嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ 第56章at EROPARO
嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ 第56章 - 暇つぶし2ch550:名無しさん@ピンキー
10/04/27 14:48:32 vadbTIyY
まずは就職おめでとう! 心から祝福させてもらうよ
ウナはピーターパンみたいなもんだから、いつまでもこのままでいいけど、君たちは大人にならないといけないからな
けど、本当に辛いのはこれからだから、挫けずに頑張って欲しいな
いずれにせよ、悪いことをした時、相手を傷つけてしまったと思った時には、きちんと謝れる大人になって下さい
それさえできれば、きっと薔薇色の人生があなたを待っているでしょう

551:名無しさん@ピンキー
10/04/27 23:31:59 5FlybdeK
取る 上がる

552:名無しさん@ピンキー
10/04/28 06:44:44 NSbF7tFk
私は失業者だが、たかが2ちゃんの一スレの謝れ!謝らないの問題でここまで引っ張るとは随分生活に余裕のある方々なんでしょうね!!
このスレ他スレの笑いものだよ(-.-)zzZ

553:名無しさん@ピンキー
10/04/28 09:43:23 f52l+r2s
心配しなくても、こんな糞スレ誰からも注目されてないさ
それより失業中の身で朝からPink三昧とは余裕あるなあ
よほど貯えのある人なんだろうな

554:名無しさん@ピンキー
10/04/30 17:55:19 tgm46dvN
身勝手なレスだけど、せめて完結して欲しかったなー

555:名無しさん@ピンキー
10/05/01 14:24:50 rPsQtfit
アレで完結だったんだよ
悲しい結末だけど、みんなで話し合って選択した未来なんだもの
黙って受け入れなきゃダメだ

556:名無しさん@ピンキー
10/05/01 14:48:34 FA6+54dj
世界一無意味なスレとっとと閉鎖しろ!! 死ね

557:名無しさん@ピンキー
10/05/01 17:34:03 rPsQtfit
そうはいかないよ
謝罪を受け入れ、許すことはできても
なかったこととして忘れることはできないからね
冷却時間を置いて、再構築しようったってダメダメw
幾らでも蒸し返してあげるよ

558:名無しさん@ピンキー
10/05/01 20:24:02 FA6+54dj
>>557の理屈はチョンと支那畜の理論お前ら支那畜、チョンは日本から、いや地球から出ていけwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww

559:名無しさん@ピンキー
10/05/01 21:35:19 FA6+54dj
wwwwwwwwwwwwwwwwww
粘着

支那畜

チョン

お前ら



この

空白



お似合い



ザマア

wwwwwwwwwwwwwwww

ネエ

悔しい

wwwwwwwwwwwwwww

支ね

wwwwwwwwwwwwwwwwww
wwwwwwwwwwwwwwwwww
wwwwwwwwwwwwwwwwww
wwwwwwwwwwwwwwwwww

wwwwwwwwwwwwwwwwww

wwwwwwwwwwwwwwwwww

wwwwwwwwwwwwwwwwww

wwwwwwwwwwwwwwwwww

wwwwwwwwwwwwwwwwww

wwwwwwwwwwwwwwwwww

wwwwwwwwwwwwwwwwww

wwwwwwwwwwwwwwwwww

wwwwwwwwwwwwwwwwww



560:名無しさん@ピンキー
10/05/01 21:59:09 rPsQtfit
国際的なポジションじゃ、もうそのチョンや支那畜に置いてけぼりにされているというのに
惨めだな

561:名無しさん@ピンキー
10/05/02 11:27:57 6EFbPhLX
投下します。












バカが見る豚の穴

562:名無しさん@ピンキー
10/05/02 14:58:58 OwU+3z5A
擁護派というか、一般住民のレベルがこの程度だからな
保管庫が見捨てるのも理解できるよ
これじゃしゃあねぇわな

563:名無しさん@ピンキー
10/05/03 04:47:39 cG+AEQaF
ヤッホーウナちゃん元気!!ネタスレとしては、ジャイ子のハゲ死ねスレの次位に面白いョ~

564:名無しさん@ピンキー
10/05/03 14:19:11 ICJNe3vB
そいつは遺憾だな
一番を目指して今後も頑張るよ

565:名無しさん@ピンキー
10/05/04 05:47:08 oQrRLhBh
ここは、ウナと基地外の対話スレだなw
ウナも真面目な人みたいで基地外相手に良く真面目にレスしてるよw
私は、部外者なので良く解らないが避難所は、もう3ヶ月以上更新して無いみたいだし
前の荒らしも住み付けない程スレが荒れている事は、事実だし
ウナが勝利宣言をして一万年を呼び戻してスレを再構築する気は、無いの?


566:名無しさん@ピンキー
10/05/04 05:56:40 oQrRLhBh
ごめん、言い忘れたが“ウナ”自体がスレの盟主としての再構築と言う意味だよ。

567:名無しさん@ピンキー
10/05/04 08:12:41 p3FZB6rS
スレ自体が修羅場か

568:名無しさん@ピンキー
10/05/04 14:48:26 uGpF8HgF
勝利宣言は一万年氏に対する謝罪がなされた後だな
その日が来るまで戦いは終らないよ

569:名無しさん@ピンキー
10/05/04 20:36:51 VgntiT2X
謝罪なんて方便。
ホントはただ荒らしたいだけでしょ。

570:名無しさん@ピンキー
10/05/04 22:04:03 uGpF8HgF
そりゃ誤解だよ
どうあっても荒れてなきゃ困るって人がいるみたいだなあ

571:名無しさん@ピンキー
10/05/05 11:13:53 FOgykRvo
誤解なんて方便
ただ荒らしたいだけだろ

572:名無しさん@ピンキー
10/05/05 12:56:19 GhToXmRi
方便なんて誤解
ただ荒れていて欲しいだけなのかな?

573:名無しさん@ピンキー
10/05/05 13:40:07 cjYc/gSj
>>568
戦いって誰と戦ってんだよw
相手がいなきゃ戦えねーだろw

574:名無しさん@ピンキー
10/05/05 17:22:58 GhToXmRi
いまさら何を言っているのかね
君も敵の一人ではないか

575:名無しさん@ピンキー
10/05/05 19:45:12 4E+UrWvA
本当は謝罪なんてあきらめてるんですね、わかります。

576:名無しさん@ピンキー
10/05/05 19:56:56 GhToXmRi
君が正常化をあきらめているようにかい?
ウナだって元々は書き手の一人だったんだよ
決して一万年氏本人じゃないけど
スレの正常化は、多分だけど君以上に祈ってる

577:名無しさん@ピンキー
10/05/06 01:38:57 l073HjB5
このスレまだ荒れてんのかwwええ加減にしろよ

578:名無しさん@ピンキー
10/05/06 14:22:32 gabgHW3i
ほんと、何を意固地になってるんだろうね
作品投下ができなくなるくらい、特定の書き手を総掛かりで叩いたりすることが
果たして良いか悪いか、それくらい自分で判断できるだろうに

579:名無しさん@ピンキー
10/05/07 00:40:57 a988RJ62
wwwww

580:名無しさん@ピンキー
10/05/07 09:56:08 LgMxl32m
ウナだの一万年だの言ってる奴は間違いなく周りに影響されて荒らしてるだけ。

581:名無しさん@ピンキー
10/05/09 20:01:09 2e9+vppo
どこまでもマイペースで意固地に突き進んでやがるなあこのキティは

582:名無しさん@ピンキー
10/05/09 22:02:48 eqw7S8Lw
信念の差だろうね
たった一人で大勢を相手にして、一歩も引かないのは立派だ

583:名無しさん@ピンキー
10/05/10 01:24:48 qLhNsY5s
ホントに皆さんはこのスレが好きなのですね。
1から見ましたが、まさに『修羅場』ですね…。
タイトルに修羅場と入っているからこのような修羅場を繰り広げておられるのでしょうか?
もうおやめになってはいかが?


584:名無しさん@ピンキー
10/05/10 11:03:52 yOoyAHjZ
意地を張るのをかい?
それともスレを続けることをかい?
部外者を装っているだけとは思うけど、本当に部外者なのなら黙っていてくれ
こっちは住民合意の元でやってるんだから

585:名無しさん@ピンキー
10/05/10 11:57:20 /QIRc31o
荒らしは時間だけ無駄にしているな

586:名無しさん@ピンキー
10/05/10 20:08:35 yOoyAHjZ
いや、意外と充実してるよ
全てを無駄にされた一万年氏の悔しさに比べたら屁でもないしね

587:名無しさん@ピンキー
10/05/10 23:05:07 Q2HIY3SB
ざまーみろw

588:名無しさん@ピンキー
10/05/10 23:31:20 tE+ohffi
荒らしの気晴らしスレか

589:名無しさん@ピンキー
10/05/11 04:42:21 OqwnKOt8
そんな負け惜しみ言ってるからいつまでも進展しねぇんだよ
ゼハハハハハハ

590:名無しさん@ピンキー
10/05/12 11:28:48 6M7beBvQ
ウナよ!住民の総意とか言ってるけど不特定多数のエロパロ板で何を定義に住民と言ってるんだい? 後八年スレを続けるらしいが、一万年や荒らしが仮にもうこの世から居なくなっても、怨念を吐き続ける気かい?



591:鰻猫
10/05/13 00:34:55 sfk5+voM
一万年氏に謝罪します。・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・
死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね
死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね
死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね
死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね
死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね
死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね
死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね
死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ねね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね
死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね
死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね
死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ねね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね
死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね
死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね
死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死
ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね
死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね
死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね
死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死


592:鰻猫
10/05/13 02:31:12 sfk5+voM
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593:鰻猫
10/05/13 09:51:52 sfk5+voM
これだからこのスレはやめられない

ある作者に狙いを定めて徹底的に貶めた。
スレの空気は悪くなり作品投下がどんどん減っていった。

トリップを解析できた作者の作品の続きを勝手に書いた。
偽者だと発覚した時にそれに乗じてスレを荒らす事も予定の内。

一目見てパクリだと判る露骨なSSも投下した。
当然パクリ論争が勃発するのでそれに乗(ry
現在進行中。

昔に戻れるなんて思わないことだ これだからこのスレはやめられない

ある作者に狙いを定めて徹底的に貶めた。
スレの空気は悪くなり作品投下がどんどん減っていった。

トリップを解析できた作者の作品の続きを勝手に書いた。
偽者だと発覚した時にそれに乗じてスレを荒らす事も予定の内。

一目見てパクリだと判る露骨なSSも投下した。
当然パクリ論争が勃発するのでそれに乗(ry
現在進行中。

昔に戻れるなんて思わないことだ これだからこのスレはやめられない

ある作者に狙いを定めて徹底的に貶めた。
スレの空気は悪くなり作品投下がどんどん減っていった。

トリップを解析できた作者の作品の続きを勝手に書いた。
偽者だと発覚した時にそれに乗じてスレを荒らす事も予定の内。

一目見てパクリだと判る露骨なSSも投下した。
当然パクリ論争が勃発するのでそれに乗(ry
現在進行中。

昔に戻れるなんて思わないことだ これだからこのスレはやめられない

ある作者に狙いを定めて徹底的に貶めた。
スレの空気は悪くなり作品投下がどんどん減っていった。

トリップを解析できた作者の作品の続きを勝手に書いた。
偽者だと発覚した時にそれに乗じてスレを荒らす事も予定の内。

一目見てパクリだと判る露骨なSSも投下した。
当然パクリ論争が勃発するのでそれに乗(ry
現在進行中。

昔に戻れるなんて思わないことだ









594:名無しさん@ピンキー
10/05/13 11:07:44 sfk5+voM
うなぎ釣り ∈(゚◎゚)∋ ウナギ捕り

595:名無しさん@ピンキー
10/05/13 11:08:42 sfk5+voM
このスレッドは1000を超えました。
もう書けないので、新しいスレッドを立ててくださいです。。。

596:名無しさん@ピンキー
10/05/13 14:19:16 fnIBu56J
狙いを定められて徹底的に貶められた作家というのが一万年氏だ
ウナは正義を守るために荒らしと戦ったに過ぎない
ただ、残念なことに荒らしの数が多過ぎたため、収拾がつかなかった

597:名無しさん@ピンキー
10/05/13 15:56:31 Z6K2sM+E
昔も今も住人を頭ごなしに非難してるだけ

598:名無しさん@ピンキー
10/05/13 16:06:23 fnIBu56J
そんなことはない
上手い作品や面白い作品には、惜しみ無く拍手を送ってきたよ

599:名無しさん@ピンキー
10/05/13 18:54:16 Z6K2sM+E
そうだな
一万年の作品だけは惜しみ無く拍手してたな

600:名無しさん@ピンキー
10/05/13 20:22:30 fnIBu56J
確かに一万年は好きだったな
拍手していたことを否定するつもりはないよ

601:名無しさん@ピンキー
10/05/14 01:37:27 L6MXLc0m
>>599>>600よう!お二人さんョ~お前らは、bbspinkの運営者か…?違うよナァ?
そこの馬鹿二人勝ってにスレを私物化するんじゃネエ!!!
過去に何かあったか知らないがいっまでもグチグチいってんじゃあネエヨ!
このオカマ野郎スレは利用者全員のものだ!
今度来たときまた不毛な事してたら表に引きずり出してぶん殴るぞ!!


