09/09/26 08:13:49 +pQinft5
投下にすぐ反応するあたり、けっこうまめに見てくれている人がいるみたいだね。
451:名無しさん@ピンキー
09/09/28 03:05:04 hZvXMDww
なんか、なかなかおいしいの書いてくれる人いないねーww
452:名無しさん@ピンキー
09/09/30 01:53:59 fq6ViF2f
保管庫更新。
漏れ追加/修正あればWikiなので
各自でよろ。
453:名無しさん@ピンキー
09/09/30 10:40:04 YuPnpww1
>>452
乙! 助かるぜ。
454:名無しさん@ピンキー
09/10/01 19:00:05 epaLSiZd
保管お疲れ様です。
455:名無しさん@ピンキー
09/10/01 21:42:04 /0AWnupj
>>452
乙彼!
今後もょろしく
456:名無しさん@ピンキー
09/10/02 13:36:48 MXNReN8/
【噂ニュース】小さいほど効き目のあるペニス増大法、ほうれん草を食べるだけ
記事
スレリンク(news7板)
参考資料
URLリンク(jbbs.livedoor.jp)
457:名無しさん@ピンキー
09/10/03 14:57:21 L+SxA0vK
【けいおん!】平沢 唯スレ
スレリンク(cchara板)
458:名無しさん@ピンキー
09/10/04 04:27:15 Y6KaeDS+
私がこの高校に入学した理由は、今はもう忘れてしまった。
妹みたいに頭が良くない私は、必死に勉強してなんとか合格したにも関わらず、そこまでして入りたかった理由が思い出せない。
でも、私はこの学校に入れて本当によかったと思っている。
その理由は2つある。
1つは、軽音楽部に入り、新しい友達が増えたこと。
部活なんて入ったことなかった私は、なんとなく軽い気持ちで入部してしまった。
後になって軽音楽部が楽器を演奏する部活だと知り、カスタネットくらいしか演奏できない私は、少し不安になった。
でも、みんなとても優しくて、最初はちょっと緊張したけど、今は部活の時間が待ち遠しいくらい楽しみである。
そして、もう1つは……
「校長せんせー! いるー!?」
(^p^)
「あ、いたー!」
(^p^)んひひ
そう、校長先生との出会いである。
459:青太郎
09/10/05 23:58:20 w/ZRKOuy
続きがないようなのでがっくりしつつ投下いたす次第で候。
460:名無しさん@ピンキー
09/10/05 23:59:27 w/ZRKOuy
≪《アーカイブ》が更新されました≫
≪はじめから≫
≪つづきから≫
≪新規ルート≫
ニア≪アーカイブ≫ New
ニア『とある姉妹の恋慕 姉編』
『とある姉妹の恋慕 妹編』
『水天の落涙』New
≪ファイルが選択されました≫
平沢唯です。突然ですが結婚をぜんてーにおつきあいすることになりましたっ!
『とある姉妹の恋慕 姉編』
ああ、ごめんよみんな。一足お先に大人のレディーになるよ。みんな見た感じ彼氏とかいなさそうだしね。
きっとわたしが一番早いんだろうなー。
考えてみればお兄ちゃんに初めて会ったのって十年も前なんだよね。これってかなりすごいよね。
出会えただけでもかなり偶然なのに、また会えるなんて。それもどっちも覚えていないのに。
やっぱりこれって運命なんだよね。きっとわたしたち赤い糸で結ばれてるんだよ!
ギ―太もそう思うでしょ? あれ? そういえばお兄ちゃんのと似てるよね、ギー太。ねえ、お兄ちゃん。
「あのな、それを言うならお前のが俺のに似てるってことだろ」
「ぬおお。そこまで運命的だったなんて!」
「ただ印象に残ってただけだろ」
そう話すお兄ちゃんはなんだか嬉しそうです。あ、今憂がこっちを見た。むぅ。そうなんだよね。
憂も一緒なんだよね。あ、憂が憎いってわけじゃないよ。憂は大好きだよ。
でも、どうせなら……やっぱりお兄ちゃんと二人きりの方が……。
「聞こえてるよ、お姉ちゃん」
「はぅ!」
うーん、憂はこれだけは譲らないんだよね。まあ、わかるけど。いやいや、ここはやはり姉の威厳を……。
「そんなもん昔からないだろ」
「お兄ちゃんひどいよ!」
いいもん。いつかビッグになって見返してやる。わたしはきっと大器ばんせーなんだよ。
「お姉ちゃん『大器晩成』なんて書けないでしょ」
「書けるもん! 書けるもん!」
「いいから寝ろお前ら」
わたしと憂の間でお兄ちゃんは困った顔をしてました。
461:名無しさん@ピンキー
09/10/06 00:02:08 w/ZRKOuy
「唯」
呼ばれて、そっちを見れば、お兄ちゃんにキスされました。
その間に、服を脱がされているのがわかります。
唇が離れる頃には下着が体から離れていました。
「ひあっっ」
お兄ちゃんの手が右の胸を、口が左の胸をいじります。
あんまり大きくないけど(まあでも、りっちゃんよりは大きいんだけどね)、
お兄ちゃんはそういうことを気にしないようです。嬉しいような、悲しいような……。
「はっ、あっ、はっ、はぁんっ」
いつも思うけどこういうときの声って全然自分のだって気がしない。
歌でも声は変えてるけど、ここまでにはならないもん。
「はぁっんぁっ、あぁっあぁんんっ」
あ、乳首たってる……。あそこも濡れてきてるし……。
お兄ちゃんの指でぴちゃぴちゃ聞こえるよぅ。
「はぁあっ、あっひあっ、 あはぁ!」
あそこにかたいものがあたってる。いれるんだね。
普段はちっちゃくてぞうさんみたいなのに、こういうときにはなんかかめみたいになるんだよね。ふしぎ。
「おにいちゃん、ちょうだい」
お兄ちゃんのほっぺたを手ではさんで、キスをする。
あつくてかたいのがはいってくる感触に、わたしはなぜか安心を感じた。
全部はいったとき、ぎゅって抱きしめられた。
からだもあったかいけど、それ以上に胸の中があたたかくなっていく気がする。
「いっぱいだしてね」
そうすれば赤ちゃんできるんだよね。そしたらおにいちゃんもさすがに決心してくれるよね。
おにいちゃんやさしいのはいいんだけど、やさしすぎて遠慮しちゃうのが玉にきずなんだよね。
わたしは気にしてないのに。
――唯。
でもきっといいお父さんになんだろうなあ。
ああ、でもそしたら子どもにおにいちゃんとられちゃうのかな。それはやだなあ……。
――おーい。
ああ、おにいちゃん。そういえばどうしてそんなにぼんやりしているの……?
「おーい、唯さん?」
「むむむ……んぅ?」
あれ。なんで服きてるんだろ? それにすっかり外が明るくなってる。
「長寝するのは休日だから一向に構わんが」
いつのまにかおにいちゃんの首に絡まっていたわたしのうでがゆっくり外される。
「俺に抱きついて呻くのは勘弁してくれ」
「…………そっか」
夢なんだ。ざんねん。がっかりして下を向いていたら、ふっと何かに包まれた。よく知ってる感触。
「こんな感じの夢だったか?」
「ん~。だいだいそんなかんじ」
……ま、いっか。わたしはそのぽかぽかな腕の中で、二度寝することにした。
髪の毛なでられるのってやっぱりきもちいい。
今度は家族旅行とか……いいな。
ニア【《アーカイブ》に戻る】
【メインメニューに戻る】
462:あとがき
09/10/06 00:06:41 GHGehkUN
投下規制をくらって「これじゃあ投下できなくても仕方ないよね、フフン」とだらだらしていた結果がこれだよ!
他のルートに期待してくれてる人がいるのに、このままじゃ全部終わるのに年越しちゃうYO!
つまりなにが言いたいかというとアギトおもしろいれす(^p^)
463:名無しさん@ピンキー
09/10/06 19:36:48 Rhv4HKjF
>>462
乙です! いやー、やっぱ良い。
他のルートも気長に待ちます。ゆっくりじっくり書いてください。
464:名無しさん@ピンキー
09/10/09 11:32:01 aJqtLzHX
昼すぎにこっそり投下するよ。
ちなみに私は律っちゃんが好きだ。
465: ◆bhtt9De1Cxz0
09/10/09 12:05:17 aJqtLzHX
終業チャイムが鳴り響く校舎の中を、一人の女子がズンズン歩いている。
いつものように廊下を駆け抜け、階段を上り、音楽室のドアを開ける。
ガラッ
「う~~~~~~~~、ムギッ!!」
いつもの彼女とちがうのは、明らかに不機嫌そうに音楽室に入ってきたということ。
「あら、律さん♪」
「あたしに熱いお茶をくれっ!」
カチューシャがトレードマークの彼女は田井中律(たいなかりつ)・・・桜高軽音部の部長である。
先に部室にいた部員・ムギこと琴吹紬(ことぶきつむぎ)は部長の指令を嫌がることなく笑顔で受け止める。
「今いれますからね~」
彼女が自宅から持参したティーセットを食器棚から取り出す。
軽音部名物の放課後ティータイムである。
「いったいどうしたんだ、律?」
心配そうに律を見つめる黒髪の美少女。
いかにも生真面目そうな彼女は律の幼馴染、秋山澪(あきやまみお)。
「悔しすぎる・・・くそぅ」
「お茶が入りましたよ~」
程なくして律の目の前に、ムギが入れた良い香りのする紅茶が置かれた。
部員は誰も気づいていないが、ムギのお茶を入れる腕前は洗練の極みだ。
もう少し感謝されてもよさそうなものだが。
「ありがとっ」
ズズズズ・・・・・・
つかの間の沈黙の後、澪が切り出した。
「なにか嫌なことでもあったのか?」
「うん、まあ・・・これ飲んでから話すよ」
律がそういいながらふた口目の紅茶をすすろうとした瞬間だった。
部室のドアが勢いよく開いた!
ガラッ
「あっ、りっちゃーん!澪ちゃんもムギちゃんもっ! あたしがビリ!?」
肩より少し短いくらいに切りそろえた髪を揺らしながら、やたら元気な声を発する彼女。
彼女がギターとボーカル担当の平沢唯(ひらさわゆい)である。
唯の顔を見た瞬間、少し落ち着きつつあった律が彼女に飛び掛った。
466: ◆bhtt9De1Cxz0
09/10/09 12:06:46 aJqtLzHX
「唯、こんにゃろー!!」
「なになにっ、うきゃー!」
鮮やかに唯の背後を取り、チョークスリーパーを決める律。
バンバンバン!
目を白黒させながら律の腕をタップする唯。
それでも律の怒りは収まらない!?
きゅう~~~~
「ギ・・・ブ・・ゥ」
「あたしのトキメキを返せっ」
「律、チョーク入ってるっ! 唯を離せ、ワーン、ツー・・・」
慌てて二人の中に割って入った澪が律に告げる。
3カウント前に解放された唯が前のめりにソファーに倒れこむ。
ぱたっ
「なあ、アタシと唯ってそんなに似てるか?」
グッタリした唯を放置したまま律は澪に問いかける。
さらにカチューシャを外して前髪を手で分ける。
「んー、大ざっぱでテキトーで部活の練習しないところとか似てるかもなっ」
「見た目の話だー!!」
今にも澪に噛み付きそうな勢いの律を見ながら、ムギは上品にクスクスと微笑んでいる。
「そうですね。たしかに似てますわ。」
「ムギもそう思うか・・・」
「うふっ、でもカチューシャしてれば見間違えることはありませんわ。」
「そこだけかいっ!」
前髪が少し長い律だが、髪の色も雰囲気も確かに似ている。
ムギの優しいフォローも今の律にとっては火に油を注ぐだけだ。
「いったい何があったんだ?律」
「簡単に言うと、アタシを唯に見間違えた男がいてだな・・・告白してきやがった」
チッと舌打ちをしながら語り始める律。
467: ◆bhtt9De1Cxz0
09/10/09 12:07:46 aJqtLzHX
「まあっ!」
「ほええっ、それでそれで!」
興味津々と言った様子のムギと唯。
澪は顔を真っ赤にして律のことをじっと見つめている。
「アタシがたまたまカチューシャをセットし直そうとしてたら後ろから声かけられて」
「うんうんっ」
「手紙渡されながら『好きです』って・・・」
「きゃーん!」
興奮のあまりムギに抱きつく唯。
首を絞められた痛みもどこかへ吹き飛んだようだ。
「でもその後に、あなたのギターと歌声に惚れました!っていうから慌ててカチューシャつけてやったのさ!」
「かわいそう・・・その男子」
「ほんとですわね・・・ご愁傷様」
即座に男性の不憫を察する澪とムギ。
「アタシに同情しろー!!」
「でもそれならさすがに気づいたんだろ?人違いだって」
「ああ、でもな・・・その男子は最後にアタシにこういったんだ・・・『すみません、その手紙を唯さんに渡してください』って。」
フーッとため息混じりに語り終える律の言葉に、部室全体の空気が凍りつく。
澪もムギも顔を見合わせたまま動かなくなってしまった。
さすがにこれでは・・・律の傷心が手に取るようにわかる。
「思い出したらまたイライラしてきた・・・」
律の怒りが再燃することを恐れた唯は、
誰にも気づかれないように部室の出口に向かっていたのだが・・・。
「唯、もういちどチョークスリーパーさせろ!!」
「ぶぎゃー!!」
暴れるニワトリを抑えつけるように唯の背後に飛び掛る律。
今度はムギと澪も彼女を止めなかった。
468: ◆bhtt9De1Cxz0
09/10/09 12:09:10 aJqtLzHX
「ふぅ・・・少し暴れてすっきりしたかな。」
首をコキコキならしながら部室の外へ出る律。
今頃部室内ではムギと澪が唯を介抱していることだろう。
「でもアタシってそんなに魅力ないかなぁ・・・」
すっきりした反面、さっきの出来事を冷静に分析しはじめてしまう。
「別に今は彼氏なんてほしくないけど、なんか悔しいよ」
それは唯に対する対抗心からではなく、ドラム一筋で女らしさに欠けるという反省。
自分でもわかっている。
澪みたいに長い髪は似合わないし、ムギみたいに上品でもない。
唯みたいに可愛い仕草も出来ないし、アタシっていったい――
「あの・・・」
「ん?」
深く悩む律の前に一人の男子が現れた。
身長はそれほど高くなく、体育会系というカンジでもない。
(おとなしそうでけっこう好みのタイプかも!)
