が、ぺしゃんこに潰れた乗用車を細い腕で持ち上げると、その巨大な鉄塊を彼めがけて軽々と放った。
運転手は悲鳴を上げる間もなく、車体の下敷きになって死んだ。
車は彼の身体を磨り潰しながらスリップすると、バスにぶつかって止まった。車体が大きく揺れ、バスの中から乗客たちの悲鳴が聞こえた。
千絵はラウンジでコーヒーを飲みながらこちらを見ている佳奈に向かって、親指をぐっと立てるとウィンクした。
佳奈は、目の前で見せ付けられた千絵の怪力に圧倒されながらも、弱弱しく笑いながらブイサインを返した。
千絵はゆっくりと跳ね飛ばされた女医の死体に歩み寄ると、血の滴る亡骸を片手で持ち上げ、口の中にぽいっと放り込んだ。
再びバスの中から悲鳴が聞こえる。乗客たちは脱出を試みているようだが、潰れた女医の車が扉を塞いでいて開けられない。
患者も利用するバスなので、窓も5センチほどしか開かないようになっているのだが、その僅かな隙間から突き出して蠢く
何本もの指が、乗客たちの恐怖と必死さを物語っていた。
千絵は、磨り潰されてバラバラになった運転手の身体の一部のいくらかを拾い食いすると、バスに寄りかかった
スクラップ同然の乗用車をぐいと引っ張ってどけ、バスのドアに手を掛けた。
扉は変形していて開け辛かったので、そのまま車体から引き剥がした。日に日に増して行くその力を奮うのが楽しくて仕方ないようだった。
彼女の身体は怪物として完成しつつあった。

83:腐肉(P.N.)
09/11/26 04:08:48 zT3VkIzH
車内に乗り込むと、千絵は手当たり次第に乗客たちを捕食した。
女は味を損なわないよう丸呑みにしたが、昨夜の拳の感覚が忘れられず、男は狭い車両内を逃げ惑わせた後、嬲り殺しにしてから喰った。
その間佳奈はラウンジのベンチに座り、2杯目のコーヒーに砂糖をたっぷり入れながら、まるで中で熊か何かの巨大な獣が交尾でもしているように左右に激しく揺れるバスを見物した。
佳奈は中で行われている虐殺を想像しては一人頬を染めた。
やがて拳にべっとりと付いた血をぺろぺろと舐めながら千絵が降りて来た。千絵は一跳びで佳奈の居る2階のラウンジまで飛び上がると、佳奈の隣りに腰を下ろした。
ぼてぼてに膨張した腹は、まだ小刻みに震えている。佳奈は熱を帯びた手でその腹をそっと撫でた。
「コーヒー、要る?」
「欲しい。」
佳奈は持ってきたポットからカップに湯を注いだ。
「砂糖は?」
「要らない。」
佳奈は千絵にカップを渡すと自分用にもう一杯注ぎ、そちらにはスティックシュガーを2本空けた。
「よくそんなの飲めるね。」
千絵が胸糞悪そうに言う。
「いいじゃん、好き好きなんだから。ていうか、ちぃちゃんに言われたくないなぁ…。」
そんな会話を交わした後、千絵はシャワーへ、佳奈は監視カメラの記録テープを持ち出すために警備センターへ向かった。
準備を済ませて施設を出た2人は、森の奥でテープを燃やした。時刻は午前9時。2人は急いで山を下りて高速バス乗り場へ向かわねばならない。
途中、面倒くさくなった千絵は佳奈を抱きかかえ、山道を物凄い速さで駆け下りた。走る、というよりはカンガルーのように跳ねて、と言ったところか。
ただしその跳躍力はカンガルーどころではなく、腹の中に6人分の重量を乗せたまま100メートル近い距離を一跳びした。
だがバスステーションに着く頃には千絵は汗びっしょりで、息も絶え絶えになっていた。この技は緊急時以外使わない方が良さそうだ。
バスの中で再び千絵は眠りに落ちた。
-----------------------------------------------------------------------

84:腐肉(P.N.)
09/11/26 04:12:29 zT3VkIzH
翌日、珍しく早起きした千絵と佳奈は、居間のテレビが伝えていたニュースに釘付けになった。
2人は階段を降りて来る間、きっと常舞病院の事件がその日のトップニュースだろうと思っていた。
実際、常舞病院での患者職員全員が死亡もしくは行方不明になった事件は、新聞でも一面を飾り大きな衝撃を持って世間に伝えられた。
だがそれだけでは無かったのだ。
同じ日、同じ夜、もう一件、ある場所で居合わせた全員が消える事件が発生していたのだ。
場所は東京郊外の市営団地。30人あまりの住民が一夜にして、忽然と姿を消したのだ。現場からはおびただしい量の血液や体組織の一部、骨の一部などが見つかっている。
千絵は背筋が凍りつく思いがした。こんな事件を起こせる生き物を、千絵は一つしか知らない。
「あいつだ…。」
最初はあの時の恐怖が甦って、千絵は彼女の姿を必死に脳裏から追い出そうとしていた。やがてそれは憎しみに変わった。
あの日、彼と、そして彼女を殺して喰ったあの少女。彼女の人生を変えた女。彼女の… おかあさん。
いつしか、彼女に対するその想いは、もっと具体的な形を取るようになっていった。
あの少女を、食べたい。

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その後、佳奈の家で唯香と恵を招いての勉強会(という名のお泊り会)が催されるなどのイベントはあったものの、基本的に平穏な日々が流れた。
だがある日、佳奈と2人で少し離れた書店まで参考書を買いに出かけた時の事、千絵はたまたま例のラブホテルの前を通りかかった。
さすがにもう人も寄り付かなくなって廃墟のようになっているのかと思っていたが、そこはまだ「立ち入り禁止」のテープで封鎖されていた。
それどころか、入り口には銃と思しき武器を持った制服の男が立っており、駐車場には自衛隊の車だろうか、大型のジープや真っ黒に塗装されたバンなど、
警察のものではない車両が何台も停まっており、ホテル内にも人の気配がした。
千絵は何だかすぐにその場から立ち去りたくなって、佳奈を急かして家へと逃げ帰った。それからというもの、あの場所には近づかないことにした。

----------------------------------------------------------------------

こうしてその年の夏休みは過ぎて行った。
ただ、ごくごく近い未来を脅かすかも知れない暗雲の存在を、千絵も佳奈も感じ取っていた。
そしてこれが、2人が共に過ごした最後の夏になった。


[続]

85:名無しさん@ピンキー
09/11/26 13:42:50 V1i8RHzI
オリジナルとの戦いか・・・

どうなるか想像もつかん・・・

wktkがとまらねぇwww

86:名無しさん@ピンキー
09/11/26 14:10:19 jlFTqsD8
前スレの尻尾の漫画描いてた人はどうしたんだろう
続きを待っているのだが・・

87:名無しさん@ピンキー
09/11/26 20:12:06 HDysSCx7
>>86
最近pixivに一枚絵をアップしてた

88:名無しさん@ピンキー
09/11/26 20:32:23 znrG0Flq
何故か読んでて某ディクロニウスを連想した

捕食じゃないけど、あれも似たような何かを感じてすごく好きだった

89:名無しさん@ピンキー
09/11/26 21:38:46 Vxq8iE6l
俺は某クトゥルフの唄かな

90:名無しさん@ピンキー
09/11/26 22:13:50 6ysrD0NF
お母さん食べたら物理的な意味で腹壊しそうだw

91:名無しさん@ピンキー
09/11/26 23:37:59 XcLAKvNd
>>86
どうもです
対決相手のキョウコを適当に描いていたのでキャラをもう少しちゃんと作り込む為に練習中です
ネームからペン入れまでやるとそれだけで何ヶ月もかかってしまうので完成時期は未定ですが尻尾~の続きは必ず描きます
なのであまり期待せずお待ち下さい


練習の一枚絵は腐肉さんの作品が一段落して過疎ってきたら繋ぎで貼ろうと思ってたんですけど
せっかくの良い流れですからブッた切るのは勿体無い気がして・・・

92:腐肉(P.N.)
09/11/27 00:37:13 89Y2xYO/
こんばんは、いつもありがとうございます。
某ディクロニウスは、私も大好きです。「うおー乳首ピンクだ!」は俺史に残る不朽の名台詞です。影響されているかも知れません。
すみません、クトゥルーは好きなので名前だけは知ってますが某沙耶は見たことが無いです(あれってゲームなのですか?ラノベ…?

そして>>91本当に申し訳無いです!ご迷惑をおかけして…
私はだらだらと思いついたものを垂れ流しているだけなので、お気になさらないでください。私も続き楽しみです。


93:名無しさん@ピンキー
09/11/28 02:10:08 EmNJnvd0
ここで空気読まずにCM
「魔物娘との性活 ラミアの場合」に
イートミーエンドを確認
このときの音声もさることながら
イートミーエンド後のコメントに愛を感じた
是非ともお試しあれ

94:名無しさん@ピンキー
09/11/28 16:20:55 zFfwf6dK
>>93
kwsk
丸呑み画像あり?

