09/11/24 03:08:41 Lwi8dQ69
>>390
藤子不二雄作「流血鬼」をどうぞ。
401:名無しさん@ピンキー
09/11/28 14:34:05 vfkxaZwU
寄生するターゲットによっては絡め手で行くのが最適な場合もあるよね
ターゲットに妬みや嫉妬・歪んだ想いを抱く別の人間に望みを叶えてやるとか言って寄生して
利用するだけ利用してターゲットを陥落させて寄生成功したポイッと捨てるって感じな
402:名無しさん@ピンキー
09/11/29 10:01:18 j5RD8piz
それは、話の途中で中断されたSSに魅せられて裸で続きを待ち続けるオレらに
似て・・・
403:名無しさん@ピンキー
09/11/29 19:25:00 MLuDwiTz
>>401
「お願~い。また、寄生してぇ……」
404:名無しさん@ピンキー
09/11/29 20:11:07 FkmdtXp+
>>403
あと一月もすれば、また寄生ラッシュさ。
405:名無しさん@ピンキー
09/11/30 06:34:49 79cqGLgP
帰りの新幹線の中に一人でも寄生されてる奴がいたら大変なことになるぞ
406:名無しさん@ピンキー
09/11/30 08:40:27 0Q/ZMota
>>405
それ、どこかの作品通り…w
407:名無しさん@ピンキー
09/12/01 02:10:37 +i0EIZNE
淫乱女が初心な女の子に寄生とかどうよ?
408:名無しさん@ピンキー
09/12/01 08:38:37 Tz7N96Lq
>>407
寄生した奴に開発されてくのいい。
409:名無しさん@ピンキー
09/12/04 06:09:45 lcSRufNX
寄生体が抱き枕に寄生して
抱き枕と人間の男の子とのアホなラブロマンスが始まる
410:名無しさん@ピンキー
09/12/04 13:41:13 oz5Hee8l
寄生体によって生物化(淫魔化)した抱き枕に全身を触られ、その感触と快楽に溺れる男の娘
気絶して目が覚めたら連鎖寄生されててTS百合、まで妄想した
411:名無しさん@ピンキー
09/12/04 23:54:48 etAr2nV1
そこで男の娘だTSだ、が来るとはなかなかの強者だな
いい妄想力だ
412:名無しさん@ピンキー
09/12/04 23:59:34 61lQ2gsW
つまり、その…枕に寄生するという新ジャンル?
413:名無しさん@ピンキー
09/12/05 00:03:42 Yee5Mp9v
枕に寄生されるんだ
さらに布団にも寄生されるんだ
あまりに気持ちよくていつしか繭のように取り込まれるんだ……
そして寝坊
冬の朝にはよくあること
414:名無しさん@ピンキー
09/12/05 01:32:38 STZ5NYVl
俺の布団は寄生されてたのか
415:名無しさん@ピンキー
09/12/05 06:40:46 3MJZYIQM
うちもだ
416:名無しさん@ピンキー
09/12/05 07:58:19 yPAX1hhe
なら俺は、抱き枕に寄生するぜ。
寝ている女の子と密着出来るのは、確かに狙い目だな。
417:名無しさん@ピンキー
09/12/05 13:18:37 f8jfA4Uv
─それが、抱き枕に取り込まれた>>416の最後に残した台詞だった…なんちゃって
418:名無しさん@ピンキー
09/12/06 05:09:56 giz/Kzjr
その抱き枕を使うのは男だったりしてな
メタポが肉汁みたいな寝汗かいたり
「○○た~ん(抱き枕の絵柄)」とか言いながら脂肪まみれの体で
背骨が折れるかと思うほど抱きついてきたりチュッチュされたりするかもしれないぞ
419:名無しさん@ピンキー
09/12/06 05:36:12 OvENQf0d
貴様を抱き枕にしてやろうか!
420:名無しさん@ピンキー
09/12/06 13:23:33 fqVfVxV3
お前を、北枕にしてやる!
421:名無しさん@ピンキー
09/12/06 15:59:00 DcPq7vH4
>>420
一瞬、北欧に見えたw
422:名無しさん@ピンキー
09/12/06 16:01:43 Fe9PQCeY
北欧の美女に寄生とな
423:名無しさん@ピンキー
09/12/06 18:24:57 21HUWc8Y
ワルキューレさまぁーーーーーーーーーーーに寄生したい
424:名無しさん@ピンキー
09/12/06 20:12:28 1ryzjCSu
流れを切って失礼。角川ホラー文庫先月新刊の影姫って本が
なんかこのスレ的要素を満たしてるっぽいみたいなんだけど読んだ人感想はどう?
URLリンク(www.kadokawa.co.jp)
425:名無しさん@ピンキー
09/12/06 20:52:24 f22CIISd
なにやら昨日、今日と盛り上がってるのに、さらに一段と話を切って申し訳ないんですが、最近作品が上がってないので駄作ですが書いてみました。
スレのタイトルを無視してる気がするんで、いいのか悪いのか分からないですがとりあえず上げ逃げさせて貰います。
お時間があればお読み下さい。
426:名無しさん@ピンキー
09/12/06 20:53:18 f22CIISd
「やぁああああばぁああいぃぃいいい!」
僕は冬の寒空の下、自転車に跨って駆け抜けながら思わず叫んだ。田舎の張り詰めた冷たい空気の中で僕の声は大きく木霊する。
そうしたところで時間がまき戻ることも、スピードが速くなることもないのは分かっているけど、それだけ僕は追い詰められていた。
今日は高校2年生2学期の期末テストの日で、1時間目のテストは数学だ。
遡ること1ヵ月半ほど前の中間テストで、僕は0点に限りなく近い点数で見事赤点を獲得し、お陰で昨日はその汚名を返上すべく一夜漬けで勉強していた。
しかしそのしわ寄せが、最悪なことにテスト当日の朝に来た。
今日の朝、僕が起床した時刻はいつも起きる時間を大きくオーバーし、朝のHRの時間までをも飛び越してちょうどテストが始まるであろう時間にやっと目が覚めた。
それから3分で身支度を整え、母さんが投げ渡した食パンを片手に家を出て、それから自転車に飛び乗り3分ほど全力で走ったところで筆入れを忘れたことを思い出し、急いで逆走。
結果、僕はテスト開始から20分ほどを過ぎて、やっと家と学校までの全道のりの半分ほどまで辿り着いた。
テスト時間は50分、ここから何も問題なく進めば10分で着くはず。20分でどれだけ解けるかは分からないけど、とにかく急がないと!
すっかり身軽になった木々の間をすり抜けて、僕は山道から舗装された道に自転車を横滑りさせながら入った。中学までは家からまだ近いところに学校はあったけど、高校からは大分遠くなってしまった。
それでも自転車で行けるだけまだありがたかったけど、ボコボコの茶色い道を走りなれていた僕にはこの冷たいねずみ色の道がどうも走りづらかった。友達に言ったらお前だけだ、と即答されたけど。
ここ最近になってやっと慣れてきたその道を疾走していたそんな時、無機質な道路に似合わない……とても生々しい光景が僕の目に飛び込んできた。
「はぁはぁはぁ……えっ? くぅっ、っと。うわっ、ひど……」
道路の上にぺしゃんこに横たわっていたのは、真っ赤に染まった何かの死体だった。
その様子はまさに魂が抜けてしまったかのようだった。おそらくこのあたりでは希少な車に運悪くはねられてしまったんだろう。
それを見て僕が先ほど胃袋に入れ終えたばかりの食パンを吐き出さずにすんだのは、以前にまったくのデジャブとも言える光景を目にしたことがあったからだ。
あの時はおそらく猫の死体だったようだけど、まさしく今僕の前にあるこの死体と同じく、一見しただけでは猫とも犬とも狸とも分からない状態だった。
とりあえずの冷静さはなんとか保てた僕の頭の中では、この状況をどうしようかということで議論を始めようとしていた。
しかしそんな無駄な議論は開始されることなく、全会一致の結論を導き出した僕はすぐに自転車を降りてリュックの中身を漁った。
「何かないか? 何か、っと、これなら大丈夫かな?」
右手で掴んだのは母さんが作ってくれた弁当を入れていた、いわゆる給食袋だった。
遡ることかれこれ10年ほど前、小学校入学時に母さんが作ってくれたありがたいものだけど、さすがにこの年齢では堂々と出したくはないレトロな図柄をしている。
だけど、クラスメイトが口を揃えて大きすぎるという僕の弁当箱を入れられるこの袋なら、この目の前の死体を入れられることはたやすくできそうだった。
弁当箱を教科書で動かないようにリュックの中に直接降ろし、僕は空っぽの袋中にできるだけ形を崩さないようにその死体を移動させ始めた。
手に付く生暖かい血、それにアリなどが近くに群がっていないため、事故が起こってからあまり時間が経っていないのだろう。
事故を起こしてしまった人は事故自体には気付いたのかな? もしそうなら、1秒でもこの子に謝ってくれたら幸いだけどね。
そこまで飛び散っていなかったため、その子の欠片を集めるのにはそこまで苦労はしなかった。さすがにコンクリートの地面に染み込んでしまった血までは無理だったけど、大きなものはほとんど集められたと思う。
「ん? これって、この子のかな?」
427:名無しさん@ピンキー
09/12/06 20:54:33 f22CIISd
欠片の残りがないか探していた僕が見つけたのは、赤く染まった細長いカケラだった。
「あっ、これ尻尾だ。そっか、君は狐だったのかぁ」
それはペシャンコにはなってしまっていたけど、よく見れば黄金色の毛並みが生えそろい、その先っぽだけがちょこんと白く染まっていた。
僕自身もこの近くで狐は何度も見たことがある。冬の時期で餌が少なくなって、山から降りてきてしまったのだろうか。
「運が悪かったね。さっ、山に戻ろっか」
給食袋の口を閉じると自転車のカゴにリュックの中身である教科書や弁当箱を置き、入れ替わりに給食袋を丁寧に詰め込んで口を閉じてそれを背負った
ちらりと腕時計を見ようとしたけど、馬鹿らしくなってやめた。どうしたってもう間に合わないから仕方ない。
僕は開き直ると自転車の進行方向を半回転させ、来た道をゆっくりと戻り始めた。これ以上この子の死体を崩してはいけないからね。
さぁってと、それと同時に先生への言い訳も考えないと。どうせ、僕は嘘は下手だからすぐに寝坊だってばれるんだろうけど。
「じゃ、行きますか、っと」
僕が誰に言うでもなくそんなことを言うと、背負ったリュックがまるで返事をするように少しだけ動いたような気がした。
「はぁ、追試かぁ……追試、かぁ……」
僕があの狐の死体を発見して、山の中腹まで自転車で昇り、大きな木の根元に給食袋に入った狐の欠片を埋め、手を合わせて黙祷してから全速力で学校まで自転車を飛ばした結果……2時間目のテストが始まって10分後に僕は教室に滑り込んだ。
それからテスト後、クラスメイトに笑われながら僕は数学担当で、僕のクラスの担任でもある先生に必死で謝った。
そこで僕が言った嘘は、言い出して三秒で看破されて10秒ほどのアームロックを僕を味わった。でも、できればもう少し味わいたかったかなぁ。
いや、それが先生、女性だからその、僕の頭の後ろに先生の胸が……ぐふふっ。
「ぬふふふっ、何でスーパーで鼻の下伸ばしてるのかなぁ~?」
頭の中で先生のクッションの感触を思い出しながら、僕は背後から聞こえたその声の主に思わず返事をする。
「えへへっ、それはせん……って、うわああっ!」
「おっと、危ない」
驚きのあまり、豚肉が並ぶチルドコーナーに僕が倒れこみそうになったが、すぐに僕はその人に引き寄せられ、そして学校でのデジャブが起きる。
今度は顔からだったけど。
「ぶっ! んんんん!」
「ふぅ、相変わらずリアクションが素直でよろしい。おっと、ごめんごめん」
「ぶはっ! ご、ご、ご、ご、ごめんなさい!」
暗転した視界がその人を捕らえる前に僕はすぐに頭を下げてその人に謝る。心臓が夏祭りのピークを迎えた太鼓のように暴れている。
428:名無しさん@ピンキー
09/12/06 20:56:07 f22CIISd
まさか1日で二回も女性の胸を味わうハメになるとは……はたしてこれは運が良いのか、悪いのか……。
何秒ほどそうしてたか分からないけど、気付くとスーパーのチープなオリジナルソングの合間でかみ殺すような笑いが頭の上から聞こえてきていた。
僕が機嫌を伺うように顔を少しだけ上げると、その人はお腹を抱えて声を殺して笑っていた。
「クスクスッ、あ、ごめんごめん。ふぅ……まったく、私が自分でしたんだから気にしなくていいの」
僕の額を人差し指で優しく小突きながらその人は僕に笑い掛けてきたが、そのまま両手で自分の身体を抱きしめると途端に寂しそうな雰囲気で笑顔も鎮めてしまった。
驚きつつも声をかけようと僕が近づくと、突然その潤んだ瞳で僕の顔に向けてこんなことを言ってきた。
「お姉さんはいつでも、準備できてるんだよ? し、い、ちゃん」
「ぶっ!」
妖しさを滲ませながらも守りたくなるその表情と、思わず目がくらんでしまいそうな甘い声のダブルパンチに僕は一撃でノックダウンされてしまい、すさまじい鼻血の大噴火に乗せられて僕の意識はしばらく吹き飛ぶことになった。
先輩、それはだめだって……。
「はぁ~もう、本当に素直で可愛いなぁ、しぃちゃんは」
「だ、だからもうその呼び方はやめてくださいよ、先輩!」
活発なイメージのあるスーパーの赤いエプロンから、少しだけ落ち着いた雰囲気を見せる高校の制服に着替えた先輩と横に並びながら夕日の畦道を歩く。
小さな僕は先輩に気を使わせないように自転車を押しながら大股で歩いていたのだけど、すぐにそれに気付かれまたこうしてからかわれてしまった。
「ふふっ、私にとってはしぃちゃんはいつまで経ってもしぃちゃんだよ。だから私のことも、また名前で呼んで欲しいんだけどなぁ?」
先輩が僕の顔を覗きこみながら小首を傾げてくる。僕の身長より大きいのに、その愛らしさはまるでリスのようだ。
「だ、だ、だ、だめですよ! またクラスのみんなにからかわれます!」
「それはしぃちゃんが恥ずかしそうに言うからよ。もっと堂々と……くーちゃん、って呼べば」
「無理ですよ! 絶対無理!」
5年ぐらい前まで僕が先輩に対して使っていたあだ名を先輩は持ち出して来た。対して僕は首を大きく振って断固拒否する。
すると先輩は先ほどスーパーで見せたようにまた寂しそうな雰囲気で首を垂れる。
僕はそれを見るや否や、今度は絶対に動揺しないように進行方向の夕日を見ながら声を出す。
「ぼ、僕だってそうそう引っ掛かりませんよ! もう十年間の付き合いな」
429:名無しさん@ピンキー
09/12/06 20:56:48 f22CIISd
突然、僕が見ていた夕日が消えると同時に自転車が動かなくなる。時折鳴いていた鳥や虫達の声も聞こえない。
その代わりに、僕の全神経が視覚に集まって夕日を遮った目の前の姿に集中する。眼球を僅かに動かすことすら出来ない。
当たり前だ。先ほどまで僕が見ていた夕日も美しかったが、今僕の前に立つその人の姿と比べてしまったらそれはもう足元にも及ばない。
そして目の前に立った人物は口を開いて震えた声で静かに告げる。
「私の事……嫌いに、なっちゃんったんだ……うっ」
言い終わると同時に先輩の長い黒髪が風でなびき、僕は先輩にまるで包み込まれるかのような錯覚を感じた。
そして僕に襲い掛かるとてつもない罪悪感。女神を泣かせてしまった様な重罪の重さがのしかかる。
口を開いて謝罪の言葉を言おうとしても、それを許さない先輩の悲しい目。結果、僕は罪の重さに後悔を感じるしかない。
随分とそうした果てのない懺悔を続け、やがて後悔が恐怖に変わろうかと言う頃、それはやはりこうして終わりを告げた。
「ぷっ、あははははははははっ!」
先輩は僕の自転車から手を離して大笑いしている。しかし、僕はそれを見ることが出来ない。
僕は目の前の夕日を見ていた。でも、しばらくぶりに見るその光景を別に懐かしがったわけじゃない。
それから数秒してから、やっと僕の身体は再び血が通い始める。まばたきすら忘れていた目は砂漠の砂のようにすっかりとうるおいをなくしてしまっており、ちくちくと痛んだ。
目の痛みが取れるまで瞼のシャッターを切り続けた僕は、まだ笑い続けている先輩の方を見た。すると僕の視線に気付いたのか、先輩もすぐに笑い声を止めた。
それから悪戯っぽく僕に笑いかけてくる。その表情は先ほどの女神とはまるで別人であったが、しかしその女神とは違う可愛らしさを振りまいていた。
「まったく、本当にしぃちゃんは面白い! 抱きしめちゃう!」
自転車を支えていた僕は逃げることも出来ずに、先輩にぎゅっと強く抱きしめられた。甘い香りが鼻をくすぐる。
「ちょ、ちょちょちょっと、せんぱ」
「でもね……私はしぃちゃんのこと大好きだよ? ……前から、ずっと、ず~っと」
先輩の口調が先ほどまで僕と話していたときのそれとはまるで違う。別人と話しているようにさえ感じた。
当たり前だ。先輩は無理をしているんだ。
「……ごめんなさい」
僕は謝った。それが僕に言えるただ一つの言葉だった。
僕の気持ちが分かってくれたのか、先輩の暖かい拘束はゆっくりと解かれた。顔を上げた僕が見たのは先輩の涙でもなんでもない。
ただ、何か言いたそうだけどそれをぐっとこらえて寂しそうに笑い掛ける先輩の顔だった。
「ごめんなさい」
僕はもう一度そう言って自転車に乗ると先輩を置いて全速力で逃げ出した。これ以上先輩のあの顔を見続けるのは辛かったから。
この沈み行く夕日みたいに先輩の存在は僕には眩しすぎるのだ。だれもが羨むほどに。もちろん僕を含めて。
だから……手に入れたくなる。独り占めしたくなるのだ。
「……くそっ!」
ギアを更に一段重くして僕は更に自転車を飛ばす。逃げるように。振り切るように。
そう、自分自身を。
430:名無しさん@ピンキー
09/12/06 20:57:29 f22CIISd
「さぁってと、母さんがいない洗っちゃわないと」
夕食を食べ終わった僕は、母さんが農協の集まりに行っている間に給食袋を洗うためにリュックを開いた。
そして教科書の手前に置いてあったそれを取り出してそのまま口を閉めようとしたとき、僕はその存在に気付いた。
「んっ? げっ、これなんでここに?!」
給食袋を脇に置いて、僕はそれをリュックの中から引っ張り上げる。口に釣り針を引っ掛けれたかのように思わず顔が引きつる。
黄金色のそれはやはり狐の尻尾であった。うわぁ、これだけリュックの中に落ちちゃってたんだ。埋めたときに気付かなかったなぁ。バチ、当たらないよね……?
