【田村くん】竹宮ゆゆこ 18皿目【とらドラ!】at EROPARO
【田村くん】竹宮ゆゆこ 18皿目【とらドラ!】 - 暇つぶし2ch650: ◆KARsW3gC4M
09/06/21 01:12:07 V5hnNc4O
[言霊(1)]

「ねぇねぇばかちー、ちょっと話があるからコッチに来て?」
もう数日もすれば修学旅行というある日の放課後、席の後ろから聞こえる声。
聞き覚えのある生意気な口調で私のあだ名を呼ぶ。
私をこんな呼び方をするのは一人しか居ない。
逢坂大河…。人読んで『手乗りタイガー』である。
珍しくて、虎の英語読みを連想させる名前、愛らしいフランス人形の様な容姿、車検ぎりぎりローダウンな身長…容姿とは真逆な凶悪凶暴な振る舞い。etc.
「えぇ~?亜美ちゃんマジ忙しいしぃ~、てかチビ虎に用事なんか無いんですけどぉ」
本当は『用事』はあるにはあるけど……人前で話す様な内容じゃ無いの。
……高須君と私、実乃梨ちゃんに……そして、この生意気なチビ虎。
複雑に絡み合った人間関係を一本に纏める。
かれこれ半月前に高須君と約束した『しがらみ』を解決するという『用事』。
でも…それって難しいんだ。
誰もが納得するハッピーエンドになんかなりっこない…。一対が幸せになれば、残りは……。
だから、今の今まで行動に移せず考えを巡らせていただけ。
大河が私に何を言わんとしているか…恐らくは私の予想通りだろう。



651: ◆KARsW3gC4M
09/06/21 01:13:46 V5hnNc4O
あんたの得意な…実乃梨ちゃんとの『譲り合いごっこ』についてでしょ。
「干されモデルが忙しい訳無いじゃない。暇だからって妄想に逃避しちゃ駄目だよ?辛くても、それが現実なんだし、
ま…そんなのどうでも良いから、黙って早く来い」
と、この生意気なクソチビは腕を組んで哀れそうに私を見やり、大きく溜息をついて右手の親指で教室の戸を指差す。
「私は干されてなんかねぇ!!あ~っ!!む・か・つ・くっ!!今月はスケジュールが緩いんだよ!」
その物言い、態度…、大河が辛辣な口の聞き方をする娘と分かってても腹が立つ。
「はいはい…緩いのはばかちーの脇腹と頭のネジ。世間一般では、そうして徐々に干されていくのよ。そんな事も知らないの?」
血管が一、二本切れてしまいそうになる。
…が、無駄な応酬をしていては時間がもったいない。
さっきまで奈々子と麻耶と話してて、高須君は先に帰っちゃったし……私も早く『帰らなきゃ』
「だ~っ!!わかったわよ!行けば良いんでしょ!?マジうぜぇ!」
口調とは裏腹に内心は焦っていた。
高須君の所に一刻も早く行きたい、そして…考えさえ纏まっていないのに大河の方からアプローチしてきた事。



652: ◆KARsW3gC4M
09/06/21 01:14:44 V5hnNc4O
ほぼ毎日、高須家に上がり込んで、日付が変わる前とはいえ夜中に帰る。
隣人の大河が気付かない筈が無い。
恐らくは私達の『触れ合い』を勘づいたのだろう。
灯の落ちた部屋の中から漏れる私の…あの声、とか、ベッドの軋む音なんかを聞いたりして…さ。
「で、何よ?亜美ちゃんは、あんたと違って忙しいんだから簡潔に言ってよね」
連れて来られたのは非常階段の扉の前だった。
まあ良いや。出たとこ勝負だ。
当事者の高須君を差し置いて、傷付けて、掻き乱した奴等なんかに言い負かされたりしない。
屈しないよ…、高須君をこれ以上傷付けさせない。
「ふん。確かにばかちーに難しい事を言っても理解出来ないだろうから、三行に纏めてあげる。
………
竜児を
弄ぶのは
止めろ」
そう真剣な目差しで言う。淡々と…そして低い声で。
この娘の言った『三行』はある程度、予想通り。
私は一言も発さずに、ただ彼女の目を見据える。
顔をしかめたり、怒りも浮かべず……ただ無表情に。
「竜児は好きな人が居るの。その相手もバカ犬の事が…好き。
両想い…だから邪魔しないで」
下から睨付けながら大河がそう言った。
相手を射殺さんばかりの怒りを込めて。



653: ◆KARsW3gC4M
09/06/21 01:15:45 V5hnNc4O
「アンタは"遊び" "暇潰し"のつもりかもしれない……、みの……うぅん。その相手と竜児は結ばれるべきなの。…今なら"無かった事"にしてあげるから……」
「無かった事ぉ?………ふざけんな」
大河の吐いた言葉『無かった事』…それは聞き捨てならない。
彼女の言葉を遮る様に私は唸る。
このまま最後まで大河の戯言を聞くつもりだった……けど私は黙っては居られなかった。
「高須君が振り回された挙げ句、傷付いた…その事実も、無かった事、にしたいの?
バカにしてんの?
それに私、本気だから。
あんた達、二人と違って…」
腹の奥底から搾り出す様に…私は目の前の虎に言い放つ。
激昂してしまいそうな感情をなるべく出さない様に…。
「とぼけるな!竜児を振り回してるのはソッチ…!上手く行けそうなのに…バカチワワが発情してサカってんじゃないわよっ!」
「はあ?上手く行けそう?何が?高須君の気持ちを置いてけぼりにして成就する訳無いじゃん!
その"相手"が彼に何をしたか理解して言ってんのかよ!」
私達は拳を握って対峙する。
大河の言い分も解る。
『異分子がでしゃばるな』
そう言いたい訳だ。
そう、確かに私は『異分子』だ。



654: ◆KARsW3gC4M
09/06/21 01:16:38 V5hnNc4O
私がこの状況の一端を作った当事者だと嫌って程…理解している。
だけど、もう私は『異分子』では居たく無い。
強くなるんだ…。
仮面を被らずに居て良い。
そう教えてくれた高須君の『一番』になりたい。
変な意地を張らずに好きな相手と居たい。
その気持ちが私をつき動かす。
だから大河を煙に撒いたりしない、本心を包み隠さずぶつけて…糸を解いてやる。
「想いすら告げれ無かった…。宙ぶらりんにされて"無かった事に"された。誰にも言えなくて、泣けなくて、頼れ無かった。
頼れる唯一の相手は大怪我しても助けてなんかくれなかったっ!自分の傷が深くなるのが嫌で逃げ出した!
そんな事をした奴が言う言葉じゃない!
大河!あんたの方こそ、これ以上高須君を玩具にしないでよ!!!」
そう私は大河に言い放つ。
小さくても芯は強い虎に…勇気を出して噛み付く。
一言放つ度に感情が高ぶって…オブラートなんかに包まず、ストレートに事実を述べていく。
良いよ…上等だ。
大河は実乃梨ちゃんと高須君を天秤に掛けて、実乃梨ちゃんの方に傾いた。
結果、高須君の気持ちは差し置いて、親友が"幸せ"になれる様に動いている。



655: ◆KARsW3gC4M
09/06/21 01:17:47 V5hnNc4O
なら、私はそんな好き勝手な攻撃から高須君を守る。
焦がれた相手を放って、友情の押し付け合いをする二人から守ってみせる。
「あんたも勘づいてるだろうけど…私は……高須君と寝た。うぅん…何回も寝てる」
例え、何かを失ってでも掛け替えの無い大切な人を選ぶ。
そう。それに関しては私も、大河も、実乃梨ちゃんも…高須君だって同じ。

「言葉なんかで慰めれない位に傷付いてた。
身体を許したら卑怯?
でも辛そうで放っておけなかった…少しでも助けたかった。
好きだから…高須君が大好きだから、私の全身全霊で守ってあげたいって…そう想ってした事を"弄ぶ"って言うんなら、
あんた達は"高須竜児"の気持ちを無視して周りをウロチョロしてるだけだよ」
私は一息で自分の意見を紡いだ後、何も言えずに俯いて唇を噛み締める彼女を一瞥して踵を返す。
その姿に心がズキっとしてしまいそうな気持ちを押し殺して、足速にその場を立ち去る。
誰だって傷付きたくない。
正論でまくし立てられて言い返せず、情けなくて…。
でも私だって痛いんだ。
何だかんだ大河の事は気に入っている。
あの娘も素の私だけを相手してくれるから…。



656: ◆KARsW3gC4M
09/06/21 01:18:30 V5hnNc4O
そんな相手を言い負かして、負った傷を抉って、塩まで擦り込んで…何かを得る為に傷付けた。
だから痛いよ。…凄く痛いんだ。
けど、覚悟無しに噛み付いた訳じゃない。
いつか…絶対に大河だって解ってくれる。
そう信じているよ。
.
理想とはかけ離れた形で一つの糸は解けた。
そう。無理矢理…引きちぎったのだ。
現状では落しどころなんか無くて、互いに怪我をした。
大河の匂いが薄れてきた高須家の居間で私はうなだれていた。
後悔はしてない、けど言い様の無い喪失感に襲われていた。
「おぅ…川嶋、どうしたんだ?今日は元気ねぇな」
そんな声が聞こえ、顔を上げると高須君が腰を屈めて私を見ていた。
「ん…まあ色々あって…ね。それよりやっちゃんは、もう仕事行ったの?」
私は詮索される前に別の話題を切り出す。
高須君のお母さんを
『やっちゃん』
なんて呼ぶのは気が引けるけど、そう呼べと本人から言われているので仕方無い。
「おぅ、丁度お前と入れ替えりでな。泰子の奴、川嶋と一緒に晩飯食え無くて残念だとよ」
その話題にあっさり食い付いてきた彼に安堵し、私は表情を和らげる。



657: ◆KARsW3gC4M
09/06/21 01:19:44 V5hnNc4O
やっちゃん…そんな事を言ってくれたんだ…って。
嬉しいよね…。だって、それって受け入れて貰えているという事なのだから。
『大河の代わり』じゃなく『川嶋亜美』として見てくれているのだから。
「そっかぁ…うん。明日は一緒に食べようって伝えておいてよ」
「了解」
そう言って彼は私の横に腰を降ろし、何も言わなくなる。
居間の壁に二人してもたれ掛かるのは、もはや『日常の光景』と化していた。
何も言わず、ただ寄り添うだけの日もあれば、戯れ合う日もある。
そして必ず最後は…高須君の部屋で……。
それは今日とて同じだろう。
でも、こんな落ち込んだ気分で出来るかな。
私は迷っていた。今日の出来事を高須君に話すべきか否か。
言うのは簡単。でも…わざわざ言うのはおかしい…よね。
うん。そうだよ、それを言って何になるのだろうか?
「川嶋…何かあったのか?」
そう自問していると、高須君が私に問い掛ける。
「…別にぃ、亜美ちゃんは至って普通ですし~」
彼が心配してくれているのだとは分かっている。
だけど私は煙に撒こうとする。
言えないもん。大河を傷付けたなんて、そして私も傷付いたなんて。
気を引こうとしているとか思われたく無い。



658: ◆KARsW3gC4M
09/06/21 01:20:42 V5hnNc4O
高須君は優しいから、言えば慰めてくれる。
だから言いたくない。
「…そうか。ほら…」
前を見詰めたまま彼が呟き、私の肩を抱いて引き寄せてくれる。
「言いたくないなら言わなくても良い。…けど、これくらいはさせてくれ」
「…うん」
私は彼の肩に頬を寄せて返事し、紡ぐ言葉を探す。
やっぱり言わなきゃ駄目。
今日の出来事は彼にとって無関係な話では無い。
何より…心苦しい、無償に与えられる優しさ…考えとは逆に、より心配させていると気付いたから。
直接に言わなければ良いのだ。濁しておけば……。
「……痛かったんだ」
私はポツリと一言呟く。
「おぅ?」
疑問符を頭の上に浮かべ、高須君が私を見る。
「絡まった糸…今日、一つ解いた…うぅん、切っちゃったの。
そうしたら痛かったんだ」
私は右手を目の前に緩やかに突出し、人差し指と中指で鋏を扱う仕草をする。
「これで良かった…のかなぁ?後悔はしてない……筈だけど、やっぱり考えちゃうんだ」
グッと拳を握って、私はその拳を見詰める。
「本当は絡まった糸って解けなくて、切る以外に方法なんて無くて、切ったら……そのままなのかなって…」



659: ◆KARsW3gC4M
09/06/21 01:21:49 V5hnNc4O
立てた膝を自分のお腹の方に寄せ、顎をその上に乗せた。
「……なんてね。ごめん、訳の分からない話しちゃった」
そうだよ、ほら、空気が重くなったじゃん。
高須君の前で弱味は見せたくないもん、強い娘で居たい。
守るって決めたんだ。…だからこんな姿を見せたら駄目。
そう思い直し、私は明るい声で彼に謝罪する。
「……いや直る。『形』さえ覚えていれば、どんなモンでも時間が掛かってもよう、最後には元通りになるんじゃねぇか?」
「え…?」
私は彼が紡いだ言葉の意味を理解出来なかった。
「解けなくて切っまったんなら……繋げば良い。
絡まった部分は駄目でも、残った糸を結び直したら、
歪でも……直ったって言えるんじゃないか?」
高須君が私の頭を撫でて…言葉を探しながら、精一杯に考えて答えてくれる。
「っ!……で、でも…結び直せ無い位にグチャグチャだったらどうする?
切っても切っても、こんがらがってて…最後に残ったのは短い糸でさ、
……それって結べないじゃん」
そんな彼に対して私は問う。
『そんなの無理だよ。理想論だ』
と…。

「短すぎるなら
新しい糸で、また繋ごう。
今度は絡まり合わない様に…」



660: ◆KARsW3gC4M
09/06/21 01:23:03 V5hnNc4O
そう言った高須君の目は真直ぐ、迷いなんかなくて…。
羨ましいな。
素直にそう想った。
私は怖くて出来ない…。
例え、彼の言う通りに紡ぎ直すも、また絡まるのが嫌で、違う策が無いかと巡らせて…見つからなくて。
心の中で『理想論』を否定しようと試みても………もう無理。
何故なら、彼の横顔に希望を見出してしまったから…。
「……出来るかな、私にも………」
弱々しく私は聞き返す。
そんな事をしなくても、私はその考えに魅入られていた。
聞き返したのは……誰かに……ううん、高須君からの同意が欲しいから。
失敗してコケても、立ち上がれる様に手を差し延べてくれる人が居るんだ。
そう想いたい……弱いチワワが掛けた保険。
「おぅ。絶対に出来る、それに川嶋だけにはさせねぇ。…俺もするから一人じゃない、二人で一緒に…結び直して行けば絶対に良い方向に向く、そうだろ?」
『一人で紡ぎ直す』
そう決意したのに…私は揺らいでしまう。
直面した痛みを高須君となら…和らげれる。
そんな自分本意な考えが生まれてしまう。
それは…嫌、高須君に辛い想いはさせたくない。何回だって言ってやる、好きだから傷付いて欲しく無いんだもん。



