◆けいおん!でエロパロ◆3at EROPARO
◆けいおん!でエロパロ◆3 - 暇つぶし2ch550:名無しさん@ピンキー
09/12/25 00:46:53 1zsLL9uh
>>547
乙、やっぱりエロパロは純愛に限ります

551:名無しさん@ピンキー
09/12/29 01:54:22 Up/lNKaq
平均的な日本女性の膣の奥行きは7から10cmです
これをもってペニスは10cmあれば短小ではないという説があります
しかし女性器には子宮頸部からさらに曲がった方向に奥があります
ここにさらに深く挿入できることを知る経験者は男女ともさほど多くありません
男性は亀頭先端から強烈な反発力を女性は最深部まさにお腹の中をかき回される快感を味わいます
この時の快感や刺激を知っている女性は普通の奥と思われてる子宮頸部への挿入では満足できません
ですからペニスの長さが15cmに満たない短小な男性は性経験の少ないできれば処女を選びましょう
極端な低身長で性器が未発達の膣の奥行が短い女性に根強い需要があるのも同じ理由と考えることも出来ます

552:名無しさん@ピンキー
09/12/31 18:40:08 7JrPXEFT
保管庫にエロパロ板12月分2作を追加更新。
ただし投下まとめページが編集不可能な模様。
どなたか更新できる人plz。出来なければ来年までとりあえずそのままということで。

内容は以下2行を

|[[ドラムルート ~中華料理人~>URLリンク(wiki.livedoor.jp)青太郎氏| オリ男料理人×律| 2009/12/09(水) 21:23:48|
|[[無題(唯×オリ男教師)>URLリンク(wiki.livedoor.jp)青太郎氏| 唯×オリ男教師| 2009/12/24(木) 07:19:35|

|[[無題(唯×オリ男教師)>URLリンク(wiki.livedoor.jp)青太郎氏| 唯×オリ男教師| 2009/12/24(木) 07:19:35|

の次の行に追加。

ではよろ。

553:名無しさん@ピンキー
10/01/03 14:29:25 IY/cWcMF
録画を見直してたら、13話の聡が可愛すぎたので
聡と澪で妄想を煮込んだものを投下します。
エロはこの投下ではないけど、続きでこつこつ書いてます。

554:男の子女の子 1/5
10/01/03 14:30:54 IY/cWcMF

Side Satoshi

唐突だけど、俺には好きな人がいる。

「ただいまー」
「お邪魔します」
「おかえりー」
今から顔だけ出して姉ちゃんを出迎える。
ばたばたと靴を脱ぐ姉ちゃんとは対照的に、きちんと脱いだ靴を揃えているのは、秋山澪さん。
姉ちゃんの幼馴染み。
「澪さん、いらっしゃい」
「お邪魔します、聡くん」
内心の照れを悟られないように、出来るだけきちんとあいさつする。
「聡ー、部屋で勉強するから、後でお茶とかお菓子持ってきてよー」
「おい律、自分でやれよ」
「えー別にいいじゃん」
ぶーっと頬を膨らませる姉ちゃん。
少しは澪さんを見習って女らしくなればいいのに。
「いいです、澪さん。適当に持ってくから、ちゃんと勉強教えてもらえよ姉ちゃん」
「わかってるよ。補習はやだもんなぁ」
「ほら律、早く勉強するぞ。じゃあ、聡くん」
「いででででで、耳ひっぱんなよー!」
姉ちゃんが澪さんに引っ張られていく。
我が姉ながらもう少ししっかりして欲しいと思う。
そしてやっぱり澪さんは素敵だ。
俺の好きな人、秋山澪さん。

555:男の子女の子 2/5
10/01/03 14:31:38 IY/cWcMF

Side Mio

唐突だけど、私には好きな人がいる。

「まったく、唯といい律といい、家族に頼りすぎだ」
「えーーあたしゃ唯ほど酷くねーよぉ。それに聡は憂ちゃんほど頼れねーもん」
律の部屋で勉強道具を広げつつ、さっきのことを突っ込む。
相変わらずごちゃっとした部屋だなぁ。
「どっちもどっちだ。ほら、勉強するぞ」
「えー帰ってきたばかりなんだから、ちょっと休もうよー」
「あのなぁ、律」
「もうすぐ聡がお茶持ってくるからさぁ」
にひひと、律がいやらしい笑みを浮かべる。
自分の頬が少し赤くなっているのがわかる。
「しょ、しょうがないな。ちょっとだけだぞ」
「はいはい、わかってますよ澪先生」
暫くして、ドアを叩く音がする。
「姉ちゃん、入るよ」
「おー」
お盆を持って入ってきた聡くんが、ベッドの上でぐだーっとなっていた律に顔をしかめる。
「もっとしゃんとしろよ姉ちゃん。制服皺になるよ」
「だいじょうぶだいじょうぶ。それよりお茶ー」
「はいはい。あ、澪さんもどうぞ。買い置きのお菓子で申し訳ないですけど」
聡くんのお日様みたいなにおいに、ちょっと胸が高鳴る。
「いいよ。聡くんも大変だね」
「澪さんほどの苦労じゃないですよ」
互いに顔を見合わせて笑いあう。
「なんだよー、私一人だけ悪者かよー」
ぶーぶーと律が抗議の声をあげる。
「んじゃ、ちゃんと勉強しろよ姉ちゃん」
「るっせー、高校生は大変なんだぞー」
殴るぞーというポーズを見せる律に、お盆でガードをしつつ部屋を出て行く聡くん。
私の好きな人、田井中聡くん。

556:男の子女の子 3/5
10/01/03 14:32:57 IY/cWcMF

Side Mio

お茶とお茶菓子で軽く休憩した後、早速勉強を始めた。
こういう時だけは律も素直に勉強する。
暫くの間、部屋には律がシャープペンをはしらせる音だけが響いていた。
「なぁ澪」
「なに?」
テキストを見ながら、適当に返事をする。
「やっぱ今でも聡のこと好きなの?」
「なぁっ!?」
律のとんでもない言葉にテキストを取り落とす。
「あ、やっぱそうなんだ」
「なななな、なに言いだすんだよ!」
「いやだから、澪って聡のこと好きなんだろ?」
「べべべべべ、別に、すすすす、好きとかそんなんじゃ!」
顔が真っ赤になっているのがわかる。
律に背を向けて、両手で顔を隠す。
「何年幼馴染みやってると思ってんだよ。澪ってけっこうショタの気あるよな」
「しょ、しょたって!?」
自分の隠してる性癖を指摘されて、余計に狼狽してしまった。
「聡が半ズボン履いてるの見た時の澪の顔、かなりやばかったぜ」
「うっ!」
「流石に中学に上がってからはそういう服装しないけどさ」
小学校の頃の聡くんのことを思い出し、胸のどきどきが増す。
「それにー、我が弟ながら結構もてるみたいだぞ」
「ほんと?」
「うん、ラブレターもらってたぞ。私に見つからないよう隠してたけど」
律の話を聞いて、ちくちく胸が痛む。
聡くんも同い年の子がいいのかな?
「澪さえよけりゃ協力するけど、どうする?」
「協力?」
恐る恐る振り返ると、律はにやりといやらしい笑いを浮かべていた。

557:男の子女の子 4/5
10/01/03 14:38:13 IY/cWcMF

Side Satoshi

「おーい、さとしー」
居間でゲームをしてると2階から姉ちゃんの呼ぶ声がした。
ぱっと見、めんどくさそうに。内心、すっげえどきどきしながら2階に上がる。
「どうしたの姉ちゃん?」
部屋に入ると、コートを羽織った姉ちゃんがいた。
澪さんはクッションに座っている。
「ちょっと用事思い出してさ。すぐ帰ってくるから、その間、澪のこと頼むな」
言うが早いか、姉ちゃんはばたばたと部屋を出て行った。
部屋に残されたのは澪さんと俺だけ。
「えーと……お茶のお代わりいります?」
「う、うん」
その後、学校の話とか姉ちゃんの話しを澪さんとしながら時間が過ぎていった。
時計を見ると、もう1時間近く経っている。
「姉ちゃん遅いですね」
「そ、そうだな。あ、よかったら聡くんの勉強見てあげようか?」
ずずいと澪さんがこっちに身を乗り出してきた。
なんだか笑顔が引きつってるように見えるけど、気のせいかな。
「じゃあ、お願いします」

558:男の子女の子 5/5
10/01/03 14:39:31 IY/cWcMF

Side Satoshi

澪さんが隣に座って教えてくれているが、半分も頭に入ってこない。
なんかいい匂いするし、さらさらの髪の毛が目の前にあるし……集中できない!
テキストを指差してくれる澪さんの指先、細くてすべすべしてそうで、すっげえきれい。
ノートに書いてること見なきゃいけないのに、澪さんの指や顔や髪ばかり見てしまう。
一瞬澪さんと目が合ってしまい、慌てて目線を落とす。
と、テーブルの下の澪さんの太股が目に入ってしまう。
いかんいかん!と、ぶんぶんっと頭を左右に振る。
「―だから、こうなって……聡くん?」
「あ、はい!」
ダメだダメだ、ちゃんと聞かなきゃ。
変な奴だと思われちゃう。
っていうか、さっきから心臓鳴り過ぎだ。
顔赤くなってないかな、変だと思われてないかな。
ちょっとだけ澪さんの表情を窺う。
あれ? 澪さんの顔赤い? 風邪気味なのかな。
「澪さん顔赤いですけど、大丈夫ですか?」
「あ、ああああああ。だ、だいじょうぶ!」
余計に顔を赤くして、ぶんぶんと手を振っている。
……すげー可愛い……。
澪さんに悪いと思いつつも、じっと見つめてしまう。
何か言わなきゃと口を開こうとしたその時、澪さんが先に口を開いた。
「その、あのさ……律に聞いたんだけど」
「え?」
「ラブレターもらったって、本当?」
がつんと、思いっきり頭を叩かれたような衝撃が走った。

559:名無しさん@ピンキー
10/01/03 14:40:20 IY/cWcMF
一旦以上です。

560:名無しさん@ピンキー
10/01/03 16:34:52 LRIZ/eLr
良く来たね。まあ、お茶でもひとつ
つ旦~

561:名無しさん@ピンキー
10/01/06 19:59:36 ukrRGJrK
しかし同人見てるとあんなに
けいおん!エロが世の中にはあふれているのに
ここはなぜこんな状態?

562:名無しさん@ピンキー
10/01/06 21:26:57 PPjBQwFO
自分で二次創作をやりたいと思うほど原作が優れていないから。
エロ同人が大量に出たのはキャラだけは可愛くて制作が京アニで注目を集めたから。
要は単に売れ筋に同人ゴロが集中しただけの話。

その作品が本当に優れているかどうかは、非エロ及び金の絡まない同人活動における
ファンの熱心さがひとつの目安になると言っても過言ではない。

563:名無しさん@ピンキー
10/01/06 21:34:04 irMbhtgZ
絵で表現するのと文章で表現するのは違うから

564:名無しさん@ピンキー
10/01/07 07:01:07 uxHCoHwu
>>562
確かに原作だけだと中身ないもんな。特に1巻とか。
出来の高い二次創作のほうが中身が濃くて優れてると思うことも有るし。
4コマだと一瞬難しいと考えたけど、あずまんがとかは優れてるしね。

まあけいおん!は3巻に入ってからはだいぶ面白くなったと思うけど。

それにしても、こっちとは逆にらきすた関係は
結構盛り上がってたような気が。

565:名無しさん@ピンキー
10/01/07 13:02:05 c7YngGLD
>>559
続き待ってます

566:青太郎
10/01/09 01:33:28 rqil/6VB
みなさん、あけましておめでとうございます。

567:名無しさん@ピンキー
10/01/09 01:36:10 rqil/6VB
「食堂勤務、ですか」
 後日、呼び出しをくらった俺は渡された書類に目を通しつつ、目の前の女に聞き返した。女は頷いて、
「そ。嘱託でね。ほら、最近不景気でしょ? 食堂だって慈善事業でやってるわけじゃないし。
だったら売れるとこだけ売っちゃおうってこと。
あなたのラーメンバカ売れだったじゃない? だから」
 その人気商品を食い逃げした女がよくもまあいけしゃあしゃあと……。
内心でため息を吐きつつ、書類にサインする。まあ、実働一日約一時間でこれなら断る理由はない。
店のものをそのまま流用するだけだからな。
「接客はしませんよ」
「それなら問題ないわ」
 渡した契約書にチェックをしながら山中さわ子はぐっと親指を立てる。俺は対照的にうんざりした体で応接室を後にした。時計を見ると、どうやら今は昼休みらしい。
やけに騒がしいと思ったら、そういうことか。今も昔も、そういうところは変わらないな。

『よっ! 一緒にバンドやろうぜ!』
『…………経験は、ない。楽器も』
『大丈夫だって。貸してもらえるからさ。好きなんだろ?』

 そういって手を伸ばしたあいつは、手を取った俺は変わった。それが必然だとか、道理だとか――そんな理屈には興味がない。
その『結果』が自分に何をもたらしたかが重要なんだ。結局、あいつは俺を裏切った。
伸ばした手を簡単に離して、自己保身に走ったあの大馬鹿野郎を許すつもりはない。
絶対に―。


 第二章


「あ」
「…………」
 廊下の曲り角で、真鍋に会った。いつもの制服姿で、何かのファイルを抱えている。何と言っていいか分からず、黙して立ち止った。
本当に、こういう時は何て言っていいんだろうな。故に先に口を開いたのはあっちだ。
「生徒会に何かご用ですか?」
「いや、別件だ」
 あの人にもらった書類を渡すと、すぐにその趣旨を把握したのか、小さな声を出した。
「食堂で働くんですね」
「正社員じゃないがな。店はいつも通りだ」
「じゃあまた伺いますね」
 あれから、頻繁にこいつはうちの店に来ていた。もう常連といってもいいくらいだ。
何がこいつをそこまでさせるのかはわからないが、気に入ってもらえたのは素直に喜ぶべきだろう。
 だが―。
「よく来るな。財布は大丈夫か」
 するとこいつは困ったように笑ってから、
「大丈夫ですよ。そんなに使うことはないですから」
「…………あまり親に頼らず、自分で稼いでみたらどうだ」
 こんなこと、俺が言うべきじゃないのかもしれないが、そこが気がかりだった。
依存していれば、いずれ来るであろう『離別』に対応できない。
ひどい虚無感と絶望が待っている。できることなら、それを味わうことを防ぐべきだ。
 俺のような思いをするのは、俺だけで十分だ。
「生徒会が忙しいのはわかるがな」
 持っているファイルを見ながら言うと、彼女は顔を俯かせた。少しきつく言い過ぎただろうか。
いや、しかし間違ったことを言ったつもりはない。
それにどんなに遠まわしに言ったところで、本質的には何も変わりはしないしな。
 それほど間をおかずに真鍋は視線を戻した。そして意を決したような顔をして、
「じゃ、じゃあ! 私を雇ってください……!」
 …………。
 …………。
 …………。
「…………」
 ……は?



