10/11/29 00:50:19 533j0P8X
「カオルー! かーおーる!!」
カオルの前には、数多の輝く星の光に照らされた、真っ白で平坦な地平の続く世界が広がっていた。
通信機からジリジリと響くノイズに交じって、上司のサイトウの声が聞こえた。
「あ、は~い。サイトウさん」
「はーいじゃないわよバカ、ばかっ! とりあえず戻ってきなさい! あなたの総メンテするわよ!!」
「えー、でも私の仕事が途中…」
「しかもカオル!! あと45秒で『朝』よ!!」
「マジで!?」
カオルが振り向けば、そこにはどこまでも高くそびえる一本の塔があった。
東京ドームほどの半径を持つ塔は、大地のように真っ白で、どこまでも無骨で飾り気のないソレを辿って見上げると、
塔はある高さ……途方もない高さ「球」を作り、途方もない半径はカオルの視点からはバレーボールに思えた。
カオルが両腕を掲げると『宇宙服』上腕に付けられた推進装置がボウ、と一瞬明るくなるり、その反動で彼女は垂直に飛び上がる。
「ごめんね、アルファ」
無重力での慣性でゆっくりと上昇し続ける彼女の眼下で、近すぎることで大地の様だったものは、果てしなく広大な曲面に過ぎなくなった。
それはドーナツであり、ドーナツの中心……彼女の向かう「中心の球」から、6本の巨大な柱が均等に伸びてドーナツを貫いていた。
そしてドーナツの表面が波打ったかと思うと、白い大地は遮光率を切り替え『ガラス』に変わった。
ガラスの中には、町があった。森があった。湖があって…町があった。
そこに、日が注ぎ込む。人工太陽の光が、徐々に出力を上げ始める。
ここは惑星アルファ・ケンタウリの軌道上、100万人規模のスペースコロニー。
「こちら宇宙間構造物技師カオル、センターAIどうぞ?」
『こちら都市コロニー管理センターAIアルファ・コンプレクス。どうぞ』
「ただいま中央区に帰還します。回収お願いします」