661: ◆KARsW3gC4M
09/06/21 01:24:31 V5hnNc4O
「…そうかも、ね。うん………でも痛いよ、きっと。
実乃梨ちゃんにフラれた時と同じ位にズキズキするよ。
それでも良いの?」
でも、考えとは真逆な事を私は口にする。
弱ってしまった私は縋ってしまう…。
彼は優しいから、絶対に『良い』と言うと分かってて…縋り付く。
まだ傷心を抱いたままの彼に……。
「痛くても治るんだろ?いつかは…。それに俺は目の前で怪我してる奴が居たら放っておけねぇぞ、…………好きな奴なら尚更に」
私の頬を数度撫でながら紡ぎ、最後の一言はポツリと呟く。
その言葉はしっかりと私の耳に届き、暖かい気持ちになる。
先を進んでいた彼が、私に歩み寄ろうと手を差し延べてくれた事が嬉しくて…。
「ありがとう」
頬を撫でる少しガサガサ、ゴツゴツしてて……大きくて暖かい手。
それを取って、手の平で包み私は囁く。
「また"おまじない"してあげる。次のズキズキが少しでも和らぐ様に…、だから高須君も亜美ちゃんのズキズキが治る様に…
おまじない……して?」
弱った竜がまた翔べる様に…。
そして弱いチワワが、また強くなれる様に…。
そんな願いを込め、私は背伸びして高須君に顔を近付けていく……。

続く


662: ◆KARsW3gC4M
09/06/21 01:25:45 V5hnNc4O
以上。
今回は導入なのでエロ無しですみません。
続きが書けたらまた来させて貰います。
では
ノシ

663:名無しさん@ピンキー
09/06/21 01:38:46 ++TPJnh9
乙 続き期待してます

664:名無しさん@ピンキー
09/06/21 02:05:35 Dl/wzxfZ
>>662
SS書いてて、ふとスレみたら新規投下が!
しかも、「伝えたい言葉」の続編ですか、前作すごく面白かったです。
今作は最初から修羅場な上、今後の展開が難しそう。
次回も期待して待ってます。

665:コピペ改変
09/06/21 03:36:21 GPFlElEY
ある目つきの悪い男が、自分を愛している3人の女の中で
誰を結婚相手にするか長いこと考えていた。
そこで彼は3人に5万ずつ渡し
彼女らがその金をどう使うか見ることにした。
一人目の女は、高価な服と高級な化粧品を買い、最高の美容院に行き、
自分を完璧に見せるためにその金を全て使って こう言った。
「私はあなたをとても愛しているの。だから、
あなたが町で一番の美人を妻に持っているとみんなに思ってほしいのよ」
二人目の女は、夫になるかも知れないその男のために掃除用具を買って、残らず使いきる と、こう言った。
「私にとってはあなたが一番大切な人なの。だからお金は全部あなたのために使ったわ」
最後の女は、振り込まれた生活費から五万円を倍にして男に返した。
「私はあなたをとても愛しているわ。 お金は、私が浪費をしない、
賢い女であることをあなたに分かってもらえるように使ったのよ」
男は考え、3人の中で一番おっぱいの大きい女を妻にした。

666:名無しさん@ピンキー
09/06/21 03:40:00 NV60hQMq
いい男だなあ…
そりゃモテるわ、器量が違うぜ

667:名無しさん@ピンキー
09/06/21 04:32:12 QDL1eKzc
なんか、無駄にあみドラが多い気がする。
もっとみのドラが読みたいよ。

668:名無しさん@ピンキー
09/06/21 04:41:23 btHUyJIJ
>>667
読みたいと思ったときが自ら筆を取るとき。


個人的には三人の中じゃみのりんが一番話を広げにくい・・・
卒業後進路がほぼ確定なのが要因なのかな・・・?

669:名無しさん@ピンキー
09/06/21 05:02:19 t8K6bfFh
>>668
個人的にみのりんは会話が難しいなぁ。

670:名無しさん@ピンキー
09/06/21 05:16:09 Dl/wzxfZ
>>667
無駄など無い!とあみドラを今書いてる俺が言いますよ
というか勘弁してね、それが今書きたいので

>>669
みのりんから話広げるの面白そうなんだけど、
ゆゆぽが書く、みのりん口調は再現難しいよな
実力不足でいつも嘘くさくなるよ、俺は。



671:名無しさん@ピンキー
09/06/21 07:28:11 iDSj0dvc
>>668
Afterとかなら別として、彼女は竜児の想いを受け入れないからじゃね?
想像しにくいんだろ

672:名無しさん@ピンキー
09/06/21 08:42:00 kucWaRLj
>>667
アニキャラ板のみのドラSSスレは投下多いよー。

673:名無しさん@ピンキー
09/06/21 09:55:16 f9ZcwD3O
>>665
一番目の女=大河、亜美
二番目の女=実乃梨、ゆり
三番目の女=奈々子、すみれ
おっぱい=亜美、奈々子

というイメージなんだけど、正解を教えてくれ

674:名無しさん@ピンキー
09/06/21 10:20:47 JrB7nD4+
こうした亜美派の汚い工作によって とら・みの派は僻地へ追いやられる。
さすが汚い、亜美は汚い。俺はこれで亜美が嫌いなった。

675:名無しさん@ピンキー
09/06/21 10:23:09 0p8OdpWw
大河と亜美は書きやすいと思う
みのりんは・・・

676:名無しさん@ピンキー
09/06/21 10:29:55 RNz4SnqM
>>673
大河=おっぱいって言ってるでしょ、この駄犬!

677:名無しさん@ピンキー
09/06/21 10:33:32 oeWKr/eC
大河タソの未熟な蕾をちゅっちゅ!!ハフッハフッ!!したいお…

678:名無しさん@ピンキー
09/06/21 10:55:50 IeSPsayT
亜美は、女性キャラの中で一番現実に存在していそうな感じだからね
だから、二次創作を書こうという気になるし、
書き上がったものもリアルで違和感がない


679:名無しさん@ピンキー
09/06/21 12:01:31 SitqYTeZ
笑うところか?

680:名無しさん@ピンキー
09/06/21 12:12:31 c5qbFKDX
女性キャラの中で一番現実に存在していそうな感じ
……木原じゃね?

681:名無しさん@ピンキー
09/06/21 12:33:20 f9ZcwD3O
独身みたいな先生もたまに居る。

682:名無しさん@ピンキー
09/06/21 12:40:52 bf8xbuzt
「伝えたい言葉」の作者さんて何と呼べば良いのでしょう?
前に住人からKARsさんと呼ばれてましたが……(カーズさん?)
それとも大文字だけ取ってKAR(カー)さん?

683:名無しさん@ピンキー
09/06/21 14:37:48 oeWKr/eC
>>681
俺二十歳だけど、理恵様みたいな三十路なら明日にでも結婚したい
あ、もちろん田中の方です


684:名無しさん@ピンキー
09/06/21 14:51:18 6fjsgyjm
>>667
書きたいヤツが書きたいモノを書きたいだけ書けばよいのだ
無駄に多いなんてことはない


685:名無しさん@ピンキー
09/06/21 16:45:10 y4N7sq5G
>>667
アニキャラ個別に専門スレあるようだぞ

大河もみのりんも個別にあるから自然とここは亜美が多いのかも

686:名無しさん@ピンキー
09/06/21 16:57:30 V5hnNc4O
>>682
御自由にどうぞ。


687:名無しさん@ピンキー
09/06/21 16:58:26 V5hnNc4O
スマン。ageちまった、吊ってくる

688:名無しさん@ピンキー
09/06/21 18:11:05 QDL1eKzc
(・∀・)ノ彡みのりん、みのりん!

689:名無しさん@ピンキー
09/06/21 19:00:37 btHUyJIJ
>>681
ウチ男子校だったから独身(と同じ高2時30歳)の家庭科の
先生はみんなに持て囃されてたぞ。
ゆゆぽと違って可愛い30歳とかむしろ独身歓迎だった。


あれ、女子に飢えてただけ?


690:名無しさん@ピンキー
09/06/21 19:03:20 Ywy+sHsj
>>689
友達いないからって自分語りしないでください
誰もあんたに興味ないしうざい

691:名無しさん@ピンキー
09/06/21 20:03:53 a6lDPDsK
>>690
だったらスルーしろよマンカス

692:名無しさん@ピンキー
09/06/21 21:20:27 1sA799B/
……お前らちゃんと成人してるよな?

693:名無しさん@ピンキー
09/06/21 21:37:06 W1yqM/SH
お前の倍は生きてる自信があるぞ

694:名無しさん@ピンキー
09/06/21 21:53:38 bT1d3KrA
>>662
GJです。
亜美の性格を維持しながら、『亜美がふっきって攻勢に出たら?』
という、比較的ありそうなifを上手く描いていらっしゃる。

695:名無しさん@ピンキー
09/06/21 21:53:53 GnLuCnuW
ふと思ったんだが

木原→まるおに告白→フラれる
竜児→みのりに告白→フラれる

時系列ずらして、ここで失恋同盟が出来るとか、そういう話があってもよさそうじゃないか??
いや、書くだけの技量はないわけなんだが…

696:名無しさん@ピンキー
09/06/21 22:40:30 btHUyJIJ
>>695
「そんなこんなとらドラ」が近い作品ではある。
まぁ↑はちわドラ作品ではあるけど・・・

697:名無しさん@ピンキー
09/06/21 22:50:00 px2ld4IG
大河が生きるか死ぬかの病気にかかったら
竜児のことを託すのはみのりんじゃなくばかちーじゃないかって気がするんだよな
実乃梨にしても竜児にしても凄く大切だった人の分身みたいな存在を見ながら
二人の絆をあたらしく作っていくのは無理な気がするんだ
そんな病室SSを書こうとして、力尽きまちた(´・ω・`)無理

698:名無しさん@ピンキー
09/06/21 23:03:27 f9ZcwD3O
>>697
タイトル忘れたけど前に保管庫で読んだやつで大河が
「みのりんはさ、もう終わった女なんだよ」
とか、言ってるやつ思い出した。
みのりん話が書きにくい理由はそれもあるんだろうな

699:名無しさん@ピンキー
09/06/21 23:33:49 0p8OdpWw
みのりんは良くも悪くも大河最優先だからね

700:名無しさん@ピンキー
09/06/22 01:02:39 IuwJiAvD
>>662
GJ

701:名無しさん@ピンキー
09/06/22 03:11:34 KkjLFgdC
>>699でも、みのりん絡みの良作が多いのも事実。
つか、竜児×実乃梨は二十分にあると思います。
とことこで、とらドラ!Pのみのりんルートでの設定を活かしたみのドラSSをプリーズフリー( ̄人 ̄)m(__)m

702:名無しさん@ピンキー
09/06/22 04:48:45 EhFt9KuX
>つか、竜児×実乃梨は二十分にあると思います。
「二十分にあると思います」って、何だよwww
「十二分にあると思います」だろ

703:名無しさん@ピンキー
09/06/22 05:56:19 KkjLFgdC
>>702それ以上だから二十でイインダヨーミノリーンダヨー!(´∀`)

704:名無しさん@ピンキー
09/06/22 06:17:00 EhFt9KuX
お前は、書き込む前に基本的な国語能力から見直せ

705:名無しさん@ピンキー
09/06/22 09:26:55 ww6ErsRy
なんでそんなことぐらいで必死に噛み付いてんのかわからない
SSでもないし、ネタ的な強調だろうにわざわざ

706:名無しさん@ピンキー
09/06/22 10:02:15 TE9E6VyK
竜児ありであみドラとかみのドラとか言われると、なんか違う気がするのだがw

707:名無しさん@ピンキー
09/06/22 12:03:30 YGGkE4Yl
( ゚д゚)?

708:名無しさん@ピンキー
09/06/22 12:17:49 TE9E6VyK
いや、一瞬、百合かノマカプどっちよって身構えちゃうんだわw

709:名無しさん@ピンキー
09/06/22 12:23:19 AjBEbZ56
○○ドラって○○×竜児の事だろ?


710:名無しさん@ピンキー
09/06/22 12:51:44 iB/nAwyw
何が何だかわからない……

711:名無しさん@ピンキー
09/06/22 12:54:52 YGGkE4Yl
ドラドラ!