95:名無しさん@ピンキー
09/11/28 16:44:44 9AgSZTXN
画像無し、文章のみ
イートミー狙いなら買わない方が良いな
ボイス有りだけど「んあ」って声の後画面が暗くなり男の台詞の後GAMEOVER
食べたあげるとか永遠に一緒にとか個人的には中々たっだが

96:名無しさん@ピンキー
09/11/28 16:45:45 BIttaFmt
>>93
まじか、まさか無いだろうと思ってたのに…チャレンジャーだなぁw
kwsk便乗

97:名無しさん@ピンキー
09/11/28 17:12:38 EmNJnvd0
イートミーに関しては
>>95の解説以上のものは無いな
ある意味ヤンデレエンドとも言えるかも

98:名無しさん@ピンキー
09/11/28 18:14:59 zFfwf6dK
前向きに考えれば自分の好きなように想像できるということだな。
まあそれ以前にイートミーが駄目だったら他のエロの部分で楽しめばいいし。

つーわけで買ってくるノシ

99:名無しさん@ピンキー
09/11/28 19:52:03 EmNJnvd0
>>98
いってらノシ


100:名無しさん@ピンキー
09/11/28 20:38:56 G9V6uN2W
このスレのフインキって仲良くて好き

101:96
09/11/28 21:44:05 BIttaFmt
リロードしてなかったから気がつかんかったorz
>>95
なるほど、つまりレイミアは人間くらいなら丸呑みできるよ、という事は示されている訳ですな…
画像はまぁあったらよかったけど、無いなら無いでMPで補完できる

エロゲって興味魅かれるものがなくて買ったこと無かったんだが、買ってみるかなw


102:名無しさん@ピンキー
09/11/28 21:56:35 9AgSZTXN
>>100
こういう言葉遣いを見ると千絵を連想してしまう
そういえば腐肉さんの小説ってあのペースなのに誤字がほとんど無くてすげぇ

>>101
エロゲ初心者の俺でも楽しめたから、魔物娘大丈夫ならオススメ
女性主導が多いから苦手な人は・・・ってこのスレにM以外は居ないかw

103:名無しさん@ピンキー
09/11/28 22:20:39 EmNJnvd0
>>101
値段も比較的お手頃だから良いよな

>>102
逆にSなイートミーってどんなだろうなww
「食えよ・・・」みたいな?ww

104:名無しさん@ピンキー
09/11/29 02:01:35 0/ClduRa
>>100
他のスレが結構殺伐としてるからな・・・
俺も食い系スレの中では一番好きかも

105:名無しさん@ピンキー
09/11/29 02:47:19 jIe0bQu8
>>100
雰囲気(ふんいき)

106:名無しさん@ピンキー
09/11/29 03:20:03 /yRFSvE2
>>105
釣り針がでかすぎるぞw
折角いい流れなんだから汚すなw

107:名無しさん@ピンキー
09/11/29 07:27:43 S54Ubsx7
今日はメン・イン・ブラック2が放送されるね。

108:名無しさん@ピンキー
09/11/29 13:02:12 ZSaOKZ+6
>>102
内容的にココかどうか微妙だけど一寸法師的なシチュがいいわ
M性質とはちょっと違うし立場として逆だから書きにくいだろうし見る側は探すのに困るんだよね

他にも男だけど女視点で見てる俺なんてのもいるんだぜ

109:名無しさん@ピンキー
09/11/29 21:33:25 /cD96ZkF
>>107
MIB2よく知らなかったけど、開始早々おっきしたwww
おまえさんのおかげだ、ありがとう

110:名無しさん@ピンキー
09/11/29 23:53:08 6JaHhao2
脳に触手を入れるシーンだけ見れたんだけど
他にもいいシーンはありましたか?

111:名無しさん@ピンキー
09/11/30 00:22:52 jhjRiX9y
>>110
もし、しょっぱなの丸呑みシーンを見逃したんなら
レンタルビデオ屋に走るといいよ

112:名無しさん@ピンキー
09/11/30 19:48:22 RGS0tSsu
3次はちょっと…

113:名無しさん@ピンキー
09/11/30 20:22:43 Hx+35b/J
>>112
あらゆるモノを二次に変換してこそ変態紳士

114:名無しさん@ピンキー
09/12/01 00:20:59 fOe5ljqg
>>112
大事なのはきっかけだあとは応用にすぎない

115:腐肉(P.N.)
09/12/01 02:51:44 3A0GTD/U
新学期が始まると、学校は文化祭ムード一色になった。特に3年生は部活も終わり、高校生活最後のイベントとあって張り切っているようだ。
千絵はと言うと、まだぼんやりと、あの少女の事を考えていた。
あれからニュースや新聞の隅々に目を凝らして見たが、あれ以降目立った手掛かりは見つかっていない。
だが何となくだが、千絵は、彼女がまだ東京近辺にいるような気がしていた。
かつて彼女の目の前で、大切な人を喰い彼女を犯し、貪欲な食欲を満たすためにさらに大勢の人間を呑み込んだあの怪物は、どんな味がするのだろう。
あいつを呑み込むのは、どんな感じなのだろう…。気付けば千絵は、そんな事を考えていた。
一方、目立たないが実はクラス委員という顔を持つ佳奈は、文化祭準備に追われ忙しそうにしていた。
最近、彼女に急接近してきた人物がいる。真面目なタイプの堀切英次は、もう一人のクラス委員で、クラス展の準備で佳奈とは毎日のように顔を突き合わせていた。
千絵にはすぐに、彼が佳奈に対し少なからぬ好意を抱いているのが分かった。
佳奈に接する態度、口調、佳奈が近くに居るときの表情、少し離れているときの視線、その全てがそれを物語っていた。
佳奈の方はどう思っているのだろう?
ある放課後、2人が重そうな段ボール箱を抱え、笑いながら並んで歩いているのを見た千絵は、突如感じたことの無い不安に襲われた。
あの男、喰ってやろうか…。そんな考えが浮かばなかったと言えば、嘘になる。
だが千絵は、そこまで佳奈を束縛したくなかった。だがら、佳奈に直接、さり気無く尋ねてみるなどという事もしなかった。
私は大人だからな!
それが余計に千絵を無気力にした。変わらないのは食欲だけだ。

文化祭まで一週間となったある日の授業中、突然教頭が教室にやって来た。
生え際の後退した額を落ち着きなく撫でながら、教頭は担任とクラス委員の佳奈や堀切らに指示を出すと、クラス全員を教室から連れ出した。
連れて来られたのは、生徒指導室前の廊下だった。そこには何人かの警官が立ち、ごった返す生徒たちを整理していた。
どうやら、他のクラスからも何人か呼び出されたようだ。人ごみを掻き分け、千絵はようやく佳奈と話をすることが出来た。
「何事?」
佳奈は青ざめた顔で千絵を見た。
「行方不明の人たちの事で…聴取、取り直すって…。」
その時、警官に肩を捕まれ、千絵は自分の列に戻された。佳奈の動揺した顔が、生徒たちの肩の向こうに消えた。
千絵も佳奈ほど動揺はしていないものの、気がかりではあった。
今になって、どうしたと言うのだろう。新しい証拠でも出たのだろうか?
千絵が頭を悩ませていると、見覚えのある顔が目の前を横切った。
「福沢さん。」
一瞬名前が出てこなかったが、千絵は福沢刑事がまだ近くに居るうちに、彼を呼び止めた。
「ああ、蓮杖さんか。」
福沢は振り向くと、挨拶をした。その顔は、どうやらここで千絵に声をかけられるのを予想していたようだった。
「何事です?」
千絵はそれとなく探りを入れてみる事にした。
「うん… 実は、また君に迷惑をかけてしまう事になりそうだ。」
福沢は顔を強張らせて小声で言った。その時、職員用玄関の方から黒服に身を固めた男たちが現れた。
数名の警官に先導されながら、生徒たちの間を縫って通ると、生徒指導室へ入っていった。
「どういう…どういう事です?あの人たち、警察の人じゃないんですか?」
「環境庁の連中です。」
福沢は、彼らが消えた生徒指導室の戸を渋い顔で見つめながらそう言うと、「他の子に言うなよ。」と付け加えた。
「私たち地元警察が事件を解決できないものだからと…。」
「事件?」
福沢は悲痛そうに千絵の顔を見つめた。
「例の…ホテルの事件。」
千絵は混乱した。疑問はたくさんある。
「何で…4ヶ月も経ってるんですよ?ていうか、何で環境庁なんですか?」
「連中は我々にも何も言わずに…。」
「蓮杖千絵さん。3年C組の蓮杖千絵さん、居ますか?」
生徒指導室から再び姿を現した黒服の一人が、廊下のざわめきの中に呼びかけた。
「…という訳だ。」
福沢は千絵に向かって肩をすくめた。
「はい、ここです…。」
千絵は手を上げると、前へ歩み出た。
「入ってください。」
黒服の男が、生徒指導室の戸を開けて中へ促した。
千絵はちらちらと男の顔を見ながら、言われるがままおずおずと入室した。後ろから福沢も付いて入った。