直感的にそう思った。
だがその男子は律に向かって一通の手紙を差し出した。
「この手紙を・・・」
「またかよー!アタシのドキドキを返せっ!」
「えっ?」
一瞬でも気を緩めた自分を律は許せなかった。
そういえばさっきからカチューシャを外したままだ。
どうせこの男子もさっきと同じで・・・
「アタシは今機嫌悪いんだ!ちょっと八つ当たりさせてもらう!!」
「えっ、えっ、ちょ・・・!?」
右手で彼の手首を掴み、左手に持っていたカチューシャをセットしながら律は誰もいない教室のドアを開けた。
「あ、あのっ・・・気分を悪くさせたならあやまりま・・・」
「うっさーい!!」
怯える男子を椅子に座らせる。
近くにあったガムテープで彼の手首をイスの脚にグルグル巻きにした。
(アタシって鬼畜・・・♪)
それだけで律は背筋にゾクゾクとする何かを感じた。
469: ◆bhtt9De1Cxz0
09/10/09 12:10:03 aJqtLzHX
「こうすればしゃべれないよねっ」
「んぐっ!?」
椅子に座らされて動けない彼に馬乗りになる。
そしてゆっくりと彼を抱きしめるように顔を包み込む。
律は自分の胸に彼の顔を・・・埋めた。
(柔らかいっしょー!けっこう自信あったりして)
彼女は自分のバストを気に入っていた。
大きさではなく、その柔らかさで男を虜にする自信があった。
しばらくジタバタしていた男子だったが、次第にその抵抗が弱まってきた。
「はぁ、はぁ・・・あの・・・」
「またどうせ唯と間違えたとか、唯にラブレター渡せとか・・・」
「ちが・・・」
「あー!もうっ!!」
男子はまだ呼吸が整わない。
何かを律に伝えようとしているのだが、先ほどのバスト攻めが効いてしまっている。
「カチューシャとってあげるわよ。これで唯に見える?」
おでこの上で止まっていた律の前髪がパサッと降りてきた。
その一部が男子のまぶたにサラサラと当たって、彼をくすぐったくさせる。
「か、髪が・・・」
「うりうり♪」
前髪で男子の顔を撫で回す律。
見た目よりも柔らかい彼女の前髪が、男子を優しく魅了する。
「ねえ知ってる? あの子、エッチは激しいんだよ~」
スルスルとリボンを外してブラウスを脱ぎだす律。
左肩だけ肌を露出させるような格好のまま、右腕を男子の首に絡ませるようにして抱きついた!
「・・・でもアタシも結構激しいかもね?」
470: ◆bhtt9De1Cxz0
09/10/09 12:11:41 aJqtLzHX
少し汗ばんだ律の肌をグイグイと押し付けられ、否応なく高められる男子。
「あなたの体に刻んであげる。アタシのスティックさばき♪」
少しだけ腰を浮かせて、器用にズボンのベルトを外す。
律は身動きの取れない男子の股間にそっと手を伸ばした。
キュッ・・・
「うわあああぁっ!」
「おおっ、なかなかいいものお持ちですねご主人様~」
トランクスに指先を滑り込ませて、その硬さを確かめる。
「これは握りやすい太さ・・・くるくる回しちゃおうか?」
特に亀頭部分は念入りに指先でこね回す。
さらに指先で輪を作って、棹の部分を上下させると男子の腰が跳ね上がった。
「でも先っぽが滑りやすいみたい。滑り止めが必要ね」
律の巧みな指さばきに反応する男子のペニス。
「こんなにトロトロしたものを出しちゃって♪」
あっという間に潤滑液を搾り出され、
優越感に満ちた律に顔をのぞかれたまま男子は喘ぐしかなかった。
唯に似ているかどうかは別として、律は美少女の部類に入る。
だが残念なことに彼女自身はそのことに気づいてはいない。
「先っぽをハンカチで包んじゃおうかな・・・」
ガマン汁でヌルヌルの指先をいったんトランクスから抜き取り、ポケットの中のハンカチを探す。
「あっ! もっといいことしてあげるよ♪」
何かを思いついた律はそっと腰を持ち上げた。
そして自分のスカートの中に手を伸ばし、ズリズリとパンティを脱いだ。
「ホカホカしてきもちいいよぉ~」
その脱ぎたてのパンティをペニスにかぶせると、男子がビクッと大きくのけぞった!
「フフッ、はっずかしい~~」
律が柔らかな生地に包まれた亀頭部分を優しく撫で回すと、嬉しそうにビクビクと震えた。
「さっきより大きくなってるじゃん!」
その言葉を聞いた男子は首を横にブンブンと振った。
それでも律の言葉責めは止まらない。
「女の子のパンツはかされて感じちゃうなんて信じられなーい」
男子の羞恥心をあおるような言葉を容赦なく浴びせる律。
471: ◆bhtt9De1Cxz0
09/10/09 12:12:38 aJqtLzHX
「でも唯のパンツじゃないもんね。残念でしたー♪」
そしてついに律は両手で力強くペニスを握り締めた。
「悔しかったら唯のために我慢しなさいよ?無理だと思うけど」
彼女の右手と左手が別々の動きを見せる。
片方は先端をこね回し、もう片方で棹を上下に擦る!
「こんなにカチカチならもう少し優しくしごいてあげるだけで・・・ふっふーん♪」
そして適当なタイミングで左右の手の動きを逆転させる。
決して慣れることのない刺激を受け続け、律に押さえ込まれた男子はあっというまに絶頂寸前に追いやられた!
「ほらほら、このままじゃイっちゃう?イっちゃいますね~」
もはや男子が射精するのは時間の問題だと気づいた律は、軽い寸止めプレイで男子を翻弄する。
少し強めに亀頭を揉み解したり、棹をゆっくり扱いたり・・・
「いつもならここから寸止めしちゃうんだけど、今日は速攻でイかせちゃう!」
律はペニスにかぶっていたパンティを取り払うと、ヌルヌルの亀頭を素手で包み込んだ。
そして彼の顔を見つめながら小刻みに手首を上下させる・・・
「あ、ああっ、ダメですっ・・・でちゃ・・・」
「ふっふーん♪」
男子がイく直前になったのを感じた律は、徐々にしごく速度を抑えていった。
彼の呼吸が激しくなるにつれてゆっくりとした動きに切り替えていく。
(このリズムでイかされると病みつきになっちゃうかもね?)
律の手コキは精妙を極めた。
もはやイくしかない男子を天国の一歩手前で縛り付けてしまうような技巧。
彼女の下で喘ぐしかない男子にとっては、天国と地獄が入り混じったような時間が繰り返されている。
(気持ちいいのがずっと続いてるよぉ・・・!)
だがそれもやがて終わりのときが来る。
「ああっ、出ちゃう~~!!!」
「だらしないなぁ・・・ほら、イって!!」
律の許しを得て、さらに亀頭が膨らんだ。
ひときわ大きな声を上げて、男子は長い長い射精のときを迎えた。
472: ◆bhtt9De1Cxz0
09/10/09 12:13:25 aJqtLzHX
「出た出た♪ でもここからもう一回」
自分の手の中でペニスが弾け、真っ白な液体が彼の腹部を濡らした直後だった。
再び律はペニスを元気良く扱き始めた。
「ひいっ!?」
「それアンコール♪アンコール♪」
敏感になったままの亀頭をこね回され、悶絶する男子をきっちり押さえ込む。
そしてまたさっきと同じくらいの硬さまで導く。
「また元気になってきたよ!」
律は再び大きくなったペニスを愛しげに撫でながら、彼に軽くキスをした。
「律・・・さん・・・」
「お客さんのリクエストには応えないとね~」
うっとりした表情の彼を見ていたら、律のほうも少し感じてしまったようだ。
軽く腰を浮かせて、彼とさらに密着する。
パンティを脱ぎ去って露出した繁みにそっとペニスを迎え入れる。
「すぐに出させてあげる。」
すっかり熱くなった膣口に、カチカチになった男性自身をあてがう。
クチュ・・・
「ああっ!!」
声を上げたのは男子のほうだった。
「ほらほらほらほら~!」
律はそのままカチカチのペニスをクリトリスに擦り付けるようにしながら快楽を貪った。
男子のほうも一度きっちりと搾られたおかげで二度目の射精まではかなりの時間を要した。
しかし、自分の上で熱心に腰を振る律の痴態を見せ付けられてはたまらない。
体の底からあっという間に何かがせり上がってきた!
「あ、あたしも・・・気持ちいいかもっ」
息を弾ませる律を見ながら、男子もとうとう力尽きた。
さっきと同じように体を大きくそらせたまま、2度目の絶頂を迎えた・・・
「よしっ!思ったよりいっぱいでたから、この辺でカンベンしてやろー!!」
パンティをはき直して、制服もきちんと着なおした律は男子に向かっていった。
だが彼は律に激しく搾られたおかげで身動きひとつ取れない。
「これに懲りて唯と律っちゃんを間違えないよーにな!」
そういい残して、律は誰もいない教室をあとにした。
473: ◆bhtt9De1Cxz0
09/10/09 12:14:48 aJqtLzHX
「あー、すっきりしたっ!」
再びさっきのように首をコキコキさせながら歩く律だったが、思い出したように制服のうちポケットに手を伸ばした。
「アタシばっかり楽しんじゃったから、せめてあの手紙を唯に届けてあげようかな!」
自らのテクニックで骨抜きにしてしまった男子への罪滅ぼしとして、律は彼が書いたラブレターをその宛先に届けてやろうと考えていた。
だが改めてポケットから取り出した手紙を見て、律は愕然とした!
「ちゃんと折れないようにしてあげたんだから・・・あ、あれっ」
目をごしごししてもう一度見直す・・・間違いではなかった。
「う、うそ・・・これアタシに宛てた手紙・・・だったの?」
顔色が一瞬で青ざめ、すぐに赤面する。
自分のやったことに今更ながら律は動揺した!
「やだっ、どうしよう!アタシひどいことっ・・・」
「なんだ、騒がしいな~~」
「あっ、澪! どうしよー・・・」
律の様子が心配になった澪がやってきた。
事情を澪に話すために、二人でさっきの誰もいない教室へと向かった。
「うわっ!ミイラ寸前だ・・・ひでーな、律」
「唯のファンだと思って思いっきり搾っちゃったんだ!」
「ああ、さっきの・・・」
「でも違うんだ!アタシのファンだったんだ、この人っ」
いつになく慌てている律を見ながら、澪はポツリとつぶやいた。
「いいんじゃない? まさか彼も告白当日で律にエッチしてもらえるとは思ってなかったはずだし」
「そ、そうかなぁ」
「うん、だって気持ちよさそうな顔してるもん。この人。」
律はそーっと彼の顔を覗き込んだ。
たしかにそのようだ。
澪が言うように初回特典だと思ってもらうしかない。
「激しくしすぎちゃったけど・・・ま、いっか。」
頭をポリポリかきながら、律と澪は部室へと戻っていった。
END
474:名無しさん@ピンキー
09/10/10 01:12:31 SjprM44r
今更だが乙!
積極的過ぎるりっちゃんも可愛すぎる
475:名無しさん@ピンキー
09/10/11 03:27:06 +gSN8xmE
>>473
またくだらない逆レイプもんかと思ってたけど、反省。
すごく萌えましたww
476:名無しさん@ピンキー
09/10/15 00:42:48 Y+tGxrN5
書き込み無さ杉ワロタ
ってか投下無いと何話せばいいのかさっぱりだな
一行エロ妄想ならいくらでも出来るんだがそれもまた違うし
477:名無しさん@ピンキー
09/10/17 03:40:16 f2oGysrz
けいおん人気も末期かな
478:青太郎
09/10/17 04:39:57 /C/5xX71
世の中にはほとんど「保守」だけで半年以上過ごしているスレがあるんよ。
>>476
こうですか? わかりま(ry
479:名無しさん@ピンキー
09/10/17 04:48:06 /C/5xX71
『とある姉妹の恋慕 姉編』
ニア『とある姉妹の恋慕 妹編』
『水天の落涙』New
≪ファイルが選択されました≫
あの人を初めて見た時、なんだかとってもぴかぴかしてるなあ、と思いました。
あの人と初めて話した時、なんだか優しそう人だなあ、と思いました。
あの人に初めて抱きしめられた時――。
そんな感情がすべて恋に集約されました。
『とある姉妹の恋慕 妹編』
みなさんこんにちは。平沢憂です。わたしはこの春中学三年生になり、いよいよ受験です。
お姉ちゃんは高校生になり、部活に入ったそうです。
あのお姉ちゃんがそんな風に積極的になるとは思いませんでした。
高校とはそれほど魅力的なところなのでしょう。度々話に出てくる“先生”もその一因のようです。
もしかしたらお姉ちゃんはその人に恋をしたのかもしれません。
さびしいとは思いつつも、心のどこかで安堵している自分がいます。なぜなら――。
あ、電話です。受話器を取ると、お姉ちゃんからでした。
『もしもし。憂?』
「うん。どうしたの? お姉ちゃん」
『あのね、今日先生がうちにくるんだ。だから』
「うん、わかった。準備しておくね」
『ありがとー。じゃ』
「うん」
電話が切れたのを確認してから、わたしは受話器を置きました。
そっかー。とうとう家に呼ぶんだ。高校生って進んでるって聞いてたけど、まさかあのお姉ちゃんが……。
「お姉ちゃん、やっぱり“お兄ちゃん”のこと忘れたんだね……」
わたしは今でも覚えてる。優しい眼差し、しぐさ、声……。もちろんあの約束も……。
だからいつも結婚とか、そういうことの想像の相手はお兄ちゃんだった。
結婚して、お兄ちゃんのお嫁さんになって、それから……。
「あ……!」
頭をふって、赤くなった頬をあわてておさえる。いけない、はやく準備しなくちゃ。
お姉ちゃんに恥ずかしい思いはさせたくない。
けれど……。
いったいいつになったら、会えるのかな……。
お兄ちゃん……。
480:名無しさん@ピンキー
09/10/17 04:56:59 /C/5xX71
扉が開く音を聞いて、わたしはとうとう来たんだと思いました。いったいどんな人なんだろう。
かっこいいのかな、それとも渋い大人っぽい人なのかな。
まさか悪い人なんじゃ……などと、期待と不安を胸に、二階から出迎えると――。
え……?