568:名無しさん@ピンキー
10/01/09 01:38:00 rqil/6VB


「それじゃ、調理の方は頼むよ。こっちは食券の受け取りと食器の洗浄してるから」
「ああ」
「あんたも若いのに大変だねえ」
「もう慣れた」
 会話はそれくらいで、後は黙々と作業。気まずいとか、つまらないという感情はない。むしろ楽だった。
黙って慣れたことをするだけでいいのだから。
 ……真鍋を雇うかどうかはまだ決めていない。たしかに働けとはいったが、自分のところを志願するとは思わなかった。
何があいつをそうまでさせるのか、本当に理解できない。
将来的に飲食関係の仕事に就きたいのだろうか。だとしたら、これはインターンシップのつもりなのかもしれない。
しかし、何もこんな個人経営の店を選ぶことはないだろうに。
もっと発達した組織―チェーン店を多く持つ企業で学んだ方が得策だろう。それに気付かないあいつでもあるまい。
まったくもって最近の女子高生の考えていることはわからない。
 そう思いながら学生が飲食している様子を見ると、見知った顔が複数あった。
一人がこっちの視線に気づいたらしく、俺はあわてて顔を背ける。……何をやっているんだ、俺は。いや、いいんだ。
関係がないのなら、関係を作りたくないのなら、こうして接触を拒めばいい。それで不快にも不利益にもならない、合理的だ。
そう、理に適っている。実に論理的だ。理性的でもある。
 ……なのにどうして料理にいらん細工をしているんだろうな、俺は。
 ――『な、なんじゃごりゃあ!』
 予想通り、聞きなれた声の悲鳴が上がった。まあ、そのまま受け入れるような奴じゃないのは知っている。
起きるべくして起きたことだ。そんなこと分かり切っているのに、どうしてこんなことをするのか。
自分でもよくわからない、まったくもって。
 ――『おいそこの! 詐欺も大概にしろ!』
 ペテンはどっちだ。俺は胸中で吐き捨て、そちらへ向かう。ほれ見ろ、面倒なことになった。
まったく、我ながら不可解だ。もう関わりたくないはずなのに。
「うるせえな……」
 そういって帽子と顔周辺を覆う布を取った。これ頭かゆくなるんだよな。慣れるとあまり気にならなくなるが。
「てめえにはそれで十分だ」
「ちっ……」
 そこにいたのはかつてともに同じものを目指していた三人。気がつけば別々の道を行っている三人。
 もう交わることはないだろう、三人。
「……作る気が失せた」
 俺とあの馬鹿はしばらく睨み合っていたが、やがてこっちが視線をそらした。あきたというより、うんざりだという感で俺は背を向ける。
「おや、じゃあ誰が料理するんだい」
 背中にかかる疑問に俺は厨房を指差して答える。
「全部作ってある。時間的にも問題はない。配膳は頼んだ」
「それならいいんだよ。だけどね」
 中年女性は声を小さくして、
「もう少し友達と仲良くしたらどうなんだい」
「そんな関係じゃない。赤の他人だ」
 すると鼻を鳴らす音。
「赤の他人にここまでしてやれるほど、あんたは器用じゃないだろ?」
「……さあな」
 勝手口の扉が、なぜか重く感じた。



569:名無しさん@ピンキー
10/01/09 01:39:47 rqil/6VB

「おー、今日も来たぞー」
 真鍋同様、このカチューシャもうちの常連になりつつあった。こいつら以外にも、どこで聞きつけたのか、同じ学校の生徒がたまにやってくる。
本当に、最近の女子高生の好みはよくわからん。もっとも、あの頃の女どもの嗜好もよくわかっていないのだが。
「半ライス!」
「…………」
 カウンター席に座っての第一声。これにはさすがに閉口せざるを得ない。この商売をやっていて、このような注文は初めてだ。
というか、そんなのそこらへんの店で充分だろ。うちはそんなにいい米使ってないぞ。
「半ライス……!」
「……お前」
「悪かったな、わたしの財布はもうぼろぼろなんだ! でもこれからバイトするからいいんだ! だから今だけは」
 そりゃあ連日あれだけ注文していれば、金も底をつくだろ。それにこいつはバンドをやっている。
そっち方面にも金を使うだろう。俺はため息ひとつして、
「出世払い」
「へ?」
「バンドやってるんだろ? だったらそっちに時間と金を使え。こっちは後でいい」
 俺も――俺達も親方にそうしてもらったっけな。まあ、この時期は金と時間がいくらあっても足りないだろうからな。するとこいつは目を輝かせて、
「そっか。じゃあ北京ダック―!」
「おい」
 そんなやりとりをした後、カチューシャ(ツケのメモをとるときにこいつが田井中律という名前だとここで初めてわかった)はいつものメニューを腹に入れて、満足したように帰っていった。
「ああ、そうだ。軽音部のライブ見てた?」
「……まあな」
 引き戸に手をかけたところで田井中が振り向いて聞いてきた。見てたというよりは、見せられたという方が正しいのかもしれないが。
「どうだった?」
「テクも運びもまだまだだったが、ネックは歌詞だな」
 興味津々といった表情が、苦笑いにかわる。あはは……と乾いた力のない笑い声が口から漏れ始めた。
「やっぱり……?」
「最近の流行はよく分からんが、少なくともあれはない」
 自分たちでもそう思ってるなら変えればいいものを……。もっとも、作詞者が頑固ならそれに苦労するだろうが。
俺たちも昔はそうだった。

『何でこんなこっぱずかしい歌詞歌わなきゃなんないんだ! ただでさえドラムは歌いにくいんだぞ!』
『何だとう!? 俺っちの美的センスが分からないとは、お前もまだまだだな!』
『あー、これ仲裁した方がよくないか?』
『私は見ていて面白いですよ』

 ……“あの子のおしりに頬擦り”なんて文句をシャウトできる精神など持っている人間は希少だろう。少なくとも俺はごめんだ。


570:名無しさん@ピンキー
10/01/09 01:42:33 rqil/6VB

「こんばんは」
 田井中が帰ってからしばらくして、今度は真鍋がやってきた。生徒会より早く終わる部活を責めるべきか、部活より長く活動している生徒会を称えるべきか……。
「……おう」
「考えてくれましたか? アルバイトの件」
 俺はさっと店内を見回す。客は全員返った後だが、やはりこういうことは事務室でやるべきだろう。
もっとも、うちにそんなものはないから、奥の俺の部屋ですることになるわけだが。
「まあ、あがれ」
 少し早めの店じまいをして、普段居間として使っている座敷に真鍋を招く。
こいつは礼儀正しく礼をしてから、これまた礼儀正しく靴を脱ぎ、俺の前に座った。
何だかあぐらをしているこちらがいたたまれない気分になってくる。
「それで、なんでうちなんだ」
「働けといったのはあなたですし、その方が手っ取り早いですから」
「まあ、それはそうだな」
 思えば、反論や否定をする必要はないわけだ。いそがしい時は確かに人手が欲しい。もともと親方と二人でやってきたのだから、それは当然の成り行き。
真鍋のことだ、すぐに仕事を覚えて役に立つだろう。しかし妙な気分だ。こんな若いやつといっしょに仕事するなんてな。ままごとならはるか昔にしたことがあるが。
……ふむ。
「……わかった。だが給料には期待するな。こっちも羽振りがいいわけじゃない。その分賄いをつけるつもりだがな」
 それを聞くやいなや、この少女は顔を綻ばせて、
「ありがとうございます。それと、これからよろしくおねがいします」
「あ、ああ……」
 何というか、まあ、あれだ。何かむずがゆいな。今まで俺が自分で決めることなんてあんまりなかったし、感謝されることもこれといってなかった。
あー、何かもやもやする。何て言葉にすればいいのか分からないな、こんな気持ち。
「一応雇うわけだから、それなりの形式が必要だ。用意するから少し待っていろ。出来次第こちらから連絡する」
 連絡先をメモしようとペンをとった時、一瞬、視界がぼやけた。何だこれ。
しかしそれはすぐに治まり、いつもの定まった視界に戻る。気のせいか。
「私から連絡する時はどうしましょうか」
「店の電話番号を使え」
 ペン先を走らせながらそう返す。そういえばうちに制服はないな。バンダナとエプロンがあればいいか。
「携帯電話は持っていないんですか?」
「昔使ってたがもう使っていない」
 過去と決別するために、あいつらと関係のある品のほとんどは処分した。
機種変更という手もあったが、そんなものを使うような関係の人間はあの三人以外はいなかったので、金のかからない方法をとったまでだ。
自分で言ってて微妙にむなしく、かなしくなるな。
「そうですか。それじゃあ、今日のところはお暇しますね。また後日」
 ―『あとで会いましょう』
「おい……」
 座礼をしてから立ち上がり、背を向けるその姿に言い知れぬ何かを感じ取った俺は、無意識に声を出していた。
ちっ……振り切ったつもりだったが、尾を引いているってことか? これは。
「はい?」
「……気をつけて帰れよ」
 とりあえず思いついたそれっぽい言葉。しかし真鍋は嬉しかったらしく、微笑をもって、
「ありがとうございます」
 嬉しそうに去っていくその少女を、どうも俺は帰したくないらしい。気がついたらその細い腕を掴んでいた。
「いや、やっぱり送ろう」
「大丈夫ですよ。夜道には慣れていますから」
 だろうな。そう思う。しかし、今日はやけに感情的だな、俺。このあいだまではもっと無関心を装っていたはずだが。
あいつらと再会したのがまずかったのか?
まったく、理性的じゃない。賢くない、馬鹿げている。いや、馬鹿は昔から、か……。まったくもって、解せない。何もかも。
「でも……」
 掴んでいた手に白い手が添えられ、腕からその下の手へと位置を変えられる。そしてそのまま、お互いの指が絡む格好となる。
「こういうのもいいですね」
「……かもな」
 手をつなぐなんていつぶりだろうか。大切なものを握っていたはずの手。気がついたら何もかも失っていた手。失ったものを取り戻そうとしない手……。
「それじゃ、家までお願いしますね」
「ああ」
 取り戻したいのだろうか。それとも、手に入れたいのだろうか――俺は。理屈……機械的に考えれば、すべては無駄と矛盾で切り捨てられる。
しかし、それをどこかで拒んでいる自分がいる。あの時捨てられた子供がそうさせれるのか、あの時夢を終えてしまったドラマ―がそうさせるのか。あるいは……。
 少なくとも、この冷たく小さな手を離したくはないな、とは思っていた。


571:名無しさん@ピンキー
10/01/09 01:43:07 rqil/6VB



≪オートセーブします≫



≪セーブが完了しました≫

ニア 【第三章へ】
   【やめる】

 


572:あとがき
10/01/09 01:44:40 rqil/6VB
みなさま今年もよろしくおねがいします。

573:名無しさん@ピンキー
10/01/09 03:45:18 QgNUpwn4
>>572
乙です!
こちらこそよろしくおねがいします。

574:名無しさん@ピンキー
10/01/09 16:10:22 +/mOixRv
>>572
いやー、やっぱり面白いです。
続きを楽しみにしています。

575:名無しさん@ピンキー
10/01/09 16:31:18 u2xNmkkv
もうここの職人は>>572氏だけでおk
別スレ立てるからほかの書き手はそこでよろ

576:名無しさん@ピンキー
10/01/10 01:46:00 HZfWqeNC
>>547
よし、次は処女喪失だ。

577:名無しさん@ピンキー
10/01/13 18:23:38 sPrjfiEY
>>572
亀だけどGJ

578:名無しさん@ピンキー
10/01/17 06:50:27 4wIympE0
唯の隣に住んでいる男の子(まだ小学生)がけいおん部のメンバー全員に
気持ちよくさせられちゃうっていうのはどう?

579:名無しさん@ピンキー
10/01/20 21:14:14 8yNLdhws

階段をのぼって突き当たり。
3年前に教えられたとおりの道順で、唯は音楽室にたどり着いた。

最後にここに来たのは冬休みのときだったから、もう2ヶ月以上前になる。

新年が明けてからはセンター試験やら、そこからなだれ込むように始まった受験やらで手一杯で、部室に気軽に足を運ぶ暇も精神的余裕もなかった。
今、思い出してもすこし気が重くなる。
もう数ヶ月もたてば喉元を過ぎるだろうか。


扉を開けた。
見慣れた部室はたいていは前に来たときと変わっていなかったが、年末に掃除をしたのか椅子と机が隅に寄せられていた。
組み上げられた椅子と机は、まるでずっと前からその役目を果たしていなかったかのようによそよそしく影のようにうずくまっていた。


窓は閉めきられていて、空気はすこし埃っぽく澱んでいた。
遠くからはしゃぎ声が聞こえて、唯はとっさに振り返ったがそこには両開きの扉が無表情で佇んでいるだけだ。

声は外からしていた。
唯は窓際までいって、ひんやりとしたガラスに頬をつけて下を覗き込んだ。

男子生徒が4人。
みんな卒業証書の入った筒を持って、ときどきそれで相手の頭を叩いたり、蓋を開け閉めして遊びながら熱心に話し込んでいた。

陽は出ておらず、空は薄くほの明かるい雲でぴったりととじられていた。
窓越しにまだ冬の冷気が感じられた。

扉の開く音がして、沈んだような、落ち着いているような気持ちでいた唯は一瞬心と身を震わせた。

振り向くと、ちょうど紬が入ってきたところだった。

580:名無しさん@ピンキー
10/01/20 21:16:48 8yNLdhws
彼女も唯の姿を認めてちょっと驚いたようだった。


「教室にいないから、もう帰っちゃったのかと思ったわ」
彼女の胸元で卒業生を示す紅白のリボンが映えている。

「どうしたの?」

「部室に忘れ物しちゃって」
紬は独特の優雅な足取りで部屋の真ん中まで来ると、辺りを見回して

「なんだか、寂しいわね」と微笑した。


紬は棚からティーカップを出すと、ひとつひとつ丁寧に箱にしまっていった。
陶器の触れ合う音が響く。
「ムギちゃんはいつ上京するの?」

しゃがんで荷物を整理している紬の手元を見ながら、声をかけた。
訊ねるだけなのになんとなく気後れした。

紬が地元を離れて東京に行くというぼんやりした未来に現実の色がついてしまった気がした。

「そうね、たぶん3月の末になると思うわ。なるべくこっちに残っていたいし」
「じゃ、それまでいっぱい遊べるね」
まだ20日間以上ある。
時間はたっぷり残されていると自分に言い聞かせながら、しかしきっとそれはあっという間に過ぎ去ってしまうだろうとも思った。
この3年間がそうだったから。