602:名無しさん@ピンキー
10/05/14 06:33:24 YxygTXwW
SSスレ。

603:名無しさん@ピンキー
10/05/14 08:58:41 yHnflZ/C
過去じゃなく、現在進行形の話なんだけど
やってしまった立場にすれば忘れたいって気持ちがあるだろうが
うやむやにすれば、また誰かにとって気に入らない作品が投下された時、同じ悲劇が繰り返される
このスレは好きだけど、あんな悲しい結末だけは二度と見たくない

604:名無しさん@ピンキー
10/05/14 12:22:21 2dVFMaHL
ようするにウナギイヌという荒らしがただのバカってことだろ

605:名無しさん@ピンキー
10/05/14 12:24:07 QXU+qx08
では投下するぜ

はやては買い物を済まし寒空の行程をゆっくりと家に戻り
玄関を開けた。と我が家を支配する空気に顔をしかめる。
我が家の雰囲気はまさに劣悪。一種の呪いのような黒い恨み節というか食べ物の恨みというか
とにかく鬱々とした感情が現在の衛宮家を支配していた。
これほど場を支配するような気配をただ感情の発露だけで行えるのは
英霊と呼ばれる士郎が先刻呼んだ少女くらいだろうか。
どうやら今はとりあえず英霊様のご機嫌を取らなければならないようだ。
自分とヴィータが外出した時、士郎は席を外しそれをザフィーラ、シグナムが追いかけていった。
その後自分とヴィータが買い出しに出たということは家内に残っていたのはシャマルとセイバー…
シャマルはセイバーのような人とトラブルを起こすようなことはないはず。
逆に青い男から助けてもらったことを深く感謝していることだろう。
シャマルが感謝…そこまで思いを巡らせるとはやては一つの結論に達した



「料理やろか…?」



いやいや待て待て確かにシャマルにはあまり台所に立って欲しくはないが
料理一つでここまで場を重くされるとは…
いや初対面の相手にシャマルの味のある料理はやはり失礼なのかもしれない。
セイバーは過去に名のある人物ということらしい。相当な美食家だったとしてもおかしくない。
隣を歩くヴィータもこの空気に嫌気が刺しているようだし
ほな解決するとしますか。まぁなんとかなるやろ
自身の空気もため息と共にやや重くしてはやては居間に向かった。



衛宮士郎は苦戦している。
ああ、聖杯戦争の第2の敵はどうやら身内にいたらしい。
偶然とはいえせっかく味方にできた英霊様は今や
衛宮家に対し全面的な悪意を発し敵と断じている。
我が家でもっとも敵意を向けられているのは先程生まれたばかりの新入り、
テーブルの上のものだった。生みの親共々敵意の中心に据えられその身は竦み体温を下げていっている―
まぁ料理だけど…生みの親はしきりに頭を下げ謝っているが子の行いは一向に許される気配はない。
セイバーはただ瞑目しているだけだがその身に纏う(怒)は一言呟いた呪詛に結晶している。
なんだかなぜかシャマルと一緒に正座しながら頭を下げ続ける自分がいた。
シグナムとザフィーラは我関せず背を向けテレビを眺めている。
セイバーの放つ不機嫌な王気を前にしても図太い2人は動じた様子もなく普段通りくつろいでいる。
シグナムに至っては気の毒そうにという視線を時々チラチラと送ってくるも
その口元には明らかな微笑が浮かんでいた。



今の状況を剣の騎士は楽しんでいた。久方振りに帰宅をしてみれば多くの強敵と渡り合える機会、
主を救う算段が付き、そしてを自分と似たような雰囲気を纏う存在を見つけたのだ、
これが愉快でないわけがない。
ただシグナムの満足そうな表情に苛立ちを覚えた士郎によって
シグナムの知らぬところで明日のシグナムの朝食のレベルは引き下げられようとしていた。
ヴィータにとって居間の光景は呆れるしかないものだった。
いざ命をかけた戦いとなれば凄まじい実力を発揮するであろう冷艶な金髪の騎士は
料理一つですっかり年相応というか外見通りのすねっぷりを露見させてしまっていた。
怒っているのかもしれないがヴィータにとってそれは
駄々をこねているようにしか見えない。
そんな相手に世間的には27歳で通っている女と家主がペコペコしているの
もまた滑稽なのだが。


606:名無しさん@ピンキー
10/05/14 12:24:38 QXU+qx08

「あ~あそんな奴ほっときゃいいのに。たく料理一つでそんなムキになるなよな~。
そんなに機嫌直して欲しいなら士郎が作ってやればいいじゃんかよ。
得意だろ。その辺は」



セイバーの不機嫌さが伝染したのかヴィータも口を尖らせ
頭を掻きながらいい放つ。
けれどその言葉に衛宮家の面々は天恵を受けたかのように顔を見合わせた。



「そうや、士郎の腕は一品なんよ。セイバーさんも食べたらきっといちころや。
な、士郎作てあげよ」



はやては正座していた士郎の首に腕を回しつつズズイと
セイバーに士郎をアピールするもセイバーは無反応で
ただ先程、言葉を発したヴィータを横目使いにみるだけである。



「あ、らら?」
「埒が明かない…とりあえず話をしよう。
聖杯戦争の話を。いいな?セイバー」
「そやね、今はそっちが優先やしな」



そろそろ頃合いかと感じ本題に入ろうと
する士郎にはやても相槌を打った。
立ち上がってヴィータに何か言おうとしていたセイバーは
士郎の聖杯という言葉に我を取り戻す。
金髪の女性が作ったものに不覚にも故郷の味を思い出し感極まって
ついつい感情的になってしまったがせっかくの持て成しに
少々大人気ない姿を晒したのは礼を失していた、
と思い至りセイバーは



「なかなか面白いところがあるのだな食に細かいとは。
もっと騎士然としているのかと思ったが
そういう我欲を全面に出したみっともない姿を見せるのも
悪くはないだろう?セイバー」



とテレビの前でくつろいでいた女の
にやついた一言に再び竜気が沸騰しそうになる。





607:名無しさん@ピンキー
10/05/14 12:24:58 QXU+qx08
「私を侮じょ…」
「シ~グ~ナ~ム~。いつまでも引っ掻き回さんでええんよ」
「あ…す、すいません主…」



セイバーが怒りの矛先を向ける前にピンク髪の女は主による
笑顔の恫喝を受け畏まってしまった。
主のこの表情はまずいあれがきてしまう!
何故、シャマルやヴィータでなく私が!? と、シグナムは恐怖した。



この世界に顕現してより5年、その間に士郎やはやてが成長していったように
外見は変わらずともヴォルケンリッターも変わった。
穏やかで和やかなこの家の空気によって。
士郎、はやて、桜という素晴らしき鉄人の腕によって、主に食に対する意識だが…



「士郎」
「ああ、わかってる朝食な」



黒い笑顔、としか形容できない主の呟きに食については
衛宮家最高法規の男が同意してしまった。
朝食が抜かれるという審判は弁護人なしで結審する。
シグナムは…拗ねた。ふて寝を決め込む。



「…みっともないぞ我らが将…」



ため息が一つ。



居間に7人がテーブルを囲んで座す。先程までのどこか弛緩した空気はそこにはない。
これから話される内容は全てが異常、超常の世界の話。
人が容易に命を散らす世界である。
5年間平和を享受していたとはいえヴォルケンリッターは
その世界の厳しさを誰よりも理解していた。
だが止まるわけにはいかない。せっかく手に入れた安息、
そしてそれをそれとして受け入れてもよいのだと気づかせてくれたはやて、そして士郎
2人の平穏の為にも聖杯は勝ち取る価値あるものである。



「俺はセイバーのマスターとしてこの戦いに参加する。
セイバーは命の恩人だし、そもそもこんな戦い、無関心でいられない。
俺達の生きてきた街が破壊されるかもしれないし
人が大勢死ぬかもしれない。
そんなのは認めなれない。だから戦う!」





608:名無しさん@ピンキー
10/05/14 12:25:19 QXU+qx08
士郎の決意に異を唱える者はなく皆静かに耳を傾けていた。
ヴォルケンリッターは士郎の隣に座るはやてを注視する。
士郎は彼らのまた大事な存在であるがあくまでヴォルケンリッターの主は
衛宮はやてでありその意志こそがヴォルケンリッターの向かう先を決定する
唯一の撃鉄が故に。



「覚悟はできとるわけやな。私はそんな士郎を止められやせん。
けどな生きてこなあかんよ。せっかくあの大火災から生き残れた命や、
切嗣が見つけて私達と過ごして生きてきた命や。
…私は魔術も使えんし運動能力もない。
残念やけど士郎と一緒にはきっと…戦えん…」



士郎に真摯な表情を向け暖かく伝える言葉。
けれどもそこには自らの非力に対する悔しさや悲しさも漂っていた。
だからこそはやては彼女の守護に思いを託す



「どうかみんな士郎に協力してやって欲しいんやけど…」



それはヴォルケンリッターの待ち望んでいた言葉。ならば否定は有り得ない。
4人は共に何を今更と顔に浮かべ快諾した。



セイバーははやてとヴォルケンリッターの間に懐かしくも
最後には自らの手からはこぼれ落ちた眩しき誓いをみた。
その懐かしき関係を聖杯の力によって今一度築き砕けぬ不朽のものとしたいのか
それともそんなものは始めからなかったことにするのか答えはまだない。
ただ今は3度目のこの世界で変わらぬ主従の絆を築き聖杯を勝ち取ること。
目の前の少年とその傍らの主従となら叶えられる。
そうセイバーは感じた。



「ではマスター、誓いを」
「そうだな」



仰ぎ見る少年はかつての主が息子
そしてその傍らに羨む程の忠と誠を得る少女は娘。
衛宮切嗣には娘はいたが息子はいない。
また娘はセイバーの知るその姿とは似ても似つかない。
彼等の詳細は未だにわからない。
ただ奇妙な感慨をもって新たな主の前に立つ。
「…私は衛宮士郎の剣となり盾となり
衛宮士郎の敵を滅ぼすことを誓います」
「…衛宮士郎はセイバーのマスターとして
全力を尽くし聖杯を勝ち取ることを誓う」
ここに契約は成り7騎中最優のサーヴァントとイレギュラーが
聖杯戦争の舞台に立った。


609:名無しさん@ピンキー
10/05/14 12:26:05 QXU+qx08
意と覚悟は固まった。
ならば、次に求められるのはその思いを形にする計画である。
今度の方針を定めることが遅れて争いに参加した
士郎達の急務だった。



「まず、私達はすでに大きな戦略的痛手を被っている。
士郎、それが何かわかるか?」



シグナムは真剣に戦士の顔で問う。



「…敵に本拠地がバレてることだな。少なくとも青い男に」
「ま、お前のせいだけどな」



と、ヴィータ。その遠慮のない指摘に士郎は
言葉を詰まらせた。



「責めはせん。だが、事実を理解しておけ。
この不利を覆すためにも、私達は一刻も早く敵の所在を掴まなければならない。
これはザフィーラとシャマルに任せる。
めぼしい標的が見つかり次第、私とヴィータとセイバー
あと、期待はしないが士郎で一気に叩き潰す。
異論はないか?」
「シグナム、異論はないけど質問がある」
「なんだ?ヴィータ言ってみろ」
「はやてはここに残すのか?大河の家とかに
隠れてた方が安全じゃないか?」



ヴィータの問いに答えようとしたシグナムをはやてが制し、答える。



「私はここに残る。別に意地はっとるわけやないよ。
さっきの士郎の話からするとあの青タイツの戦闘目撃したから
狙われたってことらしいしな。しっかり見てもうた私も、
どこへ行っても狙われる身や。
そんならここに残るのが一番ええ。
あと、さっきヴィータと買い物行ってる時にでかーい男連れた子に喧嘩売られて
な。
士郎共々命とりにくるて言われたんよ。
せやから私もすっかりこの戦いから逃げられん。
終わるまでみんなと居るつもりや」






610:名無しさん@ピンキー
10/05/14 12:26:26 QXU+qx08
はやての告白に一同は驚いた。その内容は、
もう1人の敵の存在を示していたのだから。



「あの大男はやばかった。向こうがあっさり引いてくれて助かったぜ。
ガキんちょは、はやてにえらい敵意を向けてた。
名前も名乗ってたけど…えーと」
「…イリヤスフィール・フォン・アインツベルン」
「そう、それだった!て、はやて残るのかよ。ま、あたしがいるから
安心して大船に乗ったつもりでいてくれていいけどな。
どこかのへっぽこ魔術士みたいにのされるようなへまはしねぇし」
「士郎も頑張ったんやしあんま苛めちゃあかんよヴィータ。
せやけどさっきのヴィータは確かに頼もしかったわ。ありがとうな」



よしよしと頭を撫でられるとヴィータははにかんでうつむく。



「えへへ」



ばつが悪そうな顔になる士郎の隣で、1人、
複雑な気持ちを浮かべ苦い表情をするものがいた。



「どうかしたか?セイバー」
「イリヤスフィール、ですか…」



士郎の問いかけも届かぬ程セイバーは没入していた。
このセイバーの心ここにあらずという状態に気づかないものはいない。



「主が言った名に心当たりがあるのか?
今は情報が何より重要だ。セイバー、知っていることがあるなら話してもらおう」





611:名無しさん@ピンキー
10/05/14 12:26:47 QXU+qx08
シグナムは有無言わさぬ迫力で尋ねる。
その威を備えた声にセイバーは自らが過去の回想に
捕らわれていることに気がつかされた。
たった今、衛宮士郎が剣となると誓ったばかりだというのに…
セイバーは己を恥じシグナムに向き直った。