そこにいたのは若い男の人でした。優しそうな……いえ、優しいんです。それはもう知っていることなんです。
だってそこにいるのは“お兄ちゃん”だから。
あの時より大人っぽくなっているお兄ちゃんが、変わらない優しい眼差しを向けます。
どきり、と心臓が跳ねたような気がしました。
「妹の憂だよ」
お姉ちゃんに紹介され、あわてて我に返りました。お姉ちゃんは覚えていない。
そしてこういう風に紹介されるということは、お兄ちゃんもわたしたちのことを覚えていない可能性が高い。
「初めまして」
これで否定されてもいいし、そのまま受け入れても構わない。
なぜなら、ここですべてを明かせば、お姉ちゃんも思い出してしまうから。
こればかりはやっぱり譲れなかった。だから今は耐えるんだ。本当は抱きつきたいくらい恋しいけど、我慢しなきゃ……。
結局、挨拶もそこそこに、二人は勉強のためにお姉ちゃんの部屋へ行きました。
お兄ちゃんがわたしたちのことを忘れていたのは、喜べばいいのか、悲しめばいいのか……微妙なところです。
(でも、また会えた……)
それだけで、今は十分。これから次第で、どうにでもなるんです。
離れ離れにならざるを得なかったあの頃とは違って、今はいつでも会えるようになったんですから。
「それに、約束したんだから……」
また頬が赤くなりましたが、構わずいそいそとお茶の用意をします。
そういえばお兄ちゃんって何が好きなんだろう。さりげなく聞いてみよう。
――ねえ、恋人っているの。
階段を上がっている途中、お姉ちゃんの声が聞こえてきました。
わたしはとっさに足音を消して、耳を傾けました。そうだ、すっかり忘れていた。
お姉ちゃんはそうじゃなくても、お兄ちゃんはもう恋人がいてもおかしくないんだ。
わたしは急に心配になりました。いたとして、どんな人なんだろう。どこまでの関係なんだろう。
キスしちゃったのかな。もしかしてそれ以上の―。
――ギターが恋人だ。
――そうじゃなくて……。
――いない。生まれてこのかた、そういうのはな。
わたしはほっと胸をなでおろしました。よかった。
わたしは邪魔しては悪いので(本当は邪魔したい思いもあったけど)お茶とお菓子を差し入れて、
すぐに自分の部屋に戻りました。
カギのかかった机の引き出しから古びたアルバムを取り出し、表紙をめくります。
そこには一枚の写真が飾られていて、わたしは見るたびに胸が温かくなります。
写真の中で幼いわたしがお兄ちゃんに抱きついて、右の頬にキスしています。
お兄ちゃんは困ったような、驚いたような半笑いで……。
481:名無しさん@ピンキー
09/10/17 04:58:57 /C/5xX71
(お兄ちゃん……)
そっと下着の中に手を入れると、わたしはベッドに座り込みます。
「あ、あう……」
こういうことをするようになったのはいつからだろう。気づいたらしていたんだよね。
寝ようとしている時、お兄ちゃんのこと考えてたら切なくて。苦しくて……。
いつの間にかあそこへ手が伸びるようになっていた。
いじる指はわたしのじゃなくてお兄ちゃんのになっていて、頭の中ではわたしたちは恋人になっていた。
『憂……』
いままではあの頃のお兄ちゃんだったけど、今はさっき見た―すぐそばにいる―お兄ちゃんがわたしを可愛がってくれる。
「ん――。ん――。んぐ!?」
声を聞かれないように、シーツを噛みつつ、指を筋にそって動かします。頭がぼんやりして、想像に没頭してしまう……。
『憂、大きくなったね。綺麗だよ……』
優しい声で囁かれて、抱きしめられて……。アルバムに触れている手がぷるぷる震えています。
「ん。んあっ、あはっ。んっ、んっ」
ああ、聞かれたらどうしよう。えっちな子だって思われちゃう。軽蔑されちゃうかな。
本当はこんなことするべきじゃないのに。なのになんでこんなに興奮しちゃうんだろ……。
「んっ、ふっんっ!? んくっ!?」
くちゅくちゅって音が聞こえる……。きっと下着の中はすごいことになってるんだろうな。
あとで着替えなきゃ……。上の方にある皮をかぶった小さなお豆さんをこすると、体中に電流が走った。
「あ、ああ! んっあっ、や、ああっや」
お兄ちゃん! お兄ちゃん! おにいちゃん! おにいちゃん!
『憂。いいよ、イってごらん』
「ああ――!」
シーツを強く噛んで、わたしは大きくビクンと震えました。その後震えは小刻みになり、やがておさまりました。
息を整えつつ、アルバムを見て微笑みます。
(お兄ちゃん、大好きだよ……)
482:名無しさん@ピンキー
09/10/17 05:06:25 /C/5xX71
シャワーを浴びて、下着を替えた後、居間でのんびりしていると、お兄ちゃんが降りてきました。
さっきの声が聞かれたかもと思いながら、どきどきして応対すると、もう帰ってしまうらしい。
「じゃ、じゃあその前にお茶でも……」
あ、声上ずっちゃった。恥ずかしい。
「そうかい? じゃあご馳走になるよ」
「はい!」
わたしは急ぎつつ、けれど落ち着きを持った感じを装いつつ、台所に向かいました。
ああ、スーツ姿のお兄ちゃんかっこいいなあ。お姉ちゃんはいつも見てるんだよね。ずるい。
「お疲れさまでした」
「ああ、ありがとう」
きゃっ。お茶を渡す時手が触れちゃった。顔赤くなってないよね?
「憂ちゃんも大変だろうに」
「いえ、楽しいですから」
お兄ちゃんとこうしてるのも楽しいよ。ずっとこのままでもいいくらい。
「偉いねえ。まったく、憂ちゃんみたいな子とお近づきになりたかったよ」
「そんな」
心臓が早鐘を打つようにどくんどくんしています。いいの? いいんだよね?
お兄ちゃん。しかしこのあとさらにお兄ちゃんはわたしをどきどきさせてくれました。
「憂ちゃんみたいな子が彼女だったらなあ」
「そんな彼女だなんて……」
「器量もいいしさ。ずっとそばにいてほしいね」
「あの、あの……! ごめんなさいっ!」
もうダメ! もう無理! 逃げるように台所にきたわたしは、胸に手をあてて落ち着こうとします。
しかし落ち着くどころか、何度も頭の中でお兄ちゃんの言葉が反響してきて、まったく治まる気配がありません。
それどころか――。
「うっ……ひっく」
嬉しすぎて涙がぼろぼろこぼれてきました。待ち続けた10年間が、やっと報われたような気がします。
たとえお兄ちゃんは覚えていなくても、あんな風に言ってもらえるのはすごく嬉しい……。
「ぐすっ、いいんだよね」
もう待たなくても、いいんだよね。これからは好きな時に会えて、話せるんだよね。
お兄ちゃん――。
「それじゃ、お茶ごちそうさま」
「いえ……」
まあ、でも。すぐに返事が出せるほど心の準備ができていたわけではないので……。
「明日お姉さんの実力見て、まずかったらまた来るけど……大丈夫かな?」
「あ、はい! 大丈夫です! お願いします!」
もうちょっと待っててね、お兄ちゃん。いいよね?
だってわたしは10年も待ってたんだから。
483:あとがき
09/10/17 05:09:06 /C/5xX71
こんな風なペースも、ある意味らしいといえばらしいかもしれません。
まあ、他の人の作品も見たいというのが正直なところなんですが。
それではこれにて。
484:名無しさん@ピンキー
09/10/17 09:35:31 SuT1IFM+
>>483
乙です! いつも楽しませてもらってます。
憂可愛いなあ。
485:名無しさん@ピンキー
09/10/17 16:29:06 8JrzOERa
俺は量より質派だから別にこのままでもいいや
486:名無しさん@ピンキー
09/10/19 15:15:54 Sevbm9+v
【国際トピックス】オマーンに空港建設、マスコミは「オマーン国際空港」と呼ぶか苦慮
スレリンク(news7板)
同空港の概要紹介
URLリンク(jbbs.livedoor.jp)
487:名無しさん@ピンキー
09/10/20 14:33:15 t2RqVUGh
あずにゃんがおしりの穴を弄られてえっちな気分になっちゃうssが読みたいでござる
488:名無しさん@ピンキー
09/10/20 16:34:59 w7lpwp3z
読みたいでござる
489:名無しさん@ピンキー
09/10/20 20:27:54 LntB2f0b
よーみーたーいーでーごーざーるー!
490:名無しさん@ピンキー
09/10/20 23:02:54 gHplgQed
黄泉対出御座瑠
491:青太郎
09/10/21 19:08:05 EE8XLFS2
読みたいでござるー。
492:名無しさん@ピンキー
09/10/21 19:10:22 EE8XLFS2
≪はじめから≫
≪つづきから≫
≪新規ルート≫
ニア≪アーカイブ≫ New
『とある姉妹の恋慕 姉編』
『とある姉妹の恋慕 妹編』
ニア『水天の落涙』New
≪ファイルが選択されました≫
どこで道を間違えたのか、何が悪かったのか。わたしはいまだにわからない。
わかるのは、たとえわかったとしても、それがもう手遅れだということだけだ。
『水天の落涙』
入学当初は初心者でコードも知らなかった唯が、最近はめきめきと上達している。
もちろんわたしや律やムギが教えてるのもあるが、一番の理由は彼だ。
新任の教師である彼は、昔はスゴ腕のギタリストだったらしい。
ためになる話をいっぱい聞けるチャンスなのだが、何分出会いが悪すぎた。
おかげでまともに顔をあわせられない。
向こうもそれに配慮してくれているらしく、わたしとは接触しようとしない。
わかっている、わかってはいるんだ。
彼は思ってるほど破廉恥で下劣な人間ではないというくらい。
傍目から見ても、唯の話を聞いても、彼の優しさは、誠実さは、よくわかる。
……だからよけいに話しかけづらいのかもしれない。
「昨日はお兄ちゃんとねー、一緒にアイス食べたんだあ」
「へ、へえ」
嬉しそうに語りつつも、ギターを捌く手にミスはない。
女の子は恋をすると強くなるとはよく聞くが、本当にそうかもしれない。
いつかわたしも、こんな風に惚気る日がくるのだろうか。……あまり想像できないけど。
「それでね、『アイスを食べてる唯は可愛いな』っていってね、お兄ちゃん自分の分をわたしにくれたんだよ」
「そう。よかったな」
「でもそれを見てた憂がねー」
こういう話って、語ってる本人は楽しいんだろうけど、聞いてるこっちは……はぁ。
なんで唯なんだろう。こういう話には、一番疎いと思ってたのに。
「ほら。もう学園祭近いんだから、合わせるよ」
「はーい」
わたしは残りの二人にも声をかける。恋もいいけど、今はバンドに専念しよう。
なんだか逃げみたいだけど、こういうことも大切だと思う。
思うんだ――。
493:名無しさん@ピンキー
09/10/21 19:12:52 EE8XLFS2
「みんな、じゃあねー!」
部活も終わり、楽器の片づけが済むと、唯はすぐに帰ってしまう。
最近ではよくあることだ。わたしたちが各々返事をすると、唯は頷いて、嬉しそうに走り去っていった。
「唯ちゃん嬉しそう」
「実際嬉しいんだろうな」
嬉々として語るムギにそう返すと、律はスティックを手でくるくる回しながら、
「しかし男ができると付き合い悪くなるってのはホントだったんだなー。いいのかよ澪」
「何が」
「ライブが近いのに何も言わないじゃん」
「最近はギターの特訓してるって。むしろ助かってるよ」
「なるほど」
そう、あからさまに遊ぶ気なら、練習を大義名分にあれこれ言えるのだが、これでは逆効果。
実際成果が出ているのだから、口の出しようがない。
……って、何で邪魔したいみたいな感じになってるの、わたし。
「唯ちゃんはいいなあ。好きな人に好きって言えて」
ぼそり、とムギの呟きが聞こえ、そちらを見れば、ムギは窓の外をぼんやり見ていた。
まるでどうやっても手の届かない星を見上げているようだった。
「ムギ……?」
「あ……すみません。ぼうっとしてました。何でしょう」
「いや……何でもない」
やっぱり、この歳になるとみんな、恋をするものなのかな。
何だかさみしいような、くやしいような……。
「ん? どうした、澪?」
「いや、何でもない」
ま、こいつは例外だろうな。
学園祭当日、声を枯らしたというアクシデントがあったものの、
唯はもう人前で披露しても恥ずかしくない―それどころか、こっちが気後れするほどのレベルにまで達していた。
唯がすごいのか、教えた人がすごいのか……多分どっちもだな。まったく、お似合いだよ。
これが終わったらあの人にお礼を言おう。あ、それとも謝るのが先かな。
どちらにしろ、いいかげん会話くらいはしないと。きっとあっちも気まずいと思っているだろう。
わたしは彼がきらいなわけではないし、彼もそうだと思いたい。
出会いがもし違えば―やめよう、唯に悪い。ともかく、これが終わったら、彼と仲直りするんだ。
そう、これが終わったら――。
「…………」
…………。わたしはだるい体をゆっくりと起こした。いい夢だったな。
ここはあの時のステージでもなければ、準備室でもないというのに。
『願いの一つぐらい――叶えてみせろ!』
振り向けば、ゲームに興ずる男の姿があった。
わたしはとくに興味を示さず、服を着て用務員室の扉に手を掛けた。
ゲームに熱中している今、声を出すのも億劫なのだろう。あの男は何も言わなかった。
携帯を見ると、昼の一二時をすこし過ぎた頃らしい。休日なので、廊下を歩く生徒の姿はない。
校庭で熱心な体育会系の連中が声を出しているくらいだ。
しばらく何も考えずに、ふらふら歩いていると、よく知った声が聞こえた。とっさに隠れる。
494:名無しさん@ピンキー
09/10/21 19:16:58 EE8XLFS2
「あのな、弁当を用意してくれたのは感謝するけどな、何もお前が来ることないだろ」
「えー。だって二人きりになれるのって学校くらいしかないし」
「それはそうだけどさ……」
唯と彼が空き教室にいた。不平をいう彼の顔は、不機嫌なそれではなく、穏やかで、優しいものだ。
「ほら、ここまで持ってきたごほーび……」
目をつぶり、背伸びをする唯に、彼は片手で頭をかきつつ、受け取った弁当を机の上に置き――。
二人の唇が重なった瞬間、不意に瞳が潤んで、涙がこぼれた。拭っても拭っても、それが止まる気配はない。
「えへへ」
「まったく」
笑って抱きつく唯と、微笑んで唯の頭を撫でている彼。
それが涙を通してぼやけて見える。……もうだめだ。
わたしは足音をたてないように注意し、その場を後にした。
なにが、いったいなにが間違っていたんだろう。
どうして唯があんなに愛されて……幸せになって……。わたしは、わたしは……。
「うっく……ひっく、うあああ」
外に出ると、雨が降っていたらしく、あちこちに水たまりができていた。
それが無様なわたしを映し、よけいに惨めな気分にさせる。
下着が吸いきれなかった粘液が水たまりに落ちて、小さな波紋をつくった。