116:腐肉(P.N.)
09/12/01 02:52:58 3A0GTD/U
教室の中は、いつもとまるで違っていた。
中央に長机が置かれ、黒服が3人、何かの面接のように座っており、その前にパイプ椅子がちょこんと1脚置かれていた。
「蓮杖千絵さんですね、かけてください。」
中央の黒服が言った。千絵は黙って腰掛ける。
「村雨です。」
黒服は簡潔に自己紹介した。
「どうも…。」
「福沢君とは、もうお知り合いですか?」
「ええ、以前にも…。」
「結構。」
村雨は千絵が言い終わらないうちにぴしゃりとそう言って、隣の男から分厚いファイルを受け取りぱらぱらとめくった。
「その後、お加減はどうですか?」
村雨はファイルに目を落としたまま唐突に尋ねた。
「体調は良いです。」
千絵は言葉にありったけの不審感を込めて返答した。
「どこか変わったところは?」
「いいえ。」
「結構。では、思い出していただきたい。」
村雨は顔を上げた。分厚い眼鏡のせいで分からなかったが、まだ若いようだ。
「事件の夜の事。君が、あー… 例の宿泊兼休憩施設で出くわした、出来事の事。」
「全部警察の人に話しました。4ヶ月前に…。」
「本当にそれで全部ですか。」
村雨の彼女を見る目つきに、千絵は胸騒ぎを覚えた。
「君は当時、覚えていないと答えていますが… まぁ、ショックというのもあるでしょう… だが今なら思い出せるかな?
最後に君の彼氏、末永雅人君を見たとき、彼に何が起こりましたか?」
「ちょっと、いい加減にしてください。」
福沢が口を挟んだ。
「彼女は事件の被害者なんです。まだ時間が…」
「時間をかければかけるほど、彼女が思い出せない内に脳の中で記憶は薄れていき、事件は広がって行くのですよ。」
村雨は福沢を遮った。
「ついでに、予め言っておきますが私は行方不明者は全員すでに死亡していると考えています。これからはそのつもりで話を進めますが、よろしいですか?」
千絵は身構えた。背後に福沢刑事の哀れみと同情のこもった視線を感じる。無言で座ったままの残りの黒服共が、余計に部屋の空気を悪くする。村雨は続けた。
「では別の切り口で。あの夜、君は何か変わったものを見ませんでしたか?例えば獣とか、人間でない何か。」
千絵は、巨大な胃の中に大量の氷水が注ぎ込まれたような感覚に襲われた。
この男は、怪物の存在を知っている…。


[続]

117:名無しさん@ピンキー
09/12/01 03:47:04 DyIT8ga+
わくわく

118:名無しさん@ピンキー
09/12/01 08:14:17 fOe5ljqg
続きキター!!(゚∀゚)
シリアスな展開に・・・

119:腐肉(P.N.)
09/12/02 23:49:36 psKtlOeX
「何の話です?」
凍りつく千絵の後ろで、困惑した福沢刑事が再び声を上げた。
「君はあの事件が本当に、あー… 人間に犯行が可能だと思いますか?」
「熊か何かがラブホテルに侵入し客を襲って、何人かはその場で食い白骨を残し、残りの被害者を運び出して森へさらったとでも?」
普段冷静な福沢の言葉に、侮蔑と嘲りが籠もる。
「熊…とは私は言ってませんがね。」
村雨は小声で呟くと、再び千絵に目を向けた。
「例えば先月の半ば、東京で起きた市営団地住民全員失踪事件。それから同日隣りの県で起きた精神病院の患者及び職員皆殺し事件。これが人間の仕業かね!」
村雨が机の上のファイルをトンと叩いた。
「それと私と、どういう関係が…。」
言いかけた瞬間、千絵はしまった!と思った。
千絵は失言に気付き口をつぐんだ。心臓が早鐘のように響き、自らの思考の愚鈍さを呪った。
「関係?それは君が生き残った少女だからですよ、蓮杖さん。」
間髪入れずに村雨は返答する。
「が、学校の皆は?なぜ全員取調べを受けるんです?」
「あー…。」
村雨はちらりと福沢の顔を見て、やれやれというように溜息混じりに話を始めた。
「例の事件以降、この辺りで妙な行方不明事件が多発しているんですよ。何件かは君もご存知でしょう?
ああ、君のお父さんもそうです。予兆も無く、突然消える。中には小学生なんてのも居ます、それも複数ね。
消えた人々に関連も無い。だが最も初期に、最も集中していた場所が… どこだと思います?」
村雨は無表情のまま、左の人差し指をぴんと立てると、床を指差した。
「ここ、県立第一南高等学校なんです。びっくりしました?」
村雨の吊り上がった眉が千絵を威嚇している。
「例の宿泊兼休憩施設の事件で、この学校の前校長を含む3人が犠牲になった。
そして半月後、末永雅人と同じ部活だった菅原啓一、続いて虐めに遭っていた岡田旬が消えた。私はそこの福沢君と違って、一連の失踪事件が無関係とは思わない。
ですから、これからは”新しい目”を以って調査せねば。すなわち、地元警察が別個に調査していた一連の事件に関連性を見出す目でね。」
村雨は切れ長の目を見開いて見せた。
「だがその前に、気になることがある。蓮杖さん、生き残った少女、あなたの存在だ。あなたは菅原、岡田とも…同じクラスですね。」
千絵は背筋を強張らせた。
「待ってくれ、あんたまさかこの娘が何か…」
福沢が狼狽して呟いた。今度は制止された訳では無かったが、言葉は最後まで口に出されない内に部屋の中のどんよりと重い空気の中に消えてしまった。
今、福沢はどんな目で千絵を見ているだろう。
村雨捜査官の言葉によって、少女を信じる心に何らかの疑念を植え付けられただろうか、それともまだ彼女を哀れな被害者だと思っているだろうか。
千絵には分からなかった。
村雨は向き直ると、千絵に向かって微笑んで見せた。場を和ませようとする彼なりの努力だったのかも知れないが、千絵はその笑顔にぞっとした。
「蓮杖千絵さん、もう一度尋ねます。あなたは、4ヶ月前の事件について、本当にもう何も覚えていませんか?
そして一連の失踪事件に関して、何か知っていることはありませんか?」


120:腐肉(P.N.)
09/12/02 23:53:17 psKtlOeX
蓮杖千絵への聴取が終わり、青ざめた顔の少女が部屋から出て行ってしまうと、村雨は「ふぅ」と大きく息を吐き出し、椅子の背もたれに寄りかかった。
「あなたの言う通り、美しい少女ですね。」
村雨はくっくっと不気味に笑う。
「それに強い。あれだけ揺さぶりをかけても、動揺したのは一度きり。私はそう思いましたが、どうでした?二度かな?」
村雨は隣の黒服にいたずらっぽく尋ねた。
「言ったでしょう、彼女は被害者ですと。残念でしたな、何も得るものが無くて。」
福沢が村雨を睨み付けて勝ち誇ったように言った。
「いえいえ、大きな収穫ですよ。」
村雨が笑った。福沢の表情が変わる。
「やはりあなた方は、我々の知らない事情をご存知のようですね。」
「この世にはあなた方の知らない事情がたくさんありますよ。」
「差し支えなければ、我々無知な地元警察にも開示願いたいですな… あんたら何を隠してる?」
福沢は村雨に詰め寄った。村雨は困ったように笑うと、少しして口を開いた。
「こう申しておきましょう。我々の敵は、我々が今まで知らなかった相手だ。あなた方警察はおろか、この世界さえも。
それがいつからこの世にいるのか、はたまたこの世のものなのか、それさえも我々は知らない。」
「あんた何を言って…。」
福沢の言葉は遮られた。
「そして私は、先の少女が十中八九、何か知っていると思います。我々の知らない事情をね。」
福沢は顔を強張らせた。目の前にいるいかにもエリートタイプのこの男が、自分をからかっているのだろうかと考えて。
「福沢刑事、次の生徒を呼んでもらえますか?」
村雨はそう言いながら眼鏡を押し上げると、隣の黒服に向かって呟いた。
「蓮杖千絵… 予想以上だ。もしかすると、彼女自身が…。」
福沢は黙って戸を開け、廊下に並んだ不安げな子供たちの顔を見渡した。蓮杖千絵の姿はもうそこには無かった。
福沢は今や、足場の悪い建設現場に一人取り残されたような気分だった。つい先月までは、厄介だがまだ「人知の範囲内」の事件の担当として、
いつも通りの内容の職務をこなしていた。厄介ではあったが。
それが黒服共の突然の登場によって、一変だ。彼は警察内での立場などは気にもしなかったが、それどころか事件は、彼のこれまで
生きて来た中で培われてきた価値観や信念そのものを揺るがすような方向へ進んでいるような気がする。
無論、あの理屈っぽい眼鏡の言う事を鵜呑みにするつもりはないが、事態が尋常ではない事は確かなようだ。おまけに彼は蚊帳の外。
こういう時、ただ見守る事しか出来ないのが福沢は何よりも嫌だった。
彼を警官にしたその正義感は、一人の少女が苦むのを見過ごすなどという事は許さなかった。
黒服共は信用できない。ならもう一度、私に出来る範囲で、一から事件を洗いなおしてみよう。
蓮杖千絵が何か知っていようといまいと、彼女の助けになるには、それしかない。
彼はそう決意した。


[続]


121:名無しさん@ピンキー
09/12/03 00:24:15 I/jt39AR
福沢刑事優しいなぁ。
フラグビンビンだけどw
しかし話が面白い。
エロパロとかそういうヤマしいこと関係なしに、
純粋に小説読むの楽しんでいる俺がいる。

122:名無しさん@ピンキー
09/12/03 01:15:36 sz2g+ZUj
こうなってくるとやっぱり漫画化、映像化に期待だな。

123:名無しさん@ピンキー
09/12/03 07:15:45 3yZo89Ab
>>122
その前に書籍化が抜けてるぜ


124:名無しさん@ピンキー
09/12/03 20:28:50 3SDFwWwx
てか前から思ってたんだけど腐肉さんて物書きの仕事してたりするのかなぁ?
誤字もたまにしかないし文章が普通のSS職人っぽくない

125:名無しさん@ピンキー
09/12/03 21:36:19 3yZo89Ab
文章も面白いし誤字も少ないってことは
最強だな!!