「…私は前回の戦いでもセイバーとして召喚され
聖杯を前にして敗れました。ですからこの戦いに参加する常連ならば
名と本拠はわかります」
「六十年前にもここに喚ばれてたのか、それは心強いな」



士郎は感心しセイバーの言葉を待った。



「…いえマスター、前回の戦いは…」
「ええ、セイバーさん、名前と本拠だけを教えてや」
「はやて?」



セイバーの言葉を真顔で遮り話をもどすはやて。
そんなはやてに士郎は違和感を覚え、
セイバーもまた戸惑ったが優先度から考えれば
はやての言うことはもっともである。



「わかりました、はやて。
この戦いの常連と言われる家は
アインツベルン、マキリ、遠坂だそうです。
アインツベルンはここから30キロほど離れた郊外の森を本拠地としています。
遠坂は霊脈の地に居を構えているとか、マキリについては、
私もわかりません」



セイバーの話をそれぞれが吟味する。と、
セイバーが語った名に驚きを隠せない者が2人。





612:名無しさん@ピンキー
10/05/14 12:27:07 QXU+qx08
「と、遠坂!?はやて、遠坂ってあの遠坂か?」
「わ、私に言われても…はは、でもそやったらどうしたもんやろなぁ」
「セイバー、この戦いはマスターとサーヴァント、両方倒す…
いや、殺さないといけないのか?」



遠坂、遠坂凛は士郎、はやての同級生であり
その完璧な立ち振る舞い、優雅さ、整った顔立ちは、
やや、朴念仁入ってるとはいえ健康的な男子である
士郎にとって十分に興味を引く対象であった。
仮にその遠坂凛を殺さなければならないとすれば、士郎にとって
この聖杯戦争は前提からして苦しいものとなる。
士郎の疑問は士郎同様、相手を知るはやての疑問でもあり、
ヴォルケンリッターにとっても戦略上の方針を決定する上で
把握しておくべき事項だった。



「いえ、マスターを殺す必要はありません。サーヴァントさえ倒せば
そのマスターは脱落扱いとなります。
ただ、逆にマスターを殺し魔力の供給を断ち
サーヴァントを消滅させるという手があることも事実です。
私の前マスターはこれを得意としていました」



必ずしもマスターを殺す必要はない。この言葉に安堵する、士郎、はやて。
対して、ヴォルケンリッターの面々は目つきを鋭くする。



「どうかしたんか、シグナム?そんな怖い顔して」
「主、その遠坂という者は主達の学校に通っているのですね?」
「そうや、彼女はこれがまた、できるかっこええ女なんよ。その遠坂さんな、なんと私と…」
「失礼、かもしれませんが、その者を我々は第一の標的として定めます」
「ほんま…?」





613:名無しさん@ピンキー
10/05/14 12:27:27 QXU+qx08
話の流れを敏感に感じ取りはぐらかそうとしたはやてを遮り
シグナムは直球を投げた。
はやてがシグナムらの顔色を眺め見ると4人共一様に真剣な目で答える。



「せめて…せめてや、月曜一杯待ってくれんか?遠坂さんと話がしたいんよ」
「シグナム…俺からも頼む」



しばし、沈黙が流れる…
僅かの間の後、シグナム達は目配せすると互いに頷き合う。



「主達の気持ちもまた、尤もな物なのかもしれません。
わかりました、待つとします。ただし、月曜の登校には
私達も隠れながら付いて行かせてもらいます」
「ありがとうな、みんな。
付いてきてもらうんはもちろんOKや」
「ああ、遠坂ならきっとバカなことはしないはずだし話せばわかってくれる」



「主、士郎…2人の気持ちもわかりました…
しかし聖杯を求める以上最後にはやり合わなければならない相手
ということだけは忘れないでください…」



沈痛な面もちで語るシグナムの姿に士郎はハッとする。
はやてよりも実のところ士郎の方がヴォルケンリッターと目指すところは近く、
誰より彼らを理解しているつもりだった。
だというのに自分は救う相手を1人にすることができない。選べない
これは自分の甘さなのか、覚悟の弱さ故なのか士郎はわからなかった。



「は~い、はい。大体方針は決まったみたいだし難しい話はここまでにしましょう?
ここからの主役はセイバーちゃんで」





614:名無しさん@ピンキー
10/05/14 12:27:48 QXU+qx08
沈黙が広がり始めた室内に突如響く脳天気な声。
今までもその場にいながらまるで今現れたかのような
その、場違いな明るさに一同は呆気に取られた。
特に名指しを受けたセイバーは眉間に皺を寄せ頭を抑える。
直感が嫌な予感を告げていた。



「…なんだシャマル、セイバーに何か?」
「セイバーちゃんは多分これからしばらくは家にいるんでしょう?
だったら便宜上の立場がいるんじゃないかしら?」



明るい声で、シャマルは将に尋ねる。
シャマルの言葉にシグナムもまた何か思いつくところがあったのか
次第に張り詰めていた顔が緩み始める。



「確かに、どう思いますか主?」
「私に振るんかシグナム、なかなかに挑戦者やね~」



シグナムがはやてに振ると、はやてもまたいい笑顔で答える。
室内の空気はあっという間に騒がしいものに変わり始めた。



「私は1サーヴァントであり、それ以上でも以下でもないので
そのような気遣いは無用なのですが…食事をとることも、寝る必要もないので」



予防線を張り、話題から逃げようとするセイバーに対し
攻める方は多勢であった。



「いいや、駄目や。この家に住む以上はそんな我関せずー
みたいなのは認められへんよ」
「そうだな、俺の作る飯も食べてもらいたいし、
1人だけ食べないだなんて絶対駄目だ」
「大河や桜に会わせる際の紹介はどうしたものか」
「あ~大河が見たら喜びそうだ。桜はわかんねぇけど」
「桜ちゃんとだってすぐ仲良くなれるわよ。
セイバーちゃんなんかすごくいい子っぽいもの。
でも、セイバーちゃんの立場というか身の上はどうしたらいいかしらね」





615:名無しさん@ピンキー
10/05/14 12:28:37 QXU+qx08
皆がそこに思いを巡らせはじめた時、沈黙を破る一言が降って沸いた。



「シャマルの娘、で、いいのではないか?」





ザフィーラの一言に……シャ……マ…が…………



One moment, please.



「…私は何もみんかった…じゃ、じゃあシャマル、
セイバーさんはシャマルの妹てことでええか?」
「そうです、そうですよ、セイバーちゃんみたいな大きい子が
私の子だなんてご近所のみなさんも納得するわけないですし、
私の妹くらいがすごく、妥当です」



沈黙は金、そういう諺があったなと、はやては苦笑いを浮かべる。



「セイバーちゃんもそれでいいかしら?」
「あ、ええ、構いません、シャマル」



セイバーは今では数分前から比べると1人欠けた部屋を見渡し、答えた。





「さて、セイバーの処置も決まり、シャマルの気も収まったようだし
明日の予定を決めてしまおうか」



シグナムがやれやれといった様子で一同を眺める。
シグナムは再び戦士の顔に表情を戻すもシグナムに合わせたのは
セイバー1人、その他は「明日の予定」と言う言葉にもなんら緊張感を示さない。



確かに遠坂なる者を狙うのは月曜以降とすることにはしたが
明日1日なにもしないで過ごす、などという考えはシグナムにはなかった。
それはセイバーも同様であったようで皆の態度に怪訝な顔をする。


「マスターは明日、どのように行動するおつもりですか?」
疑問を形にし、自らの主に尋ねるも答えは実にあっけらかんとしたものだった。


616:名無しさん@ピンキー
10/05/14 12:28:58 QXU+qx08
「明日?明日は、藤ねぇや桜、ああ、さっき名前が揚がってた、
ここにいる以外の俺の家族みたいなもんだけど、
そいつら含めみんなと街へ遊びにいくつもりだ、セイバーも来いよ」



緊張感が無いというか、邪気の無いというか、
セイバーのマスターはそれこそ少年のような笑顔を彼女に向ける。
これには彼女も驚きを通り越して呆れてしまった。
シャマルもヴィータも明日の遊びという内容に
気が行ってしまっているようで士郎、はやてと歓談を始めてしまう。
仕方なくシグナムは座を移した。




「悪いな、皆平和ボケしてしまっていてな。
主や士郎はともかく、私達4人もこの5年、戦いから離れた
平和な生活にしっかり浸ってしまって…このザマだ」



セイバーに相対するのはシグナムのみ。
ふう、とため息をつくシグナム、けれど、そんなシグナムからも
セイバーは柔らかい空気を感じた。



「あなた達は幸せそうだ。羨ましくもある。
だが、聖杯を求める戦いにすでに巻き込まれているということを
もう少し自覚して欲しい」
「すまない。だが、いざ戦いとなれば我らも主のために
命を掛けて戦うのには変わりはない。そこは忘れてくれるな、セイバー」
「…はやてはあなた達に士郎の手助けを頼みましたが
あなた達の望みはあるのですか?」



一瞬、間を置いたシグナムだったがすぐに口を開いた。



「そうだな…隠すことでもない。まず、主の願いを果たすこと。
今ならば、士郎を支えることがそれになろう。
我らとしては主の体を蝕む呪いから主を解放したい。
これは士郎の願いでもあるはずた。
聖杯とやらが万能というならば、可能性がある」
「呪い?」
「ああ、不治の病と言ってもいい。もし、今のままであれば、
主は半年ともたないだろう」




617:名無しさん@ピンキー
10/05/14 12:29:18 QXU+qx08

その言葉にセイバーは顔を顰める。



「シグナムー、セイバーさんもこっち来てや。明日の話しよ」



2人に手招きするはやての表情からセイバーは
その病を感じ取ることはできなかった。
ただ、その体は吸い尽くされたかのようにひどく魔力が欠乏している。
セイバーにはそう、見えた。



「今は付き合ってくれると嬉しい」



シグナムが横顔で苦笑いするのを横目で確認する。
この幸せそうな空気を後1日くらい感じるのもいいかもしれない。
すぐに、苛烈な戦いが始まるのだ。
彼らにも最後の華やぐ時間を楽しむ権利はあろう。



「わかりました。明日1日くらいなら、付き合いましょう」



セイバーも視線を緩めると、頷いた。



明日は月曜からの戦いを前にした最後の日曜だ。
シグナムやセイバーのしていた苦い顔も良く分かる。この戦いは油断したら
即、死を意味する。
現に俺は一度死んだか、死にかけた。
シグナム達は甘いと言うかもしれないが
…だからこそ明日を楽しみたいと、思う。
もしかしたら最後になるかもしれない。そんな気がするからか。



切嗣に拾われてから、一度とて孤独は感じなかった。
切嗣が留守にしてる時は側にはやてや藤ねぇがいたし、
切嗣がいなくなってしまっても入れ替わるようにヴォルケンリッターの4人が衛宮家に現れた。
それから半住人?と化した桜も合わせると今では8人の家族と言ってもいい。
皆、掛け替えのない存在で、それを今日の俺が体験したことを
誰かが体験する――それは駄目だ。



正義の味方…は家族を優先的に護ってもいいんだろうか?
家族という掛け替えのない存在と多数の救うべき存在、
その天秤をどちらに傾けるべきか…いや両方を救ってやる――
そう思ってもみんなの顔を思い出すと、不安になる。それができるのかと。



618:名無しさん@ピンキー
10/05/14 12:29:55 QXU+qx08


「悩んでるようやね」



風呂から上がり廊下を歩いていると縁側に座り庭を眺めていたはやてがいた。



「まだ、部屋に戻ってなかったのか?風邪引くぞ」



この十年、はやてとは兄妹か姉弟をやってきた。
あまり納得はできないけれど誕生日的には向こうが姉となるらしい。
体が弱い内は姉と主張して来る事もなかったが
良くなるに従いそのような立場を押し出してきていじられたこともあった。
今は、どうだろう?
俺より先に風呂に入っていたはやての髪は未だに艶やかに水気を帯びている。
はやてはわりかし顔はいい方だし、儚げな仕草もどこか似合う。
だから――様に成りすぎていて独りで夜空を見上げてる、なんて姿は見たくなかった。



「はは、なんや怖い顔しとるな。隣、座らん?
まぁ、昨日の今日いきなり殺し合いに巻き込まれたんやから、士郎も悩むか」
「ちげー、このばかはやて、具合悪くなってきてる人間がいつまでも起きてるか
ら怒ってるんだ」



そう言いつつなんとなく隣に座る。



士郎は私と大河にだけ口が悪くなるんは相変わらずやなー」
「そうか?気にしたことないぞ」
「ま、そらええか。信頼の証とでも思っとく」
「なんだよ、それ」



はやての思考は時々良くわからないと思う。



「今回の事件は士郎にとってはもしかしたら、暁光なのかもしれんね…
正義の味方さん」
その言葉にドキッとする。はやては正義の味方がなんなのか知っている。
俺のそれが衛宮切嗣から受け継いだものだということを。
「それは士郎の夢や。私は応援しとる。
ただ、無理はせんで欲しいかな。
きっと辛いだろうし、悩むことも多そーやし。
もし、な…士郎が私と誰かを天秤に掛けなならん事になったら
私は捨ててくれてええ」
愕然とする、そんなことをはやては半ば照れながら言った。
聖杯戦争は明日から―


