【田村くん】竹宮ゆゆこ 18皿目【とらドラ!】at EROPARO
【田村くん】竹宮ゆゆこ 18皿目【とらドラ!】 - 暇つぶし2ch732:名無しさん@ピンキー
09/06/24 01:13:23 XMyiJQwc
<虎と竜と、もう一つの幸せと 4>

アイツと一緒になると決めた時から、もう二度と一人ぼっちにはさせないと誓った。俺は一番近くで逢坂大河という奴を見てきて、そして、きっと誰よりも、そいつの喜びや痛み、そして優しさや強さや弱さや……
とにかく、他のやつ等が知りえる事のないものを、直接見聞きしてきつもりだった。
アイツが死んだと聞き、どこにもその姿が見つからなくて、それでも俺には信じられなくて……
でも、この教室の扉を開けた瞬間、俺以外の全員がそれを現実だと受け入れていて……
俺と他の人間の差が、そこにはハッキリと感じられて……
それがまたやるせなかった。
「いっそ、このままアイツを一人で行かせちまうくらいなら……」
冗談抜きで、かなり真剣にそこまで考えてしまっていた。後追いなんざ、情けない話でしかない。そんな事は分かっている。それでも……
あの時は、正直そこまで追い詰められていた。そう。俺は追い詰められていたんだ……

だが、それらが全部ウソだという……

既に机をつかんだ手の指先は白く変色し、完全に血の気を失っているのが傍目にもハッキリ分かる。だが、それでも力を込めずにはいられなかった。

考えられねえ。そいつは人として、やってはいけない事じゃないのか? タブーってヤツじゃないのか?

「そんな事も分からないのか、お前ら!?」と、よっぽど口に出してしまいたかった。しかし、元来、竜児の持った性格上、そうする事は難しい。

それを言えぬからこそ、机に八つ当たりしているといっても過言ではないだろう。すでに指先にはなんの感覚も感じなくなってきていた。

北村も櫛枝も亜美も能登も春田もそれ以外の奴らも、この件に参加していた誰も彼もが腹立たしく思えてならない。しかし、それ以上に……

「……!?」

黙ったままでいる竜児が気にかかり、先ほどからチラチラとその様子を盗み見ていた大河の視線が、ギラリと光る竜児の視線とぶつかる。
ガンの飛ばし合いでは竜児に対して無敵を誇っていた大河も、今回ばかりはバツが悪いのか「……う」と、慌てて視線をそらす。

今一番気に食わないのは─アイツだ。

お前が死んだなんて事を俺に見せつけて、それでアイツはどうしたかったのか。さっきの俺の絶叫を聞き出すためにか? それとももっと単純に、俺が悲しむかどうか試したかったのか? 俺が悲しまないとでも思っていたのか? それとも、単に面白半分でやったのか?

ざけてやがる、ありえねぇ……

お前が死んだと聞いた時、それを目の前に突きつけられた時、俺がどれほど心をえぐられたか、お前に分かるか?
分かるよな? いや、分かるはずだ。分からないワケがない。だって、それで受ける悲しみは、俺もお前も同じはずなんだ。もしも俺が死んだ時、お前はきっと悲しむ。俺はそんな悲しみをお前に味合わせるなんて事、少し望まねぇ。

なのに、アイツはそれを望んだ。それが─俺には辛いんだ。


733:名無しさん@ピンキー
09/06/24 01:13:53 XMyiJQwc
<虎と竜と、もう一つの幸せと 5>

竜児は、自分の中に吹き上がってくる暗い感情と必至に格闘していた。こんな気持ちは嫌いだった。早く飲み下してしまいたかった。
本当ならば、クラスメイト達の些細なイタズラに「やりすぎだっての、お前ら」と軽い感じで調子を合わせてしまいたかった。そうする事が出来れば、どんなに楽だろうか。
だが、どうしても今はそんな気分にはなれない。それはきっと─

アイツ……

すでに大河の視線は竜児ではなく、自分の目の前の壁に向けて注がれている。心なしか、背を向けたその姿は小刻みに震えているようだ。

どんどんと輪をかけて不機嫌になって行くその様を目ざとく悟ったのか、「おい高須、そろそろ機嫌を直してくれよ。な、頼む……」と、北村。

「………」
「なあ、頼むよ……」
「ああ、そうだな。いつまでもこうしていても、しゃーねー……」
「だろ?」

今ここにいる中で、一番それを願っているのは竜児本人だ。早くいつもの調子に戻りたい。早く、いつも通りの、騒がしくて騒々しくて、それでいて居心地のよい空間に戻りたい。
竜児はそれを切に願いながらも、それでいて「どうにも収まりが付かない」そんなジレンマに苦しんでいた。

「悪いが、しばらく一人にしてくれ─」

竜児はそう小声でつぶやくと、そのまま立ち上がり、黙って教室から出て行く。
後に残された面々はおのおのに困り顔を披露し、自分達の悪ふざけが、一人のクラスメートに与えた影響を、それぞれ思案していた。

「あれは、相当キズ付いてるわね。ああ見えて、高須君て結構ナイーブなとこあるみたいだし……」

亜美の発したその言葉は、他のクラスメートたちの表情を一様に重く曇らせ、そして、誰にも顔を見られぬよう、壁と向き合い立っている大河の目尻に、小さな涙を呼び込んでいた。




734:名無しさん@ピンキー
09/06/24 01:15:11 XMyiJQwc
<虎と竜と、もう一つの幸せと 6>
==================================================================

「やはり、もう一度あやまろう!」

竜児が教室を出て行った後、空間中に垂れ込んだ重々しい空気を払拭するかのように、北村が声を上げる。

「冷静になって考えてみれば、高須が怒るのも当然だ。俺たちは冗談にしてはいけない事をやってしまったんだ。それも面白半分でな。」
「うん、そだね。私もどうかしてたよ─」
北村の言葉に続けるように、実乃梨が口を開く。
「大河が、まだハッキリと高須君に気持ちを聞けていないって聞いて……」
その言葉に、大河の心がズキリと痛む。
「そんでもってエイプリルフールが近いってんで、よく考えずにノリだけで突っ走っちゃったもんね。」

─やりすぎた─

この場にいる誰もが、それを痛感していた。まさか、あの竜児があれほど取り乱すとは考えても見なかった。いや……
取り乱す事自体は分かっていたのかもしれない。標的である彼を盛大に取り乱させた上で、彼の本当の気持ちを隠れている大河に聞かせるのが、今回のタチの悪いイベントの終着駅のはずだった。
そう、ただのイベントのつもりだった。文化祭や修学旅行や、退屈な日常に、ホンのささやかな花を添えるだけの……
だが、そんな軽い気持ちで振るった刃は、その標的となった少年の心を一瞬で引き裂き、彼の心を鮮血で染め抜いた。

「必要とあれば、俺は高須に土下座、いや土下寝でもなんでもする! それでも足りないなら、地面にめり込んででも、許しを請うぞ!」
そんな事で、すぐに許してくれるかは、いつも通りの関係に戻れるのかは分からない。だが、そうせずにはいられない、と言う北村の瞳には、ハッキリとした強い意志の光。だが……

「そんな事、しなくていいよ北村君。」

ついさっきまで壁と向かい合い、溢れて来る涙を必死にその眼球で飲み込んでいた大河が、北村の決意に水をさす。どうやら目に溜まる雫をうまく消し去る事に成功したのか、振り返って他の面々に顔を向けた大河の目にはその痕跡すら残ってはいなかった。
コレまでの人生で、ただただ泣く事しか出来なかった数々の局面を、「こんなツラ、誰にも見せてたまるか」と、意地を張って生きてきた。その上で会得した「この涙、なかった事にしよう」的な特殊能力が、こんなところでも役に立つ。
それは竜児に会い、自分を支えてくれる人間に出会うまでに、「人に頼らない」「人に弱みを見せない」とかたくななまでのプライドでもって培われてきた特殊能力だと言えるかもしれない。

「そうは言ってもさ、タイガー……」
モノ言いたげな表情で大河の瞳に目を合わせる実乃梨の言葉を「いいんだってば、みのりん」と遮る大河。


735:名無しさん@ピンキー
09/06/24 01:18:41 XMyiJQwc
<虎と竜と、もう一つの幸せと 7>

「あいつの事はよく分かってるもん。あのお人よしが、あんた達相手に本気で怒ったりするワケないじゃん。とにかく、あんなツラしてても人には強く出られないヤツなのよ。心配するだけ損ってもんだわ。」

自らの胸中に渦巻く本音とはまったく違った事を口走りながらも、それでも大河の口は止まらない。

「どうせ犬は畜生系列の哺乳類に属するわけだし、きっと三歩あるいたらさっきの事なんて忘れるって。ひょっとしたらもうその辺でケロッとしてたりするんじゃないかしら?」

三歩あるいて忘れるのは鳥類だぞ逢坂。と言う北村の突っ込みに「あはは、そうだっけ?」と気のない笑みで相槌を返してはいるのだが、内心は穏やかではない。
さっきの「あいつの事はよく分かってる」という言葉ではないが、確かに大河は竜児の事をよく理解していた。
自分が発端となった悪ふざけで竜児が激しく傷ついている事も、その竜児の怒りの矛先の中心に自分が据えられている事も、教室から出て行く前の彼の態度を見れば一目瞭然だ。「それだけの事を自分はしたのだ」という自覚もあった。本当なら、今すぐにでも謝りに行きたかった。


でも、みんなで行ってはダメ……


彼は自らの感じた不快感を表情に出す事を極端に嫌っている。
生まれ出る時に、神の戯れで取り付ける羽目になた凶悪な鬼面のせいで、人から怖がられたり、そのせいで無為に気を使われたりするたびに、激しく落ち込むのだから。
そうならないためにも、常に暗い気持ちを胸の奥で強く押し付けて、それを誰にも悟らせないようにするのが、ある種、彼自身の自己防衛本能といえた。
大河はそんな彼を、確かに理解していた。


きっと、今の竜児は怒っている。
だけど、その怒りが収まった時、竜児はきっと落ち込んでしまう。
クラスの皆の前で、押さえきれない感情を表に出してしまったと。
それがクラスの奴等に気を使わせてしまったと。
竜児はそう言うやつなのだ。馬鹿が付くほどのお人よしなのだ。



北村君やみのりんや馬鹿チワワ、それにメガネにアホなんかは、きっと心から竜児の事を心配していてくれるだろう。だけど、ここにいる人間全部がそうだと言うわけじゃない。

単に、「やっぱし高須こえーー。ここで謝っとかないと、後で高須になにをされるかわかんねーぞ。」なんて事を考えているヤツだっているはずだ。
一年という時間をかけて、竜児がこのクラスメイト達に必死に歩み寄ってきたのを見ている。
怖がられ、恐れられ、影でコソコソと何を言われようとも、決して苛立ちを表に出さず、我慢してググッとその感情を飲み込んできた。
そして、そうする事で、少しずつ近づいてきたクラスメイトたちと竜児の距離が、自分のためにまた振り出しに戻ってしまうのは耐えられない。

だからこそ、行くべきではないのだ。これ以上、竜児にキズを負わせないためにも……


736:名無しさん@ピンキー
09/06/24 01:20:09 XMyiJQwc
<虎と竜と、もう一つの幸せと 8>

「でもタイガー。俺、高須とはこれからも仲良くやって行きたいし、このままじゃ俺自身ケジメがつかねーよ。」

珍しく、能登が大河の意見に口を挟んだ。同じクラスになったばかりの頃からは考えられない物言いだが、彼も一年の時間を共に共有する事で、多少なりとも手乗りタイガーにたいする免疫が備わっているようである。

「え、なに!? ひょっとしてこのままだとオレたちって、タカッちゃんと仲良くしてけないとかなワケ!?」

いまさら驚いたように口を開いたのは春田。生まれた瞬間から空気を読む事を拒絶し続けてきた、ある種の新人類に、教室中から「アイツは……」だの「でたよ……」だのと、野卑するような呟きが静かに飛び交う。
しかし、春田にとってはそんな言葉など、どこ吹く風。さして気に留めるでもなく言葉を続ける。

「やだよオレ! タカッちゃんとはずっとダチでいたいもん! なあ北村どうすればいいんだ? 謝ればタカッちゃん、許してくれるのか!?」

春田の必死の問いかけに、北村はあいまいに「ま、まあそうしたいのはヤマヤマなんだが……」と答えながらも、それをさせまいとしている大河に視線を向ける。
そして、北村の視線の行き先に、その視線の意味に気づく春田。珍妙な事に、その場の空気を読む事に成功したようだ。春田の開花である。

「なあタイガー! いいだろ行っても! オレ、このままじゃやだもん!」
「あ、あんたは相変わらず無駄にしつこいわねぇぇぇぇ……」

今にも教室から出て行きそうな意気込みの春田の首根っこを軽く飛んで鷲づかみにし、その行動を拘束する。
行かせてくれーーー! とジタバタもがく春田と、それを力ずくで押さえ込む大河。手乗りタイガーは健在である。と……

「いいんじゃない、行っても。」

それまで黙って事の成り行きを見ていた亜美が声を出す。

「はぁ? 何言ってやがんのバカチー? 行く必要なんて無いって言ったでしょ?」
「そりゃ、アタシだって、こういう時ってのは放っておく方が本人のためになるとは思うし、いま大勢で押しかけたら、それこそ高須君が後々「痛ってーな」的な事になるのは目に見えてんだけどさ……」
「後々痛いって、なんの話だ亜美?」
亜美の言葉の中に理解できない単語が含まれていたのか「何が言いたい?」と問いかける北村だが、「分かんねーヤツは黙ってろ!」と一蹴される。

「なんかこのまま行かないのは、アンタにナメめられてる気がして、どうにも釈然としないわけよ。」
「??? 舐める? 何だ? 何で逢坂が亜美を舐めてるというんだ? 話が見えん!」
「北村君! お喋り禁止! その口は塞がれた方がいいぜよ!」



737:名無しさん@ピンキー
09/06/24 01:20:43 XMyiJQwc
<虎と竜と、もう一つの幸せと 9>

くじけずに亜美に再び問いかけたところを、実乃梨が強引に北村を押しとどめさせる。そして、「さあ、そう言う訳だから、行くよみんなー!」と言い放ち、実乃梨は他の面子たちを先導するように教室から出て行く。その右手には北村を引きずって……

「あっ! ちょっと! 行くなって─」

ぞろぞろと教室から出て行くクラスメートたちの姿に、慌てる大河。その隙を狙ってか「チャンス!」とばかりに春田も緩んだ大河の拘束を振りほどき、廊下へ駆け出していく。

「あ、コラ!?」と春田を再度捕獲しようとする大河の右手が、虚しく空をつかむ。
「くっ、バカチー、てめぇ……」と大河の瞳が亜美に向けられる。が、当の亜美本人は至って涼しげな表情のまま。そして……