だけど僕はその物体のおかしな部分に気付いた。
「あれ……でも、これって確か血が付いてたような……」
その尻尾には朝見たときにべっとりと付いていた血がまったくついていないのだ。血など最初から付いていたのかさえ、疑わしくなってきてしまう。
僕がその違和感に首を傾げた時、それは突然起きた。
右手で先っぽをつまむように持っていたその尻尾が僕の指先から飛び出し、まるで芋虫か何かのように僕の顔面めがけて飛んできたのだ。
その様子を僕はスローモーションで見ながらも、驚きのあまり身体はぴくりとも動かずにそれを見つめていた。
そしてそれは僕の視界の下の方へと段々とフェードアウトしていき、少し遅れて口の中に何かの物体の感触を僕は覚えた。
尻尾が僕の口の中に飛び込んできたのだと理解し、僕の右手がとっさに動いた。しかしその尻尾は口の中でうごめいて、僕の更に奥へと進んでいこうとしている。
右手が喉元までやっと上がり、そして僕の身体の中へ消えかけようとしている尻尾の先っぽを掴もうと手を閉じ始めた。
だけどそれと同時に僕は思わず息を吸い込んでしまい、僕の口から出ていた尻尾の先っぽもついに僕の中へと消えてしまった。
「ぐっ、ゲホゲホ、おぇっ、ゲボォ……ぐっ、オェエッ、ゲホゲホ!」
僕は指を口の中に突っ込んで吐き気を催し、なんとか吐き出そうとしたけど出てくるのは咳と涎だけ。
そして段々と冷や汗と共に恐怖がこみ上げてきて身体が震え始める。
「や、や、や、や、や、やっぱり、た、た、た、祟られちゃったんだ……」
『んっ、くぅ……ふむ、まぁ確かに祟られたという表現は近いの』
「ひゃああああああああああ!」
『うぁっと! 大声を出すでない、たわけ』
あ、あ、あ、あまたの中で、違う! あ、あ、頭の中で声が、声がぁああ!
『くっくっく、っと、人間の前ではコンコンコン、と鳴いてやったほうがいいのかの?』
タタリタタリタタリタタリタタリタタリタタリ、タタリだぁあああああああああ!
『だぁあああああ! 小僧、お主やかましい! ちぃとは黙らんか!』
「ひぃっ!」
僕の声とは明らかに違う頭の中に声に怒られ、僕は耳を塞いでガタガタと振るえることしかできない。だ、だ、誰か、た、た、助けて……。
『まったく、そう怯えるでない。別にお主を喰らおうというわけじゃありんせん』
ガタガタブルブルガタガタブルブル。
『……はぁ、まったく。とにかく一つ、お主には礼を言っておく。此方(こなた)の骸を葬ってくれたこと、感謝し申す』
「えっ?」
頭の中の声が冷静なそれになったことで、少しだけ落ち着きをを取り戻した僕は聞き返した。
『明け方、少しばかし山を降りたところで……此方としたことがたわけてしもうての。気付いたら、此方の身体はもう紙のようになっておったわ』
「そ、それってつまり……」
『そう、此方の“身体”は死んだ。だが、此方の魂は生きておる』
「じゃあ、やっぱりユーレイじゃないかぁあああああ!」
『だぁああああああああああ! 此方の話を聞かぬかぁあああああ!』
431:名無しさん@ピンキー
09/12/06 20:58:13 f22CIISd
「つ、つまり……さ、三千年を生きた、そ、その……狐の妖怪、だと?」
『まっ、そうじゃの。此方は妖怪じゃ。名を……名を……うっ? ぅぅぅぅぅぅ』
頭の中で長く小さなうなり声が響いている。
『だめじゃ、思いだせん! 少し前までは此方の名を呼ぶものもおったのじゃがの、ここしばらく名など呼ばれたこともなかったばかりに忘れてしもうた』
「じゃ、じゃあ何て呼べば……」
『呼ぶのは此方ではない。お主じゃ。好きにせい。此方はお主を……しぃ、とでも呼ばせてもらおう』
な、なんでそのあだ名になるのかなぁ? 僕の名前からだとやっぱりそのあだ名しか考え付かないのかなぁ……。
『ほれっ、此方の呼び名、はよう考えんか』
「あっ、はい! え、ええっとじゃあ、コロ、とかでいいですか?」
先ほどまで喋り続けていた頭の中の声がピタリと止まる。あ、あれ? ど、どうしたのかな?
『……お主』
「は、はい!』
『此方のどこからそのような名を考え付いたのじゃ?』
「あ、えっと、コロって言うのは僕が昔飼ってた亀のなま……」
『こ、此方は亀と一緒かぁあああああ!?』
「ひぃいいいいいいっ!」
予想だにしていなかった怒号に僕の身体がまたガクガクと震え始める。
『ま、まったくお主は……。もう少し真面目に考えてくれぬかや?』
「うぅ……じゃ、じゃあ……ええっと……ツキ、とかはどうですか?」
僕は窓の外を見ながら言う。気づけば今日は満月だった。
『……はぁ、真面目にと申しておるのに……。じゃが、此方も月は大好きじゃ。それでよい』
「な、なんかごめんなさい」
僕は見えない頭の声の主に向って頭を下げた。すると小さく喉を鳴らす笑い声が返ってくる。
『くくっ、お主は素直じゃの。可愛いやつじゃ』
「あ、あの、それで……いつまで僕の身体に……」
僕は恐る恐る聞いてみた。
対してツキさんはまるで夕食を聞かれた母親のような軽い口調でこう返してきたんだ。
『うむ、ずっとじゃ。もう此方の身体はありんせん。これからはお主が此方で、此方がお主じゃ』
「ず、ず、ずっと……?」
『そうじゃ。つまりもうお主も妖怪、というわけじゃな。くっくっく……って、し、しぃ? だ、大丈夫かや? しぃ? しぃ!?』
妖怪……僕が、妖怪? どどどどどどどどどど、どうしようぅぅ……。
『はぁ……色々と忙しい奴じゃの、お主は』
そんなこんなでその日、僕は人間を辞めてしまうこととなった。
432:名無しさん@ピンキー
09/12/06 20:59:38 f22CIISd
『がぁああああああ! 呑ませろぉおお!』
「だめですよ。僕、未成年なんですから」
僕の中にツキ……が来て一週間が経った。もう怖がることはあまりなくなったけど、ツキは色々と、その……わがままな人で僕は困っていた。
『お主に申したじゃろ!? お主はもう老いることも死ぬこともない身体じゃ! どれだけ酒を飲んでも害はありんせん!』
「そういう問題じゃないですよ。守るものは守らないとだめです」
『くぅぅぅ、こ、この生真面目がぁあああ!』
はぁ……勉強がまったく進まないよ。追試もあるのに……やばいなぁ。はぁ、コーヒーも冷めちゃったよ。
『くっ、ならばせめて自慰をして、此方に一時の快楽を味わわせい』
「ぶうっ!」
『うおおっと!』
デリカシーなどカケラもない言葉に僕は口に含んだコーヒーを、どこかのバラエティ番組が如く吐き出してしまった。
「な、何を言い出すんですか! まったくもう……」
『そうは言っても……しぃ、此方と共になってから一度も抜いておらぬのだぞ? それこそ身体に毒じゃ』
「うっ……」
確かに僕はツキが来てからはそうした行為を控えていた。……というより、恥ずかしかったからやりたくなかった。
それでも高校二年生という僕の大人になりかけ身体は男として溜まるものは一方的に溜まっているようで、悶々とした気持ちになるときが時折あることも事実だった。
『お主、男女の関係を結んでおるものはおらぬのか?』
「そ、それは……」
うっ、年頃の男には辛い一言……母さんにも最近はしつこく言われて傷ついているのにぃ……。
『んっ? なんだ、好いておる者がおるのか。お主の記憶の中に一人のおなごが』
「見るなっ!」
僕は叫んだ。怒ったからじゃない。ツキに知って欲しくなかったら。
『お、お主、どうしたんじゃ?』
「お願いです。何も聞かないで下さい。何も……見ないで下さい」
意味がないのは分かってるけど、耳を塞いで僕はツキから逃れようとした。
いや、自分の罪から逃げようとしたんだ。
『……すまぬ。誰しも申せぬ過去があるものよの。本当に、すまぬ』
ツキはしおれた声で僕にそう言ってくれた。知ろうとすればと僕の過去を知れるのに、ツキはそうしないでくれたみたいだ。
良かった。……ツキがあれを知ったら、僕のことをどう思うのだろうか?