619:名無しさん@ピンキー
10/05/14 12:31:59 QXU+qx08
士郎の朝は早い。なんたって10人近い人間の朝食である。
仕込みの時間は多いに越したことはない。



「士郎、今日は朝食の分だけなのだな」



そんな士郎を後ろから獣化した状態で見上げるのがザフィーラの日課。



「ああ、多分今日は昼も夜も外食になるからな。
ザフィーラの分は別に作っておく」
「すまないな…士郎」



士郎が台所に立つ時のみザフィーラは残飯orドッグフードから解放される…
桜は当然、もう一人も何故か桜同様だった。



「おはよ。士郎、ザフィーラ。ん?仕込みはあらかた終わってもうたか。
じゃ、私はザフィーラにご飯やろかな。ザフィーラご飯やよ~」



居間に顔を出したはやては士郎の仕事具合を確認すると
満面の笑みをザフィーラに向けた。



(…ザフィーラ…)
(よいのだ…士郎…主の心遣いは嫌いではない…)



心通じ合う悲しき念話の先に見えるもの。



「どうかしたん?二人とも暗い顔やけど?」





620:名無しさん@ピンキー
10/05/14 12:32:28 QXU+qx08
それはドッグフード。




衛宮家の炊事を統べるのが士郎ならば洗濯等を統べているのがシャマルである。



「シグナム、洗濯物はないかしら?」
「んん?いや…別に………すー」
「あらら、起きないなら仕方ないわね~脱がしてあ・げ・る(ハート」



「シグナム、昨夜、朝にでも手合わせしたいと言っていましたが、
いつまで待たせ…………失礼…」



障子を開けた先の光景にセイバーは思わず障子を閉めきびすを返す。



「あ、朝からなにをやっているのです!しかも女同士でなどと…」



金髪の美女が淫靡な顔つきで、目を潤ませた豊満で
無駄ない肉体美を誇る、これまた美女に跨り、服をめくりあげ…
という光景にセイバーは顔を熱くした。



「セイバーちゃんもどうかしら?」



障子の向こうより聞こえる声を即座に切りすてる



「結構、私は興味ないので失礼させて…なっ!?」
「せっかく姉妹になったんだし一緒にやるのもいいと思うのよ、ね?」



この場から立ち去ろうとしたセイバーを足止めしたのは、
何もない空間から伸びた腕。
ぐいぐいと引っ張るそれであったがこと力においてセイバーに勝るものではない。



「ふ、私を足止めするには力不足だったようですね、シャマル」
自然勝ち誇った顔になるセイバー。
「なに、やってんだ?お前ら」
「と、いうわけだシャマルが変なのは確かだけどあれは日課の洗濯。
手伝ってやってもいいんじゃねえか?
あたしは見たいテレビあるから手伝えねぇ悪いな」


621:名無しさん@ピンキー
10/05/14 12:32:50 QXU+qx08
ヴィータはそう真顔でいうや居間へ消えていった。
ヴィータの説明になんとも難しい顔になるセイバー。



「なーにを勘違いしたのか、お姉さんは聞かないけど、どうかしら?」
「洗濯…なら、いいでしょう」



シグナムの衣服をカゴに入れて持つシャマルにセイバーは視線を合わせ



「そ、よかった。じゃあ、はやてちゃんから借りたその服も洗いたいから、
脱いでもらえるかしら?」
「は?」



7時になろうとする頃、呼び鈴も無く新しい足音が2つ、衛宮家に増える。
1つは騒がしく、もう1つは慎ましいそれ。



「おはよ~みんな元気ー?」
「おはようございます」



居間に現れた藤村大河、間桐桜の前に衛宮家の面々はすでに揃っていた。



「来る頃だろうと待ってた。2人共座ってくれ。
まだ、朝食は食べてないよな?」



士郎の言葉に、もっちろんと答え、いつもの自分の席に座る大河とは違い、
ただ、その場に立ち尽くし一点を見つめる桜。



「先輩…そちらの方は誰ですか?」



その問いに衛宮家に緊張が走る。主に士郎だけに。



(みんな、口裏合わせは昨日の通りで頼むぞ)



622:名無しさん@ピンキー
10/05/14 12:33:11 QXU+qx08


はーい、とか、ああとか気のない返事が帰る。



「ええっとこの人はシャマルの妹でセイバー・ヴォルケンさん。
姉のシャマルに会いに来たんだ。しばらく家に滞在する予定らしい」
「はじめまして、セイバー・ヴォルケンです。姉がいつもお世話になってるとか」



背筋をしゃんと伸ばし挨拶するセイバーには気品が感じられた。



「驚いたわ~シャマルにこんな立派な妹さんがいたなんて。私は藤村大河。シャマルの友人かな。
ねぇセイバーちゃん歳はいくつなの?」
「はい、今年で16になります」
「じゃあシャマルとほとんど一回り違うのね。外歩いたら親子で…」
「はいっ!そこまで!年々お腹に肉が~とか言ってるあなたに
言われる筋合いは、ないわよ?」
「フンだ!あんたとか、シグナムとかがおかしいの。私の肉体年齢はまだ十代なんだから。一体何してればそんなに変わらずいられるのよ。黒魔術とか使ってんでしょ。そーよ、そーだ」



シャマルはホホホと、勝ち誇った笑みを見せるだけで答えない。
次第、大河の矛先はシグナムに向いた。



「シグナムはいいわよねー24にもなってブラブラしてるだけだし。
ストレスとかなさそうで。
私やシャマルみたいにさっさと働きなさいよー士郎が困るじゃない」



大河の言葉に珍しく影で深く頷いている士郎を尻目にシグナムは溜め息をついた。



「大河、私は未だに未熟な自分を磨いているんだ。それに定職に付こうものなら
いざという時に自由に動けん。例えばだ。地震が起き家族に危機が迫っているとして
教師のお前は生徒を第一に考え行動しなければならないだろう?だが私はどうだ?
なんのしがらみもなく家族の為に動くことができる。
この重要性、セイバーならわかるだろう?」
「ええ、いざという時、素早く果断に動けることこそが最も貴重なことです」
「だ、駄目よ!セイバーちゃん。この女に同調したらダメ女まっしぐらよ!」





623:名無しさん@ピンキー
10/05/14 12:33:32 QXU+qx08
大河のあまりの剣幕に呆気にとられたセイバーは士郎につい言葉をかけてしまう。



「現代では違うのですかマスター?」



マスター、その単語は大河、そして苦笑いで聞いていた桜に衝撃を与えた。



「master…所有者、支配者、飼い主…」



暗い顔でブツブツと呟く大河を士郎は不気味そうに見つめた。



「士郎…」
「な…なんだ藤ねぇ?」
「…こんな可憐な子に何させとんじゃー!!お姉ちゃんは悲しいぞー!!」



突如、士郎の襟を掴み上げブンブンと振る大河。



「う…が、く、苦し…あ」



室内には若い男の喘ぎ声が響き、朝食の場は阿鼻叫喚な図へと変わりはじめる。
そこで初めて衛宮家は士郎の弁護に回る。



「大河センセ」
「なによう、はやてちゃん。私はこの鬼畜王を退治しなきゃならないの」
「センセも英語教師なんやからわかりますよね?
masterは師匠の意味もありますよ」
「そうだけど…」
「そんなら、答えは簡単やないですか。士郎の腕前に感服しとその道に入ろうと
士郎を師と仰ぐ。これのどこがおかしいんです?」
「むむっ……………まぁそうね。はやてちゃんに躾られてる士郎が鬼畜に走るわけないかー」



手が離され、士郎は落ちた。物理的に。




624:名無しさん@ピンキー
10/05/14 12:34:08 QXU+qx08

「そうですよー、…桜ちゃんも安心した?」



先ほどから沈んだ顔をしていた桜に声をかけると、桜はビクッと反応した。



「も、もちろんです、…私は先輩のことを信じてますから」



と、いうもののその表情は一向に晴れない。



(あちゃー。これは桜ちゃんの中で鬼畜王士郎爆誕やね)
(ああ、残念ながら1つの信頼関係が終わってしまったようだな)
(う、うるさい!)



「あーなんだ、飯たべね?」



ヴィータの提案により静かに食事は開始された。
そんな中で、むっとかおおっとか言ってるブリテン人が1人。
また、食生活の難しさを表すが如く、な2人。



(…はやて…納豆はどうした?)
(………………)
(また、食べないつもりか?これほど体にいいものはないと言ってもいいんだぞ!)
(………………)
(シャマルにあげたのか?)
(……士郎、セイバーさんの胸のサイズ…教えてあげよか?)



士郎から目をそらしたまま、はやては念話の中でぼそりと呟く。
口から味噌汁吹くとはこのことである。
周囲には災厄が振りまかれた。



「ぅおい!何やってんだよ。あたしのキャベツに掛かったじゃねぇか!」
「わ、悪いヴィータ…」
(はやて!)
「そ、そうや、みんなちゃんと水着は用意してある?
今頃ないーゆーたらあかんよ」



士郎の怒りに染まった視線を苦笑いで避けながらはやては全員に話しかけた。
「はいっ持ってきました」
ここでは一転笑顔になる桜。
「私も持ってきたよー弟を迷わすなんて悪い姉だね。私も」

625:名無しさん@ピンキー
10/05/14 12:35:15 QXU+qx08
と、大河。
もちろん士郎は前者は気になったが後者は(ry



「セイバーさんは突然の話やから用意しとらんと思うけど安心してや。
これから行くとこにはちゃんとそれ用の店もついとるから」
「そ、私がしっかり選んであげるから」
「シャマルが…ですか?できれば誰か別の…」
(な、セイバーさん、なんか角がとれてきたんやない?)
(単に嫌がってるだけともとれるけど…ま、いいことじゃないか。
それよりはやて、納豆のことだけど…)
(……………)



柳洞一成の足取りは弾んでいた。友人、いや彼にとっては
親友といってもいい衛宮士郎から日曜に遊びに行かないかと誘われたのだ。
これが嬉しくないわけがない。
二つ返事で承諾し、今日までの日数を指折り数えて待っていた。
わくわくざぶーん、新都にできた全天候型屋内ウォーターレジャーランド。
それが今日の彼らの目的地である。
この時まだできてないじゃん。半年後じゃん、というツッコミは甘受します。
でもあるということで。



そんな柳洞一成が足を踏み入れた衛宮家ははたして衛宮士郎だけであろうか?



「ああ、一成来たか待ってた」
「お、柳洞君、おはようさん」



玄関近くにいた人影は士郎含め8人。
今思えば人数は聞いていなかったことに一成は気づき自らの未熟を恥じた。



「うむ、おはよう衛宮、タヌ、いや副会長。俺待ちであったのならば謝らねばなるまい」
「いいって大してかわらない。 みんないくぞ」



626:名無しさん@ピンキー
10/05/14 12:35:36 QXU+qx08


ワイワイと9人がバス停へと歩く。



「前から聞こ思っとったんやけど柳洞君は私のこと嫌い?
私の声聞くと偶に嫌な顔するやんか?」



はやての質問に一成はしまったという表情を浮かべた。



「そう見えてしまったならば俺の落ち度であろう。済まない。
副会長には女狐退治始め、生徒会に貢献してくれていることに感謝しているのだ。
が…声がなんというか…」



それではやては得心がいった。



「ああ、彼女思い出してまうんやな。昔の相方を忘れられずにいるなんて
純情やね」



はやてがニタァと笑うと一成は露骨に嫌な顔をする。



「そういう所は好まん」
「はは、ごめん、ごめん」



9人を乗せたバスはゆったりゆっくり新都へと向かう。
最後の余暇はこうして始まった。





627:名無しさん@ピンキー
10/05/14 12:36:37 QXU+qx08
以上で2話連続投下したんだな

続いて、投下できる限界までやるぜ

628:名無しさん@ピンキー
10/05/14 13:21:05 yHnflZ/C
パニックに陥った脳なしがやることは大概同じだな
痛くも痒くもないし、労力の割に効果がない
むしろ雰囲気が悪化してますます過疎ってくれる

629:名無しさん@ピンキー
10/05/14 14:36:28 O21jGTO1
>>628
悪いな。このスレは俺が有効に使わせてもらうから
荒らしさんは他の場所にいけ。てめえの出番はないよ


では投下する

意と覚悟は固まった。
ならば、次に求められるのはその思いを形にする計画である。
今度の方針を定めることが遅れて争いに参加した
士郎達の急務だった。



「まず、私達はすでに大きな戦略的痛手を被っている。
士郎、それが何かわかるか?」



シグナムは真剣に戦士の顔で問う。



「…敵に本拠地がバレてることだな。少なくとも青い男に」
「ま、お前のせいだけどな」



と、ヴィータ。その遠慮のない指摘に士郎は
言葉を詰まらせた。



「責めはせん。だが、事実を理解しておけ。
この不利を覆すためにも、私達は一刻も早く敵の所在を掴まなければならない。
これはザフィーラとシャマルに任せる。
めぼしい標的が見つかり次第、私とヴィータとセイバー
あと、期待はしないが士郎で一気に叩き潰す。
異論はないか?」
「シグナム、異論はないけど質問がある」
「なんだ?ヴィータ言ってみろ」
「はやてはここに残すのか?大河の家とかに
隠れてた方が安全じゃないか?」