竜児がおなぬーしながらネット麻雀

712:名無しさん@ピンキー
09/06/22 14:24:27 KkjLFgdC
>>707☆ヽ(▽⌒*)

713:名無しさん@ピンキー
09/06/22 14:35:43 ksB1l46w
さっさと規制されろウジ虫

714:名無しさん@ピンキー
09/06/22 19:07:49 imxEsp8a
りゅーじ×青狸

715:名無しさん@ピンキー
09/06/22 19:33:43 ZdZJMzQr
>>673

一番目の女=亜美
二番目の女=高須
三番目の女=奈々子
おっぱい=奈々子

つまりだな(ry



716:名無しさん@ピンキー
09/06/23 03:24:19 wAnBpttl
>>713あぎゃぎゃぎゃぎゃw

717:名無しさん@ピンキー
09/06/23 12:57:01 RwfOeSO2
tesu
u

718:名無しさん@ピンキー
09/06/23 13:47:02 rLLguFBs
   , ノ)
  ノ)ノ,(ノi >>ID:KkjLFgdC
  (    (ノし
 ) ∧,∧  ノ  まだ!まだいける!
.( ( ....:::::::) (
U⊂/ ̄ ̄7 ) ヽ lヽ,,lヽ
 (/ 川口 /ノ   (    ) やめて!
   ̄TT ̄    と、  ゙i

719:名無しさん@ピンキー
09/06/23 14:30:03 kMpDYq2V
細々と書いて中頃まで完成してようやく25kbほどになったのだが、少し気になったことが。
投下前にレス数を予告する人がいるけどあれってどうやって換算してるんだろう?
そういうツールとかあるんですかね? 原稿用紙換算のはあるみたいだけど。

720:名無しさん@ピンキー
09/06/23 14:34:50 Bzp8H6rs
ツールなんてねーよ
足し算できれば誰にでも計算できる

721:名無しさん@ピンキー
09/06/23 14:46:17 Wq2gvwqk
1レス60行だからエディタ上で分けとけばわかる

722:名無しさん@ピンキー
09/06/23 17:21:38 Fax2HF8N
久々に覗いたらミラー保管庫は消し飛んだのな

723:名無しさん@ピンキー
09/06/23 21:02:04 Prz6RStL
>>719
ここできくよろし
URLリンク(s.s2ch.net)

724:名無しさん@ピンキー
09/06/23 21:23:27 LS3z6nFm
>>719
60行以内で区切りのいい場所を作ってそこで切る。
一文の長さはあまり長くならないようにする。
誤読の多そうな漢字は極力避ける。
難しすぎる慣用句などは避ける。
テキストエディタ上で切る部分は印をつけて、投下後イメージで
読み直す。
私が気をつけているのはこんなところでしょうか。

725:名無しさん@ピンキー
09/06/23 22:58:24 JvH5WqWE
ID:KkjLFgdC は、やっぱ、荒らし(多分、書けなくなった職人)だったか


726:名無しさん@ピンキー
09/06/23 23:05:58 K2W6R+r/
そんな奴がルミナススレにまで来るのか

727:名無しさん@ピンキー
09/06/23 23:57:08 CIIG4wxL
>>723
携帯用のリンクそのまま貼るとかどんだけ馬鹿丸出しなんだお前は

SS書きの控え室94号室
スレリンク(eroparo板)

728:名無しさん@ピンキー
09/06/24 01:08:39 XMyiJQwc
4皿目、44LTzffTさんの「虎と竜と、幸せと」の後半を、違う展開で書いてみた。
こういう事をssでやっていいのか分からないが、書いてしまったから貼ってみる。
ちなみに、内容としては4月バカ騒動のネタバレ以降、北村の「高須、今日は何月何日だ?」 から。
前半の内容はSS保管庫で確認を。
「虎と竜と、幸せと」書かれた方、勝手な事して申し訳ない。この場を借りて謝罪と感謝を。

729:名無しさん@ピンキー
09/06/24 01:10:50 XMyiJQwc
<虎と竜と、もう一つの幸せと 1>
「高須、今日は何月何日だ?」

何月─何日─?

北村の単純な問いかけに、しかし、痺れきった竜児の頭は、すぐには答えを紬ぎ出せない。

「何だ高須、そんな事も分からなくなるくらい、動転しているのか?」

答えを出せず、ただ棒立ちのまま、無為に口をモゴつかせるだけの竜児の様子に、少し心配そうな表情の北村。

「こりゃあ、ちっとばっかり薬が効きすぎちまったのかねぇ?」

実乃梨も「あちゃ~」っと右手で自分の後頭部を掻きながら、しかし、こっちは満更でもない表情。
「ま、それだけ大河の事が大切だったって事さね」と、事も無げに付け加える。

何月何日? 薬が効きすぎた? 何を言ってんだ、この二人は?
いや、そんな事はどうでもいい。それよりも……

未だ、放心状態から抜け出せない竜児は、まるで熱病にでもかかったような頼りない足取りで、ノロノロと教室の入り口に立つ大河の元まで歩み寄る。
竜児の接近に比例するように、真っ赤に焼けたヤカンは今にも自熱で溶け出してしまいそうになるほど、さらにその赤みを増していく。

「なななな、にゃによ……」

目の前までたどり着いた竜児に対し、回らないろれつと共に、精一杯の虚勢をはる大河。
先だっての竜児の絶叫が、大河にとって嬉しくないわけはなく、本当のところは、小躍りしながらこのまま抱きついてしまいたいほどの心持ではあるのだが……
しかし、「公衆の面前でそんな事できるか」と言う、最後に残された小さなプライドの欠片でもって、飛び出しそうになる小さな身体を、どうにか押さえ込み、無理やり作った鋭い眼光を、精一杯の虚勢を張って竜児にたたきつける。

もっとも、形を模されただけの攻撃的な視線の中には、彼女の象徴たる「虎」を思わせる破壊性は垣間見えず、
その代わりに何とも、こっぱずかしい心情が込められている事は、実乃梨や北村だけでなく、
今年一年、共に手乗りタイガーの恐怖に晒されてきた他のクラスメートたちにも、容易に見て取る事が出来た。

竜児はおもむろに腰を折って屈み、目の前の自分よりも随分と背の低い少女と同じ高さの視線を作る。

竜児の行動に、その場にいたクラスメート達の間から、「おおー」だの「うそ、マジ?」だのと、ザワメキが静かに巻き起こる。

「えええ……」

竜児が自ら腰を下げた事により、余りにも顔が近く、その近さに大河ヤカンは融点を通り越して沸点まで上り詰める。
しかし、そんな蒸発間近状態の大河の様子など気にする素振りもなく、竜児の右手はゆっくりと大河の顔に近づいていく。
唐突な展開に、動けず固まる手乗りタイガー。意外な展開に、先ほどまでのざわめきがウソのように、シンと静まり返るクラスメートたち。
竜児の腕が大河の顔に触れそうな距離まで到達する頃には、大河自身はもう何も言う事が出来ず、何も考える事が出来ず、ただギュッと両目を硬く閉じる事しか出来ないでいた。

誰もが竜児の行動の行き着く先を、固唾を呑んで見守った。もっとも、大河だけは固唾呑むどころか、呼吸すら出来ない状況に陥っていたが……

そして……

730:名無しさん@ピンキー
09/06/24 01:11:57 XMyiJQwc
<虎と竜と、もう一つの幸せと 2>

ツン……

竜児の指先は、大河のおでこ辺りを軽く突付く。

………

ツンツン……

さらに、頬、顎と場所を変え、二度三度と大河をつつく竜児。誰もが予想していた結末とはいささか異なる彼の行動に、その場にいた全員の頭上に渦巻くクエスチョンの大群。

ツンツンツンツン……

竜児の攻撃はとどまるところを知らず、顔から肩、身体と、とにかくひたすら突っつきまくっている。この場にいる誰にも、竜児の行動の意図が汲み取れない。

指先が腰の辺りに到達する頃には、当の大河自身も固く閉ざしていた目を開き、眉間にしわを寄せながら、現在の自分の置かれている状況を、出来るだけ冷静に分析しようと試みる。分析しようとして……

「何しとんじゃーーーエロ犬がぁぁぁぁぁぁあ!!!」

分析の結果が出るよりも早く、華麗な回し蹴りが竜児の即頭部にめり込んでいた。無抵抗なまま吹っ飛び、手近にあった机や椅子を派手に巻き込みながらそのまま壁に激突する。

「ききき、きま、きさま……こんな所で、なお、なななにをおおおおお!?」

今度こそ「猛虎」の怒気を孕んだ視線が、壁に背を寄りかけるようにしてへたり込んでいる竜児に、容赦なく浴びせられる。
おおよそ、精神と言う物を持ち合わせているであろう物質のすべからくが震え上がりそうな、凶暴で凶悪な視線の中心にすえられた当の本人。だが、しかし……

「は……はは、ふははははへは……」

竜児の口から漏れ出すのは、途切れ途切れに響く、乾いた笑い声だった。
「た、高須が壊れた……」などと言う言葉がささやかれる。

「お、おい高須、しっかりしろよ……」と声をかけた北村も、常軌を逸しているような竜児の状況に、少々腰が引けているようだ。しかし、そんな北村の声が聞こえているのかいないのか、竜児の独り言は続く。

「はははははは……死んでなかった……はははは……よくわかんねぇけど、生きてた……」

放心状態のまま、ただただそう呟きながら、再び涙を流し続ける元二大番長の片割れ。

「よかった……何かわかんねぇけど、よかった、本当に……」


731:名無しさん@ピンキー
09/06/24 01:12:47 XMyiJQwc
<虎と竜と、もう一つの幸せと 3>
==================================================================

「すまん高須!」

大げさな身振りで謝罪の意を示す北村。同じように実乃梨、能登、春田などと、この一件に加担したと思わしき面々が、しきりに押し付けがましい謝罪の意を表現し続けている。

大河のみ、少し離れた場所で、竜児に背を向け腕組みしたまま突っ立ている。
その立ち姿は全身で、「あまやかしたら付け上がるだけ」と言い放っている様でもあるが、しかし、チラチラと背後を気にして視線を送っているせいか、いまいち説得力を持てない。

「今日は4月1日。つまり、俗に言うエイプリルフールというやつなワケだよ。」
「それで─こんな真似か─」
「いや、だから本当にゴメンってば! ほら、この通り!」
「…………」

「あ~あ、だから言ったのに……」

竜児の暗く沈んだ表情に、呼応したかのように、亜美が口を挟む。

「絶対、シャレになってないって思ってたのよね~。タチ悪すぎって言うの?」
「でも、そんな事言ったって、アーミンだって結局は手伝ってたジャン─」
「アタシは見てただけ。実際には何もしてないもん。」
「あっ、ずっけーぞ!」

自分のすぐ側で、櫛枝と亜美のにわかに熱を帯びた言い争いが聞こえていた。が、今の竜児にはそんな事はどうでもいい事でしかない。

「ギリ……」と、竜児は目の前に置かれた机の角を、強く握り締める。

死んでしまった。
もう、手を伸ばす事も出来ない場所に、アイツを一人で行かせてしまった。

二度と放しはしない。そう誓ったあの時から、自分なりに出来る事を精一杯してきたつもりだった。
だが、ああも簡単に、何の前触れもなく、大河は竜児の手の中から隙間を縫うように零れ落ち─消えた。
何の努力をさせてももらえず、何を叫ぶ事もできず、あいつが伸ばした手に気付く事もなく、消えてしまった事すら、ついさっきまで知る事も無く……

あの時は、そんな後悔の念と、申し訳なさと情けなさと、そしてどうにも抑えきれない衝動で、爆発して絶叫した。

だが、それらが全部ウソだという……

「ギリギリギリ……」と、まるで心のバランスを取るために必要であるかのように、机を握る指先に力が入り続ける。


732:名無しさん@ピンキー
09/06/24 01:13:23 XMyiJQwc
<虎と竜と、もう一つの幸せと 4>

アイツと一緒になると決めた時から、もう二度と一人ぼっちにはさせないと誓った。俺は一番近くで逢坂大河という奴を見てきて、そして、きっと誰よりも、そいつの喜びや痛み、そして優しさや強さや弱さや……
とにかく、他のやつ等が知りえる事のないものを、直接見聞きしてきつもりだった。
アイツが死んだと聞き、どこにもその姿が見つからなくて、それでも俺には信じられなくて……
でも、この教室の扉を開けた瞬間、俺以外の全員がそれを現実だと受け入れていて……
俺と他の人間の差が、そこにはハッキリと感じられて……
それがまたやるせなかった。
「いっそ、このままアイツを一人で行かせちまうくらいなら……」
冗談抜きで、かなり真剣にそこまで考えてしまっていた。後追いなんざ、情けない話でしかない。そんな事は分かっている。それでも……
あの時は、正直そこまで追い詰められていた。そう。俺は追い詰められていたんだ……

だが、それらが全部ウソだという……

既に机をつかんだ手の指先は白く変色し、完全に血の気を失っているのが傍目にもハッキリ分かる。だが、それでも力を込めずにはいられなかった。

考えられねえ。そいつは人として、やってはいけない事じゃないのか? タブーってヤツじゃないのか?

「そんな事も分からないのか、お前ら!?」と、よっぽど口に出してしまいたかった。しかし、元来、竜児の持った性格上、そうする事は難しい。

それを言えぬからこそ、机に八つ当たりしているといっても過言ではないだろう。すでに指先にはなんの感覚も感じなくなってきていた。

北村も櫛枝も亜美も能登も春田もそれ以外の奴らも、この件に参加していた誰も彼もが腹立たしく思えてならない。しかし、それ以上に……

「……!?」

黙ったままでいる竜児が気にかかり、先ほどからチラチラとその様子を盗み見ていた大河の視線が、ギラリと光る竜児の視線とぶつかる。
ガンの飛ばし合いでは竜児に対して無敵を誇っていた大河も、今回ばかりはバツが悪いのか「……う」と、慌てて視線をそらす。

今一番気に食わないのは─アイツだ。

お前が死んだなんて事を俺に見せつけて、それでアイツはどうしたかったのか。さっきの俺の絶叫を聞き出すためにか? それとももっと単純に、俺が悲しむかどうか試したかったのか? 俺が悲しまないとでも思っていたのか? それとも、単に面白半分でやったのか?