「ほんと、あんた等いいコンビだわ。」と大河に投げかける。

「何ワケのわかんない事言ってんのよ! 行っちゃダメなの! 竜児はそんな事望まない!」

語気を荒げ、「ナゼ行かした!?」と問い詰めようとする大河に、「あんた、何か勘違いしてんじゃないの?」と答える亜美。

「いいかよ、よく聞けチビ虎。アンタは何も分かってない。一年前ならいざ知らず、今の高須君なら、こんな事でキズついたりしない。」
「そんな事無い! 竜児のことは何でも分かるもん! それとも何!? アンタ、まさか私よりも竜児の事分かってるつもりなの!?」
「んなワケねーだろ! あんな馬鹿男の事なんて、知らねーし、知りたくもねーよコッチは!」

「知りたくても、出来ないんだよ」と続けて口を付きそうになるも、最後の言葉だけは何とかギリギリで飲み込む。

「私に分かるのは、高須君の事じゃなくて、それ以外のヤツらの事……」
「どういう……事よ……」

「アンタがどう思ってるか知らないけど、このクラスの中には、もうアンタが心配するような手合いなんて、いないんだよ。」

心のどこかで、「高須はヤンキーだ」なんて馬鹿なこと考えてるヤツはいない。あいつは本当に頭の天辺からつま先まで、優しさ以外の成分が含まれていない。そんな事は、このクラスの奴なら全員分かってる。そして、今は全員が、心から高須を心配している。

静かに言葉をつなげる亜美を、大河はただ驚いたように見開いた目で見ている事しか出来ない。

「これは高須君自身が、地道にコツコツとそうしてきた結果よ。そしてそれは、アンタだって関係してんじゃない。毎日毎日、飽きもせずにアンタの事を守って守って……自分よりもアンタの事ばかり大切にして……」


738:名無しさん@ピンキー
09/06/24 01:22:25 XMyiJQwc
<虎と竜と、もう一つの幸せと 10>

「そんな高須君の姿が、他のやつらの目にどう映ってたかくらい、アンタにだって分かるでしょ? 最初はマジでビビッてたやつも、手乗りタイガーっていうフィルターを通してヤンキー高須を見れば……。なーんだ、普通のヤツじゃんって事になるのよ。なったのよ。」
「で、でも……竜児はまだ気にしてるみたいだし……」
「たまに言ってるもん。まだ自分は他の奴等から何となく距離をとられている気がする時があるって……」
「そりゃ、周りが自分の事をどう思ってるか気づいてないだけでしょ?」
戸惑ったような大河の言葉に、亜美は「呆れた」とでも言いたげな表情で言葉を返す。
「アイツってば、本当に鈍感の代名詞みたいなヤツだしね。それに……。距離をとってるってのは、単に、アンタと高須君のクソ暑苦しい関係に近づきがたいってだけよ。
誰も高須君が怖いから近づかないんじゃない。むしろクラスのほぼ全員が、あんた達のラブラブッぷりに引きまくってんぞって話よ。」
「ラララララ、ブラブラ!?」

思わぬ単語の登場に、一瞬で真紅に染め上げられる大河の顔面細胞郡。否定の言葉を吐き出したいのか、口をパクパクと動かすも、残念ながら気の利いた言葉が出てきそうな気配ない。

「とにかくそう言うこと。もしもその事に高須君が気づいてないんだとしたら、アンタが伝えればいいだけの事じゃん。」
「手乗りタイガーフィルターのおかげで、クラスの皆に『本当の高須竜児』ってのが伝わったんなら、おんなじフィルター使って、本当のクラスメートの姿を高須君に伝える事だって出来るはずでしょ?」

「それ伝えるの、あんたの役目だと思うけどな~、あみちゃんは。」そう言うと亜美は大きく背伸びをし「何か、少ししゃべりすぎたかな」と一人ごちる。

739:名無しさん@ピンキー
09/06/24 01:22:58 XMyiJQwc
<虎と竜と、もう一つの幸せと 11>
亜美の言葉に、「本当なの? 本当にそうなの?」と複雑な心境を目で問いかける大河。

「あ~あ、本当にアンタってば、高須君の事しか見えてないのね。」
「え、いや、当方としてはそう言うわけでは……」

思わず、言葉がどこぞの営業マンのような口振りになる。
なんだか、亜美に自分の全てを覗き見られた感じになり、何となく気恥ずかしそうに亜美から視線をそらす。
そんな大河の様子を視線の橋に捉えながら、亜美は「それにしても」とつぶやく。

「高須君もどうかしてるわ。あんなラブラブ状態だってのに、まだ本人に何も伝えてないってんだからさ。」

「その点に関してだけは、亜美ちゃんはタイガーの味方かもね。」とおどけてみせる亜美。
が、その言葉に大河の心がズキンと痛む。

「ま、今回のことで、高須君の本当の気持ちを聞けたわけだし、一応収穫ありってことね。後はあんた自身がケジメつければ、全部丸く収まるって。」

再びズキンと痛む大河の心。

「ま、こういうのも、付き合ってけば誰だって通る道だって。今回は高須君の気持ちがハッキリ分かっただけでもよしとすべきなんじゃねーの? って……」

亜美が大河に視線を向けると、そこには顔面真っ赤にしながらも、両目に大粒の涙を携えた虎の姿。思わず亜美の饒舌トークにストップがかかる。

「ねえバカチー……」
「な、なによ……」
「もしも……、もしもさ、その収穫ってのがなかったら……どうだと思う?」

不意に飛んできた大河の問いかけに、亜美の顔が「はぁ?」と思案顔に歪む。そして一瞬考え込んだ後─

「そんなの、単に高須君の傷つき損ってだけ……」

そこで、大河の言葉の意味に疑問を感じ、思わず言葉を切る。大河の大きな瞳から特大の雫が零れたのは、それと同時だった。
亜美の次の言葉を待つことなく、大河は身を翻して駆け出していた。

「今アイツなんつった? 収穫がない? 何言ってんだよ、ついさっき聞いたばっかりじゃねーか、高須君の本当の気持ちを。 まさか、聞こえてませんでしたってオチじゃ、いや、聞こえてないはずないし……」

教室に取り残された亜美は、今しがたの大河の言葉の意味を思索する。そして「まさか……」と小さくつぶやいた。


740:名無しさん@ピンキー
09/06/24 01:23:01 vXkcV+gl
sageて

741:名無しさん@ピンキー
09/06/24 01:26:45 XMyiJQwc
sageを今勉強してきました。申し訳ない。
以後気をつけます。

742:名無しさん@ピンキー
09/06/24 01:28:05 XMyiJQwc
<虎と竜と、もう一つの幸せと 12>
==========================================================

私はバカだ! 本当に大バカだ!

教室を駆け出し、廊下を走る。どこへ向かえばいいのか分からないが、しかし目指すべき者はハッキリしていた。

本当に謝らなければいけないのはアタシ。他の誰でもない、アタシ!

先ほど目の当たりにした竜児の怒りの中心に自分がいるから……というわけではない。そんな事ではなく、単純に、竜児をだます事に加担した他の皆には、なんの罪もありはしなかった。そう思った。

あんなウソ、付くんじゃなかった!

数日前の昼食時、竜児が北村の用事に付き合うからと、席を外していた。

最初は実乃梨だった。日常の一コマのように、いつもと同じテンションで大河と雑談していた実乃梨が聞いた。
「んでさぁ、結局最近、お二人さんはDoなのよ?」
実乃梨らしいといえばまさにその通りの問いかけに、近くの席にいた木原と香椎が加わってくる。
「あ、そこんとこ私も気になるーー」
「ひょっとしてキス以上とか? 実はもっと先までまで行ってたりする?」
「ば、ばか言うな! んなワケないだろ! なんで私がアイツとキ、キキ、キジュ、キ、キスなんて!?」
「いや、なんでって、つきあてるんだよね二人?」
「し、しらん!」
キスはしていた。聖バレンタインの夜に二人で走ったあの日の夜の、あの橋の上で……
「なに、マジ? キスもまだって、ちょっと遅すぎじゃない?」
「まさか、ちゃんと告白もしてないとかないよね?」
「知らない! 聞いてない! 覚えてない!」
聞いていた。覚えていた。忘れるわけがない。あの時の竜児の真っ直ぐな言葉が、どれほど自分の中に強烈で鮮烈で鮮明で鮮やかな衝撃を与えてくれたのか、忘れろというほうが無理だ。
だが、そんな事コイツ等の前で言いたくないし、言う必要もない。
しばらくダンマリを決め込んでいる事にする。そうすれば、周りの野次馬根性丸だしなヤツらもすぐに飽きると思っていた。が……

いつの間にか増えてやがる。

気が付けば、その会話の中に、能登や春田も混ざり、なんやかんやと騒ぎ立てていた。
「そりゃ、高須もひどい事しやがるぜ。」
能登が知った風な口を利く。
「まさか、逢坂さんもまだ言ってないとか言わないわよね?」
「え、ええええ? あ、ああ、あたひゅは……」
赤面し、壊れたからくり人形みたいにカタカタ動く大河の様子を見て、「ああ、これは言ったんだな」と、誰もがその無言の回答を受け取っていた。
「しかし、だとしたら高須め、余計にゆるせん! オレなんて言いたくても言う相手がいないんだぞ!」
こぶしを握り締める能登の視線が一瞬、近くにいるクラスメイトの一人に向けられた事は、向けられた本人である木原を除いた全員の目に明らかだった。
「なにタイガー、まだタカッちゃんに好きって言われてないの~? ひで~じゃん、タイガーは言ってんのに、それってゆるせね~!」という春田の声はデカかった。
それに呼応するように、教室中の視線が大河を中心に結ばれていく。

そこからはアッと言う間に話がまとまっていった。「高須の本音を暴き出す組合」が結成された。


743:名無しさん@ピンキー
09/06/24 01:30:27 XMyiJQwc
<虎と竜と、もう一つの幸せと 13>

教室の隅で、興味なさげにしていた亜美なんかは、「そう言うの、亜美ちゃん、趣味悪いと思うけどな~」などと言っていたようだが、変に盛り上がった状況下では、その言葉に耳を貸すものはいなかった。

そして、計画はあっと言う間に組みあがってしまった。

「高須のヤツ、きっとビビルぜぇーー」
「泣くかもよ? たいがーたいがーって、あの高須がだぜ?」
「もう何もいらないから、戻ってきてくれ~とか言ってさ。」
「あ、何かそれありそ~」

「高須の本音を暴き出しちゃえ連合部隊」は、まるで半年前の文化祭の時の一体感を彷彿とさせるように、驚くべき結束力を持っていた。

「なあ、タイガーも聞きたいだろ? タカっちゃんの本音ってヤツ?」と、どうしたものかと手をこまねいている大河に春田はノンキなものだった。
「いや、聞きたい聞きたくないじゃなくて、聞かなきゃいけない事だと思うぜ、俺は。」と能登が続く。

聞きたいかって言われたら、そりゃ聞きたいけど、でも……
あの時、すでに竜児の本当の気持ちは大河の中に伝えられていたのだ。しかし……

やめておけばよかった! いつかみたいに暴れて、机や椅子を吹き飛ばしてでも、皆を止めるべきだった!!!

だが、止めなかった。あの時に竜児から受け取った言葉は、あまりに甘美で、魅力的で……。だから、その時は本当に「もう一回くらい聞いておきたい」と思った。思ってしまった。

物心付いた頃から、誰に省みられる事もなく、ただ淡々と、もくもくと一人で生きてきた逢坂大河には、初めて自分を見てくれて、聞いてくれて、側にいてくれて、分かってくれる……
いや、分かろうとしてくれる竜児の存在は余りにも大きく、彼から発せられる言葉は、麻薬にも似た中毒性があった。

それをする事で、竜児が傷つく事が分からなかったワケではない。だが、それでも「もう一度……」と言う感情を捨てきる事が出来なかった。

廊下を全力で走る大河は、すでに自分がどこを走っているのかも、なんだか混沌としてあやふやになっていた。

とにかく謝る! 私が謝らなきゃダメだ! 謝って、そして……

「そして……」

そしてどうすればいいのだろう? 謝って許して貰って、許してもらえるのか、私は?

「でも!」

例え許して貰えなくても、謝らなければ! 今傷ついてるのはアタシじゃない! 今辛いのはアタシじゃない!

今、一番痛々しいキズを持って、そこから真っ赤で暖かい血を吹いているのは、アタシのキズを何度も何度もふさいでくれた、竜児。あの、バカが付くほどお人よしの竜児なのだ。

許して貰えなくても側にいる! 嫌がられても、拒絶されても、迷惑がられても、ずっとアイツがそうしてくれたみたいに、私はアイツの側にいる!


744:名無しさん@ピンキー
09/06/24 01:32:30 XMyiJQwc
<虎と竜と、もう一つの幸せと 14>

廊下の角をバランスを崩しながらも辛うじて曲がり……

ドガシャーーー

派手にこけた。腕やスネを打ちつけ、そこから血がにじむ。が、そんな事は気にしていられない、というか、気づいてすらいない。とにかく、竜児の姿を探して駆けずり回る。

いつもなら、すぐに見つかる。探さなくても、すぐに見つけられる。アタシが呼ばなくてもいつも側にいる。なのに!

どうして見つからないのか? もう、すごく遠くへいってしまったのか?