「どう……して……」
涙越しに見上げた空は、忌々しいほどに青く、澄み切っていた。
【《アーカイブ》に戻る】
ニア【メインメニューに戻る】
495:あとがき
09/10/21 19:21:32 EE8XLFS2
需要に対して供給が絶望的に足りていない現在、
当方は支援を要請する次第であります。
496:名無しさん@ピンキー
09/10/21 19:59:54 6KRCRyPl
相変わらずこの澪ちゃんは可哀想すぎる・・・
497:名無しさん@ピンキー
09/10/22 18:34:56 NlKSZn5K
相変わらずバッドエンド臭がすごい。
澪が可哀想だな。
でも、面白いぜ。これからも続き待ってるよ。
498:名無しさん@ピンキー
09/10/23 04:08:28 IILzy2bU
785 名前:名無しさん@ゴーゴーゴーゴー![sage] 投稿日:2009/10/22(木) 22:20:53 ID:bUKJpOIr0
ぱふぅさんところ追記きてるね
やはりエキサイトが対応したようだ
URLリンク(www.pahoo.org)
787 名前:名無しさん@ゴーゴーゴーゴー![sage] 投稿日:2009/10/22(木) 22:21:56 ID:McPhONic0
更新されてるぞ
URLリンク(www.pahoo.org)
権利者もエキサイト運営もキビキビ動いてるなぁ
375 名前:友達の友達の名無しさん[] 投稿日:2009/10/23(金) 03:49:36 ID:BCmmhEKt0
権利者(「その人」)からpixivへ
「入れてあった著作者表示も意図的に消された上で写真を無断盗用されました。
適切な処置をして下さい」
pixiv「弁護士と相談するから待っててね」
→「東京幻想に削除依頼するから個人情報教えて」
権利者
「セキュリティ対策してないフォームから個人情報送信するのは不安。
必要なら郵送するので送付先教えて下さい」…10月3日
pixivから音沙汰無し
権利者「10月3日に問い合わせてから2週間以上連絡ありません。
最初の問い合わせから5週間経ってます。
状況を知らせて下さい」…10月18日
pixiv
「もう該当画像がpixiv内になくなったので知りません。
以降、この件で問い合わせあっても返事しません」
499:名無しさん@ピンキー
09/10/23 04:22:49 dOMjuxeE
乙です。澪が哀れですが面白いです。
続きも待ってます。
500:名無しさん@ピンキー
09/10/23 21:22:45 aD2D1r9D
俺も今書いてるんだが、仕事が忙しくてなかなか…
小出しにすると叩かれるから一生懸命書き貯めてるけど、この分じゃいつ書き終わる事やら
501:名無しさん@ピンキー
09/10/25 17:28:13 V0ofwh0L
澪「支払いは任せろ!」
むぎ「やめてー!」
502:名無しさん@ピンキー
09/10/26 15:48:04 73piV6tB
乙です
澪ちゃんにも愛の手を~
503:名無しさん@ピンキー
09/10/27 02:40:59 JFDuFeIG
あずにゃんと濃厚なスカトロプレイがしたいにゃん…
504:名無しさん@ピンキー
09/10/27 12:14:34 ieBgttXy
俺、この戦争が終わったら澪のハッピーエンドルートが追加されるって信じてるんだ……
澪が一番かわいそうなんだが、男子バンドの一人が悪役というのもちょっと抵抗が有るっぽい
結局それはそれって事なんだけどね~
505:名無しさん@ピンキー
09/11/01 00:02:48 0img9KsD
保守
506:名無しさん@ピンキー
09/11/03 16:33:16 WPFUP8kz
つかさが不幸になっているようです2
スレリンク(mog2板)
507:名無しさん@ピンキー
09/11/08 02:11:44 urm5ZGkK
もう職人さんは来てくれないのか…
508:名無しさん@ピンキー
09/11/08 03:18:34 hv5nqcaJ
>>507
百合を書くと百合板行けと叩かれる(もしくは論争で荒れる)から投下しないだけだけど。
それとは別に、今書いている人については気長に待っていれば投下するんじゃね。
509:名無しさん@ピンキー
09/11/08 05:52:14 zQ+HDhgM
>>508
何だその未練がましくてみっともない書き込みはよ。気持ち悪い。
そこまでして投下したいなら、とっとと自分の書きたい物を書いて投下して
後は荒れようと何しようと一切口をつぐんで居れば良いものを
百合の件がどれだけこの場所に迷惑掛けたのか自覚ないだろ。
もういいから一切書き込みせず他所へ行け。
迷惑だ。
510:名無しさん@ピンキー
09/11/08 07:59:58 hv5nqcaJ
>>509
何を怒ってんだか。
511:名無しさん@ピンキー
09/11/10 12:48:12 SC9qPbd9
>>508
(;^ω^)
512:名無しさん@ピンキー
09/11/10 18:26:25 jG/k6ev0
>>509
アメリカみたいな方ですね
513:名無しさん@ピンキー
09/11/16 21:16:37 ZNm5vfsx
相変わらずすげー過疎ってるのな
514:名無しさん@ピンキー
09/11/17 23:07:45 9sPZO6pJ
よし、ここは俺が書いて流れを変えるしかあるまい!
515:名無しさん@ピンキー
09/11/20 02:48:33 4xWSdvTs
しばらくぶりに見たらアニメ2板のけいおんスレは
ほぼ終焉してるんだな。
アニメ放送の終了が遅くて7月で、あれから4ヶ月?
終わるの早すぎじゃないか?まあしょうがないとはいえ。
同人とかはまだぼちぼち出ているみたいだが……
516:名無しさん@ピンキー
09/11/21 20:25:04 ShC8QON6
所詮一過性の人気
わかってたことじゃないか
517:名無しさん@ピンキー
09/11/23 13:52:29 Km+mg14Y
本スレは今でも結構にぎやかだと思うが・・・PINK系列板のけいおん!スレはほぼ終わっちゃってるけど
518:515
09/11/24 02:16:45 u0dAgqe9
>>517
その通りだわな。今見たら健在だった。
けいおん!紅茶627杯目
スレリンク(anime2板)l50
どうやら再利用されかけで途中放棄された重複スレを
間違って参照してしまった模様。
誤報スマソ
519:名無しさん@ピンキー
09/11/26 19:55:03 fBHquJy7
保管庫更新して戴いた模様。thx > xNdoYlD0HQ殿。
-- eroparoside
520:名無しさん@ピンキー
09/12/04 07:37:22 +BQVGTB6
保守
521:名無しさん@ピンキー
09/12/07 08:31:17 hR+3cdPG
tesut
522:青太郎
09/12/09 21:23:48 ivTqCKJe
規制は辛いです。
523:名無しさん@ピンキー
09/12/09 21:25:26 ivTqCKJe
≪はじめから≫
≪つづきから≫
ニア≪新規ルート≫
≪アーカイブ≫
≪!注意!≫
≪すでに特定のルートのセーブデータが存在するのでルート選択・変更が制限されます≫
おとうさんとおかあさんにおもちゃやさんにつれてってもらった。いつもはそとからみているだけだったのに、きょうはなかにいれてもらった。
おとうさんが、ひとつだけすきなものをえらんでごらん、とぼくにいった。ぼくはまえからほしかったものがふたつあって、まよったけど、すごくなやんで、ひとつにきめた。
ニア『このたたくのがほしい』
『このおすのがほしい』
≪ルートが選択されました≫
あの時俺に玩具を与えたのは、罪滅ぼしのつもりだったのか、それともただの憐れみだったのか。
まあ、そんなことはどうでもいい。要するにあいつらはくそったれのクズ野郎ってことだ。テメエの都合だけで簡単に他人を切り捨てるクズ。
そんなに自分が可愛いか。反吐が出る。だがそれ以上に俺をムカつかせるのは――。
俺の周りにはそういう腐った野郎が大勢いたってことだ。
ドラムルート ~中華料理人~
524:名無しさん@ピンキー
09/12/09 21:26:47 ivTqCKJe
「屋台の設置場所はここで……あ、一応いっておきますけど、火の扱いには十分気を付けてください」
「ああ、わかってる」
「それから……」
あの人の頼みとはいえ、なんで俺が女子高の出し物をやらなきゃなんねえんだ。
しかし、逆らうとロクな目にあわんしなあ……。ここはしたがっておくしかねえ。
「……以上です。何か質問は」
「いや、ない」
俺は渡された書類一式に目を通して、視線を眼鏡をかけた女生徒に戻した。若いくせによく働くものだ。
「それと―これは私見なのですが―笑った方がいいですよ」
そういって微笑む彼女に、俺は怪訝な視線をおくった。そんなことをする必要がどこにあるのか。
へらへら年下の女の機嫌を取ってでも売れということか。冗談じゃない。俺にそんなものはいらない。
「仏頂面してたら、お客さんが逃げちゃうと思います」
「逃げるなら売らなければいいだけだ」
女生徒はくすり、と笑って、
「それもそうですね。失礼しました。……自信がおありなんですね」
「これでずっと飯をくってきたからな」
辛い修行を乗り越え、親方から店を託されて以来、俺はそうやって生きてきた。だから自慢できるというものだ。
「それじゃ、楽しみにしてますね」
「金を払えば作ってやる」
それだけいって、俺は生徒会室を出た。書類の束を小脇に抱えて歩いていると、無駄に金のかかっていそうな扉から誰か出てきた。
扉横の壁面にあるプレートには『校長室』とある。
「おや、懐かしい顔ですね」
「……けっ」
あのキザ野郎か。相変わらずの白い服と、ヘラヘラしたツラだ。そいつはチラリと俺の脇のものを見て頷く。
「なるほど。あの方も配慮はしてくれているようだ」
「何の話だ」
「私の独り言ですよ。耳障りなら鳥の囀りとでも思ってください」
こいつは相変わらず遠まわしでキザだな。俺は鼻を鳴らしてさっさと歩く。するとこいつは隣を歩きだしやがった。
「外部からの出店ですか。真っ当な職につけたようですね」
「どっかの大馬鹿野郎のクソッタレのおかげでな」
そうだ。本当なら、もっとやりたいことがあったんだ。あいつが邪魔をしなければ……クソッ、思い出すだけでムカムカしてきやがる。
「まだそんなことを」
「うるせえ。事実だろうが」
「あなただって、彼の真意はもうわかっているでしょうに」
「知るかそんなもん。だいたいなあ、俺はお前も許しちゃいねえんだ」
俺がそういうとこいつは床に視線を落として、深いため息を吐いた。
「自分は悪くない。すべての責任は相手にある……すばらしい思想だ。敬意を表しますよ。見習いはしませんけどね」
なんだよそれ。いつもそうだ。てめえ―てめえらは全部わかってますみたいな顔して、俺を見下して、除け者にする。
そうやってお前らは自分を守って安心したいんだろ? クソ野郎どもが。
話を変えましょう、とこいつは言いだし、窓から見える施設を指さした。
「あそこでライブをやる一団があります。奇遇なことに、人数と使用楽器が我々と同一なのです」
「だからどうした」
「……まあ、見せた方が早いでしょう。少々のお時間をいただきますよ」
「…………ふん」
525:名無しさん@ピンキー
09/12/09 21:28:39 ivTqCKJe
まあ、開店には間があったわけだし、外で時間をつぶすよりは校内にいた方が都合がいい。
俺は仕方なく、こいつの提案を受け入れてやった。道中、物珍しそうにこっちを見る女どもに視線を返すと、あわてて目をそらすか、こちらを見続ける。
なんだ、逃げやしねえじゃねえか。
「教職員に男性がいるとはいえ、やはり珍しいんでしょうね」
「知るか」
そいつらことごとくに笑みを返すこいつは、傍目から見ればたらしだ。
――やっぱりあっちの優しそうな人がいいなあ。
――ええー。わたしはああいうワイルドな方がいいと思うけど。
……あの大馬鹿野郎はこういう雰囲気が苦手だったな、そういえば。今はどうしているんだか。ま、知ったこっちゃねえけど。
講堂の中は見渡す限り、女でまみれていた。ここにあいつがいれば、『女の宝石箱やー!』とでもいったのだろうか。今はもう知るよしもないが。
「立ち見でいいですか?」
「ああ。どうせすぐに出る」
合唱部のコーラスをぼんやり聞いている横で、白服は何かを探しているようだった。目当ての女でも捜しているのだろうか。
こいつも変ったな。いや、それをいうなら俺もか。もっとも、俺は変わりたくて変わったわけじゃないが。変わらざるを得なかった。
夢をあきらめて、好きでもないことやらされて……。もちろん俺を雇って育ててくれた親方には感謝している。
だけど、俺が本当にやりたかったのは―。
「あ、やはりいましたね」
白服に肩を叩かれ、そちらを見ると、俺は目を見開いた。アナウンスが軽音部の出番であることを告げるが、そんなことはどうでもいい。
「やはり知りませんでしたか。彼らは、この学校に勤めているんですよ」
あいつらがいた。俺と白服と共にバンドを組んだ、あいつらが。苦々しい気持ちが胸に満ちていく。
「これが見せたかったものか……」
「これは半分です」
白服はもうあの二人を見てはいなかった。ステージで今まさに演奏を始めようとする四人を見上げていた。
いや、もしかしたらその中の一人に注目しているのかもしれない。
「私も彼らも、もう後進の育成に力を注いでいます。もう終わったことに執着するのはやめにしませんか?」
「俺の中では終わってねえ。てめえらが勝手に終わりにしただけだろうが……!」
そうだ、あんなの認めねえ。俺がそういうと、白服は目を細めた。
「やはり私の言葉は届きませんか。あの方の厚意を無下にするのは残念ですが、仕方ありませんね」
話は以上です、といって、白服は前の方の席へ移動した。その背中を俺はひと睨みしてから、視線をステージに戻す。
『ワン ツー スリー フォー ワン ツー スリー!』
ドラムの女が、スティックを叩いている。やがて演奏が始まり、四つの楽器が動きだす。全員、楽しそうに演奏している。
実際楽しいんだろう。楽器を鳴かせるのが、楽しくしかたないんだろう。俺もそうだった。毎日が楽しくて楽しくて――。
「…………チッ」
何を今更。もう戻りはしないっていうのによ。もう時間も近い。屋台に向かっても早すぎることはない時間だ。
だが、プログラム通りなら、すべて聞いた後でも問題はない。
…………。
…………。
…………。
……チッ。
結局、俺は全部聞いてから行くことにした。…………ところで、作詞した奴はどんな感性してんだ?