ふふっ、考えるまでもないか。きっと僕のこと―。
『此方は……お主にどんな過去があろうとも気にはせん。此方は、お主が好きじゃ。お主が何をしたにせよ、それが変わることはありんせん』
僕はそれを聞いたとき、誰かが僕を背後から優しく抱きしめてくれているような気がした。全てを包み込んでくれるような温もり、それはまるで母さんにそうされているようだった。
『んっ? お、お主、これは……』
……なんでそうしたくなったのかは分からない。少なくてもツキに分かってもらおうと思ったわけじゃない。
だけど、僕はツキには知っておいて欲しかったのかもしれない。あるいは試したかったのかも。
僕は頭の中で思い出すことにした。
僕が犯した……罪の全てを。
433:名無しさん@ピンキー
09/12/06 21:00:26 f22CIISd
今から5年ほどまえ、僕は小学校から中学校へと進学したんだ。中学校から始まる部活は、大好きな先輩と同じ部活に入ろうと決めていた。
だけど僕が入学する1ヶ月前に先輩は部活を辞めてしまっていた。理由は学校では禁止されているはずのアルバイトを始めるため、と言うことらしい。
そしてその後すぐ、先輩は宣言どおりスーパーでのアルバイトを始めた。しかし狭い田舎、そんな話はすぐに広まる。
でも……学校から注意されることはなかった。
先輩が部活を辞めた時期、単身赴任していた先輩のお父さんが亡くなった。過労だったらしい。
そして後を追うように先輩のお母さんも病気で亡くなった。それがスーパーのアルバイトを先輩が始める一週間ほどまえのことだった。
つまり、先輩は中学生と言う身分で独りぼっちになり、自立した生活を余儀なくされてしまった、というわけだ。
二人の保険金は降りたものの、それでは生活に不十分だった先輩は学校の先生達を説得してアルバイトの許可をお願いしたのだ。
もちろん、そんなことを学校側がすぐに認めるわけがない。どんなに田舎の小さな学校だとしてもそこは公立の中学校、高校でさえも禁止されているアルバイトなど断固禁止していた。
更に保護者のいない先輩にもしものことがあった場合を考えれば、学校側が責任を恐れてしまうのは当然のことだった。
それを覆させたのが僕の母だった。
母さんは近隣住民を説得して、先輩がスーパーでアルバイトをしていることを滅多に口外しないこと。先輩に危険な仕事はさせないこと。
そして母さんが先輩の保護者代わりとして、先輩を家に同居させることを決めたのだった。
責任を恐れた学校も、近隣住民の集団登校拒否や教師への商品販売拒否などをチラつかせ、田舎で孤立する怖さを思い知らされた学校側も、仕方なく膝を折って暗黙してくれることとなった。
本当のところは、母さんは先輩にアルバイトもしなくていいと言ったのだが、そこは頑固に先輩も譲らなかったらしい。
そうしたひと悶着があったものの、先輩は無事アルバイトを見つけ、そして僕の家に引っ越して来た。
家族が一人増えただけで、僕の毎日は楽しすぎるほどに充実していた。それも同居しているのが、大好きな先輩だったからだろう。
だけど……僕は分からなかった。
それと同時に僕自身が先輩が好きであることを知らず知らずのうちに我慢していたということに。
ある日、僕と先輩は休日の昼下がりを家で過ごしていた。と、言うのも外は雨で進んで外出する気分ではなく、母さんは農協に話し合いに行っていたからだ。
ふと僕はトイレから戻ると、先輩がテレビを見ている後ろ姿を見て足を止めた。
長い髪から覗くうなじ、ほどよく引き締まったお尻、そして後ろから見ても分かる大きな胸。
僕の我慢はもう限界に達していた。大好きな人がこんなに近くに居るのに今まで我慢できたほうが不思議に思えてきたほどだった。
昔なら絶対に湧き上がってくることはなかった感情……それがそのときの僕には生まれていたのだ。
そして真っ黒なそれは僕の背中を後押しして、僕はそれに負けてしまった。
先輩のことを後ろから抱きすくめると、驚く先輩をそのまま押し倒して僕は先輩の上に馬乗りになった。
これまで何度となく優しい言葉を掛けてくれたその口に僕の口を重ねて、服の上からでも充分すぎるほどにその大きさが分かる胸を両手で荒々しく揉み解した。
その時の先輩は慌てているみたいだったけど僕の身体を押し返したりはしなかった。だから僕は、先輩も僕を受け入れてくれたんだと思ったんだ。
だけど……本当は違かったんだ。
やがて勘違いした僕は、先輩の穿いていたジーパンを脱がせようと右手を移動させ始めた。
そして先輩のジーパンのボタンに手を掛けた直後、先輩は短く叫びながら僕を突き飛ばしたんだ。
勢いあまった僕の身体は部屋の端の壁まで吹き飛ばされ、僕は後頭部を思い切りぶつけて意識が揺らいだ。
でも、その不安定な意識の中でも先輩が何と言って叫んだのかはよく理解できた。
先輩は、やめて、と言ったんだ。
その言葉を数十秒かけて頭の中で反芻して頭を上げたときには、部屋に先輩の姿はもうなかった。
……酷く後悔したよ。何てことをしてしまったんだって。
だけど、僕が犯した罪はそれだけじゃ終わらなかったんだ。
434:名無しさん@ピンキー
09/12/06 21:01:12 f22CIISd
次の日、僕が部屋から出てくると先輩はまるで何事もなかったかのように僕におはよう、と挨拶をしてきた。母さんの様子からしても、先輩は母さんにも話さなかったみたいだった。
それからも先輩はやはり僕が暴挙に出る前となんら変わりなく接してくれたけど、逆に僕にはそれがとても申し訳なく思えてしまってきていた。
母さんは農家で朝は早かったけど、先輩が家に来てからは僕達が朝食を食べる時間になると一度家に戻ってきて、一緒にご飯を食べるようになっていた。
だから学校に行っている平日なら先輩と二人だけ、という状況はほぼ無く、休日も先輩はスーパーにバイトに行く日が多かった。
それでもまたこんな日はやってきてしまった。
僕が暴挙をしでかしてからまだ日が経ってないある日に僕と先輩はまたしても家に二人だけとなってしまった。更にスーパーも定休日の上、外は雨のために先輩が外に出掛けることも無いだろう。
朝になってからその状況を知った僕は、しばらく部屋に閉じこもっていたけどこのままだと席を共にしなくちゃいけなくなるため、11時ごろに身支度を整えて外に出掛けようとした。
だけど、僕が玄関に向おうとしたその時、茶の間から出てきた先輩が僕の肩に手を掛けてきたんだ。
心臓が弾丸の如く飛び出そうになるのは何とか抑えられたけど、僕は振り返ることは出来なかった。……大好きだった先輩に、何を言われるのかが怖くて。
だけど先輩は僕がついこの間、先輩にそうしたように僕の身体を抱きすくめてきたのだ。
そして先輩は口から言葉を出したんだ。それが僕にとってはトドメの言葉でもあった。
この間はごめん。あの時はびっくりしちゃったんだ。
私も、しぃちゃんが大好きだよ、と先輩は言ったんだ。
最初は僕はそれを聞いて思わず息を飲み込んで、とてつもない嬉しさを心の中で噛み締めた。
だけどその直後、僕の中で先輩があの時叫んだ言葉が何重にも響いて僕の心を目覚めさせた。あの時の叫びは絶対に驚いただけじゃない。
あれは完全な拒絶の声。
だったら先輩の今の言葉は嘘だ。でもなんで嘘をつく必要がある?
そう考えたとき、僕の頭の中は自分でも驚くほどに覚醒し、そして答えを導き出した。
僕は先輩を突き放し、非力は僕自身は玄関に転がり落ちた。
だけどすぐに僕は立ち上がって、靴も履かずに玄関のドアを乱暴に開けて外に飛び出したんだ。
行く当てもなく山を走りながら僕は叫ぶ。意味も無く、ただ叫んでそして逃げた。先輩、そして自分自身から。
先輩があんな嘘をついた理由……いや、嘘をつかざるを得ない理由。
それは僕の母さんが、今は先輩の保護者だったからだ。
もし僕の犯した罪が母さんにばれたらどうなるだろう? 少なくとも先輩の保護者はやめざるを得ない状況になる。
運よく、他の人が保護者になってくれる可能性もあるかもしれないが、学校側も今まで認めてくれたバイトは間違いなくやめなくてはならないだろう。
下手をすれば先輩はこの田舎を出て親戚の人や、ちゃんとした施設に入ることになる可能性だってある。
先輩は僕によく言っていた。この田舎の風景が大好きだ、と。それにここは先輩が自身のお母さんと過ごした故郷だ。離れたくはないはず。
だから、先輩は我慢をすることを決心したんだ。ここに残るために。
そのためだったら、自身を襲おうとした僕と付き合うことだってしようと、先輩は決めたんだ。
先輩にそんなことをさせてしまった自分が憎くて、悔しくて、大嫌いで僕は叫んだ。
その日から、僕は先輩を“くーちゃん”と呼ばなくなったんだ。
435:名無しさん@ピンキー
09/12/06 21:01:53 f22CIISd
「先輩を襲ったこと。先輩に嘘をつかせたこと……いや、つかせ続けている事、それが僕の罪です」
先輩は高校生になって僕の家から出て行った今でも、今日みたいに僕のことを好きだと言ってくれている。
当たり前だ。先輩は優しい人だから、きっと僕を傷つけまいとそう決めたんだ。
だから僕も先輩を傷つけまいと決めたんだ。それまで通り、何事もなかったかのように接しようと。
『……すまぬ、しぃ。此方は……此方は本当に』
「大丈夫ですよ。でも、ツキの方こそ僕のこと嫌いになったんじゃないですか?」
『ありんせん! そんなこと、ありんせん!』
僕は久しぶりにツキの怒号に驚いた。そして身体が小さく震え始める。だけど恐かったわけじゃない。
……嬉しかった。先輩以外に僕の罪を知ってくれた人も、その上で僕を受け入れてくれた人も初めてだったから。
「ありがとう……ツキ」
僕は心のそこからツキにそう言った。このあまりに優しい同居人が僕の傍にいてくれたことに。
どうしても流れてしまう涙を僕が何とか止めると、ふとツキがこんなことを言ってきた。
『しぃ……すまぬが明かりを消して服を脱ぎ、横になってくれんか?』
「えっ? ど、どうして?」
『くくっ、ただの酔狂じゃ。何も言わずに、の?』
「う、うん」
いつものツキらしからぬ静かな口調に、僕は少しだけ首を傾げながらもツキの言うとおりに敷いてあった布団の上で裸になり、電気を消して横たわった。
『くすっ、よい身体をしておる。……そのまま力を抜き、ゆっくりと目を閉じるのじゃ』
僕は照れながらも言われるがままに身体の力を抜いて、目を閉じてみた。僕の視界は完全に暗闇に溶け込んだ。
次はどうすれば……って、あれ? く、口が動かない。右手も、左手も、両足も、目も開けない! ツ、ツキ、一体な……。
慌てる僕の視界に片隅に、ふと一人の女性の姿が目に入った。いや、勝手に首がそちらに動いた、というのが正しい表現かもしれない。
暗闇の中でその女の人は光を放っていて、雪のように白い着物に身を包み、そして流れるような黄金色の髪の毛をしていた。
その女の人は大人の雰囲気を持ったなやましい身体つきをしているんだけど、その笑顔はまるで無邪気な子供のような笑顔であり、そして暖かな優しさをも秘めたものだった。
僕が見とれていると女の人はゆっくりと僕に近づいてきて、動けない僕の耳元でこう囁いてきた。
「これは此方が百年ほど前まで人間の元に現れるときにしていた姿じゃ。どうじゃ? かわいいかの?」
さっきまで頭の中でしか響いていなかった声が生暖かい息に乗せられて僕の耳に入り込んできた。
その背後に黄金色をした、先っぽが着物と同じく真っ白な尻尾が振り子のようにゆらゆらと揺れていた。ふわふわで暖かそうなその尻尾はなんとも可愛らしい。
更にツキの髪の上から顔を覗かせる二つの小さな耳。それが時折瞬きをするかのようにピクピクと動くさまもこれまた愛おしい。
実際に頭は動かなかったけど僕は心の中で何度も頷いていた。ツキはそれを分かってくれたようで、顔を上げてにこやかな笑顔で口を開いた。
「くくっ、お主は素直じゃ。ほれ、お主のいちもつが既にいきりたっておる」
してやったり、と言った感じでニヤリとツキに僕は笑われた。ううぅぅぅ、恥ずかしいぃぃ……。
「くくくくっ、すまぬすまぬ。じゃが……此方はうれしいぞ。んっ」
儚げな雰囲気を持った表情をしたツキは、ゆっくりとその顔を僕の顔に近づけてくると、そのまま小さな唇を僕のそれに重ねてきた。
軽く濡れたツキの舌が僕の唇を優しく舐め回し、動けない僕はされるがままにその甘い感触に酔いしれる。
そしてツキは濡れた僕の唇の間を滑り込むようにして僕の口の中へと入ってきた。僕の口の中で彼女の舌は静かに、だけど僕が予想できない動きで翻弄してくる。
目の前のツキは大きな目を時折細く開いて僕を見るとそのたびに小さく笑いかけてきてくれて、僕はといえばそのたびに骨抜きにされてしまっていた。
「んっ、ふぅぅ……どうじゃ、おなごに一方的に蹂躙されるのもたまにはよかろう?」
僕の口の中をもてあそんだツキは可愛げのある顔で妖しい言葉を掛けてきた。そのギャップがなやましくて僕は余計にツキが愛おしくなってしまう。
436:名無しさん@ピンキー
09/12/06 21:02:36 f22CIISd
「次は、お主の身体の逞しいこれを可愛がってやるかの。……お主、顔に似合わず立派なものをもっとるの」
その言葉に喜ぶべきなのか、恥ずかしがるべきなのかを僕が迷っていると人肌の感触が僕の……モノを包み込んできた。
僕の頭が勝手に動き、気付けばツキが僕が軽く広げた両足の間で膝まづいて僕のモノを掴んでいた。
「すぐにでもこれを飲み込みたいところじゃが……まずは濡らしてやるかの。……ペロッ、んっ」
口が開くのなら僕はものすごく恥ずかしい声を上げていたことだろう。それだけの快感が僕を襲ったのだ。
ツキは僕のモノに口を近づけると、軽くひと舐めすると僕のモノを自らの口の中に納め始めたのだ。
頭が動かせない僕は自分のモノがツキの口の中に消えていく光景を見ながら、同時に襲ってくる津波のような快感、そして収まった部分から感じるぬくもりまで感じさせられ、頭がおかしくなってしまいそうだった。
その津波にされるがままの僕がそれをやっと通り越したときには、僕のモノがあったところにはツキの頭が変わりにそこにはあった。
僕がなんとか頭を落ち着かせようと心の中で荒い息を繰り返していると、ツキはなやましげな上目遣いをこちらをちらりと見ると、ニヤリと悪ガキよろしく笑ったのだ。
そしてまたしても僕に大津波が襲いかかる。しかもさっきのとは明らかに質の違うものだ。それもそのはずだ。
ツキは僕のモノを吸い込むように口で絞りながら、そのまま僕のモノをまるで僕自身から引き抜くように吸い込んでいるのだ。
今度は僕の股間とツキの顔の間に一本の橋が現れるのを僕は見ながら、またしても大津波に吸い込まれてしまう。
なんとかそれを通り越して、僕のモノがほとんど現れたのを僕は見て波を通り越せたことを安心し始めた。
しかしその次の瞬間、またしても波が僕に襲い掛かってきたのだ。しかも、先程よりもそれは明らかに強いものなのだ。
それもそのはず。僕のモノの先端が見えようかと言うとき、ツキはいきなり頭を止めると、すぐさま僕のモノを勢いよく再び飲み込み始めたのだ。
油断した僕が驚いている間に僕のモノはすぐさま彼女の口の中に納まり、そして息をつかせるまもなく再び僕のモノは吸い出され始めた。
荒れた大海原に放り込まれたような僕が出来ることなど一つもない。ただそれが過ぎ去るのを待つのみ。
僕のモノが納めるたびにツキの尻尾は右に揺れ、吸い出すたびに左に揺れる。それが十何度か繰り返されたとき、僕の限界はもう目の前まで迫っていた。
そして何度目かの波の途中で、その我慢はついに限界を迎え―。
「んっ! っと、まだだめじゃ」
目の前が真っ白になり、そして僕は言いようのない感覚。絶頂の手前で地団太を踏む、あの独特の地獄を味わうことになった。
「くっ、ぬぅ……男は、一度抜いたら終わりだからの。くくっ、どうせならもっと気持ちよくなりたいじゃろ?」
すっかりと濡れた僕のモノを掴んでいるツキのもっと気持ちよく、という言葉に僕は思わず反応してしまい、そして心の中ですぐさま頷いた。
「くくくっ、本当にお主は素直じゃの。可愛いものじゃ。こりゃ此方も応えてやらんとの」
ツキは嬉しそうに笑うと着物をはだけさせ、そして中途半端に脱げた裸よりいやらしい格好で僕の腰の上で膝立ちをした。
「さぁて、今から此方の下の口でお主のいちもつを味わわせてもらうからの。くくくっ」
思わずつばを飲み込んで僕はそのツキの言葉に期待をする。そしてゆっくりと降りてくるツキの腰に僕の目は釘付けだ。
「んっ、ほれ。お主のいちもつの頭が此方の口に接吻をしたぞ。くっくっく、じゃあ頂くの。お主の、ものをの!」
僕のモノの先っぽが締め付けられ、そして飲み込まれていく。先ほどの口とは比べ物にならない快感が僕を飲み込む。
ツキが僕の上でまるで小さな子供のようにぎゅっと目を瞑りながらも、ゆっくりと腰を降ろすその顔も僕を更に興奮させる。
「くぅ、んぁぁあっ! ふぅ、ふぅ……くくっ、お主のものが此方の中に入ったぞ。どうじゃ、気分は?」
どうということじゃない。ただ僕のモノが何かに包まれているだけ、ただそれだけなのに僕は思わず舌を噛み切ってしまいそうな快感に酔いしれていた。
「くくっ、かわいいやつじゃ。じゃが、まだまだこれからが本番だがの? んっ、ぐっ」
妖しく笑ったツキがまた、きゅっと顔を締めて今度は僕のモノを引き抜きに掛かる。僕のモノはツキの濡れた中に絡みついて、ツキはそれを彼女の顔と同じようにぎゅっと締め付けてくる。
437:名無しさん@ピンキー
09/12/06 21:03:07 f22CIISd
その連鎖的な快感を味わっている間に僕のモノは再び姿を現し、そして再び沈み始める。
「ぐうぅぅぅ! くくっ、此方が壊れてしまいそうじゃ。さぁて、お主の子種。此方の中に存分に吐き出すがよい。ぐんっ、んっ!」
ツキが今度は跳ねるように僕のモノを彼女の口に納めたり引き抜いたりと繰り返す。ツキの耳は終始、ピンと逆立っている。
そうして僕の限界が再び近づいてくると、ツキは上半身を折り曲げて、僕の身体の上に寝そべってきた。彼女のたわわな胸が僕の貧弱な胸板の上に乗っかる。
「さぁっ、此方に出すのじゃ、お主のこだねぇえええええ!」
ツキのその一言に後押しされるように、ツキが僕のモノを全て飲み込んだ瞬間、僕はツキに放った。
これまでにないほどの絶頂を僕は迎え、3、4度に分けて彼女の中に全てを放った。同時にどっと疲労感が身体を襲う。
「はぁはぁ……しぃ。しぃ。起きるのじゃ』
「はぁはぁはぁ、んっぐぅっ……」
耳元で聞こえていたツキの声が段々と僕の中に響くものへと変わり、それから僕はゆっくりと目を開けた。
『くくっ、どうじゃったかの? 此方の味は』
「い、今のは?」
僕は身体を起こしながらツキに問いかける。冬にはだかだと言うのに全身が汗ばんでいる。
『此方は狐の妖怪じゃ。化かすことなど造作もないことぞ?』
「え、えっ?」
僕は驚きながらも真っ暗な部屋の電気をつけた。久しぶりの眩しさに思わず目をしかめる。
『お主の隣の障子』
「んっ? げぇっ!」
白い障子に、青い模様が入っている僕の部屋の障子。そのちょうど青い模様のど真ん中に、なにやら白いぬめってそうな液体を見つけた。
そこから布団までを目で追うとその間のところどころにおなじようなものがくっついている。
「こ、これって……」
『いや、さすが立派ないちもつをしているの。よく飛ぶものじゃ』
心のそこから感心したような声がツキの声が響く。僕は思わずため息を吐きながら、ティッシュでそれらを拭いていく。
そんな僕にツキが静かな口調で告げる。
『すまんの。此方の身体があればよかったのじゃがの……』
「ううん。すんごく気持ちよかったです。それに……」
言うべきなのかな? と、僕は思ったけどそうやって考えた時点でツキには分かってしまうんだろうから僕は正直に言った。
「ツキ、とてもかわいかったよ……」
ああ、恥ずかしい! 僕はティッシュを掴む右手により一層力を込めてシミを拭く。だけど、顔が熱くなるのは抑えられない。
そんな時、また背後から誰かに抱きしめられるような感覚が僕を包む。
そして頭の中で甘い声が響く。
『お主も可愛かったぞよ……特に、達する瞬間のあのお主の顔は……くくくくくっ!』
口元を手で押さえながら笑うツキの姿が目に浮かぶ。……相当な顔をしてたんだろうな、僕。
『じゃがな、お主……此方も、お主が大好きじゃ……ず~っと一緒に居て、いいかの?』
「くすっ、当たり前だよ。ツキ」
そんな甘えた声で言われて、あんな姿まで見たら誰だってこう答えるよ。
『くくくっ、じゃったら毎晩、此方も精一杯ご奉公させてもらうからの?』
「そ、それは……」
『嫌、かの?』
……だぁああっ! もう!