ヴィータの問いに答えようとしたシグナムをはやてが制し、答える。



「私はここに残る。別に意地はっとるわけやないよ。
さっきの士郎の話からするとあの青タイツの戦闘目撃したから
狙われたってことらしいしな。しっかり見てもうた私も、
どこへ行っても狙われる身や。
そんならここに残るのが一番ええ。
あと、さっきヴィータと買い物行ってる時にでかーい男連れた子に喧嘩売られて
な。
士郎共々命とりにくるて言われたんよ。
せやから私もすっかりこの戦いから逃げられん。
終わるまでみんなと居るつもりや」

630:名無しさん@ピンキー
10/05/14 14:36:55 O21jGTO1


はやての告白に一同は驚いた。その内容は、
もう1人の敵の存在を示していたのだから。



「あの大男はやばかった。向こうがあっさり引いてくれて助かったぜ。
ガキんちょは、はやてにえらい敵意を向けてた。
名前も名乗ってたけど…えーと」
「…イリヤスフィール・フォン・アインツベルン」
「そう、それだった!て、はやて残るのかよ。ま、あたしがいるから
安心して大船に乗ったつもりでいてくれていいけどな。
どこかのへっぽこ魔術士みたいにのされるようなへまはしねぇし」
「士郎も頑張ったんやしあんま苛めちゃあかんよヴィータ。
せやけどさっきのヴィータは確かに頼もしかったわ。ありがとうな」



よしよしと頭を撫でられるとヴィータははにかんでうつむく。



「えへへ」



ばつが悪そうな顔になる士郎の隣で、1人、
複雑な気持ちを浮かべ苦い表情をするものがいた。



「どうかしたか?セイバー」
「イリヤスフィール、ですか…」



士郎の問いかけも届かぬ程セイバーは没入していた。
このセイバーの心ここにあらずという状態に気づかないものはいない。



「主が言った名に心当たりがあるのか?
今は情報が何より重要だ。セイバー、知っていることがあるなら話してもらおう」



シグナムは有無言わさぬ迫力で尋ねる。
その威を備えた声にセイバーは自らが過去の回想に
捕らわれていることに気がつかされた。
たった今、衛宮士郎が剣となると誓ったばかりだというのに…
セイバーは己を恥じシグナムに向き直った。




631:名無しさん@ピンキー
10/05/14 14:37:24 O21jGTO1

「…私は前回の戦いでもセイバーとして召喚され
聖杯を前にして敗れました。ですからこの戦いに参加する常連ならば
名と本拠はわかります」
「六十年前にもここに喚ばれてたのか、それは心強いな」



士郎は感心しセイバーの言葉を待った。



「…いえマスター、前回の戦いは…」
「ええ、セイバーさん、名前と本拠だけを教えてや」
「はやて?」



セイバーの言葉を真顔で遮り話をもどすはやて。
そんなはやてに士郎は違和感を覚え、
セイバーもまた戸惑ったが優先度から考えれば
はやての言うことはもっともである。



「わかりました、はやて。
この戦いの常連と言われる家は
アインツベルン、マキリ、遠坂だそうです。
アインツベルンはここから30キロほど離れた郊外の森を本拠地としています。
遠坂は霊脈の地に居を構えているとか、マキリについては、
私もわかりません」



セイバーの話をそれぞれが吟味する。と、
セイバーが語った名に驚きを隠せない者が2人。



「と、遠坂!?はやて、遠坂ってあの遠坂か?」
「わ、私に言われても…はは、でもそやったらどうしたもんやろなぁ」
「セイバー、この戦いはマスターとサーヴァント、両方倒す…
いや、殺さないといけないのか?」


遠坂、遠坂凛は士郎、はやての同級生であり
その完璧な立ち振る舞い、優雅さ、整った顔立ちは、
やや、朴念仁入ってるとはいえ健康的な男子である
士郎にとって十分に興味を引く対象であった。
仮にその遠坂凛を殺さなければならないとすれば、士郎にとって
この聖杯戦争は前提からして苦しいものとなる。
士郎の疑問は士郎同様、相手を知るはやての疑問でもあり、
ヴォルケンリッターにとっても戦略上の方針を決定する上で
把握しておくべき事項だった。
「いえ、マスターを殺す必要はありません。サーヴァントさえ倒せば
そのマスターは脱落扱いとなります。
ただ、逆にマスターを殺し魔力の供給を断ち
サーヴァントを消滅させるという手があることも事実です。
私の前マスターはこれを得意としていました」


632:名無しさん@ピンキー
10/05/14 14:37:44 O21jGTO1


必ずしもマスターを殺す必要はない。この言葉に安堵する、士郎、はやて。
対して、ヴォルケンリッターの面々は目つきを鋭くする。



「どうかしたんか、シグナム?そんな怖い顔して」
「主、その遠坂という者は主達の学校に通っているのですね?」
「そうや、彼女はこれがまた、できるかっこええ女なんよ。その遠坂さんな、なんと私と…」
「失礼、かもしれませんが、その者を我々は第一の標的として定めます」
「ほんま…?」



話の流れを敏感に感じ取りはぐらかそうとしたはやてを遮り
シグナムは直球を投げた。
はやてがシグナムらの顔色を眺め見ると4人共一様に真剣な目で答える。



「せめて…せめてや、月曜一杯待ってくれんか?遠坂さんと話がしたいんよ」
「シグナム…俺からも頼む」



しばし、沈黙が流れる…
僅かの間の後、シグナム達は目配せすると互いに頷き合う。



「主達の気持ちもまた、尤もな物なのかもしれません。
わかりました、待つとします。ただし、月曜の登校には
私達も隠れながら付いて行かせてもらいます」
「ありがとうな、みんな。
付いてきてもらうんはもちろんOKや」
「ああ、遠坂ならきっとバカなことはしないはずだし話せばわかってくれる」



「主、士郎…2人の気持ちもわかりました…
しかし聖杯を求める以上最後にはやり合わなければならない相手
ということだけは忘れないでください…」



沈痛な面もちで語るシグナムの姿に士郎はハッとする。
はやてよりも実のところ士郎の方がヴォルケンリッターと目指すところは近く、
誰より彼らを理解しているつもりだった。
だというのに自分は救う相手を1人にすることができない。選べない
これは自分の甘さなのか、覚悟の弱さ故なのか士郎はわからなかった。



633:名無しさん@ピンキー
10/05/14 14:38:04 O21jGTO1


「は~い、はい。大体方針は決まったみたいだし難しい話はここまでにしましょう?
ここからの主役はセイバーちゃんで」



沈黙が広がり始めた室内に突如響く脳天気な声。
今までもその場にいながらまるで今現れたかのような
その、場違いな明るさに一同は呆気に取られた。
特に名指しを受けたセイバーは眉間に皺を寄せ頭を抑える。
直感が嫌な予感を告げていた。



「…なんだシャマル、セイバーに何か?」
「セイバーちゃんは多分これからしばらくは家にいるんでしょう?
だったら便宜上の立場がいるんじゃないかしら?」



明るい声で、シャマルは将に尋ねる。
シャマルの言葉にシグナムもまた何か思いつくところがあったのか
次第に張り詰めていた顔が緩み始める。



「確かに、どう思いますか主?」
「私に振るんかシグナム、なかなかに挑戦者やね~」



シグナムがはやてに振ると、はやてもまたいい笑顔で答える。
室内の空気はあっという間に騒がしいものに変わり始めた。



「私は1サーヴァントであり、それ以上でも以下でもないので
そのような気遣いは無用なのですが…食事をとることも、寝る必要もないので」



予防線を張り、話題から逃げようとするセイバーに対し
攻める方は多勢であった。



634:名無しさん@ピンキー
10/05/14 14:38:37 O21jGTO1


「いいや、駄目や。この家に住む以上はそんな我関せずー
みたいなのは認められへんよ」
「そうだな、俺の作る飯も食べてもらいたいし、
1人だけ食べないだなんて絶対駄目だ」
「大河や桜に会わせる際の紹介はどうしたものか」
「あ~大河が見たら喜びそうだ。桜はわかんねぇけど」
「桜ちゃんとだってすぐ仲良くなれるわよ。
セイバーちゃんなんかすごくいい子っぽいもの。
でも、セイバーちゃんの立場というか身の上はどうしたらいいかしらね」



皆がそこに思いを巡らせはじめた時、沈黙を破る一言が降って沸いた。



「シャマルの娘、で、いいのではないか?」





ザフィーラの一言に……シャ……マ…が…………



One moment, please.



「…私は何もみんかった…じゃ、じゃあシャマル、
セイバーさんはシャマルの妹てことでええか?」
「そうです、そうですよ、セイバーちゃんみたいな大きい子が
私の子だなんてご近所のみなさんも納得するわけないですし、
私の妹くらいがすごく、妥当です」



沈黙は金、そういう諺があったなと、はやては苦笑いを浮かべる。



「セイバーちゃんもそれでいいかしら?」
「あ、ええ、構いません、シャマル」


セイバーは今では数分前から比べると1人欠けた部屋を見渡し、答えた。
「さて、セイバーの処置も決まり、シャマルの気も収まったようだし
明日の予定を決めてしまおうか」
シグナムがやれやれといった様子で一同を眺める。
シグナムは再び戦士の顔に表情を戻すもシグナムに合わせたのは
セイバー1人、その他は「明日の予定」と言う言葉にもなんら緊張感を示さない。
確かに遠坂なる者を狙うのは月曜以降とすることにはしたが
明日1日なにもしないで過ごす、などという考えはシグナムにはなかった。
それはセイバーも同様であったようで皆の態度に怪訝な顔をする。
「マスターは明日、どのように行動するおつもりですか?」
疑問を形にし、自らの主に尋ねるも答えは実にあっけらかんとしたものだった。


635:名無しさん@ピンキー
10/05/14 14:38:58 O21jGTO1


「明日?明日は、藤ねぇや桜、ああ、さっき名前が揚がってた、
ここにいる以外の俺の家族みたいなもんだけど、
そいつら含めみんなと街へ遊びにいくつもりだ、セイバーも来いよ」



緊張感が無いというか、邪気の無いというか、
セイバーのマスターはそれこそ少年のような笑顔を彼女に向ける。
これには彼女も驚きを通り越して呆れてしまった。
シャマルもヴィータも明日の遊びという内容に
気が行ってしまっているようで士郎、はやてと歓談を始めてしまう。
仕方なくシグナムは座を移した。




「悪いな、皆平和ボケしてしまっていてな。
主や士郎はともかく、私達4人もこの5年、戦いから離れた
平和な生活にしっかり浸ってしまって…このザマだ」



セイバーに相対するのはシグナムのみ。
ふう、とため息をつくシグナム、けれど、そんなシグナムからも
セイバーは柔らかい空気を感じた。



「あなた達は幸せそうだ。羨ましくもある。
だが、聖杯を求める戦いにすでに巻き込まれているということを
もう少し自覚して欲しい」
「すまない。だが、いざ戦いとなれば我らも主のために
命を掛けて戦うのには変わりはない。そこは忘れてくれるな、セイバー」
「…はやてはあなた達に士郎の手助けを頼みましたが
あなた達の望みはあるのですか?」



一瞬、間を置いたシグナムだったがすぐに口を開いた。




636:名無しさん@ピンキー
10/05/14 14:39:37 O21jGTO1

「そうだな…隠すことでもない。まず、主の願いを果たすこと。
今ならば、士郎を支えることがそれになろう。
我らとしては主の体を蝕む呪いから主を解放したい。
これは士郎の願いでもあるはずた。
聖杯とやらが万能というならば、可能性がある」
「呪い?」
「ああ、不治の病と言ってもいい。もし、今のままであれば、
主は半年ともたないだろう」



その言葉にセイバーは顔を顰める。



「シグナムー、セイバーさんもこっち来てや。明日の話しよ」



2人に手招きするはやての表情からセイバーは
その病を感じ取ることはできなかった。
ただ、その体は吸い尽くされたかのようにひどく魔力が欠乏している。
セイバーにはそう、見えた。



「今は付き合ってくれると嬉しい」



シグナムが横顔で苦笑いするのを横目で確認する。
この幸せそうな空気を後1日くらい感じるのもいいかもしれない。
すぐに、苛烈な戦いが始まるのだ。
彼らにも最後の華やぐ時間を楽しむ権利はあろう。



「わかりました。明日1日くらいなら、付き合いましょう」



セイバーも視線を緩めると、頷いた。



明日は月曜からの戦いを前にした最後の日曜だ。
シグナムやセイバーのしていた苦い顔も良く分かる。この戦いは油断したら
即、死を意味する。
現に俺は一度死んだか、死にかけた。
シグナム達は甘いと言うかもしれないが
…だからこそ明日を楽しみたいと、思う。
もしかしたら最後になるかもしれない。そんな気がするからか。
切嗣に拾われてから、一度とて孤独は感じなかった。
切嗣が留守にしてる時は側にはやてや藤ねぇがいたし、
切嗣がいなくなってしまっても入れ替わるようにヴォルケンリッターの4人が衛宮家に現れた。
それから半住人?と化した桜も合わせると今では8人の家族と言ってもいい。
皆、掛け替えのない存在で、それを今日の俺が体験したことを
誰かが体験する――それは駄目だ。

637:名無しさん@ピンキー
10/05/14 14:40:16 O21jGTO1
正義の味方…は家族を優先的に護ってもいいんだろうか?
家族という掛け替えのない存在と多数の救うべき存在、
その天秤をどちらに傾けるべきか…いや両方を救ってやる――
そう思ってもみんなの顔を思い出すと、不安になる。それができるのかと。