126:名無しさん@ピンキー
09/12/03 23:10:21 f7FEb7ap
腐肉氏はIMEは何を使ってるんだろう?ATOKかな?

ところで、これ↓見て試してみたけどMS-IMEよりは断然良いね。

「Google 日本語入力」はATOKやMS-IMEを超えることはできるのか、実際に使って実用に耐えるかどうか試してみた
URLリンク(gigazine.net)

127:腐肉(P.N.)
09/12/04 05:17:53 Icf4nKa4
千絵は指導室を出た後、まだ何事か把握できないまま困惑した表情で待つ生徒たちの好奇の目(もう慣れっこだ)をすり抜けると、まっすぐ教室へ戻った。
佳奈に声をかけようかと思ったが、隣に堀切英次が居るのに気づくと、黙って横を通り抜けた。
不安げな顔の佳奈を無視するのは心苦しかったが、今はそれよりも胸の中のもやもやした不安と緊張の残骸を表に出すまいと必死だった。
その日の授業は丸々潰れ、3年の担任たちは「受験生の大切な時期に生徒たちの時間を奪うな」と新任校長に抗議した。
千絵が佳奈と話したのは、放課後になってからだった。開口一番はいつものように、「大丈夫?」だった。
千絵はいかに大丈夫じゃなかったかを説明した。青ざめた佳奈は、いくつか質問して補足を促した後、黙りこくってうつむいてしまった。
「それより、いいの?文化祭準備。」
千絵は平静を装って尋ねた。急に、この不安が自分の正体がばれそうだという危機感から来るものなのか、佳奈が自分のもとを去って
しまうのではないかという心配から来るものだったか分からなくなった。
「いいの、家の都合って言ってあるから…。」
それを聞いて、千絵は少し安心した。少なくとも今日これからは一緒に居られる。だがすぐに別の不安が首をもたげた。
何を考えているんだ、私は。
以前なら自分の正体に関してこんなに動揺することは無かった。獣が自己防衛に移るのは、もっと目前に危機が迫ってからだからだ。
それなのに、今はあの黒服の男の事を考えただけで胃が縮み上がる。
「身体検査とかされたらどうしよう…。」
佳奈が唐突に言った。

「レントゲン、どんな風に写るのかな…。」
「多分、胸に歯が付いてるだろうね。」
千絵が言う。
「その村雨って人、殺しちゃえば?」
「意味無いよ、あいつはただの手先だもん。あいつが消えたところで、環境庁から別の役人が来るだけだと思う。
それに、このタイミングであいつが死ねば私への疑惑が強まるだけだ…。」
2人は下校途中、何度も対策を考えては堂々巡りを繰り返した。少女たちに出来る事は、ただ嵐が過ぎ去るのを待つのみだった。初めからその解答は出ていたのだ。
そしてこの見慣れた道を2人で帰る事が、この先そう何度も無いであろう事も、少女たちは薄々気づいていたのかも知れない。


それから数日、福沢や村雨からの接触は無く、気配を感じる事も無かったのだが、千絵は大人しく過ごした。
無論、人は食べていない。夜になるとどうしても食欲が抑え切れず、閉店間際のスーパーに出かけては大量の生肉を買い込んできて飢えを凌いだ。
精神的な落ち着きを少し取り戻すと、またしてもあの少女の事を考えるようになっていた。今頃どこにいるのだろう。人知れず、また誰かを喰っているのだろうか。
そう考えただけで、千絵の中で獣が疼いた。
学校では環境庁による集団聴取の日以降、聴取された生徒は他の生徒たちから質問攻めにされ、武勇伝のようにその時の様子を語って聞かせていた。
学校中で4ヶ月前の事件の噂が再燃した。未知の生物説を初め、伝染病説などが取り沙汰されたが、どれも現実味は無く子供たちが面白おかしく
話をする話題というだけのものだった。
誰一人そんなもの信じては居なかったが、この茶番を楽しまない手は無いとばかりに、千絵のクラスでも毎日その話題で持ちきりだった。
デリカシーの無い生徒たちは千絵の周りにも取り巻いてあれこれと尋ねたり、自分なりの推理を披露したりで、千絵が特に拒まなかったせいもあり、
いつの間にか休み時間になると千絵の机の周りに人が集まるようになっていた。


128:腐肉(P.N.)
09/12/04 05:24:26 Icf4nKa4
佳奈は少し離れた自分の席から、ちらちらと心配そうに千絵の様子を伺っていた。たまに堀切英次がやって来ると、笑顔でなにやら話し込んでいるようだった。
その光景を目にする度に、千絵は心が痛んだ。最近、千絵と二人で居るときの佳奈はいつも不安げで、あまり笑わない。
「ねぇ、蓮杖さんは進路どうするの?」
不意に、それまで数えるほどしか話した事の無い女子生徒が千絵に話しかけた。千絵の周りに固まった連中の話題は、いつしか事件とは全く関係ないものに変わっていたようだ。
「えっ?」
話の流れを聞いていなかった千絵が戸惑っていると、別の生徒が尋ねた。
「大学、どこ受けるとかもう決めてる?」
「わ、私は…。」
千絵は口をつぐんだ。これまで、佳奈も周りの皆もそうしているから、何となく受験勉強の真似事をしてはいたが、考えてみれば進学など可能だろうか?
彼女にはもう両親が居ない。今は小山内家の世話になっているし、父の口座から下ろした家族の「遺産」も生活に困らない程度は残っているが、
大学の学費にはとうてい及ばない。かと言って、就職、だろうか…。
「分からない…。」
千絵は思った通りを素直に口に出した。
「ええ、嘘!?」
「千絵、成績優秀なのに。」
「陸部も、途中で辞めなきゃ私大とか専門ならスポーツ推薦取れたかも知れないのにな。」
周囲の生徒たちが口々に言う。将来の事を思うと不安に押し潰されそうになる。自分が何をしたいのか、千絵には分からなかった。
「千絵、ちょっと良いかな。」
その声に振り向くと、佳奈が神妙な面持ちで立っていた。
「どうしたの?」
「来て。」
佳奈は千絵の手を引くと、すたすたと教室を出た。
普段生徒の来ない、屋上へ通じる階段の踊り場まで来ると、佳奈はくるりと千絵に向き直って言った。
「もう少し目立たないようにした方がいいよ。」
「目立ってる?」
「目立ってる。」
佳奈はぴしゃりと言った。
「私だって、好きで目立ってるんじゃない。」
「そう?」
棘のある言い方だ。
「佳奈、言いたいことがあるなら…。」
「千絵は疑われてるんだよ、あの人たちに!」
佳奈はふいに大声で言った。
「わかってるよ…。」
「大人しくやり過ごすしか無いって決めたのに、クラスで目立って…。」
「好きで目立ってるんじゃないってば。」
「私は心配してるだけだよ…。」
千絵は段々腹が立ってきた。
「私だって怖いよ、なのに一番傍に居て欲しいときに佳奈は…」
「私のせい!?」
佳奈は涙を溜めた目で千絵を睨みつけた。それを見た瞬間、千絵は自分の愚かしさを反省した。この数日の佳奈に対する感情は、全て自分のわがままではないか。
甘えるなよ、獣のくせに…。
千絵が謝る言葉を探していると、始業のチャイムが鳴った。
「あのさっ…」
だが千絵がそう言いかけた時には、佳奈はすでに千絵に背を向け、教室へ戻るために階段を降りて行くところだった。千絵は言葉を続けられず、とぼとぼと数歩後ろに付いて教室まで戻った。

-----------------------------------------------------------------

完全に機を逃してしまった。千絵は、あの時無理にでも引き止めて謝ってしまえば良かったと後悔した。
休み時間になると佳奈は机にうつ伏したままで、眠っているのか泣いているのかも分からず近寄りがたい。堀切でさえ、その日はもう佳奈に近づかなかった。
放課後になると、佳奈はすぐに生徒会室へ行ってしまい、一人ぼっちで取り残された千絵は野球部の男子たちに引っ張られて、校門に立てる文化祭用のアーチを体育倉庫から出す力仕事を手伝わされた。
それが終わると千絵は学校をうろついて佳奈の姿を探したが、文化祭まで後2日とあって庶務に追われてあちこち駆け回っているらしく、中々見つからなかった。
家に帰れば話す機会はあるからと、千絵は諦めて先に帰宅した。
佳奈の部屋で1人、千絵は空腹紛れにベッドに蹲った。毛布や枕から佳奈の匂いがする。
千絵は毛布にぎゅっと顔を埋めると、夕食まで眠る事にした。


[続]

129:腐肉(P.N.)
09/12/04 05:25:57 Icf4nKa4
>>124 ものかき… なれたら良いんですけどね…でも職業になったらきっとここにこうやって書くの程楽しく無いのだろうな、とも思います。
>>126 普通の、MS-IMEを使っていますよ。

130:名無しさん@ピンキー
09/12/04 07:32:39 oDn1zPyB
うまく仲直りできると良いな・・・

131:名無しさん@ピンキー
09/12/04 14:48:46 HqvmGfWH
アニメ「SAMURAI DEEPER KYO」第22話「機械仕掛けのドールズ」(DVD巻之八)で
ヒロインが歳世という敵の女に取り込まれるシーンがあった。
相手の体にズブズブとはまっていく感じ。
↓この動画の最初の方にある。
URLリンク(www.youtube.com)
歳世、体内から攻撃されて殺されてたけど。

流れぶった切ってスマソ。

132:名無しさん@ピンキー
09/12/04 20:26:55 D+WQkB8P
原作もアニメも難ありきなあのGENNKAI TOPPA作品か
懐かしい

133:名無しさん@ピンキー
09/12/04 22:06:12 oDn1zPyB
>>131
あの光り輝く境界部分には
肉々しいわれらのアヴァロンがきっとあるのだ

134:名無しさん@ピンキー
09/12/04 22:27:41 4EiBDHye
狂の漫画は人食い女性が多かったから妄想材料としては中々
直接食ってる描写がほとんど無かったのが残念だった

135:名無し@ピンキー
09/12/05 05:32:52 gY1VWpqD
しばらく見ない間に続きが…しかも千絵が乙女だー!!!