まるで、探し回るその時間が今の自分と竜児の距離のようで、見つからないという事に少なからず恐怖にも似た感情が生まれて、それを振り払うように、交互に出す二本の足にさらに力を込めて走る。

次の角を曲がった時だった。屋上に続く階段を下りてくる一団が目に留まる。大河はそこへ向けて突進していく。

「おわ! タイガーが!!」
突進してくるその猛々しい姿に、一団の動きが、一瞬びくつく。先立って、竜児に謝りに言ったクラスメート達だったのだが、その中に、なぜか実乃梨や北村、春田に能登の姿がみあたらない。

「竜児は!?」
「う、え、あ……」
開口一番、噛み付かんばかりの形相で聞く大河に男子生徒たちは慄き、満足な回答は出てこない。

「タイガー、怪我してんじゃん……」

その中で、木原がタイガーの状態に気づき、声をかける。が……

「こんなの、どうでもいいから、竜児は?」
「た、高須君なら屋上にいたけど。でも、なんだか、別にそんなに怒ってないみたいな感じで、なんていうか、拍子抜けって言うか、いつもどおりって言うか……」

大河はその言葉を聞き終えることなく階段を駆け上がって行く。全速力で屋上へ出る扉のドアノブに手をかけ、全速力でそれを回し、全速力で扉を開け放ち……



745:名無しさん@ピンキー
09/06/24 01:33:57 XMyiJQwc
一度、処理できてしまえばなんて事はない。喉を通り過ぎていった痛みは、その時こそ鮮烈に爪あとを残すが、しかしそれも一時的なもの。辛さやそれに伴う痛みなんてのは、時間の経過と共に薄らいでいくのみだ。

いつでも客観的で冷静な自分を頭のどこかに待機させておく事ができれば、そんなものは何とでもなるのだ。

しかし……

今回は、なぜか待機させておいたはずの冷静な自分は中々動き出そうとせず、その怠慢の隙を縫うように、飲み込み損ねた感情が漏れ出てしまった。自分としては、この結果はあまりいただける物ではない。

「ったく、さっきはミスったよな……」と考えたところで、「いや……」と、直前の考えを否定する思いが頭をもたげる。

さっきの事だけじゃないな……。最近は……、いや、特に2年に進級したくらいからは、さっきの様に不満を隠しきれなかった事が、度々あったような気がする。

大河に対して怒鳴った事があった。同じように櫛枝や北村に対して怒りもした。あのバレンタインの夜なんかは、泰子に対して筆舌に尽くしがたい暴言を吐き散らした。
それまでの自分では考えられないようなミスをセッセと積み上げてきていた。そして、そうなってしまった原因にも、薄々だが心当たりもあった。

竜児が怒った時には、必ずといって良いほど、その件の中心に、その件の端っこに、その件の延長線上に、必ず大河が関わっていた。
そして、そう言うときに限って、自分の感情をうまくコントロール出来ない。
竜児自身、それがどういう意味なのかと言うのは、分かっているつもりだし、理解できているつもりだ。



746:名無しさん@ピンキー
09/06/24 01:36:58 XMyiJQwc
745に投稿の際、ミスって、半ばからになってしまいました。再度、15を
<虎と竜と、もう一つの幸せと 15>
==================================================================

竜児は外周を取り囲む落下防止のための鉄柵に体重をもたれさせるように、屋上に座り込んでいた。

飲み込んだ物が痛かった。飲み込むハメになってしまったことが痛かった。

傷つく事には慣れているはずだった。傷ついた事によって生まれる憤怒や憤りなどは、いつでも自分の中で、自分の力で解決してきた。
いつでもそうしてきた。自分が生まれ持ってしまった呪われた仮面の邪悪な力を、少しでも緩和するためにはそうするしかなく、そうするのが当たり前だった。
それが出来る事が、数少ない自分の中にあるプライドの一つだった。

だが、それが出来なかった。

ただのイタズラ。それもエイプリルフールだ。ちょっとした茶目っ気だ。
あの時、クラスメイトたちの事をそんなふうに受け流す事が出来ていれば……

得意だったはずの、飲み込むべきだったはずの、あの感情を出してしまった。いつもの自分ならば、きっとうまくやる事が出来ていたはずだ。
だが、それがうまくいかなかった。
クラスメイトたちが、あの後こぞって謝罪に来た。だが、実際のところ、もうそんな事はどうでもよかった。

一人で教室を出た時まで持ち合わせていた、あの時の憤りは、既に喉の奥へと飲み下している。
一度、処理できてしまえばなんて事はない。喉を通り過ぎていった痛みは、その時こそ鮮烈に爪あとを残すが、しかしそれも一時的なもの。辛さやそれに伴う痛みなんてのは、時間の経過と共に薄らいでいくのみだ。

いつでも客観的で冷静な自分を頭のどこかに待機させておく事ができれば、そんなものは何とでもなるのだ。

しかし……

今回は、なぜか待機させておいたはずの冷静な自分は中々動き出そうとせず、その怠慢の隙を縫うように、飲み込み損ねた感情が漏れ出てしまった。自分としては、この結果はあまりいただける物ではない。

「ったく、さっきはミスったよな……」と考えたところで、「いや……」と、直前の考えを否定する思いが頭をもたげる。

さっきの事だけじゃないな……。最近は……、いや、特に2年に進級したくらいからは、さっきの様に不満を隠しきれなかった事が、度々あったような気がする。

大河に対して怒鳴った事があった。同じように櫛枝や北村に対して怒りもした。あのバレンタインの夜なんかは、泰子に対して筆舌に尽くしがたい暴言を吐き散らした。
それまでの自分では考えられないようなミスをセッセと積み上げてきていた。そして、そうなってしまった原因にも、薄々だが心当たりもあった。

竜児が怒った時には、必ずといって良いほど、その件の中心に、その件の端っこに、その件の延長線上に、必ず大河が関わっていた。
そして、そう言うときに限って、自分の感情をうまくコントロール出来ない。
竜児自身、それがどういう意味なのかと言うのは、分かっているつもりだし、理解できているつもりだ。



747:名無しさん@ピンキー
09/06/24 01:43:34 XMyiJQwc
<虎と竜と、もう一つの幸せと 16>

傷つく姿を見たくなかった、それだけの事だ。そして、それだけの事が、俺の感情を制御不能にする。

俺は、傷つかないように振り下ろされる刃を器用にかわせるし、もし傷ついたなら、その傷口に手を当ててそれをふさぐ事ができる。自分で血を止められる。
他のやつらが思っているほど、俺は不器用じゃない。
だが、アイツは違う。アイツは傷つく事を恐れようとしない。むしろ、振り下ろされる刃に、自分から突っ込んでいく事もしばしば。
挙句の果てにはザックリ斬られてひっくり返って、血を流しながら起き上がって「痛くない」と言う。
傷口に手を当てる事もせず、ただ斬られて倒れて起き上がっては、また斬られる。そして「全然、痛くない」と言うのだ、泣きながら。
アイツはそう言うやつだ。

見てられねぇんだよ、バカヤロー。お前がふさがねぇんなら、俺がふさいでやる。傷が多すぎて、両手で足りねえなら、足でもハラでもケツでも何でも使って、全部ふさぎきってやる。

いつでもそう思っていた。

だからこそ、さっきの下らない騒動の中心に大河の姿があったのが……ショックだった。
大河に斬られた……。いつもの軽い暴言のような『みね打ち』などではなく真剣でバッサリやられた……。
あの瞬間は、正直そんな気持ちだった。

それで、あの失態だ。クラスメイトたちの面前で、今まで見せた事のない憤りを噴き出してしまった。

あいつら、絶対びびってたよな……。顔には出してなかったが、あんな状態の俺を目の当たりにしたんだ。ビビッてないわけがねーや。

そんな事を考えながら、屋上と校舎を隔てる扉の方へ視線を向けてみる。しかしこの場所から扉は死角になって見えない。

せめて、「別に全然気にしてねぇって」と言った俺の言葉を少しでも鵜呑みにしててくれるとありがたいんだが……

ついさっき、竜児は、屋上まで押しかけ、北村を筆頭に謝罪する団体に対し、事も無げに「気にしてない」と、ごく普段のノーマル凶悪能面フェイスのまま、その言葉を全員に投げかけた。
本当なら、満面の笑みで持ってその言葉を言い放つ事が出来れば、もう少し言葉に説得力を持たせる事が出来たのかもしれない。しかし長年の経験上、それでは余計に怯えさせてしまうことが分かりきっていた。だから敢えてそうした。



748:名無しさん@ピンキー
09/06/24 01:44:27 XMyiJQwc
<虎と竜と、もう一つの幸せと 17>

なんとか竜児の真意を汲み取ることが出来たのか、屋上に集まったクラスの大半が安心したような表情でゾロゾロと屋上から出て行った。
しかしそんな中で、北村や実乃梨、能登と春田の四人だけはその場を動こうとしなかった。
「もう良いから、お前らも戻れよ」と言う竜児の言葉に、「一緒に戻ろうよ、タカッちゃん」と春田。
他の三人も、みな一様に竜児を連れて教室に向かう事を望んでいるようだ。
だが、竜児は「もう少しだけ頭を冷やしてから行くよ」と軽く笑って見せ、渋る面々を半ば強引に屋上から押し出した。無論、屋上から空中に放り出したわけではなく、校舎へ続く扉へだ。
別に、そこにいる四人を拒否しているわけではない。それどころか、屋上を吹き抜ける春先の風は冷たく、できるならさっさと壁と天井に囲まれた温暖な教室に戻ってしまいたいくらいだった。だが……

俺は、まだここを動けねぇ。
アイツがまだ来てない以上、まだ、ここを動くわけにはいかん。

大河の謝罪を求めているわけではない。ただ、心配しているだけなのだ。
冷静になった竜児の頭の中には、さっき教室で目の当たりにした大河の後姿がハッキリと浮かんでいる。
言葉にこそ出してはいないが、しかし「甘やかすな! 犬がつけあがる!」とでも言いたげなあの姿は……

変なモードのスイッチが入った時の大河だ。
バカでアホで見栄っ張りで、天邪鬼と天邪鬼と天邪鬼を足して三倍したような、そんな時の大河の姿だ。
となれば、俺は一人でここにいなければならない。
いずれやって来るであろう、大河が、誰に気兼ねするわけでもなく、今回の一件に対してピリオドを付けられるように、俺は一人でここでアイツを待たなければならない。

この一年で、俺にだってそれくらいの気回しはできるようになったんだぜ?
「どうだ、恐れ入ったか」と、いっそ本人に言ってやりたい気もするが、やめておこう。それは何か、かっこ悪いからな。



749:名無しさん@ピンキー
09/06/24 01:45:24 XMyiJQwc
<虎と竜と、もう一つの幸せと 18>
========================================================================

そんな事を考えていると、「ドバァン!」と鳴り響く破壊的な音。竜児のいる場所からは死角となって見えないが、恐らく今のは扉の開いた音だと分かる。勢いあまって、それこそ蹴破るかのように屋上に躍り出たであろう小型の虎の存在を、視覚以外の全ての感覚で認知する。

竜児の場所から扉のある場所まではやや距離があるのだが、しかし手乗りタイガーの持つ強烈な存在感は、そんな距離など物とせず、竜児の立つ場所までほとばしる。

間を置くことなく、竜児の視界の中に、言葉どおり転がり出てくる小さな姿。

やっときたか……

すぐさま、竜児の下まで駆けつけてくるかと思われた大河の勢いだったが、しかし妙な事に、転がり出たところでとまり、ナゼか自分の蹴破って来たであろう屋上の入り口辺りに視線を向けている。

なんだ? まさか、今の拍子に怪我でも……

と、一瞬竜児の脳裏に不安が走るが、しかし大河はすぐに視線をこちらに向け、「あ……」とでも言いたげな表情をして、ユックリと静かに近づいてくる。

どうやら怪我はしていないようだが……

大河のしっかりとした歩く姿に、少なからず胸をなでおろす竜児。
やがて、大河が竜児のすぐ正面まで歩み寄り、小さく、か細く声を出す。

「りゅ……りゅう……じ」
「おお」

短く答える。

「ご……ご、ご、ご、ご……」

たどたどしく、回らないろれつで懸命に言葉をつむごうとする大河。竜児は黙ってその言葉を待つ。
もとより、竜児は大河に大層に謝罪してもらうつもりはない。ただ、「ごめん」の一言さえあれば、それ以上は必要ないと思っていた。竜児自身はもう怒ってなんていないし、単に大河が自分自身を納得させられる事ができれば、それでいいと思っていた。

「ご……こ……ご、こ、め、こ……の……」

ところが、一言の言葉の出現を待てば待つほど、いっそう大河の舌は回らなくなるようで、最後のほうなんかはすでに「ごめん」にも「ごめんなさい」にも含まれていない発音が混じりだす。

だ、大丈夫か……と、大河の余りの混乱振りに、いささか不安の色が竜児の顔に立ちこめる。
大河はスッと顔を伏せ、一度短く息を吐き、右足で苛立ちを示すかのように床を叩き、もう一度、顔を伏せたまま息を吸いなおし、そして……

「こ……この……」
「?」
「このクソバカ陰湿駄犬がーーーー!!!」

吼えた。



750:名無しさん@ピンキー
09/06/24 01:46:46 XMyiJQwc
<虎と竜と、もう一つの幸せと 19>

「お、おい……」
「あんた、何時までウジウジやってんのよ! 傷ついた? ざけんじゃないわよ! 心の傷ってのはね、高尚な霊長類にだけ許された特権なのよ! 
それをさも知ったかのような顔で傷つきましたみたいなツラして、ご主人様からかまって貰おうなんて、アンタみたいな駄犬には100年早いのよ! 
7回くらい輪廻転生してから出直してきなさい! ついでに閻魔様にその死刑判決5秒前の凶悪鬼面を剥ぎ取ってもらうのね!!!」

とどまるところを知らない、大河のトルネードを思わせる暴言の嵐。叩きつけられる意味不明で、それでいて辛らつな言葉の群れ。まるで言葉の暴力を絵に描いたような、そんな大河の吐き出す罵詈雑言。

竜児は言葉が出なかった。理解しかねていた。

この状況下で、まさかこんな発言をかましてくる大河に……ではなく。まるで反省の色が見られない、大河の暴言の数々に……でもなく。

なんで、そんな事いってんだ、そんなクシャクシャな……ツラで。

暴言を吐き続ける大河の顔は、すでにクシャクシャになっていた。泣き出す寸前というより、すでに号泣真っ只中である。
両目から噴出す涙が、ありえない勢いで頬を伝って地面へ降り注いでいく。
それは、悲しいと言うよりは辛いというような、そして、言葉を吐き出すたびに、その辛さのパラメーターがどんどん上がっていくような。

今の竜児には、大河の暴言が、自分に向けられた刃ではなく、ただただ、大河が自らの吐き出した言葉で自分自身をひたすら斬り続けているような、そんなふうにしか見えなかった。

「だいたい、あんな4月バカのちょっとしたママゴトに本気になる方がおかしーってのよ! 冷静に考えれば分かりそうなもんでしょ! その程度の脳みそも持ち合わせてないの!?」

とまらない大河の言葉は、白銀の刃を伴って容赦なく大河自身に降り注ぐ。

困惑する竜児。

なぜ、そんな辛そうにしてまで……?
竜児には聞こえている。絶え間なく投げつけられる人格を無視するような言葉の裏に、「いたい、いたい、いたい、いたい、いたい、いたい!!!」と絶叫し続ける大河の声が。吹き出す血が見える。

猛烈な勢いで、余すことなく大河の全身に宛がわれている、バックリと開いた傷口のその多量さに、右手も左手も右足も左足も、ましてやハラやシリなんてとても間に合わなかった。手を出す事すらできなかった。

なぜなんだ!? 意味が分からねぇ! 
ここには俺たちしかいない! いつも、二人きりの時には、お前は謝っていた!
「ごめん」とほんの短く、聞こえるかどうかのギリギリの小声で、それでも悪い事をしたと思った時は謝ってきたじゃねーか!? あの、短い言葉の大切さなら、お前だって知ってるだろ!?
二人の時はそうだっただろ!? 何時からかは分かんねぇけど、何時だってそうだったじゃねーか!!!

見るも耐え難い大河の姿に、言葉が出てこない竜児。しかし、竜児の脳裏に一瞬だけ垣間見えた、さっきの瞬間。
大河が屋上へ転がり出てきた時に見えた、一瞬の挙動。「怪我をしたんじゃないか?」と心配したあの時のこと。
大河が気にした、屋上への扉。ここからでは死角になって見えない、屋上の扉……

まさか……

一瞬だけ視線を大河からはずし、目的の場所へ向け……

竜児は理解した。


751:名無しさん@ピンキー
09/06/24 01:48:43 XMyiJQwc
<虎と竜と、もう一つの幸せと 20>
==========================================================

もう止まらない! どうしても止まらない! どうしてこうなんだ私は!!!