「そうね。澪ちゃんもぎりぎりまでこっちに残るって言っていたから、またみんなで旅行に行きましょ。今度こそ1番大きな別荘をとるから」

「あずにゃんは来れるかなぁ」

「どうかしら。春休みだからバンドが忙しいかもしれないわね」

たった1人の後輩は去年の秋に軽音部が廃部になってから、外部のバンドに加入した。
軽音楽という文化が校風に馴染まなかったのか、梓から以後、新入部員は入らなかった。

唯たちが事実上引退扱いとなって、部員が梓1人になってからも彼女は廃部にはしたくないと粘った。
それは自分のためというより、せめて唯たちの卒業までは部を存続させてあげたいという気遣いであることをみんな知っていた。

梓は部活動入部期間が過ぎてからも懸命に勧誘を続け、唯たちも勉強の合間を縫って手伝ったが、結果は芳しくなかった。

生徒会からの何度かの廃部勧告も梓は頑なに拒んだ。
来年、つまり唯たちが卒業した後の新入生を絶対に入部させるからと。

581:名無しさん@ピンキー
10/01/20 21:18:31 8yNLdhws

梓の熱意の源を理解していた唯たちは心配した。

新入部員が入る保障はどこにもない。
仮に入っても、4月までは梓ひとりで練習を続けなければならない。
唯たちもなるべく手助けをするつもりだが、いよいよ受験が迫ればそれも難しくなる。

唯にも部がずっと続いてくれれば良いという思いがないではなかったが、大切な後輩の才能と情熱の芽を守ることの方がはるかに重い責務に思えた。

他の3人も同じ意を持っていた。
結局唯たちの説得でもって、梓は廃部を受け入れた。
小さい子供のように泣きぐずった梓を見て、唯はもう満足していた。

「ライブのあずにゃん、かっこよかったよねぇ」

冬休みに一度だけ、梓の参加しているバンドのライブを見に行った。
新しい仲間に混じった梓は別の人のように見えた。

唯は安心した。

「ムギちゃんは大学でも音楽やるの?」
紬はしばらく黙った。
思案している風ではなくて、どう言おうか言葉を探しているような表情だった。

いつの間にか外の声はなくなっていた。
白く明るい曇り空が視界の隅で光った。

紬は唯の顔を見た。


「たぶん、やらないと思うわ」

「えぇ、もったいないよ。ピアノ、上手なのに」

そう軽口を叩きながら、紬の言葉に驚かない自分がいるのを感じていた。

部を引退してからというもの、唯はギターから遠ざかっていた。
勉強に忙しいと口実を作りながら、気の向いたときに手にとって軽く弾いてみるだけになった。
そして実際、弦に指をかけて弾き出される音はひどく渇いていて、充分な満足を与えてくれるようなものではなくなっていた。

燃え尽きたなどといえば大仰に過ぎるが、それに近い喪失感があった。

582:名無しさん@ピンキー
10/01/20 21:20:46 8yNLdhws

「唯ちゃんは、続けるつもりなの?」

「うーん、どうだろう」

言葉を濁したが、否定の響きは否応なしに混じった。

「りっちゃんは大学でもバリバリ続けるって言ってたわよ」

「おぉ、さすが、りっちゃん」

音楽が聞こえてくる。

今度は校舎の中からだ。

吹奏楽部が卒業生の送り出しでもしているのだろうか。


唯にとって音楽は手段だった。
怠惰で色のない、昨日と今日で代わり映えのしないような恒常的な日々を終止符を打つための。
なんでも良かったのだ。

音楽はついに目的にはならなかった。
高校生活を終え、その充実を喜びながら、次の行動をとれずにいた。
楽しかったのは音を作りだす行為自体ではなくて、お喋りのひとことひとことや、ケーキの甘さや演奏の一体感であって、ギターを弾くことは楽しさの層のほんの一部分に過ぎなかった。
その層を突き崩されて、もう一度積み上げろと言われても、ただおろおろする以外に術はなかった。

律や梓のように音楽への情熱を持ち続けられないのは当然の結果だったのだ。

彼女も同じなんだろうか。
そう考えながら、紬の白い指を見ていた。
すこし前まで鍵盤の上を走っていた指が所在なさ気に膝の上で重なり合っている。


紬から視線をあげると、両手を広げた黒板がある。
音符をぶら下げていない五線譜はなんだかもの悲しい。

日付のところが空白になって、『月』と『日』の字だけが存在感のあるゴシック体で記されている。
後で書き足しておこうと考えて、その無意味さに唯は心中で自嘲した。

583:名無しさん@ピンキー
10/01/20 21:22:22 8yNLdhws

「あ、私、下にお迎えの車を待たせてるんだったわ」と紬が慌てて立ち上がったので、唯も腰を浮かせた。

「よかったら、一緒に帰らない?送っていくわ」

「ごめん、今日は憂と帰るから。ここで待ってなきゃ」

「そう。それじゃあ」と言って、微笑みかけた紬は軽く会釈すると扉に歩をすすめた。

遠ざかっていく背中を見送っているうちに、何か言うべきことがあるような、言わなくてはいけないことがあるような、そんな衝動が唯の胸をついた。


「ねぇ」と呼び止めるのと、言葉が頭に浮かぶのとはほぼ同時だった。
体の奥が胎動したようにジリジリと熱くなって震えた。

「ムギちゃんは、最初、合唱部に入りたかったんだよね」
扉に手をかけていた紬は、ゆっくり体を唯に向けた。

「えぇ、そうよ」

「あのさ、やり直せるとしたら。もう一回高校生をやり直せるとしたら、ムギちゃんは軽音部に入る?」
訊いていて、自分でもずいぶん間の抜けた質問だと思った。
けれど高校生活の最後にはぴったりの間抜けさだとも思った。

応えはすぐに返ってきた。
「ねぇ、唯ちゃん。私、軽音部に入って、とっても楽しかったのよ」

透明で有無を言わせない毎日がふたりの中を通過して、その思い出の残滓が目の前で結晶化しダイヤモンドダストのようにきらきらと輝いた。

「もう1回繰り返しても、きっと楽しいと思うわ」

「うん」
もっと言葉を尽くして同意を示したかったのに、息を吐くような声しか出なかった。

「それに、私、実は合唱部がどこにあるのか、まだ知らないの」
そう言って笑った紬を見て、唯は初めて別れを実感した。
悲しいとか切ないとか、そういう境目の分からない感情がせりあがってきて息苦しくなった。


ひとりになった部室で、唯は窓を開けようと錠に手を伸ばした。
鍵おろそうとしたが、どこかで引っ掛かってしまっていてうまく外せない。
頭がかあっと熱くなって、やたらに力を入れた。
体重をかけてほとんど壊すくらい強くおろした。

鍵が勢いよく外れた拍子に窓枠で手をしたたかに打った。
一拍おいて痛みが走った。
息が乱れている。

唯はうつむいた。

暖かく湿った吐息と髪先が疼く右手にやわらかくかかった。
音楽は鳴りやんでいた。
そうすると、もう何の音もしなくなっていた。
自身の呼吸音と胸の鼓動だけがやけに耳に響いた。

そろそろ卒業式の片付けを終えた憂がやって来る。


雲間からわずかに陽が漏れて、一閃のか細い光芒が地を撫でたが、そのことに唯は気が付かなかった。

584:名無しさん@ピンキー
10/01/20 21:26:27 8yNLdhws
原作も卒業が近づいてるようなので書いてみた
つーか本当に軽音部はどうなるんだろう

585:名無しさん@ピンキー
10/01/21 12:58:12 KqftzxL5
モブレベルの新入部員が入ってきて安心して梓残して卒業
大学生1年目は飛ばして梓も即進学

586:青太郎
10/01/29 08:00:10 V3S/exXO
徐々に作品が増えて嬉しい限りです

587:名無しさん@ピンキー
10/01/29 08:01:08 V3S/exXO
 奇妙な浮遊感と既視感の中、俺はその感覚に身を任せ、どこかへ向かっていた。
肉体を置き去りにし、意識をここではないどこかへ運んでいく。
何度となく繰り返したそれを、今日もまた始める。
ここではないどこか、現実には存在しない場所。

 そこで“俺”は“ぼく”に還っていく。


 第三章


「ったくよ、厄介なの押し付けてくれたよな」
「そんなこと。あの子に聞こえたらどうするんですか」
「構うことねえだろ。くそっ、親戚だからってなんであんなの引き取らなきゃなんねえんだ」
「一番辛いのはあの子なんですよ?」
「けっ。お涙頂戴ってか? そんなもんより養育費よこせって話だわな。
かわいそうかわいそうって。周りが同情するのはあの夫婦かガキばっか。
一番の被害者は俺達だろうに。ガキ一人にいくらかかるか知ってるか?
ン千万だぞ? 何でそんな大金他人のガキに使わなきゃなんねえんだ」
「すみません。私が産めない体なばっかりにあなたには……」
「ば、馬鹿野郎。誰もお前を責めちゃいねえよ。泣くんじゃねえよ……」
「すみません、すみません」
「……俺が悪かったよ」


 ――ああ、ぼくは悪い子なんだ。悪い子だから、おじさんとおばさんをこまらせてるんだ。
 ――みんなが言うんだ。かわいそうな子、すてられた子って。でもしかたないよね、ぼくは悪い子なんだから。
 ――ごめんなさい。ごめんなさい。悪い子でごめんなさい。


 何だかんだ言いつつも、俺は普通に学校に通わせてもらい、高校生になっていた。
それが周りからの叱責を怖れてのものなのか、ある種の義務感によるものなのかは今でもわからない。
さらに疑問なのは、今まで掛ったであろう費用を二人に払ったら、なぜか二人揃って悲しそうな顔をしていたことだ。
なぜだろう。喜ぶと思ったのに。

 小学生になっても、中学生になっても、そして高校生になってもあの時買ってもらった太鼓を叩き続けた。
それが唯一の家族との繋がりであり、心の支えだった。時間の流れによってそれはボロボロになっていったが、
それでもその都度修理して叩き続けた。それが何かのきっかけで噂にでもなったのか、俺の前にあいつが現れた。

「よっ! 一緒にバンドやろうぜ!」
 休み時間、ぼんやり窓の外を見ていた俺の前にそいつはずかずかとやってきた。
あまり人と関わろうとしなかったため、俺には友人というものがなかった。
だから最初はただの人違いではないかと疑ったほどだ。
「…………経験は、ない。楽器も」
 たしかに高校生ともなれば、そういうことをしたがる人間はいるだろう。
しかし、あんな玩具で人前に出るべきではないだろう。出たくもないし。
「大丈夫だって。貸してもらえるからさ。好きなんだろ?」
 実は俺も始めたばっかなんだ、と笑うこいつに、嫌悪感はなかった。
ただ、明るいな、とか、元気だな、とか微妙に場違いな感想をもった。
「だから……な?」
 差し出された手。あの頃から俺にのばされることのなかった手―人の干渉。
 胸中がどこか懐かしく温かなものに包まれたような気がした。
 だからなのだろう。その輝きに、光に誘われるままに、手をのばしたのは。



588:名無しさん@ピンキー
10/01/29 08:01:47 V3S/exXO

「おお、もう面子がそろったじゃんよ」
「まったく。あなたの手練手管には頭が下がります」
「人聞きの悪いこと言うなよなー」
 初めての友人だった。
 作ろうとしないから、作れなかったものだった。
 だって仕方ないだろう? 俺は悪い子だから。だれかを不幸にするから。
 だったら作らない方がお互い都合がいいじゃないか。
 なのに――どうして――。
「…………俺でいいのか、本当に」
 三人の視線が自分に集まる。三人は一様に首を傾げて、
「問題ナッシング。むしろ大歓迎」
「こちらこそ、と問い返したいところですね」
「嫌だったら誘わないさ。それとも迷惑だったか?」
「いや……」
 ああ、なんで、こんな……。
 どうしてみんな……。
 俺はいらない存在ではなかったのか。
 必要とされない、悪い子のはずなのに……。
「嬉しいんだ……と思う」

 やっと見つけた、俺の居場所。
 必要とされる存在。
 嫌悪や軽蔑のない世界。
 望んではいけないとわかりつつも、欲していたもの。
 それを、俺は、やっと……。




589:名無しさん@ピンキー
10/01/29 08:03:41 V3S/exXO


(今思えば馬鹿なことをした)
 あそこで突っぱねていれば、ムダな時間と金を費やすことはなかったのに。
後悔を脚にのせて外を歩いていると、見慣れたカチューシャがあった。
「おお」
「ああ」
「買い出しか?」
「まあな」
 持っていた段ボール箱を少し揺らす。最近は客も増えてきたので、少し多めに仕入れている。
学校で作る分も買わなきゃならんしな。そっちの材料費は給料にも含まれている。
「部活はどうだ。サボらず練習しているのか?」
「も、もちろん!」
「目をそらして言うな」
「め、目指せ武道館!」
「…………そうか」
 武道館、か。そいつは何の皮肉だ。それがこいつの夢だというのか。俺にとっては夢の終着だというのに。
「裏切るなよ」
「……?」
 不思議がる田井中に、俺はぽつりと。
「今いる仲間に裏切られることはあっても、お前自身は絶対に裏切るなよ」
「いや、あいつらは裏切るとか、そういうのは……」
「わかったな」
「お、おう」
「ならいい」
 田井中の肩を軽く叩いて、俺はその場を後にする。さっさと店に戻らねば。どうも体の調子が悪い。ふだんより時間を消費している。
「あ、お帰りなさい」
「……ああ」
 開店前の店内にいた真鍋に返事をして、荷物を厨房に運ぶ。「『ただいま』って言うんですよ、そういう時は」「気をつける」悪いが慣れていないんだ。
 しかしこいつに掃除を任せると見違えたように綺麗になったな。飲食店である以上、それなりに衛生的にはしているが、ここまでしようとは思わない。
そんなことより料理の味の方が大事だからな。
「もう少しで済みますから」
「まだする気か。もう十分だぞ」
「いえ、気になりますよ。こことか、あそことか」
「さっぱりわからん」
 まあいい。時給制である以上こちらに支障はない。それとも特別に手当てをつけるべきなのだろうか。
親方からそういうことは教わっていない。これを機会にそっちの勉強をしておくべきだろう。ん、前が……。
「…………」
「どうかしました?」
「いや、なんでもない」
「でも」
「なんでもない……」
 くそっ、また眩暈か。ますますひどくなっていやがる。心配そうに近寄る真鍋から逃げるように俺は店の出入り口へ向かう。暖簾を出さなきゃならん。
「おやっさーん、久々にきてやったぞー―ってあれ」
「…………ちっ」
 店の戸をを開けて威勢よく現れたのは先日再会したばかりの大馬鹿野郎。よりによってこの状況でこいつがくるとはな。
あいつらから話を聞いてないのか? それともあいつらがわざと黙っていたか……。
「……失せろ」
「おやっさんは? 何でお前がいるんだ? それに真鍋も」
「いいからさっさと失せろ……!」
 迷惑なんだよ。俺から何もかも奪ったくせに、てめえは何も失っちゃいない。
お前はいったい何なんだ。何がしたいんだ。俺に何をさせたいんだ。
お前らは表面だけ取り繕って、平然と人を切り捨てやがる。それが人間のすることか。
「お前はいいとして、真鍋のことは一応把握しておくぞ。こうして会っちまったんだから、職業上な」
「…………くそったれ」
 視界がまるで撹拌されたように混然としていて、意識が維持できない。俺はその場に膝をつき、あいつと真鍋の声を最後にすべての感覚を手放した。