ざけてやがる、ありえねぇ……

お前が死んだと聞いた時、それを目の前に突きつけられた時、俺がどれほど心をえぐられたか、お前に分かるか?
分かるよな? いや、分かるはずだ。分からないワケがない。だって、それで受ける悲しみは、俺もお前も同じはずなんだ。もしも俺が死んだ時、お前はきっと悲しむ。俺はそんな悲しみをお前に味合わせるなんて事、少し望まねぇ。

なのに、アイツはそれを望んだ。それが─俺には辛いんだ。


733:名無しさん@ピンキー
09/06/24 01:13:53 XMyiJQwc
<虎と竜と、もう一つの幸せと 5>

竜児は、自分の中に吹き上がってくる暗い感情と必至に格闘していた。こんな気持ちは嫌いだった。早く飲み下してしまいたかった。
本当ならば、クラスメイト達の些細なイタズラに「やりすぎだっての、お前ら」と軽い感じで調子を合わせてしまいたかった。そうする事が出来れば、どんなに楽だろうか。
だが、どうしても今はそんな気分にはなれない。それはきっと─

アイツ……

すでに大河の視線は竜児ではなく、自分の目の前の壁に向けて注がれている。心なしか、背を向けたその姿は小刻みに震えているようだ。

どんどんと輪をかけて不機嫌になって行くその様を目ざとく悟ったのか、「おい高須、そろそろ機嫌を直してくれよ。な、頼む……」と、北村。

「………」
「なあ、頼むよ……」
「ああ、そうだな。いつまでもこうしていても、しゃーねー……」
「だろ?」

今ここにいる中で、一番それを願っているのは竜児本人だ。早くいつもの調子に戻りたい。早く、いつも通りの、騒がしくて騒々しくて、それでいて居心地のよい空間に戻りたい。
竜児はそれを切に願いながらも、それでいて「どうにも収まりが付かない」そんなジレンマに苦しんでいた。

「悪いが、しばらく一人にしてくれ─」

竜児はそう小声でつぶやくと、そのまま立ち上がり、黙って教室から出て行く。
後に残された面々はおのおのに困り顔を披露し、自分達の悪ふざけが、一人のクラスメートに与えた影響を、それぞれ思案していた。

「あれは、相当キズ付いてるわね。ああ見えて、高須君て結構ナイーブなとこあるみたいだし……」

亜美の発したその言葉は、他のクラスメートたちの表情を一様に重く曇らせ、そして、誰にも顔を見られぬよう、壁と向き合い立っている大河の目尻に、小さな涙を呼び込んでいた。




734:名無しさん@ピンキー
09/06/24 01:15:11 XMyiJQwc
<虎と竜と、もう一つの幸せと 6>
==================================================================

「やはり、もう一度あやまろう!」

竜児が教室を出て行った後、空間中に垂れ込んだ重々しい空気を払拭するかのように、北村が声を上げる。

「冷静になって考えてみれば、高須が怒るのも当然だ。俺たちは冗談にしてはいけない事をやってしまったんだ。それも面白半分でな。」
「うん、そだね。私もどうかしてたよ─」
北村の言葉に続けるように、実乃梨が口を開く。
「大河が、まだハッキリと高須君に気持ちを聞けていないって聞いて……」
その言葉に、大河の心がズキリと痛む。
「そんでもってエイプリルフールが近いってんで、よく考えずにノリだけで突っ走っちゃったもんね。」

─やりすぎた─

この場にいる誰もが、それを痛感していた。まさか、あの竜児があれほど取り乱すとは考えても見なかった。いや……
取り乱す事自体は分かっていたのかもしれない。標的である彼を盛大に取り乱させた上で、彼の本当の気持ちを隠れている大河に聞かせるのが、今回のタチの悪いイベントの終着駅のはずだった。
そう、ただのイベントのつもりだった。文化祭や修学旅行や、退屈な日常に、ホンのささやかな花を添えるだけの……
だが、そんな軽い気持ちで振るった刃は、その標的となった少年の心を一瞬で引き裂き、彼の心を鮮血で染め抜いた。

「必要とあれば、俺は高須に土下座、いや土下寝でもなんでもする! それでも足りないなら、地面にめり込んででも、許しを請うぞ!」
そんな事で、すぐに許してくれるかは、いつも通りの関係に戻れるのかは分からない。だが、そうせずにはいられない、と言う北村の瞳には、ハッキリとした強い意志の光。だが……

「そんな事、しなくていいよ北村君。」

ついさっきまで壁と向かい合い、溢れて来る涙を必死にその眼球で飲み込んでいた大河が、北村の決意に水をさす。どうやら目に溜まる雫をうまく消し去る事に成功したのか、振り返って他の面々に顔を向けた大河の目にはその痕跡すら残ってはいなかった。
コレまでの人生で、ただただ泣く事しか出来なかった数々の局面を、「こんなツラ、誰にも見せてたまるか」と、意地を張って生きてきた。その上で会得した「この涙、なかった事にしよう」的な特殊能力が、こんなところでも役に立つ。
それは竜児に会い、自分を支えてくれる人間に出会うまでに、「人に頼らない」「人に弱みを見せない」とかたくななまでのプライドでもって培われてきた特殊能力だと言えるかもしれない。

「そうは言ってもさ、タイガー……」
モノ言いたげな表情で大河の瞳に目を合わせる実乃梨の言葉を「いいんだってば、みのりん」と遮る大河。


735:名無しさん@ピンキー
09/06/24 01:18:41 XMyiJQwc
<虎と竜と、もう一つの幸せと 7>

「あいつの事はよく分かってるもん。あのお人よしが、あんた達相手に本気で怒ったりするワケないじゃん。とにかく、あんなツラしてても人には強く出られないヤツなのよ。心配するだけ損ってもんだわ。」

自らの胸中に渦巻く本音とはまったく違った事を口走りながらも、それでも大河の口は止まらない。

「どうせ犬は畜生系列の哺乳類に属するわけだし、きっと三歩あるいたらさっきの事なんて忘れるって。ひょっとしたらもうその辺でケロッとしてたりするんじゃないかしら?」

三歩あるいて忘れるのは鳥類だぞ逢坂。と言う北村の突っ込みに「あはは、そうだっけ?」と気のない笑みで相槌を返してはいるのだが、内心は穏やかではない。
さっきの「あいつの事はよく分かってる」という言葉ではないが、確かに大河は竜児の事をよく理解していた。
自分が発端となった悪ふざけで竜児が激しく傷ついている事も、その竜児の怒りの矛先の中心に自分が据えられている事も、教室から出て行く前の彼の態度を見れば一目瞭然だ。「それだけの事を自分はしたのだ」という自覚もあった。本当なら、今すぐにでも謝りに行きたかった。


でも、みんなで行ってはダメ……


彼は自らの感じた不快感を表情に出す事を極端に嫌っている。
生まれ出る時に、神の戯れで取り付ける羽目になた凶悪な鬼面のせいで、人から怖がられたり、そのせいで無為に気を使われたりするたびに、激しく落ち込むのだから。
そうならないためにも、常に暗い気持ちを胸の奥で強く押し付けて、それを誰にも悟らせないようにするのが、ある種、彼自身の自己防衛本能といえた。
大河はそんな彼を、確かに理解していた。


きっと、今の竜児は怒っている。
だけど、その怒りが収まった時、竜児はきっと落ち込んでしまう。
クラスの皆の前で、押さえきれない感情を表に出してしまったと。
それがクラスの奴等に気を使わせてしまったと。
竜児はそう言うやつなのだ。馬鹿が付くほどのお人よしなのだ。



北村君やみのりんや馬鹿チワワ、それにメガネにアホなんかは、きっと心から竜児の事を心配していてくれるだろう。だけど、ここにいる人間全部がそうだと言うわけじゃない。

単に、「やっぱし高須こえーー。ここで謝っとかないと、後で高須になにをされるかわかんねーぞ。」なんて事を考えているヤツだっているはずだ。
一年という時間をかけて、竜児がこのクラスメイト達に必死に歩み寄ってきたのを見ている。
怖がられ、恐れられ、影でコソコソと何を言われようとも、決して苛立ちを表に出さず、我慢してググッとその感情を飲み込んできた。
そして、そうする事で、少しずつ近づいてきたクラスメイトたちと竜児の距離が、自分のためにまた振り出しに戻ってしまうのは耐えられない。

だからこそ、行くべきではないのだ。これ以上、竜児にキズを負わせないためにも……


736:名無しさん@ピンキー
09/06/24 01:20:09 XMyiJQwc
<虎と竜と、もう一つの幸せと 8>

「でもタイガー。俺、高須とはこれからも仲良くやって行きたいし、このままじゃ俺自身ケジメがつかねーよ。」

珍しく、能登が大河の意見に口を挟んだ。同じクラスになったばかりの頃からは考えられない物言いだが、彼も一年の時間を共に共有する事で、多少なりとも手乗りタイガーにたいする免疫が備わっているようである。

「え、なに!? ひょっとしてこのままだとオレたちって、タカッちゃんと仲良くしてけないとかなワケ!?」

いまさら驚いたように口を開いたのは春田。生まれた瞬間から空気を読む事を拒絶し続けてきた、ある種の新人類に、教室中から「アイツは……」だの「でたよ……」だのと、野卑するような呟きが静かに飛び交う。
しかし、春田にとってはそんな言葉など、どこ吹く風。さして気に留めるでもなく言葉を続ける。

「やだよオレ! タカッちゃんとはずっとダチでいたいもん! なあ北村どうすればいいんだ? 謝ればタカッちゃん、許してくれるのか!?」

春田の必死の問いかけに、北村はあいまいに「ま、まあそうしたいのはヤマヤマなんだが……」と答えながらも、それをさせまいとしている大河に視線を向ける。
そして、北村の視線の行き先に、その視線の意味に気づく春田。珍妙な事に、その場の空気を読む事に成功したようだ。春田の開花である。

「なあタイガー! いいだろ行っても! オレ、このままじゃやだもん!」
「あ、あんたは相変わらず無駄にしつこいわねぇぇぇぇ……」

今にも教室から出て行きそうな意気込みの春田の首根っこを軽く飛んで鷲づかみにし、その行動を拘束する。
行かせてくれーーー! とジタバタもがく春田と、それを力ずくで押さえ込む大河。手乗りタイガーは健在である。と……

「いいんじゃない、行っても。」

それまで黙って事の成り行きを見ていた亜美が声を出す。

「はぁ? 何言ってやがんのバカチー? 行く必要なんて無いって言ったでしょ?」
「そりゃ、アタシだって、こういう時ってのは放っておく方が本人のためになるとは思うし、いま大勢で押しかけたら、それこそ高須君が後々「痛ってーな」的な事になるのは目に見えてんだけどさ……」
「後々痛いって、なんの話だ亜美?」
亜美の言葉の中に理解できない単語が含まれていたのか「何が言いたい?」と問いかける北村だが、「分かんねーヤツは黙ってろ!」と一蹴される。

「なんかこのまま行かないのは、アンタにナメめられてる気がして、どうにも釈然としないわけよ。」
「??? 舐める? 何だ? 何で逢坂が亜美を舐めてるというんだ? 話が見えん!」
「北村君! お喋り禁止! その口は塞がれた方がいいぜよ!」



737:名無しさん@ピンキー
09/06/24 01:20:43 XMyiJQwc
<虎と竜と、もう一つの幸せと 9>

くじけずに亜美に再び問いかけたところを、実乃梨が強引に北村を押しとどめさせる。そして、「さあ、そう言う訳だから、行くよみんなー!」と言い放ち、実乃梨は他の面子たちを先導するように教室から出て行く。その右手には北村を引きずって……

「あっ! ちょっと! 行くなって─」

ぞろぞろと教室から出て行くクラスメートたちの姿に、慌てる大河。その隙を狙ってか「チャンス!」とばかりに春田も緩んだ大河の拘束を振りほどき、廊下へ駆け出していく。

「あ、コラ!?」と春田を再度捕獲しようとする大河の右手が、虚しく空をつかむ。
「くっ、バカチー、てめぇ……」と大河の瞳が亜美に向けられる。が、当の亜美本人は至って涼しげな表情のまま。そして……

「ほんと、あんた等いいコンビだわ。」と大河に投げかける。

「何ワケのわかんない事言ってんのよ! 行っちゃダメなの! 竜児はそんな事望まない!」

語気を荒げ、「ナゼ行かした!?」と問い詰めようとする大河に、「あんた、何か勘違いしてんじゃないの?」と答える亜美。

「いいかよ、よく聞けチビ虎。アンタは何も分かってない。一年前ならいざ知らず、今の高須君なら、こんな事でキズついたりしない。」
「そんな事無い! 竜児のことは何でも分かるもん! それとも何!? アンタ、まさか私よりも竜児の事分かってるつもりなの!?」
「んなワケねーだろ! あんな馬鹿男の事なんて、知らねーし、知りたくもねーよコッチは!」

「知りたくても、出来ないんだよ」と続けて口を付きそうになるも、最後の言葉だけは何とかギリギリで飲み込む。

「私に分かるのは、高須君の事じゃなくて、それ以外のヤツらの事……」
「どういう……事よ……」

「アンタがどう思ってるか知らないけど、このクラスの中には、もうアンタが心配するような手合いなんて、いないんだよ。」

心のどこかで、「高須はヤンキーだ」なんて馬鹿なこと考えてるヤツはいない。あいつは本当に頭の天辺からつま先まで、優しさ以外の成分が含まれていない。そんな事は、このクラスの奴なら全員分かってる。そして、今は全員が、心から高須を心配している。

静かに言葉をつなげる亜美を、大河はただ驚いたように見開いた目で見ている事しか出来ない。

「これは高須君自身が、地道にコツコツとそうしてきた結果よ。そしてそれは、アンタだって関係してんじゃない。毎日毎日、飽きもせずにアンタの事を守って守って……自分よりもアンタの事ばかり大切にして……」


738:名無しさん@ピンキー
09/06/24 01:22:25 XMyiJQwc
<虎と竜と、もう一つの幸せと 10>

「そんな高須君の姿が、他のやつらの目にどう映ってたかくらい、アンタにだって分かるでしょ? 最初はマジでビビッてたやつも、手乗りタイガーっていうフィルターを通してヤンキー高須を見れば……。なーんだ、普通のヤツじゃんって事になるのよ。なったのよ。」
「で、でも……竜児はまだ気にしてるみたいだし……」
「たまに言ってるもん。まだ自分は他の奴等から何となく距離をとられている気がする時があるって……」
「そりゃ、周りが自分の事をどう思ってるか気づいてないだけでしょ?」
戸惑ったような大河の言葉に、亜美は「呆れた」とでも言いたげな表情で言葉を返す。
「アイツってば、本当に鈍感の代名詞みたいなヤツだしね。それに……。距離をとってるってのは、単に、アンタと高須君のクソ暑苦しい関係に近づきがたいってだけよ。
誰も高須君が怖いから近づかないんじゃない。むしろクラスのほぼ全員が、あんた達のラブラブッぷりに引きまくってんぞって話よ。」
「ラララララ、ブラブラ!?」

思わぬ単語の登場に、一瞬で真紅に染め上げられる大河の顔面細胞郡。否定の言葉を吐き出したいのか、口をパクパクと動かすも、残念ながら気の利いた言葉が出てきそうな気配ない。

「とにかくそう言うこと。もしもその事に高須君が気づいてないんだとしたら、アンタが伝えればいいだけの事じゃん。」
「手乗りタイガーフィルターのおかげで、クラスの皆に『本当の高須竜児』ってのが伝わったんなら、おんなじフィルター使って、本当のクラスメートの姿を高須君に伝える事だって出来るはずでしょ?」

「それ伝えるの、あんたの役目だと思うけどな~、あみちゃんは。」そう言うと亜美は大きく背伸びをし「何か、少ししゃべりすぎたかな」と一人ごちる。

739:名無しさん@ピンキー
09/06/24 01:22:58 XMyiJQwc
<虎と竜と、もう一つの幸せと 11>
亜美の言葉に、「本当なの? 本当にそうなの?」と複雑な心境を目で問いかける大河。