136:名無しさん@ピンキー
09/12/05 10:55:23 dzu+RnqA
良スレを発見したww
マニアックな割に勢いあるな

137:名無し@ピンキー
09/12/05 15:44:03 QeLAKH3y
腐肉氏のおかげだな。俺も正直2スレ目行くと思ってなかった。
最近捕食展開から離れてるがこれはこれでハラハラさせられて良い。

138:名無しさん@ピンキー
09/12/05 16:53:40 JnulAqj6
前スレで絵を提供してくれてた方々も忘れちゃならないな
ラミア絵描いた人とかのおかげで多少なりとも加速したし
腐肉氏の小説が一段落したらまた絵張ってくれるらしいし期待

139:名無しさん@ピンキー
09/12/05 22:00:29 v5RSZYpl
毎回楽しみで
すぐに足を運びたくなるんだ

140:名無しさん@ピンキー
09/12/06 01:36:55 enHxkNoX
パワプロクンポケット12に食べる所はあったよ
色々と違う気もするが

141:名無しさん@ピンキー
09/12/06 03:18:53 8MwNv+sp
女の子の方を食べるってことか。
嫌いじゃないけどスレ違いだな。

142:腐肉(P.N.)
09/12/06 06:18:16 Ae17CU8W
千絵が目覚めた時、隣りで佳奈が眠っていた。
しまった、どれくらい眠っていたんだろう?
時計を見ると、9時半を回ったところだった。疲れて帰ってきて、眠ってしまったのだろう。
夕食、食べたのだろうか?
千絵は佳奈の顔を覗き込んだ。だが、閉じた目の下に涙の流れた跡があるのに気付き、どうしても起こせなくなってしまった。
仕方なく千絵が1人で階下へ降りて行くと、佳奈の母が居間から顔を出した。
「あら、起きたの?」
「はい、すみません、眠っちゃって…。」
千絵が照れて笑うと、佳奈の母が台所へ連れて行ってくれた。
「ご飯、取ってあるから。起こそうとしたんだけど、佳奈がね、千絵ちゃん今日運動部の手伝いで重い荷物運んで疲れてるだろうって言うから、
起きるまで待ってたの。佳奈ももう寝ちゃったかしら?」
「そうみたいです…。」
佳奈の母がラップに包まれた皿を電子レンジで温めている間、千絵は涙が出そうになるのを必死で堪えた。佳奈は、どこから見ていたのだろうか。
どんな気持ちで、千絵を見ていたのだろうか。
食事が終わると、千絵は部屋に戻り、眠ったままの佳奈をぎゅっと抱きしめた。折れてしまいそうな小さな身体で、佳奈は今どんな夢を見ているのだろう。
そう言えば事件以来、夢を見たという記憶が無い事に、千絵はその時初めて気づいた。
千絵の中に残った僅かな感情が、それはとても寂しい事なのだと告げていた。

-----------------------------------------------------------------------

「あのさっ、佳奈…。」
登校途中に、千絵は勇気を振り絞って声をかけた。獲物に忍び寄る獣でも、これほど緊張はしないだろうという程、千絵は緊張していた。
少し前を歩いていた佳奈は、立ち止まって振り向いた。
「佳奈、ごめんね。私…。」
そう言い切らないうちに、佳奈はぴんと立てた人差し指を千絵の唇に押し付けた。
「もういいんだよ。」
佳奈は微笑んだ。
「私は、千絵の傍に居る。何があっても。この先どうなっても、それは変わらないから。ごめんね、くだらないことで苛々して。」
千絵は涙が出そうになるのを堪えた。
「ほーら、もう泣かないの。」
「泣いて…ない。」
佳奈は自分より一回り背の高い千絵の頭をそっと撫でた。千絵は鼻水を啜り上げながら「ありがとう」と呟いた。
「行こ、遅刻するよ。」
「ん…。」
千絵は佳奈に見つからないように、ぽろりと一筋だけ流れた涙をそっと手で拭った。それが2人の間を通う、共犯以上の絆の証だった。

143:腐肉(P.N.)
09/12/06 06:20:29 Ae17CU8W
----------------------------------------------------------------------
その日は午前で授業は終わり、午後からは翌日開催される文化祭の準備に当てられる予定だった。
生徒たちは昼が近づくにつれそわそわし出し、授業中にも拘らず心ここにあらずといった風にぼうっと遠くを見るような目で空を見つめていた。
千絵もその1人だったが、理由は違った。彼女は今後の身の振り方について、少しばかり考えを巡らせていた。
実は昨日まで、街を出ることも考えていたのだ。佳奈と喧嘩してしまった以上、小山内家に留まる理由も無いと、その場の自棄で考えてしまった。
今や状況が変わったわけだが、佳奈との仲直りは千絵にとって負の側面も持っていると気付いたのだ。
なぜなら、千絵が街を出ると言ったら、佳奈は確実に一緒に来るからだ。これ以上佳奈に迷惑はかけたくなかった。佳奈は普通の人間だ。
人間は人間として一生を送るべきだ。怪物は怪物として。自然界の摂理だ。
それにもしもの事が起こった時、佳奈は千絵と違って自分の身を護れない。夏休みの出来事が教訓だ。
もしまたそうなったら、あの時のように千絵が彼女を救うことが出来る保障など無いのだ。
「もしもの事」…。
何だ、もしもの事って?
警察に追われるとか?もしくは環境庁の連中か?
いや、違う。
千絵が考えていたのは、「もしも、“お母さん”と出くわした場合」だ。
千絵は怪物少女の色素の薄い冷たい目と、鋭い牙を思い出し、ぶるっと身震いした。
その時、誰かが彼女の名前を呼んだ。
千絵がはっとして顔を上げると、担任の白石が教室の戸口に立って手招きしていた。
気付けば授業はもう終わって昼休みになっており、教室はざわざわと騒がしかった。
千絵が一緒に弁当を食べようと机を寄せ合う生徒たちの間を縫って戸口までたどり着くと、白石は不安げな目を彼女に向けた。
「こないだの警察の人がまた来ててね、話したいって言うんだけど…。」
警察?環境庁では無いのか?
千絵はふと疑問に思った。
「蓮杖さんが話したく無いって言えば、帰ってもらうことも出来るのよ?」
「あ、いえ… 大丈夫です。話せます。」
白石の目が不安から哀れみモードへ切り替わった。大方、辛いのに気丈に振舞う健気な少女とでも思っているのだろう。
千絵は白石について階段を降りると、購買に群がる生徒たちを通り過ぎ、しんと静まり返った1階廊下までやって来た。
そこには「応接室」がある。他の教室から離れていて、千絵を含め多くの生徒たちは卒業するまで縁の無さそうな場所だ。
白石は2度ノックしてドアを開けた。千絵が入室すると背後でドアが閉まり、廊下を足音が遠ざかっていった。千絵は、応接室に2人きりになった。
待っていたのは福沢刑事だった。
千絵は大して驚きはしなかった。ただ、少し残念ではあった。千絵は彼に対して「人間的」な意味で好意を抱いていたからだ。
彼が今日わざわざここまで来たという事は、今日でお別れという事になるかも知れないと千絵は思った。


[続]

144:名無しさん@ピンキー
09/12/06 16:20:14 tG+7ZIoN
うまく仲直りできてほんによかった
また、別れの予感が・・
GJ!!