「よろしくお願いします!」
『くくくくっ、本当にかわいいやつじゃ』
頭の中でツキに笑われながらも僕はすごく嬉しい気分だった。
だって僕を分かってくれる人が、こんなにも近くに居てくれるんだから。
438:名無しさん@ピンキー
09/12/06 21:10:13 f22CIISd
と、なんとも不完全燃焼のところで終わりです。
前に>>350さんの書き込み見て考えたですが、もう傲慢でも何でもない……350氏すいません。
寄生されるのも男だし……本当にすいませんでした。
439:名無しさん@ピンキー
09/12/06 21:13:08 +c/QVJhh
なかなか良かった。GJ!
先輩にも寄生して和解とかなるんかな。
440:名無しさん@ピンキー
09/12/06 22:43:49 +ulE51yo
普段ヤンデレとかキモ姉妹とかの修羅場系読んでるもんだから、
このあと先輩大暴れなんだろうなーとか思ってしまった
もちろん続くんだろ?w GJ
441:350
09/12/07 11:14:00 HapkEnqB
これはびっくりしたと言わざるを得ない
俺も狐に化かされたいです、GJです
ツキの台詞がなぜか某狼様の声で再生されてしまったw
442:名無しさん@ピンキー
09/12/07 17:42:30 IGJTuvLF
>>437
GJ
次は、先輩に寄生してエロですね。
443:名無しさん@ピンキー
09/12/08 00:19:26 O6P0NiJR
>>425を見て読む気がなくなった。
>>438を見て読まなくてよかったと思った。
444:名無しさん@ピンキー
09/12/08 06:04:58 afTWGR/d
はいはいよかったねボクちゃん
ここはお前みたいなガキの来るところじゃないからさっさと宿題でもしてろ
445:名無しさん@ピンキー
09/12/08 08:59:33 mBpl76zn
荒らしに構うな
446:名無しさん@ピンキー
09/12/08 23:20:18 mXJzzBza
ドラクエの作戦みたいだな「あらしかまうな」
人外婆好物なのでおいしく頂いた
今度は先輩が化かされるのを期待
447:名無しさん@ピンキー
09/12/09 01:05:26 C39Gb0MN
>>438 素晴らしいねGJ
ツキに寄生されて体が妖狐化したり先輩にも寄生されたりとか、期待してもいいですか?
448:名無しさん@ピンキー
09/12/09 10:56:11 6xFVI8Py
寄生で興奮しなかったが
ひさびさに良いSSみた気がする GJ
449:名無しさん@ピンキー
09/12/09 12:45:03 zMZjNHK0
羽衣狐様風なts妖狐化を期待しているのはおれだけでいい
450:名無しさん@ピンキー
09/12/09 16:22:11 yrX60+10
>>449
それで、先輩を男体化して子種を貰うんですね。
451:名無しさん@ピンキー
09/12/09 16:34:36 yFVSnjWP
羽衣狐様風となると、話を読む限り寄生主との精神融合系だろうか
だが、体に魂が引っ張られて徐々に変わっていくのも捨てがたい
452:名無しさん@ピンキー
09/12/09 17:01:43 tgKGaSok
なんか寄生と違うような気もするけど面白かったのでGJ
453:名無しさん@ピンキー
09/12/09 17:15:40 41h070cN
この流れからツキがしぃを裏切る形になるのはアレじゃね?
お互いの同意の上での変化なら問題ないだろうけどさ
454:名無しさん@ピンキー
09/12/09 20:49:23 CfNV4UCJ
なんか『たったひとつの冴えたやりかた』を思い出す話だ
GJ
455:名無しさん@ピンキー
09/12/10 01:02:53 xin+Kmdi
>>454
あっちは、もっと即物的だけどな。
456:名無しさん@ピンキー
09/12/10 17:24:10 l7Vkswiw
>>455
当人同士は、気持ちよかったりなんだりで良好だったけど、最終的には無理心中だからな。
457:名無しさん@ピンキー
09/12/10 17:35:28 mSh2rleG
ググってみたら脳寄生の話なのね、買ってみようかな
脳寄生といえば自分のエロフォルダ見てたらこんなの見つけた
URLリンク(up3.viploader.net)
これって該当?
458:名無しさん@ピンキー
09/12/10 18:07:31 xin+Kmdi
>>457
サイズがまったく異なる。
体外では黄色い花粉上の粒子で、皮膚接触により"感染"する。
本来の宿主とは共生関係にある生物。(大脳部分が、この生物になっている)
脳内での姿は不明だが、たぶんゼリー状なんだろうな…
459:名無しさん@ピンキー
09/12/10 19:08:58 mSh2rleG
>>458
ちょっとそそるかも、1シーンだけの小ネタって訳でもなさそうだし買ってみるよ
後押しサンクス
460:名無しさん@ピンキー
09/12/10 21:39:53 SygF7spj
ちょうどこの間読んだところだ
脳寄生体は知的生物(しかもおそらく♀)なんだが
物語中で宿主になった女の子に「お礼」として性的快感を与える描写がある
まあエロ小説ではないからまったくいやらしい感じはしないんだがw
てか話自体結構感動しちゃうからあんまりエロ目線で見たくないんだぜ
461:名無しさん@ピンキー
09/12/10 22:16:45 xin+Kmdi
>>459
名作50作のリストを作ると必ず入ってくる作品だから内容は安心して。
(感動が台無しになるから粗筋は書かない。)
462:名無しさん@ピンキー
09/12/12 15:56:32 NFcoL/6i
こんにちは。狐の話の感想、ありがとうございました。
一応、続きが書けましたのであげさせていただきます。
では、お時間があればお読み下さい。
463:名無しさん@ピンキー
09/12/12 15:56:59 NFcoL/6i
「やっ、たぁああああ~!」
僕は千切れんばかりに返された答案用紙を握り締め、今年最高と言ってもいいぐらいの喜びを噛み締めていた。
『くくっ、此方にも感謝してくれの?』
得意げな声の同居人が僕に言う。でもツキの言うとおり、今日のテストで赤点を回避できたのツキのお陰でもある。
今日の追試の数学テストの最終問題で、おそらく先生が配慮してくれたと思われる選択式の問題が出ていた。
だけど、先生の涙ぐましい心遣いも虚しく僕はその数式の解き方をすっかりと忘れてしまっていた。しかも、他の解けていない問題は複雑な上に選択肢ではなく途中式を含めて自分で答えを導き出す問題だ。
最悪なことに僕はその問題も途中までしか解けなかった。おそらくこのまま選択式の問題も間違えばほぼ赤点は確定してしまうだろう。
僕が必死に思い出そうとしても、テストの制限時間はもう1分ほどまで迫っていた。だけど僕の頭はもう数字と記号の羅列で爆発寸前。
その時だった。ツキが冷静な声で3、と僕に告げたのだ。
理由を聞いている暇なんてなかった。僕はツキの言うとおりに解答用紙に3、と大きく書くと最後の見直しをする暇もなく中立なチャイムが鳴り響いた。
そしてその2時間後。早くも返ってきた解答用紙には先生のにこやかな笑顔と共に、赤点ギリギリの得点がでかでかと記されていた。
「もちろんですよ。でも、なんで分かったんですか? まさか、この数式を知ってたとか?」
僕は軽い足取りで、土曜日の昼下がりの廊下を歩いていた。今日は追試の生徒だけが学校に呼ばれる日で、他の生徒の姿はもうなかった。……ま、まさか全校で追試がぼくだけってことはないよね?
『ああ、それはな……此方の“カン”だの』
「へぇーっ。そうな……」
『くっくっく、よぉ当たるもんじゃろ?』
背中を伝うのは季節的に運動でもしなければ掻きそうにない汗。だけど、その冷たさはまさに季節にぴったりなほどひんやりとしている。
「じゃ、じゃあ下手をしたら……」
『お主の申すところの……赤点というやつじゃの。くっく、おっとっと! し、しぃ!?』
ちょ、ちょっと目の前がくらくらしてきた……。それはそうだよね。ツキが数学の問題を分かるはずがないですよね。
『お主、此方を馬鹿にしておるな?』
「ば、馬鹿にしてるわけじゃないですよ! ただ、得意なものがあれば苦手なものもあって当然ですし……」
額に冷たい手を当てて頭を冷やしながら僕はツキをなだめる。それに勘だとしても、ツキのお陰で僕は赤点を回避できたのだから感謝しなくちゃいけない。
「本当にありがとう、ツキ」
『……お主のそういう素直なところが大好きじゃ。まぁ、よお頑張ったわ。帰ったらご褒美をやらんとの……くっくっく』
妖しさ100%にも素直に反応してしまうのも僕だけなのだろうか? うぅ、ズボンがキツキツに……。
『お主の顔は心をそのまま映す鏡のようじゃの。先ほども此方が助言するまで、お主はまるで地獄にでも落とされそうな顔をしておったわ』
かあーっ、と今度は身体全体が熱くなるのが分かる。多分、今も顔が茹だこの如く真っ赤になっているに違いない。
『じゃが、お主は此方の骸を見つけたときは返って毅然としてたの? 心悪くはなかったのかや?』
「それは……確かに直視するのは辛かったけど、実は前に」
『しぃ!』
「ひゃっ!」
ツキの突然の大声に僕は思わず飛び跳ねた。ど、どうしたのかな?
『お主が今思い出そうとした記憶、一体いつのものじゃ!?』
「え、ええっと確か……5年前、かな?」
『その記憶、此方にも見せておくれ! お願いじゃ!』
僕がツキに僕自身の罪を告白してから、ツキは僕の記憶を覗き見することはしないと言ってくれた。僕としてはもう、ツキに隠し事などするつもりはなかったから別によかったんだけど、ツキは頑なにそれを拒んでいた。
そのツキが僕の記憶の中の何かを知りたがっている。だとしたら僕には断る理由などない。
ちょうど教室に着いた僕は、自分の席に座ると5年前の夏の思い出を久しぶりに紐解くことにした。
464:名無しさん@ピンキー
09/12/12 15:57:51 NFcoL/6i
5年前、あれは確か僕が小6で先輩が中学1年生になった夏。
同じ小学生同士の頃はそれこそ365日一緒にいたけどさすがにこの時期は先輩も進学したため、狭い田舎でも一ヶ月に一度会えば挨拶だけを交わすぐらいの仲になった。
そんな僕の小学生最後の夏休み、宿題である自由研究の材料を買うために町の方へと出向いたその帰り道だった。
まさにこの前のデジャブ。コンクリートの上に平べったい死体があったのだ。夕焼けで赤くそまる道路はそこだけ黒くなっていた。
山で蛇やイタチの死体を見たことは何度かあった。でも、コンクリートの上で死んでいるその死体は、山のそれとは明らかに違う冷たい恐ろしさがあった。
動物同士が争って死んだのなら死体が残ることなどほとんどない。それに草木が生い茂る山の中ではそれに気付くことは皆無と言ってもいい。
ただ、その死体は決して動物同士が争って死んだのではないことが一目で分かるほどに残酷な死に様で、夜でもない限りこの道を通ったならば気付かざるを得ないほどの存在感を放っていた。
そう、まるで本来ならこんな死に方すらあってはならないというほどの死体。それが僕の帰り道のど真ん中にぽつんと倒れていたのだ。
自転車から降りた僕はそれが単なる影ではなく黒猫の死体だと分かり……そして次の瞬間にはもう家についていた。
森の隙間から見える夕日は先ほどとほとんど位置が変わっていないように見える。いや、どう考えても家まで全力疾走で走ってきたとしか考えられない。
僕は逃げたのだ。猫の死体を置いて、そのまま。
吐き気は喉元一歩手前まで押し寄せて絶え間なく湧き出る汗も、口を閉じれないほどの荒い息もしているにも関わらず、異常な寒気が僕の背中を震わしていた。
それから家に入ると母さんの出した食事をほとんど残し、お風呂にも入らずに僕は布団に潜り込んだ。寝て全てを忘れてしまおう。僕はそう思ったのだ。
だけど寝れなかった。もちろん寝るにはあまりにも早い時間であったし、お風呂にも入ってなかったから眠気もなかった。
でも、そんなこと以上に頭にあったのは死体のこと。
果たしてあの死体はどうなるのだろうか? アリか何かが食べてくれるのだろうか? それともあのままずっとあそこに留まり続けるのだろうか?