「悩んでるようやね」



風呂から上がり廊下を歩いていると縁側に座り庭を眺めていたはやてがいた。
「まだ、部屋に戻ってなかったのか?風邪引くぞ」



この十年、はやてとは兄妹か姉弟をやってきた。
あまり納得はできないけれど誕生日的には向こうが姉となるらしい。
体が弱い内は姉と主張して来る事もなかったが
良くなるに従いそのような立場を押し出してきていじられたこともあった。
今は、どうだろう?
俺より先に風呂に入っていたはやての髪は未だに艶やかに水気を帯びている。
はやてはわりかし顔はいい方だし、儚げな仕草もどこか似合う。
だから――様に成りすぎていて独りで夜空を見上げてる、なんて姿は見たくなかった。



「はは、なんや怖い顔しとるな。隣、座らん?
まぁ、昨日の今日いきなり殺し合いに巻き込まれたんやから、士郎も悩むか」
「ちげー、このばかはやて、具合悪くなってきてる人間がいつまでも起きてるか
ら怒ってるんだ」



そう言いつつなんとなく隣に座る。



638:名無しさん@ピンキー
10/05/14 14:40:36 O21jGTO1


士郎は私と大河にだけ口が悪くなるんは相変わらずやなー」
「そうか?気にしたことないぞ」
「ま、そらええか。信頼の証とでも思っとく」
「なんだよ、それ」



はやての思考は時々良くわからないと思う。



「今回の事件は士郎にとってはもしかしたら、暁光なのかもしれんね…
正義の味方さん」



その言葉にドキッとする。はやては正義の味方がなんなのか知っている。
俺のそれが衛宮切嗣から受け継いだものだということを。



「それは士郎の夢や。私は応援しとる。
ただ、無理はせんで欲しいかな。
きっと辛いだろうし、悩むことも多そーやし。
もし、な…士郎が私と誰かを天秤に掛けなならん事になったら
私は捨ててくれてええ」



愕然とする、そんなことをはやては半ば照れながら言った。



「なにを――」
「ほな、ストッーープ、や。ま、そんなことにならんよう気をつけます、
また、士郎の活躍にも期待しときます」



そう言うとはやては笑いながらゆっくり、ゆっくり立ち上がる。



「正義の味方を怒らせてしもた悪人は撤収するとします」
「正義の味方に捕まった悪人は正義の味方の部屋で
矯正を受けるってのもあると思うけど?」



いつもの日課のように俺は言ったのかもしれない。




639:名無しさん@ピンキー
10/05/14 14:41:52 EUrkLyko

「それやけどこの事態が終わるまでは止めとこ。
士郎も大変やろし」
「…わかった。これははやて次第だからな」



俺の答えに頷いたはやては静かに踵を返すと部屋に戻って行った。
ただ一言、念話で明日は楽しもなと残して。
もちろん俺は応と答えた。



夢を見ている。これは多分、十年前、火災の後の病院の光景。
ただぼんやりと白い壁と天井を眺めているとその男はやってきた。
その男は俺に自分の子供にならないかと持ちかけてきた。
それとも施設がいいかとも。
男の側には車椅子の女の子がいた。ある意味今思えば滑稽とも思える
切嗣の仕草に白い目を向けていた気がする。
俺が車椅子の子に視線を向けるとできの悪いキャッチセールスのように



今なら妹、いや、お姉さんもついてくるんだけど、どうかな?



なんて言った。



親子?



と俺が尋ねると、これからなるとか言ってたと思う。



君、こんな奴の子になんかならん方がええよ



その子の一言目は俺に対してだったけど視線は切嗣に向いていて、
ひどく悪意の籠もったものだった。
切嗣は情けなく肩を落として、本当に情けないくらい言われるがまま黙っていた。
逆に可哀想になってついつい俺は関西弁の子に
じゃあなんで君はこの人の子になるのさ?
なんてことを聞いていた。
その内、このおじさんは俺が守ってやらなきゃ大変なんじゃないかと
子ども心に思い、女の子に張り合うように切嗣の子になることを承諾していた。
その後、切嗣に辛く当たる女の子と喧嘩、殴り合いは
しなかったけれど口喧嘩の他、色々と勝負をした。
何故かのめり込んだのは料理勝負だったり。
審査員という意外な役得を得て喜んでいた切嗣は
僕は魔法使いだからかな。とか言っていた。
いつしかはやても落ち着き本当に平和な日々を得たのはいつだったろうか。
目が覚める――今日は日曜日――
聖杯戦争は明日から―


640:名無しさん@ピンキー
10/05/14 14:43:54 EUrkLyko
士郎の朝は早い。なんたって10人近い人間の朝食である。
仕込みの時間は多いに越したことはない。



「士郎、今日は朝食の分だけなのだな」



そんな士郎を後ろから獣化した状態で見上げるのがザフィーラの日課。



「ああ、多分今日は昼も夜も外食になるからな。
ザフィーラの分は別に作っておく」
「すまないな…士郎」



士郎が台所に立つ時のみザフィーラは残飯orドッグフードから解放される…
桜は当然、もう一人も何故か桜同様だった。



「おはよ。士郎、ザフィーラ。ん?仕込みはあらかた終わってもうたか。
じゃ、私はザフィーラにご飯やろかな。ザフィーラご飯やよ~」



居間に顔を出したはやては士郎の仕事具合を確認すると
満面の笑みをザフィーラに向けた。



(…ザフィーラ…)
(よいのだ…士郎…主の心遣いは嫌いではない…)



心通じ合う悲しき念話の先に見えるもの。



「どうかしたん?二人とも暗い顔やけど?」



それはドッグフード。




641:名無しさん@ピンキー
10/05/14 14:44:15 EUrkLyko


衛宮家の炊事を統べるのが士郎ならば洗濯等を統べているのがシャマルである。



「シグナム、洗濯物はないかしら?」
「んん?いや…別に………すー」
「あらら、起きないなら仕方ないわね~脱がしてあ・げ・る(ハート」



「シグナム、昨夜、朝にでも手合わせしたいと言っていましたが、
いつまで待たせ…………失礼…」



障子を開けた先の光景にセイバーは思わず障子を閉めきびすを返す。



「あ、朝からなにをやっているのです!しかも女同士でなどと…」



金髪の美女が淫靡な顔つきで、目を潤ませた豊満で
無駄ない肉体美を誇る、これまた美女に跨り、服をめくりあげ…
という光景にセイバーは顔を熱くした。



「セイバーちゃんもどうかしら?」




642:名無しさん@ピンキー
10/05/14 14:44:36 EUrkLyko

障子の向こうより聞こえる声を即座に切りすてる



「結構、私は興味ないので失礼させて…なっ!?」
「せっかく姉妹になったんだし一緒にやるのもいいと思うのよ、ね?」



この場から立ち去ろうとしたセイバーを足止めしたのは、
何もない空間から伸びた腕。
ぐいぐいと引っ張るそれであったがこと力においてセイバーに勝るものではない。



「ふ、私を足止めするには力不足だったようですね、シャマル」



自然勝ち誇った顔になるセイバー。



「なに、やってんだ?お前ら」




「と、いうわけだシャマルが変なのは確かだけどあれは日課の洗濯。
手伝ってやってもいいんじゃねえか?
あたしは見たいテレビあるから手伝えねぇ悪いな」



ヴィータはそう真顔でいうや居間へ消えていった。
ヴィータの説明になんとも難しい顔になるセイバー。



「なーにを勘違いしたのか、お姉さんは聞かないけど、どうかしら?」
「洗濯…なら、いいでしょう」



シグナムの衣服をカゴに入れて持つシャマルにセイバーは視線を合わせ



「そ、よかった。じゃあ、はやてちゃんから借りたその服も洗いたいから、
脱いでもらえるかしら?」
「は?」



7時になろうとする頃、呼び鈴も無く新しい足音が2つ、衛宮家に増える。
1つは騒がしく、もう1つは慎ましいそれ。
「おはよ~みんな元気ー?」
「おはようございます」

643:名無しさん@ピンキー
10/05/14 14:45:00 EUrkLyko

居間に現れた藤村大河、間桐桜の前に衛宮家の面々はすでに揃っていた。



「来る頃だろうと待ってた。2人共座ってくれ。
まだ、朝食は食べてないよな?」



士郎の言葉に、もっちろんと答え、いつもの自分の席に座る大河とは違い、
ただ、その場に立ち尽くし一点を見つめる桜。



「先輩…そちらの方は誰ですか?」



その問いに衛宮家に緊張が走る。主に士郎だけに。



(みんな、口裏合わせは昨日の通りで頼むぞ)



はーい、とか、ああとか気のない返事が帰る。



「ええっとこの人はシャマルの妹でセイバー・ヴォルケンさん。
姉のシャマルに会いに来たんだ。しばらく家に滞在する予定らしい」
「はじめまして、セイバー・ヴォルケンです。姉がいつもお世話になってるとか」



背筋をしゃんと伸ばし挨拶するセイバーには気品が感じられた。



「驚いたわ~シャマルにこんな立派な妹さんがいたなんて。私は藤村大河。シャマルの友人かな。
ねぇセイバーちゃん歳はいくつなの?」
「はい、今年で16になります」
「じゃあシャマルとほとんど一回り違うのね。外歩いたら親子で…」
「はいっ!そこまで!年々お腹に肉が~とか言ってるあなたに
言われる筋合いは、ないわよ?」
「フンだ!あんたとか、シグナムとかがおかしいの。私の肉体年齢はまだ十代なんだから。一体何してればそんなに変わらずいられるのよ。黒魔術とか使ってんでしょ。そーよ、そーだ」



シャマルはホホホと、勝ち誇った笑みを見せるだけで答えない。
次第、大河の矛先はシグナムに向いた。



「シグナムはいいわよねー24にもなってブラブラしてるだけだし。
ストレスとかなさそうで。
私やシャマルみたいにさっさと働きなさいよー士郎が困るじゃない」
大河の言葉に珍しく影で深く頷いている士郎を尻目にシグナムは溜め息をついた。

644:名無しさん@ピンキー
10/05/14 14:45:28 EUrkLyko
「大河、私は未だに未熟な自分を磨いているんだ。それに定職に付こうものなら
いざという時に自由に動けん。例えばだ。地震が起き家族に危機が迫っているとして
教師のお前は生徒を第一に考え行動しなければならないだろう?だが私はどうだ?
なんのしがらみもなく家族の為に動くことができる。
この重要性、セイバーならわかるだろう?」
「ええ、いざという時、素早く果断に動けることこそが最も貴重なことです」
「だ、駄目よ!セイバーちゃん。この女に同調したらダメ女まっしぐらよ!」



大河のあまりの剣幕に呆気にとられたセイバーは士郎につい言葉をかけてしまう。



「現代では違うのですかマスター?」



マスター、その単語は大河、そして苦笑いで聞いていた桜に衝撃を与えた。



「master…所有者、支配者、飼い主…」



暗い顔でブツブツと呟く大河を士郎は不気味そうに見つめた。



「士郎…」
「な…なんだ藤ねぇ?」
「…こんな可憐な子に何させとんじゃー!!お姉ちゃんは悲しいぞー!!」



突如、士郎の襟を掴み上げブンブンと振る大河。



「う…が、く、苦し…あ」



室内には若い男の喘ぎ声が響き、朝食の場は阿鼻叫喚な図へと変わりはじめる。
そこで初めて衛宮家は士郎の弁護に回る。



645:名無しさん@ピンキー
10/05/14 14:46:16 EUrkLyko


「大河センセ」
「なによう、はやてちゃん。私はこの鬼畜王を退治しなきゃならないの」
「センセも英語教師なんやからわかりますよね?
masterは師匠の意味もありますよ」
「そうだけど…」
「そんなら、答えは簡単やないですか。士郎の腕前に感服しとその道に入ろうと
士郎を師と仰ぐ。これのどこがおかしいんです?」
「むむっ……………まぁそうね。はやてちゃんに躾られてる士郎が鬼畜に走るわけないかー」



手が離され、士郎は落ちた。物理的に。



「そうですよー、…桜ちゃんも安心した?」



先ほどから沈んだ顔をしていた桜に声をかけると、桜はビクッと反応した。



「も、もちろんです、…私は先輩のことを信じてますから」



と、いうもののその表情は一向に晴れない。



(あちゃー。これは桜ちゃんの中で鬼畜王士郎爆誕やね)
(ああ、残念ながら1つの信頼関係が終わってしまったようだな)
(う、うるさい!)