145:腐肉(P.N.)
09/12/07 05:18:28 bgb+4O+6
「座って。」
福沢は会議テーブルを指して重々しげに言った。千絵は言われるがままふかふかした椅子に腰を下ろす。
蓮杖千絵と対面して、福沢刑事はまだ迷いを捨てきれずに居た。
彼女に、自分の調べた事実を伝えるつもりで、覚悟をしてここへ来たはずだった。
だが彼女に何と言って尋ねれば良い?もし自分の勘違いだったら?彼は深く息を吸って目の前に座る可憐な少女に向き合い、口を開いた。
「正直に話して欲しい。」
福沢刑事は慎重に言葉を選び言った。
だがやはり動揺しているのか、あるいは千絵に親近感を持たせる作戦か、いつもの丁寧な口調ではなくなっていた。
「君は何か知っているね。」
「何か、というのは?」
千絵は落ち着き払って尋ね返した。
「ホテルの事件に関して。行方不明の同級生に関して。それから、君がアルバイトで配達担当をしていた地区の不明者について。」
そこまで調べたのか、と千絵は感心した。
「調べさせてもらった。」
千絵の心の声が聞こえたように、福沢はそう付け加えた。
「それから、もしかしたら先月の精神病棟の一件に関しても。」
千絵は少し驚いた。当推量で言っているのだろうか?緻密に計画を立てたつもりだし、証拠になるようなものは残していないはずだ。
「出来れば、このような結果になって欲しくなかった。」
福沢は本心からそう言った。心の中では、まだ彼女が無関係であって欲しいと望んでいる。
「だが調べれば調べるほど、全ての事件と君に何らかの接点が見えてくる。」
「常舞病院の事件も、というのは?」
千絵は好奇心から尋ねた。
「病院の名前を知っているんだね…。」
福沢刑事が残念そうに呟いた。いや、だがあれ程報道されていたのだし、日本中の話題になった。
近くだし、病院の名前をいちいち覚えている女子高生が居ても不思議は無い。
福沢の脳は瞬時にそんな事を考えた。
「一見関連性の無かった、一人暮らしの老人や青年が消えた事件やなんかでも、もう一度調べてみたら多くの場合、
生存が確認できる最後の消息は書留郵便の受け取りサインだった。
問い合わせれば、誰が担当だったかすぐに分かる。証拠は何も無い。どの事件も。
村雨という男がああ言ったが、あくまで行方不明事件で被害者すら見つかっていないんだ。
病院の事件に関しても、目撃証言も、有力な証拠は何一つ。
だが、もしも君が関係しているという前提で調べるなら、バスの運転手にこう聞けばいい。
『あの日、高校生くらいの女の子が乗らなかったか』と。精神病棟行きのバスなんて、君
くらいの年の女の子が普段そんなに利用するものじゃない。」
「そう…ですか。」
あまりに完璧な推理に千絵はそれしか言えず、居心地の悪さを紛らわせようと脚を組んだ。
やはり佳奈の考えた変装がまずかったか。だから私は、夏にあんな格好じゃあ余計に目立つって言ったのに。
それはさておき、福沢刑事は自身の推理を披露して、これからどう運ぶつもりだろう?
千絵は何も言わずに福沢の出方を見守る事にした。
「何も私は、君が犯人などと荒唐無稽な事を言うつもりは無いよ。」
福沢は力無げに笑った。
やはり、そうなるか、と千絵は思った。福沢はまだこれが「行方不明事件」だと思っている。
総勢100人を超える人間を、「普通の」女子高生である私が短時間でどこかへ連れ去るなりして消すことは、普通に考えれば不可能だと
結論付けるだろう。だがこのまま白を切り通せるとも思えない。
「…犯人に、喋るなと脅されているのかな?」
千絵が黙っているので、福沢はそんな事を尋ねた。
「ここは安全だよ。先生方にもしばらくこちらには来ないようにと言ってあります。」
相変わらず千絵はだんまりを決め込んだまま、長い脚を組みなおして会議テーブルの木目をぼんやりと眺めた。


146:腐肉(P.N.)
09/12/07 05:19:46 bgb+4O+6
「…お友達と一緒の方が、話しやすいですか?」
福沢のその言葉に、千絵は顔を上げる。
「友達?」
「小山内佳奈さん。」
千絵はどきりとして身体を強張らせた。なぜ佳奈の名前が出てくる?それは、私たちが友達で私が今小山内家に厄介になっているのは周知だが、
少なくとも事件に関して今まで佳奈の名前が出たことなど…。
「なんで…佳奈が…?」
千絵は呟くように尋ねた。
「さっき言ったように、私がバスの運転手を訪ねた時、彼は『2人いた』と答えました。あの日ちょうど小山内家の面々は家を留守にしていた事も、調べれば…。」
その続きはもう耳に入らなかった。福沢刑事は危険だ。私だけでなく、佳奈の存在にも気付いた。放っておくわけにはいかない。
福沢刑事の目の前で、蓮杖千絵は椅子から勢い良く立ち上がった。来客用の重そうな椅子が絨毯に覆われた床に倒れるまでの一瞬のうちに、少女の制服の前が開き、
真っ白く柔らかそうな肌が顕わになったかと思うと、その真ん中に亀裂が走った。
ブラジャーが乳房の間でプツリと切れたかと思うと、蓮杖千絵の可愛らしい口元から腹の辺りまでが一気に裂けて、巨大な口が現れた。
「何だこれは…!!」
その間抜けな一言が、福沢刑事の最期の言葉となった。
一瞬の出来事だった。巨大な口は福沢に頭からかぶりつき、彼の身体は少女の腹の中に消えた。
「千絵!?」
その時、応接室の扉が勢い良く開いた。千絵が振り向くと、息を切らした佳奈が戸口に立っていた。
「千絵、だいじょ…。」
千絵の肌蹴たブラウスと膨れた腹が目に入ると、佳奈はそこまで言って言葉を切った。
「警察の人、食べたの?」
「うん。」
千絵は軽くげっぷして答えた。
「慌ててたから…あーあ。」
絨毯の上に落ちた薄橙色のブラジャーを拾い上げると、カップの真ん中で切断され2つになっていた。
「午後はノーブラかなぁ。」
その時、どこか遠くの方で、重い金属が落ちるような鈍い音が響いた。
千絵は違和感を感じてふと見下ろすと、大きく歪に膨れた腹にコインより一回り小さいくらいの穴が空き、血が流れ出していた。
「あれ…?」
そう言って、黒っぽい血に指で触れた瞬間、千絵はめまいを感じてその場に倒れた。
「千絵!!」
悲鳴を上げて駆け寄る佳奈の脚が見えた。
警察って、本当に銃持ってるんだ…。
一瞬そんな事を考えたが、腹の中でまた福沢が震えるように身動きするのを感じると、千絵は腹筋に力を入れた。
腹の中で福沢の骨が砕け、握りしめた金属の武器が拉げるのが分かった。
次の瞬間、傷口から水鉄砲が発射されたように、血がビュっと噴出して絨毯を湿らせた。


[続]

147:名無しさん@ピンキー
09/12/07 20:54:12 GLGUWjQL
福沢さぁああああん…

148:名無しさん@ピンキー
09/12/07 21:29:57 YPLt/Etp
千絵ちゃんに食われたい

149:名無しさん@ピンキー
09/12/07 23:16:40 Fxg6C0ia
福沢さんがついに・・・

150:名無しさん@ピンキー
09/12/08 03:15:40 xj9btg3k
千絵ちゃんのげっぷを嗅ぎたい

151:名無しさん@ピンキー
09/12/08 15:36:01 UtnQuKeT
URLリンク(www34.atwiki.jp)
フェチ板の某スレのまとめwikiなんですけど、
女が人食う作品の情報も少し載っています。
イエロードラゴンがあらわれた!の第2話はトラックを丸呑みにすると
書かれていますが、そのトラックに人間乗っています。

152:名無しさん@ピンキー
09/12/08 18:24:34 fvTY3OPf
つか、ここもいい加減保管庫作るべきかね

153:名無しさん@ピンキー
09/12/09 00:17:14 +7bbZsTu
前の専ロはもう機能してないんかね?
最近めっきり更新してないみたいだけど
URLリンク(girlfriend.is-a-chef.org)

154:名無しさん@ピンキー
09/12/09 00:23:10 8J/zNpfe
線路に完成したSSとか保管しようよ
腐肉さんの完結したら保存しようよ
ピクシブに上げてた千絵、佳奈絵も本人の許可とれるなら保存しようよ

155:名無しさん@ピンキー
09/12/09 00:54:41 9BbvVPpB
俺は千絵タンの胃袋に保存されたいです

156:名無しさん@ピンキー
09/12/09 08:44:29 1Z3Osza7
すぐに消化されるよ

157:名無しさん@ピンキー
09/12/09 22:14:27 +7bbZsTu
>>156
うまいww

158:名無しさん@ピンキー
09/12/10 00:43:05 K8zRT8Tw
>>155
無茶しやがって・・・

159:名無しさん@ピンキー
09/12/10 05:38:25 URayF09A
>>156
それでも構わん!

160:名無しさん@ピンキー
09/12/10 05:44:43 pp8ddQHQ
消化されるのもいいがずっと保存されるのもいいな
ヤンデレみたいに

161:名無しさん@ピンキー
09/12/10 07:52:57 h/aLH8E7
>>160
おや?
新ジャンルじゃないか?
そのシチュは好きかも

162:名無しさん@ピンキー
09/12/10 17:49:05 TxfpBkRa
>>161
キョウコの人のはあれ違うのか?

163:名無しさん@ピンキー
09/12/10 19:35:42 LtMXxsC5
ずっと保存されたい派って異端か?
俺がそうなんだが

164:名無しさん@ピンキー
09/12/10 19:42:52 PEP7+EG/
キョウコは保存してなかったっけ?