「あ~あ、本当にアンタってば、高須君の事しか見えてないのね。」
「え、いや、当方としてはそう言うわけでは……」

思わず、言葉がどこぞの営業マンのような口振りになる。
なんだか、亜美に自分の全てを覗き見られた感じになり、何となく気恥ずかしそうに亜美から視線をそらす。
そんな大河の様子を視線の橋に捉えながら、亜美は「それにしても」とつぶやく。

「高須君もどうかしてるわ。あんなラブラブ状態だってのに、まだ本人に何も伝えてないってんだからさ。」

「その点に関してだけは、亜美ちゃんはタイガーの味方かもね。」とおどけてみせる亜美。
が、その言葉に大河の心がズキンと痛む。

「ま、今回のことで、高須君の本当の気持ちを聞けたわけだし、一応収穫ありってことね。後はあんた自身がケジメつければ、全部丸く収まるって。」

再びズキンと痛む大河の心。

「ま、こういうのも、付き合ってけば誰だって通る道だって。今回は高須君の気持ちがハッキリ分かっただけでもよしとすべきなんじゃねーの? って……」

亜美が大河に視線を向けると、そこには顔面真っ赤にしながらも、両目に大粒の涙を携えた虎の姿。思わず亜美の饒舌トークにストップがかかる。

「ねえバカチー……」
「な、なによ……」
「もしも……、もしもさ、その収穫ってのがなかったら……どうだと思う?」

不意に飛んできた大河の問いかけに、亜美の顔が「はぁ?」と思案顔に歪む。そして一瞬考え込んだ後─

「そんなの、単に高須君の傷つき損ってだけ……」

そこで、大河の言葉の意味に疑問を感じ、思わず言葉を切る。大河の大きな瞳から特大の雫が零れたのは、それと同時だった。
亜美の次の言葉を待つことなく、大河は身を翻して駆け出していた。

「今アイツなんつった? 収穫がない? 何言ってんだよ、ついさっき聞いたばっかりじゃねーか、高須君の本当の気持ちを。 まさか、聞こえてませんでしたってオチじゃ、いや、聞こえてないはずないし……」

教室に取り残された亜美は、今しがたの大河の言葉の意味を思索する。そして「まさか……」と小さくつぶやいた。


740:名無しさん@ピンキー
09/06/24 01:23:01 vXkcV+gl
sageて

741:名無しさん@ピンキー
09/06/24 01:26:45 XMyiJQwc
sageを今勉強してきました。申し訳ない。
以後気をつけます。

742:名無しさん@ピンキー
09/06/24 01:28:05 XMyiJQwc
<虎と竜と、もう一つの幸せと 12>
==========================================================

私はバカだ! 本当に大バカだ!

教室を駆け出し、廊下を走る。どこへ向かえばいいのか分からないが、しかし目指すべき者はハッキリしていた。

本当に謝らなければいけないのはアタシ。他の誰でもない、アタシ!

先ほど目の当たりにした竜児の怒りの中心に自分がいるから……というわけではない。そんな事ではなく、単純に、竜児をだます事に加担した他の皆には、なんの罪もありはしなかった。そう思った。

あんなウソ、付くんじゃなかった!

数日前の昼食時、竜児が北村の用事に付き合うからと、席を外していた。

最初は実乃梨だった。日常の一コマのように、いつもと同じテンションで大河と雑談していた実乃梨が聞いた。
「んでさぁ、結局最近、お二人さんはDoなのよ?」
実乃梨らしいといえばまさにその通りの問いかけに、近くの席にいた木原と香椎が加わってくる。
「あ、そこんとこ私も気になるーー」
「ひょっとしてキス以上とか? 実はもっと先までまで行ってたりする?」
「ば、ばか言うな! んなワケないだろ! なんで私がアイツとキ、キキ、キジュ、キ、キスなんて!?」
「いや、なんでって、つきあてるんだよね二人?」
「し、しらん!」
キスはしていた。聖バレンタインの夜に二人で走ったあの日の夜の、あの橋の上で……
「なに、マジ? キスもまだって、ちょっと遅すぎじゃない?」
「まさか、ちゃんと告白もしてないとかないよね?」
「知らない! 聞いてない! 覚えてない!」
聞いていた。覚えていた。忘れるわけがない。あの時の竜児の真っ直ぐな言葉が、どれほど自分の中に強烈で鮮烈で鮮明で鮮やかな衝撃を与えてくれたのか、忘れろというほうが無理だ。
だが、そんな事コイツ等の前で言いたくないし、言う必要もない。
しばらくダンマリを決め込んでいる事にする。そうすれば、周りの野次馬根性丸だしなヤツらもすぐに飽きると思っていた。が……

いつの間にか増えてやがる。

気が付けば、その会話の中に、能登や春田も混ざり、なんやかんやと騒ぎ立てていた。
「そりゃ、高須もひどい事しやがるぜ。」
能登が知った風な口を利く。
「まさか、逢坂さんもまだ言ってないとか言わないわよね?」
「え、ええええ? あ、ああ、あたひゅは……」
赤面し、壊れたからくり人形みたいにカタカタ動く大河の様子を見て、「ああ、これは言ったんだな」と、誰もがその無言の回答を受け取っていた。
「しかし、だとしたら高須め、余計にゆるせん! オレなんて言いたくても言う相手がいないんだぞ!」
こぶしを握り締める能登の視線が一瞬、近くにいるクラスメイトの一人に向けられた事は、向けられた本人である木原を除いた全員の目に明らかだった。
「なにタイガー、まだタカッちゃんに好きって言われてないの~? ひで~じゃん、タイガーは言ってんのに、それってゆるせね~!」という春田の声はデカかった。
それに呼応するように、教室中の視線が大河を中心に結ばれていく。

そこからはアッと言う間に話がまとまっていった。「高須の本音を暴き出す組合」が結成された。


743:名無しさん@ピンキー
09/06/24 01:30:27 XMyiJQwc
<虎と竜と、もう一つの幸せと 13>

教室の隅で、興味なさげにしていた亜美なんかは、「そう言うの、亜美ちゃん、趣味悪いと思うけどな~」などと言っていたようだが、変に盛り上がった状況下では、その言葉に耳を貸すものはいなかった。

そして、計画はあっと言う間に組みあがってしまった。

「高須のヤツ、きっとビビルぜぇーー」
「泣くかもよ? たいがーたいがーって、あの高須がだぜ?」
「もう何もいらないから、戻ってきてくれ~とか言ってさ。」
「あ、何かそれありそ~」

「高須の本音を暴き出しちゃえ連合部隊」は、まるで半年前の文化祭の時の一体感を彷彿とさせるように、驚くべき結束力を持っていた。

「なあ、タイガーも聞きたいだろ? タカっちゃんの本音ってヤツ?」と、どうしたものかと手をこまねいている大河に春田はノンキなものだった。
「いや、聞きたい聞きたくないじゃなくて、聞かなきゃいけない事だと思うぜ、俺は。」と能登が続く。

聞きたいかって言われたら、そりゃ聞きたいけど、でも……
あの時、すでに竜児の本当の気持ちは大河の中に伝えられていたのだ。しかし……

やめておけばよかった! いつかみたいに暴れて、机や椅子を吹き飛ばしてでも、皆を止めるべきだった!!!

だが、止めなかった。あの時に竜児から受け取った言葉は、あまりに甘美で、魅力的で……。だから、その時は本当に「もう一回くらい聞いておきたい」と思った。思ってしまった。

物心付いた頃から、誰に省みられる事もなく、ただ淡々と、もくもくと一人で生きてきた逢坂大河には、初めて自分を見てくれて、聞いてくれて、側にいてくれて、分かってくれる……
いや、分かろうとしてくれる竜児の存在は余りにも大きく、彼から発せられる言葉は、麻薬にも似た中毒性があった。

それをする事で、竜児が傷つく事が分からなかったワケではない。だが、それでも「もう一度……」と言う感情を捨てきる事が出来なかった。

廊下を全力で走る大河は、すでに自分がどこを走っているのかも、なんだか混沌としてあやふやになっていた。

とにかく謝る! 私が謝らなきゃダメだ! 謝って、そして……

「そして……」

そしてどうすればいいのだろう? 謝って許して貰って、許してもらえるのか、私は?

「でも!」

例え許して貰えなくても、謝らなければ! 今傷ついてるのはアタシじゃない! 今辛いのはアタシじゃない!

今、一番痛々しいキズを持って、そこから真っ赤で暖かい血を吹いているのは、アタシのキズを何度も何度もふさいでくれた、竜児。あの、バカが付くほどお人よしの竜児なのだ。

許して貰えなくても側にいる! 嫌がられても、拒絶されても、迷惑がられても、ずっとアイツがそうしてくれたみたいに、私はアイツの側にいる!


744:名無しさん@ピンキー
09/06/24 01:32:30 XMyiJQwc
<虎と竜と、もう一つの幸せと 14>

廊下の角をバランスを崩しながらも辛うじて曲がり……

ドガシャーーー

派手にこけた。腕やスネを打ちつけ、そこから血がにじむ。が、そんな事は気にしていられない、というか、気づいてすらいない。とにかく、竜児の姿を探して駆けずり回る。

いつもなら、すぐに見つかる。探さなくても、すぐに見つけられる。アタシが呼ばなくてもいつも側にいる。なのに!

どうして見つからないのか? もう、すごく遠くへいってしまったのか?

まるで、探し回るその時間が今の自分と竜児の距離のようで、見つからないという事に少なからず恐怖にも似た感情が生まれて、それを振り払うように、交互に出す二本の足にさらに力を込めて走る。

次の角を曲がった時だった。屋上に続く階段を下りてくる一団が目に留まる。大河はそこへ向けて突進していく。

「おわ! タイガーが!!」
突進してくるその猛々しい姿に、一団の動きが、一瞬びくつく。先立って、竜児に謝りに言ったクラスメート達だったのだが、その中に、なぜか実乃梨や北村、春田に能登の姿がみあたらない。

「竜児は!?」
「う、え、あ……」
開口一番、噛み付かんばかりの形相で聞く大河に男子生徒たちは慄き、満足な回答は出てこない。

「タイガー、怪我してんじゃん……」

その中で、木原がタイガーの状態に気づき、声をかける。が……

「こんなの、どうでもいいから、竜児は?」
「た、高須君なら屋上にいたけど。でも、なんだか、別にそんなに怒ってないみたいな感じで、なんていうか、拍子抜けって言うか、いつもどおりって言うか……」

大河はその言葉を聞き終えることなく階段を駆け上がって行く。全速力で屋上へ出る扉のドアノブに手をかけ、全速力でそれを回し、全速力で扉を開け放ち……



745:名無しさん@ピンキー
09/06/24 01:33:57 XMyiJQwc
一度、処理できてしまえばなんて事はない。喉を通り過ぎていった痛みは、その時こそ鮮烈に爪あとを残すが、しかしそれも一時的なもの。辛さやそれに伴う痛みなんてのは、時間の経過と共に薄らいでいくのみだ。

いつでも客観的で冷静な自分を頭のどこかに待機させておく事ができれば、そんなものは何とでもなるのだ。

しかし……

今回は、なぜか待機させておいたはずの冷静な自分は中々動き出そうとせず、その怠慢の隙を縫うように、飲み込み損ねた感情が漏れ出てしまった。自分としては、この結果はあまりいただける物ではない。

「ったく、さっきはミスったよな……」と考えたところで、「いや……」と、直前の考えを否定する思いが頭をもたげる。

さっきの事だけじゃないな……。最近は……、いや、特に2年に進級したくらいからは、さっきの様に不満を隠しきれなかった事が、度々あったような気がする。

大河に対して怒鳴った事があった。同じように櫛枝や北村に対して怒りもした。あのバレンタインの夜なんかは、泰子に対して筆舌に尽くしがたい暴言を吐き散らした。
それまでの自分では考えられないようなミスをセッセと積み上げてきていた。そして、そうなってしまった原因にも、薄々だが心当たりもあった。

竜児が怒った時には、必ずといって良いほど、その件の中心に、その件の端っこに、その件の延長線上に、必ず大河が関わっていた。
そして、そう言うときに限って、自分の感情をうまくコントロール出来ない。
竜児自身、それがどういう意味なのかと言うのは、分かっているつもりだし、理解できているつもりだ。



746:名無しさん@ピンキー
09/06/24 01:36:58 XMyiJQwc
745に投稿の際、ミスって、半ばからになってしまいました。再度、15を
<虎と竜と、もう一つの幸せと 15>
==================================================================

竜児は外周を取り囲む落下防止のための鉄柵に体重をもたれさせるように、屋上に座り込んでいた。

飲み込んだ物が痛かった。飲み込むハメになってしまったことが痛かった。

傷つく事には慣れているはずだった。傷ついた事によって生まれる憤怒や憤りなどは、いつでも自分の中で、自分の力で解決してきた。
いつでもそうしてきた。自分が生まれ持ってしまった呪われた仮面の邪悪な力を、少しでも緩和するためにはそうするしかなく、そうするのが当たり前だった。
それが出来る事が、数少ない自分の中にあるプライドの一つだった。

だが、それが出来なかった。

ただのイタズラ。それもエイプリルフールだ。ちょっとした茶目っ気だ。
あの時、クラスメイトたちの事をそんなふうに受け流す事が出来ていれば……

得意だったはずの、飲み込むべきだったはずの、あの感情を出してしまった。いつもの自分ならば、きっとうまくやる事が出来ていたはずだ。
だが、それがうまくいかなかった。
クラスメイトたちが、あの後こぞって謝罪に来た。だが、実際のところ、もうそんな事はどうでもよかった。

一人で教室を出た時まで持ち合わせていた、あの時の憤りは、既に喉の奥へと飲み下している。
一度、処理できてしまえばなんて事はない。喉を通り過ぎていった痛みは、その時こそ鮮烈に爪あとを残すが、しかしそれも一時的なもの。辛さやそれに伴う痛みなんてのは、時間の経過と共に薄らいでいくのみだ。

いつでも客観的で冷静な自分を頭のどこかに待機させておく事ができれば、そんなものは何とでもなるのだ。

しかし……

今回は、なぜか待機させておいたはずの冷静な自分は中々動き出そうとせず、その怠慢の隙を縫うように、飲み込み損ねた感情が漏れ出てしまった。自分としては、この結果はあまりいただける物ではない。