590:名無しさん@ピンキー
10/01/29 08:04:33 V3S/exXO

 これが罪というなら、何をすれば赦されるのだろう。
 そもそも、俺の罪とは何だ。俺が何をした。俺は何もしていないはずだ。
 それとも存在が罪科だというのか。ならば、俺は何のために生まれてきたんだ。

 誰か、教えてくれ。


『ついに来たな、武道館』
『ああ』
『何だ? もしかして緊張してんのか?』
『さあな。だが、悪くない感覚だ』
『そうかい。そいつはよかった』
『なあ』
『ん?』
『俺達……友達、なんだよな』
『今更だな。まあ、厳密にはもう違うかもな』
『…………』
『ああ、悪い。俺が言いたいのは、お前はもうそれ以上―親友になってるってことだ』
『フン、俺にとっては同じことだ』
『照れてんのか? 恥ずかしいのか?』
『茶化すな。素直に……嬉しい。いつまでも、こうでありたい』
『続くさ。俺達は仲間だからな』
『そうだな……』
 
 
 今思えば、あれが夢の終わりの始まりだった。灰かぶりにかかった魔法が解けるように、俺の夢もまた、ここで潰えた。
 違うところは、それが前触れなく突然だったことと、一人の恣意的な行動によるものということ。

 俺の人生はいつだって他人に歪められてきた。もしかしたら、この人生は俺のものではないのかもしれない。
 では、俺は何だ。俺の主体性質と存在理由はどこにある。


 俺の生きる意味は……。



≪オートセーブします≫



≪セーブが完了しました≫

ニア 【第四章へ】
   【やめる】
 

 

591:あとがき
10/01/29 08:08:10 V3S/exXO
ギタールートでほとんどのイベントや描写を踏襲したため、ほとんどオリジナルテイストです。
二期が待ち遠しいです。ネタ的な意味でも

592:名無しさん@ピンキー
10/01/29 19:41:00 UpJKecJR
au規制解除キター!
>>591
いつも楽しみに読ませてもらってます
原作3巻も発売された事ですし、そっちのネタを入れてみてはどうでしょうか?
それとけいおんのSSなのに、けいおんキャラの描写が薄く、オリキャラ達がメインになってしまっているのもちょっと残念に思います
あずにゃんが入学するのにも当分時間が掛かりそうですね…
続きを楽しみにお待ちしているので、これからも頑張って下さい!

593:名無しさん@ピンキー
10/01/29 20:21:56 WINyscwu
>>591
乙です!
ここからどう話が転ぶのか…

594:名無しさん@ピンキー
10/01/29 21:23:04 1rQem7aR
>>591
ああ、ほんとにおもしろい!
これからも期待してます。

595:名無しさん@ピンキー
10/01/29 23:12:41 M45v/frY
どこがけいおん?

無理にこじつけてここに投下してるだけの
’俺’物語になってないか?

誰も指摘する奴がいないだけで。

596:名無しさん@ピンキー
10/01/30 01:35:52 tUi2bryW
>>591
乙です
続きが楽しみです

597:名無しさん@ピンキー
10/01/30 02:31:08 7LAOMscA
>>591
乙です。これからどうなるのか楽しみです。

ギタールートに比べれば確かにオリキャラのほうがメインになってるように感じますね。
個人的には面白いからそれでもかまわないのですが。
原作やアニメも1年次のときのはこれといったネタがないですし。
自分も梓が出てくる話を見てみたいですね。

598:名無しさん@ピンキー
10/02/01 19:01:17 ALasA4ly
じみ~に盛り上がってる……わけないか

599:名無しさん@ピンキー
10/02/02 12:47:47 3/7+fBWz
二期が始まれば瞬間的に盛り上がるんじゃないですかね。
で、終わったらまた過疎る。

600:名無しさん@ピンキー
10/02/03 08:13:28 +YrRFHrF
なんだかんだで600いったな
今現在は職人さん待ちということか

601:名無しさん@ピンキー
10/02/04 10:36:15 tGbULiv+
普段はやかましいりっちゃんが実は一番純情だったりするとたまらん

602:名無しさん@ピンキー
10/02/06 20:12:00 jyXvkNDn
>>601
その想いを文に書き起こすんだ!

603:名無しさん@ピンキー
10/02/15 00:19:45 KGwiN996
急に人がいなくなっただと…!?

604:名無しさん@ピンキー
10/02/16 04:30:55 8zjMG3q2
肉便器マン

605:名無しさん@ピンキー
10/02/24 11:31:28 wUgaBv83
アシュラマン

606:名無しさん@ピンキー
10/03/01 19:40:02 PC30MYRl
保守

607:名無しさん@ピンキー
10/03/06 00:42:40 teyUgBhx
4月から2期だってのに相変わらずここは過疎ってるな


608:名無しさん@ピンキー
10/03/07 21:02:56 CiZe/3L5
そこを見たのは、ただの、本当にただの偶然だった。
何も無い田舎町の、何も無いただの海辺。
八月の日差しが容赦なく照りつけ、目に痛いほどに白く光る砂浜のその向こうから、きゃらきゃらと、甲高い笑い声が聞こえる。
水着姿の少女たち。
このあたりでは、めったに見ることも無い、少女たちの姿。
見つけたのは、ただの偶然だった。
泊まる家を見つけたのも、多分ただの偶然だった。

なら、今、開け放しの窓から忍び込んでいるのも、偶然なのだろうか。

609:名無しさん@ピンキー
10/03/07 21:03:35 CiZe/3L5
つん、と、甘酸っぱいにおいがする。
小さな子がよくかく、汗のにおいと、そこに微妙に混じる、生々しい女の匂い。
月明かりに青白く照らされる廊下。きしきしと軽い音を立てる板を踏みしめて、匂いの漂ってくる方へと歩く。
次第に濃くなる匂い。
あわせて聞こえてくる、ささやくような、寝息。
頬が熱くなってくるのを感じる。
引き戸をそっと開く。
ひんやりとした、い草の感触。
薄暗い部屋。
聞こえてくる、何人もの寝息。
甘い匂い。
香水の花臭いそれではない、どこか、日なたの草原のような。
手近な布団でまるまって眠っている少女の顔を、そっと覗き込む。
さらさらと流れるような金髪と、本当に子供のような、無邪気な、幸せそうな微笑を浮かべた少女。だけど、半そでからのぞく二の腕や、掛け布のすそからのぞくふくらはぎは、明らかに女のそれだった。
安らかな寝息を立てる唇に、そっと顔を近づける。
ふと、気づく。
起こしたら、多分、他の子たちも起きてしまう。
それは、何だかあまりにももったいない気がした。

610:名無しさん@ピンキー
10/03/07 21:04:20 CiZe/3L5
毎日、神社でみんなとちーちゃんを犯していたようにはいかない。
ちーちゃんはあんなだから、犯されている間もきゃらきゃらと笑っていたけれど、多分、この子は違うんだろう。でも、この子から立ち上ってくる匂いは、川にぽっかり浮かんで死んでしまったちーちゃんと、変わりなかった。
あの日から、みんなと何人も神社に連れ込んだけれど、ちーちゃんのようにさせてくれる子はいなかった。ばれないように、みんなで帽子をかぶっていたけれど、もう、今ではみんな村中に知れ渡っていて、ボクたちの相手をしてくれる女の人はいなくなってしまっていた。
みんな、ちーちゃんをなつかしがっていた。ボクもそうだった。
顔立ちも、格好も違うけれど、この子はちーちゃんみたいになってくれないだろうか。
そっと、唇から顔を離す。
みんなに知らせよう。
そして、相談しよう。
この子を、ちーちゃんにするために。

611:名無しさん@ピンキー
10/03/07 21:06:40 CiZe/3L5
お手柄だな。
タイショウの手がボクの頭をぐりぐりと乱暴になでた。
神社の本殿の裏、いつもちーちゃんを寝かせていた場所に、今、その女の子がいる。
半そでのシャツに、ひざ上までのパンツをつけた少女は、時おり板間の硬さに慣れないようにみじろぎをしていた。
その度に布の下の身体がふわふわと形を変えて、隙間から新たに甘酸っぱいにおいが立ち上っていた。
デッチはもう我慢ならないように自分のズボンの下に両手を突っ込んでごそごそやっていた。ちーちゃんの身体に一番がっついていたのもデッチだった。
そんなデッチに見せ付けるように、タイショウは馴れた手つきで少女の髪をかきあげ、むき出しの首すじや頬に、丁寧に丁寧に舌を這わせ始めた。
小さく声をあげて、少女が身をよじる。起きるか起きないかのぎりぎりのところを、タイショウの舌が楽しむようにつついてまわる。
鎖骨、耳の後ろ、耳たぶをなめ回し、シャツの胸元に手をかけてゆっくりと引きおろす。まばゆいばかりに白い胸元の肌があらわになる。その隆起のふもとに口をつける。
すげぇ、ちーちゃんよりでっけぇ。
デッチがかすれた声をあげる。思わず手を伸ばそうとするのを、タイショウのにらみがとどめた。

612:名無しさん@ピンキー
10/03/07 21:09:23 CiZe/3L5
一番はおれだ。おめぇは見張りでもしてろ。
少女を起こさないよう、大きくは無い声だったが、デッチはそれ以上少女に手を出そうとはしなかった。その代わりに、またズボンの下に両手を突っ込む。
ちきしょう、おれもやりてぇ。
心底悔しそうなデッチの前で、とうとう少女の胸がはだけられた。
真っ白な、まりのような豊かで柔らかそうな胸に、ほう、とはだけた当人のタイショウも息をついた。
先端の、薄桃色の尖りがゆらゆらと揺れるそこに、引き寄せられるように口をつける。
ねっとりと尖りをなめ回す。んぅ、と眉を寄せて、少女が身をちぢ込ませる。その腕を押さえて大の字に地面におさえつけ、なおも尖りをべとべとになるまでなめる。
おい。
予定よりも早く呼ばれ、用意していたタオルを手渡す。タイショウはもどかしくそれを少女の口に押さえつけると、ズボンのジッパーと少女の下着とを引きおろした。
髪の色と同じ、薄い毛が申し訳程度に生えたそこを、もう片方の手で割り開く。
月明かりに照らされて、なまめかしく光るそこの様と、むわ、と立ち上る酸い匂いに、ごくり、と全員がつばを飲み込んだ。
あ、とデッチが情けない声をあげ、びくびくと腰を震わせた。
ちきしょう、ちきしょう、おいタイショウ、次はおれだぞ、絶対おれだぞ。
うるせぇ、黙ってろ。
デッチやボクに、いつもは女に馴れた風を装うタイショウも、よだれを垂らしながらがっつくように少女の腰を引き起こした。
どこまですれば起きるかを楽しむのがタイショウ流だったはずだが、もうそんな余裕も無く、少女のそこに自分のモノをあてがう。

613:名無しさん@ピンキー
10/03/07 21:12:05 CiZe/3L5
ぁ、と少女が小さく声をあげる。
まだ夢の中にいても、自分がこれからされる事を察したのだろうか、小さな手のひらがきゅ、と握りしめられた。
うお。
腰を沈めた途端、タイショウは弛緩したように動かなくなった。
おいタイショウ、終わったか? なぁタイショウ。
うるせぇ、まだだ。
デッチの催促にいらだたしげに言い捨て、再び腰を振り始める。
結合部から、血と泡混じりの白い液体が垂れ、少女の丸い尻を伝って地面に染みを作った。
すげぇ、こいつすげぇ。
誰に言うでもなくぶつぶつとつぶやきながら、タイショウは無我夢中で腰を振る。目の前でふわふわと揺れる胸の尖りに吸い付いて音を立ててしゃぶり、乱暴にタオルを引きはがして、ぁ、ぁ、と小さな声をあげる、かすかに開いた唇の間に無理やりに舌をねじこんだ。
んっ、と身を強張らせ、少女が頭を揺らす。

614:名無しさん@ピンキー
10/03/07 21:16:22 CiZe/3L5
目が開く。
ぼやけたような目線が、しばし周囲を泳ぐ。
そして、はっとなったように大きく見開かれた。
んんんんっ、くぐもった声をあげながら四肢をばたつかせる。
タイショウが必死で押さえようとするが、身体の大きさが違いすぎた。
あっけなく上から振り落とされそうになる。
おい、手伝え。
タイショウの声にデッチが奇声をあげて少女に飛び掛り、胸の前に馬乗りになって両腕を足でおさえつけ、タオルを丸めて少女の口の中に手早く突っ込む。
息苦しそうに頭を振る少女の、その白い首筋にべちゃべちゃと吸い付き、両の手にあまるほどの胸を揉みあげる。
爪が食い込むたびに少女が眉を寄せて身を震わせる。爪あとにそって血がにじむそこをべろりと舐め上げ、デッチは低く下卑た笑い声をあげた。
少女の顔におびえが走る。何とかその苦痛から逃れようと再び暴れだす、が、何とか体勢を確保したタイショウが再び腰を突きこむと、びくんと金縛りにあったように身体を硬直させた。
目を見開いたままで、真っ青になった頬に、つぅ、と涙が垂れる。

615:名無しさん@ピンキー
10/03/07 21:17:51 CiZe/3L5
ようやく悟ったのだろう。
自分が目の前の子供たちに強姦されているのだということを。
粘ついた音を立てて、タイショウのモノが少女の中に出入りする。
少女は、タイショウとデッチに身体を蹂躙されるがまま、放心したように社の天井を見上げていた。
その首が、ゆっくりとこちらを向いた。
目が、合った。
一瞬瞳に浮かぶおびえと、そして涙とともにあふれ出す哀願。
まだタオルを口に突っ込まれたまま、くぐもった声で、タイショウとデッチの責めに頬をひきつらせながら、少女は必死でボクに助けを求めた。
真っ白な肌と、かすかに匂う生臭い血の匂いと、目の前の涙。
ボクはこれ以上ないぐらい昂ぶってくるのを感じていた。
そっと、手近にあった石ころをつかむ。
やっぱり、この子はちーちゃんにしなくちゃいけない。
ボクの、ボクだけのちーちゃんに。