165:名無しさん@ピンキー
09/12/10 22:15:56 h/aLH8E7
>>162,164
確かにされてたな
嗚呼、保存されたい

>>163
キミとはうまい酒が飲めそうだ

166:腐肉(P.N.)
09/12/10 23:03:13 EWocQ0dp
「佳奈、ドア…。」
千絵の絞るような声を聞くと、佳奈は慌てて応接室のドアを閉め、再び千絵に駆け寄った。
「千絵、待ってて。」
そう言うと、佳奈は垂れてくる髪を指でかき上げ、徐に傷口に唇を当てた。
「佳奈、何…してんの…?」
千絵が喘ぎながら言う。
「前に千絵がやってくれたみたいに、する。」
馬鹿だなあ、佳奈がそんな事をしても… そう言いかけたが、千絵は何も言わなかった。口の周りを真っ赤にしながら懸命に傷口を舐める佳奈を見たら、何も言えなくなった。
その様子は妙に艶かしく、淫靡だった。気付くと千絵は自分の舌で傷口を舐めていた。時折佳奈の舌と触れ合う度に、千絵は喜びと血の味を感じた。
やがて血は止まった。しかし傷はまだ生々しく口を開けて疼いている。
「痛い…?」
「ちょこっとだけ…。」
千絵は笑って見せたが、その無理な作り笑顔が余計に佳奈を心配させた。
念のためしばらく保健室で休ませて貰おうと、佳奈に付き添われて千絵はよたよたと歩いて行った。
本当はもうそこまで痛くなかったが、膨れた腹を見られないように前屈みになって歩いた。さながら逮捕された容疑者だ。
保健室へ行ってみると、保健教諭の柿原は不在だった。あれこれ聞かれるよりは都合が良い。佳奈はガーゼと包帯を失敬して来て、千絵の腹に丁寧に巻きつけた。
「応接室、片付けてくる。絨毯もともと赤だから、そんなに目立たないと思う。」
「ありがとう…。」
千絵はベッドに横たわり弱弱しく礼を言った。
「もし先生に刑事はどうしたか聞かれたら、『帰った』って…。」
「『知らない』の方が良いんじゃないかな、また今度みたいな事になった時のために。」
「そうだね…。」
千絵はそう答えたが、一抹の不安が心に残った。福沢がここへ来ることを、他の警察の人間は知っているだろう。
もしかしたら福沢が単独で動いていたのかも知れないが、いずれにせよ彼が千絵に会った直後に消えたことはすぐにばれる。
そうなれば、村雨だけでなく他の人間も千絵を怪しむだろう。もう誤魔化しきれない。
その時は…。
「午後の準備も、無理しなくて良いからね。」
佳奈はベッド脇から千絵の顔を覗き込んだ。
「大丈夫。佳奈は、行って。」
佳奈はこのまま彼女を1人で残して行きたくなかったが、しばし考えあぐねた挙句、渋々頷いた。
「じゃあ…また後でね。」
そう言って佳奈は、千絵の頬にチュっと口付けた。千絵はぽっと顔が赤くなるのを感じた。腹の傷が疼いた。
「クラス展の準備に区切りが付いたら、出来るだけ早く戻るからね。」
佳奈は可愛らしく微笑むと、頬を少し桃色に染めながら保健室を出て行った。
キスされた…。
1人になった保健室で、天上を見つめながら千絵はしばらくぼうっとしていた。
佳奈の唇の感触、こめかみに当たる温かく甘い香りの吐息、髪の毛が当たってちょっとくすぐったい感じを思い出しながら。
千絵は込上げてきたよだれをじゅるりと飲み込むと、煩悩を追い払おうと目を瞑った。そのまま意識が遠のいていき、千絵は眠りに落ちた。

167:腐肉(P.N.)
09/12/10 23:09:13 EWocQ0dp
「千絵、起きて。」
重い瞼をゆっくりと上げると、目の前に佳奈の顔があった。
「ん…」
どのくらい時間が経ったのか、辺りは少し薄暗くなり始めており、保健室の電気は佳奈が出て行ったとき同様消えたままだったので、千絵は周りの状況を見ようと
少し身体を起こそうとして、無意識に声を漏らした。見ると、佳奈はつい今までどこかの展示の手伝いをしていたらしく、腰からガムテープやらカッターナイフ
やらが顔を出したポーチを下げている。佳奈の後ろには唯香や恵や、クラスの女子が他にも何人か立っていた。
「何時…」
千絵はまだぼんやりとしたままの頭で思考するのに必要な情報を得ようと尋ねた。
「4時過ぎだよ。これから合唱練習。」
「具合どう?」
佳奈の肩越しに恵が尋ねた。
「起きれそうだったら、合唱練習だけでも来れるかな、と思って。」
千絵は皆に見えないように布団の下で手を延ばし、腹の傷の辺りを恐る恐る触ってみた。傷はもう大分良くなっているようだった。
「無理しなくて良いからね?」
佳奈は横目でちらりとクラスメイトたちの様子を伺いながら言った。
「んにゃ、大丈夫…。」
そう言って千絵は起き上がろうとした。
「あぁ、待って!」
佳奈が慌てて制止する。千絵は、どうしたのだろう?というように佳奈の顔を見上げ、次の瞬間、ブラウスの腹部に血がついている事を思い出した。
「ああ!え、えっと… あ、汗かいちゃったな。悪いけど、ジャージ取ってきてもらっても良いかな…。」
千絵は慌てて布団を肩の所まで引っ張り上げながら、咄嗟にそう言った。
「私行って来る!皆は先に体育館に行ってて。」
そう言って佳奈は保健室を飛び出して行った。他のクラスメイトたちも見舞いの言葉を口にしつつ、ぞろぞろと保健室を出て行き、千絵は再び1人になった。
クラスの人からこんなに心配されたのは初めてだ。普通の友達。思えば、今が一番普通の高校生らしい時を過ごしているのかも知れない。さて、羊の皮を被った
狼は、果たして羊たちの群れをいつまで欺き続ける事が出来るのか…。そんな事を考えているうちに、佳奈が体操着を持って戻ってきた。千絵はベッドから起き
上がると、佳奈の目の前でブラウスを脱ぎ捨てた。
「んん…。」
佳奈が恥ずかしそうに目を背けた。
「ん?」
そう言えばブラジャーをしていなかった。
「な、何よ今更…!」
正直千絵も少し恥ずかしかったが、ここで胸を隠したりしたら何か負けな気がして、強がった。その時、ふと眩暈を感じ千絵はふらりとベッドに腰をついた。
「大丈夫…?」
「ん…ちょっとふらっと…。」
「着せたげる。」
佳奈はそう言うとジャージの上を手に千絵の隣りに腰を下ろした。
「ひ、1人で着れる…。」
千絵がそう言いかけているうちに、佳奈は千絵に抱きつくように手を回し着がえさせていた。千絵は黙って従った。
「はい、できた。」
「お母さんみたいだよ。」
「うるさいな。」
2人はそう言い合いながら保健室を後にした。廊下に出た途端、千絵は再び眩暈を感じた。と同時に、胃の中で濁流が物凄い速さで渦を撒くような感覚に襲われた。
「ちぃちゃん本当に大丈夫?」
「うん…。」
千絵は腹の辺りに手を当てながら、佳奈に付いて歩いて行った。
「お腹、出てないかな…?」
千絵が不安げに言う。
「ジャージだし、ちょっと屈んでれば気にならないけど…」
「いつもならとっくに消化されてるのに…。」
千絵は恥ずかしそうに呟くと、忌々しげに腹を摩った。
「撃たれたんだもん、仕方ないよ。」
その時遠くの方で雷が鳴り、ぽつぽつと落ちてきた雨が窓を伝って歪な線を描き始めた。
「降ってきたね。」
「帰る頃には止むといいなぁ…。」
千絵は胸騒ぎを禁じ得なかった。悪天候や胃のむかつきだけではない、何か嫌な予感が全身の全ての感覚に警告していた。だが、この時が後戻りできる最後の
チャンスだなどと知る由も無く、千絵は体育館に足を踏み入れた。

[続]

168:名無しさん@ピンキー
09/12/10 23:45:25 yxW2upga
惨劇の予感!

169:名無しさん@ピンキー
09/12/11 00:10:21 XVxu2+r8
やべー続きが気になるw

170:名無しさん@ピンキー
09/12/11 00:49:45 86z1cw6U
活気があるのはいいが、わざわざ他スレ出向いてまで自慢するなと言いたい。

171:名無しさん@ピンキー
09/12/11 01:00:13 XVxu2+r8
え?

172:名無しさん@ピンキー
09/12/11 01:45:50 pCdFIpN+
>>162
キョウコって誰?つーか、どの作品か教えてちょ

173:名無しさん@ピンキー
09/12/11 07:32:03 Nt6lOLJy
>>170
向こうで出た煽りをこっちの犯行と言われても・・・

>>172
スレに投稿された漫画の一つ目二つ目の主人公

174:名無しさん@ピンキー
09/12/11 07:54:38 gVobeHo8
>>172
あれはいいものだ・・・

175:名無しさん@ピンキー
09/12/12 08:00:55 IXoKLA39
ちょっとー
かじられ派っていないの?
女の子の小さいお口に噛み付かれたい俺希少種?