……少しでも大人びたかったのかもしれない。怖いものと向き合えば、正義を守れば少しだけ大人になれるんじゃないか、って。
僕は母親に気付かれないように家を飛び出して、全速力であの道路へと向って山を降りていた。自転車のか弱いライトで闇を切り裂いて一気に駆け抜ける。
やがて山道からコンクリートの道路に飛び出た僕はあの猫が死んでいた場所へと急いだ。
だけど……その猫の死体は消えていた。
暗闇でもそれはすぐに分かった。自転車のライトが血痕とわずかな肉片を照らしたからだ。一応、周りも見てみたがやっぱり死体自体はなかった。
僕は安心したような、後悔するような複雑な気持ちを抱えながら、家路へと付いたんだ。一体誰が……、とそんなことを考えながら山を登って。
その途中だった。突然、山道の外れから人影が飛び出し、僕は急ブレーキと急ハンドルでなんとかそれを避けた。
セーラー服に身を包んだその人は、僕の知っているその人よりその姿はずっと大人びて見えた。
それは久しぶりに会う先輩だった。……先輩は最後に会った時より大きく、そして綺麗になっていた。
先輩は僕を見ると驚いた顔をしながら、慌てた様子で両手を後ろに隠してこちらに話しかけてきたんだ。なんでもない。ただのたわいのない話を。
だけど僕は気付いていた。
月明かりに照らされた先輩のセーラー服に少しだけ赤いシミと、おそらく地面を掘ったのであろう茶色い土が付いていたことに。
それを隠して笑う先輩。久しぶりの会話だった。相変わらずの可愛らしい笑顔に今までなかった綺麗さが加わってもう僕は直視しただけで顔が熱くなってしまうほどだった。
それが僕の小学生最後の夏休みの思い出。そして先輩に……恋をしたのも多分、その日からだったんだろう。
465:名無しさん@ピンキー
09/12/12 15:58:30 NFcoL/6i
「……っと、こんなところですかね。……あの時、僕は凄く後悔したからツキを見たときも動揺せずに死体を埋葬したんですよ。……ツキ?」
珍しく黙り込んでしまった同居人に僕は少しだけ不安になる。
ツキが来てくれてから多分初めて頭の中が静かになって僕は孤独感を覚えた。つい1ヶ月前まではそれが普通だったはずなのに。
初めてツキと話した時にツキが言っていた、お主が此方で、此方がお主、という言葉に僕は恐怖を覚えてガタガタと震えていた。
だけど今は……これ以上嬉しい言葉はないってことを、このとき僕は勝手に実感していた。
『しぃ!』
「うわっと!」
またしてもツキの突然の声に少しだけ驚いたけど、それより僕はツキの声が久しぶりに聞けたことが嬉しかった。
『此方を、此方をそのおなごに会わせておくれ!』
だけどそのツキの声はとても焦っていて、まるで僕はツキにすがりつかれているような気がした。
そっか。追試の勉強やら何やらがあって、ツキと一緒になってから先輩にはまだ一度も会ってないんだっけ。
「分かった。すぐに会いに行こう」
なんで先輩と会いたいのか、なんてことはもちろん聞かない。ツキだって僕の過去を知らずとも僕を好きだといってくれたのだから。
僕は机の横にかけておいたリュックを右肩に引っ掛けると廊下を全力疾走で駆け抜けて二十段近くある階段を一気に飛び降りた。手足を使って着地した僕の身体に思い響きが電流のように伝わる。
ツキが一緒になってからはとにかく身体が軽かった。今までの僕の身体と比べれば、今は全身がまるで風に乗る木の葉になった気分だった。
だから最近はそれが楽しくてまるで小さな子供みたいに走ることさえもが毎日の楽しみになってたけど、今は走るのが楽しいから走っているわけじゃない。
まだ同居人と出会って1ヶ月しか経ってないけど、僕には無言のツキの心がまるで自分のものと同じように分かっていた。
今、ツキは期待と不安で焦っている。
その期待が果たして何であって、不安が何であるかなんて僕には分からない。だけど、僕にはできることが一つだけある。
それは大好きな同居人のために全力で先輩の元に向うこと。僕みたいな馬鹿でもできることだけど僕しか出来ないことでもあるんだ。
だから、僕は全力で走るんだ。一分でも、一秒でも、一瞬でも早くツキが先輩と会えるように。
466:名無しさん@ピンキー
09/12/12 15:59:04 NFcoL/6i
ロックしたタイヤから白煙が上がるんじゃないかというほどの急停止で先輩のアパートの前で僕は自転車を停める。2階建ての木造アパート、先輩はここの2階のいちばん奥の部屋に住んでいる。
休日だったこともあり、僕は先輩が今日もスーパーで働いていると思い込んでたけど、実際にそちらに行ってみたところ先輩は休みであるということを店長さんが教えてくれた。
どうやら僕が追試の勉強に追われている間、先輩も働きづめだったようで今日は久しぶりの休みらしい。
僕がこのアパートに来たのは先輩が中学を卒業した後に一度だけ、それも僕の家から先輩がこのアパートで一人暮らしを始めるときに母さんと一緒にその手伝いのために来たときだけだ。
それもあれから先輩と二人だけで密室の空間にいることが僕は恐くなったからだ。
『しぃ……すまぬ』
「あっ、ごめんなさい。くすっ、大丈夫ですよ。さっ、行きますか」
くだらないことを思い出してしまった僕はツキに心配をさせてしまったことに気付き、駆け足で茶色く錆びた階段を一気に駆け上がった。
休日の昼間のアパートは思いのほか静まり返っていて、僕はもしかしたら先輩もどこかに出かけてるんじゃないかと一瞬だけ不安になってしまう。
でも、これ以上ツキに心配は掛けたくない僕はそれを拭い去って先輩の部屋の前に着くなり、一呼吸おいてからすぐさまドアをノックした。
それほど強く叩かなくても土気色の鉄のドアはアパートの廊下に重く響いた。住んでいる人はこれで自分のドアがノックされたのか、他の人のドアがノックされたのかが見当がつくのかな?
だけどそんな疑問は叩いてわずか2秒で吹き飛んでしまった。
静かだったアパートに響いたドアのノック音がまだ残響を残している間に、先輩の部屋の中からボスン、という鈍い音が聞こえてきたのだ。
僕が口をハの字に曲げながらドアの前で硬直しいると、土気色のドアは何の前触れもなく突然開かれた。
あまりに勢いのついたそれを僕はすんでの所でかわし、そしてジャージとねずみ色のシャツをはだけて着ている先輩と対面した。
「し、しぃちゃん!? ど、どうしたの?」
僕の顔を見るなり目を見開いた先輩に、僕はどう答えようか悩みながらとりあえず苦笑いをした。
しかし突然、頭の中でツキが口を開いた。
『やはり……の』
『なっ!?』
「「えっ?!」」
その言葉に対してわずかに遅れて聞き覚えのない誰かの声、そしてそれに対しての僕が驚く声と先輩が驚く声が重なった。
『元気にしておったかの、“ひな”』
『……うん』
母親が子供に優しく話し掛けるような声でツキが言うと、少しだけ間を開けて静かな声が先輩のほうから聞こえてきた。でも、それはやっぱり先輩とは違う声だ。
「と、とりあえず中に入って」
先輩も混乱しているみたいだったけど僕を部屋の中へと迎え入れてくれた。
最初に目に入った台所は綺麗に整えられていた。僕の家に住んでいた時から先輩はこまめに掃除をするほうだったし僕としては、それは当たり前だった。
だけど、そこから畳みの部屋に迎え入れられたときは一瞬動きが止まってしまった。……別にでっかいゴキブリがいたとか、生ゴミが山積みされてたわけではない。一見すればやっぱりそこは綺麗に整えられてはいるんだ。
467:名無しさん@ピンキー
09/12/12 15:59:41 NFcoL/6i
ただ、部屋の右側にある押入れのふすまに……ちゃぶ台が突き刺さっていたんだ。どこかの前衛的なアーティストの作品なら僕は思わず納得してしまったかもしれない。
口を半開きにしている僕の視線に気付いたのか、先輩は明らかな作り笑いを僕にしながらそれを引き抜く。すると、白いふすまに大き目のブラックホールが生まれた。
そのままちゃぶ台を部屋の中央に置いた先輩は、僕をふすまの向かい側に座らせて自分はその穴を見せないように僕の向かい側に座った。
「え、えっと……と、とりあえず」
『茶菓子は結構じゃ。その前に汝にお礼を申したい。……ひなを可愛がってくれてこと、心から感謝いたしまする』
腰を浮かせた先輩に、ツキがすかさず口を開いた。頭の中に響くその声はやはり先輩にも聞こえているらしく、先輩はそれを聞き終わると困ったような表情をしながらそのまま腰を降ろした。
『さて……ひな。久方の再会を喜びたいところじゃが、此方の想像が間違っておらぬならば、その前にお主はしぃに謝らなくてはならないと思うのじゃが?』
まるで冒頭の三十分ほどを見逃した映画を見るように、僕がまったく話の内容を掴めずにいるにも関わらず話は進められていた。
『そ、それは……』
ツキの言葉に動揺した声が先輩の方から聞こえてくると、先輩はその声の主を心配するような表情で僕の方を向いてこう言ってくる。
「あ、あの。もうやめてあげてくだ」
『ひな。しぃはの……まだそのおなごを』
『う、うるさい!』
ツキの言葉を遮って尖った叫び声が全面から僕を吹き飛ばすように遅い掛かり、僕は思わず身体を震わした。
『だったら……だったら!』
「きゃっ! ちょ、ちょっと! やっ、だ、だめっ……!」
叫び声を上げた声の主が何かを決意したように言うと、先輩が弾かれたように立ち上がり自分が穿いているジャージのズボンに右手を掛け、しかし先輩自身はそれを拒むかのような声と共に左手でそれを抑え始めた。
滑稽なその姿に僕はしばし見とれてたが、あやうくジャージのズボンが本当にずり下がろうとしたので急いで顔を俯いて視界を茶色いちゃぶ台に固定した。
『本当に好きだって言うなら、このくーを抱いてみなさい!』
あまりに突拍子のない言葉に僕は思わず顔を上げてしまい、そして僕はズボンを下げている先輩の姿に目を奪われた。
……僕が女の人の裸を現実でこんな近くで見たことはない。だから確信はないけど……け、けど……でも、こ、これがついているのは……。
「あ、あぁ……」
「いっ、やあぁ……み、見ないで」
あまりの衝撃に言葉を失った僕は先輩の言葉すら無視してそれから視線を外すこともできなくなってしまっていた。
先輩の股間には……男にしかついていないはずのモノが天に向ってそびえ立っていたんだ。
『はぁ……まぁ、いいじゃろ。じゃが、しぃがそのおなごを抱いた時は、覚悟できてるの?』
『ふふふっ、もちろん。でも言っとくけど、くーはこれで自慰をするのは大好きよ? さっきもちゃぶ台を蹴り飛ばしちゃうほど夢中になってたんだから』
先輩はひな、という誰かの言葉に両手で顔を覆ってしまった。僕はあまりに突拍子のない事態の連続に頭がパニック状態になっている。
『しぃ、決めるのじゃ。そのおなごを抱くのか、抱かぬのかをの』
だ、抱けって……ちょ、ちょっとは説明ぐらいしてくれたって―。
『すまぬ……それは、今は出来ぬ。ただお主は……あのおなごが好きなのじゃろ?』
ツキの言葉に僕の大混乱だった頭の中が真っ白になり、そして僕はただ単純に先輩が好きか、好きではないかを考える。
その答えは一桁同士の足し算をするより簡単だった。
「うん」
『くくくっ、ならあのおなごを抱いてやるのじゃ。此方がぬしをそれに相応しい身体にしてやるからの』
えっ、と僕がその言葉の意味を聞き返す前にそれは始まった。
468:名無しさん@ピンキー
09/12/12 16:01:34 NFcoL/6i
まず僕が感じたのは手足の違和感。まるでその骨についている肉が身体の内側へと引っ張られるような感触だ。
その違和感に袖をまくると……僕の腕は段々と細くなり始めていた。
「なっ!?」
「し、しぃちゃん?!」
まるでSF映画のワンシーンのようなその光景に驚く僕と先輩を尻目に、その変化が僕のあらゆるところへと広がり始めた。
心配そうな先輩の顔がぼやけ始めて顔の筋肉が動かせなくなり、何か息苦しいと思えば僕のブレザーの胸がまるで女子の制服のように膨れ始めている。
やがてその膨らみに遮られて僕の足すら見えなくなる頃……僕の股間に言いようのないムズムズ感が襲ったと思ったら、それが段々と退き始め今度は感じたことないスースーとした感触をそこに感じ始めた。
そして段々と違和感がなくなり始めて視界が再び安定し始めると、最後に僕のYシャツとブレザーのボタンが勢いよく吹き飛んでいき、そしてそこから二つの果実の谷間を見ることが出来た。
『くくっ、左の鏡を見てみんせ』
少しだけ乱れた呼吸を整えながら、僕はツキが言った通りに左を向いてそこに掛けられていた全身鏡を見てみた。
僕の見覚えのある少女が、僕の制服を着て、僕のほうを見ていた。
鏡の中の虚像に唖然としながら、僕は右手を動かしてみる。すると、当然だけど虚像の中の少女も同じように動いた。
溢れんばかりの胸に黄金色の長い髪、そしてその髪の上から覗く二つの小さな耳……ここ数週間はほとんど毎晩見ているその少女の姿は、まさしくツキが人間に化けたときの姿そのものだった。
『これなら、あのおなごと繋がれるじゃろ。……此方が毎晩お主にやったことを思い出して、あのおなごを喜ばしてみんせ』
そう言われて思い出した僕は、逆側の先輩の方を振り向くと先ほど僕が先輩に生えているモノを見たときのように、先輩もまた口を半開きにして僕を驚きの表情で見ていた。
だけど、僕の頭の中にあったのはツキが言った喜ばしてみんせ、という言葉だった。そして更に先輩が僕を拒絶した5年前の出来事を思い出し、僕は全てを悟った。
先輩は好きなのは……男性じゃなくて女性だったんだ、って。
思えば僕はよく女々しいと言われていた。ツキが僕によくかわいい、と言っていたのも僕がやっぱり女の子っぽいからだったんだろう。