526:名無しさん@ピンキー
09/12/09 21:30:16 ivTqCKJe
「毎度」
売れ行きは上々だった。なぜか女生徒が大量にやってきて、飛ぶように売れた。
まさかラーメンがここまで女子高生に人気だとは思わなかった。今度からはもっと仕入れよう。
「よっ」
「……うっす」
あの人―山中さわ子がやってきた。ここで教師をしていると本人から聞いた時は驚いたものだ。
「生徒から聞いたわよー。『おいしいラーメンを作る美形がいる』って」
「どうも」
注文を受け、さっささっさとつくる。渡すと、「ああ、本当においしいわねー」といって去っていこうとする。
「あの……お代」
「ああ、ツケといて。今月ヤバいのよねえ。やっぱり持つべきものは有能な後輩ね」
まるでそれが当然のようにあの人はそういって人ごみに消えていった。これだから縦社会はいやなんだ。
陰鬱な気分で調理していると、さっき見た顔がやってきた。たしか真鍋とかいったか。
なぜか警官がかぶってそうな帽子を頭にのせている。
「売れてますか?」
「これでラストだ」
代金をもらい、俺は盛って差し出す。受け取った真鍋は、さっそく口にする。
「本当。おいしい……」
「……当たり前だ」
俺はあらぬ方を見て視線をそらした。こうストレートにいわれると、気恥ずかしいものだな。
なんて思っていると――。
「ラーメンを頼もー!」
かなりの速度でここまでやってきたこいつの顔も覚えがある。さっきステージでドラムを叩いていた奴だ。
「売り切れだ」
「なんだとー!?」
「ごめん、わたしで最後なの……」
すまなそうに真鍋が言うと、カチューシャの女は、
「和さん、ちょいとそれをいただけやせんかねえ」
いやらしく両手をにぎにぎさせながら詰め寄る女に危険を感じたのか、真鍋は後ずさる。
「えっと、それはちょっと……」
「よいではないか。よいではないか」
俺はため息ひとつ吐き出して、カチューシャの女を制した。それから、昔親方が作ってそのままにしていたチラシをその女に渡す。
「そんなに食いたいなら本格的なのを食わせてやる」
「お、意外と近いじゃん」
視線を紙面に走らせて女が嬉々として言う。近いから出張にきているんだ。博覧会に呼ばれるのなら別だがな。
「ほうほう。よっし、絶対食いに行くからな」
「好きにしろ」
ていうか、タメ口かよ。真鍋もそのチラシをのぞきんで、
「わたしも行っていいですか?」
「好きにしろ」
最近の女子高生はこういうのがブームなのか? さっぱり理解できん。ま、客が増えるのはいいことだな。
常連はいるにはいるが、それでもやはりこういう新規の客を育てるのが商売の基本だ。親方の受け売りだがな。
さて、片づけるか。おら、お前らはもう帰れ。
「それじゃ、あとで」
「またなー」
「…………」
俺は二人を一瞥するだけにとどめ、リヤカーをひいた。“また”とか、“あとで”とか、そういう無責任な言葉は今でも嫌いだ。
そこに確実はない。だから裏切られる。
だから、嫌いなんだ。
527:名無しさん@ピンキー
09/12/09 21:31:11 ivTqCKJe
―『あとで会いましょう』
―『また会おうな』
そう言った夫婦は、息子を置き去りにしてどこかへ消えた。捜す気はない。捜したところで、過去が戻ってくることはないからだ。
ただ、自分が満足するかどうかの問題。なら、そういうのはさっさと見切りを付けるに限る。なあなあの関係が一番始末が悪い。
だから俺はあいつらとも縁を切った。裏切ったから。『そうではない。事情があるんだ』? 聞きあきたよ、そんなごまかし。
(結局人間関係ってのは、利がなきゃ成立しねえ)
それが商売だとか、信用だとか、友情だとか、言い方を変えて存在しているだけだ。
すなわち、信用できるのは互いに利が存在する関係―商いってこった。金に対するサービス。何とも分かりやすい繋がりだな。
ま、利益があるうちは相手してやるよ。
その先は、知らねえな。
俺はいつもの無表情をさげて、因縁渦巻くそこを後にした。
≪オートセーブします≫
…
…
…
≪セーブが完了しました≫
ニア 【第二章へ】
【やめる】
528:あとがき
09/12/09 21:32:24 ivTqCKJe
規制には困ったものです。
529:名無しさん@ピンキー
09/12/09 22:13:45 OHqAm88N
お久しぶりです
がむば
530:名無しさん@ピンキー
09/12/10 16:28:45 7Oc1nVYn
やばい、やっぱあなたの作品は大好きだ。
規制が解けたのはなんとも嬉しい。
531:名無しさん@ピンキー
09/12/10 19:44:32 16w7w7i1
お久しぶりです
ついにドラムルート 楽しみにしてます!!
やはりと言うべきか…白服はおすほうのようですね
532:名無しさん@ピンキー
09/12/10 20:39:04 PudgNh4x
お久しぶりです
ドラムルート楽しみです!
533:名無しさん@ピンキー
09/12/11 04:09:32 9YXRg9t1
お久しぶりです。待ってました。
今回も続きを楽しみにさせていただきます^^
534:名無しさん@ピンキー
09/12/13 11:49:57 eVsBTkrM
これは期待
535:名無しさん@ピンキー
09/12/16 12:14:12 wUYuYJlk
後進育成?
一人はハメ撮りして飲尿させて孕ませて中絶させてたような…
536:名無しさん@ピンキー
09/12/17 16:23:01 C17tgfpH
正直澪編はハード過ぎるだろ・・・常人なら精神病んでるレベル
537:名無しさん@ピンキー
09/12/17 17:52:26 Y0WmKLwe
>>535
口からアンモニア臭のする澪たんハァハァ…
538:名無しさん@ピンキー
09/12/20 08:36:08 BUnCYvDL
あずにゃんの痴漢電車がみたい
539:名無しさん@ピンキー
09/12/21 19:59:05 TUKJRzyt
けいおんは化に敗北したアニメ、もう終わったアニメなんだよ
職人なんて来るわけねえだろ。いい加減気づけよけいおん厨
こんなスレさっさと落とせ。目障りなんだよ
540:名無しさん@ピンキー
09/12/22 19:25:10 4DcFdcNF
まあ気長に待とうか
541:名無しさん@ピンキー
09/12/22 20:06:31 L/254AcO
>>539
何息巻いてんだ
542:名無しさん@ピンキー
09/12/24 07:19:35 wnYaa2qv
唯と先生(オリキャラ)で投下します。
543:唯のせんせー
09/12/24 07:22:53 wnYaa2qv
「先生」と唯が付き合い始めて半年経ったある日の放課後。
先生「すーすー」
唯「…んせー、せんせー?」(ぷに…ぷに…つんつん)
先生「ん~…?」
唯「はわわっ」
がんっ
唯「はぎゅっ」
先生「だ、大丈夫か?」
唯「あいたたた……お、おおぉぅっ?せんせーおはようごじゃりまふっ」
先生「…おはよ。とりあえず落ち着いて。お茶でも飲んで」
唯「はー…はー…こくこく」
先生「あ…上着、かけてくれたんだ?」
唯「え?え…えへ。せんせー、こんなところ(部室)で寝てるから。風邪ひいたら大変だし。お、お裾分けっ」
先生「はは、ありがと。助かったよ」
唯「えへん」
先生「で、ついでにキスしたんだ?」
ガチャン
唯「っちちちがっ!ししししてないですよっ」
先生「本当に?」
唯「うっ…………ま、まだだもん」
ちゅっ
唯「っ」
先生「唯は本当に可愛いな」
唯「んにゅ」
ちゅ…ちゅ…れろれろれろ。
首筋から頬、唇へと移動するようにキスをしていく。
唯「んぱっ…はっ…は…はっ……はぅ」
先生「大丈夫?続ける?」
唯「う…うん。あ…ちが、そうじゃなくてっ。あのっあのねっ。せんせーにお願いがあるの」
先生「うん?」
544:唯のせんせー・2
09/12/24 07:25:19 wnYaa2qv
二人きりの部室。
椅子に座る先生の上に、唯はちょこんと座った。
唯「えへへ。ずっとやってみたかったんだ~」
先生「そりゃ良かった」
唯「せんせー椅子っ」
先生「まんまだね」
唯「んしょ…んしょ」
何度か座り易い位置を探る度に、ぷにぷにしたお尻が先生の股間に小刻みに当たり続ける。
先生「…どうですか?お客様。座り心地は?」
唯「な何てゆーか…上手く言えないけど…すっ座り易くはないですねっ」
先生「へー…帰ろうか」
肩を押して立たせようとすると唯が強く抵抗した。
唯「でもっ。でもでもでも、凄く落ち着くの。…きっ気持ちいいし。えへへ。もう少しこうしてても…いいですか?」
先生「好きなだけいいよ」唯「はうっ」
耳元で囁きながら腰に手を回し、うなじにキス。
唯「んっ…あ…あっ…あにゅ」
先生「唯…」
ピクピク唯が感じる度に、股間にお尻がぐにゅぐにゅと食い込む。
唯「っ…せ…せんせー。もしかして…おっきくなっちゃった?」(ぐにぐにゅ)
先生「う…うん。でも唯も少し濡れてない?」
唯「はぅっ!?ななな何でわかるの~?」
先生「あ、本当なんだ?」
唯「う~///」
545:唯のせんせー・3
09/12/24 07:29:22 wnYaa2qv
するっ
無言で制服に手を滑らせシャツの中、ブラの上から胸を撫でていく。
唯「せ、せんせー…だ、だめ~っ。ここ部し…あんっ」
先生「大丈夫だよ。秋山たちはもう帰ったみたいだから。鍵もしてるし」
唯「で、でもでも恥ずかしいよ~」
先生「俺は恥ずかしくないよ」
唯「い、いいいじわる~」
先生「唯が…可愛いから」
唯「やぁ…っあ…あ、あ、んっ」
ふにふにぐにゅぐにゅ
胸を揉みしごく度に股間にお尻が当たり続ける。
コリッ
軽く乳首を弾く。
唯「あぅっ。せ、せ、せんせ~……。も、もだめ。汚れちゃうっ」
先生「もうちょっと…黒タイツを堪能したいんだ」
唯「へっ変な事言わにゃいで~…あっ」
ビクンッ
唯「はー…はー」
先生「唯?イッちゃった?」
唯「お、おかえしっ」(カチャカチャ)
先生「ちょ…ゆ、唯っ…ンッ」
唯「ちゅぱっ、ちゅぱちゅぱっ…ぁうっ」
先生「ゆ、唯…どこで…こんな…あっ」
唯「い、いちゅもせんせーから…さ、されてるもんっ」
先生「ん、は……んちゅっ」
唯「ひゃあっ?せ、せんせー、抵抗しちゃらめぇっ」
先生「こんな近くで…唯のお尻があるから…んちゅっちゅうぅっぷは」
唯「あぅっあ、ちゅぱ、あんっあっんっんっんっあぅっ」
ぶしゅっぶしゅっ
何度もイキ続ける唯とは逆に一度もイカない先生。
唯「せ…せんせー…私もしかして、へた?」
先生「や。き、気持ち良いよ。我慢してるだけ」
唯「…うぅ」
546:唯のせんせー・4
09/12/24 07:32:38 wnYaa2qv
しょんぼりする唯の頭を撫でて囁く。
先生「かわりに新しい事しても良い?」
唯「ふぇっ?いいいよいよっすか?おおおてやわらかかラカッ」
先生「あ、違う。違うって。これをこう挟んで動くだけ。…スマタってやつ。わかる?」
唯「すまた…」
先生「い、いいかな?」
唯「こくん」
先生「ありがとう」
ぐちゅっぐちゅっぐにゅっ
唯「ふゃあっ。せんせー…何かこれ、へんっ。やらしー」
先生「き、気持ち良いよ、ゆい」
ぐちゅっぐちゅっ
唯「やあぁうっ。やらしっやらしーよっ」
先生「くぅっ…は…はっ」
ぐちゅっぐちゅっぐちゅっぐちゅっぐちゅっ
先生「ごゴメン、もうっ」
唯「ふぇっ?」
ドビュルルルルッ…びゅぅっ…びゅっ…びゅっ
先生の白濁が唯の下腹部一面に地図を広げた。
唯「はー…はー…せ、せんせー…せんせーの……えっち」
先生「はっ…はっ…ご、ごめっ…っ」
先生は謝罪の代わりに微笑みながらキスをして。
唯は絡めた指先に少し力を込めた。
おしまい
547:名無しさん@ピンキー
09/12/24 07:38:36 wnYaa2qv
以上です。
548:名無しさん@ピンキー
09/12/24 10:52:17 0TFh/ezE
>>547
乙です。甘甘でよかった。
549:名無しさん@ピンキー
09/12/24 23:31:08 6tD0Zr8b
なんか唯っぽく無いなぁ…小学校低学年って感じがする
550:名無しさん@ピンキー
09/12/25 00:46:53 1zsLL9uh
>>547
乙、やっぱりエロパロは純愛に限ります
551:名無しさん@ピンキー
09/12/29 01:54:22 Up/lNKaq
平均的な日本女性の膣の奥行きは7から10cmです
これをもってペニスは10cmあれば短小ではないという説があります
しかし女性器には子宮頸部からさらに曲がった方向に奥があります
ここにさらに深く挿入できることを知る経験者は男女ともさほど多くありません
男性は亀頭先端から強烈な反発力を女性は最深部まさにお腹の中をかき回される快感を味わいます
この時の快感や刺激を知っている女性は普通の奥と思われてる子宮頸部への挿入では満足できません
ですからペニスの長さが15cmに満たない短小な男性は性経験の少ないできれば処女を選びましょう
極端な低身長で性器が未発達の膣の奥行が短い女性に根強い需要があるのも同じ理由と考えることも出来ます
552:名無しさん@ピンキー
09/12/31 18:40:08 7JrPXEFT
保管庫にエロパロ板12月分2作を追加更新。