「ったく、さっきはミスったよな……」と考えたところで、「いや……」と、直前の考えを否定する思いが頭をもたげる。

さっきの事だけじゃないな……。最近は……、いや、特に2年に進級したくらいからは、さっきの様に不満を隠しきれなかった事が、度々あったような気がする。

大河に対して怒鳴った事があった。同じように櫛枝や北村に対して怒りもした。あのバレンタインの夜なんかは、泰子に対して筆舌に尽くしがたい暴言を吐き散らした。
それまでの自分では考えられないようなミスをセッセと積み上げてきていた。そして、そうなってしまった原因にも、薄々だが心当たりもあった。

竜児が怒った時には、必ずといって良いほど、その件の中心に、その件の端っこに、その件の延長線上に、必ず大河が関わっていた。
そして、そう言うときに限って、自分の感情をうまくコントロール出来ない。
竜児自身、それがどういう意味なのかと言うのは、分かっているつもりだし、理解できているつもりだ。



747:名無しさん@ピンキー
09/06/24 01:43:34 XMyiJQwc
<虎と竜と、もう一つの幸せと 16>

傷つく姿を見たくなかった、それだけの事だ。そして、それだけの事が、俺の感情を制御不能にする。

俺は、傷つかないように振り下ろされる刃を器用にかわせるし、もし傷ついたなら、その傷口に手を当ててそれをふさぐ事ができる。自分で血を止められる。
他のやつらが思っているほど、俺は不器用じゃない。
だが、アイツは違う。アイツは傷つく事を恐れようとしない。むしろ、振り下ろされる刃に、自分から突っ込んでいく事もしばしば。
挙句の果てにはザックリ斬られてひっくり返って、血を流しながら起き上がって「痛くない」と言う。
傷口に手を当てる事もせず、ただ斬られて倒れて起き上がっては、また斬られる。そして「全然、痛くない」と言うのだ、泣きながら。
アイツはそう言うやつだ。

見てられねぇんだよ、バカヤロー。お前がふさがねぇんなら、俺がふさいでやる。傷が多すぎて、両手で足りねえなら、足でもハラでもケツでも何でも使って、全部ふさぎきってやる。

いつでもそう思っていた。

だからこそ、さっきの下らない騒動の中心に大河の姿があったのが……ショックだった。
大河に斬られた……。いつもの軽い暴言のような『みね打ち』などではなく真剣でバッサリやられた……。
あの瞬間は、正直そんな気持ちだった。

それで、あの失態だ。クラスメイトたちの面前で、今まで見せた事のない憤りを噴き出してしまった。

あいつら、絶対びびってたよな……。顔には出してなかったが、あんな状態の俺を目の当たりにしたんだ。ビビッてないわけがねーや。

そんな事を考えながら、屋上と校舎を隔てる扉の方へ視線を向けてみる。しかしこの場所から扉は死角になって見えない。

せめて、「別に全然気にしてねぇって」と言った俺の言葉を少しでも鵜呑みにしててくれるとありがたいんだが……

ついさっき、竜児は、屋上まで押しかけ、北村を筆頭に謝罪する団体に対し、事も無げに「気にしてない」と、ごく普段のノーマル凶悪能面フェイスのまま、その言葉を全員に投げかけた。
本当なら、満面の笑みで持ってその言葉を言い放つ事が出来れば、もう少し言葉に説得力を持たせる事が出来たのかもしれない。しかし長年の経験上、それでは余計に怯えさせてしまうことが分かりきっていた。だから敢えてそうした。



748:名無しさん@ピンキー
09/06/24 01:44:27 XMyiJQwc
<虎と竜と、もう一つの幸せと 17>

なんとか竜児の真意を汲み取ることが出来たのか、屋上に集まったクラスの大半が安心したような表情でゾロゾロと屋上から出て行った。
しかしそんな中で、北村や実乃梨、能登と春田の四人だけはその場を動こうとしなかった。
「もう良いから、お前らも戻れよ」と言う竜児の言葉に、「一緒に戻ろうよ、タカッちゃん」と春田。
他の三人も、みな一様に竜児を連れて教室に向かう事を望んでいるようだ。
だが、竜児は「もう少しだけ頭を冷やしてから行くよ」と軽く笑って見せ、渋る面々を半ば強引に屋上から押し出した。無論、屋上から空中に放り出したわけではなく、校舎へ続く扉へだ。
別に、そこにいる四人を拒否しているわけではない。それどころか、屋上を吹き抜ける春先の風は冷たく、できるならさっさと壁と天井に囲まれた温暖な教室に戻ってしまいたいくらいだった。だが……

俺は、まだここを動けねぇ。
アイツがまだ来てない以上、まだ、ここを動くわけにはいかん。

大河の謝罪を求めているわけではない。ただ、心配しているだけなのだ。
冷静になった竜児の頭の中には、さっき教室で目の当たりにした大河の後姿がハッキリと浮かんでいる。
言葉にこそ出してはいないが、しかし「甘やかすな! 犬がつけあがる!」とでも言いたげなあの姿は……

変なモードのスイッチが入った時の大河だ。
バカでアホで見栄っ張りで、天邪鬼と天邪鬼と天邪鬼を足して三倍したような、そんな時の大河の姿だ。
となれば、俺は一人でここにいなければならない。
いずれやって来るであろう、大河が、誰に気兼ねするわけでもなく、今回の一件に対してピリオドを付けられるように、俺は一人でここでアイツを待たなければならない。

この一年で、俺にだってそれくらいの気回しはできるようになったんだぜ?
「どうだ、恐れ入ったか」と、いっそ本人に言ってやりたい気もするが、やめておこう。それは何か、かっこ悪いからな。



749:名無しさん@ピンキー
09/06/24 01:45:24 XMyiJQwc
<虎と竜と、もう一つの幸せと 18>
========================================================================

そんな事を考えていると、「ドバァン!」と鳴り響く破壊的な音。竜児のいる場所からは死角となって見えないが、恐らく今のは扉の開いた音だと分かる。勢いあまって、それこそ蹴破るかのように屋上に躍り出たであろう小型の虎の存在を、視覚以外の全ての感覚で認知する。

竜児の場所から扉のある場所まではやや距離があるのだが、しかし手乗りタイガーの持つ強烈な存在感は、そんな距離など物とせず、竜児の立つ場所までほとばしる。

間を置くことなく、竜児の視界の中に、言葉どおり転がり出てくる小さな姿。

やっときたか……

すぐさま、竜児の下まで駆けつけてくるかと思われた大河の勢いだったが、しかし妙な事に、転がり出たところでとまり、ナゼか自分の蹴破って来たであろう屋上の入り口辺りに視線を向けている。

なんだ? まさか、今の拍子に怪我でも……

と、一瞬竜児の脳裏に不安が走るが、しかし大河はすぐに視線をこちらに向け、「あ……」とでも言いたげな表情をして、ユックリと静かに近づいてくる。

どうやら怪我はしていないようだが……

大河のしっかりとした歩く姿に、少なからず胸をなでおろす竜児。
やがて、大河が竜児のすぐ正面まで歩み寄り、小さく、か細く声を出す。

「りゅ……りゅう……じ」
「おお」

短く答える。

「ご……ご、ご、ご、ご……」

たどたどしく、回らないろれつで懸命に言葉をつむごうとする大河。竜児は黙ってその言葉を待つ。
もとより、竜児は大河に大層に謝罪してもらうつもりはない。ただ、「ごめん」の一言さえあれば、それ以上は必要ないと思っていた。竜児自身はもう怒ってなんていないし、単に大河が自分自身を納得させられる事ができれば、それでいいと思っていた。

「ご……こ……ご、こ、め、こ……の……」

ところが、一言の言葉の出現を待てば待つほど、いっそう大河の舌は回らなくなるようで、最後のほうなんかはすでに「ごめん」にも「ごめんなさい」にも含まれていない発音が混じりだす。

だ、大丈夫か……と、大河の余りの混乱振りに、いささか不安の色が竜児の顔に立ちこめる。
大河はスッと顔を伏せ、一度短く息を吐き、右足で苛立ちを示すかのように床を叩き、もう一度、顔を伏せたまま息を吸いなおし、そして……

「こ……この……」
「?」
「このクソバカ陰湿駄犬がーーーー!!!」

吼えた。



750:名無しさん@ピンキー
09/06/24 01:46:46 XMyiJQwc
<虎と竜と、もう一つの幸せと 19>

「お、おい……」
「あんた、何時までウジウジやってんのよ! 傷ついた? ざけんじゃないわよ! 心の傷ってのはね、高尚な霊長類にだけ許された特権なのよ! 
それをさも知ったかのような顔で傷つきましたみたいなツラして、ご主人様からかまって貰おうなんて、アンタみたいな駄犬には100年早いのよ! 
7回くらい輪廻転生してから出直してきなさい! ついでに閻魔様にその死刑判決5秒前の凶悪鬼面を剥ぎ取ってもらうのね!!!」

とどまるところを知らない、大河のトルネードを思わせる暴言の嵐。叩きつけられる意味不明で、それでいて辛らつな言葉の群れ。まるで言葉の暴力を絵に描いたような、そんな大河の吐き出す罵詈雑言。

竜児は言葉が出なかった。理解しかねていた。

この状況下で、まさかこんな発言をかましてくる大河に……ではなく。まるで反省の色が見られない、大河の暴言の数々に……でもなく。

なんで、そんな事いってんだ、そんなクシャクシャな……ツラで。

暴言を吐き続ける大河の顔は、すでにクシャクシャになっていた。泣き出す寸前というより、すでに号泣真っ只中である。
両目から噴出す涙が、ありえない勢いで頬を伝って地面へ降り注いでいく。
それは、悲しいと言うよりは辛いというような、そして、言葉を吐き出すたびに、その辛さのパラメーターがどんどん上がっていくような。

今の竜児には、大河の暴言が、自分に向けられた刃ではなく、ただただ、大河が自らの吐き出した言葉で自分自身をひたすら斬り続けているような、そんなふうにしか見えなかった。

「だいたい、あんな4月バカのちょっとしたママゴトに本気になる方がおかしーってのよ! 冷静に考えれば分かりそうなもんでしょ! その程度の脳みそも持ち合わせてないの!?」

とまらない大河の言葉は、白銀の刃を伴って容赦なく大河自身に降り注ぐ。

困惑する竜児。

なぜ、そんな辛そうにしてまで……?
竜児には聞こえている。絶え間なく投げつけられる人格を無視するような言葉の裏に、「いたい、いたい、いたい、いたい、いたい、いたい!!!」と絶叫し続ける大河の声が。吹き出す血が見える。

猛烈な勢いで、余すことなく大河の全身に宛がわれている、バックリと開いた傷口のその多量さに、右手も左手も右足も左足も、ましてやハラやシリなんてとても間に合わなかった。手を出す事すらできなかった。

なぜなんだ!? 意味が分からねぇ! 
ここには俺たちしかいない! いつも、二人きりの時には、お前は謝っていた!
「ごめん」とほんの短く、聞こえるかどうかのギリギリの小声で、それでも悪い事をしたと思った時は謝ってきたじゃねーか!? あの、短い言葉の大切さなら、お前だって知ってるだろ!?
二人の時はそうだっただろ!? 何時からかは分かんねぇけど、何時だってそうだったじゃねーか!!!

見るも耐え難い大河の姿に、言葉が出てこない竜児。しかし、竜児の脳裏に一瞬だけ垣間見えた、さっきの瞬間。
大河が屋上へ転がり出てきた時に見えた、一瞬の挙動。「怪我をしたんじゃないか?」と心配したあの時のこと。
大河が気にした、屋上への扉。ここからでは死角になって見えない、屋上の扉……

まさか……

一瞬だけ視線を大河からはずし、目的の場所へ向け……

竜児は理解した。


751:名無しさん@ピンキー
09/06/24 01:48:43 XMyiJQwc
<虎と竜と、もう一つの幸せと 20>
==========================================================

もう止まらない! どうしても止まらない! どうしてこうなんだ私は!!!

初めに言う言葉は決まっていた。いつもみたいに、「ごめん」とだけ言うんじゃない。
今日だけは、全身全霊で、思いつく限りの気持ちで、普段なら思いつかないような言葉で、全てをなげうって、許してもらえるかはわからないけど、今日の事も、今までの事も、これからの事も、全部全部ひっくるめるかのように、竜児に言うつもりだった。
言いたかった! 言わなきゃいけなかった!

去年の生徒会長選挙のあと、私がカチコミをかけた相手の加納スミレは、こう言った。

「アンタみたいなバカになれるものならなりたいよ!」と。

だけど、アタシはいやだ! こんなバカはもうイヤだ!
言わなきゃいけない大切な言葉を置き去りにして、言っちゃいけない言葉ばかり吐き出して! 見てみろ、今だってこんなに嫌なのに、どうしても止まらない!

なんで、そこにいるのよ北村君! なんで隠れてるのよみのりん! 他の二名、何で生まれてきた!?

身体が、口が、手が、頭が、知らないところで動く! 勝手に動き回る! 気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い!!!
私の身体は私の物じゃない! 私の身体は、竜児の事より、私のクソみたいなプライドを優先した! 私はそんな事、望んでないのに!!!
それで傷つけた! 竜児を傷つけた! その上、さらに止めでも刺そうってのかこのバカは!!!

もうダメだ、もういられない、もう竜児といられない……

竜児に拒絶され、拒まれて、嫌がられても、それでも一緒にいるつもりだった! 無理やりアタシが側にいるだけなら、傷つくのは竜児じゃなくてアタシだけのはずだった! でも、それなら一緒にいられると思った!

でも、だめだ! アタシは側にいるだけで竜児を傷つけ続ける! こんなんじゃいられない! 一緒になんていられるわけがない!!!
何もしていない竜児を、どうでもいいような自分の欲求のために真っ二つに引き裂いて、それでも飽き足らず、今度は細切れになるまで砕ききって!

竜児は言ってくれた。好きだって言ってくれた! 側にいるって言ってくれた! 「嫁に来い」って言われたときは、本当に嬉しかった! 竜児はさっきの教室でも、「世界なんて要らない、私が欲しい」って言ってくれた!

アタシだってそうだ! 何もいらないとまで本気で思えて、側にいてくれるなら、今まで望む事すら許されなかった幸せを、二人で掴み取るんだって、絶対そうするんだって、そう決めてた!

でも、アタシが望んでるのは、こんなんじゃない!!!
竜児が傷つくなんて嫌だけど、自分が竜児を傷つけるのは、もっといやだ!
だって見てよ、竜児の顔……。傷だらけになって、アタシのつけた傷だけで、もう……

竜児の両手は、アタシの傷をふさぐ為に、もう使ってる。だから、竜児は自分の傷をふさげない。
だから、アタシが代わりに塞いであげるつもりだった。でも、アタシの両手は竜児を傷つけるためだけの手!

