09/08/30 23:21:35 ApPeRrxg
(2-1)【(1-6)から分岐】
「……だめぇ……私には……できない……ごめん、なさい……」
私は構えた拳銃を地面に落とし、俯いて涙を流した。
「そう、それでいいの……ジェニー、一般人の彼女に人を撃てなんてあまりにも酷なこと言うのね?」
「くっ! ……うぁああああああああ!」
ジェニファーさんが怪我をしていない左手でリリィさんの銃口を自分の胸から逸らした。
そしてそのままもつれるように転がりながら私に向かって叫ぶ。
「今のうちに、セーフルームに行って! 早く!」
「あははははっは! 無駄よ、ジェニー。やめときなさい」
「うるさい! アリス、お願い!」
転がるったところにジェニファーさんの血の道が出来ていた。……こんな傷を負ってまで戦ってるのに……私は。
意を決して私はジェニファーさんが落とした鍵を拾うと、彼女たちに背を向けてセーフルームの大きな扉へと走り出した。
「ああっ! だめ! やめてぇええええええ!」
背後から聞こえるリリィさんの声が、逆に私のやっていることが間違い出ないことを証明してくれた。
鍵を使ってセーフルームに飛び込んだ私は、ブザーを鳴らしながら点滅しているドアの横の赤いボタンを押した。
閉まり始める扉の先で銃を突きつけられながらも、こちらを見て満足そうに頷きながらジェニファーさんが微笑んでいた。
しかし……その銃を突きつけている人物、リリィさんの表情も扉が閉まる一瞬、笑ったように見えた。
でもそれを気にしている余裕はなかった。部屋の中では次のブザーが鳴り、奥のほうで別のボタンが点滅している。
今度はそれに近づいてタックルをするように押し込んだ。するとその下から薄いガラスに守られたボタンが出てきて、ガラスの下で明滅を繰り返している。
深呼吸を一つして、私は拳でガラスを叩き割ると同時にボタンを押し込んだ。途端に部屋が揺れ、轟音が響き渡る。
床に膝を着き、両耳を塞いでしばらく続いたそれを耐えると、やがて嘘のように静かになっていた。
ふと、薄暗い部屋を見回すとなにやら明るい部分があり、そこに近づくとそれは建物の中の監視カメラの映像を映すテレビの羅列だった。
その幾つかに人間が映っている。……おそらくただの人間ではないのだろうが、そのどれもが苦しそうにのた打ち回る姿を映し出している。おそらく、もう酸素が減り始めているのだろう。
そしてこのセーフルームのすぐ外の廊下、ジェニファーさんとリリィさんがいる映像も映し出されていた。
しかし、その映像だけ他の映像とは違う。そう、二人ともまったく苦しそうではないのだ。
その二人が映し出されているテレビへと顔を近づけようとすると、私はその下にあったボタンの羅列のどれかを押してしまった。