「あーなんだ、飯たべね?」

ヴィータの提案により静かに食事は開始された。
そんな中で、むっとかおおっとか言ってるブリテン人が1人。
また、食生活の難しさを表すが如く、な2人。
(…はやて…納豆はどうした?)
(………………)
(また、食べないつもりか?これほど体にいいものはないと言ってもいいんだぞ!)
(………………)
(シャマルにあげたのか?)
(……士郎、セイバーさんの胸のサイズ…教えてあげよか?)
士郎から目をそらしたまま、はやては念話の中でぼそりと呟く。
口から味噌汁吹くとはこのことである。
周囲には災厄が振りまかれた。
「ぅおい!何やってんだよ。あたしのキャベツに掛かったじゃねぇか!」
「わ、悪いヴィータ…」
(はやて!)
「そ、そうや、みんなちゃんと水着は用意してある?
今頃ないーゆーたらあかんよ」
士郎の怒りに染まった視線を苦笑いで避けながらはやては全員に話しかけた。
「はいっ持ってきました」

646:名無しさん@ピンキー
10/05/14 14:47:06 EUrkLyko


ここでは一転笑顔になる桜。



「私も持ってきたよー弟を迷わすなんて悪い姉だね。私も」



と、大河。
もちろん士郎は前者は気になったが後者は(ry



「セイバーさんは突然の話やから用意しとらんと思うけど安心してや。
これから行くとこにはちゃんとそれ用の店もついとるから」
「そ、私がしっかり選んであげるから」
「シャマルが…ですか?できれば誰か別の…」
(な、セイバーさん、なんか角がとれてきたんやない?)
(単に嫌がってるだけともとれるけど…ま、いいことじゃないか。
それよりはやて、納豆のことだけど…)
(……………)



柳洞一成の足取りは弾んでいた。友人、いや彼にとっては
親友といってもいい衛宮士郎から日曜に遊びに行かないかと誘われたのだ。
これが嬉しくないわけがない。
二つ返事で承諾し、今日までの日数を指折り数えて待っていた。
わくわくざぶーん、新都にできた全天候型屋内ウォーターレジャーランド。
それが今日の彼らの目的地である。
この時まだできてないじゃん。半年後じゃん、というツッコミは甘受します。
でもあるということで。



そんな柳洞一成が足を踏み入れた衛宮家ははたして衛宮士郎だけであろうか?
「ああ、一成来たか待ってた」
「お、柳洞君、おはようさん」
玄関近くにいた人影は士郎含め8人。
今思えば人数は聞いていなかったことに一成は気づき自らの未熟を恥じた。

「うむ、おはよう衛宮、タヌ、いや副会長。俺待ちであったのならば謝らねばなるまい」
「いいって大してかわらない。 みんないくぞ」
ワイワイと9人がバス停へと歩く。
「前から聞こ思っとったんやけど柳洞君は私のこと嫌い?
私の声聞くと偶に嫌な顔するやんか?」
はやての質問に一成はしまったという表情を浮かべた。
「そう見えてしまったならば俺の落ち度であろう。済まない。
副会長には女狐退治始め、生徒会に貢献してくれていることに感謝しているのだ。
が…声がなんというか…」
それではやては得心がいった。
「ああ、彼女思い出してまうんやな。昔の相方を忘れられずにいるなんて
純情やね」
はやてがニタァと笑うと一成は露骨に嫌な顔をする。
「そういう所は好まん」
「はは、ごめん、ごめん」
9人を乗せたバスはゆったりゆっくり新都へと向かう。
最後の余暇はこうして始まった。

647:名無しさん@ピンキー
10/05/14 19:14:01 YxygTXwW


648:名無しさん@ピンキー
10/05/14 20:17:09 yHnflZ/C
こいつか、阿修羅さんに的外れな言い掛かりつけてるのって
阿修羅さんはSSを保管してくれてるだけで、このスレと無関係だろ
お前らときたら嫌いな書き手叩くだけでなく、ボランティアにまで牙を剥くのか
処置なしだな

649:名無しさん@ピンキー
10/05/14 20:58:59 xrA8eC0o
では投下するぜ 

士郎が走り寄った時、間桐慎二と胸元のネームプレートに研修中、
黒野と下げた従業員の青年の空気は険悪になりつつあった。
すでに罵詈雑言を言い放つ慎二に青年も耐えきれなくなってきているようで
口元を震わせている。
冷静そうな外見とは裏腹に意外と沸点は低そうな人だな、と士郎は感じた。



「慎二、やめたらどうだ。その人困ってるぞ」



嫌いだが無視できない声にはたと青年への暴言を止め、振り向く慎二。



「あ?衛宮かよ。なんだって?」
「士郎はそのつまんねぇ口を閉じろっつたんだよ慎二」



慎二はヴィータの姿を認めると口を歪ませた。



「ちっ、怪力チビもいるのかよ。おい、みんな、
こんな駄目社員とロリコンはほっといて向こうの波のプールにいこうぜ」



嫌そうな顔を、振り返ると同時に入れ替え
後輩の女子弓道部員達に笑顔を振りまく。



ええーロリコン!?いやー!変態なの?
と、去り際に次々巻き起こる無自覚の精神攻撃。



「おい!好き勝手言ってんじゃ、…むぐっ!?」



ヴィータの口を塞いだのは士郎の手。



「…っぷっは!なにすんだよ!」
「いいんだ。俺はロリコンなんて言われても別に気にしないから」



一瞬の間…
「……それを、笑顔で言うのは辞めろよ…なんか、本物っぽいから…」
「ん?そうか?」
そこではじめて士郎は、先程の青年が未だに佇み、会話の機会を伺っているのに気づいた。

650:名無しさん@ピンキー
10/05/14 20:59:19 xrA8eC0o

「あ~なんだ。とりあえず助けてもらってすまない。
正直もうすぐで口なり手なりが出そうだったんでな」
「友人が迷惑かけたようですいません。あいつも限度は知ってる奴なんですけど」



黒野従業員はその士郎の言葉に呆れ顔とならざるを得ない。



「君は、人を見る目がないのか、相当なお人好しなのかどちらかだな。
と、あんまり時間を潰していると気難しい上司にチクチク
やられるんで失礼するよ。士郎君だったか、君ら午後もまだここにいるかい?」
「ええ、三時くらいまではいる予定ですが」
「なら、いい。じゃあ、また」



背を向けると黒野従業員は規則正しい足取りで士郎達から遠ざかっていった。



「なんか気に食わねぇ奴だ…昔知った匂いがしやがる」
「地球以外の世界の話か?」
「そうだ。あれはきっとあたし達の敵だ。気を許すなよ」



黒野従業員の背中を怨敵を見るかのようにヴィータは睨みつけていた。



「でも、悪い人には見えなかったけどな」
「て・き・だ」



士郎の顔など見ずただ、去り行く背中を凝視し続けながら
間髪入れず返される答え。



「………わかった。ヴィータは頑固だしな」



ヴィータはそう言うが自分の周りに異世界人兼、宇宙人や未来人が
そうほいほい現れるもんだろうか、と士郎は話半分に聞いていた。
そんな空気は、隣の娘にすぐに伝わる。



651:名無しさん@ピンキー
10/05/14 21:00:12 xrA8eC0o


「てめぇ、あたしの言うことちゃんと聞く気ねぇだろ」



軽いのりと宥めんとするような笑顔の士郎をジト目で見上げるヴィータ。



「あたしなんかよりお前のがきっと、頑固なのによ」



ちぇっと、少し拗ねた風な少女の気を変えるならば、やっぱり
彼女の大好きな人を話題を出してやるのが一番、と士郎は知っている。



「はいはい、ヴィータ。はやて達のとこに戻ろう。買ってもらった水着、
ちゃんと着てやらないとはやてだってがっかりするぞ」
「なんだよ、そんなの当たり前だろ。あたしはお前と違って
はやてを失望させるようなことはしないんだ」
「―――っ!?」



いつもの軽口のはずの言葉に士郎は動きをピタリと止める。



「お、おい!?どうしたんだよ?」
「いや―なんでも、ない。行こうか」
「あ、ああ…」



ヴィータが見た士郎は僅かばかりの間、感情のない機械のような顔をしていた。




時間は前後するが人目の無い暗がり…わくわくざぶーんの死角といえる場所で
ザフィーラは佇立していた。眼前に白髪の男を前にし。
目の前の男はサーヴァントと呼ばれる神秘に編まれし奇跡。
ザフィーラを探るように、見下すようにサーヴァントは腕を組みつつ口を開く。



「黙りか。犬と思っていたら人型になったのでもしや
と思ったが、やはり人語は操れない犬というわけか」



挑発的な言動はザフィーラの心をざわつかせる。



652:名無しさん@ピンキー
10/05/14 21:00:55 xrA8eC0o


「犬…ではない。力あるものよ。この身は守護獣。犬では…ない」
「人型になれ、人語を話せてもまだ自分を獣と名乗るのか。律儀だな」



鼻で笑うような男の態度にザフィーラは苛立ちを覚えないこともなかったが
そんな感情を御するのも慣れたものである。



「何用だ、立ち話と皮肉を言いに来ただけなら付き合う気はない」



ザフィーラの言葉に男は腕組みを解き問う。



「なに、セイバーを一目見ようかとな。喚んだのだろう?衛宮士郎は」



見透かすような視線をザフィーラは泰然と受け止めた。



「何のことかわからん。我らは休日を楽しみに来た。それだけのこと」
「ほう、では何故、私を遮るように先程から動き回っていたのかな?」
「それこそ知れたこと。貴様のような者を主に近づけさせる訳がなかろう」



そこで男は幾ばくもなく目を閉じるとゆっくりと開けた。



「衛宮はやて、と言ったか。貴様らの飼い主は。
知らぬ名だな。興味がある、お前らの主に会いたいと言ったら、どうする?」
「…主に害を為すと言うならば、例え、日中のこの場であっても…排除するまで」



依然、不敵な笑みを絶やさない男をザフィーラは改めて警戒の対象と認識した。



「貴様がそういう態度なら、まぁいい。急ぐことでもない。
どうせ、その内会うことになるだろうからな。
さて、こちらの主もなかなかに慎重な方でな。
日中に犬に噛まれたため戦闘しました。と、言って納得してくれるかわからん。
サーヴァントでもない相手との戦闘に付き合うほど私も暇ではない」
赤き外套をはためかせ、一見隙だらけに見える背をザフィーラに晒し
男は跳躍しようとする。
「まて、サーヴァントよ。我は衛宮はやてが守護獣、ザフィーラ
お前の名を聞きたい」
「…名は記憶の障害で思い出せん。
が、アーチャーとだけ覚えておけ。
セイバー、衛宮士郎、衛宮はやてに宜しくな。守護獣」

653:名無しさん@ピンキー
10/05/14 21:01:53 xrA8eC0o

飛ぶように消える男は最後まで余裕を崩さなかった。



「人を食った男だ」



ザフィーラは緊張を解きつつ呟く。その鼻はどこか親しき空気を感じ取っていた。



一成が見たもの。それは結った髪をほどき、髪を下ろした少女の姿だった。
凛々しさの代わりに



「かわいい…」



というスキルをもう、目一杯周囲に撒き散らす。



「感じが全然ちゃうなぁ。それに照れてるセイバーさん
ほんとかわええよ」



確かにな、とか、でしょう?とか、かわいいですね~とか反応は上々。
そんな中、顔を横に背けたままの一成に気づき、
セイバーは両の指を胸元で合わせ 不安そうに聞く。



「い、一成どうなのですか?私自身では良くわからないのですが?」


ヴォルケンリッターを除く女性陣からの
異様(嫉妬)な視線から逃れるように、
救いを求めるようにセイバーの視線は一成を捕らえていた。
(こ、これは衛宮の陰謀か?こんな美し可愛し女人を俺に見せ付け仏道の道から堕落させる気か?
それともタヌ、いや副会長の、俺を衛宮から遠ざけるための策略か?わ、わからん!!)
「一成く~ん。セイバーちゃん、不安そうじゃない?答えてあげたら?」
ニンマリとした顔のシャマルの言葉に一成はセイバーを正面から見つめてしまう。
恥じらいを隠せない少女を一成は素直に可愛らしいと感じていた。
その不安そうな顔を前に心の中、もやとしたものが形のある何かに成っていく。
それは1つの思い。
仏が目の前の少女を道に外れる邪悪と断じるなら、仏の道など捨ててしまえ。
美を美と、麗を麗と理解できぬならばこの世に仏など不要。
ならば、柳洞一成は1人の人として答えよう。答えはすでにこの胸にあるのだから。
「セイバー殿、いやセイバーさん、俺はあなたを今まで見た誰よりも美しく可憐であると思う。
それはきっとあなたの心根から溢れるものであろう。
透き通っていて清らかな風。そういったものがあなたの存在を
高貴に、美しく、また愛らしくも見せているに違いない」
真摯に真っ直ぐに淀みなく告げられた一成の言葉は
ほう、と感心させるものではあった。ただ、一言多かったかもしれない。
今まで見た誰より、という言葉は3人ほどのプライドにちょこっと敗北感を与えた。

654:名無しさん@ピンキー
10/05/14 21:02:14 xrA8eC0o

「…ありがとう、一成。あなたの言葉、素直に受け取っておきます」



はにかんだ、少女の笑顔は眩しかった。



士郎とヴィータが先程の店の側まで戻ってくると
談笑している残りの面子が視界に入った。
その中には穏やかに微笑むセイバーの姿もあった。



「へぇ、あいつも笑うんだ。あたしはてっきり戦いにしか興味ねぇ
戦闘狂だと思ってたけど」
「セイバーが笑ってくれるなら家の中も明るくなっていいだろ?」
「これ以上明るくなられると頭痛がしそうなんだけど…」
「はは、かもな。…セイバー、髪、下ろしたんだ。
あの方が女の子らしくていいんじゃないかと思う」
「…かもな」




セイバーを中心に少しずつ打ち解け8人は新しい関係を作っていく。
そして、合流した8人はそれぞれに更衣室へと向かった。



―男子更衣室




655:名無しさん@ピンキー
10/05/14 21:02:45 xrA8eC0o

「衛宮、よい勉強となった。感謝する」
「はぁ…?」
「色欲を超えて良いものいいと言える――それを学んだように思えるのだ。
今は煩悩を絶つよりも受け入れかつ、流されないことこそが仏道なのでは、
と感じている。これもセイバーさんに会えたればこそ気づけた理だな」