ただし投下まとめページが編集不可能な模様。
どなたか更新できる人plz。出来なければ来年までとりあえずそのままということで。
内容は以下2行を
|[[ドラムルート ~中華料理人~>URLリンク(wiki.livedoor.jp)青太郎氏| オリ男料理人×律| 2009/12/09(水) 21:23:48|
|[[無題(唯×オリ男教師)>URLリンク(wiki.livedoor.jp)青太郎氏| 唯×オリ男教師| 2009/12/24(木) 07:19:35|
|[[無題(唯×オリ男教師)>URLリンク(wiki.livedoor.jp)青太郎氏| 唯×オリ男教師| 2009/12/24(木) 07:19:35|
の次の行に追加。
ではよろ。
553:名無しさん@ピンキー
10/01/03 14:29:25 IY/cWcMF
録画を見直してたら、13話の聡が可愛すぎたので
聡と澪で妄想を煮込んだものを投下します。
エロはこの投下ではないけど、続きでこつこつ書いてます。
554:男の子女の子 1/5
10/01/03 14:30:54 IY/cWcMF
Side Satoshi
唐突だけど、俺には好きな人がいる。
「ただいまー」
「お邪魔します」
「おかえりー」
今から顔だけ出して姉ちゃんを出迎える。
ばたばたと靴を脱ぐ姉ちゃんとは対照的に、きちんと脱いだ靴を揃えているのは、秋山澪さん。
姉ちゃんの幼馴染み。
「澪さん、いらっしゃい」
「お邪魔します、聡くん」
内心の照れを悟られないように、出来るだけきちんとあいさつする。
「聡ー、部屋で勉強するから、後でお茶とかお菓子持ってきてよー」
「おい律、自分でやれよ」
「えー別にいいじゃん」
ぶーっと頬を膨らませる姉ちゃん。
少しは澪さんを見習って女らしくなればいいのに。
「いいです、澪さん。適当に持ってくから、ちゃんと勉強教えてもらえよ姉ちゃん」
「わかってるよ。補習はやだもんなぁ」
「ほら律、早く勉強するぞ。じゃあ、聡くん」
「いででででで、耳ひっぱんなよー!」
姉ちゃんが澪さんに引っ張られていく。
我が姉ながらもう少ししっかりして欲しいと思う。
そしてやっぱり澪さんは素敵だ。
俺の好きな人、秋山澪さん。
555:男の子女の子 2/5
10/01/03 14:31:38 IY/cWcMF
Side Mio
唐突だけど、私には好きな人がいる。
「まったく、唯といい律といい、家族に頼りすぎだ」
「えーーあたしゃ唯ほど酷くねーよぉ。それに聡は憂ちゃんほど頼れねーもん」
律の部屋で勉強道具を広げつつ、さっきのことを突っ込む。
相変わらずごちゃっとした部屋だなぁ。
「どっちもどっちだ。ほら、勉強するぞ」
「えー帰ってきたばかりなんだから、ちょっと休もうよー」
「あのなぁ、律」
「もうすぐ聡がお茶持ってくるからさぁ」
にひひと、律がいやらしい笑みを浮かべる。
自分の頬が少し赤くなっているのがわかる。
「しょ、しょうがないな。ちょっとだけだぞ」
「はいはい、わかってますよ澪先生」
暫くして、ドアを叩く音がする。
「姉ちゃん、入るよ」
「おー」
お盆を持って入ってきた聡くんが、ベッドの上でぐだーっとなっていた律に顔をしかめる。
「もっとしゃんとしろよ姉ちゃん。制服皺になるよ」
「だいじょうぶだいじょうぶ。それよりお茶ー」
「はいはい。あ、澪さんもどうぞ。買い置きのお菓子で申し訳ないですけど」
聡くんのお日様みたいなにおいに、ちょっと胸が高鳴る。
「いいよ。聡くんも大変だね」
「澪さんほどの苦労じゃないですよ」
互いに顔を見合わせて笑いあう。
「なんだよー、私一人だけ悪者かよー」
ぶーぶーと律が抗議の声をあげる。
「んじゃ、ちゃんと勉強しろよ姉ちゃん」
「るっせー、高校生は大変なんだぞー」
殴るぞーというポーズを見せる律に、お盆でガードをしつつ部屋を出て行く聡くん。
私の好きな人、田井中聡くん。
556:男の子女の子 3/5
10/01/03 14:32:57 IY/cWcMF
Side Mio
お茶とお茶菓子で軽く休憩した後、早速勉強を始めた。
こういう時だけは律も素直に勉強する。
暫くの間、部屋には律がシャープペンをはしらせる音だけが響いていた。
「なぁ澪」
「なに?」
テキストを見ながら、適当に返事をする。
「やっぱ今でも聡のこと好きなの?」
「なぁっ!?」
律のとんでもない言葉にテキストを取り落とす。
「あ、やっぱそうなんだ」
「なななな、なに言いだすんだよ!」
「いやだから、澪って聡のこと好きなんだろ?」
「べべべべべ、別に、すすすす、好きとかそんなんじゃ!」
顔が真っ赤になっているのがわかる。
律に背を向けて、両手で顔を隠す。
「何年幼馴染みやってると思ってんだよ。澪ってけっこうショタの気あるよな」
「しょ、しょたって!?」
自分の隠してる性癖を指摘されて、余計に狼狽してしまった。
「聡が半ズボン履いてるの見た時の澪の顔、かなりやばかったぜ」
「うっ!」
「流石に中学に上がってからはそういう服装しないけどさ」
小学校の頃の聡くんのことを思い出し、胸のどきどきが増す。
「それにー、我が弟ながら結構もてるみたいだぞ」
「ほんと?」
「うん、ラブレターもらってたぞ。私に見つからないよう隠してたけど」
律の話を聞いて、ちくちく胸が痛む。
聡くんも同い年の子がいいのかな?
「澪さえよけりゃ協力するけど、どうする?」
「協力?」
恐る恐る振り返ると、律はにやりといやらしい笑いを浮かべていた。
557:男の子女の子 4/5
10/01/03 14:38:13 IY/cWcMF
Side Satoshi
「おーい、さとしー」
居間でゲームをしてると2階から姉ちゃんの呼ぶ声がした。
ぱっと見、めんどくさそうに。内心、すっげえどきどきしながら2階に上がる。
「どうしたの姉ちゃん?」
部屋に入ると、コートを羽織った姉ちゃんがいた。
澪さんはクッションに座っている。
「ちょっと用事思い出してさ。すぐ帰ってくるから、その間、澪のこと頼むな」
言うが早いか、姉ちゃんはばたばたと部屋を出て行った。
部屋に残されたのは澪さんと俺だけ。
「えーと……お茶のお代わりいります?」
「う、うん」
その後、学校の話とか姉ちゃんの話しを澪さんとしながら時間が過ぎていった。
時計を見ると、もう1時間近く経っている。
「姉ちゃん遅いですね」
「そ、そうだな。あ、よかったら聡くんの勉強見てあげようか?」
ずずいと澪さんがこっちに身を乗り出してきた。
なんだか笑顔が引きつってるように見えるけど、気のせいかな。
「じゃあ、お願いします」
558:男の子女の子 5/5
10/01/03 14:39:31 IY/cWcMF
Side Satoshi
澪さんが隣に座って教えてくれているが、半分も頭に入ってこない。
なんかいい匂いするし、さらさらの髪の毛が目の前にあるし……集中できない!
テキストを指差してくれる澪さんの指先、細くてすべすべしてそうで、すっげえきれい。
ノートに書いてること見なきゃいけないのに、澪さんの指や顔や髪ばかり見てしまう。
一瞬澪さんと目が合ってしまい、慌てて目線を落とす。
と、テーブルの下の澪さんの太股が目に入ってしまう。
いかんいかん!と、ぶんぶんっと頭を左右に振る。
「―だから、こうなって……聡くん?」
「あ、はい!」
ダメだダメだ、ちゃんと聞かなきゃ。
変な奴だと思われちゃう。
っていうか、さっきから心臓鳴り過ぎだ。
顔赤くなってないかな、変だと思われてないかな。
ちょっとだけ澪さんの表情を窺う。
あれ? 澪さんの顔赤い? 風邪気味なのかな。
「澪さん顔赤いですけど、大丈夫ですか?」
「あ、ああああああ。だ、だいじょうぶ!」
余計に顔を赤くして、ぶんぶんと手を振っている。
……すげー可愛い……。
澪さんに悪いと思いつつも、じっと見つめてしまう。
何か言わなきゃと口を開こうとしたその時、澪さんが先に口を開いた。
「その、あのさ……律に聞いたんだけど」
「え?」
「ラブレターもらったって、本当?」
がつんと、思いっきり頭を叩かれたような衝撃が走った。
559:名無しさん@ピンキー
10/01/03 14:40:20 IY/cWcMF
一旦以上です。
560:名無しさん@ピンキー
10/01/03 16:34:52 LRIZ/eLr
良く来たね。まあ、お茶でもひとつ
つ旦~
561:名無しさん@ピンキー
10/01/06 19:59:36 ukrRGJrK
しかし同人見てるとあんなに
けいおん!エロが世の中にはあふれているのに
ここはなぜこんな状態?
562:名無しさん@ピンキー
10/01/06 21:26:57 PPjBQwFO
自分で二次創作をやりたいと思うほど原作が優れていないから。
エロ同人が大量に出たのはキャラだけは可愛くて制作が京アニで注目を集めたから。
要は単に売れ筋に同人ゴロが集中しただけの話。
その作品が本当に優れているかどうかは、非エロ及び金の絡まない同人活動における
ファンの熱心さがひとつの目安になると言っても過言ではない。
563:名無しさん@ピンキー
10/01/06 21:34:04 irMbhtgZ
絵で表現するのと文章で表現するのは違うから
564:名無しさん@ピンキー
10/01/07 07:01:07 uxHCoHwu
>>562
確かに原作だけだと中身ないもんな。特に1巻とか。
出来の高い二次創作のほうが中身が濃くて優れてると思うことも有るし。
4コマだと一瞬難しいと考えたけど、あずまんがとかは優れてるしね。
まあけいおん!は3巻に入ってからはだいぶ面白くなったと思うけど。
それにしても、こっちとは逆にらきすた関係は
結構盛り上がってたような気が。
565:名無しさん@ピンキー
10/01/07 13:02:05 c7YngGLD
>>559
続き待ってます
566:青太郎
10/01/09 01:33:28 rqil/6VB
みなさん、あけましておめでとうございます。
567:名無しさん@ピンキー
10/01/09 01:36:10 rqil/6VB
「食堂勤務、ですか」
後日、呼び出しをくらった俺は渡された書類に目を通しつつ、目の前の女に聞き返した。女は頷いて、
「そ。嘱託でね。ほら、最近不景気でしょ? 食堂だって慈善事業でやってるわけじゃないし。
だったら売れるとこだけ売っちゃおうってこと。
あなたのラーメンバカ売れだったじゃない? だから」
その人気商品を食い逃げした女がよくもまあいけしゃあしゃあと……。
内心でため息を吐きつつ、書類にサインする。まあ、実働一日約一時間でこれなら断る理由はない。
店のものをそのまま流用するだけだからな。
「接客はしませんよ」
「それなら問題ないわ」
渡した契約書にチェックをしながら山中さわ子はぐっと親指を立てる。俺は対照的にうんざりした体で応接室を後にした。時計を見ると、どうやら今は昼休みらしい。
やけに騒がしいと思ったら、そういうことか。今も昔も、そういうところは変わらないな。
『よっ! 一緒にバンドやろうぜ!』
『…………経験は、ない。楽器も』
『大丈夫だって。貸してもらえるからさ。好きなんだろ?』
そういって手を伸ばしたあいつは、手を取った俺は変わった。それが必然だとか、道理だとか――そんな理屈には興味がない。
その『結果』が自分に何をもたらしたかが重要なんだ。結局、あいつは俺を裏切った。
伸ばした手を簡単に離して、自己保身に走ったあの大馬鹿野郎を許すつもりはない。
絶対に―。
第二章
「あ」
「…………」
廊下の曲り角で、真鍋に会った。いつもの制服姿で、何かのファイルを抱えている。何と言っていいか分からず、黙して立ち止った。
本当に、こういう時は何て言っていいんだろうな。故に先に口を開いたのはあっちだ。
「生徒会に何かご用ですか?」
「いや、別件だ」
あの人にもらった書類を渡すと、すぐにその趣旨を把握したのか、小さな声を出した。
「食堂で働くんですね」
「正社員じゃないがな。店はいつも通りだ」
「じゃあまた伺いますね」
あれから、頻繁にこいつはうちの店に来ていた。もう常連といってもいいくらいだ。
何がこいつをそこまでさせるのかはわからないが、気に入ってもらえたのは素直に喜ぶべきだろう。
だが―。
「よく来るな。財布は大丈夫か」
するとこいつは困ったように笑ってから、
「大丈夫ですよ。そんなに使うことはないですから」
「…………あまり親に頼らず、自分で稼いでみたらどうだ」
こんなこと、俺が言うべきじゃないのかもしれないが、そこが気がかりだった。
依存していれば、いずれ来るであろう『離別』に対応できない。
ひどい虚無感と絶望が待っている。できることなら、それを味わうことを防ぐべきだ。
俺のような思いをするのは、俺だけで十分だ。
「生徒会が忙しいのはわかるがな」
持っているファイルを見ながら言うと、彼女は顔を俯かせた。少しきつく言い過ぎただろうか。
いや、しかし間違ったことを言ったつもりはない。
それにどんなに遠まわしに言ったところで、本質的には何も変わりはしないしな。
それほど間をおかずに真鍋は視線を戻した。そして意を決したような顔をして、
「じゃ、じゃあ! 私を雇ってください……!」
…………。
…………。
…………。
「…………」
……は?