でも、そうだとしたら今の僕……ツキの姿をした僕なら先輩は受け入れてくれるはず。
『くっくっく……ほれ、その召し物を脱いでおなごに近寄らんか』
僕はツキに言われて僕に見入っている先輩の前でブレザーとスラックスを脱いで、そしてYシャツのボタンに手を掛けた。
『おっと、しぃ。こういう時はの、かえって僅かな衣を纏っているほうがそそるもんじゃ。お主にもわかるじゃろ?』
その言葉に再び鏡で自分の姿を見れば、その虚像に思わずドクリと心臓が大きく跳ねた。黄金色の髪とその白いYシャツはよく映えていて、まるで洋風の人形のような触れがたい儚さをかもし出していた。
『それと、これを忘れておったの。これがない此方はやはり似合わん』
完成された料理の隠し味を忘れていたかのような口調でツキが言うと、僕はお尻の上辺りに何かが映えてくるような感覚を覚えた。
だけどその違和感は数瞬ですぐに引き、それに引き換えて僕の身体にまるで三本目の足が生えたような感覚が生まれる。
ためしにそれを動かすと僕の虚像の背後で揺らめくそれに僕は思わず笑ってしまう。何がおかしかったのか、自分でも分からないけど何故だか笑ってしまった。
髪と同じように黄金色でその先っぽだけ真っ白なそれは、数週間前に僕の口に入り込んだものでもあり、そして今では僕の同居人のトレードマークとも言っていいものだった。
469:名無しさん@ピンキー
09/12/12 16:03:03 NFcoL/6i
そうして僕は完全な変化(へんげ)を終えると、ゆっくりと尻尾を回すように振り返り、目を見開いて僕に見入っている先輩にじわじわと近づく。
ツキの身長はぼくより高かったけど先輩には敵わない。先輩の目の前まで近づいた僕は、驚きのあまりなのか動けなくなっている先輩を舐めるように見上げる。
そして先輩の驚いた顔に向けてゆっくりと背伸びをし、驚いてまだ半開きになっている口に小鳥がついばむようなキスを繰り返した。
僕の唾液で先輩の唇を軽く濡らしたところで、僕は先輩の唇に完全にぼくのそれを重ね、そして今度は舌で先輩の唇に唾液を塗りたくっていく。
先輩の吐いた甘い吐息を何度か吸い込んだところで、するりと僕は先輩の口の中に舌を侵入させて、奥のほうに怖気づいていた先輩の舌に絡めていく。
二人のくぐもった息を交し合ったところで、僕は先輩の首に両腕を絡めると少しだけ体重をかけて先輩の体勢をゆっくりと崩し、ふすまを背にした状態で座わらせた。
「んっ……くすっ、先輩のもうビンビンですね」
「やっ。言わ……ないで」
「恥ずかしがることないですよ。今からぼ……………………………………此方が気持ちよく、させてやるからの」
此方はおなごの股に生えたそのいちもつに顔を近づけ、口元に手をあてて此方を見ているおなごに笑いかけてやり、そしてその膨れた頭に軽い接吻をしてやる。
「んぁんっ!」
それだけで大きな声を上げたおなごに此方は少し驚いたがそのまま四足で這うと顔をそのイチモツに近づけ、おなごのモノの根元からに舌を這わせる。
「ひぁぁぁ……」
「くくくっ。さてと、お主のイチモツはどんな味をしておるのかの?」
おなごに舌なめずりをしながら妖しく笑いかけてやると、此方は涎をイチモツの頭に蜘蛛のように糸をたらしてやると、それ伝うようにしてイチモツをくわえ込んだ。
「んぁああああん!」
イチモツを口に納めた此方が頭を上げると、おなごは此方に弄ばれる此方のような顔をしておった。くくくっ、かわいいやつじゃ。
此方はおなごがわずかに余裕を取り戻すを待ち、冷静さの欠片が表情に浮かび上がると同時にイチモツを空気と共に吸い上げ始めた。
途端におなごは目を見開き、阿呆のように口を開いて声になっておらぬ叫びをあげおった。
やがて此方の唾液に濡れたおなごのイチモツの竿が姿を現し、口の中に頭が残っておるうちに再びそれを口の中に納めに入る。
それから此方は呼吸と同じくおなごのイチモツを口の中で反芻しておると、狐の雄が達するのと変わらぬほどでおなごはどうやらその直前まで辿り着いたようじゃった。
「くっ、はんっ、くぅっ!」
おなごは腰を浮かせ、此方の口の抽送に合わせて腰を動かすまでになりおった。その顔は恥などとうに忘れ、すっかり己が欲を求めんとするものに変わっておる。
「んあああっ、くるぅうう! くるぅううう!」
やがておなごは此方の頭を掴み、達するための最後の快感を得るがために強引に此方の抽送を早め始めおった。
此方もそれに抗わず、なすがままにイチモツを咥えて達するために身を任す。
して、おなごが此方の喉元までイチモツを納めさせると同じくおなごは達した。
「くぁあああああああんっ! ひっ、くぅぅぅぅぅ」
「ぐぅっ! ごぉ、んんぐ、んんっ、ぷはっ! ケホケホ」
おなごから放たれた子種は此方の口の中を雄の匂いで湯水の如く満たし、更に二度三度続けて放たれた子種はむせてしまった此方の顔へと降りかかりおった。
「し、しぃちゃんごめん!」
「くぅ、んっぅ……くくく。立派な子種じゃな。むせ返りそうな匂いじゃし、量も大したものじゃ。じゃが……」
「きゃんっ!」
イチモツを掴まれただけでかわらしいい悲鳴をあげよるおなごに近寄り、喉で笑いながら此方はおなごの震える耳元で囁く。
「まだまだ残っておるようじゃの。むしろいきり立っておるようにも見える。くくく」
此方の言葉に恥を思い出したおなごが真っ赤に火照る。
470:名無しさん@ピンキー
09/12/12 16:04:25 NFcoL/6i
そのかわいらしい反応に此方は身体を離し、おなごに見えるように膝を折って足を広げ、此方の下の口を指で開いて見せつける。途端に此方の指を蜜が伝う。
「それをここに納めたいじゃろ? 此方も物足りのうて身悶えしてしまいそうじゃ。おなごのお主ならわかるじゃろ?」
「ひぁっ、くぅぅ……」
おなごは獣のように息を荒げ、此方の穴に目を奪われおった。くくく、そうじゃそうじゃ。かわいらしいのものじゃ。
「ほれっ、どうしたのじゃ? 此方と繋がりたくないのかや?」
「あぐぅぅぅ……くっ、ああああ!」
此方の誘惑に堕ちたおなごは此方を荒々しく押し倒し、まるで飢えた雄の獣のように唇を重ね、此方の胸を乱暴に弄り始めおった。
「んんっ、くはっぅ、はぁはぁ……くはんっ、いれたいぃぃ、いれたぃのにぃいぃいい」
おなごは此方の穴の位置は分かっているもののあまりに焦っているのか、必死に此方の下の唇にイチモツを擦り付けるのみで中々入ろうとせん。
「くくく。ほれほれ、此方をこれ以上焦らすつもりかや? 仕方ないの、くくく」
此方は再び指で穴を広げてやると、おなごはなんとも嬉しそうに顔を綻ばせ、そしてゆっくりと此方の中へとイチモツを入れはじめおった。
「くぁあああんん! すい、こまれるっぅぅぅ!」
「くぅぅぅぅ! あぐぁぁ」
おなごのイチモツは膨らんだ頭が此方の唇を押し広げながら亀のように鈍足に入ってきおった。
そして膨らんだ頭を此方が咥え込むと、おなごが一息に身体を此方に向けて落とし、イチモツが此方の最深部を勢いよく突きおった。
「ひぁあああああああああんっ!」
「くぁあああああああ! あが、っいぃ……くくく、あつい棒が、此方の中で震えておる」
「はぁはぁ、しぃちゃんの中、あったかくて、んっ、ぐちゅぐちゅしてるぅぅぅ」
「くくく、ほれっ、いつまでも止まっているつもりじゃ?」
此方に突き刺さったままになっておるおなごに言うと、こくりとおなごは生唾を飲み、此方から竿を引き抜きはじめおった。
「かはぁぁぁ、なっ、からみ、ついてくるぅぅぅぅ……!」
対して此方はわざと下の唇を締め、おなごのイチモツを抱き込まんとする。
「んんぁ! このまま、お主のイチモツを、食べてしまいたいぐらいじゃ。くぅぅぅ」
「くっぅぅぅ、あぁぅ! はぁぁぅぅ、んんんっ!」
おなごは呻きながらやっとのことで竿を引き抜くと、間も開けずに再び此方の中へと沈ませおった。
471:名無しさん@ピンキー
09/12/12 16:05:15 NFcoL/6i
けぁああんっ、その、調子じゃ。はんっ、くゅんんっ!」
「くんっ、んぅぅ! すごいぃ、すごいょぉお。しぃちゃんのなか、きもちいいよぉ!」
此方の腰を掴んだおなごは乱暴に此方の中を蹂躙しおった。その顔はまさに雄のそれと同じじゃ。恐悦に顔が嗤い、己が欲望のために相手を愛す雄の姿そのものじゃ。
「んぐぅ、はぅ、んんぁっ! しぃちゃん、なかに、ださせてぇ! いいよね? いいよね!」
「ぅつう! くくく、お主の、ぐぅ、子種、全て此方のものじゃ。んぅぐぅ!」
「ふぁあああっ、っぅ、うれしいいぃぃぃ」
嘘のない笑い顔でおなごは言うと、己が全てで此方を染めんとするおなごは身を此方に預け、唇をまさぐると同時に涎を絶えず送り、そして奪っていきおった。
その間も此方の中を蹂躙することはやめることなく、むしろより一層激しく此方を愛してきおった。
「くぅぅっ! もう、らめぇぇ、でちゃうぅぅ。おち○ちん、はれつしちゃうぅぅぅ!」
「んっかぁくぅぅっ! 此方も、限界じゃ、はようぅ、くぁああんっ!」
此方はおなごの首根っこに腕を回して抱き寄せ、嫌が応にも此方の中から逃げ出せんようにおなごを捕まえた。
「くはああんっ! 出すのじゃ、お主の、こだねぇえええええええ!」
「あああああああああ! でるぅうううううううう! ふぁああああああああああんっ!」
おなごが此方の奥で時が止まったように動きが固まり、同時に此方の下腹部に熱い子種がまるで洪水の如く流し込まれてきた。
「けはっ! あっ、つぃのが、ながれ、こんでおるうぅぅ」
「んぐっ、くんんっ! とまらないぃぃぃ。くああああんっ!」
更にイチモツから子種を搾り出そうとしたおなごが勢いあまって此方の中からモノを抜いてしまい、同時に出た子種が雨のように此方の身体と布を濡らしおった。
「くふぅ……はぁはぁはぁ……」
「んんっ、くくくくくくっ。ほれ、お主の子種が此方の穴に満ちておる」
此方は穴を広げてそこに溜まった子種を息を切らし横になっておるおなごに見せつけた。
して、此方はゆっくりと立ち上がりおなごに近寄ると、再びおなごのイチモツを掴む。
「あああんっ! さわっちゃ、あっ、だめえぇぇぇ」
「くくくくくっ、じゃがまだまだお主の中には子種が残っておるようじゃの? くくく、これは全て此方のものじゃぞ? んっ」
「ひぁっ!? す、すっちゃ、らめぇえええええええええ! きゃああああんっ!」
此方はわずかにへたれたおなごのイチモツを咥え込むと一息に吸い上げた。途端におなごは痙攣し、甘い嬌声を上げおる。
「ケホケホ、ほれっ、もういきり立ちおった。まだまだ終わらぬぞ? くくく」
口の中に飛び込みおった子種に喉を詰まらせながらも、此方はそれを飲み込み、そして再びいきり立ったイチモツの上に跨りそれを納め始めた。
それからおなごが気絶するまで……いんや、してもしばらく此方はおなごをしゃぶりつくしたのじゃ。
<<終>>
472:名無しさん@ピンキー
09/12/12 16:08:56 NFcoL/6i
とても中途半端ですが、以上で終わりです。
この先も一応は考えていましたが……寄生というテーマから
明らかに遠ざかり始めていると思うのでやめておきます。
申し訳ありません。
473:名無しさん@ピンキー
09/12/12 17:08:46 IMiV+pR2
TSまで混ぜてくるとは、どうして俺のツボを理解しているんだ!
とてもGJでした。
474:名無しさん@ピンキー
09/12/12 21:39:41 P9H8RtLH
あー、そう来るとはね。乙
475:名無しさん@ピンキー
09/12/12 22:45:32 yI/gyR7k
>>457の画像のは寄生されて人格改変、って感じだったな
即堕ちだけどシチュに興奮できるならそこそこだと思う
476:名無しさん@ピンキー
09/12/13 01:04:22 FfgYf8sL
デッドスペースで悶々きちゃったガチ変態の俺には、ドロッとネクターな
このスレはまるで練乳のように喉の奥底を満たして、渇く、ような。
477:sage
09/12/13 01:06:13 FfgYf8sL
あまりの渇きと潤いにあげてしまった、すまぬ
478:名無しさん@ピンキー
09/12/13 01:14:23 FfgYf8sL
うがぅぅ、こんどこそ。
デッドスペース 寄生死亡 グロ注意
URLリンク(www.youtube.com)
479:名無しさん@ピンキー
09/12/13 02:04:41 5yaGY0WJ
>>472
乙。寄生と関係ないのはわかるけど続きが読みたいのは俺だけか・・・?
480:名無しさん@ピンキー
09/12/13 04:07:24 gvWNHBkI
男じゃなぁ・・・
これが女声で喘いでるならともかく
481:名無しさん@ピンキー
09/12/13 11:10:39 FfgYf8sL
うーんなんというか、設定萌え?
寄生された女性モンスター(毒液をはくようになる)とか、なかから寄生生物が
飛び出す妊娠モンスターとか、赤ちゃんモンスターとか、壁に張り付いて延々
モンスターを生み出すのとか、結構きつめのが出てくるんで、変化の恐怖とか
背徳感が燃えるという感じがするのです。スレだったらごめん
482:名無しさん@ピンキー
09/12/13 14:36:16 tjgXPfqT
>>471
先輩×ツキGJ
483:名無しさん@ピンキー
09/12/14 01:13:00 MmCU5+tK
>>472
ここでやめるなんて、それなんて生殺し?
484:名無しさん@ピンキー
09/12/14 03:25:40 sjGQRRZJ
>>472
続きを期待する人が多いと思うよ?