616:名無しさん@ピンキー
10/03/07 21:18:17 CiZe/3L5
うおおお。
タイショウが低くうなり声をあげて腰を激しく突きこむ。
新たに血が垂れて床を汚していく。
すげぇ、こいつ、すげぇ、やべえ。死んじまいそう。
ぶるぶる、と腰が震え始めるタイショウの、その脳天に、ボクは力いっぱい石ころの角を叩き込んだ。
ぐわ、と獣じみた声をあげてタイショウの身体が跳ねた。
同時に少女の中から抜けたモノから白い液体がほとばしり、白い太ももを新たに汚した。
てめ、何を。頭から血を滴らせながらこちらを振り向こうとするタイショウの股間を力いっぱい靴先で蹴り上げる。
声も無く崩れ落ちるタイショウには目もくれず、ボクは少女の胸に吸い付いたまま凍りついているデッチの頭に向かって石を振り上げた。


617:名無しさん@ピンキー
10/03/07 21:18:46 CiZe/3L5
少女のそこは温かかった。
タイショウが放った精が淀んでいたが、それも気にならなかった。
二人を片付けたボクを見上げた少女の頬に一瞬浮かんだ安堵は、自分のひざに手をかける感触で消し飛んだ。
丁寧に、丁寧に、ボクは少女の中を進んだ。
デッチが散々なぶった胸の傷を癒すように舐め、そして、まだそこに突っ込まれたままのタオルをぐい、と引き抜いた。
もがいているときに切れたのか、少女の口の端から垂れる血を、ゆっくりと舐めとる。
激しく咳き込みながら、少女は涙をぼろぼろと流す。
いや、もう、いや、帰して、お願い、お願いだから。
何度も何度も少女は繰り返した。
だけど、それは聞けない。
この子にはちーちゃんになってもらわなければ。

618:名無しさん@ピンキー
10/03/07 21:19:14 CiZe/3L5
そう、だから、これも必要なんだ。
タイショウとデッチの血でじっとりと濡れた石を、再びつかむ。
五年前、ボクをいつもいじめていた千鶴子をちーちゃんにした、魔法の石。
じわり、とその時の感覚がよみがえる。
下腹部が熱くなる。ぁ、少女が眉根を寄せる。
突きこみ、突きこみ、突きこむ。
いやいやをするように少女が首を振る。
熱に浮かされたように桃色に色づく少女の身体。
かたくしこってきた胸の尖りに口付け、乳をせがむ赤ん坊のように丁寧に吸い上げる。
涙が再び浮かんだ少女の頬を、優しく撫でる。
突きこむ速度が増す。少女の口から、小さく、しかし高い声が漏れ出す。
じゅわ、と音を立てて中の水っぽさが増す。
お風呂の中でしてるみたいだ、とぼんやりと思う。
そうだ、今度は実際にしてみよう。
もう、順番を待つ必要も、じりじり焦れている必要も無い、時間はたっぷりあるんだから。
ひときわ深く腰を突きこむ。
びく、びく、と震えているのは、ボクのなのか、少女のなのか。
温かい水に全身が包み込まれるような感覚を浴びながら、ボクはゆっくりと石を振り上げた。

end

619:名無しさん@ピンキー
10/03/07 21:38:35 CiZe/3L5
end

620:名無しさん@ピンキー
10/03/18 18:35:15 hElluc5A
ドラムルートの続きが気になる

621:名無しさん@ピンキー
10/03/23 05:39:46 iTgCgHV/
>620
同じく

622:名無しさん@ピンキー
10/04/01 01:50:41 jhRi7YJp
保守

623:名無しさん@ピンキー
10/04/08 05:38:59 SUWP0T8Q
人いないかな?
二期記念にあずにゃんでこっそり投下…

624:梓のせんせぇ
10/04/08 05:49:52 SUWP0T8Q
「先生…」

梓は先生に後ろから抱かれ、赤面し俯いた。

「え、エッチな事はだめですよっ」
「わかってる」

そう答えて先生は梓の髪を何度もすいて頭を撫でた。
少しずつ緊張がほぐれ、梓はくてっと先生に力なくもたれた。

「ふーー…っ」
「ァ…あっ……んっ」

先生に優しく耳に息を吹きかけられ、ぞくぞくした恍惚が背中に走る。

「梓、好きだよ」
「せん…っせぇ」

耳もとで囁く声がたまらなく心地好い。

「梓…梓…梓…」
「はっ…はっ…はぁっ」

かぷっ

「ひゃあっ!?」

突然、耳たぶを甘噛みされ梓は仰け反る。

き、きもち…いー…

ゆらゆらとぬるま湯に浸かってるような恍惚がしっとりと体を包んでいく。

かぷっ…かぷっ…かぷっ…

「はっ…はっ…はっ……ふにゃぁ…」

下腹部がむずむずして梓は自分から先生の膝で股を擦り始めた。

くいっ……くいっ…くいっ…

「あ…あっ…あぅ…」

ヨダレがタラリとこぼれ、それを拭う余裕はなく、ぼんやりと先生を見つめる。
「せんせぇ…」
「梓…」

ちゅ……

額に軽いキスが触れた。

625:梓のせんせぇ
10/04/08 05:54:16 SUWP0T8Q
「ん…」

きもちいーよぉ……

キス…キス…キス…

ゆっくりと先生に顔が引き寄せられる。

ちゅっ…ちゅっ…

「ぁ…」

両頬に軽いキスが続き、先生が穏やかに微笑みながら梓を見た。

「ンッ…」

信じ…られない…

梓は自分から先生の唇を奪った。その事に自身が一番驚いたが、それも一瞬。甘いキスの余韻は梓から驚きを奪っていった…

「ん…ん…んちゅ…ぁ…んんちゅ…ちゅっ…ちゅううっ…」

徐々にキスは深く長くなり、梓が擦りつける腰の速度も上がっていく。

ぐぃっ…グチュッ…ぐぃっ…グチュッ…ぐぃっぐぃ…グチュゥッ…

「ぁ…んあっ…んちゅ…ちゅううっ…ちゅううっ……ンはっ!―…すぅぅぅ…はぁぁっ」

呼吸を忘れキスを貪った梓は離れると同時に息を深く吸ってはいた。

「気持ち良かった?」
「は…はぃ…」

エッチなのはいけないのに…

梓はそう思いつつ、言葉にならなかった。

今まで男は怖く乱暴で一方的なイメージがあった。しかし先生のエッチは優しく甘く温かかった。

「せんせ…せんせ…」

スリスリ…スリスリ…


梓は猫の様に夢心地で先生の頬に頬擦りを繰り返した。

「好きなだけこうしてていいよ。僕はどこにも行かないから」
「…ゃぁ…と、とけちゃいましゅ…」

梓の意識はゆっくりと深く沈んでいった…


626:名無しさん@ピンキー
10/04/08 06:00:48 SUWP0T8Q
以上です。

梓はこれ位でイチャイチャするのが良いですね、個人的に(笑)

627:梓のせんせぇ・エピローグ
10/04/08 06:10:22 SUWP0T8Q
すいません、投下忘れがありました。


*

「っ!?」
「おはよ」

気が付いたら夕方で、梓は先生の背中におんぶをされていた。

「ご、ごめんなさいっ!わ、わた、私、寝ちゃったみたいで。すぐ降りますからっ」
「このままでいいよ」
「で…でも」
「正直に言うと…もう少しおんぶしたいんだ。…迷惑?」
「お…重くないですか?」
「軽いよ、羽が生えたみたいだ」

キュゥッッ…

「せ、先生は…イジワルですっ」
「え?何か…まずいこと…いィっ」

かぷっ

梓は先生の首筋に少し強く噛みついた。

ちゅっ…ちゅううっ…ペロペロ…ペロペロ…

「えへ、跡つけちゃいました」
「…あっ…梓の方がイジワルだよ」

先生が困った様に少しはにかみ、梓は回した手に力を込めて笑った。

『あずにゃんですから』


おしまい

628:名無しさん@ピンキー
10/04/08 21:22:29 ELpVeEp5
乙です!
ちゃんといるからまた来てください!

629:名無しさん@ピンキー
10/04/09 06:15:17 hSeTES2D
GJすぎる

630:名無しさん@ピンキー
10/04/10 16:43:47 Fgn9erh8
GJです!

631:名無しさん@ピンキー
10/04/10 22:08:54 aORjZnII
GJ!

二期も始まったし
誰か曽我部さん(前生徒会長)+和×澪で
二穴物を…

632:名無しさん@ピンキー
10/04/12 01:45:03 avemTMIN
ポニーテールで私服の澪と服きたまま騎乗位でやりたい

633:名無しさん@ピンキー
10/04/13 10:28:19 NFcQ8ajc
澪の脱ぎたて縞パンコキキボン

634:ぎぶそん(唯×ギー太)
10/04/13 15:39:54 SZG+XPTI
蜃気楼みたいな白い部屋で、唯は目が覚めた。

「ゆーい」
「あっ、ギー太~」

少し年上の男の子が遠くから手を振り、唯はパタパタと駆け出して抱きついた。

「ギー太~ギー太~」
「どうした?」

すりすりと何度も頬ずりして甘える唯にギー太は優しく頭を撫でた。

「だって久しぶりなんだもん」
「唯がいつも夢の中でも寝てるだけだろ。根っからのニート体質なんだから」
「え~ひどーい」

ぷぅっといじける唯をなだめる様にギー太は笑って抱きしめた。

「でもそこが唯の可愛いとこだ」
「え?えへへ」

一瞬にしてふにゃふにゃと破顔して唯は笑う。

「寝てる唯を膝枕するのも楽しいし」
「ギー太ぁ………むちゅー…」

唇を突きだして唯が催促する。

本当にこの娘は「人間」の定義が広すぎる。少しはオカシイとか怖いとか思わないのか?

「ギー太~…」
「愚問だったな」

ギー太は苦笑し、甘える唯の唇を優しく塞いだ。

ちゅ…ちゅ…ちゅぱ…

「えへへ、ギー太~…大好き~」
「ありがとな、唯。いつも優しくしてくれて」

ギー太は、はにかみながら唯の頭をそっと撫でた。唯の胸がきゅぅっと熱く苦しくなった。

635:ぎぶそん(唯×ギー太)
10/04/13 15:43:02 SZG+XPTI
「ギー太…ギー太…」
「ん……は…あ…」

ペロペロとギー太の首筋に唯が舌を這わせ、ギー太が僅かに音を漏らした。

「ちゅぱ……えへへ、ギー太、良い音…ちゅー…」
「ゆ…唯……んっ」

コリコリとギー太の乳首を指で責めながら唯は首筋に何度もキスをした。

ドサッ…

そのままベッドにもたれても唯の甘える様な愛撫は止まらなかった。

「ゆ…ゆい……ん、はぁ…はぁ…も、いいから…」
「まだだめ~。今日は私がギー太を気持ちよくするの」

ペロペロ…ペロペロ…ペロペロ…

「んっ…んく…あ…クはっ」
「ちゅ…ちゅ…ちゅぅぅ…ちゅ…」

ギー太の腕の中で唯は丹念に首筋や乳首を舐め続けていく。

「んアっ」

突然、電流が走ったみたいに唯がのけ反る。ギー太の指先が支える様に唯のお尻を掴んで動いた。

「こ、こら~、ギー太、大人しく…しなさい…あぅっ」
「ゆ、唯だって…」

もぞもぞとじゃれ合っている内に69の体勢になった唯とギー太。

くちゅくちゅ…くちゅくちゅ…

「んっ…あっ、あ、あ、あ~っ、は、はむっ」
「くぁっ…は、はっ、は、は…ちゅぅっ」

二人はお互いを必死で貪り急激に高まっていった。

636:ぎぶそん(唯×ギー太)
10/04/13 15:44:25 SZG+XPTI
「ギー太…ギー太…ぁんっ…も…い、いっちゃえ~」
「ゆ、唯っ…唯っ……ぷぁっ」

グチュグチュグチュグチュグチュ…

「れるれるれる……んっ、ん、んぐっ……ぁぅっ?」
「ゆ、ゆいっ」

プシップシッ…ドプュッ…

ほとんど同時に唯とギー太はのけ反り果てた。

「はー…はー…っ…ゆ…唯…」
「えへへ…綺麗にするね…ちゅぅっ」

ペロ…ペロ…ペロ…ペロ…
ふらふらとぼんやりしながら唯はギー太のペニスを掃除していく。

すり…すり…すり…

ギー太もまた夢見心地で唯の太ももを優しく撫でた。目の前に広がる唯の秘処からはとめどなく愛液が溢れ、唯の頭の動きに合わせてピクピクと動いた。

「おぉぅっ。ギー太、おっきくなったよ~」
「ゆ、唯……い、入れて…いいかっ」
「んっ…ギー太…今日は動いちゃ…だめ」

ごそごそと唯が移動して、ギー太の上に跨がった。

「い、入れるね…」
「ん…」

くちゅ…くちゅ……ぬ…ヌルッ…

「あっ…~~~っ…は、はぅっ」
「ゆ、唯…気持ち…いー」
「ぎ、ギー太…えへへ…またイッちゃった…」
「ゆい…」

舌を出して笑う唯にギー太は思わず腰を打ち付けた。

637:ぎぶそん(唯×ギー太)
10/04/13 15:45:32 SZG+XPTI
「きゃうんっ…ぎ、ギー太っ…急に動いちゃ…あっ…はぅっ」
「唯が…可愛いからっ」
「やぁっ…あっ…私がっ…あっ…動くのっ……ああぅっ゛」
「唯っ唯っ…ゆいっ」
「ギー太っ…らめっ…私またイッちゃ……あんっ」

ギシギシギシギシギシギシギシギシ…

ベッドが軋み、矯声を上げ、お互いの足を絡め合いながら唯の意識は薄れていく。

まだいや。ギー太と一緒…一緒にいる。

「ギー太…ギー太…」

ふわふわと右手を空中にさ迷わせながら、唯はギー太を探した。

「唯」

ギュッと手を握りしめて、ギー太は唯の正面で笑った。

ギー太…私、今日から三年生になるんだよ。一番のお姉さんだよ。

……ギー太……


「あいたっ」

唯はベッドから落下して我に返った。

「なんか…いい夢見た気がする…何だっけ?ギー太」

傍らに転がるギー太に話しかけ、時計が目に入り凍りついた。

「あれ、お姉ちゃん、はや…」
「いってきまーふっ」

食パンをくわえて唯が駆け出す。


「行こう、ギー太!今日から三年生だよ!」

『ばか』


ギー太が呆れた様に微かに鳴った。


おしまい

638:名無しさん@ピンキー
10/04/13 15:51:30 SZG+XPTI
以上です。

あんまりエロくなくてスミマセン…

また何か受信したら投下します。

639:名無しさん@ピンキー
10/04/13 17:39:36 BXgJgytc
GJ!