初めに言う言葉は決まっていた。いつもみたいに、「ごめん」とだけ言うんじゃない。
今日だけは、全身全霊で、思いつく限りの気持ちで、普段なら思いつかないような言葉で、全てをなげうって、許してもらえるかはわからないけど、今日の事も、今までの事も、これからの事も、全部全部ひっくるめるかのように、竜児に言うつもりだった。
言いたかった! 言わなきゃいけなかった!

去年の生徒会長選挙のあと、私がカチコミをかけた相手の加納スミレは、こう言った。

「アンタみたいなバカになれるものならなりたいよ!」と。

だけど、アタシはいやだ! こんなバカはもうイヤだ!
言わなきゃいけない大切な言葉を置き去りにして、言っちゃいけない言葉ばかり吐き出して! 見てみろ、今だってこんなに嫌なのに、どうしても止まらない!

なんで、そこにいるのよ北村君! なんで隠れてるのよみのりん! 他の二名、何で生まれてきた!?

身体が、口が、手が、頭が、知らないところで動く! 勝手に動き回る! 気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い!!!
私の身体は私の物じゃない! 私の身体は、竜児の事より、私のクソみたいなプライドを優先した! 私はそんな事、望んでないのに!!!
それで傷つけた! 竜児を傷つけた! その上、さらに止めでも刺そうってのかこのバカは!!!

もうダメだ、もういられない、もう竜児といられない……

竜児に拒絶され、拒まれて、嫌がられても、それでも一緒にいるつもりだった! 無理やりアタシが側にいるだけなら、傷つくのは竜児じゃなくてアタシだけのはずだった! でも、それなら一緒にいられると思った!

でも、だめだ! アタシは側にいるだけで竜児を傷つけ続ける! こんなんじゃいられない! 一緒になんていられるわけがない!!!
何もしていない竜児を、どうでもいいような自分の欲求のために真っ二つに引き裂いて、それでも飽き足らず、今度は細切れになるまで砕ききって!

竜児は言ってくれた。好きだって言ってくれた! 側にいるって言ってくれた! 「嫁に来い」って言われたときは、本当に嬉しかった! 竜児はさっきの教室でも、「世界なんて要らない、私が欲しい」って言ってくれた!

アタシだってそうだ! 何もいらないとまで本気で思えて、側にいてくれるなら、今まで望む事すら許されなかった幸せを、二人で掴み取るんだって、絶対そうするんだって、そう決めてた!

でも、アタシが望んでるのは、こんなんじゃない!!!
竜児が傷つくなんて嫌だけど、自分が竜児を傷つけるのは、もっといやだ!
だって見てよ、竜児の顔……。傷だらけになって、アタシのつけた傷だけで、もう……

竜児の両手は、アタシの傷をふさぐ為に、もう使ってる。だから、竜児は自分の傷をふさげない。
だから、アタシが代わりに塞いであげるつもりだった。でも、アタシの両手は竜児を傷つけるためだけの手!

北村君! みのりん! バカチー! 竜児の傷を止めて! あたしを止めて!
誰でもいいから!!! アタシを竜児から引き剥がして、それで竜児を助けて!!!

助けて!!!!!!


752:名無しさん@ピンキー
09/06/24 01:58:16 HCziz3g3
支援

753:名無しさん@ピンキー
09/06/24 02:18:19 XMyiJQwc
<虎と竜と、もう一つの幸せと 21>

この、バカやろう……

竜児の頭が、急速に覚醒していく。目の前で繰り広げられている、この余りにも惨たらしい状況をどうすればいいのか?

目的は二つ。大河を斬り付け続ける、大河自身の言葉をやめさせる事と、コソコソ隠れているヤツらを、一気に追い払う事。
その答えは、すでに見つかっていた。あまりいい方法じゃないかもしれない。だが、今の自分には、これ以外思いつかない。
考えている時間がもったいなかった。すでに大河の目はルビーのように真っ赤に染まり、このままでは本当に血の涙を流しだしかねない。
彼女はそれほど苦しんでいる。

あいつら相手に、こんなことはしたくなかった。しかし、今の竜児は激しい怒りにも似た感情を抱え、それを飲み下そうとするどころか、これから倍増して吐き散らかしてやるつもりでいた。

大河が痛々しかった。自分が痛々しかった。その二人を見ているあいつらが痛々しかった。だから、やるしかなかった。

すぅぅぅぅぅ……

限界まで息を吸い込み、止め、溜めて倍増した怒りを自慢の顔面に練り込み……



「「「でていけーーーーーーーーーー!!!」」」



全力で吐き出した。陳腐で短く端的で、何の捻りもない、どこにでもある単語だった。

だが、その声は屋上を、校舎を、それぞれの教室を、校庭を、それらを取り巻く空気を、その場にいた者たちの気持ちを、いない者の気持ちさえも、激しく揺さぶった。それだけの気持ちを込めた、竜児の魂だった。
校庭の木で休んでいた鳥たちが、何かを察知したのか、いっせいに飛び立ち、バサバサと羽音を撒き散らす。

みれば、能登と春田が、身を隠していた場所から転がり出て、腰を抜かして「アウアウ」言っている。
北村と実乃梨はそこまでではないが、何かとんでもない物でも見たような、そんな顔のまま、魂の発生源である竜児の方を凝視していた。

そんな面々に、竜児はまだまだ在庫過多な凶面で、「出て行け」と、ギラリと睨み付ける。

万物を想像した神々が、自ら作り出した物の邪悪さに、思い余って集団で投身自殺をしかねない、そんな顔だった。



754:名無しさん@ピンキー
09/06/24 02:20:06 XMyiJQwc
<虎と竜と、もう一つの幸せと 22>

その衝撃的な顔に当てられてか、能登と春田が「うへ~」とか「あひ~」とか言いながら、慌てて屋上から逃げ出していく。
北村と実乃梨も、腰砕けに近い状態で、それでも何とか平静を保ちつつ、屋上から去っていく。

視線を下に向けてみると、竜児のすぐ足元に呆けたような顔をしてへたり込む大河の姿。
さっきまでまくし立てていた罵詈雑言の嵐も今はやみ、その代わり、口をパクパクさせている。

竜児の発した、余りにデカイ声と気迫に加え、さらに至近距離からの不意打ちだった事もあり、大河には竜児がなんと言ったのか、ハッキリとは分からなかった。

ただ、竜児の発した何かが、とてつもなく禍々しく、鬼のように凶暴で、尋常じゃないくらい真っ黒で、それなのに力強くて暖かくて、まるで自分を包み込むような、
そんな不思議な感覚にとらわれていた。

つい先ほどまで、半狂乱のように叫び続けていた大河には、あの一瞬に、ほんの短い間だが、幻覚のような物が見えていた。

竜児から発せられた何かの力は、自分と竜児に張り付いて、剥がそうとしても剥がれなかった、おびただしい数の傷を、全て一瞬で吹き飛ばすような、そんなワケの分からない幻覚だった。

そう、ただの幻覚だった。だが、なぜか大河は自分の心がほんの少しだけ……軽くなった気がした。

竜児はひざを落とし、相変わらず、ただポカンと視線を向ける小さな少女と同じ高さの視線をつくり……

つんつんつん……

おでこを、つついていた。「生きてるか~?」と、声もかけた。大河はそれに、コクコクとうなずき……

「おう!?」

そして、気を失ったのか、糸の切れた操り人形のように、そのまま後ろへ倒れていった。



755:名無しさん@ピンキー
09/06/24 02:21:11 XMyiJQwc
<虎と竜と、もう一つの幸せと 23>
===============================================================

アタシは今、夢を見ている……

やっちゃんがいて、ブサ鳥がいて、そして竜児がいて……。吹けば飛びそうな、根っこからボロボロのアパートの一室。
アタシもそこにいた。
竜児はいつものように台所で夕飯の支度をしてて、やっちゃんは襖を隔てた隣の部屋で寝てて、ブサ鳥はキモくて……

毎日のように、当たり前のようにしてきた日常の風景。とても暖かい景色。そんな夢……それは、すごく嫌な夢。

「もうすぐ出来るぞ、いつまでも転がってないで、ちょっとは手伝えよ。」

竜児に言われて、自分が畳の上に転がっている事に初めて気づく。竜児の言葉に反応するように、自然と上半身が起き上がる。
竜児はいつもみたいに、顔に般若を貼り付けたままの笑顔でアタシを見ている。

とても悲しかった。

両手に料理が盛り付けられた皿を器用に持ちながら「ほら、そこどけって」と、私に移動を迫る竜児。
メニューの中に、鳥料理が紛れ込んでいるのに気づいたのか、背後のブサ鳥が立てる抗議の鳴き声がうるさい。

「あっと、もうこんな時間か。ちょっと、手間取っちまったからな……」

一瞬、思案した竜児はアタシに顔を向け、「すまんが、泰子を起してきてくれ」と言い……
最後に「頼むよ、逢坂」と続けた。

身を切られるように、辛かった。竜児の最後の一言に、涙が溢れ出すのが自分でも分かった。

「んだよ、笑ってないで泰子を起せって。」

アタシは笑ってなんかいない。

「俺は手を離せないんだ。見たら分かるだろ……逢坂。」
「違う! アタシは大河だ!」
「んだよ、そんなんどっちでも一緒だろ?」

聞いてはくれない。
この夢の中では、竜児はずっとアタシの事を「大河」ではなく「逢坂」と呼ぶ。

聞きたくない。

何時からだったか、竜児はアタシの事を「大河」と呼んでいた。何時だってそう呼んでくれた。
だが、夢の中の竜児はアタシの事を「逢坂」と呼んでいる。それがたまらなかった。
まるで、「全てなかった事にしよう」と言われているようで、「出会ったばかりの頃のままでいたかった」と言われているようで、それで取留めなく、涙がこぼれた。



756:名無しさん@ピンキー
09/06/24 02:21:55 XMyiJQwc
<虎と竜と、もう一つの幸せと 24>

夏に皆で別荘に行ったときの「痛み」。
学園祭の時の「痛み」。
3年の教室に殴り込みをかけた時の「痛み」。
イブの夜に竜児を追って外に飛び出した「痛み」。
修学旅行で竜児の背に負われて口走った「痛み」。
年明けに北村君を拝んだ「痛み」。
皆にチョコを渡した時の「痛み」。
ミノリンが竜児を見る時の「痛み」。

竜児がミノリンを見る時の「痛み」。

全部全部、痛かった。いつだって痛かった。でも、大切だった。全ての痛みが竜児につながっていて、そんな私の痛みを、気づく限り必至に何とかしようとしてくれる竜児がいて……
とても大切で、私の宝物の「痛みと共にある思い出」たち。

だが、竜児はそれを全部、なかった事にしようと言う。
これが夢だと言う事は分かっている。しかしそれでも竜児の言葉がどうしようもなく怖い。

私を見て欲しかった。私の名前を呼んで欲しかった。私が泣いている事に気づいて欲しかった。一緒にいたかった。

誰も知らない、一片の光も差さない真っ暗などこかに、たった一人で取り残されたような、そんな感覚に私の奥歯はかみ合わず、カチカチと音を鳴らす。

竜児とはなれるのは、こういう事なのだ……

ついさっきまで「竜児を傷つけるくらいなら、一緒にいなくてもいい!」と思っていた。だが、甘かった。

一人でも生きていける……無理だ。
一人でも立ち上がれる……出来るわけがない。
誰でもいいから竜児を助けて……誰も触るな!!!

自分の言っている事が支離滅裂だと言う事は分かっている。しかし、アタシの事を「逢坂」と呼ぶ竜児の姿を見る事は、今までに受けたどんな痛みよりも激しかった。
いや、「痛み」なんてものじゃない。痛みは生きているからこそ、「痛い」と感じる。しかし、今のアタシは……

「なんだよさっきから、何がそんなに面白れぇんだ?」
「どうしたの、大河ちゃん? なんかいい事でもあったの~?」
「ダガ・ソレガイイ!!!」

アタシは、夢の中で一人で泣いた……


757:名無しさん@ピンキー
09/06/24 02:22:44 XMyiJQwc
<虎と竜と、もう一つの幸せと 25>
===============================================================

大河が目を微かに開ける。
細い視界に飛び込んできたのは、天井だった。竜児の家でも、自分の家の物でもない、見覚えのない天井。真っ白と言うには、いささかくすんだ色の天井。

どこの天井? あ、でも前に見た事あるような……

そこまで考えた時、不意に自分がベットで横になっている事に気づく。足先から顔の半分くらいまでの、身体の大半を覆い隠している薄くて真っ白なシーツ。
鼻先に当たる布の感触が少しくすぐったく、モゾモゾと動いて鼻をシーツの中から引っこ抜く。
その拍子にツンと鼻腔に広がる独特の匂い。あまり好きではない匂い。

「消毒液の匂いだ……」と、まだ覚醒しきっていない頭で匂いの正体にたどり着き、薬品の並んだ戸棚が視界の端に引っかかり、そこが学校の保健室だと分かる。
「えっと、なんでアタシ……」

嫌な夢を見ていた。とても寒くて冷たくて、何もかもを失ったような、そんな夢だった気がした。まるで、終わっていくこの世界を一人で見続けるような、そんな夢だった気がした。
ハッキリとは覚えていなくとも、その夢の中で感じた感覚は、まだ身体の中に残っている。
「それより、アタシどうしたんだっけ……?」

身体にかけられたシーツを退けながら、上半身をゆっくりとベットの上に起す。記憶がハッキリしない。

なんか、絵本に出てくる魔女が、大ナベの代わりにアタシの頭の中を一心不乱にかき回してでもいたような、そんな感覚ね……

などと考えていると、「やっと起きたか」と声がした。反射的に声のしたほうに顔を向ける。大河の視界には、古ぼけたパイプ椅子に腰をかけた竜児の姿。
竜児に向けた大河の視線と、大河に向けられた竜児の視線が重なり合い……

「あ……」

その瞬間、大河の頭をかき回していた魔女の姿が、彼女の頭の中から吹き飛ばされ、ついさっきまでの屋上での大騒ぎの記憶が、激流のように流れ込んでくる。
竜児にした事、竜児に言った事、その全てが大河の頭の中を、吹き荒れる。

「あ……あ、ああ……」

魔女を押し流した激流が、同時に大河の言語機能までショートさせてしまったかのように、少女は意味のない発音を繰り返す。
言わなくちゃ、謝らなくちゃ、ふさがなくちゃ……
言葉にはならない、それらの短い単語達が大河の身体を無意識に動かす。起した上半身を少しでも竜児に近づけようと、足の代わりに両手を使って、歩み寄ろうとする。

