09/11/10 02:57:15 TiL/b/Zh
>>77
「ロクサーヌさんッ!!今度こそアレを入荷してくれるって言ったじゃないですか!」
「そんなに怒鳴らないでくださいな!こっちにも事情ってものがあるのですわッ!」
先ほどからこんなやり取りが、ずっと続いている。もはや時刻は終業間際だ。
それを遠巻きに眺めるセントシュタイン宿屋のカウンター組は、うんざりした面持ちを隠さない。
ルイーダは先ほどからがりがりと机を引っかいているし、若女将たるリッカでさえ、眉間に皺をこさえている。
レナだけがカウンターから離れた位置にいたためか、別になんでもないような風をしている。
だがその我慢もそろそろ限界に来ていたようだった。
やがてレナは静かに、喧嘩に熱中する二人に近づくと、その首根っこを掴んだ。
「ありゃ?」「あらっ?」
そのままあっけにとられる二人をレナは素早く音もなく自分のカウンターに連れて行き―
「アンタたち、しばらくここで反省」
金庫に、放り込んだ。
そんなわけでレナ達宿屋の面々は、本日も無事に定時に帰ることができ、
また一方で、トンヌラとロクサーヌは、心ならずも二人でこの狭い金庫の中、一夜を過ごす羽目になったのである。
「あちゃー……レナさん怒らせちゃったよ……」
「開けてくださいませー!…と怒鳴ってみても無駄ですわね」
金庫に閉じ込められた二人は、呼べど叫べど来ない助けをようやく諦めたようだった。
なにしろ金庫に閉じ込められてからというもの、精魂が尽きるまでひたすら暴れ続けたのである。
だがそんな状況になっても、二人は言い争いをやめはしなかった。
「全く。どこかの誰かさんが暴れでもしなければ、こんなことにならずに済んだのですわ」
「あれはロクサーヌさんが今度こそ入荷してくれるっていうから!」
「確実に手に入れられるわけではないといつも申し上げています!」
「だったら確信を持たせるようなこというな!」
「勝手に信じた貴方がバカなのでしょう!」
激昂に任せて、ロクサーヌはトンヌラの体を払いのける。
と、ごん、という鈍い音がした。どうやら頭をぶつけたらしい。
「いったー……。狭いのに何するんですか!」
「いい気味ですわ。同じ目に遭いたくなければしばらく大人しくするのですわね」
フン、と鼻をならしてロクサーヌは後ろを向こうとして、気づいた。
―この金庫、存外に狭い。気づいた瞬間、ロクサーヌの尻に何かが触れる。
「同じ目に遭いたくなければ……なんて言いましたっけ?」
トンヌラの、下半身だった。
「…な!何を考えていらっしゃるのっ!」
慌てて振り返ろうとしたが、時既に遅く、ロクサーヌの体は前方の硬い扉に押し付けられてしまった。
身動きできない上半身に、トンヌラのそれが重なる。
背中からのしかかられ、もはやロクサーヌに抵抗は許されなかった。
「大人しくしていればいいんでしょう。大人しくしてますよ。
僕の気が済むまで貴方で慰めさせてもらってからね!」
びっ、と音を立ててドレスが脱がされる。下から現れたのは柔らかい肌だった。
もっともここは暗闇で、感じられるのは体温と互いの息遣いだけ。
獣のように荒い呼吸と、ねっとりと湿り気を帯びてにわかに温まりだした空気。
それだけを頼りに、トンヌラはロクサーヌを追い、ロクサーヌはトンヌラから逃れようともがく。
だが、この状況においてもはや勝敗は明らかだった。
「ここは冷えますね。一つ肌と肌で暖めあいましょうよ。朝までね!」
大きく膨らんだ男根は、体温と湿気を頼りに、ロクサーヌの中へ侵入した。
もはや観念したように、ロクサーヌはその陵辱を、受け入れたのだった。
さて、次の日。
出勤してきたレナは二人が仲直りできたかどうか見るため、金庫を開いた。
中から出てきた二人は、とても清清しい笑顔で言った。
「いやー、体と体でぶつかり合えば、分かり合えるものですねー」
「トンヌラ様ッたら、まさかあんなに素敵な所がおありだなんて……ぽっ」
ルイーダは昨日と同じく思いっきり顔をしかめながら言った。
「とりあえず風呂入りなさい」
その冷たい一言で我に返ると、二人は仲良く、そそくさとシャワーに向かった。
おしまい