北村君! みのりん! バカチー! 竜児の傷を止めて! あたしを止めて!
誰でもいいから!!! アタシを竜児から引き剥がして、それで竜児を助けて!!!

助けて!!!!!!


752:名無しさん@ピンキー
09/06/24 01:58:16 HCziz3g3
支援

753:名無しさん@ピンキー
09/06/24 02:18:19 XMyiJQwc
<虎と竜と、もう一つの幸せと 21>

この、バカやろう……

竜児の頭が、急速に覚醒していく。目の前で繰り広げられている、この余りにも惨たらしい状況をどうすればいいのか?

目的は二つ。大河を斬り付け続ける、大河自身の言葉をやめさせる事と、コソコソ隠れているヤツらを、一気に追い払う事。
その答えは、すでに見つかっていた。あまりいい方法じゃないかもしれない。だが、今の自分には、これ以外思いつかない。
考えている時間がもったいなかった。すでに大河の目はルビーのように真っ赤に染まり、このままでは本当に血の涙を流しだしかねない。
彼女はそれほど苦しんでいる。

あいつら相手に、こんなことはしたくなかった。しかし、今の竜児は激しい怒りにも似た感情を抱え、それを飲み下そうとするどころか、これから倍増して吐き散らかしてやるつもりでいた。

大河が痛々しかった。自分が痛々しかった。その二人を見ているあいつらが痛々しかった。だから、やるしかなかった。

すぅぅぅぅぅ……

限界まで息を吸い込み、止め、溜めて倍増した怒りを自慢の顔面に練り込み……



「「「でていけーーーーーーーーーー!!!」」」



全力で吐き出した。陳腐で短く端的で、何の捻りもない、どこにでもある単語だった。

だが、その声は屋上を、校舎を、それぞれの教室を、校庭を、それらを取り巻く空気を、その場にいた者たちの気持ちを、いない者の気持ちさえも、激しく揺さぶった。それだけの気持ちを込めた、竜児の魂だった。
校庭の木で休んでいた鳥たちが、何かを察知したのか、いっせいに飛び立ち、バサバサと羽音を撒き散らす。

みれば、能登と春田が、身を隠していた場所から転がり出て、腰を抜かして「アウアウ」言っている。
北村と実乃梨はそこまでではないが、何かとんでもない物でも見たような、そんな顔のまま、魂の発生源である竜児の方を凝視していた。

そんな面々に、竜児はまだまだ在庫過多な凶面で、「出て行け」と、ギラリと睨み付ける。

万物を想像した神々が、自ら作り出した物の邪悪さに、思い余って集団で投身自殺をしかねない、そんな顔だった。



754:名無しさん@ピンキー
09/06/24 02:20:06 XMyiJQwc
<虎と竜と、もう一つの幸せと 22>

その衝撃的な顔に当てられてか、能登と春田が「うへ~」とか「あひ~」とか言いながら、慌てて屋上から逃げ出していく。
北村と実乃梨も、腰砕けに近い状態で、それでも何とか平静を保ちつつ、屋上から去っていく。

視線を下に向けてみると、竜児のすぐ足元に呆けたような顔をしてへたり込む大河の姿。
さっきまでまくし立てていた罵詈雑言の嵐も今はやみ、その代わり、口をパクパクさせている。

竜児の発した、余りにデカイ声と気迫に加え、さらに至近距離からの不意打ちだった事もあり、大河には竜児がなんと言ったのか、ハッキリとは分からなかった。

ただ、竜児の発した何かが、とてつもなく禍々しく、鬼のように凶暴で、尋常じゃないくらい真っ黒で、それなのに力強くて暖かくて、まるで自分を包み込むような、
そんな不思議な感覚にとらわれていた。

つい先ほどまで、半狂乱のように叫び続けていた大河には、あの一瞬に、ほんの短い間だが、幻覚のような物が見えていた。

竜児から発せられた何かの力は、自分と竜児に張り付いて、剥がそうとしても剥がれなかった、おびただしい数の傷を、全て一瞬で吹き飛ばすような、そんなワケの分からない幻覚だった。

そう、ただの幻覚だった。だが、なぜか大河は自分の心がほんの少しだけ……軽くなった気がした。

竜児はひざを落とし、相変わらず、ただポカンと視線を向ける小さな少女と同じ高さの視線をつくり……

つんつんつん……

おでこを、つついていた。「生きてるか~?」と、声もかけた。大河はそれに、コクコクとうなずき……

「おう!?」

そして、気を失ったのか、糸の切れた操り人形のように、そのまま後ろへ倒れていった。



755:名無しさん@ピンキー
09/06/24 02:21:11 XMyiJQwc
<虎と竜と、もう一つの幸せと 23>
===============================================================

アタシは今、夢を見ている……

やっちゃんがいて、ブサ鳥がいて、そして竜児がいて……。吹けば飛びそうな、根っこからボロボロのアパートの一室。
アタシもそこにいた。
竜児はいつものように台所で夕飯の支度をしてて、やっちゃんは襖を隔てた隣の部屋で寝てて、ブサ鳥はキモくて……

毎日のように、当たり前のようにしてきた日常の風景。とても暖かい景色。そんな夢……それは、すごく嫌な夢。

「もうすぐ出来るぞ、いつまでも転がってないで、ちょっとは手伝えよ。」

竜児に言われて、自分が畳の上に転がっている事に初めて気づく。竜児の言葉に反応するように、自然と上半身が起き上がる。
竜児はいつもみたいに、顔に般若を貼り付けたままの笑顔でアタシを見ている。

とても悲しかった。

両手に料理が盛り付けられた皿を器用に持ちながら「ほら、そこどけって」と、私に移動を迫る竜児。
メニューの中に、鳥料理が紛れ込んでいるのに気づいたのか、背後のブサ鳥が立てる抗議の鳴き声がうるさい。

「あっと、もうこんな時間か。ちょっと、手間取っちまったからな……」

一瞬、思案した竜児はアタシに顔を向け、「すまんが、泰子を起してきてくれ」と言い……
最後に「頼むよ、逢坂」と続けた。

身を切られるように、辛かった。竜児の最後の一言に、涙が溢れ出すのが自分でも分かった。

「んだよ、笑ってないで泰子を起せって。」

アタシは笑ってなんかいない。

「俺は手を離せないんだ。見たら分かるだろ……逢坂。」
「違う! アタシは大河だ!」
「んだよ、そんなんどっちでも一緒だろ?」

聞いてはくれない。
この夢の中では、竜児はずっとアタシの事を「大河」ではなく「逢坂」と呼ぶ。

聞きたくない。

何時からだったか、竜児はアタシの事を「大河」と呼んでいた。何時だってそう呼んでくれた。
だが、夢の中の竜児はアタシの事を「逢坂」と呼んでいる。それがたまらなかった。
まるで、「全てなかった事にしよう」と言われているようで、「出会ったばかりの頃のままでいたかった」と言われているようで、それで取留めなく、涙がこぼれた。



756:名無しさん@ピンキー
09/06/24 02:21:55 XMyiJQwc
<虎と竜と、もう一つの幸せと 24>

夏に皆で別荘に行ったときの「痛み」。
学園祭の時の「痛み」。
3年の教室に殴り込みをかけた時の「痛み」。
イブの夜に竜児を追って外に飛び出した「痛み」。
修学旅行で竜児の背に負われて口走った「痛み」。
年明けに北村君を拝んだ「痛み」。
皆にチョコを渡した時の「痛み」。
ミノリンが竜児を見る時の「痛み」。

竜児がミノリンを見る時の「痛み」。

全部全部、痛かった。いつだって痛かった。でも、大切だった。全ての痛みが竜児につながっていて、そんな私の痛みを、気づく限り必至に何とかしようとしてくれる竜児がいて……
とても大切で、私の宝物の「痛みと共にある思い出」たち。

だが、竜児はそれを全部、なかった事にしようと言う。
これが夢だと言う事は分かっている。しかしそれでも竜児の言葉がどうしようもなく怖い。

私を見て欲しかった。私の名前を呼んで欲しかった。私が泣いている事に気づいて欲しかった。一緒にいたかった。

誰も知らない、一片の光も差さない真っ暗などこかに、たった一人で取り残されたような、そんな感覚に私の奥歯はかみ合わず、カチカチと音を鳴らす。

竜児とはなれるのは、こういう事なのだ……

ついさっきまで「竜児を傷つけるくらいなら、一緒にいなくてもいい!」と思っていた。だが、甘かった。

一人でも生きていける……無理だ。
一人でも立ち上がれる……出来るわけがない。
誰でもいいから竜児を助けて……誰も触るな!!!

自分の言っている事が支離滅裂だと言う事は分かっている。しかし、アタシの事を「逢坂」と呼ぶ竜児の姿を見る事は、今までに受けたどんな痛みよりも激しかった。
いや、「痛み」なんてものじゃない。痛みは生きているからこそ、「痛い」と感じる。しかし、今のアタシは……

「なんだよさっきから、何がそんなに面白れぇんだ?」
「どうしたの、大河ちゃん? なんかいい事でもあったの~?」
「ダガ・ソレガイイ!!!」

アタシは、夢の中で一人で泣いた……


757:名無しさん@ピンキー
09/06/24 02:22:44 XMyiJQwc
<虎と竜と、もう一つの幸せと 25>
===============================================================

大河が目を微かに開ける。
細い視界に飛び込んできたのは、天井だった。竜児の家でも、自分の家の物でもない、見覚えのない天井。真っ白と言うには、いささかくすんだ色の天井。

どこの天井? あ、でも前に見た事あるような……

そこまで考えた時、不意に自分がベットで横になっている事に気づく。足先から顔の半分くらいまでの、身体の大半を覆い隠している薄くて真っ白なシーツ。
鼻先に当たる布の感触が少しくすぐったく、モゾモゾと動いて鼻をシーツの中から引っこ抜く。
その拍子にツンと鼻腔に広がる独特の匂い。あまり好きではない匂い。

「消毒液の匂いだ……」と、まだ覚醒しきっていない頭で匂いの正体にたどり着き、薬品の並んだ戸棚が視界の端に引っかかり、そこが学校の保健室だと分かる。
「えっと、なんでアタシ……」

嫌な夢を見ていた。とても寒くて冷たくて、何もかもを失ったような、そんな夢だった気がした。まるで、終わっていくこの世界を一人で見続けるような、そんな夢だった気がした。
ハッキリとは覚えていなくとも、その夢の中で感じた感覚は、まだ身体の中に残っている。
「それより、アタシどうしたんだっけ……?」

身体にかけられたシーツを退けながら、上半身をゆっくりとベットの上に起す。記憶がハッキリしない。

なんか、絵本に出てくる魔女が、大ナベの代わりにアタシの頭の中を一心不乱にかき回してでもいたような、そんな感覚ね……

などと考えていると、「やっと起きたか」と声がした。反射的に声のしたほうに顔を向ける。大河の視界には、古ぼけたパイプ椅子に腰をかけた竜児の姿。
竜児に向けた大河の視線と、大河に向けられた竜児の視線が重なり合い……

「あ……」

その瞬間、大河の頭をかき回していた魔女の姿が、彼女の頭の中から吹き飛ばされ、ついさっきまでの屋上での大騒ぎの記憶が、激流のように流れ込んでくる。
竜児にした事、竜児に言った事、その全てが大河の頭の中を、吹き荒れる。

「あ……あ、ああ……」

魔女を押し流した激流が、同時に大河の言語機能までショートさせてしまったかのように、少女は意味のない発音を繰り返す。
言わなくちゃ、謝らなくちゃ、ふさがなくちゃ……
言葉にはならない、それらの短い単語達が大河の身体を無意識に動かす。起した上半身を少しでも竜児に近づけようと、足の代わりに両手を使って、歩み寄ろうとする。

が……

「お、おい!?」

保健室のベットはそんなにデカくない。体重をかけようとしてベットに付いたはずの手は、しかしベットの上ではなく、何も無い空中を取らえ……
ベシャァ!!!
と、大河は顔面から床へ全体重をかけてダイブした。


758:名無しさん@ピンキー
09/06/24 02:24:13 XMyiJQwc
<虎と竜と、もう一つの幸せと 26>

「おい、大丈夫か!?」

駆け寄った竜児が声をかけるも、大河のかました余りの挙動に、若干声が上ずっている。
ベットの上に下半身だけを残して、顔面から床に飛び込んだ少女は「うう、いたい……」と、小声でうめく。
大河の側にひざを付いた竜児は、半・逆さ吊り状態の大河の身体を起そうと、両腕で少女の体重を支えようとする。当然、そうする直前に、むき出しになった大河の尻を隠そうと、さりげなくスカートをかけなおす事を忘れない。気遣い竜児の本領発揮である。

「ったく、何をどうしたらそうなんだよ?」とこぼしながらも、竜児の腕は大河の体重を持ち上げ、ベットの下に埋まっていた上半身を引きずり起す。

「痛いか? いや、痛くないワケねーか。ほら、見せてみろ……」
そう言いながら、強打した顔面を痛そうに押さえる大河の両手を優しくどかすと……

「おい、鼻血出てんじゃねーか!」
何だって俺って奴は、女子の鼻血にこうも縁深いんだ? と胸中で一人ごちる。なにせ、大河にいたっては、これで二度目だったりする。

「ほら、まずベットに座れ! ったく、テッシュ、テッシュ……」と竜児が箱テッシュの置かれたデスクに向かおうとするが、右手を大河につかまれ引き止められる。
何事かと振り返れば「痛くない! 痛くないこんなの!」としきりに首を左右に揺る大河の姿。
勢いよく首を振ったため、鼻から垂れる血液の飛沫がピッピッと飛び散り、ベットの白いシーツに真紅の痕跡を残していく。

「痛くないって、そんなワケねーだろ!? 何言ってんだこんな時に!」
「痛くない! 痛くない! 今、傷ついてるのはアタシじゃない! 今、一番傷ついてるのはアンタなんだから!」

大河は、竜児を探して校内中を駆けずり回っていた時に感じていた事を、この場でそのまま口に出す。が、竜児にはまったく意味不明であったようで……

「何をどう見たら、そういう結論にたどり着く!? 誰が見ても、今一番痛々しいのはお前だろーが!」
「ちがう! ちがう! 痛いのは竜児! アタシは痛くない! だからいいから! このままでいいから!」

