09/12/10 19:34:56 58FcrWsZ
「え……え?一緒に?いいの!?」
先ほどとはまるで違った期待と喜びに上気する顔を見て、面食らう。
そしてふいに腑に落ちた。
「まいったな。それってそんなに特別なことかい」
否が自分にあるのは明らかだった。
(釣った魚に餌はやらないってやつだよね)
思い返してみれば、外食どころか二人で外出した記憶すらろくにない。
いかにもそういうデートまがいのことを好みそうな彼女が、
思い出に飢えていても無理はなかった。
しょくぱんまんは手を伸ばし、少女の頭を優しくなでた。
「たまにはね、ごちそうするよ。日没が早いぶん夜は長いから、
きっとゆっくりできるよね」
そのとき少女が浮かべた笑みは、まさに花のほころぶようで―
こんな気まぐれも悪くはないかと思わせるのに十分なものだった。
「ありがとうしょくぱんまんさま」
「お礼を言うのはまだ早いよ」
ドキンは首を振った。
「ううん、すごく嬉しい。ありがとう」
喜ばしいような後ろめたいような、くすぐったい気持ちになって、
軽くついばむようなキスをした。
まあ、自分の不甲斐なさを身につまされたとしても、笑ってくれるなら別にいい。
「何が食べたいですか。お姫様」
そう言って、しょくぱんまんはそっとドキンの手をとった。
END