568:名無しさん@ピンキー
10/01/09 01:38:00 rqil/6VB
「それじゃ、調理の方は頼むよ。こっちは食券の受け取りと食器の洗浄してるから」
「ああ」
「あんたも若いのに大変だねえ」
「もう慣れた」
会話はそれくらいで、後は黙々と作業。気まずいとか、つまらないという感情はない。むしろ楽だった。
黙って慣れたことをするだけでいいのだから。
……真鍋を雇うかどうかはまだ決めていない。たしかに働けとはいったが、自分のところを志願するとは思わなかった。
何があいつをそうまでさせるのか、本当に理解できない。
将来的に飲食関係の仕事に就きたいのだろうか。だとしたら、これはインターンシップのつもりなのかもしれない。
しかし、何もこんな個人経営の店を選ぶことはないだろうに。
もっと発達した組織―チェーン店を多く持つ企業で学んだ方が得策だろう。それに気付かないあいつでもあるまい。
まったくもって最近の女子高生の考えていることはわからない。
そう思いながら学生が飲食している様子を見ると、見知った顔が複数あった。
一人がこっちの視線に気づいたらしく、俺はあわてて顔を背ける。……何をやっているんだ、俺は。いや、いいんだ。
関係がないのなら、関係を作りたくないのなら、こうして接触を拒めばいい。それで不快にも不利益にもならない、合理的だ。
そう、理に適っている。実に論理的だ。理性的でもある。
……なのにどうして料理にいらん細工をしているんだろうな、俺は。
――『な、なんじゃごりゃあ!』
予想通り、聞きなれた声の悲鳴が上がった。まあ、そのまま受け入れるような奴じゃないのは知っている。
起きるべくして起きたことだ。そんなこと分かり切っているのに、どうしてこんなことをするのか。
自分でもよくわからない、まったくもって。
――『おいそこの! 詐欺も大概にしろ!』
ペテンはどっちだ。俺は胸中で吐き捨て、そちらへ向かう。ほれ見ろ、面倒なことになった。
まったく、我ながら不可解だ。もう関わりたくないはずなのに。
「うるせえな……」
そういって帽子と顔周辺を覆う布を取った。これ頭かゆくなるんだよな。慣れるとあまり気にならなくなるが。
「てめえにはそれで十分だ」
「ちっ……」
そこにいたのはかつてともに同じものを目指していた三人。気がつけば別々の道を行っている三人。
もう交わることはないだろう、三人。
「……作る気が失せた」
俺とあの馬鹿はしばらく睨み合っていたが、やがてこっちが視線をそらした。あきたというより、うんざりだという感で俺は背を向ける。
「おや、じゃあ誰が料理するんだい」
背中にかかる疑問に俺は厨房を指差して答える。
「全部作ってある。時間的にも問題はない。配膳は頼んだ」
「それならいいんだよ。だけどね」
中年女性は声を小さくして、
「もう少し友達と仲良くしたらどうなんだい」
「そんな関係じゃない。赤の他人だ」
すると鼻を鳴らす音。
「赤の他人にここまでしてやれるほど、あんたは器用じゃないだろ?」
「……さあな」
勝手口の扉が、なぜか重く感じた。
569:名無しさん@ピンキー
10/01/09 01:39:47 rqil/6VB
「おー、今日も来たぞー」
真鍋同様、このカチューシャもうちの常連になりつつあった。こいつら以外にも、どこで聞きつけたのか、同じ学校の生徒がたまにやってくる。
本当に、最近の女子高生の好みはよくわからん。もっとも、あの頃の女どもの嗜好もよくわかっていないのだが。
「半ライス!」
「…………」
カウンター席に座っての第一声。これにはさすがに閉口せざるを得ない。この商売をやっていて、このような注文は初めてだ。
というか、そんなのそこらへんの店で充分だろ。うちはそんなにいい米使ってないぞ。
「半ライス……!」
「……お前」
「悪かったな、わたしの財布はもうぼろぼろなんだ! でもこれからバイトするからいいんだ! だから今だけは」
そりゃあ連日あれだけ注文していれば、金も底をつくだろ。それにこいつはバンドをやっている。
そっち方面にも金を使うだろう。俺はため息ひとつして、
「出世払い」
「へ?」
「バンドやってるんだろ? だったらそっちに時間と金を使え。こっちは後でいい」
俺も――俺達も親方にそうしてもらったっけな。まあ、この時期は金と時間がいくらあっても足りないだろうからな。するとこいつは目を輝かせて、
「そっか。じゃあ北京ダック―!」
「おい」
そんなやりとりをした後、カチューシャ(ツケのメモをとるときにこいつが田井中律という名前だとここで初めてわかった)はいつものメニューを腹に入れて、満足したように帰っていった。
「ああ、そうだ。軽音部のライブ見てた?」
「……まあな」
引き戸に手をかけたところで田井中が振り向いて聞いてきた。見てたというよりは、見せられたという方が正しいのかもしれないが。
「どうだった?」
「テクも運びもまだまだだったが、ネックは歌詞だな」
興味津々といった表情が、苦笑いにかわる。あはは……と乾いた力のない笑い声が口から漏れ始めた。
「やっぱり……?」
「最近の流行はよく分からんが、少なくともあれはない」
自分たちでもそう思ってるなら変えればいいものを……。もっとも、作詞者が頑固ならそれに苦労するだろうが。
俺たちも昔はそうだった。
『何でこんなこっぱずかしい歌詞歌わなきゃなんないんだ! ただでさえドラムは歌いにくいんだぞ!』
『何だとう!? 俺っちの美的センスが分からないとは、お前もまだまだだな!』
『あー、これ仲裁した方がよくないか?』
『私は見ていて面白いですよ』
……“あの子のおしりに頬擦り”なんて文句をシャウトできる精神など持っている人間は希少だろう。少なくとも俺はごめんだ。
570:名無しさん@ピンキー
10/01/09 01:42:33 rqil/6VB
「こんばんは」
田井中が帰ってからしばらくして、今度は真鍋がやってきた。生徒会より早く終わる部活を責めるべきか、部活より長く活動している生徒会を称えるべきか……。
「……おう」
「考えてくれましたか? アルバイトの件」
俺はさっと店内を見回す。客は全員返った後だが、やはりこういうことは事務室でやるべきだろう。
もっとも、うちにそんなものはないから、奥の俺の部屋ですることになるわけだが。
「まあ、あがれ」
少し早めの店じまいをして、普段居間として使っている座敷に真鍋を招く。
こいつは礼儀正しく礼をしてから、これまた礼儀正しく靴を脱ぎ、俺の前に座った。
何だかあぐらをしているこちらがいたたまれない気分になってくる。
「それで、なんでうちなんだ」
「働けといったのはあなたですし、その方が手っ取り早いですから」
「まあ、それはそうだな」
思えば、反論や否定をする必要はないわけだ。いそがしい時は確かに人手が欲しい。もともと親方と二人でやってきたのだから、それは当然の成り行き。
真鍋のことだ、すぐに仕事を覚えて役に立つだろう。しかし妙な気分だ。こんな若いやつといっしょに仕事するなんてな。ままごとならはるか昔にしたことがあるが。
……ふむ。
「……わかった。だが給料には期待するな。こっちも羽振りがいいわけじゃない。その分賄いをつけるつもりだがな」
それを聞くやいなや、この少女は顔を綻ばせて、
「ありがとうございます。それと、これからよろしくおねがいします」
「あ、ああ……」
何というか、まあ、あれだ。何かむずがゆいな。今まで俺が自分で決めることなんてあんまりなかったし、感謝されることもこれといってなかった。
あー、何かもやもやする。何て言葉にすればいいのか分からないな、こんな気持ち。
「一応雇うわけだから、それなりの形式が必要だ。用意するから少し待っていろ。出来次第こちらから連絡する」
連絡先をメモしようとペンをとった時、一瞬、視界がぼやけた。何だこれ。
しかしそれはすぐに治まり、いつもの定まった視界に戻る。気のせいか。
「私から連絡する時はどうしましょうか」
「店の電話番号を使え」
ペン先を走らせながらそう返す。そういえばうちに制服はないな。バンダナとエプロンがあればいいか。
「携帯電話は持っていないんですか?」
「昔使ってたがもう使っていない」
過去と決別するために、あいつらと関係のある品のほとんどは処分した。
機種変更という手もあったが、そんなものを使うような関係の人間はあの三人以外はいなかったので、金のかからない方法をとったまでだ。
自分で言ってて微妙にむなしく、かなしくなるな。
「そうですか。それじゃあ、今日のところはお暇しますね。また後日」
―『あとで会いましょう』
「おい……」
座礼をしてから立ち上がり、背を向けるその姿に言い知れぬ何かを感じ取った俺は、無意識に声を出していた。
ちっ……振り切ったつもりだったが、尾を引いているってことか? これは。
「はい?」
「……気をつけて帰れよ」
とりあえず思いついたそれっぽい言葉。しかし真鍋は嬉しかったらしく、微笑をもって、
「ありがとうございます」
嬉しそうに去っていくその少女を、どうも俺は帰したくないらしい。気がついたらその細い腕を掴んでいた。
「いや、やっぱり送ろう」
「大丈夫ですよ。夜道には慣れていますから」
だろうな。そう思う。しかし、今日はやけに感情的だな、俺。このあいだまではもっと無関心を装っていたはずだが。
あいつらと再会したのがまずかったのか?
まったく、理性的じゃない。賢くない、馬鹿げている。いや、馬鹿は昔から、か……。まったくもって、解せない。何もかも。
「でも……」
掴んでいた手に白い手が添えられ、腕からその下の手へと位置を変えられる。そしてそのまま、お互いの指が絡む格好となる。
「こういうのもいいですね」
「……かもな」
手をつなぐなんていつぶりだろうか。大切なものを握っていたはずの手。気がついたら何もかも失っていた手。失ったものを取り戻そうとしない手……。
「それじゃ、家までお願いしますね」
「ああ」
取り戻したいのだろうか。それとも、手に入れたいのだろうか――俺は。理屈……機械的に考えれば、すべては無駄と矛盾で切り捨てられる。
しかし、それをどこかで拒んでいる自分がいる。あの時捨てられた子供がそうさせれるのか、あの時夢を終えてしまったドラマ―がそうさせるのか。あるいは……。
少なくとも、この冷たく小さな手を離したくはないな、とは思っていた。
571:名無しさん@ピンキー
10/01/09 01:43:07 rqil/6VB
≪オートセーブします≫
…
…
…
≪セーブが完了しました≫
ニア 【第三章へ】
【やめる】
572:あとがき
10/01/09 01:44:40 rqil/6VB
みなさま今年もよろしくおねがいします。
573:名無しさん@ピンキー
10/01/09 03:45:18 QgNUpwn4
>>572
乙です!
こちらこそよろしくおねがいします。
574:名無しさん@ピンキー
10/01/09 16:10:22 +/mOixRv
>>572
いやー、やっぱり面白いです。
続きを楽しみにしています。
575:名無しさん@ピンキー
10/01/09 16:31:18 u2xNmkkv
もうここの職人は>>572氏だけでおk
別スレ立てるからほかの書き手はそこでよろ
576:名無しさん@ピンキー
10/01/10 01:46:00 HZfWqeNC
>>547
よし、次は処女喪失だ。
577:名無しさん@ピンキー
10/01/13 18:23:38 sPrjfiEY
>>572
亀だけどGJ
578:名無しさん@ピンキー
10/01/17 06:50:27 4wIympE0
唯の隣に住んでいる男の子(まだ小学生)がけいおん部のメンバー全員に
気持ちよくさせられちゃうっていうのはどう?