が……

「お、おい!?」

保健室のベットはそんなにデカくない。体重をかけようとしてベットに付いたはずの手は、しかしベットの上ではなく、何も無い空中を取らえ……
ベシャァ!!!
と、大河は顔面から床へ全体重をかけてダイブした。


758:名無しさん@ピンキー
09/06/24 02:24:13 XMyiJQwc
<虎と竜と、もう一つの幸せと 26>

「おい、大丈夫か!?」

駆け寄った竜児が声をかけるも、大河のかました余りの挙動に、若干声が上ずっている。
ベットの上に下半身だけを残して、顔面から床に飛び込んだ少女は「うう、いたい……」と、小声でうめく。
大河の側にひざを付いた竜児は、半・逆さ吊り状態の大河の身体を起そうと、両腕で少女の体重を支えようとする。当然、そうする直前に、むき出しになった大河の尻を隠そうと、さりげなくスカートをかけなおす事を忘れない。気遣い竜児の本領発揮である。

「ったく、何をどうしたらそうなんだよ?」とこぼしながらも、竜児の腕は大河の体重を持ち上げ、ベットの下に埋まっていた上半身を引きずり起す。

「痛いか? いや、痛くないワケねーか。ほら、見せてみろ……」
そう言いながら、強打した顔面を痛そうに押さえる大河の両手を優しくどかすと……

「おい、鼻血出てんじゃねーか!」
何だって俺って奴は、女子の鼻血にこうも縁深いんだ? と胸中で一人ごちる。なにせ、大河にいたっては、これで二度目だったりする。

「ほら、まずベットに座れ! ったく、テッシュ、テッシュ……」と竜児が箱テッシュの置かれたデスクに向かおうとするが、右手を大河につかまれ引き止められる。
何事かと振り返れば「痛くない! 痛くないこんなの!」としきりに首を左右に揺る大河の姿。
勢いよく首を振ったため、鼻から垂れる血液の飛沫がピッピッと飛び散り、ベットの白いシーツに真紅の痕跡を残していく。

「痛くないって、そんなワケねーだろ!? 何言ってんだこんな時に!」
「痛くない! 痛くない! 今、傷ついてるのはアタシじゃない! 今、一番傷ついてるのはアンタなんだから!」

大河は、竜児を探して校内中を駆けずり回っていた時に感じていた事を、この場でそのまま口に出す。が、竜児にはまったく意味不明であったようで……

「何をどう見たら、そういう結論にたどり着く!? 誰が見ても、今一番痛々しいのはお前だろーが!」
「ちがう! ちがう! 痛いのは竜児! アタシは痛くない! だからいいから! このままでいいから!」

なぜ大河がそれほど必至に「痛くない」というのか、竜児には分からなかった。
ただ、屋上で一人座っている時に考えた、斬られても斬られても、「ぜんぜん痛くない」と言って、立ち上がる大河の姿が脳裏に浮かび、今の大河と重なり合う気がする。
一度そう思ってしまうと、今の大河の必至の否定が、あまつさえ「痛い痛い!」と叫んでいるかのような錯覚を覚え、何ともいえない感情があふれ出す。

竜児は必至に首を振り続ける大河の頭を包み込むように両腕を回す。突然の抱擁に驚いた大河の首の回転が止まる。竜児はそのまま、大河の顔を優しく自分の胸に押し当てた。
既に大河の顔面を右に左に駆け抜けていた幾スジもの赤い線が、容赦なく竜児の制服に付着していくが、しかし今の竜児にはそんな事、まったく気にならなかった。
それどころか「いっそこのまま、全部ふき取ってやる」とでも言うかのように、スリスリと大河の顔を自分の胸の上でゆっくりと転がす。


759:名無しさん@ピンキー
09/06/24 02:24:44 XMyiJQwc
<虎と竜と、もう一つの幸せと 27>

「竜児、よ、汚れちゃう……」と無抵抗のままつぶやく大河に、「ああ、そうだな」とだけ返す。しばらくのあいだ、大河は黙って竜児にされるままになり、竜児も黙ってスリスリを繰り返した。
大河の顔に張り付いていた鮮血を殆どふき取り終わりそうになった頃、大河がポツリと声を出す。

「ごめん……」
「ああ……」
「今日の事も……」
「ああ……」
「これまでの事も……」
「ああ……」

短い大河の言葉に、短い竜児の返事。だが、不思議とそれだけで十分だった。
「そ、それに……」と、一瞬ためらったかのように間をおき、大河は続ける。

「こ……これからの……こ…と…も……」
「そんな事、とっくに覚悟は出来てるって……」
「う……ん……」

そう呟き、大河は目を閉じる。
まるで、迷子になって泣きながら知らない土地をうろつく羽目になってしまった小さな子供が、やっとの事で自分の家までたどり着いたかのような、そんな安心しきった表情だった。
「ただいま」と大河が小さく呟き、竜児はそれに「おかえり」と答える。
なぜだか、そんな言葉がピッタリと当てはまるような、そんな不思議で優しくて暖かい、二人だけの空間だった。



760:名無しさん@ピンキー
09/06/24 02:25:45 XMyiJQwc
<虎と竜と、もう一つの幸せと 28>
=============================================================-

「みのりんや北村君は大丈夫? 今の話だと、アンタそれこそ魔王をダースで殺ってきましたって顔で睨んで怒鳴ったんでしょ? でてけーって。」
「ま、そう言う事になるな。」
そう言いながら、保健室のベットに腰掛けた竜児は自分の重心を少しだけ後ろに傾ける。背中から伝わって来る体温が、心地いい暖かさを与えてくれていた。

「まあ、あいつらの事は心配いらねーよ。お前が寝てる間に、とっくに和解済みだからな。」

屋上で気を失った大河を抱えて竜児が保健室へ駆け込んだ、そのすぐ後、懲りもせずあの四人は保健室の前までやってきた。
さすがにさっきの事もあってか、入っていいのかどうなのか、保健室の前を困り顔でうろついていた所を、ドアにはめ込まれたスリガラス越しに竜児に発見され、
そこで先の「でていけ」事件に対する和解の場が設けられたのだった。

「謝りに来たから、逆にこっちから謝り倒してやったよ。」

竜児を訪問した4人と竜児の謝罪合戦は熾烈を極めた。
「すまん」「こちらこそすまん」などの言葉のやり取りは、途中からその意味をなくし、後半にいたっては、もう、相手よりどれだけ深く頭を下げられるかを競う、意地の張り合いにも見えた。
北村などは、本当に床にめり込みかねない勢いで「バカな俺達をゆるしてくれ!」などと、見たこともない真面目顔で言うのだ。いや、実際少し床にめり込んでいたかもしれない。さすがだ北村。
結局、その場は竜児が折れる形となって、壮絶な戦いは幕引きとなった。

「それなら、いいんだけど……」

竜児が腰掛けるベットの反対側から、竜児の背にもたれかかるように身体を預け、宙に浮いた両足をプラプラさせた大河は、それでもまだ少し心配な様子を表情ににじませる。

「心配するなって。北村や櫛枝はそんなにヤワじゃねーだろ?」
「それはそうだと思うけど……」
「それに能登や春田なんかは、俺に少々すごまれた位でどうこうなるような、そんな豊かな感性なんて持ち合わせてないからな。」
「あ、なんかその言い方ひどい。」
「なんだよ、お前だっていつも言ってんだろ、そう手のこと?」
「アタシはいいの。でもアンタはダメ。あんた、デフォルトで人から警戒される危険生命体なんだから、そう言うの、気をつけなさいよ。」
「ひどい言われようだな……」
思わず、文句が口をついて出る。それを聞いてか聞かずか、「アンタが他の人から嫌われるのは、アタシもやだもん……」と、大河がボソリともらす。
「ん? 何だって?」と聞き返す竜児に対し、「なんでもないわよ」とぶっきらぼうに答える大河。
こういう反応をした大河に、もう一度聞こえるように同じ事を言わせるのが、至極困難な作業である事を熟知している竜児は、それ以上の追及をあきらめ、話題を元に戻す。



761:名無しさん@ピンキー
09/06/24 02:26:21 XMyiJQwc
<虎と竜と、もう一つの幸せと 29>

「だいたい、影で二大番長なんて言われてる俺たちのダチをできるような奴らだぜ? 心配するだけ損ってもんだろ。」
俺は、あいつらの事を信用している。と、竜児の言葉の真意はそう告げている。

「それよりも……」
「なに?」
「俺としては、あいつらよりも、他の奴らの事のほうが気になるよ。」

竜児としては、タフで逞しく、楽観的で物忘れが激しいあの四人よりも、むしろ「でていけ事件」の前に屋上から出て行った、他のクラスメート達の方が気がかりだった。
いくら「気にしてない」と伝えはしたものの、しかし教室を出るまえに、飲み込みきれない怒りの波動を盛大に吹き出してきてしまったのだ。
最近、やっと他の奴が話しかけてくるような流れが出来上がりつつあったのに、これでまた、元の木阿弥か……などと、どうしてもマイナスな方面に思考が走り出してしまう。
そんな竜児に大河は言う。

「大丈夫よ。あんた、自分が思ってるよりも、ずっとみんなから好かれてるんだから。」
だから大丈夫だという大河の言葉が、竜児の胸を軽くしていく。
「自信持ちなさい! みのりんが惚れたのよ? それに、なんたって地上最強のこのアタシが、ほ……」
そこまで言うと、大河は自分が何を言おうとしているのかにハッとなり、一気に耳まで真っ赤に染め上げる。
「ほ……ほ、ほほ……ホ、ホ、ホバークラフト……」
「何だか、文脈がグチャグチャだな。ま、何を言おうとしてたのかくらい、察しは付くけどな。」

「な、なんな……何勝手な妄想してんのよ!?」と、今にも眉間やこめかみ辺りから血管を突き破って、暑い血の本流をたぎるパルスと共に吹き出しそうな顔で、大河。顔面火山も噴火寸前である。

「ま、いいけどさ。……ありがとよ。」
「べ、別にお礼を言われる筋合いはないわよ! ただ、そうだと思ったから言っただけだから!」

そう言う大河の言葉に、竜児は「へいへい……」相槌を打ち、これがコイツ流の優しさなんだろうな、と考える。



762:名無しさん@ピンキー
09/06/24 02:26:53 XMyiJQwc
<虎と竜と、もう一つの幸せと 30>

「それにしても……」
「なによ?」竜児のボソリと吐いた言葉に、大河が適当に相槌を打つ。

「もうすぐ一年か。なんか、短いようで長かったようで、でもやっぱり短かったよな……」
「なに急にジジィみたいなこと口走りだしてんのよ?」
「なんか、こうしてると無性に昔の事とか思い出しちまってさ……」

「もしあの時、お前が北村へのラブレターを俺のカバンに入れてなかったら、どうなってたのかな、ってよ。」
「な、なにそれ? 老い先短い老人にでもなりたいのアンタ?」

大河の胸の置くが、チクリと痛んだ。

「いや、だってそうじゃねーか。それに、そう言うのってラブレターの事だけじゃないだろ? 学園祭ん時だって、もしもあの時俺が福男になってなかったらとか、イブの日の櫛枝への告白が成功してたりとか……」

チクリとする大河の胸は、止まることなく、竜児の言葉にひきづられるように、繰り返し繰り返し……

「修学旅行の時だって、お前が行方不明にならなければ、きっと俺は未だにお前の気持ちに気付いてなかったかもしれねぇし……」

なぜ、こんなに胸が痛むのか、大河には分からなかった。ただ、全身の痛覚だけが研ぎ澄まされたような、そんな異常な状態だった。

「それ以前に、俺が櫛枝のこと好きじゃなかったり、お前が北村の事好きじゃなかったりしたら、それこそ俺たちって唯のクラスメイトでしかなかったかもしれないよな。」

ああ、これは罰なんだろうか? ひょっとしてこのままアタシは死ぬんじゃないだろうか?

大河にはそう思えた。何気ない竜児の、どこにでもあるような、そんあありふれた言葉の群れが、何度も何度も何度も何度も、同じ場所を繰り返し、刺す。

「なあ、お前ってそう言うこととか考えた事、あるか?」そう言って、背後に顔を向ける竜児が、大河の異変に気付く。

「お、おい、なんでそんなに俯いてるんだ? やっぱどっか痛いのか?」

痛かった。身体の中が、頭の中が、張り裂けんばかりに痛かった。初めてだった。これほどの痛みを感じたのは、大河にとって初めての経験だった。

「い……いたい……」

いつの間にか、大河の脳裏には、さっき見ていた夢の事が、鮮明な映像となってよみがえっていた。だから、痛い理由が分かった。だから耐えられなかった。
だから生まれて初めて、人の前で「いたい」と、心が引きちぎられそうだと口走りたかった。だが、それは声にはならない。竜児には届いていない。



763:名無しさん@ピンキー
09/06/24 02:28:38 XMyiJQwc
<虎と竜と、もう一つの幸せと 31>

「おい! どうしたんだ!? くそっ、どうしたってんだよ!」と、いきなりの事に動揺の色を隠せない竜児。

「そうだ、先生、いや救急車を! 待ってろ、今呼んで来てやる!」

言うが早いか駆け出そうとする竜児の腕を大河は弱々しく掴む。竜児には、その大河の手に込められた力の弱さが、頼りなさが、儚さが、あまりにショックで、思わず駆け出すのをやめ、大河を見る。

「いっちゃ……やだ……」

竜児がここから出て行けば、自分は死んでしまう。そんな幻覚にも似た感情が大河の中に芽生えていた。

「でもお前、そんな状態で!?」

竜児の言葉に混乱の色がありありと浮かんでいた。この状況をどうすればいいのか? どうすれば大河を助けられるのか? どうすれば大河を失わなくてすむのか?

「さむいよ……つめたいよ、心が……死んじゃう……」
「死ぬってお前! おい、シッカリしろ、大河! 大河ぁぁぁ!!!」

「たいが」竜児が口にした。

それはウソみたいだった。ウソみたいに、フッと消えるみたいに、初めからそんなもの無かったみたいに、大河の胸を締め付けていた太い鎖は、なんの痕跡も残さず消えうせていた。

「大河! おい、大河!!!」
「あ、治った……」
「治っただと!? 弱気な事を言うんじゃねー! 風邪とかだって、治りかけが一番危ないって言うだろうが!? さあ、今すぐ病院に……」

竜児の言葉は途切れ、脳の思考回路が完全に焼ききれたみたいに、「な…おっ…た?」とその言葉の意味を反芻しつつも、完全な思考停止状態。

「あ……ね、ねえ竜児?」

呼びかける大河の声に、思考停止中でも反応できる竜児は、既にすごいヤツだった。
ギギギギギ…と、さび付いて壊れたブリキ人形よろしく、首だけを起用に大河に向けて「な……なにかな……?」と、抑揚の無い声でさえずる。

「もう一回、呼んで。あたしの事。」

ブチブチブチブチ!!!!!