640:名無しさん@ピンキー
10/04/13 21:31:23 ifB5mEea
やるじゃない

641:名無しさん@ピンキー
10/04/16 09:27:33 3j4wZJXC
抜いた

642:あずおん!
10/04/19 11:06:23 fF9oxGso
「はぁあああぅっ」

静かな部室に梓の絶叫が響く。
いつものキスを終え、先生の腕の中で梓は動かなくなっていた。

「梓?」
「…ふあ……あ…先生ぇ…えへ…えへへ…えぃっ」

目が覚めて思わず先生に抱きついた。

何だかフワフワして物凄く幸せな気持ちだ。

「梓…大丈夫?」
「せんせ…ん…んにゃん…にゃむ…ペロ…ペロ…ペロペロ…」

梓は甘える様に先生の顔を舐めた。呆気に取られていた先生が優しく頭を撫でて応える。

「よちよち」
「えへ…えへへ…あ…先生…何かして欲しいこと…ありますか?」
「…別にないよ。梓には充分貰ってるから」
「えへへ…先生、無理してますね?我慢しちゃだめです」

目を逸らした先生の股間を梓は指で「つうー」っと撫でた。

「あっ…あず」
「おっきくしてますにゃ」
「だ…だめだよ…これ以上は…と…止まらなくなる…からっ」
「たまには……自分の事も考えてください、せんせ」

上目遣いの梓に、先生はきつく唇を噛みしめた。
無邪気な瞳に宿る母性はアンバランスで淫靡だった。


「梓…僕は梓の事が本当に好きだよ。だから―…」
「ふにゃあ…」

好きだよ、好きだよ、好きだよ―…

先生の言葉が何度も響き、梓の全身に熱が走った。


643:あずおん!
10/04/19 11:15:02 fF9oxGso
「梓のこと好きだから、これ以上―…」
「んちゅっ…ちゅっ、ちゅっ、ちゅっちゅっちゅっ」

梓は先生の頭を掴み何度もついばむ様にキスをした。髪が乱れ赤面して俯く先生が愛しい。

「梓…」
「せんせ…」
「ぼ…僕の指…舐めて…」
「はいっ」

目を閉じて控えめに差し出した先生の右手、その指先を梓は口に含んだ。

くちゅ…くちゅ…くちゅ

「なんだか…えっちでしゅね…ペロ…ペロ…ペロペロ…ペロペロ…」

先生の指を舐める内に梓の中で更にもどかしさと熱が膨らんでいく。

「…ん…はぁ…はぁ…やっぱり…先生はいじわるです」
「ご…ごめん」
「許してあげません」

梓はカチャカチャと先生のベルトを緩めた。

「あず―…」
「ひゃあっ!?」

ズボンが下がり、隆起したボクサーパンツが顕になって梓は固まった。

こ…こ…こんなに…おっきいの?…

「はは…怖いでしょ?だからもうこのへ…っ!?」
「はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…」

しゅこ…しゅこ…しゅこ…しゅこ…

トロンとした梓が小さな両手で先生の膨張したペニスを控えめに擦っていく。


644:あずおん!
10/04/19 11:25:20 fF9oxGso
「あっ…は…はぁっ…あずさっ…もうっ…」
「はぁっ…はぁっ…はぁっ…はぁっ…はむっ……はむっ…はむっ…あぅっ」

必死でくわえようとするが小さな口に収まりきらず、梓は何度もペニスを逃がした。

…小さい体をこんなに恨んだの…初めてだ…

「梓」
「ふぁ…」

突然、頭上からの声。温かい掌が頭を撫でる。

「今も充分気持ちいーよ。大丈夫。ありがと」
「せ…先生…」
「…あ…あと…ここら辺…ペロペロしてくれると…嬉しい」
「は…はいっ……んっ…んっ…んちゅ……ちゅっ…れるれるれる…こ、こうれふか?…」
「あ…そう…そんな感じで…先端も…あっ…きもち…いぃ…」

先生の体が何度もビクンと小刻みに跳ねた。梓の頭が前後に激しく揺れていく。

愛しくて愛しくてたまらない。もっと…もっと…もっと…!

「んっ…んっ…んっ…んちゅっ…じゅるるるる…」
「あっ…梓っ!ヤバい!でるっでるっ…~~~っ」
「じゅぼっじゅぼっじゅぼっじゅぼっじゅぼっ…んちゅっ…れるれるれるれるれるれるれる…ペロペロペロペロペロペロ…」
「ウッ」
「んぶぶっ…んぶっ…ん~~~っ…んン~~~~っ…ぷあっ…はぁっはぁっはぁっはぁっ…」

顔と髪に跳ねた精液を指ですくい、梓は口に含んだ。味よりも匂いがキツかったけれど、体がそれを求めてる気がした。


645:あずおん!
10/04/19 11:37:17 fF9oxGso
「あは…いっぱい…でましたね……先生のえっち」
「…はい……気持ち…良かったです………すごく」

悪戯っぽく笑う梓に先生が小さくはにかんだ。

キュゥッ…

まただ。
先生は時々キツく胸を締め付けてくる。

「……んにゃぁ…」

思わず跨がって頬擦りを繰り返した。クチュクチュとペニスと梓のお股が擦れる。

きもちいー……きもち…いー…きもち…いー……キモチイイっ…

「んっんっんっんっんっんっんっんっんっんっ」

向かい合わせで貪る様に舌を絡めてキスをし、腰を擦り付けた。

ぐちゅっぐちゅっぐちゅっぐちゅっぐちゅっぐちゅっぐちゅっ…

「梓っ梓っ梓っ梓っ」
「せんせっせんせっせんせっせんせっ」

首に手を回し、駅弁の様な体勢で二人はスマタに没頭した。

「梓っ…きもちいっ…気持ちイイっ」
「ひゃあんっ!せんせっ…あぅっ、おまめ…おまめ…ぐりぐりやああっ……きもちいっ…きもちいっ……いくっ…いくっいくっいくっ……あひぃぃぃぃいいい゛………ア゛おォッ」

梓はビクンビクンと痙攣しながら何度も達し、下腹部には先生が大量に精を吐き出した。


静かな部室にお互いの吐息だけが響き渡る。

自分でも自分が信じられない。こんな場所でこんな事までするなんて。

「あずさ…」
「せんせ…」

夢見心地で目を合わせ、微笑みながら絡めた指に力を込めた。

声が重なる。


『大好き』


おしまい


646:名無しさん@ピンキー
10/04/19 11:37:40 fF9oxGso
以上です

647:名無しさん@ピンキー
10/04/19 23:34:36 R0hD5vKW
聡ィィィィィィィィィィィィ

648:名無しさん@ピンキー
10/04/20 23:45:48 qJ/dyg47
律乙。

649:名無しさん@ピンキー
10/04/21 08:02:37 Kjl7mBUw
かなり気が早いが
立花姫子、高橋風子で一発、

誰か書いて…W

650:名無しさん@ピンキー
10/04/25 06:46:01 TmYFUIo9
>>649
巣に帰れニコ厨

651:名無しさん@ピンキー
10/04/30 22:06:02 mbiQrW7X
聡きゅん可愛いよ

VIP規制なかったらさとういが書けるのに

652:名無しさん@ピンキー
10/05/01 01:56:44 V5koNk85
けいおんにレイプされるMステを誰か書いてください><

653:名無しさん@ピンキー
10/05/01 13:26:24 up+HeHlX
しゃらんらしゃらんら~

654:名無しさん@ピンキー
10/05/01 21:14:05 V5koNk85
誰かけいおんにレイプされるMステを書いてください><

655:名無しさん@ピンキー
10/05/02 09:18:50 P1WeK78R
しゃらんらしゃらんら~

656:名無しさん@ピンキー
10/05/02 21:35:37 8UkX9Ob2
もう深夜2時。
私、秋山澪は自分のベッドの上にいるわけだけど、どうにも眠れない。
その理由はまぁ、なんとく自覚している。
下半身がムズムズする。ムラムラするのだ。
いままでも、何度か同じ事がありそのたび自慰をしてきたわけだ。
しかし今夜のは桁ちがいにムラムラ感だ。
これを鎮めるにはやはりあれしかない。
自慰。つまりオナニーだ。
そのためにとりあえず服を脱ぐ。
私はオナニーをする際、服を脱ぎ、パンツだけの格好になる。
その方が興奮するからだ。
その格好になり、ゆっくり右手で左乳首をつねる。
「くぅ..ふぅ...」
さらに強く
「ひゃ..ああっ...んんぅ」
3分ほどそうしていただろうか...
あそこが熱くなり濡れているのに気付く。
いよいよ本番だ。
私は意気込んでパンツを脱ぐ。
そこには毛一本生えていないツルツルの女性器。
これが私の一番の悩みなのだ。
水泳の授業などでみんな生えているか確認したがみんな生えていた。
唯なんかもうフッサフサだっだし律もはえてた。
「んっ...はぁん」
そんなことを思いながら割れ目にそってさする。


657:名無しさん@ピンキー
10/05/02 21:54:39 8UkX9Ob2
そして今度は円を描くようにさする。
「ひゃあっ...くはぁぁぁ...あんっ」
今夜は家にだれもいない。私一人だけだから好きなだけ声をだせる。
そう思うと余計に興奮が高まる。喘ぎ声も大きくなる。
「ああん...くぅ...ああっ...くああああああああっ」
指を秘所突っ込んでは出して突っ込んでは出してを繰り返す。
ポタポタと自分のいやらしい汁が布団に飛び散る。
指を突っ込んでは出して突っ込んでは出して
指を突っ込んでは出して突っ込んでは出して
指を突っ込んでは出して突っ込んでは出して
「くぅ...ああっ...ダメッ..いや..ああんっ!!」
気持ちいい。今ではこのオナニーが軽音部の活動に次いで、
私の楽しみとなっている。


658:名無しさん@ピンキー
10/05/02 22:51:37 P1WeK78R
できたー

659:名無しさん@ピンキー
10/05/02 23:40:39 +wYmiJ4Z
TMAの唯や澪みたいに
学校の先生に犯されるメンバーを想像してみる

660:名無しさん@ピンキー
10/05/04 00:24:06 pGowDxDl


661:名無しさん@ピンキー
10/05/06 06:02:35 Ok9io5wO
憂と梓と純と俺の4人でペロペロしたい

662:名無しさん@ピンキー
10/05/10 23:59:46 3vTgBill
レイプ系のエロパロ投下してもOK?

663:名無しさん@ピンキー
10/05/11 02:30:13 7pahyXex
>>662
読んだ後なら返事可能w

664:名無しさん@ピンキー
10/05/11 06:14:27 FsOjmLu6
ぜひ

665:名無しさん@ピンキー
10/05/11 07:22:09 tCmIomlP
そもそも百合以外成立しづらい原作だよなあ。

666:名無しさん@ピンキー
10/05/13 13:56:50 lxEFrwF1
>>665
まあなあ、ただでさえ萌え系な上、女子高もの(はっきりしてるのはアニメ
のみ。原作では匂わせてあるだけで、女子校か共学かをはっきり描写している
ネタは無いが。)だもんな。

667:青太郎
10/05/15 04:16:05 jASEa/JC
みんなおひさしぶり。

668:名無しさん@ピンキー
10/05/15 04:17:34 jASEa/JC
 耳をつんざく轟音の中に俺はいた。手足を忙しなく動かし、その喧騒に加わる。
音のひとつひとつが手に取るようにわかる。それがどこへ向かい、どう響くかも。
その果てを見届けることなく、新しい音が生まれては消えていく。
 やがてそうした連鎖が結集され、舞台は最高潮となる。
およそ負の情などなく、あるのは充実感と多幸感。
快楽が頭脳を埋め尽くし、何も考えられない。それさえ億劫だ。
 そして疲労も時間の感覚も忘れたころ、ようやく俺達は動きを止める。
あれだけ音を吐きだしたのに、あっという間にそれは消えていく。
それにかわるように、今度は観客が絶叫する。
「やったな」
 今まで背を向けていた男が振りかえる。その表情は達成感に満ち満ちていた。
「ああ。次もうまくいくさ」
 俺の言葉に男は笑う。その笑みは、どこか悲しそうだった。


 第四章


「何だって……?」
 武道館での演奏を終え、専用の控室に戻った俺は、リーダー格の男に聞き返した。
「解散するって、どういうことだ」
「そのままの意味だ。もうこのバンドは終わりにしよう」
 男は椅子に腰かけ、俯いている。俺はそいつの胸倉を掴んだ。
「ふざけるな。まだ表彰式も終わっていないのに」
 いや、入賞をどうこう言う以前に、全国規模のこのコンテスト、その決勝まできたのだ。これを踏み台にすればプロデビューだって夢じゃない。
レコード会社がほっとかないだろう。そうすれば、音楽で飯が食えるようになる。これを見逃す手はないはずだ。
「そうだな。多分俺らは入賞してるだろうな」
 無関心そうな視線を俺に向け、男は掴んでいる手を解く。
「だから、もう終わりなんだよ」
「―っけんな! 好きで始めたことなんだろ!? だったら何でやめちまうんだよ!」
 わけがわからない。気がついたら拳が相手の顔にめり込んでいた。ふっとび、ロッカーを滑る男の体。その様子を残りの二人が黙ったまま見ている。
「これからだろうが! これからバンバン売りだして……!」
「そして使い捨てられるのか」
 ゆっくり起き上がり、口の端から血を流しながら、男は俺に鋭い視線を飛ばす。
「たしかに金は入るだろうな。でも、その代償に自由を奪われる。こっちの考えを無視して、商業主義の名のもとに、大衆受けのする曲を量産させられる。
あらゆる商売のために体を酷使させられ、企業にとっては利潤を生みだす道具扱いだ。そんなことをするために俺は音楽を始めたわけじゃない。
そこに俺の求めたものはない」
 俺は残りの二人を見回した。こいつらは、こいつらはどうなんだ? こいつと同じ考えなのか?
 一人は肩をすくめながら、
「ま、ここいらが潮時じゃねえかい?」
 もう一人は小さく頷いて、
「私も留学の話がありますし、これ以上続けるのは厳しいですね。引き際としては的確かと」
 俺は膝を落とした。何だよそれ。皆ここまでがんばってきたんじゃないか。それをどうして、こんな簡単に捨てられるんだ。
必死になってたのは俺だけなのか? 他に居場所があるから、こいつらはこんなに余裕なのか? 誰か教えてくれよ。
 何で、何で――。