485:名無しさん@ピンキー
09/12/14 19:01:33 NdupAjEV
次のスレで続けるのはどうかな
【女体化】TS系小説総合スレ【男体化】6話目
スレリンク(eroparo板)
486:名無しさん@ピンキー
09/12/16 23:15:20 ikQvWQ48
デッドスペースは頭がすげ変わるのが良かったな。
487:名無しさん@ピンキー
09/12/18 18:19:19 FPNrLQZh
「きせい・ろわいある」の続きが気になって毎日このスレを覗いてます。
楽しみにしているので執筆頑張ってください!
488:名無しさん@ピンキー
09/12/20 22:40:01 s+3TVrtR
さぁ裸になって寄生ラッシュの準備をするんだ!!
489:名無しさん@ピンキー
09/12/25 18:38:57 4qmsigsy
明後日帰省するんだが…新幹線の中は逃げ場がないからな……繁殖ガ楽ダカラナ……
ダカラ寄生サセルノヲ楽シミニ……だかラ気ヲつけテ帰らナきャな………
あレ…?頭ノ中で…何かガ…?あ…アは…あハは…
490:名無しさん@ピンキー
09/12/26 01:22:05 LUIdoE2s
>>489
キサマ…ビッグサイトでヲタと触手はどうするんだ…
491:名無しさん@ピンキー
09/12/26 12:30:44 qaANNN4F
>>491
スマン、資金の関係で参加できないんだ…
安心シロ、仲魔は新幹線ノ中で沢山用意シテオクからな…
492:名無しさん@ピンキー
09/12/26 12:56:54 ss03eIwm
>491
誰に返事している?
493:名無しさん@ピンキー
09/12/26 13:16:36 6yl5pEiC
もはや個別の人格すら失っているようだ
494:名無しさん@ピンキー
09/12/26 14:54:45 3ak3bogY
ドラマとかの多重人格だと、鏡に話しかけたりしてるな。
495:名無しさん@ピンキー
09/12/26 15:15:41 BbjmMHzt
>>492
寄生主さまにでしょ
496:名無しさん@ピンキー
09/12/26 23:40:14 6sVlpnUK
疲れているのね…で済まされて寄生発覚が遅れるパターン
497:名無しさん@ピンキー
09/12/27 00:58:18 tt17+xjk
いつもチャットしている相手が実は寄生している生命体だったら面白いよね
498:名無しさん@ピンキー
09/12/27 08:48:06 wyNZ84MS
そろそろ寄生ラッシュ
499:名無しさん@ピンキー
09/12/28 02:29:18 HKEi7WOC
郵便局のバイトがあるから今年は寄生ラッシュに参加できない
出来る事といえば年賀状に寄生虫を仕込んでおくくらいだ
500:名無しさん@ピンキー
09/12/28 06:50:45 SIoLwfk1
>>499
このスレじゃなかったら果てしなく危険な発言だなwww
501:名無しさん@ピンキー
09/12/28 23:03:47 XiX4Ke1s
テステス
502:名無しさん@ピンキー
09/12/28 23:06:06 XiX4Ke1s
↑すいません。さっきまで書き込み規制があったんで間違えました。
っと、寄生ラッシュの速報が入ってきたんでちょっと上げさせてもらいます。
お暇であればお読み下さい。
503:名無しさん@ピンキー
09/12/28 23:07:06 XiX4Ke1s
「ふふっ、完璧」
私は新幹線のトイレの個室で一人、この上ない満足感に満ちた笑顔で鏡を見ていた。
明日という1日のためにこの1年間、時間を見つけてはこの作業に費やしてきただけのものはできあがったはずだ。
黒を基調としたこの衣装は私が一から作り上げた手作りのものだ。
一番のこだわりはこの左足を露出させるチャイナドレスのようなスリット。この極限が見えるか、見えないかのチラリズムを刺激する境界線には苦労したものだ。
馬鹿みたいにその部分を鏡の前でちらちらと見え具合を確認しては、私はニヤリと小さく笑ってしまう。ああ、私って本当に終わってるわ。
だけど、ふと視線を上げると私の気分は一転して暗くなる。
衣装は完璧だ。1mmの針のズレも許さないほどに私は妥協をせずこれを作り上げたのだから。
私が選んだのはあの歌姫、巡音○カのコスプレだった。彼女の外見で真っ先に目が行くのは、たわわに実ったスイカかメロンのようなそのはちきれんばかりの巨乳。
しかし、私の胸は巨乳ではなく“虚乳”なのだ。
……去年の冬、私がイベントに用意した衣装は鏡音○ンの衣装で、これは私の想像以上に評判が良かった。
そして今年の夏は資金面の問題から参加を断念し、その分の時間を冬の衣装作りのためにつぎ込むことにした。
そこで悩んだのが、この巡音○カと、言わずもがなの大御所の初音○クのどちらにするか、ということだ。
正直、私の体型から言えば○クのほうがまだ合致している部分が多かった。私は背丈も高くないし、年齢以上の童顔だ。
だけど私はあえてこの変化球、巡音○カを選んだのだ。
貧乳だっていいじゃない、人間だもの。と、私自身に言い聞かせて。
その理由を言えば、それはやはり○クの人気さゆえとしか言いようがない。
だって、だって○クは―。
と、そのときだった。突然、1車両に女性用のトイレは一人分しかないこの個室の扉が開かれたのだ。
そして私は鏡に映る、私の背後にいる人物の姿を発見してすぐに振り返った。
そこにいたのは……そう、それは正真正銘の初音○クだった。
……私が選ばなかった理由、それはまさにこれだ。人気のあるコスプレは人数と比例するように、その完成度がずば抜けている人が多く存在する。
今入ってきた彼女も例外ではなく、ノンスリーブのシャツの質感と言い、アームウォーマーの点滅する機械の部分、水色のラインが入る足元までまさに完璧だ。
そしてそれを纏う素材も、華奢で人形のような身体、主張しすぎないが存在を示す胸のふくらみ、そして青い髪の毛に似合う綺麗な顔つき―
って……わ、私の見間違いなのかな? どう見ても彼女のしているウィッグが、彼女自身の地毛にしか見えないのだけれども。
そ、それに……幾らなんでも、似すぎじゃない? まるでそのまま二次元から出てきたようなそんな感じが……って、鍵閉めてたのにこの人どうやって入ってきた?
「あっ、こんなところに○カねえが居るなんてすごい偶然」
うわっ、声までそっくり……上には上が居るなぁ。……じゃなくて!
「あ、あの! ど、どうやって入ってきたんで」
「んぅ、細かいことはいいの。○カねえ、それより……○クがきもちいいこと、してあげる」
私より少しだけ小さいその少女は私の顔を下から覗き込み、熱を帯びた空気を私の頬に撫で付けてきた。
「や、やめて……だ、誰か!」
504:名無しさん@ピンキー
09/12/28 23:07:50 XiX4Ke1s
「クスッ、誰も来ないよ、○カねえ。……今、この新幹線は寄生ラッシュの真っ最中なんだから」
寄生ラッシュ? ああっ、だめだ。彼女の澄んだ水色の二つの目は私を海中に誘いこむように吸い込んで逃そうとしてくれない。
「だ、だめっ。んんんっ……」
小さな悲鳴も虚しく、逃れられない私は○クに抱きすくめられ、そして私の口を彼女の唇が塞ぐ。
「んっ……にへないえ……うへいれへ……」
身体を離そうとしても華奢な身体つきの少女の力は想像以上に強くて、なれた舌使いで私の口の中に潜り込んできた。
舌を重ねようとする彼女から逃れるように私は自分のそれを引っ込める。い、今のうちに―。
両手でお互いの身体を突き放そうとした私を、○クは切なげな表情でちらりと見ていた。心臓が高鳴り、子供を泣かせてしまった様な肺と区間が私を襲う。
だけどその次の瞬間、いたずら小僧よろしく笑った○クが私の舌を捕まえて撫で回し始めた。
「んんんんっ! ……んんんっ、んんっ」
ああ、頭がボーっとしてきた。だめ、だめだよ、こんなの……でも、でも……。
「んっ!?」
「んんっ……ほらっ、○カねえのここから、きれいなお汁が出てきたよ、ふふっ」
私のスリットの間に手を入れた○クは私の……恥ずかしい部分を下着の上からなぞり始めたのだ。
「くんっ! だ、めぇ……あんっ」
「くすっ、○カねえ、ベロシティとダイナミクスの値が小さいよ……もっと、大きな声でその歌声を聞かせてよ」
「くああああんっ! だっ、めええ!」
私の下着ごと私の穴へと細長い○クの指が入ってくる。しかも意思とは関係なく存分にぬれてしまった私のそこはまるで掃除機のように指を吸い込んでしまう。
「あったかいよ、○カねえのここ。下着がびしょびしょに濡れちゃうね」
「ぬい、てぇ……おねがいぃ」
自分でするのとは比べ物にならないその感覚に頭がおかしくなってしまいそうになっても、○クは楽しそうに笑って更に奥へと指を進めていく。
「ひぁ、もう、はいら、ないぃ……」
「はぁはぁ……○カねえ、○クももう我慢できないよぉ……この○カねえのお○んこに、ずぼずぼ、いれたいの……」
「なっ、なにを……ひぃ!?」
それを見たとき、私はついに幻覚を見ているのかと思った。だけど、それは目の前の○ク以上に異質な存在感を放っている。
「あはっ、これね、○クのマスター。私に新しい歌を教えてくれたの。この、甘くて高い声で奏でる合唱の仕方を」
○クはそう言って自らのスカートの股から出てきた黒いその触手の先っぽを、咥え込むようにキスをする。
「んっ、○カねえにも教えてあげる。ふふっ、そしたら○カねえももっと歌が上手になれるし……胸も大きくなるよ」
「や、やめ……こ、こないで……」
505:名無しさん@ピンキー
09/12/28 23:08:42 XiX4Ke1s
この狭い個室の中では逃げ場なんてない。だから私ができるのは口での抵抗だけ。でも、○クはそんな私の言葉にも楽しそうに笑い掛けるだけ。
そして私は再び○クに抱きすくめられてしまう。○クの頭の上から、先ほど○クがキスをした触手が顔を見せる。
「大丈夫怖がらないで……きっと、○カねえもマスターを気に入ってくれる。マスターも○カねえを気に入ってくれるから……だから」
顔を上げた○クの表情は、本当に嬉々としていた。
「一緒に歌お」
「ぁ!? くぅぅぅぅんっ!」
その顔に見とれていた私に何かが入り込んでくる。先ほど入ってきた○クの指とは比べ物にならないぐらいに大きくて……そして、あったかい。
「んんっ、○カねえ良い声。ジェンダーファクター小さめの可愛い声、私に持って聞かせて、○カねえ」
「んっ、ああんっ、っう、ふぁああんっ!」
一突きされるごとに、私の頭の中は白いペンキに埋め尽くされていく。
やだ、だめ、だめなのに……きもちいいのに、なんでだめなの? だめ? だめってなにが? だってこなにきもちいいのに。
私は……私は誰だっけ? う、ううん、私は巡音○カ、そうだ。私は巡音○カ。目の前に居るのは私の大切な子、初音○ク。
私たちは何のために生まれてきたんだっけ? ああ、そうか、私たちは歌うために生まれてきたんだ。だったら―
「んあああっ、いい、もっとぉ、もっとついてぇえええ!」
「くぅうっんっ、すごいぃ……○カねえのなか、ぐちゅぐちゅしてるよぉ……」
○クと私の合唱はCメロを終えて最後のサビに入ろうとしている。そう、もっともっと大きな声で歌わないと。
「ああああああんっ、だめぇえ、○クぅう、とめないでぇええええ!」
「んんんんっ、はぁっ、ますたー、もうぅ、だいじょうぶですぅ。○カねえにも、ますたー、はいってあげてくださいぃいい!」
「んぁああっ、きて! きてください、ますたー! わたしにも、うたをおしえてぇええ! もっと、もっとうたわせてぇえええ!」
そして……私の願いは聞き入れられた。
「「んぁあああああああああああああああっ!」
マスターの熱い触手が○クの身体からプチンと切れて、私の奥深くへと入ってくる。と、同時に火照った身体全体が更に熱くなる。
前髪が段々とピンク色に変わり、私の胸の中で息を切らしている○クとの身長差が更に広がり、○クが寄りかかっている私の胸が大きく膨らんでいく。
「はぁはぁ……ほらっ、○カねえの胸が大きくなった」
「くぅぅ、ふはぁ……ふあっ……マスター、ありがとうございますぅ……」
「あぅぅ、私もぉ……」
頬を膨らませて○クが可愛く怒りを振るう。私はそんな○クを強く抱きしめて、耳元で囁く。
「行こっか……私はもっと、歌いたい」
「うん。まだ……ステージは始まったばっかりだもんね……ふふっ」
こうして今年も寄生ラッシュはピークを迎える。
506:名無しさん@ピンキー
09/12/28 23:22:23 XiX4Ke1s
以上です。とりあえず年内に上げれて一安心。
と、また規制が始まる前にちょっと返答にスペースを借ります。すいません。
>>485氏
あれから考えたところ、もう寄生でもTSでもならなくなりそうなので……複雑になる前に終りにしようかと思います。
せっかく探していただいたのに、本当に申し訳ありませんでした。
>>487氏
一応、ある程度の続きは書いたんですが……話が分かりづらいうえに複雑になり、エロ描写がまったくない状況なので、
現在書きなおすかどうかで迷っているところです。
期待に添えるかは分かりませんが、ありがたいお言葉をありがとうございました。
507:名無しさん@ピンキー
09/12/29 00:07:49 sAL15VWq
むちゃくちゃやりやがってw やっぱ素敵な奴だなあんた、さすがだぜ乙
508:名無しさん@ピンキー
09/12/29 00:34:47 ElGpomKB
おお、これで年が越せる・・・ありがたやありがたや・・・・
509:名無しさん@ピンキー
09/12/29 06:44:16 fPoRsAbU
Uターン分もお願いしますだ
510:名無しさん@ピンキー
09/12/30 19:39:15 /xZhpx+1
>>505
gj
コスプレしてる女の子を、本物に変えるのか。
まさか、帰省ラッシュと同時に規制ラッシュまで起きるとは思わなかった。
511:名無しさん@ピンキー
09/12/31 16:22:23 4lXI0H3v
2009年に寄生していた連中が2010年に寄生する準備が急ピッチで進んで…
512:名無しさん@ピンキー
10/01/01 18:07:28 Zel4q2NS
>>511
ヤドカリみたい。
513:名無しさん@ピンキー
10/01/02 11:29:49 dCihKdyy
>>512
ちょっと和んだ
514:名無しさん@ピンキー
10/01/04 00:00:40 icazJix3
何に規制されたのかわかんないけど、クリスマスSS書いてたら年明けてた
515:名無しさん@ピンキー
10/01/04 21:35:48 dTRWe7kg
里帰りの途中の新幹線に乗った時からところどころの記憶がない。
なんかぬめぬめしたのがついてることもあるし・・・
ああ、新幹線でトイレ行ったときに誰かに声を・・・
516:名無しさん@ピンキー
10/01/09 03:15:17 CQp8cLfY
夜行列車なら安心と思っていた時期もありました
517:名無しさん@ピンキー
10/01/09 20:25:28 evyG3UdA
>>506
いつかどこかで続きを書いて欲しい
ひとまずお疲れ様でした
518:名無しさん@ピンキー
10/01/12 20:35:24 fRmGdxCT
月光蝶さんのログ保管サイト
もしかして見れなくなってね?