764:名無しさん@ピンキー
09/06/24 02:30:20 XMyiJQwc
<虎と竜と、もう一つの幸せと 32>
この日、地獄の釜を丸ごと喉に搭載した対神様用決戦兵器の発する雄たけびのような怒声が、大橋高校および、その近隣地域一体に響き渡った事は、言うまでもなく……
その声に驚いた教師達が駆けつけた大橋高校のとある一室で、真っ先に駆けつけた独身大明神が二人の姿と、なぜかベットに点々と付着している血痕を見て、「まさか、あんた達ここで……」と顔面を蒼白にし、
さらに続いて駆け込んだ生徒会長なる人物が、当事者の一人の胸の辺りに付着した血痕にも気付き「お前らそれは、何プレイだったんだーーー!?」と叫んで、
追撃してきた野球部キャプテンと雑誌モデルによって、地面に完璧にめり込まされたという話は……また、別の話である。


                                       END

765:名無しさん@ピンキー
09/06/24 02:35:32 XMyiJQwc
<虎と竜と、もう一つの幸せと>は以上で終了でございます。長々とお目汚し、失礼。
自分が、SSの保管庫で結構楽しかったから、この手の物を書いたこと無いのに、何かやってしまった。
44LTzffTさん、勝手な真似、もう一度謝罪を。
それと、sageの件、本当に申し訳ないです。今度来るときは、もう少し掲示板の勉強してきます、はい。

766:名無しさん@ピンキー
09/06/24 07:38:54 hrTcNOOk
GJ 読みやすかったし面白かった


767:名無しさん@ピンキー
09/06/24 09:41:57 NhU56Q+F
sageるのがマナーと言い出したアホ出てこい

768:名無しさん@ピンキー
09/06/24 09:56:51 ZqplpMU+
>>767
こないだみたいなキティを呼ばない為にもsageはマナーじゃね

>>765
GJ。sageはたまに異常に噛み付くやつがいるので気をつけた方がいいかと。特に職人は

769:名無しさん@ピンキー
09/06/24 10:04:56 0HqUbn88
>>765
GJ! 書き慣れているのか、読みやすい。
>>768
あのキチガイは、元からここにいる奴だよ
書くのに行き詰まって、おかしくなったという感じがする

770:名無しさん@ピンキー
09/06/24 12:24:00 E2deoAFQ
>>765
GJなかなか読みやすくてのめり込んだ。
だが一つだけ言わせてください。
職人にとって作品ってのは手間暇掛けて書いたもんだ。
なによりプロットというか他人の作品の設定を流用は…。
そして事後承諾で濁すはどうかな~と思う。
もし書くなら事前に了解を取っておくべきかと。
一人の書き手としては複雑な気持ちだ。
空気読まずに長々とスマンかった。
このレスは荒しみたいなもんだからNGにしといてくれ。

771:名無しさん@ピンキー
09/06/24 12:56:06 uNN3ovZc
>>740
やだね

772:名無しさん@ピンキー
09/06/24 13:00:53 JKeDNJA+
>>765
GJ!学校行く前に7まで読んでその続き妄想してたらテスト終わってた

キティちゃんクソワロタ

773:名無しさん@ピンキー
09/06/24 14:48:16 D4CNW91h
みのりん、みのりんが足りない!

774:名無しさん@ピンキー
09/06/25 03:40:41 WYblBjGK
おちた?

775:名無しさん@ピンキー
09/06/25 04:02:50 XDMZb/w6
悲しいグベダグレギブンバゾ!(笑)

776:名無しさん@ピンキー
09/06/25 04:35:57 BloeOlrJ
>>665
ようやくわかったぜ!
一番目の女=亜美
二番目の女=大河
三番目の女=ゆりちゃん


おっぱい=あーみん



これでファイナルアンサー?

777:名無しさん@ピンキー
09/06/25 05:29:03 g9k5W/y/
そのコピペがとらドラとかすりもしていないことに気づいてやってるんだよな?

778:名無しさん@ピンキー
09/06/25 05:59:04 BloeOlrJ
>>777
マジかよ~、ラッキーセブンに言われるまで気づかなかったorz
サンクス、ラッキーセブン!
一日中考えていた俺は阿呆の極みだなorz

779:名無しさん@ピンキー
09/06/25 09:52:22 Z6a3ZHci
ななこいの続きが読みたい

780:名無しさん@ピンキー
09/06/25 11:46:58 XDMZb/w6
ななこ様のおっぱいが揉みたいw

781:名無しさん@ピンキー
09/06/25 12:04:37 xbtYCQjE
ななこ様のはしたない遊びについてkwsk読みたい

782:名無しさん@ピンキー
09/06/25 12:08:17 3kRHN5tl
一月ぶりに来た
日記はまだ続いてるんでしょうか
相変わらずななこいコメあっててワロタw

783:名無しさん@ピンキー
09/06/25 12:39:47 Z6a3ZHci
日記の作者は札幌に住んでいると言っていた
たぶん、ヒグマに襲われたか、キタキツネにエキノコッカスを移されたか、
エゾリスの群れにドングリのつぶてを投げられるかして、しんでしまったのだろう


784:名無しさん@ピンキー
09/06/25 13:05:09 3kRHN5tl
ぱっと上の方からシークバーを下ろしてみたが
荒れてるようですな、日記のひと続いてないのか・・・

785:名無しさん@ピンキー
09/06/25 15:10:11 cbZmJ2A4
続いていないんじゃなくて、こんな空気じゃ出せないって事じゃね?

あくまで俺ならだが、こんな荒らしばかりの場に出しても良い意見貰えないと
思っちまうし。


786:名無しさん@ピンキー
09/06/25 15:58:19 bMdeb/Nj
派手に荒れたのはこのスレからだけど前スレでもひどい流の時があったから。
そこで日記の人は消えた。
そのうち鮭の様に帰ってくるんじゃね?札幌らしいし。

787:名無しさん@ピンキー
09/06/25 18:30:51 OcNZ6DPW
生まれた川に帰ることなく永いこと海で育った鮭は
ケイジだかなんだかって言って珍重されるんだっけ?
おいしく育って帰ってこいよ~


788:名無しさん@ピンキー
09/06/25 19:09:55 EFRUArnY
さっぱりだな、札幌だけに

ごめん

789:名無しさん@ピンキー
09/06/25 19:45:23 iNzGESQd
御坂の日記でも読んどけ

790:名無しさん@ピンキー
09/06/25 20:28:22 ExKl1zdW
吉良っ☆

791:名無しさん@ピンキー
09/06/25 21:39:05 RHWpNrvX
>>665ってとらドラに関係ナイン?

792:名無しさん@ピンキー
09/06/25 22:46:15 1gCN0MiK
>791
一番最後の行でググレ

793:名無しさん@ピンキー
09/06/25 23:00:14 jaFu2yWA
一応、明らかな間違いは正しておくか…

>生まれた川に帰ることなく永いこと海で育った鮭は
>ケイジだかなんだかって言って珍重されるんだっけ?

鮭児(けいじ)ってのは、読んで字のごとく、未熟な鮭のこと
URLリンク(home.tokyo-gas.co.jp)

まぁ、日記の作者もいろんな意味で未熟だから、たとえとしては的確だわな

794:名無しさん@ピンキー
09/06/25 23:10:22 haUUacd/
前から気になっていたが文中に&って入れるのは何の意味があるんだ?
作者の中にも確かいたよな

795:名無しさん@ピンキー
09/06/25 23:14:38 hQgrgEAQ
>>793
最後に余計な一言を付けてるあたり荒らしか

796:名無しさん@ピンキー
09/06/25 23:18:17 jaFu2yWA
妥当なコメントに文句を言うお前こそ荒らしだな
いいから引っ込め

797:名無しさん@ピンキー
09/06/25 23:26:52 YDo12Jt5
妥当なコメント(笑)

798:名無しさん@ピンキー
09/06/25 23:31:44 s7SN48g9
妥当なコメントうける

799:名無しさん@ピンキー
09/06/26 01:30:11 XF72gBwR
>>788
これはひどい

800:名無しさん@ピンキー
09/06/26 01:48:10 kbCud84J
いいスレだったのに・・・残念だ・・・。

801:名無しさん@ピンキー
09/06/26 03:24:32 R5SECv4H
自分で自分の首絞めてこのザマ
かなしすぎる

802:名無しさん@ピンキー
09/06/26 04:13:39 LqSL+ovH
日記の話なんか持ち出すからおかしくなるんだって
上の日記マンセーカキコも、作者の自演が混じってる感じだな
作品を書かないのに自己マンセーだとしたら、
下手な荒らしよりもたちが悪い

803:名無しさん@ピンキー
09/06/26 07:50:23 rjvUBbLp
推測でしかないことでそこまで言っちゃうのもあんま良くないと思うぜ。
「~な感じ」「~だとしたら」って付けとけばそれで良いわけでもないしさ


804:名無しさん@ピンキー
09/06/26 09:45:21 BorvVDnf
日記、いらねぇ
つまんねぇし、自演で荒れるし、いいことがない

805:名無しさん@ピンキー
09/06/26 10:52:22 lwyhWcJh
このスレの荒れてるのって、4割くらい日記のせいじゃね?
俺がもし作者なら、今更投稿なんてとてもとてもw

806:名無しさん@ピンキー
09/06/26 11:17:11 skNY4pzs
とりあえず自演認定してるのは荒らしなんだから触るなよ

807:名無しさん@ピンキー
09/06/26 11:33:11 OQ8BkPPQ
日記の人どころか、その他の職人さんもこの状態じゃ投下を躊躇するだろうな

808:名無しさん@ピンキー
09/06/26 12:20:39 ohyFePjz
>805
100パー荒らしのせいだ
書き手に責任なんて全然ねえよこの春田

809:名無しさん@ピンキー
09/06/26 12:31:04 6U0TD9hC
日記の続きが読みたい
再開を待ちわびてます

810:名無しさん@ピンキー
09/06/26 12:35:58 ldKBcpaf
ななこいの続きが読みたい

811:名無しさん@ピンキー
09/06/26 14:55:29 wx36KgYl
やっと連投荒らしがいなくなったと思ったら今度はID変えて自演かよ
いくつかは釣られたレスもあるんだろうけどそれにしたって全部単発ってどーよ

812:名無しさん@ピンキー
09/06/26 15:31:18 WhKI0BLm
荒らしウンヌンで消費してるレスが多すぎじゃないですか。しかも462まで来てるし。
次スレからは気分変えてこう^^/
麻耶ちゃんの短パン姿でも思い出して穏やかにハァハァしようぜ!
いっそ修学旅行の夜に女子部屋で一気に乱パしてくれ。

813:名無しさん@ピンキー
09/06/26 16:30:00 8NfN9rxc
            にヽ
          __ \\
    _    〈::::ヽ__ノ } その話はおいといて
 ┌┘L___,ゝ'´   〈
  `¨` ー―- 、   |
           ヽ.    |
          〉 "´ ヽ
           {.    |
           \.  |
                〉  |ヽ
              /  丿|
          / /||
         く 〈   | L__
          \_>   `ー‐┘

814:名無しさん@ピンキー
09/06/26 16:33:17 ldKBcpaf
>>812
大河、麻耶 → 大先生まっしぐら
亜美 → 竜児にべたべた
奈々子 → 同じく竜児にべたべた(このスレ的には)
能登 → 麻耶に抱きつき
アホ → 亜美に抱きつき

収拾が付かん

815:名無しさん@ピンキー
09/06/26 16:52:41 xKynDjOY
『自演』をNGワードにすると割と平和になるかも。突き詰めるなら『作者』も。

816:名無しさん@ピンキー
09/06/26 17:16:34 BRbfASru
>>814
竜児→みのりんにべたべた
みのりん→大河にべたべた
大先生→アニキ思い自慰

もっと収拾付かんくなりましたww

817:名無しさん@ピンキー
09/06/26 18:01:30 f3iiYoyL
祐作「うぅ、会長、会長… しこしこしこしこ…」
竜児「おいやめろ北村、 女子の前だぞ …とか言いながら櫛枝のおっぱいもみもみ~」
亜美「(高須君ったらも~アッタマきた!) もう、祐作ったらしょうがないなぁ、あたしでよければ触らせてあげるわよ。
…ほら、後ろから見たら会長とそっくりでしょ?」
祐作「か… かいちょおぉぉぉ~~~~」
亜美「うひゃぁっ!! こら、いきなり羽交い絞めにすんじゃねぇっつの!」
祐作「うぅ、ち、ちが~~う! …おっぱいがデカ過ぎるっ! こんなの、会長のおっぱいじゃないっ!!」
亜美「ったりめ~だろ~がぁ!」
竜児「なぁ北村、 …なにがしたいんだお前は」
奈々子「なにげにヒドいわね」
麻耶「だったらまるお、あたしの胸触ってみてよ、 ね? ちょうどいいサイズじゃない?」
能登「ちょっ、ちょっとまて~~!!!!」
北村「もみもみもみ… これだっ、このおっぱいだ! あああかいちょう~~」
大河「うわ~ん、きたむらくんが壊れた~」

818:名無しさん@ピンキー
09/06/26 22:14:53 XRbOnCLo
大河が一番マトモだ

819:名無しさん@ピンキー
09/06/26 22:47:16 D48zTwac
竜児は、照明の落とされたスウィートルームに招き入れられた。ラブホの安っぽい調度品とは違って、落ち着いた、ムードのある部屋だ。
窓際のテーブルセットに、級友の美しい母親が長い脚を組んで座っていた。
「いらっしゃい、高須君。」
テレビでもお馴染みの美貌が嫣然と微笑みかける。
部屋に漂うアロマオイルの香りが、竜児の鼻腔をくすぐった。
泰子のそれとも引けを取らない豊満な胸元からは、成熟した女の色香が匂い立っていた。

820:名無しさん@ピンキー
09/06/26 22:58:05 D48zTwac
胸元の大きく開いたブラウスから覗く胸の膨らみは、張りがあり、三十台後半だというのに、まったく垂れていないように見える。
竜児は、どうして俺の周りは、重力というものの影響を無視したスタイルの女性ばかりなのだろうかと考えた。
蜜のような肌がまばゆい光沢を放って、たまらなく艶ましい。
腰は悩ましくくびれ、ヒップも丸く小さい。髪はみずみずしい濡れ羽色で、その美貌はハリウッドスターも顔負けという程であり、
竜児はまともに目を合わせることができなかった。

821:名無しさん@ピンキー
09/06/26 23:12:31 D48zTwac
彼女はまるで、夢に出てくる存在のように魅力的だった。男の永遠の憧れ、願望。そういったものの具現化したイメージ。
その美貌はまさにモンスター級、イジョーなまでの美しさ。
「キミのコトは、娘からいろいろと聞いています。」
亜美にそっくりの、大きくて濡れた瞳。業界で『アンナちゃんのおめめ』と呼ばれる、見る者の心を掴んで放さない、あの目だ。
彼女が座ったまま、ずいと前に詰め寄ると、上体の動きに合わせておっぱいがぶるるんと揺れる。

822:名無しさん@ピンキー
09/06/26 23:27:48 D48zTwac
竜児は室内をぐるりと見回した。二人で寝るにしても広すぎるであろう豪勢なベッドが目に入る。ふたつ用意された枕が嫌でも目に付いた。
男子高校生の目線の先を見やり、めまいがするほど華やかな同級生の母親は、パーフェクトな笑みを浮かべた。
大人の女の体臭と、香水とが混ざった甘い匂いが竜児を幻惑させた。
   
                                     …ごめん、遊んでみた

823:名無しさん@ピンキー
09/06/26 23:31:39 z6bswBQg
>>882
なに、気にする事はありません。
続きを書くがよろしかろう。

824:名無しさん@ピンキー
09/06/26 23:52:27 D48zTwac
思い切って、竜児は女優と視線を合わせた。うるんだ瞳がまっすぐにこちらを見つめ返す。
彼女はその豊満なボディラインを誇示するかのような大胆なポーズで座っている。
いきなり下半身が燃えるように熱くなり、ペニスが勃起した。胸が苦しくなり、顔が赤くなるのが自分でも分かった。
─黙ったまま、見つめ続けた。
安奈が居住まいを正した。
竜児は床に視線を落とした。

                  すいませんもうやめます

825:名無しさん@ピンキー
09/06/26 23:55:02 D48zTwac
今書いてるssで煮詰まってて、つい息抜きをしてしまった

826:名無しさん@ピンキー
09/06/27 00:20:13 xXbRazlr
( ゚∀゚)o彡゜続き!続き!