669:名無しさん@ピンキー
10/05/15 04:18:14 jASEa/JC


「あ、気がつきました?」
「ここは……」
 見知らぬ天井が見える。次に目に入ったのは、真鍋の嬉しそうな顔。見回すと、白い壁やカーテン、透明な管やパックがある。
どこにいるか、すぐに察しがついた。
「病院か」
「ええ。突然倒れて、ここまで先生が運んでくれたんですよ。仕事があるから、ってもう帰られましたけど」
 あいつがどこにいるか探そうとすると、彼女がすぐに付け加えた。そうか、と俺は頭を再び枕にのせる。
それにあわせて腕と繋がったチューブが揺れた。どうやら点滴をうたれているらしい。
「何でだ」
「原因はよくわかっていません。ただ、お医者さんの話だと、栄養失調か過労だろう、と」
「違う、お前のことだ」
 俺のことじゃない。どうして真鍋が付き添っているのかが気になるのだ。いや、それ以前に―。
「どうして俺に構う。そんな必要も理由もないだろ」
 前々から不思議だった。こいつはやたらと俺に関わろうとする。どう考えても不合理だ。
そこまでする価値が自分にあるとは思えない。
 眼鏡の奥にある瞳が揺れる。小さな両手が俺の右手を包む。それだけでわずかに心が休まる。
しかし、だからといって疑念が消えるわけではない。
「心配だから、じゃだめですか」
「俺のことなど、放っておけ」
 それがお互いのためだ。俺には俺の生き方があるし、真鍋だってそうだ。こいつならもっと上へ行ける。
能力の高い人間は、その限界に挑戦した方がいい。もっとも、それがもうできない俺には、関係のないことだがな。
「放っておけませんよ」
 俺の手がぎゅっと握られる。ひんやりとしたその感触が、火照った体には心地いい。
だが、それが一抹の不安ももたらす。この感触を失うのが怖くなる。いつもそうだ。
居心地がいいと思った場所は、たいていこちらが信用しきると、すぐに手の平を返す。
親も、友も……何もかもそうだった。失った時の悲しさ、苦しさは尋常ではない。
 だから、怖いんだ。
「私は、あなたのそばにいたいんです」
「やめろ」
「拒絶されたって構わない。それでも私はあなたといたい」
「やめてくれ」
 聞きたくない。これ以上優しくしないでくれ。これ以上求めないでくれ。期待してしまう。依存してしまう。
失うものが増えるだけなのに、それに身を委ねてしまう。そんなことをしても、結局辛くなるだけだって、わかっているのに。
 しかし真鍋はやめようとしない。あの時の、何かを決心したような顔で、言葉を紡ぐ。
「私はあなたが好きです」
「…………馬鹿野郎」
 いつの間にか、彼女の手を握り返していた。





670:名無しさん@ピンキー
10/05/15 04:18:53 jASEa/JC


「お前は馬鹿だ」
「そうかもしれませんね」
「こんなろくでなしのどこがいいんだ」
「ろくでなしだから、かな」
 起き上がった俺が睨むと、真鍋が小さく笑って「ごめんなさい」といった。まったく、昔から女という奴はよくわからん。
「いいじゃないですか。好きになっちゃったんだから、しかたないでしょ?」
「知るか」
 少女の視線から逃げるように目を背ける。どうも居心地が悪い。
いや、悪い気はしないのだ。だが、どうにもいたたまれない。
どう処理していいかわからない感覚だ。
「それに、損得だけで物を考えても、疲れるだけですよ」
「……そうだな」
 たしかに疲れる。だが、それが一番傷つかない生き方でもあるのも事実だ。
打算的に生きれば、利益という免罪符が発生する。たとえ人として間違っていても、それで納得ができる。
感情的に生きれば、基準が曖昧になり、どうしていいかわからなくなる。結果、いつのまにか大切なものを失っている。
だったら、前者を選ぶ方が楽ではないか。傷つかず、利だけを求めつづければいいのだから。
「だが、それで誰も傷つかないなら、それでいいんじゃないか」 
「怖いんですか。人と関わるのが」
「かもな」
 真鍋は一度微笑んで、そっと俺の首に腕をまわした。久しく感じていなかった、人の温もりを感じる。
制服越しの柔らかさに包まれ、ゆっくりと瞼を下ろす。上から少女の声が降ってきた。
「少しずつでいいんです。少しずつ慣れていけばいいんです。私がそばにいます」
「……勝手にしろ」
 彼女の行為はもちろん嬉しいのだが、それを素直に認められる程俺は人間ができていない。
もう少しうまく生きられれば、この人生も少しは違っていただろうに。
 
 まったく、嫌になる。


671:名無しさん@ピンキー
10/05/15 04:20:13 jASEa/JC

 しばしの抱擁を終え、真鍋は礼儀正しく別れを告げて帰っていった。
彼女から連絡を受けたのか、それからすぐに医者と看護師がやってきて、いくつかの質問を受けた。
その後、医師は聴診器やペンライトでの診察を済ませ、「一日様子を見て、問題なければ帰ってよろしい」、と言った。
(戸締りしてないんだが)
 まあ、そこは真鍋がうまくやっているだろう。そんなことをぼんやり考えて、『ああ、いつのまにかあいつに頼ってるな』と気付き、微妙な気分になる。
気恥ずかしいような、こそばゆいような、奇妙な感覚。悪くはないが、だからといって全肯定できるものでもない。そんな単純に判断できないのが、俺なのだ。
「おーっす」
 白衣の次にやってきたのは、田井中だった。静寂はあっという間に崩壊し、奴の声が場を支配する。
それをどうこういうつもりはないが、少しは静かにした方がいいんじゃないか、とは思う。
「和から聞いたよ。ぶっ倒れたんだってな。大丈夫か?」
「まあな」
 医者にもいったが、体に違和感はない。多分大したことはないだろう。
最近色々あったからな、肉体的にも精神的にも。ガタがきてもおかしくはない。
「それで、何の用だ。さすがに今日は店を開けんぞ」
 真鍋の時とは違って、こいつはある程度見当がつく。タダ食い(出世払いだが)できるなら、積極的に利用したいだろう。
 しかしこいつはチッチと人差し指を振って否定する。
「私はそんなに食い意地張ってませんぜ」
「じゃあ何だ」
 まさかこいつも……いや、それはないか。田井中は顎に手を這わせ、わずかに唸る。
「うーん。きっぱりとはいえないんだけどさ、そうだな……あんたといると、落ち着くんだ。うん、それが理由かな」
「ああ、そうかい」
 俺はお前の精神安定剤ではないんだがな。まあ、店としては客に満足してもらえるなら、言うことはない。
 そう、店としては。
「だけどな、お前の居場所は別にあるだろ」
「ん?」
 昔の俺にあって、今の俺にはないもの。友や夢、そうした環境がこいつにはまだある。それをないがしろにするのはどうだろうな。
少なくとも、過去の自分がそうしていたら、迷わず俺は止めようとするだろう。
「俺に構うな。今は目標や仲間に構ってやれ。いずれそいつらとは別れがくる。だからな、後悔のないようにしろ」
 わかってはいるのだ。あの時のあいつの判断は正しかった。だが、俺はずっと続けたかったんだ。
あいつらと、ずっと付き合っていたかった。喧嘩もしたし、絶交したこともある。それでも、結局はつるんでいた。
そこに俺の居場所はちゃんとあった。だからこそ、それがなくなるのがいやだったんだ。そういった感情によるしがらみが、今も俺とあいつらを隔てている。
 こいつには、そうなってほしくない。
「それにケリがついて、行くあてがなくなったら、俺の所にくればいい」
 それだけいって、布団をかぶった。返事を聞く気はない。俺は教師じゃないんだ、人生相談してやる義理はない。
俺は言いたいことを言ったまでだ。それに少し疲れた。こんなゆっくりできる時間はそうそうないのだから、休めるだけ休んでおきたい。
 ガチャ、とドアが開き、やがて閉まる。あいつがどんな表情で、何を思ったかは知らない。
でも、動き始めたということは、そういうことなのだろう。その先を考えるのはあいつにしかできないのだ。俺が気にしても意味はない。
 ふと、思う。

 真鍋和
 田井中律
 
 この二人に対して、俺はどうすればいいのだろう。いや、それ以前に、俺自身の問題がある。
きっとこのまま意地を張っても、後悔するだけだ。それはわかっている。しかし、だからといって最善策を実行できるほどの器量はない。
 暗闇に意識を沈めながら、そんなことを考える。

 
 ―そうだな、せめて―。
 

   ――せめて夢の中では、素直でありたいものだ。
 



 ドラムルート  ~ノーマルエンド~


【おしまい】

672:なかがき
10/05/15 04:21:25 jASEa/JC
次、いきます。

673:名無しさん@ピンキー
10/05/15 04:21:50 jASEa/JC
≪《アーカイブ》が更新されました≫

 


   ≪はじめから≫
   ≪つづきから≫
   ≪新規ルート≫
 ニア≪アーカイブ≫ New




   『とある姉妹の恋慕 姉編』
   『とある姉妹の恋慕 妹編』
   『水天の落涙』
 ニア『少女の幸福論』New


≪ファイルが選択されました≫



 しあわせってなんでしょう。
 おかねでしょうか。
 おしごとでしょうか。
 
 わたしには、よくわかりません。


 『少女の幸福論』



674:名無しさん@ピンキー
10/05/15 04:22:51 jASEa/JC


「もうすぐ一年生も終わりだね~」
「そうね」
 たまに行く喫茶店に、私と唯はいた。私は生徒会、唯は軽音部があるから、最近はこうして話すことも少ない。
それを嘆く気はないけれど、それでも、やはりさみしい気持ちにはなる。
「私、高校生になってよかったよ」
「あの人にまた会えたから?」
「えへへ。それもあるよ」
 幼なじみは解け始めたアイスのように笑う。あの人とこの子は幼稚園の頃、一度会っただけの関係。
普通なら、やがて相手を忘れ、なかったことになっているだろう。事実、再会した二人は、どちらも覚えていなかった。
しかし、それでも将来を誓った約束は、今こうして果たされている。不思議なものだ。
自分が関与したせいかもしれないが、そうだとしても、結果としてこうなったのなら、それは運命ではないだろうか。
私はヒントを与えただけだ。それをどう扱うかは、あの人次第だった。そして、彼は過去と向き合うと決め、伴侶に唯を選んだ。
 それだけの話だ。
「軽音部の皆とも会えたし、軽音も面白いし、ギー太だって……あ、もちろん和ちゃんもだよ」
「いいよ、気を遣わないで。わかってるから」
 笑みを返し、湯気の上る紅茶を口に含む。春というにはまだ寒いので、温かい方がありがたい。
胃に滑り落ちた熱で暖まるのを感じる。
「幸せそうね」
「うん。和ちゃんは?」
「私は……そうね、幸せよ」
 そういいつつも、そうは思っていない。そもそも、何が幸福に値するのかよくわからないのだ。
教科書にあることは一通り覚えたが、そこにあるのはありきたりな事実ばかりで、役には立たない。
 もちろん、そういった観念は、個人差がある以上、定義できないことは知っている。
しかし、だからといって自分にそんな観念があるわけではない。ゆえに悩む。
 よくある物語では、運命的な出会いや境遇でのラブストーリーが、さも幸福であるかのように描かれている。
たしかに、唯とあの人は幸せそうだし、それに異論はない。ただ、それを自分が求めるのは違う気がする。
白馬の王子をいつまでも待つというのは、どうも納得ができないのだ。もっとも、『では、他に何かあるのか』と問われると、答えに困るのだが。
「誰かと付き合ってるの?」
「え?」
 一瞬固まる。この子は藪から棒に何を言いだすんだ。
「なんかそんな気がしただけ」
「う~ん……」
 たしかに、そんな関係と言えなくもない相手はいる。しかし、あれを恋愛関係と称せるかどうか。
好きだと告白したが、かといって明確な変化はない。デートをしたこともなければ、キスの経験もない。
ただの雇用主と雇用者の関係だ。
 そう、私は彼に自分の想いを告げた。どこに惹かれたかは具体的に説明できない。
昔からのああいう性格が、貴く、美しく見えたのかも。
「……かもね」
「え? 誰々?」
 興味津々といった調子で尋ねる唯に、なんと答えればいいか考えていると、不意に窓の外で見慣れた姿を見つけた。
「ねぇ、あれ」
「へ? ……あ!」
 そこを指差すと、唯が急いで店外へ出た。その男性のもとへ一直線に走り、勢いよく抱きついている。まったく、少しは周りの視線を気にしたらどうだろうか。
でも、それが彼女のいいところでもあるのだ。天真爛漫なその性格が、たまに羨ましくなる。


675:名無しさん@ピンキー
10/05/15 04:27:05 cd+scEf0
支援

676:名無しさん@ピンキー
10/05/15 04:27:22 jASEa/JC
「じゃ、私は行くね」
 支払いを済ませ、遅れて店を出た私は、二人にそう告げた。お邪魔虫になるわけにはいかないだろう。
「うん、またね」
 手を振る唯に片手を上げ、その場を後にする。さて、どうしようか。このまま家に帰って勉強することもできるが、そんな気分でもない。
というか、友達がいちゃいちゃしている時に、そんなことする気になる人がいるのだろうか。
 しばらく歩いていると、とある店の前に着いた。バイト先の飲食店だ。足が無意識に向かってしまったらしい。
今日はなぜか休業になったので、することはないのだが、来た以上しかたがない。何か手伝うことくらいあるだろう。
 裏口に回り、カギを開けて入ると、彼が座敷で転がっていた。また倒れたのだろうか。
「どうしたの?」
「むー」
 しゃがんで聞いてみると、彼がゆっくり身を起こす。とろんとした視線が向けられる。普段と違い、覇気がまったくない。
 その理由は、近づくことによってわかった。お酒臭い。つまり、そういうことなのだろう。
「のどかぁ」
 突然名前を呼ばれ、どきっとした。この人はいつもぶっきら棒で、こんな風に言われたことはないのだ。
 彼のたくましい腕が私の背中に回り、そのまま畳の上に押し倒される。とっさに顎を引いたので、なんとか頭をぶつけずに済んだ。
「えっと……」
「ん~」
 彼は私の胸に顔を擦り寄せるだけで、それ以上のことは何もしない。期待したわけではないが、予想とは違って微妙な気分だ。
「よしよし」
「んー」
 とりあえず頭を撫でると、嬉しそうな声を出した。酒が入ると、性格が変わることがあるらしいが、これがそうなのだろうか。
 まあ、これはこれで可愛いからいいのだが。いつもの、意地っ張りで強がる彼とのギャップに戸惑いつつも、
しばらくそうしていると、やがて寝息が聞こえてきた。
(どうしよう)
 このまま帰ることもできる。布団を用意して、そこに寝かせることも可能だ。けど、このままでもいいかもと思っている自分がいる。
 それが母性本能によるものか、愛護精神によるものかはわからない。ただ、そうしたいのだ。明確な理屈などない。
(まったく。成長したのは体だけなのかしら)
 不器用な人。それが初めて会った時の印象。幼稚園児の私がそう思うんだから、周りの人達もそう感じていただろう。
 だから、かな。あの時自分が興味を持ったのは。遊ぼうと誘ったのは。
 そんなことを考えながら、眼鏡をはずし、瞼を下ろす。こういうのもたまにはいい。いい夢が見られそうだ。
心地よい重さを感じながら、私も夢の中へ旅立っていく。