なぜ大河がそれほど必至に「痛くない」というのか、竜児には分からなかった。
ただ、屋上で一人座っている時に考えた、斬られても斬られても、「ぜんぜん痛くない」と言って、立ち上がる大河の姿が脳裏に浮かび、今の大河と重なり合う気がする。
一度そう思ってしまうと、今の大河の必至の否定が、あまつさえ「痛い痛い!」と叫んでいるかのような錯覚を覚え、何ともいえない感情があふれ出す。

竜児は必至に首を振り続ける大河の頭を包み込むように両腕を回す。突然の抱擁に驚いた大河の首の回転が止まる。竜児はそのまま、大河の顔を優しく自分の胸に押し当てた。
既に大河の顔面を右に左に駆け抜けていた幾スジもの赤い線が、容赦なく竜児の制服に付着していくが、しかし今の竜児にはそんな事、まったく気にならなかった。
それどころか「いっそこのまま、全部ふき取ってやる」とでも言うかのように、スリスリと大河の顔を自分の胸の上でゆっくりと転がす。


759:名無しさん@ピンキー
09/06/24 02:24:44 XMyiJQwc
<虎と竜と、もう一つの幸せと 27>

「竜児、よ、汚れちゃう……」と無抵抗のままつぶやく大河に、「ああ、そうだな」とだけ返す。しばらくのあいだ、大河は黙って竜児にされるままになり、竜児も黙ってスリスリを繰り返した。
大河の顔に張り付いていた鮮血を殆どふき取り終わりそうになった頃、大河がポツリと声を出す。

「ごめん……」
「ああ……」
「今日の事も……」
「ああ……」
「これまでの事も……」
「ああ……」

短い大河の言葉に、短い竜児の返事。だが、不思議とそれだけで十分だった。
「そ、それに……」と、一瞬ためらったかのように間をおき、大河は続ける。

「こ……これからの……こ…と…も……」
「そんな事、とっくに覚悟は出来てるって……」
「う……ん……」

そう呟き、大河は目を閉じる。
まるで、迷子になって泣きながら知らない土地をうろつく羽目になってしまった小さな子供が、やっとの事で自分の家までたどり着いたかのような、そんな安心しきった表情だった。
「ただいま」と大河が小さく呟き、竜児はそれに「おかえり」と答える。
なぜだか、そんな言葉がピッタリと当てはまるような、そんな不思議で優しくて暖かい、二人だけの空間だった。



760:名無しさん@ピンキー
09/06/24 02:25:45 XMyiJQwc
<虎と竜と、もう一つの幸せと 28>
=============================================================-

「みのりんや北村君は大丈夫? 今の話だと、アンタそれこそ魔王をダースで殺ってきましたって顔で睨んで怒鳴ったんでしょ? でてけーって。」
「ま、そう言う事になるな。」
そう言いながら、保健室のベットに腰掛けた竜児は自分の重心を少しだけ後ろに傾ける。背中から伝わって来る体温が、心地いい暖かさを与えてくれていた。

「まあ、あいつらの事は心配いらねーよ。お前が寝てる間に、とっくに和解済みだからな。」

屋上で気を失った大河を抱えて竜児が保健室へ駆け込んだ、そのすぐ後、懲りもせずあの四人は保健室の前までやってきた。
さすがにさっきの事もあってか、入っていいのかどうなのか、保健室の前を困り顔でうろついていた所を、ドアにはめ込まれたスリガラス越しに竜児に発見され、
そこで先の「でていけ」事件に対する和解の場が設けられたのだった。

「謝りに来たから、逆にこっちから謝り倒してやったよ。」

竜児を訪問した4人と竜児の謝罪合戦は熾烈を極めた。
「すまん」「こちらこそすまん」などの言葉のやり取りは、途中からその意味をなくし、後半にいたっては、もう、相手よりどれだけ深く頭を下げられるかを競う、意地の張り合いにも見えた。
北村などは、本当に床にめり込みかねない勢いで「バカな俺達をゆるしてくれ!」などと、見たこともない真面目顔で言うのだ。いや、実際少し床にめり込んでいたかもしれない。さすがだ北村。
結局、その場は竜児が折れる形となって、壮絶な戦いは幕引きとなった。

「それなら、いいんだけど……」

竜児が腰掛けるベットの反対側から、竜児の背にもたれかかるように身体を預け、宙に浮いた両足をプラプラさせた大河は、それでもまだ少し心配な様子を表情ににじませる。

「心配するなって。北村や櫛枝はそんなにヤワじゃねーだろ?」
「それはそうだと思うけど……」
「それに能登や春田なんかは、俺に少々すごまれた位でどうこうなるような、そんな豊かな感性なんて持ち合わせてないからな。」
「あ、なんかその言い方ひどい。」
「なんだよ、お前だっていつも言ってんだろ、そう手のこと?」
「アタシはいいの。でもアンタはダメ。あんた、デフォルトで人から警戒される危険生命体なんだから、そう言うの、気をつけなさいよ。」
「ひどい言われようだな……」
思わず、文句が口をついて出る。それを聞いてか聞かずか、「アンタが他の人から嫌われるのは、アタシもやだもん……」と、大河がボソリともらす。
「ん? 何だって?」と聞き返す竜児に対し、「なんでもないわよ」とぶっきらぼうに答える大河。
こういう反応をした大河に、もう一度聞こえるように同じ事を言わせるのが、至極困難な作業である事を熟知している竜児は、それ以上の追及をあきらめ、話題を元に戻す。



761:名無しさん@ピンキー
09/06/24 02:26:21 XMyiJQwc
<虎と竜と、もう一つの幸せと 29>

「だいたい、影で二大番長なんて言われてる俺たちのダチをできるような奴らだぜ? 心配するだけ損ってもんだろ。」
俺は、あいつらの事を信用している。と、竜児の言葉の真意はそう告げている。

「それよりも……」
「なに?」
「俺としては、あいつらよりも、他の奴らの事のほうが気になるよ。」

竜児としては、タフで逞しく、楽観的で物忘れが激しいあの四人よりも、むしろ「でていけ事件」の前に屋上から出て行った、他のクラスメート達の方が気がかりだった。
いくら「気にしてない」と伝えはしたものの、しかし教室を出るまえに、飲み込みきれない怒りの波動を盛大に吹き出してきてしまったのだ。
最近、やっと他の奴が話しかけてくるような流れが出来上がりつつあったのに、これでまた、元の木阿弥か……などと、どうしてもマイナスな方面に思考が走り出してしまう。
そんな竜児に大河は言う。

「大丈夫よ。あんた、自分が思ってるよりも、ずっとみんなから好かれてるんだから。」
だから大丈夫だという大河の言葉が、竜児の胸を軽くしていく。
「自信持ちなさい! みのりんが惚れたのよ? それに、なんたって地上最強のこのアタシが、ほ……」
そこまで言うと、大河は自分が何を言おうとしているのかにハッとなり、一気に耳まで真っ赤に染め上げる。
「ほ……ほ、ほほ……ホ、ホ、ホバークラフト……」
「何だか、文脈がグチャグチャだな。ま、何を言おうとしてたのかくらい、察しは付くけどな。」

「な、なんな……何勝手な妄想してんのよ!?」と、今にも眉間やこめかみ辺りから血管を突き破って、暑い血の本流をたぎるパルスと共に吹き出しそうな顔で、大河。顔面火山も噴火寸前である。

「ま、いいけどさ。……ありがとよ。」
「べ、別にお礼を言われる筋合いはないわよ! ただ、そうだと思ったから言っただけだから!」

そう言う大河の言葉に、竜児は「へいへい……」相槌を打ち、これがコイツ流の優しさなんだろうな、と考える。



762:名無しさん@ピンキー
09/06/24 02:26:53 XMyiJQwc
<虎と竜と、もう一つの幸せと 30>

「それにしても……」
「なによ?」竜児のボソリと吐いた言葉に、大河が適当に相槌を打つ。

「もうすぐ一年か。なんか、短いようで長かったようで、でもやっぱり短かったよな……」
「なに急にジジィみたいなこと口走りだしてんのよ?」
「なんか、こうしてると無性に昔の事とか思い出しちまってさ……」

「もしあの時、お前が北村へのラブレターを俺のカバンに入れてなかったら、どうなってたのかな、ってよ。」
「な、なにそれ? 老い先短い老人にでもなりたいのアンタ?」

大河の胸の置くが、チクリと痛んだ。

「いや、だってそうじゃねーか。それに、そう言うのってラブレターの事だけじゃないだろ? 学園祭ん時だって、もしもあの時俺が福男になってなかったらとか、イブの日の櫛枝への告白が成功してたりとか……」

チクリとする大河の胸は、止まることなく、竜児の言葉にひきづられるように、繰り返し繰り返し……

「修学旅行の時だって、お前が行方不明にならなければ、きっと俺は未だにお前の気持ちに気付いてなかったかもしれねぇし……」

なぜ、こんなに胸が痛むのか、大河には分からなかった。ただ、全身の痛覚だけが研ぎ澄まされたような、そんな異常な状態だった。

「それ以前に、俺が櫛枝のこと好きじゃなかったり、お前が北村の事好きじゃなかったりしたら、それこそ俺たちって唯のクラスメイトでしかなかったかもしれないよな。」

ああ、これは罰なんだろうか? ひょっとしてこのままアタシは死ぬんじゃないだろうか?

大河にはそう思えた。何気ない竜児の、どこにでもあるような、そんあありふれた言葉の群れが、何度も何度も何度も何度も、同じ場所を繰り返し、刺す。

「なあ、お前ってそう言うこととか考えた事、あるか?」そう言って、背後に顔を向ける竜児が、大河の異変に気付く。

「お、おい、なんでそんなに俯いてるんだ? やっぱどっか痛いのか?」

痛かった。身体の中が、頭の中が、張り裂けんばかりに痛かった。初めてだった。これほどの痛みを感じたのは、大河にとって初めての経験だった。

「い……いたい……」

いつの間にか、大河の脳裏には、さっき見ていた夢の事が、鮮明な映像となってよみがえっていた。だから、痛い理由が分かった。だから耐えられなかった。
だから生まれて初めて、人の前で「いたい」と、心が引きちぎられそうだと口走りたかった。だが、それは声にはならない。竜児には届いていない。



763:名無しさん@ピンキー
09/06/24 02:28:38 XMyiJQwc
<虎と竜と、もう一つの幸せと 31>

「おい! どうしたんだ!? くそっ、どうしたってんだよ!」と、いきなりの事に動揺の色を隠せない竜児。

「そうだ、先生、いや救急車を! 待ってろ、今呼んで来てやる!」

言うが早いか駆け出そうとする竜児の腕を大河は弱々しく掴む。竜児には、その大河の手に込められた力の弱さが、頼りなさが、儚さが、あまりにショックで、思わず駆け出すのをやめ、大河を見る。

「いっちゃ……やだ……」

竜児がここから出て行けば、自分は死んでしまう。そんな幻覚にも似た感情が大河の中に芽生えていた。

「でもお前、そんな状態で!?」

竜児の言葉に混乱の色がありありと浮かんでいた。この状況をどうすればいいのか? どうすれば大河を助けられるのか? どうすれば大河を失わなくてすむのか?

「さむいよ……つめたいよ、心が……死んじゃう……」
「死ぬってお前! おい、シッカリしろ、大河! 大河ぁぁぁ!!!」

「たいが」竜児が口にした。

それはウソみたいだった。ウソみたいに、フッと消えるみたいに、初めからそんなもの無かったみたいに、大河の胸を締め付けていた太い鎖は、なんの痕跡も残さず消えうせていた。

「大河! おい、大河!!!」
「あ、治った……」
「治っただと!? 弱気な事を言うんじゃねー! 風邪とかだって、治りかけが一番危ないって言うだろうが!? さあ、今すぐ病院に……」

竜児の言葉は途切れ、脳の思考回路が完全に焼ききれたみたいに、「な…おっ…た?」とその言葉の意味を反芻しつつも、完全な思考停止状態。

「あ……ね、ねえ竜児?」

呼びかける大河の声に、思考停止中でも反応できる竜児は、既にすごいヤツだった。
ギギギギギ…と、さび付いて壊れたブリキ人形よろしく、首だけを起用に大河に向けて「な……なにかな……?」と、抑揚の無い声でさえずる。

「もう一回、呼んで。あたしの事。」

ブチブチブチブチ!!!!!


764:名無しさん@ピンキー
09/06/24 02:30:20 XMyiJQwc
<虎と竜と、もう一つの幸せと 32>
この日、地獄の釜を丸ごと喉に搭載した対神様用決戦兵器の発する雄たけびのような怒声が、大橋高校および、その近隣地域一体に響き渡った事は、言うまでもなく……
その声に驚いた教師達が駆けつけた大橋高校のとある一室で、真っ先に駆けつけた独身大明神が二人の姿と、なぜかベットに点々と付着している血痕を見て、「まさか、あんた達ここで……」と顔面を蒼白にし、
さらに続いて駆け込んだ生徒会長なる人物が、当事者の一人の胸の辺りに付着した血痕にも気付き「お前らそれは、何プレイだったんだーーー!?」と叫んで、
追撃してきた野球部キャプテンと雑誌モデルによって、地面に完璧にめり込まされたという話は……また、別の話である。


                                       END

765:名無しさん@ピンキー
09/06/24 02:35:32 XMyiJQwc
<虎と竜と、もう一つの幸せと>は以上で終了でございます。長々とお目汚し、失礼。
自分が、SSの保管庫で結構楽しかったから、この手の物を書いたこと無いのに、何かやってしまった。
44LTzffTさん、勝手な真似、もう一度謝罪を。
それと、sageの件、本当に申し訳ないです。今度来るときは、もう少し掲示板の勉強してきます、はい。

766:名無しさん@ピンキー
09/06/24 07:38:54 hrTcNOOk
GJ 読みやすかったし面白かった


767:名無しさん@ピンキー
09/06/24 09:41:57 NhU56Q+F
sageるのがマナーと言い出したアホ出てこい

768:名無しさん@ピンキー
09/06/24 09:56:51 ZqplpMU+
>>767
こないだみたいなキティを呼ばない為にもsageはマナーじゃね

>>765
GJ。sageはたまに異常に噛み付くやつがいるので気をつけた方がいいかと。特に職人は

769:名無しさん@ピンキー
09/06/24 10:04:56 0HqUbn88
>>765
GJ! 書き慣れているのか、読みやすい。
>>768
あのキチガイは、元からここにいる奴だよ
書くのに行き詰まって、おかしくなったという感じがする


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