ケンタッキーとかかじってる子をみるとキュンとなる。

176:名無しさん@ピンキー
09/12/12 14:03:21 sjskieUp
ぱないの

177:名無しさん@ピンキー
09/12/12 19:38:17 IhBVoTTj
>>175
仲間

178:名無しさん@ピンキー
09/12/13 01:58:13 d7Us3GR9
ロマサガ3のいけにえの穴思い出した

179:名無しさん@ピンキー
09/12/13 07:35:12 MFbJefte
>>178
それは女がかじられるじゃなかったっけ?
(実際は女が持ってきた肉)

180:名無しさん@ピンキー
09/12/13 19:04:58 yAKdcvdn
>>178
つ「ねこいらず」

181:名無しさん@ピンキー
09/12/14 09:03:21 Fa5NT1cM
ちょっとスレチかもしれないが、
今週の少年ジャンプに載ってる読み切りで
頭から蛇生えてる女がその蛇でネズミ丸呑みにするシーンあった。

182:名無しさん@ピンキー
09/12/14 20:19:55 tV3ZMjNd
>>181
ねずみだけといわず
オレモクッテクレー

183:名無しさん@ピンキー
09/12/14 23:25:38 HKCEzWAQ
ビジターという海外SFドラマで
エイリアンの女が人間の姿でハムスターを丸呑みしていた。
喉の膨らみが胃の方に下がっていく表現がされていた。 
そのエイリアンは人間も食料にするので、
小さくされたら・・・・

184:名無しさん@ピンキー
09/12/15 05:11:58 DoTPnlWi
ハムスターぐらいだったら人間の女も頑張れば丸呑みできそう
まあ誰もやりたがらないと思うがw

185:腐肉(P.N.)
09/12/15 06:21:03 0jb3+RpV
体育館に到着する頃には豪雨になっており、激しい雨が屋根を叩く音が、生徒たちの歌声に混じって広く冷たい体育館に反響していた。
2人が体育館に入ってきたのを見ると、ステージの前に立ち指揮棒を振っていた堀切英次は、手にしたタクトをぴたりと止めた。
「蓮杖さん、もう大丈夫なの?」
堀切が尋ねた。口を利くのは初めてだ。
「うん、大丈夫…。」
千絵はそう言ったものの、まだ熱がある時のように頭がぼんやりしていた。
佳奈に手を引かれて他の生徒たちの間に入りステージ上に立つと、照りつけるライトが目を刺す様だった。そのあまりの眩しさに、千絵は目を細める。
「千絵、ほんとに大丈夫…?」
隣りに立っていた唯香が心配そうに尋ねた。
「へ、平気…。」
千絵は目を細めたまま、正面を向いて、腹の出っ張りがばれない程度に直立しようと努めた。だが先ほど感じた胃の中の不快感は、今や吐き気に変わっていた。
そんな千絵の苦しみを他所に、堀切英次は再びタクトを上げた。ピアノの伴奏が始まり、最初のパートが歌い始める。
「ひとはただ、かぜのなかを」
千絵は自分がどのパートだったかも思い出せず、突然襲ってきた頭痛に顔をしかめた。
「まよいながら、あるきつづける」
再び眩暈がして、スポットライトの光が目の前で大きくなったかと思うと、視界が真っ白にぼやけた。
「そのむねに、はるかそらで」
耳鳴りがする。
「よびかける、とおいひのうた…」
周りの音が聞こえなくなった。と同時に、聞こえてきたのは自分の鼓動と、傷口で疼く血の流れる音。
千絵はふらりとよろけ、ステージ上に並んだ段上から脚を踏み外した。
まずい!
そう思った瞬間、ジャージがはじけた。千絵の意識が働くよりも早く、第二の口が勝手に開き、胃の中の異物を体外へ吐き出した。
黄ばんだ胃液や、粘液に混じったどろどろに溶けた肉や、消化しきれず明らかに人骨の形を保ったままの白い塊がステージ上にぶち撒かれた。
次の瞬間、音が戻ってきた。千絵の耳に飛び込んできたのは、何重にも重なり合った悲鳴の不協和音だった。もうピアノの音も聞こえない。
千絵の前に居た恵や数名は胃液をもろに浴びて体中から湯気を上げてのた打ち回っていた。
パニックに陥った生徒たちは、千絵や溶け行く級友達から離れようと、ステージ上でもつれ合った。
押し合いへし合いしていた生徒たちは、やがて塊のようになっていっせいにステージからフロアへ転落した。
誰もが少なからず落下の打撃を受けたために、一瞬悲鳴は途絶えてパニックは収まった。
替わりにうめき声が広い体育館にこだまする中、千絵は口から涎を垂らしながら、息を荒げてステージ上で屈み込んだ。吐いてしまったお陰で随分と気分は楽になった。
ステージから落下した生徒たちは、自分たちがまだ無事な事に気づくと、何か動きが無いかと息を殺してステージを見上げた。一瞬、水を打ったような静けさが体育館を包んだ。
次の瞬間、級友達の見守る中、壇上で一際高い指揮台の上に怪物が現れた。
同級生の蓮杖千絵の姿をしているが、その目は獰猛に光り、下顎から腹まで裂けた巨大な口の奥で、鋭い歯と巨大な触手のような舌が獲物を狙っている。
今自分の目にしているものが現実かどうかを考える余裕もなく、再びパニック状態となった生徒たちは一目散に逃げ出した。


186:腐肉(P.N.)
09/12/15 06:24:44 0jb3+RpV
何人かは不幸にも踏みつけにされてその場で命を落とした。だがステージから離れる事に成功した生徒らも、体育館から脱出する事は叶わなかった。
なぜなら、体育館の出入り口の戸は、咄嗟に気転を利かせた小山内佳奈の手で外から鍵がかけられていたからだった。
真っ先に戸口に押し寄せたのは男子たちだった。ロックされている事に気づくと、彼らは死に物狂いで滅茶苦茶に戸を叩いた。
だがそんな事で簡単に壊れる筈は無く、やがて彼らは後から押し寄せてきた生徒たちに押し潰された。
千絵の友人であった椎名唯香も、戸口に押しかけた生徒の1人だった。彼女には何が起こっているのかも分からず、とにかく悲鳴を上げ続けていた。
きっと多くの生徒がそうだったろう。
ふと何かの気配を感じて振り向くと、次の瞬間には彼女の身体はピンク色の肉の塊のようなものに絡め取られて、物凄いスピードで体育館の床を引きずられていった。
千絵はごきゅんと下品な音を立てて椎名唯香の身体を呑み込むと、腹の中でその肉を咀嚼した。
呑み込まれても唯香は悲鳴を上げ続けていたが、その甲高い声はやがてぐちゃぐちゃという有機体の潰れる音にかき消された。
その様を見せ付けられた生徒たちはますますパニックに陥った。だが何の行動も取れないうちに、次々に巨大な触手に捕らえられていった。
窓から逃げようとした生徒たちも触手の犠牲となった。辛くもそこから逃げ延びた生徒も、延々と体育館の中を触手と鬼ごっこするうちに力尽き、
立ち止まったところで命運尽きることとなった。

ただ1人、堀切英次は多くの生徒が餌食とされてからも生き残っていた。
いち早く体育倉庫に隠れた彼は、倉庫の窓から脱出を試みようとしていた。やっとのことで、窓の前に立ちはだかっていた巨大な跳び箱
をどかした彼は、窓ガラスを叩き割らん勢いで窓を開けた。
力ずくで跳び箱を動かしたせいで、指がじんじんと痛む。
彼はその指を窓枠にかけると、力いっぱい身体を引っ張った。外の空気と、降りしきる雨雫が顔に触れた。生き延びた。
助かった!
そう思った瞬間、何かが首元を掠めた。堀切は窓枠にしがみついたまま、ぴたりと動きを止めた。
何だろう?外から何かが、彼の首に向かって飛んできた。
堀切英次は体中の血の気が引いていくのを感じた。ふと、人影が目に入った。
窓の前、降りしきる雨の中に、ずぶ濡れの小山内佳奈が、髪の毛やスカートの裾から雨を滴らせて立っていた。
いち早く体育館の出口を封鎖した佳奈は、窓から逃げようとする者を止めるために、ずっと外で待っていたのだった。
その手には、クラス展準備で使うために腰のポーチに入れていたカッターナイフが握られている。
むき出された刃から、雨に混じって薄くなった血がしとしとと滴っていた。
「こふぁっ…。」
堀切英次は、噎せ返るような咳をした。すると、自分の口から真っ赤な血が霧吹きのように噴出し、小山内佳奈の可愛い顔を汚した。
「ごめんね、英次君。」
佳奈は冷たく言い放ち、カッターナイフを持っていない方の手でトンと堀切英次の額を軽く押した。
首から大量の血が溢れ出て、堀切英次の身体は急速に力を失っていき、剥がれたシールのように窓枠から離れると、体育倉庫の中にぐしゃりと落ちた。
その時、体育倉庫の扉が吹き飛び、触手が進入してきた。触手は床にくず折れた堀切英次の死体を見つけると、その身体を乱暴に引きずって行った。
途中で倉庫の戸枠に何度もぶつけられ、その度に堀切の首からどくどくと流れる血がひとしきり撒き散らされると、やがて級友の死体は視界から消えた。

[続]

187:名無しさん@ピンキー
09/12/15 08:06:46 vOVmjcWZ
クラス全員分か・・・
すごい量だろうね
GJ!!


188:名無しさん@ピンキー
09/12/15 11:28:37 B4n7IEBi
バイオハザード2のG第5形態みたいになりそうだな

189:名無しさん@ピンキー
09/12/15 15:46:19 LXdqDao+
なぜ俺のクラスには千絵がいなかったんだろう・・・

190:名無しさん@ピンキー
09/12/16 00:25:19 3wMkVarh
>>184
昔、鼠を丸呑みするサイトがあってだな。

191:名無しさん@ピンキー
09/12/18 12:08:37 ZmtDl5wS
肉食女性に喰われたい

192:名無しさん@ピンキー
09/12/18 20:04:31 vAdSk/C3
完全体キスショットにバリバリ食べられたい

193:名無しさん@ピンキー
09/12/19 22:16:29 SyhlOA6G
丸呑み派の私はラミアさんだな

しかし、最近かじられるシチュにもときめくものが・・・・

これが恋か・・・

194:名無しさん@ピンキー
09/12/19 23:12:19 ScqcvuDi
>>193
ナカーマ

195:名無しさん@ピンキー
09/12/20 00:30:17 ka0C5Mpm
ラミアと恋人になって呑んだり吐かれたり

196:名無しさん@ピンキー
09/12/20 01:49:38 kkvGCzZ2
キングコングのピラニアドンを見てみなさい


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