いつも以上に熱く語り出す、一成の話を士郎は苦笑いで聞いた。




―女子更衣室



「こ~の、そーれ!」
「なっ!?何をするんです?は、はやて!?」



小さくも張りのあるそれをいやらしい顔つきで背後から掴むはやて。



「はやて先輩はセクハラオヤジなんです、セイバーさん。私も良く揉まれるほうですが、
今日はなんだか揉んでやりたい気分です」
「おお~気い合うな、桜ちゃん。そっち掴んどいて」
「はい、はやて先輩」



わっきゃっきゃっと戯れる3人がいれば生暖かい目で見つめるのも3人。



「シャマルお前は参加しないのか?一番参加したい性格な気がするが」
「わかってないわね、シグナム。こういう若い子の絡みを眺めるだけってのも乙なものよ」
「ほう…知らなかったな」
「知ってたまるか、アホらしい」
「あら、ヴィータだってはやてちゃんに色々されるの好きじゃない?」
「色々ってなんだ!あたしはただ、一緒に寝てく……」
「ん~最後まで聞き取れないわよ?さぁ、おっきな声で言って…」
「いい加減にしなさいっ!!破廉恥な!!」



と、ヴィータとは逆の方から起こったほうこうは瞬時にはやて、桜を薙ぎ倒していた。



「もう、しま…せん…堪忍や…」
「す…い…ません…」



水着。若い男なら女性のそれを嫌う者はそうはいないだろう。
衛宮士郎と、柳洞一成は性格的に普通とは言い難いが、こと3欲については人並みに備わっている。

656:名無しさん@ピンキー
10/05/14 21:03:43 xrA8eC0o
美、女と少女ついでに幼女が計6人もいれば嬉しい反面どうしても
居心地の悪さを覚えてしまうのはまだ、彼らが純である証拠でもあろう。
(セイバーはさっきの黒いビキニ。はやては水色のワンピース、桜はピンクのビキニ、
シグナムは意外と普通のツーピースか、シャマルは…際どすぎる。ヴィータは…いい。
いや、ヴィータが悪いとかじゃなく反応するのは人としてどうかと思うしな)
(何を衛宮、煩悩を受け入れてかつ流されないことだとさっき俺が言ったではないか!)
(少し…頭、冷やそうか、一成…)
(……すまぬ。煩悩に流されかけていたようだ…喝)
などとボソボソと女性陣を見て言い合っていた2人だったが
しばらく経った今では一成はしっかりと混ざっている。
彼は大人の階段を一歩登ったのかもしれない。
士郎はといえば、ビーチで1人ドリンクを煽っていた。
士郎は藤村大河とザフィーラがいないことを残念に思いつつも、
水辺で戯れる皆を見て満足していた。
―ああ、皆、幸せそうだ。なら、俺が出る幕はない―
そんな独り心地の士郎の頭に突如冷水が浴びせられる。
数時間前に出会った男の声。
それは意外にも頭の中で響いた。
(衛宮、士郎君。君と話がしたい。いいか?)
(念話!?)
(驚かせて済まない。できれば2人で話したかったんでね)
(黒野!やっぱりあんたは俺らの敵だったのか!)
(落ち着いてくれ。僕はヴォルケンリッター達の知る世界の人間ではあるが
君の敵ではないつもりだ)
(何を根拠に信じろってんだ?俺は家族を信じるぞ!)
(…根拠は示せないが君に聖杯戦争の情報を提供することはできる。
代わりにこちらの条件を呑んで欲しい。それが用件だ)
(なんだって!?条件ってのはなんだ?)
その時、士郎の背後から伸びる手が。



「おお!?」



士郎の胸を弄った。



「あっはは。えらい驚きようやね。黄昏すぎ」
「気持ち悪いことすんな、バカ野郎。は・な・せ」



胸に伸びた腕を振りほどき、振り返ればはやてがそこにいた。



「遊び尽くしたとはこのことや。もうプールにはしばらくこんでええな」
「本当か?」
「ほんま」
「そうか…」



クロノ・ハラオウンが提示した条件。それは
(衛宮はやてを引き渡してもらいたい)



657:名無しさん@ピンキー
10/05/14 21:04:04 xrA8eC0o
以上で投下終了だぜベイビー

658:名無しさん@ピンキー
10/05/14 21:17:10 /Xiw98W0
ベイブ!

659:名無しさん@ピンキー
10/05/15 01:00:41 +EK50/Nm
投下ご苦労様www
しかしカオスですね~何々渡来伝斗と言う人がパクリや貶めでスレを荒らし
荒らし全員で10000年と言う人を追い出して管理人や住民の一部が嫌気がさして
避難所に逃亡、最後に鰻犬と言う人が謝罪を求めてスレを乗っ取った!?
で、渡来伝斗と言う人がスレを荒らした原因が…普段から自分の好きな作家
以外は、貶しまくる鰻犬が原因と…
ふ~こんなもんでしたか?
で、お願いなんですが正直言ってこのスレがどうなろうと知ったこっちゃ     
無いんですけど、(7年でも8年でも好きなだけ粘着してください。)
他スレに来ないで下さい!
一部スレの保管庫の掲示板を読むと分かるのですが
「また、荒らしが出没!春先になると嫉妬スレから湧いて出てくる」
とコメントが出てきます。
どうしても作家批判がしたいならムーンライトかノクターン
にでも行って下さい。
(まあ、アソコは荒らし対策が最近強化されているので想う様いかないと思うが)
此処で皆さんがオナニーする分には、構いませんが
他人には迷惑掛けない様よろしくお願いします。


660:名無しさん@ピンキー
10/05/15 02:17:21 GymkgqLJ
>>659
ウナは天下無敵だよ

661:名無しさん@ピンキー
10/05/15 03:18:09 +EK50/Nm
このスレ限定でねwww
コッチの視界に入らなければ神でも構いませんのでwww

662:名無しさん@ピンキー
10/05/15 20:47:44 kCeQJX7+
こっちとしても余所のスレにまでちょっかい掛けるつもりはないよ
別スレで思いっきりやってくれればいい
そうしたら完全制圧完了で勝利宣言できるしな

663:名無しさん@ピンキー
10/05/15 21:44:04 shFFeuW0

   見た目は大人 、頭脳は子供 、その名は……

      \人_从_人,_从,人_.人_从_,人从/
       )  迷 総 理 ユ キ オ!  (
      /⌒Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒\
              ,,ノ´⌒`ヽ,,
         ,,γ⌒´         ゝ,,
       /             )⌒ヽ
      /   γ""´´⌒⌒``゙゙゙゙゙ \  ` ゝ
     (  彡               ヽ    )
     ) i            /\  .i   .(
     (  !  /\     ./     i   )
      lr.' リ  __ヽ_  , -ー ─ --、. }ミ r‐‐ゝ
      ヽ:: f´ ̄   ''ヽ`‐{  ( ・ )  レ'./こi`}
       t-iヽ ( ・ )ヽl ̄ゝ,´ヽ.,,_,,ノ .ノ (_,ノ ノ
       ヽゝヽ,,__,,ノノ   `ー ---‐'´r'´ _,/   人人人人人人人人人人_
         `弋‐‐'´/(_人__)\ /⌒゙i弋;ゝ  < 責任は いつも他人! (
           ヽ、./  `ー'    ,f    !____    Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^ ̄
             `ニ=、_____,,∠_{   }___:::ヾヽ
             ゙、:::::::r:::r'´::::::「` ノ/ `、__::゙ヽ
            r‐'´}:::::::ト-ヘ;;;;;;;;;ト 、_/      `}::{
             ノi:/`フ´ _ン‐‐‐く  /   /   ゙‐}
           ,イ:<_::;ィ/ r'´     〈  ,ィ'  / ./
           f::::r‐'´〈 廴_,,,-‐''ー‐‐辷、_,ィ'´ _,ノ
         /:::::/ヽ、::::V/::/::::::::::::::::::::::` ´`フ
        /::::;;;〈:::::::ヽ;///:::::::::::::::::::::::::::/
         〈 ィ'´_;;;〉::::::r':::/::::::::::::::::::::::::::::K
        i::::ィ::;;゙ヽ;::::{::〈○:::::::::::::::::::::::::::ノノ
        V::::::::::;ン'{:::::ヽ::::::::::::::::::::::::::ノ:ヽ
         ヽ:::::ノ:::ゝ::ゝヾ::::::::::::::::::::::::::::::`ヽ


664:名無しさん@ピンキー
10/05/16 02:42:24 T117XRf+
もう保管庫の他の作品の二次創作とかしないの?
結構楽しみにしてたので…
あ・俺は純読み手なので作家同士の倫理観など無いのでww
転帰予報とか是非ともお願いします。



665:名無しさん@ピンキー
10/05/16 09:45:20 1cE3iLYO
>>664
もう無いよ。

666:名無しさん@ピンキー
10/05/16 17:05:42 6/zItr4g
いや、まだストックは何本かあって“ウェザーリポート”なんて転帰ものもあるんだ
けど、元作がつまらないと虹ものも面白く書けなくってお蔵入りにしちゃった
やっぱ、最低でもノントロくらいのレベルに達してないとな
それに、認知度からしても転帰予報じゃ物足りないし、投下しても話題性に乏しいだろ

667:名無しさん@ピンキー
10/05/17 04:32:38 zCU/FV1o
何かいい別のストックがあれば投下お待ちしております。
所で一つ質問嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ ウナギイヌ
このスレ意味アルの?
重複だし、落書きばっかだし削除依頼出さないの?




668:名無しさん@ピンキー
10/05/17 11:47:09 zsNt+3TQ
重複と言うのなら、むしろ後発のこっちが削除対象だろ
意味なしだったり、落書きばっかなのは同じだし

669:名無しさん@ピンキー
10/05/19 05:06:29 32E45jjG
        ノ´⌒`ヽ       γ⌒´      \     .// ""´ ⌒\  ) ぽっぽっぽー、鳩ぽっぽ♪     .i /  _ノ   ヽ  i )          i   (-‐)` ´(‐-)i,/   金が欲しいかそらやるぞ~♪     l    (__人_
【鳩ぽっぽ】 ぽっぽっぽー、鳩ぽっぽ  金が欲しいかそらやるぞ みんなにばらまけ子ども手当  ぽっぽっぽー、鳩ぽっぽ 小沢が怖いかそら逃げろ  ママと宇宙に飛んでいけ
小沢「私は辞任しません、自任します」

670:名無しさん@ピンキー
10/05/19 05:23:34 32E45jjG
        ..--‐-----------..,
       (;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;::::::\
       // 国賊小沢 ヽ::::::::::|
      // .....    ......... /::::::::::::|
      ||   .)  (     \::::::::|
      .|.-=・‐.  ‐=・=-  |;;/⌒i
      .| 'ー .ノ  'ー-‐'    ).| 
      |  ノ(、_,、_)\      ノ     / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\
      .|.    ___  \    |    < おい!ボケの国民どもよく聞け│
      |   くェェュュゝ     /|___  \ 神より偉い俺様は何やっても│
     _入  ー--‐     //☆☆::入_  │ 許されるんじゃ覚えておけ!│
   /:::::::::|\_____/ / ./フ//:::::\ \___________/
  /::::::::::::::::\_/::::i|○::\__.////:|:::::::::::|
  /::::::::y:::::::::::::::::::||::::::::::::////::::::|:::::::::::|
 .|::::::::::|::::::::::::::::::::::||○:////:::::::::::|::::::::::::|
 .|::::::::::|:::::::::::::::::::::::||:////::::::::



671:名無しさん@ピンキー
10/05/20 23:27:39 5X5iNNqn
投下ご苦労様www
しかしカオスですね~何々渡来伝斗と言う人がパクリや貶めでスレを荒らし
荒らし全員で10000年と言う人を追い出して管理人や住民の一部が嫌気がさして
避難所に逃亡、最後に鰻犬と言う人が謝罪を求めてスレを乗っ取った!?
で、渡来伝斗と言う人がスレを荒らした原因が…普段から自分の好きな作家
以外は、貶しまくる鰻犬が原因と…
ふ~こんなもんでしたか?
で、お願いなんですが正直言ってこのスレがどうなろうと知ったこっちゃ     
無いんですけど、(7年でも8年でも好きなだけ粘着してください。)
他スレに来ないで下さい!
一部スレの保管庫の掲示板を読むと分かるのですが
「また、荒らしが出没!春先になると嫉妬スレから湧いて出てくる」
とコメントが出てきます。
どうしても作家批判がしたいならムーンライトかノクターン
にでも行って下さい。
(まあ、アソコは荒らし対策が最近強化されているので想う様いかないと思うが)
此処で皆さんがオナニーする分には、構いませんが
他人には迷惑掛けない様よろしくお願いします。




        ____
        /_ノ  ヽ、_\
 ミ ミ ミ  o゚((●)) ((●))゚o      ミ ミ ミ    .だっておwww
/⌒)⌒)⌒. ::::::⌒(__人__)⌒:::\   /⌒)⌒)⌒)
| / / /      |r┬-|    | (⌒)/ / / //  
| :::::::::::(⌒)    | |  |   /  ゝ  :::::::::::/
|     ノ     | |  |   \  /  )  /  
ヽ    /      `ー'´      ヽ /    /     
 |    |   l||l 从人 l||l      l||l 从人 l||l   バ   
 ヽ    -一''''''"~~``'ー--、   -一'''''''ー-、 ン
  ヽ ____(⌒)(⌒)⌒) )  (⌒_(⌒)⌒)⌒)) バ



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