827:名無しさん@ピンキー
09/06/27 00:27:35 b0+vfZeX
817と言い、825と言い......何と言う


面白かった。続き期待!

828:名無しさん@ピンキー
09/06/27 01:27:47 KZo7VbEh
まあ…その…なんだ
おまいら、ラーメンって旨いよな

829:名無しさん@ピンキー
09/06/27 02:38:12 3DxI1fqj
何その無茶振り

830:名無しさん@ピンキー
09/06/27 05:53:02 W+VF3mJQ
>>828
ラーメンが好きです

でも親子丼のほうがもっと好きです

831:名無しさん@ピンキー
09/06/27 06:22:27 SURtczRy
俺はあーみんのほうが好きだっぜ!!

832:名無しさん@ピンキー
09/06/27 08:47:59 RP8AFOwU
ななきの続きが読みたい

833:名無しさん@ピンキー
09/06/27 09:28:15 HemeWS/f
このスレのおかげでみのりんと奈々子と木原が好きになった

834:名無しさん@ピンキー
09/06/27 13:16:10 zIi1CKXi
エロい肢体を寄せてくる泰子を妄想したら…………ああ堪らん。

835:名無しさん@ピンキー
09/06/27 14:21:03 B/rFQjvS
いやいや、独りHしている毒神もまた…………堪らなくはないかい?

836:名無しさん@ピンキー
09/06/27 17:49:55 vEYxn4BJ
大河「ねぇねぇりゅうじ、ヤリすぎてアソコがヒリヒリする~ なんかまだ中に入ってるみたい」
実乃梨「あたしなんかもう腰が抜けちゃって、部活にぜっんぜん身が入らないよぉ~」
亜美「ねぇ高須君、さっき自販機コーナーでヤッたとき、スカート汚しちゃったんだけど、ウェットティッシュとか持ってね?」
麻耶「ゆうべ、お尻のほうにマジ出しされちゃって、お腹の具合がマジおかし~んだ」
奈々子「高須君、なんだか、生理が来ないみたいんだけど? …ひょっとしたらデキちゃったかも…」
竜児「ちょ、ちょっと……みんな、こんなところでマズイよ!」
独神「高須君、放課後に生徒指導室までちょっと来て貰えないかな?」

837:名無しさん@ピンキー
09/06/27 18:04:16 wJwdlODR
校内での竜児の評価が(別の意味で)上がりそうだな
「高須センパイ、やっぱパネェ……」みたいな

838:名無しさん@ピンキー
09/06/27 20:34:14 9ba/bsmW
作者さま!
はやく高須棒姉妹たちを棒姉妹にしてあげて!

生殺しでオレと姉妹たちが悶えていますw

839:名無しさん@ピンキー
09/06/27 21:39:29 vEYxn4BJ
>>838
ごめんね

840:名無しさん@ピンキー
09/06/27 21:43:55 Mq/J6AVG
>>835
昔「ゆりちゃんのひとり遊び」って話あって。


深夜酔っ払った独身がひとり「人生ゲーム」遊んで「けっこんできたー」
と喜ぶ話。ゆゆぽスレ史上最も爆笑したので覚えてる。

841:名無しさん@ピンキー
09/06/28 01:39:05 9DBUxpaK
久しぶりのグレギブンバゾ!(笑)
一条、二条、俺、参上!

842:名無しさん@ピンキー
09/06/28 01:55:15 6IrAS9D6
>>839
大河「あ?書きもしないでナニ言ってんじゃ?ちったー根性見せろや!!」

843:名無しさん@ピンキー
09/06/28 02:24:50 PfNVTfjy
>>836
そのまま指導室で独神と…ルートですな、分かります

844:名無しさん@ピンキー
09/06/28 02:40:49 9DBUxpaK
クイーンのグレギブンバゾ!(笑)

845:名無しさん@ピンキー
09/06/28 06:56:42 QN4m/Je/
「なぁ…」
「なによ」
「……」
「…発情したエロい目で見るんじゃない…エロ犬」

「なぁ…」
「なんだい」
「……」
「…おぉっとそんな熱い眼差しむけられると照れちまうぜ…ヘヘヘ」

「なぁ…」
「なぁあに」
「……」
「…いくら色っぽいバージョンの私と二人っきりだからってその目は犯罪だぞ」「……」
「ちょっ、なんか言ってよ」

846:名無しさん@ピンキー
09/06/28 09:17:49 50CnXVmD
>>842
もっとなじって! ののしって! 『この肥え太った汚らわしいブタめ!』って言って!

847:名無しさん@ピンキー
09/06/28 14:34:05 xpmX67tC
俺もお願いします

848:名無しさん@ピンキー
09/06/28 14:56:06 kwu3Suec
六月二十四日に何の日とか聞かないでください
UFOおおおおおおおおおおおおおおかとおもっちまったじゃねーか

849:名無しさん@ピンキー
09/06/28 22:42:00 mfEPlPfl
SS初挑戦していたら,全くエロなしになってしまいました。
全部で9ですが、5まで投下させていただきます

題名 春過ぎちゃったけど,群馬に行こう!
内容 竜児×大河
時期 アニメの大河が転校後の6月下旬
備考 原作の10巻、スピンオフ2の内容を加えています

850:春過ぎちゃったけど,群馬に行こう!1
09/06/28 22:50:33 mfEPlPfl
バスを降りた瞬間、硫黄の独特の臭いが鼻についた。
「…遺憾…この上ないわ…」
なぜ自分はここにいるんだろう。6時間前に大親友からの電話を切った後、
全くのノープランで、勢いで、高速バスに飛び込み、今に至るのである。
「高須くん,春田くんと旅行いくって。春田くんの彼女も一緒らしいんだけど…」
実は、大親友の櫛枝実乃梨が伝えてくれた内容の半分は,1週間位前に知っていた。
高須竜児は、自分の彼氏というか,嫁なのだが、当の本人から、すまん,すまんが,
と,メールは貰っていたからだ。
もちろん誘われてはいたが、引っ越し先からはあまりにも遠く断っていたのだった。
竜児も、じゃあ俺も行かねえと言ってくれたが,最近、今の家族の家事を手伝う様
になった逢坂(元)大河としては,掃除,洗濯,料理をパーフェクトにこなす竜児の
スキルの高さを改めて実感していたので,偶然話が飛び込んだ温泉旅行なのだが,
竜児に羽を伸ばして欲かったのだ。はたして竜に羽が生えているのかは別として。
もともと春田浩次と,その彼女の濱田瀬菜が,旅館の予約を,お互いがしてしまい,
4人分の予約したのが発端で,気付いた時にはキャンセル料がかかるとの事だった。
春田の交友関係で誘えそうな正規カップルは自分たちだけだと勧誘してきたのだ。
大河が行けないので、竜児は母親の高須泰子と一緒に行く事にしたのだが,泰子の
急な仕事の都合で、3人で行こうと竜児が春田に電話したのが昨日の晩のことだ。
そんな感じで迎えた旅行当日の朝。春田は何を思ったのか、突然、奇行に出たのだった。
余ってしまった1人分の予約を埋めようと、よりによって大河の一番の親友、実乃梨を
誘ったのだ。実乃梨は旅行当日に、突然いわれてもバイトがあるし、だいたい大河の
旦那の高須くんと旅行なんて無理すぎてワロスwと春田に伝えると、
「そっかぁー,じゃあ他あたってみるよぉ」と言って電話を切ったとの事。 
竜児に限って、実乃梨の心配するような事は絶対無い。大河は竜児の事は信頼している。
しかし…結局。ここまで来てしまった。
春田が実乃梨以外に誘うとしたら、予想としては、川嶋亜美、木原摩耶、香椎奈々子…
男子かも知れないが、女子の名前しか浮かばない…
信頼しているのに…竜児を疑っているようで…嫉妬している自分が嫌だった。

ここは群馬県、草津市。
大河は、浴衣姿の人々が行き交う中、場違いなピンクハウスのモデルみたいな,
いつものヒラヒラした格好だ。
乗ってきた高速バスのドアが閉り出発した。バスを見送り、草津の中心にある湯畑へ向う。
普段、自然とは縁の遠い、アーバンライフを送っている大河には、見慣れない風景。
温泉地ならではの素朴な雰囲気のせいか,大河は徐々に、穏やかな気分になってきた。
湯畑に着き,大河は、湯畑の石柵に彫られた、『草津に歩みし百人』の人名を発見した。
「…日本武尊…って本当に草津に来たの?…源頼朝か。へえ …木曾義仲って誰?」
竜児なら日本史得意なんだけどなっと,たった一人の恋人の事を思い出し妄想した…
が、よく考えたら、今はそんなフワフワしている時間はない。
竜二たちが,草津に車で旅行に来るとしか情報が無いのだ。旅館の名前も聞いていない。

探さないと。あの3人を。いや、もしかしたら4人を。


851:春過ぎちゃったけど,群馬に行こう!2
09/06/28 22:58:35 mfEPlPfl
「うっひょ~~っ!☆ 着いた,着いたよ~皆の衆!」
高速道路を降り、やっと標識に草津の文字が出て来たばかりだというのに、助手席の
アホロン毛、春田浩次は,騒ぎ始めたのだった。季節は梅雨の時期だというのに、快晴。
ゴールデンウィークを外したので、道が空いて走りやすい。旅館も安かったらしい。
「着いたって…まだ20km以上あるぞ。あ,濱田さんは運転大丈夫ですか?」
1時間前のサービスエリアでトイレ休憩しかとっていない若葉マークの初心者ドライバー,
濱田瀬奈(美大生)に,後部座席に座っている高須竜児は、その超高校生級のエッヂの効いた
眼差しを向けた。目が会ったバックミラー越しに、瀬奈がビクッとするのが判った。
…仕方が無い。竜児は目の形が悪い。怒っているのではない。怒っているように見えてし
まうのだ。今まで、初対面で竜児と目が合って,唯一睨み返して来たのは後にも先にも、
竜児のフィアンセ,大河だけだろう。2月中旬から会っていない。もう4ヶ月以上過ぎた。
「あっ,うん。平気。高須くん、ありがとう」
瀬奈はつい,油断していて眼光に脅えてしまった。凶悪な目つきのわりに,丁寧で低姿勢な
この男子の心に傷を付けてしまったのではないか気になり,バックミラーで竜児を確認する。
瀬奈と竜児は初対面ではない。バレンタインのチョコレートを買う時にいたのは憶えていた。
ただ一緒にいた、お人形のような可愛らしい販売員に目をとられ、竜児のジャックナイフの
ような目には,その時には気付かなかったのだ。その後,その可愛らしい販売員は転校して
しまい,竜児と遠距離恋愛というのを春田から聞いていた。事情を知っている瀬奈としては、
二重予約の失敗はさておき、折角なので,今回の旅行に大河も来て欲しかった。が,結局3
人で行く事になってしまった。春田は今朝まで,「俺にいいアイディアがあるんだよね~」
っと,今朝まで何やら動いていたみたいだが。瀬奈は、一見軽そうだが、意外に気を利かせ
てくれる春田の事が好きだった。春田も瀬奈の事を好きだと言ってくれている。
瀬奈は,コンビニの看板を見つけた。
「そうだ,あそこのコンビニでコーヒー買おうかな。二人ともいい?」
今日はいつもよりお姉さんっぽくしようと決めた瀬奈の問いにボ~イフリェンドの春田は,
「賛成~!賛成の反対の賛成の賛成~って?あれ?どっちだ?」
と,混乱していた。その時。ふと,振り向いた後部ガラス越しに竜児は,目撃した。
いつの間にかぴったり後ろを走ってる黒いポルシェを。何故か見覚えがある…ような…。
瀬奈の運転するレンタカーはコンビニの駐車場に入った。竜児も車から降りたが、
店内に入らず、持参の黄色い水筒のお茶を飲んだ。水筒の中の氷がカラカラ音を立てる。
コンビニの少し先に停車したポルシェのドライバーは,その黄色い水筒を見つめていた。