579:名無しさん@ピンキー
10/01/20 21:14:14 8yNLdhws
階段をのぼって突き当たり。
3年前に教えられたとおりの道順で、唯は音楽室にたどり着いた。
最後にここに来たのは冬休みのときだったから、もう2ヶ月以上前になる。
新年が明けてからはセンター試験やら、そこからなだれ込むように始まった受験やらで手一杯で、部室に気軽に足を運ぶ暇も精神的余裕もなかった。
今、思い出してもすこし気が重くなる。
もう数ヶ月もたてば喉元を過ぎるだろうか。
扉を開けた。
見慣れた部室はたいていは前に来たときと変わっていなかったが、年末に掃除をしたのか椅子と机が隅に寄せられていた。
組み上げられた椅子と机は、まるでずっと前からその役目を果たしていなかったかのようによそよそしく影のようにうずくまっていた。
窓は閉めきられていて、空気はすこし埃っぽく澱んでいた。
遠くからはしゃぎ声が聞こえて、唯はとっさに振り返ったがそこには両開きの扉が無表情で佇んでいるだけだ。
声は外からしていた。
唯は窓際までいって、ひんやりとしたガラスに頬をつけて下を覗き込んだ。
男子生徒が4人。
みんな卒業証書の入った筒を持って、ときどきそれで相手の頭を叩いたり、蓋を開け閉めして遊びながら熱心に話し込んでいた。
陽は出ておらず、空は薄くほの明かるい雲でぴったりととじられていた。
窓越しにまだ冬の冷気が感じられた。
扉の開く音がして、沈んだような、落ち着いているような気持ちでいた唯は一瞬心と身を震わせた。
振り向くと、ちょうど紬が入ってきたところだった。
580:名無しさん@ピンキー
10/01/20 21:16:48 8yNLdhws
彼女も唯の姿を認めてちょっと驚いたようだった。
「教室にいないから、もう帰っちゃったのかと思ったわ」
彼女の胸元で卒業生を示す紅白のリボンが映えている。
「どうしたの?」
「部室に忘れ物しちゃって」
紬は独特の優雅な足取りで部屋の真ん中まで来ると、辺りを見回して
「なんだか、寂しいわね」と微笑した。
紬は棚からティーカップを出すと、ひとつひとつ丁寧に箱にしまっていった。
陶器の触れ合う音が響く。
「ムギちゃんはいつ上京するの?」
しゃがんで荷物を整理している紬の手元を見ながら、声をかけた。
訊ねるだけなのになんとなく気後れした。
紬が地元を離れて東京に行くというぼんやりした未来に現実の色がついてしまった気がした。
「そうね、たぶん3月の末になると思うわ。なるべくこっちに残っていたいし」
「じゃ、それまでいっぱい遊べるね」
まだ20日間以上ある。
時間はたっぷり残されていると自分に言い聞かせながら、しかしきっとそれはあっという間に過ぎ去ってしまうだろうとも思った。
この3年間がそうだったから。
「そうね。澪ちゃんもぎりぎりまでこっちに残るって言っていたから、またみんなで旅行に行きましょ。今度こそ1番大きな別荘をとるから」
「あずにゃんは来れるかなぁ」
「どうかしら。春休みだからバンドが忙しいかもしれないわね」
たった1人の後輩は去年の秋に軽音部が廃部になってから、外部のバンドに加入した。
軽音楽という文化が校風に馴染まなかったのか、梓から以後、新入部員は入らなかった。
唯たちが事実上引退扱いとなって、部員が梓1人になってからも彼女は廃部にはしたくないと粘った。
それは自分のためというより、せめて唯たちの卒業までは部を存続させてあげたいという気遣いであることをみんな知っていた。
梓は部活動入部期間が過ぎてからも懸命に勧誘を続け、唯たちも勉強の合間を縫って手伝ったが、結果は芳しくなかった。
生徒会からの何度かの廃部勧告も梓は頑なに拒んだ。
来年、つまり唯たちが卒業した後の新入生を絶対に入部させるからと。
581:名無しさん@ピンキー
10/01/20 21:18:31 8yNLdhws
梓の熱意の源を理解していた唯たちは心配した。
新入部員が入る保障はどこにもない。
仮に入っても、4月までは梓ひとりで練習を続けなければならない。
唯たちもなるべく手助けをするつもりだが、いよいよ受験が迫ればそれも難しくなる。
唯にも部がずっと続いてくれれば良いという思いがないではなかったが、大切な後輩の才能と情熱の芽を守ることの方がはるかに重い責務に思えた。
他の3人も同じ意を持っていた。
結局唯たちの説得でもって、梓は廃部を受け入れた。
小さい子供のように泣きぐずった梓を見て、唯はもう満足していた。
「ライブのあずにゃん、かっこよかったよねぇ」
冬休みに一度だけ、梓の参加しているバンドのライブを見に行った。
新しい仲間に混じった梓は別の人のように見えた。
唯は安心した。
「ムギちゃんは大学でも音楽やるの?」
紬はしばらく黙った。
思案している風ではなくて、どう言おうか言葉を探しているような表情だった。
いつの間にか外の声はなくなっていた。
白く明るい曇り空が視界の隅で光った。
紬は唯の顔を見た。
「たぶん、やらないと思うわ」
「えぇ、もったいないよ。ピアノ、上手なのに」
そう軽口を叩きながら、紬の言葉に驚かない自分がいるのを感じていた。
部を引退してからというもの、唯はギターから遠ざかっていた。
勉強に忙しいと口実を作りながら、気の向いたときに手にとって軽く弾いてみるだけになった。
そして実際、弦に指をかけて弾き出される音はひどく渇いていて、充分な満足を与えてくれるようなものではなくなっていた。
燃え尽きたなどといえば大仰に過ぎるが、それに近い喪失感があった。
582:名無しさん@ピンキー
10/01/20 21:20:46 8yNLdhws
「唯ちゃんは、続けるつもりなの?」
「うーん、どうだろう」
言葉を濁したが、否定の響きは否応なしに混じった。
「りっちゃんは大学でもバリバリ続けるって言ってたわよ」
「おぉ、さすが、りっちゃん」
音楽が聞こえてくる。
今度は校舎の中からだ。
吹奏楽部が卒業生の送り出しでもしているのだろうか。
唯にとって音楽は手段だった。
怠惰で色のない、昨日と今日で代わり映えのしないような恒常的な日々を終止符を打つための。
なんでも良かったのだ。
音楽はついに目的にはならなかった。
高校生活を終え、その充実を喜びながら、次の行動をとれずにいた。
楽しかったのは音を作りだす行為自体ではなくて、お喋りのひとことひとことや、ケーキの甘さや演奏の一体感であって、ギターを弾くことは楽しさの層のほんの一部分に過ぎなかった。
その層を突き崩されて、もう一度積み上げろと言われても、ただおろおろする以外に術はなかった。
律や梓のように音楽への情熱を持ち続けられないのは当然の結果だったのだ。
彼女も同じなんだろうか。
そう考えながら、紬の白い指を見ていた。
すこし前まで鍵盤の上を走っていた指が所在なさ気に膝の上で重なり合っている。
紬から視線をあげると、両手を広げた黒板がある。
音符をぶら下げていない五線譜はなんだかもの悲しい。
日付のところが空白になって、『月』と『日』の字だけが存在感のあるゴシック体で記されている。
後で書き足しておこうと考えて、その無意味さに唯は心中で自嘲した。
583:名無しさん@ピンキー
10/01/20 21:22:22 8yNLdhws
「あ、私、下にお迎えの車を待たせてるんだったわ」と紬が慌てて立ち上がったので、唯も腰を浮かせた。
「よかったら、一緒に帰らない?送っていくわ」
「ごめん、今日は憂と帰るから。ここで待ってなきゃ」
「そう。それじゃあ」と言って、微笑みかけた紬は軽く会釈すると扉に歩をすすめた。
遠ざかっていく背中を見送っているうちに、何か言うべきことがあるような、言わなくてはいけないことがあるような、そんな衝動が唯の胸をついた。
「ねぇ」と呼び止めるのと、言葉が頭に浮かぶのとはほぼ同時だった。
体の奥が胎動したようにジリジリと熱くなって震えた。
「ムギちゃんは、最初、合唱部に入りたかったんだよね」
扉に手をかけていた紬は、ゆっくり体を唯に向けた。
「えぇ、そうよ」
「あのさ、やり直せるとしたら。もう一回高校生をやり直せるとしたら、ムギちゃんは軽音部に入る?」
訊いていて、自分でもずいぶん間の抜けた質問だと思った。
けれど高校生活の最後にはぴったりの間抜けさだとも思った。
応えはすぐに返ってきた。
「ねぇ、唯ちゃん。私、軽音部に入って、とっても楽しかったのよ」
透明で有無を言わせない毎日がふたりの中を通過して、その思い出の残滓が目の前で結晶化しダイヤモンドダストのようにきらきらと輝いた。
「もう1回繰り返しても、きっと楽しいと思うわ」
「うん」
もっと言葉を尽くして同意を示したかったのに、息を吐くような声しか出なかった。
「それに、私、実は合唱部がどこにあるのか、まだ知らないの」
そう言って笑った紬を見て、唯は初めて別れを実感した。
悲しいとか切ないとか、そういう境目の分からない感情がせりあがってきて息苦しくなった。
ひとりになった部室で、唯は窓を開けようと錠に手を伸ばした。
鍵おろそうとしたが、どこかで引っ掛かってしまっていてうまく外せない。
頭がかあっと熱くなって、やたらに力を入れた。
体重をかけてほとんど壊すくらい強くおろした。
鍵が勢いよく外れた拍子に窓枠で手をしたたかに打った。
一拍おいて痛みが走った。
息が乱れている。
唯はうつむいた。
暖かく湿った吐息と髪先が疼く右手にやわらかくかかった。
音楽は鳴りやんでいた。
そうすると、もう何の音もしなくなっていた。
自身の呼吸音と胸の鼓動だけがやけに耳に響いた。
そろそろ卒業式の片付けを終えた憂がやって来る。
雲間からわずかに陽が漏れて、一閃のか細い光芒が地を撫でたが、そのことに唯は気が付かなかった。
584:名無しさん@ピンキー
10/01/20 21:26:27 8yNLdhws
原作も卒業が近づいてるようなので書いてみた
つーか本当に軽音部はどうなるんだろう
585:名無しさん@ピンキー
10/01/21 12:58:12 KqftzxL5
モブレベルの新入部員が入ってきて安心して梓残して卒業
大学生1年目は飛ばして梓も即進学
586:青太郎
10/01/29 08:00:10 V3S/exXO
徐々に作品が増えて嬉しい限りです
587:名無しさん@ピンキー
10/01/29 08:01:08 V3S/exXO
奇妙な浮遊感と既視感の中、俺はその感覚に身を任せ、どこかへ向かっていた。
肉体を置き去りにし、意識をここではないどこかへ運んでいく。
何度となく繰り返したそれを、今日もまた始める。
ここではないどこか、現実には存在しない場所。
そこで“俺”は“ぼく”に還っていく。
第三章
「ったくよ、厄介なの押し付けてくれたよな」
「そんなこと。あの子に聞こえたらどうするんですか」
「構うことねえだろ。くそっ、親戚だからってなんであんなの引き取らなきゃなんねえんだ」
「一番辛いのはあの子なんですよ?」
「けっ。お涙頂戴ってか? そんなもんより養育費よこせって話だわな。
かわいそうかわいそうって。周りが同情するのはあの夫婦かガキばっか。
一番の被害者は俺達だろうに。ガキ一人にいくらかかるか知ってるか?
ン千万だぞ? 何でそんな大金他人のガキに使わなきゃなんねえんだ」
「すみません。私が産めない体なばっかりにあなたには……」
「ば、馬鹿野郎。誰もお前を責めちゃいねえよ。泣くんじゃねえよ……」
「すみません、すみません」
「……俺が悪かったよ」
――ああ、ぼくは悪い子なんだ。悪い子だから、おじさんとおばさんをこまらせてるんだ。
――みんなが言うんだ。かわいそうな子、すてられた子って。でもしかたないよね、ぼくは悪い子なんだから。
――ごめんなさい。ごめんなさい。悪い子でごめんなさい。
何だかんだ言いつつも、俺は普通に学校に通わせてもらい、高校生になっていた。
それが周りからの叱責を怖れてのものなのか、ある種の義務感によるものなのかは今でもわからない。
さらに疑問なのは、今まで掛ったであろう費用を二人に払ったら、なぜか二人揃って悲しそうな顔をしていたことだ。
なぜだろう。喜ぶと思ったのに。
小学生になっても、中学生になっても、そして高校生になってもあの時買ってもらった太鼓を叩き続けた。
それが唯一の家族との繋がりであり、心の支えだった。時間の流れによってそれはボロボロになっていったが、
それでもその都度修理して叩き続けた。それが何かのきっかけで噂にでもなったのか、俺の前にあいつが現れた。
「よっ! 一緒にバンドやろうぜ!」
休み時間、ぼんやり窓の外を見ていた俺の前にそいつはずかずかとやってきた。
あまり人と関わろうとしなかったため、俺には友人というものがなかった。
だから最初はただの人違いではないかと疑ったほどだ。
「…………経験は、ない。楽器も」
たしかに高校生ともなれば、そういうことをしたがる人間はいるだろう。
しかし、あんな玩具で人前に出るべきではないだろう。出たくもないし。
「大丈夫だって。貸してもらえるからさ。好きなんだろ?」
実は俺も始めたばっかなんだ、と笑うこいつに、嫌悪感はなかった。
ただ、明るいな、とか、元気だな、とか微妙に場違いな感想をもった。
「だから……な?」
差し出された手。あの頃から俺にのばされることのなかった手―人の干渉。
胸中がどこか懐かしく温かなものに包まれたような気がした。
だからなのだろう。その輝きに、光に誘われるままに、手をのばしたのは。
588:名無しさん@ピンキー
10/01/29 08:01:47 V3S/exXO
「おお、もう面子がそろったじゃんよ」
「まったく。あなたの手練手管には頭が下がります」
「人聞きの悪いこと言うなよなー」
初めての友人だった。
作ろうとしないから、作れなかったものだった。
だって仕方ないだろう? 俺は悪い子だから。だれかを不幸にするから。
だったら作らない方がお互い都合がいいじゃないか。
なのに――どうして――。
「…………俺でいいのか、本当に」
三人の視線が自分に集まる。三人は一様に首を傾げて、
「問題ナッシング。むしろ大歓迎」
「こちらこそ、と問い返したいところですね」
「嫌だったら誘わないさ。それとも迷惑だったか?」
「いや……」
ああ、なんで、こんな……。
どうしてみんな……。
俺はいらない存在ではなかったのか。
必要とされない、悪い子のはずなのに……。
「嬉しいんだ……と思う」
やっと見つけた、俺の居場所。
必要とされる存在。
嫌悪や軽蔑のない世界。
望んではいけないとわかりつつも、欲していたもの。
それを、俺は、やっと……。
589:名無しさん@ピンキー
10/01/29 08:03:41 V3S/exXO
(今思えば馬鹿なことをした)
あそこで突っぱねていれば、ムダな時間と金を費やすことはなかったのに。
後悔を脚にのせて外を歩いていると、見慣れたカチューシャがあった。
「おお」
「ああ」
「買い出しか?」
「まあな」
持っていた段ボール箱を少し揺らす。最近は客も増えてきたので、少し多めに仕入れている。
学校で作る分も買わなきゃならんしな。そっちの材料費は給料にも含まれている。
「部活はどうだ。サボらず練習しているのか?」
「も、もちろん!」
「目をそらして言うな」
「め、目指せ武道館!」
「…………そうか」
武道館、か。そいつは何の皮肉だ。それがこいつの夢だというのか。俺にとっては夢の終着だというのに。
「裏切るなよ」
「……?」
不思議がる田井中に、俺はぽつりと。
「今いる仲間に裏切られることはあっても、お前自身は絶対に裏切るなよ」
「いや、あいつらは裏切るとか、そういうのは……」
「わかったな」
「お、おう」
「ならいい」
田井中の肩を軽く叩いて、俺はその場を後にする。さっさと店に戻らねば。どうも体の調子が悪い。ふだんより時間を消費している。
「あ、お帰りなさい」
「……ああ」
開店前の店内にいた真鍋に返事をして、荷物を厨房に運ぶ。「『ただいま』って言うんですよ、そういう時は」「気をつける」悪いが慣れていないんだ。
しかしこいつに掃除を任せると見違えたように綺麗になったな。飲食店である以上、それなりに衛生的にはしているが、ここまでしようとは思わない。
そんなことより料理の味の方が大事だからな。
「もう少しで済みますから」
「まだする気か。もう十分だぞ」
「いえ、気になりますよ。こことか、あそことか」
「さっぱりわからん」
まあいい。時給制である以上こちらに支障はない。それとも特別に手当てをつけるべきなのだろうか。
親方からそういうことは教わっていない。これを機会にそっちの勉強をしておくべきだろう。ん、前が……。
「…………」
「どうかしました?」
「いや、なんでもない」
「でも」
「なんでもない……」
くそっ、また眩暈か。ますますひどくなっていやがる。心配そうに近寄る真鍋から逃げるように俺は店の出入り口へ向かう。暖簾を出さなきゃならん。
「おやっさーん、久々にきてやったぞー―ってあれ」
「…………ちっ」
店の戸をを開けて威勢よく現れたのは先日再会したばかりの大馬鹿野郎。よりによってこの状況でこいつがくるとはな。
あいつらから話を聞いてないのか? それともあいつらがわざと黙っていたか……。
「……失せろ」
「おやっさんは? 何でお前がいるんだ? それに真鍋も」
「いいからさっさと失せろ……!」
迷惑なんだよ。俺から何もかも奪ったくせに、てめえは何も失っちゃいない。
お前はいったい何なんだ。何がしたいんだ。俺に何をさせたいんだ。
お前らは表面だけ取り繕って、平然と人を切り捨てやがる。それが人間のすることか。
「お前はいいとして、真鍋のことは一応把握しておくぞ。こうして会っちまったんだから、職業上な」
「…………くそったれ」
視界がまるで撹拌されたように混然としていて、意識が維持できない。俺はその場に膝をつき、あいつと真鍋の声を最後にすべての感覚を手放した。