519:名無しさん@ピンキー
10/01/12 23:58:23 gTMINHEu
こっちは見れるよ
パソコンが何かに寄生されてるのではないか?
520:名無しさん@ピンキー
10/01/13 00:15:58 YyL60JgS
>>518
あるよ。保守は忙しいんでたまにだが・・・。
521:月光蝶
10/01/13 00:16:46 YyL60JgS
>>518
しまった!!・・久方にアゲてしまった・・・。
522:名無しさん@ピンキー
10/01/13 20:03:33 R7AvTeA4
浮上させることで新しい人をこのスレの虜にさせようとするとは、お主も悪よのぅ
523:名無しさん@ピンキー
10/01/14 00:37:57 E35eip61
浮上させてこのスレを開いた人に寄生するとは……許セル!
524:名無しさん@ピンキー
10/01/14 22:42:37 QRoeSo82
うぅ~、寄生は大好きだけど規制はつらい……(´・ω・`)
さて、またスペースをお借りして作品を上げさせていただきます。相変らず、これが寄生ジャンルなのかが気になるところですが。
年末のほろ酔い気分でばばっと書いたものなので、誤字や“多少の”脈絡無視はご勘弁いただけると幸いです。
では、失礼します。
525:名無しさん@ピンキー
10/01/14 22:43:11 QRoeSo82
「だぁ~っ! なにやってるのよ! あの王国を落すのにいつまで時間を掛ける気なの!?」
「ひぃっ! す、すいません」
女王の怒号に震え上がるのは気弱な隊長の兵士だ。果たしてそんな子に兵士がついてくることが毎回不思議で仕方ないこの頃。
癇癪を起こした女王はたいそうな飾りのついた椅子に踏ん反り返って黒いショートヘアーをかき乱す。その上から見えるのは小さな猫耳二つ。
その成熟していない彼女こそがこのブラックキャット(以下、BC)帝国の女王―レティ女王その人だ。
彼女が率いるのは半猫、半人の猫人族だ。長い歴史はないが、レティの祖母は国民を思う善政で有名だった。
しかしその祖母が急死すると、その娘は本性を現したかのように悪政を開始。間もなく他国との戦争を始めた。
それまでの善政の事もあり、国としての力は持っていた帝国は周りの国を次々に陥没させていくが、近隣国に関わらず落ちない国が一つだけあった。
犬人族のホワイトドック(以下、WD)王国、十年前程前まではBC帝国とかなり親交のあった国である。
だが、それはもう十年以上も前の話だ。
レティの祖母の急死後、BC帝国の前女王であるレティの母親が宣戦布告をすると、それに応戦するようにWD王国は同盟を破棄し、攻めて来るBK帝国の兵士に抵抗。
WD王国はBC帝国の兵士を見事に撃退し続けたが、逆にBC帝国に攻め入るようなことはしなかった。
それから7年ほどでBC帝国の前女王が亡くなり、その後を引き継いだのが唯一の跡取りのレティ女王だった。
そうして火種となった前女王が亡くなったことによって終結するかに見えた戦争は、しかし終わることは無かった。
レティ女王は前女王の生前からWD王国の非道なる仕打ちを教えられてきた。もちろん、大嘘のものだが。
だが、小さなレティ女王はそれを間に受け現在まで成長し、彼女の中にとってはWD王国はもはや悪の根源と化していた。
対するWD王国は現在まで何回も停戦、和解交渉を続けているが実る気配は微塵も無いのである。
力の無いBC帝国はWD王国征服に的を絞って攻め続けるが、WD王国はそれを軽々といなし、やはり停戦を求める。
そんな終わりなき戦争がもう10年も続いてしまった。
「あ、あの……」
「なに!?」
ピリピリとした王の間に一人の兵士が現れ、女王の怒号に思わず目を瞑りながらも報告を開始した。
「ラ、ライザ様が女王様の謁見にお見えになられました!」
「ライザがねぇ……まぁ、いいわ。通してちょうだい」
「は、はっ!」
兵士が一礼の後、王の間から出て行くと同時に女王は頭を垂れたままの隊長にも下がるように命じた。
その隊長と入れ替わりにゆらりと現れた一人の女性。闇のように真っ黒なローブに身を包み、顔も同じく漆黒のフードに隠されている。
それでも彼女が女性と分かるのは、ローブの真ん中の少し上に二つの大きな膨らみが存在していたからである。
「まったく、たまには入ってくる前にそのフードを下ろしてくるぐらいの礼儀を見せたらどうなの?」
「これは申し訳ありません」
反省しているとは到底思えないような声と、人を小ばかにするようなせせら笑う声がフードの下から聞こえ、レティはわずかに顔をしかめた。
それを察したのかどうかは分からないが、間もなくフードを取り去り女性はその長く伸びたピンク色の眩しい髪をなびかせながら一礼をした。
最初の5年は終始フードを降ろさずにいた。それに比べれば、ライザの今の無礼はまだ大分可愛いほうなのだ。
526:名無しさん@ピンキー
10/01/14 22:43:38 QRoeSo82
「ご機嫌麗しく、レティ女王様」
「あなたも相変らず元気そうね、ライザ」
お互いをあまり親しみの込められていない挨拶が行き交う。
と言うのも、ライザはそうではなかったが、レティのほうはライザのことが好きではなかった。
BC帝国の未開拓の森林に住んでいる妖しげな魔術師、という肩書きが町に出回ったのはもう十何年も前のことだ。
間違えて足を踏み入れたら最後、戻ってきたものは一人としていないというその魔術師は、時折こうしてBC帝国に謁見に来ていた。
以前、その面妖な噂を真に受けたレティはライザを召集しようとしたが、ライザがそれを受けることは無かった。
しかしライザは来るたびに舌が蕩けるような美味しい手土産やきれいな宝石などを持参してくるため、レティはライザが来るたびにこうして謁見をしていた。
「本日はお日柄もよく」
「能書きはいいの。んで、今日は何の用なの?」
あらかじめその反応を読んでいたかのようにライザはピタリと口を動かすのを止めた。その表情からは終始微笑みが絶えない。
対するレティの表情には更に不機嫌そうに新しい皺が刻まれるが、そんなことはまったく気にしていないような口調でライザは口を開いた。
「実は……此度の戦争、私が終わらせて差し上げましょうか、思いましてお伺いいたしました」
「……はっ?」
思いがけない言葉にレティは滅多に出さないほうけた声を上げ、半開きの口を開けっぱなしという貴婦人らしからぬ表情をした。
しかしそれらはすぐに引っ込み、身を乗り出して小さな星のように目を輝かせた。
「そこまで嬉しそうなお顔をしていただけると光栄の極みです」
「でも、本当にそんなことができるの? ……まさか、嘘だなんて言うんじゃないでしょうね?」
「この状況では嘘、と言っても命はなさそうですがね。まぁ、お任せ下さい」
レティが訝しむのも無理はないというものだ。
なにせ目の前に立っている女性は、魔術師と言う噂が先走りしているただの少女、という肩書きのほうがよほど似合っているからだ。
何百年にも及ぶ研究と致死性の実験によって魔術はやっと成就する、というのがこの世の魔術における勉学の基本らしい。
しかし目の前の少女の流れるようなピンクの長い髪、そして貴族より綺麗で幼げある顔とローブでも隠せないその恵まれた肉体。
そのどれをとっても噂される魔術師のイメージとはかけ離れているのだ。
「それで、何が必要なの? 一師団? それとも大量の資源かしら?」
「いえ……そうですね。使節としての書状がもらえると助かるのですが」
またも予期せぬ返答にレティは驚かされる。何万の兵を導入しても終わらないこの戦争を、一体どうやってライザは終わらせるつもりなのか、と。
しかし聞いたところで眉一つ動かさない反応を返してくる、と言うことをレティは分かっていたのでその代わりにこう言うのだった。
「分かったわ。それで、書状の内容は?」
「とりあえず、油断させるために……親善、とでもしといてください」
そんな返事を聞く頃には、もう何をするつもりかと考えをめぐらすことさえレテイには面倒なこととなってしまっていたのだ。
527:名無しさん@ピンキー
10/01/14 22:44:21 QRoeSo82
「では、ここでお待ち下さい」
それから3日後、ライザはすんなりとWD王国の謁見の間へと足を踏み入れていた。
しかしその格好は相変らずで、端から見たら胡散臭い占い師かそこらに見えてしまいそうなものである。
それでも中に入れたのはやはりBC帝国からの書状、それ親善という名目のそれがあったからこそだった。
「ねぇ……あれが本当に親善の使者なの?」
「警戒しておきましょ。お姫様に何か変な術でも掛けるのかもしれないわ」
進められた飾り付けの椅子には座らず、立ったまま微動だにしないライザを厳しい目つきで背後から見つめるのは二人の衛兵。
しかし数年前にライザが初めてBC帝国を訪れたときには、兵士10数人に囲まれながらの謁見だった。それに比べたらかなり丁重な扱いである。
フードの下で表情を変えずに苦笑しながら、ライザはのんびりとWD王国の姫を待っていた。
そして、顔を向けずとも後ろの二人が姿勢を正したのを察知し、ライザはその人が近づいてくる足音を耳にした。
「お待たせしてすまない」
対して現れたWD王国の姫の格好もまた姫と呼ぶには変わった出で立ちであった。
銀色の鉄にわずかに可愛げを追加したような蒼い装飾が施された鎧を見ると、どちらかといえば姫というより将軍という肩書きのほうが似合っていそうな気がする。
しかしその防御より俊敏さを重視しているのであろうその鎧は、衛兵が着ているものよりは大分露出が多く、逆にそれがいやらしくもあった。
「なるほど。確かに使いとしては面白い格好をしているな」
「これは失礼をいたしまして」
王女は毅然とした動きで一際装飾のされている椅子に音もなく座ろうとしたが、フードを取り去ったライザの格好にわずかに姫は驚いた。
「ほぅ、もっとがさつな者かと思っていたのだが」
「ご期待に添えず申し訳ありません。ホワイト・ベル王女様」
恭しく頭を下げるライザに対し、ベルも降ろしかけていた腰をもう一度上げて一礼をした。とても、一使者に対して国の王女が行うに相応しくない行動だ。
「それで使者殿、貴殿の名前を伺ってもよろしいかな?」
「名乗るほどのものでもございませんが、ライザとレティ女王には呼ばれております」
レティ、という名前がライザの口から出るとベルは少しだけ感慨深げな表情をして目を細めた。
「そうか……して、BC帝国からの書状を見せてもらってもよろしいかな?」
ベルの言葉に反応して衛兵の一人がライザに近寄ろうとしたが、言葉なくベルが手でそれを制した。
「しかし」
「構わない。さぁ、ライザ殿。渡してもらえますか?」
ライザはコクリと頷き、まるで影が歩くような動きでゆっくりとベルに近づき、そしてローブ下から黒い筒を取り出した。
衛兵は持っている槍に両手を掛け、ライザがベルになにかしようものならばすぐにその尖った先端をライザのローブに突き刺そうと狙いをつけている。
「どうぞ、ベル王女」
「ありがとう」
しかしライザはあっさりとベルに書状を渡すと、中身を見ないように数歩ほど下がって目を閉じる。おかしなことをする気配は微塵も感じられない。
528:名無しさん@ピンキー
10/01/14 22:45:13 QRoeSo82
「……まだ、戦争は続けるのか。残念だが、こうして友好への一歩を踏み出してくれたこと、私は嬉しく思う」
ベルの表情は少しだけ残念そうではあったが、大事そうに書状を何度も読み返してはわずかに笑顔を見せた。
「ご苦労だった。すぐに返事の書状を返そうと思うが……どうだろうか、よければ今晩こちらに泊まっては行かないか?」
王女の意外な言葉に驚いたのは衛兵だった。
「ひ、姫様!? そ、そのような輩をこの城に泊めようと言うのですか?!」
「ニース、口を慎め」
衛兵の過ぎた言動に、それまで穏やかだったベルの表情は冷たい怒りを孕んだそれに変わり、ニースと呼ばれた衛兵の槍を持つ手が大きく震えた。
「……すまない、失礼なことを」
「いえいえ、気になどしていませんよ。それに王女の身を一心に考えてくれるとは、立派な衛兵ではないですか」
「ふふっ、だそうだ、ニース。すまない、怒ってしまって」
そう言って微笑む王女に衛兵は涙を目に貯めながら顔を下に向けて頭を下げる。そんな光景を見てライザは思う。
同じくらいの年齢で、同じような地位に立つ二人でもこうも違うのか、と。
豪華な晩餐を終え、ライザは案内された来賓室で分厚い本を片手にくつろいでいた。
静かなその部屋にトントン、とドアを叩く音が響き、ライザは持っていた本をローブの中にしまってゆっくりとドアに近づいてそれを開ける。
すると赤い絨毯がひかれた廊下に昼間の衛兵、ニースが槍を持たずにぽつんと立っていた。
「あ、あの……夜遅くに申し訳ありません」
「いえ、どうかされましたか?」
フードの中から覗く微笑みにニースは思わず口ごもってしまうが、それを見たニースは黙って一歩身を引いて中に入るように促した。
「す、すいません」
「くすっ、気にしないで下さい。ちょうど退屈していたところですから」
ライザは窓際に置いてあった椅子をベットの近くに持ってくると、その椅子を掌で示して自分はベットに腰掛けた。
ニースが向かいに座ると、ライザはフードを取り去りその長い髪を軽く左右に振ってから口を開いた。
「ニースさんは何歳なんですか?」
「あ、こ、今年で19歳になります」
「へぇ、若いのにお城の衛兵なんてすごい出世ですね」
小麦色の頭から覗く小さな二つの耳と同じくらいにつぶらな両目は、勇ましいという印象より可愛さあふれるものを感じさせる。
「そんな……戦場に出ても私は怯えて後ろで震えるばかりで、それを見かねた姫様が推薦してくれたお陰です」
「なるほど。じゃあベル王女を尊敬してるわけですね?」
ライザの言葉に頬を染めるという分かりやすい反応をニースは返し、ライザはそれを見て珍しく表情を変えて笑った。
「だからあの時も、あんなに必死でベル王女のことを心配してたんですか」
「あ、そ、その、本当に申し訳ありませんでした!」
ニースは椅子から立ち上がると勢いよく腰を折って頭を下げた。まるで釘を打つカナヅチの様なスピードだ。
「いえいえ、本当に気にしないで下さい。逆に感心したぐらいですから、気にしないで下さい」
ベットから立ってニースの頭を優しく上げさせると、ライザはその天使のような微笑みをニースに向けた。
ニースは先ほどの自分が謝り易い様にする話の流れと、この暖かなライザの心遣いに心から感謝していた。
対するライザもニースに心から感謝し、彼女を優しく抱きしめた。