852:春過ぎちゃったけど,群馬に行こう!3
09/06/28 23:08:32 mfEPlPfl
大河は、まだ湯畑にいた。よく考えたら少なくとも竜児は草津は初めてだし、
湯畑には来るだろう。温泉旅館のチェックインは早くても14時くらいからなので,
まだ1時間以上ある。下手にウロウロして見失うより、湯畑にある無料の足湯で
待ち伏せする事にしたのだった。ここからなら周辺が見通せるし、なにしろ楽だ。
ギュルルルルルルルっ
「あらやだ」
問題発生。そういえば,今日は高速バスの中でサンドイッチしか食べていない。
大河は正面に素敵な暖簾を発見。『名物 温泉まんじゅう』…おまんじゅう…
いつの間にか大河は足湯から上がり、フラフラと暖簾に吸い寄せられて行く。
店頭では、おひとつどうぞ~っと,歩行者に試食用のまんじゅうを配っていた。
白、茶、緑と綺麗な三色のラインナップ。大河は何色にしようか悩んでしまい,
フリーズしていると、店の奥から出て来た従業員に,声をかけられた。
「お嬢さん、お好きなだけ試食してくださいね」
持っているお盆には,まんじゅうが3色それぞれ10個づつ乗せてあった。
「え,いいの?あ、いや、買います。おいくらですか?」
「いえ,御代は結構です。いっぱい食べてください」
と,従業員は言うと、大河の目の前の机に、まんじゅう祭りっ!!って感じ
のお盆を置いて店の奥に戻ってしまったのだ。残されたまんじゅうを見つめ、
「ゴクっ…おいしそう」
大河はおもむろに両手にまんじゅうを持ち、食べ始める。まんじゅうの皮は
しっかりしていて、中身のアンコも,甘すぎず上品な味だ。美味しい。
10個目のまんじゅうに手をかけた時に、緊急事態発生。
「!!!っ みじゅっ 水ーーっ」
みるみる大河の顔色が紫色になっていった。
その時、呆然としている大河の周りの人垣の中から,虎柄の黄色い水筒が出て来た。
大河は使い慣なれた手つきでキャップを取り、その黄色い水筒のお茶を飲み干す。
「んっ! んっ! んっ! ぷはぁぁっつ!生き返るぅう!」
「そんな小さい口の中に、何個もまんじゅう放り込むからだぞっ!大丈夫か?」
大河の口から溢れた、まんじゅうのカスやら、お茶やらを拭きつつ、竜児は
大河を見つめた。見つめていた目からは、何やら熱い物が溢れて来ているが。
「竜児っ!あんたいつから見ていたのよっ!わっ…私の事大切でしょっ?」
大河の服に付いたアンコを丁寧に拭っている竜児の頭をポカポカ叩く。
「当たり前だろ。湯畑に来たら,お前の声が聞こえてすっ飛んで来たんだよ!」
実際、一緒に行動していただろう、春田と瀬奈が後から駆けつけた。
「ちょっ,高っちゃ~んっ!どうしたの急に走りだしてって、タイガぁーっ!」
どうしてぇ?なんでぇ?と,大声で驚いている春田。ニコニコしている瀬奈。
涙を誤魔化そうと、今度は染抜きを始めた竜児。その頭を愛おしく撫でる大河。
そんな賑やかな老舗まんじゅう屋の裏。暫く止まってた黒いポルシェが走り出した。


853:春過ぎちゃったけど,群馬に行こう!4
09/06/28 23:16:00 mfEPlPfl
4人は、旅館のチェックインの前に、坂の上にある、大きな露天風呂に入る事にした。
「うわおぉう!広ーいっ!気持ちEー!あははは!いやー、そういえば良かったね,
 高っちゃん。タイガー来てくれてさ。二人はもう,恋人同士なんでしょ?」
「ふううっ ん?大河の事か?まあ,そんなもんだ。つーか,お前はどうなんだ。
 その,濱田さん。付き合っているんだろ?大学生か。かっこいいよな」
「瀬奈さんとはな。障壁的な出会いがあってだな。すっごーい前から群馬に行く
 約束していたわけなのだよ。ぐふふ,やったね!」
「衝撃的だろ?そうなのか。まあ、結果的に大河とも再会出来たし。サンキューな」
そうだ。大河と再会して改めて竜児は大河が好きなんだと再確認出来た。湯畑で大河
の声が聞こえたとき、声の先に身体が勝手に動きだしていた。春田達が間違って予約
して竜児を呼んでくれたのが結果的に良かった。竜児は女湯の方向に顔を向けた。

女湯では、瀬奈が、大河を見て、微笑んでいた。さっきからずっとだ。瀬奈は、
辛い恋をした過去がある。自分より若い彼女が、本能に従って好きな男の子の為に、
後先考えずに行動したのだ。そんな大河の事が可愛く思えて仕方なかった。
この露天風呂までの道中で,春田から実乃梨に電話した作戦の事を聞いた。
少しやり過ぎかな?と思ったが、上手く事が進んでくれてよかった。
「旅館なんだけど、大河ちゃん,竜児くんと,同じ部屋にする?」
「ェへぇっ? あ、私っ?り竜児と?いいいいですけど,濱田さんはっ?」
「うふふ。わたしは大丈夫よ。ね。そうしましょ。」
大河には最近、新しく弟が出来た。もし姉がいたら,こんな感じなのかなっと思った。
瀬奈の瞳は引き込まれそうなアイスブルーで、そして大河はそれが嫌ではなかった。
ザバァ! 瀬奈はお風呂を出た。大河はスレンダーなカラダに目を奪われる、途端、
あいたっ!瀬奈が転んだ。全裸で。もしかしたらこのヒトはドジ?と頑張って、お
姉さんっぽくしていた瀬奈の秘密をひとつ見破ってしまった。


854:春過ぎちゃったけど,群馬に行こう!5
09/06/28 23:24:32 mfEPlPfl
旅館に到着,チェックインの最中、春田はカウンターにあったパンフを取った。
「ほぇーっ何これ?貸し切り家族風呂ぉ?宿泊者1時間無料だってさ!どーよ!」
「そうなんだ,春田くん。無料だし、予約だけしてみようか?高須くん達は?」
と、ロビーのソファに座っていた大河と竜児は真っ赤な顔を見合わせ,超反応。
かか貸し切り家族風呂?お前はお前は,あんたはあんたは,と絡み合っている。
「貸し切り風呂、8時から丁度2部屋空いているみたいだから、予約するね。」
返事するより早く、瀬奈は、貸し切り風呂の予約を進めていた。
「こ,これはだな,春田と濱田さんの為なんだ。わかるな。もちろん,お前と
 一緒に,その,風呂にだな。まあ,家族同然だし。婚約したし、全く問題ないっ」
「声が大きいっ!わかってるわよっ,もうっ 恥ずかしいじゃない」
夕飯が6時半からで,貸し切り風呂は8時から予約出来たとの事。チェックインの
手続き後,部屋の案内係が来て、竜児と大河は宿泊する部屋に連れて行ってもらった。
春田と瀬奈は向かいの部屋だ。
「大河。浴衣着るか?その洋服じゃあ、落ち着かないだろ」
案内係は、帰り際に大河を見て、サイズの小さい浴衣にささっと差替えてくれていた。
「んー、そうね。うん。そうしようかな。」
竜児も着替える事にした。気を使って、次の間に移動ようと踵を返すが,
「着替えた!浴衣着ると温泉に来たーって感じして来るね、うふっ,どーお?」
大河の着ていたヒラヒラの洋服が、バラバラと脱ぎ捨てられている。早いはずだ…
「おうっ,ずいぶん早いな。おし,仕上げてやる。裾はもうちっと,こう…帯は…」
まただ。大河は思う。さっき,まんじゅうを詰まらせた時もそうだが,この男は,
「竜児って。本っ当、細かいわよね。気になって仕方ないのねぇ」
「え?何でだ?そうか?そうだな。でもな。お前だけだぞ。あ,あと泰子もな。」
よしっ,上出来!帯が可愛いリボンになった。旅館の浴衣でこんなのみた事無い。
鏡を見ていた大河が気付いた時には、大河が脱いだ服はきちんとクローゼットに,
竜児も着替えが済ませていた。竜児はやっぱスゴい。まだ夕飯まで時間がある。
「ねえ,竜児。お散歩しながらお買い物しようよ」
「そうだな,そのあと,卓球しないか?さっき卓球台があったぞ」
浴衣に武装し、すっかり遊ぶモードに入った二人はカラオケがとか,射的だとか,
はしゃぎはじめた。そうだ、湯畑の石柵の『草津に歩みし百人』って知ってる?
竜児っ見に行こうよ!ワイワイ賑やかにホテルを抜け出す。
ふたりは自然にお互いの手を取り、いつの間にか走り出していた。

855:名無しさん@ピンキー
09/06/28 23:53:51 ovL+xe4S
どれどれ

856:名無しさん@ピンキー
09/06/28 23:59:21 D0IL535T
>>854
群馬おもろい、続きも期待してます

857:名無しさん@ピンキー
09/06/29 00:12:59 QxuJxxob
>>854
うまく10巻とスピンオフ2の流れを使ってますね。
話の雰囲気いい!

後編に期待です。

858:名無しさん@ピンキー
09/06/29 00:58:58 qDZb1Hn+
みのドラはー?

859:名無しさん@ピンキー
09/06/29 02:02:57 gDZeAWMf
>>854
GJ! この先何が待つのか期待してます。


ただ群馬県民として細かいツッコミ。
「草津市」→滋賀県
「草津町」→群馬県
です。ザスパ草津もよろしくねぇ~。

860:名無しさん@ピンキー
09/06/29 05:51:55 qDZb1Hn+
んば、んば!

861:春過ぎちゃったけど,群馬に行こう!6
09/06/29 07:56:03 vq1Ypd/G
「あり?いないみたい」
春田と瀬奈は,ノックしても応答が無いドアの前にいた。
「久しぶりに逢えたんだもんね。二人で遊びにいちゃったんだ…」
「あはーっ,でもさ,俺も瀬奈さんと二人きりの時間が増えて嬉しいかな☆」
「もうっ,春田くん…でも,そういうハッキリ言ってくれると私も嬉しいよ」
「マジでーっ,あのさ,瀬奈さんっ俺、本っ当ー,楽しみにしてたんだよね、
 群馬っ!草津っ!温泉っ!上州牛!,モォーーッ!」
その瞬間、春田は、微笑んだ瀬奈にあるはずが無い,幻の尻尾が揺れた様に見えた。
もし瀬奈も春田と一緒にいる事が嬉しいというなら,もっと、ずっと一緒にいたい。
瀬奈がこの旅館に決めたのは、上州牛が食べられるからだった。なぜなら春田と
上州牛を食べようと、約束していたのだった。瀬奈は、春田の事を考えてくれた。
親でも兄弟でも親戚でもない女性に、自分の事を考えてくれていると思うだけで、
春田のカラダから,パワーというか,何か,そういうのに準ずるモノが溢れてく
るのであった。全力で瀬奈を守りたいと感じているのだった。
「瀬奈さん、初ドライブどうだった?よっく考えたら自殺行為モノだよねっ☆」
「…そうね,自分でもそう思う。んーっ春田くん,部屋戻ってテレビ見よっか」
「イエ~ス,群馬テレビ、チェキラッ!」
夕食はこっちの部屋で4人で摂ることにお願いしてあった。あと1時間はある。
ふたりはその間、改めて親睦を深めたい、互いの事をもっと話したいと思った。

「おいしかった~、ねっ竜児!」
「おうっ,旨かったな。俺的にはこの舞茸の天ぷらが絶妙だったな」
「ごちそうさま」
「ごっっちゃ~ん!ついに念願の上州牛っおいちかった!やっぱ若者には肉!」
満足満足と,それぞれが勝手に感想を述べ、話題は貸し切り風呂に。
「8時から1時間,だっけ?でもお風呂って1時間も入らないよね~」
「でも,昼間に入った温泉は,洗い場なかったからなあ。すぐ過ぎるだろ」
無料だというので、一応予約はしたが、本当に混浴で入るのだろうか…?

8時が近づくにつれ、緊張からか,テレビを見入り、口数が少なくなっていく。

「ぴっ,ぴっ,ぽーんっ!8時だっ おしっ!風呂行くべよっ!」
春田が立ち上がる。そして、おもむろに提案した。
春田が立ち上げる。そこで,おもむろに提案した。
「とりあえず,俺と,タイガ~が先に行って,それぞれのお風呂に入り,錠を
 締めて待ってる。で、お風呂の鍵を持った高っちゃんと瀬奈さんが5分後に、
 それぞれ,どっちかのお風呂の鍵開けて入るってどぉ? 運が良ければ混浴!」

そういう事に、なった。


862:春過ぎちゃったけど,群馬に行こう!7
09/06/29 08:14:03 vq1Ypd/G
「そろそろ,5分経ちますね。濱田さん、どっちの鍵にしますか?」
竜児は瀬奈に2つの鍵を差し出す。瀬奈はアイスブルーの瞳で竜児を見つめた。
「わたしは鍵を受け取らないよ。もし、竜児くんが春田くんのお風呂に入ったら
 戻って。大河ちゃんのお風呂だったら、そのままお戻ってこなくていいから」
「…わかりました。入る前に、もう片方の鍵を扉の前に置いておきます。春田の
 為に、濱田さんもすぐお風呂に来てください」
「うん。いってらっしゃい。竜児くん、大河ちゃんに優しくしてあげてね」
竜児はうなずき,3階にある貸し切り風呂に向った。瀬奈は小さく手を振った。

しかしその時、3階ではまだ大河と春田は,貸し切り風呂の扉の前にいた。
「くっは~っ!混浴になったらどうしよ~!緊張して来た~っ,ねえっタイガー」
「言い出しっぺが何いってんだっ覚悟しろ,覚悟!」
「ぇえ~っ,タイガーは覚悟出来てるの?うっふ~ん,すっすんでる~ん」
「うっさい!わたしと竜児は、うっ,うっ,運命の人同士なんだっ!今さら
 いっっそっ…、一緒にお風呂に入っても、何の事は無い…なっ!いっ!!」
春田の髪の毛を掴み、引き寄せた耳元で、大河は大声で叫んだ。
「いっい~っ!!いたっいたたたっ!な、なんでっ!うわああ~んっ」
突然の大河の攻撃に逃れるため、春田は右側の貸し切り風呂に入り錠をかける。
ふうっと,大河はため息。ちょっと,冷静になろう。そうだ,ママに連絡しなきゃ。
高速バスの中で、群馬に行くとだけメールはしたが、門限過ぎているし、いい娘
になった大河としては流石にまずい。フィ…まあいいか。フィアンセと一緒にいる
とだけ電話で話そう。大河は母親にダイヤルした。
『ピピッピピッピピッ』
ええっ!? 大河は聞き覚えのある着信音を聞いた。生耳で。音の先に
振り向く。
「ママっ!」
「うわあああああんっ」
大河が振り向いた通路の先から、赤ちゃんを抱えた、大河の母親が、現れた。
「大河っ,あなたの声で、かわいい弟が、泣いちゃったじゃないのっ」
「えっ,あっ,ご,ごめんなさい…って,ちょっと,ママ!何しているのよ?」
母親は生後4ヶ月の赤ちゃんをあやしながら答える
「大河こそ何しているの!今の話だと、竜児くんと混浴?どういう事?」
大河の真っ白な肌が,一気に真っ赤に染まる。湯気まで見えそうだ。
「ちっ違うのっ誤解よっ。竜児はちゃんとしてるんだからっ。そうそう濱田さん!
 竜児は、右の家族風呂で、さっきのアホと入るの。男同士の親睦を深めるの!
 私は,左の家族風呂で,女子大生の濱田さんとガールズトークしたかったの。ね?」
騙せただろうか…泣き止んだ弟を,撫でながら、大河の母親は黙っている。
「そう。大河。じゃあ、わたしも一緒に入るわ。家族風呂なんでしょ?ここ。
 リアル家族だし。あと草津の湯は婦人病にもいいらしいから…いいでしょ?」
ママと一緒?う,うれしいなあ…と言いながら、大河と母親は左の貸し切り風呂
に入る。弟は眠ったらしい。大河は,竜児が来ない事を祈りながら錠を掛けた。



次ページ
最新レス表示
レスジャンプ
類似スレ一覧
スレッドの検索
話題のニュース
おまかせリスト
オプション
しおりを挟む
スレッドに書込
スレッドの一覧
暇つぶし2ch