677:名無しさん@ピンキー
10/05/15 04:28:00 jASEa/JC

『一緒に遊びませんか』
 園児達とどう接していいかわからない、という風で棒立ちだったその人は、小さく頷く。
『ああ。何をする?』
『おままごとでいいですか?』
 別に何でもよかったのだが、なんとなくそれがいいように思えた。彼はわずかに顔をしかめる。 
『…………』
『だめですか?』
 そう問う自分がどう映ったのか知らないが、彼は慌てて首を振る。
『いや、それでいい』
 まあ、そんなわけでやってみたのだが、あまり盛り上がりはしなかった。
もっとも、この遊び自体そうした要素がほとんどないのだから、しかたがないといえばしかたがない。
『悪いな。俺にはどうすればいいかわからない』
 テーブルの向こうで、彼はすまなそうに俯く。
『家族というのが、よくわからないんだ』
 その意味を察するのに、それほど時間はかからなかった。何かの事情で、一人ぼっちになったのだろう。
幸い、自分も知り合いもそんな境遇ではないが、話には聞いたことがある。大人の世界は複雑のようだ。
『じゃあ教えてあげますよ』
 彼が顔を上げる。その瞳は、ずいぶん弱々しく見える。まるで捨てられた子犬だ。
何かに縋りたいが、それができない―そんな様子。
『一緒にいれば、少しずつわかりますよ』
 その言葉に嘘はない。そうしてもいいと思ったのだ。惚れた、というわけではない。燃えるような恋というより、静かな好奇心。
この人と生きるのもいいかも。そんな考えが脳裏に浮かんだのだ。今は無理かもしれない。それでも、いつかは……。
『やめとけ』
 しかし彼の返答はそっけなかった。憂いを帯びた笑みでこちらの申し出を拒否する。
『俺といてもロクなことにならない』
 経験でいっているのか、それとも怯えているのかはわからない。ただ、それを決めるのは私であって、彼ではないだろう。
別にボランティアで言っているわけではない。自分がそうしたいだけだ。
『いやです』
 だから否定することにした。すると彼は一瞬ぽかんとし、それから視線をそらす。
『……勝手にしろ』
 私は胸中でくすりと笑う。どうやら照れているようだ。中々可愛いところもあるではないか。
 うん、じゃあ勝手にさせてもらおう。あなたがやめろと言っても、諦めるつもりはないよ。
 だってしかたないでしょ? 出会ってしまったんだから。


「おい、起きろ」
 夢と比べ、幾分か野太い声が聞こえる。ぼやけた視界にあったのは、大人になった彼の顔。いつかと逆になったわね。
「何で俺とお前が……」
「あなたが押し倒したんでしょ」
 眼鏡をひっかけながら言うと、彼はわずかに狼狽した。その様子を、顔に出さずに楽しんでから、ふと時計を見る。
もうすっかり日が暮れている時刻だ。
「帰るね」
 服にできたシワを直しながら立ち上がると、腕を掴まれた。少量の期待をこめてそちらを向く。
「……送ってく」
 むすっとした顔で、目を背けている彼は、やはり可愛い。お互い外からそのままの服装だったので、すぐに外出できた。
 外はすっかり暗くなっていて、雪でも降るんじゃないかってくらい寒い。こういう時は寄り添って、熱を共有するものだ。
一瞬、公衆の面前で相手に飛び付く友人を思い出し、わずかに首を振る。さすがにあんな真似はできないが、これくらいなら……。
「ひっつくな」
 彼の腕にそっと絡まると、すぐに解かれた。そんなに恥ずかしいのだろうか。赤くなった耳を尻目に、私は眼下にある大きな手を握ることにした。
「…………」
「これならいいでしょ?」
「……勝手にしろ」
 彼特有のお許しが出たので、そうさせてもらうことにする。握った手から伝わる、わずかな強張りや汗に苦笑しつつ、夜道を進んでいく。


678:名無しさん@ピンキー
10/05/15 04:28:35 jASEa/JC
 
 ロマンチックなラブストーリーじゃなくてもいい。ただ、この人と一緒なら、それでいい。
 たとえ、これがままごとのようなまやかしだとしても、私の中ではこれが真実なのだから。

 ああ……。

 これがもしかしたら、私にとっての幸福なのかもしれない。




 
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679:あとがき
10/05/15 04:45:06 jASEa/JC
新年云々いっていたのが、気がつけばもう新年度も少し過ぎた今日この頃。
思考錯誤と紆余曲折を経て、ようやく一区切り。
そんな迷走っぷりを、このルートが如実に表しているような気がするわけです、はい。
ギターやベースで差っ引いた背景やら何やらのツケを、ここで清算したから、ある意味一番割を食ってるんじゃないかな。

まあ、そんなこんなで、あれから一年経とうとしています。
それまでに、決着がつくといいんですけどね。どうなることやら。

とりあえず、お互い五月病に気をつけましょう。
それでは、今回はこのへんで。



680:名無しさん@ピンキー
10/05/15 09:38:25 d6fYJJ3p
>>679
乙!
久しぶりに続き来てたー!!
ノーマルエンドって事は………

681:名無しさん@ピンキー
10/05/17 16:28:19 qCwBDCHT
>>679
もういらっしゃらないかと思ってました。戻ってきてくださり、とてもうれしいです。

ノーマルエンドですか……まだ続きがありそうですね。
それとも、キーボードルートが始まるのでしょうか? なんにせよ、これからも期待しております。

682:名無しさん@ピンキー
10/05/18 00:37:52 VjGqI3+G
百合スレの方が活気あるな。
まあ、当たり前か。

683:名無しさん@ピンキー
10/05/18 17:49:02 Z5OV1paS
けいおんには一切合切
男キャラがいないから仕方がない

一応聡がいるけど出したら
聡氏ねとか言われんだろうなw

684:名無しさん@ピンキー
10/05/18 18:43:33 LsG4qOgW
男出したパロはここでは駄目なんですか?

685:名無しさん@ピンキー
10/05/19 11:08:31 dgezoNvu
ここで良いと思いますよ
聡でもオリキャラでも大歓迎

686:青太郎
10/05/19 15:55:00 ete1XxVz
それは何より。
聡かそんな奴もいたな。
データ全然ないから、どっちにしろオリキャラ同然になってしまうという……。

687:名無しさん@ピンキー
10/05/19 15:55:55 ete1XxVz

   ≪はじめから≫
   ≪つづきから≫
 ニア≪新規ルート≫
   ≪アーカイブ≫


≪!注意!≫


≪すでに特定のルートのセーブデータが存在するのでルート選択・変更が制限されます≫ 






 何もかもがつまらなかった。与えられた作業を淡々とこなす日々。そこに興味や歓喜など皆無で、ただの作業。
つまらない、あまりにつまらない。しかし、それを放棄することは、自身の存在意義の喪失を意味する。
ゆえに、辟易しながらも、絶望しながらも、ただただ作業を続けていく。まるで機械だ、と自嘲したのはいつからだろうか。
もう、覚えていない。
 その日もいつものように作業をこなしていた。与えられたカリキュラムを消化し、次の作業場へ移動する。
いつだって不変の世界。おそらく一生をこの世界で費やすことになる、そう考えていた。

 しかし――。

「なあ、ピアノうまいんだって?」


 唐突に、その世界は変化を―色を帯びていく。


  キーボードルート~ピアニスト~


 いつだって変化というものは突然やってくる。こちらのことなんかお構いなしだ。
 あの時のことを思い出し、私はわずかに口元を緩める。
人生に転換期があるのだとしたら、あれがそうなのだろう。
いきなりやってきて、バンドをやろうなどと言われるとは。

「どうかしたかね」
「……いえ、それでは失礼します」
 眼前の男の声で我に返る。手元の資料を二、三確認し、私は腰を折った。

「引き続き融資の方は……」
「ええ。もちろんそのつもりですし、あなたと生徒の“個人的な”関係にも干渉しません」
 別にそんなことはどうでもいいのだ。彼女さえ問題なければ、それでいい。
 この男―校長が影で何をやっていようが、頓着する気はなかった。

「では、彼女の保護をこれからもよろしくお願いします」
 それだけ言って、私は無駄に豪華な扉に手を掛けた。
「なぜそこまでこの少女に手間をかけるのだね。やはり君も―いや、失礼。忘れてくれ」
 笑いを含んだ声の主を一瞥すると、どんな風に映ったのか、彼は慌てて訂正した。
それに反応することさえ面倒なので、さっさと退室させてもらう。



688:名無しさん@ピンキー
10/05/19 15:56:45 ete1XxVz


 まったく、あれがここの責任者とは、世も末だ。
 いや、ああいうタイプだからこそ、上に立てるのだろうか。
 まあ、それはどうでもいい。要するに都合のいい人材なのだ、あれは。
金さえ積めば言いなりになる、ありふれた人間。これほど動かしやすい駒はない。

「お兄様」
 聞き慣れた声に気付き、私は何気ないしぐさで持っていた資料をカバンに放り込む。
これを見せるわけにはいかない。
「紬さん」
 振り返ると、そこにはいたのは彼女だった。相変わらずの笑みでこちらに近づいてくる。
「最近学校でよく会いますね」

「あなたとこうして会うためですから」 
「まあ」
 嬉しそうに微笑む彼女を見ていると、先程の嫌悪感があっという間に霧散する。
 
 もちろんこの少女―琴吹紬と血縁関係はない。ただ、兄のように慕われているだけだ。
それに関してどうこう言うつもりはないし、どうしようとも思わない。この関係を自分は気に入っている。

「部活動ですか」
 腕時計をちらりと見てから尋ねると、彼女は小さな顔を傾ける。
「ええ。今日はロールケーキを持ってきたの。皆喜んでくれるかしら」
「ははは。羨ましい限りです」
 自分の頃はもっと過酷だったな、と思い返し、少し憂鬱になる。
あの頃は地獄だった。あれに比べれば、西欧の英才教育など霞んでしまう。
「よかったらご一緒しませんか」
「いえ、そうしたいのは山々なのですが、少々用事がありまして」
 それほど急ぐ用でもないのだが、そういうシナリオの方がいいだろう。
彼女には学友との時間を大切にしてもらいたいのだ。
「そうですか。それは残念です」
「申し訳ありません。ですが今晩にでもそちらへ伺いますので、よろしければその時にでも」
 しゅんとする彼女の髪をそっと撫で、そう告げると、途端に目の前の花が咲く。
「はい、喜んで」
「では、行ってらっしゃいませ」
 背中をぽんと叩き、彼女を促す。長い髪が揺れて遠ざかるのを見届けてから、私は職員室へと向かった。

 
 最初は不安だった。この世界をよく知らない彼女が、普通の高校生と交われるのだろうか。
異端視され、虐げられないだろうか。そのために自分が随時視察しているのだが、どうやら杞憂らしい。
もっとも、だからといってこれを止めるつもりはない。万が一、ということがある。 

 それに、ここには存外“狼”が多い。



689:名無しさん@ピンキー
10/05/19 15:58:05 ete1XxVz

「お、どうした。何か用か」
 廊下を歩いていると、無意識の狼が職員室から出てきた。
「ええ、あの方に会いに参りました」
「ああ、先輩ね。今いるよ」
「そうですか。ところであの件、考えてもらえましたか」
 彼はわずかに困った表情をして、ややあって、口を重たそうに開く。
「やってみても、いいかもな……」
「ほう。それは何より」
 バンドの再結成も近いかもしれない。ここはもう少し押してみるか。
 そう思って言葉を出そうとした所で、彼の携帯電話が鳴った。
「あ、ちょい待って。何だよ、何か用か? ……いや、今日は普通に帰るけど。
『じゃあ私も帰る』っておいおい。部活をやらんか部活を。…………。ああ、はいはい。
わかりましたよ。行けばいいんでしょ、行けば。……ったく」
 携帯電話を畳んだ彼は、すまなそうに片手を上げた。
「悪い、ちょっと野暮用できた―って、何で笑ってんだ?」
「いえ、あなたらしいと思いまして。では、私はこれで」
 不思議そうな顔をした友人をそのままに、私は室内に踏み込んだ。
はたして、そこには目的の人物がいた。

「あら。……例のあれ?」
「はい、お願いします」
 山中教諭は机の中から、一枚のSDメモリーカードをこちらに差し出した。
それを慎重にカバンに収める。これには部活での彼女の様子や、この人の所見が入力されているはずだ。
「しかしあなたもよくやるわね」

酔狂だと自覚しています」
「まったく。どいつもこいつも若い子ばっかり。ここに美人がいるっていうのに」
「面白い冗談ですね―いえ、失礼致しました」
 殺気を帯びた眼光を感じ、即座に修正。まだ私は死にたくないのでね。
「私は彼女をどうしたいとか、そんな気はありません」
「妹みたいな存在って奴? はんっ、どうだか。男なんてみんな獣よ」
「その獣に自らいただかれにいった結果、断られたのはどこの誰――おっと、すみません。口が過ぎました」
 さて、無駄話も程々にして、そろそろ退散しよう。一礼し、そこから去ろうとすると、声が飛んできた。
「本当にそうだとして、あの子がほかの男のものになっても、あんた納得できるわけ?」
「…………。彼女がそれを望むなら、それがすべてでしょう」
 微妙にずれた、逃げた返答をして、職員室を出る。


 考えなかったと言えば、嘘になる。
 いずれ彼女も恋をする。それが愛になり、やがて成就することもあるだろう。

 彼女が、望んだ相手と愛を育み、子を産み、やがて老いていく。
 当たり前の流れ、結果。それを否定する資格は誰にもない。

 そこに自分はいない。その現実に対し、私は明確な回答を持っていない。
 こればっかりは、その時にならなければわからないだろう。



「難しい顔してんな~」
「そう見えますか」
 中庭に出ると、用務員に声を掛けられた。やる気なさそうに箒を振っていた手をとめ、力強く頷く。
「見える! おいちゃんが保証するよ!」
「それはどうも」
 校長に持たされた和菓子を渡すと、彼はお茶を持ってくる、と言って購買の方へ走っていった。
 とりあえず近くのベンチに座る。  

 


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